説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】ホウ素(B)のゲート絶縁膜の突き抜けや金属シリサイド膜による不純物の吸収によって生じるポリシリコン膜中の不純物の空乏化を防止する。
【解決手段】半導体装置100は、ゲート絶縁膜13と、ゲート絶縁膜13上に形成されたゲート電極14とを備える。ゲート電極14は、ドープドポリシリコン膜21a、21b、21cと、金属シリサイド膜22aとを備えている。ドープドポリシリコン膜21a、21cは、第1の不純物を含んでおり、ドープドポリシリコン膜21bは、反対の導電型を有する第2の不純物を含んでいる。これにより、ポリシリコン中の不純物の拡散工程やその後の熱負荷工程において、第2のドープドポリシリコン膜中の不純物の過度な拡散が抑制され、金属シリサイド膜が不純物を吸収することによるポリシリコン膜中の不純物の空乏化が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、多層構造のシリコンゲートを備えた半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デュアルゲート構造のCMOSが注目されている。通常のCMOSでは、nポリシリコン膜上に金属シリサイド膜を積層したポリメタルゲートをNMOSFETとPMOSFETの両方で使用するシングルゲート構造が採用されている。シングルゲート構造はシンプルなプロセスで実現できるが、PMOSFETにおいて短チャネル効果が発生しやすいため、微細なデバイスの実現は困難である。
【0003】
これに対し、デュアルゲート構造のCMOSでは、nポリシリコンと金属シリサイドを積層したポリメタルゲートをNMOSFETに用い、pポリシリコンと金属シリサイドを積層したポリメタルゲートをPMOSFETに用いる。そのため、短チャネル効果が小さく駆動力の大きなCMOSを実現することができる。
【0004】
図13は、デュアルゲート構造を有する従来の半導体装置の製造工程の一部を示す略断面図である。
【0005】
図13に示すように、デュアルゲートの形成では、まずシリコン基板51上にSiONからなるゲート絶縁膜52を形成した後、ゲート電極用のノンドープドアモルファスシリコン膜53を形成する。次に、ノンドープドアモルファスシリコン膜53にp型不純物又はn型不純物を導入する。このとき、NMOSであればリン(P)、ヒ素(As)等のn型不純物をイオン注入し、PMOSであればホウ素(B)、二フッ化ホウ素(BF)等のp型不純物をイオン注入する。つまり、ゲート電極の導電型に応じたドーパントの打ち分けが行われる。その後、タングステンシリサイド(WSi)等の金属シリサイド膜54を形成し、さらに不純物を活性化させるためのアニール等の高温熱負荷工程を行って、アモルファスシリコン膜53中にドーパントを拡散させている。
【0006】
ところで、上述した従来の半導体装置の製造方法においては、PMOSFETの形成領域のアモルファスシリコン膜53中にドーピングしたホウ素(B)が高温熱負荷の際にゲート絶縁膜52を突き抜けてシリコン基板51にまで達する、いわゆるホウ素突き抜けの問題が発生することが知られている。ホウ素の突き抜けが生じると、PMOSFETの閾値電圧(Vth)が大きく変動してしまい、トランジスタ特性が劣化するという問題がある。
【0007】
ホウ素突き抜けの問題を解決するため、例えば特許文献1においては、NMOSFET及びPMOSFETの各ゲート電極のポリシリコンにp不純物を導入し、pシングルゲートを採用すると共に、ゲート絶縁膜が、窒素を最大濃度領域にて1×1020/cm以上1×1022/cm以下の範囲で含む窒化酸化膜(SiON)で形成されたCMOSFETが提案されている。
【特許文献1】特開2000−114395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の半導体装置の製造においては、ホウ素(B)がゲート絶縁膜を突き抜けることによる閾値電圧(Vth)のばらつきを生じさせるという問題がある。また、高温熱処理の際、金属シリサイド膜がポリシリコン膜中の不純物を吸収することや、ポリシリコン膜外への不純物流出によって、ポリシリコン膜中の不純物の空乏化が引き起こされ、トランジスタ特性が低下するという問題もある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ポリシリコン膜中の不純物濃度プロファイルが良好であり、閾値電圧のばらつきが抑制された高性能な半導体装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、ホウ素(B)のゲート絶縁膜の突き抜けや金属シリサイド膜による不純物の吸収によって生じるポリシリコン膜中の不純物の空乏化を防止することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、シリコン基板上と、シリコン基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、ゲート電極は、ゲート絶縁膜上に形成された第1のドープドポリシリコン膜と、第1のドープドポリシリコン膜上に形成された第2のドープドポリシリコン膜とを備え、第1のドープドポリシリコン膜は、第1の不純物を含み、第2のドープドポリシリコン膜は、第1の不純物とは反対の導電型を有する第2の不純物を含むことを特徴とする半導体装置によって達成される。
【0012】
本発明によれば、第2のドープドポリシリコン膜とゲート絶縁膜との間に第1のドープドポリシリコン膜が介在しており、第1ドープドポリシリコン膜中の不純物と第2のドープドポリシリコン膜中の不純物の導電型が異なることから、ポリシリコン中の不純物の拡散工程やその後の高温熱負荷工程において、第2のドープドポリシリコン膜中の不純物の過度な拡散が抑制される。したがって、不純物がゲート絶縁膜の突き抜けることによって生じるVthのばらつきやポリシリコン膜中の不純物の空乏化を防止することができる。
【0013】
本発明において、ゲート電極は、第2のドープドポリシリコン膜上に形成された第3のドープドポリシリコン膜をさらに備え、第3のドープドポリシリコン膜は、第1の不純物を含むことが好ましい。また、ゲート電極は、第3のドープドポリシリコン膜上に形成された金属シリサイド膜をさらに備えることが好ましい。
【0014】
ゲート電極が金属シリサイドを含む場合には、ポリシリコン中の不純物の拡散工程やその後の高温熱負荷工程において、金属シリサイド膜が不純物を吸収し、ポリシリコン膜中の不純物の空乏化を生じさせるが、第2のポリシリコン膜と金属シリサイド膜との間に第3のドープドポリシリコン膜が介在している場合には、第2のドープドポリシリコン膜中の不純物の過度な拡散を抑制することができ、金属シリサイド膜が不純物を吸収することによるポリシリコン膜中の不純物の空乏化を防止することができる。
【0015】
本発明において、第1及び第3のドープドポリシリコン膜中の第1の不純物の濃度は、第2のドープドポリシリコン膜中の第2の不純物の濃度よりも低いことが好ましい。また、第1及び第3のドープドポリシリコン膜は、第2の不純物をさらに含み、第1及び第3のドープドポリシリコン膜中の第2の不純物の濃度は、第2のドープドポリシリコン膜中の第2の不純物の濃度よりも低いことが好ましい。1乃至第3のドープドポリシリコン膜中の不純物濃度が以上のような関係を有していれば、特性の良好なポリシリコンゲートを構成することができる。
【0016】
なお、本発明においては、第1の不純物がリン(P)であり、第2の不純物がホウ素(B)であることが好ましい。第2の不純物としてホウ素(B)を用いた場合には、熱負荷工程において不純物のゲート絶縁膜突き抜けの問題が顕著に現れ、本発明の効果も顕著となるからである。また、第1の不純物としてリン(P)を用いた場合には、熱負荷工程におけるリン(P)自体の拡散が特に酸化膜中で起こり難く、しかもホウ素(B)の過度な拡散を阻止する効果を有し、ホウ素(B)のゲート絶縁膜突き抜けを防止できるからである。
【0017】
本発明の上記目的はまた、シリコン基板上にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、シリコン基板全体に熱負荷を加える熱負荷工程とを備え、ゲート電極形成工程は、ゲート絶縁膜上に第1の不純物がドープされた第1のドープドアモルファスシリコン膜を形成する第1のドープドアモルファスシリコン膜形成工程と、第1のドープドアモルファスシリコン膜上にノンドープドアモルファスシリコン膜を形成するノンドープドアモルファスシリコン膜形成工程と、ノンドープドアモルファスシリコン膜中に第1の不純物とは逆の導電型を有する第2の不純物をイオン注入するイオン注入工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法によっても達成される。
【0018】
本発明によれば、ノンドープドアモルファスシリコン膜とゲート絶縁膜との間に第1のドープドアモルファスシリコン膜が介在しており、第1のドープドアモルファスシリコン膜中の不純物の導電型が、ノンドープドアモルファスシリコン膜にイオン注入される不純物の導電型が異なることから、熱負荷工程において第2のドープドポリシリコン膜中に導入された第2の不純物の過度な拡散を抑制することができる。したがって、不純物のゲート絶縁膜の突き抜けや金属シリサイド膜による不純物の吸収によって生じるポリシリコン膜中の不純物の空乏化を防止することできる。
【0019】
本発明の上記目的はまた、シリコン基板上のNMOSチャネル領域及びPMOSチャネル領域にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、シリコン基板全体に熱負荷を加える熱負荷工程とを備え、ゲート電極形成工程は、ゲート絶縁膜上にn型不純物がドープされた第1のドープドアモルファスシリコン膜を形成する第1のドープドアモルファスシリコン膜形成工程と、第1のドープドアモルファスシリコン膜上にノンドープドアモルファスシリコン膜を形成するノンドープドアモルファスシリコン膜形成工程と、PMOSチャネル領域内のノンドープドアモルファスシリコン膜中にp型不純物をイオン注入すると共に、NMOSチャネル領域内のノンドープドアモルファスシリコン膜中にn型不純物をイオン注入するイオン注入工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法によっても達成される。この場合において、イオン注入工程は、マスクを用いてp型不純物とn型不純物とを打ち分ける工程を含むことが好ましい。
【0020】
本発明において、ゲート電極形成工程は、ノンドープドアモルファスシリコン膜上にn型不純物がドープされた第2のドープドアモルファスシリコン膜を形成する第2のドープドアモルファスシリコン膜形成工程をさらに備えることが好ましい。また、ゲート電極形成工程は、第2のイオン注入工程の後、第2のドープドアモルファスシリコン膜上に金属シリサイド膜を形成する金属シリサイド膜形成工程をさらに備えることが好ましい。
【0021】
本発明において、第1及び第3のドープドポリシリコン膜が前記p型不純物を含み、前記熱負荷工程は、第1及び第3のドープドポリシリコン膜中のn型不純物濃度がp型不純物濃度よりも低くなってp型ゲート電極が形成されるような不純物拡散を生じさせることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ポリシリコン膜中の不純物濃度プロファイルが良好であり、閾値電圧のばらつきが抑制された高性能な半導体装置を提供することができる。
【0023】
また、本発明によれば、ホウ素(B)のゲート絶縁膜の突き抜けや金属シリサイド膜による不純物の吸収によって生じるポリシリコン膜中の不純物の空乏化を防止することが可能な半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る半導体装置100の構造を示す略断面図である。
【0026】
図1に示すように、この半導体装置100はデュアルゲート構造のCMOSであって、nポリシリコンゲートを有するNMOSFET10Aと、pポリシリコンゲートを有するPMOSFET10Bとが同一基板上に形成されたものである。NMOSFET10A及びPMOSFET10Bは共に、シリコン基板11上に形成されたゲート絶縁膜13と、ゲート絶縁膜13上に形成されたゲート電極14と、ゲート電極14の上面を覆うゲートキャップ絶縁膜15と、ゲート電極14の側面を覆うサイドウォール絶縁膜16と、NMOSFET10Aのソース/ドレイン領域となる第1の拡散層17と、PMOSFET10Bのソース/ドレイン領域となる及び第2の拡散層18とを備えている。
【0027】
ゲート電極14はポリメタルゲート構造を有しており、3層構造のポリシリコン多層膜21と、ポリシリコン多層膜21上に形成された金属シリサイド多層膜22とを備えている。金属シリサイド多層膜22の構造はNMOSFET及びPMOSFET共に共通であり、タングステンシリサイド(WSi)膜22a、窒化タングステン(WN)膜22b、及びタングステン(W)膜22cがこの順に積層された構造を有している。これに対し、ポリシリコン多層膜21の構造はNMOSFET10AとPMOSFET10Bとで異なる。
【0028】
NMOSFET10Aのポリシリコン多層膜21は、リン(P)等のn型不純物がドープされた第1乃至第3のドープドポリシリコン膜21a、21b、21cがこの順に積層された3層構造を有している。第1及び第3のドープドポリシリコン膜21a、21c中のn型不純物の濃度は、第2のドープドポリシリコン膜中のn型不純物の濃度よりも低い。この3層構造は、PMOSFET10Bのポリシリコン多層膜21を3層構造にすることに伴って形成されたものであり、NMOSFET10Aにおいて3層構造自体が特別な意味を持つものではない。このように、ポリシリコン多層膜21の各層にn型不純物がドープされていることから、ポリシリコン多層膜21はnポリシリコンゲートとして機能する。
【0029】
一方、PMOSFET10Bのポリシリコン膜21は、リン(P)等のn型不純物がドープされた第1のドープドポリシリコン膜21d、ホウ素(B)等のp型不純物がドープされた第2のドープドポリシリコン膜21e、及び第1のドープドポリシリコン膜21dと同じくn型不純物がドープされた第3のドープドポリシリコン膜21fがこの順に積層された3層構造を有している。
【0030】
PMOSFET10Bにおいて、第1及び第3のドープドポリシリコン膜21d、21fは、第2のドープドポリシリコン膜21e中のp型不純物の過度な拡散を阻止する役割を果たす。PMOSFET10Bのゲート電極14をpポリシリコンゲートとして構成するためには、p型不純物の濃度がn型不純物よりも十分に高くなければならない。そのため、第1及び第3のドープドポリシリコン膜21d、21f中のn型不純物の濃度は、その役割を果たすことができる限りにおいて十分低い濃度に設定されている。これに対して、第2のドープドポリシリコン膜21eの膜中には、ポリシリコン多層膜21を実際にpゲートとして機能させるに十分な高濃度のp型不純物が分布している。
【0031】
PMOSFET10Bのポリシリコン多層膜21は、バイポーラトランジスタのようにNPN接合となってはならない。NPN接合構造では抵抗が大きくなり、ゲートの性能が低下するからである。そのためには、後の製造工程(例えばDRAM製造工程)で一般的に存在する各種の高温熱負荷工程にてn型不純物とp型不純物が混ざり合い、ポリシリコン多層膜21中の全体でn型不純物よりもp型不純物の濃度が濃くなるようにし、これをpポリシリコンゲートとすればよい。単に混ぜ合わせるだけならば簡単であるが、不純物の外部放出などが顕著に起こるため、本発明のようなサンドイッチ構造を採用することによって不純物拡散を制御するわけである。
【0032】
次に、半導体装置100の製造方法について詳細に説明する。
【0033】
図2〜図11は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造工程を示す略断面図である。
【0034】
半導体装置100の製造では、まず図2に示すように、シリコン基板11上にフィールド酸化膜からなる素子分離領域12をSTI法により形成し、素子分離領域12によって互いに分離された活性領域を形成する。次に、一方の活性領域内にPウェル形成のためのイオン注入、トランジスタのパンチスルー阻止を目的とした埋め込み層形成のためのイオン注入、及び閾値電圧Vth調整のためのイオン注入を行って、NMOSチャネル領域10Aを形成する。また、他方の活性領域内にNウェル形成のためのイオン注入、トランジスタのパンチスルー阻止を目的とした埋め込み層形成のためのイオン注入、及び閾値電圧Vth調整のためのイオン注入を行って、PMOSチャネル領域10Bを形成する。
【0035】
次に、図3に示すように、NMOSチャネル領域10A及びPMOSチャネル領域10Bの両方にゲート絶縁膜13を形成する。ゲート絶縁膜13の形成では、まず5nm程度の膜厚を有するシリコン酸化膜(SiO)を熱酸化により形成する。その後、900℃程度の酸化雰囲気中で60秒程度の熱処理を行い、シリコン酸化膜を窒化することにより、シリコン窒化酸化膜(SiON)からなるゲート絶縁膜13が完成する。
【0036】
次に、ゲート絶縁膜13上にアモルファスシリコン多層膜31を形成する。アモルファスシリコン多層膜31は以下に示すステップにより形成される。
【0037】
まず、図4に示すように、ゲート絶縁膜13上にリン(P)等のn型不純物がドープされた第1のドープドアモルファスシリコン膜31aを形成する。この膜は、シランガス(SiH)を原料ガスとするLPCVD(Low-Pressured Chemical Vapor Deposition)法により形成することができ、特に、リンドープ用原料ガスを導入しながらドープドアモルファスシリコン膜を堆積する、いわゆる"In-Situ"により形成しても良い。第1のドープドアモルファスシリコン膜31aは10〜50nm程度の膜厚を有することが好ましい。
【0038】
次に、図5に示すように、第1のドープドアモルファスシリコン膜31a上にノンドープドアモルファスシリコン膜31bを形成する。この膜も、シランガス(SiH)を原料ガスとするLPCVD法により形成することができ、リンドープ用原料ガスの導入を中断することで、第1のドープドアモルファスシリコン膜31aからノンドープドアモルファスシリコン膜31bへの成膜工程を同一チャンバー内で連続的に行うことができる。ノンドープドアモルファスシリコン膜31bは10〜200nm程度の膜厚を有することが好ましい。
【0039】
次に、図6に示すように、ノンドープドアモルファスシリコン膜31b上にリン(P)等のn型不純物がドープされた第2のドープドアモルファスシリコン膜31cを形成する。この膜も、シランガス(SiH)を原料ガスとするLPCVD法により形成することができ、リンドープ用原料ガスの導入を再開することで、ノンドープドアモルファスシリコン膜31bから第2のドープドアモルファスシリコン膜31cへの成膜工程を同一チャンバー内で連続的に行うことができる。第2のドープドアモルファスシリコン膜31cは10〜50nm程度の膜厚を有することが好ましい。
【0040】
次に、NMOSチャネル領域10A内のノンドープドアモルファスシリコン膜31b及びPMOSチャネル領域10B内のノンドープドアモルファスシリコン膜31b中にリン(P)及びホウ素(B)をそれぞれイオン注入する。この工程は2回のイオン注入工程に分けて行われる。
【0041】
まず、図7に示すように、PMOSチャネル領域10Bをマスクしながら、NMOSチャネル領域10A内のノンドープドアモルファスシリコン膜31b中にリン(P)をイオン注入する。このときの注入エネルギーは5〜30keV程度、ドーズ量は、1×1014cm−2〜5×1015cm−2であることが好ましい。こうしてノンドープドアモルファスシリコン膜31b中に高濃度のリン(P)が導入されることにより、アモルファスシリコン全体はnシリコンゲートとなる。
【0042】
次いで、図8に示すように、NMOSチャネル領域10Aをマスクしながら、PMOSチャネル領域10B内のノンドープドアモルファスシリコン膜31b中にホウ素(B)をイオン注入する。このときの注入エネルギーは1〜20keV程度、ドーズ量は、1×1014cm−2〜1×1016cm−2であることが好ましい。このように、リン(P)が含まれているアモルファスシリコン膜中にホウ素(B)を打ち返すことにより、アモルファスシリコン膜中のホウ素の濃度が高くなるので、アモルファスシリコン全体はpゲートとなる。
【0043】
なお、イオン注入工程の順番は特に限定されず、PMOSチャネル領域10B及びNMOSチャネル領域10Aのどちらを先に行ってもかまわない。
【0044】
次に、図9に示すように、アモルファスシリコン多層膜31上に金属シリサイド多層膜22を形成する。本実施形態においては、金属シリサイド多層膜22としてタングステンシリサイド(WSi)膜22a、窒化タングステン膜(WN)22b、及びタングステン膜(W)22cをこの順に形成する。タングステンシリサイド膜22aは、例えば六フッ化タングステン(WF)ガスとジクロロシラン(SiCl)ガスを原料ガスとし、かつ580℃の温度条件下でLPCVD法により形成することができる。タングステンシリサイド膜22aは1〜20nm程度の膜厚を有することが好ましい。また、窒化タングステン膜22bはスパッタリングにより形成することができ、10〜20nmの膜厚を有することが好ましい。また、タングステン膜22cはスパッタリングにより形成することができ、50〜100nmの膜厚を有することが好ましい。
【0045】
次に、図10に示すように、金属シリサイド多層膜22上に30nm程度の膜厚を有するシリコン酸化膜を形成した後、フォトリソグラフィ及びエッチングを用いて、ポリシリコン多層膜21、金属シリサイド多層膜22、及びシリコン酸化膜をパターニングし、ゲート電極14及びゲートキャップ絶縁膜15を形成する。さらに、図11に示すように、基板全面に30nm程度の膜厚を有するシリコン酸化膜を形成した後、これをエッチバックすることにより、ゲート電極14の側面にサイドウォール絶縁膜16を形成する。
【0046】
その後、NMOSFET側のソース/ドレイン領域である第1の拡散層17、PMOSFET側のソース/ドレイン領域である第2の拡散層18を周知の方法で順次形成する。以上の工程により、デュアルゲート構造のCMOSトランジスタを備えた半導体装置100が完成する。
【0047】
さらに、図12に示すように、半導体装置100が後の製造工程(例えばDRAM製造工程)で一般的に存在する各種の高温熱負荷工程を経ることにより、アモルファスシリコン多層膜21中のリン(P)及びホウ素(B)は拡散するが、異種の不純物が同時に存在する場合、それぞれの不純物が互いの拡散を抑制し合うので、注入されたドーパント(ホウ素)は、ノンドープドアモルファスシリコン膜内では拡散しやすく、リン(P)ドープドアモルファスシリコン膜内では拡散しにくい。つまり、図6に示したように、ノンドープドアモルファスシリコン膜31bの上下は第1及び第2のリンドープドアモルファスシリコン膜に挟まれているので、PMOSFET側においてホウ素(B)の過度な拡散が抑制される。したがって、ホウ素(B)がゲート絶縁膜13を突き抜ける現象を抑制することができ、またタングステンシリサイド膜によるポリシリコン膜中のホウ素(B)の吸収を抑制することができる。なお、熱負荷によってアモルファスシリコンの結晶化が進み、アモルファスシリコンはポリシリコンに変化する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法によれば、ゲート絶縁膜13上の第1乃至第3アモルファスシリコン膜を形成すると共に、第1及び第3のアモルファスシリコン膜中の不純物の導電型を、それらの間に挟まれる第2のアモルファスシリコン膜中に導入される不純物と異ならせ、異種の不純物が互いの拡散を抑制し合う現象を利用して、第2層目の不純物が外部へ流出することを抑制することができる。
【0049】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明の範囲に包含されるものであることは言うまでもない。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、NMOSFETの第1及び第3のアモルファスシリコン膜にリン(P)等のn型不純物を導入しているが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、第1層目及び第3層目にホウ素(B)等のp型不純物が導入されたドープドアモルファスシリコン膜を用い、2層目のノンドープドアモルファスシリコン膜31bにリン(P)等のn型不純物をイオン注入してもよい。リン等のn型不純物は、ホウ素(B)等のp型不純物ほど拡散しやすいものではないが、第1層目と第3層目にn型不純物を導入することで、2層目に導入されたp型不純物の過度な拡散を防止することができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、ポリメタルゲートを採用し、タングステンシリサイド、窒化タングステン、及びタングステンからなる3層構造の金属シリサイド多層膜22を用いているが、本発明においてポリメタルゲート構造を採用することは必須でない。また、メタルを省略し、タングステンシリサイドの単層膜で構成されていても構わない。
【0052】
また、上記実施形態においては、アモルファスシリコン膜を3層構造としているが、2層構造とすることも可能である。すなわち、第2のアモルファスシリコン膜の上層に金属シリサイド膜を形成しない場合には、シリサイド層による不純物吸収の問題が生じないことから、ゲート絶縁膜13とノンドープドアモルファスシリコン膜31bとの間にのみバリア層としてのドープドアモルファスシリコン膜を形成すればよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、NMOSチャネル領域10A内のノンドープドアモルファスシリコン膜31b中にリン(P)をイオン注入する第1のイオン注入工程と、PMOSチャネル領域10B内のノンドープドアモルファスシリコン膜31b中にホウ素(B)をイオン注入する第2のイオン注入工程の各々でマスクを使用し、ホウ素(B)とリン(P)の打ち分けを行っているが、本発明はこのようなイオン注入工程に限定されるものではなく、例えば、NMOSチャネル領域10AとPMOSチャネル領域10Bの両方にリンをイオン注入した後、NMOSチャネル領域10Aのみをマスクして、PMOSチャネル領域10Bリンよりも高濃度のホウ素を打ち返してもよい。このイオン注入工程によれば、1回のマスク処理にてホウ素とリンをそれぞれ所定の領域に導入することができる。また、注入深さで調整しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に係る半導体装置100の構造を示す略断面図である。
【図2】図2は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(NMOSチャネル領域10A、PMOSチャネル領域10Bの形成)を示す略断面図である。
【図3】図3は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(ゲート絶縁膜13の形成)を示す略断面図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(第1のドープドアモルファスシリコン膜31aの形成)を示す略断面図である。
【図5】図5は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(ノンドープドアモルファスシリコン膜31bの形成)を示す略断面図である。
【図6】図6は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(第2のドープドアモルファスシリコン膜31cの形成)を示す略断面図である。
【図7】図7は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(NMOSチャネル領域10Aへのリン(P)のイオン注入)を示す略断面図である。
【図8】図8は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(PMOSチャネル領域10Bへのホウ素(B)のイオン注入)を示す略断面図である。
【図9】図9は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(金属シリサイド多層膜22の形成)を示す略断面図である。
【図10】図10は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(パターニングによるゲート電極14及びゲートキャップ絶縁膜15の形成)を示す略断面図である。
【図11】図11は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(第1及び第2の拡散層17、18の形成)を示す略断面図である。
【図12】図12は、本発明の好ましい実施形態による半導体装置100の製造方法の一工程(高温熱負荷工程)を示す略断面図である。
【図13】図13は、デュアルゲート構造を有する従来の半導体装置の製造工程の一部を示す略断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10A NMOSチャネル領域
10B PMOSチャネル領域
11 シリコン基板
13 ゲート絶縁膜
14 ゲート電極
14 ドープドポリシリコン膜
15 ゲートキャップ絶縁膜
16 サイドウォール絶縁膜
17 第1の拡散層
18 第2の拡散層
21 ポリシリコン多層膜
21a 第1のドープドポリシリコン膜
21b 第2のドープドポリシリコン膜
21c 第3のドープドポリシリコン膜
21d 第1のドープドポリシリコン膜
21e 第2のドープドポリシリコン膜
21f 第3のドープドポリシリコン膜
22 金属シリサイド多層膜
22a タングステンシリサイド膜
22b 窒化タングステン膜
22c タングステン膜
31 アモルファスシリコン多層膜
31a 第1のドープドアモルファスシリコン膜
31b ノンドープドアモルファスシリコン膜
31c 第2のドープドアモルファスシリコン膜
51 シリコン基板
52 ゲート絶縁膜
53 ノンドープドアモルファスシリコン膜
54 金属シリサイド膜
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、
前記シリコン基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、
前記ゲート電極は、
前記ゲート絶縁膜上に形成された第1のドープドポリシリコン膜と、
前記第1のドープドポリシリコン膜上に形成された第2のドープドポリシリコン膜とを備え、
前記第1のドープドポリシリコン膜は、第1の不純物を含み、
前記第2のドープドポリシリコン膜は、前記第1の不純物とは反対の導電型を有する第2の不純物を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極は、
前記第2のドープドポリシリコン膜上に形成された第3のドープドポリシリコン膜をさらに備え、
前記第3のドープドポリシリコン膜は、前記第1の不純物を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極は、
前記第3のドープドポリシリコン膜上に形成された金属シリサイド膜をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1及び第3のドープドポリシリコン膜中の前記第1の不純物の濃度は、前記第2のドープドポリシリコン膜中の前記第2の不純物の濃度よりも低いことを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1及び第3のドープドポリシリコン膜は、前記第2の不純物をさらに含み、前記第1及び第3のドープドポリシリコン膜中の前記第2の不純物の濃度は、前記第2のドープドポリシリコン膜中の前記第2の不純物の濃度よりも低いことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の不純物がリン(P)であり、前記第2の不純物がホウ素(B)であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
シリコン基板上にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
前記シリコン基板全体に熱負荷を加える熱負荷工程とを備え、
前記ゲート電極形成工程は、
前記ゲート絶縁膜上に第1の不純物がドープされた第1のドープドアモルファスシリコン膜を形成する第1のドープドアモルファスシリコン膜形成工程と、
前記第1のドープドアモルファスシリコン膜上にノンドープドアモルファスシリコン膜を形成するノンドープドアモルファスシリコン膜形成工程と、
前記ノンドープドアモルファスシリコン膜中に前記第1の不純物とは逆の導電型を有する第2の不純物をイオン注入するイオン注入工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ゲート電極形成工程は、
前記ノンドープドアモルファスシリコン膜上に前記第1の不純物がドープされた第2のドープドアモルファスシリコン膜を形成する第2のドープドアモルファスシリコン膜形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ゲート電極形成工程は、
前記イオン注入工程の後、前記第2のドープドアモルファスシリコン膜上に金属シリサイド膜を形成する金属シリサイド膜形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の不純物がリン(P)であり、前記第2の不純物がホウ素(B)であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
シリコン基板上のNMOSチャネル領域及びPMOSチャネル領域にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程と、
前記シリコン基板全体に熱負荷を加える熱負荷工程とを備え、
前記ゲート電極形成工程は、
前記ゲート絶縁膜上にn型不純物がドープされた第1のドープドアモルファスシリコン膜を形成する第1のドープドアモルファスシリコン膜形成工程と、
前記第1のドープドアモルファスシリコン膜上にノンドープドアモルファスシリコン膜を形成するノンドープドアモルファスシリコン膜形成工程と、
前記PMOSチャネル領域内の前記ノンドープドアモルファスシリコン膜中にp型不純物をイオン注入すると共に、前記NMOSチャネル領域内の前記ノンドープドアモルファスシリコン膜中にn型不純物をイオン注入するイオン注入工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記ゲート電極形成工程は、前記ノンドープドアモルファスシリコン膜上にn型不純物がドープされた第2のドープドアモルファスシリコン膜を形成する第2のドープドアモルファスシリコン膜形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記ゲート電極形成工程は、前記第2のイオン注入工程の後、前記第2のドープドアモルファスシリコン膜上に金属シリサイド膜を形成する金属シリサイド膜形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記イオン注入工程は、マスクを用いてp型不純物とn型不純物とを打ち分ける工程を含むことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記n型不純物がリン(P)であり、前記p型不純物がホウ素(B)であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1及び第3のドープドポリシリコン膜が前記p型不純物を含み、前記熱負荷工程は、前記第1及び第3のドープドポリシリコン膜中のn型不純物濃度が前記p型不純物濃度よりも低くなってp型ゲート電極が形成されるような不純物拡散を生じさせることを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−70840(P2009−70840A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234173(P2007−234173)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】