説明

エッジ検出装置及びこれを用いた工作機械、エッジ検出方法

【課題】シルエットとして投影できない形状のエッジでも、非接触で、加工途中のワークなどを精度高く、かつ、リアルタイムで輪郭形状を数値的に測定可能とする光学的なエッジ検出装置を提供すること
【解決手段】本発明のエッジ検出装置は、投影光学系の光軸16aと平行な光線を遮光するアンチピンホールフィルタ25を備えた投影光学系と、投影光学系の光軸16aと一定の偏角θをもって配設された光源モジュール11と、撮像素子26と、コンピュータとを備え、光源モジュール11の平行光に照射されたワーク17からの反射光による投影画像を撮像素子で撮像し、エッジ近傍の信号強度を判定し、2本の帯状の高輝度の部分に挟まれた低輝度の線状部分をエッジと判定する。そのため、ワークのエッジを正確に検出でき、これを画像処理により数値処理することでCADやNC制御と連動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジ検出装置及びこれを用いた工作機械、エッジ検出方法に係り、詳しくは、透過型の光学系では測定できないワークのエッジを、加工途中においても、非接触で、リアルタイムに、形状を数値的に測定可能とする光学的なエッジ検出装置及びこれを用いた工作機械、エッジ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで精密な工具などの加工をする場合は、例えば、図13に示すような拡大投影機を設けたいわゆる倣い研削盤などを用いていた。この研削盤は、レーザ発振器21からのレーザ光線をコリメータレンズ22で平行光とし、ワーク17の加工部分のシルエットを対物レンズ23、投影レンズ24を用いて光学的に撮像素子26で撮像してディスプレー(不図示)で拡大投影して加工する研削盤である。
【0003】
ところで、近年、いわゆるナノ工学が多方面に活用されるようになり、高い工作精度がますます要求され、μmオーダーや、いわゆるサブμmオーダーの加工が要求されている。例えば、ディンプルと呼ばれる微小なくぼみを規則的に配置したディンプルテクスチャが、光学やトライボロジー等の広範囲の分野で用いられている。また、マイクロチャンネルを用いて、ナノリッター(nL)からフェムトリッター(fL)の微小流体をハンドリングするマイクロ流体工学もバイオ関係などで活用されている。これらの場合、数十μmのディンプルやマイクロチャンネルを形成するには、直接ワークを、またはプレス若しくは成形のための型を正確に3次元的に造形する必要があった。
【0004】
このような場合、研削加工によれば、理論的には正確な3次元的造形が可能であり、比較的コストも低く、多品種少量生産にも適している。このような超精密加工をするには、ボールエンドミルのような高速回転する回転工具を用いた精密機械加工が一般的であるが、まず精度の高い工具が不可欠である。さらに、この高速に回転する工具を振れがないように正確に工作機械に装着することも不可欠である。
【0005】
そこで、本発明者らは以下の特許文献1に記載されたような発明を提案した。この発明では、アンチピンホールフィルタと名付けた独自の構成を備えた方法で、0次光をカットして回折光のみで像を結像させ、これをCCDカメラなどで撮像して、高速回転する回転工具の切れ刃稜の振れを高精度に測定可能にして、この振れを補正できるようにした。その結果、微細な加工が可能となる高精度の回転工具を振れなく回転させ、前述のディンプルなどの加工が高精度でできるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−242605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この方法は、極めて高速に回転するボールエンドミルのような極小径の回転工具においてもエッジに対応する画像をシルエットとして撮像し、その相対的な位置の差から回転工具の振れの大きさを極めて高精度にリアルタイムで検出する。その測定結果に基づいて回転工具の振れがないように修正することができ、工具の位置精度の向上の結果、正確な中ぐり加工ができるようになった。
【0008】
ところで、例えば、スローアウェイ式ドリルやバイトに用いるスローアウェイチップなども、加工精度の高度化から正確なエッジ検出が要求されている。
しかしながら、これらは段付きやテーパなどを有した形状があり、特に凹部では、シルエットとして測定ができなかったため、特許文献1に開示されたような発明では、このような工具のエッジの検出ができなかった。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するため、外径のみでなく、透過光でシルエットとして検出できないような段付きやテーパなどを有した形状、特に凹部におけるエッジを、極めて容易に、リアルタイムで、非接触で、それでいて正確に検出をすることができる光学的なエッジ検出装置、これを用いた工作機械、エッジ検出装置を提供することに目的とする。また、併せて、このように測定された工作物の形状データに基づき正確かつ容易に、マニュアル制御若しくは自動制御可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係るエッジ検出装置では、エッジ検出の対象物を一方の焦点位置に配置可能に設けられた対物レンズと、該対物レンズと共焦点を有するように当該対物レンズに対して前記対象物と反対側に配置された投影レンズと、前記共焦点に配置され、入射光のうちの前記共焦点を通過する光を遮光するアンチピンホールフィルタとを備えた投影光学系を有するレンズ鏡筒と、前記対物レンズの光軸を前記対象物を越えて延長した仮想線において、当該仮想線を基準に当該対象物を中心に一定の偏角θ(°)を有する方向から、平行光を当該対象物に対して発するように配設された光源モジュールと、該レンズ鏡筒により投影された映像を撮像するように前記光軸と直交するように配置された撮像素子と、該撮像素子からの信号を演算処理するコンピュータとを備え、前記対物レンズの前記光源モジュール側の焦点位置に置かれた前記対象物の投影画像を前記撮像素子で撮像し、前記コンピュータは、前記撮像素子からの信号強度により輝度を判定し、エッジを判定するエッジ判定の手順を実行することを要旨とする。
【0011】
なお、対象物やアンチピンホールフィルタ、共焦点の位置は、厳密なものではなく実質的に等価の位置のものを含むことは言うまでもない。また、レンズ構成も複数で構成されるレンズ群を含むことももちろんである。さらに、リレーレンズ、補正レンズ、フィルタ、プリズム、ミラー、絞り、シャッタなど、本発明を本質的に変更しない光学要素を含むものも本発明と等価であり、本発明に含まれる。また、撮像素子は直接焦点であっても実像を撮影する撮影レンズを備えたものであってもよい。また、以下の本願に開示された発明においても同様である。
【0012】
また、アンチピンホールフィルタは、その名称に拘わらず、対物レンズと投影レンズの共焦点に配置され、入射光のうちの前記共焦点を通過する光を遮光するものを含む。
本請求項に係る発明では、透過型エッジ検出装置のように投影光学系の投影方向と同一な方向から照明光を照射するのではなく、透過型エッジ検出装置と異なり、照明光の光軸を投影方向とは一定角度の偏角θ(°)の分だけ傾けて照明するため、エッジ検出の対象物へ照射した照明光の反射光を投影することができる。
【0013】
このため、エッジを有する形状であっても、例えば段付やテーパを有する形状などで透過光の中でその外形形状をシルエットとして観察できない場合でも、照明光を投影光学系の光軸と一定の偏角θだけ傾けることで、その反射光によりエッジ部分を非接触で容易に検出することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載のエッジ検出装置において、前記エッジ判定の手順において、撮像素子からの信号強度により輝度を判定し、2本の帯状の高輝度の部分に挟まれた低輝度の線状部分をエッジとして判定することを要旨とする。
【0015】
本請求項に係る発明では、特に、アンチピンホールフィルタにより、エッジ近傍からの反射光により形成された高輝度の輝線に、低輝度の暗線が形成されると、目視はもちろん画像処理においても、簡単にエッジ部分を正確に特定することができるばかりか、その画像処理も容易になる。
【0016】
請求項3に係る発明では、請求項1又は2に記載のエッジ検出装置において、前記偏角は、前記エッジ検出をする前記対象物の測定点の法線と、前記投影光学系の光軸との間の角度をα(°)とするとき、θ=180−2α(0≦α<90)とすることを要旨とする。
【0017】
本請求項に係る発明では、エッジの法線と、投影光学系との間の角度α(°)を、θ=180−2α(0≦α<90)とすることで、散乱光で生じた光輝度の部分に、正反射光がアンチピンホールにより遮光されて、エッジ部分を効果的に暗線として表示することができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、請求項1又は2に記載のエッジ検出装置において、前記偏角θ(°)は、90≦θ≦180であることを要旨とする。
本請求項に係る発明では、特に、投影光学系の光軸側の方向から照明光を照射することで、比較的エッジのみを認識しやすくすることができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、請求項1又は2に記載のエッジ検出装置において、前記光源モジュールが配置される前記偏角θ(°)は、θ=180であることを要旨とする。
本請求項に係る発明では、エッジ検出の対象物が平面的で、表面が鏡面に近い場合、この面を投影光学系の光軸に直交するように載置すれば、投影光学系の光線の進行方向とは180°逆の方向から照明光を照射することで、ワーク全体から反射して来た平行光が遮光されるため画像は低輝度となり、エッジを認識しやすくなる。
【0020】
請求項6に係る発明では、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、前記光源モジュールは、光源とは別にその照明光の光路を反射し若しくは屈折させる光路変更手段を備えたことを要旨とする。
【0021】
本請求項に係る発明では、その照明光の光路を反射し若しくは屈折させる光路変更手段を備えたことで、光源モジュールの光源自体を移動することなく、そのエッジ検出の対象物に応じた適切な角度に調整ができる。
【0022】
請求項7に係る発明では、請求項6に記載のエッジ検出装置において、前記偏角θがθ=180°であり、前記光路変更手段として前記対象物と前記対物レンズとの間に配置されたビームスプリッタにより前記光源モジュールからの平行光が導入されることを要旨とする。
【0023】
本請求項に係る発明では、コンパクト且つ効果的にエッジを検出することができる。
請求項8に係る発明では、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、前記光源モジュールを、複数配置したことを要旨とする。
【0024】
本請求項に係る発明では、照射角度を変えたり、同時に照射することが可能になる。
請求項9に係る発明では、請求項8に記載のエッジ検出装置において、前記複数の光源モジュールのうち、照明光の光路を投影光学系の光軸に対して対称に配置可能に構成された光源モジュールを有することを要旨とする。
【0025】
本請求項に係る発明では、照明光の光路を投影光学系の光軸に対して対称に配置することで、同時に2方向からエッジ位置の情報を収集することができる。
請求項10に係る発明では、請求項1〜9のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、前記光源モジュールは、レーザ光源を備えたことを要旨とする。
【0026】
本請求項に係る発明では、周波数帯域が限定され、管理が容易なコヒーレントな光を狭い範囲に大きな光量で照射することができる。
請求項11に係る発明では、請求項1〜9のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、前記光源モジュールは、LEDを備えたことを要旨とする。
【0027】
本請求項に係る発明では、比較的安価で、かつレーザ発振器よりインコヒーレントな光が得られるため、干渉の影響を小さくすることができる。
請求項12に係る発明では、請求項1〜9のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、前記光源モジュールは、白色の光源を備えたことを要旨とする。
【0028】
本請求項に係る発明では、対象物によりインコヒーレント光とすることで、干渉波の影響が小さく、エッジがシャープに観察、測定ができる。
請求項13に係る発明では、請求項1〜12のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、前記エッジ検出の対象物を、前記投影光学系の光軸と平行な方向に変位させるワーク変位機構を備えたことを要旨とする。
【0029】
本請求項に係る発明では、対物レンズの焦点位置にワークを移動して希望するエッジを検出できる。また、連続的にエッジを検出することで、3次元的なデータを取得することも可能となる。
【0030】
請求項14に係る発明では、請求項1〜13のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、前記エッジ検出の対象物を、前記投影光学系の光軸を中心に回転させるワーク回転機構を備えたことを要旨とする。
【0031】
本請求項に係る発明では、エッジ検出の対象物について、投影光学系の光軸と直交する面全体においてエッジを検出することができる。特に、請求項13に係る発明を引用するものでは、例えば、螺旋状にデータを取得することで、データの3次元化を図ることも可能となる。
【0032】
請求項15に係る発明では、請求項1〜14のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、表示装置をさらに備え、前記コンピュータは、前記撮像素子から入力された信号に基づき対象物のエッジをエッジデータとして検出するとともに、当該エッジデータに基づきエッジ画像を該表示装置に表示することを要旨とする。
【0033】
本請求項に係る発明では、表示画像を倣い研削盤に利用したりすることができる。
請求項16に係る発明では、請求項1〜14のいずれか1項に記載のエッジ検出装置において、表示装置をさらに備え、前記コンピュータにより検出されたエッジを該表示装置に座標で表示することを要旨とする。
【0034】
本請求項に係る発明では、エッジ検出をディジタル処理として、NC制御のフィードバックやCADに連動させることもできるようになる。
請求項17に係る工作機械では、請求項15に記載のエッジ検出装置が工作機械に搭載されるとともに、入力された対象物の設計データに基づき、前記表示装置には、前記エッジ画像と重畳して該設計データに基づいた設計画像が表示されることを要旨とする。
【0035】
本請求項に係る発明では、設計データとワークの実測値がリアルタイムで比較できるため、マニュアルやNC制御のいずれにおいても、加工途中の修正が極めて容易になる。
請求項18に係る工作機械では、請求項17に記載のエッジ検出装置がNC制御可能な工作機械に搭載されるとともに、前記コンピュータは、当該工作機械の加工対象である工作物を前記対象物として前記撮像素子から入力された信号に基づき対象物のエッジをエッジデータとして検出するとともに、入力された対象物の設計データに基づき、前記エッジデータと前記設計データとの差分を演算し、この差分をフィードバックすることで工作機械をNC制御により自動制御して対象物を加工することを要旨とする。
【0036】
本請求項に係る発明では、設計値と実測値がリアルタイムで分析され、加工が修正できるため、自動で極めて精度の高い工作が可能になる。
請求項19に係る発明では、請求項18に記載の工作機械において、前記エッジ検出装置は、光学収差測定装置を備えるとともに、該光学収差測定装置により測定した光学収差を予め前記コンピュータに入力し、少なくとも前記エッジデータ及び前記設計データのいずれかを前記光学収差に基づいて補正することを要旨とする。
【0037】
本請求項に係る発明では、エッジ検出装置の光学的な収差を予めキャンセルして高精度の高い加工が可能となる。
請求項20に係る発明では、請求項17乃至請求項19のいずれか1項に記載の工作機械において、前記工作機械は、成形研削盤であることを要旨とする。
【0038】
本請求項に係る発明では、本発明が最も効果的に実施できる、いわゆる倣い研削盤において好適に適用することができる。
請求項21に係るエッジ検出方法では、エッジ検出の対象物を一方の焦点位置に配置可能に設けられた対物レンズと、該対物レンズと共焦点を有するように当該対物レンズに対して前記対象物と反対側に配置された投影レンズと、前記共焦点に配置され、入射光のうちの前記共焦点を通過する光を遮光するアンチピンホールフィルタとを備えた投影光学系を有するレンズ鏡筒と、前記対物レンズの光軸を前記対象物を越えて延長した仮想線において、当該仮想線を基準に当該対象物を中心に一定の偏角θ(°)を有する方向から、平行光を当該対象物に対して発するように配設された光源モジュールと、該レンズ鏡筒により投影された映像を撮像するように前記光軸と直交するように配置された撮像素子と、該撮像素子からの信号を演算処理するコンピュータとを用い、前記対物レンズの前記光源モジュール側の焦点位置に置かれた前記対象物の投影画像を前記撮像素子で撮像し、前記コンピュータは、前記撮像素子からの信号強度により輝度を判定し、エッジを判定するエッジ判定の手順を実行することを要旨とする。
【0039】
本請求項に係る発明では、請求項1と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0040】
本発明のエッジ検出装置、工作機械、エッジ検出方法によれば、外径のみでなく、透過光でシルエットとして検出できないような段付きやテーパなどを有した形状、特に凹部におけるエッジを、光学的に、極めて容易に、リアルタイムで、非接触で、それでいて正確に検出をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のエッジ検出装置の一実施例の主要部を示す斜視図
【図2】図1に示したエッジ検出装置を搭載した成形研削盤を示す斜視図
【図3】エッジ検出の原理を説明するための光学系の模式図
【図4】照明光に対してワークの反射光を示す模式図
【図5】本実施形態のエッジ画像を示す参考写真
【図6】本実施形態のエッジ画像を示す参考写真の拡大図
【図7】エッジ近傍の輝度を示すグラフ (a)従来の輝度 (b)本発明の輝度
【図8】パソコンの構成を示すブロック図
【図9】本実施形態のエッジ検出の手順等を示すフローチャート
【図10】本発明のエッジ検出装置の第2の実施形態の光学系を示す模式図
【図11】第2の実施形態のワークに照射される照明光を示す模式図
【図12】本発明のエッジ検出装置の第3の実施形態の光学系を示す模式図
【図13】従来の投影光学系を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0042】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した成形研削盤の一実施例を図1〜図9を用いて説明する。図1には本発明の一実施例であるエッジ検出装置5の主要部を、図2には図1に示したエッジ検出装置を搭載した成形研削盤36を、図3にはエッジ検出の原理を説明するためのエッジ検出ユニット9の光学系の模式図を示す。
【0043】
(エッジ検出装置全体) エッジ検出装置5は、図1に示すワーク17(エッジ検出の対象物)のエッジ17bを検出するエッジ検出ユニット9と、これに加え、この光源モジュール11に電力を供給する光源用電源12(図2)と、エッジ検出ユニット9からのデータを処理するパソコン(パーソナルコンピュータ)20(図2)とを含んで構成されている。
【0044】
(エッジ検出ユニット) エッジ検出装置5を構成するエッジ検出ユニット9は、ベース10の上に設けられたワーク17に照明光31を発射する照明光学系としての光源モジュール11を備える。また、この光源モジュール11により照明されたワーク17を投影するための投影光学系を構成するレンズ鏡筒13と、投影された画像を検出する検出モジュール14が、共通な光軸16aに沿って配置されている。
【0045】
(ワーク) 本実施形態のエッジ検出の対象物であるワーク17は、スローアウェイドリルやスローアウェイバイトなどのスローアウェイチップ(先端刃物)を例に挙げている。スローアウェイチップは、ドリルやバイトの先端に装着する再研磨を前提としない使い捨ての交換用の刃先であり、超硬、セラミック、サーメットのほか、ダイヤモンド集積体、CBN集積体などいろいろな材質からなり、また、形状についても底面を四角形、三角形、ひし形、家型などとする角錐台形状などをはじめ、さまざまな形状を有する。ここで例に挙げたワーク17としてのスローアウェイチップは、概ね正四角錐台の形状である。小さい面積の方の底面17aのエッジ17bを含めたエッジ部分、特に角部の精度が工具としての精度を左右するため、重要な要素となる。従来の透過光によりシルエットを得るエッジ検出方法では、大きい面積の方の底面のエッジ17cの形状は測定できても、小さい面積の方の底面17aのエッジ17b全体については、透過光によるシルエットの形成はできず、測定することができなかった。
【0046】
そこで、本実施形態では、このワーク17を、小さい面積の方の底面17aを検出モジュール14側に向けて、この底面17aを光軸16aと直交するように、ワーク支持装置2により支持している。
【0047】
なお、このワーク17の底面17aは、鏡面仕上げとされており、面粗度がRz≦0.1μmとなっており、かつ平坦性も良く、平行光が照射された場合には、その反射光も平行光といえる程度となっている。したがって、本実施形態のように、光軸16aと重なる光軸16bを持って入射した照明光31(図3)は、この底面17aで反射すると、反射光は照明光31の光軸16bそのままの光路で逆向きの光軸16aに沿って逆向きに進むことになる。詳しくは後述する。
【0048】
(ワーク支持装置) ワーク支持装置2は、チャック装置(不図示)を備え、このチャックで固定されたワーク17を、ワークテーブル4のワーク支持装置2で砥石15に対してX軸(前後)方向、Y軸(左右)方向、Z軸(上下)方向のうち必要な範囲で移動・回転可能となっている。言い換えると、ワーク支持装置2は、ワーク17を光軸16aと平行な方向(Y軸方向)に沿ってシフトし、光軸16a(Y軸)を中心に回転させることができる。
【0049】
(砥石) 本実施形態の工作機の工具の一例としては、砥石15を例に挙げている。砥石15は、ワーク支持装置2の軸心(Y軸方向)に直交する軸(X軸方向)となるように配置されたスピンドル18に装着された円盤状の砥石で、ワーク17に対して接離可能に図示しない砥石支持手段で支持されており、X軸(前後)方向、Y軸(左右)方向、Z軸(上下)方向のうち必要な範囲で移動・回転可能に支持される。
【0050】
(機器の接続) 図2に示すように、光源用電源12は、光源モジュール11(図1)に電気的に接続され、この光源モジュール11に電力を供給している。
また、光源モジュール11、検出モジュール14(図1)は、パソコン20にデータ送受信可能に接続されている(図4参照)。また、ワーク支持装置2、および砥石支持装置(不図示)は、NC制御装置8を介してパソコン20に接続されている。そしてパソコン20は、検出モジュール14からの画像信号を受信する。また、パソコン20は、NC制御装置8を介して、ワーク支持装置2および砥石支持装置、スピンドル18からのフィードバック信号を受信するとともに、これらに制御信号を送信して研削加工を制御する。
【0051】
(成形研削盤) 図2に示す成形研削盤36は、いわゆる倣い研削盤で、ワーク17の形状を確認しながらその形状を形成していく工作機械である。エッジ検出装置5は、その光軸16a(図1参照)を、成形研削盤36のY軸方向に平行に採った場合を示している。もちろんいずれの方向にセットするかは、工具やワークにより適当な姿勢を選択すればよい。本実施形態では、上述のワーク17の中心を原点に、エッジ検出装置5の座標系に対して、成形研削盤36のX軸、Y軸およびZ軸方向のNC制御指令を用いて一致させ共通の座標系を用いる。また、実際のワーク17の動きと、エッジ検出のデータ、NC制御のデータ、CAD(Computer Aided Design )/CAE(Computer Aided Engineering)/CAM(Computer Aided Manufacturing)の一連の設計・解析・製造データが相互に共有・互換・活用しやすいようになっている。そのため、本実施形態では、収差を補正しつつ、実際のワークの形状を測定しながら正確かつ自動的なNC加工が可能になっている。
【0052】
(エッジ検出ユニット) 図3は、本発明の測定原理を説明するために、図1に示したエッジ検出ユニット9の光学系を模式的に示した図である。投影光学系の光軸16aを一点鎖線で示す。破線はアンチピンホールフィルタ25により遮光されたため光が通っていないが、アンチピンホールフィルタ25により遮光されていなければ投影されていたはずの光路を示す。なお、ここでは説明のため光学系を単純化し単レンズとした模式図として表示してあるが、実際の光学機器の各レンズは、収差を補正するため、複数のレンズからなるレンズ群として構成されているのが通常である。
【0053】
本実施形態のエッジ検出ユニット9は、照明光学系である光源モジュール11から射出された平行な光束である照明光31の中にワーク17のエッジ17b(図1)を配置する。そして、投影光学系であるレンズ鏡筒13の対物レンズ23と投影レンズ24の投影レンズ24の共焦点28・28´に、ここを通る光線を遮光するアンチピンホールフィルタ25を挿入する。これにより平行反射光(投影光学系の光軸16aに平行に対物レンズ23に入射する反射光)30が直接撮像素子26に到達しないように制限され、投影された画像は、傾斜反射光(投影光学系の光軸16aと平行にならないで対物レンズ23に入射する反射光)29からなる像のみが得られるようにしている。
【0054】
レンズ鏡筒13には、対物レンズ23、アンチピンホールフィルタ25、投影レンズ24、検出モジュール14の一端に内蔵された撮像素子26がこの順序に、共通な光軸16aに沿って、一直線に配置されている。
【0055】
一方、光源モジュール11は、ワーク17と対物レンズ23の間に、光軸16aと45°の偏角をもって配置されたビームスプリッタ34に対して、光軸16aに直交する方向から平行な照明光31を照射する。このため、照明光31は、ビームスプリッタ34により光軸16aと同一の直線状の光軸16bに沿って、かつ投影方向とは逆方向に反射される。そして、ワーク17に対して、すべてのエッジ17bを含む全体に平行な照明光31を照射する。
【0056】
(光源モジュール) 次に、レーザ光源による光源モジュール11について説明する。ここでまず、対物レンズ23の光軸16aをワーク17を越えて延長した直線を、仮想線16cとする。また、ワーク17に入射する照明光31の光軸を光軸16bとする。この仮想線16cと照明光31の光軸16bが対物レンズ23の前側焦点27´を頂点としてなす角を偏角θ(°)とする。つまり、偏角θ(°)とは、投影方向と照明方向の角度の違いと表現できる。このとき、この仮想線16cを基準として、照明光31の光軸16bが、偏角θ(°)=180となるように構成されている。言い換えれば、光軸16aにそって投影光学系に入射する光線の向きと、ワーク17を照明する光線の向きとが180°、つまり、投影方向と反対の方向から照明光31を当てている。
【0057】
このような方向から照明光31をワーク17に照射することで、ワーク17からの反射光を用いてエッジ検出をすることができる。特に、本実施形態では、照明の方向と投影の方向が180°、つまり真逆であるため、反射光を効率的に投影することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、投影光学系に入射する反射光を妨げないために、後述するビームスプリッタ34により反射光を導入しているが、ここで言う照明光31の光軸16bは、ビームスプリッタ34により90°屈曲された後のワーク17に入射する角度をいう。
【0059】
光源モジュール11には、レーザ光源として、出力10mWのHe−Ne Leasr発振器からなるレーザ発振器21が内蔵される。このレーザ発振器21は、10mvの電圧が印加され、周波数λ=623.8、光路径φ=1.1(mm)のレーザ光線を発する。ここから照射された照明光31は、拡散レンズ(図示せず)により拡散される。
【0060】
この拡散された光線を減光する光量調整手段としてのNDフィルタ(Neutral Density Filter)19が配置される。NDフィルタ19は、10%の透過率としている。
また、調光されたレーザ光線はコリメータレンズ22により光軸と平行な平行光に変換される。この照明光31は、コヒーレントな状態が維持されている。したがって、光源モジュール11からは、均質でコヒーレントな平行光が照明光31として照射される。
【0061】
(ビームスプリッタ) ビームスプリッタ34は、光線の一部を反射し、他の一部を透過させるものであり、例えば、2つの直角プリズムを組み合わせ、接合面に誘電体多層膜や金属薄膜をコーティングしたプリズム型や、ウェッジ基板型、平面型などがあるが、本実施形態では、平面型を採用している。
【0062】
なお、図3に示すように、このビームスプリッタ34を偏光ビームスプリッタとしてもよい。偏光ビームスプリッタは、所定の偏光は反射させ、これと90度位相の異なる偏光は透過させるものである。この場合、光源モジュール11のレーザ発振器21からの照明光31は、NDフィルタ19に替えて、若しくはNDフィルタ19と併せて設けた偏光フィルタ35で予め所定方向の直線偏光とし、ビームスプリッタに入射する。照明光31は偏光ビームスプリッタからなるビームスプリッタ34によりワーク17側に反射される。このとき偏光した照明光31は、大部分がビームスプリッタ34により反射されるように設定されているため、透過光は少ないので、光量の減少を防止できる。
【0063】
反射した照明光31は、1/4波長板33に入射させ、直線偏光から円偏光に変換する。そして、円偏光となった照明光31はワーク17に入射する。ワーク17で照明光31が反射するときに、照明光31の円偏光は逆向きの円偏光となる平行反射光30となる。ワーク17から反射した傾斜反射光29、平行反射光30は、回転方向が反対の円偏光となっているので、再び1/4波長板33により直線偏光とする。このとき偏光の位相は、ワーク17で反射する前と、90°回転した偏光面を持つ変更となっているため、傾斜反射光29、平行反射光30の大部分はビームスプリッタ34で反射せず透過して、投影光学系に進む。言い換えると、レーザ発振器21に戻る平行反射光30はほとんど無い。
【0064】
このため、投影のための光量を大きくして画像を明るくすることができるとともに、光源モジュール11のレーザ発振器21への光線の戻りを小さくして光源モジュール11のレーザ発振器21のダメッジを小さくすることができる。
【0065】
(反射光の発生) ここで、図4を用いて、ワーク17に照射された照明光31の反射の状態を説明する。図4に示すように、本実施形態では、ワーク17の小さな面積の方の底面17aは投影光学系の光軸16aと直交するように配置されている。この底面17aは、面粗度Rz≦0.1μm程度の鏡面とされ、平坦性も光学的に十分良好となっている。
【0066】
一方、ビームスプリッタ34で反射された照明光31は、投影光学系の光軸16aと平行な方向からワーク17に入射する。
このため、この底面17aに照射されたすべての照明光31の光軸16bは、入射した光路をそのまま180°方向を転換する。つまり、そのまま平行光として投影光学系の光軸16aに平行に投影光学系の方向に進む。本実施形態では、この投影光学系の光軸16aに平行な方向で対物レンズに入射する光線を平行反射光30という。
【0067】
すなわち、底面17aに入射した照明光31は、反射して平行反射光30となる。
一方、底面17aのエッジ17bでは、底面17aと同様に仕様が鏡面仕上げであっても、通常は、加工時のバリやダレ、稜線の欠け、乱れ、その他種々の理由から、底面17aよりも、ミクロ的に見るとその表面の形状が粗い。そのため、エッジ17bでは、設計上の法線に基づいた反射光(ここでは「正反射光」という。)の方向とは異なる乱反射による「散乱光」が生じる。この散乱光は、画面上ではエッジ17b近傍に光の「滲み」を生じさせる。本実施形態では、この投影光学系の光軸16aに平行でない方向で対物レンズに入射する光線を傾斜反射光29という。なお、この散乱光は、底面17aではほとんど生じない。
【0068】
すなわち、エッジ17bに入射した照明光31は、反射して平行反射光30と傾斜反射光29の両者が生じる。
なお、側面17d、大きな面積の方の底面のエッジ17c(図1)は照明光31が反射することはあっても、その反射光は投影光学系に入射しない。
【0069】
また、ワーク17に当たらず背景方向に進行した照明光31も、投影光学系に入射することはない。
(レンズ鏡筒) レンズ鏡筒13には、ワーク17側から順に、対物レンズ23、アンチピンホールフィルタ25、投影レンズ24がそれぞれ同一の光軸16aに沿って配置される。本実施形態の例では、対物レンズ23は、例えば直径D=50mm、焦点距離f=300mmの平行光を収束させるレンズで、ワーク17側に前側焦点27´を形成するとともに、検出モジュール14側に、後側焦点28を形成する。
【0070】
また、投影レンズ24は、直径D=50mmで、焦点距離28〜300mmのズームレンズをf=100mmで使用し、光源モジュール側に前側焦点28´を備えており、この前側焦点28´は対物レンズの後側焦点28と一致させており、この焦点のことをここでは共焦点と呼んでいる。
【0071】
(アンチピンホール) この共焦点である後側焦点28,前側焦点28´の位置には、平行反射光30(対物レンズ23に光軸16aと平行に入射した光線)が、対物レンズ23により後側焦点28に集光された光線を遮光するフィルタ機能をもったアンチピンホールフィルタ25が配置されている。ここで、「アンチピンホール」とは、光軸16a(投影光学系の光路中心線)上の対物レンズの後側焦点位置に配置され、対物レンズ23に対して光軸16aと平行に入射した光のみを遮光してその通過を妨げ、それ以外の光軸16aに平行ではない光は通過を妨げないように構成されているものである。言い換えるならば、アンチピンホールは、通常のピンホールとは遮光と透光とが逆になっている構成のものである。アンチピンホールフィルタ25は、そのようなアンチピンホールを有したフィルタである。なお、このアンチピンホールフィルタ25は、光軸16a方向および光軸16aに直交する方向に微調整可能な周知の位置調整手段を備えている。なお、アンチピンホールの調整は、表示画面を見ながら操作すれば、エッジ17bの暗線がはっきり見える位置にすれば足りる。また、アンチピンヒールの大きさについて、本実施形態では直径D=500μmであるが、もちろん、その大きさや位置については、そのときの光学系の構成、光源の波長により適宜調整されうることは言うまでもない。また、アンチピンホールの大きさが可変のものとしたり、あるいはアンチピンホールフィルタ自体を異なるアンチピンホールを有するものと交換可能な交換式としてもよい。
【0072】
また、アンチピンホールフィルタ25の具体的構成例としては、光学的に平行な板ガラスに光線が不透過の塗料や金属箔等により光線を遮光するように構成されているものが挙げられる。また、透過型の液晶パネルを用いてもよい。
【0073】
投影レンズ24の後側焦点26´は、検出モジュール14の撮像素子26の検出面と一致している。また、対物レンズ23の前側焦点27´を含む光軸16aと直交する面に、被検出対象であるワーク17のエッジ17bを一致させている。
【0074】
(拡大・縮小投影) 本実施形態のエッジ検出装置5では、投影レンズ24の焦点距離f2=f2=100mmと、対物レンズの焦点距離f1=f1=300mmとの関係は、f1>f2となっており、f2の焦点距離の方がより短い。このため、エッジの画像は光学的に縮小され、広い範囲のエッジ全体が、ワークより小さな撮像素子26により検出できる。拡大・縮小の倍率は、工作機械の種類・ワーク・工具などにより、設置場所やワークの大きさなど距離の条件・CCDチップの大きさなどの検出エリアの条件・求める工作精度など検出精度の条件などを適宜考慮して選択できる。本実施形態においても、投影レンズ24は、28〜300mmのズームレンズを採用しており、条件を変更することができる。もちろん、精度を上げるため、焦点距離f1<f2の拡大可能な構成としてもよい。
【0075】
図3は、模式図であるため、その他の拡大投影系のレンズ構成を採用できることは言うまでもない。
(検出モジュール) 検出モジュール14は、撮像素子26として、マトリクス状にCCDをアレー配置したCCDカメラである。ここで受信した光は電気信号に変換され、パソコン20で例えばドットマトリクスのデータとなり画像処理される。
【0076】
これを受ける撮像素子26は、1pixelが縦7.4μm、横7.4μmで、エリアイメージは、縦11.84[mm]×横8.88[mm]の縦1600pixel×横1200pixelの1.92Mega pixelのCCDカメラである。
【0077】
(投影光学系の作用) このような光学系の構成とすることにより、レーザ発振器21から出射されたレーザ光線が拡散レンズにより拡散され、コリメータレンズ22を通って平行光に変換され、この平行なレーザ光線の光束である照明光31が光軸16aと直交する方向からビームスプリッタ34に入射する。ビームスプリッタ34に入射された照明光31は、光軸16aと平行な方向に反射され、ワーク17全体を照射する。ワーク17の底面17aからは、平行光がそのままの光路で平行を維持したまま平行反射光30として反射されてくる。ワーク17のエッジ17bでは、照明光31が正反射及び乱反射により色々な角度の散乱光が発生し、平行反射光30と傾斜反射光29を生じる。
【0078】
また、照明光31のうちワーク17に直接照射されない光線は、投影光学系には入射しない。また、ワーク17の側面17d、ワーク17の大きい面積の方の底面のエッジ17cに照射された照明光31も、その表面で反射するが、概ね背面方向に進み、投影光学系には入射しない。
【0079】
ワーク17の底面17aで反射された反射光の全部及びエッジ17bで反射された反射光の一部は、投影光学系の光軸16aに平行な平行反射光30となる。
底面17aのエッジ17bで反射された光線の残る一部は傾斜反射光と29となる。その他の部分に進んだ照明光31は、反射しても投影光学系に入射することはない。
【0080】
次に、平行反射光30となった反射光は、そのほとんどがビームスプリッタ34を透過し、光軸16aと平行に対物レンズ23に入射し、その作用により対物レンズ23の後側焦点28で、集光する。この対物レンズ23の後側焦点28の位置には、ここを通過する光線のみを遮るフィルタ機能をするアンチピンホールフィルタ25が設置されているので、集光された平行反射光30のすべては完全に遮断される。
【0081】
一方、傾斜反射光29となった反射光は、同様にそのほとんどがビームスプリッタ34を透過し、光軸16aと一定の傾きをもって対物レンズ23に入射するが、光軸16aに対して傾いた光線であるため、対物レンズ23の作用によっては後側焦点28で集光されることはなく、後側焦点28を含め面のうち、後側焦点28とは異なる地点を通過する。したがって、対物レンズ23の後側焦点28の位置に配置されたアンチピンホールによっては遮光されることなく、検出モジュール14の撮像素子26に入射する。
【0082】
この場合、ワーク17のエッジ17bの同一地点から発生した散乱光は、撮像素子26の同一ピクセルに入射する。
すなわち、撮像素子26に入射する光線は、傾斜反射光29のみとなる。
【0083】
(エッジ検出) つまり、本実施形態のワーク17のようなものを本エッジ検出装置5により観測すると、図5に示す参考写真のように、全体が低輝度の画面の中に、傾斜反射光29が入射するワーク17の底面17a部分の周囲のエッジ17bのみが高輝度の輝線として現れる。
【0084】
そして、この輝線を拡大して見ると、図6に示す参考写真のように、輝線の中央にさらに輝度の低い暗線が現れ、「暗−明−暗−明−暗」のパターンが形成される。これは、最も反射光量の多い正反射光(乱反射以外の反射光)が、アンチピンホールによりキャンセルされたため暗線ができ、それを囲むように散乱光により輝線が形成されているからである。
【0085】
この部分の輝度を採ってみると、図7(b)に示すグラフのように、エッジ17bの輝線の部分の輝度が高く、その輝線の中央の暗線の部分は、その輝度が低くなっていることもデータ上はっきりと示されている。
【0086】
以上のように、本実施形態のエッジ検出方法によれば、特に、エッジ部分の輝線の中央に暗線が示されるため、「暗−明−暗−明−暗」のパターンで、エッジ17bの正確な位置を、「暗線」により目視或いは数値により正確に把握できる。
【0087】
また、たとえエッジの状態で暗線が明確に現れない場合でも、底面17aが低輝度で表示されるため、少なくとも「暗−明−暗」のパターンで、「輝線」により目視でもエッジ17bを確認でき、また、数値的にエッジ17b捉える場合でも、従来のように閾値によりエッジ17bの位置が変動することがない。
【0088】
(従来技術との比較) なお、図7(b)は、図13に示すような従来のエッジ検出装置のエッジ部分の輝度を示すグラフであるが、従来のエッジ検出装置では、シルエットのみしかエッジ検出ができないというデメリットがあるが、それはさておいても、光線の干渉やにじみでエッジ近傍の輝度がグラデーションとなっており、閾値の取り方でエッジ検出の位置が変化してしまうという問題があった。
【0089】
この点、本実施形態のエッジ検出装置では、エッジ部分が散乱光により生じた光輝度の部分に挟まれて、低輝度の暗線となって示されるため、閾値によってエッジ検出の位置が変化することがほとんどない。
【0090】
また、底面17aが低輝度で示されるため、表示画面において、全体が低輝度の画面の中で、エッジ17b近傍のみが光輝度の輝線となり、さらにその輝線の中にエッジが低輝度の暗線として示される。
【0091】
このため、視覚的に認識しやすいという効果がある。
さらに、画像処理においても、データの認識が容易となる。
(成形研削盤の詳細) 次に、このようなエッジ検出装置5を用いた工作機械である成形研削盤36について説明する。
【0092】
(コンピュータ) 図8に示すパソコン20の機能を示すブロック図のように、撮像素子26(図3)からの信号を演算処理するコンピュータであるパソコン20(図2参照)は、CPU20a、RAM20b、ROM20c、外部記憶装置としてのHDD20d、外部インターフェイス20eを備える。HDD20dには、エッジ判定プログラム、エッジ表示プログラム、収差修正処理プログラムが記憶されており、パソコン20をエッジ判定、エッジ表示、収差処理の各制御装置として機能させている。このパソコン20は、外部インターフェイス20eを介して、表示装置20fとしての例えばLCD(液晶ディスプレー)と、入力装置20gとしての例えばキーボード、マウスが接続されている。表示装置20fは、パソコン20にインストールされた上述の各プログラムを実行するためのモニター画面であるとともに、パソコン20により画像信号として処理されたエッジ画像を表示することができる。
【0093】
(NC制御装置、CAD用コンピュータ) また、パソコン20は、成形研削盤36(図2参照)のNC制御装置8、CAD用コンピュータ7にもそれぞれ接続されている。NC制御装置8は、ワーク17と砥石15の相対位置をフィードバックしながら、入力された設計データに基づき制御信号をワーク支持装置2、砥石支持装置(図示せず)、スピンドル18に送信して研削加工を行う。CAD用コンピュータ7は、ワーク17の設計データが記憶されており、このデータをNC制御装置に送信して、CADデータに基づくNC制御をすることができる。
【0094】
(エッジ判定の手順) 次に、図9に示すフローチャートに沿って本実施形態の成形研削盤36(図2)における、エッジ判定の手順およびその後のパソコン20の処理を説明する。まず、予めパソコン20を立ち上げて、エッジ判定プログラムを起動する。ワーク17をワーク支持装置2(図1)に装着する(S1)。このとき、ワーク17の中心とNC制御の座標軸の原点が一致するようにする。そして、エッジを判定したい部分を対物レンズ23の前側焦点27´(図3)の照明光31の範囲内にくるようにワーク支持装置2により移動させる。続いて、入力装置20gから光源用電源12をコントロールし適当な出力になるように調整して光源モジュール11からレーザ光線を射出する。次に、表示装置20fを見ながら、光量調整手段であるNDフィルタ19によりいわゆる白飛びや黒潰れにならないように光量を微調整する(S2)。また、アンチピンホールフィルタ25のエッジが明確になるように軸方向の位置を調整する。検出モジュール14の位置を軸方向に調整し画像のピントの微調整をする(S3)。また、表示装置20fを見ながら、必要があれば、エッジ画像が帯状の2本の高輝度の部分に挟まれた1本の低輝度の部分となるようにワーク17、光量、アンチピンホールフィルタ25、検出モジュール14の調整を繰り返す(S4:NO)。
【0095】
調整ができれば、表示装置20fに表示されたワーク17は、エッジ部分が帯状の2本の高輝度の部分に挟まれた1本の低輝度の部分となって表示される(S4:YES)。
パソコン20は、エッジ判定プログラムによりエッジ判定手段として、画像処理により信号強度を判定し、帯状の2本の高輝度の部分に挟まれた低輝度の部分をエッジと判定する(S5)。具体的には、たとえば、高輝度のドットを選択し、ノイズ処理をした後、連続した帯状の領域を抽出する。さらに、この帯状の部分から低輝度の連続した部分を抽出する。複数抽出された場合は、例えば、最も長く連続するもの、帯状の高輝度部分の中央部に存在するもの、或いは低輝度部分の幅の最も大きなものなどの条件で1本のラインに絞り込む。さらに、予め設計データに基づき、設計上のエッジの位置近傍のデータのみアンド条件で取捨して判断することで誤認識を抑制してもよい。また、データの欠けを予測して補充することも好ましい。
【0096】
このとき、仮に高輝度のエッジ部分に低輝度の暗線が現れなくても、底面17aと側面17d、背景は低輝度で示されているため、多少精度は下がるが、高輝度の部分をエッジと判断して工作することももちろん十分に可能である。エッジ17bの状態などによりこのような状態は生じうる。また、この高輝度の中央部分をエッジ17bとして画像処理することもまた十分に可能である。
【0097】
エッジ17bが検出されると、表示装置20fでは、この検出されたエッジ17bを線図としたエッジ画像で表示することもできる。なお、アンチピンホールフィルタ25を可動式にして光路から待避するように構成すれば、従来の投影機と同様の画像を表示することも可能である。この場合は、底面17a全体が高輝度で表示されるため、高輝度の部分の周端部を、通常の投影画像のようにエッジ17bと判定することになる。
【0098】
なお、パソコン20は、検出されたエッジ17bを表示装置20fに座標で表示することもできる。もちろん表示装置20fに表示されるワーク17の拡大された画像と比較しつつこの座標値を見たり、座標値によりワーク17の見たい部分を表示装置で表示することもできる。
【0099】
(マニュアル操作) また、パソコン20は、ワーク17を対象物として撮像素子26から入力された信号に基づきワークのエッジを検出するとともに、エッジデータに基づきエッジ画像を表示装置20fに表示する。このとき、CADにより設計した設計データに基づいてエッジ17bを表示装置20fでエッジ画像と重畳して表示させることもできる。このとき成形研削盤36のオペレータは、この表示された設計画像を参照しつつ、同じ表示装置20fに表示されたエッジ画像に基づいてマニュアル操作で研削加工をすることができる。そのため、NC制御ではできないような高いスキルの技術を発揮することもできる。
【0100】
(NC自動制御) また、パソコン20は、CADを用いて設計されたワーク17の設計データを入力して、NC制御をおこなう。また、撮像素子26から入力された信号に基づきワーク17のエッジ17bをエッジデータとして検出する。この設計データとエッジデータは同一の座標系を共有する。この座標系を用いて、現在エッジ検出装置5によりエッジ17bが検出されている位置と同位置・同角度の設計データから、同位置・同角度で投影された計算上のエッジ17bを演算して抽出する。そして、設計上のエッジの位置を表示装置20fで表示しつつ、実際に検出したエッジ画像を表示する。一方、コンピュータ内部でも、入力された対象物の設計データに基づき、逐次現状のワークの形状を測定して比較し、その差分を演算する(S6)。この差分をフィードバックすることで成形研削盤36によりワーク17の研削加工をNC制御により自動的に行う(S7)。この差分があれば、加工後のワーク17の形状を逐次測定し、加工を繰り返す(S8:NO)。そして、CADデータと抽出されたエッジの形状に差分がなくなれば加工は完了する(S8:YES)。
【0101】
(自動収差補正) なお、本実施形態のエッジ検出装置5は、縮小投影系の光学装置をもつため、平行光の精度やレンズの固有の収差の影響がありエッジの検出結果に影響する。このため、本実施形態のエッジ検出装置は、光学収差測定装置としての撮像素子26により測定した光学収差を予め前記コンピュータに入力し、少なくともエッジデータ及び設計データのいずれかをこの光学収差に基づいて補正する。
【0102】
具体的には、図3において、対物レンズ23の前側焦点27´に、ワーク17に替えて、正確な配列のマトリクス状のスリットやピンホールをアレー状に配置した検査用パターン39を配置する。スリットやピンホール以外は、鏡面とした平坦面で、光軸16aと直交した姿勢でセットする。この状態で光源モジュール11から照明光31をこの検査用パターン39に照射し、この像を検出モジュール14の撮像素子26で撮像する。この場合、スリット若しくはピンホールのみが乱反射による散乱光や回折光を発生するので、検出モジュール14で検出できる。
【0103】
ここでは、エッジ検出ユニット9の光軸はY軸方向に沿って配置しているので、この検査用パターン39の画像の撮像素子26で撮像した画像の測定ポイントの位置を測定し、そのXZ平面でのずれをこのエッジ検出ユニット9の固有の光学系の収差として記録する。
【0104】
次に、CADから設計データを入力する場合に、設計データ自体に、この光学収差測定装置により得た光学系の収差を反映させたデータを作成する。具体的には、上述のように記録した各測定ポイントにおける位置ズレと隣接する測定ポイントの位置ズレを、それらの間にあるピクセルに比例配分してこれらの測定ポイント間の各ピクセルの位置を修正する。そして、この位置が修正されたピクセルに従って設計データに基づいてNC制御装置8に制御の指令を出す。
【0105】
NC制御装置8により成形研削盤36で研削加工を行うが、エッジ検出装置により得たエッジ画像はそのまま加工をせずにNC制御装置8にフィードバックして加工を進める。この場合、エッジ検出装置により得たエッジ画像には収差が含まれているが、CADによる設計データの方でその補正が終了しているので、研削加工は正確に行われることになる。
【0106】
ここではCADデータの方に収差を反映させているが、もちろん、エッジ画像を、そのつど収差に対する補正を反映させた状態でエッジ検出をしてもよい。この場合は、計算量が多くなるためコンピュータの負担が大きくなるが、表示装置20fに表示されるワーク17の表示画像も収差が補正された状態で表示されるため好ましいといえる。
【0107】
本実施形態は以上のような構成を備えるため、以下のような効果がある。
(1)本発明の実施形態のエッジ検出装置5によれば、シルエットを得られない形状のエッジも検出することができる。なお、エッジに限らず、浅いディンプルやトレンチ等は、散乱光に加え、回折光も発生するので、検出することができる。
(2)また、本実施形態のエッジ検出方法によれば、正確なエッジ画像を得ることができる。特に、エッジ部分の輝線の中央に暗線が示されるため、「暗−明−暗−明−暗」のパターンで、エッジ17bの正確な位置を、暗線で目視或いは数値により正確に把握できる。また、たとえエッジの状態で暗線が明確に現れない場合でも、底面17aが低輝度で表示されるため、少なくとも「暗−明−暗」のパターンで、輝線で目視でもエッジ17bを確認でき、また、数値的にエッジ17b捉える場合でも、従来のように閾値によりエッジ17bの位置が変動することがない。
(3)また、非接触でエッジ画像をえられるため、加工途中のワーク17などの輪郭形状も正確かつリアルタイムに得られる。
(4)エッジ画像は、撮像され、これをパソコン20で画像処理することで数値的に測定することができる。
(5)エッジ画像を縮小して同一の撮像素子で捉えているため、エッジ検出の対象物であるワーク全体の画像を得ることができ、ワークの幅などを実測することができる。なお、エッジの画像を光学的に拡大すれば、エッジの検出がより正確にできる。
(6)光源モジュール11からの照明光31の光軸16bを、θ=180となるように配設したため、ワーク17に対して、投影方向と反対方向から照明光31を照射できるので、全体に均一に照明光を照射できる。また、単一の光源モジュール11で投影されるワーク17全体が照射できるので構成が簡易となる。
(7)また、ワーク17の底面17aに対して垂直に照明光を照射することで、ワークと光学系との位置調整が容易になる。
(8)ビームスプリッタ34により照明光を導入しているので、光源モジュール11自体を移動しなくても、ビームスプリッタ34の調整で照明光31の光路(光軸16b)を調整できる。
(9)光源モジュール11は、光量調整手段を備えるため、エッジ近傍の信号強度が、帯状の2本の高輝度の部分に挟まれた低輝度の部分となるように適度な光量に調整することができる。また、光量調整手段は、NDフィルタ19であるため無段階に調整できる。
(10)光源モジュール11の光源としてレーザ発振器21を備え、He−Neレーザを用いているため十分な光量を得られ、コヒーレントな光源とすることで、偏光などのコントロールを容易にしている。
(11)撮像素子26は、高密度にマトリクス状にCCDを配置したCCDカメラであるため、低ノイズ・高感度でリアルタイムに数値化して画像処理することができる。
(12)アンチピンホールフィルタ25は、光軸方向に調整可能に配置されるため、鮮明なエッジ画像を得ることができる。
(13)検出されたエッジ画像を表示装置20fで確認できるだけでなく、同一の座標系とされたCADによる設計図面に重ねてモニターすることができるため、より直感的に把握でき、マニュアルの操作においても操作が容易になる。
(14)エッジ画像を表示するだけでなく、その形状を座標値で表示することにより、より形状を正確に確認できる。
(15)ワーク17の形状が数値的に把握されるため、この数値に基づきNC自動制御により正確かつ容易に加工することができる。特に、CADにより設計した設計データを、そのままパソコン20に入力し、これに基づきNC制御装置8と連動させてエッジ検出装置によりワーク17の形状をフィードバックしつつ自動制御することで、完全自動化された製造をすることができる。
(16)さらに、予めエッジ検出装置固有の収差を測定し、CADデータ若しくはエッジ画像について補正するため、エッジ検出装置固有の収差を考慮することなく、測定した形状と設計された形状とを比較しながら対象物の加工をすることができる。また、補正された形状を表示装置20fに表示することもできる。
【0108】
(第2の実施形態)
図10に示す、本発明の第2の実施形態のエッジ検出装置では、照明光学系である光源モジュール11からの照明光31の照射方向が異なる点で第1の実施形態と異なる。
【0109】
その他の点は、基本的に第1の実施形態と共通するので、その説明を省略する。
(光源モジュール) ここでも同様に、対物レンズ23の光軸16aをワーク17を越えて延長した直線を、仮想線16cとする。また、ワーク17に入射する照明光31の光軸を光軸16bとする。このとき、この仮想線16cを基準として、照明光31の光軸16bが、対物レンズ23の前側焦点27´を中心に偏角θ=135°となるように光源モジュールが配設されている。
【0110】
言い換えれば、ワーク17の底面17aと45°傾けた方向からワーク17に照明光31を照射している。さらに別の言い方をすれば、ワーク17の底面17aの法線と45°傾いた方向から照明される。なお、照明光31は、ワーク17のエッジ17b全体を照明するように構成されている。
【0111】
ここで、図11に沿って、本実施形態において照明光31がワーク17に照射された状態を説明する。まず、底面17aを照射した照明光31は、底面17aの法線と45°の傾きを持っているため、その反射光も底面17aの法線と45°の傾きで反対方向に反射し、アンチピンホールフィルタ25で遮光するまでもなく、投影光学系には入射しない。
【0112】
一方、エッジ17bをやや側面側から照明するため、エッジ17bの法線が光軸16aと22.5°傾いた位置17eの部分の正反射光が確実に投影光学系で捕捉される。
また、この正反射光を生じる位置17eは、投影光学系から見てエッジ17b部分の底面17a側の端17fではなく、ここから離れたエッジ17b中央寄りにくる。そして、この位置17eで反射された正反射光は、平行反射光30となり、アンチピンホールフィルタ25により遮光される。このため、アンチピンホールフィルタ25により遮光されて形成される低輝度の暗線が、エッジ17b部分に形成される高輝度の輝線の中央よりに見える。
【0113】
なお、この構成において、ワーク17をY軸(投影光学系の光軸16a)に沿って回転させるワーク回転機構を設ければ、照明光31を照射した方向と反対側のエッジ17bについても検出が容易になる。
【0114】
本実施形態は以上のような構成を備えるため、第1の実施形態の効果に加え、以下のような効果がある。
(17)光源モジュール11からの照明光31が、底面17aの法線に対して45°傾けてあるので、底面17aに照射した照明光31は、投影光学系に入射せず、エッジ17b部分の反射光のみが投影光学系に入射し、エッジ17bが検出されるため、アンチピンホールフィルタ25に拠らずとも、より確実に底面17aからの反射光をキャンセルできる。
(18)底面17aの周囲のエッジ17bの平行反射光30による暗線が、底面17aの端ではなく、底面17aの端から離れた位置に来るので、エッジ17bからの傾斜反射光29により形成される輝線の中に平行反射光30による暗線が形成され、「暗−明−暗−明−暗」のパターンができやすく、画像上でエッジを認識しやすくなる。また、数値による画像処理上も処理が容易になる。
(19)ワーク17に入射する照明光31を光軸16aに沿って導入するための、ビームスプリッタ34が不要になるため、構成が簡易にできる。
(20)また、ビームスプリッタによる光量の減少がないため、同一出力の光源であれば画像を明るくでき、同じ画像の明るさであれば光源の出力を小さくできる。
【0115】
(第3の実施形態)
図12に示す、本発明の第3の実施形態のエッジ検出装置では、照明光学系である光源モジュール11からの照明光31の照射方向が第2の実施形態と共通し、この光源モジュール11が複数備えられる点で異なる。
【0116】
その他の点は、基本的に第1、2の実施形態と共通するので、その説明を省略する。
図12に示すように、本実施形態の光源モジュールは、第2の実施形態と同様の構成の光源モジュール11aと、この光源モジュール11aと光軸16aについて対称な位置に配設された光源モジュール11bを備える。
【0117】
本実施形態は以上のような構成を備えるため、第2の実施形態の効果に加え、以下のような効果がある。
(21)光源モジュール11a、11bを、光軸16aについて対象に一対設けたため、ワーク17の反対方向のエッジ17bについて、ワーク17を回転させることなく、適切にエッジ17bを検出することができる。
(22)対向するエッジ17bを同一のCCDカメラで同時に測定することで、エッジ17bの幅の絶対値を正確に測定することができる。
【0118】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第1の実施形態では、偏角θをθ=180、第2・3実施形態では、θ=135°としたが、偏角θは、ワーク17のエッジ17bが照明光を反射可能であれば、偏角θ(°)は、0<θ≦180の間で適宜選択可能である。
【0119】
○ 特に検出したいエッジの位置の設計上の法線と、投影光学系の光軸16aとの角度をα(°)とするときに、偏角θ(°)=180−2α(0≦α<90)とすると、照明光を偏角θ(°)として照明光を当てると、検出したいエッジの特定位置での正反射光が、平行反射光になる。第2の実施形態では、θ(°)=135とし、α(°)=22.5°として、偏角θ(°)=180−2αとしたが、この角度に限定されない。例えば、ワーク17が、直方体のような形状であれば、底面の一つを光軸16aと直交するように配置し、θ(°)=90とすることで、エッジの中心部分からの正反射光を平行反射光30とすることができる。
【0120】
このように構成することで、検出したいエッジの部分からの正反射光により強い光線がアンチピンホールでキャンセルされ、エッジ近傍の輝線のなかで、くっきりとした暗線となる。
【0121】
したがって、エッジの中でも検出したい部分を正確且つ明確に画面上で確認でき、また正確な画像処理をすることができる。
○ また、偏角θ(°)が変更可能なように、光源モジュール11を位置及び照射角度を変位可能にする光路変更手段を設けることも好ましい。
【0122】
○ また、光源モジュール11とワーク17の間にミラーやプリズムなどを設けて、光源モジュール11自体を変位させないで、ミラーやプリズムにより、その照明光31の光路を変更できるように光路変更手段を設ける構成も好ましい。
【0123】
○ 光源モジュール11の数も、1台又は2台に限らず、3台以上設けてもよい。
○ また、複数の光源モジュール11a、11b、11c…を予め異なる角度に設定し、切り替えて使用する構成も好ましい。
【0124】
○ またワーク17の位置をY軸(光軸16a)方向にシフト可能とし、ワーク17の背面側のエッジ17c(図1)の位置にピントを合焦するようなワーク変位機構を設ける構成も好ましい。この構成において、シフト量を計算することで、エッジ17b、17cの位置を3次元的に特定することもできる。
【0125】
○ 実施形態においては、光源としてHe−Neレーザを用いているが、他の各種レーザ発振器を用いてもよい。さらに、光源をレーザ光源に限らず、各色のLED( Light Emitting Diode )としてもよい。LEDは、可視光の紫(波長380〜450)、青(波長450〜495nm)、緑(波長495〜570nm)、橙(590nm)、赤(波長660nm)や、3波長混合の白色の他、不可視光である近紫外光(波長<380nm)を用いることもできる。
【0126】
○ さらに、白色の光源としては、上記LEDの他、ハロゲンランプ、水銀灯、白熱灯、放電灯、蛍光灯などその光源は限定されない。また、ここで言う白色の光源は、厳密な白色に限定されず、明らかに特定の色彩と認識されるものを除き、複数の波長を含むものをいう。このようなインコヒーレント光の方が、干渉波の影響が小さく、エッジがシャープに観察、測定ができる場合がある。
【0127】
○ 上記実施例は、光学系に、リレーレンズ(relay lens)を追加してもよい。リレーレンズとは、一つのレンズ系によって作られた実像を、再び実像として結像させるレンズ系で、工作機械の構成などにより測定する実像を移動したい場合に用いられる。このように構成することで、エッジ検出装置5を、種々の工作機械に適切に配置することができる。
【0128】
○ また、投影光学系は、プロジェクターとして直接投影画面に照射できるような構成としてもよい。
○ 本発明のこのエッジ検出装置により検出するのに適したワークとしては、スローアウェイチップに限らない。たとえば、平面部や筒状の曲面部が多く、その面の周縁にエッジが形成されたものが適している。したがって、ドリル、ミル、フライス、バイトなど刃先を備えた各種工具のほか、各種治具、正確なエッジ寸法が求められるゲージ、スケールなどに、好適に適用できる。
【0129】
また、その表面がいわゆる鏡面仕上げ(Rz≦0.1μm)のものが最もきれいにエッジを検出できる。また、いわゆる亜鏡面(Rz≦1.0μm)程度のものであれば、実用上十分な効果を発揮できる。さらに、市販のカッターナイフ程度の表面粗度であれば十分にエッジの検出が可能である。
【0130】
○ 本実施形態の円盤状の砥石15は、工作機の工具の一例であって、本発明は、ボール状、円錐状、筒状など各種の形状の砥石はもちろん、各種切削工具、研削工具、研磨工具等エッジを加工するすべての工具に適用でき、その支持方法も目的に応じて各種の形態を採り得る。
【0131】
○ 本発明のエッジ検出装置は、上述した成形研削盤36だけでなく、汎用フライス盤や多軸加工機、治具研削盤などにも搭載可能で、上記と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0132】
2…ワーク支持装置、3…投影光学系(従来技術)、4…ワークテーブル、5…エッジ検出装置、7…CAD用コンピュータ、8…NC制御装置、9…エッジ検出ユニット、10…ベース、11,11a,11b…光源モジュール、12…光源用電源、13…レンズ鏡筒、14…検出モジュール、15…砥石、16a…(投影光学系の)光軸、16b…(照明光31の)光軸、16c…仮想線、17…(エッジ検出の対象物としての)ワーク、17a…(ワーク17の小さい面積の方の)底面、17b…(底面17aの)エッジ、17c…(ワーク17の大きい面積の方の底面の)エッジ、17d…側面、17e…(正反射光が平行反射光30となる)位置、17f…(底面17aの)端、18…スピンドル、19…NDフィルタ(光量調整手段)、20…パソコン(パーソナルコンピュータ)、20a…CPU、20b…RAM、20c…ROM、20d…HDD、20e…外部インターフェイス、20f…表示装置、20g…入力装置、21…レーザ発振器、22…コリメータレンズ、23…対物レンズ、24…投影レンズ、25…アンチピンホールフィルタ、26…撮像素子、26´…投影レンズの後側焦点、27´…対物レンズの前側焦点、28…対物レンズの後側焦点(共焦点)、28´…投影レンズの前側焦点(共焦点)、29…傾斜反射光(投影光学系の光軸16aと平行にならないで対物レンズ23に入射する反射光)、30…平行反射光(投影光学系の光軸16aと平行に対物レンズ23に入射する反射光)、31…照明光(レーザ光線)、32…エッジ像、33…1/4波長板、34…ビームスプリッタ、35…偏光フィルタ、36…成形研削盤(工作機械)、39…検査用パターン、f1,f2…焦点距離、α…(エッジの法線と光軸16aとの)角度、θ…偏角、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッジ検出の対象物を一方の焦点位置に配置可能に設けられた対物レンズと、該対物レンズと共焦点を有するように当該対物レンズに対して前記対象物と反対側に配置された投影レンズと、前記共焦点に配置され、入射光のうちの前記共焦点を通過する光を遮光するアンチピンホールフィルタとを備えた投影光学系を有するレンズ鏡筒と、
前記対物レンズの光軸を前記対象物を越えて延長した仮想線において、当該仮想線を基準に当該対象物を中心に一定の偏角θ(°)を有する方向から、平行光を当該対象物に対して発するように配設された光源モジュールと、
該レンズ鏡筒により投影された映像を撮像するように前記光軸と直交するように配置された撮像素子と、
該撮像素子からの信号を演算処理するコンピュータとを備え、
前記対物レンズの前記光源モジュール側の焦点位置に置かれた前記対象物の投影画像を前記撮像素子で撮像し、
前記コンピュータは、前記撮像素子からの信号強度により輝度を判定し、エッジを判定するエッジ判定の手順を実行することを特徴とするエッジ検出装置。
【請求項2】
前記エッジ判定の手順において、撮像素子からの信号強度により輝度を判定し、2本の帯状の高輝度の部分に挟まれた低輝度の線状部分をエッジとして判定することを特徴とする請求項1に記載のエッジ検出装置。
【請求項3】
前記偏角は、前記エッジ検出をする前記対象物の測定点の法線と、前記投影光学系の光軸との間の角度をα(°)とするとき、
θ=180−2α(0≦α<90)とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のエッジ検出装置。
【請求項4】
前記偏角θ(°)は、90≦θ≦180であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエッジ検出装置。
【請求項5】
前記光源モジュールが配置される前記偏角θ(°)は、θ=180であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエッジ検出装置。
【請求項6】
前記光源モジュールは、光源とは別にその照明光の光路を反射し若しくは屈折させる光路変更手段を備えたこと
を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項7】
前記偏角θ(°)がθ=180であり、前記光路変更手段として前記対象物と前記対物レンズとの間に配置されたビームスプリッタにより前記光源モジュールからの平行光が導入されることを特徴とする請求項6に記載のエッジ検出装置。
【請求項8】
前記光源モジュールを、複数配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項9】
前記複数の光源モジュールのうち、照明光の光路を投影光学系の光軸に対して対称に配置可能に構成された光源モジュールを有することを特徴とする請求項8に記載のエッジ検出装置。
【請求項10】
前記光源モジュールは、レーザ光源を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項11】
前記光源モジュールは、LEDを備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項12】
前記光源モジュールは、白色の光源を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項13】
前記エッジ検出の対象物を、前記投影光学系の光軸と平行な方向に変位させるワーク変位機構を備えたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項14】
前記エッジ検出の対象物を、前記投影光学系の光軸を中心に回転させるワーク回転機構を備えたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項15】
表示装置をさらに備え、前記コンピュータは、前記撮像素子から入力された信号に基づき対象物のエッジをエッジデータとして検出するとともに、当該エッジデータに基づきエッジ画像を該表示装置に表示することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項16】
表示装置をさらに備え、前記コンピュータにより検出されたエッジを該表示装置に座標で表示することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のエッジ検出装置。
【請求項17】
請求項15に記載のエッジ検出装置が工作機械に搭載されるとともに、
入力された対象物の設計データに基づき、前記表示装置には、前記エッジ画像と重畳して該設計データに基づいた設計画像が表示されることを特徴とする工作機械。
【請求項18】
請求項17に記載のエッジ検出装置がNC制御可能な工作機械に搭載されるとともに、前記コンピュータは、当該工作機械の加工対象である工作物を前記対象物として前記撮像素子から入力された信号に基づき対象物のエッジをエッジデータとして検出するとともに、入力された対象物の設計データに基づき、前記エッジデータと前記設計データとの差分を演算し、この差分をフィードバックすることで工作機械をNC制御により自動制御して対象物を加工することを特徴とする工作機械。
【請求項19】
前記エッジ検出装置は、光学収差測定装置を備えるとともに、該光学収差測定装置により測定した光学収差を予め前記コンピュータに入力し、少なくとも前記エッジデータ及び前記設計データのいずれかを前記光学収差に基づいて補正することを特徴とする請求項18に記載の工作機械。
【請求項20】
前記工作機械は、成形研削盤であることを特徴とする請求項17乃至請求項19のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項21】
エッジ検出の対象物を一方の焦点位置に配置可能に設けられた対物レンズと、
該対物レンズと共焦点を有するように当該対物レンズに対して前記対象物と反対側に配置された投影レンズと、
前記共焦点に配置され、入射光のうちの前記共焦点を通過する光を遮光するアンチピンホールフィルタと
を備えた投影光学系を有するレンズ鏡筒と、
前記対物レンズの光軸を前記対象物を越えて延長した仮想線において、当該仮想線を基準に当該対象物を中心に一定の偏角θを有する方向から、平行光を当該対象物に対して発するように配設された光源モジュールと、
該レンズ鏡筒により投影された映像を撮像するように前記光軸と直交するように配置された撮像素子と、
該撮像素子からの信号を演算処理するコンピュータとを用い、
前記対物レンズの前記光源モジュール側の焦点位置に置かれた前記対象物の投影画像を前記撮像素子で撮像し、
前記コンピュータは、前記撮像素子からの信号強度により輝度を判定し、エッジを判定するエッジ判定の手順を実行することを特徴とするエッジ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−197171(P2010−197171A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41391(P2009−41391)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(590006343)株式会社和井田製作所 (20)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】