説明

プラズマ処理装置

【課題】プラズマ処理装置のステージの表面が損傷したとき、上記表面部分だけを容易に交換できるようにする。
【解決手段】ステージ20を、ステージ本体21とその上側の表面板22とに分割する。ステージ20を挟んで両側には、処理ヘッド10の移動に用いる一対のレール61が設けられている。このレール61上にステージ保守用クレーン30を設置する。クレーン30のフレーム31の一対の支え部32の下端部にスライダ34をそれぞれ設け、これをレール61にスライド可能に嵌合する。フレーム31の天井部33に吊具51を昇降可能に垂下し、これに連結部52を設ける。好ましくは、連結部52をボルト55にて表面板22の端面に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステージ上に配置した被処理物の表面をプラズマ処理する装置に関し、特に、大型サイズの被処理物に適したプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイのサイズは大型化している。それに伴い、フラットパネルディスプレイの製造に用いるプラズマ処理装置が大型になっている。一般に、プラズマ処理装置においては被処理物をステージ上に配置してプラズマ処理を行なう(特許文献1、2参照)。被処理物が大型の場合、ステージも大型にする必要がある。
【0003】
特許文献1、2のステージは、接地電極を兼ねている。ステージの上方の対向電極とステージとの間に電界が印加され、放電空間が生成される。この放電空間に処理ガスが導入されてプラズマ化される。プラズマ化された処理ガスが、ステージ電極上の被処理物に接触し、処理反応が起きる。上記対向電極を含む処理ヘッドは、ステージに対して水平方向に移動可能になっている。特許文献1では、ステージを挟んで両側に一対のレールが設けられている。これらレールにスライダを介して上記処理ヘッドの架台がスライド可能に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−311066号公報
【特許文献2】特開2008−153444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステージの表面は被処理物との接触により摩耗しやすい。また、ステージが電極を兼ねている場合、ステージの放電面が放電によって酸化されやすい。これを放置すると放電状態の均一性を損なう。そこで酸化した箇所を研磨して除去すると、ステージの表面が摩耗する。そのため、ステージをある期間使用したら交換する必要がある。しかし、ステージが大型の場合、これを交換するのは容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、処理ガスをプラズマ化して処理空間内の被処理物に接触させるプラズマ処理装置において、
上面に前記被処理物が載置されるステージと、
前記ステージの上方において水平な送り方向に移動可能に設けられ、前記ステージとの間に前記処理空間を画成し、かつ前記処理空間に前記処理ガスを供給する処理ヘッドと、
前記ステージを挟んで前記送り方向と直交する水平な巾方向の両側に設けられ、かつ前記ステージより前記送り方向の外側に延出する一対のレールと、
ステージ保守用クレーンと、
を備え、前記ステージが、ステージ本体と、前記ステージ本体とは別体をなして前記ステージ本体の上面に分離可能に設けられる表面板とを含み、前記ステージ保守用クレーンが、
前記巾方向に離れた一対の支え部及び前記ステージより高所に配置されて前記一対の支え部の間に架け渡された天井部を有するフレームと、
前記一対の支え部にそれぞれ設けられ、対応する前記レールにスライド可能に嵌合するスライダと、
一対をなして前記天井部の前記巾方向の両側部に昇降可能に垂下された吊具と、
前記一対の吊具の各々に設けられ、前記表面板に連結される連結部と、
前記一対の吊具を昇降させる昇降手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
ステージが被処理物との接触や放電等によって摩耗又は損傷したときは、表面板のみを交換すればよい。ステージ全体を交換する必要がなく、大掛かりな交換作業を回避でき、かつ保守費用を軽減できる。交換の際は、ステージ保守用クレーンをレールに沿ってステージの上方まで移動させる。次に、撤去すべき表面板を連結部に連結し、昇降手段にて吊具を上昇させる。これによって、上記撤去対象の表面板が吊り上げられ、ステージ本体から上へ離れる。そして、ステージ保守用クレーンをレールに沿って移動させることで、撤去対象の表面板を容易に撤去することができる。次に、ステージ本体の外側のスペースにおいて、新たに設置すべき表面板を連結部に連結し、昇降手段にて吊具を上昇させる。これによって、上記設置対象の表面板が吊り上げられる。次に、ステージ保守用クレーンをレールに沿ってステージ本体へ向けて移動させることで、設置対象の表面板をステージ本体の直上に位置させる。そして、昇降手段にて吊具を下降させる。これによって、設置対象の表面板をステージ本体の上面に容易に設置することができる。このようにして、ステージが大型であり重量が大きくてもステージ保守用クレーンを用いることによって表面板の交換作業を容易に行なうことができる。
【0008】
前記レールが、前記被処理物の処理の際に前記処理ヘッドを前記送り方向に移動させる移動機構のレールを兼ねていてもよい。或いは、前記レールが、前記処理ヘッドの保守の際に前記処理ヘッドを前記送り方向に搬送するヘッド保守用クレーンのレールを兼ねていてもよい。これにより、ステージ保守用クレーン専用のレールを別途敷設する必要を無く、設備を簡素化でき、設備コストを低減できる。
【0009】
前記ステージ本体の端面と前記表面板の端面とが互いに面一をなし、かつ前記表面板の端面にネジ穴が形成されており、前記連結部が、前記ネジ穴にねじ込まれるボルトを含むことが好ましい。
この場合、前記表面板の端面が前記ステージ本体の端面と一致するように揃えることによって、表面板をステージ本体に容易に位置決めできる。加えて、連結部を表面板の端面にボルト締めにて連結できるから、連結部が表面板の設置や撤去の障害になることがない。ステージ本体と表面板の端面どうしが面一であるために表面板に引っ掛け部を設けることができなくても、連結部と表面板を容易かつ確実に連結することができる。更に、ステージがプラズマ放電用の電極等を兼ねている場合、ネジ穴を表面板の上面すなわち放電面ではなく表面板の端面に設けることで、放電の安定性を確保できる。
【0010】
本発明は、大気圧近傍下においてプラズマを生成して表面処理する大気圧プラズマ処理に好適である。ここで、大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステージが摩耗又は損傷したときは、表面板のみを交換すればよい。ステージが大型であってもステージ保守用クレーンを用いて表面板を容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置を、ステージの表面板の交換時の状態で示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿って矢視した上記プラズマ処理装置の正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿って矢視した上記プラズマ処理装置の吊り機構の側面図である。
【図4】交換すべき表面板をステージ上に配置した状態で示す、上記プラズマ処理装置の平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿って矢視した上記プラズマ処理装置の正面図である。
【図6】上記プラズマ処理装置を、プラズマ処理時の状態で示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う上記プラズマ処理装置の正面断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置を、ステージの表面板の交換時の状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
本発明の第1実施形態を図1〜図7に示す。図6及び図7は、プラズマ処理装置1をプラズマ処理中の状態で示したものである。被処理物9は、例えば液晶表示パネルのガラス基板にて構成されている。基板9の寸法は、例えば3000mm×3000mm程度の大型サイズである。表面処理の内容は特に限定がない。プラズマ処理装置1は、撥水化、親水化等の表面改質の他、洗浄、親水化、エッチング、アッシング、成膜等の種々の表面処理に適用できる。
【0014】
プラズマ処理装置1は、処理ヘッド10と、ステージ20を備えている。図7に示すように、処理ヘッド10は、門型の架台15によってステージ20より上方に位置するように支持されている。処理ヘッド10の内部に対向電極11が収容されている。対向電極11は、プラズマ処理装置1の巾方向(y方向、図7において左右)に延びる長尺状になっている。対向電極11に電源3が接続されている。電源3は、例えばパルス波状の高周波電力を対向電極11に供給する。対向電極11の下面(ステージ20との対向面)には固体誘電体層12が設けられている。固体誘電体層12は、アルミナ等のセラミックの板でもよく、アルミナ等の溶射膜でもよい。
【0015】
処理ガス供給源2からの供給路2aが、処理ヘッド10に接続されている。図6に示すように、処理ヘッド10には、供給路2aに連なる吹き出し路13が形成されている。吹き出し路13は、処理ヘッドの長手方向(y方向)に延びている。
【0016】
処理ガス成分は、処理内容に応じて適宜選択される。例えば、撥水化処理の場合、処理ガスがCF、C、CHF、F等のフッ素含有成分を含むことが好ましい。親水化処理の場合、処理ガスが、N、O等を含むことが好ましい。酸化シリコンのエッチング処理の場合、処理ガスとしてCF、C等のフッ素含有成分にHO等の水素含有添加成分を添加したガスを用いるのが好ましい。アモルファスシリコンのエッチング処理の場合、処理ガス成分として更にオゾン等の酸化性成分を加えるのが好ましい。
【0017】
処理ヘッド10は、架台15を介して移動機構60に接続されている。詳細な図示は省略するが、移動機構60は、モータ等の駆動源、及びギア列、リードスクリュー、ベルト・プーリ、連接ロッド等の駆動力伝達機構を含む。処理ヘッド10の下方のステージ20を挟んで巾方向yの両側には、一対のヘッドスキャン用レール61が敷設されている。各ヘッドスキャン用レール61は、上記巾方向yと直交する送り方向(x方向、図6の左右方向)に延びている。ヘッドスキャン用レール61の両端部には、それぞれストッパ62が設けられている。架台15の巾方向yの両側の下端部には一対のスライダ17が設けられている。各スライダ17が、対応するヘッドスキャン用レール61にスライド可能に嵌合している。移動機構60によって架台15ひいては処理ヘッド10がレール61に沿って送り方向Xに往復移動(スキャン)される。
【0018】
ステージ20は、被処理物9を支持する支持部としての機能と、対向電極11と対をなす電極としての機能とを兼ねている。ステージ20の上面に被処理物9が載置される。ステージ20は、平面視で四角形の盤形状になっている。ステージ20の平面視の面積は、被処理物9とほぼ同じか被処理物9より少し小さい。被処理物9をステージ20上に載置すると、被処理物9の外周部がステージ20の周縁から外側へ突出する。ステージ20の外周の各側部に沿って4つ(複数)の枠部材23が設けられている。枠部材23によって、被処理物9の外周部が支持されている。枠部材23は、ステージ20の対応する側部に当接する進出位置(図6、図7)と、ステージ20から離れた退避位置(不図示)との間で進退可能になっている。
【0019】
ステージ20(後記本体21及び板22)は、アルミニウムやステンレス等の金属にて構成され、接地線3aを介して電気的に接地されている。処理ヘッド10ひいては対向電極11と、ステージ20とは、互いに上下に対向する。処理ヘッド10とステージ20との間に処理空間1aが画成される。処理ヘッド10は、ステージ20と協働して処理空間1aを画成する画成部を構成している。詳細な図示は省略するが、処理ヘッド10の吹出し路13が処理空間1aに臨んでいる。
【0020】
電源3から電極11への電力供給によって電極11,20間に電界が印加される。これによって、処理空間1a内に大気圧グロー放電が生成される。併行して、処理ガスが、処理ガス供給源2から供給路2aを経て吹出し路13に導入され、吹出し路13から処理空間1aに吹き出される。これによって、処理空間1a内で処理ガスがプラズマ化(励起、活性化、ラジカル化、イオン化を含む)される。プラズマ化された処理ガスが被処理物9の表面に接触する。これによって、処理反応が起き、被処理物9の表面がプラズマ処理される。
【0021】
ステージ20の構造を詳述する。
図7に示すように、ステージ20は、ステージ本体21と、表面板22を含む。表面板22は、ステージ本体21とは別体をなしてステージ本体21の上面に分離可能に被さっている。表面板22の厚さは、ステージ本体21より小さく、例えば1mm〜30mm程度である。表面板22の上面に被処理物9が載置される。
【0022】
ステージ本体21には、複数の吸着穴21cと複数の穴部21hがそれぞれ分散して形成されている。吸着穴21c及び穴部21hは、ステージ本体21の上面に達している。表面板22には複数の吸着穴22cが分散して形成されている。吸着穴22cは、ステージ本体21の吸着穴21cに一対一に連なり、かつ表面板22の上面に達している。図示しない吸引手段にて吸着穴21c,22c内のガスが真空引きされることによって、被処理物9が表面板22に真空吸着されている。被処理物9の吸着手段は、静電吸着でもよい。処理済みの被処理物9をステージ20から搬出する際は、吸着穴21c,22cに圧縮ガスを導入して、被処理物9とステージ20との吸着を解除することが好ましい。
【0023】
穴部21hの上端部は、表面板22によって塞がれている。穴部21hの下端部にガス圧路40が連なっている。ガス圧路40には三方弁等の切換器43が設けられている。切換器43を介してガス圧路40が正負2つの路部分40a,40bに分かれている。正圧路部分40aの基端部にコンプレッサ41(ガス圧付与手段)が連なっている。負圧路部分40bの基端部に真空ポンプ42(吸引手段)が連なっている。切換器43は、正圧路部分40aと負圧路部分40bの何れか一方を選択して穴部21hに接続する。ひいては、穴部21hが、コンプレッサ41と真空ポンプ42の何れか一方に選択的に接続される。被処理物9の処理時等においては、真空ポンプ42が穴部21hに接続され、穴部21h内のガスが真空ポンプ42にて真空引きされる。これによって、表面板22がステージ本体21に吸着されて固定される。コンプレッサ41が、吸着穴21c,22cの吸着解除用のガス圧送手段を兼ねていてもよい。真空ポンプ42が吸着穴21c,22c用の吸引手段を兼ねていてもよい。
【0024】
図1に示すように、更にプラズマ処理装置1には、ステージ20の保守用のクレーン30が設備されている。なお、ステージ保守用クレーン30は、プラズマ処理装置1の通常運転時にはプラズマ処理装置1から外しておき、後述するステージ20の保守作業の際にプラズマ処理装置1に設置してもよい。
【0025】
図1及び図2に示すように、ステージ保守用クレーン30は、フレーム31と、吊り機構50を含む。フレーム31は、一対の支え部32と、天井部33とを含む。支え部32は、垂直な柱状になっている。柱状支え部32は、ステージ20より上へ突出している。一対の柱状支え部32が、巾方向yに離れて対峙している。これら一対の柱状支え部32の上端部間に天井部33が架け渡されている。これにより、フレーム31が門型になっている。天井部33は、ステージ20より上の高さに位置している。
【0026】
各支え部32の下端部にスライダ34が設けられている。スライダ34がヘッドスキャン用レール61にスライド可能に嵌合されている。プラズマ処理時における処理ヘッド10の移動(スキャン)用のレール61が、ステージ保守用クレーン30の移動用のレールを兼ねている。レール61は、ステージ20よりも送り方向Xの一側(図1において左)に大きく延び出ている。一対のレール61におけるステージ20から延出した部分どうしの間に待機スペースSが画成されている。待機スペースSは、少なくとも表面板22より大きい面積を有している。ステージ保守用クレーン30は、レール61に沿って図1に示す待機位置と、図4に示す前進位置との間で送り方向Xに水平移動可能になっている。図1に示すように、待機位置におけるステージ保守用クレーン30は、待機スペースS上に在る。図4に示すように、前進位置におけるステージ保守用クレーン30は、平面視でステージ20とちょうど重なっている。図2及び図4に示すように、ステージ保守用クレーン30が前進位置のとき、門型のフレーム31がステージ20を巾方向yに跨ぐ。
【0027】
図1及び図2に示すように、天井部33の巾方向yの両側部に一対の吊り機構50が設けられている。各吊り機構50は、吊具51と、連結部52と、巻揚機54(昇降手段)を含む。吊具51が天井部33からワイヤ53によって垂下されている。図3に示すように、吊具51は、送り方向Xに延びる板状になっている。吊具51の長手方向の両端部に一対の連結部52が設けられている。連結部52は、ブロック状になっている。連結部52にボルト55が取り付けられている。図2に示すように、連結部52は、表面板22の端面に宛がわれる。表面板22の端面にはネジ穴22fが形成されている。ネジ穴22fにボルト55がねじ込まれることによって、連結部52が表面板22に連結される。
【0028】
図1及び図2に示すように、天井部33の巾方向yの両側には、一対の巻揚機54が、一対の吊具51にそれぞれ対応するように設置されている。各巻揚機54にワイヤ53の基端部が巻き付けられている。図2及び図5に示すように、巻揚機54のハンドルを回すことによって、対応する吊具51を昇降でき、ひいては表面板22を昇降できる。一対の巻揚機54のハンドル操作は互いに同期して行なうことが好ましい。巻揚機54として、電動のホイストやチェーンブロックを用いてもよい。
【0029】
上記構成のプラズマ処理装置1の使用方法を、表面板22の交換方法を中心に説明する。
被処理物9のプラズマ処理の際、ステージ20の表面、具体的には表面板22の上面が放電によって酸化しやすい。また、被処理物9の位置決めや搬出等の際に表面板22の特に周縁部が被処理物9との接触によって摩耗しやすい。そこで、表面板22を定期的に交換する。ステージ本体21はそのまま残置する。ステージ20の全体を交換する必要がない。したがって、大掛かりな交換作業を回避でき、かつ保守費用を低減できる。
【0030】
上記表面板22の交換は次の手順にて行なう。予め、処理ヘッド10をステージ20の直上から待機スペースSとは反対側に退避させておく(図1参照)。待機スペースS側のストッパ62を外してヘッドスキャン用レール61にスライダ34を嵌め込む。待機スペースSにおいてスライダ34上にフレーム31を組み、ステージ保守用クレーン30を構築する。
【0031】
そして、損耗した表面板22の撤去作業を行なう。先ず、クレーン30をレール61に沿ってステージ20の上方まで移動させる(図4参照)。次に、巻揚機54を操作して吊具51を下降させる。そして、図5に示すように、連結部52をステージ本体21上の表面板22の端面に当て、ボルト55をネジ穴22fにねじ込み、連結部52と表面板22を連結する。ステージ本体21と表面板22の端面どうしが面一であるために表面板22に引っ掛け部を設けることができなくても、連結部52と表面板22を容易に連結することができる。ネジ穴22fを表面板22の上面すなわち放電面ではなく表面板22の端面に設けることで、放電の安定性を確保できる。
【0032】
また、真空ポンプ42を停止して、表面板22の真空吸着を解除しておく。コンプレッサ41から穴部21h内にガスを送り込むことにしてもよい。これによって、表面板22とステージ本体21の吸着状態を確実に解除できる。そして、巻揚機54にて吊具51を上昇させる。これによって、図2に示すように、ステージ20の表面板22をステージ本体21から離して吊り上げることができる。続いて、クレーン30をレール61に沿って送り方向Xに移動させる。これによって、表面板22を待機スペースSに搬送できる。このようにして、表面板22を容易に撤去できる。
【0033】
次に、新たな表面板22の設置作業を行なう。先ず、図1に示すように、待機スペースSにステージ保守用クレーン30を配置する。そして、待機スペースSにおいて、新たな表面板22の端面に連結部52を宛がい、ボルト55をネジ穴22fにねじ込み、連結部52と表面板22を連結する。次に、図2に示すように、巻揚機54にて吊具51を上昇させ、新たな表面板22を吊り上げる。次に、図4に示すように、クレーン30をレール61に沿ってステージ20の上方まで移動させ、新たな表面板22をステージ本体21の直上に位置させる。次に、巻揚機54にて吊具51を下降させる。これによって、図5に示すように、新たな表面板22をステージ本体21の上面に容易に載置することができる。連結部52は、表面板22の端面に配置されているため、表面板22をステージ本体21上に設置する際の障害になることがない。
【0034】
表面板22の設置の際、切換器43によってコンプレッサ41を穴部21hに接続しておく。そして、コンプレッサ41から圧縮空気を穴部21hへ導入する。これによって、表面板22の下面に正のガス圧が付与される。このガス圧は、大気圧より50Pa程度高圧になるようにすれば十分である。このガス圧によって、ステージ本体21と表面板22との間の摩擦抵抗を十分に低減できる。したがって、表面板22が大型であり重量が重くても、人力にて十分に表面板22をステージ本体21上に位置決めできる。ステージ本体21と表面板22は同一面積かつ同一形状であるから、表面板22の端面がステージ本体21の端面と面一になるように表面板22を設置すればよく、表面板22の位置決めを容易に行なうことができる。4つの枠部材23を退避位置から前進させてステージ本体21及び表面板22の端面に宛がうことによって、表面板22が自動的に位置決めされるようにしてもよい。
【0035】
その後、切換器43によって、コンプレッサ41を穴部21hから切り離し、代わりに真空ポンプ42を穴部21hに接続する。そして、真空ポンプ42によって穴部21h内のガスを吸引する。これによって、表面板22をステージ本体21に吸着させて固定することができる。
【0036】
このようにして、ステージ20が大型であってもクレーン30を用いることによって表面板22の交換作業を容易に行なうことができる。
処理ヘッド10のプラズマ処理時における移動(スキャン)用のレール61が、ステージ保守用クレーン30の水平移動用のレールを兼ねているから、ステージ保守用クレーン30専用のレールを別途敷設する必要が無い。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理装置1は、一対のヘッドスキャン用レール61に加えて、更に一対のヘッド保守用レール71を備えている。これらヘッド保守用レール71は、ヘッドスキャン用レール61の巾方向yの両外側に敷設されている。各ヘッド保守用レール71は、ヘッドスキャン用レール61と平行に送り方向Xに延び、かつ、ステージ20よりも送り方向Xの一側(図8において左)に大きく延び出ている。一対のヘッド保守用レール71におけるステージ20から延出した部分どうしの間に待機スペースSが画成されている。
【0038】
ヘッド保守用レール71は、通常、処理ヘッド10の保守用のクレーン70が走行するのに用いられる。例えば、対向電極11が損耗した場合、処理ヘッド10を架台15から外し、ヘッド保守用クレーン70によって処理ヘッド10を吊り上げて待機スペースSへ搬送する。そして、処理ヘッド10内の対向電極11を交換した後、処理ヘッド10をヘッド保守用クレーン70によって再び吊り上げて架台15に再設置する。
【0039】
第2実施形態では、上記ヘッド保守用レール71が、ステージ保守用クレーン30の水平移動用のレールを兼ねている。表面板22の交換の際は、予め、ヘッド保守用クレーン70及び処理ヘッド10を待機スペースSとは反対側に退避させる。或いは、ヘッド保守用クレーン70をレール71から撤去してもよい。そして、待機スペースS側のストッパ72を外してレール71にスライダ34を嵌め込む。このスライダ34上にフレーム31を組み、ステージ保守用クレーン30を構築する。このクレーン30をレール71に沿って待機位置(図8)とステージ20上の前進位置との間で移動させ、第1実施形態と同様にして、損耗した表面板22の撤去及び新たな表面板22の設置を行なう。
第2実施形態においても、ステージ保守用クレーン30専用のレールを敷設する必要が無い。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変をなすことができる。
例えば、本発明は、一対の電極11,20の間の放電に被処理物9を直接晒すダイレクト方式のプラズマ処理装置に限られず、被処理物9を放電空間から離して配置し、プラズマ化した処理ガスを放電空間から被処理物9に吹き付ける所謂リモート式のプラズマ処理装置にも適用できる。すなわち、処理空間1aが電極間の放電空間とは別になっていてもよい。放電空間でプラズマ化した処理ガスを放電空間とは別の処理空間1aへ導き、処理空間1a内の被処理物9に接触させてもよい。リモート式のプラズマ処理装置においては、例えば処理ヘッド10内に一対の電極が設けられている。処理ガスが処理ヘッド10内においてプラズマ化されて吹き出される。したがって、ステージ20は、被処理物9を支持する支持部としての機能だけを有していれば足り、電極としての機能を兼ねていなくてもよい。よって、ステージ20の材質は金属に限られず、樹脂やセラミックス等の絶縁体であってもよい。
レール61又は71が、ステージ30より下側の床部ではなく、ステージ20より上側の高さに配置されていてもよい。例えば、処理室の側壁の上部又は天井にレール61又は71が架設されていてもよい。その場合、ステージ保守用クレーン30の支え部32は、垂直な柱状である必要が無い。或いは、支え部32が、天井のレール61,71からスライダ34を介して垂下されていてもよい。
ヘッド保守用クレーン70をステージ保守用クレーン30として兼用してもよい。
被処理物9は、液晶表示パネルに限られず、プラズマ表示パネル等の他のフラットパネルディスプレイであってもよく、更にフラットパネルディスプレイに限られず、半導体ウェハや樹脂シート等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、半導体装置や液晶表示装置の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 プラズマ処理装置
1a 処理空間
2 処理ガス供給源
2a 供給路
3 電源
3a 接地線
9 被処理物
10 処理ヘッド
11 対向電極
12 固体誘電体層
15 架台
17 スライダ
20 ステージ
21 ステージ本体
21c 吸着穴
21h 穴部
22 表面板
22c 吸着穴
22f ネジ穴
23 枠部材
30 ステージ保守用クレーン
31 フレーム
32 支え部
33 天井部
34 スライダ
40 ガス圧路
40a 正圧路部分
40b 負圧路部分
41 コンプレッサ(ガス圧付与手段)
42 真空ポンプ(吸引手段)
43 切換器
50 吊り機構
51 吊具
52 連結部
53 ワイヤ
54 巻揚機(昇降手段)
55 ボルト
60 移動機構
61 ヘッドスキャン用レール
62 ストッパ
70 ヘッド保守用クレーン
71 ヘッド保守用レール
72 ストッパ
S 待機スペース
x 送り方向
y 巾方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスをプラズマ化して処理空間内の被処理物に接触させるプラズマ処理装置において、
上面に前記被処理物が載置されるステージと、
前記ステージの上方において水平な送り方向に移動可能に設けられ、前記ステージとの間に前記処理空間を画成し、かつ前記処理空間に前記処理ガスを供給する処理ヘッドと、
前記ステージを挟んで前記送り方向と直交する水平な巾方向の両側に設けられ、かつ前記ステージより前記送り方向の外側に延出する一対のレールと、
ステージ保守用クレーンと、
を備え、前記ステージが、ステージ本体と、前記ステージ本体とは別体をなして前記ステージ本体の上面に分離可能に設けられる表面板とを含み、前記ステージ保守用クレーンが、
前記巾方向に離れた一対の支え部及び前記ステージより高所に配置されて前記一対の支え部の間に架け渡された天井部を有するフレームと、
前記一対の支え部にそれぞれ設けられ、対応する前記レールにスライド可能に嵌合するスライダと、
一対をなして前記天井部の前記巾方向の両側部に昇降可能に垂下された吊具と、
前記一対の吊具の各々に設けられ、前記表面板に連結される連結部と、
前記一対の吊具を昇降させる昇降手段と、を含むことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記レールが、前記被処理物の処理の際に前記処理ヘッドを前記送り方向に移動させる移動機構のレールを兼ねていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記レールが、前記処理ヘッドの保守の際に前記処理ヘッドを前記送り方向に搬送するヘッド保守用クレーンのレールを兼ねていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ステージ本体の端面と前記表面板の端面とが互いに面一をなし、かつ前記表面板の端面にネジ穴が形成されており、前記連結部が、前記ネジ穴にねじ込まれるボルトを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−69470(P2012−69470A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215221(P2010−215221)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】