説明

膜パターンの形成方法、デバイス、電気光学装置、及び電子機器

【課題】 幅の異なる幾つかの領域を有するパターン形成領域に機能液を配置する場合等において、形成される膜パターン間での膜厚さを無くした該膜パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】 基板48上に設けられたバンク34によって区画されるパターン形成領域55,56に、機能液を配置して膜パターンを形成する方法であって、基板48上に、その断面形状が基板側に向けて漸次拡径する逆テーパ状のバンク34を形成するバンク形成工程と、形成したバンクに対して撥液化処理を施す撥液化処理工程と、撥液化処理後、バンク34に区画されたパターン形成領域55,56に機能液を配置する機能液配置工程と、配置した機能液を乾燥させる工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜パターンの形成方法、デバイス、電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路又は集積回路等に使用される所定パターンからなる配線等を形成する方法としては、例えば、フォトリソグラフィ法が広く利用されている。このフォトリソグラフィ法は、真空装置、露光装置等の大規模な設備が必要となる。そして、上記装置では所定パターンからなる配線等を形成するために、複雑な工程を必要とし、また材料使用効率も数%程度でそのほとんどを廃棄せざるを得ず、製造コストが高いという課題がある。
これに対して、液体吐出ヘッドから液体材料を液滴状に吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法を用いて基板上に所定パターンからなる配線等を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このインクジェット法では、パターン用の液体材料(機能液)を基板に直接パターン配置し、その後熱処理やレーザー照射を行って所望のパターンを形成する。この方法によれば、フォトリソグラフィ工程が不要となり、プロセスが大幅に簡略化されるとともに、パターン位置に原材料を直接配置することができるので、使用量も削減できるというメリットがある。
【0003】
ところで、近年、デバイスを構成する回路の高密度化が進み、例えば配線についてもさらなる微細化、細線化が要求されている。しかしながら、上述した液滴吐出法を用いたパターン形成方法では、吐出した液滴が着弾後に基板上で広がるため、微細なパターンを安定的に形成するのが困難であった。特に、パターンを導電膜とする場合には、上述した液滴の広がりによって、液だまり(バルジ)が生じ、それが断線や短絡等の不具合の発生原因となるおそれがあった。そこで、幅の広い配線形成領域と、この配線形成領域に接続して形成される微細な配線形成領域と、を備えたバンク構造を用いた技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この技術は、幅の広い配線形成領域に機能液を吐出し、毛細管現象により微細な配線形成領域に機能液を流し込ませて、微細な配線パターンを形成するようになっている。
【0004】
ここで、微細な配線形成領域の幅と機能液が吐出される配線形成領域の幅との差が大きくなると、通常、機能液は幅の広い配線形成領域を区画するバンクに沿って流れるため、微細な配線形成領域への毛細管現象による機能液の流れ込み量が不足してしまう。すると、形成された微細な配線パターンの膜厚は、他の配線パターンに比べて薄くなってしまう問題がある。
そこで、例えば幅の広い配線形成領域の一部分の幅を狭め、この配線形成領域から微細な配線形成領域への機能液の流入量を増加させることで、微細な配線パターンの厚膜化を図る方法が考えられる。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【特許文献3】特開2005−12181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように配線形成領域(パターン形成領域)の一部の幅を狭めて、微細な配線形成領域(第1のパターン形成領域)に流れ込む機能液の量を増加させる場合、機能液の流れ込み量を適切に調節することが難しく、例えば微細な配線形成領域に機能液が多く流れ込みすぎると、微細な配線パターンは、他の配線パターンに比べて膜厚が厚くなり、微細な配線部分とその他の配線部分との間で膜厚の差が生じてしまう。
すると、例えばこの技術をゲート配線とこれに連続するゲート電極との形成に応用しようとした場合に、これらゲート配線とゲート電極との間で膜厚が異なってしまうことにより、安定したトランジスタ特性が得られ難くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、幅の異なる幾つかの領域を有するパターン形成領域に機能液を配置する場合等において、形成される膜パターン間での膜厚さを無くした、膜パターン形成方法、デバイス、電気光学装置、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の膜パターンの形成方法は、基板上に設けられたバンクによって区画されるパターン形成領域に、機能液を配置して膜パターンを形成する方法であって、基板上に、その断面形状が基板側に向けて漸次拡径する逆テーパ状のバンクを形成するバンク形成工程と、前記形成したバンクに対して撥液化処理を施す撥液化処理工程と、前記撥液化処理後、前記バンクに区画されたパターン形成領域に機能液を配置する機能液配置工程と、前記配置した機能液を乾燥させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
このような方法によると、逆テーパ状のバンクに対して撥液化処理を行っているため、当該バンクの表面に対してのみ選択的に撥液化を施すことが可能となる。つまり、漸次拡径する逆テーパ状のバンクは、そのテーパ形状の内面は影となるために撥液化処理が施されず、表面のみが撥液化されることとなるのである。その結果、機能液を配置する前において、バンクの表面は相対的に撥液性を示す一方、バンクの内側面(つまりパターン形成領域を区画するバンクの側面)は相対的に親液性を示すこととなる。したがって、当該バンクに囲まれたパターン形成領域に配置される機能液は、パターン形成領域の形状によらず、当該パターン形成領域内に好適に濡れ広がることとなり、ひいては均一な膜厚の膜パターンを形成することが可能となるのである。
【0009】
ここで、前記撥液化処理工程においては、前記バンクの上面に対して、前記基板の主面と垂直に交わる方向から撥液化処理を行うものとすることができる。この場合、バンクの上面に対する選択的処理を一層確実に行なうことができるようになる。
【0010】
また、前記撥液化処理工程においては、撥液化処理材を表面に有する原版部材を用い、該原版部材に具備された撥液化処理材と前記基板上の前記バンクの上面とを接触させることにより、前記撥液化処理材を前記バンクの上面の一部又は全部に転写させるものとすることができる。このような方法により、バンク上面を簡便に撥液化することが可能となる。
【0011】
また、前記撥液化処理工程においては、フッ素又はフルオロカーボンを含んだガスによりプラズマ処理を行うものとすることができる。本発明では、パターン形成領域を区画するバンクを逆テーパ状としているために、このようなプラズマ処理によっても、当該バンクの上面のみを選択的に撥液化することができる。
【0012】
また、前記バンク形成工程においては、形成されるバンクによって区画されるパターン形成領域の平面パターンについて、第1のパターン形成領域と、該第1のパターン形成領域に連通し、かつ該第1のパターン形成領域より幅が広い第2のパターン形成領域とを含むように、当該バンクを形成することができる。本発明のような撥液化処理を施したバンクを用いた場合、このように幅の異なる幾つかのパターン形成領域に対しても、各々において均一な膜厚の膜パターンを形成することができるようになる。
【0013】
次に、上記課題を解決するために、本発明のデバイスは、上記方法により得られた膜パターンを備えることを特徴とする。このようなデバイスは均一な膜厚の膜パターンを備えるものであるため、断線、短絡等が生じ難く、電気的特性に優れたものとなる。
【0014】
また、本発明のデバイスにおいては、前記第2のパターン形成領域に形成された膜パターンをゲート配線として、前記第1のパターン形成領域に形成された膜パターンをゲート電極とすることができる。このようにすれば、上述した膜パターンの形成方法を用いることにより、ゲート配線とゲート電極との膜厚を略等しくすることができる。これにより、トランジスタ特性を安定させることができ、このトランジスタを備えたデバイスは信頼性が高いものとなる。
【0015】
また、前記デバイスにおいては、前記第2のパターン形成領域に形成された膜パターンをソース配線として、前記第1のパターン形成領域に形成された膜パターンをソース電極とすることができる。このようにすれば、上述した膜パターンの形成方法を用いることにより、ソース配線とソース電極との膜厚を略等しくすることができる。これにより、トランジスタ特性を安定させることができ、このトランジスタを備えたデバイスは信頼性が高いものとなる。
【0016】
本発明の電気光学装置は、前記デバイスを備えることを特徴とする。
本発明の電気光学装置によれば、高精度な電気的特性等を有するデバイスを備えることから、品質や性能の向上を図った電気光学装置を実現することができる。
ここで、本発明において、電気光学装置とは、電界により物質の屈折率が変化して光の透過率を変化させる電気光学効果を有するものの他、電気エネルギーを光学エネルギに変換するもの等も含んで総称している。具体的には、電気光学物質として液晶を用いる液晶表示装置、電気光学物質として有機EL(Electro-Luminescence)を用いる有機EL装置、無機ELを用いる無機EL装置、電気光学物質としてプラズマ用ガスを用いるプラズマディスプレイ装置等がある。さらには、電気泳動ディスプレイ装置(EPD:Electrophoretic Display)、フィールドエミッションディスプレイ装置(FED:電界放出表示装置:Field Emission Display)等がある。
【0017】
本発明の電子機器は、前記電気光学装置を備えることを特徴とする。
本発明の電子機器によれば、品質や性能の向上が図られた電気光学装置を備えることで、信頼性の高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではない。また、以下の説明に用いる各図面では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を適宜変更している。
【0019】
(液滴吐出装置)
まず、本実施形態において、膜パターンを形成するために用いる液滴吐出装置について図1を参照して説明する。
図1は、本発明の膜パターンの形成方法に用いられる装置の一例として、液滴吐出法によって基板上に液体材料を配置する液滴吐出装置(インクジェット装置)IJの概略構成を示す斜視図である。
【0020】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
ステージ7は、この液滴吐出装置IJによりインク(液体材料)を設けられる基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0021】
液滴吐出ヘッド1は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とY軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面にY軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して上述した導電性微粒子を含むインクが吐出される。
【0022】
X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0023】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ2に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ3にステージ7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構8は、液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものである。クリーニング機構8には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構8は、Y軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0024】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、X軸方向を走査方向、X軸方向と直交するY軸方向を非走査方向とする。従って、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルは、非走査方向であるY軸方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド1は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド1の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド1の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することができる。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0025】
図2は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図2において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。
ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み速度が制御される。
なお、液体材料の吐出原理としては、上述した圧電体素子であるピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式の他にも、液体材料を加熱し発生した泡(バブル)により液体材料を吐出させるバブル方式等、公知の様々な技術を適用することができる。このうち、上述したピエゾ方式では、液体材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。
【0026】
ここで、機能液Lは、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液や有機銀化合物や酸化銀ナノ粒子を溶媒(分散媒)に分散した溶液からなるものである。
導電性微粒子としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、後述する液体吐出ヘッドのノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0027】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0028】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0029】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0030】
(バンク構造体)
次に、本実施形態の膜パターンの形成方法に用いる、機能液(インク)を配置するバンク構造体について図3(a)、(b)を参照して説明する。
図3(a)は、バンク構造体1の概略構成を示す平面図である。また、図3(b)は、図3(a)に示すA−A´線矢視における前記バンク構造体1の側断面図である。
本実施形態のバンク構造体1は、図3(a),(b)に示すように、基板48上に所定パターンのバンク34が形成されていている。そして、このバンク34により、機能液を配置するための領域となるパターン形成領域Pが区画されている。なお、本実施形態のパターン形成領域Pは、後述するTFTを構成するゲート配線、及びゲート電極を形成するための基板48上に設けられた領域である。
【0031】
前記パターン形成領域Pは、ゲート配線(膜パターン)に対応する溝状の第1パターン形成領域55と、この第1パターン形成領域55に接続し、ゲート電極(膜パターン)に対応する第2パターン形成領域56とから構成されている。ここで、対応するとは、前記第1パターン形成領域55、又は前記第2パターン形成領域56内に配置された機能液を硬化処理等を施すことで、それぞれがゲート配線、又はゲート電極となることを意味している。
【0032】
具体的には、図3(a)に示すように、第1パターン形成領域55は、図3(a)中、Y軸方向に延在して形成されている。そして、第2パターン形成領域56は、第1パターン形成領域55に対して略垂直方向(図3(a)中、X軸方向)に形成され、かつ前記第1パターン形成領域55に連通(接続)して設けられている。
また、前記第1パターン形成領域55の幅は、前記第2パターン形成領域56の幅よりも広く形成されている。本実施形態では、第1パターン形成領域55の幅は、前記液滴吐出装置IJから吐出される機能液の飛翔径と略等しいか、あるいは、僅かに大きくなるように形成されている。このようなバンク構造1を採用することにより、前記第1パターン形成領域55に吐出した機能液を毛細管現象を利用して、微細なパターンである第2パターン形成領域56に流入させることができるようになっている。
なお、各パターン形成領域55,56における幅とは、各パターン形成領域55,56が延在する方向(X,Y)に対して直交する方向の各パターン形成領域55,56の端部間の長さを表している。ここで、図3(a)に示すように、前記第1パターン形成領域55の幅をH1、前記第2パターン形成領域56の幅をH2とする。
【0033】
一方、バンク構造体1の断面形状(A−A’断面)は、図3(b)に示すような構成を有している。つまり、基板48上に形成されたバンク34は、その断面形状が基板48側に向けて漸次拡径する逆テーパ形状を呈している。そして、バンク34のうち上面34bのみが選択的に撥液化処理されて撥液性を有する一方、バンク34の側面34a(つまり各パターン形成領域55,56を取り囲むバンク34の内側)は上面34bに比して親液性を有している。これにより、機能液がバンク34の上面34bに着弾した場合にも、当該上面34bは撥液性を有するため、各パターン形成領域55,56(主に第1パターン形成領域55)に当該機能液が流入し、当該パターン形成領域55,56内で機能液が好適に流動することとなる。
【0034】
なお、バンク構造体1において、バンク34を図9に示すように多層構造(図9では2層)にて構成することもできる。この場合、図9(a)に示すように、各層34c、34dに面一な逆テーパ形状としても良いし、図9(b)に示すように、下層34eは基板主面と垂直に立つ内面とする一方、上層34fを逆テーパ形状とするものとしても良い。
【0035】
(膜パターンの形成方法)
次に、バンク構造体1を形成した後、このバンク構造体1によって区画されたパターン形成領域Pに、膜パターンとしてゲート配線を形成する方法について説明する。
図4は、前記バンク構造体1の形成工程を順に示した側部断面図である。図4(a)〜(d)は、図3(a)のA−A´矢視における側断面に沿って第1パターン形成領域55、及び第2パターン形成領域56からなるパターン形成領域Pを形成する工程を示した図である。また、図5は、図4(a)〜(d)に示した製造工程において形成されたバンク構造1に、機能液を配置して膜パターン(ゲート配線)を形成する工程を説明する断面図である。
【0036】
(バンク材塗布工程)
まず、図4(a)に示すように、スピンコート法により、基板48の全面にバンク形成材料を塗布してバンク層35を形成する(乾燥条件、80℃、60秒)。前記バンク形成材料の塗布方法として、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等の各種方法を適用することが可能である。
また、基板48としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板等の各種材料を使用することができる。
また、バンク形成材料としては、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が用いられる。また、耐熱性等を考慮して、無機質の材料を含むものとすることもできる。無機質のバンク材料としては、例えばポリシラザン、ポリシロキサン、シロキサン系レジスト、ポリシラン系レジスト等の骨格にケイ素を含む高分子無機材料や感光性無機材料、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などが挙げられる。さらに、無機質のバンク材料として、例えばエアロゲル、多孔質シリカなどを用いてもよい。ポリシラザンと光酸発生材とを含む感光性ポリシラザン組成物のように感光性を有する材料とした場合には、レジストマスクが不要になるため好適である。
なお、前記基板48の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜等の下地層を形成してもよい。
【0037】
(露光・現像工程)
次に、図4(b)に示すように、基板48上に設けられたバンク層35に、露光装置(図示しない)からの光をマスクMを介して照射させることで、第1パターン形成領域55、第2パターン形成領域56を形成する。なお、以下のフォトリソグラフィによる現像処理に用いられている光化学反応としては、ネガ型のレジストを前提にしている。よって、光が照射されず、未露光部のバンク層35は、後述する現像工程により溶解し除去される。
次いで、図4(c)に示すように、露光されたバンク層35を、例えばTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)現像液で現像処理し、被露光部を選択的に除去する。
次に、基板48を一括露光することによって表面の架橋を進行させた後、基板48を焼成することによって、図4(d)に示すように、断面形状が逆テーパ状のバンク34が形成される。
【0038】
(撥液化処理工程)
露光・現像工程の後、形成されたバンク34の表面を、CFガス(その他、SF、CHF等のフッ素含有ガスでも可)を処理ガスとしたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によりバンク34の上面34bを撥液性にする(図4(e))。撥液化処理法としては、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理法(CFプラズマ処理法)を採用することができる。CFプラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50W〜1000W、4フッ化メタンガス流量が50ml/min〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5mm/sec〜1020mm/sec、基体温度が70℃〜90℃とされる。
【0039】
なお、上記処理ガスとしては、テトラフルオロメタンに限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。この場合、転写法も採用できる。つまり、図15に示すように、撥液化処理材71を表面に有する原版部材70を用い、該原版部材70に具備された撥液化処理材71とバンク34の上面とを接触させることにより、撥液化処理材71をバンク34の上面の一部又は全部に転写させ、撥液化処理を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態で行う撥液化処理は、バンク34の上面34bに対して、基板48の主面と垂直に交わる方向から処理を行うものとしている。このような処理方法により、逆テーパ状のマスク34に対して、当該マスク34の上面34bに選択的に撥液化処理を施し、当該マスク34の側面34aは撥液化されないものとなっている。
【0041】
なお、例えばフルオロアルキルシラン(FAS)を用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向される自己組織化膜を転写形成してもよい。この場合もバンク層35の表面に均一な撥液性が付与される。自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が形成される。そして、自己組織化膜が形成された基板(原版部材)を用い、バンクの上面と接触させることにより、自己組織化膜をバンクの上面の一部又は全部に転写させることができる。
【0042】
(機能液配置工程)
次に、上述した工程により得られたバンク構造1によって形成されたパターン形成領域Pに、前記液滴吐出装置IJを使用して機能液を配置(吐出)して、ゲート配線(膜パターン)を形成する工程について説明する。ところで、微細配線パターンである第2パターン形成領域56には、機能液Lを直接配置することが難しい。よって、第2パターン形成領域56への機能液Lの配置を、第1パターン形成領域55に配置した機能液Lを、上述したように毛細管現象により第2パターン形成領域56に流入させる方法により行うこととする。
【0043】
まず、図5(a)に示すように、液滴吐出装置IJにより、第1パターン形成領域55に配線パターン形成材料としての機能液Lを吐出する。液滴吐出装置IJによって第1パターン形成領域55に配置された機能液Lは、図5(b)及び(c)に示すように、第1パターン形成領域55内を濡れ広がる。なお、バンク34の上面34bに配置された機能液Lは、上面34bは撥液性を有するため、弾かれて第1パターン形成領域55に流入することとなる。
【0044】
また、バンク34の内面34aは上面34bに比して親液性を示すため、吐出された機能液Lがパターン形成領域Pの全域において好適に流動することとなり、図6(a)〜図6(b)に示すように、機能液Lは第1パターン形成領域55と第2パターン形成領域56との間で均一に拡がることとなる。
【0045】
(中間乾燥工程)
続いて、第1パターン形成領域55及び第2パターン形成領域56に機能液Lを配置した後、必要に応じて乾燥処理を行う。これにより、機能液Lの分散媒の除去及びパターンの膜厚を確保することができる。
【0046】
前記の乾燥処理としては、例えば、基板48を加熱する通常のホットプレート、電気炉、ランプアニールその他の各種方法により行うことが可能である。ここで、ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArCl等のエキシマレーザー等を光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。また、所望の膜厚にするために、中間乾燥工程後に必要に応じて機能液配置工程を繰り返しても良い。
【0047】
(焼成工程)
機能液Lを配置した後、機能液Lの導電性材料が例えば有機銀化合物の場合、導電性を得るために、熱処理を行い、有機銀化合物の有機分を除去し銀粒子を残留させる必要がある。そのため、機能液Lを配置した後の基板には熱処理や光処理を施すことが好ましい。
熱処理や光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、水素、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。熱処理や光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子や有機銀化合物の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。例えば、有機銀化合物の有機分を除去するためには、約200℃以上(ここでは、300℃で60分)で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
【0048】
以上の工程により機能液Lの導電性材料(有機銀化合物)である銀粒子が残留し、導電性膜に変換されることで、図6(c)に示すように、互いの膜厚差がほとんど無い、連続する導電膜パターン、すなわちゲート配線として機能する第1配線パターン40、及びゲート電極として機能する第2配線パターン41を得ることができる。このように、ゲート配線とゲート電極間での膜厚差を略無くなることで、トランジスタ特性を安定させることができる。
【0049】
(デバイス)
次に、本発明の膜パターンの形成方法により形成された膜パターンを備えるデバイスについて説明する。本実施形態においては、ゲート配線を備える画素(デバイス)及びその画素の形成方法について、図7及び図8を参照して説明する。
本実施形態においては、上述したバンク構造体及び膜パターンの形成方法を利用して、ボトムゲート型のTFT30のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極等を有する画素を形成する。なお、以下の説明においては、上述した図5、及び図6に示した膜パターン形成工程と同様の工程についての説明は省略する。また、上記実施形態に示す構成要素と共通の構成要素については同一の符号を付す。
【0050】
(画素の構造)
まず始めに、上述の膜パターンの形成方法によって形成された膜パターンを備える画素(デバイス)の構造について説明する。
図7は、本実施形態の画素構造250を示した図である。
図7に示すように、画素構造250は、基板48上に、ゲート配線40(第1配線パターン)と、このゲート配線40から延出して形成されるゲート電極41(第2配線パターン)と、ソース配線42と、このソース配線42から延出して形成されるソース電極43と、ドレイン電極44と、ドレイン電極44に電気的に接続される画素電極45とを備えている。ゲート配線40はX軸方向に延在して形成され、ソース配線42はゲート配線40と交差してY軸方向に延在して形成されている。そして、ゲート配線40とソース配線42との交差点の近傍にはスイッチング素子であるTFTが形成されている。このTFTがオン状態となることにより、TFTに接続される画素電極45に駆動電流が供給されるようになっている。
【0051】
ここで、図7に示すように、ゲート電極41の幅H2は、ゲート配線40の幅H1よりも狭く形成されている。例えば、ゲート電極41の幅H2は10μmであり、ゲート配線40の幅H1は20μmである。このゲート配線40、及びゲート電極41は、前述した実施形態により形成されたものである。
【0052】
また、ソース電極43の幅H5は、ソース配線42の幅H6よりも狭く形成されている。例えば、ソース電極43の幅H5は10μmであり、ソース配線42の幅H6は20μmである。本実施形態では、膜パターン形成方法を適用することで、微細パターンであるソース電極43に毛細管現象によって機能液を流入させて形成している。
【0053】
また、図7に示すように、ゲート配線40の一部には、配線幅が他の領域に比べて狭くなった絞り部57が設けられている。そして、この絞り部57上で、ゲート配線40と交差するソース配線42側にも同様な絞り部が設けられている。このように、ゲート配線40とソース配線42との交差部分において、それぞれの配線幅を狭く形成することで、この交差部分において容量が蓄積されるのを防止するようになっている。
【0054】
(画素の形成方法)
図8(a)〜(e)は、図7に示すC−C’線に沿った画素構造250の形成工程を示した断面図である。
図8(a)に示すように、上述した方法によって形成されたゲート電極41を含むバンク34面上に、プラズマCVD法等により、ゲート絶縁膜39を成膜する。ここで、ゲート絶縁膜39は窒化シリコンからなる。次に、ゲート絶縁膜39上に活性層を成膜する。続けて、フォトリソグラフィー処理及びエッチング処理により、図8(a)に示すように所定形状にパターニングしてアモルファスシリコン膜46を形成する。
次に、アモルファスシリコン膜46上にコンタクト層47を成膜する。続けて、フォトリソグラフィ処理及びエッチング処理により、図8(a)に示すように所定形状にパターニングする。なお、コンタクト層47はn+型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。
【0055】
次に、図8(b)に示すように、スピンコート法等により、コンタクト層47上を含む全面にバンク材を塗布する。ここで、バンク材を構成する材料としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があるため、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料が好適に用いられる。より好ましくは、無機骨格を有するポリシラザンが焼成工程における耐熱性、透過率という点で用いられる。そして、このバンク材に撥液性を持たせるためにCFプラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す。また、このような処理の代わりに、バンクの素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておくことも好ましい。この場合には、CFプラズマ処理等を省略することができる。
【0056】
次に、1画素ピッチの1/20〜1/10となるソース・ドレイン電極用バンク34dを形成する。具体的には、まず、フォトリソグラフィ処理により、ゲート絶縁膜39の上面に塗布したバンク材34のソース電極43に対応する位置にソース電極用形成領域43aを形成し、同様にドレイン電極44に対応する位置にドレイン電極用形成領域44aを形成する。このとき、ソース電極用形成領域43aを区画するバンクにおける内側面部の高さは、前記第1実施形態と同様に、ソース配線42に対応するソース配線用形成領域を区画するバンクの内側面の高さよりも低くなっている(図示省略)。
よって、前記ソース配線42、及びソース電極43との間での膜厚差を防止するようになっている。
【0057】
次に、ソース/ドレイン電極用バンク34dに形成したソース電極用形成領域43a及びドレイン電極用形成領域44aに機能液Lを配置して、ソース電極43及びドレイン電極44を形成する。具体的には、まず、液滴吐出装置IJによって、ソース配線用形成領域に機能液Lを配置する(図示省略)。ソース電極用形成領域43aの幅H5は、図7に示すように、ソース配線用溝部の幅H6よりも狭く形成されている。そのため、ソース配線用溝部に配置した機能液Lは、ソース配線に設けられた絞り部によって一次的に堰き止められ、毛細管現象によりソース電極用形成領域43aに流入する。このとき、本発明の膜パターン形成方法を採用することで、ソース電極43とソース配線42との間での膜厚差を略無くすことができる。これにより、図8(c)に示すように、ソース電極43が形成される。また、ドレイン電極用形成領域に機能液を吐出してドレイン電極44を形成する(図示せず)。
【0058】
次に、図8(c)に示すように、ソース電極43及びドレイン電極44を形成した後、ソース・ドレイン電極用バンク34dを除去する。そして、コンタクト層47上に残ったソース電極43及びドレイン電極44の各々をマスクとして、ソース電極43及びドレイン電極44間に形成されているコンタクト層47のn+型シリコン膜をエッチングする。このエッチング処理により、ソース電極43及びドレイン電極44間に形成されているコンタクト層47のn+型のシリコン膜が除去され、n+シリコン膜の下層に形成されるアモルファスシリコン膜46の一部が露出する。このようにして、ソース電極43の下層には、n+シリコンからなるソース領域32が形成され、ドレイン電極44の下層には、n+シリコンからなるドレイン領域33が形成される。そして、これらのソース領域32及びドレイン領域33の下層には、アモルファスシリコンからなるチャネル領域(アモルファスシリコン膜46)が形成される。
以上説明した工程により、ボトムゲート型のTFT30を形成する。
【0059】
このように本実施形態のパターン形成方法を利用することにより、ゲート配線40とゲート電極41との膜厚が同じになるとともに、ソース配線42とソース電極43とを同じ膜厚で形成することができる。この結果、トランジスタ特性を安定させることにより、このトランジスタを備えた画素は信頼性が高いものとなる。
【0060】
次に、図8(d)に示すように、ソース電極43、ドレイン電極44、ソース領域32、ドレイン領域33、及び露出したシリコン層上に、蒸着法、スパッタ法等によりパッシベーション膜38(保護膜)を成膜する。続けて、フォトリソグラフィ処理及びエッチング処理により、後述する画素電極45が形成されるゲート絶縁膜39上のパッシベーション膜38を除去する。同時に、画素電極45とソース電極43とを電気的に接続するために、ドレイン電極44上のパッシベーション膜38にコンタクトホール49を形成する。
【0061】
次に、図8(e)に示すように、画素電極45が形成されるゲート絶縁膜39を含む領域に、バンク材を塗布する。ここで、バンク材は、上述したように、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリシラザン等の材料を含有している。続けて、このバンク材(画素電極用バンク34e)上面にプラズマ処理等により撥液処理を施す。次に、フォトリソグラフィ処理により、画素電極45が形成される領域を区画する画素電極用バンク34eを形成する。
【0062】
次に、インクジェット法、蒸着法等により、上記画素電極用バンク34eに区画された領域にITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極45を形成する。また、画素電極45を上述したコンタクトホール49に充填させることによって、画素電極45とドレイン電極44との電気的接続が確保される。なお、本実施形態においては、画素電極用バンク34eの上面に撥液処理を施し、かつ、上記画素電極用溝部に親液処理を施す。そのため、画素電極45を画素電極用溝部からはみ出すことなく形成することができる。
以上説明したような工程により、図7に示した本実施形態の画素を形成することができる。
【0063】
(電気光学装置)
次に、上記バンク構造を有する膜パターン形成方法により形成した画素(デバイス)を備える本発明の電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。
図10は、本発明にかかる液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図である。図11は図10のH−H’線に沿う断面図である。図12は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図で、なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0064】
図10及び図11において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。
【0065】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、C−TN法、VA方式、IPS方式モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。
また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0066】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図12に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループごとに供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0067】
画素電極19は、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図11に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0068】
図13は、上記バンク構造及びパターン形成方法により形成した画素を備える有機EL装置の側断面図である。以下、図13を参照しながら、有機EL装置の概略構成を説明する。
図13において、有機EL装置401は、基板411、回路素子部421、画素電極431、バンク部441、発光素子451、陰極461(対向電極)、及び封止基板471から構成された有機EL素子402に、フレキシブル基板(図示略)の配線及び駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部421は、アクティブ素子であるTFT60が基板411上に形成され、複数の画素電極431が回路素子部421上に整列して構成されたものである。そして、TFT60を構成するゲート配線61が、上述した実施形態の配線パターンの形成方法により形成されている。
【0069】
各画素電極431間にはバンク部441が格子状に形成されており、バンク部441により生じた凹部開口444に、発光素子451が形成されている。なお、発光素子451は、赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており、これによって有機EL装置401は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰極461は、バンク部441及び発光素子451の上部全面に形成され、陰極461の上には封止用基板471が積層されている。
【0070】
有機EL素子を含む有機EL装置401の製造プロセスは、バンク部441を形成するバンク部形成工程と、発光素子451を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子451を形成する発光素子形成工程と、陰極461を形成する対向電極形成工程と、封止用基板471を陰極461上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0071】
発光素子形成工程は、凹部開口444、すなわち画素電極431上に正孔注入層452及び発光層453を形成することにより発光素子451を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層452を形成するための液状体材料を各画素電極431上に吐出する第1吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて正孔注入層452を形成する第1乾燥工程とを有している。また、発光層形成工程は、発光層453を形成するための液状体材料を正孔注入層452の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて発光層453を形成する第2乾燥工程とを有している。なお、発光層453は、前述したように赤、緑、青の3色に対応する材料によって3種類のものが形成されるようになっており、したがって前記の第2吐出工程は、3種類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
【0072】
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで前記の液滴吐出装置IJを用いることができる。よって、微細な膜パターンを有する場合であっても、均一な膜パターンを得ることができる。
本発明の電気光学装置によれば、高精度な電気的特性等を有するデバイスを備えることから、品質や性能の向上を図った電気光学装置を実現することができる。
【0073】
また、本発明にかかる電気光学装置としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0074】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図14は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図14において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図14に示す電子機器は、上記実施形態のバンク構造を有するパターン形成方法により形成された液晶表示装置を備えたものであるので、高い品質や性能が得られる。
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0075】
なお、上述した電子機器以外にも種々の電子機器に適用することができる。例えば、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの電子機器に適用することが可能である。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、フォトリソグラフィ処理及びエッチング処理により、所望パターンのバンク構造を形成していた。これに対して、上記形成方法に代えて、レーザーを用いてバンクにパターニングすることにより、所望のパターンを形成するようにしてもよい。
【0077】
なお、第1パターン形成領域55の面積が機能液の着弾径に比して十分に大きい場合、バンク34を必ずしも撥液化する必要はない。この場合、撥液化処理を施さなくてもパターン形成領域55,56内に機能液が好適に濡れ広がることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】ピエゾ方式による液状体の吐出原理を説明するための図である。
【図3】(a)はバンク構造の平面図、(b)は(a)の側断面図である。
【図4】(a)〜(e)はバンク構造を形成する工程を示す側断面図である。
【図5】(a)〜(c)は配線パターンの形成工程を説明するための側断面図である。
【図6】(a)〜(c)は配線パターンの形成工程を説明するための側断面図である。
【図7】表示領域である1画素を模式的に示す平面図である。
【図8】(a)〜(e)は1画素の形成工程を示す断面図である。
【図9】(a),(b)は他のバンク構造における実施形態を示す断面図である。
【図10】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図11】図10のH−H’線に沿う液晶表示装置の断面図である。
【図12】液晶表示装置の等価回路図である。
【図13】有機EL装置の部分拡大断面図である。
【図14】本発明の電子機器の具体例を示す図である。
【図15】撥液化処理法の一変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
L…機能液、1…バンク構造、34…バンク、34a…バンク内面、34b…バンク上面、35…バンク層(バンク形成材料)、40…ゲート配線(膜パターン)、41…ゲート電極(膜パターン)、42…ソース配線(膜パターン)、43…ソース電極(膜パターン)、55…第1のパターン形成領域、56…第2のパターン形成領域、250…画素構造(デバイス)、600…携帯電話(電子機器)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられたバンクによって区画されるパターン形成領域に、機能液を配置して膜パターンを形成する方法であって、
基板上に、その断面形状が基板側に向けて漸次拡径する逆テーパ状のバンクを形成するバンク形成工程と、
前記形成したバンクに対して撥液化処理を施す撥液化処理工程と、
前記撥液化処理後、前記バンクに区画されたパターン形成領域に機能液を配置する機能液配置工程と、
前記配置した機能液を乾燥させる工程と、を含むことを特徴とする膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記撥液化処理工程においては、前記バンクの上面に対して、前記基板の主面と垂直に交わる方向から撥液化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記撥液化処理工程においては、撥液化処理材を表面に有する原版部材を用い、該原版部材に具備された撥液化処理材と前記基板上の前記バンクの上面とを接触させることにより、前記撥液化処理材を前記バンクの上面の一部又は全部に転写させることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記撥液化処理工程においては、フッ素又はフルオロカーボンを含んだガスによりプラズマ処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記バンク形成工程においては、形成されるバンクによって区画されるパターン形成領域の平面パターンについて、第1のパターン形成領域と、該第1のパターン形成領域に連通し、かつ該第1のパターン形成領域より幅が広い第2のパターン形成領域とを含むように、当該バンクを形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の膜パターンの形成方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法により形成された膜パターンを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項5に記載の方法により形成された膜パターンを備えるデバイスであって、
前記第2のパターン形成領域に形成された膜パターンをゲート配線とする一方、前記第1のパターン形成領域に形成された膜パターンをゲート電極とすることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項5に記載の方法により形成された膜パターンを備えるデバイスであって、
前記第2のパターン形成領域に形成された膜パターンをソース配線とする一方、前記第1のパターン形成領域に形成された膜パターンをソース電極とすることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか1項に記載のデバイスを備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−27589(P2007−27589A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210655(P2005−210655)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】