レジスト除去方法、レジスト除去装置及び記憶媒体
【課題】その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板にダメージを与えずに、当該基板の表面に形成されたレジスト膜を確実に除去できる技術を提供すること。
【解決手段】前記基板の表面全体にレジスト膜を酸化するための酸化性の処理流体を供給し、レジスト膜を除去する第1の工程と、前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿ってアルカリ性の処理液をノズルから吐出して、基板の端部のレジストを除去する第2の工程と、を実施することにより、基板の端部におけるレジスト膜の残留を防ぎ、基板に与えるダメージを抑えることができる。
【解決手段】前記基板の表面全体にレジスト膜を酸化するための酸化性の処理流体を供給し、レジスト膜を除去する第1の工程と、前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿ってアルカリ性の処理液をノズルから吐出して、基板の端部のレジストを除去する第2の工程と、を実施することにより、基板の端部におけるレジスト膜の残留を防ぎ、基板に与えるダメージを抑えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に形成されたレジスト膜を除去するレジスト除去方法、レジスト除去装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、レジスト膜が形成された半導体ウエハに所定の回路パターンに従って露光を行う工程が含まれる。この露光時には前記回路のパターンに従って開口したフォトマスクが用いられる。
【0003】
前記フォトマスクを製造するためには、水平に支持され、鉛直軸周りに回転する角型の基板の回転中心にレジストが供給され、当該レジストを遠心力により基板の周縁部に広げる、いわゆるスピンコーティングが行われて、レジスト膜が形成される。そして、電子線描やレーザー描画などの手法を用いて前記パターンに対応するようにレジストを露光した後、現像液を用いてレジストを現像し、形成されたレジストパターンに従ってレジスト膜の下地膜をエッチングする。その後、前記レジスト膜の除去処理が行われる。この除去処理は、例えば特許文献1に記載されるように、基板に水蒸気と過酸化水素とを含んだ処理ガスを供給する酸化処理を行ってレジスト膜を酸化させて水溶化した後、基板に処理液を供給してレジスト膜を除去する。
【0004】
ところで、上記のように角型の基板にスピンコーティングによりレジスト膜を形成する場合に、基板の中央部から周縁部へと押しやられたレジストは、基板の辺に沿って角部に向かって流れる結果、形成されたレジスト膜の周縁部における膜厚は、中央部の膜厚に比べて大きくなる。故に、この基板の周縁部では上記のレジスト膜の除去処理後にレジスト膜が残留してしまうおそれがある。これを防ぐために例えば、処理液としてレジストの溶解性が高いものを用いたり、処理液の供給時間を長くすること、処理液の温度を高くすること等が考えられるが、そうすると基板の中央部では前記下地膜がダメージを受け、結果として、正常なフォトマスクを製造できないおそれがあった。
【0005】
前記特許文献1にはこのような問題について検討されておらず、従って、当該問題を解決することはできない。また、特許文献2には、基板の外周部におけるレジスト膜の膜厚が厚い領域に対して、酸性あるいはアルカリ性の水溶液をこの外周部に優先的に接触させて、基板全体の膜厚を低下させることが好ましい旨が記載されているが、具体的にどのように前記水溶液を供給するかということについて記載されておらず、上記の問題を解決するには不十分である。このような事情から、基板にダメージを与えずにレジスト膜を除去できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−31750(図1など)
【特許文献2】PCT/JP2007/000573(段落0053〜段落0056)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚く形成された基板に、ダメージを与えずに前記レジスト膜を除去できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレジスト除去方法は、その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板の表面全体に、当該レジスト膜を酸化するための酸化性の処理流体を供給し、レジスト膜を除去する第1の工程と、
前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿ってアルカリ性の処理液をノズルから吐出して、基板の端部のレジストを除去する第2の工程と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のレジスト除去方法の具体的な態様としては、例えば次の通りである。
(1)前記第1の工程は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理ガスを基板に供給する工程と、その後、基板の表面全体に洗浄液を供給してレジストを除去する工程と、を含む。
(2)前記第1の工程は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理液を基板全体に供給すると共にレジストを除去する工程を含む。
(3)前記第1の工程は、基板への前記処理液の供給を停止した後、基板全体に洗浄液を供給し、当該基板から第1の処理液を除去する工程を含む。
(4)前記第1の工程の後に、前記第2の工程を行う。
(5)前記レジスト膜は、ポジ型レジストにより構成され、前記第2の工程の後に、前記第1の工程を行う。
(6)前記基板は角型である。
【0010】
本発明のレジスト除去装置は、その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板に対してレジスト膜を除去するための装置において、
前記基板の表面全体に、当該レジスト膜を酸化するための処理流体を供給し、レジスト膜を除去するように構成された第1の処理部と、
アルカリ性の処理液を吐出するノズルを備え、前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿って前記ノズルから処理液を吐出するように構成された第2の処理部と、
基板に対して第1の処理部及び第2の処理部のうちの一方にて処理を行った後、他方にて処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明のレジスト除去装置の具体的な態様としては、例えば次の通りである。
(7)前記第1の処理部は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理ガスを基板に供給するガス供給部と、基板の表面全体に洗浄液を供給して水溶化されたレジストを除去する洗浄液供給部と、を含む
(8)前記第1の処理部は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理液を基板全体に供給すると共にレジストを除去する液処理部を備える。
(9)前記液処理部は、基板への前記処理液の供給の停止後、基板全体に洗浄液を供給して、基板から第1の処理液を除去する処理液除去部を備える。
(10)前記制御部は、基板に対して第1の処理部にて処理を行った後、第2の処理部にて処理を行うように制御信号を出力する。
(11)前記レジスト膜は、ポジ型レジストにより構成され、
前記制御部は、基板に対して第2の処理部にて処理を行った後、第1の処理部にて処理を行うように制御信号を出力する。
(12)前記基板は角型基板である。
【0012】
本発明の記憶媒体は、基板の表面に形成されたレジスト膜からなるマスクを除去する装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上記のレジスト除去方法を実施するためのものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レジスト膜を酸化するための酸化性の処理流体を供給し、レジスト膜を除去する第1の工程と、前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿ってアルカリ性の処理液をノズルから吐出して、基板の端部のレジストを除去する第2の工程と、を備えている。従って、基板の周縁部におけるレジスト膜の残留が抑えられる。また、レジストを除去するための処理液として、基板にダメージを与えることが少ない処理液を選択したり、処理液の供給時間を短縮することができるので、基板がダメージを受けることが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るレジスト除去装置の平面図である。
【図2】前記レジスト除去装置の縦断側面図である。
【図3】前記レジスト除去装置の縦断側面図である。
【図4】前記レジスト除去装置に設けられたレジスト酸化ユニットの縦断側面図である。
【図5】前記レジスト酸化ユニットの縦断側面図である。
【図6】前記レジスト酸化ユニットの概略平面図である。
【図7】前記レジスト除去装置に設けられた基板端部処理ユニットの平面図である。
【図8】前記基板端部処理ユニットの斜視図である。
【図9】前記基板端部処理ユニットに設けられるコ字型の基体の縦断側面図である。
【図10】洗浄処理ユニット6の縦断側面図である。
【図11】前記洗浄処理ユニット6に設けられる基板保持部61の斜視図である。
【図12】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図13】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図14】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図15】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図16】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図17】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図18】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図19】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図20】レジスト除去処理を受ける前の基板の辺部の概略図である。
【図21】レジスト除去処理を受ける前の基板の角部の概略図である。
【図22】周縁部除去処理後の基板の辺部の概略図である。
【図23】周縁部除去処理後の基板の角部の概略図である。
【図24】レジスト除去処理後の基板の辺部の概略図である。
【図25】レジスト除去処理後の基板の角部の概略図である。
【図26】レジスト除去処理を受ける前の基板の辺部の概略図である。
【図27】レジスト除去処理を受ける前の基板の角部の概略図である。
【図28】周縁部除去処理後の基板の辺部の概略図である。
【図29】周縁部除去処理後の基板の角部の概略図である。
【図30】レジスト除去処理後の基板の辺部の概略図である。
【図31】レジスト除去処理後の基板の角部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るレジスト除去装置1について説明する。このレジスト除去装置1は、角型の基板Bの表面に形成されたレジスト膜を除去する装置である。この基板Bはフォトマスクの製造に用いられるマスク基板であり、レジスト膜をマスクとして当該レジスト膜の下層の膜はエッチングされている。前記レジスト膜は、基板Bがその中心軸回りに回転され、その回転中心にレジストが供給されて遠心力により基板Bの周縁部へ広げられる、いわゆるスピンコーティングにより形成されており、レジスト膜の周縁部の膜厚は中央部の膜厚よりも大きい。
【0016】
レジスト除去装置1は、基板Bに各処理を行う処理ユニットを備えており、この処理ユニットには、第1の処理部を構成するレジスト変性処理ユニット2と、第2の処理部である基板端部処理ユニット4と、前記レジスト変性処理ユニット2と共に第1の処理部を構成する洗浄処理ユニット6とが含まれる。レジスト変性処理ユニット2はガス供給部であり、水蒸気とオゾンガスとを含む処理ガスによってレジスト膜を酸化させ、水溶化させる。酸化されたレジスト膜は、特にアルカリ性の処理液に対する溶解性が高まる。基板端部処理ユニット4は、基板Bの周縁部のレジスト除去処理を行う。洗浄処理ユニット6は洗浄液供給部であり、基板B表面全体のレジスト除去処理を行う。各ユニットについては後に詳しく説明する。
【0017】
図1はレジスト除去装置1の概略平面図であり、図2、図3はその側面図である。レジスト除去装置1は、基板Bが収容されたキャリアCの搬入出を行うキャリアステーションC1と、上記の各ユニットを有する処理ステーションC2と、処理ステーションC2と、処理ステーションC2で使用する薬液やガス等の貯留及び生成を行うケミカルステーションC3と、を具備しており、これらキャリアステーションC1、処理ステーションC2、ケミカルステーションC3は、この順に直線上に配置されている。
【0018】
図1に示すようにキャリアステーションC1は、複数のキャリアCを載置できる載置台11を有しており、載置台11に載置されたキャリアCの側壁をなす蓋体10に対向するようにシャッタ12により開閉自在な窓部13を備えている。このシャッタ12はキャリアCの側壁をなす蓋体10を把持する把持手段(図示せず)を有しており、図2に点線で示すようにこの蓋体10を把持し、処理ステーションC2側に蓋体10を退避させることができる。
【0019】
また、キャリアステーションC1はキャリアCと処理ステーションC2との間で基板Bを受け渡す基板搬送機構14を有している。基板搬送機構14は、載置台11に載置されたキャリアCの配列方向に移動自在、進退自在、昇降自在、且つ鉛直軸回りに回転自在な搬送アーム15を備えており、搬送アーム15は基板Bの裏面縁部を支持する。
【0020】
処理ステーションC2は、キャリアステーションC1側に棚ユニットU1を備えており、棚ユニットU1は、基板Bが載置される受け渡しステージTRS1、TRS2と、載置された基板Bを冷却するステージを備えた冷却ユニットCPL1、CPL2とが互いに積層されて構成されている。受け渡しステージTRS1には、キャリアステーションC1から搬入された基板Bが受け渡され、受け渡しステージTRS2にはキャリアステーションC1に戻される基板Bが受け渡される。図2中16a、16bは、キャリアステーションC1と処理ステーションC2とを仕切る境界壁に設けられた搬送口であり、これら搬送口16a、16bを介して、前記搬送アーム16が受け渡しステージTRS1、TRS2にアクセスする。
【0021】
キャリアステーションC1から処理ステーションC2を見て、例えば左側には8台のレジスト変性処理ユニット(VOS)2が2列4段で配置されており、右側には、レジスト変性処理ユニット2に対向するように2台の基板端部処理ユニット4と、2台の洗浄処理ユニット6とが設けられている。この例では、キャリアステーションC1側には基板端部処理ユニット4が積層され、ケミカルステーションC3側には洗浄処理ユニット6が積層されている。
【0022】
また、棚ユニットU1、レジスト変性処理ユニット(VOS)2、基板端部処理ユニット4及び洗浄処理ユニット6に囲まれるように主基板搬送機構17が設けられている。また、主基板搬送機構17を挟んで棚ユニットU1に対向するように、棚ユニットU2が設けられている。棚ユニットU2は、基板Bを加熱する加熱ユニット(HP)19が4段に積層されて構成されている。
【0023】
主基板搬送機構17は、基板Bの裏面縁部を支持して搬送する搬送アーム18を有している。搬送アーム18は鉛直軸回りに回転自在、前後方向に進退自在且つ昇降自在に構成されており、処理ステーションC2に設けられた各ユニット間で基板Bを搬送する。
【0024】
ケミカルステーションC3には、処理ガス供給部10Aと、処理液供給部10Bとが設けられている。処理ガス供給部10Aは、酸素を含む気体中で放電することによりオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部(図示せず)と、水蒸気を発生させる水蒸気発生部(図示せず)と、を備え、前記オゾンガスと水蒸気と希釈ガスであるN2ガスとを混合したガスを処理ガスとしてレジスト変性処理ユニット2に供給する。処理液供給部10Bは、基板端部処理ユニット4及び洗浄処理ユニット6で基板Bに供給する各処理液を貯留すると共にこれらの処理液を各処理ユニットへ供給する。
【0025】
このレジスト除去装置1には、コンピュータからなる制御部100が設けられている。制御部100はプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えており、前記プログラムには制御部100からレジスト除去装置1の各部に制御信号を送り、後述のように基板Bを搬送すると共に基板Bに処理を行うことができるようにステップ群が組まれている。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)メモリーカードなどの記憶媒体に格納されて制御部100にインストールされる。
【0026】
以下、処理ステーションC2に設けられる各ユニットの構成について説明する。先ず、縦断側面図である図4及び図5を参照してレジスト変性処理ユニット2について説明する。レジスト変性処理ユニット2は、基板Bを収容する密閉式のチャンバ21を有し、チャンバ21は、固定された下部容器21aと、下部容器21aの上面を覆う蓋体21bから構成され、蓋体21bはシリンダ22によって昇降自在である。図4は基板Bを処理するために蓋体21bを閉じた状態を示しており、図5は基板Bをチャンバ21に搬入するために蓋体21bを開放した状態を示している。図中21cはチャンバ21内を気密にするためのOリングである。
【0027】
下部容器21aには基板Bを載置するステージ23が設けられており、このステージ23には基板の裏面の縁部を支持する支持ピン23aが複数箇所に設けられている。ステージ23の周縁は盛り上がって立起壁24を形成しており、チャンバ21内に供給される処理ガスが基板Bの裏面へ流入することを抑制する。ステージ23の内部にはヒータ25が埋設されている。
【0028】
また、処理ガスをチャンバ21の内部に導入するガス導入口26及び処理ガスを外部へ排気するガス排出口27が、下部容器21aの側壁に開口しており、ガス導入口26から供給された処理ガスは、ガス排出口27へ向けてチャンバ21内を水平方向に流れる。この処理ガスは、オゾンガスと純水を気化させた水蒸気とN2ガスとの混合ガスであり、上記のケミカルステーションC3の処理ガス供給部10Aから供給される。ガス排出口27には真空ポンプなどにより構成される排気機構28が接続されている。
【0029】
蓋体21bの裏面には基板Bの裏面縁部を保持する爪部材31が、例えば3箇所(図4では1箇所、図5では2箇所のみ図示)に設けられており、処理ステーションC2の主基板搬送機構17は、この爪部材31に対して基板Bの受け渡しを行う。爪部材31が基板Bを保持した状態で蓋体21bを降下させると、基板Bは、ステージ23に受け渡される。蓋体21bにはヒータ32が埋設されており、下部容器21aのヒータ25と共に基板Bの温度を調整する。
【0030】
下部容器21aの外側にはリング部材33aが設けられており、蓋体21bの外側にはリング部材33bが設けられている。これらリング部材33a及びリング部材33bには、外周から内側へ向かう切り欠き33cが設けられている。この切り欠き33cはリング部材33a、33bの周方向に複数形成され、且つ互いに上下に重なるように配設されている。また、チャンバ21の下方には回転駆動機構34が設けられており、回転駆動機構34からは複数の接続部35がチャンバ21の外方へ向かって伸び、接続部35は回転駆動機構34により鉛直軸周りに回転する。接続部35の先端にはリング部材33a、33bの外周を上方へ伸びる支持部36が設けられ、支持部36には水平軸回りに回動する押圧ローラ37a、37bが夫々上下に支持されている。
【0031】
図6のチャンバ21の平面図に鎖線で示すように、基板Bの処理時には押圧ローラ37a,37bはリング部材33a、33bに乗り上げ、リング部材33a、33bを互いに押圧して、チャンバ21内の処理空間を気密に保つ。基板Bの受け渡し時には押圧ローラ37a,37bは切り欠き33cに重なる位置に移動し、蓋体21bの昇降に干渉しないように構成されている。
【0032】
続いて、基板端部処理ユニット4について、図5の平面図及び図6の斜視図に基づいて説明する。基板端部処理ユニット4は、前記主基板搬送機構17との間で基板Bの受け渡しを行う受け渡しチャック41と、受け渡しチャック41により基板Bが載置される4つの載置台45と、2つのノズル部50とから構成されている。
【0033】
受け渡しチャック41は、水平な角型リング状に構成され、その表面には基板Bの裏面縁部を支持する支持ピン42が周方向に複数配列されている。受け渡しチャック41は、支持部材43を介して受け渡しチャック41の下方側に設けられた駆動機構44に接続され、当該駆動機構44により昇降自在及び鉛直軸周りに回転自在に構成されている。これによって、受け渡しチャック41は載置台45に載置される基板Bの向きを変更することができる。
【0034】
4つの載置台45は、そのうちの2つずつが前後方向(図7中Y軸方向)に間隔をおいて対向し、それら対向した組が夫々左右方向(図7中X軸方向)に沿って間隔をおくように設けられている。各載置台45の上面には支持ピン46が設けられ、基板Bの縁部が各支持ピン46上に載置されて、当該基板Bは水平に支持される。図中47は、各載置台45の下部に設けられた載置台45の支持部材である。
【0035】
また、左右方向(X方向)に並んだ載置台45上には助走ステージ48、48が配置されている。この助走ステージ48は左右方向に延設された水平な板状部材であり、その左右の両端部は前後方向に拡幅され、平面視矩形状の拡幅部49として構成されている。この拡幅部49は、基板Bの横方向の位置を規制する役割と、基板Bの角部を処理する際に、基板Bの辺部を処理するときに比べてノズル部50の周囲の気流が変化することを防ぐ役割と、を有する。
【0036】
続けて、2つのノズル部50について説明する。各ノズル部50は、側面視側面視コ字状に形成された基体51と、基体51を支持する支持部材52とを備えており、基体51は前記左右方向に互いに対向して設けられている。支持部材52は前後方向に延びるガイド53に沿って、当該前後方向に移動自在に構成されている。
【0037】
図9も参照しながら説明すると、基体51は上片部51a、下片部51b、壁部51cとから構成され、上片部51a及び下片部51bは、載置台45に載置された基板Bの端部を互いに挟む高さ位置に設けられている。上片部51aには基板Bの端部の表面に開口する処理液吐出口54aが設けられ、下片部51bには基板Bの端部の裏面に開口する処理液吐出口54bが設けられている。これらの処理液吐出口54a,54bは、各々基体51の移動方向(図9の紙面の表裏方向)に間隔をおいて2つずつ設けられている。処理液吐出口54a,54bには、処理液供給機構55及び洗浄液供給機構5Aが接続されている。処理液供給機構55は、処理液としてアルカリ性の薬液であるTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を処理液吐出口54a,54bに供給し、洗浄液供給機構5Aは、洗浄液として純水を処理液吐出口54a,54bに供給する。これらTMAH、純水が互いに切り替わり、処理液吐出口54a及び54bから基板Bに供給される。
【0038】
また、上片部51aの下面には、処理液吐出口54aよりも基板Bの中央部側にガス吐出口56が設けられており、N2ガスの供給機構57から供給されたN2ガスを吐出する。このガス吐出口56は壁部51cに向かって斜めに開口し、基体51の移動方向に多数設けられている。また、壁部51cには、排気機構5Aに接続された排気口58が開口している。処理液吐出口54a,54bから基板Bの端部に処理液が吐出されるとき、排気口58からの排気及びガス吐出口56からのN2ガスの吐出が行われ、余剰の処理液及び溶解したレジストが基板Bの中央側に飛散せず、排気口58から除去されるようになっている。図9の矢印は、吐出された処理液及びN2ガスによる排液及び排気の流れを示している。また、上片部51a,51bには投光部59a,59bが設けられており、基板B及び助走ステージ48が投光部59aから受光部59bへの投光を遮るときに、上記の基板Bへの処理液の吐出、N2ガスの吐出及び排気口58からの排気が行われる。
【0039】
続いて、洗浄処理ユニット6について図10及び図11を参照して説明する。洗浄処理ユニット6は、基板Bを保持する基板保持部61を備えており、この基板保持部61は水平なリング部材62と、リング部材62の周方向に配列された複数の支持ピン63とにより構成されている。支持ピン63は、下方側が拡径されており、この拡径された下方側で基板Bの裏面の縁部を保持すると共に上方側で基板Bの側部の位置を規制する。リング部材62の内周からリング部材の中央に向かって支持部材64が伸び、支持部材64は鉛直方向に伸びる軸部65に接続されている。支持部材64はリング部材62の周方向に複数設けられ、支持部材64間は開口し、支持部材64の下方から基板Bの裏面に洗浄液を供給することができるようになっている。軸部65は駆動機構66に接続されており、駆動機構66により軸部65を介してリング部材62に保持された基板Bがその中心軸回りに回転する。また、駆動機構66によりリング部材62が昇降し、主基板搬送機構17との間で基板Bの受け渡しを行う
【0040】
前記軸部65を囲むように支持板67が設けられ、支持板67には2つの裏面洗浄ノズル68が設けられている。裏面洗浄ノズル68は、基板Bの端部の下方に配置されている。裏面洗浄ノズル68は、例えば洗浄液である純水とSC1(アンモニア水と過酸化水素水と水との混合溶液)とを、互いに切り替えて基板Bの中心部へ向けて供給する。また、この裏面洗浄ノズル68上から外方へ向けて下る傾斜面を備えたガイド部材69が設けられ、ガイド部材69の下方には凹部71を備えた液受け部72が設けられており、前記傾斜面に流れた液はこの凹部71にガイドされる。凹部71の底面には排液口73が開口している。また凹部71の底面に起立した排気管74が設けられ、基板Bの周囲を排気する。
【0041】
また、液受け部72とガイド部材69との間には、基板保持部61の側方を囲む筒状の中間カップ75が設けられており、中間カップ75の上部は内方へ向けて屈曲している。この中間カップ75は、基板Bから飛散した洗浄液をその内周面で受け止め、前記凹部71にガイドする。中間カップ75の外側には、当該中間カップ75を囲むように洗浄液の飛散を防ぐための外カップ76が設けられており、その上端は内方に屈曲し、斜めに向かって伸びている。この外カップ76は後述の表面洗浄ノズル77の移動を妨げないように昇降機構78を介して昇降自在に構成されている。表面洗浄ノズル77は、基板Bの中心上と外カップ76の外側に設けられた不図示の待機領域との間で移動自在に構成され、例えば洗浄液として純水とSC1とを切り替えて基板Bに供給する。
【0042】
続いて、レジスト除去装置1における処理手順について、基板Bの表面状態を示す図12〜図19を参照しながら説明する。この例ではレジスト除去装置1に搬入される基板Bの表面には、ネガ型レジストからなるレジスト膜81が形成されている。図12に示すようにスピンコーティングによりレジスト膜81を形成する際に作用する遠心力で、レジスト膜81の周縁部は盛り上がっている。
【0043】
キャリアCに格納された状態で、キャリアステーションC1の載置台11に搬送された基板Bは、基板搬送機構14→処理ステーションC2の受け渡しステージTRS1→主基板搬送機構17の順で受け渡され、主基板搬送機構17によりレジスト変性処理ユニット2の蓋体21bに受け渡される。蓋体21bが下降してステージ23に基板Bが受け渡されると共にチャンバ21内が気密になると、ガス排出口27から排気されると共にガス導入口26から既述のオゾンと水蒸気とN2ガスとを含む処理ガスが供給され、図13に矢印で示すように横方向に向かう気流を形成する。
【0044】
この処理ガスに曝されてレジスト膜81が酸化され、アルカリに対して溶解度が高くなるように変性する。前記処理ガスの供給が停止した後、N2ガスがチャンバ21内に供給され、チャンバ21内の処理ガスがパージされた後、蓋体21bが開放されて、基板Bが主基板搬送機構17によりチャンバ21から搬出される。主基板搬送機構17は、基板Bを洗浄処理ユニット6に搬送し、基板保持部61が上昇して基板Bを受け取った後、基板Bの処理位置へ下降する。
【0045】
表面洗浄ノズル77が外カップ76の外側から基板Bの中心上に移動した後、外カップ76が上昇する。基板保持部61が回転すると共に表面洗浄ノズル77、裏面洗浄ノズル68から純水Wが基板Bの表面及び裏面の中央部に夫々吐出される。吐出された純水Wは遠心力により基板Bの周縁部へと広がる(図14)。これによって基板Bの表面のレジスト膜81が純水Wに溶解して除去される。表面洗浄ノズル77及び裏面洗浄ノズル68から純水Wの吐出が停止すると、基板保持部61の回転速度が上昇して純水Wが振り切られ、基板Bが乾燥される(図15)。然る後、基板保持部61の回転が停止し、外カップ76が下降すると共に表面洗浄ノズル77が外カップ76の外側に退避し、基板保持部61が上昇して主基板搬送機構17に基板Bが受け渡される。
【0046】
続いて、主基板保持部17は、基板Bを基板端部処理ユニット4に搬送し、チャック41を介して基板Bが載置台45に受け渡される。その後、各ノズル部50の基体51が、ガイド53の一端側からガイド53の他端側へ向かって移動し、ガイド53の一端側の助走ステージ48に差し掛かると、排気口58からの排気、ガス吐出口56からのN2ガスの吐出及び処理液吐出口54a、54bからの処理液であるTMAHの吐出が行われる。
【0047】
前記処理液は、基板Bの対向する2辺に沿って基板Bの端部に残留したレジスト82に供給され、このレジスト82を溶解し、溶解されたレジスト82及び余剰な処理液は排気口58に流入して除去される。図16では前記基体51から吐出された処理液の流れを矢印で示している。基体51がガイド53の他端側の助走ステージ48を越えると、前記排気、N2ガスの吐出及び処理液の吐出が一旦停止すると共に基体51がガイド53の一端側へ戻る。
【0048】
そして、チャック41が基板Bを持ち上げ、90°回転した後、下降して再度基板Bを載置台45に受け渡す。そして、基体51が再度ガイド53の他端側へ向かって移動し、先の処理時と同様に排気、N2ガスの吐出及び処理液の吐出が行われ、基板Bの対向する2辺に沿ってレジスト82が溶解される。このように基板Bの全周に処理液が供給されて、基板Bの周縁部のレジスト82が除去され(図17)、基体51がガイド53の他端側の助走ステージ48を越えると、前記排気、N2ガスの吐出及び処理液の吐出が再度停止すると共に基体51がガイド53の一端側へ戻る。
【0049】
その後、基体51は、ガイド53の一端側からガイド53の他端側へ向かって移動し、ガイド53の一端側の助走ステージ48に差し掛かると、排気口58からの排気、ガス吐出口56からのN2ガスの吐出及び処理液吐出口54a、54bからの純水の吐出が行われる。TMAHを供給する場合と同様に基体51が移動しながら基板Bの吐出が続けられ、当該純水は基板Bに付着したTMAHを洗い流し、当該TMAHと共に排気口58から除去される。そして、基板Bの2辺への純水の供給が終わると、TMAHを供給する場合と同様に載置台45の基板Bの向きが90°変えられ、残る2辺に純水の供給が行われる。基板Bの周縁部全体へ純水が供給されると、チャック41が基板Bを持ち上げ、主基板搬送機構17に受け渡す。
【0050】
主基板搬送機構17は、基板Bを洗浄処理ユニット6に搬送する。そして、既述のように基板保持部61が基板Bを受け取り、回転すると、基板Bの中心上に移動した表面洗浄ノズル77及び裏面洗浄ノズル68から、処理液L例えばSC1が基板Bの表面及び裏面の中央部に夫々吐出され、基板Bに付着していたレジストの残渣やパーティクルを遠心力により基板Bの外側に押し流して除去する(図18)。その後、表面洗浄ノズル77及び裏面洗浄ノズル68からSC1に代わり純水Wが吐出され、処理液Lが除去される。然る後、表面洗浄ノズル77及び裏面洗浄ノズル68から純水Wの吐出が停止すると、基板保持部61の回転速度が上昇して純水Wが振り切られ、基板Bが乾燥される(図19)。
【0051】
然る後、基板保持部61の回転が停止し、外カップ76が下降すると共に表面洗浄ノズル77が外カップ76の外側に退避し、基板保持部61が上昇して主基板搬送機構17に基板Bが受け渡される。主基板保持部17は、加熱ユニット19に基板Bを受け渡し、基板Bが加熱されて乾燥される。その後、主基板保持部17は前記基板Bを冷却ユニットCPLに搬送し、基板Bが冷却された後、受け渡しステージTRS2に搬送され、基板搬送機構14によりキャリアCに戻される。
【0052】
このレジスト除去装置1によれば、レジスト変性処理ユニット2で基板Bのレジスト膜を変質させて水溶化させ、洗浄処理ユニット6で基板Bの中央部のレジストを除去した後、基板端部処理ユニット4で基板Bの周縁部にアルカリ性の処理液であるTMAHを供給して、周縁部に残ったレジストを除去している。従って、基板Bの周縁部にレジストが残留することが抑えられ、且つ洗浄処理ユニット6で用いられる処理液(洗浄液)として、基板に与える影響が小さいものを用いたり、その供給時間を抑えたり、処理液の温度を抑えることができるので、前記処理液により基板Bの中央部がダメージを受けることが抑えられる。
【0053】
レジスト変性処理ユニット2としては、基板Bに酸化力を有する処理流体を供給することができればよいので、上記のように基板Bにオゾンを含んだ処理ガスを供給する構成に限られない。例えばレジスト変性処理ユニット2を洗浄処理ユニット6と同様に構成し、ノズル77からは処理液としてSPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)を供給する。そして、洗浄処理ユニット6と同様に回転する基板Bの中心に前記SPMを供給して、遠心力によりSPMを基板Bの周縁部へ広げてレジスト膜を酸化させてもよい。
【0054】
このように、処理液によりレジストを酸化する場合は、処理液によりレジストが酸化されると共に当該処理液から受ける圧力によりレジストが押し流されて基板Bから除去される。レジストを除去した後、ノズル77から供給する液を例えば純水に切り替えて、処理液を基板Bから除去する。この場合ノズル77は、特許請求の範囲で言う洗浄液供給部及び処理液除去部に相当する。このようなレジスト変性処理ユニット2で処理された基板Bは、レジストの酸化処理と除去処理とが同時に行われるので、例えば当該レジスト変性処理ユニット2で処理を終えた後は、洗浄処理ユニット6に搬送されずに基板端部処理ユニット4に搬送され、その後上記のようにレジスト残渣及びパーティクルの除去を目的として洗浄処理ユニット6に搬送される。また、この場合の処理液としては、SPM以外にも硫酸と他の酸化剤、例えばオゾンの混合液であってもよく、単独のオゾン水であってもよい。さらに、処理液によりレジストの酸化と除去とを行う場合、基板Bを回転させず、例えば処理液を供給するノズル77から処理液を吐出すると共にノズル77を横方向に動かすことで、このような酸化及び除去を行ってもよい。
【0055】
また、基板端部処理ユニット4としては、アルカリ性の処理液を基板Bの周縁部に供給できればよく、TMAHの他に例えばアンモニアを含んだ処理液を供給しても良い。また、上記の例において、基板端部処理ユニット4で前記処理液を基板Bの端部に供給した後、当該端部に純水の供給を行わずに洗浄処理ユニット6へ搬送して処理を行い、基板Bに付着したアルカリ性の処理液を除去してもよい。
【0056】
基板Bは、レジスト変性処理ユニット2→洗浄処理ユニット6→基板端部処理ユニット4→の順で搬送され、洗浄処理ユニット6での処理後に周縁部に残留したレジスト膜を基板端部処理ユニット4で除去してもよい。レジスト膜がネガ型レジストである場合の基板Bの搬送経路について説明したが、ポジ型レジストである場合も、ネガ型レジストと同様の搬送経路で基板Bを搬送して処理を行うことができる。さらに、ポジ型レジストである場合には、基板Bを、基板端部処理ユニット4→レジスト変性処理ユニット2→洗浄処理ユニット6の順で搬送して処理を行ってもよい。後述の評価試験で、このような順番で処理を行ってもレジスト膜の残渣が基板Bに残留しなかったことが確認されている。この理由としてポジ型レジストは、このレジスト除去処理の前段階の処理のエッチング処理時に表面が酸化される、つまりこのレジスト除去装置1に搬送される前に、レジスト膜81の周縁部が酸化され、アルカリ性に対する溶解度が高まっているため、基板端部処理ユニット2で当該周縁部を有効に除去することができるためと考えられる。なお、ネガ型レジストでは、前記エッチング処理時に表面の酸化が起こりにくいため、既述の実施形態で説明したようにユニット間を搬送して処理を行うことが有効である。
【0057】
本発明は、角型の基板にスピンコーティングされたレジスト膜を除去する場合の他に、半導体ウエハなどの円形の基板にスピンコーティングされたレジスト膜を除去する場合にも有効である。
【0058】
(評価試験1)
続いて、本発明に至る根拠となった評価試験について説明する。スピンコーティングによりネガ型レジストによるレジスト膜が形成された基板Bの辺部と、角部とを撮影した。図20、21は撮影された辺部、角部の写真を概略的に示したものである。図中斜線を付した領域91と多数の点を付した領域92はレジストが塗布されている領域を夫々示しており、領域92は領域91よりもレジストの膜厚が大きい。なお、図中の白地の領域にはレジストが塗布されておらず、レジストの下層のCr(クロム)からなる下地膜が露出した領域である。図20、21中のこの白地の領域は、基板Bの表面の縁部から基板Bの側面へ向かって下るように形成された基板Bの傾斜面である。
【0059】
この基板Bを上記の実施の形態と同様に、レジスト変性処理ユニット2→洗浄処理ユニット6→基板端部処理ユニット4→洗浄処理ユニット6の順に搬送して、レジスト除去処理を行った。そして、基板端部処理ユニット4から洗浄処理ユニット6へ搬送する間に前記基板Bの辺部及び角部の写真を撮影し、レジストが除去された様子を調べた。また、洗浄処理ユニット6で処理後にも基板Bの辺部及び角部の写真を撮影し、レジストが除去された様子を調べた。各処理ユニットの処理条件について説明すると、前記レジスト変性処理ユニット2では、上記のオゾンと水蒸気とを含む処理ガスを600秒供給しており、処理ガス中のオゾンの濃度は200g/m3である。基板端部処理ユニット4では処理液としてTMAHを用いた。洗浄処理ユニット6の処理液としては、SC1を用いてこれを二流体スプレー(Atomise Spray)で供給した。
【0060】
図22、23は、基板端部処理ユニット4で処理後に撮影された基板Bの辺部、角部の写真を夫々概略的に示している。これらの図22、23に示すように基板端部処理ユニット4による処理後ではレジスト膜の領域91、92が除去されていた。図中93はレジストの残渣である。図24、25は基板端部処理ユニット4で処理した後、さらに洗浄処理ユニット6で処理後に撮影された基板Bの辺部、角部の写真を夫々概略的に示している。洗浄処理ユニット6の処理後では基板Bの辺部及び角部において、レジストの残渣93も除去されていることが確認できた。
【0061】
(評価試験2)
評価試験1と略同様の実験を行ったが、差違点として基板Bのレジスト膜はポジ型レジストにより構成し、基板Bの搬送は基板端部処理ユニット4→レジスト変性処理ユニット2→洗浄処理ユニット6の順とした。そして、基板端部処理ユニット4の処理前、基板端部処理ユニット4で処理後且つ洗浄処理ユニット6で処理前、洗浄処理ユニット6で処理後に、夫々基板Bの辺部及び角部の写真を撮影し、レジスト膜の状態を調べた。また、この評価試験2では、基板端部処理ユニット4の処理液としてTMAHを用いて処理した後CO2を溶解させた純水でリンス処理を行った。図26、27は基板端部処理ユニット4で処理前の基板Bの辺部、角部の概略を夫々示しており、領域91よりも膜厚の大きい領域92が形成されている。
【0062】
図28、29は基板端部処理ユニット4で処理後の基板Bの辺部、角部を夫々示している。これらの図28、29に示すように基板端部処理ユニット4の処理後では領域92が無くなり、基板Bの周縁部の膜厚が低下していることが確認された。図30、31は洗浄処理ユニット6で処理後に撮影された基板Bの辺部、角部の写真を夫々概略的に示したものである。これらの図30、31に示すように、洗浄処理ユニット6の処理後では基板Bの辺部及び角部において、レジストの残渣は確認できなかった。評価試験1及び評価試験2の結果から、これらの実験の手法によりレジスト膜を高い確実性を持って除去できることが示され、本発明の知見が得られた。
【符号の説明】
【0063】
B 基板
C1 キャリアステーション
C2 処理ステーション
C3 ケミカルステーション
1 レジスト除去装置
17 主基板搬送機構
2 レジスト変性処理ユニット
21 チャンバ
23 ステージ
4 基板端部処理ユニット
41 チャック
45 載置台
50 ノズル部
6 洗浄処理ユニット
61 基板保持部
77 表面洗浄ノズル
100 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に形成されたレジスト膜を除去するレジスト除去方法、レジスト除去装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、レジスト膜が形成された半導体ウエハに所定の回路パターンに従って露光を行う工程が含まれる。この露光時には前記回路のパターンに従って開口したフォトマスクが用いられる。
【0003】
前記フォトマスクを製造するためには、水平に支持され、鉛直軸周りに回転する角型の基板の回転中心にレジストが供給され、当該レジストを遠心力により基板の周縁部に広げる、いわゆるスピンコーティングが行われて、レジスト膜が形成される。そして、電子線描やレーザー描画などの手法を用いて前記パターンに対応するようにレジストを露光した後、現像液を用いてレジストを現像し、形成されたレジストパターンに従ってレジスト膜の下地膜をエッチングする。その後、前記レジスト膜の除去処理が行われる。この除去処理は、例えば特許文献1に記載されるように、基板に水蒸気と過酸化水素とを含んだ処理ガスを供給する酸化処理を行ってレジスト膜を酸化させて水溶化した後、基板に処理液を供給してレジスト膜を除去する。
【0004】
ところで、上記のように角型の基板にスピンコーティングによりレジスト膜を形成する場合に、基板の中央部から周縁部へと押しやられたレジストは、基板の辺に沿って角部に向かって流れる結果、形成されたレジスト膜の周縁部における膜厚は、中央部の膜厚に比べて大きくなる。故に、この基板の周縁部では上記のレジスト膜の除去処理後にレジスト膜が残留してしまうおそれがある。これを防ぐために例えば、処理液としてレジストの溶解性が高いものを用いたり、処理液の供給時間を長くすること、処理液の温度を高くすること等が考えられるが、そうすると基板の中央部では前記下地膜がダメージを受け、結果として、正常なフォトマスクを製造できないおそれがあった。
【0005】
前記特許文献1にはこのような問題について検討されておらず、従って、当該問題を解決することはできない。また、特許文献2には、基板の外周部におけるレジスト膜の膜厚が厚い領域に対して、酸性あるいはアルカリ性の水溶液をこの外周部に優先的に接触させて、基板全体の膜厚を低下させることが好ましい旨が記載されているが、具体的にどのように前記水溶液を供給するかということについて記載されておらず、上記の問題を解決するには不十分である。このような事情から、基板にダメージを与えずにレジスト膜を除去できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−31750(図1など)
【特許文献2】PCT/JP2007/000573(段落0053〜段落0056)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚く形成された基板に、ダメージを与えずに前記レジスト膜を除去できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレジスト除去方法は、その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板の表面全体に、当該レジスト膜を酸化するための酸化性の処理流体を供給し、レジスト膜を除去する第1の工程と、
前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿ってアルカリ性の処理液をノズルから吐出して、基板の端部のレジストを除去する第2の工程と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のレジスト除去方法の具体的な態様としては、例えば次の通りである。
(1)前記第1の工程は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理ガスを基板に供給する工程と、その後、基板の表面全体に洗浄液を供給してレジストを除去する工程と、を含む。
(2)前記第1の工程は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理液を基板全体に供給すると共にレジストを除去する工程を含む。
(3)前記第1の工程は、基板への前記処理液の供給を停止した後、基板全体に洗浄液を供給し、当該基板から第1の処理液を除去する工程を含む。
(4)前記第1の工程の後に、前記第2の工程を行う。
(5)前記レジスト膜は、ポジ型レジストにより構成され、前記第2の工程の後に、前記第1の工程を行う。
(6)前記基板は角型である。
【0010】
本発明のレジスト除去装置は、その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板に対してレジスト膜を除去するための装置において、
前記基板の表面全体に、当該レジスト膜を酸化するための処理流体を供給し、レジスト膜を除去するように構成された第1の処理部と、
アルカリ性の処理液を吐出するノズルを備え、前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿って前記ノズルから処理液を吐出するように構成された第2の処理部と、
基板に対して第1の処理部及び第2の処理部のうちの一方にて処理を行った後、他方にて処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明のレジスト除去装置の具体的な態様としては、例えば次の通りである。
(7)前記第1の処理部は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理ガスを基板に供給するガス供給部と、基板の表面全体に洗浄液を供給して水溶化されたレジストを除去する洗浄液供給部と、を含む
(8)前記第1の処理部は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理液を基板全体に供給すると共にレジストを除去する液処理部を備える。
(9)前記液処理部は、基板への前記処理液の供給の停止後、基板全体に洗浄液を供給して、基板から第1の処理液を除去する処理液除去部を備える。
(10)前記制御部は、基板に対して第1の処理部にて処理を行った後、第2の処理部にて処理を行うように制御信号を出力する。
(11)前記レジスト膜は、ポジ型レジストにより構成され、
前記制御部は、基板に対して第2の処理部にて処理を行った後、第1の処理部にて処理を行うように制御信号を出力する。
(12)前記基板は角型基板である。
【0012】
本発明の記憶媒体は、基板の表面に形成されたレジスト膜からなるマスクを除去する装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上記のレジスト除去方法を実施するためのものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レジスト膜を酸化するための酸化性の処理流体を供給し、レジスト膜を除去する第1の工程と、前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿ってアルカリ性の処理液をノズルから吐出して、基板の端部のレジストを除去する第2の工程と、を備えている。従って、基板の周縁部におけるレジスト膜の残留が抑えられる。また、レジストを除去するための処理液として、基板にダメージを与えることが少ない処理液を選択したり、処理液の供給時間を短縮することができるので、基板がダメージを受けることが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るレジスト除去装置の平面図である。
【図2】前記レジスト除去装置の縦断側面図である。
【図3】前記レジスト除去装置の縦断側面図である。
【図4】前記レジスト除去装置に設けられたレジスト酸化ユニットの縦断側面図である。
【図5】前記レジスト酸化ユニットの縦断側面図である。
【図6】前記レジスト酸化ユニットの概略平面図である。
【図7】前記レジスト除去装置に設けられた基板端部処理ユニットの平面図である。
【図8】前記基板端部処理ユニットの斜視図である。
【図9】前記基板端部処理ユニットに設けられるコ字型の基体の縦断側面図である。
【図10】洗浄処理ユニット6の縦断側面図である。
【図11】前記洗浄処理ユニット6に設けられる基板保持部61の斜視図である。
【図12】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図13】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図14】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図15】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図16】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図17】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図18】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図19】レジスト除去装置により基板が処理を受けて変化する様子を示す説明図である。
【図20】レジスト除去処理を受ける前の基板の辺部の概略図である。
【図21】レジスト除去処理を受ける前の基板の角部の概略図である。
【図22】周縁部除去処理後の基板の辺部の概略図である。
【図23】周縁部除去処理後の基板の角部の概略図である。
【図24】レジスト除去処理後の基板の辺部の概略図である。
【図25】レジスト除去処理後の基板の角部の概略図である。
【図26】レジスト除去処理を受ける前の基板の辺部の概略図である。
【図27】レジスト除去処理を受ける前の基板の角部の概略図である。
【図28】周縁部除去処理後の基板の辺部の概略図である。
【図29】周縁部除去処理後の基板の角部の概略図である。
【図30】レジスト除去処理後の基板の辺部の概略図である。
【図31】レジスト除去処理後の基板の角部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るレジスト除去装置1について説明する。このレジスト除去装置1は、角型の基板Bの表面に形成されたレジスト膜を除去する装置である。この基板Bはフォトマスクの製造に用いられるマスク基板であり、レジスト膜をマスクとして当該レジスト膜の下層の膜はエッチングされている。前記レジスト膜は、基板Bがその中心軸回りに回転され、その回転中心にレジストが供給されて遠心力により基板Bの周縁部へ広げられる、いわゆるスピンコーティングにより形成されており、レジスト膜の周縁部の膜厚は中央部の膜厚よりも大きい。
【0016】
レジスト除去装置1は、基板Bに各処理を行う処理ユニットを備えており、この処理ユニットには、第1の処理部を構成するレジスト変性処理ユニット2と、第2の処理部である基板端部処理ユニット4と、前記レジスト変性処理ユニット2と共に第1の処理部を構成する洗浄処理ユニット6とが含まれる。レジスト変性処理ユニット2はガス供給部であり、水蒸気とオゾンガスとを含む処理ガスによってレジスト膜を酸化させ、水溶化させる。酸化されたレジスト膜は、特にアルカリ性の処理液に対する溶解性が高まる。基板端部処理ユニット4は、基板Bの周縁部のレジスト除去処理を行う。洗浄処理ユニット6は洗浄液供給部であり、基板B表面全体のレジスト除去処理を行う。各ユニットについては後に詳しく説明する。
【0017】
図1はレジスト除去装置1の概略平面図であり、図2、図3はその側面図である。レジスト除去装置1は、基板Bが収容されたキャリアCの搬入出を行うキャリアステーションC1と、上記の各ユニットを有する処理ステーションC2と、処理ステーションC2と、処理ステーションC2で使用する薬液やガス等の貯留及び生成を行うケミカルステーションC3と、を具備しており、これらキャリアステーションC1、処理ステーションC2、ケミカルステーションC3は、この順に直線上に配置されている。
【0018】
図1に示すようにキャリアステーションC1は、複数のキャリアCを載置できる載置台11を有しており、載置台11に載置されたキャリアCの側壁をなす蓋体10に対向するようにシャッタ12により開閉自在な窓部13を備えている。このシャッタ12はキャリアCの側壁をなす蓋体10を把持する把持手段(図示せず)を有しており、図2に点線で示すようにこの蓋体10を把持し、処理ステーションC2側に蓋体10を退避させることができる。
【0019】
また、キャリアステーションC1はキャリアCと処理ステーションC2との間で基板Bを受け渡す基板搬送機構14を有している。基板搬送機構14は、載置台11に載置されたキャリアCの配列方向に移動自在、進退自在、昇降自在、且つ鉛直軸回りに回転自在な搬送アーム15を備えており、搬送アーム15は基板Bの裏面縁部を支持する。
【0020】
処理ステーションC2は、キャリアステーションC1側に棚ユニットU1を備えており、棚ユニットU1は、基板Bが載置される受け渡しステージTRS1、TRS2と、載置された基板Bを冷却するステージを備えた冷却ユニットCPL1、CPL2とが互いに積層されて構成されている。受け渡しステージTRS1には、キャリアステーションC1から搬入された基板Bが受け渡され、受け渡しステージTRS2にはキャリアステーションC1に戻される基板Bが受け渡される。図2中16a、16bは、キャリアステーションC1と処理ステーションC2とを仕切る境界壁に設けられた搬送口であり、これら搬送口16a、16bを介して、前記搬送アーム16が受け渡しステージTRS1、TRS2にアクセスする。
【0021】
キャリアステーションC1から処理ステーションC2を見て、例えば左側には8台のレジスト変性処理ユニット(VOS)2が2列4段で配置されており、右側には、レジスト変性処理ユニット2に対向するように2台の基板端部処理ユニット4と、2台の洗浄処理ユニット6とが設けられている。この例では、キャリアステーションC1側には基板端部処理ユニット4が積層され、ケミカルステーションC3側には洗浄処理ユニット6が積層されている。
【0022】
また、棚ユニットU1、レジスト変性処理ユニット(VOS)2、基板端部処理ユニット4及び洗浄処理ユニット6に囲まれるように主基板搬送機構17が設けられている。また、主基板搬送機構17を挟んで棚ユニットU1に対向するように、棚ユニットU2が設けられている。棚ユニットU2は、基板Bを加熱する加熱ユニット(HP)19が4段に積層されて構成されている。
【0023】
主基板搬送機構17は、基板Bの裏面縁部を支持して搬送する搬送アーム18を有している。搬送アーム18は鉛直軸回りに回転自在、前後方向に進退自在且つ昇降自在に構成されており、処理ステーションC2に設けられた各ユニット間で基板Bを搬送する。
【0024】
ケミカルステーションC3には、処理ガス供給部10Aと、処理液供給部10Bとが設けられている。処理ガス供給部10Aは、酸素を含む気体中で放電することによりオゾンガスを発生させるオゾンガス発生部(図示せず)と、水蒸気を発生させる水蒸気発生部(図示せず)と、を備え、前記オゾンガスと水蒸気と希釈ガスであるN2ガスとを混合したガスを処理ガスとしてレジスト変性処理ユニット2に供給する。処理液供給部10Bは、基板端部処理ユニット4及び洗浄処理ユニット6で基板Bに供給する各処理液を貯留すると共にこれらの処理液を各処理ユニットへ供給する。
【0025】
このレジスト除去装置1には、コンピュータからなる制御部100が設けられている。制御部100はプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えており、前記プログラムには制御部100からレジスト除去装置1の各部に制御信号を送り、後述のように基板Bを搬送すると共に基板Bに処理を行うことができるようにステップ群が組まれている。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)メモリーカードなどの記憶媒体に格納されて制御部100にインストールされる。
【0026】
以下、処理ステーションC2に設けられる各ユニットの構成について説明する。先ず、縦断側面図である図4及び図5を参照してレジスト変性処理ユニット2について説明する。レジスト変性処理ユニット2は、基板Bを収容する密閉式のチャンバ21を有し、チャンバ21は、固定された下部容器21aと、下部容器21aの上面を覆う蓋体21bから構成され、蓋体21bはシリンダ22によって昇降自在である。図4は基板Bを処理するために蓋体21bを閉じた状態を示しており、図5は基板Bをチャンバ21に搬入するために蓋体21bを開放した状態を示している。図中21cはチャンバ21内を気密にするためのOリングである。
【0027】
下部容器21aには基板Bを載置するステージ23が設けられており、このステージ23には基板の裏面の縁部を支持する支持ピン23aが複数箇所に設けられている。ステージ23の周縁は盛り上がって立起壁24を形成しており、チャンバ21内に供給される処理ガスが基板Bの裏面へ流入することを抑制する。ステージ23の内部にはヒータ25が埋設されている。
【0028】
また、処理ガスをチャンバ21の内部に導入するガス導入口26及び処理ガスを外部へ排気するガス排出口27が、下部容器21aの側壁に開口しており、ガス導入口26から供給された処理ガスは、ガス排出口27へ向けてチャンバ21内を水平方向に流れる。この処理ガスは、オゾンガスと純水を気化させた水蒸気とN2ガスとの混合ガスであり、上記のケミカルステーションC3の処理ガス供給部10Aから供給される。ガス排出口27には真空ポンプなどにより構成される排気機構28が接続されている。
【0029】
蓋体21bの裏面には基板Bの裏面縁部を保持する爪部材31が、例えば3箇所(図4では1箇所、図5では2箇所のみ図示)に設けられており、処理ステーションC2の主基板搬送機構17は、この爪部材31に対して基板Bの受け渡しを行う。爪部材31が基板Bを保持した状態で蓋体21bを降下させると、基板Bは、ステージ23に受け渡される。蓋体21bにはヒータ32が埋設されており、下部容器21aのヒータ25と共に基板Bの温度を調整する。
【0030】
下部容器21aの外側にはリング部材33aが設けられており、蓋体21bの外側にはリング部材33bが設けられている。これらリング部材33a及びリング部材33bには、外周から内側へ向かう切り欠き33cが設けられている。この切り欠き33cはリング部材33a、33bの周方向に複数形成され、且つ互いに上下に重なるように配設されている。また、チャンバ21の下方には回転駆動機構34が設けられており、回転駆動機構34からは複数の接続部35がチャンバ21の外方へ向かって伸び、接続部35は回転駆動機構34により鉛直軸周りに回転する。接続部35の先端にはリング部材33a、33bの外周を上方へ伸びる支持部36が設けられ、支持部36には水平軸回りに回動する押圧ローラ37a、37bが夫々上下に支持されている。
【0031】
図6のチャンバ21の平面図に鎖線で示すように、基板Bの処理時には押圧ローラ37a,37bはリング部材33a、33bに乗り上げ、リング部材33a、33bを互いに押圧して、チャンバ21内の処理空間を気密に保つ。基板Bの受け渡し時には押圧ローラ37a,37bは切り欠き33cに重なる位置に移動し、蓋体21bの昇降に干渉しないように構成されている。
【0032】
続いて、基板端部処理ユニット4について、図5の平面図及び図6の斜視図に基づいて説明する。基板端部処理ユニット4は、前記主基板搬送機構17との間で基板Bの受け渡しを行う受け渡しチャック41と、受け渡しチャック41により基板Bが載置される4つの載置台45と、2つのノズル部50とから構成されている。
【0033】
受け渡しチャック41は、水平な角型リング状に構成され、その表面には基板Bの裏面縁部を支持する支持ピン42が周方向に複数配列されている。受け渡しチャック41は、支持部材43を介して受け渡しチャック41の下方側に設けられた駆動機構44に接続され、当該駆動機構44により昇降自在及び鉛直軸周りに回転自在に構成されている。これによって、受け渡しチャック41は載置台45に載置される基板Bの向きを変更することができる。
【0034】
4つの載置台45は、そのうちの2つずつが前後方向(図7中Y軸方向)に間隔をおいて対向し、それら対向した組が夫々左右方向(図7中X軸方向)に沿って間隔をおくように設けられている。各載置台45の上面には支持ピン46が設けられ、基板Bの縁部が各支持ピン46上に載置されて、当該基板Bは水平に支持される。図中47は、各載置台45の下部に設けられた載置台45の支持部材である。
【0035】
また、左右方向(X方向)に並んだ載置台45上には助走ステージ48、48が配置されている。この助走ステージ48は左右方向に延設された水平な板状部材であり、その左右の両端部は前後方向に拡幅され、平面視矩形状の拡幅部49として構成されている。この拡幅部49は、基板Bの横方向の位置を規制する役割と、基板Bの角部を処理する際に、基板Bの辺部を処理するときに比べてノズル部50の周囲の気流が変化することを防ぐ役割と、を有する。
【0036】
続けて、2つのノズル部50について説明する。各ノズル部50は、側面視側面視コ字状に形成された基体51と、基体51を支持する支持部材52とを備えており、基体51は前記左右方向に互いに対向して設けられている。支持部材52は前後方向に延びるガイド53に沿って、当該前後方向に移動自在に構成されている。
【0037】
図9も参照しながら説明すると、基体51は上片部51a、下片部51b、壁部51cとから構成され、上片部51a及び下片部51bは、載置台45に載置された基板Bの端部を互いに挟む高さ位置に設けられている。上片部51aには基板Bの端部の表面に開口する処理液吐出口54aが設けられ、下片部51bには基板Bの端部の裏面に開口する処理液吐出口54bが設けられている。これらの処理液吐出口54a,54bは、各々基体51の移動方向(図9の紙面の表裏方向)に間隔をおいて2つずつ設けられている。処理液吐出口54a,54bには、処理液供給機構55及び洗浄液供給機構5Aが接続されている。処理液供給機構55は、処理液としてアルカリ性の薬液であるTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を処理液吐出口54a,54bに供給し、洗浄液供給機構5Aは、洗浄液として純水を処理液吐出口54a,54bに供給する。これらTMAH、純水が互いに切り替わり、処理液吐出口54a及び54bから基板Bに供給される。
【0038】
また、上片部51aの下面には、処理液吐出口54aよりも基板Bの中央部側にガス吐出口56が設けられており、N2ガスの供給機構57から供給されたN2ガスを吐出する。このガス吐出口56は壁部51cに向かって斜めに開口し、基体51の移動方向に多数設けられている。また、壁部51cには、排気機構5Aに接続された排気口58が開口している。処理液吐出口54a,54bから基板Bの端部に処理液が吐出されるとき、排気口58からの排気及びガス吐出口56からのN2ガスの吐出が行われ、余剰の処理液及び溶解したレジストが基板Bの中央側に飛散せず、排気口58から除去されるようになっている。図9の矢印は、吐出された処理液及びN2ガスによる排液及び排気の流れを示している。また、上片部51a,51bには投光部59a,59bが設けられており、基板B及び助走ステージ48が投光部59aから受光部59bへの投光を遮るときに、上記の基板Bへの処理液の吐出、N2ガスの吐出及び排気口58からの排気が行われる。
【0039】
続いて、洗浄処理ユニット6について図10及び図11を参照して説明する。洗浄処理ユニット6は、基板Bを保持する基板保持部61を備えており、この基板保持部61は水平なリング部材62と、リング部材62の周方向に配列された複数の支持ピン63とにより構成されている。支持ピン63は、下方側が拡径されており、この拡径された下方側で基板Bの裏面の縁部を保持すると共に上方側で基板Bの側部の位置を規制する。リング部材62の内周からリング部材の中央に向かって支持部材64が伸び、支持部材64は鉛直方向に伸びる軸部65に接続されている。支持部材64はリング部材62の周方向に複数設けられ、支持部材64間は開口し、支持部材64の下方から基板Bの裏面に洗浄液を供給することができるようになっている。軸部65は駆動機構66に接続されており、駆動機構66により軸部65を介してリング部材62に保持された基板Bがその中心軸回りに回転する。また、駆動機構66によりリング部材62が昇降し、主基板搬送機構17との間で基板Bの受け渡しを行う
【0040】
前記軸部65を囲むように支持板67が設けられ、支持板67には2つの裏面洗浄ノズル68が設けられている。裏面洗浄ノズル68は、基板Bの端部の下方に配置されている。裏面洗浄ノズル68は、例えば洗浄液である純水とSC1(アンモニア水と過酸化水素水と水との混合溶液)とを、互いに切り替えて基板Bの中心部へ向けて供給する。また、この裏面洗浄ノズル68上から外方へ向けて下る傾斜面を備えたガイド部材69が設けられ、ガイド部材69の下方には凹部71を備えた液受け部72が設けられており、前記傾斜面に流れた液はこの凹部71にガイドされる。凹部71の底面には排液口73が開口している。また凹部71の底面に起立した排気管74が設けられ、基板Bの周囲を排気する。
【0041】
また、液受け部72とガイド部材69との間には、基板保持部61の側方を囲む筒状の中間カップ75が設けられており、中間カップ75の上部は内方へ向けて屈曲している。この中間カップ75は、基板Bから飛散した洗浄液をその内周面で受け止め、前記凹部71にガイドする。中間カップ75の外側には、当該中間カップ75を囲むように洗浄液の飛散を防ぐための外カップ76が設けられており、その上端は内方に屈曲し、斜めに向かって伸びている。この外カップ76は後述の表面洗浄ノズル77の移動を妨げないように昇降機構78を介して昇降自在に構成されている。表面洗浄ノズル77は、基板Bの中心上と外カップ76の外側に設けられた不図示の待機領域との間で移動自在に構成され、例えば洗浄液として純水とSC1とを切り替えて基板Bに供給する。
【0042】
続いて、レジスト除去装置1における処理手順について、基板Bの表面状態を示す図12〜図19を参照しながら説明する。この例ではレジスト除去装置1に搬入される基板Bの表面には、ネガ型レジストからなるレジスト膜81が形成されている。図12に示すようにスピンコーティングによりレジスト膜81を形成する際に作用する遠心力で、レジスト膜81の周縁部は盛り上がっている。
【0043】
キャリアCに格納された状態で、キャリアステーションC1の載置台11に搬送された基板Bは、基板搬送機構14→処理ステーションC2の受け渡しステージTRS1→主基板搬送機構17の順で受け渡され、主基板搬送機構17によりレジスト変性処理ユニット2の蓋体21bに受け渡される。蓋体21bが下降してステージ23に基板Bが受け渡されると共にチャンバ21内が気密になると、ガス排出口27から排気されると共にガス導入口26から既述のオゾンと水蒸気とN2ガスとを含む処理ガスが供給され、図13に矢印で示すように横方向に向かう気流を形成する。
【0044】
この処理ガスに曝されてレジスト膜81が酸化され、アルカリに対して溶解度が高くなるように変性する。前記処理ガスの供給が停止した後、N2ガスがチャンバ21内に供給され、チャンバ21内の処理ガスがパージされた後、蓋体21bが開放されて、基板Bが主基板搬送機構17によりチャンバ21から搬出される。主基板搬送機構17は、基板Bを洗浄処理ユニット6に搬送し、基板保持部61が上昇して基板Bを受け取った後、基板Bの処理位置へ下降する。
【0045】
表面洗浄ノズル77が外カップ76の外側から基板Bの中心上に移動した後、外カップ76が上昇する。基板保持部61が回転すると共に表面洗浄ノズル77、裏面洗浄ノズル68から純水Wが基板Bの表面及び裏面の中央部に夫々吐出される。吐出された純水Wは遠心力により基板Bの周縁部へと広がる(図14)。これによって基板Bの表面のレジスト膜81が純水Wに溶解して除去される。表面洗浄ノズル77及び裏面洗浄ノズル68から純水Wの吐出が停止すると、基板保持部61の回転速度が上昇して純水Wが振り切られ、基板Bが乾燥される(図15)。然る後、基板保持部61の回転が停止し、外カップ76が下降すると共に表面洗浄ノズル77が外カップ76の外側に退避し、基板保持部61が上昇して主基板搬送機構17に基板Bが受け渡される。
【0046】
続いて、主基板保持部17は、基板Bを基板端部処理ユニット4に搬送し、チャック41を介して基板Bが載置台45に受け渡される。その後、各ノズル部50の基体51が、ガイド53の一端側からガイド53の他端側へ向かって移動し、ガイド53の一端側の助走ステージ48に差し掛かると、排気口58からの排気、ガス吐出口56からのN2ガスの吐出及び処理液吐出口54a、54bからの処理液であるTMAHの吐出が行われる。
【0047】
前記処理液は、基板Bの対向する2辺に沿って基板Bの端部に残留したレジスト82に供給され、このレジスト82を溶解し、溶解されたレジスト82及び余剰な処理液は排気口58に流入して除去される。図16では前記基体51から吐出された処理液の流れを矢印で示している。基体51がガイド53の他端側の助走ステージ48を越えると、前記排気、N2ガスの吐出及び処理液の吐出が一旦停止すると共に基体51がガイド53の一端側へ戻る。
【0048】
そして、チャック41が基板Bを持ち上げ、90°回転した後、下降して再度基板Bを載置台45に受け渡す。そして、基体51が再度ガイド53の他端側へ向かって移動し、先の処理時と同様に排気、N2ガスの吐出及び処理液の吐出が行われ、基板Bの対向する2辺に沿ってレジスト82が溶解される。このように基板Bの全周に処理液が供給されて、基板Bの周縁部のレジスト82が除去され(図17)、基体51がガイド53の他端側の助走ステージ48を越えると、前記排気、N2ガスの吐出及び処理液の吐出が再度停止すると共に基体51がガイド53の一端側へ戻る。
【0049】
その後、基体51は、ガイド53の一端側からガイド53の他端側へ向かって移動し、ガイド53の一端側の助走ステージ48に差し掛かると、排気口58からの排気、ガス吐出口56からのN2ガスの吐出及び処理液吐出口54a、54bからの純水の吐出が行われる。TMAHを供給する場合と同様に基体51が移動しながら基板Bの吐出が続けられ、当該純水は基板Bに付着したTMAHを洗い流し、当該TMAHと共に排気口58から除去される。そして、基板Bの2辺への純水の供給が終わると、TMAHを供給する場合と同様に載置台45の基板Bの向きが90°変えられ、残る2辺に純水の供給が行われる。基板Bの周縁部全体へ純水が供給されると、チャック41が基板Bを持ち上げ、主基板搬送機構17に受け渡す。
【0050】
主基板搬送機構17は、基板Bを洗浄処理ユニット6に搬送する。そして、既述のように基板保持部61が基板Bを受け取り、回転すると、基板Bの中心上に移動した表面洗浄ノズル77及び裏面洗浄ノズル68から、処理液L例えばSC1が基板Bの表面及び裏面の中央部に夫々吐出され、基板Bに付着していたレジストの残渣やパーティクルを遠心力により基板Bの外側に押し流して除去する(図18)。その後、表面洗浄ノズル77及び裏面洗浄ノズル68からSC1に代わり純水Wが吐出され、処理液Lが除去される。然る後、表面洗浄ノズル77及び裏面洗浄ノズル68から純水Wの吐出が停止すると、基板保持部61の回転速度が上昇して純水Wが振り切られ、基板Bが乾燥される(図19)。
【0051】
然る後、基板保持部61の回転が停止し、外カップ76が下降すると共に表面洗浄ノズル77が外カップ76の外側に退避し、基板保持部61が上昇して主基板搬送機構17に基板Bが受け渡される。主基板保持部17は、加熱ユニット19に基板Bを受け渡し、基板Bが加熱されて乾燥される。その後、主基板保持部17は前記基板Bを冷却ユニットCPLに搬送し、基板Bが冷却された後、受け渡しステージTRS2に搬送され、基板搬送機構14によりキャリアCに戻される。
【0052】
このレジスト除去装置1によれば、レジスト変性処理ユニット2で基板Bのレジスト膜を変質させて水溶化させ、洗浄処理ユニット6で基板Bの中央部のレジストを除去した後、基板端部処理ユニット4で基板Bの周縁部にアルカリ性の処理液であるTMAHを供給して、周縁部に残ったレジストを除去している。従って、基板Bの周縁部にレジストが残留することが抑えられ、且つ洗浄処理ユニット6で用いられる処理液(洗浄液)として、基板に与える影響が小さいものを用いたり、その供給時間を抑えたり、処理液の温度を抑えることができるので、前記処理液により基板Bの中央部がダメージを受けることが抑えられる。
【0053】
レジスト変性処理ユニット2としては、基板Bに酸化力を有する処理流体を供給することができればよいので、上記のように基板Bにオゾンを含んだ処理ガスを供給する構成に限られない。例えばレジスト変性処理ユニット2を洗浄処理ユニット6と同様に構成し、ノズル77からは処理液としてSPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)を供給する。そして、洗浄処理ユニット6と同様に回転する基板Bの中心に前記SPMを供給して、遠心力によりSPMを基板Bの周縁部へ広げてレジスト膜を酸化させてもよい。
【0054】
このように、処理液によりレジストを酸化する場合は、処理液によりレジストが酸化されると共に当該処理液から受ける圧力によりレジストが押し流されて基板Bから除去される。レジストを除去した後、ノズル77から供給する液を例えば純水に切り替えて、処理液を基板Bから除去する。この場合ノズル77は、特許請求の範囲で言う洗浄液供給部及び処理液除去部に相当する。このようなレジスト変性処理ユニット2で処理された基板Bは、レジストの酸化処理と除去処理とが同時に行われるので、例えば当該レジスト変性処理ユニット2で処理を終えた後は、洗浄処理ユニット6に搬送されずに基板端部処理ユニット4に搬送され、その後上記のようにレジスト残渣及びパーティクルの除去を目的として洗浄処理ユニット6に搬送される。また、この場合の処理液としては、SPM以外にも硫酸と他の酸化剤、例えばオゾンの混合液であってもよく、単独のオゾン水であってもよい。さらに、処理液によりレジストの酸化と除去とを行う場合、基板Bを回転させず、例えば処理液を供給するノズル77から処理液を吐出すると共にノズル77を横方向に動かすことで、このような酸化及び除去を行ってもよい。
【0055】
また、基板端部処理ユニット4としては、アルカリ性の処理液を基板Bの周縁部に供給できればよく、TMAHの他に例えばアンモニアを含んだ処理液を供給しても良い。また、上記の例において、基板端部処理ユニット4で前記処理液を基板Bの端部に供給した後、当該端部に純水の供給を行わずに洗浄処理ユニット6へ搬送して処理を行い、基板Bに付着したアルカリ性の処理液を除去してもよい。
【0056】
基板Bは、レジスト変性処理ユニット2→洗浄処理ユニット6→基板端部処理ユニット4→の順で搬送され、洗浄処理ユニット6での処理後に周縁部に残留したレジスト膜を基板端部処理ユニット4で除去してもよい。レジスト膜がネガ型レジストである場合の基板Bの搬送経路について説明したが、ポジ型レジストである場合も、ネガ型レジストと同様の搬送経路で基板Bを搬送して処理を行うことができる。さらに、ポジ型レジストである場合には、基板Bを、基板端部処理ユニット4→レジスト変性処理ユニット2→洗浄処理ユニット6の順で搬送して処理を行ってもよい。後述の評価試験で、このような順番で処理を行ってもレジスト膜の残渣が基板Bに残留しなかったことが確認されている。この理由としてポジ型レジストは、このレジスト除去処理の前段階の処理のエッチング処理時に表面が酸化される、つまりこのレジスト除去装置1に搬送される前に、レジスト膜81の周縁部が酸化され、アルカリ性に対する溶解度が高まっているため、基板端部処理ユニット2で当該周縁部を有効に除去することができるためと考えられる。なお、ネガ型レジストでは、前記エッチング処理時に表面の酸化が起こりにくいため、既述の実施形態で説明したようにユニット間を搬送して処理を行うことが有効である。
【0057】
本発明は、角型の基板にスピンコーティングされたレジスト膜を除去する場合の他に、半導体ウエハなどの円形の基板にスピンコーティングされたレジスト膜を除去する場合にも有効である。
【0058】
(評価試験1)
続いて、本発明に至る根拠となった評価試験について説明する。スピンコーティングによりネガ型レジストによるレジスト膜が形成された基板Bの辺部と、角部とを撮影した。図20、21は撮影された辺部、角部の写真を概略的に示したものである。図中斜線を付した領域91と多数の点を付した領域92はレジストが塗布されている領域を夫々示しており、領域92は領域91よりもレジストの膜厚が大きい。なお、図中の白地の領域にはレジストが塗布されておらず、レジストの下層のCr(クロム)からなる下地膜が露出した領域である。図20、21中のこの白地の領域は、基板Bの表面の縁部から基板Bの側面へ向かって下るように形成された基板Bの傾斜面である。
【0059】
この基板Bを上記の実施の形態と同様に、レジスト変性処理ユニット2→洗浄処理ユニット6→基板端部処理ユニット4→洗浄処理ユニット6の順に搬送して、レジスト除去処理を行った。そして、基板端部処理ユニット4から洗浄処理ユニット6へ搬送する間に前記基板Bの辺部及び角部の写真を撮影し、レジストが除去された様子を調べた。また、洗浄処理ユニット6で処理後にも基板Bの辺部及び角部の写真を撮影し、レジストが除去された様子を調べた。各処理ユニットの処理条件について説明すると、前記レジスト変性処理ユニット2では、上記のオゾンと水蒸気とを含む処理ガスを600秒供給しており、処理ガス中のオゾンの濃度は200g/m3である。基板端部処理ユニット4では処理液としてTMAHを用いた。洗浄処理ユニット6の処理液としては、SC1を用いてこれを二流体スプレー(Atomise Spray)で供給した。
【0060】
図22、23は、基板端部処理ユニット4で処理後に撮影された基板Bの辺部、角部の写真を夫々概略的に示している。これらの図22、23に示すように基板端部処理ユニット4による処理後ではレジスト膜の領域91、92が除去されていた。図中93はレジストの残渣である。図24、25は基板端部処理ユニット4で処理した後、さらに洗浄処理ユニット6で処理後に撮影された基板Bの辺部、角部の写真を夫々概略的に示している。洗浄処理ユニット6の処理後では基板Bの辺部及び角部において、レジストの残渣93も除去されていることが確認できた。
【0061】
(評価試験2)
評価試験1と略同様の実験を行ったが、差違点として基板Bのレジスト膜はポジ型レジストにより構成し、基板Bの搬送は基板端部処理ユニット4→レジスト変性処理ユニット2→洗浄処理ユニット6の順とした。そして、基板端部処理ユニット4の処理前、基板端部処理ユニット4で処理後且つ洗浄処理ユニット6で処理前、洗浄処理ユニット6で処理後に、夫々基板Bの辺部及び角部の写真を撮影し、レジスト膜の状態を調べた。また、この評価試験2では、基板端部処理ユニット4の処理液としてTMAHを用いて処理した後CO2を溶解させた純水でリンス処理を行った。図26、27は基板端部処理ユニット4で処理前の基板Bの辺部、角部の概略を夫々示しており、領域91よりも膜厚の大きい領域92が形成されている。
【0062】
図28、29は基板端部処理ユニット4で処理後の基板Bの辺部、角部を夫々示している。これらの図28、29に示すように基板端部処理ユニット4の処理後では領域92が無くなり、基板Bの周縁部の膜厚が低下していることが確認された。図30、31は洗浄処理ユニット6で処理後に撮影された基板Bの辺部、角部の写真を夫々概略的に示したものである。これらの図30、31に示すように、洗浄処理ユニット6の処理後では基板Bの辺部及び角部において、レジストの残渣は確認できなかった。評価試験1及び評価試験2の結果から、これらの実験の手法によりレジスト膜を高い確実性を持って除去できることが示され、本発明の知見が得られた。
【符号の説明】
【0063】
B 基板
C1 キャリアステーション
C2 処理ステーション
C3 ケミカルステーション
1 レジスト除去装置
17 主基板搬送機構
2 レジスト変性処理ユニット
21 チャンバ
23 ステージ
4 基板端部処理ユニット
41 チャック
45 載置台
50 ノズル部
6 洗浄処理ユニット
61 基板保持部
77 表面洗浄ノズル
100 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板の表面全体に、当該レジスト膜を酸化するための酸化性の処理流体を供給し、レジスト膜を除去する第1の工程と、
前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿ってアルカリ性の処理液をノズルから吐出して、基板の端部のレジストを除去する第2の工程と、
を備えることを特徴とするレジスト除去方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理ガスを基板に供給する工程と、その後、基板の表面全体に洗浄液を供給してレジストを除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項1記載のレジスト除去方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理液を基板全体に供給すると共にレジストを除去する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のレジスト除去方法。
【請求項4】
前記第1の工程は、基板への前記処理液の供給を停止した後、基板全体に洗浄液を供給し、当該基板から第1の処理液を除去する工程を含むことを特徴とする請求項3記載のレジスト除去方法。
【請求項5】
前記第1の工程の後に、前記第2の工程を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のレジスト除去方法。
【請求項6】
前記レジスト膜は、ポジ型レジストにより構成され、
前記第2の工程の後に、前記第1の工程を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のレジスト除去方法。
【請求項7】
前記基板は角型であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載のレジスト除去方法。
【請求項8】
その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板に対してレジスト膜を除去するための装置において、
前記基板の表面全体に、当該レジスト膜を酸化するための処理流体を供給し、レジスト膜を除去するように構成された第1の処理部と、
アルカリ性の処理液を吐出するノズルを備え、前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿って前記ノズルから処理液を吐出するように構成された第2の処理部と、
基板に対して第1の処理部及び第2の処理部のうちの一方にて処理を行った後、他方にて処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とするレジスト膜の除去装置。
【請求項9】
前記第1の処理部は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理ガスを基板に供給するガス供給部と、基板の表面全体に洗浄液を供給して水溶化されたレジストを除去する洗浄液供給部と、
を含むことを特徴とする請求項8記載のレジスト除去装置。
【請求項10】
前記第1の処理部は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理液を基板全体に供給すると共にレジストを除去する液処理部を備えることを特徴とする請求項8記載のレジスト除去装置。
【請求項11】
前記液処理部は、基板への前記処理液の供給の停止後、基板全体に洗浄液を供給して、基板から第1の処理液を除去する処理液除去部を備えることを特徴とする請求項10記載のレジスト除去装置。
【請求項12】
前記制御部は、基板に対して第1の処理部にて処理を行った後、第2の処理部にて処理を行うように制御信号を出力することを特徴とする請求項8ないし11のいずれか一つに記載のレジスト膜の除去装置。
【請求項13】
前記レジスト膜は、ポジ型レジストにより構成され、
前記制御部は、基板に対して第2の処理部にて処理を行った後、第1の処理部にて処理を行うように制御信号を出力することを特徴とする請求項8ないし11のいずれか一つに記載のレジスト膜の除去装置。
【請求項14】
前記基板は角型基板であることを特徴とする請求項8ないし13のいずれか一項に記載のレジスト膜除去装置。
【請求項15】
基板の表面に形成されたレジスト膜からなるマスクを除去する装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし7のいずれか一つに記載のレジスト除去方法を実施するためのものであることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板の表面全体に、当該レジスト膜を酸化するための酸化性の処理流体を供給し、レジスト膜を除去する第1の工程と、
前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿ってアルカリ性の処理液をノズルから吐出して、基板の端部のレジストを除去する第2の工程と、
を備えることを特徴とするレジスト除去方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理ガスを基板に供給する工程と、その後、基板の表面全体に洗浄液を供給してレジストを除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項1記載のレジスト除去方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理液を基板全体に供給すると共にレジストを除去する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のレジスト除去方法。
【請求項4】
前記第1の工程は、基板への前記処理液の供給を停止した後、基板全体に洗浄液を供給し、当該基板から第1の処理液を除去する工程を含むことを特徴とする請求項3記載のレジスト除去方法。
【請求項5】
前記第1の工程の後に、前記第2の工程を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のレジスト除去方法。
【請求項6】
前記レジスト膜は、ポジ型レジストにより構成され、
前記第2の工程の後に、前記第1の工程を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のレジスト除去方法。
【請求項7】
前記基板は角型であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載のレジスト除去方法。
【請求項8】
その表面にレジスト膜からなるマスクが形成され、周縁部のレジスト膜の膜厚が中央領域よりも厚い基板に対してレジスト膜を除去するための装置において、
前記基板の表面全体に、当該レジスト膜を酸化するための処理流体を供給し、レジスト膜を除去するように構成された第1の処理部と、
アルカリ性の処理液を吐出するノズルを備え、前記基板の周縁部に当該基板の辺に沿って前記ノズルから処理液を吐出するように構成された第2の処理部と、
基板に対して第1の処理部及び第2の処理部のうちの一方にて処理を行った後、他方にて処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備えたことを特徴とするレジスト膜の除去装置。
【請求項9】
前記第1の処理部は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理ガスを基板に供給するガス供給部と、基板の表面全体に洗浄液を供給して水溶化されたレジストを除去する洗浄液供給部と、
を含むことを特徴とする請求項8記載のレジスト除去装置。
【請求項10】
前記第1の処理部は、酸化性の処理流体である、レジストを水溶化させるための処理液を基板全体に供給すると共にレジストを除去する液処理部を備えることを特徴とする請求項8記載のレジスト除去装置。
【請求項11】
前記液処理部は、基板への前記処理液の供給の停止後、基板全体に洗浄液を供給して、基板から第1の処理液を除去する処理液除去部を備えることを特徴とする請求項10記載のレジスト除去装置。
【請求項12】
前記制御部は、基板に対して第1の処理部にて処理を行った後、第2の処理部にて処理を行うように制御信号を出力することを特徴とする請求項8ないし11のいずれか一つに記載のレジスト膜の除去装置。
【請求項13】
前記レジスト膜は、ポジ型レジストにより構成され、
前記制御部は、基板に対して第2の処理部にて処理を行った後、第1の処理部にて処理を行うように制御信号を出力することを特徴とする請求項8ないし11のいずれか一つに記載のレジスト膜の除去装置。
【請求項14】
前記基板は角型基板であることを特徴とする請求項8ないし13のいずれか一項に記載のレジスト膜除去装置。
【請求項15】
基板の表面に形成されたレジスト膜からなるマスクを除去する装置に用いられるコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし7のいずれか一つに記載のレジスト除去方法を実施するためのものであることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2012−89659(P2012−89659A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234636(P2010−234636)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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