説明

基板測定用ステージ

【課題】支持ピン3の位置再現性を向上させること、及び載置板2と支持ピン3間の移載において基板Wの水平方向のずれを防止することである。
【解決手段】基板Wの反りを測定する反り測定系7、及び当該基板Wの反り以外の物理量又は化学量を測定する通常測定系6に用いられる基板測定用ステージ1であって、前記通常測定系6の通常測定位置P1、及びその通常測定位置P1から下方に離間した退避位置P2の間を移動可能な載置板2と、前記載置板2に設けられた貫通孔21に挿通可能であり、前記反り測定系7の反り測定位置P3に固定された複数の支持ピン3と、前記載置板2を前記通常測定位置P1及び前記退避位置P2の間で昇降移動させる駆動機構と、を備え、前記反り測定位置P3が、前記通常測定位置P1及び退避位置P2の間に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の反りを測定するための反り測定系及び反り以外の物理量及び/又は化学量を測定するための通常測定系に用いられる基板測定用ステージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板測定用ステージは、基板が載置される載置板と、当該載置板を貫通するように設けられた複数の支持ピンとを備え、載置板を固定し支持ピンを動かして、又は載置板及び支持ピンの両方を動かして、支持ピンが載置板の下から突き出す構造としている。
【0003】
しかしながら、支持ピンを動かすものでは、測定毎の支持ピンの高さ位置の再現性が悪くなるという問題がある。
【0004】
また、複数の支持ピン毎に高さ位置を調節するものでは、各支持ピンの先端部を同一平面上に位置させることが困難であるため、例えば特許文献1、2に示すように、各支持ピンを共通の部材に固定して、全ての支持ピンを同時に上下動させるようにしたものがある。
【0005】
しかしながら、複数の支持ピンを平行にあげることが困難であり、各支持ピンが基板に接触するタイミングがずれる結果、載置板に載置されていた基板の位置と支持ピンに支持される基板の位置が、少なくともXY平面内(水平方向)においてずれてしまうという問題がある。
【0006】
さらに、膜厚等の測定結果と反り測定結果とを比較する場合などには、膜厚測定の測定位置と反り測定の測定位置とを同じ高さにする必要があると考えられている。載置板上の基板と支持ピン上の基板との高さがずれると膜厚測定系及び反り測定系の各焦点がずれてしまい測定結果に悪影響を与えてしまうからである。そうすると、載置板から支持ピンに基板を移載する際に、支持ピンにより基板を支持した後、支持ピンの高さを調節して、載置板に載置されていた高さに調節する必要がある。
【0007】
しかしながら、上述したように、移載するときに基板が水平方向にずれてしまい、また、支持ピンを移動させるものでは高さ再現性が悪いという問題がある。
【特許文献1】特開平6−97269号公報
【特許文献2】特開2006−332587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者は、上記問題点を解消すべく、鋭意検討の結果、反り測定の基板の高さが、膜厚測定の基板の高さより下方にずれたとしても測定結果に影響が出ないことを発見した。
【0009】
つまり、本発明は上記発見に基づいて、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、支持ピンの位置再現性を向上させること、及び載置板と支持ピン間の移載において基板の水平方向のずれを防止することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係る基板測定用ステージは、基板の反りを測定する反り測定系、及び当該基板の反り以外の物理量及び/又は化学量を測定する通常測定系に用いられる基板測定用ステージであって、前記基板が載置され、前記通常測定系の通常測定位置、及びその通常測定位置から下方(鉛直方向成分を含む方向である。)に離間した退避位置の間を移動可能な載置板と、前記基板を支持する支持端を有し、その支持端が前記載置板の移動に関わらず、前記反り測定系の反り測定位置に固定された複数の支持部材と、前記載置板を前記通常測定位置及び前記退避位置の間で昇降移動させる昇降移動機構と、を備え、前記反り測定位置が前記通常測定位置及び前記退避位置の間に設定されていることを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、各支持部材が反り測定位置に固定されているので、支持部材の位置再現性を向上させることができ、また、載置板から支持部材への移載時又は支持部材から載置板への移載時に基板が水平方向にずれることを防止することができる。さらに、支持部材の上下移動機構を不要にすることができ、基板測定用ステージを小型化することができるとともに、安価にすることができる。
【0012】
具体的な動作としては、前記載置板が前記通常測定位置にあり、前記基板が載置されている状態において、前記載置板が前記通常測定位置から前記退避位置へ移動するに従って、前記支持部材が、前記載置板の貫通孔を通り、前記載置板の上面から突出して前記基板を支持する。一方、前記載置板が前記退避位置にあり、前記支持部材が前記基板を支持している状態において、前記載置板が前記退避位置から前記通常測定位置へ移動するに従って、前記支持ピンが前記載置板の貫通孔を通り、前記載置板の上面から埋没して、前記載置板が前記基板を保持する。
【0013】
通常測定の測定結果と反り測定の測定結果との比較を行う場合など測定の利便性を確保するためには、前記反り測定位置と前記通常測定位置との差が実質的に反り測定に影響を与えない範囲であることが望ましい。
【0014】
測定対象毎に支持部材の高さを調節可能にするためには、前記支持部材毎に、当該支持部材の高さを調節する高さ調節機構を備えていることが望ましい。
【0015】
載置板の具体的な実施の態様としては、前記基板を吸着して保持するチャック板であることが考えられる。
【0016】
慣性によって前記支持部材から前記基板がずれないようにして、前記基板を高速で水平方向に移動させることができようにし、その結果、反り測定にかかる時間を短縮できるようにするには、前記支持部材が、反り測定時において、前記基板がずれるのを防止するずれ防止部を備えたものであればよい。特に、基板が水平方向にずれるのを防止するようにしたものが好ましい。
【0017】
前記基板が前記支持部材から、慣性によってずれないようにする具体的な実施の態様としては、前記ずれ防止部が、前記基板を吸着して保持するものが考えられる
【0018】
段取り替えなどを行わずに、前記載置板の同じ位置に前記基板を載置して、複数種類の大きさの基板に対して反り測定を容易に行えるようにするとともに、必要最低限の支持部材によって基板を支持して、反り測定への影響を小さくし、基板のコンタミネーションを少なくするには、複数の支持部材によって、支持する基板の大きさが異なる支持部材群が構成され、支持する基板が小さい支持部材群は、支持する基板が大きい支持部材群の内側に配置され、支持する基板が小さい支持部材群の反り測定位置は、支持する基板が大きい支持部材群の反り測定位置の下方に設定されていればよい。
【0019】
通常測定系の具体的な実施の態様としては、基板上の膜厚を測定するためのエリプソメータであることが考えられる。
【0020】
また、本発明の基板測定用ステージを基板測定装置に用いることにより、基板の高精度且つ高分解能な測定が可能となる。
【0021】
反り測定時に、前記基板に前記支持部材が接触することによって生じる傷やコンタミネーションなどを最小限にするには、前記支持部材が、前記基板の外周部を保持するものであればよい。基板の外周部はチップとならず捨てられる部分なので、傷やコンタミネーションが生じたとしても問題となりにくいからである。
【0022】
前記基板の外周部を保持しつつ、慣性によって水平方向にずれるのを防ぐためには、前記支持部材が、その支持端から前記基板の側面と接触する突出部を突出させたものが考えられる。
【0023】
周辺外気の温度変化によって、前記支持部材に熱変形が生じ、支持されている前記基板が傾いてしまう場合がある。基板が傾いてしまうと、反り測定時に基板の反りと基板の傾きが合わさった測定結果になり反りの測定精度が悪化してしまう。このような温度変化の影響が前記基板の反り測定に現れるのを抑制するには、前記支持部材の熱変形を低減する、熱変形低減機構を備えたものであればよい。
【0024】
温度変化の生じた周辺外気が支持部材に接触するのを防止し、熱変形を低減するには、前記熱変形低減機構が、前記支持部材の周囲を囲む遮断壁を備えたものであればよい。
【0025】
簡単な温度制御で前記支持部材の熱変形を低減し、反り測定に周辺外気の温度変化の影響が表れないようにするには、前記熱変形低減機構が、前記支持部材を周辺外気よりも高い温度で一定に保つヒータを備えたものであればよい。
【発明の効果】
【0026】
このように構成した本発明によれば、支持部材の位置再現性を向上させること、及び載置板と支持部材間の移載において基板の水平方向のずれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図1は基板測定用ステージ1の模式的構成図であり、図2は載置板2の平面図である。図3は基板測定用ステージ1の動作を示す図であり、図4は基板測定用ステージ1を用いた位置再現性の実験結果を示す表である。
【0028】
<装置構成>
【0029】
本実施形態に係る基板測定用ステージ1は、基板Wの反りを測定する反り測定系7、及び当該基板Wの反り以外の物理量及び/又は化学量を測定する通常測定系6に用いられるものである。基板Wとしては、FPD用のガラス基板、又はシリコン基板に代表される半導体ウエハ等が考えられる。なお、基板測定用ステージ1、通常測定系6及び反り測定系7から基板測定装置が構成されている。
【0030】
本実施形態では、通常測定系6は、基板Wの反り以外の物理量及び/又は化学量のうち、基板W表面に成膜された膜厚、基板の厚さを測定するためのものであり、例えばエリプソメータを用いている。図1中、61は、レーザ光源又は白色光源であり、62は、光検出器である。
【0031】
また、反り測定系7は、例えばレーザ変位計を用いており、その機器構成は、He−Neレーザ等のレーザ光源等からなる光照射部と、位置検出センサ(PSD)等の光検出部とを備えた一体型のものである。
【0032】
具体的に本実施形態の基板測定用ステージ1は、基板W上に成膜された膜厚を測定すると同時に、基板Wの反りを測定して、成膜により基板Wにかかる応力を測定するストレスメータに用いられるものであり、図1に示すように、前記基板Wが載置され、前記通常測定系6の通常測定位置P1、及びその通常測定位置P1から下方に離間した退避位置P2の間を移動可能な載置板2と、前記載置板2に設けられた貫通孔21に挿通可能であり、前記反り測定系7の反り測定位置P3に固定された複数の支持部材3と、前記載置板2を前記通常測定位置P1及び前記退避位置P2の間で昇降移動させる昇降移動機構4を備えている。さらに昇降移動機構4の下部には、水平方向であるXY軸方向に移動可能な図示しない水平移動機構が設けてあり、基板の測定位置をXY方向に変化させることができる。
【0033】
以下、載置板2、支持部材3及び昇降移動機構4について説明する。
【0034】
載置板2は、基板Wが載置され、通常測定系6によって当該基板Wが測定される通常測定位置P1と、その通常測定位置P1から鉛直方向に下方に離間して設定された退避位置P2との間を移動するものである。本実施形態の載置板2は、平面視において円形状を成すものであるが(図2参照)、平面視において矩形状などその他の形状を成すものであっても良い。
【0035】
ここで、「通常測定位置P1」とは、基板Wの通常測定を行うための載置板2の上面の位置をいい、具体的には、載置板2上に基板Wが載置されたときに、通常測定系6が当該基板Wを通常測定可能となるような載置板2の上面の位置である。つまり、通常測定位置P1にある載置板2上に基板Wが載置されている場合には、通常測定系6の光照射部61の焦点が基板W表面上に位置している状態となる。
【0036】
また、「退避位置P2」とは、載置板2の上面が通常測定位置P1から下方に所定距離離間した位置であり、載置板2の上面が、後述する反り測定位置P3よりも下方となる位置である。前記所定距離離間した位置とは、支持部材3により支持されている基板Wが、支持部材3上で撓んでも、基板Wの下面が載置板2の上面に接触しない程度に下方の位置である。
【0037】
また、本実施形態の載置板2は、基板Wを吸着して保持する真空チャック板である。さらに、載置板2は、図1及び図2に示すように、後述する支持部材3と対向する位置に、支持部材3の数に対応して、複数の貫通孔21が設けられている。本実施形態では、載置板2の中心に対して同心円状に3つ設けられている。
【0038】
そして、載置板2は、後述する昇降移動機構4によって、通常測定位置P1及び退避位置P2の間を鉛直方向に昇降移動する。
【0039】
支持部材3は、反り測定を行うために基板Wを支持するものであり、載置板2の移動に関わらず独立して、その支持端先端が反り測定位置P3となるように固定されている。本実施形態の支持部材3は、支持ピンであり、支持端は支持ピンの先端である。支持ピン3は、一端がステージ基台100に立設された部材を介してステージ基台100に固定され、他端の先端が反り測定位置P3に位置するように、後述する高さ調節機構5により支持ピン3の高さが調節される。
【0040】
ここで、「反り測定位置P3」とは、支持ピン3の支持端上に基板Wを載置したときに、反り測定系7が当該基板Wを測定可能な支持ピン3の支持端の位置である。本実施形態では、支持端は支持ピン3の先端であるので、反り測定位置P3は支持ピン3の先端上に基板Wを配置したときに、反り測定系7が当該基板Wを測定可能な支持ピン3の先端の位置となる。そして、反り測定位置P3は、載置板2の通常測定位置P1と退避位置P2との間に設定されている。載置板2を通常測定位置P1と退避位置P2との間を移動させて一連の測定を行う際において、支持ピン3の高さは変化しないため、前記一連の測定を行う際において、反り測定位置P3のステージ基台100からの高さも変化せずに一定である。
【0041】
このとき、通常測定位置P1と反り測定位置P3との高さの差は、実質的に反り測定に影響を与えない範囲であり、反り測定系7の有する光学系との関係で決定され、例えば400μmである。なお、上記差は、400μm未満であっても良い。
【0042】
また、支持ピン3は、図1に示すように、その先端部が球面形状を成し、図2に示すように、本実施形態では、前記載置板2の中心と一致する重心を有する正三角形の頂点に位置するように3本設けられている。そして、支持ピン3は、載置板2の昇降移動に伴って、載置板2に設けられた貫通孔21を挿通するものである。
【0043】
各支持ピン3の下端には、当該支持ピン3の高さを調節するための高さ調節機構5が設けられている。
【0044】
高さ調節機構5は、支持ピン3の下端に六角部53を介して連続して設けられた雄ねじ部51と、ステージ基台100に設けられた雌ねじ部52とからなる。雌ねじ部52は、ステージ基台100に立設された部材に設けられている。そして、前記六角部53を回転させて、雄ねじ部51を雌ねじ部52に螺合させることにより、支持ピン3の先端を上下に調節する。
【0045】
具体的には、高さ調節機構5を用いて、支持ピン3の高さが、通常測定位置P1から反り測定に影響を与えない程度、本実施形態では通常測定位置P1から400μm、下の位置となるように調節する。
【0046】
昇降移動機構4は、ステージ基台100に設けられ、ステージ基台100に対する前記載置板2の高さを変化させる部材であって、前記載置板2を通常測定位置P1と退避位置P2との間で昇降移動させるものである。
【0047】
具体的には、昇降移動機構4は、ステージ基台100上に水平方向に設けられた第1リニアガイド41と、第1リニアガイド41上に設けられ、水平方向に移動可能なくさび部材42と、ステージ基台100に設けられ、くさび部材42を進退移動させる駆動機構43と、前記くさび部材42の傾斜面に傾斜方向に沿って設けられた第2リニアガイド44と、前記ステージ基台100上に鉛直方向に設けられた第3リニアガイド45と、前記第2リニアガイド44及び前記第3リニアガイド45上に設けられ、鉛直方向に移動可能な昇降部材46と、を備え、くさび部材42又は昇降部材46の少なくとも一方が、くさび部材42の第2リニアガイド44が設けられる設置面を、第2リニアガイド44のくさび部材42が設けられる設置面に沿った角度に調節し、又は昇降部材46の第2リニアガイド44が設けられる設置面を、第2リニアガイド44の昇降部材46が設けられる設置面に沿った角度に調節する角度調節機構462を有している。昇降部材46の上面には、前記載置板2が設けられている。
【0048】
前記第1、第2、第3リニアガイド41、44、45は、それぞれ長尺状の第1、第2、第3軌道レール411、441、451と、当該軌道レール411、441、451に対して摺動自在に跨架してなる第1、第2、第3スライダ412、442、452とから構成されるクロスローラガイドである。
【0049】
くさび部材42は、後述する駆動機構43により受ける水平方向の力を鉛直方向の力に変換する部材であり、図1に示すように、第1リニアガイド41の第1スライダ412上に設けられている。くさび部材42は、その上面には、進行方向に沿って(先端部に向かうに従って)傾斜して下る傾斜面を備えている。また、くさび部材42の後端部には、くさび部材42を第1リニアガイド41上でスライド移動させる駆動機構43が設けられている。
【0050】
駆動機構43は、ステージ基台100上に設けられており、ボールネジ機構を用いたものであり、ホルダによってステージ基台100上に固定された駆動部431と、当該駆動部431の出力軸にカップリングを介して回転自在に連結されたボールネジ軸432と、くさび部材42に設けられ、前記ボールネジ軸432が螺合するボールネジナット(図示しない)と、を備えている。駆動部431としては、ステッピングモータ等のモータ又は手動用つまみを用いたものが考えられる。
【0051】
このような構造により、駆動部431により出力軸を回転させることにより、カップリングを介してボールネジ軸432が所定角度回転して、くさび部材42がステージ基台100に対して水平方向(X軸方向)に相対移動する。
【0052】
第2リニアガイド44は、くさび部材42の傾斜面上に、当該傾斜面の傾斜方向に沿って設けられている。
【0053】
昇降部材46は、鉛直方向(Z軸方向)に昇降するものであり、第3リニアガイド45に固定される昇降部材本体461と、当該昇降部材本体461に設けられ、第3リニアガイド45に設けたときの昇降部材46の第2リニアガイド44が設けられる設置面が、くさび部材42に固定された第2リニアガイド44の昇降部材46が固定される固定面(設置面)と面接触するように、その角度を調節する角度調節機構462を有している。
【0054】
昇降部材本体461は、前記第3リニアガイド45の第3スライダ452に取り付けられて、ステージ基台100に対して鉛直方向に相対移動するものである。
【0055】
角度調節機構462は、第2リニアガイド44に固定される中間体4621と、昇降部材本体461及び中間体4621の間に設けられ、第2リニアガイド44を介してくさび部材42により規定される中間体4621の姿勢と、第3リニアガイド45により規定される昇降部材本体461の姿勢とを保持して固定する固定部4622と、を備えている。
【0056】
このように、本実施形態の昇降部材46は、昇降部材本体461と中間体4621とに分離されて、中間体4621が第2リニアガイド44に移動可能に固定されている。ここで、昇降部材46の第2リニアガイド44が設けられる設置面と、中間体4621の第2リニアガイド44が設けられる設置面とは同じである。したがって、昇降部材46の第2リニアガイド44が設けられる設置面の角度を調節するということは、中間体4621と、昇降部材46との姿勢を保持して固定することを意味する。
【0057】
つまり、上述のように、昇降部材本体461に中間体4621を固定すれば、昇降部材46を第3リニアガイド45に設けたときの第2リニアガイド44が設けられる設置面を、第2リニアガイド44の移動ステージが設けられる固定面(設置面)に沿った角度に調節することになる。
【0058】
中間体4621は、前記第2リニアガイド44上、具体的には、第2リニアガイド44の第2スライダ442上に設けられ、前記くさび部材42の傾斜面に対して相対移動するものである。
【0059】
本実施形態の固定部4622は、中間体4621又は昇降部材本体461の一方に設けられ、中間体4621又は昇降部材本体461の他方に先端部が押圧接触して狭持する複数の押圧子から構成される。
【0060】
押圧子4622は、固定の際に中間体4621又は昇降部材本体461の他方に対して進退移動して、設計上の寸法公差や組立公差等を吸収するものであり、図1に示すように、昇降部材本体461に設けられ、前記中間体4621の上面、下面、一端面及び他端面に接触して、中間体4621を昇降部材本体461に対して固定するものである。各押圧子4622は、金属製のねじであり、その先端部が中間体4621の平面部に押圧接触するものである。押圧子4622の先端部は、球面加工が施されている。
【0061】
次に、本実施形態に係る基板測定用ステージ1の動作を基板測定手順とともに、図3を参照して説明する。
【0062】
(1)「膜厚測定」→「反り測定」の手順
【0063】
まず、基板測定用ステージ1全体を水平移動機構によってXY方向に位置調節を行う。また、駆動機構43によって、基板測定用ステージ1の載置板2のZ方向の位置調節を行う。そして、載置板2上に載置された基板W上に形成された膜厚を通常測定系6(エリプソメータ)によって測定する。膜圧の測定を行うために載置板2に基板が吸着してある間は、XY方向に動かさずに測定を行う。このとき、載置板2のZ軸方向の位置は、通常測定位置P1にある。
【0064】
膜厚測定終了後、載置板2が通常測定位置P1にあり、基板Wが載置されている状態において、駆動機構43により、載置板2が通常測定位置P1から退避位置P2へ移動するに従って、支持ピン3が、載置板2の貫通孔21を通り、載置板2の上面から突出して基板Wを支持する。このようにして、載置板2から支持ピン3へ基板Wが移載される。その後、反り測定系7(レーザ変位計)によって、支持ピン3の基板Wの反りを測定する。
【0065】
(2)「反り測定」→「膜厚測定」の手順
【0066】
基板測定用ステージ1全体をXY方向に位置調節する。なお、支持ピン3は、予め反り測定位置P3に調節されているため、測定毎の調節が不要である。そして、支持ピン3に支持された基板Wの反りを反り測定系7(レーザ変位計)によって測定する。この反り測定においては、基板測定用ステージ1を水平移動機構によってXY方向に動かし、基板Wの表面にレーザ光を走査しながら測定を行う。このとき、測定系7によって測定した基板のXY方向の位置は、水平移動機構のモータに設けられたロータリーエンコーダやリニアエンコーダから取得し、その地点で測定された反りとともに記憶される。そして、XY方向に基板を移動させて基板Wの全面の測定を行う。
【0067】
なお、反りの測定は、XY方向の位置を離散的に設定して測定を行っても良いし、連続的に走査して測定するものであっても良い。
【0068】
反り測定終了後、載置板2が退避位置P2にあり、支持ピン3が基板Wを支持している状態において、駆動機構43によって、載置板2が退避位置P2から通常測定位置P1へ移動するに従って、支持ピン3が載置板2の貫通孔21を通り、載置板2の上面から埋没して、載置板2が基板Wを保持する。このようにして、支持ピン3から載置板2へ基板Wが移載される。その後、通常測定系6(エリプソメータ)によって、載置板2上に載置された基板Wに成膜された膜厚を測定する。
【0069】
次に、本実施形態に係る基板測定用ステージ1を用いた移載における基板Wの位置再現性の実験結果について説明する。
【0070】
従来の基板測定用ステージ1、つまり支持ピン3が昇降移動して載置板2から基板Wを持ち上げるものは、載置板2上における基板Wの水平方向の位置と、支持ピン3上における基板Wの水平方向の位置とが、100〜200μm程度ずれてしまう。
【0071】
一方、本実施形態における基板測定用ステージ1を用いて、載置板2を通常測定位置P1及び退避位置P2の間で昇降移動させることにより、基板Wを載置板2から支持ピン3へ移載するという動作を計10回行った結果を図4に示す。
【0072】
図4から明らかなように、載置板2から支持ピン3への移載前後の基板WのX軸方向のずれが平均1.88(μm)、Y軸方向の位置のずれ平均3.25(μm)であり、XY(水平)方向へのずれが従来のものと比べて格段に小さくなっていることが分かる。
【0073】
<本実施形態の効果>
【0074】
このように構成した本実施形態に係る基板測定用ステージ11によれば、各支持ピン3を反り測定位置P3に固定しているので、支持ピン3の位置再現性を向上させることができ、また、載置板2から支持ピン3への移載時に基板Wが水平方向にずれることを防止することができる。したがって、反り測定の測定結果と膜厚測定等の通常測定の測定結果を比較する場合に、有効に両者の測定結果を用いることができる。さらに、支持ピン3の上下移動機構を不要にすることができ、基板測定用ステージ1を小型化することができ、安価にすることができる。
【0075】
また、載置板2の昇降移動機構4において、くさび部材42が第1リニアガイド41上を水平方向に移動するのに伴って、昇降部材46が第3リニアガイド45上を鉛直方向に移動できるように、昇降部材46又はくさび部材42の第2リニアガイド44が設置される設置面の角度を調節することができるので、各リニアガイドや各部材等の加工精度及び取り付け精度などに関係なく、くさび部材42及び昇降部材46がリニアガイドに対して過拘束となることが無く、高精度及び高分解能を実現することができる。これにより、固定された支持ピン3の反り測定位置P3を載置板2の通常測定位置P1に可及的に近づけることができるようになる。また、本発明の効果を一層顕著にすることができる。
【0076】
また、エアベアリングなどの高価なガイドを用いる必要もないので、構造を簡単にすることができるとともに、安価にすることができる。さらに、クロスローラガイドを用いているので、高剛性を実現することもできる。
【0077】
さらに、支持部材3それぞれを独立してステージ基台100に設けており、さらに高さ調節機構5を設けている。前述した特許文献1では、全てのピンを平行に上下動させることが困難なため、個々のピンの高さを調節しても意味が無いが、本実施形態では、支持部材3はステージ基台100に固定されており動かないため、支持部材3それぞれの高さを別々に変更でき、反り測定位置P3を調節することができる。
【0078】
<その他の変形実施形態>
【0079】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0080】
例えば、前記実施形態の昇降移動機構4は、くさび部材42を用いたものであったが、その他の機構を用いたものであっても良い。
【0081】
前記実施形態では、通常測定系6は、基板W上の膜厚を測定するものであったが、その他の基板Wの物理量又は化学量を測定するものであっても良い。例えば、基板Wの組成、性質、構造、状態などを定性的又は定量的に測定するものであり、基板表面上の欠陥や異物を分析するものや、基板表面又は基板表面に成膜された膜成分を分析するものが考えられる。
【0082】
また、支持部材3は、ピンに限られず、用途に応じて、例えば長尺形状などの種々の形状とすることができる。さらに、前記実施形態では、支持部材3は3つであったが、4つ以上であって良いし、長尺形状を成すものであれば2つであっても良い。
【0083】
また、前記の載置板2に貫通孔21を設け、支持部材3がその貫通孔21を挿通するものであったが、その他、載置板2の側縁部に平面視において中心に向かって凹む凹部を設け、支持部材3がその凹部を挿通するものであっても良い。また、載置板2に貫通孔21及び凹部を設けずに、支持部材3が載置板の周囲に固定されているものであっても良い。
【0084】
また、角度調節機構をくさび部材42に設けるようにしても良い。この場合、くさび部材42が、第1リニアガイド41に固定されるくさび本体と、くさび本体に設けられ、第2リニアガイド44が設けられる設置面を昇降部材46に固定された第2リニアガイド44に沿った角度に調節する角度調節機構と、を備えている。
【0085】
つまり、くさび部材42又は昇降部材46の少なくとも一方が、前記くさび部材42の前記第2リニアガイド44が設けられる設置面を、前記第2リニアガイドの前記くさび部材42が設けられる設置面に沿った角度に調節し、又は前記昇降部材46の前記第2リニアガイド44が設けられる設置面を、前記第2リニアガイド44の前記昇降部材46が設けられる設置面に沿った角度に調節する角度調節機構を有していれば良い。
【0086】
前記実施形態では、反り測定時には、基板Wは支持ピン3の先端に載置されているだけであったが、このようなものの場合、水平移動機構によって基板測定用ステージ1を高速で移動させると、慣性によって基板Wが支持ピン3で支持されていた位置からずれてしまい、測定位置が変わってしまうことがある。そのため、移動する速度に制限を設けなくてはならず、反り測定を短時間で行うことができなくなってしまう。
【0087】
このような問題を解決するには、支持ピン3が反り測定時において、基板Wが水平方向にずれるのを防止するずれ防止部32を備えていればよい。具体的には、図5に示すように支持ピン3の先端に開口した貫通孔32を設け、その貫通孔32から基板Wを吸着して基板Wを保持するように構成する。また、支持ピン3の支持端の摩擦係数を大きくすることによって、基板Wが水平移動機構の加速度によって生じる慣性でずれないようにしてもかまわない。
【0088】
前記実施形態では、図3に示されるように、基板Wは、その半径よりも小さい半径の同心円状に設けてある3本の支持ピン3によって支持されているが、この場合、基板Wのチップとなる部分に支持ピン3が接触することによって、傷やコンタミネーションが生じる恐れがある。このような問題を解決するには、チップとして使われずに廃棄されることになる基板Wの外周部を支持ピン3が支持するように構成すればよい。
【0089】
基板Wを外周部において支持ピン3が支持するために、基板Wと同じ半径を持つ同心円状において3つの支持ピン3が概略正三角形の頂点をなすように配置してある。基板Wを支持する支持端から、図6に示されるように、基板Wの側面と合致するように、支持端から概略半円筒形状の突出部31が上方に向かって形成してある。このようにしておけば、基板Wの中心を3つの支持ピン3によって形成される正三角形の重心に合わせることができるので、基板Wを測定に適した位置に配置しやすくなる。
【0090】
図7に示されるように突出部31の基板Wの側面と接触する面がテーパをなすものであっても構わない。このようなものであれば、反り測定位置P3よりも上方では、基板Wよりも支持ピン3が水平面において形成する円のほうが大きくなるので支持ピン3に基板Wを載置しやすくなり、テーパに沿って基板Wがはまり込んでいくので、基板Wの中心が3本の支持ピン3によって規定される中心位置に合わせる事が容易になる。また、3本の支持ピン3に基板Wの外周部が引っかかることになるので、基板測定用ステージ1を高速で動かしてもずれにくくなるという効果もある。
【0091】
前記実施形態では、ステージ上には3本の支持ピン3を用いていたが、より複数の支持ピン3を用いてもかまわない。ある半径を有する円周上に3本の支持ピン3が概略正三角形上に配置されて第1支持部材群A1を構成し、その半径よりも小さい同心円の円周上に3本の支持ピン3が概略正三角形上に配置されて第2支持部材群A2を構成するようにしてもかまわない。ここで、図7に示されるように、第1支持部材群A1の支持端である先端の高さは反り測定位置P3にしてあり、第2支持部材群A2の支持端である先端の高さは反り測定位置P3と退避位置P2との間にある反り測定位置P4にしてある。なお、図8においては簡単のため、中央の支持ピン3の図示を省略している。
【0092】
このようなものであれば、載置板2の中心に基板Wを載置するようにしておくと、載置板2を下方に移動させた時に、基板Wの中心を支持ピン3が配置してある同心円の中心に配置することができ、段取り替えなどを行う事無く、容易に複数種類の大きさの基板Wを反り測定することができる。また、反り測定位置P4を反り測定位置P3よりも下方にしてあるので、基板Wが第1支持部材群A1にて支持されているときには、第2支持部材群A2は基板Wに接触しない。従って、支持部材群A2が反り測定位置P3での反り測定に影響を与えたり、反り測定位置P3にある基板Wに接触してコンタミネーションを生じさせたりするのを防ぐことができる。
【0093】
反り測定時に、3本の支持ピン3が周辺外気の温度変化によって熱変形を起こすと、1本の支持ピン3だけが伸びるなどして載置されている基板Wが傾いてしまうことがある。この状態で測定を行うと、支持ピン3の熱変形によって生じた基板Wの傾きとともに基板Wの反りを測定してしまうため、反りの測定精度が悪くなってしまう。
【0094】
このような問題を解決するには、支持ピン3の周囲に温度変化の生じた周辺外気が流入しないように熱変形低減機構として遮断壁を設けておけばよい。また、昇降移動機構4を囲むように遮断壁を設けても良い。
【0095】
支持ピン3にヒータを設けて、周辺外気よりも高い温度で一定に保つようにしても構わない。この場合、ヒータをオンオフ制御することによって容易に一定温度に保つことができ、支持ピン3の熱変形によって、基板Wが傾くことを防止することができる。
【0096】
熱変形による測定誤差を小さくするために、支持ピン3が低熱膨張率の材料で構成されていても構わない。より具体的には、基板測定用ステージ1を使用するときの温度において、基板Wを支持ピン3上に所定の位置決め精度で位置決め可能であるような低熱膨張率の材料を支持ピン3に用いればよい。具体的な材料としては、スーパーインバーや低熱膨張率のガラス材料などが挙げられる。
【0097】
前記実施形態ではXY方向に移動する水平移動機構によって、基板Wの反り測定を全面で行うようにしていたが、水平移動機構の代わりに回転ステージを用いて、測定系が1軸方向に動けるように構成し、Rθ方向の測定を行うようにしても構わない。
【0098】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本実施形態に係る基板測定用ステージの模式的構成図。
【図2】同実施形態における載置板の平面図。
【図3】同実施形態における基板測定用ステージの動作を示す図。
【図4】同実施形態における基板測定用ステージの位置再現性の実験結果を示す図。
【図5】別の実施形態における支持部材の先端の形状を示す図。
【図6】さらに別の実施形態における支持部材の先端の形状を示す図。
【図7】異なる実施形態における支持部材の先端の形状を示す図。
【図8】さらに異なる実施形態における支持部材の配置を示す図。
【符号の説明】
【0100】
W・・・・基板
1・・・・基板測定用ステージ
2・・・・載置板
21・・・貫通孔
3・・・・支持部材(支持ピン)
31・・・突出部
32・・・ずれ防止部
4・・・・昇降移動機構
5・・・・高さ調節機構
6・・・・通常測定系
7・・・・反り測定系
P1・・・通常測定位置
P2・・・退避位置
P3・・・反り測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の反りを測定する反り測定系、及び当該基板の反り以外の物理量及び/又は化学量を測定する通常測定系に用いられる基板測定用ステージであって、
前記通常測定系の通常測定位置、及びその通常測定位置から下方に離間した退避位置の間を移動可能な載置板と、
前記基板を支持する支持端を有し、その支持端が前記載置板の移動に関わらず、先端が前記反り測定系の反り測定位置に固定された支持部材と、
前記載置板を前記通常測定位置及び前記退避位置の間で昇降移動させる昇降移動機構と、を備え、
前記反り測定位置が、前記通常測定位置及び退避位置の間に設定されている基板測定用ステージ。
【請求項2】
前記反り測定位置と前記通常測定位置との差が実質的に反り測定に影響を与えない範囲である請求項1記載の基板測定用ステージ。
【請求項3】
前記支持部材毎に、当該支持部材の高さを調節する高さ調節機構を備えている請求項1又は2記載の基板測定用ステージ。
【請求項4】
前記載置板が、前記基板を吸着して保持するチャック板である請求項1、2又は3記載の基板測定用ステージ。
【請求項5】
前記支持部材が、反り測定時において、前記基板がずれるのを防止するずれ防止部を備えたものである請求項1、2、3又は4記載の基板測定用ステージ。
【請求項6】
前記ずれ防止部が、前記基板を吸着して保持するものである請求項5記載の基板測定用ステージ。
【請求項7】
複数の支持部材によって、支持する基板の大きさが異なる支持部材群が構成され、
支持する基板が小さい支持部材群は、支持する基板が大きい支持部材群の内側に配置され、支持する基板が小さい支持部材群の反り測定位置は、支持する基板が大きい支持部材群の反り測定位置の下方に設定されている請求項1、2、3、4、5又は6記載の基板測定ステージ。
【請求項8】
前記通常測定系が、前記基板上の膜厚を測定するためのエリプソメータである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の基板測定用ステージ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の基板測定用ステージを用いた基板測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−88477(P2009−88477A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157270(P2008−157270)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【特許番号】特許第4234190号(P4234190)
【特許公報発行日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】