説明

真空搬送装置およびこれを備えた荷電粒子線検査装置

【課題】構造が簡単で、試料の交換作業を短時間で行なえる真空搬送装置を実現し、しかも、占有面積が小さく、スループットを向上させた荷電粒子線検査装置を提供する。
【解決手段】2つの駆動源2,10により回転および上下動作が可能なアーム1と、このアーム1の両端に、アーム1の回転に伴って回転するように支持されて試料を載置する第1のハンド22と第2のハンド23とを上下方向に離間させて配置して、アーム1の回転と上下動作の制御のみにより試料の搬送とその交換を可能した真空搬送装置26を構成し、また、この真空搬送装置26を荷電粒子線検査装置の予備排気室ではなく真空試料室内に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば半導体ウェハなどの試料の搬送およびその検査などに用いられる真空搬送装置およびこれを備えた荷電粒子線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウェハなどの検査では、荷電粒子線を用いたものが多く、半導体検査装置の真空試料室内に半導体ウェハなど検査試料を搬入し、減圧雰囲気下で荷電粒子線を走査することにより取得される画像などからライン幅、スルーホール径の測定などの検査処理が行なわれるようになっている。
ところで、このように減圧雰囲気下で半導体ウェハなどの検査処理などを行う半導体検査装置では、スループットの向上、省フットプリント化(省フットスペース化)などが要求される。
この理由は、スループット向上による半導体デバイスの量産(生産歩留りの向上)および省フットプリント化によるクリーンルームの占有面積の削減を可能にすることが、半導体デバイスのコスト低減に大きく貢献できる点があるからである。
【0003】
このような背景から、荷電粒子線を用いた半導体検査装置においては、真空試料室にゲートバルブによって開閉自在に仕切られた真空試料室より容積の小さい予備排気室(ロードロック室)を設け、この予備排気室を介して半導体ウェハなどを真空試料室内に対して搬送装置により搬入・搬出させるように構成されている。
このような構成にすることによって、真空試料室内を大気圧(常圧)に戻すことなく、半導体ウェハなどを真空試料室内に搬入・搬出することを可能にし、検査装置のスループットの向上を図っている。つまり、半導体ウェハなどを真空試料室内に搬入・搬出する毎に、真空試料室内を大気圧に戻すと、再び真空試料室内を減圧状態まで立ち上げて処理を開始するまでに多くの時間を要し、スループットの低下を招くことになる。
【0004】
そこで、半導体ウェハなどを真空試料室内に対して搬入・搬出する毎に、真空試料室内を大気圧に戻すことなく、そして、真空試料室内に対する半導体ウェハなどの搬入・搬出を効率的かつ短時間で可能にするなどによってスループットの向上を狙った多種多様の搬送装置が提案され、知られている。
従来の搬送装置は、一般的に多関節アーム方式が知られており、この搬送装置は、大気側に置かれた駆動源の動力を、ベルトおよびプーリなどを用いて伝達して、それぞれ屈曲可能に直列に接続されている例えば3本のアームからなるアーム部全体を伸縮させるように構成されている。また、他の形態の搬送装置としては、いわゆる蛙の足のように屈曲可能な回転部を有するフロッグレッグ方式の搬送装置も知られている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【0005】
また、従来では、旋回可能に支持された旋回アームと、この旋回アームの先端に屈曲可能に支持させた回転アームと、この回転アームの先端に、試料載置アームの中央部を回転可能に支持させることにより、試料載置アームの両端に設けられている載置部によって2枚の半導体ウェハの搬送を一度に取り扱うことができるように構成された搬送装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、従来では、第1から第3の3本のアーム部からそれぞれ屈曲可能に形成された多関節アーム方式の2つの搬送アームを、旋回軸の旋回中心に対して点対称に配置し、第3のアーム部の先端に半導体ウェハが載置されるウェハ載置部を設けることにより、2枚の半導体ウェハの搬送を一度に取り扱うことができるように構成された2つの搬送アームを有するフロッグレッグ方式の搬送装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
また、駆動源によって回転させられるように中央部を回転可能に支持させた1本の回転アームの両端に、この回転アームの回転に伴って回転する短尺な中間アームをそれぞれ回転可能に支持させ、さらにこの中間アームの回転に伴って回転するとともに半導体ウェハが載置される試料載置アーム(セッティングプレート)を、前記両中間アームの先端にそれぞれ回転可能に支持させることにより、2枚の半導体ウェハの搬送を一度に取り扱うことができるように構成された搬送装置が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平9−283588号公報(段落番号0023、図1および図4)
【特許文献2】特開2001−118905公報(段落番号0019〜0021、図2、図3および図6)
【特許文献3】特開平7−142551号公報(段落番号0013〜0017、図1および図2)
【特許文献4】特開平7−142552号公報(段落番号0014〜0020、図1、図3および図7)
【特許文献5】特開平8−195427号公報(段落番号0011〜0013、図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献3に記載の搬送装置は、未検査ウェハと検査済ウェハとの交換作業の際に、旋回アームに対して重なるように回転アームを縮退させた後に、試料載置アームをその中央部を支点として180度回転させる必要があることから、搬送装置が備えられる半導体検査装置の予備排気室は試料載置アームの回転半径分の占有面積が必要となり、それだけで大きな予備排気室が必要となる。
また、交換作業の際に、始めに未検査ウェハを試料載置アームの一端載置部に載置させた後に、旋回アームを所定の角度だけ旋回させて、試料載置アームの空の他端載置部を真空試料室側に向ける。この状態で回転アームを旋回アームに対して回転伸張させて試料載置アームの他端載置部を真空試料室に侵入させ、他端載置部で検査済ウェハを受け取る。
その後、回転アームを旋回アームに対して重なるように回転縮退させることにより試料載置アームを真空試料室から予備排気室に一旦退避(後退)させ、予備排気室で試料載置アームを180度回転させて未検査ウェハが載置されている試料載置アームの一端載置部を真空試料室側に向ける。この状態で再度、回転アームを旋回アームに対して回転伸張させて未検査ウェハを真空試料室に搬入させる動作が必要となる。つまり、旋回アームに対する回転アームの回転伸縮と試料載置アームを単独で180度回転させる2段階の回転動作が必要となる。
このように、特許文献3に記載の搬送装置は、試料載置アームの回転半径分に相当する占有面積の予備排気室が必要であることから、予備排気時間が長引く、しかも、検査済ウェハと未検査ウェハとの交換作業に時間が掛かり、結果として、必ずしもスループットの向上に優れているとはいえないものであった。
また、旋回用、伸縮用、回転用の3つの駆動源とそれぞれの動力伝達機構が必要であることから、構造の複雑化を招く。
【0010】
また、特許文献4に記載の2つの搬送アームを有する搬送装置は、略同じように形成される2つの搬送アームを必要とすることから、構造が複雑で、装置自体が大型になり易く、結果として、広い占有面積の予備排気室が必要となり、その分、予備排気室の容積が増大して予備排気に時間がかかる問題がある。
また、真空試料室から一方の搬送アームにより検査済ウェハを受け取った後、一方の搬送アームを予備排気室に縮退させて装置全体を180度回転させるなどの2段階の動作が必要となり、結果として、検査済ウェハと未検査ウェハとの交換作業に時間が掛かり、必ずしもスループットの向上に優れているとはいえないものであった。
【0011】
また、特許文献5に記載の搬送装置は、交換作業の際に、正転および逆転(反転)する動きをする回転アームの一連の回転動作の流れによって、真空試料室からの検査済ウェハの受け取り搬出と、未検査ウェハの試料真空室への搬入とを行うことができるために、前記した特許文献3および特許文献4に比べて交換作業の時間は短くて済む。しかし、回転アームの回転に伴う中間アームの回転、そして、この中間アームの回転に伴う試料載置アームの回転に、回転のズレが生じる恐れがある。
すなわち、試料載置アームの回転動力は、駆動源からの動力によって直接回転させられる回転アームの回転が、中間アームの回転を経由して伝達される。
したがって、中間アームの回転を試料載置アームに伝達するために、中間アームの回転部から試料載置アームの回転部に渡り備えられる動力伝達機構(両回転部に備えられるプーリと、この両プーリに渡り巻回状に張架される無端状のベルト)に空回りなどの伝達不良が生じると、回転アームの回転が中間アームを経由して試料載置アームに正確に伝達されず、該試料載置アームの回転に、回転のズレが生じる。
たとえば、一方の試料載置アームを真空試料室に回転侵入させて検査済ウェハを受け取る方向に回転アームが回転しても、中間アームの回転に伴って試料載置アームが検査済ウェハを受け取る位置まで正確に回転侵入されないなどの伝達不良による故障を引き起こす恐れがあり、信頼性の面で必ずしも優れているとはいえないものであった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決するために創案されたものであり、その目的とするところは、構造が簡単で、試料の交換作業を短時間で行なうことができ、スループットの向上と、占有面積を低減させて省フットプリント化を実現させることができる真空搬送装置およびこれを備えた荷電粒子線検査装置を提供することにある。さらに、予備排気室の塵や埃などの異物の発生防止を実現することができる真空搬送装置およびこれを備えた荷電粒子線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、第1の発明に係る真空搬送装置では、回転と上下との2つの駆動源と、前記2つの駆動源によって回転・上下動作が可能に支持されているアームと、前記アームの一端に回転可能に支持され、前記アームの回転に伴って回転し、試料を載置搬送する第1のハンドと、前記アームの他端に回転可能に支持され、前記アームの回転に伴って回転し、試料を載置搬送する第2のハンドと、前記アームの回転を前記第1のハンドおよび第2のハンドそれぞれの回転部に伝達する動力伝達機構と、を備え、前記第1のハンドと前記第2のハンドとは互いに上下方向に離間するように支持されたことにある。
【0014】
第2の発明に係る荷電粒子線検査装置では、荷電粒子線を照射し、荷電粒子線を偏向後、試料上に照射する機能を有する荷電粒子線光学系と、前記荷電粒子線の照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出器と、前記試料が搬入される真空試料室と、前記真空試料室に前記試料を搬入・搬出するように隣接して備えられる予備排気室と、前記真空試料室内で搬入載せられた前記試料を特定の位置にまで移動させる試料ステージと、を有する荷電粒子線検査装置であって、前記予備排気室と前記真空試料室との間で、前記試料の搬送受け渡しを行うために、前記真空試料室に、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の真空搬送装置を設けて構成したことにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1のハンドと第2のハンドとを支持させたアームの回転と上下動作との2つの制御のみによって、例えば検査済ウェハの搬出と未検査ウェハの搬入とを同時に行うことが可能になり、試料の受け渡し交換を含めた搬送時間を大幅に短縮することができる。それによって、スループットの向上が図られるとともに、構造の簡素化を図ることができる。
【0016】
また、本発明によれば、予備排気室は半導体ウェハ等の試料が収まる程度の容積と試料の搬送に必要な容積のみに抑えることができ、予備排気室の容積を必要最小限にすることが可能になり、省フットプリント化を実現するとともに、予備排気室の排気時間を大幅に短縮することができる。また、予備排気室に昇降駆動部が存在しないので、汚染の原因になる塵や埃などの異物の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の発明に係る真空搬送装置の一実施例を示す斜視図であり、図2は、同真空搬送装置の概略断面図であり、図3は、同真空搬送装置における動力伝達機構の一例を示す概略斜視図である。
【0018】
≪真空搬送装置の説明≫
真空搬送装置26は、図1に示されているように、大気M側(図2参照)に置かれる回転と上下との2つの駆動源2,10によって回転と上下動作が可能に支持されるアーム1を真空N側(図2参照)に備えている。このアーム1の両端には第1のハンド22および第2のハンド23がそれぞれ回転可能に支持されており、アーム1の回転に伴って回転して半導体ウェハ21などの試料を搬送するようにしている。アーム1の回転は、後記する動力伝達機構を介して第1のハンド22および第2のハンド23にそれぞれ伝達されて、第1のハンド22および第2のハンド23は、アーム1の回転に伴って回転するように構成されている。
【0019】
≪アームの回転駆動源の説明≫
回転駆動源2は、アーム1を時計方向と反時計方向に回転させる正逆回転切換えを可能とするモータなどからなり、図2に示されているように、大気M側に配置され、この大気M側において同軸上に配されるカップリング3と、大気M側と真空N側とを仕切る仕切り壁Sに貫通状に設けられるシール4と、を介して真空N側に回転動力が導入されるようにしている。
ちなみに、シール4は、主に磁性体と蒸気圧の低い油の混成となる磁性流体シールであり、以下においてシール4を磁性流体シール4とも称する場合がある。
【0020】
また、図2に示されているように、回転駆動源2は、真空N側において磁性流体シール4にカップリング3を介して同軸上に結合されるアーム1の回転駆動軸5を回転させるようにしている。この回転駆動軸5は、真空N側に設けられるベースプレート14に転がり軸受12を介して回転可能に支持されている。
また、回転駆動軸5は、真空N側に設けられるアーム支持部7に上下方向に移動が自由で、回転方向に拘束(係合)されて支持されている。つまり、回転駆動軸5とアーム支持部7との間にはボールスプライン構造が備えられており、このボールスプライン構造によって回転駆動軸5が上下方向に自由で、回転方向に拘束(係合)された状態でアーム支持部7に支持されて、このアーム支持部7に回転動力を伝達するようにしている。
【0021】
アーム支持部7は、図2に示されているように、回転駆動軸5が摺動可能に貫通するアーム1の長さ方向中央部位に結合されて、回転駆動軸5の回転動力をアーム1に直結して伝達するようになっている。
また、アーム支持部7にはアーム支持部7の回転を動力伝達機構の後記する第1のプーリ17に伝える回転フランジ8が同軸上に備えられており、この回転フランジ8は、アーム支持部7に対して回転方向に自由で、上下方向に拘束(係合)された状態で転がり軸受9を介してアーム支持部7に支持されている。そして、この回転フランジ8に第1のプーリ17が同軸上に取り付けられている。
【0022】
≪アームの上下駆動源の説明≫
上下駆動源10は、アーム1が回転動作する際はアーム1を下降させ、そして、アーム1の回転に伴って回転する第1のハンド22および第2のハンド23によって半導体ウェハ21(後記する検査済ウェハ27および未検査ウェハ28)などの試料をそれぞれ受け取ったり、受け渡すなどの際には上昇と下降とを繰り返すようになっている。
上下駆動源10は、図2に示されているように、回転駆動源2と同様に大気M側に配置されるモータなどからなり、大気M側において同軸上に配されるカップリング3と、大気M側と真空N側とを仕切る仕切り壁Sに貫通状に設けられる磁性流体シール4と、を介して真空N側に回転動力を導入し、回転動力を同軸上に配されるアーム上下駆動用のボールネジ11に回転させるようにしている。
【0023】
ボールネジ11は、図2に示されているように、真空N側において磁性流体シール4にカップリング3で同軸上に結合されるとともに、ベースプレート14に転がり軸受12を介して回転可能に支持されている。
そして、ボールネジ11は、図2に示されているように、ベースプレート14に直立に取り付けられているガイドベース13に直動ガイド部材16によって上下方向に移動可能に取り付けられたプーリベース15に鍔付きナット部材11aを介して連結されて、プーリベース15を上下方向に移動させるようにしている。つまり、ボールネジ11の回転がプーリベース15を上下させる上下動作に変換されることにより、アーム1を上昇させたり、下降させるように構成されている。(後記の図8および図9参照)
【0024】
≪アーム、第1のハンドおよび第2のハンドの説明≫
図2に示されているように、アーム1は、その長さ方向中央部位をアーム支持部7に結合され、このアーム支持部7を介して回転駆動軸5に回転と上下動作が可能に支持されている。そして、このアーム1の両端には転がり軸受20を介して第1のハンド22および第2のハンド23のそれぞれの回転軸18,19が回転自由で、上下方向に拘束された状態で取り付けられている。
【0025】
回転軸18,19は、図2に示されているように、アーム1に対して一方が低く、他方が高くなるように取り付けられて、第1のハンド22と第2のハンド23とが互いに上下方向に適宜の間隔をおいて離間された状態で支持(配置)されるようにしている。そして、回転軸18,19のアーム1から下方に突出させた部位には、動力伝達機構の後記する第2のプーリ24がそれぞれ同軸上に取り付けられており、第1のプーリ17とベルト25を介して連係されることによって、アーム1の回転駆動軸5の回転に伴って回転するようにしている。
【0026】
このように、アーム1に対して第1のハンド22と第2のハンド23とを回転可能に、かつ、第1のハンド22と第2のハンド23とを上下方向に離間させて支持させることにより、第1のハンド22および第2のハンド23は、互いに干渉(衝突)することなく、アーム1の回転に伴って回転し、それぞれに載置される半導体ウェハ21などの試料を搬送し得るようにしている。
なお、第1のハンド22と第2のハンド23との上下の離間間隔は特に限定されるものではないが、半導体ウェハ21の厚みより大きい程度とすることが望ましい。
【0027】
そして、本実施形態において、アーム1と第1のハンド22およびアーム1と第2のハンド23との回転比は1:2の関係に設定されている。さらに、図1に示されているように、アーム1の回転中心となる回転駆動軸5の軸芯P0から第1のハンド22の回転軸18の軸芯P1および第2のハンド23の回転軸19の軸芯P2までの軸間と、回転軸18の軸芯P1と第1のハンド22の試料載置中心位置P3および回転軸19の軸芯P2と第2のハンド23の試料載置中心位置P4との距離が等しく設定されている。
【0028】
このように構成することにより、第1のハンド22および第2のハンド23は、前記したように互いに干渉することなく、アーム1の回転に伴って回転し、それぞれに載置される検査済ウェハ27および未検査ウェハ28などの試料を搬送するに際して、アーム1の回転中心(回転駆動軸5の軸芯P0)を通る直線P上に沿ってアーム1の回転に伴って回転し、それぞれに載置保持される検査済ウェハ27および未検査ウェハ28などの試料を直線的に搬送することとなる(後記の図4参照)。
【0029】
≪動力伝達機構の説明≫
動力伝達機構の概略は図3に示されているように、第1のプーリ17と第2のプーリ24とにスチールなどからなるベルト25の両端を固定することによって、第1のプーリ17の回転に伴い第2のプーリ24が回転するようにしている。そして、第1のプーリ17と第2のプーリ24との回転比は1:2となるように、第1のプーリ17は第2のプーリ24の2倍のピッチ径を有している。
ベルト25は、アーム1が時計方向に回転した場合の回転を第1のハンド22および第2のハンド23に伝える正転側ベルトと、アーム1が反時計方向に回転した場合の回転を第1のハンド22および第2のハンド23に伝える逆転側ベルトと、を備え、この正転側ベルトと逆転側ベルトのそれぞれの端部を第1のプーリ17と第2のプーリ24に固定することによって、アーム1の回転に伴い第1のハンド22および第2のハンド23を回転させるようにしている。
このように構成することにより、ベルト25と第1のプーリ17および第2のプーリ24との間で滑り現象などを生じることはなく、高い位置再現性を確保することが可能となる。
【0030】
なお、図示を省略しているが、ベルト25に換えてワイヤなどの他の連係手段を用いて第1のプーリ17の回転を第2のプーリ24に伝達するようにするなどの変更は任意である。
【0031】
≪真空搬送装置の動作説明≫
つぎに、以上の基本構成からなる真空搬送装置26の動作を簡単に説明する。
大気側に置かれた回転駆動源2を回転させると、回転動力は磁性流体シール4を介して真空N側に配置されたアーム1の回転駆動軸5に伝達される。
回転駆動軸5が回転すると、それに伴いアーム支持部7が回転するため、アーム支持部7に取り付けられているアーム1がアーム支持部7の回転方向に応じて回転する。すると、アーム1両端の第1のハンド22の回転軸18および第2のハンド23の回転軸19にそれぞれに取り付けられている第2のプーリ24と、アーム支持軸7に回転フランジ8を介して取り付けられている第1のプーリ17に、端部がそれぞれ固定されて架け渡されているベルト25の一方が引っ張られ、第2のプーリ24を回転させる。このとき、ベルト25の他方側は緩み、第2のプーリ24に巻き取られることで、第1のハンド22および第2のハンド23は回転される。
これにより、第1のハンド22および第2のハンド23に載置保持されている半導体ウェハ21(検査済ウェハ27および未検査ウェハ28)などの試料を搬送することができる(後記の図4参照)。
【0032】
そして、大気M側に置かれた上下駆動源10を回転させると、磁性流体シール4を介して真空N側に配置されているボールネジ11に伝達される。
ボールネジ11が回転すると、それに伴いガイドベース13に直動ガイド部材16を介して上下移動可能に支持されているプーリベース15がボールネジ11の回転方向に応じて上下移動することで、プーリベース15に取り付けられている第1のプーリ17、この第1のプーリ17に取り付けられている回転フランジ8、この回転フランジ8と回転方向が自由で、上下方向に拘束された状態で支持されているアーム支持部7、このアーム支持部7に取り付けられているアーム1、このアーム1の両端に回転可能に支持されている第1のハンド22および第2のハンド23も上下に移動する。
これにより、検査済ウェハ27および未検査ウェハ28などの試料を上げたり、下げたりする上下移動が可能になる(後記の図8および図9参照)。
【0033】
≪真空搬送装置のウェハ交換シーケンスの説明≫
図4は、第1の発明に係る真空搬送装置におけるウェハ交換シーケンスの一例を示す図である。
次に、本実施形態の真空搬送装置26のウェハ交換シーケンスについて、図4を参照しながら説明する。なお、ここでは半導体ウェハ21を、検査済ウェハ27と未検査ウェハ28とに表現を変えて説明する。また、後記する図7、図8および図9をも参照する。
動作を開始する前においてアーム1は、通常、回転角度約90度の状態で停止している。この状態は、アーム1上に、第1のハンド22および第2のハンド23が重なった状態になり、この状態が最も占有面積が小さくなる。この状態を図4(a)に示す。また、アーム1は下降した状態になっている(後記の図8参照)。
【0034】
そして、試料交換位置、たとえば後記する真空試料室34での検査が終了した検査済ウェハ27と、後記する予備排気室38に供給された未検査ウェハ28との搬送交換を行うために、回転駆動源2によりアーム1を図4(b)に矢印Xで示す時計方向へ回転させる。すると、この回転に伴い動力伝達機構により伝達される動力により、第1のハンド22および第2のハンド23は、アーム1の回転とは逆方向の反時計方向へ回転する。
【0035】
そして、継続するアーム1の回転により、ウェハ載置位置までアーム1を回転させ、第1のハンド22を未検査ウェハ28の下に、第2のハンド23を検査済ウェハ27の下に入れる(図8参照)。その後、上下駆動源10によりアーム1を上昇させ、第1のハンド22に未検査ウェハ28を、第2のハンド23に検査済ウェハ27をそれぞれ載置保持させる(図4(c)の状態および図9参照)。このとき、第1のハンド22と第2のハンド23は上下方向に離間して配置されているため、まず、第2のハンド23に検査済ウェハ27が載置保持され、その後に第1のハンド22に未検査ウェハ28が載置保持される。
【0036】
つぎに、未検査ウェハ28と検査済ウェハ27を搬送交換するため、回転駆動源2によりアーム1を図4(d)に矢印Yで示す反時計方向に回転させる。すると、この回転に伴い未検査ウェハ28を載置保持する第1のハンド22および検査済ウェハ27を載置保持する第2のハンドは、アーム1の回転とは逆方向の時計方向へ回転する。アームが90度の状態で未検査ウェハ28と検査済ウェハ27が上下重なり合う。この状態を図4(e)に示す。さらに、継続するアーム1の反時計方向の回転により、未検査ウェハ28と検査済ウェハ27とはそれぞれの搬送方向に向けられる。この状態を図4(f)に示す。
【0037】
そして、図7に示されているように、ウェハ載置位置(試料ステージ35と予備排気室38)までアーム1を回転させたら、上下駆動源10によりアーム1を下降させて未検査ウェハ28と検査済ウェハ27をそれぞれの場所に載置する。このとき、第1のハンド22と第2のハンド23は上下方向に離間して支持されているため、まず、第2のハンド23に載置された検査済ウェハ27が離れ、次に、第1のハンド22に載置保持されている未検査ウェハ28が離れ、それぞれの場所に載置されることにより、未検査ウェハ28と検査済ウェハ27とは完全に入れ替えられる。この状態を図4(g)に示す。
【0038】
つぎに、回転駆動源2によりアーム1を時計方向に回転させる。この状態を図4(h)に示す。さらに、アーム1を時計方向に継続して回転させ、アーム1の回転角度が約90度の状態で停止させることで、ウェハ交換シーケンスが終了となる。この状態を図4(i)に示す。
以後は、図4(a)の状態から前記した動作順によりシーケンスは繰り返される。
【0039】
このように、アーム1の回転、上下動作の2つの動作を組み合わ制御することにより、短時間で半導体ウェハ21の搬送と受け渡し交換を可能にする。
【0040】
本発明の真空搬送装置26を用いて搬送した場合、半導体ウェハ21の中心は直線的に移動するが、アーム1の回転角度に伴い、Vノッチなども同時に回転することとなる。そのため、半導体ウェハ21を供給する際には、あらかじめその回転角度分を見越して供給すれば全く問題にはならない。
【0041】
以上のように本実施形態の真空搬送装置26によれば、大気M側に置かれた回転と上下との2つの駆動源2,10によって真空N側に回転および上下動作が可能に支持されるアーム1の両端に、第1のハンド22と第2のハンド23とをそれぞれ回転可能に支持させるとともに、動力伝達機構の第1のプーリ17、第2のプーリ24およびベルト25によって第1のハンド22と第2のハンド23がアーム1の回転に伴って回転するように構成したことで、アーム1の回転および上下動作させるそれぞれの駆動源2,10を制御するだけで、第1のハンド22と第2のハンド23とにそれぞれ載置された半導体ウェハ21などの試料の搬送とその受け渡し交換が同時に行うことができる。
これにより、半導体検査装置などに適用した場合には後記する真空試料室34からの検査済ウェハ27の搬出、そして予備排気室38から真空試料室34への未検査ウェハ28の搬入受け渡し交換が同時に行うことができ、搬送時間を大幅に短縮することができることから、スループットの向上が図られる。
また、従来装置のように、リフトピンなどにより半導体ウェハ21を上げ下げするための昇降駆動部などを必要とせずに、第1のハンド22と第2のハンド23とを両端に回転可能に支持させたアーム1の回転と上下動作の制御のみによって、検査済ウェハ27の搬出と未検査ウェハ28の搬入とを同時に行うことができることから、塵や埃などの異物の発生よる汚染の原因を低減することができる。
【0042】
また、多関節アーム方式の従来装置のように多くの関節駆動源やその動力伝達機構を必要とせず、検査済ウェハ27の搬出と未検査ウェハ28の搬入を同時に行うことができることで、従来装置に比べて、装置の簡素化が期待できる。それにより、故障などを抑えて品質の向上などを図ることができるとともに、可動部が少なくなった分、汚染の原因になる塵や埃などの異物の発生を低減することができる。
【0043】
また、アーム1の回転駆動軸5から第1のハンド22の回転軸18およびアーム1の回転駆動軸5から第2のハンド23の回転軸19までの軸間と、第1のハンド22の回転軸18から第1のハンド試料中心載置位置P3および第2のハンド23の回転軸19から第2のハンド23の試料中心載置位置P4との距離を等しく設定して、検査済ウェハ27および未検査ウェハ28の搬送を直線的に行うことができるようにしたことで、真空試料室34と予備排気室38との連絡するウェハ搬送用の開口52面積を小さくすることができる(後記の図7および図8など参照)。また、ウェハ交換時に真空搬送装置26に作用する負荷は、常にアーム1の回転駆動軸5の軸線対象に作用し偏荷重が作用しないため装置全体の小型化が可能になるなどの効果を期待することができる。
【0044】
[アームの上下駆動源の他の実施形態の説明]
図5は、アームを上下動作させる上下駆動源の他の実施形態を示す真空搬送装置の縦断面図である。
なお、斯かる実施形態においてはアーム1を上下動作させる上下駆動源の構成形態が異なるのみで、他の構成部分においては前記した実施形態と基本的に同じことから、同じ構成部分に同じ符号を用いることで重複説明は省略する。
【0045】
図5に示されているように、アーム1を上下動作させるエアーシリンダ42を大気M側に配置し、電磁弁43により制御された圧縮空気をエアーシリンダ42に送り、エアーシリンダ42の動力を上下方向に伸縮可能な真空ベローズ44を介して真空N側に導入させてプーリベース15を上下方向に移動させるようにしている。
このように、上下駆動源としてエアーシリンダ42を使用することにより、機構部品を大幅に削減でき、装置の小型化、コスト削減が期待できる。
【0046】
[動力伝達機構の他の実施形態の説明]
図6は、動力伝達機構の他の実施形態を示す概略斜視図である。
なお、斯かる実施形態においては動力伝達機構の構成形態が異なるのみで、他の構成部分においては前記した実施形態と基本的に同じことから、同じ構成部分に同じ符号を用いることで重複説明は省略する。
【0047】
図6に示されているように、1本の連続したスチールなどからなるベルト50が、第1のプーリ17からそれぞれの第2のプーリ24に掛け渡されており、このベルト50に張力を与えるテンション機構を備えて構成している。
このテンション機構は、第1のプーリ17および第2のプーリ24の間にテンションプーリ45を配している。このテンションプーリ45はプッシュアーム46の一端に回転自由に支持され、プッシュアーム46はプッシュアーム回転軸47により回転可能に支持されている。
そして、プッシュアーム46の他端には弾性部材である押しバネ48の一端が取り付けられており、この押しバネ48の他端はプッシュアームベース49に支持されて、ベルト50に張力を与えるように構成されている。ここで、押しバネ48によってベルト50に与えられる張力は、第1のハンド22および第2のハンド23の起動トルクに対して十分な値となるように設定し構成することが望ましい。
このように構成することにより、ベルト50には常に一定の張力を与えることができ、ベルト50と第1のプーリ17および第2のプーリ24での回転位置ズレなどが生じることがなくなる。
【0048】
なお、図示を省略しているが、ベルト50の内側全周に多数の凸凹を連続させて形成し、この凸凹と第1のプーリ17および第2のプーリ24に形成した凸凹と噛み合うようにして掛け渡す構成形態にしてもよい。また、他の動力伝達機構として歯車を複数用いる構成形態としてもよい。
【0049】
以上のように構成された第1の発明に係る真空搬送装置26は、例えば半導体ウェハ21など検査試料を真空試料室34内に搬入し、減圧雰囲気下で荷電粒子線を走査することにより取得される画像などからライン幅、スルーホール径の測定などの検査処理が行なわれる荷電粒子線検査装置などに適用される。
【0050】
≪荷電粒子線検査装置の説明≫
図7は、第1の発明の真空搬送装置を備えた荷電粒子線検査装置の一実施例を示す斜視図であり、図8および図9は、同検査装置の一部を示した拡大断面図である。
ここでは、荷電粒子線検査装置の代表的な実施形態として電子線を用いた半導体検査装置の例を挙げて説明する。
【0051】
≪半導体検査装置の説明≫
図7に示されているように、半導体検査装置は、未検査ウェハ28を特定の位置まで移動する試料ステージ35を内部に備える真空試料室34上に、電子光学系29を備えており、この電子光学系29からの電子線の照射によって発生する二次粒子(二次電子)を検出する二次粒子検出器37を電子光学系29の鏡体31に備えている。そして、真空試料室34とゲートバルブ39を介して開閉可能に連通させた予備排気室38が真空試料室34に隣接させて備えており、さらに、予備排気室38と真空試料室34との間で検査済ウェハ27と未検査ウェハ28との受け渡し交換を行うために、真空試料室34内に、第1の発明において説明した真空搬送装置26を備えて構成されている。
ここで、未検査ウェハ28を特定の位置まで移動する試料ステージ35のその特定位置とは、電子光学系29からの電子線の走査範囲を意味する。つまり、電子光学系29の真下に位置する真空試料室34の内部位置のことである。
【0052】
≪電子光学系の説明≫
電子光学系29は、図7に示されているように、真空試料室34に連通された状態で該真空試料室34上に設けられる鏡体31の最上部に電子銃30を備え、この電子銃30から照射される電子線を真空試料室34内の試料ステージ35に真空搬送装置26により搬入載置された未検査ウェハ28上に細く収束させる収束レンズ32、対物レンズ33などの電子レンズを鏡体31に備えて構成されている。
電子線は、真空試料室34内の試料ステージ35に前記した第1の発明の真空搬送装置26により搬入載置された未検査ウェハ28上に細く収束されている。
【0053】
電子線は、偏向器36により一方向または二次元的に高精度で未検査ウェハ28上を走査される構造となっており、この電子線の走査範囲は、小さいため未検査ウェハ28を試料ステージ35により前記走査範囲位置まで移動させて未検査ウェハ28に電子線を照射するようになっている。そして、未検査ウェハ28からの二次粒子は二次粒子検出器37で検出され、それによって得られた画像からライン幅の測長などの検査が行なわれるようになっている。
【0054】
≪真空試料室の説明≫
図7、図8および図9に示されているように、真空試料室34内に、前記した第1の発明に係る真空搬送装置26が配設されており、未検査ウェハ28と検査済ウェハ27の搬送受け渡し交換を行うようになっている。そして、真空試料室34に隣接させて真空搬送装置26のみを配設させるための設置スペース51が設けられている。
【0055】
また、真空試料室34には、図7、図8および図9に示されているように、予備排気室38が前記の設置スペース51を介して隣接して設けられており、この予備排気室38と真空試料室34との間にはウェハ搬送用の開口52が開けられている。この開口52にはゲートバルブ39が開閉可能に取り付けられている。
このように構成されていることにより、ゲートバルブ39による開口52の閉鎖によって真空試料室34を大気開放状態にすることなく、予備排気室38に備えられているゲートバルブ40を開いて予備排気室38のみを大気開放にした状態で、該予備排気室38に対する未検査ウェハ28の搬入、そして、検査済ウェハ27の搬出を可能にしている。
【0056】
≪予備排気室の説明≫
予備排気室38には、図7、図8および図9に示されているように、未検査ウェハ28を搬入、そして、検査済ウェハ27を搬出するための出し入れ用の開口53が開けられており、この開口53にはゲートバルブ40が取り付けられている。そして、この予備排気室38の底部には、未検査ウェハ28および検査済ウェハ27を受け渡し交換する際、真空搬送装置26との干渉を避けるために必要最低限の深さで適宜の開口形状を有する掘り込み54が設けられている。つまり、真空搬送装置26の第1のハンド22および第2のハンド23を掘り込み54に入り込ませることで、未検査ウェハ28を上昇により受け取ったり、検査済ウェハ27を下降により予備排気室38に戻すようにしている。
【0057】
≪試料ステージの説明≫
試料ステージ35には、図7、図8および図9に示されているように、未検査ウェハ28および検査済ウェハ27を受け渡し交換する際、真空搬送装置26との干渉を避けるために、未検査ウェハ28および検査済ウェハ27を受け渡し交換する際、各ウェハ28,27を上下に移動させるリフトピン41が設けられている。
【0058】
なお、図示を省略しているが、リフトピン41を固定タイプのピンとし、試料ステージ35側を上下に移動させるようにするもよく、また、予備排気室38と同様、試料ステージ35にも真空搬送装置26との干渉を避けるために必要最低限の掘り込みを備えるとよい。
また、図示を省略しているが、真空試料室34と予備排気室38は、排気手段によって減圧真空雰囲気に吸引排気されるようにしている。
【0059】
以上のような構成にすることにより、予備排気室38は、半導体ウェハ21(未検査ウェハ28および検査済ウェハ27)とゲートバルブ39が収まる容積と搬送に必要な容積のみとなり、予備排気室38の容積を最小限にすることが可能になる。そのため、予備排気室38の排気時間を大幅に短縮することが可能になり、スループットが向上する。また、予備排気室38に駆動部が存在しないので、汚染の原因になる塵や埃などの異物の発生が少なくウェハ汚染の可能性も大幅に削減することができる。
【0060】
≪半導体検査装置のウェハ交換シーケンスの説明≫
次に、本実施形態における半導体検査装置のウェハ交換シーケンスについて、前記の図4、図8および図9を参照しながら説明する。
通常、半導体検査装置はライン検査のため、真空試料室34内には未検査ウェハ28があり電子線を用いて検査している場合が多い。この時、ゲートバルブ39は閉じられた状態であり、真空搬送装置26は図4(a)の状態にある。この間にゲートバルブ40が開けられ、外部から予備排気室38に次の未検査ウェハ28が供給される。その後、ゲートバルブ40は閉じられ予備排気室38は不図示の排気手段によって所定の減圧雰囲気まで吸引排気される。
【0061】
そして、真空試料室34内における未検査ウェハ28の検査が終了すると、試料ステージ35が試料交換位置へ移動し、リフトピン41が検査済ウェハ27を上昇させる。検査済ウェハが上昇されて試料ステージ35上から離間されると、次に、ゲートバルブ39によって開口52が開き、真空搬送装置26が前記した図4(a)〜(i)の順で動作せしめて未検査ウェハ28と検査済ウェハ27との搬送受け渡し交換が行なわれる。
未検査ウェハ28が試料ステージ35上に受け渡し載置され、検査済ウェハ27が予備排気室38に戻されて、真空搬送装置26が図4(i)の状態なると、ゲートバルブ39によって開口52が閉じられ、予備排気室38が大気圧になるまで窒素ガスが供給される。予備排気室38が大気圧に戻されると、ゲートバルブ40によって閉じられていた開口53が開けられ、検査済ウェハ27は搬出回収され、予備排気室38には新しい未検査ウェハ28が搬入供給される。
以後、前記した動作が繰り返されることで、検査済ウェハ27の搬出と未検査ウェハ28の搬入が行なわれるものである。
【0062】
以上のように本実施形態の半導体検査装置(荷電粒子線検査装置)によれば、第1の発明の真空搬送装置26を、予備排気室38ではなく真空試料室34に隣接させて設けた設置スペース51内に配設したことにより、予備排気室38は検査済ウェハ27および未検査ウェハ28などの試料が収まる程度の容積と試料の搬送に必要な容積のみに抑えることができ、それにより、予備排気室38の容積を必要最小限にすることが可能になる。よって、省フットプリント化(省フットスペース化)を実現することができる。しかも、半導体ウェハ21の搬出回収、そして搬入供給後における予備排気室38の排気時間を大幅に短縮することができるので、スループットが向上されて半導体ウェハなどの生産コストの低減をも期待できる。
また、予備排気室38にリフトピンなどの昇降駆動部が存在しないので、汚染の原因となる塵や埃などの異物の発生を抑えたクリーンな予備排気室38を実現することができる。それによって、異物の付着などによる半導体ウェハの品質の低下をも大幅に削減することができる。
【0063】
なお、本実施形態の具体的な構成は、前記した各実施形態に限られるものではなく、請求項1〜請求項6に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計において変更などがあっても本発明に含まれるものである。
たとえば、真空試料室34内での検査時間が予備排気室38の排気時間よりも短い場合、試料ステージ35は試料交換位置で予備排気室38が排気されるまで待つ必要があり、スループットの低下を招く問題がある。この場合は、真空試料室34に複数の予備排気室38と真空搬送装置26を備えるなどが挙げられる。
また、前記した実施形態においては、半導体ウェハの搬送と受け渡し交換の例について説明したが、ウェハ以外のたとえばマスク基盤などの他の試料の場合にも適用することができる。また、試料の搬送のみならず試料保持機を搬送する搬送手段としても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の発明に係る真空搬送装置の実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】同真空搬送装置の縦断面図である。
【図3】同真空搬送装置における動力伝達機構の実施形態の一例を示す要部の拡大斜視図である。
【図4】同真空搬送装置におけるウェハ交換シーケンスの動作の一例を示す図である。
【図5】第1の発明に係る真空搬送装置の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】動力伝達機構の他の実施形態を示す要部の拡大斜視図である。
【図7】第2の発明に係る荷電粒子線検査装置の実施形態の一例を示す斜視図で、一部を破断して示す。
【図8】同荷電粒子線検査装置の一部を拡大して示す縦断面図であり、真空搬送装置のアームを下降させた状態を示す。
【図9】同荷電粒子線検査装置の一部を拡大して示す縦断面図であり、真空搬送装置のアームを上昇させた状態を示す。
【符号の説明】
【0065】
1 アーム
2,10 駆動源
17 第1のプーリ
21 半導体ウェハ(試料)
22 第1のハンド
23 第2のハンド
24 第2のプーリ
25,50 ベルト
26 真空搬送装置
27 検査済ウェハ(試料)
28 未検査ウェハ(試料)
29 電子光学系(荷電粒子線光学系)
30 電子銃
31 鏡体
32 収束レンズ
33 対物レンズ
34 真空試料室
35 試料ステージ
36 偏向器
37 二次粒子検出器
38 予備排気室
42 エアーシリンダ(上下駆動源)
44 真空ベローズ(上下駆動源)
45 テンションプーリ
46 プッシュアーム
47 プッシュアーム回転軸
48 押しバネ(弾性部材)
49 プッシュアームベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転と上下の駆動源と、
前記回転と上下の駆動源によって回転動作と上下動作が可能に支持されるアームと、
前記アームの一端に回転可能に支持されて、前記アームの回転に伴って回転しその上に試料が載置される第1のハンドと、
前記アームの他端に回転可能に支持されて、前記アームの回転に伴って回転しその上に試料が載置される第2のハンドと、
前記アームの回転を、該アームの回転駆動軸から前記第1のハンドおよび前記第2のハンドのそれぞれの回転軸に伝達する動力伝達機構と、を備えてなり、
前記第1のハンドと前記第2のハンドとは互いに上下方向に離間されて支持されていることを特徴とする真空搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の前記アームと前記第1のハンドおよび前記アームと前記第2のハンドとの回転比は1:2の関係に設定され、
かつ、前記アームの回転駆動軸から前記第1のハンドの回転軸および前記第2のハンドの回転軸までの軸間と、前記第1のハンドの回転軸と前記第1のハンドの試料載置中心位置および前記第2のハンドの回転軸と第2のハンドの試料載置中心位置との距離が等しく設定されており、前記第1のハンドと第2のハンドとにそれぞれ載置された試料が直線的に搬送されるように構成されていることを特徴としている真空搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の動力伝達機構は、前記アームの回転駆動軸に備えられる第1のプーリと、前記第1のハンドと第2のハンドとの回転軸にそれぞれ備えられる第2のプーリと、ベルトと、で構成され、
前記ベルトの両端は、前記第1のプーリと前記第2のプーリにそれぞれ固定されていることを特徴とする真空搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の動力伝達機構は、前記アームの回転駆動軸に備えられる第1のプーリと、前記第1のハンドと第2のハンドとの回転軸にそれぞれ備えられる第2のプーリと、前記第1のプーリと前記第2のプーリとに掛け渡されるベルトと、前記アームにそれぞれ装着されて前記ベルトに張力を与えるテンション機構と、で構成され、
前記テンション機構は、テンションプーリと、このテンションプーリを一端に回転可能に支持するプッシュアームと、このプッシュアームの他端側を回転可能に支持するプッシュアーム回転軸と、前記プッシュアームを弾圧する弾性部材と、を備えていることを特徴とする真空搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の上下駆動源が、エアーシリンダと、このエアーシリンダの動力を真空内に導入させる真空ベローズと、を備えていることを特徴とする真空搬送装置。
【請求項6】
荷電粒子線を照射し、荷電粒子線を偏向後、試料上に収束する機能を有する荷電粒子線光学系と、
前記荷電粒子線の照射によって発生する二次粒子を検出する二次粒子検出器と、
前記試料が搬入される真空試料室と、
前記真空試料室に前記試料を搬入・搬出するように隣接して備えられる予備排気室と、
前記真空試料室内で搬入載せられた前記試料を特定の位置にまで移動させる試料ステージと、を有する荷電粒子線検査装置であって、
前記予備排気室と真空試料室との間で、前記試料の搬送受け渡しを行なうために、前記真空試料室に、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の真空搬送装置を設けて構成したことを特徴とする荷電粒子線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−42799(P2007−42799A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224270(P2005−224270)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】