内燃機関の制御装置
【課題】圧縮比を低下させずに膨張比を下げて触媒暖機と機関本体の暖機とを両立させる。
【解決手段】吸気行程・圧縮行程を担う吸気圧縮シリンダ(6−15)と膨張行程・排気行程を担う膨張排気シリンダ(6−16)とが隣接して設けられ、4行程が1回転で完了する。吸気バルブ(6−1)、圧縮バルブ(6−2)、排気バルブ(6−3)、点火プラグ(6−4)を備える。吸気圧縮ピストン(6−5)とクランクシャフト(6−11)は、吸気圧縮コンロッド(6−8)によって連結され、膨張排気ピストン(6−6)は3次元カム(6−10)を介してクランクシャフト(6−11)に連動する。3次元カム(6−10)を軸方向に切り換えることで、膨張排気ピストン(6−6)の所望のピストンモーションが得られる。
【解決手段】吸気行程・圧縮行程を担う吸気圧縮シリンダ(6−15)と膨張行程・排気行程を担う膨張排気シリンダ(6−16)とが隣接して設けられ、4行程が1回転で完了する。吸気バルブ(6−1)、圧縮バルブ(6−2)、排気バルブ(6−3)、点火プラグ(6−4)を備える。吸気圧縮ピストン(6−5)とクランクシャフト(6−11)は、吸気圧縮コンロッド(6−8)によって連結され、膨張排気ピストン(6−6)は3次元カム(6−10)を介してクランクシャフト(6−11)に連動する。3次元カム(6−10)を軸方向に切り換えることで、膨張排気ピストン(6−6)の所望のピストンモーションが得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関自体や排気触媒の早期暖機を図るために、ピストンモーションの変更により冷却損失や排気損失を変化させるようにした内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関の冷間始動後における排気触媒の早期暖機を図るために、排気温度を高くする技術が種々提案されており、その一つとして、特許文献1には、ピストンの上死点位置を変更する可変圧縮比機構を用いて、触媒暖機要求時には、低圧縮比側に制御し、膨張比を下げることで排気損失を増大させ、排気温度を上昇させることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−328794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の技術では、膨張比とともに圧縮比も低下するため、吸気弁閉時期を下死点寄りにすることで実圧縮比を高くするようにしているが、熱効率向上には限界がある。
【0004】
また、膨張比とともに圧縮比も低下することから、触媒暖機のために膨張比を下げると排気下死点時の残留エネルギ(排気損失)は増加するが、圧縮比の低下により燃焼時の筒内圧力最大値が下がるので、燃焼室周りに逃げるエネルギ(冷却損失)が減り、内燃機関自体(シリンダブロック等)の暖機は遅れる、という問題がある。
【0005】
また、圧縮比が下がると圧縮上死点での作動ガスの温度も下がり、過度に低い圧縮比では燃焼が出来なくなるため、操作可能な範囲が狭い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関のピストンモーションを変更するピストンモーション変更手段を有し、機関に暖機要求がある場合には冷却損失を、排気触媒に暖機要求がある場合には排気損失を、機関および排気触媒に暖機要求がある場合には冷却損失および排気損失を、それぞれ増加させるように上記ピストンモーション変更手段によってピストンモーションを変更することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ピストンモーションを変更することにより、冷却損失と排気損失のバランスを制御することが可能であるため、暖機要求があった場合に、適切な暖機を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の好ましい一実施例を説明する。なお、後述するように、以下の実施例では、膨張行程におけるピストン速度(膨張速度)と吸排気用のバルブの開閉時期等を可変制御し得る構成を内燃機関が具備している。
【0009】
図1は、本発明に係る内燃機関の制御装置の制御ブロック図を示す。
【0010】
図示するように、この制御装置は、駆動力要求とエンジン回転数とから機関運転状態(例えば目標負荷)を決定する機関運転状態判別手段(1−1)と、冷却水温度と触媒温度と目標負荷とから目標冷却水熱量および目標排気熱量を決定する暖機状態判別手段(1−2)と、目標冷却水熱量と目標排気熱量または負荷とエンジン回転数とに基づいて種々のバルブのバルブ制御量を決定するバルブ制御手段(1−3)と、このバルブ制御手段(1−3)からのアクチュエータ制御量に基づいてバルブ作動量を変更するバルブ作動量変更手段(1−4)と、目標冷却水熱量と目標排気熱量または負荷とエンジン回転数とに基づいて膨張行程のピストン速度(膨張速度)を決定する膨張速度制御手段(1−5)と、この膨張速度制御手段(1−5)で決定したアクチュエータ制御量に基づいて膨張速度を変更する膨張速度変更手段(1−6)と、を備えており、内燃機関(1−7)は、膨張速度変更手段(1−6)とバルブ作動量変更手段(1−4)によって膨張速度とバルブ作動量とが変化するように構成されている。
【0011】
詳しくは、運転者が設定するアクセル開度(APO)から要求駆動力が決定される。そして、この要求駆動力とエンジン回転数とから、エンジンに対する目標負荷が求められ、機関運転状態判定手段(1−1)から出力される。また触媒温度と冷却水温度と目標負荷とから暖機状態判定手段(1−2)が目標冷却水熱量と目標排気熱量を計算し出力する。なお、触媒温度と冷却水温度は、温度センサからの電圧値を温度に校正したものを使用する。出力された目標冷却水熱量および目標排気熱量は、膨張速度制御手段(1−5)およびバルブ制御手段(1−3)に入力される。膨張速度制御手段(1−5)には、この目標冷却水熱量と目標排気熱量のほか、機関運転状態判定手段(1−1)で計算された目標負荷とエンジン回転数とが入力される。同様にバルブ制御手段(1−3)にも目標冷却水熱量と目標排気熱量と目標負荷とエンジン回転数とが入力される。
【0012】
暖機が必要であると判定された場合は、暖機制御として目標冷却水熱量と目標排気熱量とに基づいたアクチュエータ制御量が、膨張速度制御手段(1−5)およびバルブ制御手段(1−3)からそれぞれ出力される。暖機が必要ではないと判定された場合は、通常制御として目標負荷とエンジン回転数とに基づいたアクチュエータ制御量が、膨張速度制御手段(1−5)およびバルブ制御手段(1−3)からそれぞれ出力される。これらのアクチュエータ制御量に追従するように膨張速度変更手段(1−6)およびバルブ制御手段(1−4)が駆動され、ピストン速度およびバルブ作動量が制御される。
【0013】
図2は、図1に示したバルブ制御手段(1−2)およびバルブ作動量変更手段(1−3)が吸気バルブに対し適用される場合のブロック図を示している。これは、エンジン回転数と目標負荷とから吸気バルブのリフト量を決定する吸気バルブリフト量MAP(2−1)と、この吸気バルブリフト量MAP(2−1)から読み出した吸気バルブリフト量に補正を加える補正計算部(2−2)と、エンジン回転数と目標負荷とから吸気バルブの開閉時期のクランク角に対する位相を決定する吸気バルブ位相MAP(2−4)と、この吸気バルブ位相MAP(2−4)から読み出した吸気バルブ位相に補正を加える補正計算部(2−5)と、上記の補正計算部(2−2),(2−5)で補正されたリフト量と位相に変更できる可変吸気バルブ機構(2−3)と、によって構成される。
【0014】
なお、図23は吸気バルブリフト量MAPの特性例を示し、図24は吸気バルブ位相MAPの特性例を示す。
【0015】
図3は、図1に示したバルブ制御手段(1−2)およびバルブ作動量変更手段(1−3)が排気バルブに対し適用される場合のブロック図を示している。これは、エンジン回転数と目標負荷とから排気バルブのリフト量を決定する排気バルブリフト量MAP(3−1)と、この排気バルブリフト量MAP(3−1)から読み出した排気バルブリフト量に補正を加える補正計算部(3−2)と、エンジン回転数と目標負荷とから排気バルブの開閉時期のクランク角に対する位相を決定する排気バルブ位相MAP(3−4)と、この排気バルブ位相MAP(3−4)から読み出した排気バルブ位相に補正を加える補正計算部(3−5)と、上記の補正計算部(3−2),(3−5)で補正されたリフト量と位相に変更できる可変排気バルブ機構(3−3)と、によって構成される。
【0016】
なお、図25は排気バルブリフト量MAPの特性例を示し、図26は排気バルブ位相MAPの特性例を示す。
【0017】
図4は、図1に示した機関運転状態判定手段(1−1)の詳細を示すブロック図である。
【0018】
これは、要求駆動力をエンジンに対する要求トルクに変換するトルク変換部(4−1)と、エンジン回転数と要求トルクとから目標負荷として目標吸気量を決定する目標負荷(吸気量)MAP(4−2)と、で構成される。
【0019】
トルク変換部(4−1)では、要求駆動力から要求エンジントルクを変速機の減速比から次式で計算する。
【0020】
要求エンジントルク=要求駆動力[N]×車輪半径[m]/(変速機減速比×最終減速比)
要求エンジントルクとエンジン回転数とに対する目標負荷としての吸気量を割り付けた目標負荷(吸気量)MAP(4−2)は、予め実験的に作成することが好ましい。また、目標負荷として、吸気量以外のパラメータを用いることも可能である。
【0021】
図6は、本発明が適用される内燃機関の機械的な構成例を示している。
【0022】
この内燃機関は、吸気行程および圧縮行程を担う吸気圧縮シリンダ(6−15)と膨張行程および排気行程を担う膨張排気シリンダ(6−16)とが隣接して設けられたもので、吸気圧縮シリンダ(6−15)は、吸気バルブ(6−1)と、圧縮混合気を膨張排気シリンダ(6−16)に供給する圧縮バルブ(6−2)と、を備え、膨張排気シリンダ(6−16)は、排気バルブ(6−3)と、点火装置である点火プラグ(6−4)と、を備える。吸気圧縮シリンダ(6−15)には、吸気圧縮を行う吸気圧縮ピストン(6−5)が設けられ、膨張排気シリンダ(6−16)には、膨張排気を行う膨張排気ピストン(6−6)が設けられる。吸気圧縮ピストン(6−5)とクランクシャフト(6−11)とは、吸気圧縮コンロッド(6−8)によって連結される。膨張行程の燃焼圧は、膨張排気ピストン(6−6)から膨張排気コンロッド(6−7)を介して、3次元カム(6−10)を備えたクランクシャフト(6−11)に伝達される。膨張排気コンロッド(6−7)が先端のカムローラ(6−9)を介して接触する3次元カム(6−10)は、膨張排気ピストン(6−6)の所望のピストンモーションを再現するように所定のカムプロフィールを備え、かつ軸方向に複数の異なるカムプロフィールを有する3次元形状をなしている。そして、このカムプロフィールを切り換えるように、クランクシャフト(6−11)を軸方向にスライドさせる膨張速度コントロールアクチュエータ(6−12)を備えている。
【0023】
また、吸気バルブ(6−1)を開閉駆動する吸気カム(6−13)および排気バルブ(6−3)を開閉駆動する排気カム(6−14)は、図33に示すように、クランクシャフト(6−11)に対する位相を変更する適宜な位相可変機構(31−1)およびリフト量を変更する適宜なリフト可変機構(31−2)によって、バルブ開閉時期の位相およびリフト量を変化させることができる構成となっている。
【0024】
上記の構成において、吸気行程・圧縮行程は1回転で行われる。圧縮行程終了時に圧縮バルブ(6−2)が開かれ、圧縮混合気が膨張排気シリンダ(6−16)に投入される。膨張行程・排気行程も同じく1回転で行われる。圧縮行程の終わりと排気行程の終わりが同期して実行されるため、吸気、圧縮、膨張、排気の4行程がクランクシャフト(6−11)の1回転で終了する。
【0025】
膨張速度コントロールアクチュエータ(6−12)は、電動あるいは油圧のどちらの機構でもよく、また、この膨張速度コントロールアクチュエータ(6−12)とクランクシャフト(6−11)との間に、適宜なトルク増幅器やトルク遮断機を配置することもできる。3次元カム(6−10)は、クランクシャフト(6−11)が軸方向に移動することで、実際に用いられるカムプロフィールが無段階または複数段に変更される。
【0026】
なお、図示例では、燃焼室を膨張排気ピストン(6−6)のある膨張排気シリンダ(6−16)内に設けているが、吸気圧縮シリンダ(6−15)と膨張排気シリンダ(6−16)との間に設けることもできる。
【0027】
図30に例示するように、吸気圧縮ピストン(6−5)が下降する動作に合わせて吸気バルブ(6−1)が開かれる。なお、吸気バルブ(6−1)を、エンジンの吸入空気量を制御するための絞り弁として利用することも可能である。吸気圧縮ピストン(6−5)が下死点に到達し再び上昇し始めると、吸気バルブ(6−1)が閉じられる。
【0028】
吸気バルブ(6−1)の開閉タイミングは、エンジン回転数に応じて適正化することが好ましい。吸気圧縮ピストン(6−5)が上死点に接近すると、圧縮バルブ(6−2)が開かれ、吸気圧縮シリンダ(6−15)から膨張排気シリンダ(6−16)へ圧縮された混合気が送り込まれる。吸気圧縮ピストン(6−5)が上死点に到達すると、圧縮バルブ(6−1)が閉じられ、圧縮された混合気の逆流が防止される。圧縮された混合気は点火プラグ(6−4)により点火されて燃焼し、膨張排気ピストン(6−6)を下降させる。このとき3次元カム(6−10)のプロフィールによって膨張排気ピストン(6−6)の膨張速度(ピストン速度)と筒内圧が制御される。膨張排気ピストン(6−6)が下死点から再び上昇を始めると、排気バルブ(6−3)が開かれ、膨張排気シリンダ(6−16)から排気が行われる。排気バルブ(6−3)の開閉タイミングは、エンジン回転数に応じて適正化されることが好ましい。
【0029】
3次元カム(6−10)の一実施例を図8,9に示す。本実施例では、例えば4段階にカムプロフィールが切り換えられる。これにより、後述するように、例えば図31に示すような動作が実現される。
【0030】
以上のように、図6の内燃機関では、吸気圧縮行程と膨張排気行程とが分離され、3次元カム(6−10)により膨張速度と筒内圧を変更して動作させることができる。
【0031】
図7は、本発明が適用される内燃機関の異なる例を示す。
【0032】
この内燃機関は、吸気行程および圧縮行程を担う吸気圧縮シリンダ(7−18)と膨張行程および排気行程を担う膨張排気シリンダ(7−19)とが隣接して設けられたもので、吸気圧縮シリンダ(7−18)は、吸気バルブ(7−1)と、圧縮混合気を膨張排気シリンダ(7−19)に供給する圧縮バルブ(7−2)と、を備え、膨張排気シリンダ(7−19)は、排気バルブ(7−3)と、点火装置である点火プラグ(7−4)と、を備える。吸気圧縮シリンダ(7−18)には、吸気圧縮を行う吸気圧縮ピストン(7−5)が設けられ、膨張排気シリンダ(7−19)には、膨張排気を行う膨張排気ピストン(7−6)が設けられる。吸気圧縮ピストン(7−5)は、図外のトランスミッション軸に連結される吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に、吸気圧縮コンロッド(7−8)を介して連結されている。吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に隣接して膨張排気クランクシャフト(7−13)が配置されており、膨張排気ピストン(7−6)は、膨張排気コンロッド(7−7)を介して膨張排気クランクシャフト(7−13)に連結されている。
【0033】
吸気圧縮クランクシャフト(7−14)と膨張排気クランクシャフト(7−13)とを同じ回転数で回転させるように、互いに噛み合う吸気圧縮2速ギア(7−11)および膨張排気2速ギア(7−12)が吸気圧縮クランクシャフト(7−14)および膨張排気クランクシャフト(7−13)にそれぞれ配置されており、膨張排気クランクシャフト(7−13)と膨張排気2速ギア(7−12)との間には、両者間を係合および解放する2速クラッチ(7−15)が介装されている。また、吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に対して膨張排気クランクシャフト(7−13)を2倍の回転数で回転させるように、互いに噛み合う吸気圧縮1速ギア(7−9)および膨張排気1速ギア(7−10)が吸気圧縮クランクシャフト(7−14)および膨張排気クランクシャフト(7−13)にそれぞれ配置されており、膨張排気クランクシャフト(7−13)と膨張排気1速ギア(7−10)との間には、両者間を係合および解放する1速クラッチ(7−16)が介装されている。なお、1速クラッチ(7−16)および2速クラッチ(7−15)は、湿式多板クラッチあるいはシンクロ機構を有したドグクラッチとすることが好ましい。
【0034】
また、吸気バルブ(7−1)を開閉駆動する吸気カム(7−16)および排気バルブ(7−3)を開閉駆動する排気カム(7−17)は、前述した実施例と同じく、図33に示すように、吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に対する位相を変更する適宜な位相可変機構およびリフト量を変更する適宜なリフト可変機構によって、バルブ開閉時期の位相およびリフト量を変化させることができる構成となっている。
【0035】
上記の構成においても、吸気行程・圧縮行程は1回転で行われる。圧縮行程終了時に圧縮バルブ(7−2)が開かれ、圧縮混合気が膨張排気シリンダ(7−19)に投入される。膨張行程・排気行程も同じく1回転で行われ、吸気、圧縮、膨張、排気の4行程が吸気圧縮クランクシャフト(7−14)の1回転で終了する。
【0036】
図30に例示するように、吸気圧縮ピストン(7−5)が下降する動作に合わせて吸気バルブ(7−1)が開かれる。なお、吸気バルブ(7−1)を、エンジンの吸入空気量を制御するための絞り弁として利用することも可能である。吸気圧縮ピストン(7−5)が下死点に到達し再び上昇し始めると、吸気バルブ(7−1)が閉じられる。
【0037】
吸気バルブ(7−1)の開閉タイミングは、エンジン回転数に応じて適正化することが好ましい。吸気圧縮ピストン(7−5)が上死点に接近すると、圧縮バルブ(7−2)が開かれ、吸気圧縮シリンダ(7−18)から膨張排気シリンダ(7−19)へ圧縮された混合気が送り込まれる。吸気圧縮ピストン(7−5)が上死点に到達すると、圧縮バルブ(7−1)が閉じられ、圧縮された混合気の逆流が防止される。圧縮された混合気は点火プラグ(7−4)により点火されて燃焼し、膨張排気ピストン(7−6)を下降させる。この膨張排気ピストン(7−6)の力は、上記のギア機構を介して吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に伝達される。
【0038】
ここで、本発明では、エンジン回転数(吸気圧縮クランクシャフト(7−14)の回転数)に基づき、1速クラッチ(7−16)または2速クラッチ(7−15)の一方の係合が選択され、膨張排気クランクシャフト(7−13)の回転数が切換制御される。エンジン回転数が低い場合は、吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に対し、倍の回転数で膨張排気クランクシャフト(7−13)が回転し、エンジン回転数が高くなると、膨張排気クランクシャフト(7−13)は吸気圧縮クランクシャフト(7−14)と同一の回転数で回転する。図30は、同一の回転数で回転しているときの動作を示している。また図32は、膨張排気クランクシャフト(7−13)が倍の回転数で回転しているときの動作を示している。
【0039】
すなわち、膨張排気ピストン(7−6)の膨張速度(ピストン速度)は、1速クラッチ(7−16)と2速クラッチ(7−15)のどちらが係合されているかによって決定される。なお、吸気圧縮ピストン(7−5)と膨張排気ピストン(7−6)が同時に上死点となるように1速クラッチ(7−16)または2速クラッチ(7−15)の係合が行われる。
【0040】
膨張排気ピストン(7−6)が下死点から再び上昇を始めると、排気バルブ(7−3)が開かれ、膨張排気シリンダ(7−19)からの排気が行われる。排気バルブ(7−3)の開閉タイミングは、エンジン回転数に応じて適正化されることが好ましい。
【0041】
また、エンジン回転数が低い場合は、上記のように1速クラッチ(7−16)が係合され、膨張排気ピストン(7−6)が吸気圧縮ピストン(7−5)に比べて倍の周期で動作することになるので、このとき損失が生じないように、1速クラッチ(7−16)の係合は、吸気圧縮ピストン(7−5)が、下死点から上昇しかつ上死点と下死点の中間にあるときに行う。さらに1速クラッチ(7−16)の開放は、膨張行程が終了した時点で行うことが好ましい。また、1速クラッチ(7−16)が係合状態にあるときに、吸気圧縮ピストン(7−5)が上死点もしくは圧縮バルブ(7−2)が開放される段階の直前まで排気バルブ(7−3)を開放しても良い。なお、エンジン回転数が高くなった場合は、行程に拘わらず、2速クラッチ(7−15)を係合状態とすることが好ましい。
【0042】
以上のように、図7の内燃機関では、吸気圧縮行程と膨張排気行程とが分離され、ギア機構の切換により膨張速度を変更して動作させることができる。
【0043】
図5は、図1における膨張速度制御手段(1−5)および膨張速度変更手段(1−6)のより具体的なブロック図を示す。
【0044】
図5の(a)は、図6の内燃機関に対し用いられる構成であり、エンジン回転数と目標負荷とから3次元カム(6−10)のスライド量を決定するカムスライド量MAP(5−1)と、カムスライド量MAPから読み出したカムスライド量に補正を加える補正計算部(5−2)と、補正後のカムスライド量となるように3次元カム(6−10)の位置を駆動するカムアクチュエータ(5−3)で構成される。上記カムアクチュエータ(5−3)は、前述した膨張速度コントロールアクチュエータ(6−12)に相当する。
【0045】
図5の(b)は、図7の内燃機関に対し用いられる構成であり、エンジン回転数と目標負荷とから変速段を決定するシフトMAP選択ロジック(5−3)と、このシフトMAP選択ロジックによって決定された変速段に切り換えるシフトアクチュエータ(5−4)と、で構成される。このシフトアクチュエータ(5−4)によって前述した1速クラッチ(7−16)および2速クラッチ(7−15)が制御される。
【0046】
次に、図10は、本発明のメイン制御フローを示している。ステップ(10−1)から制御を開始し、ステップ(10−2)で機関運転状態(目標負荷)を読み込むとともに、ステップ(10−3)でエンジン回転数を読み込む。さらにステップ(10−4)で冷却水温度を読み込み、ステップ(10−5)で排気系に設けられた触媒コンバータの触媒温度を読み込む。ステップ(10−6)で後述する暖機判定を行い、暖機が必要であると判定された場合はステップ(10−7)へ進み、暖機制御を実行する。その後、ステップ(10−8)から再びステップ(10−1)へと戻る。ステップ(10−6)で暖機が必要ないと判定された場合は、負荷追従状態であると判定してステップ(10−9)へ進み、要求トルク制御を実行する。その後ステップ(10−8)から再びステップ(10−1)へと戻る。
【0047】
図11は、ステップ(10−6)の暖機判定の制御フローを示す。ステップ(11−1)から制御を開始し、ステップ(11−2)で目標負荷が閾値LO_1以上であるか判定する。目標負荷がLO_1以上と判定された場合は通常状態(暖機制御は必要ない)と判定される。LO_1未満であればステップ(11−3)へ進み、水温判定として冷却水温度が閾値WT以上であるか判定する。WT未満よりも低いと判定された場合は、暖機制御を実行する。ステップ(11−3)で水温がWT以上と判定された場合はステップ(11−4)へ進み、触媒温度が閾値CT以上であるか判定する。触媒温度がCT以上である場合は通常制御を実行する。触媒温度がCT未満である場合はステップ(11−5)へ進み、暖機判定制御フローを終了して暖機制御を実行する。
【0048】
図12は、図10のステップ(10−7)における暖機制御の制御フローを示す。なお、これは、3次元カムを用いた図6の内燃機関に適用する場合の一例である。
【0049】
ステップ(12−1)から暖機制御を開始する。ステップ(12−2)で後述する目標冷却水熱量計算を実行し、ステップ(12−3)で後述する目標排気熱量計算を実行する。そして、算出した目標冷却水熱量と目標排気熱量とに基づいて、ステップ(12−4)で膨張クランク角を決定する膨張クランク角MAPを検索し、かつステップ(12−5)で保持クランク角を決定する保持クランクMAPを検索する。
【0050】
図27は、上記膨張クランク角MAPの一例を示す。図示するように、膨張クランク角は目標排気熱量に対して感度を高くすることが好ましい。また図28は上記保持クランク角MAPの一例を示す。図示するように、保持クランク角は目標冷却水熱量に対して感度を高くすることが好ましい。
【0051】
次にステップ(12−6)では、目標負荷とエンジン回転数とから、排気バルブの位相を決定する目標排気バルブ位相MAP(図26)を検索する。ステップ(12−7)では、排気バルブ位相補正MAP(図29)を検索し、ステップ(12−6)で決定した排気バルブ位相を補正する。なお、排気バルブ位相補正MAPは図29のように目標排気熱量と目標冷却水熱量とから進角補正,遅角補正を行うものであり、目標排気熱量に対して感度を高くすることが好ましい。ステップ(12−8)では、ステップ(12−4)で決定された膨張クランク角を前述した膨張速度変更手段へ送信する。同様に、ステップ(12−9)では、ステップ(12−5)で決定された保持クランク角を膨張速度変更手段へ送信する。膨張速度変更手段は、受信した膨張クランク角および保持クランク角に基づいて、膨張行程のピストンモーションを変更する。ステップ(12−10)では、ステップ(12−7)で決定された排気バルブ中心角を前述したバルブ作動量変更手段へ送信する。バルブ作動量変更手段は、受信した排気バルブ位相に追従するように、排気バルブの位相を変更する。ステップ(12−11)で暖機制御フローのルーチンを終了する。
【0052】
図13は、ステップ(12−2)の目標冷却水熱量計算の制御フローを示す。ステップ(13−1)からルーチンが開始する。ステップ(13−2)で、図15に示すような冷却水比熱CwTableを用いて、冷却水比熱Cwを水温から検索する。ステップ(13−3)では、冷却水比熱Cwと目標冷却水温度Twtと実際の冷却水温度Twrとから、単位質量当たりの単位目標冷却水熱量(冷却水への供給熱量)Qwmを演算する。ステップ(13−4)では、そのときのエンジン回転数に基づき、熱を供給しなければならない冷却水量を質量として求める。例えば、図17に示すエンジン回転数質量換算Tableから、エンジン回転数に対応する推定冷却水質量Rwrを求める。ステップ(13−5)では、この推定冷却水質量Rwrと単位目標冷却水熱量Qwmとの積算により目標冷却水熱量Qwを決定する。ステップ(13−6)で目標冷却水推量計算を終了する。
【0053】
図14は、ステップ(12−3)の目標排気熱量計算の制御フローを示す。ステップ(14−1)からルーチンが開始する。ステップ(14−2)で、図16に示すような排気比熱CgTableを用いて、排気比熱Cgを触媒温度から検索する。ステップ(14−3)では、排気比熱Cgと目標触媒温度Tgtと実際の触媒温度Tgrとから、単位質量当たりの単位目標排気熱量(排気への供給熱量)Qgmを演算する。ステップ(14−4)では、そのときのエンジン回転数に基づき、熱を供給しなければならない排気流量を質量として求める。例えば、図17に示すようなエンジン回転数質量換算Tableから、エンジン回転数に対応する推定排気質量Rgrを求める。なお、図17のエンジン回転数質量換算Tableは、実際には、それぞれ設定が異なる冷却水用のテーブルと排気用のテーブルとが用いられる。ステップ(14−5)では、この推定排気質量Rgrと単位目標排気熱量Qgmとの積算により目標排気熱量Qgを決定する。ステップ(14−6)で目標排気熱量計算を終了する。
【0054】
次に、図20は、図7で説明した内燃機関に適用されるステップ(10−7)の暖機制御の制御フローを示す。ステップ(20−1)から制御が開始し、ステップ(20−2)で前述した目標冷却水熱量計算を実行する。ステップ(20−3)で同じく前述した目標排気熱量計算を実行する。ステップ(20−4)では、上記の目標冷却水熱量と目標排気熱量とに基づいて、変速MAPの切換を行う。変速MAP切換は、例えば図19のように、目標冷却水熱量と目標排気熱量とに対し複数の変速MAP1〜6を予め設定しておき、そのときの目標冷却水熱量と目標排気熱量とに対応する変速MAPを選択する。次に、ステップ(20−5)では、選択された変速MAPを用い、目標負荷とエンジン回転数とから変速段の検索を行う。ステップ(20−6)では、ステップ(20−5)で決定した変速段をシフトアクチュエータ(5−4)へ送信する。ステップ(20−7)で制御を終了する。複数の変速MAPは例えば図21,22のような特性に基づいて決定され、図19は、これを簡略化してマトリックスとして示したものである。図21は、目標排気熱量に応じた変速線の変化を示し、図22は、目標冷却水熱量に応じた変速線の変化を示す。なお、図18は、変速MAPの基本的な特性を示しており、チャタリング防止のため図示するように適宜なヒステリシスが与えられる。
【0055】
図30〜図32は、上述した制御をタイムチャートとして表したものであり、図30は、図6および図7の構成に共通な通常の運転状態を示す。図31は、図6に示す構成の内燃機関において、膨張速度やバルブリフト等を変化させた様子を示したものであり、図32は、図7に示す構成の内燃機関において、膨張速度やバルブリフト等を変化させた様子を示したものである。図32の例においては、1サイクル中に排気バルブが二度開弁する。
【0056】
本発明を適用した図6,図7のエンジンは一例であって、膨張行程のピストン速度(膨張速度)を変更する全てのエンジンに対して本発明を適用することが可能である。
【0057】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0058】
図34は、内燃機関の機械的な構成を示している。この内燃機関は、吸気行程および圧縮行程を担う吸気圧縮シリンダ(34−15)と膨張行程および排気行程を担う膨張排気シリンダ(34−16)とが隣接して設けられたもので、吸気圧縮シリンダ(34−15)は、吸気バルブ(34−1)と、圧縮混合気を膨張排気シリンダ(34−16)に供給する圧縮バルブ(34−2)と、を備え、膨張排気シリンダ(34−16)は、第2圧縮バルブ(34−3)と排気バルブ(34−4)と、点火装置である点火プラグ(34−5)と、を備える。吸気圧縮シリンダ(34−15)には、吸気圧縮を行う吸気圧縮ピストン(34−6)が設けられ、膨張排気シリンダ(34−16)には、膨張排気を行う膨張排気ピストン(34−8)が設けられる。吸気圧縮ピストン(34−6)はリニアモータ(34−7)によって直線的に駆動される。膨張行程の燃焼圧は、図6の実施例と同様に、膨張排気ピストン(34−8)から膨張排気コンロッド(34−9)を介して、3次元カム(34−11)を備えたクランクシャフト(34−12)に伝達される。膨張排気コンロッド(34−9)が先端のカムローラ(34−10)を介して接触する3次元カム(34−11)は、膨張排気ピストン(34−8)の所望のピストンモーションを再現するように所定のカムプロフィールを備え、かつ軸方向に無段階の多数の異なるカムプロフィールを有する3次元形状をなしている。そして、このカムプロフィールを要求膨張比に応じて変化させるように、クランクシャフト(34−12)を軸方向にスライドさせる膨張速度コントロールアクチュエータ(34−13)を備えている。また、一般的な内燃機関と同様に、燃料噴射弁(34−17)、電子制御スロットル弁(34−18)、エアフロメータ(34−19)、クランク角センサ(34−20)、なども備えている。なお、上記クランクシャフト(34−12)は、厳密な意味ではクランク機構を備えていないが、便宜上、クランクシャフトと呼ぶこととする。
【0059】
上記内燃機関の基本的なサイクルは、前述した図6の内燃機関と同様である。なお、第2圧縮バルブ(34−3)は、圧縮バルブ(34−2)と基本的に同時に開閉する。この実施例の内燃機関では、やはり吸気圧縮行程と膨張排気行程とが分離されるが、特に、3次元カム(34−11)により膨張速度や筒内圧を変更できるとともに、リニアモータ(34−7)によって吸気圧縮ピストン(34−6)を任意に動作させることができる。
【0060】
図35は、この第2の実施例における制御ブロックの一例を示す。暖機要求演算部(35−1)は、水温センサ信号、スタータSW信号から、水温、始動後経過時間などを求め、これらを少なくとも用いて、機関本体(シリンダブロック等)を暖機すべき本体暖機要求、あるいは触媒を暖機すべき触媒暖機要求、の有無を求める。目標圧縮比演算部(35−3)は、例えば図37に示すような特性に従って、水温と始動後経過時間とに対応する目標圧縮比を求める。目標膨張比演算部(35−2)は、例えば図38に示すような特性に従って、水温と始動後経過時間とに対応する目標膨張比を求める。目標ピストン位置演算部(35−4)は、目標圧縮比とクランク角度に応じて吸入圧縮ピストン(34−6)の位置を求め、また目標膨張比よりクランクシャフト(34−12)のスライド位置(つまり3次元カム(34−11)の位置)を求める。
【0061】
図36は、この実施例の制御フローを示す。ステップ(36−1)で制御が開始し、ステップ(36−2)で水温センサによる水温を読み込む。ステップ(36−3)では内燃機関の始動後の経過時間を求める。一例としては、スタータSWがONからOFFとなった後、エンジン回転数が所定値以上の場合、正常に始動したと判定し、スタータSWONからの時間を計測する。エンジン回転数が所定値に満たない場合は始動していないものとして、タイマをクリアする。ステップ(36−4)では、検出した水温と始動後経過時間とから、図37および図38のようなマップを参照して、目標膨張比および目標圧縮比を求める。ここで、冷機始動時は触媒暖機と本体暖機とを並行して行い、触媒暖機完了後(始動後経過時間が所定値以上)は本体暖機のみを行い、暖機状態で再始動されたような場合(水温が所定値以上で始動後経過時間が所定値未満)は触媒暖機のみを行うように、目標膨張比および目標圧縮比が設定される。
【0062】
ステップ(36−5)では、目標圧縮比に基づき吸気圧縮ピストン(34−6)のピストン位置のオフセット量αを求め、このオフセット量αを用いて、現在のクランク角から目標吸気圧縮ピストン位置(最下死点からの距離)を算出する。
【0063】
具体的には、目標吸気圧縮ピストン位置は、ピストンの加速度変化が極端に大きくならないようにすべき(要求モータトルクが大きくなり過ぎるため)であるので、一例としては、下式のように、sin関数を基本に用いて算出する。
【0064】
目標吸気圧縮ピストン位置=ストローク / 2* ( 1 − sin(θ)) +α
ここで、オフセット量αは、圧縮室容積(α=0でかつ吸気圧縮ピストン(34−6)が上死点にある場合の吸気圧縮シリンダ(34−15)の残存容積)、吸気圧縮シリンダ(34−15)のボア径、吸気圧縮ピストン(34−6)のストローク、目標圧縮比、から下式のように求める。
【0065】
圧縮比=(圧縮室容積+π*(ボア/2)2*(α+ストローク))/ 圧縮室容積
α=(圧縮比−1)*圧縮室容積/(π*(ボア/2)2)− ストローク
次にステップ(3−6)では、目標膨張比からクランクシャフト(34−12)のスライド量を算出する。
【0066】
ここで、膨張比は、燃焼室容積(膨張排気ピストン(34−8)が上死点にあるときの膨張排気シリンダ(34−16)の残存容積)、膨張排気シリンダ(34−16)ボア径、膨張排気ピストン(34−8)のストローク(上死点位置から下死点位置までの距離)、と下記の関係があるので、下式に従って、目標膨張比から必要なストロークを求める。
【0067】
膨張比=(燃焼室容積+π*(ボア/2)2 *ストローク))/ 燃焼室容積
ストローク=(膨張比−1)*燃焼室容積/(π*(ボア/2)2)
このようにしてストロークを求めたら、例えば図42に示すように予め求めたスライド量とストロークとの関係から、必要なスライド量を決定する。なお、図39,図40は、3次元カム3次元カム(34−11)の一例を示しており、これにより、図41に例示するような種々のストロークが得られる。
【0068】
次に上記実施例の利点を図43〜図47を用いて説明する。図43は、特許文献1のようにピストンのストロークは変えずに、その位置のみを上下に変化させた場合(これを「従来」と表記する)のピストンの運動と、可変機構を具備しない一般的な内燃機関(これを「Std」と表記する)のピストンの運動と、を対比して示したものであり、図44は、これらの2つのもののP−V線図である。これらの図に明らかなように、従来のものでは、圧縮比と膨張比が同時に変化するため、膨張比を下げると、排気に残るエネルギは増えるが、圧縮比の低下により燃焼時の最高圧力(温度)が下がってしまう(図44のa)。その結果、燃焼室周辺の暖機が遅くなってしまう。また図44のbの部分に示すように、あまり圧縮比を下げると、燃焼が困難となる。
【0069】
一方、本発明においては、図45に示すように吸気圧縮ピストン(34−6)のピストンモーションを可変制御し、図46に示すように膨張排気ピストン(34−8)のピストンモーションを可変制御することにより、圧縮比を下げずに膨張比を下げることが可能である。この場合には、図47のP−V線図に明らかなように、排気に残るエネルギは増えつつ、cの部分に示すように、燃焼時の最高圧力(温度)が下がらない。その結果、燃焼室周辺の暖機が遅くならない。
【0070】
すなわち、本発明では、暖機状態に応じて圧縮比および膨張比を適切に設定することで、触媒暖機と機関本体の暖機とが両立する。
【0071】
ところで、圧縮比や膨張比を変更することで、同一吸気量に対する出力トルクは変化する。そこで、これを補正するために、スロットル弁開度を補正することが望ましい。例えば、圧縮比および膨張比に応じて図48に示すような特性から補正係数を求め、これを乗じてスロットル開度を補正する。
【0072】
最後に、各請求項の発明の利点について述べる。
【0073】
請求項2の発明によれば、ピストン角度変更手段によって、主にエンジン本体の暖機に影響を与える冷却損失と主に触媒の暖機に影響を与える排気損失のバランスを適切に制御することができ暖機効率が向上する。
【0074】
請求項3の発明によれば、保持クランク角を大きくすることで、機関本体の暖機を促進することができる。
【0075】
請求項4の発明によれば、機関の暖機要求があった場合に膨張クランク角を大きくするので、冷却損失が増加して暖機が促進される。
【0076】
請求項6の発明によれば、暖機要求が強い際に、ピストンモーションを暖機する側に変更することで、迅速な暖機を行うことができる。
【0077】
請求項8の発明によれば、水温が低いほど暖気要求が強いと判断するので、水温に応じたエンジン本体の暖機が最適に制御され、暖機の促進により排気エミッションが向上する。
【0078】
請求項9の発明によれば、始動後の経過時間により機関の暖機状態を適切に把握することができ、より適切にエンジン本体と触媒の暖機を促進できる。
【0079】
請求項10の発明によれば、触媒温度を最適かつ早期に暖機することが可能であり、エンジン始動直後のエミッションが向上する。
【0080】
請求項5および11の発明によれば、排気バルブの位相を進角することで、排気損失を増大させ、排気触媒の早期暖機を図ることができ、エミッションが向上する。
【0081】
請求項12の発明によれば、上死点での筒内温度を高めつつノッキングを回避してエンジン本体を早期暖機できる。
【0082】
請求項13の発明によれば、機関の暖機要求に応じて圧縮比を大きくするため、筒内最大圧力を上昇させることができ、冷却損失を増大させ、早期暖機を図ることができる。
【0083】
請求項14の発明によれば、触媒の暖機要求に応じて膨張比を小さくするため、排気損失が大きくなり、排気触媒の早期暖機を実現することができる。また、圧縮比の変更と組み合わせれば、機関と触媒の暖機を両立させることができる。
【0084】
請求項15の発明によれば、暖機要求に応じてスロットル開度を補正する構成なので、暖機要求の有無に拘わらず、低〜中負荷域の出力トルクを一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る制御装置のブロック図。
【図2】吸気バルブに適用した場合の要部のブロック図。
【図3】排気バルブに適用した場合の要部のブロック図。
【図4】運転状態判定手段のブロック図。
【図5】膨張速度制御手段および膨張速度変更手段のブロック図。
【図6】本発明が適用される内燃機関の一例を示す構成説明図。
【図7】本発明が適用される内燃機関の異なる例を示す構成説明図。
【図8】三次元カムと膨張クランク角の関係を示す説明図。
【図9】三次元カムの形状の一例を示す説明図。
【図10】本発明のメイン制御フローを示すフローチャート。
【図11】暖機判定制御フローを示すフローチャート。
【図12】暖機制御フローの一例を示すフローチャート。
【図13】目標冷却水熱量計算フローを示すフローチャート。
【図14】目標排気熱量計算フローを示すフローチャート。
【図15】冷却水比熱CwTableを示す特性図。
【図16】排気比熱CgTableを示す特性図。
【図17】エンジン回転数質量換算Tableを示す特性図。
【図18】変速MAPの一例を示す特性図。
【図19】複数の変速MAPの切換方法を示す説明図。
【図20】暖機制御フローの一例を示すフローチャート。
【図21】目標排気熱量に対する変速線の変化の説明図。
【図22】目標冷却水熱量に対する変速線の変化の説明図。
【図23】吸気バルブリフト量MAPの一例を示す特性図。
【図24】吸気バルブ位相MAPの一例を示す特性図。
【図25】排気バルブリフト量MAPの一例を示す特性図。
【図26】排気バルブ位相MAPの一例を示す特性図。
【図27】膨張クランク角MAPの一例を示す特性図。
【図28】保持クランク角MAPの一例を示す特性図。
【図29】排気バルブ位相補正MAPの一例を示す特性図。
【図30】通常の運転状態における動作を示すタイミングチャート。
【図31】図6の構成における異なる制御状態の動作を示すタイミングチャート。
【図32】図7の構成における異なる制御状態の動作を示すタイミングチャート。
【図33】可変バルブ機構の構成例の説明図。
【図34】本発明が適用される内燃機関の第2の実施例を示す構成説明図。
【図35】第2の実施例の制御システムの機能ブロック図。
【図36】第2の実施例のメイン制御フローを示すフローチャート。
【図37】圧縮比の設定の一例を示す特性図。
【図38】膨張比の設定の一例を示す特性図。
【図39】3次元カムの一例を示す説明図。
【図40】3次元カムの3箇所での断面図。
【図41】それぞれのカム位置でのピストンモーションを示す特性図。
【図42】スライド量とストロークの関係を示す特性図。
【図43】従来の可変圧縮比機構によるピストンモーションを示す特性図。
【図44】そのP−V線図。
【図45】第2の実施例の吸気圧縮ピストンのピストンモーションを示す特性図。
【図46】第2の実施例の膨張排気ピストンのピストンモーションを示す特性図。
【図47】第2の実施例のP−V線図。
【図48】スロットル弁開度の補正係数を示す特性図。
【符号の説明】
【0086】
1−1…機関運転状態判定手段
1−2…暖機状態判定手段
1−3…バルブ制御手段
1−4…バルブ作動量変更手段
1−5…膨張速度制御手段
1−6…膨張速度変更手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関自体や排気触媒の早期暖機を図るために、ピストンモーションの変更により冷却損失や排気損失を変化させるようにした内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関の冷間始動後における排気触媒の早期暖機を図るために、排気温度を高くする技術が種々提案されており、その一つとして、特許文献1には、ピストンの上死点位置を変更する可変圧縮比機構を用いて、触媒暖機要求時には、低圧縮比側に制御し、膨張比を下げることで排気損失を増大させ、排気温度を上昇させることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−328794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の技術では、膨張比とともに圧縮比も低下するため、吸気弁閉時期を下死点寄りにすることで実圧縮比を高くするようにしているが、熱効率向上には限界がある。
【0004】
また、膨張比とともに圧縮比も低下することから、触媒暖機のために膨張比を下げると排気下死点時の残留エネルギ(排気損失)は増加するが、圧縮比の低下により燃焼時の筒内圧力最大値が下がるので、燃焼室周りに逃げるエネルギ(冷却損失)が減り、内燃機関自体(シリンダブロック等)の暖機は遅れる、という問題がある。
【0005】
また、圧縮比が下がると圧縮上死点での作動ガスの温度も下がり、過度に低い圧縮比では燃焼が出来なくなるため、操作可能な範囲が狭い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る内燃機関の制御装置は、内燃機関のピストンモーションを変更するピストンモーション変更手段を有し、機関に暖機要求がある場合には冷却損失を、排気触媒に暖機要求がある場合には排気損失を、機関および排気触媒に暖機要求がある場合には冷却損失および排気損失を、それぞれ増加させるように上記ピストンモーション変更手段によってピストンモーションを変更することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ピストンモーションを変更することにより、冷却損失と排気損失のバランスを制御することが可能であるため、暖機要求があった場合に、適切な暖機を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の好ましい一実施例を説明する。なお、後述するように、以下の実施例では、膨張行程におけるピストン速度(膨張速度)と吸排気用のバルブの開閉時期等を可変制御し得る構成を内燃機関が具備している。
【0009】
図1は、本発明に係る内燃機関の制御装置の制御ブロック図を示す。
【0010】
図示するように、この制御装置は、駆動力要求とエンジン回転数とから機関運転状態(例えば目標負荷)を決定する機関運転状態判別手段(1−1)と、冷却水温度と触媒温度と目標負荷とから目標冷却水熱量および目標排気熱量を決定する暖機状態判別手段(1−2)と、目標冷却水熱量と目標排気熱量または負荷とエンジン回転数とに基づいて種々のバルブのバルブ制御量を決定するバルブ制御手段(1−3)と、このバルブ制御手段(1−3)からのアクチュエータ制御量に基づいてバルブ作動量を変更するバルブ作動量変更手段(1−4)と、目標冷却水熱量と目標排気熱量または負荷とエンジン回転数とに基づいて膨張行程のピストン速度(膨張速度)を決定する膨張速度制御手段(1−5)と、この膨張速度制御手段(1−5)で決定したアクチュエータ制御量に基づいて膨張速度を変更する膨張速度変更手段(1−6)と、を備えており、内燃機関(1−7)は、膨張速度変更手段(1−6)とバルブ作動量変更手段(1−4)によって膨張速度とバルブ作動量とが変化するように構成されている。
【0011】
詳しくは、運転者が設定するアクセル開度(APO)から要求駆動力が決定される。そして、この要求駆動力とエンジン回転数とから、エンジンに対する目標負荷が求められ、機関運転状態判定手段(1−1)から出力される。また触媒温度と冷却水温度と目標負荷とから暖機状態判定手段(1−2)が目標冷却水熱量と目標排気熱量を計算し出力する。なお、触媒温度と冷却水温度は、温度センサからの電圧値を温度に校正したものを使用する。出力された目標冷却水熱量および目標排気熱量は、膨張速度制御手段(1−5)およびバルブ制御手段(1−3)に入力される。膨張速度制御手段(1−5)には、この目標冷却水熱量と目標排気熱量のほか、機関運転状態判定手段(1−1)で計算された目標負荷とエンジン回転数とが入力される。同様にバルブ制御手段(1−3)にも目標冷却水熱量と目標排気熱量と目標負荷とエンジン回転数とが入力される。
【0012】
暖機が必要であると判定された場合は、暖機制御として目標冷却水熱量と目標排気熱量とに基づいたアクチュエータ制御量が、膨張速度制御手段(1−5)およびバルブ制御手段(1−3)からそれぞれ出力される。暖機が必要ではないと判定された場合は、通常制御として目標負荷とエンジン回転数とに基づいたアクチュエータ制御量が、膨張速度制御手段(1−5)およびバルブ制御手段(1−3)からそれぞれ出力される。これらのアクチュエータ制御量に追従するように膨張速度変更手段(1−6)およびバルブ制御手段(1−4)が駆動され、ピストン速度およびバルブ作動量が制御される。
【0013】
図2は、図1に示したバルブ制御手段(1−2)およびバルブ作動量変更手段(1−3)が吸気バルブに対し適用される場合のブロック図を示している。これは、エンジン回転数と目標負荷とから吸気バルブのリフト量を決定する吸気バルブリフト量MAP(2−1)と、この吸気バルブリフト量MAP(2−1)から読み出した吸気バルブリフト量に補正を加える補正計算部(2−2)と、エンジン回転数と目標負荷とから吸気バルブの開閉時期のクランク角に対する位相を決定する吸気バルブ位相MAP(2−4)と、この吸気バルブ位相MAP(2−4)から読み出した吸気バルブ位相に補正を加える補正計算部(2−5)と、上記の補正計算部(2−2),(2−5)で補正されたリフト量と位相に変更できる可変吸気バルブ機構(2−3)と、によって構成される。
【0014】
なお、図23は吸気バルブリフト量MAPの特性例を示し、図24は吸気バルブ位相MAPの特性例を示す。
【0015】
図3は、図1に示したバルブ制御手段(1−2)およびバルブ作動量変更手段(1−3)が排気バルブに対し適用される場合のブロック図を示している。これは、エンジン回転数と目標負荷とから排気バルブのリフト量を決定する排気バルブリフト量MAP(3−1)と、この排気バルブリフト量MAP(3−1)から読み出した排気バルブリフト量に補正を加える補正計算部(3−2)と、エンジン回転数と目標負荷とから排気バルブの開閉時期のクランク角に対する位相を決定する排気バルブ位相MAP(3−4)と、この排気バルブ位相MAP(3−4)から読み出した排気バルブ位相に補正を加える補正計算部(3−5)と、上記の補正計算部(3−2),(3−5)で補正されたリフト量と位相に変更できる可変排気バルブ機構(3−3)と、によって構成される。
【0016】
なお、図25は排気バルブリフト量MAPの特性例を示し、図26は排気バルブ位相MAPの特性例を示す。
【0017】
図4は、図1に示した機関運転状態判定手段(1−1)の詳細を示すブロック図である。
【0018】
これは、要求駆動力をエンジンに対する要求トルクに変換するトルク変換部(4−1)と、エンジン回転数と要求トルクとから目標負荷として目標吸気量を決定する目標負荷(吸気量)MAP(4−2)と、で構成される。
【0019】
トルク変換部(4−1)では、要求駆動力から要求エンジントルクを変速機の減速比から次式で計算する。
【0020】
要求エンジントルク=要求駆動力[N]×車輪半径[m]/(変速機減速比×最終減速比)
要求エンジントルクとエンジン回転数とに対する目標負荷としての吸気量を割り付けた目標負荷(吸気量)MAP(4−2)は、予め実験的に作成することが好ましい。また、目標負荷として、吸気量以外のパラメータを用いることも可能である。
【0021】
図6は、本発明が適用される内燃機関の機械的な構成例を示している。
【0022】
この内燃機関は、吸気行程および圧縮行程を担う吸気圧縮シリンダ(6−15)と膨張行程および排気行程を担う膨張排気シリンダ(6−16)とが隣接して設けられたもので、吸気圧縮シリンダ(6−15)は、吸気バルブ(6−1)と、圧縮混合気を膨張排気シリンダ(6−16)に供給する圧縮バルブ(6−2)と、を備え、膨張排気シリンダ(6−16)は、排気バルブ(6−3)と、点火装置である点火プラグ(6−4)と、を備える。吸気圧縮シリンダ(6−15)には、吸気圧縮を行う吸気圧縮ピストン(6−5)が設けられ、膨張排気シリンダ(6−16)には、膨張排気を行う膨張排気ピストン(6−6)が設けられる。吸気圧縮ピストン(6−5)とクランクシャフト(6−11)とは、吸気圧縮コンロッド(6−8)によって連結される。膨張行程の燃焼圧は、膨張排気ピストン(6−6)から膨張排気コンロッド(6−7)を介して、3次元カム(6−10)を備えたクランクシャフト(6−11)に伝達される。膨張排気コンロッド(6−7)が先端のカムローラ(6−9)を介して接触する3次元カム(6−10)は、膨張排気ピストン(6−6)の所望のピストンモーションを再現するように所定のカムプロフィールを備え、かつ軸方向に複数の異なるカムプロフィールを有する3次元形状をなしている。そして、このカムプロフィールを切り換えるように、クランクシャフト(6−11)を軸方向にスライドさせる膨張速度コントロールアクチュエータ(6−12)を備えている。
【0023】
また、吸気バルブ(6−1)を開閉駆動する吸気カム(6−13)および排気バルブ(6−3)を開閉駆動する排気カム(6−14)は、図33に示すように、クランクシャフト(6−11)に対する位相を変更する適宜な位相可変機構(31−1)およびリフト量を変更する適宜なリフト可変機構(31−2)によって、バルブ開閉時期の位相およびリフト量を変化させることができる構成となっている。
【0024】
上記の構成において、吸気行程・圧縮行程は1回転で行われる。圧縮行程終了時に圧縮バルブ(6−2)が開かれ、圧縮混合気が膨張排気シリンダ(6−16)に投入される。膨張行程・排気行程も同じく1回転で行われる。圧縮行程の終わりと排気行程の終わりが同期して実行されるため、吸気、圧縮、膨張、排気の4行程がクランクシャフト(6−11)の1回転で終了する。
【0025】
膨張速度コントロールアクチュエータ(6−12)は、電動あるいは油圧のどちらの機構でもよく、また、この膨張速度コントロールアクチュエータ(6−12)とクランクシャフト(6−11)との間に、適宜なトルク増幅器やトルク遮断機を配置することもできる。3次元カム(6−10)は、クランクシャフト(6−11)が軸方向に移動することで、実際に用いられるカムプロフィールが無段階または複数段に変更される。
【0026】
なお、図示例では、燃焼室を膨張排気ピストン(6−6)のある膨張排気シリンダ(6−16)内に設けているが、吸気圧縮シリンダ(6−15)と膨張排気シリンダ(6−16)との間に設けることもできる。
【0027】
図30に例示するように、吸気圧縮ピストン(6−5)が下降する動作に合わせて吸気バルブ(6−1)が開かれる。なお、吸気バルブ(6−1)を、エンジンの吸入空気量を制御するための絞り弁として利用することも可能である。吸気圧縮ピストン(6−5)が下死点に到達し再び上昇し始めると、吸気バルブ(6−1)が閉じられる。
【0028】
吸気バルブ(6−1)の開閉タイミングは、エンジン回転数に応じて適正化することが好ましい。吸気圧縮ピストン(6−5)が上死点に接近すると、圧縮バルブ(6−2)が開かれ、吸気圧縮シリンダ(6−15)から膨張排気シリンダ(6−16)へ圧縮された混合気が送り込まれる。吸気圧縮ピストン(6−5)が上死点に到達すると、圧縮バルブ(6−1)が閉じられ、圧縮された混合気の逆流が防止される。圧縮された混合気は点火プラグ(6−4)により点火されて燃焼し、膨張排気ピストン(6−6)を下降させる。このとき3次元カム(6−10)のプロフィールによって膨張排気ピストン(6−6)の膨張速度(ピストン速度)と筒内圧が制御される。膨張排気ピストン(6−6)が下死点から再び上昇を始めると、排気バルブ(6−3)が開かれ、膨張排気シリンダ(6−16)から排気が行われる。排気バルブ(6−3)の開閉タイミングは、エンジン回転数に応じて適正化されることが好ましい。
【0029】
3次元カム(6−10)の一実施例を図8,9に示す。本実施例では、例えば4段階にカムプロフィールが切り換えられる。これにより、後述するように、例えば図31に示すような動作が実現される。
【0030】
以上のように、図6の内燃機関では、吸気圧縮行程と膨張排気行程とが分離され、3次元カム(6−10)により膨張速度と筒内圧を変更して動作させることができる。
【0031】
図7は、本発明が適用される内燃機関の異なる例を示す。
【0032】
この内燃機関は、吸気行程および圧縮行程を担う吸気圧縮シリンダ(7−18)と膨張行程および排気行程を担う膨張排気シリンダ(7−19)とが隣接して設けられたもので、吸気圧縮シリンダ(7−18)は、吸気バルブ(7−1)と、圧縮混合気を膨張排気シリンダ(7−19)に供給する圧縮バルブ(7−2)と、を備え、膨張排気シリンダ(7−19)は、排気バルブ(7−3)と、点火装置である点火プラグ(7−4)と、を備える。吸気圧縮シリンダ(7−18)には、吸気圧縮を行う吸気圧縮ピストン(7−5)が設けられ、膨張排気シリンダ(7−19)には、膨張排気を行う膨張排気ピストン(7−6)が設けられる。吸気圧縮ピストン(7−5)は、図外のトランスミッション軸に連結される吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に、吸気圧縮コンロッド(7−8)を介して連結されている。吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に隣接して膨張排気クランクシャフト(7−13)が配置されており、膨張排気ピストン(7−6)は、膨張排気コンロッド(7−7)を介して膨張排気クランクシャフト(7−13)に連結されている。
【0033】
吸気圧縮クランクシャフト(7−14)と膨張排気クランクシャフト(7−13)とを同じ回転数で回転させるように、互いに噛み合う吸気圧縮2速ギア(7−11)および膨張排気2速ギア(7−12)が吸気圧縮クランクシャフト(7−14)および膨張排気クランクシャフト(7−13)にそれぞれ配置されており、膨張排気クランクシャフト(7−13)と膨張排気2速ギア(7−12)との間には、両者間を係合および解放する2速クラッチ(7−15)が介装されている。また、吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に対して膨張排気クランクシャフト(7−13)を2倍の回転数で回転させるように、互いに噛み合う吸気圧縮1速ギア(7−9)および膨張排気1速ギア(7−10)が吸気圧縮クランクシャフト(7−14)および膨張排気クランクシャフト(7−13)にそれぞれ配置されており、膨張排気クランクシャフト(7−13)と膨張排気1速ギア(7−10)との間には、両者間を係合および解放する1速クラッチ(7−16)が介装されている。なお、1速クラッチ(7−16)および2速クラッチ(7−15)は、湿式多板クラッチあるいはシンクロ機構を有したドグクラッチとすることが好ましい。
【0034】
また、吸気バルブ(7−1)を開閉駆動する吸気カム(7−16)および排気バルブ(7−3)を開閉駆動する排気カム(7−17)は、前述した実施例と同じく、図33に示すように、吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に対する位相を変更する適宜な位相可変機構およびリフト量を変更する適宜なリフト可変機構によって、バルブ開閉時期の位相およびリフト量を変化させることができる構成となっている。
【0035】
上記の構成においても、吸気行程・圧縮行程は1回転で行われる。圧縮行程終了時に圧縮バルブ(7−2)が開かれ、圧縮混合気が膨張排気シリンダ(7−19)に投入される。膨張行程・排気行程も同じく1回転で行われ、吸気、圧縮、膨張、排気の4行程が吸気圧縮クランクシャフト(7−14)の1回転で終了する。
【0036】
図30に例示するように、吸気圧縮ピストン(7−5)が下降する動作に合わせて吸気バルブ(7−1)が開かれる。なお、吸気バルブ(7−1)を、エンジンの吸入空気量を制御するための絞り弁として利用することも可能である。吸気圧縮ピストン(7−5)が下死点に到達し再び上昇し始めると、吸気バルブ(7−1)が閉じられる。
【0037】
吸気バルブ(7−1)の開閉タイミングは、エンジン回転数に応じて適正化することが好ましい。吸気圧縮ピストン(7−5)が上死点に接近すると、圧縮バルブ(7−2)が開かれ、吸気圧縮シリンダ(7−18)から膨張排気シリンダ(7−19)へ圧縮された混合気が送り込まれる。吸気圧縮ピストン(7−5)が上死点に到達すると、圧縮バルブ(7−1)が閉じられ、圧縮された混合気の逆流が防止される。圧縮された混合気は点火プラグ(7−4)により点火されて燃焼し、膨張排気ピストン(7−6)を下降させる。この膨張排気ピストン(7−6)の力は、上記のギア機構を介して吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に伝達される。
【0038】
ここで、本発明では、エンジン回転数(吸気圧縮クランクシャフト(7−14)の回転数)に基づき、1速クラッチ(7−16)または2速クラッチ(7−15)の一方の係合が選択され、膨張排気クランクシャフト(7−13)の回転数が切換制御される。エンジン回転数が低い場合は、吸気圧縮クランクシャフト(7−14)に対し、倍の回転数で膨張排気クランクシャフト(7−13)が回転し、エンジン回転数が高くなると、膨張排気クランクシャフト(7−13)は吸気圧縮クランクシャフト(7−14)と同一の回転数で回転する。図30は、同一の回転数で回転しているときの動作を示している。また図32は、膨張排気クランクシャフト(7−13)が倍の回転数で回転しているときの動作を示している。
【0039】
すなわち、膨張排気ピストン(7−6)の膨張速度(ピストン速度)は、1速クラッチ(7−16)と2速クラッチ(7−15)のどちらが係合されているかによって決定される。なお、吸気圧縮ピストン(7−5)と膨張排気ピストン(7−6)が同時に上死点となるように1速クラッチ(7−16)または2速クラッチ(7−15)の係合が行われる。
【0040】
膨張排気ピストン(7−6)が下死点から再び上昇を始めると、排気バルブ(7−3)が開かれ、膨張排気シリンダ(7−19)からの排気が行われる。排気バルブ(7−3)の開閉タイミングは、エンジン回転数に応じて適正化されることが好ましい。
【0041】
また、エンジン回転数が低い場合は、上記のように1速クラッチ(7−16)が係合され、膨張排気ピストン(7−6)が吸気圧縮ピストン(7−5)に比べて倍の周期で動作することになるので、このとき損失が生じないように、1速クラッチ(7−16)の係合は、吸気圧縮ピストン(7−5)が、下死点から上昇しかつ上死点と下死点の中間にあるときに行う。さらに1速クラッチ(7−16)の開放は、膨張行程が終了した時点で行うことが好ましい。また、1速クラッチ(7−16)が係合状態にあるときに、吸気圧縮ピストン(7−5)が上死点もしくは圧縮バルブ(7−2)が開放される段階の直前まで排気バルブ(7−3)を開放しても良い。なお、エンジン回転数が高くなった場合は、行程に拘わらず、2速クラッチ(7−15)を係合状態とすることが好ましい。
【0042】
以上のように、図7の内燃機関では、吸気圧縮行程と膨張排気行程とが分離され、ギア機構の切換により膨張速度を変更して動作させることができる。
【0043】
図5は、図1における膨張速度制御手段(1−5)および膨張速度変更手段(1−6)のより具体的なブロック図を示す。
【0044】
図5の(a)は、図6の内燃機関に対し用いられる構成であり、エンジン回転数と目標負荷とから3次元カム(6−10)のスライド量を決定するカムスライド量MAP(5−1)と、カムスライド量MAPから読み出したカムスライド量に補正を加える補正計算部(5−2)と、補正後のカムスライド量となるように3次元カム(6−10)の位置を駆動するカムアクチュエータ(5−3)で構成される。上記カムアクチュエータ(5−3)は、前述した膨張速度コントロールアクチュエータ(6−12)に相当する。
【0045】
図5の(b)は、図7の内燃機関に対し用いられる構成であり、エンジン回転数と目標負荷とから変速段を決定するシフトMAP選択ロジック(5−3)と、このシフトMAP選択ロジックによって決定された変速段に切り換えるシフトアクチュエータ(5−4)と、で構成される。このシフトアクチュエータ(5−4)によって前述した1速クラッチ(7−16)および2速クラッチ(7−15)が制御される。
【0046】
次に、図10は、本発明のメイン制御フローを示している。ステップ(10−1)から制御を開始し、ステップ(10−2)で機関運転状態(目標負荷)を読み込むとともに、ステップ(10−3)でエンジン回転数を読み込む。さらにステップ(10−4)で冷却水温度を読み込み、ステップ(10−5)で排気系に設けられた触媒コンバータの触媒温度を読み込む。ステップ(10−6)で後述する暖機判定を行い、暖機が必要であると判定された場合はステップ(10−7)へ進み、暖機制御を実行する。その後、ステップ(10−8)から再びステップ(10−1)へと戻る。ステップ(10−6)で暖機が必要ないと判定された場合は、負荷追従状態であると判定してステップ(10−9)へ進み、要求トルク制御を実行する。その後ステップ(10−8)から再びステップ(10−1)へと戻る。
【0047】
図11は、ステップ(10−6)の暖機判定の制御フローを示す。ステップ(11−1)から制御を開始し、ステップ(11−2)で目標負荷が閾値LO_1以上であるか判定する。目標負荷がLO_1以上と判定された場合は通常状態(暖機制御は必要ない)と判定される。LO_1未満であればステップ(11−3)へ進み、水温判定として冷却水温度が閾値WT以上であるか判定する。WT未満よりも低いと判定された場合は、暖機制御を実行する。ステップ(11−3)で水温がWT以上と判定された場合はステップ(11−4)へ進み、触媒温度が閾値CT以上であるか判定する。触媒温度がCT以上である場合は通常制御を実行する。触媒温度がCT未満である場合はステップ(11−5)へ進み、暖機判定制御フローを終了して暖機制御を実行する。
【0048】
図12は、図10のステップ(10−7)における暖機制御の制御フローを示す。なお、これは、3次元カムを用いた図6の内燃機関に適用する場合の一例である。
【0049】
ステップ(12−1)から暖機制御を開始する。ステップ(12−2)で後述する目標冷却水熱量計算を実行し、ステップ(12−3)で後述する目標排気熱量計算を実行する。そして、算出した目標冷却水熱量と目標排気熱量とに基づいて、ステップ(12−4)で膨張クランク角を決定する膨張クランク角MAPを検索し、かつステップ(12−5)で保持クランク角を決定する保持クランクMAPを検索する。
【0050】
図27は、上記膨張クランク角MAPの一例を示す。図示するように、膨張クランク角は目標排気熱量に対して感度を高くすることが好ましい。また図28は上記保持クランク角MAPの一例を示す。図示するように、保持クランク角は目標冷却水熱量に対して感度を高くすることが好ましい。
【0051】
次にステップ(12−6)では、目標負荷とエンジン回転数とから、排気バルブの位相を決定する目標排気バルブ位相MAP(図26)を検索する。ステップ(12−7)では、排気バルブ位相補正MAP(図29)を検索し、ステップ(12−6)で決定した排気バルブ位相を補正する。なお、排気バルブ位相補正MAPは図29のように目標排気熱量と目標冷却水熱量とから進角補正,遅角補正を行うものであり、目標排気熱量に対して感度を高くすることが好ましい。ステップ(12−8)では、ステップ(12−4)で決定された膨張クランク角を前述した膨張速度変更手段へ送信する。同様に、ステップ(12−9)では、ステップ(12−5)で決定された保持クランク角を膨張速度変更手段へ送信する。膨張速度変更手段は、受信した膨張クランク角および保持クランク角に基づいて、膨張行程のピストンモーションを変更する。ステップ(12−10)では、ステップ(12−7)で決定された排気バルブ中心角を前述したバルブ作動量変更手段へ送信する。バルブ作動量変更手段は、受信した排気バルブ位相に追従するように、排気バルブの位相を変更する。ステップ(12−11)で暖機制御フローのルーチンを終了する。
【0052】
図13は、ステップ(12−2)の目標冷却水熱量計算の制御フローを示す。ステップ(13−1)からルーチンが開始する。ステップ(13−2)で、図15に示すような冷却水比熱CwTableを用いて、冷却水比熱Cwを水温から検索する。ステップ(13−3)では、冷却水比熱Cwと目標冷却水温度Twtと実際の冷却水温度Twrとから、単位質量当たりの単位目標冷却水熱量(冷却水への供給熱量)Qwmを演算する。ステップ(13−4)では、そのときのエンジン回転数に基づき、熱を供給しなければならない冷却水量を質量として求める。例えば、図17に示すエンジン回転数質量換算Tableから、エンジン回転数に対応する推定冷却水質量Rwrを求める。ステップ(13−5)では、この推定冷却水質量Rwrと単位目標冷却水熱量Qwmとの積算により目標冷却水熱量Qwを決定する。ステップ(13−6)で目標冷却水推量計算を終了する。
【0053】
図14は、ステップ(12−3)の目標排気熱量計算の制御フローを示す。ステップ(14−1)からルーチンが開始する。ステップ(14−2)で、図16に示すような排気比熱CgTableを用いて、排気比熱Cgを触媒温度から検索する。ステップ(14−3)では、排気比熱Cgと目標触媒温度Tgtと実際の触媒温度Tgrとから、単位質量当たりの単位目標排気熱量(排気への供給熱量)Qgmを演算する。ステップ(14−4)では、そのときのエンジン回転数に基づき、熱を供給しなければならない排気流量を質量として求める。例えば、図17に示すようなエンジン回転数質量換算Tableから、エンジン回転数に対応する推定排気質量Rgrを求める。なお、図17のエンジン回転数質量換算Tableは、実際には、それぞれ設定が異なる冷却水用のテーブルと排気用のテーブルとが用いられる。ステップ(14−5)では、この推定排気質量Rgrと単位目標排気熱量Qgmとの積算により目標排気熱量Qgを決定する。ステップ(14−6)で目標排気熱量計算を終了する。
【0054】
次に、図20は、図7で説明した内燃機関に適用されるステップ(10−7)の暖機制御の制御フローを示す。ステップ(20−1)から制御が開始し、ステップ(20−2)で前述した目標冷却水熱量計算を実行する。ステップ(20−3)で同じく前述した目標排気熱量計算を実行する。ステップ(20−4)では、上記の目標冷却水熱量と目標排気熱量とに基づいて、変速MAPの切換を行う。変速MAP切換は、例えば図19のように、目標冷却水熱量と目標排気熱量とに対し複数の変速MAP1〜6を予め設定しておき、そのときの目標冷却水熱量と目標排気熱量とに対応する変速MAPを選択する。次に、ステップ(20−5)では、選択された変速MAPを用い、目標負荷とエンジン回転数とから変速段の検索を行う。ステップ(20−6)では、ステップ(20−5)で決定した変速段をシフトアクチュエータ(5−4)へ送信する。ステップ(20−7)で制御を終了する。複数の変速MAPは例えば図21,22のような特性に基づいて決定され、図19は、これを簡略化してマトリックスとして示したものである。図21は、目標排気熱量に応じた変速線の変化を示し、図22は、目標冷却水熱量に応じた変速線の変化を示す。なお、図18は、変速MAPの基本的な特性を示しており、チャタリング防止のため図示するように適宜なヒステリシスが与えられる。
【0055】
図30〜図32は、上述した制御をタイムチャートとして表したものであり、図30は、図6および図7の構成に共通な通常の運転状態を示す。図31は、図6に示す構成の内燃機関において、膨張速度やバルブリフト等を変化させた様子を示したものであり、図32は、図7に示す構成の内燃機関において、膨張速度やバルブリフト等を変化させた様子を示したものである。図32の例においては、1サイクル中に排気バルブが二度開弁する。
【0056】
本発明を適用した図6,図7のエンジンは一例であって、膨張行程のピストン速度(膨張速度)を変更する全てのエンジンに対して本発明を適用することが可能である。
【0057】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0058】
図34は、内燃機関の機械的な構成を示している。この内燃機関は、吸気行程および圧縮行程を担う吸気圧縮シリンダ(34−15)と膨張行程および排気行程を担う膨張排気シリンダ(34−16)とが隣接して設けられたもので、吸気圧縮シリンダ(34−15)は、吸気バルブ(34−1)と、圧縮混合気を膨張排気シリンダ(34−16)に供給する圧縮バルブ(34−2)と、を備え、膨張排気シリンダ(34−16)は、第2圧縮バルブ(34−3)と排気バルブ(34−4)と、点火装置である点火プラグ(34−5)と、を備える。吸気圧縮シリンダ(34−15)には、吸気圧縮を行う吸気圧縮ピストン(34−6)が設けられ、膨張排気シリンダ(34−16)には、膨張排気を行う膨張排気ピストン(34−8)が設けられる。吸気圧縮ピストン(34−6)はリニアモータ(34−7)によって直線的に駆動される。膨張行程の燃焼圧は、図6の実施例と同様に、膨張排気ピストン(34−8)から膨張排気コンロッド(34−9)を介して、3次元カム(34−11)を備えたクランクシャフト(34−12)に伝達される。膨張排気コンロッド(34−9)が先端のカムローラ(34−10)を介して接触する3次元カム(34−11)は、膨張排気ピストン(34−8)の所望のピストンモーションを再現するように所定のカムプロフィールを備え、かつ軸方向に無段階の多数の異なるカムプロフィールを有する3次元形状をなしている。そして、このカムプロフィールを要求膨張比に応じて変化させるように、クランクシャフト(34−12)を軸方向にスライドさせる膨張速度コントロールアクチュエータ(34−13)を備えている。また、一般的な内燃機関と同様に、燃料噴射弁(34−17)、電子制御スロットル弁(34−18)、エアフロメータ(34−19)、クランク角センサ(34−20)、なども備えている。なお、上記クランクシャフト(34−12)は、厳密な意味ではクランク機構を備えていないが、便宜上、クランクシャフトと呼ぶこととする。
【0059】
上記内燃機関の基本的なサイクルは、前述した図6の内燃機関と同様である。なお、第2圧縮バルブ(34−3)は、圧縮バルブ(34−2)と基本的に同時に開閉する。この実施例の内燃機関では、やはり吸気圧縮行程と膨張排気行程とが分離されるが、特に、3次元カム(34−11)により膨張速度や筒内圧を変更できるとともに、リニアモータ(34−7)によって吸気圧縮ピストン(34−6)を任意に動作させることができる。
【0060】
図35は、この第2の実施例における制御ブロックの一例を示す。暖機要求演算部(35−1)は、水温センサ信号、スタータSW信号から、水温、始動後経過時間などを求め、これらを少なくとも用いて、機関本体(シリンダブロック等)を暖機すべき本体暖機要求、あるいは触媒を暖機すべき触媒暖機要求、の有無を求める。目標圧縮比演算部(35−3)は、例えば図37に示すような特性に従って、水温と始動後経過時間とに対応する目標圧縮比を求める。目標膨張比演算部(35−2)は、例えば図38に示すような特性に従って、水温と始動後経過時間とに対応する目標膨張比を求める。目標ピストン位置演算部(35−4)は、目標圧縮比とクランク角度に応じて吸入圧縮ピストン(34−6)の位置を求め、また目標膨張比よりクランクシャフト(34−12)のスライド位置(つまり3次元カム(34−11)の位置)を求める。
【0061】
図36は、この実施例の制御フローを示す。ステップ(36−1)で制御が開始し、ステップ(36−2)で水温センサによる水温を読み込む。ステップ(36−3)では内燃機関の始動後の経過時間を求める。一例としては、スタータSWがONからOFFとなった後、エンジン回転数が所定値以上の場合、正常に始動したと判定し、スタータSWONからの時間を計測する。エンジン回転数が所定値に満たない場合は始動していないものとして、タイマをクリアする。ステップ(36−4)では、検出した水温と始動後経過時間とから、図37および図38のようなマップを参照して、目標膨張比および目標圧縮比を求める。ここで、冷機始動時は触媒暖機と本体暖機とを並行して行い、触媒暖機完了後(始動後経過時間が所定値以上)は本体暖機のみを行い、暖機状態で再始動されたような場合(水温が所定値以上で始動後経過時間が所定値未満)は触媒暖機のみを行うように、目標膨張比および目標圧縮比が設定される。
【0062】
ステップ(36−5)では、目標圧縮比に基づき吸気圧縮ピストン(34−6)のピストン位置のオフセット量αを求め、このオフセット量αを用いて、現在のクランク角から目標吸気圧縮ピストン位置(最下死点からの距離)を算出する。
【0063】
具体的には、目標吸気圧縮ピストン位置は、ピストンの加速度変化が極端に大きくならないようにすべき(要求モータトルクが大きくなり過ぎるため)であるので、一例としては、下式のように、sin関数を基本に用いて算出する。
【0064】
目標吸気圧縮ピストン位置=ストローク / 2* ( 1 − sin(θ)) +α
ここで、オフセット量αは、圧縮室容積(α=0でかつ吸気圧縮ピストン(34−6)が上死点にある場合の吸気圧縮シリンダ(34−15)の残存容積)、吸気圧縮シリンダ(34−15)のボア径、吸気圧縮ピストン(34−6)のストローク、目標圧縮比、から下式のように求める。
【0065】
圧縮比=(圧縮室容積+π*(ボア/2)2*(α+ストローク))/ 圧縮室容積
α=(圧縮比−1)*圧縮室容積/(π*(ボア/2)2)− ストローク
次にステップ(3−6)では、目標膨張比からクランクシャフト(34−12)のスライド量を算出する。
【0066】
ここで、膨張比は、燃焼室容積(膨張排気ピストン(34−8)が上死点にあるときの膨張排気シリンダ(34−16)の残存容積)、膨張排気シリンダ(34−16)ボア径、膨張排気ピストン(34−8)のストローク(上死点位置から下死点位置までの距離)、と下記の関係があるので、下式に従って、目標膨張比から必要なストロークを求める。
【0067】
膨張比=(燃焼室容積+π*(ボア/2)2 *ストローク))/ 燃焼室容積
ストローク=(膨張比−1)*燃焼室容積/(π*(ボア/2)2)
このようにしてストロークを求めたら、例えば図42に示すように予め求めたスライド量とストロークとの関係から、必要なスライド量を決定する。なお、図39,図40は、3次元カム3次元カム(34−11)の一例を示しており、これにより、図41に例示するような種々のストロークが得られる。
【0068】
次に上記実施例の利点を図43〜図47を用いて説明する。図43は、特許文献1のようにピストンのストロークは変えずに、その位置のみを上下に変化させた場合(これを「従来」と表記する)のピストンの運動と、可変機構を具備しない一般的な内燃機関(これを「Std」と表記する)のピストンの運動と、を対比して示したものであり、図44は、これらの2つのもののP−V線図である。これらの図に明らかなように、従来のものでは、圧縮比と膨張比が同時に変化するため、膨張比を下げると、排気に残るエネルギは増えるが、圧縮比の低下により燃焼時の最高圧力(温度)が下がってしまう(図44のa)。その結果、燃焼室周辺の暖機が遅くなってしまう。また図44のbの部分に示すように、あまり圧縮比を下げると、燃焼が困難となる。
【0069】
一方、本発明においては、図45に示すように吸気圧縮ピストン(34−6)のピストンモーションを可変制御し、図46に示すように膨張排気ピストン(34−8)のピストンモーションを可変制御することにより、圧縮比を下げずに膨張比を下げることが可能である。この場合には、図47のP−V線図に明らかなように、排気に残るエネルギは増えつつ、cの部分に示すように、燃焼時の最高圧力(温度)が下がらない。その結果、燃焼室周辺の暖機が遅くならない。
【0070】
すなわち、本発明では、暖機状態に応じて圧縮比および膨張比を適切に設定することで、触媒暖機と機関本体の暖機とが両立する。
【0071】
ところで、圧縮比や膨張比を変更することで、同一吸気量に対する出力トルクは変化する。そこで、これを補正するために、スロットル弁開度を補正することが望ましい。例えば、圧縮比および膨張比に応じて図48に示すような特性から補正係数を求め、これを乗じてスロットル開度を補正する。
【0072】
最後に、各請求項の発明の利点について述べる。
【0073】
請求項2の発明によれば、ピストン角度変更手段によって、主にエンジン本体の暖機に影響を与える冷却損失と主に触媒の暖機に影響を与える排気損失のバランスを適切に制御することができ暖機効率が向上する。
【0074】
請求項3の発明によれば、保持クランク角を大きくすることで、機関本体の暖機を促進することができる。
【0075】
請求項4の発明によれば、機関の暖機要求があった場合に膨張クランク角を大きくするので、冷却損失が増加して暖機が促進される。
【0076】
請求項6の発明によれば、暖機要求が強い際に、ピストンモーションを暖機する側に変更することで、迅速な暖機を行うことができる。
【0077】
請求項8の発明によれば、水温が低いほど暖気要求が強いと判断するので、水温に応じたエンジン本体の暖機が最適に制御され、暖機の促進により排気エミッションが向上する。
【0078】
請求項9の発明によれば、始動後の経過時間により機関の暖機状態を適切に把握することができ、より適切にエンジン本体と触媒の暖機を促進できる。
【0079】
請求項10の発明によれば、触媒温度を最適かつ早期に暖機することが可能であり、エンジン始動直後のエミッションが向上する。
【0080】
請求項5および11の発明によれば、排気バルブの位相を進角することで、排気損失を増大させ、排気触媒の早期暖機を図ることができ、エミッションが向上する。
【0081】
請求項12の発明によれば、上死点での筒内温度を高めつつノッキングを回避してエンジン本体を早期暖機できる。
【0082】
請求項13の発明によれば、機関の暖機要求に応じて圧縮比を大きくするため、筒内最大圧力を上昇させることができ、冷却損失を増大させ、早期暖機を図ることができる。
【0083】
請求項14の発明によれば、触媒の暖機要求に応じて膨張比を小さくするため、排気損失が大きくなり、排気触媒の早期暖機を実現することができる。また、圧縮比の変更と組み合わせれば、機関と触媒の暖機を両立させることができる。
【0084】
請求項15の発明によれば、暖機要求に応じてスロットル開度を補正する構成なので、暖機要求の有無に拘わらず、低〜中負荷域の出力トルクを一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る制御装置のブロック図。
【図2】吸気バルブに適用した場合の要部のブロック図。
【図3】排気バルブに適用した場合の要部のブロック図。
【図4】運転状態判定手段のブロック図。
【図5】膨張速度制御手段および膨張速度変更手段のブロック図。
【図6】本発明が適用される内燃機関の一例を示す構成説明図。
【図7】本発明が適用される内燃機関の異なる例を示す構成説明図。
【図8】三次元カムと膨張クランク角の関係を示す説明図。
【図9】三次元カムの形状の一例を示す説明図。
【図10】本発明のメイン制御フローを示すフローチャート。
【図11】暖機判定制御フローを示すフローチャート。
【図12】暖機制御フローの一例を示すフローチャート。
【図13】目標冷却水熱量計算フローを示すフローチャート。
【図14】目標排気熱量計算フローを示すフローチャート。
【図15】冷却水比熱CwTableを示す特性図。
【図16】排気比熱CgTableを示す特性図。
【図17】エンジン回転数質量換算Tableを示す特性図。
【図18】変速MAPの一例を示す特性図。
【図19】複数の変速MAPの切換方法を示す説明図。
【図20】暖機制御フローの一例を示すフローチャート。
【図21】目標排気熱量に対する変速線の変化の説明図。
【図22】目標冷却水熱量に対する変速線の変化の説明図。
【図23】吸気バルブリフト量MAPの一例を示す特性図。
【図24】吸気バルブ位相MAPの一例を示す特性図。
【図25】排気バルブリフト量MAPの一例を示す特性図。
【図26】排気バルブ位相MAPの一例を示す特性図。
【図27】膨張クランク角MAPの一例を示す特性図。
【図28】保持クランク角MAPの一例を示す特性図。
【図29】排気バルブ位相補正MAPの一例を示す特性図。
【図30】通常の運転状態における動作を示すタイミングチャート。
【図31】図6の構成における異なる制御状態の動作を示すタイミングチャート。
【図32】図7の構成における異なる制御状態の動作を示すタイミングチャート。
【図33】可変バルブ機構の構成例の説明図。
【図34】本発明が適用される内燃機関の第2の実施例を示す構成説明図。
【図35】第2の実施例の制御システムの機能ブロック図。
【図36】第2の実施例のメイン制御フローを示すフローチャート。
【図37】圧縮比の設定の一例を示す特性図。
【図38】膨張比の設定の一例を示す特性図。
【図39】3次元カムの一例を示す説明図。
【図40】3次元カムの3箇所での断面図。
【図41】それぞれのカム位置でのピストンモーションを示す特性図。
【図42】スライド量とストロークの関係を示す特性図。
【図43】従来の可変圧縮比機構によるピストンモーションを示す特性図。
【図44】そのP−V線図。
【図45】第2の実施例の吸気圧縮ピストンのピストンモーションを示す特性図。
【図46】第2の実施例の膨張排気ピストンのピストンモーションを示す特性図。
【図47】第2の実施例のP−V線図。
【図48】スロットル弁開度の補正係数を示す特性図。
【符号の説明】
【0086】
1−1…機関運転状態判定手段
1−2…暖機状態判定手段
1−3…バルブ制御手段
1−4…バルブ作動量変更手段
1−5…膨張速度制御手段
1−6…膨張速度変更手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のピストンモーションを変更するピストンモーション変更手段を有し、機関に暖機要求がある場合には冷却損失を、排気触媒に暖機要求がある場合には排気損失を、機関および排気触媒に暖機要求がある場合には冷却損失および排気損失を、それぞれ増加させるように上記ピストンモーション変更手段によってピストンモーションを変更することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
上記ピストンモーション変更手段は、あるピストン行程期間に対するクランクシャフト回転角度により定義されるピストン角度を変更するピストン角度変更手段であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
上記ピストン角度が、膨張行程においてピストンを上死点に保持する期間に対するクランクシャフト回転角度である保持クランク角であり、上記機関の暖機要求がある場合には、上記保持クランク角を大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
上記ピストン角度が、膨張行程においてピストンが上死点から下死点に到達するまでの期間に対するクランクシャフト回転角度である膨張クランク角であり、上記機関の暖機要求がある場合には、上記膨張クランク角を大きくすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
排気バルブの位相を変更する可変バルブタイミング装置を有し、上記排気触媒の暖気要求がある場合には、上記排気バルブの位相を進角することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
上記暖機要求が強いほど、上記ピストン角度を大きく変更することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
上記内燃機関が圧縮比を変更可能な圧縮比変更手段を有し、上記機関の暖機要求が強いほど圧縮比を高くし、かつ、膨張クランク角を小さくすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
上記機関の暖機要求は水温によって判断し、水温が低いほど上記暖機要求が強いと判断することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
上記排気触媒の暖機要求は機関始動後の経過時間によって判断し、経過時間が短いほど上記暖機要求が強いと判断することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項10】
上記排気触媒の暖機要求は該排気触媒の昇温状態によって判断し、昇温状態が低いほど上記暖機要求が強いと判断することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項11】
上記排気触媒の暖気要求が強いほど、上記排気バルブの位相を大きく進めることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項12】
上記ピストンモーション変更手段は、クランクシャフト回転角度に対するピストン作動範囲を変更するピストン作動範囲変更手段であり、機関または/および排気触媒に暖機要求がある場合には、冷却損失または/および排気損失が増加するように上記ピストン作動範囲変更手段によって膨張比を小さくし、または/および圧縮比を大きくするように設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項13】
上記機関の暖機要求がある場合には、圧縮比を大きくするように設定することを特徴とする請求項12に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項14】
上記触媒の暖機要求がある場合には、膨張比を小さくすることを特徴とする請求項12または13に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項15】
上記膨張比を小さくする場合には、スロットル開度を大きくし、上記圧縮比を大きくする場合には、スロットル開度を小さくするように補正することを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項1】
内燃機関のピストンモーションを変更するピストンモーション変更手段を有し、機関に暖機要求がある場合には冷却損失を、排気触媒に暖機要求がある場合には排気損失を、機関および排気触媒に暖機要求がある場合には冷却損失および排気損失を、それぞれ増加させるように上記ピストンモーション変更手段によってピストンモーションを変更することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
上記ピストンモーション変更手段は、あるピストン行程期間に対するクランクシャフト回転角度により定義されるピストン角度を変更するピストン角度変更手段であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
上記ピストン角度が、膨張行程においてピストンを上死点に保持する期間に対するクランクシャフト回転角度である保持クランク角であり、上記機関の暖機要求がある場合には、上記保持クランク角を大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
上記ピストン角度が、膨張行程においてピストンが上死点から下死点に到達するまでの期間に対するクランクシャフト回転角度である膨張クランク角であり、上記機関の暖機要求がある場合には、上記膨張クランク角を大きくすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
排気バルブの位相を変更する可変バルブタイミング装置を有し、上記排気触媒の暖気要求がある場合には、上記排気バルブの位相を進角することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
上記暖機要求が強いほど、上記ピストン角度を大きく変更することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
上記内燃機関が圧縮比を変更可能な圧縮比変更手段を有し、上記機関の暖機要求が強いほど圧縮比を高くし、かつ、膨張クランク角を小さくすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
上記機関の暖機要求は水温によって判断し、水温が低いほど上記暖機要求が強いと判断することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項9】
上記排気触媒の暖機要求は機関始動後の経過時間によって判断し、経過時間が短いほど上記暖機要求が強いと判断することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項10】
上記排気触媒の暖機要求は該排気触媒の昇温状態によって判断し、昇温状態が低いほど上記暖機要求が強いと判断することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項11】
上記排気触媒の暖気要求が強いほど、上記排気バルブの位相を大きく進めることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項12】
上記ピストンモーション変更手段は、クランクシャフト回転角度に対するピストン作動範囲を変更するピストン作動範囲変更手段であり、機関または/および排気触媒に暖機要求がある場合には、冷却損失または/および排気損失が増加するように上記ピストン作動範囲変更手段によって膨張比を小さくし、または/および圧縮比を大きくするように設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項13】
上記機関の暖機要求がある場合には、圧縮比を大きくするように設定することを特徴とする請求項12に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項14】
上記触媒の暖機要求がある場合には、膨張比を小さくすることを特徴とする請求項12または13に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項15】
上記膨張比を小さくする場合には、スロットル開度を大きくし、上記圧縮比を大きくする場合には、スロットル開度を小さくするように補正することを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公開番号】特開2007−247438(P2007−247438A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68716(P2006−68716)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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