説明

半導体装置の製造方法

【課題】付加的な洗浄工程を追加することなくバリア膜の洗浄を行なうことができ、生産コストの上昇が抑えられる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】Low−k膜の開口部に、バリア膜を介在させて銅めっき膜が形成される。次に、バリア膜のルテニウムを除去するための所定の洗浄処理が施される。このとき、半導体基板の裏面に、塩酸と過酸化水素水とをそれぞれ所定時間吐出させる。次に、所定の時間待機することにより、塩酸と過酸化水素水とを反応させる。次に、反応した薬液を、半導体基板を回転させることによってその裏面に均一に広げる。この一連のステップを1サイクルとして、これを少なくとも1回、必要に応じて2回以上繰り返す。塩酸と過酸化水素水とが反応してより濃度の高い塩素イオンが発生することにより、ルテニウムが溶解して除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に、銅配線を備えた半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅配線を適用した半導体装置では、銅配線中の銅が層間絶縁膜へ拡散するのを阻止するために、銅配線と層間絶縁膜との間にバリア膜が形成される。近年、半導体装置の微細化(32nmノード以降)に伴って、バリア膜の材料としてルテニウム(Ru)を適用することが検討されている。ルテニウム(Ru)は、従来から使用されているタンタル(Ta)系のバリア膜と比較して抵抗が低いというメリットがある。また、ルテニウム(Ru)では、銅のシード膜がなくても、銅めっき(ダイレクトめっき)が可能とされる等のメリットがある。
【0003】
バリア膜の材料として、ルテニウム(Ru)を適用する場合、クロスコンタミネーション防止の観点から、特に、ウェハベベル(ウェハの周辺部)のルテニウム(Ru)膜を除去する必要がある。そのようなルテニウム(Ru)膜を除去する手法を開示した文献として、たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4がある。また、これらの他に、所定の薬液によってウェハを洗浄する手法を開示した文献として、たとえば、特許文献5および特許文献6がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−234373号公報
【特許文献2】特開2007−258274号公報
【特許文献3】特開2008−42014号公報
【特許文献4】特開2008−101255号公報
【特許文献5】特開2005−150571号公報
【特許文献6】特開平11−340185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では以下のような問題点があった。ウェハバベルのルテニウム(Ru)膜を溶解させて除去するために、薬液として、硝酸セリウムアンモニウム、あるいは、次亜塩素酸ナトリウム等の金属を含む特殊な薬液が使用される。このような金属を含む薬液を使用してルテニウム(Ru)膜を除去した場合、ウェハ(半導体基板)には薬液中のセリウムやナトリウム等の金属イオンが残留することがある。そのため、ウェハに残留した金属イオンを除去するために追加の洗浄工程が必要とされた。
【0006】
また、薬液中に含まれる塩がウエハの処理を行なうチャンバー内において結晶物となって析出することがあった。そのため、そのような結晶物を除去するために、ウェハ処理装置のメンテナンスに時間を要することとなり、また、生産コストの削減を阻害する要因の一つにもなった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、付加的な洗浄工程を追加することなくバリア膜の洗浄を行なうことができ、生産コストの上昇が抑えられる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、銅配線を備えた半導体装置の製造方法であって、以下の工程を備えている。半導体基板の主表面上に層間絶縁膜を形成する。その層間絶縁膜に開口部を形成する。開口部に露出した表面上に、銅の拡散を阻止する所定の材料からなるバリア膜を形成する。そのバリア膜の上に銅膜を形成する。塩酸と、塩酸と反応することにより塩素イオンを発生する所定の薬液とを混合させて塩素イオンを発生させることにより、バリア膜の部分を溶解して除去する。銅膜に研磨処理を施すことにより、開口部を充填する態様でバリア膜の上に銅配線を形成する。バリア膜の部分を溶解して除去する洗浄工程では、半導体基板の裏面に塩酸と所定の薬液とを吐出させて、裏面において塩酸と薬液とを混合するポストミックス法および塩酸と所定の薬液とを吐出直前で混合して半導体基板の裏面に吐出させるプリミックス法のいずれかの手法により洗浄が行われる。
【0009】
本発明に係る他の半導体装置の製造方法は、銅配線を備えた半導体装置の製造方法であって、以下の工程を備えている。半導体基板の主表面上に層間絶縁膜を形成する。その層間絶縁膜に開口部を形成する。開口部に露出した表面上に、銅の拡散を阻止する所定の材料からなるバリア膜を形成する。そのバリア膜の上に銅膜を形成する。塩素イオンを含む所定の薬液を半導体基板の裏面に吐出させることにより、バリア膜の部分を溶解して除去する。銅膜に研磨処理を施すことにより、開口部を充填する態様でバリア膜の上に銅配線を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、バリア膜の部分を溶解して除去する洗浄工程では、半導体基板の裏面に塩酸と所定の薬液とを吐出させて、裏面において塩酸と薬液とを混合するポストミックス法および塩酸と所定の薬液とを吐出直前で混合して半導体基板の裏面に吐出させるプリミックス法のいずれかの手法により、塩素イオンが発生し、この塩素イオンによりバリア膜が効率的に溶解されて除去される。これにより、バリア膜を除去するために、セリウムやナトリウムといった金属を含んだ薬液による洗浄が不要になる。その結果、そのような薬液に含まれる金属を除去するための付加的な洗浄工程が不要になる。また、そのような薬液に含まれる塩が析出することもなく、洗浄装置のメンテナンスの時間も削減することができる。さらに、塩酸等は半導体製造ラインで標準的に使用されている薬液であり、生産コストも抑えることができる。
【0011】
本発明に係る他の半導体装置の製造方法によれば、塩素イオンを含む所定の薬液を半導体基板の裏面に吐出させることにより、バリア膜の部分を溶解して除去する工程を備えていることで、塩素イオンによりバリア膜が効率的に溶解されて除去される。これにより、バリア膜を除去するために、セリウムやナトリウムといった金属を含んだ薬液による洗浄が不要になる。その結果、そのような薬液に含まれる金属を除去するための付加的な洗浄工程が不要になる。また、そのような薬液に含まれる塩が析出することもなく、洗浄装置のメンテナンスの時間も削減することができる。さらに、塩素イオンを発生させる薬液は、半導体製造ラインで標準的に使用されている薬液であり、生産コストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示す工程における半導体基板の周辺部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】同実施の形態において、図1に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示す工程における半導体基板の周辺部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図5】同実施の形態において、図3に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図6】同実施の形態において、図5に示す工程における半導体基板の周辺部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図7】同実施の形態において、図5に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図8】同実施の形態において、図7に示す工程における半導体基板の周辺部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図9】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図10】同実施の形態において、図9に示す工程における半導体基板の周辺部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図11】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図12】同実施の形態において、図11に示す工程における半導体基板の周辺部の構造を示す部分拡大断面図である。
【図13】同実施の形態において、洗浄工程に使用される洗浄装置の構成を示す図である。
【図14】同実施の形態において、洗浄工程に使用される洗浄装置による処理レシピーの一例を示す図である。
【図15】比較例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す部分拡大断面図である。
【図16】図15に示す工程の後に行われる工程を示す部分拡大断面図である。
【図17】図16に示す工程の後に行われる工程を示す部分拡大断面図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法における洗浄工程に使用される洗浄装置の構成を示す図である。
【図19】同実施の形態において、変形例に係る洗浄装置の構成を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法における洗浄工程に使用される洗浄装置の構成を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態4に係る半導体装置の製造方法における洗浄工程に使用される洗浄装置の構成を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態5に係る半導体装置の製造方法における洗浄工程に使用される洗浄装置の構成を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態6に係る半導体装置の製造方法における洗浄工程に使用される洗浄装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
ここでは、まず、銅配線を形成するための一連の工程について説明する。図1に示すように、半導体基板1上に層間絶縁膜2が形成され、その層間絶縁膜2に銅配線3が形成される。次に、その銅配線3を覆うように層間絶縁膜2上に、SiCO膜あるいはSiCN膜等からなるライナー膜4が形成される。ライナー膜4の上に、所定の誘電率を有するいわゆるLow−k膜5が形成される。そのLow−k膜5の上に、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜からなるキャップ膜が形成される。
【0014】
なお、図1では、Low−k膜5は、このキャップ膜を含むものとして図示されている。この工程が完了した時点で、ウェハベベル(半導体基板1の周辺部)では、図2に示すように、半導体基板1の表面上に、Low−k膜(およびキャップ膜)5が形成された状態にある。また、半導体基板1の裏面には裏面絶縁膜11が形成されている。
【0015】
次に、Low−k膜5上に所定の写真製版処理を施すことにより、レジストパターン(図示せず)が形成される。そのレジストパターンをマスクとして、Low−k膜5にエッチングを施すことにより、図3に示すように、配線溝およびビアホールとなる所定の開口部5aが形成される。次に、エッチング後のポリマーを除去するための所定の洗浄処理が施される。この工程が完了した時点で、ウェハの周辺部では、図4に示すように、半導体基板1の表面上に、Low−k膜(およびキャップ膜)5が露出した状態にある。
【0016】
次に、図5に示すように、スパッタ法により、開口部5aに露出した表面を覆うように、ルテニウムナイトライド(RuN)膜6aおよびルテニウム(Ru)膜6bの積層膜からなるバリア膜6が形成される。次に、スパッタ法により、そのバリア膜6の上に銅シード膜7が形成される。この工程が完了した時点で、ウェハの周辺部では、図6に示すように、Low−k膜(およびキャップ膜)5の上に、バリア膜6と銅シード膜7が積層された状態にある。また、このとき、ルテニウム等のスパッタにより、半導体基板1の裏面には、ルテニウム等が異物66として付着することがある。
【0017】
次に、図7に示すように、銅めっきにより、銅シード膜7上に銅めっき膜8が形成される。この工程が完了した時点で、ウェハの周辺部では、図8に示すように、銅シード膜7の上に銅めっき膜8が形成された状態にある。その後、所定の温度のもとで、銅めっき膜8を結晶化させるためのアニール処理が施される。
【0018】
次に、図9に示すように、ウェハベベルのルテニウム(Ru)膜とウェハ裏面の異物を除去するための所定の洗浄処理(矢印参照)が施される。このとき、塩酸と過酸化水素水を用いた所定の薬液を使用することで、より濃度の高い塩素イオンが発生してルテニウムが溶解される。これにより、図10に示すように、半導体基板(ウェハ)1の裏面等に付着していたルテニウム(Ru)等の異物が除去されることになる。この洗浄工程については、後で詳しく説明する。
【0019】
次に、図11および図12に示すように、化学的機械研磨処理を施すことにより、開口部5a内に位置する銅めっき膜8およびバリア膜6の部分を残して、Low−k膜(あるいはキャップ膜)5の上面上に位置する銅めっき膜8およびバリア膜6の部分が除去される。こうして、開口部5a内に、銅配線3と電気的に接続される他の銅配線9が形成される。こうして、銅配線の主要部分が形成されることになる。
【0020】
上述した銅配線を形成する一連の工程では、バリア膜として形成されるルテニウム膜等の異物を除去するための洗浄工程を設けることで、ルテニウム等に起因した汚染が阻止されることになる。そこで、次に、この洗浄工程について詳しく説明する。まず、ルテニウムの洗浄に使用される枚葉式の洗浄装置の構成を図13に示す。図13に示すように、洗浄装置では、薬液として塩酸と過酸化水素水が適用され、塩酸薬液タンク30と、過酸化水素水薬液タンク31とが設けられている。
【0021】
処理部の密閉チャンバー10内には、塩酸薬液タンク30から送られる塩酸を吐出する薬液スプレーノズル20と、過酸化水素水薬液タンク31から送られる過酸化水素水を吐出する薬液スプレーノズル21が設けられている。塩酸薬液タンク30と薬液スプレーノズル20とを結ぶ配管の途中には、塩酸の温度を調節するヒーター40、薬液フィルター50、薬液循環ポンプ60およびエアーバルブ70が配設されている。また、過酸化水素水薬液タンク31と薬液スプレーノズル21とを結ぶ配管の途中にも、過酸化水素水の温度を調節するヒーター41、薬液フィルター51、薬液循環ポンプ61およびエアーバルブ71が配設されている。
【0022】
さらに、密閉チャンバー10内には洗浄カップ80が設けれている。その洗浄カップ80内には、ウェハ(半導体基板1)90を保持して回転させるステージ100が設けられている。洗浄カップ80の下方には、使用後の薬液を回収して廃棄する回収口110が設けられている。
【0023】
次に、上述した洗浄装置によるウェハの洗浄工程について説明する。まず、図13に示すように、ウェハ(半導体基板1)90の表面側をステージ100に対向させる態様(フェースダウン)で、ウェハ90がステージ100に載置されて保持される。このとき、ステージ100からはウェハ90の表面を保護する目的で窒素(N2)ガスが噴き出している。ウェハ90がステージ100に保持された状態で、ウェハに洗浄処理が施される。その洗浄レシピーの一例を図14に示す。
【0024】
ウェハ90を緩やかに回転させている状態で、エアーバルブ70を開けて、薬液スプレーノズル20より35wt%の塩酸(HCl)をウェハ90の裏面に向けて吐出させる。一定時間吐出させた後、エアーバルブ70を閉じて塩酸の吐出を止める。次に、エアーバルブ71を開けて、薬液スプレーノズル21より30wt%の過酸化水素水(H22)をウェハ90の裏面に向けて吐出させる。一定時間吐出させた後、エアーバルブ71を閉じて過酸化水素水の吐出を止める(ステップ1)。なお、このときのウェハの回転数としては、液盛り状態を維持するために、たとえば30rpm以下が好ましく、ウェハの回転を停止させていてもよい。
【0025】
次に、所定の時間待機することにより、ウェハ90の裏面に供給された塩酸(HCl)と過酸化水素水(H22)とを反応させる(ステップ2)。なお、ヒーター40,41により、あらかじめ塩酸と過酸化水素水とを所定の温度に加熱しておくことで、ウェハ90上での反応が進みやすくなり、処理時間を短縮させることことが可能である。次に、反応した薬液を、ウェハ90を回転させることによってウェハ90の裏面に均一に広げる(ステップ3)。このとき、反応した薬液がウエハ90の周辺部にも到達するように、ウェハの回転数としては、たとえば300rpm以上が好ましい。
【0026】
なお、ステップ1では、エアーバルブ70とエアーバルブ71の開閉のタイミングとして、塩酸を先に吐出させるようにエアーバルブ70を開いてもよいし、反対に、過酸化水素水を先に吐出させるようにエアーバルブ71を開いてもよい。また、エアーバルブ70とエアーバルブ71とを同時に開いてもよい。
【0027】
このステップ1〜ステップ3を1サイクルとして、これを少なくとも1回行うことで、反応した薬液がウエハ90の周辺部にまで到達し、ウェハ90の裏面と周辺部に付着したルテニウム等の異物が溶解されて除去されることになる。さらに、必要に応じて、2サイクル以上繰り返すことによって、サイクルごとに反応した薬液がウエハ90の周辺部にまで到達し、ウェハ90の裏面と周辺部に付着したルテニウム等の異物を確実に溶解してこれを除去することができる。
【0028】
その後、純水ノズル120より純水を吐出し、ウェハ90の裏面に残る薬液を洗い流す。次に、純水の吐出を止めて、ステージ100を回転させることによりウェハ90を乾燥させる。こうして一連の洗浄処理が完了する。洗浄に使用した薬液と水洗に使用した純水は、回収口110において回収された後、廃棄される。洗浄処理が完了したウェハは、洗浄装置から搬出されて次工程へ送られることになる。
【0029】
次に、上述した洗浄工程の作用効果を説明するために、ルテニウム(Ru)等の異物を除去する洗浄工程を備えていない比較例の場合について説明する。比較例に係る製造工程では、まず、図1〜図8に示す工程と同様の工程を経て、銅シード膜上に形成された銅めっき膜に、所定の温度のもとで銅めっき膜を結晶化させるためのアニール処理が施される。この時点で、図15に示すように、バリア膜となるルテニウム等のスパッタにより、半導体基板1の裏面には、ルテニウム等が異物66として付着していることがある。
【0030】
次に、図16に示すように、半導体基板1の裏面等に洗浄(銅裏面洗浄)を施すことにより、半導体基板1の周辺部に位置していた銅シード膜7の部分が除去される。このとき、半導体基板1の裏面に異物66が付着しているような場合には、その異物66は除去されず、依然として付着した状態にある。
【0031】
次に、化学的機械研磨処理を施して、Low−k膜の開口部内に位置する銅めっき膜およびバリア膜の部分を残して、Low−k膜(あるいはキャップ膜)の上面上に位置する銅めっき膜およびバリア膜の部分を除去することにより、開口部内に他の銅配線が形成される。この時点で、図17に示すように、半導体基板1の表面上では、銅めっき膜およびバリア膜の部分が除去された状態となる一方、半導体基板1の周辺部では、研磨されずに残ったバリア膜6の部分が残渣として存在することがある。さらに、半導体基板1の裏面には、ルテニウム等の異物66が依然として付着した状態にある。
【0032】
そうすると、このような状態で後の工程に送られた半導体基板1に対して処理を施す際に、バリア膜6の残渣が半導体基板1から剥がれて、これが異物の原因となったり、半導体基板1の裏面に付着していた異物66が金属汚染等の原因となることがあった。そして、そのようなルテニウム等に起因する汚染を阻止しようとすると、特定の金属(セリウム、ナトリウム等)を含んだ洗浄液による洗浄や、その特定の金属を除去するための付加的な洗浄工程が必要とされた。
【0033】
これに対して、上述した製造方法では、バリア膜(ルテニウム膜)6の異物を除去するための洗浄工程に使用する薬液として、塩酸と過酸化水素水を適用することで、生産コストを抑えながら効率よくルテニウムを除去することができる。
【0034】
塩酸(35wt%)と過酸化水素水(30wt%)とを混合させることで、両薬液は激しく反応して塩素イオンが大量に発生する。この薬液中にルテニウム膜等を浸漬すると、以下のような反応によってルテニウムは溶解する。
【0035】
Ru2+ + 5Cl- → RuCl52-
この塩酸と過酸化水素水を混合した薬液では、セリウムやナトリウムといった金属を含んでいないことで、そのような金属による汚染を抑制することができるとともに、そのような金属を除去するための新たな洗浄工程の必要もない。しかも、塩酸と過酸化水素水は半導体製造ラインで標準的に使用されている薬液であり、安価に入手可能であることから、生産コストの上昇も抑えられる。さらに、また、セリウムやナトリウムといった金属を含んだ薬液に含まれる塩が析出することもなく、洗浄装置のメンテナンスの時間も削減することができる。
【0036】
なお、高濃度の塩酸と過酸化水素水を混合した場合には、激しい反応が短時間で発生し、塩素ガスを放出し終わってしまうことになる。このため、塩酸と過酸化水素水とを混合させた状態で保管しておくことは、薬液の分解が進んで劣化することなり、バリア膜(ルテニウム膜)の洗浄には適さなくなる。そこで、塩酸と過酸化水素水とを別個に保管し、ウェハの裏面において、両薬液を混合させることで、ルテニウム膜を効率よく溶解して除去することができる。上述した製造方法では、半導体基板1(ウェハ)の裏面上において塩酸と過酸化水素水とを混合させて反応させることで、効率的に短時間でルテニウム膜を除去することができる。
【0037】
実施の形態2
ここでは、薬液スプレーノズルの直前において、薬液を混合させて洗浄する場合について説明する。なお、実施の形態2以降の実施の形態では、一連の銅配線の形成工程のうちのルテニウム等の洗浄工程に適用される洗浄装置と、それを用いた製造方法(洗浄方法)について説明する。
【0038】
図18に示すように、洗浄装置には、密閉チャンバー10内に薬液を吐出する薬液スプレーノズル20が設けらている。その薬液スプレーノズル20の直前に、塩酸と過酸化水素水とを混合するミキサ160が設けられている。なお、これ以外の構成については、図13に示す洗浄装置と同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
【0039】
次に、上述した洗浄装置によるウェハの洗浄工程について説明する。まず、ウェハ(半導体基板1)90の表面側をステージ100に対向させる態様(フェースダウン)で、ウェハ90がステージ100に載置されて保持される。次に、エアーバルブ70とエアーバルブ71とを開いて、35wt%の塩酸(HCl)と30wt%の過酸化水素水(H22)とをミキサー160内で混合させる。塩酸と過酸化水素水とを混合することによって、塩素ガスが発生している状態の薬液を薬液スプレーノズル20より、ウェハ90の裏面に向けて一定時間吐出させる。
【0040】
このとき、薬液をウェハ90の裏面に均一に広げ、そして、薬液がウエハ90の周辺部にも到達するように、ウェハ90を回転させながら薬液を吐出させる。ウェハの回転数としては、たとえば300rpm以上が好ましい。これにより、ウェハ90の裏面と周辺部に付着したルテニウム等の異物が溶解されて除去される。また、ヒーター40,41により、あらかじめ塩酸と過酸化水素水とを所定の温度に加熱しておくことで、ウェハ90上での反応が進みやすくなり、処理時間を短縮させることことが可能である。
【0041】
次に、エアーバルブ70とエアーバルブ71とを閉じて、塩酸と過酸化水素水の吐出を止める。エアーバルブ70,71を開けたり閉じたりするタイミングとしては、エアーバルブ70およびエアーバルブ71のいずれが先でも同時でもよい。
【0042】
その後、純水ノズル120より純水を吐出し、ウェハ90の裏面に残る薬液を洗い流す。次に、純水の吐出を止めて、ステージ100を回転させることによりウェハ90を乾燥させる。こうして一連の洗浄処理が完了する。洗浄に使用した薬液と水洗に使用した純水は、回収口110において回収された後、廃棄される。洗浄処理が完了したウェハは、洗浄装置から搬出されて次工程へ送られることになる。
【0043】
上述した製造方法では、薬液スプレーノズル20の直前に設けられたミキサー160内において、塩酸と過酸化水素とが混合されて活性な塩素イオンが大量に発生する。発生した塩素イオンによってルテニウム(Ru)が溶解し、これを除去することができる。
【0044】
塩酸と過酸化水素水との反応は急激に進み、比較的短時間のうちに塩素ガスと水に変わってしまう。このため、塩酸と過酸化水素水とを予め循環タンク内等で混合して保存しておくと、混合した時点で劣化が進み、半導体基板(ウェハ)を処理する時点では反応の進行が当初よりも遅くなって、処理時間の増大につながり適さない。本実施の形態で、半導体基板に吐出する直前のミキサー160内でしか反応が起きないため、効率的に短時間にルテニウム(Ru)のエッチングが可能になる。
【0045】
変形例
上述した洗浄装置では、薬液スプレーノズル20の直前にミキサー160を設けた場合を例に挙げて説明した。洗浄装置としては、ミキサー160を設ける代わりに、塩酸と過酸化水素水とを合流させた後に、配管内において塩酸と過酸化水素水が均一に混合されて反応しうる所定の長さの配管を設けるようにしてもよい。そのような配管の一例として、図19に示すように、スパイラル状の配管部170を設けるようにしてもよい。
【0046】
実施の形態3
ここでは、薬液として塩酸とオゾン水を用いて洗浄する場合について説明する。図20に示すように、洗浄装置では、薬液として塩酸とオゾン水が適用され、塩酸を貯留した塩酸薬液タンク30と、オゾン水を貯留したオゾン水ユニット130とが設けられている。なお、これ以外の構成については、図13に示す洗浄装置と同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
【0047】
次に、上述した洗浄装置によるウェハの洗浄工程について説明する。まず、図20に示すように、ウェハ(半導体基板1)90の表面側をステージ100に対向させる態様(フェースダウン)で、ウェハ90がステージ100に載置されて保持される。このとき、ステージ100からはウェハ90の表面を保護する目的で窒素(N2)ガスが噴き出している。ウェハ90がステージ100に保持された状態で、ウェハに洗浄処理が施される。
【0048】
ウェハ90を緩やかに回転させている状態で、エアーバルブ70を開けて、薬液スプレーノズル20より35wt%の塩酸(HCl)をウェハ90の裏面に向けて吐出させる。一定時間吐出させた後、エアーバルブ70を閉じて塩酸の吐出を止める。次に、エアーバルブ71を開けて、薬液スプレーノズル21よりオゾン水(O3)をウェハ90の裏面に向けて吐出させる。一定時間吐出させた後、エアーバルブ71を閉じてオゾン水の吐出を止める(ステップ1)。なお、このときのウェハの回転数としては、液盛り状態を維持するために、たとえば30rpm以下が好ましく、ウェハの回転を停止させていてもよい。
【0049】
次に、所定の時間待機することにより、ウェハ90の裏面に供給された塩酸(HCl)とオゾン水(O3)とを反応させる(ステップ2)。なお、ヒーター40,41により、あらかじめ塩酸とオゾン水とを所定の温度に加熱しておくことで、ウェハ90上での反応が進みやすくなり、処理時間を短縮させることことが可能である。次に、反応した薬液を、ウェハ90を回転させることによってウェハ90の裏面に均一に広げる(ステップ3)。このとき、反応した薬液がウエハ90の周辺部にも到達するように、ウェハの回転数としては、たとえば300rpm以上が好ましい。
【0050】
なお、ステップ1では、エアーバルブ70とエアーバルブ71の開閉のタイミングとして、塩酸を先に吐出させるようにエアーバルブ70を開いてもよいし、反対に、オゾン水を先に吐出させるようにエアーバルブ71を開いてもよい。また、エアーバルブ70とエアーバルブ71とを同時に開いてもよい。
【0051】
このステップ1〜ステップ3を1サイクルとして、これを少なくとも1回行うことで、反応した薬液がウエハ90の周辺部にまで到達し、ウェハ90の裏面と周辺部に付着したルテニウム等の異物が溶解されて除去されることになる。さらに、必要に応じて、2サイクル以上繰り返すことによって、サイクルごとに反応した薬液がウエハ90の周辺部にまで到達し、ウェハ90の裏面と周辺部に付着したルテニウム等の異物を確実に溶解してこれを除去することができる。
【0052】
その後、純水ノズル120より純水を吐出し、ウェハ90の裏面に残る薬液を洗い流す。次に、純水の吐出を止めて、ステージ100を回転させることによりウェハ90を乾燥させる。こうして一連の洗浄処理が完了する。洗浄に使用した薬液と水洗に使用した純水は、回収口110において回収された後、廃棄される。洗浄処理が完了したウェハは、洗浄装置から搬出されて次工程へ送られることになる。
【0053】
上述した製造方法では、バリア膜(ルテニウム膜)6の異物を除去するための洗浄工程に使用する薬液として、塩酸とオゾン水を適用することで、生産コストを抑えながら効率よくルテニウムを除去することができる。
【0054】
塩酸とオゾン水とを混合させることで、両薬液は激しく反応して塩素イオンが大量に発生する。この薬液中にルテニウム膜を浸漬すると、塩素イオンによってルテニウムは溶解する。塩酸とオゾン水を混合した薬液では、セリウムやナトリウムといった金属を含んでいないことで、そのような金属による汚染を抑制することができるとともに、そのような金属を除去するための新たな洗浄工程の必要もない。しかも、塩酸等は半導体製造ラインで標準的に使用されている薬液であり、安価に入手可能である。
【0055】
なお、高濃度の塩酸とオゾン水を混合した場合には、激しい反応が短時間で発生し、塩素ガスを放出し終わってしまうことになる。このため、塩酸とオゾン水とを混合させた状態で保管しておくことは、薬液の分解が進んで劣化することなり、バリア膜(ルテニウム膜)の洗浄には適さなくなる。そこで、塩酸とオゾン水とを別個に保管し、ウェハの直前において、両薬液を混合させることで、ルテニウム膜を効率よく溶解して除去することができる。上述した製造方法では、半導体基板1(ウェハ)上において塩酸とオゾン水とを混合させて反応させることで、効率的に短時間でルテニウム膜を除去することができる。
【0056】
実施の形態4
ここでは、薬液スプレーノズルの直前において、薬液を混合させて洗浄する場合について説明する。
【0057】
図21に示すように、洗浄装置には、密閉チャンバー10内に薬液を吐出する薬液スプレーノズル20が設けらている。その薬液スプレーノズル20の直前に、塩酸とオゾン水とを混合するミキサ160が設けられている。なお、これ以外の構成については、図20に示す洗浄装置と同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
【0058】
次に、上述した洗浄装置によるウェハの洗浄工程について説明する。まず、ウェハ(半導体基板1)90の表面側をステージ100に対向させる態様(フェースダウン)で、ウェハ90がステージ100に載置されて保持される。次に、エアーバルブ70とエアーバルブ71とを開いて、35wt%の塩酸(HCl)とオゾン水とをミキサー160内で混合させる。塩酸とオゾン水とを混合することによって、塩素ガスが発生している状態の薬液を薬液スプレーノズル20より、ウェハ90の裏面に向けて一定時間吐出させる。
【0059】
このとき、薬液をウェハ90の裏面に均一に広げ、そして、薬液がウエハ90の周辺部にも到達するように、ウェハ90を回転させながら薬液を吐出させる。ウェハの回転数としては、たとえば300rpm以上が好ましい。これにより、ウェハ90の裏面と周辺部に付着したルテニウムの異物が溶解されて除去される。また、ヒーター40,41により、あらかじめ塩酸とオゾン水とを所定の温度に加熱しておくことで、ウェハ90上での反応が進みやすくなり、処理時間を短縮させることことが可能である。
【0060】
次に、エアーバルブ70とエアーバルブ71とを閉じて、塩酸とオゾン水の吐出を止める。エアーバルブ70,71を開けたり閉じたりするタイミングとしては、エアーバルブ70およびエアーバルブ71のいずれが先でも同時でもよい。
【0061】
その後、純水ノズル120より純水を吐出し、ウェハ90の裏面に残る薬液を洗い流す。次に、純水の吐出を止めて、ステージ100を回転させることによりウェハ90を乾燥させる。こうして一連の洗浄処理が完了する。洗浄に使用した薬液と水洗に使用した純水は、回収口110において回収された後、廃棄される。洗浄処理が完了したウェハは、洗浄装置から搬出されて次工程へ送られることになる。
【0062】
上述した製造方法では、薬液スプレーノズル20の直前に設けられたミキサー160内において、塩酸とオゾン水とが混合されて活性な塩素イオンが大量に発生する。そして、塩素イオンが発生した薬液がウェハ90の裏面に吐出され、その発生した塩素イオンによってルテニウム(Ru)が溶解し、これを除去することができる。
【0063】
塩酸とオゾン水との反応は急激に進み、比較的短時間のうちに塩素ガスと水に変わってしまう。このため、塩酸とオゾン水とを予め循環タンク内等で混合して保存しておくと、混合した時点で劣化が進み、半導体基板(ウェハ)を処理する時点では反応の進行が当初よりも遅くなって、処理時間の増大につながり適さない。本実施の形態で、半導体基板に吐出する直前のミキサー160内でしか反応が起きないため、効率的に短時間にルテニウム(Ru)のエッチングが可能になる。
【0064】
実施の形態5
ここでは、薬液として塩酸イオンを含む薬液を用いて洗浄する場合について説明する。図22に示すように、洗浄装置では、薬液として塩素イオンを含む薬液が使用され、塩素ガスが充填された塩素ガスボンベ35と、純水を貯留させた循環タンク140とが設けられている。塩素ガスボンベ35に充填された塩素ガスを循環タンク140に貯留された純水に所定の濃度溶存させるために、流量コントローラ180と塩素濃度計150が設けられている。
【0065】
処理部の密閉チャンバー10内には、純水に塩素ガスを溶存させた薬液を吐出する薬液スプレーノズル20が設けられている。循環タンク140と薬液スプレーノズル20とを結ぶ配管の途中には、塩素ガスが溶存した薬液の温度を調節するヒーター40、薬液フィルター50、薬液循環ポンプ60およびエアーバルブ70が配設されている。なお、これ以外の構成については、図13に示す洗浄装置と同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
【0066】
次に、上述した洗浄装置によるウェハの洗浄工程について説明する。まず、図22に示すように、ウェハ(半導体基板1)90の表面側をステージ100に対向させる態様(フェースダウン)で、ウェハ90がステージ100に載置されて保持される。次に、エアーバルブ70を開けて、薬液スプレーノズル20より所望の塩素濃度に制御された薬液(塩素水)をウェハ90の裏面に向けて吐出させる。一定時間吐出させた後、エアーバルブ70を閉じて薬液の吐出を止める。
【0067】
このとき、薬液をウェハ90の裏面に均一に広げ、そして、薬液がウエハ90の周辺部にも到達するように、ウェハ90を回転させながら薬液を吐出させる。ウェハの回転数としては、たとえば300rpm以上が好ましい。これにより、ウェハ90の裏面と周辺部に付着したルテニウムの異物が溶解されて除去される。また、ヒーター40により、あらかじめ薬液を所定の温度に加熱しておくことで、ウェハ90上での反応が進みやすくなり、処理時間を短縮させることが可能である。
【0068】
次に、エアーバルブ70を閉じて、薬液の吐出を止める。その後、純水ノズル120より純水を吐出し、ウェハ90の裏面に残る薬液を洗い流す。次に、純水の吐出を止めて、ステージ100を回転させることによりウェハ90を乾燥させる。こうして一連の洗浄処理が完了する。洗浄に使用した薬液と水洗に使用した純水は、回収口110において回収された後、廃棄される。洗浄処理が完了したウェハは、洗浄装置から搬出されて次工程へ送られることになる。
【0069】
上述した製造方法では、循環タンク140内において塩素ガスを純水に溶存させることで、活性な塩素イオンが大量に発生する。発生した塩素イオンによってルテニウム(Ru)が溶解し、これを除去することができる。
【0070】
薬液を予め循環タンク内で保存しておくと劣化が進み、半導体基板(ウェハ)を処理する時点では反応の進行が当初よりも遅くなって、処理時間の増大につながり適さない。本実施の形態では、循環タンク内で劣化した分の塩素ガスを補うことで活性な状態を保つことができ、効率的に短時間にルテニウム(Ru)のエッチングが可能になる。
【0071】
変形例
上述した洗浄装置では、塩素濃度計と流量コントローラを設けて、純水に溶存させる塩素ガスの濃度が一定になるように、塩素ガスの量を制御する場合を例に挙げて説明した。塩素ガスを純水に供給して溶存させる手法としては、ウェハの洗浄処理を行っていない待機時には塩素ガスの供給を停止し、ウェハの洗浄処理を行うときのみ、塩素ガスの濃度を一定に制御する動作を行うようにしてもよい。具体的には、ウェハの洗浄を開始する信号を受け取ってから塩素ガスの濃度を一定にする制御を開始し、ウェハの洗浄処理が完了した信号を受け取ってから塩素ガスの濃度の制御を停止するようにしてもよい。
【0072】
こうすることで、塩素ガスの濃度が常時制御されていないため、ウェハの処理を開始する信号を受け取ってから、ウェハの処理が終了するまでの処理時間が、上述の洗浄装置の場合と比べて増えてしまうことになるが、ウェハ処理が行なわれていない間の塩素ガスの消費を抑えることができる。
【0073】
実施の形態6
ここでは、薬液スプレーノズルの直前において、薬液を混合させて洗浄する場合について説明する。
【0074】
図23に示すように、洗浄装置には、密閉チャンバー10内に薬液を吐出する薬液スプレーノズル20が設けらている。その薬液スプレーノズルの直前に、塩素ガスと純水とを混合するミキサー160が設けられている。また、ミキサー160と塩素ガスボンベ35とを結ぶ配管の途中には、エアーバルブ70と流量コントローラ180が設けられている。ミキサー160と循環タンク140とを結ぶ配管の途中には、エアーバルブ71が設けられている。なお、これ以外の構成については、図22に示す洗浄装置と同様なので、同一部材には同一符号を付しその説明を省略する。
【0075】
次に、上述した洗浄装置によるウェハの洗浄工程について説明する。まず、ウェハ(半導体基板1)90の表面側をステージ100に対向させる態様(フェースダウン)で、ウェハ90がステージ100に載置されて保持される。次に、エアーバルブ70とエアーバルブ71とを開いて、塩素ガスと純水とをミキサー160内で混合させる。塩素ガスを純水に溶存させて塩素ガスが発生している状態の薬液を薬液スプレーノズル20より、ウェハ90の裏面に向けて一定時間吐出させる。
【0076】
このとき、薬液をウェハ90の裏面に均一に広げ、そして、薬液がウエハ90の周辺部にも到達するように、ウェハ90を回転させながら薬液を吐出させる。ウェハの回転数としては、たとえば300rpm以上が好ましい。これにより、ウェハ90の裏面と周辺部に付着したルテニウムの異物が溶解されて除去される。また、ヒーター40により、あらかじめ純水を所定の温度に加熱しておくことで、ウェハ90上での反応が進みやすくなり、処理時間を短縮させることことが可能である。
【0077】
次に、エアーバルブ70とエアーバルブ71とを閉じて、薬液の吐出を止める。エアーバルブ70,71を開けたり閉じたりするタイミングとしては、エアーバルブ70およびエアーバルブ71のいずれが先でも同時でもよい。
【0078】
その後、純水ノズル120より純水を吐出し、ウェハ90の裏面に残る薬液を洗い流す。次に、純水の吐出を止めて、ステージ100を回転させることによりウェハ90を乾燥させる。こうして一連の洗浄処理が完了する。洗浄に使用した薬液と水洗に使用した純水は、回収口110において回収された後、廃棄される。洗浄処理が完了したウェハは、洗浄装置から搬出されて次工程へ送られることになる。
【0079】
上述した製造方法では、薬液スプレーノズル20の直前に設けられたミキサー160内において、塩素ガスと純水とが混合されて活性な塩素イオンが大量に発生する。発生した塩素イオンによってルテニウム(Ru)が溶解し、これを除去することができる。
【0080】
塩素ガスが溶存した塩素水を予めタンク内等で保存しようとすると、混合した時点で劣化が進み、半導体基板(ウェハ)を処理する時点では反応の進行が当初よりも遅くなって、処理時間の増大につながり適さない。本実施の形態で、半導体基板に吐出する直前のミキサー160内でしか反応が起きないため、効率的に短時間にルテニウム(Ru)のエッチングが可能になる。
【0081】
なお、上述した各実施の形態では、バリア膜として、主としてルテニウム膜を含むバリア膜を例に挙げて説明した。バリア膜の材料としては、ルテニウムに限られず、たとえば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウムナイトライド(RuN)、タンタルナイトライド(TaN)、チタンナイトライド(TiN)、ルテニウム合金、タンタル合金、チタン合金、ルテニウム合金の窒化物、タンタル合金の窒化物、チタン合金の窒化物等の材料からなるバリア膜についても、上述した各洗浄方法を適用することが可能である。
【0082】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
1 半導体基板、2 層間絶縁膜、3 銅配線、4 ライナー膜、5 Low−k膜、5a 開口部、6 バリア膜、6a ルテニウムナイトライド(RuN)、6b ルテニウム(Ru)、66 異物、7 銅シード膜、8 銅めっき膜、9 銅配線、10 密閉チャンバー、11 裏面絶縁膜、20 薬液スプレーノズル、21 薬液スプレーノズル、30 塩酸薬液タンク、31 過酸化水素水薬液タンク、35 塩素ガスボンベ、40,41 ヒータ、50,51 薬液フィルター、60,61 薬液循環ポンプ、70,71 エアーバルブ、80 洗浄カップ、100 ステージ、110 回収口、120 純水ノズル、130 オゾン水ユニット、140 純水循環タンク、150 塩素濃度計、160 ミキサー、170 スパイラル状の配管部、180 流量コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅配線を備えた半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の主表面上に、層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に開口部を形成する工程と、
前記開口部に露出した表面上に、銅の拡散を阻止する所定の材料からなるバリア膜を形成する工程と、
前記バリア膜の上に銅膜を形成する工程と、
塩酸と、前記塩酸と反応することにより塩素イオンを発生する所定の薬液とを混合させて塩素イオンを発生させることにより、前記バリア膜の部分を溶解して除去する洗浄工程と、
前記銅膜に研磨処理を施すことにより、前記開口部を充填する態様で前記バリア膜の上に銅配線を形成する工程と
を備え、
前記洗浄工程では、前記半導体基板の裏面に前記塩酸と所定の前記薬液とを吐出させて、前記裏面において前記塩酸と前記薬液とを混合するポストミックス法および前記塩酸と所定の前記薬液とを吐出直前で混合して前記半導体基板の裏面に吐出させるプリミックス法のいずれかの手法により洗浄が行われる、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記バリア膜の部分を除去する工程では、所定の前記薬液として過酸化水素水が適用される、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記バリア膜の部分を除去する工程では、前記所定の薬液としてオゾン水が適用される、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
銅配線を備えた半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の主表面上に、層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に開口部を形成する工程と、
前記開口部に露出した表面上に、銅の拡散を阻止する所定の材料からなるバリア膜を形成する工程と、
前記バリア膜の上に銅膜を形成する工程と、
塩素イオンを含む所定の薬液を前記半導体基板の裏面に吐出させることにより、前記バリア膜の部分を溶解して除去する洗浄工程と、
前記銅膜に研磨処理を施すことにより、前記開口部を充填する態様で前記バリア膜の上に銅配線を形成する工程と
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記洗浄工程では、所定の前記薬液は、塩素ガスボンベより供給される塩素ガスを純水に溶存させることにより供給される、請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄工程で、
洗浄装置として、
塩素ガスボンベより供給される塩素ガスを純水に溶存させるガス溶存機構と、
塩素の濃度を測定する塩素濃度計と、
流量計と
を有し、
溶存塩素の濃度を一定に制御する機能を備えた洗浄装置が使用される、請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄装置では、
洗浄が行われる際に前記溶存塩素の濃度を一定に制御する機能が動作し、
洗浄が行われない待機状態では、前記塩素ガスの供給が停止される、請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記洗浄工程では、
洗浄装置として、
塩素ガスを供給する塩素ガス供給部と、
純水を供給する純水供給部と
を有し、
吐出直前に前記塩素ガスと前記純水とを混合させて吐出する機能を備えた洗浄装置が使用される、請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記バリア膜は、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウムナイトライド(RuN)、タンタルナイトライド(TaN)、チタンナイトライド(TiN)、ルテニウム合金、タンタル合金、チタン合金、ルテニウム合金の窒化物、タンタル合金の窒化物およびチタン合金の窒化物のいずれかを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−278386(P2010−278386A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132035(P2009−132035)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】