説明

高周波デバイスおよびその製造方法

【課題】基板に開口を有する高周波デバイスを精度よく位置合わせすることが可能な高周波デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板11に貫通電極下部14D、開口16および突起17を設ける。基板11の表面に、絶縁膜12、誘電体層13、絶縁膜12と誘電体層13とを貫通する貫通電極上部14Aおよびスイッチング素子15を形成する。基板11には、開口16および突起17を同時に形成したのち、基板11を貫通すると共に貫通電極上部14Aと接する貫通電極下部14Dを形成する。開口16および突起17を同時に形成することにより、インターポーザ基板などの実装基板に精度よく位置合わせすることが可能な高周波デバイス1を、工程数を増やすことなく得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems;マイクロマシン)技術を用いた高周波デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の集積化技術の向上に伴い、電子機器の小型・軽量化、低電圧動作・低消費電力化、高周波動作化が急速に進んでいる。特に、携帯電話などの移動通信端末装置の技術分野では、上記の要求が厳しい上に、高機能化も求められており、これらの対立する課題を解決する技術の一つとして、MEMSが注目されている。
【0003】
ところで、MEMSデバイスをインターポーザ基板(実装基板)へ実装する際には、CCD、赤外線ビジコンカメラを使用した透過光アライメントが用いられている(例えば特許文献1)。この手法では、表裏のアライメントは赤外カメラにより行われ、ピエゾ素子による微細制御を用いても機械的精度±5μmといわれている。
【0004】
そこで、自己組織化によって位置合わせを行う方法が開発されている(例えば非特許文献1)。この方法では支持基板(実装基板)の表面を撥水処理したのち所定の位置(チップ等を実装する位置)に親水性領域を設け、親水性領域に液体を滴下する。この液体上にチップ等を配置することによって自己組織的に位置合わせが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−76098号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】自己組織化ウエハー張り合わせによる三次元集積技術 応用物理学会分科会 シリコンテクノロジー「多層配線」特集号 2008、34−37ページ、福島誉史、田中徹、小柳光正
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記に例示した位置合わせの手法では、以下のような問題があった。すなわち、上記手法では基板は平面であることが前提であり、MEMSデバイスのような基板裏面に開口を有する場合には用いることができない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、実装基板へ実装する際に精度よく位置合わせすることが可能な高周波デバイスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高周波デバイスは、開口を有する基板と、この基板の表面に絶縁膜を介して積層された誘電体層と、この誘電体層上の開口に対応する位置に設けられた高周波素子と、基板、絶縁膜および誘電体層を貫通する貫通電極と、基板の裏面に設けられた少なくとも1つの突起とを備えたものである。
【0010】
本発明の高周波デバイスの製造方法は、以下の工程(要件)を含むようにしたものである。
(A1)基板の表面に第1貫通孔を有する絶縁膜および誘電体層をこの順に形成する工程
(B1)第1貫通孔に貫通電極上部を形成する工程
(C1)誘電体層上に高周波素子を形成する工程
(D1)基板の裏面に貫通電極上部に対向する第2貫通孔、開口および突起を形成する工程
(E1)第2貫通孔に貫通電極下部を形成する工程
【0011】
本発明の高周波デバイスでは、基板の裏面に貫通電極および突起を設けることにより、基板に開口を有する高周波用デバイスを実装基板に容易に精度よく位置合わせをすることが可能となる。
【0012】
本発明の高周波デバイスの製造方法では、基板の開口と基板裏面に設けられた突起とを同時に形成することにより、工程数を増やすことなく実装基板に精度よく位置合わせが可能な基板に開口を有する高周波デバイスを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高周波デバイスおよびその製造方法によれば、基板の裏面に貫通電極および突起を設けるようにしたので、実装基板への位置合わせを容易に精度よく行うことができる。また、基板の開口の形成工程において基板裏面の突起の形成を同時に行うようにしたので、工程数を増やすことなく実装基板に精度よく位置合わせすることが可能な高周波デバイスを得ることができる。従ってコストを抑えたデバイスの高周波特性の向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る高周波デバイスを表す断面図である。
【図2】図1に示した高周波デバイスの製造工程の一例を表す断面図である。
【図3】図2に続く工程を表す断面図である。
【図4】図3に続く工程を表す断面図である。
【図5】図4に続く工程を表す断面図である。
【図6】本発明の適用例に係る高周波デバイスの実装工程を表す断面図である。
【図7】本発明の変形例に係る高周波デバイスを表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、以下の順序で図面を参照しつつ詳細に説明する。
[実施の形態]
(1)全体構成
(2)製造方法
【0016】
(1)全体構成
図1は本発明の一実施の形態に係る高周波デバイス1の断面構成を表したものである。高周波デバイス1は基板11上に絶縁膜12および誘電体層13が積層され、この誘電体層13上に例えばスイッチ素子15のような高周波素子が設けられている。基板11、絶縁膜12および誘電体層13にはこれらを貫通する貫通電極14が形成されている。基板11には開口16が設けられると共に、基板11裏面側に突起17が設けられている。
【0017】
基板11は例えばシリコン基板であるが、その他、合成石英、ガラス、金属、樹脂または樹脂フィルムなどの材料からなるものでもよい。なお、基板11に設けられた開口16は、ここでは基板11が完全に除去されているが、基板11の一部が残っていてもよい。絶縁膜12は例えばシリコン(Si)を含む絶縁膜材料から構成されている。
【0018】
誘電体層13としては、例えばベンゾシクロブテン(BCB)、ポリイミド(PI)、パリレンおよびダイヤモンドライクカーボン(DLC)などの有機材料の他に、SiO2などの無機材料を用いることができる。
【0019】
貫通電極14は、絶縁膜12および誘電体層13を貫通する貫通電極上部14Aと、誘電体層13上に形成された電極端子14Bと、基板11を貫通すると共に貫通電極上部14Aと接続された貫通電極下部14Cとから構成されている。貫通電極14の材料としては、ここでは銅(Cu)を用いたがアルミニウム(Al)を用いてもよく、特に限定されない。
【0020】
高周波デバイス1に実装する高周波素子として、ここでは誘電体駆動型の高周波スイッチング素子15を用いている。このスイッチング素子15では、誘電体層13上に、引き込み電極15Aおよびポスト柱15Bが設けられている。引き込み電極15A上には、SiNを含む絶縁材料よりなるスパッタ膜15Cが成膜されている。ポスト柱15Bにはポスト15Dが設けられ、このポスト15Dを支持部として可動電極15Eが形成されている。なお、ここでは引き込み電極15A、ポスト柱15B、ポスト15Dおよび可動電極15Eの材料としてアルミニウムを用いているが、その他の金属材料を用いるようにしてもよい。
【0021】
次に、高周波デバイス1の製造方法について、図2〜図5を用いて説明する。
【0022】
(2)製造方法
まず、図2(A)に示したように、シリコン基板11上に絶縁膜12を形成する。具体的には、例えば厚さ0.6mmのシリコン基板11を例えば1000℃で加熱し、水蒸気雰囲気下における熱酸化により、厚さ3μm程度のシリコン酸化層をシリコン基板11の表面に形成する。次に、一方の面のシリコン酸化層を研磨除去して、シリコン基板11の厚さを0.5mm程度とした後、シリコン酸化層上に貫通電極14を設ける場所に、直径100μm程度のマスク窓を開けてレジストを塗布する。その後、塩素プラズマなどによりエッチングを行い、貫通電極14用の開口を有する絶縁膜12を形成する。
【0023】
続いて、図2(B)に示したように、絶縁膜12上に誘電体層13を形成する。具体的には、絶縁膜12上に、BCBを厚みが20μm程度になるように塗布したのち、無酸素条件下において例えば280℃、1時間の加熱処理を行い、重合を完了させる。その後、絶縁膜12に設けた開口に対応する位置を、例えばSF6および酸素プラズマを用いた反応性イオンエッチングによって除去し、上部貫通孔18Aを有する誘電体層13を形成する。
【0024】
続いて、図2(C)に示したように、誘電体層13上に貫通電極上部14Aを形成する。具体的には、上部貫通孔18Aに例えばチタン(Ti)およびシード銅(Cu)をそれぞれ50nm程度、100nm程度にパターニング形成して下地層(図示せず)としたのち、電解銅めっきによりこの上部貫通孔18Aを銅で充填して貫通電極上部14Aを形成する。この配線パターンには、貫通電極下部14Cを形成する際の電解めっきに用いる電極端子14Bも予め形成しておく。
【0025】
次に、図3(A)〜(D)に示したように、誘電体層13上に高周波スイッチング素子15を形成する。具体的には、図3(A)に示したように、例えばチタンを下地として例えばアルミニウム(Al)をスパッタしたのち、例えばフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて所定の形状に加工し、引き込み電極15Aおよびポスト柱15Bを形成する。続いて、引き込み電極15Aに例えばSiNをスパッタし、厚さ50nm程度のスパッタ膜15Cをパターニング形成する。ポスト15Dも同様にアルミニウムをスパッタしたのち、パターニングにより形成する。その後、図3(B)に示したように、例えば耐アルカリ性熱可塑性樹脂A(日化精工製TR2)を用いて、電極端子14B、引き込み電極15A、ポスト柱15B、スパッタ膜15Cおよびポスト15Dを埋め込んだ樹脂層19Aを形成する。次いで図3(C)に示したように、樹脂層19上に例えばアルミニウムをスパッタしたのち、例えばエッチング法を用いて、ポスト15Dを支持部とした可動電極15Eを形成する。その後、樹脂層19Aおよび可動電極15E上に、再度耐アルカリ性熱可塑性樹脂A(日化精工製TR2)からなる樹脂層19Bを形成し、第1樹脂層19上に、例えば銀フィラー入り熱可塑性樹脂B(Stay stick101)からなる第2樹脂層20を形成する。このように、熱伝導性のよい第2樹脂層20を形成することにより、次に行う基板11の裏面のエッチング時に、スイッチング素子15が熱によって損傷を受けることを抑制する。
【0026】
続いて、図4(A),(B)に示したように、基板11の裏面に、貫通電極下部14Cを形成するための下部貫通孔18B、開口16および突起17を形成する。具体的には、例えばフォトリソグラフィ法を用いて基板11の除去部分のパターニングを行ったのち、例えば深いエッチングが可能なDRIE(Deep Reactive Ion Etching)装置によるボッシュプロセスを用いてエッチングを行う。このボッシュプロセスにおける工程では、真空装置により圧力を0.01パスカル程度に減圧したのち、例えば、壁面保護層を形成するC48プラズマによるフッ素化合物形成工程を5秒程度、SF6および酸素プラズマによるエッチングを10秒程度行う。このとき、絶縁膜12および貫通電極上部14Aの下地層として用いた銅はCuF2に変化して不動態となるため、この下地層でエッチングが停止する。この後、スプレーコータ装置により段差のある基板にコーティングを行ったのちマスク露光パターニングを行い、突起17を形成する。
【0027】
続いて、図4(C),(D)および図5(A),(B)に示したように、下部貫通孔18Bに貫通電極下部14Cを形成する。具体的には、まず、例えば有機シランを用いたプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、基板11の裏面、下部貫通孔18Bおよび開口16の側面および底面に、厚さ1μm程度のSiO2膜を形成する。その後、例えば基板11の裏面に、−2kV程度のバイアスパルス電圧を印加し、アルゴンプラズマ雰囲気中において下部貫通孔18Bおよび開口16の側面に形成されたSiO2膜のみを残し、それ以外のSiO2膜を除去する。次いでスパッタ薄膜、例えばチタンおよび銅をこの順にそれぞれ50nm程度および100nm程度の厚さに成膜し、シード層14Cを全面に形成する。その後、下部貫通孔18Bおよびその周辺をフォトレジストでマスクして保護し、塩化第2鉄エッチング液などに浸してその他をエッチングしたのち、例えばSF6プラズマを用いてチタンを除去する。次いで、フォトレジストのマスクも除去したのち、電解銅めっき用に形成した電極端子14Bを、カソード電極としてめっき電極に接続して硫酸銅めっき層に浸し、1A/dm2程度の電流を1時間程度通電させることにより、貫通電極下部14Dを形成する。因みに、下部貫通孔18Bの側面に残ったSiO2膜は、銅からなる貫通電極下部14Dの同軸構造として機能する。このSiO2膜は、数Ωのインピーダンスを有し高周波特性を持つため、高周波における減衰の抑制が期待できる。
【0028】
最後に図5(C)に示したように、第1樹脂層19および第2樹脂層20を例えばイソプロパノール(IPA)に浸して溶解させたのち、超臨界乾燥装置にて炭酸ガスの超臨界圧力10MPa下でIPAと置換することにより、表面張力によるメンブレンの貼り付けなくメンブレンを自立させる。これにより、貫通電極14、開口16および突起17を有する高周波デバイスが完成する。
【0029】
以上のように本実施の形態の高周波デバイス1では、基板11の裏面に貫通電極14および突起17を設けることにより、インターポーザ基板などにIR等の装置を用いることなく、容易に精度よく位置合わせを行うことが可能となる。
【0030】
高周波デバイスにおいてその周波数帯が50GHzを超えたもの、例えばマイクロストリップ、CPW(コプレナウエーブガイド)伝送線路では、その線間ピッチは10μm以下である必要があり、この上下のデバイスの位置あわせ精度が伝播特性に影響を与える。本実施の形態の高周波デバイス1では、基板11の裏面に貫通電極14および突起17を設け、この貫通電極14と突起17とを用いて位置合わせを行うようにしたので、要求される位置合わせ精度に十分対応することができる。
【0031】
本実施の形態の製造方法では、基板11の開口16と同時に基板11裏面側に突起17を形成するようにしている。これにより、工程数を増やすことなくインターポーザ基板などの実装基板に実装する際の位置合わせを精度よく、且つ、容易に行うことを可能な高周波デバイス1を得ることができる。
【0032】
このように本実施の形態の高周波デバイス1およびその製造方法によれば、基板11に貫通電極14、開口16および突起17を設けると共に、開口16および突起17の形成を同時に行うようにしている。これにより、工程数を増やすことなく、高周波用デバイス1をインターポーザ基板などの実装基板へ実装する際の位置合わせを精度よく行うことができる。また、IRなどの装置を用いることなく位置合わせが行えるため、作業が簡略化される。従って、コストの増加を伴うことなく、デバイスの高周波特性を向上させることができる。
【0033】
[適用例]
更に、上記実施の形態の高周波デバイス1をCMOS(complementary metal oxide semiconductor)へ実装する場合に対応する適用例について説明する。
【0034】
図6は、高周波デバイス1をCMOS2へ実装する際の実装工程の一例を表したものである。まず、CMOS基板21およびこのCMOS基板21上に設けられた電極22上に、例えばスピンコートまたはスプレーコートにより、感光性BCB4024樹脂(ダウケミカル製)からなる厚さ10〜15μm程度の接着層23を形成する。次いで、露光装置により接着層23に、電極22および高周波デバイス1に設けた突起17の位置と対応する位置に、貫通孔24を形成する。続いて、CMOS2側に設けた貫通孔24に、高周波デバイス1の貫通電極14と突起17とを挿入したのち、10kg/cm2程度の圧力を印加すると共に、150℃程度で加熱し接着する。この後、窒素置換して酸素濃度を10ppm以下程度にした電気炉にて、250℃、1時間程度加熱し、BCB樹脂の最終重合を行う。これにより、接着層23の厚さが8割程度減少し、高周波デバイス1とCMOS2との接続部分が圧着される。
【0035】
以上、実施の形態および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態等では位置合わせに用いられる突起を、基板11を用いて形成したが、例えば図7に示したように貫通電極14と同様の構造としてもよい。
【0036】
また、突起の数は1つとは限らず、複数形成してもかまわない。
【符号の説明】
【0037】
1…高周波デバイス、2…CMOS、11…基板、12…絶縁膜、13…誘電体層、14…貫通電極、15…スイッチング素子、16…開口、17…突起、18…貫通孔、19…第1樹脂層、20…第2樹脂層、21…CMOS基板、22…電極、23…接着層、24…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する基板と、
前記基板の表面に絶縁膜を介して積層された誘電体層と、
前記誘電体層上の前記開口に対応する位置に設けられた高周波素子と、
前記基板、前記絶縁膜および前記誘電体層を貫通する貫通電極と、
前記基板の裏面に設けられた少なくとも1つの突起と
を備えた高周波デバイス。
【請求項2】
前記突起は、前記貫通電極と同じ構造を有する、請求項1に記載の高周波デバイス。
【請求項3】
基板の表面に第1貫通孔を有する絶縁膜および誘電体層をこの順に形成する工程と、
前記第1貫通孔に貫通電極上部を形成する工程と、
前記誘電体層上に高周波素子を形成する工程と、
前記基板の裏面に前記貫通電極上部に対向する第2貫通孔、開口および突起を形成する工程と、
前記第2貫通孔に貫通電極下部を形成する工程と
を含む高周波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−3787(P2011−3787A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146649(P2009−146649)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】