説明

成膜装置

【課題】基板上に配向膜を形成する際に、異物の発生を抑制し、配向膜を良好に形成できる成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜装置は、基板を収容可能であり、収容した基板上に配向膜を形成可能な第1室と、第1室に配置され、基板上に配向膜を形成するための材料を供給可能な材料供給部と、第1室に配置され、材料供給部と基板との間に所定部材が配置されるように所定部材を着脱可能に保持する保持装置と、第1室と別の位置に配置され、所定部材をクリーニング可能なクリーニングシステムと、第1室の保持装置とクリーニングシステムとの間で所定部材を搬送する搬送システムとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、液晶分子を配向させる配向膜を備えている。配向膜として、ポリイミド等の有機材料からなる配向膜、すなわち有機配向膜を用いる場合が多いが、近時においては、耐熱性及び耐光性の向上等を目的として、窒化珪素等の無機材料からなる配向膜、すなわち無機配向膜を用いることが提案されている。下記特許文献1には、斜方蒸着法によって無機配向膜を形成する場合において、材料供給部(蒸着源)と基板との間に開口を有する部材を配置する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−365639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
材料供給部と基板との間に上述のような部材が配置されている場合、材料供給部から供給される材料の少なくとも一部は、部材の表面に供給される可能性がある。基板以外の部材の表面に供給された材料がその部材の表面に膜を形成した場合、その膜の一部が部材の表面から剥がれる可能性がある。剥がれた膜は異物として作用し、その異物が基板に付着した場合、基板上に配向膜を良好に形成することができず、製造されるデバイスの性能が劣化する可能性がある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、基板上に配向膜を形成する際に、異物の発生を抑制し、配向膜を良好に形成できる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
本発明の一態様によると、基板上に配向膜を形成する成膜装置であって、前記基板を収容可能であり、該収容した基板上に前記配向膜を形成可能な第1室と、前記第1室に配置され、前記基板上に前記配向膜を形成するための材料を供給可能な材料供給部と、前記第1室に配置され、前記材料供給部と前記基板との間に所定部材が配置されるように該所定部材を着脱可能に保持する保持装置と、前記第1室と別の位置に配置され、前記所定部材をクリーニング可能なクリーニングシステムと、前記第1室の前記保持装置と前記クリーニングシステムとの間で前記所定部材を搬送する搬送システムと、を備えた成膜装置が提供される。
【0006】
本発明の一態様によれば、所定部材をクリーニングするクリーニングシステムを設けたので、クリーニングシステムにおいて、所定部材に付着した材料を除去できる。したがって、第1室における異物の発生を抑制でき、基板上に配向膜を良好に形成できる。また、同じ所定部材を繰り返し使用できるので、同じ成膜条件で基板上に配向膜を形成できる。したがって、形成される配向膜の品質がばらつくことを抑制できる。また、クリーニングシステムは、基板上に配向膜を形成可能な第1室とは別の位置に配置されているので、例えばクリーニング動作によって生じる様々な物質が第1室又は第1室に配置された基板等に影響を与えることを抑制し、所望の性能を有するデバイスを製造できる。
【0007】
上記態様の成膜装置において、前記クリーニングシステムは、前記所定部材を収容可能であり、該収容した所定部材をクリーニング可能な第2室を有する構成を採用することができる。
【0008】
これによれば、クリーニング動作によって生じる様々な物質が周囲に放出されるのを抑制できる。例えば、クリーニング動作に用いられるクリーニング用ガス、あるいはクリーニングによって所定部材から発生する異物等が、第1室又は第1室に配置された基板等に影響を与えることを抑制できる。
【0009】
上記態様の成膜装置において、前記搬送システムは、前記第1室と前記第2室との間に配置され、前記所定部材を保持して搬送可能な搬送部材を収容可能な第3室を有し、前記第1室と第3室とを接続する第1通路と、前記第2室と前記第3室とを接続する第2通路と、前記第1通路を開閉可能な第1開閉機構と、前記第2通路を開閉可能な第2開閉機構とを有する構成を採用できる。
【0010】
これによれば、例えば第1室の状態(環境)、及び第2室の状態(環境)の大きな変動を抑制しつつ、第1室と第2室との間で所定部材を円滑に搬送できる。
【0011】
上記態様の成膜装置において、前記搬送システムは、前記保持装置から前記クリーニングシステムへ前記所定部材を保持して搬送する第1搬送部材と、前記クリーニングシステムから前記保持装置へ前記所定部材を保持して搬送する第2搬送部材とを有する構成を採用できる。
【0012】
これによれば、第1室において材料が付着している(汚染している)可能性のある所定部材を搬送する第1搬送部材と、クリーニングシステムにおいてクリーニングされた清浄な所定部材を搬送する第2搬送部材とを分けているので、クリーニングシステムにおいてクリーニングされた清浄な所定部材が、汚染されている可能性のある搬送部材で搬送されることを抑制できる。また、第1搬送部材による搬送動作と第2搬送部材による搬送動作とを並行して行うことができ、所定部材の交換動作を短縮でき、デバイスの生産性を向上できる。
【0013】
上記態様の成膜装置において、前記クリーニングシステムは、前記所定部材に付着している前記材料を除去するための第1クリーニング動作を実行する第1クリーニング装置と、前記第1クリーニング動作後、前記所定部材に残留している物質を除去するための第2クリーニング動作を実行する第2クリーニング装置とを有する構成を採用できる。
【0014】
これによれば、第1クリーニング動作で所定部材に付着している材料を除去することができる。そして、第1クリーニング動作後において、所定部材上に残渣等が存在する場合においても、その残渣等を第2クリーニング動作によって除去できる。したがって、所定部材を良好にクリーニングできる。
【0015】
上記態様の成膜装置において、前記第1クリーニング装置は、前記所定部材から前記材料を除去可能な第1クリーニング用ガスを供給する構成を採用できる。
【0016】
これによれば、所定部材に付着している材料を良好に除去できる。
【0017】
上記態様の成膜装置において、前記所定部材に付着している前記材料の量を検出可能な検出装置と、前記検出装置の検出結果に基づいて、クリーニング動作を制御する制御装置とを備えた構成を採用できる。
【0018】
これによれば、例えば検出装置の検出結果に基づいて、第1室において、所定部材に許容量以上の材料が付着したと判断された場合に、クリーニングシステムを用いて、適切なタイミングで、所定部材をクリーニングできる。
【0019】
上記態様の成膜装置において、前記所定部材は、前記基板上における前記配向膜が形成される形成領域を設定する開口を有する設定部材を含む構成を採用できる。
【0020】
これによれば、異物の発生のみならず、例えば開口の近傍に材料が付着することによって生じるその開口の形状の変化又は大きさの変化等に伴う成膜条件の変化を抑制できる。
【0021】
上記態様の成膜装置において、前記所定部材は、前記材料供給部から前記基板へ向かう前記材料を遮断可能なシャッタ部材を含む構成を採用できる。
【0022】
これによれば、第1室におけるシャッタ部材からの異物の発生を抑制できる。
【0023】
上記態様の成膜装置において、前記材料供給部は、前記配向膜を形成するための材料の蒸気を発生する蒸着源を含む構成を採用できる。
【0024】
これによれば、配向膜を蒸着法によって形成するときの異物の発生を抑制できる。
【0025】
上記態様の成膜装置において、前記材料供給部は、イオン粒子でスパッタされ、前記配向膜を形成するためのスパッタ粒子を放出するターゲット材料を含む構成を採用できる。
【0026】
これによれば、配向膜をスパッタ法によって形成するときの異物の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0028】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る成膜装置1を示す概略構成図である。本実施形態の成膜装置1は、液晶装置の少なくとも一部となる基板Wの表面に無機材料からなる無機配向膜を形成する成膜装置である。本実施形態においては、成膜装置1は、蒸着法に基づいて、基板Wの表面に無機配向膜を形成する。
【0029】
成膜装置1は、基板Wを収容可能であり、その収容した基板W上に無機配向膜を形成可能な成膜室2を有する成膜システム3と、成膜室2に配置され、基板Wを保持して移動可能な基板駆動装置4と、成膜室2に配置され、基板W上に無機配向膜を形成するための材料を供給可能な蒸着源5と、成膜室2に配置され、蒸着源5と基板Wとの間に、開口6Kを有する設定部材6が配置されるようにその設定部材6を着脱可能に保持する第1保持装置7と、成膜室2に配置され、蒸着源5と基板Wとの間に、シャッタ部材8が配置されるようにそのシャッタ部材8を着脱可能に保持する第2保持装置9と、成膜システム3の成膜室2と別の位置に配置され、設定部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方をクリーニング可能なクリーニングシステム10と、成膜室2の第1保持装置7とクリーニングシステム10との間で設定部材6を搬送可能であるとともに、成膜室2の第2保持装置9とクリーニングシステム10との間でシャッタ部材8を搬送可能な搬送システム11と、成膜装置1全体の動作を制御する制御装置12とを備えている。
【0030】
クリーニングシステム10は、設定部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を収容可能であり、その収容した設定部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方をクリーニング可能なクリーニング室13を有する。また、クリーニングシステム10は、クリーニング室13に配置され、設定部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を着脱可能に保持する第3保持装置14を有する。
【0031】
搬送システム11は、成膜室2とクリーニング室13との間に配置され、設定部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を保持して搬送可能な搬送部材16、17、18、19を収容可能な搬送室15を有する。
【0032】
また、成膜装置1は、成膜室2の環境(圧力、温度等)、クリーニング室13の環境、及び搬送室15の環境のそれぞれを調整する空調システム20を備えている。本実施形態においては、制御装置12は、空調システム20を用いて、成膜室2、搬送室15、及びクリーニング室13を減圧し、ほぼ真空状態にする。
【0033】
また、成膜装置1は、成膜室2と搬送室15とを接続する第1通路21(21A、21B)と、クリーニング室13と搬送室15とを接続する第2通路22と、第1通路21(21A、21B)を開閉可能な第1開閉機構23(23A、23B)と、第2通路22を開閉可能な第2開閉機構24とを有する。第1開閉機構23は、第1通路21を開閉可能な第1扉を有し、その第1扉は、第1通路21に配置されている。第2開閉機構24は、第2通路22を開閉可能な第2扉を有し、その第2扉は、第2通路22に配置されている。すなわち、第1、第2開閉機構23、24は、いわゆるゲートバルブ機構を含む。
【0034】
制御装置12は、搬送システム11と成膜システム3との間で設定部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を搬送する際、第1扉を駆動して、第1通路21を開ける。また、制御装置12は、成膜システム3における処理(成膜処理)を実行する際、第1扉を駆動して、第1通路21を閉じる。また、制御装置12は、搬送システム11とクリーニングシステム10との間で設定部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を搬送する際、第2扉を駆動して、第2通路22を開ける。また、制御装置12は、クリーニングシステム10における処理(クリーニング処理)を実行する際、第2扉を駆動して、第2通路22を閉じる。
【0035】
これにより、制御装置12は、成膜室2の状態(真空状態)、及びクリーニング室13の状態(真空状態)の大きな変動を抑制しつつ、すなわち、成膜室2及びクリーニング室13の真空度が大きく劣化することを抑制しつつ、搬送システム11を用いて、設定部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を搬送できる。
【0036】
なお、成膜室2には、配向膜を形成する際の前処理(例えば基板の加熱処理)を行うための前処理室(不図示)と、配向膜を形成した後の後処理(例えば基板の冷却処理)を行うための後処理室(不図示)とがそれぞれ接続されている。成膜室2と前処理室及び後処理室のそれぞれとの間にもゲートバルブ機構が設けられており、前処理室から成膜室2への基板Wの搬入動作、及び成膜室2から後処理室への基板Wの搬出動作が、不図示の搬送装置によって、ゲートバルブ機構を介して実行される。ゲートバルブ機構によって、成膜室2の状態(真空状態)の大きな変動を抑制しつつ、基板Wを搬送できる。
【0037】
蒸着源5は、基板W上に無機配向膜を形成するための材料を供給するものであって、無機配向膜を形成するための材料の蒸気を発生する。蒸着源5は、成膜室2に配置されている。蒸着源5は、配向膜を形成するための材料を収容する容器(るつぼ)5Aを有し、不図示の電子ビーム照射装置からの電子ビームが照射されることによって加熱される。これにより、蒸着源5から、無機配向膜を形成するための材料に基づく蒸気が発生する。以下の説明において、基板W上に無機配向膜を形成するための材料を適宜、配向膜材料、と称する。
【0038】
本実施形態においては、配向膜材料として、二酸化珪素(SiO)等の酸化珪素(SiOx)、アルミナ(Al)、ZnO、MgO、ITO等の金属酸化物を用いる。
【0039】
本実施形態においては、蒸着源5は、成膜室2において、−X側の内壁の近傍の所定位置に配置されている。また、蒸着源5の容器5Aは開口5Kを有し、その開口5Kが設定部材6の開口6Kを向くように、成膜室2に配置されている。これにより、蒸着源5から発生する配向膜材料の蒸気(昇華材料)は、図1中、二点鎖線で示すように、設定部材6の開口6K近傍に効率良く供給される。
【0040】
基板駆動装置4は、基板Wを保持して移動可能であり、蒸着源5からの配向膜材料が供給可能な位置に基板Wを配置可能である。本実施形態においては、設定部材6が蒸着源5の上方(+Z側)に配置されており、基板駆動装置4は、その設定部材6の更に上方(+Z側)において、基板Wを保持して移動可能である。
【0041】
基板駆動装置4は、保持した基板Wを、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6自由度の方向に移動可能である。基板駆動装置4は、無機配向膜が形成される基板Wの表面とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Wを保持する。
【0042】
設定部材6は、蒸着源5と基板Wとの間に配置され、蒸着源5からの配向膜材料の少なくとも一部が通過可能な開口6Kを有する。開口6Kは、基板W上における無機配向膜が形成される形成領域、換言すれば、基板W上における配向膜材料が供給される供給領域を設定するためのものである。設定部材6は、例えば金属、セラミックス、樹脂等、任意の材料で形成可能である。
【0043】
図2(A)は、設定部材6の近傍の側断面図、図2(B)は、設定部材6の近傍を+Z側から見た図である。図2に示すように、本実施形態においては、設定部材6は、Y軸方向を長手方向とするスリット状の開口6Kを有する。また、XY平面内における開口6Kの大きさは、基板Wの表面の大きさよりも小さい。設定部材6は、開口6Kを用いて、蒸着源5からの配向膜材料を、基板Wに選択的に蒸着させる。以下の説明において、スリット状の開口6Kを有する設定部材6を適宜、スリット部材6、と称する。
【0044】
スリット部材6の開口6Kは、基板Wに対する配向膜材料の入射角度を制御可能である。スリット部材6の開口6Kは、蒸着源5が配置された位置に対して、XY平面内において、+X方向に所定距離離れた位置に配置される。そして、蒸着源5の開口5Kとスリット部材6の開口6Kとを結ぶ線と、Z軸とがなす角度θは、基板Wの表面に形成される無機配向膜の目標形状に応じて定められる。これにより、配向膜材料の蒸気は、基板Wの表面に対して、所定の入射角度で供給され、その基板Wを斜方蒸着する。
【0045】
第1保持装置7は、成膜室2に配置され、蒸着源5と基板Wとの間にスリット部材6が配置されるように、スリット部材6を着脱可能に保持する。
【0046】
第1保持装置7は、蒸着源5と基板Wとの間に配置された第1保持部材7Hを有する。第1保持部材7Hは、板状の部材である。図1等に示すように、基板駆動装置4は、第1保持部材7Hの上面と、基板Wの下面(無機配向膜が形成される面)とが接近するように、基板Wを保持する。第1保持部材7Hは、少なくともスリット部材6の開口6Kよりも大きい開口7Kと、第1保持部材7Hの上面において開口7Kを囲むように形成され、スリット部材6の周縁領域を支持可能な段差を有する保持部7Dとを有する。保持部7Dの段差の外形はスリット部材6に応じたものであり、スリット部材6は、保持部7Dの段差によって着脱可能に保持される。
【0047】
なお、スリット部材6を着脱可能に保持する保持部7Dは、段差に限られず、例えば静電チャック機構等を有したものであってもよい。静電チャック機構等を有する保持部によっても、スリット部材6を着脱可能に保持できる。
【0048】
また、本実施形態においては、成膜装置1は、スリット部材6が蒸着源5及び基板Wの少なくとも一方に対して所定の位置関係で配置されるように、スリット部材6を位置決めする位置決め機構25を有する。位置決め機構25は、スリット部材6の開口6Kが蒸着源5及び基板Wの少なくとも一方に対して所定の位置関係で配置されるように、スリット部材6を位置決めする。本実施形態においては、位置決め機構25は、スリット部材6の開口6Kの長手方向とY軸方向とがほぼ平行となるように、スリット部材6を位置決めする。
【0049】
図2に示すように、XY平面内におけるスリット部材6の外形はほぼ円形状であるが、その周縁の一部に、開口6Kの長手方向と直交する方向(すなわちX軸方向)ほぼ平行に切り欠かれた直線部6Lを有する。また、XY平面内における第1保持部材7Hの保持部7Dの段差の外形は、スリット部材6の外形に応じた形状を有し、その保持部7Dの一部には、スリット部材6の直線部6Lに対応する直線部7Lが形成されている。これにより、スリット部材6は、そのスリット部材6の直線部6Lと保持部7Dの直線部7Lとが対向する状態でのみ、保持部7Dに保持される。このように、本実施形態においては、位置決め機構25は、スリット部材6の直線部6Lと、段差及び直線部7Lを含む第1保持部材7Hの保持部7Dとを含み、この位置決め機構25によって、スリット部材6の開口6Kの長手方向とY軸方向とがほぼ平行となるように、スリット部材6が位置決めされる。
【0050】
なお、位置決め機構25は、直線部6L、7Lに限られず、例えばピン部材とそのピン部材を配置可能な孔とを有する機構であってもよいし、第1保持部材7Hを移動可能な駆動機構を設け、スリット部材6を保持した第1保持部材7Hを駆動機構で駆動することによって、第1保持部材7Hに保持されたスリット部材6の位置を調整するようにしてもよい。
【0051】
第1保持部材7Hは、基板Wよりも十分に大きく、スリット部材6とともに、基板Wの表面(−Z側を向く面)のほぼ全域を覆うことができる。そして、スリット部材6及び第1保持部材7Hは、蒸着源5からの、スリット部材6の開口6Kによって設定された形成領域(供給領域)以外への配向膜材料の供給(蒸着)を抑制する。
【0052】
また、第1保持部材7Hの上面(+Z側の面)はほぼ平坦であり、第1保持部材7Hに保持されたスリット部材6の上面もほぼ平坦である。また、第1保持部材7Hの上面と、その第1保持部材7Hに保持されたスリット部材6の上面とは、同一平面内(XY平面内)に配置される。すなわち、第1保持部材7Hの上面と、その第1保持部材7Hに保持されたスリット部材6の上面とは、ほぼ面一となる。
【0053】
基板駆動装置4は、基板Wを、第1保持部材7H及びスリット部材6の上面に沿ってXY平面内で移動可能である。そして、本実施形態においては、制御装置12は、基板駆動装置4を用いて基板WをX軸方向に移動しつつ、蒸着源5より供給された配向膜材料を、開口6Kを介して基板Wの表面に連続的に供給する。これにより、開口6Kを通過した配向膜材料は、基板Wの表面(−Z側を向く面)の所定領域に斜方蒸着される。
【0054】
シャッタ部材8は、蒸着源5と基板Wとの間に配置され、蒸着源5から基板Wへ向かう配向膜材料を遮断可能である。シャッタ部材8は、例えば金属、セラミックス、樹脂等、任意の材料で形成可能である。
【0055】
第2保持装置9は、成膜室2に配置され、蒸着源5と基板Wとの間にシャッタ部材8が配置されるように、シャッタ部材8を着脱可能に保持する。
【0056】
第2保持装置9は、蒸着源5と基板Wとの間に配置可能な第2保持部材9Hを有する。第2保持装置9は、シャッタ部材8を着脱可能に保持する第2保持部材9Hと、そのシャッタ部材8を保持した第2保持部材9Hを移動可能な駆動機構とを有する。本実施形態においては、第2保持装置9は、第2保持部材9Hで保持したシャッタ部材8を、駆動機構を用いて6自由度の方向に移動可能である。
【0057】
第2保持部材9Hは、上述の第1保持部材7Hとほぼ同様、開口9Kと、第2保持部材9Hの上面において開口9Kを囲むように形成され、シャッタ部材8の周縁領域を支持可能な段差を有する保持部9Dとを有する。保持部9Dの段差の外形はシャッタ部材8に応じたものであり、シャッタ部材8は、保持部9Dの段差によって着脱可能に保持される。
【0058】
なお、シャッタ部材8を着脱可能に保持する保持部は、段差に限られず、例えば静電チャック機構等を有したものであってもよい。静電チャック機構等を有する保持部によっても、シャッタ部材8を着脱可能に保持できる。
【0059】
図3に示すように、制御装置12は、第2保持装置9の駆動機構を制御して、第2保持部材9Hで保持したシャッタ部材8を、蒸着源5と基板Wとの間に配置可能である。より具体的には、制御装置12は、第2保持部材9Hで保持したシャッタ部材8を、蒸着源5の開口5Kを覆うように、蒸着源5とスリット部材6の開口6Kとを結ぶ線上に配置可能である。これにより、蒸着源5から基板Wへ向かう配向膜材料が遮断される。また、制御装置12は、第2保持装置9の駆動機構を制御して、第2保持部材9Hで保持したシャッタ部材8を、蒸着源5と基板Wとの間から退避可能である。これにより、蒸着源5から基板Wへ向かって配向膜材料が供給される。
【0060】
制御装置12は、例えば蒸着源5の配向膜材料が昇華を開始した直後等において、配向膜材料の昇華が安定するまで、蒸着源5の開口5Kを覆うように、蒸着源5と基板Wとの間にシャッタ部材8を配置する。そして、配向膜材料の昇華が安定した後、制御装置12は、シャッタ部材8を蒸着源5と基板Wとの間から退避させ、蒸着源5から基板Wへ向かって配向膜材料が供給可能な状態に設定する。
【0061】
また、図1に示すように、本実施形態においては、成膜室2の内壁には、蒸着源5からの配向膜材料が成膜室2の内壁に付着することを抑制するための抑制部材(防着板)26が配置されている。防着板26は、成膜室2の内壁に着脱可能に配置されており、交換可能である。
【0062】
また、本実施形態においては、成膜装置1は、スリット部材6に付着している配向膜材料の量を検出可能な第1検出装置27を備えている。第1検出装置27は、例えば水晶振動子を含み、スリット部材6に対して所定の位置に配置されている。本実施形態においては、第1検出装置27は、第1保持装置7に保持されているスリット部材6の近傍であって、そのスリット部材6から僅かに離れた位置に配置されている。
【0063】
水晶振動子を含む第1検出装置27は、スリット部材6に付着している配向膜材料の量、換言すれば、配向膜材料に基づいてスリット部材6の表面に形成される膜の量(厚み)を検出可能である。すなわち、本実施形態の第1検出装置27は、いわゆる水晶振動子型膜厚モニタを含む。
【0064】
第1検出装置27の水晶振動子は、その水晶振動子上に形成される膜の量(厚み、重さ)に応じて、その振動状態を変化させる。具体的には、水晶振動子に膜が形成されると、その質量変化により、共振周波数が変化する。すなわち、水晶振動子の振動状態と、その水晶振動子上に形成される膜の量とは対応関係にあり、共振周波数の変化によって、水晶振動子上に形成された膜の量(厚み、重さ)を求めることができる。第1検出装置27の検出結果は制御装置12に出力される。
【0065】
また、本実施形態においては、成膜装置1は、シャッタ部材8に付着している配向膜材料の量を検出可能な第2検出装置28を備えている。第2検出装置28は、第1検出装置27と同様、水晶振動子型膜厚モニタを含む。第2検出装置28は、シャッタ部材8に対して所定の位置に配置されている。本実施形態においては、第2検出装置28は、第2保持装置9に保持されているシャッタ部材8の近傍であって、そのシャッタ部材8から僅かに離れた位置に配置されている。また、第2検出装置28は、不図示の駆動機構によって移動可能であり、第2保持装置28の駆動機構によってシャッタ部材8が移動したときに、そのシャッタ部材8との位置関係(距離)を維持した状態で、そのシャッタ部材8と同期移動可能である。第2検出装置28の検出結果は制御装置12に出力される。
【0066】
搬送システム11は、スリット部材6を保持して搬送可能な複数の搬送部材16、17を有する第1搬送装置11Aと、シャッタ部材8を保持して搬送可能な複数の搬送部材18、19を有する第2搬送装置11Bとを備えている。
【0067】
第1搬送装置11Aは、第1保持装置7からクリーニングシステム10へスリット部材6を保持して搬送する第1搬送部材16と、クリーニングシステム10から第1保持装置7へスリット部材6を保持して搬送する第2搬送部材17とを有する。第1、第2搬送部材16、17のそれぞれは、磁力又は静電気力でスリット部材6を保持可能であり、成膜室2の第1保持装置7とクリーニング室13との間を移動可能である。
【0068】
第2搬送装置11Bは、第2保持装置9からクリーニングシステム10へシャッタ部材8を保持して搬送する第3搬送部材18と、クリーニングシステム10から第2保持装置9へシャッタ部材8を保持して搬送する第4搬送部材19とを有する。第3、第4搬送部材18、19のそれぞれは、磁力又は静電気力でシャッタ部材8を保持可能であり、成膜室2の第2保持装置9とクリーニング室13との間を移動可能である。
【0069】
クリーニングシステム10は、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方をクリーニング可能であり、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方に付着している配向膜材料を除去する。
【0070】
図4は、クリーニングシステム10を示す図である。図4において、クリーニングシステム10は、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を収容可能なクリーニング室13と、クリーニング室13に配置され、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を着脱可能に保持する第3保持装置14と、クリーニング室13に配置され、クリーニング室13に第1クリーニング用ガスを供給する第1クリーニング用ガス供給装置30と、クリーニング室13とは別の放電室31においてプラズマを生成するプラズマ生成装置32と、クリーニング室13と放電室32とを接続する開口33と、放電室32で生成されたプラズマを開口33を介してクリーニング室13に導入するプラズマ導入装置34とを備えている。クリーニングシステム10は、クリーニング室13に導入されたプラズマによって、第1クリーニング用ガスを用いて、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方に付着している配向膜材料を除去する。
【0071】
第3保持装置14は、クリーニング室13に配置された第3保持部材14Hを有し、その第3保持部材14Hは、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方がクリーニング室13に配置されるように、そのスリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を保持する。また、第3保持部材14Hは、保持したスリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方の温度を調整可能な温度調整装置を備えている。また、第3保持部材14Hには、その第3保持部材14H(ひいては第3保持部材14Hに保持されたスリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方)に所定の電位を印加する電源が接続されている。
【0072】
第1クリーニング用ガス供給装置30は、配向膜材料と化学反応することで、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方から配向膜材料を除去可能な第1クリーニング用ガスを供給する。第1クリーニング用ガスは、配向膜材料に応じて適宜選択される。例えば、配向膜材料として、SiO等の酸化珪素を用いる場合、第1クリーニング用ガスとして、CF、C、NF等のPFC(per fluoro compound)ガスを用いることができる。
【0073】
クリーニング室13の所定位置には、第1クリーニング用ガス供給装置30と接続されたノズル部材35が配置されており、第1クリーニング用ガス供給装置30から送出された第1クリーニング用ガスは、供給管36を介してノズル部材35に供給される。第1クリーニング用ガス供給装置30から送出され、供給管36を流れた第1クリーニング用ガスは、ノズル部材35を介して、クリーニング室13に放出される。また、供給管36の途中には、この供給管36の流路を開閉可能なバルブ機構36Bが配置されている。
【0074】
また、クリーニング室13の所定位置には、クリーニング室13のガスを排気可能な排気口(不図示)が形成されている。
【0075】
プラズマ生成装置32は、放電においてプラズマを生成可能であり、放電室31に配置され、アーク放電可能な電極37、37と、放電室31に放電用ガスを供給する放電用ガス供給装置38とを備えている。
【0076】
放電用ガス供給装置38は、プラズマ生成装置32で放電される放電用ガスを、電極37が配置された放電室31に供給するものであって、放電用ガスとして、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスを供給する。放電用ガス供給装置38から送出された放電用ガス(本実施形態においてはアルゴンガス)は、供給管39を介して放電室31の電極37間に供給される。また、供給管39の途中には、この供給管39の流路を開閉可能なバルブ機構39Bが配置されている。
【0077】
プラズマ生成装置32は、電極37間でアーク放電を発生させ、電極37間にプラズマ発生領域PUを形成する。プラズマ生成装置32は、プラズマ発生領域PUに放電用ガス供給装置38からアルゴンガスを供給し、その供給されたアルゴンガスをアルゴンイオンと電子(荷電粒子)とを含むガスに変換する。すなわち、プラズマ生成装置32は、放電用ガス(アルゴンガス)をプラズマ化して、そのアルゴンガスのプラズマ(アルゴンプラズマ)を生成する。
【0078】
プラズマ導入装置34は、プラズマ生成装置32により放電室31で生成されたプラズマを、開口33を介してクリーニング室13に導入するためのものであって、引き出し電極(陰極)40、40を含む。引き出し電極40には、その引き出し電極40に所定の電位を印加する電源が接続されている。
【0079】
引き出し電極40と対向する位置には対向電極41が配置されており、プラズマ生成装置32により放電室31で生成されたプラズマ(アルゴンプラズマ)は、引き出し電極40により加速され、開口33を介して、クリーニング室13に導入(照射)される。このように、本実施形態のクリーニングシステム10は、プラズマ生成装置32の放電室31で生成されたプラズマをクリーニング室13に導入(供給)する。
【0080】
次に、上述の構成を有する成膜装置1を用いて、基板Wの表面に無機配向膜を形成する方法について説明する。
【0081】
まず、成膜処理されるべき基板Wが、前処理室から成膜室2の基板駆動装置4に搬入(ロード)される。基板駆動装置4は、ロードされた基板Wを保持する。前処理室を有する前処理装置は、基板Wの基材(例えばガラス基板)上に所定の機能膜を形成可能であり、本実施形態においては、基板W上には、前処理装置によって、例えばITO等の透明導電膜が予め形成されている。制御装置12は、空調システム20を制御して、基板Wが搬入された成膜室2を真空状態に調整するとともに、所定の温度に調整する。
【0082】
また、制御装置12は、基板Wが成膜室2に搬入される前又は後の所定のタイミングで、蒸着源5と基板Wとの間にシャッタ部材8を配置して、シャッタ部材8で蒸着源5の開口5Kを覆った状態で、配向膜材料を有する蒸着源5を加熱する動作を開始する。そして、制御装置12は、配向膜材料の昇華が安定した後、シャッタ部材8を蒸着源5と基板Wとの間から退避させ、蒸着源5から基板Wへ向かって配向膜材料が供給可能な状態に設定する。
【0083】
制御装置12は、蒸着源5を用いて、配向膜材料を基板Wに蒸着する。蒸着源5から発生する配向膜材料の蒸気(昇華材料)は、図1中、二点鎖線で示すように、スリット部材6の開口6K近傍に効率良く供給される。また、制御装置12は、基板駆動装置4を用いて、蒸着源5からの配向膜材料が供給可能な位置に基板Wを配置する。蒸着源5より放出された配向材料の少なくとも一部は、スリット部材6の開口6Kを通過する。スリット部材6の開口6Kを通過した配向膜材料は、基板W上に供給され、基板Wの表面に斜方蒸着する。
【0084】
そして、本実施形態においては、制御装置12は、基板駆動装置4を用いて基板WをX軸方向に移動しつつ、蒸着源5を用いた成膜処理(蒸着処理)を実行する。すなわち、本実施形態においては、基板WをX軸方向に移動しつつ、スリット部材6の開口6Kを介した配向膜材料が、基板Wの表面に連続的に供給される。
【0085】
蒸着処理を実行することによって、蒸着源5からは、配向膜材料が放射状に放出される。本実施形態においては、蒸着源5と基板Wとの間に、基板W上における形成領域(供給領域)を設定する開口6Kを有するスリット部材6が配置されているので、蒸着源5から放出された配向膜材料のうち、スリット部材6の開口6Kを通過する一部の配向膜材料のみが、基板W上に供給される。
【0086】
また、本実施形態においては、スリット部材6の開口6Kを通過した配向膜材料が基板Wの表面に斜め方向から供給されるように、蒸着源5とスリット部材6の開口6Kと基板Wとが所定の位置関係で配置されている。具体的には、上述のように、蒸着源5の開口5Kとスリット部材6の開口6Kとを結ぶ線と、Z軸とが所定の角度θに定められている。したがって、スリット部材6の開口6Kを通過した配向膜材料は、基板Wの表面に対して角度θ傾斜した斜め方向から、その基板Wの表面に供給される。すなわち、基板Wの表面には、入射角度θで配向膜材料が供給される。これにより、基板Wの表面には、所望の角度で傾くように形成された複数の射方柱(カラム、柱状構造体)を含む無機配向膜が形成される。
【0087】
図5は、スリット部材6の開口6Kの近傍を示す図である。蒸着源5から放出された配向膜材料のうち、スリット部材6の開口6Kを通過しない一部の配向膜材料は、図5に示すように、例えばスリット部材6の開口6K近傍の下面(蒸着源5と対向する−Z側の面)の一部、あるいは、開口6Kの内面等に付着し、それら開口6K近傍に膜M’を形成する可能性がある。この膜M’が形成されると、開口6Kの大きさが変化したり、開口6Kの形状が変化したりして、形成される無機配向膜の膜厚等が均一でなくなるなど、蒸着むらが発生し、所望の無機配向膜を基板W上に形成できなくなる可能性がある。
【0088】
また、スリット部材6に形成された膜M’の一部が剥がれる可能性がある。スリット部材6から剥がれた膜M’は異物として作用し、その異物(膜M’の一部)が、例えば開口6Kを介して基板Wに付着する可能性がある。異物が基板Wに付着すると、その基板Wに基づいて製造されるデバイスの性能が劣化する。
【0089】
また、シャッタ部材8にも膜M’が形成される可能性がある。シャッタ部材8は、蒸着源5の近くに配置されているため、膜M’が形成される可能性がある。そして、そのシャッタ部材8に形成された膜M’が異物として作用する可能性がある。
【0090】
そこで、本実施形態においては、膜M’が形成されたスリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方を、クリーニングシステム10を用いてクリーニングする。
【0091】
以下、クリーニングシステム10を用いたクリーニング動作の一例について説明する。以下の説明においては、簡単のため、クリーニングシステム10がスリット部材6をクリーニングする場合を例にして説明する。
【0092】
制御装置12は、第1検出装置27の検出結果に基づいて、クリーニング動作を制御する。上述のように、水晶振動子を含む第1検出装置27は、成膜室2におけるスリット部材6上の配向膜材料の量、ひいては配向膜材料に基づいてスリット部材6の表面に形成される膜M’の量(厚み)を検出可能である。第1検出装置27の検出結果は制御装置12に出力される。
【0093】
上述のように、水晶振動子の振動状態と、その水晶振動子上に形成される膜M’の量とは対応関係にあり、その関係に関する情報は、予め求められていて制御装置12に記憶されている。制御装置12は、第1検出装置27の検出結果と、上述の記憶情報とに基づいて、水晶振動子上に形成される膜M’の量を求めることができる。第1検出装置27の水晶振動子は、スリット部材6の近傍に配置されており、水晶振動子上に形成される膜M’の量と、スリット部材6の表面に形成される膜M’の量とはほぼ等しい。したがって、制御装置12は、第1検出装置27の検出結果に基づいて、配向膜材料に基づいてスリット部材6上に形成される膜M’の量、ひいてはスリット部材6上に供給される配向膜材料の量を検出できる。
【0094】
制御装置12は、第1検出装置27の検出結果に基づいて、搬送システム11及びクリーニングシステム10を制御する。具体的には、制御装置12は、第1検出装置27の検出結果に基づいて、第1保持装置7に保持されているスリット部材6上の膜M’の量が、予め定められた許容量以上になったと判断したとき、搬送システム11を用いて、第1保持装置7に保持されているスリット部材6を成膜室2から搬出する動作を開始する。
【0095】
なお、この許容量は、膜M’の剥がれが発生する確率に基づいて定められた値であり、予備実験及びシミュレーションの少なくとも一方を用いて予め求めることができる。例えば、形成される膜M’の量が許容量以下であれば、その膜M’にクラック等が発生する確率が非常に低く、したがって、そのクラックに起因して膜の一部が剥がれて異物が発生する確率が非常に低い。一方、形成される膜M’の量が許容量以上の場合、その膜M’にクラックが発生する確率が高くなり、異物が発生する確率が高くなる。
【0096】
制御装置12は、第1検出装置27の検出結果に基づいて、第1保持装置7に保持されているスリット部材6上の膜M’の量が、予め定められた許容量以上になったと判断したとき、成膜システム3による成膜処理(蒸着処理)を停止した後、第1保持装置7によるスリット部材6の保持を解除し、搬送システム11の第1搬送部材16を第1保持装置7に接近させ、その第1搬送部材16を用いて、スリット部材6を第1保持装置7から搬出する。
【0097】
制御装置12は、スリット部材6に形成されている膜M’(配向膜材料)を除去するために、成膜室2から搬出したスリット部材6を、クリーニングシステム10のクリーニング室13に搬送する。制御装置12は、第1搬送部材16を用いて、クリーニング室13の第3保持装置14に、スリット部材6を搬入(ロード)する。
【0098】
スリット部材6が第3保持装置14に保持された後、スリット部材6の温度が、第3保持装置14に配置されている不図示の温度調整装置によって調整される。そして、第1クリーニング用ガス供給装置30より、ノズル部材35を介して、クリーニング室13内に、スリット部材6から膜M’(配向膜材料)を除去するための第1クリーニング用ガスが供給される。また、プラズマ生成装置32においては、電極37間にグロー放電が生成され、、放電用ガス供給装置38より放電室31に放電用ガスが供給され、電極37間にプラズマ発生領域PUが形成される。
【0099】
プラズマ生成装置32により放電室31において生成されたプラズマは、引き出し電極40を含むプラズマ導入装置34により、開口33を介して、クリーニング室13に導入される。プラズマは、クリーニング室13を−X方向に向かって進行する。
【0100】
クリーニング室13のプラズマは、クリーニング室13の第1クリーニング用ガスを励起、イオン化する。クリーニング室13に導入されたプラズマによって励起、イオン化された第1クリーニング用ガスは、第3保持部材14Hに保持されているスリット部材6の表面に付着している配向膜材料と化学反応し、例えばフッ化珪素(SiF)を生成し、配向膜材料をガス化する。これにより、スリット部材6に付着していた配向膜材料は、そのスリット部材6から除去される。すなわち、本実施形態においては、クリーニングシステム10は、ドライエッジング(プラズマエッチング)可能なドライエッチング装置を備えており、ドライエッチング(プラズマエッチング)の手法によって、スリット部材6に付着している配向膜材料を除去するための第1クリーニング動作を実行する。
【0101】
本実施形態においては、成膜装置1は、クリーニング室13において、スリット部材6に付着していた配向膜材料が除去されたかどうかを検出する検出装置42を有している。検出装置42は、フーリエ変換赤外分光光度計を含み、そのフーリエ変換赤外分光光度計を含む検出装置42は、図4に示すように、接続管43を介して、クリーニング室13と接続されている。
【0102】
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を含む検出装置42は、特に、第1クリーニング用ガスとしてフッ素を含むガスを用いた場合に、スリット部材6に付着していた配向膜材料が除去されたかどうかを検出可能である。PFC等、フッ素を含むガスは、配向膜材料である酸化珪素と反応してフッ化珪素(SiF)となり、接続管43を介してフーリエ変換赤外分光光度計を含む検出装置42に導入される。フーリエ変換赤外分光光度計は、導入されたガス中のフッ化珪素(SiF)の量を検出可能である。
【0103】
スリット部材6に配向膜材料が付着している場合、その配向膜材料と第1クリーニング用ガスとの化学反応によってフッ化珪素(SiF)が生成され続けるので、制御装置12は、フーリエ変換赤外分光光度計を含む検出装置42の検出結果に基づいて、フッ化珪素が生成されていると判断したとき、スリット部材6には未だ配向膜材料が存在している(スリット部材6に付着していた配向膜材料は未だ除去されていない)と判断できる。一方、スリット部材6上の配向膜材料がほぼ除去された場合、フッ化珪素(SiF)はほとんど生成されないので、制御装置12は、フーリエ変換赤外分光光度計を含む検出装置42の検出結果に基づいて、フッ化珪素がほとんど生成されていないと判断したとき、スリット部材6には配向膜材料が存在していない(スリット部材6に付着していた配向膜材料は除去された)と判断できる。このように、制御装置12は、検出装置42によってフッ化珪素をほとんど検出しなくなった時点で、スリット部材6から配向膜材料がほぼ除去されたと判断する。
【0104】
検出装置42の検出結果に応じて、スリット部材6から配向膜材料がほぼ除去できたと判断した後、制御装置12は、第1クリーニング用ガス供給装置30からのクリーニング室13に対する第1クリーニング用ガスの供給動作を停止し、ドライエッチングの手法に基づく第1クリーニング動作を終了する。
【0105】
第1クリーニング動作終了後、制御装置12は、スリット部材6を保持している第3保持部材14Hに印加する電位を制御し、プラズマ生成装置32からクリーニング室13に供給されているプラズマ(アルゴンプラズマ)を用いて、スリット部材6をスパッタリングする。すなわち、制御装置12は、クリーニング室13に配置されているスリット部材6を、アルゴンイオンでスパッタ洗浄する。第1クリーニング終了後においても、スリット部材6上には、フッ素系の残渣等の物質が残留している可能性がある。そこで、制御装置12は、第1クリーニング動作終了後、スリット部材6に残留している物質を除去するために、スパッタ洗浄の手法を用いて、第2クリーニング動作を実行する。
【0106】
そして、制御装置12は、第1、第2クリーニング動作が終了した後、第2搬送部材17を用いて、第3保持部材14Hからクリーニング後のスリット部材6を搬出し、成膜室2の第1保持部材7Hに搬入(ロード)する。
【0107】
以上説明したように、スリット部材6をクリーニングするクリーニングシステム10を設けたので、クリーニングシステム10において、スリット部材6に付着した配向膜材料を除去できる。したがって、成膜室2における異物の発生を抑制でき、基板W上に配向膜を良好に形成できる。したがって、所望の性能を有する液晶装置を製造できる。
【0108】
また、基板W上における配向膜材料が供給される供給領域を設定する開口6Kを有するスリット部材6をクリーニングするようにしたので、例えば開口6Kの近傍に配向膜材料が付着することによって生じる、その開口6Kの形状の変化、又は開口6Kの大きさの変化等を抑制できる。開口6Kの大きさ又は形状が変化した場合、成膜条件が変化したり、成膜むら(蒸着むら)等が発生したりする不具合が生じるが、本実施形態においては、そのような不具合の発生を、クリーニングシステム10を用いて抑制できる。
【0109】
また、クリーニングシステム10を設けたことにより、同じスリット部材6を繰り返し使用できるので、同じ成膜条件で基板W上に配向膜を形成できる。したがって、形成される配向膜の品質がばらつくことを抑制できる。すなわち、例えばスリット部材6上に許容量以上の膜M’が形成された場合、そのスリット部材6を新たなものと交換することも考えられるが、上述のように、スリット部材6は、供給領域を規定する開口6Kを有しており、スリット部材6を新たなもの(別のもの)と交換すると、スリット部材6(開口6K)の製造誤差(形状誤差)等によって、供給領域が変動する可能性がある。そのため、スリット部材6を新たなもの(別のもの)と頻繁に交換することは望ましくない場合がある。本実施形態においては、スリット部材6をクリーニングシステム10を用いてクリーニングするので、スリット部材6を交換することなく、異物が発生するのを抑制することができる。
【0110】
なお、本実施形態においては、上述のように、二点鎖線で示す方向で、蒸着源5から基板Wに配向膜材料が進行する。したがって、第1保持部材7Hに付着する配向膜材料の量は僅かである。また、スリット部材6は基板Wの形成領域(供給領域)に近い位置に配置されており、スリット部材6に付着する膜M’に起因する異物は、主に、スリット部材6の開口6K近傍に付着した膜(配向膜材料)から発生する異物と考えられる。したがって、第1保持部材7Hに対して比較的小型のスリット部材6のみをクリーニングすることによって、基板Wに異物が付着することを抑制でき、製造されるデバイスの劣化を抑制できる。
【0111】
また、クリーニングシステム10は、基板W上に配向膜を形成可能な成膜室2とは別の位置に配置されているので、例えばクリーニング動作によって生じる様々な物質が成膜室2又は成膜室2に配置された基板W等に影響を与えることを抑制できる。すなわち、スリット部材6をクリーニングする際に、PFCガス等、フッ素を含むガスを用いる場合、成膜室2と同じ空間でクリーニング処理を実行すると、そのフッ素を含むガスが成膜室2に残留したり、成膜室2に配置されている基板Wに付着する可能性がある。また、フッ素を含むガスが成膜室2の内壁を腐食する等、成膜室2を劣化させる可能性がある。また、フッ素を含むガスが基板Wに付着すると、基板W(配向膜)の性能が劣化し、ひいては製造されるデバイス(液晶装置)の性能が劣化する可能性がある。本実施形態においては、クリーニングシステム10は、基板W上に配向膜を形成可能な成膜室2とは別の位置に配置されているので、上述の不具合を抑制できる。したがって、所望の性能を有するデバイスを製造できる。
【0112】
また、本実施形態においては、クリーニングシステム10は、クリーニング室13を有しており、クリーニング動作によって生じる様々な物質が周囲に放出されるのを抑制できる。また、クリーニング室13を真空状態にすることができるので、そのクリーニング室13で、上述のドライエッチング(プラズマエッチング)の手法に基づく第1クリーニング動作、及びアルゴンイオンによるスパッタ洗浄の手法に基づく第2クリーニング動作を円滑に実行できる。
【0113】
また、本実施形態においては、第1通路21を開閉可能な第1開閉機構23と、第2通路22を開閉可能な第2開閉機構24とが設けられているので、例えば成膜室2の真空状態、及びクリーニング室13の真空状態の大きな変動を抑制しつつ、成膜室2とクリーニング室13との間でスリット部材6を円滑に搬送できたり、成膜室2での成膜処理、及びクリーニング室13でのクリーニング処理を効率良く行うことができる。したがって、デバイスの生産性を向上できる。
【0114】
また、本実施形態においては、第1保持装置7からクリーニングシステム10へスリット部材6を保持して搬送する第1搬送部材16と、クリーニングシステム10から第1保持装置7へスリット部材6を保持して搬送する第2搬送部材17とを設けたので、配向膜材料が付着しているスリット部材6を第1搬送部材16のみで搬送し、クリーニングシステム10においてクリーニングされた清浄なスリット部材6を第2搬送部材17のみで搬送することによって、クリーニングシステム10においてクリーニングされた清浄なスリット部材6が、配向膜材料が付着しているスリット部材6を保持することによって汚染してしまった可能性のある第1搬送部材16で搬送されることを抑制できる。したがって、クリーニングシステム10でクリーニングされたスリット部材6が、成膜室2の第1保持装置7に搬入(ロード)される前に汚れてしまうといった不具合の発生を抑制できる。
【0115】
また、本実施形態においては、クリーニングシステム10は、スリット部材6に付着している配向膜材料を除去するためのドライエッチングの手法に基づく第1クリーニング動作と、その第1クリーニング動作後、スリット部材6に残留している物質を除去するためのスパッタ洗浄の手法に基づく第2クリーニング動作とを実行するので、スリット部材6を良好にクリーニングできる。
【0116】
また、本実施形態においては、スリット部材6上の配向膜材料の量を検出する第1検出装置27を設け、その第1検出装置27の検出結果に基づいて、スリット部材6のクリーニング動作を制御するので、第1検出装置27の検出結果に基づいて、成膜室2において、スリット部材6に許容量以上の材料が付着したと判断された場合に、クリーニングシステム10を用いて、適切なタイミングで、スリット部材6をクリーニングできる。例えば、スリット部材6上の膜M’の量が僅かであって、スリット部材6のクリーニングを実行しなくてもいい状態であるにもかかわらずクリーニング動作を実行してしまう、といった不具合を抑制できる。
【0117】
また、本実施形態においては、第1搬送部材16による搬送動作と第2搬送部材17による搬送動作とを並行して行うことができ、スリット部材6の交換動作を短縮でき、デバイスの生産性を向上できる。
【0118】
また、スリット部材6を少なくとも2つ用意しておき、一方のスリット部材6が成膜室2に配置されているときに、他方のスリット部材6がクリーニング室13に配置されて、クリーニング処理されてもよい。そして、成膜室2に配置されていたスリット部材6をクリーニングするために、そのスリット部材6を、第1搬送部材16を用いて成膜室2からクリーニング室13に搬送する動作の少なくとも一部と並行して、クリーニング室13においてクリーニング処理されたスリット部材6を、第2搬送部材17を用いてクリーニング室13から成膜室2に搬送する動作を実行するようにしてもよい。
【0119】
また、本実施形態においては、基板WをX軸方向に移動しつつ、Y軸方向に長いスリット状の開口6Kを通過した配向膜材料が連続的に基板Wに供給されるので、基板Wの表面の広い領域において、スリット部材6の開口6Kに応じた幅の均一な配向膜を良好に高い生産性で形成することができる。
【0120】
また、本実施形態においては、形成しようとする無機配向膜の目標形状(射方柱の目標角度)に応じて、蒸着源5とスリット部材6の開口6Kとの位置関係等を最適化することによって、所望の形状(角度)を有する複数の射方柱を含む無機配向膜を基板W上に良好に形成することができる。したがって、配向性が良好な無機配向膜を形成することができる。したがって、無機配向膜を備えた液晶装置は、液晶分子のプレチルト角を良好に制御することができる。また、配向性が良好な無機配向膜を用いて、液晶分子のプレチルト角を良好に制御することができるので、例えば液晶分子の配向状態をTNモードからVAモードまで自在に制御することができる。
【0121】
なお、本実施形態においては、第1検出装置27の検出結果に基づいて、スリット部材6のクリーニング動作が実行されるが、スリット部材6の交換動作は、第1検出装置27の検出結果によらずに、例えば予め定められた基板Wの所定処理枚数毎、あるいは所定処理時間間隔毎に実行するようにしてもよい。所定処理枚数は、1枚でもよいし、複数枚でもよい。
【0122】
なお、本実施形態においては、第1クリーニング動作においては、PFCガスをプラズマで活性化させたガス(ラジカル)を用いて、スリット部材6に付着している配向膜材料を除去しているが、Cl、(F/H)等のガスを紫外線等で活性化させた光励起ガスを用いて、スリット部材6に付着している配向膜材料を除去することも可能である。また、SiOとの反応性が高いHF等のガスを用いて、スリット部材6に付着している配向膜材料を除去することも可能である。また、ドライアイス粒子を噴射して、スリット部材6に付着している配向膜材料を除去することも可能である。
【0123】
なお、本実施形態においては、所定の角度の射方柱を有する無機配向膜を形成するために、蒸着源とスリット部材6の開口6Kと基板Wとの位置関係を最適化して、配向膜材料を基板Wの表面に斜め方向から供給しているが、形成しようとする無機配向膜に応じて、配向膜材料は、必ずしも基板Wの表面に斜め方向から供給されなくてもよい。
【0124】
なお、本実施形態においては、スリット部材6をクリーニングする場合を例にして説明したが、上述のように、クリーニングシステム10は、シャッタ部材8もクリーニングできる。制御装置12は、例えば第2検出装置28の検出結果に基づいて(又は例えば予め定められた基板Wの所定処理枚数毎、あるいは所定処理時間間隔毎に)、シャッタ部材8のクリーニング動作を開始することができる。また、制御装置12は、成膜室2からクリーニング室13へのシャッタ部材8の搬送を、第3搬送部材18を用いて実行し、クリーニング室13から成膜室2へのシャッタ部材8の搬送を、第4搬送部材19を用いて実行する。
【0125】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、成膜装置1が、スパッタ法に基づいて基板Wの表面に無機配向膜を形成する場合を例にして説明する。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0126】
図6は、第2実施形態に係る成膜装置1の概略構成図である。図6において、成膜装置1は、基板Wを収容可能であり、その収容した基板W上に無機配向膜を形成可能な成膜室2を有する成膜システム3と、成膜室2に配置され、基板Wを保持して移動可能な基板駆動装置4と、成膜室2に配置され、基板W上に無機配向膜を形成するための材料を供給可能なターゲット材料Tと、成膜室2に配置され、ターゲット材料Tと基板Wとの間に、開口6Kを有するスリット部材6が配置されるようにそのスリット部材6を着脱可能に保持する第1保持装置7と、成膜室2に配置され、ターゲット材料Tと基板Wとの間に、シャッタ部材8が配置されるようにそのシャッタ部材8を着脱可能に保持する第2保持装置9と、成膜システム3の成膜室2と別の位置に配置され、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方をクリーニング可能なクリーニングシステム10と、成膜室2の第1保持装置7とクリーニングシステム10との間でスリット部材6を搬送可能であるとともに、成膜室2の第2保持装置9とクリーニングシステム10との間でシャッタ部材8を搬送可能な搬送システム11とを備えている。上述の第1実施形態と同様、本実施形態においても、成膜装置1全体の動作は制御装置12によって制御される。
【0127】
本実施形態においては、成膜システム3は、ターゲット材料Tにイオン粒子P1を照射して、ターゲット材料Tより無機配向膜を形成するためのスパッタ粒子P2を放出させるスパッタ装置50を有する。
【0128】
スパッタ装置50は、RFスパッタ装置を含み、ターゲット材料Tを保持可能な電極を有する保持部材を備える。電極には高周波電源が接続される。スパッタ装置50は、成膜室2におけるターゲット材料Tの近傍、本実施形態においては、ターゲット材料Tの−Z側の所定領域において、プラズマを発生させる。また、スパッタ装置50は、プラズマが発生したプラズマ発生領域PAに、アルゴンガス(Arガス)及び酸素ガス(Oガス)の少なくとも一方を放電用ガスとして供給可能である。スパッタ装置50は、プラズマ発生領域PAに放電用ガスを供給することによって、その放電用ガスに基づくイオン粒子P1を生成する。スパッタ装置50は、生成したイオン粒子P1をターゲット材料Tに照射して、そのイオン粒子P1でターゲット材料Tをスパッタし、そのターゲット材料Tより、無機配向膜を形成するためのスパッタ粒子P2を放出させる。
【0129】
スリット部材6は、スパッタ装置50の電極によって保持されるターゲット材料Tと、基板Wとの間に配置されている。スリット部材6は、ターゲット材料Tからのスパッタ粒子P2の少なくとも一部が通過可能な開口6Kを有している。開口6Kは、基板W上におけるスパッタ粒子P2が供給される供給領域を規定する。
【0130】
シャッタ部材8は、ターゲット材料Tと、基板Wとの間に配置可能である。制御装置12は、ターゲット材料Tと基板Wとの間にシャッタ部材8を配置することによって、ターゲット材料Tから基板Wへ向かうスパッタ粒子P2を遮断可能である。
【0131】
本実施形態において、スリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方にスパッタ粒子P2(配向膜材料)が付着する可能性がある。クリーニングシステム10は、そのスリット部材6及びシャッタ部材8の少なくとも一方をクリーニング可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】第1実施形態に係る成膜装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】スリット部材の近傍を示す図であって、図2(A)はスリット部材近傍の側断面図、図2(B)はスリット部材近傍を+Z側から見た図である。
【図3】シャッタ部材を説明するための図である。
【図4】クリーニングシステムを説明するための図である。
【図5】スリット部材の開口に膜が形成されている状態を示す模式図である。
【図6】第2実施形態に係る成膜装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0133】
1…成膜装置、2…成膜室、3…成膜システム、5…蒸着源、6…スリット部材、6K…開口、7…第1保持装置、8…シャッタ部材、9…第2保持装置、10…クリーニングシステム、11…搬送システム、12…制御装置、13…クリーニング室、15…搬送室、16…第1搬送部材、17…第2搬送部材、18…第3搬送部材、19…第4搬送部材、21…第1通路、22…第2通路、23…第1開閉機構、24…第2開閉機構、27…第1検出装置、28…第2検出装置、30…第1クリーニング用ガス供給装置、31…放電室、P1…イオン粒子、P2…スパッタ粒子、T…ターゲット材料、W…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配向膜を形成する成膜装置であって、
前記基板を収容可能であり、該収容した基板上に前記配向膜を形成可能な第1室と、
前記第1室に配置され、前記基板上に前記配向膜を形成するための材料を供給可能な材料供給部と、
前記第1室に配置され、前記材料供給部と前記基板との間に所定部材が配置されるように該所定部材を着脱可能に保持する保持装置と、
前記第1室と別の位置に配置され、前記所定部材をクリーニング可能なクリーニングシステムと、
前記第1室の前記保持装置と前記クリーニングシステムとの間で前記所定部材を搬送する搬送システムと、を備えた成膜装置。
【請求項2】
前記クリーニングシステムは、前記所定部材を収容可能であり、該収容した所定部材をクリーニング可能な第2室を有する請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記搬送システムは、前記第1室と前記第2室との間に配置され、前記所定部材を保持して搬送可能な搬送部材を収容可能な第3室を有し、
前記第1室と第3室とを接続する第1通路と、前記第2室と前記第3室とを接続する第2通路と、前記第1通路を開閉可能な第1開閉機構と、前記第2通路を開閉可能な第2開閉機構とを有する請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記搬送システムは、前記保持装置から前記クリーニングシステムへ前記所定部材を保持して搬送する第1搬送部材と、
前記クリーニングシステムから前記保持装置へ前記所定部材を保持して搬送する第2搬送部材とを有する請求項1〜3のいずれか一項記載の成膜装置。
【請求項5】
前記クリーニングシステムは、前記所定部材に付着している前記材料を除去するための第1クリーニング動作を実行する第1クリーニング装置と、前記第1クリーニング動作後、前記所定部材に残留している物質を除去するための第2クリーニング動作を実行する第2クリーニング装置とを有する請求項1〜4のいずれか一項記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第1クリーニング装置は、前記所定部材から前記材料を除去可能な第1クリーニング用ガスを供給する請求項5記載の成膜装置。
【請求項7】
前記所定部材に付着している前記材料の量を検出可能な検出装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、クリーニング動作を制御する制御装置とを備えた請求項1〜6のいずれか一項記載の成膜装置。
【請求項8】
前記所定部材は、前記基板上における前記配向膜が形成される形成領域を設定する開口を有する設定部材を含む請求項1〜7のいずれか一項記載の成膜装置。
【請求項9】
前記所定部材は、前記材料供給部から前記基板へ向かう前記材料を遮断可能なシャッタ部材を含む請求項1〜7のいずれか一項記載の成膜装置。
【請求項10】
前記材料供給部は、前記配向膜を形成するための材料の蒸気を発生する蒸着源を含む請求項1〜9のいずれか一項記載の成膜装置。
【請求項11】
前記材料供給部は、イオン粒子でスパッタされ、前記配向膜を形成するためのスパッタ粒子を放出するターゲット材料を含む請求項1〜9のいずれか一項記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−71938(P2008−71938A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249315(P2006−249315)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】