説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置

【課題】メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させた半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置を提供する。
【解決手段】第2層間絶縁膜と第1配線、あるいは、第2配線層とハードマスクをシリコン基板2の表面に形成し、そのシリコン基板2を反応室Sに搬送させ、その反応室Sに、マイクロ波によって励起されたNガスを導入する。そして、供給タンクTに収容されるZr(BHをArガスによってバブリングし、Zr(BHを含むArガスをZr(BHガスとして反応室Sに導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、微細化や多層化の進展に伴い、電流密度の増加によるエレクトロマイクレーション(EM:Electro migration )が深刻化する。高いEM耐性を有する銅(Cu)の多層配線技術は、半導体装置を高集積化させる上で不可欠である。
【0003】
Cu配線の製造工程には、配線形状に応じたトレンチを予め絶縁層に形成し、該トレンチにCuを充填して配線を形成する、いわゆるダマシン(Damascene )法が利用される。さらに、Cu配線の製造工程には、配線用のトレンチにビアホール(Via-Hole)を予め形成し、トレンチとビアホールの双方にCuを充填して配線とビアコンタクトを同時に形成する、いわゆるデュアルダマシン(Dual-Damascene )法が利用される。
【0004】
ダマシンプロセス後のCu配線には、Cu配線とCu配線上の絶縁層(例えば、底誘電率膜:Low-k 膜)との間にSiCやSiNなどのキャップ層が積層される。キャップ層は、Cu配線表面の酸化防止膜、Cuの拡散防止膜、ビアホールのエッチストップ膜として機能する。一方、これらSiCやSiNなどの絶縁膜からなるキャップ層は、Cu配線との間の密着性が弱いために、Cu配線の信頼性を低下させる。また、ビアホール形成時のエッチング工程を複雑にして、半導体装置の生産性を損なう。
【0005】
そこで、Cu多層配線技術では、上記の問題を解消させるため、従来から、Cu配線上のキャップ層に金属材料を適用する提案がなされている。金属材料からなるキャップ層(以下単に、メタルキャップ層という。)は、Cu配線との間の密着性が高いこと、比抵抗値が低いこと、バリア性が高いこと(Low-k 膜からの水分やCu配線からのCu原子に対するバリア性が高いこと)、Cu配線上にのみ形成される選択性を有すること、が要求される。
【0006】
特許文献1は、無電解メッキ法を利用し、Cu配線表面に選択的にコバルトタングステンリン(CoWP)を析出させ、さらに、CoWP層の表面をサリサイド化してメタルキャップ層を形成させる。これにより、メタルキャップ層としての密着性、導電性、バリア性、成膜選択性を満たすことができ、かつ、メタルキャップ層の耐酸化性を向上させることができる。
【0007】
一方、特許文献2は、メタルキャップ層の材料として、窒化ジルコニウムや窒化ジルコニウム化合物などを用い、Cu配線を含む基板の表面全体にメタルキャップ層を形成させ、Cu配線上にのみ選択的に導電性を与える。これによれば、上記の成膜選択性を要することなく、メタルキャップ層としての機能を達成させることができる。
【特許文献1】特開2002−43315号公報
【特許文献2】特開2003−17496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、成膜選択性を得るために無電解メッキ法を利用する。無電解メッキ法では、CoWP層の形状や膜厚が、薬液の濃度や酸化還元雰囲気などの影響を大きく受ける。この結果、CoWPの析出状況が、Cu配線の粗密、表面積、形状などに応じて大きく変動し、隣接するCoWP層の短絡やCu配線の被覆不良を招いていた。
【0009】
また、無電解メッキ法は、成膜選択性を実現させるために、ダマシンプロセス後のCu配線の表面やLow-k 膜の表面など、薬液に浸漬させる表面を極めて清浄な状態にさせる必要がある。そのため、清浄化に伴う表面処理工程の増加を招き、半導体装置の生産性を損なうものであった。
【0010】
一方、特許文献2は、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(TDEAZ)を用いた窒化ジルコニウム(ZrN)に関する製造方法のみを開示し、窒化ジルコニウム化合物に関する製造方法については、その原料や条件などに関し、何ら開示していない。しかも、本願発明者らによる実験によれば、TDEMAを用いたZrNの成膜方法では、パウダー状のZrNや副生成物などを同時に多量に生成し、半導体装置を製造する上で十分なパーティクルレベルを得難いものであった。また、パウダー状のZrNや副生成物が原料ガスの供給系や排気系に堆積し、製造装置の安定稼動を不可能にさせるものであった。
【0011】
本願発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させた半導体装置及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、メタルバリア材料の1つとしてZrNを検討する中で、ホウ素(B)を含有したZrB膜が、ZrN膜と同じく、金属配線に対し良好な密着性と高いバリア性を有し、かつ、その導電性に対し高い下地依存性を有することを見出した。
【0013】
すなわち、本発明者は、ZrB膜が、メタルキャップ層として良好な密着性、高い導電性、高いバリア性を有し、かつ、金属膜上(例えば、Cu配線上)で高い導電性を有し、絶縁膜上(例えば、Low-k 膜上やハードマスク上)で高い絶縁性を有することを見出した。そして、このZrB膜の原料ガスとして、Zr(BHと、励起された窒素ガス(Nガス)とを用いることにより、パーティクルの生成を回避でき、安定した反応系を構築できることを見出した。
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、素子領域を有する半導体基板に絶縁層を積層する絶縁層工程と、前記絶縁層に凹部を形成する凹部工程と、前記凹部に金属層を埋め込む金属層工程と、前記絶縁層の表面と前記金属層の表面とを略同一面に平坦化する平坦化工程と、前記半導体基板を有した反応室に、Zr(BHと励起された窒素ガスとを供給し、平坦化した前記絶縁層の表面及び前記金属層の表面に、少なくともジルコニウム元素と窒素元素とを含むメタルキャップ層を成膜するメタルキャップ層工程と、を備えたことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、ZrB(xは0を含む)からなるメタルキャップ層を、Zr(BHと、励起された窒素ガス(Nガス)とによる反応系で生成させることができる。したがって、メタルキャップ層が、金属層の粗密、表面積、形状などに関わらず、金属層に応じた領域にのみ導電性を発現し、隣接する金属層間の短絡を回避させる。また、メタルキャップ層が、その成膜選択性を必要としない分だけ、複雑な洗浄工程を省くことができる。そして、メタルキャップ層に対し、パーティクルの生成を回避させた反応系を構築させることができる。この結果、メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、前記メタルキャップ層工程が、前記反応室の外側で前記窒素ガスにマイクロ波を照射し、励起された前記窒素ガスを前記反応室に導入することを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、反応室において窒素ガスを励起させる場合に比べ、励起された窒素ガスを、反応に要する量だけ供給させることができる。したがって、Zr(BHと励起された窒素ガスとによる反応系を、より安定させることができる。しかも、窒素ガスの励起に際し、半導体基板の損傷を回避させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、前記メタルキャップ層工程が、前記Zr(BHと励起された前記窒素ガスとを用いたCVD法により前記メタルキャップ層を成膜することを要旨とする。
【0019】
請求項4に記載の発明では、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法であって、前記メタルキャップ層工程は、前記Zr(BHと励起された前記窒素ガスとを用いた原子層蒸着法により前記メタルキャップ層を成膜することを要旨とする。
【0020】
この構成によれば、ZrB(xは0を含む)からなるメタルキャップ層が、単原子層ずつ積み重ねられるため、メタルキャップ層が、下地の情報(すなわち、下地が導電膜であるか否か)を確実に引き継ぐことができる。この結果、メタルキャップ層の導電性に対し、より確実に下地依存性を与えることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であって、前記メタルキャップ層工程が、前記半導体基板を260℃未満、好ましくは210℃〜250℃に加熱して前記メタルキャップ層を成膜することを要旨とする。
【0022】
この構成によれば、メタルキャップ層の導電性に対し、より確実に下地依存性を与えることができ、より熱的に安定したメタルキャップ層を提供することができる。
上記目的を達成するため、請求項6に記載の発明では、チャンバ本体と、前記チャンバ本体の反応室に設けられ半導体基板を載置するステージと、前記反応室にZr(BHを供給する第一供給手段と、前記反応室に励起された窒素ガスを供給する第二供給手段と、前記第一供給手段及び前記第二供給手段を駆動制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第一供給手段と前記第二供給手段を駆動制御して、前記Zr(BHと励起された前記窒素ガスとを前記反応室に供給し、前記半導体基板の表面に少なくともジルコニウム元素と窒素元素を含むメタルキャップ層を成膜することを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、ZrB(xは0を含む)からなるメタルキャップ層を、Zr(BHと、励起された窒素ガス(Nガス)とによる反応系で生成させることができる。したがって、メタルキャップ層が、金属層の粗密、表面積、形状などに関わらず、金属層に応じた領域にのみ導電性を発現し、隣接する金属層間の短絡を回避させる。また、メタルキャップ層が、その成膜選択性を必要としない分だけ、複雑な洗浄工程を省くことができる。そして、メタルキャップ層に対し、パーティクルの生成を回避させた反応系を構築させることができる。この結果、メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の半導体装置の製造装置であって、前記制御手段が、前記第一供給手段と第二供給手段を駆動制御して、前記Zr(BHと励起した前記窒素ガスとを共に前記反応室に供給し、前記半導体基板の表面に少なくともジルコニウム元素と窒素元素を含むメタルキャップ層を成膜することを要旨とする。
【0025】
請求項8に記載の発明では、請求項6に記載の半導体装置の製造装置であって、前記制御手段は、前記第一供給手段と前記第二供給手段を駆動制御して、前記Zr(BHと励起した前記窒素ガスとを交互に前記反応室に供給し、前記半導体基板の表面にZr(BHを吸着させた後、励起した前記窒素ガスによって、吸着させた前記Zr(BH
を少なくともジルコニウム元素と窒素元素を含むメタルキャップ層に改質させることを要旨とする。
【0026】
この構成によれば、ZrB(xは0を含む)からなるメタルキャップ層が、単原子層ずつ積み重ねられるため、メタルキャップ層が、下地の情報(すなわち、下地が導電膜であるか否か)を確実に引き継ぐことができる。この結果、メタルキャップ層の導電性に対し、より確実に下地依存性を与えることができる。また、Zr(BHの吸着反応と改質反応とを交互に行う分だけ、ZrB膜の膜厚や電気的特性の均一性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
上記したように、本発明によれば、メタルキャップ層の信頼性と生産性を向上させた半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図面に従って説明する。まず、本発明を利用して製造した半導体装置について説明する。半導体装置は、例えば、各種RAMや各種ROMを含むメモリ、MPUや汎用ロジックを含むロジックなどである。図1は、半導体装置を説明する要部断面図である。
【0029】
(半導体装置1)
図1において、半導体装置1は、半導体基板を構成するシリコン基板2を備えている。シリコン基板2は、その表面(すなわち、図1に示す上面)に素子分離領域2aと、同素子分離領域2aに囲まれた素子領域2bを有している。素子分離領域2aには、例えば、STI(Shallow Trench Isolation )構造を呈するシリコン酸化膜などの絶縁膜が埋め
込まれている。素子領域2bには、MOSトランジスタ3が形成されている。MOSトランジスタ3は、例えば、素子領域2bに形成されたゲート絶縁膜4と、ゲート絶縁膜4の両側に形成されたソース・ドレイン領域5と、ゲート絶縁膜4に積層されたゲート電極6と、ゲート電極6の外側面を覆うサイドウォール7と、によって構成される。
【0030】
シリコン基板2の表面には、MOSトランジスタ3を覆う第1層間絶縁膜8が積層されている。第1層間絶縁膜8は、例えば、リンを添加したシリコン酸化膜(PSG)やリン及びボロンを添加したシリコン酸化膜(BPSG)などにより構成することができる。第1層間絶縁膜8には、ソース・ドレイン領域5までを貫通する凹部(以下単に、コンタクトホール9という。)が形成されている。コンタクトホール9の内側には、それぞれコンタクトプラグ10が形成されている。コンタクトプラグ10は、コンタクト層/バリア層/プラグ層(例えば、チタンシリサイド/窒化チタン/タングステン)からなる積層構造により構成することができる。
【0031】
第1層間絶縁膜8の表面には、第2層間絶縁膜11が積層されている。第2層間絶縁膜11には、例えば、シリコン酸化膜やリンを添加したシリコン酸化膜などを利用することができる。第2層間絶縁膜11には、コンタクトホール9(あるいは、コンタクトプラグ10)にまで貫通する凹部(以下単に、第1トレンチ12という。)が形成されている。第1トレンチ12の内側には、第1配線13が形成されている。第1配線13は、第1バリア層14/第1配線層15(例えば、窒化タンタルや窒化チタン/銅)からなる積層構造により構成することができる。
【0032】
第2層間絶縁膜11の表面には、第2層間絶縁膜11と第1配線13(すなわち、第1バリア層14及び第1配線層15)とに共通する第1メタルキャップ層16が積層されて
いる。第1メタルキャップ層16は、高い耐酸化性を有した窒化ジルコニウム(ZrN)もしくは窒化ホウ化ジルコニウム(ZrB)を主成分とする層であり、下地の導電性に応じた導電性を発現する。第1メタルキャップ層16は、例えば、第1配線13の表面に対応する領域(図1において濃いドットで示す領域)に数〜十数[μΩ・cm]の比抵抗値を有する。また、第1メタルキャップ層16は、第2層間絶縁膜11の表面に対応する領域(図1において薄いドットで示す領域)に無限大の比抵抗値を有する。
【0033】
ここで、第1配線13の表面に対応する第1メタルキャップ層16の領域を、第1導電領域16aという。また、第2層間絶縁膜11の表面に対応する第1メタルキャップ層16の領域を、第1絶縁領域16bという。
【0034】
第1メタルキャップ層16は、水分に対し高いバリア性を有する。第1メタルキャップ層16は、第1導電領域16aと第1バリア層14とにより第1配線層15を囲い第1配線層15の酸化を阻止する。第1メタルキャップ層16は、第2層間絶縁膜11の表面を覆い、第2層間絶縁膜11の吸湿を阻止する。第1メタルキャップ層16は、第1配線13に対する高い密着性と高いバリア性とにより、第1配線13の金属拡散や第1配線13のマイグレーションを防止する。
【0035】
第1メタルキャップ層16は、第1導電領域16aで高い導電性を有し、かつ、第1絶縁領域16bで高い絶縁性を有する。このため、第1メタルキャップ層16は、第1配線13の粗密、表面積、形状などに関わらず、第1配線13に対応する第1導電領域16aのみで導電性を発現し、かつ、第2層間絶縁膜11に対応する第1絶縁領域16bで絶縁性を発現する。
【0036】
これにより、第1メタルキャップ層16は、隣接する第1配線13間の短絡を確実に回避させる。また、第1メタルキャップ層16は、シリコン基板2の表面全体(すなわち、第2層間絶縁膜11の表面及び第1配線13の表面)に形成されるため、第1配線13ごとの膜厚差を抑制させることができ、膜厚のバラツキに起因した第1配線13の被覆不良を回避させる。
【0037】
第1メタルキャップ層16の表面には、第3層間絶縁膜21とトレンチエッチストッパ22とが積層されている。第3層間絶縁膜21は、有機シリカガラスや多孔質のシリカガラスなどの低誘電率膜(以下単に、Low-k 膜という。)により構成することができる。トレンチエッチストッパ22は、第3層間絶縁膜21に対しエッチングの選択比がとれる膜であり、例えば、シリコン窒化膜やシリコン炭化膜などにより構成することができる。これら第3層間絶縁膜21とトレンチエッチストッパ22とには、第1メタルキャップ層16の第1導電領域16aにまで貫通する共通の凹部(以下単に、ビアホール23という。)が形成されている。
【0038】
トレンチエッチストッパ22の表面には、第4層間絶縁膜31とハードマスク32とが積層されている。第4層間絶縁膜31は、第3層間絶縁膜21と同じく、例えば、各種のLow-k 膜などにより構成することができる。ハードマスク32は、第4層間絶縁膜31との間でエッチングの選択比がとれる膜であり、例えば、シリコン窒化膜やシリコン炭化膜などにより構成することができる。これら第4層間絶縁膜31とハードマスク32には、ビアホール23に連結する共通の凹部(以下単に、第2トレンチ33という。)が貫通形成されている。
【0039】
ビアホール23と第2トレンチ33の内側には、第2配線34が形成されている。第2配線34は、ビアホール23に対応するビアコンタクト34aと、第2トレンチ33に対応する第2配線部34bを有する。第2配線34は、第2バリア層35/第2配線層36
(例えば、窒化タンタルや窒化チタン/銅)からなる積層構造により構成することができる。
【0040】
第2配線34は、第1メタルキャップ層16の第1導電領域16aを介して第1配線13と接続する。第1メタルキャップ層16は、その高い耐酸化性により第1導電領域16aの酸化を防ぎ、第1配線13と第2配線34との間の電気的接続を可能にする。
【0041】
ハードマスク32の表面には、ハードマスク32と第2配線34(すなわち、第2バリア層35及び第2配線層36)とに共通する第2メタルキャップ層37が積層されている。第2メタルキャップ層37は、第1メタルキャップ層16と同じく、ZrB(xは0を含む)を主成分とする層であり、下地の導電性に応じた導電性を有する。第2メタルキャップ層37は、例えば、第2配線34の表面に対応する領域(図1において濃いドットで示す領域)に数〜十数[μΩ・cm]の比抵抗値を有する。また、第2メタルキャップ層37は、ハードマスク32の表面に対応する領域(図1において薄いドットで示す領域)に無限大の比抵抗値を有する。
【0042】
ここで、第2配線34の表面に対応する第2メタルキャップ層37の領域を、第2導電領域37aという。また、ハードマスク32の表面に対応する第2メタルキャップ層37の領域を、第2絶縁領域37bという。
【0043】
第2メタルキャップ層37は、水分に対し高いバリア性を有する。第2メタルキャップ層37は、第2導電領域37aと第2バリア層35とにより第2配線層36を囲い第2配線層36の酸化を阻止する。第2メタルキャップ層37は、ハードマスク32の表面を覆い、第4層間絶縁膜31の吸湿を阻止してlow-k 膜の誘電率を安定させる。第2メタルキャップ層37は、第2配線34に対する高い密着性と高いバリア性とにより、第2配線34からの金属拡散や第2配線34のマイグレーションを防止する。
【0044】
第2メタルキャップ層37は、第2導電領域37aで高い導電性を有し、かつ、第2絶縁領域37bで高い絶縁性を有する。このため、第2メタルキャップ層37は、第2配線34の粗密、表面積、形状などに関わらず、第2配線34に対応する第2導電領域37aのみで導電性を発現し、かつ、ハードマスク32に対応する第2絶縁領域37bで絶縁性を発現する。
【0045】
これにより、第2メタルキャップ層37は、隣接する第2配線34間の短絡を確実に回避させる。また、第2メタルキャップ層37は、シリコン基板2の表面全体(すなわち、ハードマスク32の表面及び第2配線34の表面)に形成されるため、第2配線34ごとの膜厚差を抑制させることができ、膜厚のバラツキに起因した第2配線34の被覆不良を回避させる。
【0046】
(半導体装置の製造装置)
次に、上記半導体装置の製造装置としての成膜装置40について説明する。
図2において、成膜装置40は、ロードロックチャンバ40Lと、同ロードロックチャンバ40Lに連結されたコアチャンバ40Cと、同コアチャンバ40Cに連結された4つの成膜チャンバ40Dと、を有している。ロードロックチャンバ40Lと、コアチャンバ40Cと、各成膜チャンバ40Dは、それぞれ解除可能に連通して共通する真空系を形成可能にする。
【0047】
ロードロックチャンバ40Lは、複数のシリコン基板2を減圧空間に収容し、シリコン基板2の成膜処理を開始するとき、複数のシリコン基板2をそれぞれ成膜装置40の内部に搬入する。ロードロックチャンバ40Lは、シリコン基板2の成膜処理を終了するとき
、成膜処理後のシリコン基板2を収容して大気開放し成膜装置40の外部に搬出する。
【0048】
コアチャンバ40Cは、シリコン基板2の成膜処理を開始するとき、成膜処理前のシリコン基板2をロードロックチャンバ40Lから搬入し各成膜チャンバ40Dに搬送する。コアチャンバ40Cは、シリコン基板2の成膜処理を終了するとき、成膜処理後のシリコン基板2を各成膜チャンバ40Dから搬入しロードロックチャンバ40Lに搬送する。
【0049】
各成膜チャンバ40Dは、それぞれCVD法あるいは原子層蒸着法(ALD:Atomic Layer Deposition )を用いてZrB膜を成膜するチャンバである。各成膜チャンバ40Dは、それぞれシリコン基板2の成膜処理を実行するとき、シリコン基板2をコアチャンバ40Cから搬入し、シリコン基板2の表面にZrB膜、すなわち上記第1及び第2メタルキャップ層16,37を成膜する。
【0050】
図3において、成膜チャンバ40Dは、その上部を開口したチャンバ本体41と、同チャンバ本体41の上部に配設されて上部開口を開閉可能にするチャンバリッド42と、を有する。成膜チャンバ40Dは、これらチャンバ本体41とチャンバリッド42とに囲まれた内部空間(以下単に、反応室Sという。)を有する。
【0051】
チャンバ本体41には、シリコン基板2を載置する基板ステージ43が配設されている。基板ステージ43は、抵抗加熱ヒータを搭載したステージである。基板ステージ43は、シリコン基板2を載置するとき、シリコン基板2を所定の温度(例えば、200[℃]〜240[℃])に昇温させる。基板ステージ43の下側には、昇降機構44が連結されている。昇降機構44は、基板ステージ43を上下方向に昇降しシリコン基板2の搬入や搬出を可能にする。
【0052】
チャンバ本体41の一側には、排気ポートPDを介し排気ポンプ45が接続されている。排気ポンプ45は、ターボ分子ポンプやドライポンプなどの各種のポンプにより構成され、反応室Sの圧力を所定の圧力(例えば、1[Pa]〜1000[Pa])にまで減圧する。
【0053】
チャンバリッド42の下側には、反応室Sにガスを導入するためのシャワーヘッド46が配設されている。シャワーヘッド46は、複数の第一ガス供給孔H1と、第一ガス供給孔H1から独立する複数の第二ガス供給孔H2と、を備えている。シャワーヘッド46は、各第一ガス供給孔H1から反応室Sに向けてZr(BHガスを導入する。また、シャワーヘッド46は、各第二ガス供給孔H2から反応室Sに窒素ガスを導入する。
【0054】
チャンバリッド42の上部一側には、第一ガスポートP1が設けられている。第一ガスポートP1は、チャンバリッド42の内部を通してシャワーヘッド46の各第一ガス供給孔H1と連通している。第一ガスポートP1は、チャンバリッド42の外部において供給配管及び供給バルブを介し供給タンクTに連結されている。供給タンクTは、0℃の保温下でZr(BHを収容するタンクであって、マスフローコントローラMC1に連結されている。
【0055】
マスフローコントローラMC1は、キャリアガス(例えば、アルゴン(Ar))の供給系に連結され、供給タンクTの内部に所定の流量のArを供給する。マスフローコントローラMC1は、例えば、10[sccm ]〜500[sccm ]の流量範囲でArの供給量を制御する。マスフローコントローラMC1がキャリアガスを供給するとき、供給タンクTは、収容するZr(BHをバブリングさせて、Zr(BHを含むキャリアガス(以下単に、Zr(BHガスという。)を第一ガスポートP1に供給する。Zr(BHガスは、第一ガスポートP1を通して各第一ガス供給孔H1から反応室Sに導
入される。
【0056】
チャンバリッド42の上端部には、第二ガスポートP2が設けられている。第二ガスポートP2は、チャンバリッド42の内部を通してシャワーヘッド46の各第二ガス供給孔H2と連通している。第二ガスポートP2は、チャンバリッド42の外部において供給配管及び供給バルブを介しマスフローコントローラMC2、マスフローコントローラMC3、及びマスフローコントローラMC4と連結している。
【0057】
各マスフローコントローラMC2,MC3,MC4は、それぞれ水素(H)ガス、アンモニア(NH)ガス、窒素(N)ガスの供給系に連結され、第二ガスポートP2に所定の流量のH、NH、Nを供給する。マスフローコントローラMC2,MC3,MC4は、例えば、それぞれ10[sccm ]〜500[sccm ]の流量範囲でH、NH、Nの供給量を制御する。各マスフローコントローラMC2,MC3,MC4がそれぞれH、NH、Nを供給するとき、H、NH、Nは、それぞれ第二ガスポートP2を通して各第二ガス供給孔H2から反応室Sに導入され、基板ステージ43に載置されたシリコン基板2の表面に到達する。
【0058】
チャンバリッド42の上部であって、第二ガスポートP2と第二ガス供給孔H2との間の流路には、照射管47が設けられている。照射管47は、石英管あるいはアルミナ管からなる耐熱性の円筒管であって、第二ガスポートP2に供給されたガスを各第二ガス供給孔H2に向けて導出する。
【0059】
照射管47の外側であって、照射管47の長手方向の途中には、マイクロ波電源FGに駆動されるマイクロ波源48と、マイクロ波源48に連結されて照射管47に向かって延びる導波管49と、が配設されている。
【0060】
マイクロ波源48は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波発振器(すなわち、マグネトロン)であって、マイクロ波電源FGの駆動電力を受けて所定の出力範囲(例えば、0.1〜3.0[kW])のマイクロ波を間欠的に出力させる。導波管49は、マイクロ波源48が発振するマイクロ波を導波管49の内部に伝播させて照射管47の内部に導入する。導波管49は、マイクロ波源48がマイクロ波を発振するとき、照射管47を通過するガスにマイクロ波を照射して励起させ、活性化させる(すなわち、プラズマ化させる)。
【0061】
第二ガスポートP2から照射管47に導入されるガスは、各第二ガス供給孔H2から反応室Sに導入され、マイクロ波源48がマイクロ波を発振するときに、励起した状態で導入される。反応室Sに滞在するZr(BHは、励起されたNガスと反応してシリコン基板2の表面にZrB膜を形成する。
【0062】
次に、上記成膜装置40の電気的構成について説明する。
図4において、制御部51は、成膜装置40に各種の処理動作、例えばシリコン基板2の搬送処理動作やシリコン基板2の成膜処理動作などを実行させるものである。制御部51は、各種の演算処理を実行するCPUと、各種のデータや各種の制御プログラムを格納する記憶部51Aと、各種の処理工程ごとにプロセス時間を計時するタイマ51Bと、を有する。制御部51は、例えば、記憶部51Aが格納する成膜処理プログラムを読み出し、タイマ51Bが計時するプロセス時間と、読み出した成膜処理プログラムと、に従って成膜処理動作を実行させる。
【0063】
制御部51には、入出力部52が接続されている。入出力部52は、起動スイッチや停止スイッチなどの各種操作スイッチと、液晶ディスプレイなどの各種表示装置とを有する
。入出力部52は、各処理動作に利用するデータを制御部51に入力し、成膜装置40の処理状況に関するデータを出力する。入出力部52は、例えば、成膜時の各種のパタメータ(プロセス時間、ガス流量、マイクロ波電源FGの出力値など)に関するデータ(以下単に、成膜条件データIdという。)を制御部51に入力する。制御部51は、入出力部52から入力される成膜条件データIdを受信し、成膜条件データIdに対応する各種の駆動制御信号を生成し、成膜条件データIdに対応する成膜条件の下で成膜処理動作を実行させる。
【0064】
制御部51には、排気系を駆動制御するための排気系駆動回路53が接続されている。制御部51は、排気系駆動回路53に対応する駆動制御信号を排気系駆動回路53に出力する。排気系駆動回路53は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、チャンバ内(例えば、反応室S)を所定の圧力に減圧させるための排気系(例えば、排気ポンプ45)を駆動させる。
【0065】
制御部51には、搬送系駆動回路54が接続されている。制御部51は、搬送系駆動回路54に対応する駆動制御信号を搬送系駆動回路54に出力する。搬送系駆動回路54は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、シリコン基板2を搬送させるための搬送系(例えば、昇降機構44)を駆動させる。また、搬送系駆動回路54は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、シリコン基板2を昇温させるための基板ステージ43のヒータを駆動させる。
【0066】
制御部51には、マスフローコントローラ駆動回路55が接続されている。制御部51は、マスフローコントローラ駆動回路55に対応する駆動制御信号をマスフローコントローラ駆動回路55に出力する。マスフローコントローラ駆動回路55は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、各ガスを供給させるための各マスフローコントローラMC1〜MC4をそれぞれ駆動させる。
【0067】
制御部51には、マイクロ波電源駆動回路56が接続されている。制御部51は、マイクロ波電源駆動回路56に対応する駆動制御信号をマイクロ波電源駆動回路56に出力する。マイクロ波電源駆動回路56は、制御部51からの駆動制御信号に応答して、マイクロ波を発振させるためのマイクロ波電源FGを駆動させる。
【0068】
(半導体装置の製造方法)
次に、上記成膜装置40を用いた半導体装置1の製造方法について説明する。
まず、図1に示すように、シリコン基板2の表面に、素子分離領域2aと、素子領域2bと、を区画形成する。例えば、公知のSTIプロセスを用いて、素子分離領域2aにシリコン酸化膜を埋め込む。また、公知のMOSプロセスを用いて、ゲート絶縁膜4、ソース・ドレイン領域5、ゲート電極6、サイドウォール7などを形成し、素子領域2bにMOSトランジスタ3を形成する。
【0069】
MOSトランジスタ3を形成すると、シリコン基板2の表面に第1層間絶縁膜8を積層し、コンタクトプラグ10を形成する。例えば、CVD技術を用いて、シリコン基板2の表面にMOSトランジスタ3を覆うシリコン酸化膜を積層して第1層間絶縁膜8を形成し、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いて、第1層間絶縁膜8にコンタクトホール9を形成する。次いで、スパッタリング技術又はCVD技術を用いて、コンタクトホール9にチタンシリサイド/窒化チタン/タングステンを埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Polishing )技術あるいはエッチバック技術を用いて平坦化し、コンタクトプラグ10を形成する。
【0070】
コンタクトプラグ10を形成すると、第1層間絶縁膜8の表面に第2層間絶縁膜11を
積層し、第2層間絶縁膜11に第1トレンチ12を形成する。すなわち、絶縁層工程を実行し、続いて凹部工程を実行する。例えば、絶縁層工程は、CVD技術を用いて、第1層間絶縁膜8の表面にシリコン酸化膜を積層して第2層間絶縁膜11を形成し、凹部工程は、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いて、第1トレンチ12を形成する。
【0071】
第1トレンチ12を形成すると、第1トレンチ12内を含む第2層間絶縁膜11の表面に第1配線13を積層し、第2層間絶縁膜11の表面と第1配線13の表面を平坦化させる。すなわち、金属層工程を実行し、続いて平坦化工程を実行する。例えば、金属層工程は、スパッタリング技術を用いて、第1トレンチ12の内側面を含むシリコン基板2の全体に窒化チタンを積層して第1バリア層14を形成する。次いで、無電解メッキ技術あるいはCVD技術を用いて、第1バリア層14の表面に銅のメッキシード層を形成し、電解メッキ技術を用いて、第1トレンチ12の内側を含むシリコン基板2の全体に銅を析出させて第1配線層15を形成する。平坦化工程は、CMP技術を用いて、第1バリア層14及び第1配線層15を研磨し、第1バリア層14及び第1配線層15の表面を第2層間絶縁膜11の表面と略面一にして第1配線13を形成する。
【0072】
第1配線13を形成すると、第2層間絶縁膜11と第1配線13を表面に有したシリコン基板2を成膜装置40のロードロックチャンバ40Lにセットし、メタルキャップ層工程を実行する。
【0073】
すなわち、成膜装置40の制御部51は、入出力部52から成膜条件データIdを受信し、排気系駆動回路53を介して排気ポンプ45を駆動し、シリコン基板2を収容するための反応室Sを予め所定の到達圧力(例えば、1[Pa])にまで減圧させる。制御部51は、反応室Sを減圧させると、搬送系駆動回路54を介して搬送系を駆動しロードロックチャンバ40Lのシリコン基板2を成膜チャンバ40Dまで搬送させる。
【0074】
制御部51は、搬送系駆動回路54を介して昇降機構44を駆動し基板ステージ43にシリコン基板2を載置させ、タイマ51Bを用いたプロセス時間の計時動作を開始し、同シリコン基板2を所定の温度(例えば、240[℃])にまで昇温させる。この際、図5に示すように、制御部51は、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC2を駆動させ、反応室Sに所定の流量のHガスを供給させる。また、制御部51は、排気系駆動回路53を介して排気系を駆動させ、反応室Sの圧力を所定の圧力値に維持させる。これによって、シリコン基板2の昇温を促進させることができ、また、シリコン基板2の温度が250[℃]以上であれば、銅膜(第1配線13)の表面を還元させる。また、マイクロ波で励起した水素(H)を用いる場合、シリコン基板2の温度が130[℃]以上であれば、銅膜表面の還元効果を得ることができる。
【0075】
制御部51は、タイマ51Bが計時するプロセス時間が所定の時間になると、排気系駆動回路53、マスフローコントローラ駆動回路55及びマイクロ波電源駆動回路56を介して、成膜条件データIdに応じた各処理工程を実行させる。
【0076】
すなわち、制御部51は、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC2にHガスの供給を停止させる。次いで、制御部51は、排気系駆動回路53を介して排気系を駆動させ、成膜条件下における反応室Sの圧力が所定の圧力値になるように、予め排気系の排気能力を設定させる。
【0077】
制御部51は、排気系をセットさせると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC4を駆動させ、反応室Sに所定の流量のNガスを供給させる。また、制御部51は、マイクロ波電源駆動回路56を介してマイクロ波電源FGを駆動させ、反応室Sに励起されたNガスを供給させる。
【0078】
制御部51は、励起されたNガスの供給を開始させると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC1を駆動させ、反応室Sに所定の流量のZr(BHガスを供給させる。これによって、制御部51は、Zr(BHと励起されたNガスとの気相反応を開始させ、シリコン基板2の表面全体にZrB膜を主成分とする第1メタルキャップ層16を堆積させる。
【0079】
堆積されるZrB膜は、第1配線13の粗密、表面積、形状などに関わらず、第1配線13上の領域にのみ導電性を発現し、隣接する配線間の短絡を回避させる。また、ZrB膜は、高い耐酸化性と高いバリア性を有するため、製造過程におけるZrB膜自身の酸化、第1配線13の酸化、第2層間絶縁膜11の吸湿などを阻止する。また、ZrB膜は、第1配線13との間に高い密着性を有するため、第1メタルキャップ層16の膜剥がれといった機械的損傷を回避させる。しかも、このZrB膜は、上記成膜チャンバ40Dによりシリコン基板2の全体に成膜される。そのため、第1配線13ごとにメタルキャップ層を形成させる場合に比べ、このZrB膜は、第1配線13間の膜厚差を抑制し、膜厚のバラツキに起因した第1配線13の被覆不良を回避させる。
【0080】
そして、ZrB膜の原料ガスとして、Zr(BHと、励起された窒素ガス(Nガス)とを用いることにより安定した反応系を与えることができ、反応室Sの内部、供給配管、排気配管など、反応系の各所にわたりパーティクルの生成を抑制させることができる。しかも、Nガス雰囲気下におけるZr(BHの熱分解反応に比べ、励起させたNガスを用いる分だけ、より多くの窒素元素をZrB膜の膜中に含有させることができる。また、水素元素を含まない窒素系ガス(Nガス)を用いる分だけ、励起されたNガスの寿命を長くさせ、Zr−N結合の生成を促進させることができる。この結果、ZrB膜の抵抗率の下地選択性を、より確実に発現させことができる。
【0081】
制御部51は、タイマ51Bが計時するプロセス時間が所定の時間になると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC1にZr(BHガスの供給を停止させる。次いで、制御部51は、マイクロ波電源駆動回路56及びマスフローコントローラ駆動回路55を介し、マイクロ波の発振を停止させ、Nガスの供給を停止させる。そして、制御部51は、搬送系駆動回路54を介して搬送系を駆動し、第1メタルキャップ層16を有したシリコン基板2をロードロックチャンバ40Lまで搬送し、成膜装置40から搬出させる。
【0082】
第1メタルキャップ層16を形成すると、第1メタルキャップ層16の表面に第3層間絶縁膜21、トレンチエッチストッパ22、第4層間絶縁膜31、ハードマスク32を順に積層する。すなわち、絶縁層工程を実行する。
【0083】
例えば、絶縁層工程は、CVD技術又はスピンコート技術を用いて、第1メタルキャップ層16の表面に有機シリカガラスを積層して第3層間絶縁膜21を形成し、CVD技術を用いて、第3層間絶縁膜21の表面にシリコン炭化膜を積層してトレンチエッチストッパ22を形成する。また、CVD技術あるいはスピンコート技術を用いて、トレンチエッチストッパ22の表面に有機シリカガラスを積層して第4層間絶縁膜31を形成し、CVD技術を用いて、第4層間絶縁膜31の表面にシリコン炭化膜を積層してハードマスク32を形成する。
【0084】
ハードマスク32を形成すると、第3層間絶縁膜21、トレンチエッチストッパ22、第4層間絶縁膜31、及びハードマスク32に、ビアホール23及び第2トレンチ33を形成する。すなわち、凹部工程を実行する。例えば、凹部工程は、ビアホール23を先行
して形成するビアファースト法を利用し、ビアホール23及び第2トレンチ33を形成する。
【0085】
ビアホール23と第2トレンチ33を形成すると、ビアホール23内及び第2トレンチ33内を含む第4層間絶縁膜31の表面に第2配線34を積層し、第4層間絶縁膜31の表面と第2配線34の表面を平坦化させる。すなわち、金属層工程を実行し、続いて平坦化工程を実行する。例えば、金属層工程は、スパッタリング技術を用いて、ビアホール23と第2トレンチ33の内側面を含むシリコン基板2の全体に窒化チタンを積層して第2バリア層35を形成する。次いで、無電解メッキ技術あるいはCVD技術を用いて、第2バリア層35の表面に銅のメッキシード層を形成し、電解メッキ技術を用いて、ビアホール23及び第2トレンチ33の内側を含むシリコン基板2の全体に銅を析出させて第2配線層36を形成する。平坦化工程は、CMP技術を用いて、第2バリア層35及び第2配線層36を研磨し、第2バリア層35及び第2配線層36の表面をハードマスク32の表面と略面一にして第2配線34を形成する。
【0086】
第2配線34を形成すると、シリコン基板2を上記成膜装置40に搬送し、ハードマスク32及び第2配線34の表面に第2メタルキャップ層37を形成する。すなわち、上記第1メタルキャップ層16と同じく、シリコン基板2の表面全体(ハードマスク32の表面と第2配線34の表面)に、共通するZrB膜を積層し第2メタルキャップ層37を形成する(メタルキャップ層工程を実行する)。
【0087】
第2メタルキャップ層37は、第1メタルキャップ層16と同じく、高い耐酸化性と高いバリア性を有するため、製造過程におけるZrB膜自身の酸化、第2配線34の酸化、第4層間絶縁膜31の吸湿などを阻止する。また、ZrB膜は、第2配線34との間に高い密着性を有するため、第2メタルキャップ層37の膜剥がれといった機械的損傷を回避させる。しかも、このZrB膜は、上記成膜チャンバ40Dによりシリコン基板2の全体に成膜される。そのため、第2配線34ごとにメタルキャップ層を形成させる場合に比べ、このZrB膜は、第2配線34間の膜厚差を抑制し、膜厚のバラツキに起因した第2配線34の被覆不良を回避させる。
【0088】
そして、第2メタルキャップ層37の原料ガスとして、Zr(BHと、励起された窒素ガス(Nガス)とを用いることにより安定した反応系を与えることができ、反応室Sの内部、供給配管、排気配管など、反応系の各所にわたりパーティクルの生成を抑制させることができる。しかも、Nガス雰囲気下におけるZr(BHの熱分解反応に比べ、励起させたNガスを用いる分だけ、より多くの窒素元素をZrB膜の膜中に含有させることができる。また、水素元素を含まない窒素系ガス(Nガス)を用いる分だけ、励起されたNガスの寿命を長くさせ、Zr−N結合の生成を促進させることができる。この結果、ZrB膜の抵抗率の下地選択性を、より確実に発現させることができる。
【0089】
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明の効果を説明する。表1〜表4は、それぞれ上記成膜装置40を用いて形成した各種の条件におけるZrB膜の導電性を示す。また、図6〜図9は、それぞれ表1〜表4における実施例及び比較例の元素濃度を示す。なお、実施例の膜厚データは、それぞれシリコン基板の中心付近を碧開し、走査電子顕微鏡(SEM)を利用して計測した値である。
【0090】
表1においては、銅膜を表面に有したシリコン基板を用い、Zr(BHガスが100[sccm ]、Nガスが100[sccm ]、成膜時間が2[min ]、成膜温度が240[℃]、成膜時圧力が700[Pa ]、マイクロ波出力が500[W]となる条件の下で
成膜を実行し、実施例1のZrB膜を得た。また、シリコン酸化膜を表面に有したシリコン基板を用い、実施例1と同じ条件の下で成膜を実行し、実施例2のZrB膜を得た。この際、ZrB膜の膜中と膜上のパーティクル数を計測し、パーティクルの増加分が数個レベルであることを確認した。また、反応室Sの内壁、供給配管の内部、排気配管の内部を目視確認し、パウダー状の副生成物が生成されていないことを確認した。
【0091】
また、表1においては、実施例2のNガスをNHガスに変更し、その他の条件を同じくして比較例1のZrB膜を得た。また、実施例2のNガスをNガスとHガスの混合ガスに変更し、その他の条件を同じくして比較例2のZrB膜を得た。この際、ZrB膜の膜中と膜上のパーティクル数を計測し、パーティクルの増加分が数個レベルであることを確認した。また、反応室Sの内壁、供給配管の内部、排気配管の内部を目視確認し、パウダー状の副生成物が生成されていないことを確認した。
【0092】
そして、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2のZrB膜に対し、それぞれ膜厚とシート抵抗値を計測した。また、実施例2、比較例1、比較例2のZrB膜に対し、オージェ電子分光分析法(AES:Auger Electron Spectroscopy )を用いて膜中の元素濃度を計測した。膜厚とシート抵抗値の結果を表1に示し、実施例2、比較例1、比較例2の元素濃度の測定結果を、それぞれ図6、図7、図8に示す。なお、図6〜図9において、横軸は、サンプル(ZrB膜/シリコン酸化膜)のスパッタ時間、すなわちZrB膜の膜厚を示し、縦軸は、対象元素の濃度、すなわちホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O),シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)の元素濃度を示す。
【0093】
【表1】

表1において、“∞”は、対応するZrB膜のシート抵抗値が計測した49点の全てにおいて検出限界を超えた値(5×10[Ω/□]以上)であることを示す。
【0094】
表1において、実施例1のZrB膜は、そのシート抵抗値が約6[Ω/□]を示し、銅膜(導電膜)に積層された状態で、高い導電性を示すことが分かる。実施例2のZrB膜は、そのシート抵抗値が“∞”を示し、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層された状態で、高い絶縁性を示すことが分かる。すなわち、実施例1及び実施例2の成膜条件によって得られるZrB膜は、その抵抗率に対して大きな下地選択性を有することが分かる。
【0095】
一方、比較例1と比較例2は、シリコン酸化膜上に成膜されているにも関わらず、それぞれ実施例2よりも低いシート抵抗値を示し、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層された状態で完全な絶縁性を発現していないことが分かる。
【0096】
図6において、実施例2は、そのZrB膜にホウ素元素(B)の濃度よりも高い濃度の窒素元素(N)を含み、そのバルク中に40%を超える窒素元素を含んでいることが分かる。一方、図7と図8において、比較例1と比較例2は、それぞれホウ素元素(B)の濃度よりも明らかに低い濃度の窒素元素(N)を含み、その濃度が20%にも満たないことが分かる。
【0097】
これらの結果、比較例1のNHガスや比較例2のHガス、すなわち、プロセスガス中の水素元素は、ZrB膜に取り込まれる窒素元素の濃度を低下させ、ZrB膜に対し、その絶縁性の発現を阻害させる要因となる。そのため、水素元素を含まない窒素添加ガス、すなわち、励起されたNガスとZr(BHの気相反応系は、ZrB膜の抵抗率の下地選択性を、より確実なものにさせることができる。また、Zr(BHと励起された窒素ガス(Nガス)の気相反応系は、そのパーティクルの増加要因が認められないため、ZrB膜の反応系として十分に安定した系を提供させることができる。
【0098】
表2においては、実施例2の成膜時間を延長し、その他の条件を同じくして比較例3と比較例4のZrB膜を得た。また、表3においては、実施例2の成膜温度を変更し、その他の条件を同じくして比較例5と比較例6と比較例7のZrB膜を得た。また、表4においては、実施例2の成膜圧力、マイクロ波出力を変更し、その他の条件を同じくして比較例8と比較例9と比較例10のZrB膜を得た。この際、各ZrB膜の膜中と膜上のパーティクル数を計測し、パーティクルの増加分が数個レベルであることを確認した。また、反応室Sの内壁、供給配管の内部、排気配管の内部を目視確認し、パウダー状の副生成物が生成されていないことを確認した。
【0099】
そして、比較例3〜10のZrB膜に対し、それぞれ膜厚とシート抵抗値を計測し、また、比較例7のZrB膜に対し、AESを用いて膜中の元素濃度を計測した。比較例3〜10の膜厚とシート抵抗値の結果をそれぞれ表2〜表4に示し、比較例7の元素濃度の測定結果を図9に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

表2において、比較例3と比較例4は、実施例2と同じく、ZrB膜のシート抵抗値が“∞”を示し、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層された状態で、高い絶縁性を示すことが分かる。したがって、Zr(BHと励起された窒素ガス(Nガス)の反応系は、その成膜時間に大きく依存することなく、ZrB膜の抵抗率の下地選択性を発現させることができ、その成膜条件の範囲を拡張させることができる。
【0103】
表3において、比較例5と比較例6は、実施例2と同じく、ZrB膜のシート抵抗値が“∞”を示し、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層された状態で、高い絶縁性を示すことが分かる。一方、比較例7は、シリコン酸化膜上に成膜されているにも関わらず、実施例2よりも低いシート抵抗値を示し、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層された状態で完全な絶縁性を発現していないことが分かる。
【0104】
また、図9において、比較例7は、それぞれホウ素元素(B)の濃度よりも低い濃度の窒素元素(N)を含み、その濃度が30%に満たないことが分かる。すなわち、過剰に昇温させた条件下の成膜は、ZrB膜が取り込む窒素元素の濃度を低下させ、ZrB膜の絶縁性の発現を阻害させる要因となる。
【0105】
したがって、ZrB膜が十分な量の窒素元素を取り込む温度であって、かつ、ZrB膜に含まれる各種の結合が熱エネルギーによって安定化される温度、すなわち、260℃未満の温度範囲、好ましくは180℃〜250℃の温度条件は、ZrB膜の抵抗率の下地選択性を、より確実なものとさせ、かつ、ZrB膜の熱的安定性を確保させることができる。
【0106】
表4において、比較例8は、実施例2と同じく、ZrB膜のシート抵抗値が“∞”を示し、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層された状態で、高い絶縁性を示すことが分かる。すなわち、実施例1及び実施例2の成膜条件によって得られるZrB膜は、その成膜圧力が低くなる場合であっても、抵抗率の下地選択性を発現させる。
【0107】
したがって、Zr(BHと励起された窒素ガス(Nガス)の反応系は、下地選択性を有したZrB膜を形成する上で、広い圧力範囲を確保させることができ、その成膜条件の範囲を拡張させることができる。
【0108】
表4において、比較例9は、実施例2と同じく、ZrB膜のシート抵抗値が“∞”を示し、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層された状態で、高い絶縁性を示すことが分かる。一方、比較例10は、シリコン酸化膜上に成膜されているにも関わらず、実施例2よりも低いシート抵抗値を示し、シリコン酸化膜(絶縁膜)に積層された状態で完全な絶縁性を発現していないことが分かる。
【0109】
したがって、励起された窒素ガス(Nガス)を用いることにより、ZrB膜に取り込まれる窒素元素の濃度を増加させ、ZrB膜に対し、その絶縁性の発現を誘起させることができる。
【0110】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記実施形態では、第2層間絶縁膜11と第1配線13、あるいは、第2配線層36とハードマスク32をシリコン基板2の表面に形成し、そのシリコン基板2を反応室Sに搬送させ、その反応室Sに、マイクロ波によって励起されたNガスを導入する。そして、供給タンクTに収容されるZr(BHをArガスによってバブリングし、Zr(BHを含むArガスをZr(BHガスとして反応室Sに導入する。
【0111】
したがって、ZrB(xは0を含む)からなる第1及び第2メタルキャップ層16,37を、Zr(BHと、励起された窒素ガス(Nガス)とによる反応系によって生成させることができる。この結果、第1及び第2メタルキャップ層16,37が、下地の金属層の粗密、表面積、形状などに関わらず、金属層に応じた領域にのみ導電性を発現し、隣接する金属層間の短絡を回避させる。また、第1及び第2メタルキャップ層16,37が、その成膜選択性を必要としない分だけ、複雑な洗浄工程を省くことができる。そして、第1及び第2メタルキャップ層16,37に対し、パーティクルの生成を回避させた反応系を構築させることができる。よって、第1及び第2メタルキャップ層16,37の信頼性と生産性を向上させることができる。
【0112】
(2)上記実施形態では、反応室Sの外側でNガスにマイクロ波を照射し、励起されたNガスを反応室Sの内部に導入する。したがって、反応室SにおいてNガスを励起させる場合に比べ、励起されたNガスを、反応に要する量だけ供給させることができる
。この結果、Zr(BHと励起されたNガスとによる反応系を、より安定させることができる。しかも、Nガスの励起に際し、シリコン基板2の損傷を回避させることができる。
【0113】
(3)上記実施形態では、ZrBを成膜するときに、シリコン基板2を210℃〜240℃に加熱する。したがって、第1及び第2メタルキャップ層16,37の導電性に対し、より確実に下地依存性を発現させることができ、かつ、熱的に安定したZrB膜を形成させることができる。
【0114】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態を図10〜図12に従って説明する。第二実施形態は、第一実施形態におけるZrB膜の成膜条件をCVD法からALD法に変更したものである。そのため、以下では、ZrB膜の成膜条件について説明する。
【0115】
成膜装置40の制御部51は、第一実施形態と同じく、入出力部52から成膜条件データIdを受信する。制御部51は、排気系駆動回路53を介して排気ポンプ45を駆動し反応室Sを所定の到達圧力(例えば、1[Pa])まで減圧させる。制御部51は、反応室Sを減圧させると、搬送系駆動回路54を介して搬送系を駆動しロードロックチャンバ40Lのシリコン基板2を成膜チャンバ40Dまで搬送させる。
【0116】
制御部51は、シリコン基板2を所定の温度に昇温させると、排気系駆動回路53、マスフローコントローラ駆動回路55及びマイクロ波電源駆動回路56を介して、成膜条件データIdに応じた各処理工程を実行させる。
【0117】
すなわち、図10において、制御部51は、成膜プロセスを開始させると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC1を駆動し、反応室Sに所定の流量のZr(BHガスを導入させ、吸着工程を開始させる。例えば、制御部51は、マスフローコントローラMC1に100[sccm ]のArを供給させ、Zr(B
を含むArガス、すなわちZr(BHガスを反応室S導入させる。
【0118】
ここで、反応室SにZr(BHガスを導入している期間を、吸着期間Taという。吸着期間Taは、予め試験等に基づいて設定され、Zr(BH(吸着分子MA)がシリコン基板2の表面の全体にわたり一分子層を形成させる期間(例えば、1秒〜5秒)に設定されている。
【0119】
図11において、反応室Sに導入されるZr(BH(吸着分子MA)は、シリコン基板2の表面との間の強い相互作用により同表面に吸着する。すなわち、Zr(BHは、シリコン基板2の表面に対し物理的又は化学的に吸着する吸着分子MAとして機能し、同表面の全体にわたり単分子層を形成する。
【0120】
図10において、制御部51は、吸着分子MAを導入させてプロセス時間が吸着期間Taだけ経過すると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC1にZr(BHガスの供給を停止させ、吸着工程を終了させる。
【0121】
制御部51は、吸着工程を終了させると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC4を駆動させ、反応室Sに所定の流量のNガスを供給させる。また、制御部51は、マイクロ波電源駆動回路56を介してマイクロ波電源FGを駆動し、反応室Sに励起されたNガスを供給させ、改質工程を開始させる。
【0122】
ここで、マイクロ波源48にマイクロ波を発振させている期間を、改質期間Trという
。改質期間Trは、予め試験等に基づいて設定され、吸着分子MAの単分子層が窒化されてZrBの単分子膜を生成する期間(例えば、1秒〜10秒)に設定されている。
【0123】
図12において、励起されたNガス(改質ガスR)は、Zr(BH(吸着分子MA)分解反応を促進させ、シリコン基板2の表面に吸着した全ての吸着分子MAを利用して分解生成物と副生成物BP(例えば、ホウ化水素)とを生成し、分解生成物の窒化反応を促進させて窒化物MPを生成する。すなわち、励起されたNガス(改質ガスR)は、シリコン基板2の表面全体にわたりZrBの単分子膜を生成する。
【0124】
図10において、制御部51は、マイクロ波を発振させてプロセス時間が改質期間Trだけ経過すると、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC4にNガスの供給を停止させる。制御部51は、マイクロ波電源駆動回路56を介してマイクロ波の発振を停止させる。すなわち、改質工程を終了させる。
【0125】
制御部51は、改質工程を終了させると、再び、マスフローコントローラ駆動回路55を介してマスフローコントローラMC1を駆動し、所定の流量の吸着分子MAを反応室Sに導入させる。すなわち、再び、吸着工程を開始させる。以後同様に、制御部51は、上記吸着工程と上記改質工程とを交互に繰り返し、窒化物MPからなる単分子層MLを順に積層させる。
【0126】
これによって、成膜装置40は、ZrBを主成分としたメタルキャップ層16,37を単原子層ずつ積み重ねて形成させることができる。そのため、メタルキャップ層16,37が、下地の情報(すなわち、下地が導電膜であるか否か)を確実に引き継ぐことができる。
【0127】
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記実施形態では、反応室Sに吸着期間Taの間だけZr(BHガスを導入し、第2層間絶縁膜11の表面と第1配線13の表面、あるいはハードマスク32の表面と第2配線34の表面に、それぞれZr(BHを吸着させ、吸着分子MAからなる単分子層を形成する。そして、吸着期間Taの経過後、改質期間Trの間だけ、反応室Sに励起されたN2ガスを導入し、吸着分子MAを利用してZrBの単分子膜を生成する。
【0128】
したがって、ZrBを主成分とするメタルキャップ層16,37を、単原子層ずつ積み重ねることができ、各メタルキャップ層16,37が、それぞれ対応する下地の情報、すなわち、下地が導電膜であるか否かを確実に引き継ぐことができる。この結果、各メタルキャップ層16,37が、それぞれ第1配線13及び第2配線34に応じた領域にのみ導電性を有し、隣接する第1配線13間及び隣接する第2配線34間の短絡を、より確実に回避させる。
【0129】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記第二実施形態では、改質工程の期間だけ、励起されたN2ガスを導入させる構成にした。これに限らず、例えば、図13に示すように、改質工程と吸着工程の双方で、励起されたN2ガスを導入させる構成にしてもよい。すなわち、吸着分子MAを導入するときに、励起されたNガスを導入する構成にしてもよい。この構成によれば、Zr(BHガスと励起されたNガスの気相反応とZr(BHの吸着反応とを同時に行うことができる。この結果、吸着分子MAの未反応分に相等するZr(BH、あるいは、気相反応の未反応分に想到するZr(BHを、より確実にZrBとすることができ、より均一なZr−N結合を形成させることができる。
【0130】
・上記実施形態では、金属層を第1配線13及び第2配線34に具体化した。これに限らず、例えば、金属層を容量素子の電極や誘導素子に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の半導体装置を示す要部断面図。
【図2】成膜装置を示す平面図。
【図3】成膜チャンバを示す概略断面図。
【図4】成膜装置の電気的構成を示すブロック回路図。
【図5】第一実施形態の製造工程を示すタイムチャート。
【図6】実施例2の元素分析結果を示す図。
【図7】比較例1の元素分析結果を示す図。
【図8】比較例2の元素分析結果を示す図。
【図9】比較例7の元素分析結果を示す図。
【図10】第二実施形態の製造工程を示すタイムチャート。
【図11】第二実施形態の吸着工程を説明する工程図。
【図12】第二実施形態の改質工程を説明する工程図。
【図13】変更例における半導体装置の製造工程を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0132】
MC1…第一供給手段を構成するマスフローコントローラ、MC4…第二供給手段を構成するマスフローコントローラ、S…反応室、T…第一供給手段を構成する供給タンク、1…半導体装置、2…半導体基板としてのシリコン基板、2b…素子領域、11…絶縁層を構成する第2層間絶縁膜、12…凹部を構成する第1トレンチ、13…金属層を構成する第1配線、15…第1配線層、16…第1メタルキャップ層、21…絶縁層を構成する第3層間絶縁膜、23…凹部を構成するビアホール、33…凹部を構成する第2トレンチ、31…絶縁層を構成する第4層間絶縁膜、34…金属層を構成する第2配線、36…第2配線層、37…第2メタルキャップ層、40…半導体装置の製造装置としての成膜装置、41…チャンバ本体、51…制御手段を構成する制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子領域を有する半導体基板に絶縁層を積層する絶縁層工程と、
前記絶縁層に凹部を形成する凹部工程と、
前記凹部に金属層を埋め込む金属層工程と、
前記絶縁層の表面と前記金属層の表面とを略同一面に平坦化する平坦化工程と、
前記半導体基板を有した反応室に、Zr(BHと励起された窒素ガスとを供給し、平坦化した前記絶縁層の表面及び前記金属層の表面に、少なくともジルコニウム元素と窒素元素とを含むメタルキャップ層を成膜するメタルキャップ層工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記メタルキャップ層工程は、
前記反応室の外側で前記窒素ガスにマイクロ波を照射し、励起された前記窒素ガスを前記反応室に導入すること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記メタルキャップ層工程は、
前記Zr(BHと励起された前記窒素ガスとを用いたCVD法により前記メタルキャップ層を成膜すること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記メタルキャップ層工程は、
前記Zr(BHと励起された前記窒素ガスとを用いた原子層蒸着法により前記メタルキャップ層を成膜すること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記メタルキャップ層工程は、
前記半導体基板を260℃未満に加熱して前記メタルキャップ層を成膜すること、
を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
チャンバ本体と、
前記チャンバ本体の反応室に設けられ半導体基板を載置するステージと、
前記反応室にZr(BHを供給する第一供給手段と、
前記反応室に励起された窒素ガスを供給する第二供給手段と、
前記第一供給手段及び前記第二供給手段を駆動制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第一供給手段と前記第二供給手段を駆動制御して、前記Zr(BHと励起された前記窒素ガスとを前記反応室に供給し、前記半導体基板の表面に少なくともジルコニウム元素と窒素元素を含むメタルキャップ層を成膜すること、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記制御手段は、
前記第一供給手段と第二供給手段を駆動制御して、前記Zr(BHと励起した前記窒素ガスとを共に前記反応室に供給し、前記半導体基板の表面に少なくともジルコニウ
ム元素と窒素元素を含むメタルキャップ層を成膜すること、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記制御手段は、
前記第一供給手段と前記第二供給手段を駆動制御して、前記Zr(BHと励起した前記窒素ガスとを交互に前記反応室に供給し、前記半導体基板の表面にZr(BHを吸着させた後、励起した前記窒素ガスによって、吸着させた前記Zr(BHを少なくともジルコニウム元素と窒素元素を含むメタルキャップ層に改質させること、
を特徴とする半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−211090(P2008−211090A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48065(P2007−48065)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】