説明

窒化物半導体装置

【課題】ゲート電極から染み出した金属がドレイン電極に到達することを抑制して、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を抑制する窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】ゲート電極5の直下に位置するAlGaN層22と、このAlGaN層22の直上に位置する絶縁膜30との間の界面Sに、ゲート電極5とドレイン電極1との間に位置するように、溝50を設けている。ゲート電極5から界面Sを伝ってドレイン電極1側へ染み出した金属を、溝50によって、堰き止めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窒化物半導体装置に関し、特に民生機器の電源回路等においてパワーデバイスとして用いられる窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窒化物半導体装置としては、図8に示すように、基板101と、この基板101上に設けられたGaN層102、AlGaN層103および絶縁膜104と、AlGaN層103上に設けられたソース電極105、ドレイン電極106およびゲート電極107とを備えたものがある(特開2007−73555号公報:特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の窒化物半導体装置では、上記ゲート電極107の直下に位置するAlGaN層103と、このAlGaN層103の直上に位置する上記絶縁膜104との間の界面Sが、平坦であるため、ゲート電極107から染み出した金属が、上記界面Sを伝って、ドレイン電極106に到達する問題があった。
【0004】
この結果、上記ゲート電極107と上記ドレイン電極106とが、染み出した金属によって繋がり、ドレイン−ゲート間で絶縁破壊が生じて、窒化物半導体層の寿命が低下することとなっていた。
【0005】
ここで、上記ゲート電極107から金属が染み出すことについて、考えられる理由を説明する。まず、上記ゲート電極107に対し、ホットエレクトロンが衝突し昇温されることで金属が動きやすい状態になる。そして、エレクトロマイグレーションによって、ゲート電極107から金属がドレイン電極106に向かって運搬される。ドレイン電極107に向かって染み出た金属は、ドレイン電極107に近くなるにつれて、より強い電界を受けて、さらに金属の染み出しが助長される。そして、最終的に、ゲート電極107とドレイン電極106とが、染み出した金属によって繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−73555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の課題は、ゲート電極から染み出した金属がドレイン電極に到達することを抑制して、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を抑制する窒化物半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の窒化物半導体装置は、
基板と、
上記基板上に設けられると共に少なくとも窒化物半導体層を含む複数の層と、
上記窒化物半導体層上に設けられると共に互いに間隔をおいて配置されたソース電極およびドレイン電極と、
上記窒化物半導体層上に設けられると共に上記ソース電極と上記ドレイン電極との間に配置されたゲート電極と
を備え、
上記ゲート電極の直下に位置する第1の層と、この第1の層の直上に位置する第2の層との間の界面に、上記ゲート電極と上記ドレイン電極との間に位置するように、段差を設けたことを特徴としている。
【0009】
この発明の窒化物半導体装置によれば、上記ゲート電極の直下に位置する第1の層と、この第1の層の直上に位置する第2の層との間の界面に、上記ゲート電極と上記ドレイン電極との間に位置するように、段差を設けているので、ゲート電極から上記界面を伝ってドレイン電極側へ染み出した金属を、上記段差によって、堰き止めることができる。このように、ゲート電極から染み出した金属が、ドレイン電極に到達することを抑制して、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0010】
したがって、窒化物半導体層の寿命を延ばすことができて、窒化物半導体層の信頼性を向上できる。
【0011】
また、一実施形態の窒化物半導体装置では、上記段差は、上記ドレイン電極よりも上記ゲート電極側に位置する。
【0012】
この実施形態の窒化物半導体装置によれば、上記段差は、上記ドレイン電極よりも上記ゲート電極側に位置するので、ドレイン電極と段差との間の距離を長くすることができ、ドレイン電極に向かって染み出た金属にかかる電界強度を抑制できて、さらなる金属の染み出しの助長を抑制できる。
【0013】
また、一実施形態の窒化物半導体装置では、上記段差は、上記ゲート電極の近傍に位置する。
【0014】
この実施形態の窒化物半導体装置によれば、上記段差は、上記ゲート電極の近傍に位置するので、ドレイン電極と段差との間の距離を一層長くすることができ、ドレイン電極に向かって染み出た金属にかかる電界強度を一層抑制できて、さらなる金属の染み出しの助長を一層抑制できる。
【0015】
また、一実施形態の窒化物半導体装置では、上記段差は、上記第1の層に設けられた溝により、形成されている。
【0016】
この実施形態の窒化物半導体装置によれば、上記段差は、上記第1の層に設けられた溝により、形成されているので、ゲート電極から染み出した金属を溝によって堰き止めることができる。
【0017】
また、一実施形態の窒化物半導体装置では、上記段差は、上記第1の層に設けられた突起により、形成されている。
【0018】
この実施形態の窒化物半導体装置によれば、上記段差は、上記第1の層に設けられた突起により、形成されているので、ゲート電極から染み出した金属を突起によって堰き止めることができる。
【0019】
また、一実施形態の窒化物半導体装置では、
上記第1の層は、上記窒化物半導体層であり、
上記第2の層は、絶縁膜である。
【0020】
この実施形態の窒化物半導体装置によれば、上記第1の層は、上記窒化物半導体層であり、上記第2の層は、絶縁膜であるので、ゲート電極と窒化物半導体層とのショットキー接合においても、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0021】
また、一実施形態の窒化物半導体装置では、
上記第1の層は、第1の絶縁膜であり、
上記第2の層は、第2の絶縁膜である。
【0022】
この実施形態の窒化物半導体装置によれば、上記第1の層は、第1の絶縁膜であり、上記第2の層は、第2の絶縁膜であるので、ゲート電極、第1の絶縁膜および窒化物半導体層のMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造においても、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0023】
また、一実施形態の窒化物半導体装置では、上記ゲート電極の材料は、Au,Ti,Pt,W,Al,Mo,Niのうちの少なくとも何れか一つを含む。
【0024】
この実施形態の窒化物半導体装置によれば、上記ゲート電極の材料は、Au,Ti,Pt,W,Al,Mo,Niのうちの少なくとも何れか一つを含むので、このゲート電極は、金属の染み出しの可能性を有することになる。このゲート電極を用いても、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の窒化物半導体装置によれば、上記ゲート電極の直下に位置する第1の層と、この第1の層の直上に位置する第2の層との間の界面に、上記ゲート電極と上記ドレイン電極との間に位置するように、段差を設けているので、ゲート電極から染み出した金属がドレイン電極に到達することを抑制して、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の窒化物半導体装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】窒化物半導体装置の電極パターンを示す平面図である。
【図3】窒化物半導体装置の電極パッドの位置を示す平面図である。
【図4】ゲート電極からの金属の染み出しを示す光学顕微鏡で撮影した写真である。
【図5】本発明の窒化物半導体装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の窒化物半導体装置の第3実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の窒化物半導体装置の第4実施形態を示す断面図である。
【図8】従来の窒化物半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の窒化物半導体装置の一実施形態である断面図を示している。この窒化物半導体装置は、HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)構造であり、例えば、民生機器の電源回路等においてパワーデバイスとして用いられる。
【0029】
図1に示すように、上記窒化物半導体装置は、基板10と、上記基板10上に設けられた窒化物半導体層20と、上記窒化物半導体層20上に設けられた(一の層としての)絶縁膜30と、上記窒化物半導体層20上に設けられたソース電極2、ドレイン電極1およびゲート電極5とを有する。
【0030】
上記ソース電極2および上記ドレイン電極1は、互いに間隔をおいて配置されている。上記ゲート電極5は、ソース電極2とドレイン電極1との間に配置されている。
【0031】
上記基板10は、Si基板である。上記窒化物半導体層20は、基板10側(下側)から順に、アンドープGaN層21とアンドープAlGaN層22とを有する。GaN層21は、いわゆるチャネル層であり、AlGaN層22は、いわゆるキャリア供給層である。GaN層21とAlGaN層22との界面に、2DEG(2次元電子ガス)が発生し、この2DEGをチャネルとして利用する。図中、2DEG層を点線で示している。
【0032】
上記絶縁膜30は、ゲート電極5を除くAlGaN層22上にAlGaN層22を保護する。この絶縁膜30の材料として、SiN、SiO、Alなどの材料を用いている。
【0033】
上記ソース電極2、上記ドレイン電極1および上記ゲート電極5上に、図示しない層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜上に図示しない電極パッドを形成している。この層間絶縁膜の材料として、ポリイミド、SOG、BPSGなどの絶縁材料を用いている。
【0034】
上記ゲート電極5の材料は、Au,Ti,Pt,W,Al,Mo,Niのうちの少なくとも何れか一つを含む。上記ソース電極2および上記ドレイン電極1の材料は、Au,Al,Hf,Ti,Ptのうちの少なくとも何れか一つを含む。
【0035】
上記ゲート電極5の直下には、AlGaN層22が位置しており、ゲート電極5と窒化物半導体層20との接合は、ショットキー接合となる。
【0036】
上記ゲート電極5の直下に位置するAlGaN層22と、このAlGaN層22の直上に位置する絶縁膜30との間の界面Sに、ゲート電極5とドレイン電極1との間に位置するように、段差としての溝50を設けている。この溝50は、AlGaN層22に設けられ、界面Sよりも下側に位置する。溝50は、例えば、エッチングにより形成される。
【0037】
上記溝50は、上記ゲート電極5の近傍に位置し、つまり、溝50は、ドレイン電極1よりもゲート電極5側に位置する。溝50の底面は、GaN層21とAlGaN層22との界面(つまり2DEG層)よりも、上側に位置する。
【0038】
一実施例として、上記GaN層21の厚みは、5.3μmであり、上記AlGaN層22の厚みは、22nmであり、上記溝50の深さは、数nm〜10nm程度であり、上記ソース電極2および上記ドレイン電極1の厚みは、3μm程度であり、上記ゲート電極5の厚みは、0.5μm程度である。
【0039】
次に、上記ソース電極2、上記ドレイン電極1および上記ゲート電極5の電極パターンを説明する。
【0040】
図2の平面図に示すように、上記ドレイン電極1は、第1直線状基部1aと、この第1直線状基部1aから両側方に延びた複数のくし状電極からなる第1くし状電極部1b,1cとを有する。
【0041】
一方の上記ソース電極2は、ドレイン電極1の左側方(一側方)に、ドレイン電極1の第1直線状基部1aに対して平行な第2直線状基部2aと、この第2直線状基部2aからドレイン電極1側に向かって延びた複数のくし状電極からなる第2くし状電極部2bとを有する。この一方のソース電極2の第2くし状電極部2bは、ドレイン電極1の第1くし状電極部1bと互いに間隔をあけて交互に配列されている。
【0042】
他方の上記ソース電極3は、ドレイン電極1の右側方(他側方)に、ドレイン電極1の第1直線状基部1aに対して平行な第3直線状基部3aと、この第3直線状基部3aからドレイン電極1側に向かって延びた複数のくし状電極からなる第3くし状電極部3bとを有する。この他方のソース電極3の第3くし状電極部3bは、ドレイン電極1の第1くし状電極部1cと互いに間隔をあけて交互に配列されている。
【0043】
上記一方のソース電極2の第2直線状基部2aの一端(図1の上側)と上記他方のソース電極3の第3直線状基部3aの一端(図1の上側)とを、接続電極6を介して、接続している。上記一方のソース電極2の第2直線状基部2aの他端(図1の下側)と上記他方のソース電極3の第3直線状基部3aの他端(図1の下側)とを、接続電極7を介して、接続している。
【0044】
上記ゲート電極5は、図示しないが、上記ドレイン電極1と上記一方のソース電極2との間、および、上記ドレイン電極1と上記他方のソース電極3との間を、折曲して延在している。なお、図2において、ソース電極2,3の位置とドレイン電極1の位置とを、互いに入れ替えてもよい。
【0045】
次に、上記ソース電極2、上記ドレイン電極1および上記ゲート電極5に接続された電極パッドを説明する。
【0046】
図3の平面図に示すように、上記ドレイン電極1には、コンタクト部を介して、第1の電極パッド11が接続される。この第1の電極パッド11は、ドレイン電極1の第1直線状基部1aおよび第1くし状電極部1b,1cの第1直線状基部1a側を含む領域に対応する層間絶縁膜上の領域に形成される。
【0047】
上記一方のソース電極2には、コンタクト部を介して、第2の電極パッド12が接続される。この第2の電極パッド12は、一方のソース電極2の第2くし状電極部2bの第2直線状基部2a側を含む領域に対応する層間絶縁膜上の領域に形成される。
【0048】
上記他方のソース電極3には、コンタクト部を介して、第3の電極パッド13が接続される。この第3の電極パッド13は、他方のソース電極3の第3くし状電極部3bの第3直線状基部3a側を含む領域に対応する層間絶縁膜上の領域に形成される。
【0049】
上記第1の電極パッド11の左上コーナーに切り欠き領域を設け、その切り欠き領域に、上記ゲート電極5に接続されるゲート電極パッド15を形成している。
【0050】
ここで、上記第1,上記第2,上記第3の電極パッド11,12,13および上記ゲート電極パッド15には、Ti/AuまたはTi/Alなどを用いている。
【0051】
上記第1,上記第2,上記第3の電極パッド11,12,13は、上記ドレイン電極1および上記ソース電極2,3が占める領域内でかつ第1,第2,第3くし状電極部1b,1c,2b,3bのある窒化物半導体層20(GaN層21、AlGaN層22)の活性領域に対応する層間絶縁膜上の領域に形成されている。
【0052】
上記第1,上記第2,上記第3の電極パッド11,12,13を窒化物半導体装置の活性領域上にコンタクト部により設けることによって、複数のフィンガーからの距離を略均等かつ短くすることができるので、配線抵抗をより小さくすることができる。また、窒化物半導体装置のサイズも最小限とすることができる。
【0053】
上記構成の窒化物半導体装置によれば、上記ゲート電極5の直下に位置するAlGaN層22と、このAlGaN層22の直上に位置する絶縁膜30との間の界面Sに、ゲート電極5とドレイン電極1との間に位置するように、溝50を設けているので、ゲート電極5から上記界面Sを伝ってドレイン電極1側へ染み出した金属を、上記溝50によって、堰き止めることができる。このように、ゲート電極5から染み出した金属が、ドレイン電極1に到達することを抑制して、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0054】
したがって、窒化物半導体層の寿命を延ばすことができて、窒化物半導体層の信頼性を向上できる。
【0055】
また、上記溝50は、上記ゲート電極5の近傍に位置するので、ドレイン電極1と溝50との間の距離を長くすることができ、ドレイン電極5に向かって染み出た金属にかかる電界強度を抑制できて、さらなる金属の染み出しの助長を抑制できる。
【0056】
また、上記ゲート電極5の材料は、Au,Ti,Pt,W,Al,Mo,Niのうちの少なくとも何れか一つを含むので、このゲート電極5は、金属の染み出しの可能性を有することになる。このゲート電極5を用いても、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0057】
ここで、比較例として、上記溝50を設けない窒化物半導体装置(図8参照)についての実験例を示す。
【0058】
図8の窒化物半導体装置において高温逆バイアス試験を行った。具体的に述べると、ノーマリーオンのゲート電極107をオフにするために、150℃の環境下、ドレイン電極106の印加電圧を600Vとし、ソース電極105および基板101の印加電圧を0Vとし、ゲート電極107の印加電圧を−10Vとした。
【0059】
そして、上記試験を長時間行ったとき、突然、ゲート−ドレイン間で絶縁破壊が生じた。20個の窒化物半導体装置において上記試験を行ったところ、8個の窒化物半導体装置において破壊が生じた。
【0060】
この破壊された窒化物半導体装置を光学顕微鏡で撮影したところ、図4に示すように、ゲート電極107から染み出した金属Mを確認した。この染み出した金属Mは、ゲート電極107からドレイン電極106に向かって線状に延びている。図中、わかりやすくするために、染み出した金属Mの先端を、点線にて示す。
【0061】
この原因として、ゲート電極107へ衝突するホットエレクトロンによる昇温、および、エレクトロマイグレーションによる金属の運搬作用によって、ゲート電極107から、リーク源となる絶縁膜104とAlGaN層103との間の界面Sを伝って、金属が染み出す。この金属の染み出しは、ゲート電極107の幅方向に一様ではなく、線状にドレイン電極106の方向に伸びるため、染みの先端には、強い電界強度が発生して、染みはさらに進行する。そして、ゲート電極107とドレイン電極106とが、染み出した金属によって繋がり、ドレイン−ゲート間で絶縁破壊が生じる。
【0062】
(第2の実施形態)
図5は、この発明の窒化物半導体装置の第2の実施形態を示している。上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第2の実施形態では、窒化物半導体層の構成が相違する。なお、この第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同一の符号は、上記第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0063】
図5に示すように、窒化物半導体層20Aは、基板10側(下側)から順に、GaN層21とAlGaN層22とGaNキャップ層23とを有する。このGaNキャップ層23の厚みは、例えば1nmである。ソース電極2、ドレイン電極1およびゲート電極5は、GaNキャップ層23上に位置する。
【0064】
上記ゲート電極5の直下に位置するGaNキャップ層23と、このGaNキャップ層23の直上に位置する絶縁膜30との間の界面Sに、ゲート電極5とドレイン電極1との間に位置するように、段差としての溝50Aを設けている。この溝50Aは、GaNキャップ層23およびAlGaN層22に設けられ、界面Sよりも下側に位置する。溝50Aの底面は、GaN層21とAlGaN層22との界面(つまり2DEG層)よりも、上側に位置する。なお、上記溝50Aを、GaNキャップ層23のみに設けてもよい。
【0065】
したがって、上記GaNキャップ層23を設けた場合でも、上記ゲート電極5から上記界面Sを伝って上記ドレイン電極1側へ染み出した金属を、上記溝50Aによって、堰き止めることができて、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0066】
(第3の実施形態)
図6は、この発明の窒化物半導体装置の第3の実施形態を示している。上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第3の実施形態では、段差の構成が相違する。なお、この第3の実施形態において、上記第1の実施形態と同一の符号は、上記第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0067】
図6に示すように、ゲート電極5の直下に位置するAlGaN層22と、このAlGaN層22の直上に位置する絶縁膜30との間の界面Sに、ゲート電極5とドレイン電極1との間に位置するように、段差としての突起50Bを設けている。この突起50Bは、AlGaN層22に設けられ、界面Sよりも上側に位置する。突起50Bの上面は、絶縁膜30の上面よりも、下側に位置する。突起50Bの高さは、例えば数nm〜10nm程度である。
【0068】
したがって、上記ゲート電極5から上記界面Sを伝って上記ドレイン電極1側へ染み出した金属を、上記突起50Bによって、堰き止めることができて、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0069】
(第4の実施形態)
図7は、この発明の窒化物半導体装置の第4の実施形態を示している。上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第4の実施形態では、窒化物半導体装置の構成が相違する。なお、この第4の実施形態において、上記第1の実施形態と同一の符号は、上記第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0070】
図7に示すように、ゲート電極5Aと窒化物半導体層20との間には、第1の絶縁膜30Aが設けられ、この第1の絶縁膜30A上に第2の絶縁膜30Bが設けられている。つまり、この窒化物半導体装置は、ゲート電極5A、第1の絶縁膜30Aおよび窒化物半導体層20のMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造を有する。
【0071】
上記ゲート電極5Aは、GaN層21とAlGaN層22との界面(つまり、2DEG層)に達する延在部5aを有する。
【0072】
上記ゲート電極5Aの直下に位置する第1の絶縁膜30Aと、この第1の絶縁膜30Aの直上に位置する第2の絶縁膜30Bとの間の界面Sに、ゲート電極5Aとドレイン電極1との間に位置するように、段差としての溝50Cを設けている。
【0073】
ここで、上記ゲート電極5Aは二段の下面を有する。このように、ゲート電極が複数段の下面を有する場合、「ゲート電極の直下に位置する」とは、「ゲート電極の最下面の直下に位置する」ことを示し、図7の場合、「ゲート電極5Aの延在部5aの下面の直下に位置する」ことを示す。
【0074】
この溝50Cは、第1の絶縁膜30AおよびAlGaN層22に設けられ、界面Sよりも下側に位置する。溝50Cの底面は、GaN層21とAlGaN層22との界面(つまり2DEG層)よりも、上側に位置する。なお、上記溝50Cを、第1の絶縁膜30Aのみに設けてもよい。
【0075】
したがって、MIS構造においても、上記ゲート電極5Aから上記界面Sを伝って上記ドレイン電極1側へ染み出した金属を、上記溝50Cによって、堰き止めることができて、ドレイン−ゲート間の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0076】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記第1から上記第4の実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0077】
また、本発明の窒化物半導体装置を、HEMT以外の電界効果トランジスタに用いてもよい。例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)、MESFET(Metal Semiconductor FET)等、種々のFETに対して、本発明は適用可能である。また、本発明は、耐圧MOSとしてのJFET(Junction FET)に対して、適用できる。また、FET以外にも、ショットキーダイオード等、各種ダイオードに対して、本発明は適用可能である。
【0078】
また、基板は、Si基板に限らず、サファイヤ基板やSiC基板を用いてもよく、サファイヤ基板やSiC基板上に窒化物半導体層を成長させてもよいし、GaN基板にAlGaN層を成長させる等のように、窒化物半導体からなる基板上に窒化物半導体層を成長させてもよい。また、ソース電極およびドレイン電極の電極パターンは、くし形状以外であってもよい。
【0079】
また、基板上に少なくとも窒化物半導体層を含む複数の層を設け、この複数の層のうち、ゲート電極の直下に位置する第1の層と、この第1の層の直上に位置する第2の層との間の界面に、ゲート電極とドレイン電極との間を遮る段差を設けてもよい。また、窒化物半導体層を構成する複数の層の数量は、上記実施形態では2つまたは3つであったが、この複数の層の数量の増減は、自由である。
【0080】
また、窒化物半導体層は、ゲート電極下に位置する第1領域と、ソース電極下に位置する第2領域と、ドレイン電極下に位置する第3領域とを有し、第1領域、第2領域および第3領域において、窒化物半導体層の厚みや、窒化物半導体層を構成する層の数量が、相違するようにしてもよい。例えば、第1領域が、GaN層とAlGaN層とからなり、第2、第3領域が、GaN層からなるようにしてもよく、この場合、ゲート電極は、AlGaN層に接触し、ソース電極およびドレイン電極は、GaN層に接触する。
【符号の説明】
【0081】
1 ドレイン電極
1a 第1直線状基部
1b,1c 第1くし状電極部
2 一方のソース電極
2a 第2直線状基部
2b 第2くし状電極部
3 他方のソース電極
3a 第3直線状基部
3b 第3くし状電極部
5,5A ゲート電極
5a 延在部
10 基板
11 第1の電極パッド
12 第2の電極パッド
13 第3の電極パッド
15 ゲート電極パッド
20,20A 窒化物半導体層
21 GaN層
22 AlGaN層
23 GaNキャップ層
30 絶縁膜
30A 第1の絶縁膜
30B 第2の絶縁膜
50,50A,50C 溝(段差)
50B 突起(段差)
S 界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に設けられると共に少なくとも窒化物半導体層を含む複数の層と、
上記窒化物半導体層上に設けられると共に互いに間隔をおいて配置されたソース電極およびドレイン電極と、
上記窒化物半導体層上に設けられると共に上記ソース電極と上記ドレイン電極との間に配置されたゲート電極と
を備え、
上記ゲート電極の直下に位置する第1の層と、この第1の層の直上に位置する第2の層との間の界面に、上記ゲート電極と上記ドレイン電極との間に位置するように、段差を設けたことを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化物半導体装置において、
上記段差は、上記ドレイン電極よりも上記ゲート電極側に位置することを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化物半導体装置において、
上記段差は、上記ゲート電極の近傍に位置することを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の窒化物半導体装置において、
上記段差は、上記第1の層に設けられた溝により、形成されていることを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一つに記載の窒化物半導体装置において、
上記段差は、上記第1の層に設けられた突起により、形成されていることを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載の窒化物半導体装置において、
上記第1の層は、上記窒化物半導体層であり、
上記第2の層は、絶縁膜であることを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一つに記載の窒化物半導体装置において、
上記第1の層は、第1の絶縁膜であり、
上記第2の層は、第2の絶縁膜であることを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つに記載の窒化物半導体装置において、
上記ゲート電極の材料は、Au,Ti,Pt,W,Al,Mo,Niのうちの少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする窒化物半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−109366(P2012−109366A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256472(P2010−256472)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】