説明

成膜装置および成膜方法

【課題】基板の温度分布を任意に調整することのできる成膜装置を提供する。また、基板を均一に加熱して、所望の厚さの膜を形成することのできる成膜方法を提供する。
【解決手段】成膜装置100は、チャンバ103と、チャンバ103内に設けられてシリコンウェハ101が載置されるサセプタ102と、サセプタ102を回転させる回転部104と、サセプタ102の下方に位置するインヒータ120およびアウトヒータ121と、これらのヒータの下方に位置するリフレクタ集合部105とを有する。リフレクタ集合部105は、環状のリフレクタと円盤状のリフレクタとが組み合わされてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN系化合物半導体(一般式:AlGaIn1−x−yN)は直接遷移型のエネルギバンド構造を有し、そのバンドギャップエネルギが室温で1.9eV〜6.2eVに及ぶワイドバンドギャップであるため、紫外域から可視光域をカバーする発光ダイオード、レーザダイオードおよび紫外線センサなどの受光素子として広範な応用が可能である。
【0003】
従来法による受光素子の製造方法としては、サファイア等の平坦性の高い基板上にバッファ層を設け、その上に受光領域を含むデバイス層を形成する方法がある。ここで、バッファ層を設ける理由は、サファイア基板の結晶成長面の格子間隔と、受光領域のGaAlNの格子間隔との間の格子不整合を緩和し、格子不整合により発生し得る受光領域中の貫通転位を少なくさせることにある。
【0004】
また、サファイア基板とデバイス層との間に単層のバッファ層ではなく、複数のバッファ層を設ける方法もある。例えば、サファイア基板上に、AlNからなる低温堆積バッファ層と、GaNからなる結晶改善層と、AlNからなる低温堆積中間層という多層の窒化物半導体基板層を設け、その上にデバイス層を設ける。この方法によれば、単層のバッファ層を設けた場合以上に、基板と受光領域との間の格子不整合を緩和することが可能となる。
【0005】
しかしながら、上記方法では、例えば、GaAlNを主とする受光素子を構成するデバイス層をその上部に形成した場合、基板側から入射させた光は、GaAlNよりバンドギャップエネルギの小さいGaN層内で吸収されてしまう。このため、入射光は上部からの入射に制限される。
【0006】
一方、上記多層の窒化物半導体基板層において、GaN層からなる結晶改善層を、デバイス層を構成するGaAlNよりAlN組成比の大きいGaAlNまたはAlNを用いて形成する方法もある。この方法によれば、上記問題は解消される。
【0007】
ところで、GaAlNなどのIII−V族窒化物系化合物半導体は、サファイア基板上に、有機金属気相成長法を用いてIII−V族窒化物系半導体結晶をエピタキシャル成長させることにより製造される。かかるエピタキシャル成長技術は、比較的膜厚の大きい結晶膜を必要とする半導体素子の製造工程で利用される。
【0008】
膜厚の大きなエピタキシャルウェハを高い歩留まりで製造するには、均一に加熱されたウェハの表面に新たな原料ガスを次々に接触させて成膜速度を向上させる必要がある。そこで、ウェハを高速で回転させながらエピタキシャル成長させることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
特許文献1では、ウェハを支持するリング状のサセプタがサセプタ支えに嵌着されており、サセプタ支えに接続する回転軸が回転することによって、ウェハが回転する。ウェハの裏面側にはヒータが配置されており、さらにウェハとヒータの間には、カーボン製の均熱板が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−152207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の成膜装置によれば、ウェハは、ヒータで加熱された均熱板によって加熱される。ここで、サセプタは、その内周側に設けられた座ぐり内にウェハの外周部を受け入れる構造となっている。つまり、ウェハの外周部はサセプタに接触しており、外周部を通じて熱が逃げやすい。また、ヒータは、通常、外周部の温度の方が内側の温度に比べて低くなる。
【0012】
こうしたことから、ウェハの外周部を集中的に加熱するヒータを設けることが行われている。しかしながら、この方式によってもウェハの外周部と内周部との間には温度差が生じる。かかる温度差は、形成されるエピタキシャル膜の膜厚を不均一にするため、ウェハの温度分布が均一になるよう加熱する技術が求められている。
【0013】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、基板の温度分布を任意に調整することのできる成膜装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、基板を均一に加熱して、所望の厚さの膜を形成することのできる成膜方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様は、成膜室と、
成膜室内に設けられて基板が載置されるサセプタと、
サセプタを回転させる回転部と、
サセプタの下方に位置するヒータと、
ヒータの下方に位置するリフレクタとを有し、
リフレクタは、環状のリフレクタと円盤状のリフレクタとが組み合わされてなることを特徴とする成膜装置に関する。
【0017】
本発明の第1の態様において、リフレクタは、複数の環状の第1のリフレクタと、複数の円盤状の第2のリフレクタとからなるものとすることができる。この場合、ヒータの下方に複数の第1のリフレクタを配置し、第1のリフレクタのさらに下方に複数の第2のリフレクタを配置することができる。
【0018】
また、本発明の第1の態様では、第1のリフレクタと第2のリフレクタとの配置を逆にすることもできる。すなわち、ヒータの下方に複数の第2のリフレクタを配置し、第2のリフレクタのさらに下方に複数の第1のリフレクタを配置することもできる。
【0019】
また、本発明の第1の態様においては、第1のリフレクタと第2のリフレクタとを交互に配置することもできる。
【0020】
本発明の第1の態様において、リフレクタは、内周部の径の異なる環状の第1のリフレクタを用意し、これらを上から順に内周部の径が大きいものから配置し、最下方に円盤状の第2のリフレクタを配置した構造とすることもできる。
【0021】
本発明の第1の態様において、ヒータは、基板の内周部に対応する位置に配置されるインヒータと、基板とインヒータの間であって、基板の外周部に対応する位置に配置されるアウトヒータとを有することができる。
【0022】
本発明の第2の態様は、成膜室と、
成膜室内に設けられて基板が載置されるサセプタと、
サセプタを回転させる回転部と、
サセプタの下方に位置するヒータと、
ヒータの下方に位置するリフレクタとを有し、
リフレクタは、円盤状のリフレクタに異なる径の孔が設けられた構造を有することを特徴とする成膜装置に関する。
【0023】
本発明の第2の態様において、リフレクタは、ヒータの下方に複数配置されていてもよく、1枚のみ配置されていてもよい。
【0024】
本発明の第2の態様において、ヒータは、基板の内周部に対応する位置に配置されるインヒータと、基板とインヒータの間であって、基板の外周部に対応する位置に配置されるアウトヒータとを有することができる。
【0025】
本発明の第3の態様は、成膜室と、
成膜室内に設けられて基板が載置されるサセプタと、
サセプタを回転させる回転部と、
サセプタの下方に位置するヒータと、
ヒータの下方に位置する断熱材とを有し、
断熱材は、内周部が外周部に比べて薄い構造を有することを特徴とする成膜装置に関する。
【0026】
本発明の第3の態様において、ヒータは、基板の内周部に対応する位置に配置されるインヒータと、基板とインヒータの間であって、基板の外周部に対応する位置に配置されるアウトヒータとを有することができる。
【0027】
本発明の第1の態様、第2の態様および第3の態様は、サセプタの上方に位置する上部ヒータをさらに有することができる。
【0028】
本発明の第4の態様は、成膜室内で基板をその下方に配置されたヒータで加熱しながら基板の上に所定の膜を形成する成膜方法であって、
ヒータの下方に環状のリフレクタと円盤状のリフレクタとを組み合わせて配置することを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第4の態様においては、ヒータの下方に複数の環状の第1のリフレクタを配置し、この第1のリフレクタのさらに下方に複数の円盤状の第2のリフレクタを配置することができる。
【0030】
本発明の第4の態様においては、ヒータの下方に複数の円盤状の第2のリフレクタを配置し、この第2のリフレクタのさらに下方に複数の円盤状の第1のリフレクタを配置することもできる。
【0031】
本発明の第4の態様においては、第1のリフレクタと第2のリフレクタとを交互に配置することもできる。
【0032】
本発明の第4の態様においては、内周部の径の異なる環状の第1のリフレクタを用意し、これらを上から順に内周部の径が大きいものから配置し、最下方に円盤状の第2のリフレクタを配置することもできる。
【0033】
本発明の第4の態様において、基板は、基板の内周部に対応する位置に配置されるインヒータと、基板とインヒータの間であって、基板の外周部に対応する位置に配置されるアウトヒータとによって加熱することができる。
【0034】
本発明の第4の態様は、サセプタの上方に位置する上部ヒータをさらに有することができる。
【0035】
本発明の他の態様は、成膜室内で基板をその下方に配置されたヒータで加熱しながら基板の上に所定の膜を形成する成膜方法であって、
ヒータの下方に異なる径の孔が設けられた円盤状のリフレクタを配置することを特徴とするものである。
【0036】
また、本発明の他の態様は、成膜室内で基板をその下方に配置されたヒータで加熱しながら基板の上に所定の膜を形成する成膜方法であって、
ヒータの下方に内周部が外周部に比べて薄い断熱材を配置することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、基板の温度分布を任意に調整することのできる成膜装置が提供される。
【0038】
また、本発明によれば、基板を均一に加熱して、所望の厚さの膜を形成することのできる成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態1における成膜装置の模式的な断面図である。
【図2】本発明におけるリフレクタ集合部の平面図である。
【図3】実施の形態2において、リフレクタ集合部を設けない場合と、設けた場合とで、シリコンウェハの温度分布を比較した一例である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明におけるリフレクタ集合部の変形例である。
【図5】本発明に適用可能なリフレクタの他の例である。
【図6】本発明に適用可能な断熱材の断面図である。
【図7】実施の形態2における成膜装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における成膜装置100の模式的な断面図である。
【0041】
本実施の形態においては、基板としてシリコンウェハ101を用いる。但し、これに限られるものではなく、場合に応じて、他の材料からなるウェハを用いてもよい。
【0042】
成膜装置100は、成膜室としてのチャンバ103を有する。
【0043】
チャンバ103の上部には、加熱されたシリコンウェハ101の表面に結晶膜を成長させるための原料ガス129を供給するガス供給部123が設けられている。また、ガス供給部123には、原料ガス129の吐出孔が多数形成されたシャワープレート124が接続している。シャワープレート124をシリコンウェハ101の表面と対向して配置することにより、シリコンウェハ101の表面に原料ガス129が供給される。
【0044】
チャンバ103の下部には、反応後の原料ガス129を排気するためのガス排気部125が複数設けられている。ガス排気部125は、調整弁126および真空ポンプ127からなる排気機構128に接続している。また、排気機構128は、図示しない制御機構により制御されてチャンバ103内を所定の圧力に調整する。
【0045】
チャンバ103の内部には、サセプタ102が、回転部104の上方に設けられている。サセプタ102は、高温下に曝されることから、例えば高純度のSiCを用いて構成される。チャンバ103の内部に搬送されたシリコンウェハ101は、サセプタ102の上に載置される。
【0046】
回転部104は、円筒部104aと回転軸104bを有している。回転軸104bは、チャンバ103の外部まで延設されており、図示しない回転機構に接続している。円筒部104aが所定の回転数で回転することにより、サセプタ102を回転させることができ、ひいてはサセプタ102に支持されたシリコンウェハ101を回転させることができる。円筒部104aは、シリコンウェハ101の中心を通り、且つ、シリコンウェハ101に直交する軸を中心として回転することが好ましい。
【0047】
図1において、円筒部104aは、上部が解放された構造であるが、サセプタ102とシリコンウェハ101が配置されることにより、上部が覆われて中空領域(以下、P領域と称す。)を形成する。ここで、チャンバ103内をP領域とすると、P領域は、サセプタ102とシリコンウェハ101によって実質的にP領域と隔てられた領域となる。
【0048】
領域には、加熱部としてのインヒータ120とアウトヒータ121が設けられている。インヒータ120は、シリコンウェハ101の内周部に対応する位置に配置され、例えば円盤状とすることができる。一方、アウトヒータ121は、シリコンウェハ101とインヒータ120の間であって、シリコンウェハ101の外周部に対応する位置に配置される。アウトヒータ121は、例えば環状とすることができる。これらのヒータは、回転軸104b内に設けられた略円筒状の石英製のシャフト108の内部を通る配線109によって給電され、シリコンウェハ101をその裏面から加熱する。但し、本実施の形態のヒータは、インヒータとアウトヒータに分かれていない構造、すなわち、シリコンウェハ101の外周部のみを加熱するアウトヒータ121を有しない構造であってもよい。
【0049】
加熱により変化するシリコンウェハ101の表面温度は、チャンバ103の上部に設けられた放射温度計122によって計測される。シャワープレート124を透明石英製とすることによって、放射温度計122による温度測定が、シャワープレート124で妨げられないようにすることができる。計測した温度データは、図示しない制御機構に送られた後、インヒータ120およびアウトヒータ121の出力制御にフィードバックされる。これにより、シリコンウェハ101が所望の温度となるように加熱できる。
【0050】
本実施の形態の成膜装置100では、インヒータ120の下方にリフレクタ集合部105が配置されている。リフレクタ集合部105は、複数のリフレクタからなり、これらが相互に作用し合って、シリコンウェハ101の温度分布に影響を与える。
【0051】
図2は、リフレクタ集合部105の平面図である。この図に示すように、リフレクタ集合部105は、複数の環状の第1のリフレクタ105aと、複数の円盤状の第2のリフレクタ105bとからなる。図1の例では、インヒータ120の下方に、複数の第1のリフレクタ105aが配置され、第1のリフレクタ105aのさらに下方に、複数の第2のリフレクタ105bが配置されている。尚、本明細書において、「円盤状」とは、少なくとも中心を含む領域に孔の開いていない円形状を言う。
【0052】
インヒータ120とアウトヒータ121で加熱すると、シリコンウェハ101の温度は、外周部に比べて内周部の温度が高くなる。この場合、シリコンウェハ101の温度分布を均一にするには、内周部の放熱性を高めて、内周部の温度が下がるようにすればよい。
【0053】
ところで、リフレクタの本来的な役割は、ヒータからの輻射熱を反射して、ヒータの出力を低減するとともに、下方に配置された部材をヒータの熱から保護することにある。ここで、リフレクタを環状とすると、環状部分からは輻射熱が反射されるが、内周部からは反射されない。したがって、環状のリフレクタによれば、ウェハへの加熱状態に分布を持たせることができる。
【0054】
そこで、図2に示すように、リフレクタ集合部105を、環状の第1のリフレクタ105aと、円盤状の第2のリフレクタ105bとによって構成し、第1のリフレクタ105aの環状部分がシリコンウェハ101の外周部に対応するようにして配置する。このようにすると、シリコンウェハ101の外周部は加熱されるが、シリコンウェハ101の内周部への加熱は抑制される。したがって、シリコンウェハ101の温度分布を、内周部の温度が低下するように変えることが可能である。尚、この場合、円盤状の第2のリフレクタ105bを併せて配置するので、下方に配置された部材をヒータの熱から保護することもできる。
【0055】
上記したように、環状のリフレクタを用いることにより、ウェハへの加熱状態に分布を持たせることができるが、この分布を所望の分布とするには、環状のリフレクタと円盤状のリフレクタとを組み合わせ、さらにこれらを複数配置して調整することが好ましい。すなわち、図1に示すように、第1のリフレクタ105aと第2のリフレクタ105bとが組み合わされたリフレクタ集合部105を用いる。それぞれのリフレクタの数を変えたり、第1のリフレクタ105aにおける内周部の径を変えたりすることによって、シリコンウェハ101の温度分布を変えることが可能である。すなわち、内周部の温度が外周部より低くなるようにしたり、あるいは、内周部と外周部の温度が同じとなるようにしたりすることができる。
【0056】
図4(a)〜(c)は、本実施の形態におけるリフレクタ集合部の変形例である。
【0057】
図4(a)は、図1のリフレクタ集合部105とは、第1のリフレクタ105aと第2のリフレクタ105bとの配置が逆になったものである。すなわち、図1(a)のリフレクタ集合部によれば、インヒータ120の下方に、複数の第2のリフレクタ105bが配置され、第2のリフレクタ105bのさらに下方に、複数の第1のリフレクタ105aが配置されている。このような配置によっても、図1の例と同様の効果が得られる。
【0058】
図4(b)は、第1のリフレクタ105aと第2のリフレクタ105bとを交互に配置したもので、これによっても図1の例と同様の効果が得られる。
【0059】
図4(c)は、内周部の径の異なる第1のリフレクタ105a〜105aを用意し、これらを上から順に内周部の径が大きいものから配置し、最下方に第2のリフレクタ105bを配置したものである。これによっても図1の例と同様の効果が得られる。また、内周部の径を少しずつ変えているので、他の構成より細かい温度調整が可能である。
【0060】
図5は、本実施の形態に適用可能なリフレクタの他の例である。図5のリフレクタ106は、円盤状のリフレクタに異なる径の孔106a,106b,106cが設けられた構造を有している。この場合、リフレクタ106はインヒータ120の下方に、複数配置されていてもよく、1枚のみ配置されていてもよい。複数配置される場合には、図1や図4の例のように、リフレクタ集合部を構成する。また、孔の径、数および位置などについても適宜変更することができる。シリコンウェハ101の内周部における放熱性を高める場合には、図5のように内周部を中心として各孔を配置する。一方、外周部での放熱性を高める必要がある場合には、外周部を中心として各孔を配置する。
【0061】
本実施の形態におけるリフレクタは、いずれも耐熱性の高い材料、例えばSiなどを用いて構成される。但し、ヒータの近くに配置されるリフレクタ、例えば、図2の第1のリフレクタ105a、図4(a)の第2のリフレクタ105bなどは、高耐熱性の材料、例えば、SiCまたはSiCで被覆されたカーボンを用いて構成されることが好ましい。
【0062】
また、本実施の形態では、リフレクタに代えて、断熱材を用いることもできる。図6は、適用可能な断熱材の断面図である。この図に示すように、断熱材107は、内周部が外周部に比べて薄い構造を有しており、これによって内周部での放熱性が高められるようにしている。断熱材は、例えば、多孔質カーボンまたは炭素繊維などを用いて構成することができ、具体的には、株式会社クレハ製のクレカ(商品名)などが挙げられる。
【0063】
次に、図1および図2を参照しながら、実施の形態1における成膜方法の一例を説明する。尚、図2のリフレクタ集合部105に代えて、図4(a)〜(c)のリフレクタ集合部または図5のリフレクタ(集合部)を用いてもよく、図6の断熱材107を用いてもよい。
【0064】
まず、サセプタ102の上にシリコンウェハ101を載置する。
【0065】
次いで、常圧下または適当な減圧下で水素ガスを流しながら、回転部104に付随させて、シリコンウェハ101を50rpm程度で回転させる。
【0066】
次に、インヒータ120およびアウトヒータ121によってシリコンウェハ101を1100℃〜1200℃に加熱する。例えば、成膜温度である1150℃まで徐々に加熱する。
【0067】
本実施の形態によれば、インヒータ120の下方に、リフレクタ集合部105を配置している。リフレクタ集合部105は、複数の環状の第1のリフレクタ105aと、複数の円盤状の第2のリフレクタ105bとからなっており、第1のリフレクタ105aによれば、シリコンウェハ101の外周部は加熱されるが、シリコンウェハ101の内周部への加熱は抑制される。したがって、内周部の温度を低下させて、シリコンウェハ101を所望の温度分布となるように加熱することができる。
【0068】
放射温度計122による測定でシリコンウェハ101の温度が1150℃に達したことを確認した後は、徐々にシリコンウェハ101の回転数を上げていく。そして、ガス供給部123からシャワープレート124を介して原料ガス129をチャンバ103の内部に供給する。本実施の形態においては、原料ガス129としてトリクロロシランを用いることができ、キャリアガスとしての水素ガスと混合した状態で、ガス供給部123からチャンバ103の内部に導入する。
【0069】
チャンバ103の内部に導入された原料ガス129は、シリコンウェハ101の方に流下する。そして、シリコンウェハ101の温度を1150℃に維持し、サセプタ102を900rpm以上の高速で回転させながら、ガス供給部123からシャワープレート124を介して次々に新たな原料ガス129をシリコンウェハ101に供給する。これにより、高い成膜速度で効率よくエピタキシャル膜を成膜させることができる。
【0070】
このように、原料ガス129を導入しつつサセプタ102を回転させることにより、シリコンウェハ101の上に均一な厚さのシリコンのエピタキシャル層を成長させることができる。例えば、パワー半導体の用途では、200mmのシリコンウェハ上に10μm以上、多くは10μm〜100μm程度の厚膜が形成される。厚膜を形成するには、成膜時の基板の回転数を高くするのがよく、例えば、上記のように900rpm程度の回転数とするのがよい。
【0071】
尚、シリコンウェハ101のチャンバ103内への搬入、あるいは、チャンバ103外への搬出には、公知の方法を適用することができる。
【0072】
実施の形態2.
本実施の形態では、III−V族窒化物系化合物半導体基板の作製を例に挙げて説明する。上記半導体基板としては、例えば、サファイア基板上に、第1のAlNバッファ層、AlN半導体層および第2のAlNバッファ層が積層されたものが挙げられる。
【0073】
第1のAlNバッファ層は、例えば、300℃〜800℃の温度範囲内、例えば500℃の低温で、トリメチルアルミニウム(Al源)およびアンモニア(窒素源)などの各原料ガスを使用したMOCVD法(有機金属化合物気相成長法)を用いて、20nmの膜厚で形成される。
【0074】
AlN半導体層は、約1280℃以上の高温、例えば1300℃で、上記各原料ガスを使用したMOCVD法を用いて、500nm以上、例えば1μmの膜厚で形成される。このとき、AlNは単結晶としてエピタキシャル成長させるので、本実施の形態の成膜装置が好ましく用いられる。
【0075】
第2のAlNバッファ層は、第1のAlNバッファ層と同じ条件で形成される。すなわち、AlN半導体層の上に、20nmの膜厚で形成される。
【0076】
尚、第1のAlN層、AlN半導体層および第2のAlNバッファ層の何れかをGaAlN層として形成する場合には、上記原料ガスにトリメチルガリウム(Ga源)が追加される。
【0077】
図7は、本実施の形態における成膜装置200の模式的な断面図である。この図の成膜装置200は、AlN半導体層の成膜に用いることができる。
【0078】
成膜装置200は、成膜室としてのチャンバ1と、チャンバ1内に配置された中空筒状のライナ2と、チャンバ1を冷却する冷却水の流路3a、3bと、チャンバ1内に反応ガス26を導入するための反応ガス供給部14と、反応後の反応ガス26をチャンバ1外に排気する排気部5と、半導体基板6を載置してこれを支持するサセプタ7と、支持部(図示せず)に支持されて半導体基板6を加熱する下部ヒータ8および上部ヒータ18と、チャンバ1の上下部を連結するフランジ部9と、フランジ部9をシールするパッキン10と、排気部5と配管を連結するフランジ部11と、フランジ部11をシールするパッキン12とを有する。
【0079】
ライナ2は、非常に高い耐熱性を備える材料を用いて構成される。例えば、カーボンにSiCをコートして構成された部材の使用が可能である。ライナ2の頭部31の開口部には、シャワープレート20が取り付けられている。シャワープレート20は、半導体基板6の表面に反応ガス26を均一に供給するためのガス整流板である。このシャワープレート20には、反応ガス26を供給するための貫通孔21が複数個設けられている。
【0080】
尚、ライナ2を設ける理由は、一般に、成膜装置におけるチャンバの壁がステンレス製であることによる。すなわち、成膜装置200では、このステンレス製の壁を気相反応系内に露出させないようにするためにライナ2が用いられる。ライナ2には、結晶膜形成時におけるチャンバ1の壁へのパーティクルの付着や金属汚染を防いだり、チャンバ1の壁が反応ガス26によって侵食されるのを防いだりする効果がある。
【0081】
ライナ2は、中空筒状であり、サセプタ7を内部に配置する胴部30と、胴部30より内径が小さい頭部31とを有する。胴部30内にはサセプタ7が配置される。
【0082】
サセプタ7上には半導体基板6が載置される。半導体基板6は、サファイア基板上にAlNバッファ層が形成された基板をすることができる。
【0083】
サセプタ7は、中空筒状の回転筒23上に取り付けられている。そして、回転筒23は、チャンバ1の底部からチャンバ1内部に伸びる回転軸(図示せず)を介して回転機構(図示せず)に接続されている。すなわち、サセプタ7は、ライナ2の胴部30内の下部ヒータ8の上方で回転可能に配置されている。したがって、気相成長反応時には、サセプタ7を回転させることにより、その上に載置された半導体基板6が高速に回転する。
【0084】
半導体基板6の上に、AlN半導体層を形成する場合、反応ガス26として、トリメチルアルミニウム(Al源)およびアンモニア(窒素源)のソースガスと、キャリアガスとしての水素(H)ガスとを混合させた混合ガスが使用される。混合ガスは、成膜装置200の反応ガス供給部14から導入される。具体的には、ライナ2内、換言すると、反応ガス供給部14から半導体基板6の周囲に至る第1の空間(空間A)に導入される。
【0085】
ライナ2の頭部31の上部開口部には、上述したように、シャワープレート20が配設されている。シャワープレート20は、胴部30内のサセプタ7上に載置された半導体基板6の表面に反応ガス26を均一に供給する。
【0086】
ライナ2の頭部31の内径は、シャワープレート20の貫通孔21の配置と半導体基板6の大きさに対応するように決められる。これにより、シャワープレート20の貫通孔21を出た反応ガス26が拡散する無駄な空間を低減できる。つまり、成膜装置200は、シャワープレート20から供給される反応ガス26が無駄なく、効率良く半導体基板6の表面に集められるように構成される。さらに、半導体基板6の表面での反応ガス26の流れをより均一にするために、半導体基板6の周縁部分とライナ2との間の隙間ができるだけ狭くなるように構成されている。
【0087】
ライナ2を上記のような形状とすることで、半導体基板6の表面における気相成長反応を効率良く進めることができる。すなわち、反応ガス供給部14に供給される反応ガス26は、空間Aにおいて、シャワープレート20の貫通孔21を通過して整流され、下方の半導体基板6に向かってほぼ鉛直に流下する。つまり、反応ガス26は、空間Aにあるシャワープレート20から半導体基板6の表面に至る領域で、いわゆる縦フローを形成する。そして、高速回転する半導体基板6の引き付け効果により引き付けられ、半導体基板6に衝突した後は、乱流を形成すること無く、半導体基板6の上面に沿いながら水平方向にほぼ層流となって流れる。このように、半導体基板6の表面でガスが整流状態となることにより、膜厚均一性が高く高品質のエピタキシャル膜が形成される。
【0088】
上記のようにして半導体基板6の表面に供給された反応ガス26は、半導体基板6の表面で反応を起こす。これにより、半導体基板6の表面にAlNのエピタキシャル膜が形成される。反応ガス26の内で気相成長反応に使用されたガス以外のものは、変性された生成ガスとなって、チャンバ1の下部に設けられた排気部5から排気される。
【0089】
図7の成膜装置200では、チャンバ1のフランジ部9と排気部5のフランジ部11に、それぞれシールのためのパッキン10、12が用いられている。このパッキン10、12には、フッ素ゴム製のものが好ましく用いられるが、その耐熱温度は約300℃である。本実施の形態では、チャンバ1を冷却する冷却水の流路3a、3bを設けることで、パッキン10、12が熱で劣化するのを防止できる。
【0090】
AlNのエピタキシャル成長は、約1280℃以上の高温、例えば1300℃で行われる。そこで、図7に示す成膜装置200では、ライナ2内の半導体基板6を加熱するための手段として、上部ヒータ18と下部ヒータ8を設けている。この場合、半導体基板6の温度調整は、下部ヒータ8によって行われる。
【0091】
上部ヒータ18は、カーボン基材の表面をSiC材料により被覆して構成された抵抗加熱ヒータであり、ライナ2とチャンバ1内壁との間に形成された第2の空間(空間B)に配置される。そして、上部ヒータ18は、半導体基板6を効率的に加熱する点から、半導体基板6の近く、具体的には、ライナ2の胴部30と頭部31との連結部分近くに配置されている。
【0092】
下部ヒータ8も、上部ヒータ18と同様に、カーボン基材の表面をSiC材料で被覆して構成された抵抗加熱ヒータである。そして、この下部ヒータ8は、半導体基板6の載置されるサセプタ7の下方、回転筒23の内部空間である第3の空間(空間C)に配置される。尚、下部ヒータ8は、実施の形態1のように、インヒータとアウトヒータによって構成されてもよい。
【0093】
上部ヒータ18と下部ヒータ8を設ける構成では、半導体基板6の内周部の方が外周部より多くの熱を上部ヒータ18によって与えられる。これは、半導体基板6の内周部と外周部とからそれぞれ上部ヒータ18を見たとき、外周部では上部ヒータ18の見える面が小さいのに対し、内周部では上部ヒータ18の見える面が大きくなることによる。つまり、内周部の方が、上部ヒータ18との間で輻射による多くの熱交換が行われるため、外周部より温度が高くなる。この場合、下部ヒータ8による温度調整によって、半導体基板6の面内温度を均一化することは困難である。
【0094】
図3は、成膜装置200において、リフレクタ集合部40を設けない場合と、設けた場合とで、半導体基板6の温度分布を比較した一例である。点線は、(1)リフレクタ集合部40を設けない場合の温度分布を示している。また、実線は、(2)リフレクタ集合部40を設けた場合の温度分布を示している。尚、図の横軸は、半導体基板6の中心と外周部の一点とを結ぶ線に沿うもので、中心からの距離を表している。また、横軸は、半導体基板6の表面における温度を示している。
【0095】
図3の点線(1)を見ると、外周部に比べて内周部の温度が高くなる。つまり、上部ヒータ18と下部ヒータ8で加熱されると、半導体基板6の温度は、外周部に比べて内周部の温度が高くなる。この場合、半導体基板6の温度分布を均一にするには、内周部の放熱性を高めて、内周部の温度が下がるようにすればよい。
【0096】
そこで、本実施の形態の成膜装置200では、下部ヒータ8の下方にリフレクタ集合部40を配置する。リフレクタ集合部40は、複数のリフレクタからなり、これらが相互に作用し合って、半導体基板6の温度分布に影響を与える。
【0097】
リフレクタ集合部40には、実施の形態1と同様のものを用いることができる。例えば、リフレクタ集合部40は、図2に示すように、複数の環状の第1のリフレクタ105aと、複数の円盤状の第2のリフレクタ105bとからなるものとすることができる。この場合、図7に示すように、下部ヒータ8の下方に、複数の第1のリフレクタ105aを配置し、第1のリフレクタ105aのさらに下方に、複数の第2のリフレクタ105bを配置することができる。
【0098】
また、リフレクタ集合部40は、図4(a)に示すように、第1のリフレクタ105aと第2のリフレクタ105bとの配置を、図7と逆にすることもできる。また、図4(b)に示すように、第1のリフレクタ105aと第2のリフレクタ105bとを交互に配置してもよい。
【0099】
また、本実施の形態においては、図4(c)に示すように、内周部の径の異なる第1のリフレクタ105a〜105aを用意し、これらを上から順に内周部の径が大きいものから配置し、最下方に第2のリフレクタ105bを配置して、リフレクタ集合部40とすることもできる。
【0100】
また、図5に示すように、円盤状のリフレクタに異なる径の孔106a,106b,106cが設けられた構造のものを、インヒータ120の下方に複数または単数配置して、リフレクタ集合部40とすることもできる。
【0101】
成膜装置200において、リフレクタ集合部40を設けることにより、半導体基板6の温度分布を変えることができる。すなわち、リフレクタを環状とすると、環状部分からは輻射熱が反射されるが、内周部からは反射されない。したがって、環状のリフレクタによれば、半導体基板への加熱状態に分布を持たせることができる。
【0102】
例えば、図7に示すように、リフレクタ集合部40を、環状の第1のリフレクタ105aと、円盤状の第2のリフレクタ105bとによって構成し、第1のリフレクタ105aの環状部分が半導体基板6の外周部に対応するようにして配置する。このようにすると、半導体基板6の外周部は加熱されるが、半導体基板6の内周部への加熱は抑制される。換言すると、半導体基板6の内周部における放熱性が向上する。したがって、半導体基板6の表面の温度分布を、内周部の温度が低下するように変えることが可能である。そして、環状のリフレクタと円盤状のリフレクタについて、それぞれのリフレクタの数を変えたり、環状のリフレクタにおける内周部の径を変えたりすることによって、半導体基板6を所望の温度分布にすることが可能である。すなわち、図3の実線(2)に示すように、内周部の温度が外周部より低くなるようにしたり、あるいは、内周部と外周部の温度が同じとなるようにしたりすることができる。
【0103】
また、半導体基板6の内周部における放熱性を向上させることにより、下部ヒータ8の出力を増大させて、半導体基板6に対する温度調整機能を働かせるようにすることができる。さらに、下部ヒータ8の出力が増大すると、上部ヒータ18の出力が大きく減少するので、リフレクタ集合部40を設けない場合に比べて、上部ヒータ18と下部ヒータ8の合計出力を減少させることもできる。
【0104】
尚、リフレクタ集合部40に代えて、図6に示すような断熱材107、すなわち、内周部が外周部に比べて薄い構造を有する断熱材を用いることもでき、この場合にも、上記と同様の効果が得られる。
【0105】
次に、図7を参照しながら、本実施の形態における成膜方法の一例を説明する。尚、上記したように、図7のリフレクタ集合部40に代えて、図4(a)〜(c)と同様のリフレクタ集合部、または、図5で説明したのと同様のリフレクタ(集合部)を用いてもよく、図6の断熱材107を用いてもよい。
【0106】
まず、半導体基板6をチャンバ1の内部に搬入してサセプタ7の上に載置する。次に、回転筒23およびサセプタ7に付随させて、サセプタ7上に載置された半導体基板6を50rpm程度で回転させる。
【0107】
上部ヒータ18および下部ヒータ8に電流を供給して作動させ、上部ヒータ18および下部ヒータ8から発せられる熱によって半導体基板6を加熱する。半導体基板6の温度が、成膜温度である約1280℃以上の高温、例えば1300℃に達するまで徐々に加熱する。このとき、上部ヒータ18および下部ヒータ8の温度は1300℃より高い温度となる。したがって、チャンバ1の壁部分に設けた流路3a、3bに冷却水を流し、過度にチャンバ1が昇温するのを防止する。
【0108】
本実施の形態によれば、下部ヒータ8の下方に、リフレクタ集合部40を配置している。リフレクタ集合部40は、複数の環状の第1のリフレクタ105aと、複数の円盤状の第2のリフレクタ105bとからなっており、第1のリフレクタ105aによれば、半導体基板6の外周部は加熱されるが、半導体基板6の内周部への加熱は抑制される。したがって、内周部の温度を低下させて、半導体基板6を所望の温度分布となるように加熱することができる。
【0109】
半導体基板6の温度が1300℃に達した後は、下部ヒータ8により1300℃近辺での緻密な温度調整がなされる。このとき、半導体基板6の温度測定は、成膜装置に付設された放射温度計(図示せず)を用いて行われる。そして、放射温度計による測定で半導体基板6の温度が所定温度に達したことを確認した後は、徐々に半導体基板6の回転数を上げていく。
【0110】
次に、反応ガス供給部14から反応ガス26を供給し、シャワープレート20を介して、反応ガス26をライナ2の胴部30内に置かれた半導体基板6の上に流下させる。このとき、反応ガス26は、整流板であるシャワープレート20の貫通孔21を通過して整流され、下方の半導体基板6に向かってほぼ鉛直に流下する。すなわち、いわゆる縦フローを形成する。そして、加熱された半導体基板6の表面に反応ガス26が到達すると、反応ガス26は反応を起こして、半導体基板6の表面にAlNエピタキシャル膜を形成する。
【0111】
AlNエピタキシャル膜が所定の膜厚に達したら、反応ガス26の供給を停止する。このとき、キャリアガスである水素ガスの供給は停止せず、放射温度計(図示せず)による測定で半導体基板6が所定の温度より低くなったのを確認してから停止するようにしてもよい。
【0112】
半導体基板6が所定の温度まで冷却されたのを確認した後は、チャンバ1の外部に半導体基板6を搬出する。
【0113】
以上、AlNエピタキシャル膜の成膜を例として、実施の形態2の成膜装置および成膜方法について説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、GaAlNエピタキシャル膜など他のエピタキシャル膜の成膜にも適用可能である。尚、本実施の形態で示す、AlNやGaAlNのエピタキシャル膜の成長温度は、Alを含むためにGaNエピタキシャル膜の成長温度より高くなる。それ故、これらの膜に対しては本発明の効果が顕著である。すなわち、基板を均一に加熱して、所望の厚さの膜を形成できるという効果が大きい。
【0114】
本発明による成膜装置は、上記したように、サセプタ上に載置されるウェハの上面から成膜に必要なガスが供給され、サセプタの裏面側にヒータが設けられている、所謂縦型のエピタキシャル成長装置に適用されることが望ましい。
【0115】
本実施の形態の成膜方法によりAlN半導体層を形成した後は、第2のAlNバッファ層を20nmの膜厚で形成する。これにより、III−V族窒化物系化合物半導体基板が製造される。
【0116】
上記で得られた半導体基板上にデバイス層を形成することにより、半導体装置が製造される。例えば、デバイス層に形成される受光素子としてPIN接合型フォトダイオードを形成する例について述べる。
【0117】
本実施の形態の成膜装置を用いて製造された半導体基板上に、n型GaAlN層、i型GaAlN層、p型GaAlN超格子層およびp型GaAlN層を順次積層して、デバイス層を形成する。
【0118】
n型GaAlN層は、例えば、次のようにして形成される。すなわち、トリメチルアルミニウム(Al源)、トリメチルガリウム(Ga源)およびアンモニア(窒素源)などの各原料ガスを使用し、n型不純物の原料ガスとして、SiH(モノシラン)ガスを流す。これにより、Si(シリコン)が注入(ドープ)されたn型GaAlN層を成長させることができる。n型GaAlN層の膜厚は、500nm〜2000nmの範囲とし、例えば、1000nmで形成される。
【0119】
続いて、i型GaAlN層を、MOCVD法を用いて膜厚約100nm〜200nmの範囲で、例えば、200nmで形成する。
【0120】
次に、i型GaAlN層の上に、p型GaAlN超格子層を形成する。p型GaAlN超格子層は、膜厚2nmのp型GaN層(井戸層)と膜厚3nmのAlN層(バリア層)を順次積層したもの(膜厚5nm)を20層繰り返し積層した多重量子井戸として形成される。p型GaAlN超格子層のp型GaN層とAlN層は、GaAlNの原料として上記の各原料ガスを使用し、MOCVD法を用いて形成される。
【0121】
p型GaN層のp型不純物のドーピングは、GaN層の成長時にp型不純物の原料ガスとして、CpMg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)ガスを流しながら、Mg(マグネシウム)を注入(ドープ)する。
【0122】
続いて、MOCVD法を用い、GaAlNの原料として上記の各原料ガスを使用し、p型不純物の原料ガスとして、CpMgガスを流しながら、Mgを注入したp型GaAlN層を膜厚約20nmで成長させる。ここで、p型GaAlN層は、後述するp型電極とのオーミック接触を確実にし、十分なp型活性化を行って低抵抗化するために、AlN組成比を20%以下としたコンタクト層であり、AlN組成比が0%のp型GaN層であっても構わない。
【0123】
以上のようにして、デバイス層を形成した後は、n型GaAlN層が部分的に露出するようにデバイス層をエッチング除去し、その露出部位にn型電極を形成し、さらにp型GaAlN層上にp型電極を形成する。p型電極およびn型電極は、それぞれの極性に応じてAl、Au、Pd、Ni、Tiなどの公知の材料を用いて、公知の方法で作製される。例えば、p型電極として、第1層にPd(パラジウム)、第2層にAu(金)をそれぞれ10nmずつ蒸着した後、所定の平面形状にパターニングする。また、p型電極またはn型電極として、ZrBを電極材料として用いてもよい。
【0124】
上記のようにして得られた半導体装置に対して外部から光が照射された場合、その光は基板側から入射し、n型GaAlN層を透過して、受光領域であるi型GaAlN層に入射して吸収され、光キャリアが発生する。p型電極およびn型電極の間には所定の逆バイアス電界が印加されており、発生された光キャリアは光電流として外部に出力される。
【0125】
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0126】
例えば、上記各実施の形態では、基板を回転させながら成膜する構成としたが、基板を回転させずに成膜してもよい。
【0127】
また、上記各実施の形態では、成膜装置の一例としてエピタキシャル成長装置を挙げたが、本発明はこれに限られるものではない。成膜室内に反応ガスを供給し、成膜室内に載置される基板を加熱して基板の表面に膜を形成する成膜装置であれば、CVD装置などの他の成膜装置であってもよい。
【符号の説明】
【0128】
1、103 チャンバ
2 ライナ
3a、3b 流路
5 排気部
6 半導体基板
7、102 サセプタ
8 下部ヒータ
9、11 フランジ部
10、12 パッキン
14 反応ガス供給部
18 上部ヒータ
20、124 シャワープレート
21 貫通孔
23 回転筒
26 反応ガス
30 胴部
31 頭部
40、105 リフレクタ集合部
105a 第1のリフレクタ
105b 第2のリフレクタ
106 リフレクタ
107 断熱材
100、200 成膜装置
A、B、C 空間
101 シリコンウェハ
104 回転部
104a 円筒部
104b 回転軸
108 シャフト
109 配線
120 インヒータ
121 アウトヒータ
122 放射温度計
123 ガス供給部
125 ガス排気部
126 調整弁
127 真空ポンプ
128 排気機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜室と、
前記成膜室内に設けられて基板が載置されるサセプタと、
前記サセプタを回転させる回転部と、
前記サセプタの下方に位置するヒータと、
前記ヒータの下方に位置するリフレクタとを有し、
前記リフレクタは、環状のリフレクタと円盤状のリフレクタとが組み合わされてなることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
成膜室と、
前記成膜室内に設けられて基板が載置されるサセプタと、
前記サセプタを回転させる回転部と、
前記サセプタの下方に位置するヒータと、
前記ヒータの下方に位置するリフレクタとを有し、
前記リフレクタは、円盤状のリフレクタに異なる径の孔が設けられた構造を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
成膜室と、
前記成膜室内に設けられて基板が載置されるサセプタと、
前記サセプタを回転させる回転部と、
前記サセプタの下方に位置するヒータと、
前記ヒータの下方に位置する断熱材とを有し、
前記断熱材は、内周部が外周部に比べて薄い構造を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
前記サセプタの上方に位置する上部ヒータをさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
成膜室内で基板をその下方に配置されたヒータで加熱しながら前記基板の上に所定の膜を形成する成膜方法であって、
前記ヒータの下方に環状のリフレクタと円盤状のリフレクタとを組み合わせて配置することを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69689(P2012−69689A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212541(P2010−212541)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】