説明

半導体装置の製造方法

【課題】FUSIゲートCMOSトランジスタにおいて、不純物層上シリサイド膜の高抵抗化及び浅接合破壊を共に抑制する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基板50上に、シリコンからなるゲート電極7及び基板50におけるゲート電極7の両側に位置する不純物層10を備えるトランジスタを形成する工程と、少なくとも不純物層10を覆う第1の金属膜14を形成する工程と、第1の金属膜14を覆い且つゲート電極7に開口を有する絶縁膜16を形成する工程と、ゲート電極7上を含む絶縁膜16上に第2の金属膜17を形成する工程と、第1の金属膜14及び第2の金属膜17に対して熱処理を行なうことにより、不純物層10の上部と、ゲート電極7とを同時にシリサイド化する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特にシリサイド膜を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSトランジスタの微細化及び高速化が進行しており、これに対応するために、ホットキャリア耐性の向上を目的とするLDD構造と、ゲート電極及びソース/ドレイン領域をシリサイド化して低抵抗化するサリサイド技術とが採用されている。
【0003】
従来、量産プロセスのシリサイド材料としては、コバルトジシリサイド膜が採用されていた。コバルトジシリサイド膜はシリコン含有率が高い膜であり、つまり、シリサイド反応後にシリコン基板側へ顕著に成長していく膜である。このため、微細化が進んだ結果としてより浅い接合を目指しているデバイスには適さない。そこで、極浅接合を目指すデバイスに対し、従来用いられていたコバルトジシリサイド膜に代えて、シリコン含有率の低いニッケルシリサイド膜を用いる技術が提案され、実際に量産プロセスにも用いられている。
【0004】
しかし、ゲート電極の幅は既に40nm前後になっており、従来のpoly−Si/SiON構造によるこれ以上の微細化は、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)及びNBTI(Negative Bias Temperature Instability)といった信頼性劣化が生じることから、極めて困難と考えられる。
【0005】
これに対し、ゲート絶縁膜を従来のSiON膜からHigh−k材料の膜に変更することが提案され、特に、HfSiONがゲート絶縁膜の材料の有力候補となっている。但し、このHfSiONのようなHfベースのHigh−k材料はpoly−Siゲート電極とは相性が悪いため、メタルゲートの導入が必要になる。メタルゲートを実現する1つの方法としては、FUSI(Fully Silicided)NiSiゲートというプロセスがある(非特許文献1及び非特許文献2を参照)。更に、仕事関数の観点から、NMOSゲート電極をNiSiにより形成し且つPMOSゲート電極をNi2 Siにより形成するデュアルゲート構造が重要構造となる。
【0006】
以下に、従来技術によるFUSIゲート電極を形成する製造工程について、図面を参照して説明する。図18(a)〜(d)及び図19(a)〜(d)は、この説明のための図である。
【0007】
まず、図18(a)には、シリコン基板100上にポリシリコン膜からなる4つのMOSトランジスタが形成された様子が示されている。より詳しく述べると、まず、シリコン基板100上にシャロートレンチ101による素子分離が形成され、4つの素子形成領域131、132、133及び134が形成されている。これらの素子形成領域131〜134を覆うように、厚さ1.6nmのゲート絶縁膜102を介して厚さ100nmのポリシリコン膜からなるゲート電極107が形成されている。更に、ゲート電極107上には厚さ10nmのシリコン酸化膜からなるゲートハードマスク106が形成され、ゲート電極107の側壁にはシリコン窒化膜からなるサイドウォールスペーサ109が形成されている。また、シリコン基板100に、サイドウォールスペーサ109に対して自己整合的に不純物層110が形成されている。
【0008】
以上により、素子形成領域131〜134にはそれぞれMOSトランジスタ構造が形成されている。これらのMOSトランジスタ構造は、後の工程により、それぞれ、非シリサイドFUSIゲートNMOSトランジスタ、FUSIゲートNMOSトランジスタ、FUSIゲートPMOSトランジスタ及び高抵抗ゲートMOSトランジスタとなる。尚、以下において、これらを順に、それぞれ非シリサイドMOS、FUSIゲートNMOS、FUSIゲートPMOS及び高抵抗ゲートMOSと略して記すことがある。
【0009】
次に、図18(b)に示すように、不純物層110のシリサイド化を行なわない(非シリサイド化FUSIゲートNMOSとなる)素子形成領域131について、厚さ10nmのシリコン酸化膜111及びその上に積層される厚さ10nmのシリコン窒化膜112を形成して覆う。
【0010】
次に、図18(c)に示すように、素子形成領域131を除く残りの素子形成領域132〜134の不純物層110上にNiSi膜120を形成する。更に、それぞれのMOSトランジスタ構造上を覆う厚さ20nmの高ストレスライナー膜125を形成した後、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜103を形成する。
【0011】
次に、図18(d)に示すように、ゲート電極107のFUSI化を行なわない(高抵抗ゲートMOSとなる)素子形成領域134を除く領域において、層間絶縁膜103をエッチングして高ストレスライナー膜125の上部を露出させる。
【0012】
次に、図19(a)に示すように、素子形成領域134以外において、ゲート電極107上を開口してポリシリコン膜からなるゲート電極107の上面を露出させる。
【0013】
次に、図19(b)に示すように、FUSIゲートPMOSを形成する素子形成領域133において、ポリシリコン膜からなるゲート電極107の上部をフッ酸系ウェットエッチングにより除去し、ゲート上トレンチ113を形成する。このとき、NMOSを形成する素子形成領域131及び132においてゲート電極107の膜厚は100nm、PMOSを形成する素子形成領域133においてゲート電極107の膜厚は50nmである。
【0014】
次に、図19(c)に示すように、層間絶縁膜103を除去する。続いて、FUSI工程として、厚さ60nmのニッケル膜の堆積後に、300℃で30秒の一回目のRTA(rapid thermal annealing )処理を行なう。
【0015】
更に、未反応のニッケル膜の除去を行なう。これは、例えば硫酸又は塩酸と過酸化水素水とを混合した酸性溶液、水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを混合したアルカリ性溶液等を用いる処理により行える。
【0016】
次に、図19(d)に示すように、500℃で30秒の二回目のRTA処理を行ない、これによって、NMOSを形成する素子形成領域131及び132のゲート電極107についてはNiSi膜130、PMOSを形成する素子形成領域133のゲート電極107についてはNiSi2 膜119に変換させ、FUSI化の処理を行なう。
【0017】
これにより、素子形成領域131、132、133及び134において、順に、非シリサイドMOSトランジスタ121、FUSIゲートNMOSトランジスタ122、FUSIゲートPMOSトランジスタ123及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ124が形成される。
【0018】
このようPMOSとNMOSとが異なる組成のシリサイドからなるゲート電極107になっていると、nチャネル領域及びpチャネル領域の両方において、それぞれのゲート電極107との間の仕事関数を最適化することができる。
【非特許文献1】Z.Krivokapic et al.,IEDM Tech. Dig.,p.271 (2002)
【非特許文献2】A.Lauwers et al.,IEDM Tech. Dig.,p.661 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、従来のFUSIゲートを有する半導体装置の製造方法には、以下のような問題があった。
【0020】
従来のFUSIゲートを有する半導体装置の製造方法の場合、図18(c)に示すように各MOSトランジスタにおける不純物層110上にNiSi膜120を形成した後、図19(d)に示すようにFUSIゲートを形成する。つまり、NiSi膜120は、ゲート電極107のシリサイド化を行なうときに、再度二回のRTA処理を経験することになる。このため、不純物層110上のNiSi膜120は、NiSi2 膜に相転移する可能性が高い。
【0021】
NiSi2 膜はNiSi膜よりも高抵抗であるため、不純物層抵抗が上昇する原因となり、トランジスタ駆動の能力低下を起こすことになる。また、NiSi2 結晶構造はシリコン単結晶に非常に近いため、特にPMOSトランジスタにおいてNiSi2 結晶はエピ成長しやすい。この結果、深いピラミッド構造が成長して浅接合を突き破る危険性がある。
【0022】
更に、図19(a)に示すように、FUSI化の処理を行なうために高ストレスライナー膜125の上部を除去することから、NMOSトランジスタのゲート電極に有効な引張り応力を印加することが不可能であり、NMOSトランジスタの駆動力向上を図ることができなくなっている。
【0023】
以上のような問題の解決を課題として、本発明の目的は、特にシリサイド化されたゲート電極を備える場合について、不純物層の高抵抗化及び浅接合破壊を抑制することができる半導体装置の製造方法を提供することである。更に、CMOSトランジスタの場合に、NMOSトランジスタ及びPMOSトランジスタの両方について仕事関数の最適化(マッチング)を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の半導体装置の製造方法は、基板上に、シリコンからなるゲート電極及び基板におけるゲート電極の両側に位置する不純物層を備えるトランジスタを形成する工程と、少なくとも不純物層を覆う第1の金属膜を形成する工程と、第1の金属膜を覆い且つゲート電極に開口を有する絶縁膜を形成する工程と、ゲート電極上を含む絶縁膜上に第2の金属膜を形成する工程と、第1の金属膜及び第2の金属膜に対して熱処理を行なうことにより、不純物層の上部と、ゲート電極とを同時にシリサイド化する工程とを備える。
【0025】
第1の半導体装置の製造方法によると、第1の金属膜と不純物層の上部との反応によるシリサイド化と、第2の金属膜とゲート電極との反応によるシリサイド化とを同時に行なう。このため、不純物層に関するシリサイド化を行なった後にゲート電極のシリサイド化を行なう従来の方法とは異なり、不純物層上の金属シリサイド層が余分な(ゲート電極をシリサイド化するための)シリサイド化の工程を経験すること避けられている。
【0026】
このことから、不純物層上の金属シリサイドの相転移は抑制され、不純物層抵抗が増加すること及びエピ成長の進行等により金属シリサイド層が浅接合を突き破ること等についても抑制されている。
【0027】
次に、本発明に係る第2の半導体装置の製造方法は、基板上に、シリコンからなる第1のゲート電極及び基板における第1のゲート電極の両側に位置する第1の不純物層を備える第1のトランジスタと、シリコンからなる第2のゲート電極及び基板における第2のゲート電極の両側に位置する第2の不純物層を備える第2のトランジスタとを形成する工程(a)と、少なくとも第1の不純物層及び第2の不純物層を覆う第1の金属膜を形成する工程(b)と、第1の金属膜を覆い且つ第1のゲート電極上方及び第2のゲート電極上方に開口を有する絶縁膜を形成する工程(c)と、第1のゲート電極上及び第2のゲート電極上を含む絶縁膜上に第2の金属膜を形成する工程(d)と、第1の金属膜及び第2の金属膜に対して熱処理を行なうことにより、第1の不純物層及び第2の不純物層の上部と、第1のゲート電極及び第2のゲート電極とをシリサイド化する工程(e)とを備え、工程(a)の後で且つ工程(e)の前に、第1のゲート電極の厚さと第1のゲート電極上の第1の金属膜及び第2の金属膜の合計厚さとの比が、第2のゲート電極の厚さと第2のゲート電極上の第1の金属膜及び第2の金属膜の合計厚さとの比とは異なるようにするための工程(f)を更に備えることにより、工程(e)において、第1のゲート電極を第1の金属シリサイドから構成すると共に、第2のゲート電極を第1の金属シリサイドとは異なる第2の金属シリサイドから構成する。
【0028】
第2の半導体装置の製造方法によると、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の厚さに対するそれぞれのゲート電極の上に形成される第1の金属膜及び第2の金属膜の合計厚さの比が、第1のトランジスタと第2のトランジスタとでは異なるようにする。この後にシリサイド化を行なうことにより、第1のトランジスタの第1のゲート電極を第1の金属シリサイドに、第2のトランジスタの第2のゲート電極を(第1の金属シリサイドとは異なる組成を有する)第2の金属シリサイドに、それぞれシリサイド化することができる。
【0029】
このことは、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタにおいて、それぞれ個別に基板との仕事関数のマッチングを取るために効果がある。
【0030】
また、第1の不純物層及び第2の不純物層上に第1の金属膜を形成した後に層間絶縁間を介して第2の金属膜を形成し、その後、第1及び第2の不純物層の少なくとも上部と第1及び第2のゲート電極とを同時にシリサイド化している。このため、不純物層に関するシリサイド化を行なった後にゲート電極のシリサイド化を行なう従来の方法とは異なり、不純物層上の金属シリサイド層が余分な(ゲート電極をシリサイド化するための)シリサイド化の工程を経験すること避けられている。
【0031】
このことから、第1及び第2の不純物層上の金属シリサイドの相転移は抑制され、不純物層抵抗が増加すること及びエピ成長の進行等により金属シリサイド層が浅接合を突き破ること等についても抑制されている。
【0032】
以上のように、個々のトランジスタにおけるゲート電極と基板との仕事関数のマッチングを取ると共に、第1及び第2の不純物層の高抵抗化及び浅接合の破壊をいずれも抑制することができる。
【0033】
尚、工程(f)は、工程(a)の後で且つ工程(d)の前に、第2のゲート電極の厚さを第1のゲート電極の厚さよりも薄くする工程を含むことが好ましい。
【0034】
また、工程(f)は、工程(d)の後で且つ工程(e)の前に、第1のゲート電極上における第2の金属膜の厚さを、第2のゲート電極上における第2の金属膜の厚さに比べて薄くする工程を含むことが好ましい。
【0035】
これらのいずれによっても、第2のゲート電極の厚さに対する第2のゲート電極上の第1の金属膜及び第2の金属膜の合計厚さの比は、第1のゲート電極の厚さに対する第1のゲート電極上の第1の金属膜及び第2の金属膜の合計厚さの比によりも大きくなる。
【0036】
この結果、第1のゲート電極及び第2のゲート電極がそれぞれ順に第1の金属シリサイド及び第2の金属シリサイドにシリサイド化されたとき、第2の金属シリサイドは、第1の金属シリサイドに比べてシリコンの組成が大きい金属シリサイドとなる。
【0037】
このようにして、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタにおいて、それぞれのゲート電極と基板との仕事関数のマッチングを取ることが確実にできる。
【0038】
また、工程(e)は、第1のゲート電極の上部の一部分と、第2のゲート電極の全体とを第2の金属シリサイドとする工程(e1)と、第1のゲート電極について、工程(e1)において第2の金属シリサイドとなった部分及び残りの部分を共に第1の金属シリサイドとする工程(e2)とを含むことが好ましい。
【0039】
このようにすると、第1及び第2のトランジスタにおける第1及び第2のゲート電極について、いずれもシリサイド化すると共に、互いに組成の異なる金属シリサイド(第1の金属シリサイド及び第2の金属シリサイド)とすることができる。
【0040】
また、第1のトランジスタはnチャネル型トランジスタであり、第2のトランジスタがpチャネル型トランジスタであることが好ましい。
【0041】
nチャネル型トランジスタと、pチャネル型トランジスタとは、ゲート電極の材料として好ましい金属シリサイドの組成が異なる。これは、nチャネルとpチャネルとでは、ゲート電極と基板との間の望ましい仕事関数が異なるからである。このことから、互いに異なる金属シリサイドによりゲート電極が形成されている第1のトランジスタ及び第2のトランジスタがnチャネル型トランジスタ及びpチャネル型トランジスタとなっていることが好ましい。
【0042】
また、絶縁膜を、光エネルギーを利用する化学気相成長法によって形成することが好ましい。
【0043】
また、絶縁膜を、プラズマを利用する化学気相成長法によって形成することが好ましい。
【0044】
また、絶縁膜を、SOG(Spin On Glass)塗布法によって形成することが好ましい。
【0045】
これらのいずれの方法を用いても、不純物層及びその上に形成されている第1の金属膜が反応してシリサイド化するのを抑制しながら絶縁膜を形成することができる。
【0046】
また、第1の金属膜はNi膜であり、第1の金属シリサイドはNiSi膜であり、第2の金属シリサイドはNi2 Si膜であることが好ましい。
【0047】
これにより、それぞれのゲート電極について、基板との仕事関数のマッチングを取ることができる。
【0048】
また、工程(b)の後で且つ工程(c)の前に、第1の金属膜上に第1の金属含有膜を形成する工程を更に備えることが好ましい。
【0049】
このようにすると、第1の金属膜の酸化を抑制することができ、シリサイド反応の制御性を高めることができる。
【0050】
また、第1の金属含有膜は、高融点金属の窒化膜であることが好ましい。これにより、第1の金属膜の酸化を確実に防ぐことができる。
【0051】
また、工程(d)の後で且つ工程(e)の前に、第2の金属膜上に第2の金属含有膜を形成する工程を更に備えることが好ましい。
【0052】
このようにすると、第2の金属膜の酸化を抑制することができ、シリサイド反応の制御性を高めることができる。
【0053】
また、第2の金属含有膜は、高融点金属の窒化膜であることが好ましい。これにより、第2の金属膜の酸化を確実に防ぐことができる。
【0054】
また、工程(e)の後に、基板、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを覆うライナー膜を形成することが好ましい。
【0055】
これにより、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタ上、特にゲート電極上について、連続したライナー膜により覆うことができる。この結果、ゲート電極に有効な引張り応力を印加し、トランジスタの駆動力向上をすることが確実にできる。
【発明の効果】
【0056】
本発明の半導体装置の製造方法によると、ゲート電極と不純物層についてのシリサイド化を同時に行なうと共に、互いに異なる組成の金属シリサイドからなる複数のゲート電極を設けることができる。このため、ゲート電極毎に仕事関数のマッチングを図ると共に、不純物層の高抵抗化及び浅接合の破壊をいずれも抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、それぞれ図面を参照しながら、本発明の各実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0058】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図1(a)〜(f)、図2(a)〜(e)、図3(a)〜(e)、図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(b)は、本実施形態の半導体装置を製造する際の各工程を模式的に示す図である。
【0059】
尚、本実施形態では、非シリサイドNMOSトランジスタ、FUSIゲートNMOSトランジスタ、FUSIゲートPMOSトランジスタ及び高抵抗ゲートMOSトランジスタの4つのMOSトランジスタを形成する。尚、以下においても、これらを順に、それぞれ非シリサイドMOS、FUSIゲートNMOS、FUSIゲートPMOS及び高抵抗ゲートMOSと略して記すことがある。
【0060】
まず、図1(a)には、例えばシリコンからなる基板50上にシャロートレンチ1からなる素子分離が形成され、その後、厚さ1.6nmのゲート絶縁膜2、厚さ100nmのポリシリコン膜3及び厚さ10nmのシリコン酸化膜4が下からこの順に積層して形成された状態を示す。本実施形態では4つのMOSトランジスタを形成するため、シャロートレンチ1により区画された4つの素子形成領域31、32、33及び34が示されている。また、ポリシリコン膜3は、後の工程によりゲート電極に加工するためのものである。
【0061】
次に、図1(b)に示す通り、素子形成領域のうちのひとつ(34)に、ハードマスクパターンとしてフォトレジスト5を形成する。これは、高抵抗ゲートを形成するためマスクパターンである。
【0062】
次に、図1(c)に示す通り、フォトレジスト5をマスクとしてシリコン酸化膜4のドライエッチングを行ない、ハードマスク6を形成する。この後、フォトレジスト5は除去する。
【0063】
次に、図1(d)に示す通り、ゲート電極パターンとしてフォトレジスト5aを形成する。これは、既にハードマスク6が形成されている素子形成領域34を除く他の素子形成領域31〜33に形成する。
【0064】
次に、図1(e)に示す通り、ハードマスク6及びフォトレジスト5aをマスクとして、ポリシリコン膜3及びゲート絶縁膜2を順次ドライエッチングすることによりパターニングする。これにより、基板50上にゲート絶縁膜2を介してゲート電極7が形成された構造が得られる。尚、フォトレジスト5aは除去されるが、素子形成領域34においては、ゲート電極7上にハードマスク6が残る。
【0065】
次に、図1(f)に示す通り、それぞれのゲート電極7の側壁を覆うように窒化膜が材料であるサイドウォール9を形成する。更に、基板50に不純物層10を形成する。これは、例えば注入法により、ゲート電極7及びサイドウォール9に対して自己整合的に形成する。これにより、各素子形成領域31〜34において、ポリシリコンゲートを有するMOSトランジスタ構造が形成される。尚、素子形成領域34においては、ハードマスク6の側面についてもサイドウォール9により覆われる。
【0066】
尚、この後の工程により、素子形成領域31には非シリサイドNMOSトランジスタ(ここでいう非シリサイドとは、不純物層10上にはシリサイド層を形成しないことを意味する)、素子形成領域32にはFUSIゲートNMOSトランジスタ、素子形成領域33にはFUSIゲートPMOSトランジスタ、素子形成領域34には高抵抗ゲートMOSトランジスタがそれぞれ形成される。ここで、NMOS又はPMOSとするためには、不純物層10形成に用いる不純物の導電型(n型又はp型)を選択すれば良い。
【0067】
次に、図2(a)に示す通り、素子形成領域31〜34においてそれぞれのMOSトランジスタ構造を覆うように、厚さ30nmのシリコン酸化膜11を形成する。更に、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31において、シリコン酸化膜11上に、不純物層10に対応するシリサイド化防止パターンとして、フォトレジスト5bを形成する。
【0068】
次に、図2(b)において、フォトレジスト5bをマスクとしてシリコン酸化膜11をエッチングし、素子形成領域31の不純物層10上にシリサイド化防止マスク12を形成する。
【0069】
次に、図2(c)に示すように、素子形成領域31〜34を覆うように、フォトレジスト5cを形成する。ここで、フォトレジスト5cは、FUSIゲートPMOSを形成する素子形成領域33におけるゲート電極7の上方に開口41を有する。
【0070】
次に、図2(d)に示すように、素子形成領域33においてゲート電極7を上部から50nm除去し、ゲート電極7の残りの部分(厚さ50nmのポリシリコン膜として残っている)の上に、サイドウォール9に挟まれたトレンチ13を形成する。このためには、図2(c)に示すフォトレジスト5cをマスクとするフッ酸洗浄を行ない、その後、フォトレジスト5cを除去すればよい。
【0071】
次に、図2(e)に示す通り、素子形成領域31〜34において、不純物層10のシリサイド化のために最適化した膜厚の金属膜である厚さ10nmのNi膜14を形成し、更にその上に、同様に最適化した膜厚の金属含有膜である厚さ15nmのTiN膜15を形成する。この際、素子形成領域33におけるゲート電極7上方のトレンチ13は、Ni膜14及びTiN膜15によって充填されることになる。
【0072】
次に、図3(a)に示す通り、素子形成領域31〜34において、TiN膜15を覆う厚さ400nmで且つ低温シリコン酸化膜からなる絶縁膜16を形成する。これは、光エネルギーによる反応励起を利用するCVD法を用いて形成する。このCVD法によると、150℃程度の比較的低い温度において成膜が可能であり、このことから不純物層10上におけるシリサイド反応の発生を防止することができる。よって、後の工程における不純物層10上のシリサイド層が相転移する等の不都合を防止することができる。ここで、本願発明者の検討によると、絶縁膜16を成膜する際の温度が250℃以下であれば、不純物層10におけるシリサイド反応は抑制可能であることが判明している。
【0073】
尚、ここで用いる光エネルギーを利用するCVD法は、N2 Oに水銀ランプ(波長185nm)を照射することにより酸化剤であるN2 Oを活性化し、SiH4 と反応させることにより成膜する方法である。
【0074】
仮に、絶縁膜16の形成を通常のCVD法によって行なった場合、反応温度は800℃程度となり、不純物層10におけるシリサイド化が進行してしまう。よって、本実施形態のような成膜方法が望ましい。
【0075】
次に、図3(b)に示すように、化学的機械研磨法(CMP法、Chemical Mechanical Polishing )を用いて絶縁膜16を表面から平坦化し、Ni膜14を露出させる。
【0076】
次に、図3(c)に示すように、素子形成領域31〜34においてフォトレジスト5dを形成する。ここで、フォトレジスト5dは、FUSIゲートPMOSを形成する素子形成領域33におけるゲート電極7の上方に開口42を有する。
【0077】
次に、図3(d)に示す通り、素子形成領域33におけるトレンチ13内のNi膜14及びTiN膜15を除去する。これには、図3(c)に示すフォトレジスト5dをマスクとして、開口42からエッチングすればよい。エッチングには、例えば、硫酸又は塩酸と過酸化水素水とを混合した酸性溶液を用いても良いし、水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを混合したアルカリ性溶液を用いることもできる。
【0078】
この後、フォトレジスト5dを除去する。
【0079】
次に、図3(e)に示すように、素子形成領域31〜34において、ゲート電極7のシリサイド化に最適化した膜厚の金属膜である厚さ60nmのNi膜17を形成し、その上に、やはり最適化した膜厚の金属含有膜である厚さ15nmのTiN膜18を形成する。
【0080】
尚、各ゲート電極7上方において、同じNi膜であるNi膜14とNi膜17とが積層されるため、Ni膜14とNi膜17との間の境界は示していない。
【0081】
また、素子形成領域33のトレンチ13上方において、Ni膜17には凹部が生じる。このため、素子形成領域33のゲート電極7上においてもNi膜17の膜厚は60nmとなる。
【0082】
次に、図4(a)に示す工程として、一回目の熱処理(例えば300℃で且つ30秒のRTA処理)を行なう。これにより、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31と、FUSIゲートNMOSを形成する素子形成領域32とにおいて、ゲート電極7の上部がNi2 Si膜19aにシリサイド化され、下部にはポリシリコン膜が残る。これと共に、FUSIゲートPMOSを形成する素子形成領域33において、ゲート電極7がゲート絶縁膜2に達するまでNi2 Si膜19aにシリサイド化する。
【0083】
このようなシリサイド化されずに残るポリシリコン膜3の有無は、ポリシリコン膜3の厚さの違いにより生じる。
【0084】
つまり、素子形成領域33においては、50nmの厚さに残されているポリシリコン膜3の上に厚さ60nmのNi膜17が形成されている。これに対し、素子形成領域31及び32においては、厚さ100nmであるポリシリコン膜3の上に厚さ70nmのNi膜(Ni膜14及びNi膜17)が形成されている。このように、ポリシリコン膜の厚さとNi膜の厚さとの比率が異なる。具体的には、素子形成領域33において、ポリシリコン膜に対するNi膜の比が素子形成領域31及び32よりも大きい。
【0085】
このこと及び300℃の低温熱処理であることから、PMOSを形成する素子形成領域33のゲート電極7については全てシリサイド化すると共に、NMOSを形成する素子形成領域31及び32のゲート電極7については上部だけがシリサイド化してその下方にポリシリコン膜が残る。
【0086】
また、この工程において、ゲート電極7と同時に、素子形成領域32〜34の不純物層10上にNi2 Si膜19bが形成される。
【0087】
シリサイド化防止マスク12が形成されている素子形成領域31の不純物層10及びハードマスク6が形成されている素子形成領域34のゲート電極7に関しては、シリサイド化は抑制されている。
【0088】
次に、図4(b)に示すように、未反応のNi膜14、Ni膜17、TiN膜15及びTiN膜18を除去する。このためには、図3(d)に示す工程において用いたのと同様の酸性溶液(硫酸又は塩酸と過酸化水素水の混合物)又はアルカリ性溶液(水酸化アンモニウムと過酸化水素水との混合物)を用いることができる。
【0089】
尚、この際に、絶縁膜16が同時にリフトオフされて除去される。
【0090】
次に、図4(c)に示すように、二回目の熱処理(500℃で且つ30秒のRTA処理)を行なう。
【0091】
このような高温熱処理であると共に、素子形成領域31及び32におけるNi2 Si膜19aはポリシリコン膜3との界面を有することからシリコンの供給をうけ、NiSi膜20aに変換される。結果として、ゲート電極7全体がNiSi膜20aとなる。
【0092】
これに対し、素子形成領域33のNi2 Si膜19aは、シリコンの供給を受けることがないために高温熱処理によってもNiSi膜に変換されることはない。
【0093】
また、該二回目の熱処理により、絶縁膜16上に形成されているNi2 Si膜19bについても、シリコンからなる基板50に形成された不純物層10と接しているため、NiSi膜20bに変換される。
【0094】
次に、図4(d)に示すように、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31に残されているシリサイド化防止マスク12を除去するため、該シリサイド化防止マスク12上に開口を有するにフォトレジスト5eを形成する。
【0095】
次に、図5(a)に示すように、フォトレジスト5eをマスクとしてフッ酸洗浄を行ない、シリサイド化防止マスク12を除去する。
【0096】
これにより、素子形成領域31には不純物層10上にシリサイド膜を備えること無く且つFUSIゲートを有する非シリサイドNMOSトランジスタ21、素子形成領域32には不純物層10上にシリサイド膜を備え且つFUSIゲートを有するFUSIゲートNMOSトランジスタ22、素子形成領域33には不純物層10上にシリサイド膜を備え且つFUSIゲートを有するFUSIゲートPMOSトランジスタ23、素子形成領域34には不純物層10上にシリサイド膜を備え且つポリシリコン膜3からなるゲート電極を有する高抵抗ゲートMOSトランジスタ24がそれぞれ形成される。
【0097】
次に、図5(b)に示すように、素子形成領域31〜34において、それぞれに形成されたMOSトランジスタを覆うように、高ストレスライナー窒化膜25を形成する。
【0098】
以上のようにして、本実施形態の半導体装置が製造される。このような製造方法によると、特に図4(a)〜(c)に示すように、不純物層10上に関するシリサイド化と、ゲート電極7のシリサイド化とは同時に行なわれる。このため、不純物層上にシリサイド層を形成した後にゲート電極のシリサイド化を行なっていた従来の方法とは異なり、不純物層10上のシリサイド膜が余分に熱処理を経験することがない。よって、不純物層10上のNiSi膜20bがNiSi2 膜に相転移するのを抑制することができる。
【0099】
この結果、不純物層10の高抵抗化及び浅接合破壊は抑制されている。
【0100】
また、図5(b)に示すように、不純物層10上のNiSi膜20b形成とゲート電極7についてのシリサイド化(Ni2 Si膜19a及びNiSi膜20aの形成)とを終えた後に高ストレスライナー窒化膜25を形成することができる。これにより、NMOSトランジスタのゲート電極に有効な引張り応力を印加することができ、NMOSトランジスタの駆動力向上を図ることができる。
【0101】
尚、本実施形態の図1(f)に示す工程において、素子形成領域31にはNMOSトランジスタ(後に非シリサイドNMOSトランジスタ21となるもの)を設けるようにしているが、これに代えて、PMOSトランジスタを設けるようにしても良い。また、図示はされないが、非シリサイドであるMOSトランジスタとして、NMOS及びPMOSのトランジスタを共に形成することも可能である。ここで、素子形成領域32及び33において、それぞれゲート電極7をNiSi膜20a及びNi2 Si膜19aに作り分けるのと同様にして、NMOSの場合はNiSi膜、PMOSの場合はNi2 Si膜とする。
【0102】
また、高抵抗ゲートMOSトランジスタ24については、NMOS又はPMOSのどちらとすることもできる。
【0103】
更に、本実施形態においては、FUSIゲートNMOSトランジスタ22及びFUSIゲートPMOSトランジスタ23に加えて、非シリサイドNMOSトランジスタ21及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ24を設けているが、このことは必須ではない。少なくともFUSIゲートNMOSトランジスタ22及びFUSIゲートPMOSトランジスタ23を備える半導体装置であれば、NMOSとPMOSとで異なる組成の金属シリサイドからなるゲート電極を形成すること、ゲート電極のシリサイド化と不純物層上におけるシリサイド層形成とを同時に行なうこと及びそれぞれのMOSトランジスタを覆う高ストレスライナー窒化膜を形成すること等を実現可能である。
【0104】
また、本実施形態の図3(a)に示す工程おいて、第1の実施形態では光エネルギーによる反応励起を利用するCVD法を用いて絶縁膜16を形成した。しかし、絶縁膜16の形成方法は、これには限らない。比較的低温(例えば200℃以下)において成膜が行える方法であれば、用いることができる。
【0105】
例えば、電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用するRCRプラズマCVD法を用いることができる。このCVD法は、マイクロ波(2.45GHz)の電子共鳴エネルギーを吸収した高密度プラズマを使用し、200℃以下の温度において、SiH4 +O2 →SiO2 +2H2 の反応を行なう。この際、基板50にRFバイアスを印加してスパッタエッチを併用すると、ゲート電極により挟まれた狭い領域にも良好に成膜することができる。
【0106】
また、更に別の方法として、SOG(Spin on Glass )塗布法によって絶縁膜16を形成することもできる。この方法は、液状のSOG剤を基板50に塗布した後に焼成することによって、ガラス膜を形成する方法である。例えば、SiO2 とP2 5 とを主成分とするSOG剤を用い、基板50に対して主回転数4000rpmのスピンコートにより塗布を行なう。この後、200℃で且つ30分間の焼成を行ない、絶縁膜16形成する。この場合、CVD法の場合には問題となる可能性のあるプラズマダメージの発生を避けることも可能である。
【0107】
以上に挙げた二例の方法も、不純物層10に関するシリサイド化を伴うことなく絶縁膜16を形成することができ、本実施形態の半導体装置の製造方法において目的に適うものである。
【0108】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。但し、該製造方法には第1の実施形態と共通の部分があるため、本実施形態に特徴的な部分を主に説明する。尚、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)は、本実施形態の半導体装置を製造する際の各工程を模式的に示す図である。
【0109】
まず、第1の実施形態において図1(a)〜(f)と図2(a)及び(b)とを参照して説明したのと同様の工程を順次行ない、図2(b)の構造を得る。つまり、基板50上にシャロートレンチ1により区画された4つの素子形成領域31〜34が設けられ、それぞれの素子形成領域にはMOSトランジスタ構造が形成されている。ここで、各MOSトランジスタ構造は、厚さ1.6nmのゲート絶縁膜2を介して形成された厚さ100nmのポリシリコン膜からなるゲート電極7と、その側面を覆うサイドウォール9と、サイドウォール9に対して自己整合的に基板50に設けられた不純物層10を含む。
【0110】
素子形成領域31には、不純物層10上のシリサイド層形成を抑制する非シリサイドNMOSを形成するため、不純物層10上を覆うシリサイド化防止マスク12が形成されている。素子形成領域32及び33については、順にNMOS及びPMOSとし、後の工程により不純物層10上にシリサイド層を設け且つゲート電極7をFUSIゲート電極とする。また、素子形成領域34には高抵抗ゲートを有するMOSトランジスタを形成するため、ゲート電極7上にハードマスク6が設けられている。いずれも、図1(f)に示す工程において用いる不純物の選択により、所望の導電型(n型又はp型)を有するMOSトランジスタ構造となっている。
【0111】
次に、図6(a)に示すように、素子形成領域31〜34において、不純物層10のシリサイド化のために最適化した膜厚の金属膜である厚さ10nmのNi膜14を形成し、更にその上に、同様に最適化した膜厚の金属含有膜である厚さ15nmのTiN膜15を形成する。
【0112】
次に、図6(b)に示す通り、素子形成領域31〜34において、TiN膜15を覆う厚さ400nmで且つ低温シリコン酸化膜からなる絶縁膜16を形成する。この際、第1の実施形態と同様に、不純物層10上におけるシリサイド化反応を抑制しながら成膜を行なうため、光エネルギーによる反応励起を利用するCVD法を用いる。
【0113】
次に、図6(c)に示すように、CMP法を用いて絶縁膜16を表面から平坦化し、Ni膜14を露出させる。
【0114】
次に、図6(d)に示すように、素子形成領域31〜34において、ゲート電極7のシリサイド化に最適化した金属膜である厚さ110nmのNi膜17を形成し、更にその上に、金属含有膜である厚さ15nmのTiN膜18を形成する。
【0115】
次に、図7(a)に示すように、TiN膜18上にフォトレジスト5fを形成する。このとき、NMOSであり且つFUSIゲートを形成する素子形成領域31及び32において、ゲート電極7上方には開口43を設ける。
【0116】
次に、図7(b)に示すように、フォトレジスト5fをマスクとして用いるドライエッチングを行なう。これにより、開口43の部分について、Ni膜17に対して深さ60nmのトレンチを形成する。これにより、素子形成領域31及び32のゲート電極7上方には、厚さ50nmに残されたNi膜17と、厚さ10nmのNi膜14とを合わせて厚さ60nmのNi膜が存在することになる。
【0117】
次に、図7(c)に示すように、一回目の熱処理(例えば300℃で且つ30秒のRTA処理)を行なう。これにより、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31と、FUSIゲートNMOSを形成する素子形成領域32において、ゲート電極7の上部がNi2 Si膜19aにシリサイド化され、下部にはポリシリコン膜が残る。これと共に、FUSIゲートPMOSを形成する素子形成領域33において、ゲート電極7がゲート絶縁膜2に達するまでNi2 Si膜19aにシリサイド化する。
【0118】
このようなシリサイド化されずに残るポリシリコン膜3の有無は、ポリシリコン膜3からなるゲート電極7上におけるNi膜の厚さの違いにより生じる。
【0119】
つまり、FUSIゲートPMOSを形成する素子形成領域33において、厚さ100nmのポリシリコン膜からなるゲート電極7上には、厚さ10nmのNi膜14と厚さ110nmのNi膜17を合わせて厚さ120nmのNi膜が形成されている。これに対し、それぞれNMOSを形成する素子形成領域31及び32において、厚さ100nmのポリシリコン膜からなるゲート電極7上には、前述した通りNi膜14とトレンチ26部分のNi膜17とを合わせた厚さ60nmのNi膜が形成されている。
【0120】
このように、ポリシリコン膜の厚さに対するNi膜の厚さの比が異なる。具体的には、素子形成領域33において、ポリシリコン膜に対するNi膜の比が素子形成領域31及び32よりも大きい。
【0121】
このこと及び300℃の低温熱処理であることから、PMOSを形成する素子形成領域33のゲート電極7については全てシリサイド化すると共に、NMOSを形成する素子形成領域31及び32のゲート電極7については上部だけがシリサイド化してその下方にポリシリコン膜が残る。
【0122】
また、この工程において、ゲート電極7と同時に、素子形成領域32〜34の不純物層10上にNi2 Si膜19bが形成される。
【0123】
シリサイド化防止マスク12が形成されている素子形成領域31の不純物層10及びハードマスク6が形成されている素子形成領域34のゲート電極7に関しては、シリサイド化は抑制されている。
【0124】
次に、図7(d)に示すように、未反応のNi膜14、Ni膜17、TiN膜15及びTiN膜18を除去する。これは、第1の実施形態の図4(b)に示す工程と同様に、酸性溶液(硫酸又は塩酸と過酸化水素水の混合物)又はアルカリ性溶液(水酸化アンモニウムと過酸化水素水との混合物)を用いて行なえばよい。この際に絶縁膜16が同時にリフトオフされて除去される点についても、図4(b)の工程と同様である。
【0125】
この後は、第1の実施形態において図4(c)〜(d)及び図5(a)〜(b)により示したのと同様の工程を行なうことにより、本実施形態の半導体装置が完成する。
【0126】
つまり、図7(d)の工程の後、図4(c)に示す工程として、二回目の熱処理(500℃で且つ30秒のRTA処理)を行なう。このような高温熱処理を行なうことにより、素子形成領域31及び32におけるNi2 Si膜19aは、ポリシリコン膜3との界面を有することからシリコンの供給をうけてNiSi膜20aに変換される。結果として、ゲート電極7全体がNiSi膜20aとなる。これに対し、素子形成領域33のNi2 Si膜19aは、シリコンの供給を受けることがないために高温熱処理によってもNiSi膜に変換されることはない。
【0127】
また、該二回目の熱処理により、絶縁膜16上に形成されているNi2 Si膜19bについても、シリコンからなる基板50に形成された不純物層10と接しているため、NiSi膜20bに変換される。
【0128】
この後、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31に残されているシリサイド化防止マスク12を除去するため、図4(d)及び図5(a)のように、フォトレジスト5eの形成及びフッ酸洗浄を行ない、その後、フォトレジスト5eを除去する。
【0129】
次に、図5(b)に示すように、素子形成領域31〜34において、それぞれに形成されたMOSトランジスタを覆うように、高ストレスライナー窒化膜25を形成する。
【0130】
以上の工程により、第1の実施形態と同様、素子形成領域31、32、33及び34に対し、それぞれ順に、非シリサイドNMOSトランジスタ21、FUSIゲートNMOSトランジスタ22、FUSIゲートPMOSトランジスタ23及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ24が形成される。
【0131】
本実施形態においても、図7(e)と図4(b)及び(c)とに示すように、不純物層10上に関するシリサイド化と、ゲート電極7のシリサイド化とは同時に行なわれる。このため、不純物層10上のシリサイド膜が余分に熱処理を経験することがない。よって、不純物層10上のNiSi膜20bがNiSi2 膜に相転移するのを抑制することができ、不純物層10の高抵抗化及び浅接合破壊は抑制されている。
【0132】
また、図5(b)に示すように、不純物層10上のNiSi膜20b形成とゲート電極7についてのシリサイド化(Ni2 Si膜19a及びNiSi膜20aの形成)とを終えた後に高ストレスライナー窒化膜25を形成することができる。これにより、NMOSトランジスタのゲート電極に有効な引張り応力を印加することができ、NMOSトランジスタの駆動力向上を図ることができる。
【0133】
尚、本実施形態の半導体装置において、非シリサイドPMOSトランジスタを更に設けることが可能であること、高抵抗ゲートMOSトランジスタ24はNMOS又はPMOSのどちらとすることも可能であること等についても、第1の実施形態と同様である。
【0134】
また、図6(b)に示す絶縁膜16について、本実施形態においても、光エネルギーによる反応励起を利用するCVD法の他、RCRプラズマCVD法又はSOG塗布法等を用いることもできる。
【0135】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。但し、該製造方法にも既に説明した他の実施形態と共通の部分があるため、本実施形態に特徴的な部分を主に説明する。尚、図8(a)〜(d)、図9(a)〜(d)、図10(a)〜(d)、図11(a)〜(d)及び図12(a)〜(b)は、本実施形態の半導体装置を製造する際の各工程を模式的に示す図である。
【0136】
まず、第1の実施形態において図1(a)〜(f)を参照して説明したのと同様の工程を順次行ない、図1(f)の構造を得る。
【0137】
つまり、基板50上にシャロートレンチ1により区画された4つの素子形成領域31〜34が設けられ、それぞれの素子形成領域にはMOSトランジスタ構造が形成されている。ここで、各MOSトランジスタ構造は、厚さ1.6nmのゲート絶縁膜2を介して形成された厚さ100nmのポリシリコン膜からなるゲート電極7と、その側面を覆うサイドウォール9と、サイドウォール9に対して自己整合的に基板50に設けられた不純物層10を含む。
【0138】
ここで、素子形成領域31には後の工程により非シリサイドNMOSを形成する。素子形成領域32及び33については、順にNMOS及びPMOSとし、後の工程により不純物層10上にシリサイド層を設け且つゲート電極7をFUSIゲート電極とする。素子形成領域34のゲート電極7上にはハードマスク6が設けられている。いずれも、図1(f)に示す工程において用いる不純物の選択により、所望の導電型(n型又はp型)を有するMOSトランジスタ構造となっている。
【0139】
次に、図8(a)に示すように、素子形成領域31〜34を覆うように、厚さ400nmのシリコン酸化膜11aを形成する。
【0140】
次に、図8(b)に示すように、CMP法によりシリコン酸化膜11aを研磨して平坦化し、後にFUSIゲートとするポリシリコン膜からなるゲート電極7の上面を露出させる。但し、素子形成領域34については、ゲート電極7上のハードマスク6が露出することになる。
【0141】
次に、図8(c)に示すように、シリコン酸化膜11a上にフォトレジスト5gを形成する。これは、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31において、不純物層10の上方に形成する。
【0142】
次に、図8(d)に示すように、フォトレジスト5gをマスクとしてシリコン酸化膜11aのドライエッチングを行ない、素子形成領域31の不純物層10上を覆うシリサイド化防止マスク12を形成する。
【0143】
ここで、以上の工程を終えた図8(d)の状態を、第1の実施形態における図2(b)の状態とを比較すると、シリサイド化防止マスク12の形状が異なり、他の点については同様である。
【0144】
また、図8(d)の次の工程である図9(a)及びその後の工程は、シリサイド化防止マスク12の形状の違いを除いて、順に、第1の実施形態における図2(c)及びその後の工程と同様である。
【0145】
更に、シリサイド化防止マスクは、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31において、不純物層10上を覆うことにより後に形成するNi膜との接触を防ぎ、不純物層10上におけるシリサイド層の形成を防ぐ機能を有する。このような機能を果たすのであれば、形状が問題になることはない。
【0146】
これらのことから、図8(d)よりも後の工程については図示するにとどめ、詳しい説明を省略する。第1の実施形態において、それぞれ順に、図2(c)〜(e)、図3(a)〜(e)、図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(b)に代えて、本実施形態に関する図9(a)〜(d)、図10(a)〜(d)、図11(a)〜(d)及び図12(a)〜(b)を参照すると、本実施形態おける各工程の説明として読み替えることができる。
【0147】
尚、このような工程により、本実施形態においても、素子形成領域31、32、33及び34に対し、それぞれ順に、非シリサイドNMOSトランジスタ21、FUSIゲートNMOSトランジスタ22、FUSIゲートPMOSトランジスタ23及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ24が形成される。
【0148】
また、NMOSのFUSIゲート電極をNiSi膜20aとすると共にPMOSのFUSIゲート電極をNi2 Si膜19aとすること、不純物層10上におけるシリサイド層の形成をゲート電極7のシリサイド化と同時に行なうことにより、不純物層10の高抵抗化及び浅接合破壊を抑制すること、高ストレスライナー窒化膜25の形成によりNMOSトランジスタの駆動力向上が可能となること等の効果が本実施形態においても実現する。
【0149】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。但し、該製造方法は、第1〜第3の実施形態に基づいて説明することができるため、その点を示すことにより簡略に説明する。
【0150】
尚、図13(a)〜(d)及び図14(a)〜(d)は、本実施形態の半導体装置を製造する際の各工程を模式的に示す図である。
【0151】
まず、第3の実施形態と同様にして、図8(d)の構造を得る。このためには、まず、第1の実施形態等における図1(a)〜(f)の工程を行ない、これに続いて、第3の実施形態における図8(a)〜(d)の工程を行なうことになる。
【0152】
次に、図13(a)〜(d)及び図14(a)〜(d)に示す工程を順に行なう。これらの工程は、第2の実施形態において図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)に示す工程と比較すると、シリサイド化防止マスク12の形状の違いを除いて同様である。第3の実施形態においても述べたように、シリサイド化防止マスク12は不純物層10上におけるシリサイド層の形成を防止する機能を有していれば良いのであり、形状が問題になることはない。
【0153】
そこで、図13(a)〜(d)及び図14(a)〜(d)に示す工程については、詳しい説明を省略する。第2の実施形態において、それぞれ順に、図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)に代えて、本実施形態に関する図13(a)〜(d)及び図14(a)〜(d)を参照することにより、本実施形態おける各工程の説明として読み替えることができる。
【0154】
図14の(d)の工程の後は、第3の実施形態の図11(a)〜(d)及び図12(a)〜(b)の工程と同様にして、本実施形態の半導体装置を製造することができる。これらの工程については、第1の実施形態において、それぞれ順に、図1(c)〜(f)に代えて図11(c)〜(d)及び図12(a)〜(b)を参照して読むことにより説明される。
【0155】
以上の工程により、既に説明した他の実施形態と同様、素子形成領域31、32、33及び34に対し、それぞれ順に、非シリサイドNMOSトランジスタ21、FUSIゲートNMOSトランジスタ22、FUSIゲートPMOSトランジスタ23及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ24が形成される。
【0156】
また、NMOSのFUSIゲート電極をNiSi膜20aとすると共にPMOSのFUSIゲート電極をNi2 Si膜19aとすること、不純物層10上におけるシリサイド層の形成をゲート電極7のシリサイド化と同時に行なうことにより、不純物層10の高抵抗化及び浅接合破壊を抑制すること、高ストレスライナー窒化膜25の形成によりNMOSトランジスタの駆動力向上が可能となること等の効果が本実施形態においても実現する。
【0157】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。但し、該製造方法にも既に説明した他の実施形態と共通の部分があるため、本実施形態に特徴的な部分を主に説明する。尚、図15(a)〜(f)及び図16は、本実施形態の半導体装置を製造する際の各工程を模式的に示す図である。
【0158】
まず、図15(a)には、例えばシリコンからなる基板50上にシャロートレンチ1からなる素子分離が形成され、その後、厚さ1.6nmのゲート絶縁膜2及び厚さ100nmのポリシリコン膜3が下からこの順に積層して形成された状態を示している。ここでは4つのMOSトランジスタを形成するため、シャロートレンチ1により区画された4つの素子形成領域31、32、33及び34が示されている。また、ポリシリコン膜3は、後の工程によりゲート電極に加工するためのものである。
【0159】
次に、図15(b)に示す通り、フォトレジスト5hからなるゲート電極パターンを形成する。
【0160】
次に、図15(c)に示す通り、フォトレジスト5hをマスクとしてドライエッチングを行ない、ポリシリコン膜3及びゲート絶縁膜2をパターニングする。これにより、素子形成領域31〜34上にそれぞれゲート絶縁膜2を介してゲート電極7が形成される。
【0161】
次に、図15(d)に示す通り、それぞれのゲート電極7の側壁を覆うように窒化膜が材料であるサイドウォール9を形成する。更に、基板50に不純物層10を形成する。これは、例えば注入法により、ゲート電極7及びサイドウォール9に対して自己整合的に形成する。これにより、各素子形成領域31〜34において、ポリシリコンゲートを有するMOSトランジスタ構造が形成される。
【0162】
尚、この後の工程により、素子形成領域31には非シリサイドNMOSトランジスタ、素子形成領域32にはFUSIゲートNMOSトランジスタ、素子形成領域33にはFUSIゲートPMOSトランジスタ、素子形成領域34には高抵抗ゲートMOSトランジスタがそれぞれ形成される。ここで、NMOS又はPMOSとするためには、不純物層10形成に用いる不純物の導電型(n型又はp型)を選択すれば良い。
【0163】
次に、図15(e)に示す通り、素子形成領域31〜34においてそれぞれのMOSトランジスタ構造を覆うように、厚さ30nmのシリコン酸化膜11を形成する。
【0164】
更に、シリコン酸化膜11上に、フォトレジスト5iを形成する。これは、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31における不純物層10に対応する領域と、高抵抗ゲートMOSトランジスタを形成する素子形成領域34におけるゲート電極7に対応する領域とに形成する。
【0165】
次に、図15(f)に示す通り、フォトレジスト5iをマスクとしてシリコン酸化膜11のエッチングを行なう。これにより、素子形成領域31の不純物層10上にシリサイド化防止マスク12を形成すると共に、素子形成領域34のゲート電極7上にハードマスク6を形成する。
【0166】
ここで、以上の工程を終えた図15(f)の状態を、第1の実施形態における図2(b)の状態と比較すると、素子形成領域34におけるハードマスク6及びサイドウォール9に関する構成が異なる。つまり、第1の実施形態の場合、ゲート電極7上にハードマスク6が存在する状態においてサイドウォール9を形成するため、ハードマスク6の側面についてもサイドウォール9が覆っている(図2(b)を参照)。これに対し、本実施形態の場合、ゲート電極7の側面を覆うサイドウォール9を形成した後にハードマスク6を形成するため、ハードマスク6の側面はサイドウォール9には覆われていない。
【0167】
しかし、このような素子形成領域34における違いは、当然ながら素子形成領域31〜33における構成には何ら影響するものではない。更に、素子形成領域34において、ハードマスク6がゲート電極7のシリサイド化を防止することにより高抵抗ゲートMOSトランジスタが形成される点は第1の実施形態と同様である。
【0168】
本実施形態の半導体装置の製造方法として、図15(f)に示した工程の後には、第1の実施形態において図2(c)〜(e)、図3(a)〜(e)、図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(b)を参照して説明したのと同様の工程を行なう。但し、これらの工程において、先に述べたハードマスク6の側面がサイドウォール9に覆われていない構成に変化は無い。そのため本実施形態の半導体装置は、図5(b)に代わる図16に示すように製造される。
【0169】
以上の結果、本実施形態においても第1の実施形態等と同様、図16に示すように、4つのMOSトランジスタが形成される。より詳しく述べると、素子形成領域31、32、33及び34に対し、それぞれ順に、非シリサイドNMOSトランジスタ21、FUSIゲートNMOSトランジスタ22、FUSIゲートPMOSトランジスタ23及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ24が形成される。
【0170】
また、NMOSのFUSIゲート電極をNiSi膜20aとすると共にPMOSのFUSIゲート電極をNi2 Si膜19aとすること、不純物層10上におけるシリサイド層の形成をゲート電極7のシリサイド化と同時に行なうことにより、不純物層10の高抵抗化及び浅接合破壊を抑制すること、高ストレスライナー窒化膜25の形成によりNMOSトランジスタの駆動力向上が可能となること等の効果が本実施形態においても実現する。
【0171】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。但し、該製造方法は、既に説明した他の実施形態、特に第2の実施形態及び第5の実施形態に基づいて説明することができるため、その点を示すことにより、簡略に説明する。
【0172】
まず、第5の実施形態において図15(a)〜(f)を参照して説明したのと同様の工程を順次行ない、図15(f)の構造を得る。第5の実施形態において説明した通り、この構造は、ハードマスク6の側面はサイドウォール9によって覆われていない点を除き、第1の実施形態における図2(b)の構造と同様である。
【0173】
また、第2の実施形態における半導体装置の製造方法は、第1の実施形態における図2(b)の工程に続けて図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)に示す工程を行ない、その後、第1の実施形態と同様の図4(c)〜(d)及び図5(a)〜(b)の工程を順次行なうという方法である。
【0174】
そこで、本実施形態の半導体装置の製造方法としては、第5の実施形態と同様に図15(f)の構造を得た後、第2の実施形態と同様に図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(d)と同様の工程を行ない、更に、再び第1の実施形態と同様に、図4(c)〜(d)及び図5(a)〜(b)の工程を行なう。
【0175】
第5の実施形態の場合と同様、図15(f)の構造を得た後の工程において、ハードマスク6の側面がサイドウォール9に覆われていない構成に変化は無い。そのため、本実施形態の半導体装置についても、図16に示すように製造される。
【0176】
以上の結果、本実施形態においても第1の実施形態と同様、図16に示すように4つのMOSトランジスタが形成される。つまり、素子形成領域31、32、33及び34に対し、それぞれ順に、非シリサイドNMOSトランジスタ21、FUSIゲートNMOSトランジスタ22、FUSIゲートPMOSトランジスタ23及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ24が形成される。
【0177】
また、NMOSのFUSIゲート電極をNiSi膜20aとすると共にPMOSのFUSIゲート電極をNi2 Si膜19aとすること、不純物層10上におけるシリサイド層の形成をゲート電極7のシリサイド化と同時に行なうことにより、不純物層10の高抵抗化及び浅接合破壊を抑制すること、高ストレスライナー窒化膜25の形成によりNMOSトランジスタの駆動力向上が可能となること等の効果が本実施形態においても実現する。
【0178】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。但し、該製造方法にも既に説明した他の実施形態と共通の部分があるため、本実施形態に特徴的な部分を主に説明する。尚、図17(a)〜(e)は、本実施形態の半導体装置を製造する際の各工程を模式的に示す図である。
【0179】
まず、第5の実施形態において図15(a)〜(d)を参照して説明したのと同様の工程を順次行ない、図15(d)の構造を得る。つまり、基板50上にシャロートレンチ1により素子分離された素子形成領域31〜34が形成され、それぞれ、ゲート絶縁膜2、ゲート電極7及び不純物層10を含むMOSトランジスタ構造が形成されている。既に説明した他の実施形態と同様、それぞれのMOSトランジスタ構造は所望の導電型(n型又はp型)を有する。
【0180】
図15(d)の構造を得た後、図17(a)に示す通り、素子形成領域31〜34において厚さ400nmのシリコン酸化膜11aを形成する。
【0181】
次に、図17(b)に示す通り、シリコン酸化膜11a上にハードマスクパターンとしてフォトレジスト5jを形成する。これは、高抵抗ゲートMOSトランジスタを形成する素子形成領域34において、ゲート電極7の上方に形成する。
【0182】
次に、図17(c)に示す通り、フォトレジスト5jをマスクとしてドライエッチングを行なう。これにより、素子形成領域31〜33においてゲート電極7の上面を露出させると共に、素子形成領域34のゲート電極7上にパターン化されたシリコン酸化膜27を残す。
【0183】
次に、図17(d)に示す通り、シリコン酸化膜11a上にフォトレジスト5kを形成する。これは、非シリサイドNMOSを形成する素子形成領域31において、不純物層10の上方に形成する。
【0184】
次に、図17(e)に示す通り、フォトレジスト5kをマスクとしてシリコン酸化膜11aに対するドライエッチングを行なう。これにより、素子形成領域31において、素子形成領域31の不純物層10上を覆うシリサイド化防止マスク12を形成する。この際、素子形成領域34のゲート電極7上方に残されているシリコン酸化膜27は厚さが減少するが、完全に除去されることはなく、ゲート電極7のシリサイド化を防止するハードマスク6として残される。
【0185】
ここで、以上の工程を終えた図17(e)の状態を、第3の実施形態における図8(d)と比較すると、素子形成領域34におけるハードマスク6に関する構成が異なる。つまり、第3の実施形態の場合、ゲート電極7の側面に加えてハードマスク6の側面についてもサイドウォール9が覆っている(図8(d)を参照)。これに対し、本実施形態の場合、ハードマスク6の側面はサイドウォール9には覆われていない。
【0186】
しかし、このような素子形成領域34における違いは、当然ながら素子形成領域31〜33における構成には何ら影響するものではない。更に、素子形成領域34において、ハードマスク6がゲート電極7のシリサイド化を防止することにより高抵抗ゲートMOSトランジスタが形成される点は第3の実施形態と同様である。
【0187】
図17(e)に示した工程の後には、第3の実施形態において図9(a)〜(b)、図10(a)〜(d)、図11(a)〜(d)及び図12(a)〜(b)を参照して説明したのと同様の工程により、本実施形態の半導体装置を形成する。但し、これらの工程において、ハードマスク6の側面がサイドウォール9に覆われていない構成に変化は無い。そのため本実施形態の半導体装置は、図16に示すように製造される。
【0188】
以上の結果、本実施形態においても第1の実施形態等と同様、図16に示すように、4つのMOSトランジスタが形成される。より詳しく述べると、素子形成領域31、32、33及び34に対し、それぞれ順に、非シリサイドNMOSトランジスタ21、FUSIゲートNMOSトランジスタ22、FUSIゲートPMOSトランジスタ23及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ24が形成される。
【0189】
また、NMOSのFUSIゲート電極をNiSi膜20aとすると共にPMOSのFUSIゲート電極をNi2 Si膜19aとすること、不純物層10上におけるシリサイド層の形成をゲート電極7のシリサイド化と同時に行なうことにより、不純物層10の高抵抗化及び浅接合破壊を抑制すること、高ストレスライナー窒化膜25の形成によりNMOSトランジスタの駆動力向上が可能となること等の効果が本実施形態においても実現する。
【0190】
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。但し、該製造方法は、既に説明した他の実施形態、特に第4の実施形態及び第7の実施形態に基づいて説明することができるため、その点を示すことにより、簡略に説明する。
【0191】
まず、第7の実施形態と同様にして、図15(a)〜(d)の工程及びそれに続く図17(a)〜(e)の工程を行なうことにより、図17(e)に示す構造を得る。この構造は、第7の実施形態において説明した通り、ハードマスク6の側面がサイドウォール9に覆われていない点を除き、第3の実施形態における図8(d)の構造と同様である。
【0192】
図17(e)の構造を得た後は、第4の実施形態と同様に、図13(a)〜(d)及び図14(a)〜(d)に示す工程と、それに続く図9(c)〜(d)及び図10(a)〜(b)の工程と同様にして半導体装置を製造する。但し、これらの工程において、やはりハードマスク6の側面がサイドウォール9に覆われていない構成に変化は無い。そのため本実施形態の半導体装置は、図16に示すように製造される。
【0193】
以上の結果、本実施形態においても本発明の他の実施形態等と同様、図16に示すように、4つのMOSトランジスタが形成される。より詳しく述べると、素子形成領域31、32、33及び34に対し、それぞれ順に、非シリサイドNMOSトランジスタ21、FUSIゲートNMOSトランジスタ22、FUSIゲートPMOSトランジスタ23及び高抵抗ゲートMOSトランジスタ24が形成される。
【0194】
また、NMOSのFUSIゲート電極をNiSi膜20aとすると共にPMOSのFUSIゲート電極をNi2 Si膜19aとすること、不純物層10上におけるシリサイド層の形成をゲート電極7のシリサイド化と同時に行なうことにより、不純物層10の高抵抗化及び浅接合破壊を抑制すること、高ストレスライナー窒化膜25の形成によりNMOSトランジスタの駆動力向上が可能となること等の効果が本実施形態においても実現する。
【0195】
尚、以上に説明した第1〜第8の実施形態において、種々の層の厚さはいずれも例示するものであり、他の値とすることも当然可能である。
【0196】
また、非シリサイドのMOSトランジスタ及び高抵抗ゲートMOSトランジスタについて、いずれも、PMOS又はNMOSのいずれとすることも可能である。更に、図ではそれぞれひとつずつしか示していないが、PMOS及びNMOSを共に設けても良い。
【0197】
また、第1〜第8のいずれの実施形態においても、絶縁膜16の製法として、光エネルギーによる反応励起を利用するCVD法の他にRCRプラズマCVD法及びSOG塗布法等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、不純物層の高抵抗化及び浅接合破壊を抑制することができ、シリサイド層を有する半導体装置、特にFUSIゲートを用いる半導体装置の製造方法としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】図1(a)〜(f)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、各工程を説明するための図である。
【図2】図2(a)〜(e)は、図1(f)に続く各工程を説明するための図である。
【図3】図3(a)〜(e)は、図2(e)に続く各工程を説明するための図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、図3(e)に続く各工程を説明するための図である。
【図5】図5(a)〜(b)は、図4(d)に続く各工程を説明するための図である。
【図6】図6(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、各工程を説明するための図である。
【図7】図7(a)〜(d)は、図6(d)に続く各工程を説明するための図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、各工程を説明するための図である。
【図9】図9(a)〜(d)は、図8(d)に続く各工程を説明するための図である。
【図10】図10(a)〜(d)は、図9(d)に続く各工程を説明するための図である。
【図11】図11(a)〜(d)は、図10(d)に続く各工程を説明するための図である。
【図12】図12(a)〜(b)は、図11(d)に続く各工程を説明するための図である。
【図13】図13(a)〜(d)は、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、各工程を説明するための図である。
【図14】図14(a)〜(d)は、図13(d)に続く各工程を説明するための図である。
【図15】図15(a)〜(f)は、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、各工程を説明するための図である。
【図16】図16は、本発明の第5〜第8の実施形態に係る半導体装置の製造方法により形成される半導体装置を示す図である。
【図17】図17(a)〜(e)は、本発明の第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、各工程を説明するための図である。
【図18】図18(a)〜(d)は、従来の半導体装置の製造方法について、各工程を説明する図である。
【図19】図19(a)〜(d)は、図18(d)に続く各工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0200】
1 シャロートレンチ
2 ゲート絶縁膜
3 ポリシリコン膜
4 シリコン酸化膜
5 フォトレジスト
5a〜5k フォトレジスト
6 ハードマスク
7 ゲート電極
9 サイドウォール
10 不純物層
11 シリコン酸化膜
11a シリコン酸化膜
12 シリサイド化防止マスク
13 トレンチ
14 Ni膜
15 TiN膜
16 絶縁膜
17 Ni膜
18 TiN膜
19a Si膜
19b Si膜
20a NiSi膜
20b NiSi膜
21 非シリサイドNMOSトランジスタ
22 FUSIゲートNMOSトランジスタ
23 FUSIゲートPMOSトランジスタ
24 高抵抗ゲートMOSトランジスタ
25 高ストレスライナー窒化膜
26 トレンチ
27 パターン化されたシリコン酸化膜
31〜34 素子形成領域
41〜43 開口
50 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、シリコンからなるゲート電極及び前記基板における前記ゲート電極の両側に位置する不純物層を備えるトランジスタを形成する工程と、
少なくとも前記不純物層を覆う第1の金属膜を形成する工程と、
前記第1の金属膜を覆い且つ前記ゲート電極に開口を有する絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート電極上を含む前記絶縁膜上に第2の金属膜を形成する工程と、
前記第1の金属膜及び前記第2の金属膜に対して熱処理を行なうことにより、前記不純物層の上部と、前記ゲート電極とを同時にシリサイド化する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板上に、シリコンからなる第1のゲート電極及び前記基板における前記第1のゲート電極の両側に位置する第1の不純物層を備える第1のトランジスタと、シリコンからなる第2のゲート電極及び前記基板における前記第2のゲート電極の両側に位置する第2の不純物層を備える第2のトランジスタとを形成する工程(a)と、
少なくとも前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層を覆う第1の金属膜を形成する工程(b)と、
前記第1の金属膜を覆い且つ前記第1のゲート電極上方及び前記第2のゲート電極上方に開口を有する絶縁膜を形成する工程(c)と、
前記第1のゲート電極上及び前記第2のゲート電極上を含む前記絶縁膜上に第2の金属膜を形成する工程(d)と、
前記第1の金属膜及び前記第2の金属膜に対して熱処理を行なうことにより、前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層の上部と、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極とをシリサイド化する工程(e)とを備え、
前記工程(a)の後で且つ前記工程(e)の前に、前記第1のゲート電極の厚さと前記第1のゲート電極上の前記第1の金属膜及び前記第2の金属膜の合計厚さとの比が、前記第2のゲート電極の厚さと前記第2のゲート電極上の前記第1の金属膜及び前記第2の金属膜の合計厚さとの比とは異なるようにするための工程(f)を更に備えることにより、
前記工程(e)において、前記第1のゲート電極を第1の金属シリサイドから構成すると共に、前記第2のゲート電極を前記第1の金属シリサイドとは異なる第2の金属シリサイドから構成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記工程(f)は、前記工程(a)の後で且つ前記工程(d)の前に、前記第2のゲート電極の厚さを前記第1のゲート電極の厚さよりも薄くする工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記工程(f)は、前記工程(d)の後で且つ前記工程(e)の前に、前記第1のゲート電極上における前記第2の金属膜の厚さを、前記第2のゲート電極上における前記第2の金属膜の厚さに比べて薄くする工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つにおいて、
前記工程(e)は、
前記第1のゲート電極の上部の一部分と、前記第2のゲート電極の全体とを前記第2の金属シリサイドとする工程(e1)と、
前記第1のゲート電極について、前記工程(e1)において前記第2の金属シリサイドとなった部分及び残りの部分を共に前記第1の金属シリサイドとする工程(e2)とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1つにおいて、
前記第1のトランジスタはnチャネル型トランジスタであり、前記第2のトランジスタがpチャネル型トランジスタであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つにおいて、
前記絶縁膜を、光エネルギーを利用する化学気相成長法によって形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つにおいて、
前記絶縁膜を、プラズマを利用する化学気相成長法によって形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1つにおいて、
前記絶縁膜を、SOG塗布法によって形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項2〜6のいずれか1つにおいて、
前記第1の金属膜はNi膜であり、
前記第1の金属シリサイドはNiSi膜であり、
前記第2の金属シリサイドはNi2 Si膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1つにおいて、
前記工程(b)の後で且つ前記工程(c)の前に、前記第1の金属膜上に第1の金属含有膜を形成する工程を更に備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記第1の金属含有膜は、高融点金属の窒化膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項2〜12のいずれか1つにおいて、
前記工程(d)の後で且つ前記工程(e)の前に、前記第2の金属膜上に第2の金属含有膜を形成する工程を更に備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記第2の金属含有膜は、高融点金属の窒化膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項2〜14のいずれか1つにおいて、
工程(e)の後に、前記基板、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタを覆うライナー膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−135451(P2008−135451A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318653(P2006−318653)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】