反応性スパッタリング装置
【課題】シリコン基板上のMOSFETにおいて、非常に薄い厚みを有し、膜質の高い均一性を有し、より高い誘電率を有する誘電体膜を堆積する装置を提供する。
【解決手段】反応性スパッタリング装置であって、ウエハー22が配置されるウエハーホルダ11と、ウエハーホルダ11の回転軸から外れた上方に傾斜して設けられたターゲット12と、ウエハーホルダ11の下方に該ウエハーホルダ11を挟んでそれぞれ設けられたガス導入部17と排気ポート16とを設ける。
【解決手段】反応性スパッタリング装置であって、ウエハー22が配置されるウエハーホルダ11と、ウエハーホルダ11の回転軸から外れた上方に傾斜して設けられたターゲット12と、ウエハーホルダ11の下方に該ウエハーホルダ11を挟んでそれぞれ設けられたガス導入部17と排気ポート16とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高誘電率誘電体膜を堆積する装置に関し、特に、基板でのシリコン層で非常に薄くかつ均一な厚みを有する各種の酸化膜または窒化膜のごとき高誘電率誘電体膜を堆積する反応性スパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上にMOSFETデバイスを製作することにおいて、例えばSiO2よりも相当に高い誘電率を備えた誘電体物質の非常に薄い膜を成膜することは、将来の半導体デバイスにとって非常に重要である。MOSFETにおいて薄いより高い誘電率誘電体膜が例えばゲート絶縁層として使用されている。詳しくは、高誘電率誘電体物質は2つの異なる応用においてその使用が期待されている。第1の応用は、CMOSトランジスタゲート誘電体でSiO2、SiON、およびSi3N4の誘電体物質を現在広く用いることに置き換えることである。第2の応用は、特に、液晶表示パネルのためのより高い容量を有するキャパシタを作ることである。
【0003】
現在、高誘電率誘電体物質を成膜することに関して2つの基本的技術が存在する。第1の方法は化学的気相成長(CVD)であり、第2の方法は物理的気相成長(PVD)である。
【0004】
たとえCVD方法により膜を堆積することにおいて多くの異なる技術があるとしても、基本的に、産業上では唯一2つの方法が広く応用されている。
【0005】
第1の技術において、化学的プリカーサー、好ましくは金属有機複合物がプラズマまたは熱的エネルギによって分解され、そして適当なガスと反応して、望ましいより高い誘電率を有する誘電体物質を作る。この技術は通常MO−CVD技術と呼ばれている。
【0006】
第2の方法において、2つの化学的媒介物が基板に対して導入され、それは各ガス導入の間でタイムブレークを交互に作りながら導入される。当該タイムブレークの間、第1に導入されたガスは基板の表面に吸収された分子を除いて排気される。第2の媒介物が導入されるとき、それは当該表面に吸収された第1ガスの分子と反応し、誘電体膜を形成する。それから、残存する過剰なガスは、次のガス投入に至るまでのタイムブレークの間に排気される。この技術は、原子層堆積(ALD)技術と呼ばれている。
【0007】
CMOS応用におけるゲート絶縁体としてシリコン基板上に高誘電率誘電体膜を堆積することにおいて、2つの基本的な要求が存在する。第1の要求は、当該膜は非常に薄いものでなければならないということである。例えば、将来のCMOSデバイスの大部分は物理的な厚みが3nmよりも小さいという膜を必要とする。第2の要求は、当該膜の厚みが、例えば1%(1σ)よりも小さいものであり、非常に均一であるということである。これらの膜は非常に薄いので、不均一性が僅かでもあるとこの膜は電気的特性、例えば容量や漏れ電流などに重大な変化を与える。これらの2つの基本的要求に関連して上記成膜技術の欠点が議論される。
【0008】
従来の技術の1つとして、例えば反応性スパッタリング方法またはCVDを用いてシリコン層上に直接に高誘電体酸化膜を堆積する方法を開示する特許文献1が存在する。この方法は、高い誘電体または絶縁体のごとき、高誘電率酸化膜の特性を損なうことなくシリコン層上に直接に高誘電体酸化膜を形成するための方法が提案されている。前述した従来の方法によれば、第1に、高誘電率窒化膜がシリコン層の上に形成され、その後、高誘電率窒化膜は、酸化されることによって高誘電率酸化膜になるように変化する。
【0009】
【特許文献1】特開平11−168096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は次の通りである。シリコン基板上のMOSFETでゲート絶縁層として用いられる非常に薄い誘電体膜を製作する時、より高い誘電率を備えた均一な誘電体膜が成膜されることが必要とされる。
【0011】
本発明の目的は、シリコン基板上のMOSFETにおいて、非常に薄い厚みを有し、膜質の高い均一性を有し、より高い誘電率を有する誘電体膜を堆積する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ウェハーが配置され、所定の回転速度で回転するウェハーホルダと、
前記ウェハーホルダの回転軸から外れた上方の位置に、傾斜姿勢で設けられ、ハフニウムを含有するターゲットが取り付けられ、DC電力を投入可能なカソードと、
前記ウェハーホルダの回転軸から外れた下方の位置であって、上方に前記カソードが位置しない位置に設けられ、プロセスガスとして窒素ガスを導入するためのガス導入部と、
前記ウェハーホルダの下方であって、当該ウェハーホルダを挟んで前記ガス導入部とは反対側の位置に設けられた排気ポートと、
を備えることを特徴とする反応性スパッタリング装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PVDおよび熱的アニーリングプロセスによって非常に薄いかつ非常に均一な誘電体膜を堆積することにおいて新技術が提供され、当該新技術では膜はプラズマによって誘導されるダメージを受けない。この技術によれば、EOT(equivalent oxide thickness:等価酸化物厚み)<1nm、かつ漏れ電流が10-1A/cm2よりも小さいという特性を有する高誘電率誘電体膜を作製するということが示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る高誘電率誘電体膜を堆積する方法は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
【0015】
基板のドープシリコン層またはドープシリコン化合物層の上に高誘電率誘電体膜を堆積する方法は、特定元素(A)を窒化してシリコン層上に窒化膜(AxNy)を形成する第1ステップであって、当該窒化膜(AxNy)における特定元素(A)と窒素(N)がxとyの間で所定割合の関係を有する上記第1ステップと、当該窒化膜を酸化雰囲気において酸化して酸化かつ窒化された誘電体膜(AON)を形成する第2ステップを含んで構成される。
【0016】
前述の方法において、好ましくは、特定元素(A)は元素の周期表の3族、4族、または5族に属するいずれかの元素である。
【0017】
前述の方法において、好ましくは、窒化膜(AxNy)で特定元素(A)と窒素(N)はyがそのストチオメトリック値(stochiometric value)よりも小さいという関係を有する。
【0018】
前述の方法において、好ましくは、特定元素(A)はハフニウム(Hf)である。
【0019】
前述の方法において、好ましくは、窒化膜(HfxNy)におけるハフニウム(Hf)と窒素(N)は0<y<1.5、xが1の時という関係を有する。
【0020】
前述の方法において、好ましくは、第2ステップでの酸化プロセスは400〜1000℃の温度範囲に含まれる特定温度を有する熱的アニールプロセスによって実行される。
【0021】
前述の方法において、好ましくは反応性スパッタリング方法が膜堆積に用いられる。
【0022】
前述の方法において、好ましくは、SiO2層、SiN層、SiON層のいずれかが最初にシリコン層上に設けられ、それから高誘電率誘電体膜(AON)を堆積する。
【0023】
前述の方法において、好ましくは、第1ステップでの窒化プロセスのために供給される窒素ガス(N2)の流速は1〜15sccmの範囲に含まれるいずれかの値である。
【0024】
以下に、添付した図面を参照して好適な実施形態を説明する。当該実施形態の説明を通して本発明の詳細が明らかにされる。
【0025】
[実施形態1]
図1〜図6を参照して本発明の第1実施形態が説明される。一例としてPVD処理チャンバ10の概略構成図が図1に示される。本発明による高誘電率誘電体膜を堆積する方法は、当該PVD処理チャンバでMOSFET用ゲート電極を作るためのシリコンウェハー上にゲート絶縁層を作るために、実行される。
【0026】
最初に、PVD処理チャンバ10の構造が説明される。この処理チャンバ10は、ウェハーホルダ11、いわゆるカソードと呼ばれる、平板形状を有するターゲット12、側壁13、トッププレート14、ボトムプレート15、排気ポート16、およびガス導入部17から構成されている。ターゲット12の代表的材料は好ましくはハフニウム(Hf)である。ターゲット12は、絶縁支持プレート18を介して、傾斜姿勢で、処理チャンバ10の壁またはプレート(13,14)に固定されている。ターゲット12は、絶縁支持プレート18によって処理チャンバ10のその他の部分から電気的に絶縁されている。
【0027】
ターゲット12の上側または横側では、回転可能な支持プレート20に固定されたマグネット配列19が存在する。支持プレート20は、図示されていない駆動機構を有している。参照番号20aは回転軸を示している。装置が作動している間、マグネット配列19は、駆動機構の中に含まれる電気モータによって回転させられる。マグネット配列19のための電気モータおよび回転機構は図1に示されていない。
【0028】
前述したターゲット12は、DC電源21からプラズマを生成するためのDC電力が供給される。DC電力を用いることは本質的なことではない。DC電力の代わりにrf(交流)電力をプラズマを発生させるために用いることもできる。
【0029】
ターゲット12は、好ましくは、99.99%の純度を有するハフニウム(Hf)によって作られている。ターゲット12はウェハーホルダ11の上に配置されたウェハーまたは基板22に対して好ましい所定の角度をもって配置されている。再び、ウェハーホルダ11の軸11aとターゲット12の軸12aは平行ではなく、所定の角度(α)にて交差するようになっている。2つの軸11aと軸12aは同じ平面内に存在する。これらの2つの軸11aと軸12aの間の角度(α)は90°よりも小さく、代表的にはおよそ45°である。
【0030】
ウェハーホルダ11は、ウェハー22上での膜堆積の間、およそ60rpm等の回転速度で回転させられている。回転速度は重要なことではなく、広い範囲、例えば10〜500rpmの範囲で変化させることができる。ウェハーホルダの回転機構は図において示されていない。
【0031】
次に、前述したPVD処理チャンバで実行されるウェハー22上に高誘電率誘電体膜を堆積する方法またはプロセスが図2を参照して詳細に説明される。
【0032】
高誘電率誘電体膜は、ドープシリコン(p−Si,n−Si)またはドープシリコン化合物(ドープされたSiGe。例えば、p−SiGe,n−SiGe)のウェハー22の表面上に形成される。高誘電率誘電体膜は、ウェハー22の上に作製されたCMOSデバイスにおけるMOSFETのゲート誘電体層に用いられる。それは、SiO2の誘電率よりも大きな、より高い誘電率を有する非常に薄い誘電体膜である。
【0033】
プロセスガスとして、ArまたはN2が、ガス導入部17を経由して処理チャンバ10の中に導入される。処理チャンバ10の内部圧力は好ましくは0.5Paよりも低く維持されている。Hfターゲット12にDC電力を与えることによってスパッタリングが実行される。
【0034】
Hfターゲット12を用いてスパッタリングを実行する時、処理チャンバ10は予め窒素(N2)/アルゴン(Ar)の混合ガスが導入されている。PVD処理チャンバ10の中にはN2の原子が存在するので、スパッタされた原子Hfは窒素のラジカル/イオンと反応してウェハー22の表面上にHfN(窒化ハフニウム)の膜または層を形成する。ウェハー22の基礎となる物質はシリコンである。当該HfN膜はドープされたシリコン層またはSiGeなどの上に形成される。
【0035】
Hfを基礎とする高誘電率誘電体膜を形成する手順は次の通り進行する。
【0036】
(1):ウェハー(前述のウェハー22)は希釈化されたHf溶液によって洗浄され、元々存在したシリコン酸化物を除去する(ステップS1)。
(2):当該ウェハーを乾燥する(ステップS1)。
(3):反応性スパッタリング技術によってウェハー上にHfN膜を堆積する(ステップS2)。
(4):約1%の含有率で酸素を含むほとんどが不活性ガスまたはN2である環境で400℃を越える高い温度でウェハーをアニールする(ステップS3)。
【0037】
最初、ウェハーは希釈されたHF溶液で洗浄され、ウェハー表面上における元々存在する酸化物と他の汚れを除去し、乾燥する(ステップS1)。第2に、HfN膜をウェハー表面上に反応性スパッタ成膜技術によって堆積する(ステップS2)。当該HfNの堆積に関して前述したPVD処理チャンバ10が用いられる。第3に、ウェハーは400℃を越えるより高い温度で熱的アニールを受ける(ステップS3)。当該アニールの時の圧力は重要な事項ではなく、数トール(Torr)の圧力から大気圧まで変化させることができる。当該アニールのガス環境はほとんど不活性ガスまたはN2ガスであり、約1%の酸素を含むものである。当該アニールプロセスによってHfN膜は酸化され、HfN膜は高誘電率誘電体膜としてのHfON膜に変化する。
【0038】
非常に薄くかつゲート誘電体として用いられる高誘電率誘電体膜をHfターゲット12を用いて堆積または形成する上記プロセスにおいて、窒化膜(HfxNy)におけるハフニウム(Hf)と窒素(N)はx=1に関して0<y<1.5という関係を有している。
【0039】
前述した膜の準備の後、TaN膜がゲート電極としてHfN膜の上に成膜され、ウェハー22上で金属酸化半導体(MOS)キャパシタを形成するようにパターン化されかつエッチングされる。これらのMOSキャパシタのCV(容量・電圧)特性およびIV(電流・電圧)特性を検査し、等価酸化物厚み(equivalent oxide thickness:EOT)および漏れ電流を評価した。
【0040】
前述した装置構成によれば、200mmまたは300mmの直径のウェハーの上に全体に渡って極めて均一な膜を作る。図3は200mmウェハー上での当該HfN膜の均一性を示す。図3(A)は膜の厚みを示すウェハーの平面図であり、図3(B)は当該膜の規格化された抵抗値を示す直径ラインにおける縦方向の図である。膜の厚みは、直径180mmの円形表面領域の全面で分散して設定した49点で測定され、その標準偏差(σ)は0.95%として概算された。標準偏差は膜の非均一性を表している。図3において、参照番号23は均一性の等高線を示し、参照番号24は抵抗値データによって形成された特性線を示す。
【0041】
図4および図5は、先に説明した手順で得られた、準備されたハフニウム酸化窒化膜(HfON)に関する電気的データを示している。それらのHfON膜は次のようなプロセスパラメータおよび膜パラメータで堆積されたものである。
【0042】
圧力 0.019Pa
Arガス流速 20sccm
N2ガス流速 6sccm
DC電力 300W
成膜速度 2.4nm/分
成膜時間 12.5秒
HfN膜厚み 0.5nm
HfN膜抵抗値 516μ/Ωcm
HfN膜均一性 0.95%(1σ)
【0043】
図4および図5は、それぞれ、準備された膜のCV特性およびIV特性を示す。この場合において、熱的アニール前の元々のHfN膜の厚みは0.5nmである。熱的アニールは、N2およびO2(〜1%)の混合ガスで、大気圧の下で、600℃の温度で、30秒間実行される。堆積されたHfNは低い抵抗値を有し、金属的な特性を示す。HfN膜の抵抗値特性は、当該膜の窒素の含有量で変化する。図6は、処理チャンバ10の中に導入される窒素の流速の関数としてHfN抵抗値特性の変化を示す。
【0044】
図4および図5に示されるように、熱的アニールの処理後、結果として生じる膜(HfON)は誘電体の特性を示す。結果としての膜は非常に薄い厚みを有した高誘電率誘電体膜になる。それ故に、熱的アニールの間に、HfN膜は酸素と反応して前述の条件を満足しHfONを形成する(分子的な窒素は600℃ではHfNと反応しない)。
【0045】
再び、Si/HfN境界面において、SiはHfON膜を通り抜けて到来する酸素と反応し、非常に薄いSiO層を形成する。より高い温度でHfとSiは境界面の近傍で合成され、HfSiONを形成する。従って、結果として生じる膜はHfON、HfSiON、およびSiOを含む。図4および図5に示される膜に関して、概算されたEOTおよび漏れ電流は、それぞれ、0.95nmおよび0.03A/cm-2である。漏れ電流は−1.2ボルト(V)で概算され、それは−0.2ボルトのVfb(フラットバンド電圧)から−1ボルトのより低い電圧である。
【0046】
Siの酸化の程度とSiおよびHfの混合の程度とは、アニ−ルの温度および時間に依存する。初期のHfNの厚みに依存して、最も低いEOTおよび/または最も低い漏れ電流を得るために最適なアニ−ル温度とアニール時間が見出されなければならない。
【0047】
膜堆積のプロセスの間、Hfターゲット12の中心とウェハーホルダ11との間の垂直な距離は300mmである。DC電力によって生成されるプラズマは基本的に強い磁界によってHfターゲット12の近傍に閉じ込められる。これらの2つの理由に基づいて、ウェハー表面上におけるプラズマ密度は無視できる程度により小さいものである。このように、前述した装置構成を用いた膜の堆積はリモートプラズマによる成膜として考えることができる。これらの事実のため、ウェハー22上に堆積する膜はプラズマによって誘導されるダメージを受けることはない。このことは、さらに、膜に対するプラズマ誘導ダメージの証拠が見出されないCV測定およびIV測定によって確認される。
【0048】
第1実施形態の変形例として、上記のハフニウム(Hf)の代わりに、ゲート誘電体を得ることにおける初期の膜として、他の金属または金属窒化物を用いることができる。他の金属は元素の周期表の3族、4族、または5族に属する特定の元素である。特定の元素に関するいくつかの例としては、Zr,La,Ti,Ta等のものである。当該特定の元素を一般的にシンボル“A”で示す場合に、堆積した窒化物質はAxNyとして表現される。この場合において、窒化膜(AxNy)における特定の元素(A)と窒素(N)はxとyの間で予め定められた割合関係を有している。具体的にyは窒化膜(AxNy)に関してそのストチオメトリック値(stochiometric value)よりも小さいものとなっている。
【0049】
同様にまた金属ゲートとして濃密にドープされたポリシリコンを用いることができる。さらに、1つのタイプの物質の代わりに、金属ゲートとして異なる金属/金属窒化物の組合せを用いることも可能である。金属ゲート物質のタイプに依存して、フラットバンド電圧はシフトし、作製されたMOSデバイスの金属ゲートの仕事関数は変化する。
【0050】
[実施形態2]
次に本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の特徴は膜の準備手順にある。第2実施形態における膜の準備手順は次の通りである。
【0051】
(1):ウェハーは希釈されたHF溶液において洗浄され、元々のシリコン酸化物を除去する。
(2):ウェハーを乾燥する。
(3):NH3のガス雰囲気で500℃を越えて熱アニ−ルする。
(4):反応性スパッタリング技術においてHfNを堆積する。
(5):約1%の含有率の酸素を含むほとんどが不活性ガスまたはN2の雰囲気において400℃を越えるより高い温度でウェハーをアニールする。
【0052】
第2実施形態においてHfN膜の成膜前における初期のウェハーの準備のみが第1実施形態に比較して変更される。上で説明したように、ウェハーは希釈化されたHF溶液での洗浄の後であってHfNの成膜前に、NH3のガス雰囲気で熱的アニールを受ける。このアニールプロセスの間、シリコン窒化物(SiNx)の薄い層がウェハー表面上に形成される。代表的に、アニール時間とアニール温度は、1nmの厚みよりもより小さい厚みのシリコン窒化物膜を有するように制御される。しかしながら、このことは重要な要求ではない。このシリコン窒化物層は、その後の成膜アニールの間、Siウェハー22への酸素の拡散を抑制する。Siウェハー22への酸素の拡散はSiO2の形成の原因となり、それによってEOTの増加の原因となる。従ってシリコン窒化物層は、結果的に生じた膜のEOTを最小化することを支援する。
【0053】
前述した追加のステップを除いて、第2実施形態におけるすべてのその他の処理ステップおよび処理システムの構成は第1実施形態で説明したそれらと同じである。
【0054】
[実施形態3]
次に本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の特徴は同様にまた膜準備手順にある。第3実施形態における膜準備手順は次の通りである。第3実施形態において、初期のウェハー準備の方法のみが変更される。
【0055】
(1):ウェハーは希釈化されたHF溶液で洗浄され元々存するシリコン酸化物が除去される。
(2):ウェハーを乾燥する。
(3):CVDまたはRTPプロセスによって下地層と呼ばれるSiO2またはSiONまたはSi3N4の非常に薄い層を堆積する。
(4):反応性スパッタリング技術によってHfNを堆積する。
(5):約1%の含有率の酸素を含むほとんどが不活性ガスまたはN2の雰囲気において400℃を越えるより高い温度でウェハーをアニールする。
【0056】
CVDまたはRTPによって堆積されるSiO2層、SiON層、またはSi3N4層は、通常、およそ1nmまたはそれより小さく保持される。この層の使用することは、最終的な混成の誘電体物質の電気的特性を改善することである。
【0057】
前述した相違を除いて、すべての他の膜準備の方法は第1実施形態で説明されたそれらと同じである。
【0058】
図7と図8は、それぞれ、下地層が1.2nmの厚みを有するSiO2である処の結果的に生じた膜に関して、CV曲線とIV曲線を示す。図9と図10は、それぞれ、下地層が1.2nmの厚みを有するSiONである処の結果的に生じた膜に関して、CV曲線とIV曲線を示す。これらのSiO2とSiONはRTPプロセスによって堆積されたものである。HfNは第1実施形態で与えられた条件の下で反応性スパッタリングによってこれらのウェハー上に堆積される。その後、当該膜は900℃の温度で30秒間熱的にアニールされる。その後、CVデータとIVデータがTaN金属ゲート電極を用いて測定される。
【0059】
これらの膜の電気的特性の要約は図11に描かれた表で示される。
【0060】
その後の成膜のアニール温度およびアニール時間は電気的特性を最適化する上で重要である。前述したアニール時間およびアニール温度はおそらく最良な条件ではないということは留意すべきである。同様にまたRTP法以外の異なるアニーリング技術を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ドープされたシリコンまたはトープされたSi(シリコン)化合物のウェハーの上で非常に薄いかつ均一な厚みを有する各種の金属酸化物膜または金属酸化窒化膜のごとき高誘電率誘電体膜であって、MOSFETデバイスのゲート誘電体層として用いられるものを堆積するのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この図はHfN成膜のために用いられるDCマグネトロンPVD装置の構成図である。
【図2】この図はゲート絶縁膜として高誘電率誘電体膜を形成するための工程図である。
【図3】この図((A),(B))は膜厚を示すウェハーの平面図(A)と膜の規格化抵抗を示す直径ラインにおける縦方向の図(B)である。
【図4】この図は結果的に生じた誘電体膜に関して得られたCVデータを示す特性グラフである。
【図5】この図は結果的に得られた誘電体膜に関して得られたIVデータを示す特性グラフである。
【図6】この図は処理チャンバに導入された窒素の流速に対してHfNの抵抗値の変化を示す特性グラフである。
【図7】この図は下地層が1.2nmのSiO2でありかつHfNの厚みが0.5nmおよび1nmであるところの最終的誘電体膜に関するCV曲線を示す特性グラフである。
【図8】この図は下地層が1.2nmのSiO2およびHfNの厚みが0.5nmおよび1nmであるときの最終的誘電体膜のIV曲線を示す特性グラフである。
【図9】この図は下地層が1.2nmのSiONでありかつHfNの厚みが0.5nmおよび1nmであるときの最終的誘電体膜のCV曲線を示す特性グラフである。
【図10】この図は、下地層が1.2nmのSiONでありかつHfNの厚みが0.5nmまたは1nmであるときの最終的誘電体膜のIVカーブを示す特性グラフである。
【図11】この図は特別な元素の電気的属性の要約を示す表である。
【符号の説明】
【0063】
10 PVD処理チャンバ
11 ウェハーホルダ
12 ターゲット
19 マグネット配列
22 ウェハー
【技術分野】
【0001】
本発明は高誘電率誘電体膜を堆積する装置に関し、特に、基板でのシリコン層で非常に薄くかつ均一な厚みを有する各種の酸化膜または窒化膜のごとき高誘電率誘電体膜を堆積する反応性スパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板上にMOSFETデバイスを製作することにおいて、例えばSiO2よりも相当に高い誘電率を備えた誘電体物質の非常に薄い膜を成膜することは、将来の半導体デバイスにとって非常に重要である。MOSFETにおいて薄いより高い誘電率誘電体膜が例えばゲート絶縁層として使用されている。詳しくは、高誘電率誘電体物質は2つの異なる応用においてその使用が期待されている。第1の応用は、CMOSトランジスタゲート誘電体でSiO2、SiON、およびSi3N4の誘電体物質を現在広く用いることに置き換えることである。第2の応用は、特に、液晶表示パネルのためのより高い容量を有するキャパシタを作ることである。
【0003】
現在、高誘電率誘電体物質を成膜することに関して2つの基本的技術が存在する。第1の方法は化学的気相成長(CVD)であり、第2の方法は物理的気相成長(PVD)である。
【0004】
たとえCVD方法により膜を堆積することにおいて多くの異なる技術があるとしても、基本的に、産業上では唯一2つの方法が広く応用されている。
【0005】
第1の技術において、化学的プリカーサー、好ましくは金属有機複合物がプラズマまたは熱的エネルギによって分解され、そして適当なガスと反応して、望ましいより高い誘電率を有する誘電体物質を作る。この技術は通常MO−CVD技術と呼ばれている。
【0006】
第2の方法において、2つの化学的媒介物が基板に対して導入され、それは各ガス導入の間でタイムブレークを交互に作りながら導入される。当該タイムブレークの間、第1に導入されたガスは基板の表面に吸収された分子を除いて排気される。第2の媒介物が導入されるとき、それは当該表面に吸収された第1ガスの分子と反応し、誘電体膜を形成する。それから、残存する過剰なガスは、次のガス投入に至るまでのタイムブレークの間に排気される。この技術は、原子層堆積(ALD)技術と呼ばれている。
【0007】
CMOS応用におけるゲート絶縁体としてシリコン基板上に高誘電率誘電体膜を堆積することにおいて、2つの基本的な要求が存在する。第1の要求は、当該膜は非常に薄いものでなければならないということである。例えば、将来のCMOSデバイスの大部分は物理的な厚みが3nmよりも小さいという膜を必要とする。第2の要求は、当該膜の厚みが、例えば1%(1σ)よりも小さいものであり、非常に均一であるということである。これらの膜は非常に薄いので、不均一性が僅かでもあるとこの膜は電気的特性、例えば容量や漏れ電流などに重大な変化を与える。これらの2つの基本的要求に関連して上記成膜技術の欠点が議論される。
【0008】
従来の技術の1つとして、例えば反応性スパッタリング方法またはCVDを用いてシリコン層上に直接に高誘電体酸化膜を堆積する方法を開示する特許文献1が存在する。この方法は、高い誘電体または絶縁体のごとき、高誘電率酸化膜の特性を損なうことなくシリコン層上に直接に高誘電体酸化膜を形成するための方法が提案されている。前述した従来の方法によれば、第1に、高誘電率窒化膜がシリコン層の上に形成され、その後、高誘電率窒化膜は、酸化されることによって高誘電率酸化膜になるように変化する。
【0009】
【特許文献1】特開平11−168096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は次の通りである。シリコン基板上のMOSFETでゲート絶縁層として用いられる非常に薄い誘電体膜を製作する時、より高い誘電率を備えた均一な誘電体膜が成膜されることが必要とされる。
【0011】
本発明の目的は、シリコン基板上のMOSFETにおいて、非常に薄い厚みを有し、膜質の高い均一性を有し、より高い誘電率を有する誘電体膜を堆積する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ウェハーが配置され、所定の回転速度で回転するウェハーホルダと、
前記ウェハーホルダの回転軸から外れた上方の位置に、傾斜姿勢で設けられ、ハフニウムを含有するターゲットが取り付けられ、DC電力を投入可能なカソードと、
前記ウェハーホルダの回転軸から外れた下方の位置であって、上方に前記カソードが位置しない位置に設けられ、プロセスガスとして窒素ガスを導入するためのガス導入部と、
前記ウェハーホルダの下方であって、当該ウェハーホルダを挟んで前記ガス導入部とは反対側の位置に設けられた排気ポートと、
を備えることを特徴とする反応性スパッタリング装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PVDおよび熱的アニーリングプロセスによって非常に薄いかつ非常に均一な誘電体膜を堆積することにおいて新技術が提供され、当該新技術では膜はプラズマによって誘導されるダメージを受けない。この技術によれば、EOT(equivalent oxide thickness:等価酸化物厚み)<1nm、かつ漏れ電流が10-1A/cm2よりも小さいという特性を有する高誘電率誘電体膜を作製するということが示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る高誘電率誘電体膜を堆積する方法は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
【0015】
基板のドープシリコン層またはドープシリコン化合物層の上に高誘電率誘電体膜を堆積する方法は、特定元素(A)を窒化してシリコン層上に窒化膜(AxNy)を形成する第1ステップであって、当該窒化膜(AxNy)における特定元素(A)と窒素(N)がxとyの間で所定割合の関係を有する上記第1ステップと、当該窒化膜を酸化雰囲気において酸化して酸化かつ窒化された誘電体膜(AON)を形成する第2ステップを含んで構成される。
【0016】
前述の方法において、好ましくは、特定元素(A)は元素の周期表の3族、4族、または5族に属するいずれかの元素である。
【0017】
前述の方法において、好ましくは、窒化膜(AxNy)で特定元素(A)と窒素(N)はyがそのストチオメトリック値(stochiometric value)よりも小さいという関係を有する。
【0018】
前述の方法において、好ましくは、特定元素(A)はハフニウム(Hf)である。
【0019】
前述の方法において、好ましくは、窒化膜(HfxNy)におけるハフニウム(Hf)と窒素(N)は0<y<1.5、xが1の時という関係を有する。
【0020】
前述の方法において、好ましくは、第2ステップでの酸化プロセスは400〜1000℃の温度範囲に含まれる特定温度を有する熱的アニールプロセスによって実行される。
【0021】
前述の方法において、好ましくは反応性スパッタリング方法が膜堆積に用いられる。
【0022】
前述の方法において、好ましくは、SiO2層、SiN層、SiON層のいずれかが最初にシリコン層上に設けられ、それから高誘電率誘電体膜(AON)を堆積する。
【0023】
前述の方法において、好ましくは、第1ステップでの窒化プロセスのために供給される窒素ガス(N2)の流速は1〜15sccmの範囲に含まれるいずれかの値である。
【0024】
以下に、添付した図面を参照して好適な実施形態を説明する。当該実施形態の説明を通して本発明の詳細が明らかにされる。
【0025】
[実施形態1]
図1〜図6を参照して本発明の第1実施形態が説明される。一例としてPVD処理チャンバ10の概略構成図が図1に示される。本発明による高誘電率誘電体膜を堆積する方法は、当該PVD処理チャンバでMOSFET用ゲート電極を作るためのシリコンウェハー上にゲート絶縁層を作るために、実行される。
【0026】
最初に、PVD処理チャンバ10の構造が説明される。この処理チャンバ10は、ウェハーホルダ11、いわゆるカソードと呼ばれる、平板形状を有するターゲット12、側壁13、トッププレート14、ボトムプレート15、排気ポート16、およびガス導入部17から構成されている。ターゲット12の代表的材料は好ましくはハフニウム(Hf)である。ターゲット12は、絶縁支持プレート18を介して、傾斜姿勢で、処理チャンバ10の壁またはプレート(13,14)に固定されている。ターゲット12は、絶縁支持プレート18によって処理チャンバ10のその他の部分から電気的に絶縁されている。
【0027】
ターゲット12の上側または横側では、回転可能な支持プレート20に固定されたマグネット配列19が存在する。支持プレート20は、図示されていない駆動機構を有している。参照番号20aは回転軸を示している。装置が作動している間、マグネット配列19は、駆動機構の中に含まれる電気モータによって回転させられる。マグネット配列19のための電気モータおよび回転機構は図1に示されていない。
【0028】
前述したターゲット12は、DC電源21からプラズマを生成するためのDC電力が供給される。DC電力を用いることは本質的なことではない。DC電力の代わりにrf(交流)電力をプラズマを発生させるために用いることもできる。
【0029】
ターゲット12は、好ましくは、99.99%の純度を有するハフニウム(Hf)によって作られている。ターゲット12はウェハーホルダ11の上に配置されたウェハーまたは基板22に対して好ましい所定の角度をもって配置されている。再び、ウェハーホルダ11の軸11aとターゲット12の軸12aは平行ではなく、所定の角度(α)にて交差するようになっている。2つの軸11aと軸12aは同じ平面内に存在する。これらの2つの軸11aと軸12aの間の角度(α)は90°よりも小さく、代表的にはおよそ45°である。
【0030】
ウェハーホルダ11は、ウェハー22上での膜堆積の間、およそ60rpm等の回転速度で回転させられている。回転速度は重要なことではなく、広い範囲、例えば10〜500rpmの範囲で変化させることができる。ウェハーホルダの回転機構は図において示されていない。
【0031】
次に、前述したPVD処理チャンバで実行されるウェハー22上に高誘電率誘電体膜を堆積する方法またはプロセスが図2を参照して詳細に説明される。
【0032】
高誘電率誘電体膜は、ドープシリコン(p−Si,n−Si)またはドープシリコン化合物(ドープされたSiGe。例えば、p−SiGe,n−SiGe)のウェハー22の表面上に形成される。高誘電率誘電体膜は、ウェハー22の上に作製されたCMOSデバイスにおけるMOSFETのゲート誘電体層に用いられる。それは、SiO2の誘電率よりも大きな、より高い誘電率を有する非常に薄い誘電体膜である。
【0033】
プロセスガスとして、ArまたはN2が、ガス導入部17を経由して処理チャンバ10の中に導入される。処理チャンバ10の内部圧力は好ましくは0.5Paよりも低く維持されている。Hfターゲット12にDC電力を与えることによってスパッタリングが実行される。
【0034】
Hfターゲット12を用いてスパッタリングを実行する時、処理チャンバ10は予め窒素(N2)/アルゴン(Ar)の混合ガスが導入されている。PVD処理チャンバ10の中にはN2の原子が存在するので、スパッタされた原子Hfは窒素のラジカル/イオンと反応してウェハー22の表面上にHfN(窒化ハフニウム)の膜または層を形成する。ウェハー22の基礎となる物質はシリコンである。当該HfN膜はドープされたシリコン層またはSiGeなどの上に形成される。
【0035】
Hfを基礎とする高誘電率誘電体膜を形成する手順は次の通り進行する。
【0036】
(1):ウェハー(前述のウェハー22)は希釈化されたHf溶液によって洗浄され、元々存在したシリコン酸化物を除去する(ステップS1)。
(2):当該ウェハーを乾燥する(ステップS1)。
(3):反応性スパッタリング技術によってウェハー上にHfN膜を堆積する(ステップS2)。
(4):約1%の含有率で酸素を含むほとんどが不活性ガスまたはN2である環境で400℃を越える高い温度でウェハーをアニールする(ステップS3)。
【0037】
最初、ウェハーは希釈されたHF溶液で洗浄され、ウェハー表面上における元々存在する酸化物と他の汚れを除去し、乾燥する(ステップS1)。第2に、HfN膜をウェハー表面上に反応性スパッタ成膜技術によって堆積する(ステップS2)。当該HfNの堆積に関して前述したPVD処理チャンバ10が用いられる。第3に、ウェハーは400℃を越えるより高い温度で熱的アニールを受ける(ステップS3)。当該アニールの時の圧力は重要な事項ではなく、数トール(Torr)の圧力から大気圧まで変化させることができる。当該アニールのガス環境はほとんど不活性ガスまたはN2ガスであり、約1%の酸素を含むものである。当該アニールプロセスによってHfN膜は酸化され、HfN膜は高誘電率誘電体膜としてのHfON膜に変化する。
【0038】
非常に薄くかつゲート誘電体として用いられる高誘電率誘電体膜をHfターゲット12を用いて堆積または形成する上記プロセスにおいて、窒化膜(HfxNy)におけるハフニウム(Hf)と窒素(N)はx=1に関して0<y<1.5という関係を有している。
【0039】
前述した膜の準備の後、TaN膜がゲート電極としてHfN膜の上に成膜され、ウェハー22上で金属酸化半導体(MOS)キャパシタを形成するようにパターン化されかつエッチングされる。これらのMOSキャパシタのCV(容量・電圧)特性およびIV(電流・電圧)特性を検査し、等価酸化物厚み(equivalent oxide thickness:EOT)および漏れ電流を評価した。
【0040】
前述した装置構成によれば、200mmまたは300mmの直径のウェハーの上に全体に渡って極めて均一な膜を作る。図3は200mmウェハー上での当該HfN膜の均一性を示す。図3(A)は膜の厚みを示すウェハーの平面図であり、図3(B)は当該膜の規格化された抵抗値を示す直径ラインにおける縦方向の図である。膜の厚みは、直径180mmの円形表面領域の全面で分散して設定した49点で測定され、その標準偏差(σ)は0.95%として概算された。標準偏差は膜の非均一性を表している。図3において、参照番号23は均一性の等高線を示し、参照番号24は抵抗値データによって形成された特性線を示す。
【0041】
図4および図5は、先に説明した手順で得られた、準備されたハフニウム酸化窒化膜(HfON)に関する電気的データを示している。それらのHfON膜は次のようなプロセスパラメータおよび膜パラメータで堆積されたものである。
【0042】
圧力 0.019Pa
Arガス流速 20sccm
N2ガス流速 6sccm
DC電力 300W
成膜速度 2.4nm/分
成膜時間 12.5秒
HfN膜厚み 0.5nm
HfN膜抵抗値 516μ/Ωcm
HfN膜均一性 0.95%(1σ)
【0043】
図4および図5は、それぞれ、準備された膜のCV特性およびIV特性を示す。この場合において、熱的アニール前の元々のHfN膜の厚みは0.5nmである。熱的アニールは、N2およびO2(〜1%)の混合ガスで、大気圧の下で、600℃の温度で、30秒間実行される。堆積されたHfNは低い抵抗値を有し、金属的な特性を示す。HfN膜の抵抗値特性は、当該膜の窒素の含有量で変化する。図6は、処理チャンバ10の中に導入される窒素の流速の関数としてHfN抵抗値特性の変化を示す。
【0044】
図4および図5に示されるように、熱的アニールの処理後、結果として生じる膜(HfON)は誘電体の特性を示す。結果としての膜は非常に薄い厚みを有した高誘電率誘電体膜になる。それ故に、熱的アニールの間に、HfN膜は酸素と反応して前述の条件を満足しHfONを形成する(分子的な窒素は600℃ではHfNと反応しない)。
【0045】
再び、Si/HfN境界面において、SiはHfON膜を通り抜けて到来する酸素と反応し、非常に薄いSiO層を形成する。より高い温度でHfとSiは境界面の近傍で合成され、HfSiONを形成する。従って、結果として生じる膜はHfON、HfSiON、およびSiOを含む。図4および図5に示される膜に関して、概算されたEOTおよび漏れ電流は、それぞれ、0.95nmおよび0.03A/cm-2である。漏れ電流は−1.2ボルト(V)で概算され、それは−0.2ボルトのVfb(フラットバンド電圧)から−1ボルトのより低い電圧である。
【0046】
Siの酸化の程度とSiおよびHfの混合の程度とは、アニ−ルの温度および時間に依存する。初期のHfNの厚みに依存して、最も低いEOTおよび/または最も低い漏れ電流を得るために最適なアニ−ル温度とアニール時間が見出されなければならない。
【0047】
膜堆積のプロセスの間、Hfターゲット12の中心とウェハーホルダ11との間の垂直な距離は300mmである。DC電力によって生成されるプラズマは基本的に強い磁界によってHfターゲット12の近傍に閉じ込められる。これらの2つの理由に基づいて、ウェハー表面上におけるプラズマ密度は無視できる程度により小さいものである。このように、前述した装置構成を用いた膜の堆積はリモートプラズマによる成膜として考えることができる。これらの事実のため、ウェハー22上に堆積する膜はプラズマによって誘導されるダメージを受けることはない。このことは、さらに、膜に対するプラズマ誘導ダメージの証拠が見出されないCV測定およびIV測定によって確認される。
【0048】
第1実施形態の変形例として、上記のハフニウム(Hf)の代わりに、ゲート誘電体を得ることにおける初期の膜として、他の金属または金属窒化物を用いることができる。他の金属は元素の周期表の3族、4族、または5族に属する特定の元素である。特定の元素に関するいくつかの例としては、Zr,La,Ti,Ta等のものである。当該特定の元素を一般的にシンボル“A”で示す場合に、堆積した窒化物質はAxNyとして表現される。この場合において、窒化膜(AxNy)における特定の元素(A)と窒素(N)はxとyの間で予め定められた割合関係を有している。具体的にyは窒化膜(AxNy)に関してそのストチオメトリック値(stochiometric value)よりも小さいものとなっている。
【0049】
同様にまた金属ゲートとして濃密にドープされたポリシリコンを用いることができる。さらに、1つのタイプの物質の代わりに、金属ゲートとして異なる金属/金属窒化物の組合せを用いることも可能である。金属ゲート物質のタイプに依存して、フラットバンド電圧はシフトし、作製されたMOSデバイスの金属ゲートの仕事関数は変化する。
【0050】
[実施形態2]
次に本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の特徴は膜の準備手順にある。第2実施形態における膜の準備手順は次の通りである。
【0051】
(1):ウェハーは希釈されたHF溶液において洗浄され、元々のシリコン酸化物を除去する。
(2):ウェハーを乾燥する。
(3):NH3のガス雰囲気で500℃を越えて熱アニ−ルする。
(4):反応性スパッタリング技術においてHfNを堆積する。
(5):約1%の含有率の酸素を含むほとんどが不活性ガスまたはN2の雰囲気において400℃を越えるより高い温度でウェハーをアニールする。
【0052】
第2実施形態においてHfN膜の成膜前における初期のウェハーの準備のみが第1実施形態に比較して変更される。上で説明したように、ウェハーは希釈化されたHF溶液での洗浄の後であってHfNの成膜前に、NH3のガス雰囲気で熱的アニールを受ける。このアニールプロセスの間、シリコン窒化物(SiNx)の薄い層がウェハー表面上に形成される。代表的に、アニール時間とアニール温度は、1nmの厚みよりもより小さい厚みのシリコン窒化物膜を有するように制御される。しかしながら、このことは重要な要求ではない。このシリコン窒化物層は、その後の成膜アニールの間、Siウェハー22への酸素の拡散を抑制する。Siウェハー22への酸素の拡散はSiO2の形成の原因となり、それによってEOTの増加の原因となる。従ってシリコン窒化物層は、結果的に生じた膜のEOTを最小化することを支援する。
【0053】
前述した追加のステップを除いて、第2実施形態におけるすべてのその他の処理ステップおよび処理システムの構成は第1実施形態で説明したそれらと同じである。
【0054】
[実施形態3]
次に本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態の特徴は同様にまた膜準備手順にある。第3実施形態における膜準備手順は次の通りである。第3実施形態において、初期のウェハー準備の方法のみが変更される。
【0055】
(1):ウェハーは希釈化されたHF溶液で洗浄され元々存するシリコン酸化物が除去される。
(2):ウェハーを乾燥する。
(3):CVDまたはRTPプロセスによって下地層と呼ばれるSiO2またはSiONまたはSi3N4の非常に薄い層を堆積する。
(4):反応性スパッタリング技術によってHfNを堆積する。
(5):約1%の含有率の酸素を含むほとんどが不活性ガスまたはN2の雰囲気において400℃を越えるより高い温度でウェハーをアニールする。
【0056】
CVDまたはRTPによって堆積されるSiO2層、SiON層、またはSi3N4層は、通常、およそ1nmまたはそれより小さく保持される。この層の使用することは、最終的な混成の誘電体物質の電気的特性を改善することである。
【0057】
前述した相違を除いて、すべての他の膜準備の方法は第1実施形態で説明されたそれらと同じである。
【0058】
図7と図8は、それぞれ、下地層が1.2nmの厚みを有するSiO2である処の結果的に生じた膜に関して、CV曲線とIV曲線を示す。図9と図10は、それぞれ、下地層が1.2nmの厚みを有するSiONである処の結果的に生じた膜に関して、CV曲線とIV曲線を示す。これらのSiO2とSiONはRTPプロセスによって堆積されたものである。HfNは第1実施形態で与えられた条件の下で反応性スパッタリングによってこれらのウェハー上に堆積される。その後、当該膜は900℃の温度で30秒間熱的にアニールされる。その後、CVデータとIVデータがTaN金属ゲート電極を用いて測定される。
【0059】
これらの膜の電気的特性の要約は図11に描かれた表で示される。
【0060】
その後の成膜のアニール温度およびアニール時間は電気的特性を最適化する上で重要である。前述したアニール時間およびアニール温度はおそらく最良な条件ではないということは留意すべきである。同様にまたRTP法以外の異なるアニーリング技術を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ドープされたシリコンまたはトープされたSi(シリコン)化合物のウェハーの上で非常に薄いかつ均一な厚みを有する各種の金属酸化物膜または金属酸化窒化膜のごとき高誘電率誘電体膜であって、MOSFETデバイスのゲート誘電体層として用いられるものを堆積するのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この図はHfN成膜のために用いられるDCマグネトロンPVD装置の構成図である。
【図2】この図はゲート絶縁膜として高誘電率誘電体膜を形成するための工程図である。
【図3】この図((A),(B))は膜厚を示すウェハーの平面図(A)と膜の規格化抵抗を示す直径ラインにおける縦方向の図(B)である。
【図4】この図は結果的に生じた誘電体膜に関して得られたCVデータを示す特性グラフである。
【図5】この図は結果的に得られた誘電体膜に関して得られたIVデータを示す特性グラフである。
【図6】この図は処理チャンバに導入された窒素の流速に対してHfNの抵抗値の変化を示す特性グラフである。
【図7】この図は下地層が1.2nmのSiO2でありかつHfNの厚みが0.5nmおよび1nmであるところの最終的誘電体膜に関するCV曲線を示す特性グラフである。
【図8】この図は下地層が1.2nmのSiO2およびHfNの厚みが0.5nmおよび1nmであるときの最終的誘電体膜のIV曲線を示す特性グラフである。
【図9】この図は下地層が1.2nmのSiONでありかつHfNの厚みが0.5nmおよび1nmであるときの最終的誘電体膜のCV曲線を示す特性グラフである。
【図10】この図は、下地層が1.2nmのSiONでありかつHfNの厚みが0.5nmまたは1nmであるときの最終的誘電体膜のIVカーブを示す特性グラフである。
【図11】この図は特別な元素の電気的属性の要約を示す表である。
【符号の説明】
【0063】
10 PVD処理チャンバ
11 ウェハーホルダ
12 ターゲット
19 マグネット配列
22 ウェハー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハーが配置され、所定の回転速度で回転するウェハーホルダと、
前記ウェハーホルダの回転軸から外れた上方の位置に、傾斜姿勢で設けられ、ハフニウムを含有するターゲットが取り付けられ、DC電力を投入可能なカソードと、
前記ウェハーホルダの回転軸から外れた下方の位置であって、上方に前記カソードが位置しない位置に設けられ、プロセスガスとして窒素ガスを導入するためのガス導入部と、
前記ウェハーホルダの下方であって、当該ウェハーホルダを挟んで前記ガス導入部とは反対側の位置に設けられた排気ポートと、
を備えることを特徴とする反応性スパッタリング装置。
【請求項1】
ウェハーが配置され、所定の回転速度で回転するウェハーホルダと、
前記ウェハーホルダの回転軸から外れた上方の位置に、傾斜姿勢で設けられ、ハフニウムを含有するターゲットが取り付けられ、DC電力を投入可能なカソードと、
前記ウェハーホルダの回転軸から外れた下方の位置であって、上方に前記カソードが位置しない位置に設けられ、プロセスガスとして窒素ガスを導入するためのガス導入部と、
前記ウェハーホルダの下方であって、当該ウェハーホルダを挟んで前記ガス導入部とは反対側の位置に設けられた排気ポートと、
を備えることを特徴とする反応性スパッタリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−79301(P2009−79301A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284968(P2008−284968)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【分割の表示】特願2004−160928(P2004−160928)の分割
【原出願日】平成16年5月31日(2004.5.31)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【分割の表示】特願2004−160928(P2004−160928)の分割
【原出願日】平成16年5月31日(2004.5.31)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
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