説明

プロセス変動に対してスルーレートを補償するためのプリドライバを有する出力バッファ

【課題】補償回路とプリドライバを組み込んでおり、プロセス変動に対して補償されるスルーレートを有する出力バッファを提供する。
【解決手段】補償回路370は、演算増幅器250と、増幅器の出力に結合されたゲートを有する第2のNFET240、第3のNFET371、及び実行抵抗381から構成される。出力バッファ300は、ICチップのコア150がプリドライバ310に制御信号をアサートする。これに応答して、プリドライバ310は、第1のNFET320にバッファリングされた制御信号をアサートし、第1のNFET320をオンにし、VSSレベルの出力信号をパット230にアサートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、プロセス及び動作条件の変動に対して補償される集積回路に関連する。より詳しくは、本発明は、集積回路チップ(ICチップ)上に少なくとも一部が製作され、ICチップ上で起こるプロセス及び動作条件の変動の影響を受けない、出力バッファ及び増幅器に関連する。
【背景技術】
【0002】
ICチップは、他の回路からの信号を処理するためにしばしば使用される。そのような回路と通信するために、ICチップは、複数の入力バッファと出力バッファを備えている。入力バッファにより、ICチップは、信号内の電圧または電源スパイクによって損傷を受けることなく、処理するための信号を受信することができる。この受信された信号は、次に、ICチップによって処理され、場合によっては、ICチップから回路に出力するために出力信号が準備される。出力バッファは、ICチップが、十分なパワーでそのような出力信号を供給することができるようにするとともに、他の回路からの電圧及び電源スパイクからICチップを保護する。
【0003】
ICチップに含まれる従来の出力バッファのタイプの1つは、プリドライバとnチャンネル電界効果トランジスタ(NFET)から構成される。プリドライバは、ICチップ上の他の回路から制御信号を受信する入力を備えている。制御信号は、出力バッファが出力信号を供給するかどうかを示す。プリドライバは、また、受信した制御信号に応答してバッファリングされた制御信号を供給する出力を備えている。このバッファリングされた制御信号は、一般的に、(バッファリングされる前の)制御信号よりも大きな信号強度を有している。
【0004】
NFETは、ゲート、ソース、及びドレインを備えている。ゲートは、プリドライバの出力に結合され、従って、バッファリングされた制御信号を受信する。ソースは、電圧源のグランド(アース)に結合される。電圧源は、NFETに電力を供給する。ドレインは、出力バッファの出力ポートとして機能し、従って、ICチップから回路に向かう出力信号をアサートする。
【0005】
動作時、プリドライバは、NFETをオン(ON)にして、ドレインにおいてロー(LOW)出力信号をアサートする。ロー出力信号は、グランド(アース)の電圧レベルにある。出力信号をアサートしないようにするためには、プリドライバは、NFETをオフ(OFF)にする。当業者には、この従来の出力バッファを修正して、ハイ(高)電圧レベルにあるハイ(HIGH)出力信号をアサートするようにするか、または、ハイ及びローの双方の出力信号を出力するようにすることができるということが理解されよう。
【0006】
従来の出力バッファには、いくつかの制限がある。第1に、同じ設計の従来の出力バッファは、ICチップを製作するために使用される製造プロセスにおける変動のために異なる速度でしばしば動作する。第2に、従来の出力バッファに含まれるトランジスタは、ICチップの温度が上昇すると、通常、その動作がより遅くなる。高速ICチップは、非常に高い温度で動作するので、この制限により、かかる出力バッファから出力することができる信号の速度が大幅に低減される。
【0007】
従来の出力バッファに関する第3の問題には、出力バッファのスルーレートが増加すると、出力信号の電圧レベルが不安定になるということが含まれている。出力バッファ(またはトランジスタ)のスルーレートは、それから出力される信号の電圧レベル変化の最大レート(速度)として定義される。例えば、0.3ボルト/ナノ秒のスルーレートを有する出力バッファでは、出力信号が、0ボルトから3ボルトに変化するのに、約10ナノ秒が必要である。
【0008】
スルーレートをある程度まで高くして、出力バッファの速度を上げることができる。残念なことに、従来の出力バッファにおいてスルーレートを高くすると、出力信号の値が不安定になる可能性がある。スルーレートが高いと、出力信号は、一般的に、ほぼ正常な値に急速に変化し、それから、少なくとも部分的に、以前の値に戻ることになる。出力信号の値は、正常な値の近辺に最終的に落ち着くまで、上下にバウンス(跳ね返り)を繰り返しがちである。従って、出力バッファの出力ポートに結合された回路は、バウンスしている出力信号を受信することになる。このような回路は、この出力信号がバウンスしているために、出力信号から誤った値を読み取りがちである。従来の出力バッファに関するこの問題のために、ICチップは、他の回路と正しく通信することができず、従って、誤りのある結果を生じる。
【0009】
ICチップ上に製作された従来の出力バッファのスルーレートは、一般的に、ICチップを製作するために使用される製造プロセスの変動と、ICチップ上で生じる特定の動作条件に大きく左右される。このような変動の効果を打ち消すために、従来の出力バッファは、一般的に、最高のスルーレートよりも十分に低いスルーレートで動作するように設計される。さらに、スルーレートは、一般的に、ICチップの動作中、大きく変動する。例えば、ICチップが加熱されると、通常、スルーレートは大幅に低下する。従って、従来の出力バッファのスルーレートを、出力バッファに結合された回路の許容入力範囲内に維持することは非常に困難なことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、半導体エレクトロニクスの分野においては、出力バッファの速度とスルーレートの両方を、狭い許容範囲内に維持することが可能な、改良された出力バッファに対する継続的な要求が存在する。かかる改良された出力バッファは、従来の出力バッファの不安定性を生じないことが好ましい。さらに、かかる改良された出力バッファは、出力バッファの製造プロセスや動作条件のいかなる変動に対しても、性能の変動を受けないものであることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、IC上で使用するための改良された出力バッファを提供する。これらの出力バッファは、出力バッファに含まれるトランジスタの性能特性を補償するための補償回路を組み込んでいる。補償回路は、出力バッファが、所望のスルーレートで動作しているかどうかを判定する。この判定に応答して、補償回路は、出力バッファの出力ポートが利用可能な電力量を制御し、結果として、出力バッファのスルーレートを制御する。
【0012】
本発明の出力バッファの1実施態様は、第1のNFET、補償回路、及び電圧制御電源(VCPS)から構成される。これらのコンポーネントは、相互接続されて、以下のように動作する。
【0013】
第1のNFETは、ゲート、ソース、及びドレインを備える。ゲートは、ICチップのコアに結合され、ソースは、VCPSから電力を受け取るように結合され、ドレインは、出力バッファの出力ポートを形成する。コアは、ゲートへの制御信号をアサートする。制御信号は、出力バッファが、出力信号をアサートすべきかどうかを指示する。ハイ(高)の制御信号によって、第1のNFETがオンになって、そのドレインでロー(低)の出力信号をアサートする。ローの制御信号がゲートに印加されと、第1のNFETがオフ(OFF)になり,そのドレインでは出力信号をアサートしない。従来の出力バッファの場合と同じく、制御信号をバッファリングするために、コアとゲートの間に、プリドライバを備えることができる。
【0014】
出力バッファのスルーレートは、第1のNFETのドレイン電圧の最大変化速度によって与えられる。スルーレートは、第1のNFETのドレインが、それに結合された回路から電流Ioutを引き込む最大速度に関係する。詳しくは、電流のこの最大速度が増加すると、第1のNFETのドレインにおける容量がより急速に放電され、従って、ドレイン電圧がより急速に増加することになる。この電流は、次に述べる補償回路とVCPSによって制御される。
【0015】
補償回路は、演算増幅器、抵抗器、及び第2のNFETから構成される。演算増幅器の第1の入力は、抵抗器によって高電圧源に結合される。演算増幅器の第2の入力は、一定レベルの基準電圧を受け取る。演算増幅器の出力は、補償電圧を供給する。第2のNFETは、演算増幅器の出力に結合されるゲート、電気的アースに結合されるソース、演算増幅器の第1の入力に結合されるドレインを有する。従って、補償電圧は、基準電圧と第2のNFETのドレイン電圧間の電圧差を増幅したものである。
【0016】
補償電圧は、第2のNFETにおいてドレインからソースへ流れる電流を平衡のとれた大きさ(振幅)に維持する。詳しくは、この電流が減少すると、抵抗器を流れる電流もまた減少する。これによって、演算増幅器の入力間の電圧差が増加する。これに応答して、演算増幅器は補償電圧を増加させ、第2のNFETをより急速にオンにする。これによって、第2のNFETの電流が増加して、平衡状態に戻す。同様に、平衡状態から電流が増加すると、結果として補償電圧が減少し、これに対応する電流の減少によって平衡状態に再び戻る。補償電圧は、次に述べるVCPSを制御する。
【0017】
VCPSは、第3のNFETから構成される。第3のNFETは、演算増幅器の出力に結合されるゲート、電気的グランドに結合されるソース、及び、第1のNFETのソースに結合されるドレインを有する。従って、ゲートは、補償電圧を受け取る。補償電圧は、第3のNFETが第1のNFETに電力を供給する速度を制御する。第3のNFETのドレインは、第1のNFETのソースから電流を引き込むことによって、この電力を第1のNFETに供給する。
【0018】
当業者には理解されるように、第2及び第3のNFETのゲート同士が結合され、同様に、これら2つのNFETのソース同士が結合される。さらに、第2及び第3のNFETは両方とも、同じICチップ上に製作され、それらは、類似の構成を有する。第2のNFETと第3のNFETの電気的接続、製作、及び構成におけるこれらの類似性により、第2のNFETの電気的特性を、第3のNFETの電気的特性をモデルにして作ることができる。従って、第2のNFETに対する最適な補償度は、第3のNFETに対する最適な補償度に直接関連付けられている。
【0019】
補償電圧により、第1のNFETがオンになったときに、VCPSが第1のNFETに電力を供給する速度が安定になる。従って、このために、出力バッファのスルーレートが安定化する。例えば、ICチップの温度が上昇すると、第1のNFETの動作速度がより遅くなりがちになり、このため、出力バッファのスルーレートが低下しがちにある。しかし、温度上昇によって、補償回路は補償電圧を上げる。補償電圧が上昇すると、VCPSが第1のNFETに電力を供給する速度が上昇する。より詳しくは、補償電圧が高くなると、第3のNFETがより急速にオンになって、第3のNFETが第1のNFETから電流を引き込む速度が速くなる。これによって、電流Ioutが増加し、従って、出力バッファのスルーレートが高くなって、所望の平衡値に戻る。
【0020】
本発明には種々の実施態様がある。それらの実施態様のいくつかは、VCPSの他の形態を使用する。例えば、pチャンネル電界効果トランジスタ(PFET)、または、NFETとPFETの両方を本発明に備えることができる。また、出力バッファを製作するためのトランジスタの他の形態を使用することも可能である。例えば、プルダウンNFETにドレイン間結合されたプルアップPFETから構成されるトライステート出力バッファを使用することができる。抵抗器と基準電圧を、ICチップ外部に配置することができる。これによって、抵抗に対してより大きな公差(許容誤差)をとることができ、また、ICチップにおけるプロセス変動の影響をさらに打ち消すために、抵抗と基準電圧を調整することができるようになる。
【0021】
本発明は、ICチップ上で使用するための改良された出力バッファを提供する。これらの改良された出力バッファは、非常に安定なスルーレートを有する。出力バッファのスルーレートを、従来の出力バッファで起こる不安定性を生じることなく、最適なレベル、または最適なレベルより下の任意の所望のレベルに保持することができる。ICチップの製作中に形成されるICチップにおけるプロセス変動は、一般的に、これらの出力バッファによって提供されるスルーレートの狭い許容範囲に悪影響を及ぼさない。改良された出力バッファは、また、ICチップの動作温度のような、動作条件の変化に自動的に適合する。
【0022】
さらに、一般的には、本発明は、プロセス及び動作条件の変動に対して、ICチップ上の回路を補償するための補償回路を提供する。例えば、補償回路を接続して、同じICチップ上に製作された増幅器に電力を供給することができ、これによって、上記したような変動に対して増幅器を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ICチップ上で使用する従来の出力バッファのブロック図である。
【図2】主としてICチップ上に製作される本発明の改良された出力バッファのブロック図であるが、ICチップ外に製作されるコンポーネントも示している。
【図3】VCPSの2つの補償トランジスタを駆動するための2つの補償電圧を備える、本発明の出力バッファの第2の好ましい実施態様のブロック図である。
【図4】VCPSの2つの補償トランジスタを駆動するための2つの補償電圧を備え、かつ、トランジスタのゲートとソースの両方を補償する、本発明の出力バッファの代替の第3の実施態様のブロック図である。
【図5】差動増幅器に電力を供給するVCPSを駆動するために補償電圧を使用する、本発明の差動増幅器の代替の第4の実施態様のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、ICチップ140上で使用するための従来の出力バッファ100のブロック図が示されている。従来の出力バッファ100は、プリドライバ110、NFET120、及びパッド130から構成されている。これらのコンポーネント110、120、130は、すべて、ICチップ140上に製作される。ICチップ140は、また、情報を処理し、出力バッファ100を制御するコア150を備えている。出力バッファ100のコンポーネント110、120、130は、グランドの電圧レベルVssと、ハイ電圧レベルVDDの間の電圧範囲で動作する。ここで、Vssは、VDDよりも低い。本明細書では、ロー(LOW)は、信号がVss でアサートされることを示し、ハイ(HIGH)は、信号がVDD でアサートされることを示すものとして使用する。
【0025】
プリドライバ110は、入力ポート112と出力ポート114を有する。入力ポート112は、従来の出力バッファ100の入力ポート112として機能する。入力ポート112は、ICチップ140のコア150から制御信号を受信する。この制御信号は、従来の出力バッファ100が出力信号を供給するかどうかを判定する。この制御信号に応答して、プリドライバ110の出力ポート114は、NFET120へのバッファリングされた制御信号をアサートする。このバッファリングされた制御信号は、一般的に、(バッファリングされる前の)制御信号よりも大きな信号強度を有している。
【0026】
NFET120は、ゲート122、ソース124、及びドレイン126を有する。ゲート122は、プリドライバ110の出力ポート114に結合され、従って、バッファリングされた制御信号を受信する。ソース124は、Vssのグランド電圧に結合され、NFET120に電力を供給する。ドレイン126は、従来の出力バッファ100の出力ポート126として機能し、従って、ICチップ140の外部の回路160に出力信号を供給する。
【0027】
従来の出力バッファ100のコンポーネント110、120、130は、ICチップ140のコア150と協働して、出力信号をアサートする。詳しくは、コア150は、従来の出力バッファ100が、パッド130上に出力信号をアサートするかどうかを判定する。一般的に、このコア150は、単独では、重い負荷を駆動することはできない。プリドライバ110の目的は、コア150のために、制御信号をバッファリングすることである。この出力バッファによってアサートされうる唯一の出力信号の値は、Vssレベルのロー出力信号である。しかし、この従来の出力バッファ100は、パッド130に信号をアサートしないこともできる。
【0028】
パッド130にロー出力信号をアサートするために、コア150は、プリドライバ110の入力ポート112にハイ(の)制御信号をアサートする。これに応答して、プリドライバ110の出力ポート114は、NFET120のゲート124にバッファリングされたハイの制御信号をアサートする。バッファリングされたハイの制御信号は、NFET120を急速にオンにする。従って、NFET120のソース122のロー(低い)電圧レベルVssは、NFET120のドレイン126で受信される。これは、所望したように、パッド130にロー出力信号をアサートする。
【0029】
パッド130に出力信号をアサートしないようにするために、コア150は、プリドライバ110の入力ポート112にローの制御信号を供給する。これに応答して、プリドライバ110の出力ポート114は、NFET120のゲート124にバッファリングされたローの制御信号をアサートする。このバッファリングされたローの制御信号は、NFET120を急速にオフにする。従って、NFET120のソース122のローの電圧レベルVssは、NFET120のドレイン126では受信されない。これは、所望したように、パッド130に出力信号をアサートしない。
【0030】
従来の出力バッファ100は、関連技術の背景において説明したように、様々な問題を有している。プリドライバ110とNFET120を、ICチップ間で正確に同じものとなるように製作することは、極めて困難なことである。従って、この出力バッファ100は、異なるICチップ上では、異なる速度で動作する可能性がある。この問題は、通常、ICチップ間で起こるものよりもひどくはないが、同じICチップ上の複数の出力バッファ100間でも起こりうる。NFET120は、ICチップ140の温度が上昇すると、一般的に、より遅い速度で動作する。プリドライバ110は、コア150が、NFET120を駆動するのを助けるが、それは、プロセスまたは動作条件の変動に対して、NFET120を補償するための手段をなんら備えていない。従って、従来の出力バッファ100は、一般的に、速度及びスルーレートの許容範囲が非常に広く、出力信号の値がバウンスするのを回避するために、最適なスルーレートより十分に低いスルーレートで動作しなければならない。
【0031】
図2に、本発明の改良された出力バッファ200の第1の実施態様のブロック図を示す。この改良された出力バッファ200は、プリドライバ210、補償回路270、NFET220、電圧制御電源(VCPS)260、及びパッド230、234、236から構成される。これらのコンポーネントは、ICチップ140上に製作される。改良された出力バッファ200は、さらに、ICチップ140の外部に配置された抵抗器282、284、286から構成される。
【0032】
改良された出力バッファ200のプリドライバ210、NFET220、及びパッド230は、以下のように、ICチップ140のコア150、及びVCPS260に相互接続される。プリドライバ210は、入力212と出力214を有している。プリドライバ210の入力212は、ICチップ140のコア150に結合されて、それから制御信号を受け取る。この制御信号は、改良された出力バッファ200の出力状態を判定する。プリドライバ210の出力214は、NFET220にバッファリングされた制御信号を供給する。
【0033】
NFET220は、ゲート222、ソース224、及びドレイン226を有する。NFET220のゲート222は、プリドライバ210の出力214に結合されており、従って、プリドライバ210からバッファリングされた制御信号を受信する。NFET220のソース224は、VCPS260に結合されており、NFET220に電力を供給する。従って、従来の出力バッファとは異なり、ソース224は、電気的グランドVssに直接には結合しない。NFET220のドレイン226は、改良された出力バッファ200の出力ポート230として機能するパッド230に結合される。
【0034】
ロー出力信号をパッド230にアサートするために、コア150は、プリドライバ210の入力212にハイの制御信号をアサートする。これに応答して、プリドライバ210の出力214は、NFET220のゲート222にバッファリングされたハイの制御信号をアサートし、これによって、NFET220が、パッド230にローの出力信号をアサートする。パッド230に出力信号をアサートしないようにするために、コア150は、プリドライバ210の入力212にローの制御信号をアサートする。これに応答して、プリドライバ210の出力214は、NFET220のゲート222にバッファリングされたローの制御信号をアサートする。バッファリングされたローの制御信号は、NFET220をオフにし、従って、NFET220は、パッド230に信号をアサートしない。
【0035】
抵抗器286、282、284、補償回路270、及びVCPS260は、協働して、改良された出力バッファ200のスルーレートを制御する。抵抗器282、284、286は、パッド234、236上に電圧をアサートする。これらの電圧は、補償回路270によって供給される補償電圧VCOMPの大きさを制御する。補償電圧VCOMPは、VCPS260によってNFET220のソース224に供給される電力量を制御する。VCPS260は、NFET220のソース224から電流IVCPSを引き込むことによってこの電力を供給する。電流IVCPSは、NFET220がオンになると流れるが、NFET220がオフになると、無視できるほど小さな振幅まで少なくなる。補償電圧VCOMP は、この電流IVCPSの最大振幅をほぼ一定の値に維持する。これによって、出力バッファ200のスルーレートが狭い許容範囲内に維持される。
【0036】
NFET220から引き込まれる電流IVCPSは、パッド230からドレイン226に流れ、ソース224を出て、VCPS260に流れ込む。この電流IVCPSの振幅は、NFET220のドレイン226によってパッド230から引き込まれる電流IOUTの全振幅に本質的に等しい。本発明をより簡潔に説明するために、IVCPSとIOUTの区別を以下ではしないこととする。電流IOUTの最大値は、改良された出力バッファ200のスルーレートに正比例する。本発明のこれらの種々のコンポーネント及び特徴について、以下でさらに詳しく説明する。
【0037】
抵抗器282、284は、分圧器を構成する。具体的には、抵抗器282の一方の端部はハイ電圧VDDに、抵抗器284の一方の端部はグランドレベルのVSSに接続されており、これらの抵抗器282、284のもう一方の端部は、ともに、パッド234に接続されている。
【0038】
抵抗器282、284によって構成される分圧器は、パッド234に一定レベルの基準電圧VREFをアサートする。オームの法則に従って、基準電圧VREFの大きさは、以下の式で与えられる。
【0039】
VREF=(VSS・R282+VDD・R284)÷(R282+R284)
ここで、R282 は、抵抗器282の抵抗値であり、R284 は、抵抗器284の抵抗値である。これらの抵抗値R282とR284値は、適切な基準電圧VREFを提供するように選択されるが、基準電圧VREFは、部分的には、改良された出力バッファ200から出力信号を受信する回路の要求に依存する。
【0040】
抵抗器286の一方の端部は、ハイ電圧VDDに接続されており、その他方の端部は、パッド236に接続されている。この抵抗器286は、パッド236に制御電圧VCNTLをアサートする。制御電圧VCNTLの大きさは、ハイ電圧VDDの大きさ、抵抗器286の抵抗値R286、及び抵抗器286を通ってパッド236に流れる電流I286の大きさの関数である。この値は、以下の式によって与えられる。
【0041】
VCNTL=VDD−(I286・R286)
ここで、I286・R286は、オームの法則による抵抗器286の両端間の電圧降下である。
【0042】
一般的に、VDDの大きさと抵抗器286の抵抗値R286は、改良された出力バッファ200の動作の前に固定される。しかし、抵抗器286を流れる電流I286の値は、改良された出力バッファ200のプロセス変動または動作条件の変動によって、変化する可能性がある。補償回路270は、この電流I286の変動を使用して、出力バッファ200に対する最適な補償レベルを提供する。
【0043】
改良された出力バッファ200では、抵抗器282、284、286は、図示のように、ICチップ140の外部に製作されるのが好ましい。これによって、いくつかの利益が提供される。第1に、精密な公差を有する抵抗器をICチップ上に実装するのは一般的に難しい。これらの抵抗器282、284、286をICチップ140の外部に製作することによって、抵抗値R282、R284、R286が非常に狭い公差内にあるようにすることができ、従って、基準電圧VREFと制御電圧VCNTLを、非常に狭い公差内で規定することができる。第2に、抵抗値R282、R284、R286は、ICチップ140の温度及びプロセス変動のいずれにも依存しない。第3に、これらの抵抗値R282、R284、R286は、ICチップ140が製作された後に選択することができる。このため、特定のICチップ140のプロセス変動及び動作条件の変化を反映するように、これらの抵抗値R282、R284、R286を選択することができる。しかし、例えば、適切な長さのドープポリシリコン(doped polysilicon)を使用することによって、1つ以上のこれらの抵抗器282、284、286をICチップ140上に製作することもまた、本発明に従うものである。
【0044】
補償回路270は、演算増幅器250と第2のNFET240から構成されれる。演算増幅器は、パッド234に結合される第1の入力254、パッド236に結合される第2の入力256、及び、補償電圧VCOMPを供給する出力252を備えている。
【0045】
第2のNFET240は、ゲート242、ソース244、及びドレイン246を備えている。ゲート242は、演算増幅器250の出力252に結合されており、従って、そこから補償電圧VCOMPを受け取る。ソース244は、電気的グランドレベルのVSSに結合されている。ドレイン246は、パッド236に結合されており、従って、また、演算増幅器250の第2の入力256にも接続されている。抵抗器286は、3つのすべての236、246、256上に制御電圧VCOMPをアサートする。当該技術分野においては周知のことであるが、演算増幅器250によって供給される補償電圧VCOMPは、演算増幅器250の第1の入力254上の一定レベルの基準電圧VREFと、演算増幅器250の第2の入力256上のドレイン電圧VCNTLとの電圧差を増幅するものである。
【0046】
演算増幅器250の入力254、256は、ほとんど電流を吸い込まない。本質的に、抵抗器286を流れるすべての電流I286は、そこから、第2のNFET240に流れ込む。この電流I286は、ドレイン246において第2のNFET240に流れ込み、ドレイン246から導電性のチャンネルを通ってソース244に向かって流れ、ソース244を出て、電気的グランドレベルのVSSに流れ込む。当該技術分野においては周知のように、第2のNFET240のゲート242に流れ込むか、または、そこから流れ出る電流はほとんどない。従って、電流I286は、第2のNFET240のドレイン246からソース244に向かって流れる電流INFET2に本質的に等しい。
【0047】
補償電圧は、電流INFET2を平衡状態のレベルIEQUIに維持する。詳しくは、電流INFET2が平衡状態のIEQUIから減少すると、結果として抵抗器286の電流I286が減少する。従って、オームの法則により、ドレイン電圧VCNTLが増加する。これによって、演算増幅器250の入力256、254間の電圧差VCNTL−VREFが増加する。これに応答して、演算増幅器250は、補償電圧VCOMPを上昇させる。補償電圧VCOMPが上昇すると、第2のNFET240のゲート電圧が上昇し、これによって、NFET240がより急速にオンになる。この上昇によって、電流INFET2は平衡状態のIEQUIに戻る。同様に、電流INFET2が平衡状態のIEQUIから増加すると、補償電圧VCOMPが減少することとなり、これに対応して電流INFET2が減少して、電流平衡状態のIEQUI に戻る。
【0048】
補償回路270は、1/2(VDD−VSS)に等しいVREFで動作するのが好ましく、これは、例えば、VSSを0ボルトに、及び、R282=R284となるように選択することによって実現することができる。VSSが0ボルトに等しく、VREFが1/2VDDに等しい場合は、パッド234、236間の最大電圧差は、1/2VDDである。この最大電圧差は、パッド236が0ボルトの場合と、パッド236がVDDの場合の両方の場合に生じる。これらの特性は、演算増幅器250によって供給される補償電圧VCOMPとして取りうる最大電圧と最小電圧との電圧差として定義される、演算増幅器250のダイナミックレンジを一般的に大きくする。これらの特性は、また、演算増幅器250の同相モード除去比を改善する。従って、単純な設計の演算増幅器でも、性能をそれほど落とすことなく補償回路270に使用することができる。
【0049】
補償回路270によって供給される補償電圧VCOMPにより、第2のNFET240において平衡レベルの電流IEQUIが自動的に維持される。また、これにより、オームの法則に従って、ドレイン電圧が平衡状態のレベルに維持される。この補償電圧を本発明のこの実施態様において有効に使用して、次に説明するVCPS260を補償する。
【0050】
VCPS260は、ゲート262、ソース264、及びドレイン266を有する第3のNFET260から構成される。ゲート262は、補償電圧VCOMPを受け取るために、演算増幅器250の出力258に結合され、ソース264は、電気的グランドレベルのVSSに結合される。従って、第2及び第3のNFET240、260のゲート242、262が共に結合され、同様に、これら2つのNFET240、260のソース244、264が共に結合される。さらに、第2及び第3のNFET240、260は、いずれも、同じICチップ140上に製作され、同様の構成を有する。
【0051】
第3のNFET260のドレイン266は、NFET220のソース224に結合される。このドレイン266は、NFET220に電力を供給し、NFET220が、パッド230に出力信号をアサートできるようにする。この電力は、NFET200のソース224から電流IOUTを引き込むことによって供給される。
【0052】
抵抗器286の抵抗値R286とは異なり、第3のNFET260のドレイン266と、ハイ電圧VDDとの間の実効抵抗ROUT*は一定ではない。具体的には、ROUT*は、NFET220がオフになると極めて大きくなる。従って、NFET220がオフになると、第3のNFET260の電流IVPCSの大きさは、ほとんど0になる。NFET220がオフからオンになると、抵抗ROUT*は、最初に、大きく低下する。電流IOUTが増加して、パッド230から電流を引き込み、所望したように、パッド230の電圧VOUTの大きさを小さくする。
【0053】
しかし、パッド230の電圧VOUTが低下すると、実効抵抗ROUT*が急激に増加し、電流IOUTは減少する。パッド230、及びパッド230に結合されたICチップ外部の回路の入力ゲートの容量が、電流Ioutによって抜き取られるので、実効抵抗ROUT*は増加する。この容量が抜き取られてしまうと、NFET220は、もはやパッド230から電流Ioutを引き込むことはできない。
【0054】
第2のNFET240と第3のNFET260の間の電気的接続、製作、及び構成が類似しているために、第2のNFET240の電気的特性を、第3のNFET260の電気的特性をモデルにして作ることができる。第2のNFET240において平衡状態の電流IEQUIを維持するために最適な補償度は、第3のNFETにおいて電流Ioutの最大値(最大振幅)を安定にするために最適な補償度に直接関係する。第3のNFET260は、この補償を補償電圧から受け取る。
【0055】
抵抗ROUT*は変化するので、電流Ioutは平衡状態の大きさ(振幅)には維持されない。しかし、最大電流Ioutの変動は、本発明によって提供される補償によって安定化される。例えば、ICチップ140の温度が上昇しても、電流Ioutの最大値はほとんど変化しない。このため、結果として、改良された出力バッファ200に対するスルーレートが安定化する。
【0056】
図3に、本発明の改良された出力バッファ300の第3の好ましい実施態様のブロック図を示す。改良された出力バッファ300は、補償回路370、電圧制御電源(VCPS)360、プリドライバ310、第1のNFET320、及びパッド230、234、236から構成される。これらのコンポーネントは、ICチップ140上に製作される。改良された出力バッファ300は、さらに、ICチップ140の外部に配置された抵抗器282、284、286、288から構成される。ICチップ140上の回路に電力を提供するために、ICチップ上には、VDDの電圧源とVSSの電気的グランドが含まれている。
【0057】
改良された出力バッファ300では、ICチップのコア150が、プリドライバ310に制御信号をアサートする。これに応答して、プリドライバ310は、第1のNFET320にバッファリングされた制御信号をアサートする。バッファリングされた制御信号は、第1のNFET320をオンにして、VSSレベルのロー出力信号をパッド230にアサートする。バッファリングされた制御信号は、第1のNFET320をオフにすることもできる。第1のNFET320がオフにされると、抵抗器288が、パッド320の電圧をVDDまで引き上げることによって、パッド230にハイ信号をアサートする。
【0058】
補償回路370は、第1及び第2の補償電圧VCOMP1、VCOMP2をアサートする。これらの補償電圧は、VCPSの入力にアサートされる。これに応答して、VCPSは、可変量の電力をプリドライバ310に供給する。これにより、バッファリングされた制御信号の信号強度が制御される。従って、本発明のこの実施態様は、プリドライバ310を補償し、結果的に、第1のNFET320を補償する。従って、改良された出力バッファ200のプリドライバ210は除去される。次に、本発明のこれらの種々の特徴についてより詳しく説明する。
【0059】
改良された出力バッファ300では、改良された出力バッファ200に関して説明したのと同様にして、抵抗器282、284、286が、基準電圧VREFと、制御電圧VCOMPをパッド234、236にアサートする。改良された出力バッファ200に関して説明した利点を提供するために、これらの抵抗器282、284、286は、ICチップ140の外部に製作されるのが好ましい。
【0060】
補償回路370は、演算増幅器250、第2のNFET240、第3のNFET371、及び実効抵抗381から構成される。図2の補償回路270と同様に、演算増幅器250と第2のNFET240は、互いに結合されており、さらに、パッド234、236に結合されている。従って、演算増幅器250は、補償回路270と同じく、補償電圧を供給する。この補償電圧は、図3においてVCOMP1として参照される。第3のNFET371と実効抵抗381は、第1のVCOMP1に応答して、第2の補償電圧VCOMP2を生成する。
【0061】
第3のNFET371は、ゲート372、ソース374、及びドレイン376を有する。ゲート372は、演算増幅器250の出力に結合され、従って、第1の補償電圧VCOMP1を受け取る。ソース384は、電気的グランドレベルのVSSに結合される。ドレイン376は、実効抵抗381の一方の端部384に結合される。実効抵抗381の他方の端部386は、VDDレベルのハイ電圧源に結合される。
【0062】
補償回路370において、実効抵抗381は、ゲート382、ソース384、及びドレイン386を有するPFET381から構成される。ゲート382は、ソース384に結合される。このために、PFET381は、ダイオードのように動作することができる。具体的には、PFET381は、NFET371がオンになると、VDDレベルのハイ電圧源から、第3のNFET371へ電流を流すことができる。この場合、このダイオードの両端間の電圧降下が、実効抵抗381として働く。実効抵抗381を、ある長さのドープポリシリコンまたは他の材料として製作することもまた、本発明に従うものである。しかし、説明した方法において、PFET381を使用することにより、第3のNFET371とVDDレベルのハイ電圧源との間に、より正確な電圧降下を発生させることができる。
【0063】
第3のNFET371と実効抵抗381は、第1の補償電圧VCOMP1を反転して、第2の補償電圧VCOMP2を第3のNFET371のドレインにおいてアサートする。詳しくは、第1の補償電圧VCOMP1が上昇すると、第3のNFET371がより強力にオンにされる。これによって、第3のNFET371のドレイン376における電圧が低下する。同様に、第1の補償電圧VCOMP1が減少すると、第3のNFET371はより弱くオンにされる。このために、実効抵抗381は、第3のNFET371のドレイン376における電圧をVDDまで引き上げることができる。従って、第3のNFET371のドレイン376においてアサートされた第2の補償電圧VCOMP2は、第1の補償電圧VCOMP1の反転した形となる。第1及び第2の補償電圧は、一般的に、VSSとVDD間の範囲の値でアサートされ、ハイ信号またはロー信号に限定されない。これらの補償電圧は、VCPS360によってプリドライバ310に送られる電力量を制御する。
【0064】
プリドライバ310とVCPS360は、以下のように構成される。プリドライバ310は、ゲート312、ソース314、及びドレイン316を有する第2のPFET311から構成され、さらに、ゲート302、ソース304、及びドレイン306を有する第4のNFET301から構成される。ゲート312、302は共に結合されて、プリドライバ310の入力を構成する。この入力は、ICチップのコア150に結合されて、それから制御信号を受信する。ドレイン316、306は共に結合されて、プリドライバ310の出力を構成する。この出力は、バッファリングされた制御信号を、第1のNFET320のゲート322に供給する。
【0065】
FET311、301は、インバータを構成する。このインバータは、ICチップ140のコア150からの制御信号をバッファリングする。しかしながら、従来のインバータとは異なり、第2のPFET311及び第4のNFET301のソース314、304は、VDDレベルのハイ電圧源にも、VSSレベルのグランド電圧源にも、直接結合されない。これら2つのFET311、301のソース314、304は、VCPS360に結合され、それから電力を受け取る。
【0066】
VCPS360は、第3のPFET361と第5のNFET351から構成される。第3のPFET361は、ゲート362、ソース364、及びドレイン366を有する。ゲート362は、第3のNFET371のドレイン376に結合される。従って、ゲート362は、補償回路370から第2の補償電圧VCOMP2を受信する。ソース364は、VDDレベルのハイ電圧源に結合され、それから電力を受け取る。ドレイン366は、プリドライバ310の第2のPFET311のソース314に結合され、それに、可変量の電力を提供する。
【0067】
第5のNFET351は、ゲート352、ソース354、及びドレイン356を有する。ゲート352は、演算増幅器250の出力に結合される。従って、ゲート352は、補償回路370から第1の補償電圧VCOMP1を受信する。ソース354は、VSSレベルのグランド電圧源に結合されて、それから電力を受け取る。ドレイン356は、プリドライバ310の第4のNFET311のソース304に結合されて、それに、可変量の電力を提供する。
【0068】
第1の補償電圧VCOMP1は、ドレイン356からソース354に流れる電流の大きさを制御することによって、VCPS360の第5のNFET351を補償する。改良された出力バッファ200の場合と同様に、この電流は、本質的に、第4のNFET301がオンからオフに切り換わるとき(逆の場合も同様)を含み、第4のNFET301がオンになるときにのみ流れる。第4及び第5のNFET301、351は、図2の第1及び第3のNFET220、260と同様に動作する。
【0069】
しかしながら、改良された出力バッファ300においては、第4のNFET306のドレインは、第1のNFET320のゲート322に結合され、パッド230には直接接続されない。従って、第4のNFET301は、出力信号を直接アサートしない。第4のNFET301は、ICチップに対する最適な補償レベルを反映するバッファリングされた制御信号をアサートする。このバッファリングされた制御信号は、NFET320の(ソース324ではなくて)ゲート322に加えられる。従って、改良された出力信号300においては、パッド230に出力信号をアサートするトランジスタ320は、ゲート322において補償される。一方、改良された出力バッファ200においては、パッド230に出力信号をアサートするトランジスタ220は、ソース224において補償される。
【0070】
第2及び第3のPFET311、361は、第4及び第5のNFET301、351と同様に動作する。具体的には、第2の補償電圧VCOMP2が、ソース364からドレイン366に流れる電流の大きさを制御することによって、VCPS360の第3のPFET361を補償する。改良された出力バッファ200の場合と同様に、この電流は、本質的に、第2のPFET311がオンからオフに切り換わるとき(逆の場合も同様)を含み、第2のPFET311がオンになるときにのみ流れる。
【0071】
図4に、本発明の改良された出力バッファ400の第4の好ましい実施態様のブロック図を示すが、この実施態様は、トランジスタ320のゲート322とソース324の両方に対して補償を行うものである。改良された出力バッファ400は、改良された出力バッファ300のすべてのコンポーネントを含む。改良された出力バッファ400は、さらに、改良された出力バッファ300には含まれていない第6のNFET460から構成される。
【0072】
第6のNFET460は、ゲート462、ソース464、及びドレイン466を有する。ゲート462は、演算増幅器250の出力に結合される。従って、このゲート462は、補償回路370から第1の補償電圧VCOMP1を受信する。ソース464は、VSSレベルの電気的グランドに結合されて、そこから電力を受け取る。第6のNFET460のドレイン466は、第1のNFET320のソース324に結合される。第6のNFET460は、第1のNFET320に可変量の電力を供給する。この可変量の電力は、第1のNFET320がオンになるときに、第1のNFET320のソース324から引き込む電流の大きさを制御することによって供給される。
【0073】
第1のNFET320のソース324及びゲート322の両方を補償することによって、改良された出力バッファ400のスルーレートを、改良された出力バッファ200、300によって提供されるものよりさらに狭い公差に対しても制御することができる。しかしながら、第6のNFET460は、一般的に、プリドライバ310及びVCPS360におけるPFET361、311、及びNFET301、351よりも比較的大きい。従って、改良された出力バッファ200、300に対してスルーレートの公差をさらに改善するためには、追加のスペースをICチップ140上に実装することが必要であり、従って、改良された出力バッファ200、300を実施するよりも、コストが高くなる可能性がある。
【0074】
本発明の様々な代替実施態様が可能である。例えば、抵抗器288をVDDではなくてVSSに結合して、受動性のプルダウンデバイスとして機能させて、パッド230にハイ信号をアサートするように、改良された出力バッファ300、400を代替的に実施することができる。これは、NFET320を第4のPFETで置き換えることによって実施することが好ましい。改良された出力バッファ300においては、この第4のPFETのソースは、VDDに結合されるのが好ましく、改良された出力バッファ400においては、この第4のPFETのソースは、NFET460を置き換える第5のPFETのドレインに結合されるのが好ましい。この第5のPFETは、VSSではなく、VDDによって電力を与えられる。同様に、パッド230に信号をアサートする、プルアップ及びプルダウン補償トランジスタを備えることによって、改良された出力バッファ300、400においては、さらに、抵抗器288を除去することによって、改良された出力バッファ200、300、400を、パッド230にトライステート出力をアサートするように修正することができる。
【0075】
本発明の補償回路270は、ICチップ上の他のタイプの回路を補償するためにも使用することができる。図5に、VDDレベルの電圧源と、VSSレベルの電気的グランドを備えるICチップ590上に、その一部が作成される、本発明の補償差動増幅器500のブロック図を示す。補償差動増幅器500は、図2に示したように作成され、結合される、抵抗器282、284、286、パッド234、236、補償回路270、及びVCPS260を含む。補償差動増幅器は、さらに、電圧レベルVA、VBでそれぞれ、入力信号INA、INBを受信する増幅モジュール510を含み、これらの入力信号INA、INB間の電圧差(VA−VB)を増幅した出力信号OUTを供給する。
【0076】
増幅モジュール510は、ゲート522、532、ソース524、534、及びドレイン526、536をそれぞれ有するNFET520、530を含み、さらに、ゲート542、552、ソース544、554、及びドレイン546、556をそれぞれ有するPFET540、550を含む。PFET540、550のソース544、554は、VDDレベルの電圧源に結合され、PFET540、550のドレイン546、556は、それぞれ、NFET520、530のドレイン526、536に結合され、NFET520、530のソース524、534は、いずれも、本発明のこの実施態様においてVCPS260を構成するNFET260のドレイン266に結合される。
【0077】
当業者には理解されるように、電流が、NFET520、530のソース524、534からほぼ一定の速度で引き込まれる場合には、増幅モジュール510は、差動増幅器として動作することになる。補償差動増幅器500においては、VCPS260は、ICチップ590上で生じるプロセス及び動作条件の変動に関係なく、これらのソース524、534から極めて一定の速度で電流を引き込む。従って、補償差動増幅器500は、本質的に、そのような変動の影響を受けにくい差動増幅器として動作し、従って、従来の差動増幅器の構成に比べて非常に狭いスルーレート公差を有する。
【0078】
本発明の好ましい実施態様とその代替実施態様のいくつかを参照して、本発明を説明したが、当業者には、様々な修正を行うことができるということが理解されよう。例えば、電圧源と電気的グランドを、ICチップそれ自体上に設けるか、または、ICチップの外部の回路から供給することができる。さらに、本発明の補償回路及び方法を有効に使用して、ICチップ上の様々なタイプの回路を補償することができる。このような修正は、本発明によって提供されるものであるが、それは、請求の範囲によってのみ制限を受ける。
【0079】
以下に、本発明の例示的な実施態様項を記載する。
1.集積回路チップを補償して、プロセス及び動作条件における変動の影響を打ち消すための回路であって、
第1の電圧に結合された第1の端部と、制御電圧を供給するための第2の端部とを有する抵抗器と、
前記抵抗器の前記第2の端部に結合された第1のポート、第2の電圧に結合された第2のポート、及び、前記第1のポートと第2のポート間を流れる電流の大きさを制御するための第3のポートを有するトランジスタと、
前記制御電圧を受信するために、前記抵抗器の前記第2の端部に結合された第1の入力と、前記第1の電圧と第2の電圧の間の基準電圧に結合された第2の入力と、前記トランジスタの前記第3のポートに補償電圧を提供するために、該第3のポートに結合された出力を有する演算増幅器
とから構成され、前記補償電圧によって、前記トランジスタ内の前記電流がほぼ一定の大きさに維持されることからなる回路。
2.前記トランジスタと同じプロセスを使用して製作された第2の回路をさらに含む上項1の回路であって、該第2の回路が、前記補償電圧を受信するために前記演算増幅器の出力に結合される第3の入力を有し、前記補償電圧によって、前記2の回路の電気的特性が、該第2の回路の動作温度の広範囲にわたって安定化されることからなる回路。
3.前記トランジスタと前記第2の回路が同じ集積回路チップ上に製作されることからなる上項2の回路。
4.前記トランジスタが、集積回路チップ上に製作され、前記抵抗器が、該集積回路チップの外部に製作されることからなる上項1の回路。
5.前記トランジスタが、集積回路チップ上に製作され、前記抵抗器が、前記集積回路チップにおけるプロセス変動を補償する抵抗レベルで該集積回路チップの外部に製作されることからなる上項1の回路。
6.前記第1の電圧に結合される第4のポート、前記第2の電圧に結合される第5のポート、及び、ほぼ一定の電圧レベルで基準電圧を供給するための第6のポートを有する分圧器からさらに構成される上項1の回路。
7.前記集積回路チップにおける温度及びプロセス変動に依存しない抵抗値を前記抵抗器に提供するために、前記トランジスタが、集積回路チップ上に製作され、前記分圧器が、さらに、前記集積回路チップの外部に製作された一組の直列接続された抵抗器から構成される、上項6の回路。
8.前記トランジスタが、ドレイン、ソース、及びゲートを有する電界効果トランジスタから構成され、該ドレインが前記第1のポートを構成し、該ソースが前記第2のポートを構成し、前記ゲートが前記第3のポートを構成することからなる上項1の回路。
9.第1の信号を受信するための第3の入力、前記補償電圧を受信するための前記演算増幅器の出力に結合された第4の入力、及び、前記第1の信号に応答して第2の信号を供給するための出力を有するバッファからさらに構成され、前記補償電圧によって、該バッファのスルーレートを安定化することからなる上項1の回路。
10.前記補償電圧を受信するために、前記演算増幅器の出力に結合された第3の入力を有し、かつ、前記補償電圧の大きさに応答する速度で電力を供給するように結合された出力を有する電圧制御電源からさらに構成される上項1の回路。
11.前記トランジスタが、第1の電界効果トランジスタからなり、前記電圧制御電源が、第2の電界効果トランジスタからなり、これら2つの電界効果トランジスタを同一の集積回路チップ上に製作して、前記第1の電界効果トランジスタを、前記第2の電界効果トランジスタの電気的特性をモデルにして製作することができるようにすることからなる上項10の回路。
12.前記トランジスタが、第1の電界効果トランジスタからなり、前記電圧制御電源が、第2の電界効果トランジスタからなり、これら2つの電界効果トランジスタを類似の構成として、前記第1の電界効果トランジスタを、前記第2の電界効果トランジスタの電気的特性をモデルにして製作することができるようにすることからなる上項10の回路。
13.前記補償電圧を受信するために前記演算増幅器の出力に結合された第4のポート、前記第2の電圧に結合された第5のポート、及び、前記補償電圧の大きさに応答する大きさの電流を供給するための第6のポートを有する第2のトランジスタと、
前記電流を受け取るために、前記第2のトランジスタの前記第6のポートに結合された第3の端部を有し、かつ、前記電流を供給するための前記第1の電圧に結合された第4の端部を有する実効抵抗であって、該実効抵抗の両端間の電圧降下によって、該実効抵抗の前記第3の端部に第2の補償電圧を提供することからなる実効抵抗
とからさらに構成される上項1の回路。
14.前記第1の電圧が、前記第2の電圧より高く、前記電流が、前記実効抵抗から前記第2のトランジスタに流れる第2の電流からなる、上項13の回路。
15.前記第2の電圧が、前記第1の電圧より高く、前記電流が、前記第2のトランジスタから前記実効抵抗に流れる第2の電流からなる、上項13の回路。
16.前記補償電圧を受信するための前記演算増幅器の出力に結合された第3の入力を有し、かつ、前記補償電圧の大きさに応答する速度で電力を供給するように結合された第2の出力を有する第1の電圧制御電源と、
前記第2の補償電圧を受信するために前記実効抵抗の前記第3の端部に結合された第4の入力を有し、かつ、前記第2の補償電圧の大きさに応答する速度で電力を供給するように結合された第3の出力を有する第2の電圧制御電源
とからさらに構成される上項13の回路。
17.第1の電圧と第2の電圧の間で動作する集積回路チップ上の回路を補償する方法であって、該集積回路チップが、第1及び第2のトランジスタを備え、該第1のトランジスタが、第1、第2及び第3のポートを有し、該第3のポートの電圧レベルによって、該第1のポートと該第2のポート間の電流を制御し、前記第2のトランジスタが、第4、第5、及び第6のポートを有し、該第6のポートの電圧レベルによって、該第4のポートと該第5のポート間の電流を制御し、前記方法が、第1及び第2の端部を有する抵抗器を使用するものであって、
a)前記抵抗器の前記第1の端部に前記第1の電圧を供給して、該抵抗器を流れる電流を誘導するステップと、
b)前記抵抗器の前記第2の端部から、前記第1のトランジスタの前記第1のポートに電流を提供するステップと、
c)前記第2の電圧を、前記第1のトランジスタの前記第2のポートに供給して、前記第1のトランジスタの前記第3のポートの電圧レベルに応答する大きさで、前記第1のトランジスタの前記第1のポートと第2のポート間に電流のコンダクタンスを提供するステップと、
d)前記第1のトランジスタの前記第3のポートに流れる電流をほぼ一定の大きさに維持する大きさで、第3の電圧を該第3のポートに供給するステップと、
e)前記第1及び第2の電圧のうちの1つの電圧を、前記第2のトランジスタの前記第4のポートに供給して、それに電力を供給するステップと、
f)前記第2のトランジスタの前記第6のポートに前記第3の電圧を供給して、前記第2のトランジスタの前記第5のポートによって供給される電力レベルを安定化するステップ
とからなる方法。
18.前記ステップf)において、電力が、前記第2のトランジスタの前記第5のポートによって、第2の電流として供給され、この電力が、該第2の電流のピークの大きさをほぼ一定の値に維持することによって安定化されることからなる上項17の方法。
19.第1の信号を受信するための第3の入力、前記補償電圧を受信するための前記演算増幅器の出力に結合された第4の入力、及び、前記第1の信号に応答して、第2の信号を供給するための出力を有する増幅器からさらになり、前記補償電圧によって、プロセス及び動作条件における任意の変動に対して、該増幅器を補償することからなる上項1の回路。
【符号の説明】
【0080】
282、284、286、288 抵抗器
300 出力バッファ
310 プリドライバ
240、320、351、371 NFET
250 演算増幅器
360 電圧制御源
361 PFET
381 PFET(実効抵抗)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路チップを補償して、プロセス及び動作条件における変動の影響を打ち消すための回路であって、
第1の電圧に結合された第1の端部と、制御電圧を供給するための第2の端部とを有する抵抗器と、
前記抵抗器の前記第2の端部に結合された第1のポート、第2の電圧に結合された第2のポート、及び、前記第1のポートと第2のポート間を流れる電流の大きさを制御するための第3のポートを有するトランジスタと、
前記制御電圧を受信するために、前記抵抗器の前記第2の端部に結合された第1の入力と、前記第1の電圧と第2の電圧の間の基準電圧に結合された第2の入力と、前記トランジスタの前記第3のポートに補償電圧を提供するために、該第3のポートに結合された出力を有する演算増幅器
とから構成され、前記補償電圧によって、前記トランジスタ内の前記電流がほぼ一定の大きさに維持されることからなる回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−178346(P2010−178346A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25455(P2010−25455)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【分割の表示】特願平11−536150の分割
【原出願日】平成10年12月21日(1998.12.21)
【出願人】(597154922)アルテラ コーポレイション (163)
【氏名又は名称原語表記】Altera Corporation
【Fターム(参考)】