説明

化学物質の順次適用を使用した半導体基板の表面処理のための方法及び装置

【解決手段】基板の表面上に形成された金属ゲート構造の周囲からポストエッチング洗浄工程中にポリマ残渣を除去するためのシステム及び方法は、金属ゲート構造に及び除去されるべきポリマ残渣に関連する複数のプロセスパラメータを決定することを含む。1又は複数の製造層が、金属ゲート構造を画定し、プロセスパラメータは、これらの製造層の及びポリマ残渣の特性を定める。第1及び第2の洗浄化学剤が特定され、プロセスパラメータに基づいて、第1及び第2の洗浄化学剤に関連する複数の適用パラメータが定められる。ゲート構造の構造的完全性を維持しつつポリマ残渣を実質的に除去するために、第1及び第2の適用化学剤は、適用パラメータを使用して制御方式で順次適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、半導体基板処理に関し、より詳細には、化学物質の順次適用を使用して半導体基板の表面を処理するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、各種の製造工程を通じて得られる。製造工程は、半導体ウエハ(ウエハ又は基板)上に、複数の階層に跨るゲート構造などの複数の特徴を画定する。各種の製造工程中、基板は、各種の汚染物に暴露される。基板が暴露される、製造工程に使用されるあらゆる材料又は化学物質が、汚染源として考えられる。エッチングやデポジションなどの各種の製造工程に使用される化学物質は、基板の表面上に形成されたゲート構造などの特徴の上及び周囲に、プロセスガス、エッチング化学物質、デポジション化学物質などの堆積物を、粒子状又はポリマ残渣汚染物として残留させる。粒子状汚染物の大きさは、概ね、基板上に製造中の特徴の限界寸法程度である。これらの汚染物は、細かい特徴を取り巻く溝内といった、到達しにくい領域にある特徴の上側、側壁沿い、及び間に詰まり、汚染物粒子の付近にある特徴に損傷を及ぼす恐れがある。
【0003】
基板上に形成される代表的なゲート構造は、様々な材料で作成されてゲート構造を画定する様々な材料によって構成される積層構造を含んでよい。ゲート構造は、ゲート酸化物層を含んでよく、その上には、タングステンやタングステン化合物などの1又は複数の金属層を使用して電極が製造される。電極の製造に使用可能な金属としては、タングステン、タングステンシリサイド、窒化タングステン、タンタル、ポリシリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸窒化シリコン、窒化タンタルなどが挙げられる。金属層の上にポリシリコンの層が形成され、ポリシリコン層の上にハードマスク層が製造される。ハードマスク層は、フォトレジスト層として製造され、ゲートスタックをパターン化するために及び下位の層を維持するために使用される。エッチング工程中、ハードマスク及び下位層のパターン化に使用されるエッチング化学物質は、ゲート構造の上側及び側壁沿いにポリマ残渣を残留させる。従来のポリマ残渣洗浄方法は、ポリマ残渣を長期間にわたって洗浄化学剤に暴露するバッチ式ツールに依存してきた。浸襲性の低い化学剤が使用されるとき、このような暴露は、ポリマ残渣及びその他の汚染物の除去を非効率的にする。他方、浸襲性の高い化学剤が使用されるときは、バッチ式ツールを使用した暴露は、ゲート構造における材料損失率を高くし、洗浄プロセスを望ましくないものにする。材料損失には、ハードマスク層のプルバック、並びに/又は基板上に形成されたゲート構造のゲート酸化物及びその他の層のアンダーカットがある。図1は、代表的なゲート構造を、図2は、ゲート構造の各種の層が受ける幾つかの弊害の例を、それぞれ示している。
【0004】
図1は、各種の製造工程によって基板100上に形成された代表的な金属ゲート構造を示している。ゲート構造の各種の層を形成してゲートスタックを画定するために、エッチング工程が使用される。ゲート構造は、基板100上に形成されたゲート酸化物層115を含む。基板100は、ゲート酸化物層115(一般的に、高誘電率である)を上に形成されたソース/ドレイン領域105を含む。1又は複数の金属層を使用して、ゲート酸化物115の上に金属電極が製造される。図1に示された金属ゲート構造では、金属電極は、金属1の層120及び金属2の層122を使用して形成される。金属層の上にポリシリコン層125が形成され、該ポリシリコン層の上にハードマスク層が形成される。ハードマスク層は、更に、1又は複数のハードマスク層を含んでよい。図1に示されるように、ハードマスク層は、マスク1 130、マスク2 132、及びマスク3 134の3層のハードマスクを含む。スタックを画定するためにエッチング工程に使用されるエッチング化学物質及びエッチングされる材料は、ゲート構造の上側及び側壁に、金属汚染物又はポリマ汚染物を堆積させる。代表的な汚染物には、ポリマ残渣140及び金属含有ポリマ残渣142がある。
【0005】
図2は、従来のバッチ式ツールを使用した洗浄プロセスの結果としてゲート構造において起こり得る問題の幾つかを示している。バッチ式ツールにおいて使用される浸襲性の洗浄化学剤に対する長期に及ぶゲート構造の暴露は、ハードマスクのプルバックとしても知られるハードマスクの浸食を引き起こす。ハードマスクの浸食は、下位の層を早期に暴露させ、これは、起こり得るゲート構造の損傷及び/又は更なる汚染につながる。洗浄化学剤に対する長期に及ぶ暴露は、更に、ゲート酸化物の上に金属電極を形成する際に使用されるタングステンやタングステンシリサイドなどの金属層のアンダーカットを引き起こし、ついにはゲート酸化物を洗浄化学剤に暴露することがある。ハードマスクのプルバック、並びにゲート構造の金属、及びゲート酸化物を含むその他の層のアンダーカットは、洗浄プロセスにおいて最大の問題を提起する。後続の製造工程で使用される化学剤に対するゲートスタックの各種の層の早期の暴露は、層の更なる損傷を引き起こし、ゲート構造を動作不能にすることがある。製造時における効率的で且つ非損傷的な汚染物の除去は、洗浄プロセスにおいて大きな課題を提起する。
【0006】
以上を考慮すると、ゲート構造の構造的完全性を維持しつつ基板の表面から汚染物を除去するための、より効果的な洗浄技術が必要とされることがわかる。発明の実施形態が生まれるのは、このような状況においてである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、基板の表面上の金属ゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣汚染物を効率的に除去するための改善された方法及び装置を提供することによって、上記の必要を満たす。本発明は、装置及び方法を含む数々のやり方で実現可能であることを理解されるべきである。本発明の幾つかの発明的実施形態が、以下で説明される。
【0008】
一実施形態では、ポストエッチング洗浄工程中に金属ゲート構造の周囲からポリマ残渣を除去するための方法が開示される。方法は、金属ゲート構造に及び該ゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣に関連する複数のプロセスパラメータを決定することを含む。ゲート構造は、1又は複数の製造層を含む。プロセスパラメータは、ゲート構造を構成する1又は複数の製造層の及びゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣の1つ又は複数の特性を定める。基板の表面を処理するための第1及び第2の洗浄化学剤が特定される。プロセスパラメータに基づいて、第1及び第2の洗浄化学剤のそれぞれについて1つ又は複数の適用パラメータが定められる。ゲート構造の1枚又は複数枚の層の構造的完全性を維持しつつゲート構造の周囲からポリマ残渣が実質的に除去されるように基板の表面の一部分を最適な期間にわたって第1及び第2の洗浄化学剤に最適に暴露できるように、第1及び第2の洗浄化学剤は、適用パラメータを使用して基板の表面の上記一部分に制御方式で順次適用される。
【0009】
別の実施形態では、基板の表面上に形成された金属ゲート構造の周囲からポストエッチング洗浄工程中にポリマ残渣を除去するためのシステムが開示される。システムは、基板を受け取り、支え、システム内で搬送するための基板支持装置を含む。第1の洗浄化学剤をメニスカスとして基板の表面の一部分に導入するように、第1のプロキシミティヘッドが構成される。第2の洗浄化学剤をメニスカスとして基板の表面の上記一部分に導入するように、第2のプロキシミティヘッドが構成される。ゲート構造の1枚又は複数枚の層の構造的完全性を維持しつつ金属ゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣を実質的に除去するために最適な期間にわたって基板の表面の一部分が第1及び第2の洗浄化学剤に最適に暴露されるように、第1及び第2のプロキシミティヘッドを通した第1及び第2の洗浄化学剤の順次導入は、第1及び第2の洗浄化学剤が基板の表面の上記一部分に制御方式で適用されることを可能にする。
【0010】
本発明を例として示した添付の図面と併せた以下の詳細な説明から、本発明のその他の態様及び利点がより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、添付の図面と併せた以下の説明を参照にすることによって、最も良く理解され得る。これらの図面は、本発明を好ましい実施形態に限定すると解釈されるべきでなく、説明及び理解を目的とするに過ぎない。
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における、代表的なエッチング後の金属ゲート構造の概略図を示している。
【0013】
【図2】本発明の一実施形態における、図1に示されたエッチング後の金属ゲート構造において洗浄工程中に起こり得る問題及び損傷の概略図を示している。
【0014】
【図3A】エッチング工程後の各種のゲート構造の概略図を示し、本発明の一実施形態における、完全エッチング後の単純DRAMゲート構造を示している。
【図3B】エッチング工程後の各種のゲート構造の概略図を示し、本発明の別の実施形態における、部分エッチング後の単純DRAMゲート構造を示している。
【図3C】エッチング工程後の各種のゲート構造の概略図を示し、本発明の別の実施形態における、エッチング工程後の単純フラッシュタングステンゲート構造を示している。
【図3D】エッチング工程後の各種のゲート構造の概略図を示し、本発明の別の実施形態における、エッチング工程後の単純タングステンゲートロジック構造を示している。
【0015】
【図3E】本発明の一実施形態における、代表的なタンク洗浄工程後のタングステン金属ゲート構造の概略図を示している。
【0016】
【図4A】図3A〜3Cに示された各種のゲート構造について洗浄工程後に予期される所望の洗浄結果の概略図を示している。
【図4B】図3A〜3Cに示された各種のゲート構造について洗浄工程後に予期される所望の洗浄結果の概略図を示している。
【図4C】図3A〜3Cに示された各種のゲート構造について洗浄工程後に予期される所望の洗浄結果の概略図を示している。
【0017】
【図4D】本発明の一実施形態における、第1の洗浄化学剤及び第2の洗浄化学剤を使用した洗浄工程後に結果として得られる金属ゲート構造を示している。
【0018】
【図5】本発明の一実施形態における、第1及び第2の適用化学剤の適用に使用されるシステムの概略図を示している。
【0019】
【図6A】本発明の一実施形態における、第1及び第2の洗浄化学剤を使用した効果的なポリマ残渣除去率を特定するグラフを示している。
【図6B】本発明の一実施形態における、第1及び第2の洗浄化学剤を使用した効果的なポリマ残渣除去率を特定するグラフを示している。
【0020】
【図7】本発明の一実施形態における、効果的な金属含有ポリマ残渣除去のために必要とされる最適な暴露時間及びキャリア速度を示している。
【0021】
【図8】本発明の一実施形態における、効果的な金属含有ポリマ残渣除去率に最適な濃度を示している。
【0022】
【図9】本発明の一実施形態における、ポストエッチング洗浄工程中に金属ゲート構造の周囲からポリマ残渣を除去することに関与する各種の方法工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、基板の表面上に形成された金属ゲート構造の周囲から金属含有ポリマ残渣を含むポリマ残渣を効果的に除去するための幾つかの実施形態が説明される。しかしながら、当業者ならば、本発明がこれらの詳細の一部又は全部を伴わずとも実施され得ることが明らかである。また、本発明を不必要に不明瞭にしないために、周知のプロセス工程の詳しい説明は省略される。
【0024】
ポリマ残渣及び金属含有ポリマ残渣などの汚染物の、基板の表面からの効果的な除去は、基板上に形成された特徴の及び結果として得られるマイクロチップなどのデバイスの機能性を維持するのに有用である。発明の一実施形態では、金属ゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣は、浸襲性の化学剤を基板の表面に順次適用することによって除去される。浸襲性の化学剤は、ゲート構造の構造的完全性を維持しつつゲート構造の周囲からポリマ残渣汚染物を最適に除去することを可能にできるように、厳密な制御方式で適用される。厳密な制御方式で浸襲性の化学剤を適用するために、ゲート構造に及びポリマ残渣に関連する複数のプロセスパラメータが決定される。プロセスパラメータは、ゲート構造を形成する複数の製造層及びゲート構造特徴の周囲に形成された各種のポリマ残渣を解析することによって得られる。プロセスパラメータは、ゲート構造の様々な層に及びポリマ残渣に関連する1つ又は複数の特性を定める。プロセスパラメータに基づいて、第1及び第2の浸襲性化学剤が特定され、特定された浸襲性化学剤について、1つ又は複数の適用パラメータが定められる。適用パラメータは、ゲート構造の構造的完全性を失うことなくポリマ残渣の最適な除去が可能にされるように浸襲性化学剤を厳密な制御方式で順次適用する際に使用される。
【0025】
各種の実施形態の利点は、不要なポリマ残渣を効果的に除去し、その結果として実質的に清浄なデバイスを得るために、単純で且つ一般的な化学剤を使用することを含む。制御された浸襲性化学剤の適用は、微小寸法の精密制御を伴うポリマ残渣除去を実現する。
【0026】
制御された浸襲性化学剤の適用の有効性を理解するために、先ず、図1及び図2を参照にして、ゲート構造において生じる弊害について説明する。図1は、本発明の一実施形態における、ゲート構造の概略図を示している。ゲート構造は、複数の製造層を使用して形成され、ここで、製造材料は、基板100の表面の上にデポジションされる。製造層は、基板100の表面上のゲート酸化物の層115の上に形成された1又は複数の金属層120、122を含んでよい。ゲート酸化物層115は、一般的に、ソース/ドレイン105の上に形成された高誘電率膜層である。金属電極を形成するために、金属層が使用される。図1では、金属電極の形成に、金属1の層120及び金属2の層122の2つの金属層が使用されている。金属電極の形成のために使用される金属には、タングステン(W)、タングステンシリサイド、窒化タングステン、タンタル、ポリシリコン(ドープ又は非ドープ)、酸化シリコン(SiO2)、窒化タンタル(TaN)、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、窒素添加ハフニウムシリケート(HfSiON)などがある。金属の上に、ポリシリコン層125が形成される。ポリシリコン層130の上に、ハードマスク層130が形成される。ハードマスク層130は、複数のハードマスク層130、132、134で作成されてよい。ハードマスク層を形成するために使用される代表的な材料には、窒化シリコンや酸化シリコンなどがある。ハードマスク層は、フォトレジスト層として形成され、エッチング工程中に下位の層を保護するために使用される。エッチング工程中、金属ゲート構造を画定するために使用されるエッチング化学物質は、金属ゲート構造の上側及び側壁沿いに、ポリマ残渣汚染物140及び金属含有ポリマ残渣汚染物142を残留させる。金属ゲート構造の特性を維持しつつ不要なポリマ残渣汚染物140、142を除去することは、不可欠である。
【0027】
図1に示されたゲート構造は、基板の上に形成されるゲート構造の一例である。ゲート構造の様々なヴァリエーションが可能である。図3A〜3Dは、図1に示されたゲート構造の幾つかのヴァリエーションを示している。図3Aは、完全エッチング後のDRAMゲート構造を示している。ゲート構造のゲートスタックは、シリコン基板100の上に形成されたゲート酸化物115を含む。ゲート酸化物115の上にはポリシリコン層125が形成され、次いで、金属1の層120及び金属2の層122が続く。金属2の層の上に、ハードマスク層130が形成される。図からわかるように、エッチング工程後は、エッチング後のポリマ残渣140及び金属含有ポリマ残渣142がゲート構造の周囲に形成する。ゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣をゲート構造の各種の層を実際に損なうことなく除去することは、難題である。
【0028】
図3Bは、図3Aに示されたゲート構造の一つの変形例を示している。図3Bのゲート構造は、開口エッチングプロセスの結果として形成され、ゲート酸化物115全体の上にポリシリコン層125が、当該ポリシリコン層125の一部分の上にゲートスタックがそれぞれ形成されている。
【0029】
図3Cは、シリコン基板100の上に形成されたフラッシュタングステン金属ゲート構造の一実施形態を示している。ゲート構造のゲートスタックは、基板上に形成されたゲート酸化物115を含む。ゲート酸化物115の上には、窒化シリコンの保護層152が形成される。窒化シリコン層152の上には、金属1の層120、金属2の層122、及び金属3の層124が形成される。金属層124の上には、ハードマスク層130が形成される。
【0030】
図3Dは、本発明の一実施形態における、シリコン基板100の上に形成されたエッチング後のゲート構造を示している。他のゲート構造について既述したように、シリコン基板の上に、高誘電率膜層115が形成され、当該高誘電率膜層115の上に、金属2の層122及び金属1の層120などの複数の金属層が形成される。金属層は、タングステン、タングステンシリサイド、タンタル、窒化タンタルなどの、タングステン又はタンタルをベースにした金属層であってよい。金属層の上には、ポリシリコンの層125が形成される。ポリシリコン層125の上には、ハードマスク層が形成される。エッチング構造に使用される各種の化学物質は、ポリマ残渣140としてゲート特徴の周囲に堆積する。金属含有ポリマ残渣142を含むエッチング後のポリマ残渣140の除去は、洗浄工程中にこれらの残渣を除去するために使用される化学物質がゲート構造の1又は複数の層を損傷させる傾向があるゆえに、難題である。図2は、従来の洗浄ツールが使用されたときに金属腐食に起因して起こり得るマスクプルバック及び金属層アンダーカットの洗浄問題の一例を示している。
【0031】
図3Eは、洗浄工程中にバッチ式ツールが使用されるときに起こり得る別の洗浄問題を示している。ポリマ残渣汚染物を効果的に除去するために、浸水タンクツール(例えば記録プロセス(Process of Record, POR)タンクツール)などのバッチ式ツールが使用される。バッチ式ツールは、関連のゲート構造を伴う基板を、ポリマ残渣の効果的な除去のために洗浄化学剤に暴露する。あまり侵襲性でない化学剤をタンクツール内で使用すると、洗浄プロセスが非効率的になる。より高浸襲性の化学剤がタンクツール内で使用されるときは、ゲート構造は、図3Eに示されるように、高い材料損失を被る。金属含有ポリマ残渣汚染物を溶解するために使用される浸襲性化学剤は、ハードマスク層とも反応してハードマスク層をひどく浸食することによって、洗浄プロセス中及びポスト洗浄プロセス中に、ゲート構造の下位の層を浸襲性の洗浄化学剤に暴露する。暴露されたゲート構造の層は、浸襲性の洗浄化学物質及びその他の製造化学物質によってひどく損傷されて、ゲート構造を損傷させる又は動作不能にすることがある。
【0032】
従来の方法は、基板の表面を洗浄化学剤に暴露するために浸水ツールを使用した。あまり浸襲性でない洗浄化学剤が浸水ツールで使用されたときは、洗浄は、プロファイル制御が非常に乏しく、非効率的であった。他方、基板の表面を処理するためにより高浸襲性の化学剤が使用されたときは、図2に示されるような、ハードマスク層のプルバック及び各種製造層のアンダーカットを含む重大な損傷が製造層に対して発生する。これは、ゲート構造の側壁及び上のポリマ残渣が金属を含有している事実に起因する。金属含有ポリマ残渣を効果的に除去するために、浸襲性化学剤は、洗浄工程中にそれが金属含有ポリマ残渣を溶解する及び/又は除去することができるように選択される。これらの浸襲性化学剤は、しかしながら、金属含有製造層及びハードマスク層とも反応し、その結果、ハードマスク層の部分的な除去(ハードマスクプルバック)及びゲート構造の金属含有製造層の部分的なアンダーカットを発生させる。ハードマスク層のプルバックがあると、ゲート構造を形成する下位の製造層は、後続の製造工程に使用される化学物質を含む周囲環境に時期尚早に暴露され、下位の層の汚染又は損傷を引き起こす。汚染された/損傷された下位の層は、結果として得られるデバイスを動作不能にすることがある。したがって、もし阻止されなければゲート酸化物層を製造化学物質に時期尚早に暴露することがあるハードマスクのプルバックを、下位の製造層を維持しつつ阻止することが、有益である。
【0033】
図4A〜4Cは、図3A〜3Cに示された各種のゲート構造について得られる洗浄工程による所望の洗浄結果を示している。予期される所望の結果は、ゲート構造の周囲からポリマ残渣汚染物を効果的に除去しつつゲート構造の各種の製造層を維持する。この目的のために、図4Aは、図3Aに示された完全エッチングゲート構造について予期される洗浄工程後の所望の洗浄結果を示しており、図4Bは、図3Bに示された開口エッチングゲート構造についての所望の洗浄結果を示しており、図4Cは、図3Cに示されたタングステン金属ゲート構造についての所望の洗浄結果を示している。図からわかるように、所望の結果は、どの製造層も損傷させることなく金属含有残渣を含むポリマ残渣汚染物を効果的に除去することを必要とする。
【0034】
図5は、本発明の一実施形態における、金属ゲート構造の周囲に堆積されたポリマ残渣を実質的に除去するために第1の洗浄化学剤及び第2の洗浄化学剤を基板100の表面に制御方式で導入するために使用されるクリーンルーム内システム500を示している。システム500は、ハウジングチャンバ510を含み、該ハウジングチャンバ510は、基板を受け取り、支え、ハウジングチャンバ510内の被選択面上で運ぶための、キャリア550などの基板支持装置を有する。基板100は、基板搬入領域515において受け取られ、1つ又は複数のプロキシミティヘッドセット545、555を伴う領域内を運ばれ、基板搬出領域560へ送られる。図5の実施形態は、第1及び第2の洗浄化学剤を基板100の両側に供給するために被選択面の両側に位置決めされてその間を基板100が運ばれるプロキシミティヘッドペアを示している。なお、プロキシミティヘッドのこの構成は例示的であり、制限的だと見なされるべきでないことに留意すべきである。したがって、基板100の効果的な洗浄のために、その他の組み合わせ及び構成のプロキシミティヘッドが考慮されてもよい。
【0035】
第1のプロキシミティヘッドセット545は第1の洗浄化学剤を、第2のプロキシミティヘッドセット555は第2の洗浄化学剤を、ポストエッチング洗浄工程中に基板の表面にメニスカスとして適用するためにそれぞれ使用される。本明細書で使用される「メニスカス」という用語は、一部には液体の表面張力によって境界を定められ封じ込められた一定の体積の液体を言う。化学物質封じ込め領域を画定するメニスカスは、制御可能であり、封じ込まれた形状で表面の上を移動することができる。更に、メニスカスの形状は、プロキシミティヘッド545、555につながれた計算システム505を通じて制御することができる。システム510は、第1及び第2の洗浄化学剤を受け取り、保持し、プロキシミティヘッド545、555に供給するためのリザーバ525、530を含んでよい。リザーバ525、530につながれた化学剤適用メカニズム520が、プロキシミティヘッド545、555を通る第1及び第2の洗浄化学剤の流れを制御する。化学剤適用メカニズム520は、プロキシミティヘッド545、555への第1及び第2の洗浄化学剤の制御供給を可能にするための1つ又は複数の精密制御を含んでよい。精密制御は、計算システム505によって遠隔制御されてよい。洗浄プロセスの適切な段階で適正な量の第1及び第2の適用化学剤がプロキシミティヘッドに供給されるように精密制御を操作するために、計算システム505のソフトウェアが使用されてよい。適度な量の第1及び第2の洗浄化学剤がプロキシミティヘッドに供給されるように供給制御を操作するために、各種の製造層及びポリマ残渣汚染物に関連する複数のプロセスパラメータが使用される。
【0036】
第1及び第2の洗浄化学剤の適用は、複数のプロセスパラメータに基づく。プロセスパラメータは、ゲート構造を形成する各種の製造層及び除去される必要があるポリマ残渣を解析することによって得られる。プロセスパラメータは、各製造層及びポリマ残渣の特性を定める。ゲート構造における各製造層に関連するプロセスパラメータには、種類、大きさ、及び組成のうちの、1つ又は複数が含まれる。ポリマ残渣除去に関連するプロセスパラメータとしては、化学剤の種類、濃度、温度、暴露時間、及びゲート製造のプロセスで使用された半導体材料に対する目標除去率が挙げられる。ゲート製造のプロセスで使用される半導体材料としては、酸化シリコン(SiO2)、タングステン(W)、タングステンシリサイド、窒化タングステン、窒化タンタル、タンタルなどが挙げられる。第1の洗浄化学剤及び第2の洗浄化学剤は、ゲート構造特徴の損傷を伴うことなくポリマ残渣汚染物が効果的に且つ実質的に除去されるようにプロセスパラメータに基づいて選択される。製造層及びポリマ残渣に関連するプロセスパラメータは、基板ごとに異なってよい。基板の表面上に形成されたゲート構造を該ゲート構造の及び半導体デバイスの機能性が保たれるように洗浄工程中に維持することが、不可欠である。
【0037】
プロセスパラメータに基づいて選択される第1及び第2の洗浄化学剤は、洗浄工程中に従来のツールでは通常は使用されない浸襲性の化学剤である。これらの浸襲性化学剤は、長期間にわたって暴露されたときに、基板100上に形成された特徴にかなりの損傷を及ぼすことが知られている。しかしながら、これらの浸襲性化学剤は、限られた期間に制御方式で適用されたときは、ゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣の効果的な除去を促進する。一実施形態では、第1の洗浄化学剤は過酸化アンモニウム混合(APM)であり、第2の洗浄化学剤は希釈されたフッ化水素酸(dHF)である。APMは、金属含有ポリマ残渣と相互作用し、基板上に形成された特徴の周囲からそれらを効果的に除去することが知られているので、効果的な洗浄化学剤である。しかしながら、先に言及されたように、APMは、タングステン及びタングステン含有化合物に対する除去率が高い浸襲性の化学剤であり、それゆえに、従来のバッチ式洗浄ツールにおいてゲート構造などのタングステン含有デバイススタックを洗浄するための効果的な洗浄化学剤として使用することは難しいことが知られている。ゲート構造の製造層、とりわけタングステン/タングステン化合物を含有する製造層に対する損傷を回避するために、第1及び第2の洗浄化学剤は、これらの洗浄化学剤に対する基板表面の暴露を制限できるように、それぞれプロキシミティヘッド545、555を使用して厳密な制御方式で適用される。プロキシミティヘッドを使用する暴露時間の長さと正確さは、AMPの適用中における特徴の製造層の金属膜損失の許容量を定めることを可能にできるように、ポリマ残渣の所望の目標除去率によって決定されてよい。
【0038】
洗浄化学剤に対する基板表面の暴露を制限することを助けるために、ゲート構造などの特徴の各種の製造層に及びポリマ残渣汚染物に関連するプロセスパラメータに基づいて、第1及び第2の洗浄化学剤のそれぞれについて、1つ又は複数の適用パラメータが定められる。第1及び第2の洗浄化学剤のそれぞれについて定められる適用パラメータとしては、化学剤の種類、第1及び第2の洗浄化学剤の適用の順序、濃度、暴露時間、温度、圧力、及び流量が挙げられる。一実施形態では、暴露時間は、更に、プロキシミティヘッド下側において基板が運ばれる線速度及び基板の表面に適用され得るメニスカスの幅の関数として定められてよい。したがって、F(t暴露時間)=f(メニスカス幅/表面積,基板の線速度)である。ウエハの線速度は、モータなどの機械的装置を使用して制御されてよい。例えば、もしプロキシミティヘッド545が幅約20mmのメニスカスを適用することができるならば、第1の洗浄化学剤の適用のための暴露時間を1秒間にするために、基板の線速度は、約20mm/秒に調整されてよい。第1及び第2の洗浄化学剤のそれぞれに所望される暴露時間に応じて、プロキシミティヘッド下における基板の線速度は、モータを使用して適宜に調整されてよい。
【0039】
洗浄化学剤についての適用パラメータが確立されたら、第1及び第2の洗浄化学剤は、それらの適用パラメータに基づいて、第1及び第2のプロキシミティヘッド545、555を使用して制御方式で基板の表面に順次適用される。洗浄化学剤の適用の順序は、固定ではない。一実施形態では、第1のプロキシミティヘッド545を使用して第1の洗浄化学剤(APM)が適用され、その後、第2のプロキシミティヘッド555を使用して第2の洗浄化学剤(dHF)が続く。別の実施形態では、第1の洗浄化学剤(APM)は、第1のプロキシミティヘッド545を使用した第2の洗浄化学剤(dHF)の適用後に第2のプロキシミティヘッド555を使用して順次適用される。洗浄化学剤の適用の順序は、維持されるべき金属酸化物の量などの所望の成果に基づいてよい。第1及び第2の洗浄化学剤の制御方式による順次適用は、ゲート構造などの特徴の周囲から、それらの特徴を損傷させることなくポリマ残渣を実質的に除去することを助ける。先に言及されたように、各洗浄化学剤の暴露時間は、対応するプロキシミティヘッド下における基板の線速度を制御することによって制御される。
【0040】
第1及び第2の洗浄化学剤のそれぞれの適用後は、すすぎ化学剤を使用したすすぎ工程が続いてよい。すすぎ化学剤は、基板表面に適用された残留する洗浄化学剤をそれぞれの洗浄工程後に除去するために使用される。したがって、発明の一実施形態では、各種の化学剤による処理の順序は、第1の洗浄化学剤の適用と、すすぎ化学剤によるすすぎ工程と、第2の洗浄化学剤の適用と、すすぎ化学剤によるすすぎ工程とを含んでよい。第1及び第2の洗浄化学剤のそれぞれの適用後に続くすすぎ工程は、同じすすぎ化学剤又は異なるすすぎ化学剤を使用してよい。
【0041】
第1及び第2のプロキシミティヘッド(545、555)は、基板の表面を洗浄する及びすすぐために洗浄化学剤及びすすぎ化学剤をメニスカスとして供給するように構成される。洗浄化学剤のメニスカス及びすすぎ化学剤のメニスカスは、つながっていても良く、あるいは分かれていても良い。一実施形態では、洗浄化学剤及びすすぎ化学剤は、つながっている。プロキシミティヘッド(545、555)は、洗浄化学剤メニスカスとすすぎ化学剤メニスカスとの間のつながりを可能にするように構成される。この実施形態では、適用された洗浄化学剤は、一度だけ使用され、適用後に回収されない。別の実施形態では、洗浄化学剤メニスカス及びすすぎ化学剤メニスカスは、分かれている。この実施形態では、プロキシミティヘッド(545、555)のそれぞれは、洗浄化学剤メニスカスがすすぎ化学剤メニスカスから分かれた状態に維持されるように構成される。したがって、この実施形態では、適用された洗浄化学剤は、後の洗浄工程における再利用のために、適用後に回収することができる。
【0042】
本発明の一実施形態では、第1及び第2のプロキシミティヘッド545、555のぞれぞれは、更に、洗浄工程及びすすぎ工程の後に基板の表面を乾燥させるための乾燥工程を提供するように構成される。乾燥工程は、イソプロピルアルコール(IPA)蒸気などの乾燥化学剤を基板表面に適用することを含んでよい。一実施形態では、乾燥工程は、第1の洗浄及びすすぎの工程後において随意である。この実施形態において、もし第1の洗浄化学剤及びすすぎ化学剤の適用後に乾燥工程が実施されないならば、時期尚早の乾燥及び/又は更なる汚染を阻止できるように、基板の表面上に脱イオン水(DIW)の膜が残される。乾燥工程は、しかしながら、第2の洗浄及びすすぎの工程後には組み込まれる。
【0043】
洗浄プロセス中、基板は、基板表面の全部分に各種の化学剤が一様に適用されることを保証するために、プロキシミティヘッド(545、555)下において放射状に移動される。この実施形態では、プロキシミティヘッドの大きさは、基板の幅よりも小さい。プロキシミティヘッド下における基板の回転速度は、所望の暴露時間及びポリマ残渣の目標除去率に基づいて調整される。
【0044】
別の実施形態では、プロキシミティヘッドは、より局所的な洗浄化学剤の適用を短い暴露時間内で提供できるように、基板の直径よりも僅かに大きいヘッドを有するように構成される。この実施形態では、基板は、プロキシミティヘッド下側において直線状に移動する。
【0045】
プロキシミティヘッドを使用した短い暴露時間は、洗浄プロセスにおける濃縮された浸襲性の化学剤の使用を可能にする。浸襲性化学剤の高流量条件及び後続のすすぎ化学剤への置き換えは、ポリマ残渣汚染物とのより高速な反応と、その反応物のより高速な浮遊とを可能にすることによって、浸襲性化学剤に対する特徴の暴露を最小限に抑えつつポリマ残渣汚染物を最適に除去することを可能にし、それによって、洗浄プロセス中におけるゲート構造などの特徴の製造層のプルバック及びアンダーカットを阻止する。したがって、例えば、タングステン/タングステン化合物を使用された金属ゲート構造の周囲から金属ポリマ残渣を除去するために、APMを使用することができる。APMは、タングステンを非常に速く溶解することが知られているが、暴露時間の制御は、ポリマ残渣を周囲に形成された特徴を維持しつつポリマ残渣を効率的に除去することを可能にする。図6A、6B、及び7は、酸化物層の損失を最小限にした場合の残渣洗浄率をそれぞれ示したグラフ1、2、及び3を示している。図6Aからわかるように、例えば、APMの濃度は、最適なエッチング速度を約5Å/秒として、約1Å/秒から約10Å/秒までのエッチング速度を提供するように調整されてよい。ゲート構造の材料損失は、約5秒間の暴露時間に対して約5Åと約10Åとの間である。APMの濃度及び暴露時間は、ゲート構造材料の材料損失を低く維持しつつ許容範囲のポリマ残渣除去を得るように調整されてよい。暴露時間は、暴露時間を約±0.1秒程度に微調整するために、精密制御を使用して調整することができる。例えば、APMの組成の代表的範囲は、標準濃度を約1:4:10として、濃縮された側の約1:1:1から希釈された側の約1:4:50までの程度であってよい。dHFの場合は、濃度の範囲は、標準濃度を約1:100として、濃縮された側の約1:10と希釈された側の約1:1000との間であってよい。標準暴露時間は、約1秒と約20秒との間を範囲として、約2秒であると考えられる。プロキシミティヘッドの大きさに応じて、基板の速度は、所要の暴露時間を提供するように調整されてよい。プロキシミティヘッドの幅は、約10mmと約40mmとの間であってよく、基板の速度は、所要の暴露時間に合わせて調整されてよい。図8は、ポリマ残渣汚染物の効果的な除去のための目標暴露時間対キャリア速度のグラフを示している。
【0046】
図8に示されたグラフは、異なる2つのプロキシミティヘッド幅による効果的なポリマ残渣汚染物除去のための走査速度を暴露時間に対して示している。グラフは、ポリマ残渣の目標除去率を特定する。所望の除去率に基づいて、第1及び第2の適用化学剤の濃度、プロキシミティヘッド下側における基板の速度、並びに暴露時間を調整することができる。例えば、タングステンベースの残渣を5Å除去することが望ましい場合、グラフは、その目標を実現するための最適な基板の暴露時間及び速度を特定する。
【0047】
先に言及されたように、図3D、3E、及び4Dは、本発明の一実施形態における、洗浄工程を実施される前及び後に結果として得られる金属ゲート構造を示している。図3Dは、ゲート構造の周囲にポリマ残渣汚染物を形成された代表的なゲート構造を示している。図3Eは、浸襲性の化学剤を使用した従来の洗浄工程の結果を示している。ハードマスク層の上のポリマ残渣は、ハードマスク層の激しい浸食によって剥がされ、下位の層を露出させる。図4Dは、本発明の第1及び第2の洗浄化学剤を使用した洗浄工程後の結果を示している。基板表面に対する第1及び第2の洗浄化学剤の精密供給及び制御暴露は、ハードマスク層に対していかなる弊害を及ぼすこともなく、ハードマスクの上に形成されたポリマ残渣を効率的に除去することを可能にする。また、洗浄化学剤の制御暴露は、ゲート構造の金属層を実質的に維持しつつ、金属ゲート構造の側壁に形成されたポリマ残渣を除去することを可能にする。
【0048】
図9は、本発明の一実施形態における、ポストエッチング洗浄工程中に金属ゲート構造の周囲からポリマ残渣を除去することに関与するプロセス工程を示している。プロセスは、金属ゲート構造に及び当該金属ゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣に関連する複数のプロセスパラメータが決定される工程910から開始する。金属ゲート構造は、各種の製造工程を使用して形成された多層構造であってよい。プロセスパラメータは、ゲート構造を形成する製造層を解析すること及びゲート構造の周囲に形成されたポリマ残渣を解析することによって得られる。プロセスパラメータとしては、各製造層に及びポリマ残渣に関連する種類、大きさ、組成、温度、並びに除去されるべきポリマ残渣に関連する目標除去率が挙げられる。プロセスパラメータは、ゲート構造を構成する各製造層の及び除去されるべきポリマ残渣の特性を定める。
【0049】
工程920に示されるように、プロセスパラメータに基づいて、第1の洗浄化学剤及び第2の洗浄化学剤が特定される。第1及び第2の洗浄化学剤は、浸襲性の洗浄化学剤であってよく、過酸化アンモニウム混合(APM)及び希釈されたフッ化水素酸(dHF)を含んでよい。第1及び第2の洗浄化学剤の例は、例示的なものであり、APM及びdHFに限定されず、金属ポリマ残渣を溶解する又は金属ポリマ残渣と効果的に反応してそれらを実質的に除去することが知られているその他の浸襲性化学剤を含んでよい。洗浄化学剤として使用され得るその他の浸襲性化学剤として、例えば、フッ化水素酸と塩酸との混合(HF/HCl)が挙げられる。
【0050】
工程930に示されるように、複数のプロセスパラメータに基づいて、第1及び第2の洗浄化学剤に関連する複数の適用パラメータが定められる。第1及び第2の洗浄化学剤のそれぞれに関連する適用パラメータとして、種類、濃度、暴露時間、温度、圧力、及び流量が挙げられる。また、適用パラメータとして、第1及び第2のプロキシミティヘッドセット下側における基板の速度、並びに各プロキシミティヘッドにおけるメニスカスの幅が挙げられる。暴露時間は、各プロキシミティヘッドにおける基板の速度及びメニスカスの幅の関数として計算されてよい。適用パラメータは、金属ゲート構造の周囲からのポリマ残渣の目標除去率に基づいて定められる。
【0051】
プロセスは、工程940に示されるように、適用パラメータを使用して制御方式で第1及び第2の洗浄化学剤を順次適用することによって完結する。第1及び第2の洗浄化学剤の適用は、金属ゲート構造の構造的完全性を実質的に維持しつつ金属ゲート構造の周囲からポリマ残渣を実質的に除去することを可能にする。第1及び第2の洗浄化学剤の適用は、第1及び第2のプロキシミティヘッドと通信可能に接続されている計算システムを通じて実現されてよい。プロキシミティヘッドと通信可能に接続されている化学剤適用メカニズムにおいて利用可能な1つ又は複数の精密制御は、ゲート構造を構成する1又は複数の製造層の構造的完全性を実質的に維持しつつ基板の表面上の金属ゲート構造の周囲からポリマ残渣を最適に除去できるように第1及び第2の洗浄化学剤の制御された適用を可能にするために、計算システム内のソフトウェアを使用して操作されてよい。適用された洗浄化学剤は、後の洗浄工程において再利用可能であるように回収されて、単純なしかしながら高価な洗浄化学剤の最適な使用を可能にすることができる。したがって、発明の各種の実施形態は、金属ゲート構造に使用された金属を容易に溶解することが知られている浸襲性の化学剤を使用して金属ゲート構造の構造的完全性を維持しつつ金属ゲート構造の周囲からポリマ残渣を除去する方法を提供する。
【0052】
ウエハキャリアなどの基板支持装置に関する更なる情報のためには、2007年5月2日に出願され表題出願の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/743,516号「HYBRID COMPOSITE WAFER CARRIER FOR WET CLEAN EQUIPMENT(湿式洗浄機器のためのハイブリッド複合ウエハキャリア)」を参照することができる。
【0053】
プロキシミティヘッドに関する更なる情報のためには、2003年9月9日に発行された米国特許第6,616,772号「METHODS FOR WAFER PROXIMITY CLEANING AND DRYING(ウエハに接近した洗浄及び乾燥のための方法)」に記載されるような典型的なプロキシミティヘッドを参照することができる。この米国特許は、表題出願の譲受人であるラム・リサーチ社(Lam Research Corporation)に譲渡されている。
【0054】
メニスカスに関する更なる情報のためには、2005年1月24日に発行された米国特許第6,998,327号「METHODS AND SYSTEMS FOR PROCESSING A SUBSTRATE USING A DYNAMIC LIQUID MENISCUS(動的液体メニスカスを使用して基板を処理するための方法及びシステム)」及び2005年1月24日に発行された米国特許第6,998,326号「PHOBIC BARRIER MENISCUS SEPARATION AND CONTAINMENT(疎水性バリアメニスカスの分離及び封じ込め)」を参照にすることができる。これらの米国特許は、あらゆる目的のために全体として標題出願の譲受人に譲渡されている。
【0055】
上部及び下部のメニスカスに関する更なる情報のためには、2002年12月24日に出願された米国特許出願第10/330,843号「MENISCUS, VACUUM, IPA VAPOR, DRYING MANIFOLD(メニスカス、真空、IPA蒸気、乾燥マニホールド)」に開示されるような典型的なメニスカスを参照にすることができる。この米国特許は、標題出願の譲受人であるラム・リサーチ社(Lam Research Corporation)に譲渡されている。
【0056】
上述の発明は、理解を明瞭にする目的で幾らか詳細に説明されているが、特定の変更及び修正が添付の特許請求の範囲の範囲内でなされ得ることは明らかである。したがって、本実施形態は、例示的であって非制限的であると見なされ、発明は、本明細書に記載の詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内で変更され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポストエッチング洗浄工程中に、基板の表面上に形成された金属ゲート構造の周囲からポリマ残渣を除去するための方法であって、
前記金属ゲート構造に及び前記除去されるべきポリマ残渣に関連する複数のプロセスパラメータを決定し、前記ゲート構造は、1又は複数の製造層を含み、前記プロセスパラメータは、金属ゲート構造及び前記ポリマ残渣を解析し、前記ゲート構造の前記1又は複数の製造層の及び前記除去されるべきポリマ残渣の特性を特定することによって得られ、
前記ゲート構造の前記1又は複数の層に及び前記ポリマ残渣に関連する前記複数のプロセスパラメータに基づいて、第1及び第2の洗浄化学剤を特定し、
前記第1及び前記第2の洗浄化学剤に関連する複数の適用パラメータを規定し、前記適用パラメータは、前記基板の前記表面からの前記ポリマ残渣の最適な除去を定めるように確立され、
適用パラメータに基づいて、前記基板の前記表面の一部分に制御された方式で前記第1及び前記第2の洗浄化学剤を順次適用し、前記制御された適用は、前記ゲート構造の前記1又は複数の層の構造的完全性を維持しつつ前記ポリマ残渣を実質的に除去できるように前記基板の前記表面の前記一部分が前記第1及び前記第2の洗浄化学剤に暴露される最適な暴露時間を定めること、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
各ゲート構造層に関連する前記複数のプロセスパラメータは、種類、大きさ、組成のうちの、1つ又は複数を含み、前記ポリマ残渣除去に関連する前記複数のプロセスパラメータは、化学剤の種類、濃度、温度、暴露時間、及び前記金属ゲート構造に関連する1又は複数の層に対する目標除去率を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の洗浄化学剤は過酸化アンモニウム混合(APM)であり、前記第2の洗浄化学剤は希釈されたフッ化水素酸(dHF)である、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1及び前記第2の洗浄化学剤の適用は、1つ又は複数のプロキシミティヘッドを使用して前記第1及び前記第2の洗浄化学剤をメニスカスとして適用することによってなされ、前記メニスカスは、前記ゲート構造の周囲からの前記ポリマ残渣の実質的な除去を可能にするために、前記基板の前記表面上に前記第1及び前記第2の洗浄化学剤のための化学物質封じ込め領域を確立する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記複数の適用パラメータは、化学剤の種類、前記第1及び前記第2の洗浄化学剤の適用の順序、濃度、暴露時間、温度、圧力、前記第1及び前記第2の洗浄化学剤のそれぞれの流量、前記基板の速度、前記メニスカスの幅のうちの、1つ又は複数を含み、前記暴露時間は、前記基板の速度及び前記メニスカスの幅の関数である、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記第1の洗浄化学剤は第1のプロキシミティヘッドを介して適用され、前記第2の洗浄化学剤は第2のプロキシミティヘッドを介して適用され、前記第1及び前記第2のプロキシミティヘッドは、前記基板の前記表面に対する前記第1及び前記第2の洗浄化学剤のそれぞれの前記適用に続いて、すすぎ操作を実施するように構成される、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記第1及び前記第2の洗浄化学剤の適用は、更に、前記第2の洗浄化学剤の前記適用前に前記第1の洗浄化学剤を適用することを含み、前記第2のプロキシミティヘッドは、更に、前記第2の洗浄化学剤の前記適用及びすすぎ操作に続いて乾燥操作を実施するように構成される、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、
前記第1及び前記第2の洗浄化学剤も適用は、更に、前記第1の洗浄化学剤の前記適用前に前記第2の洗浄化学剤を適用することを含み、前記第1のプロキシミティヘッドは、更に、前記第1の洗浄化学剤の前記適用及び前記すすぎ操作に続いて乾燥操作を実施するように構成される、方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、
前記第1及び前記第2の洗浄化学剤の前記適用は、更に、前記基板の前記表面に対する適用後に前記第1及び前記第2の洗浄化学剤を回収することを含み、前記回収された第1及び第2の洗浄化学剤は、その後の洗浄操作において再循環される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記金属ゲート構造は、タングステン、タングステンシリサイド、窒化タングステン、ポリシリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、窒化シリコン、窒化タンタル、又はこれらの組み合わせのうちの、1つ又は複数を含む金属の、1又は複数の層で作成される、方法。
【請求項11】
ポストエッチング洗浄操作中に、基板の表面上に形成された金属ゲート構造の周囲からポリマ残渣を除去するためのシステムであって、
前記基板を受け取り、支持し、搬送するための基板支持装置と、
第1の洗浄化学剤をメニスカスとして前記基板の前記表面の一部分に導入するように構成された第1のプロキシミティヘッドと、
第2の洗浄化学剤をメニスカスとして前記基板の前記表面の前記一部分に導入するように構成された第2のプロキシミティヘッドと、前記第1及び前記第2の洗浄化学剤は、順次導入されることと、
を備え、前記第1及び前記第2のプロキシミティヘッドは、複数の適用パラメータに基づいて、前記基板の前記表面の前記一部分に前記第1及び前記第2の洗浄化学剤を制御された方式で適用することを可能にし、前記制御された適用は、前記ゲート構造の前記1又は複数の層の構造的完全性を維持しつつ前記金属ゲート構造の周囲に形成された前記ポリマ残渣を実質的に除去できるように前記基板の前記表面の前記一部分が前記第1及び前記第2の洗浄化学剤に暴露される最適な暴露時間を定める、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、
前記第1及び前記第2のプロキシミティヘッドのそれぞれは、更に、前記基板の前記表面にすすぎ化学剤を適用するように構成され、前記すすぎ化学剤は、前記基板の前記表面に対する前記第1及び前記第2の洗浄化学剤のそれぞれの前記適用後に適用される、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、
前記第1及び前記第2のプロキシミティヘッドは、対応する洗浄化学剤をその後の洗浄プロセスでの使用のために回収することを可能にするために、前記すすぎ化学剤と前記対応する第1又は第2の洗浄化学剤とを別々のメニスカスとして適用するように構成される、システム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムであって、
前記第1のプロキシミティヘッド又は前記第2のプロキシミティヘッドの一方は、更に、前記すすぎ操作に続いて乾燥操作を実施するように構成され、前記乾燥操作は、前記基板の前記表面に対する前記第1及び前記第2の洗浄化学剤の前記適用の順序に基づいて前記洗浄プロセスの終わりに実施される、システム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムであって、
前記第1及び前記第2のプロキシミティヘッドのぞれぞれは、更に、前記基板の前記表面に対する前記第1の洗浄化学剤、前記第2の洗浄化学剤、前記すすぎ化学剤、及び前記乾燥操作のそれぞれの前記適用を制御するための1つ又は複数の精密制御を含む、システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、更に、
前記第1及び前記第2のプロキシミティヘッドに通信可能にに接続されている計算システムを備え、前記計算システムは、前記精密制御を制御するためのソフトウェアを有する、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−503328(P2012−503328A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527795(P2011−527795)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/004080
【国際公開番号】WO2010/033144
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】