説明

計測方法、露光方法及び露光装置、並びにデバイス製造方法

【課題】位置計測系の周期誤差が発生しても、精度良く周期パターンの位置を検出する。
【解決手段】可動ステージの位置を位置計測系を用いて計測し、その計測情報を用いて可動ステージを駆動するとともに、可動ステージ外の周期パターンから成る計測用マークを可動ステージに一部が配置された検出器を用いて検出する。ここで、位置計測系の計測周期(図10(B)及び10(C)に示される例では0.25μm)の自然数倍と異なるピッチ(図10(C)の例では2.03125μm(なお、図10(B)の例では2μm))の周期パターンを計測用マークとして用いることにより、計測周期に等しい位置計測系の周期誤差が発生しても、検出精度を損なうことなく、計測用マークの位置情報を計測することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、露光方法及び露光装置、並びにデバイス製造方法に係り、さらに詳しくは、周期パターンの位置情報を計測する計測方法、該方法を利用する露光方法及び該露光方法を実施する露光装置、並びに前記露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、フォトマスク又はレチクル(以下、「レチクル」と総称する)のパターンを、投影光学系を介して、フォトレジスト等の感光剤が塗布されたウエハ、ガラスプレート等の被露光物体(以下、「ウエハ」と総称する)上に転写する例えば、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャナ)等の投影露光装置が、主として用いられている。
【0003】
半導体素子等は、デバイスパターンを十数層以上重ね合わせて形成されるため、投影露光装置では、レチクルに形成されたパターンとウエハ上に既に形成されたパターンとを正確に位置合わせすることが要求される。このため、レチクルのパターンの投影位置とウエハ上のマークを検出するマーク検出系の検出中心との距離(ベースライン)を計測するベースライン計測(該計測動作の一部にレチクルのパターンの投影位置を計測するレチクルアライメントが含まれる)が行われる。このレチクルアライメントの方法として、レチクル上の計測マークの空間像をウエハステージ上に少なくとも一部(計測用スリットを含む)が設けられた空間像計測器を用いて計測する方法が、最近の露光装置では、採用されていることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかるに、空間像計測器を用いて計測マークの空間像を計測する場合、空間像計測器の計測用スリットが設けられたウエハステージを移動させながら計測する必要があるが、このウエハステージの位置は、エンコーダ(又は干渉計)などの計測器を用いて計測される。デバイスルールの微細化に伴い、最近になって、計測器の計測誤差、特に周期的な計測誤差(周期誤差)が、空間像計測において無視できない程度のマーク像の結像位置の計測誤差の要因となることが判明した。空間像計測に限らず、移動体を移動させながら、周期マークの位置を計測する場合には、同様の問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0088843号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、周期パターンの位置情報を計測する計測方法であって、移動体と該移動体の外部との一方に配置された周期パターンの周期方向に関する位置情報を、前記移動体を前記周期パターンの周期方向に駆動しつつ、前記周期方向に関する前記移動体の位置を計測する位置計測系の出力と、前記移動体と該移動体の外部との他方に少なくともその一部が設けられ、前記周期パターンを検出する検出系の出力とに基づいて計測する工程を含み、前記計測する工程では、前記計測中、前記周期パターンのピッチと前記位置計測系の計測周期とが、前記位置計測系の周期誤差が、前記周期パターンの位置の計測誤差の要因とならない所定の関係を満たす計測方法が、提供される。
【0007】
ここで、位置計測系の周期誤差が、前記周期パターンの位置の計測誤差の要因とならない所定の関係を満たすように、予め、周期パターンのピッチ及び位置計測系の計測周期の一方を他方に基づいて設定しても良いし、あるいは計測中に移動体と移動体の外部との少なくとも一方の駆動速度を調整しても良い。
【0008】
本発明の計測方法によれば、周期的な計測誤差(周期誤差)を発生する位置計測系(例えばエンコーダなど)を用いて移動体の位置計測を行っても、周期パターンの位置計測を精度良く行うことが可能となる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、エネルギビームにより物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光方法であって、本発明の計測方法により前記周期パターンの位置情報を計測することと;前記周期パターンの位置情報の計測結果に基づいて前記物体を保持する移動体を駆動し、前記エネルギビームにより前記物体を露光することと;を含む露光方法が、提供される。
【0010】
これによれば、本発明の計測方法により高精度な周期パターンの位置計測を精度良く行うことができるので、その位置情報の計測結果に基づいて物体を保持する移動体を駆動し、エネルギビームにより前記物体を露光することで、高精度な露光が可能となる。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、本発明の露光方法により物体を露光することと;
露光された前記物体を露光することと;を含むデバイス製造方法が、提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、エネルギビームにより物体を露光して前記物体上にデバイスパターンを形成する露光装置であって、前記物体を保持して移動する移動体と;
前記移動体の位置を計測する位置計測系と;前記移動体と該移動体の外部との一方に少なくともその一部が設けられ、パターン又はパターン像を検出する検出系と;前記移動体と該移動体の外部との他方に配置された周期パターンの周期方向に前記移動体を駆動しつつ、前記位置計測系で計測される前記移動体の位置の計測情報と、前記周期パターン又はその像を検出する前記検出系の出力とに基づいて、前記周期パターンの周期方向に関する位置情報を計測する制御装置と;を備え、前記計測中、前記周期パターンのピッチと前記位置計測系の計測周期とが、前記位置計測系の周期誤差が、前記周期パターンの位置の計測誤差の要因とならない所定の関係を満たす露光装置が、提供される。
【0013】
ここで、位置計測系の周期誤差が、前記周期パターンの位置の計測誤差の要因とならない所定の関係を満たすように、予め、周期パターンのピッチ及び位置計測系の計測周期の一方を他方に基づいて設定しても良いし、あるいは計測中に移動体と移動体の外部との少なくとも一方の駆動速度を調整しても良い。
【0014】
本発明の露光装置によれば、周期的な計測誤差(周期誤差)を発生する位置計測系(例えばエンコーダなど)を用いて移動体の位置計測を行っても、周期パターンの位置計測を精度良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】ウエハステージを示す平面図である。
【図3】図1の露光装置が備えるステージ装置及び干渉計の配置を示す平面図である。
【図4】図1の露光装置が備える干渉計システム以外の計測装置をウエハステージとともに示す平面図である。
【図5】エンコーダヘッド(Xヘッド、Yヘッド)とアライメント系の配置を示す平面図である。
【図6】一実施形態に係る露光装置の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
【図7】エンコーダの構成の一例を示す図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、エンコーダの計測結果の解析方法を説明するための図である。
【図9】図9(A)はウエハテーブル上に設けられた空間像計測用スリット板を示す図、図9(B)はレチクルステージ上に設けられた計測マークを示す図、図9(C)及び図9(D)は計測マークの投影像(空間像)に対する空間像計測用スリットの走査を説明するための図である。
【図10】図10(A)は計測マークの空間像の検出結果(その1)を示す図、図10(B)は検出結果(その1)を0.25μm単位でプロットした図、図10(C)は計測マークの空間像の検出結果(その2)を0.25μm単位でプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図10(C)に基づいて説明する。
【0017】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では投影光学系PLが設けられている。以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルRとウエハWとが相対走査される走査方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0018】
露光装置100は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハステージWSTを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。図1では、ウエハステージWST上にウエハWが載置されている。
【0019】
照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明系10の構成は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されている。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0020】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図6参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0021】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)116によって、移動鏡15(又はレチクルステージRSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図6参照)に送られる。
【0022】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10によってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、その第2面(像面)側に配置される表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、レチクルR及び投影光学系PLによってウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0023】
ステージ装置50は、図1に示されるように、ベース盤12上に配置されたウエハステージWST、ウエハステージWSTの位置情報を計測する計測システム200(図6参照)、及びウエハステージWSTを駆動するステージ駆動系124(図6参照)等を備えている。計測システム200は、図6に示されるように、干渉計システム118及びエンコーダシステム150などを含む。
【0024】
ウエハステージWSTは、不図示の非接触軸受、例えばエアベアリングなどにより、数μm程度のクリアランスを介して、ベース盤12の上方に支持されている。また、ウエハステージWSTは、リニアモータ等を含むステージ駆動系124(図6参照)によって、X軸方向及びY軸方向に所定ストロークで駆動可能である。
【0025】
ウエハステージWSTは、ステージ本体91と、該ステージ本体91上に搭載されたウエハテーブルWTBとを含む。このウエハテーブルWTB及びステージ本体91は、リニアモータ及びZ・レベリング機構(ボイスコイルモータなどを含む)を含む駆動系によって、ベース盤12に対し、6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)に駆動可能に構成されている。
【0026】
ウエハテーブルWTBの上面の中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。図2に示されるように、ウエハテーブルWTB上面のウエハホルダ(ウエハW)の+Y側には、計測プレート30が設けられている。この計測プレート30には、中央に基準マークFMが設けられ、基準マークFMのX軸方向の両側に一対の空間像計測用スリット板SLが、設けられている。各空間像計測用スリット板SLには、図9(A)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.2μm)のライン状の開口パターン(Xスリット)SLXと、X軸方向を長手方向とする所定幅(例えば、0.2μm)のライン状の開口パターン(Yスリット)SLYと、が形成されている。
【0027】
そして、各空間像計測用スリット板SLに対応して、ウエハテーブルWTBの内部には、レンズ等を含む光学系及び光電子増倍管(フォト・マルチプライヤ・チューブ(PMT))等の受光素子が配置され、米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されるものと同様の一対の空間像計測装置45A,45B(図6参照)が設けられている。空間像計測装置45A,45Bの計測結果(受光素子の出力信号)は、信号処理装置(不図示)により所定の信号処理が施されて、主制御装置20に送られる(図6参照)。
【0028】
また、ウエハテーブルWTB上面には、後述するエンコーダシステム150で用いられるスケールが形成されている。詳述すると、ウエハテーブルWTB上面のX軸方向(図2における紙面内左右方向)の一側と他側の領域には、それぞれYスケール39Y1,39Y2が形成されている。Yスケール39Y1,39Y2は、例えば、X軸方向を長手方向とする格子線38が所定ピッチでY軸方向に配列された、Y軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0029】
同様に、ウエハテーブルWTB上面のY軸方向(図2における紙面内上下方向)の一側と他側の領域には、Yスケール39Y1及び39Y2に挟まれた状態で、Xスケール39X1,39X2がそれぞれ形成されている。Xスケール39X1,39X2は、例えば、Y軸方向を長手方向とする格子線37が所定ピッチでX軸方向に配列された、X軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0030】
なお、格子線37,38のピッチは、例えば1μmと設定される。図2及びその他の図においては、図示の便宜上から、格子のピッチは実際のピッチよりも大きく図示されている。
【0031】
また、回折格子を保護するために、低熱膨張率のガラス板でカバーすることも有効である。ここで、ガラス板としては、厚さがウエハと同程度、例えば厚さ1mmのものを用いることができ、そのガラス板の表面がウエハの表面と同じ高さ(同一面)になるよう、ウエハテーブルWTB上面に設置される。
【0032】
また、ウエハテーブルWTBの−Y端面,−X端面には、図2に示されるように、後述する干渉計システムで用いられる反射面17a,反射面17bが形成されている。
【0033】
また、ウエハテーブルWTBの+Y側の面には、図2に示されるように、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書に開示されるCDバーと同様の、X軸方向に延びるフィデューシャルバー(以下、「FDバー」と略述する)46が取り付けられている。FDバー46の長手方向の一側と他側の端部近傍には、センターラインLLに関して対称な配置で、Y軸方向を周期方向とする基準格子(例えば回折格子)52がそれぞれ形成されている。また、FDバー46の上面には、複数の基準マークMが形成されている。各基準マークMとしては、後述するアライメント系によって検出可能な寸法の2次元マークが用いられている。
【0034】
本実施形態の露光装置100では、図4及び図5に示されるように、投影光学系PLの光軸AXを通るY軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LV上で、光軸AXから−Y側に所定距離隔てた位置に検出中心を有するプライマリアライメント系AL1が配置されている。プライマリアライメント系AL1は、不図示のメインフレームの下面に固定されている。図5に示されるように、プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、基準軸LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL21,AL22と、AL23,AL24とがそれぞれ設けられている。セカンダリアライメント系AL21〜AL24は、可動式の支持部材を介してメインフレーム(不図示)の下面に固定されており、駆動機構601〜604(図6参照)により、X軸方向に関してそれらの検出領域の相対位置が調整可能となっている。
【0035】
本実施形態では、アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれとして、例えば画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。アライメント系AL1,AL21〜AL24のそれぞれからの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。
【0036】
干渉計システム118は、図3に示されるように、反射面17a又は17bにそれぞれ干渉計ビーム(測長ビーム)を照射し、その反射光を受光して、ウエハステージWSTのXY平面内の位置を計測するY干渉計16と、3つのX干渉計126〜128と、一対のZ干渉計43A,43Bとを備えている。詳述すると、Y干渉計16は、基準軸LVに関して対称な一対の測長ビームB41,B42を含む少なくとも3つのY軸に平行な測長ビームを反射面17a、及び後述する移動鏡41に照射する。また、X干渉計126は、図3に示されるように、光軸AXと基準軸LVとに直交するX軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LHに関して対称な一対の測長ビームB51,B52を含む少なくとも3つのX軸に平行な測長ビームを反射面17bに照射する。また、X干渉計127は、アライメント系AL1の検出中心にて基準軸LVと直交するX軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LAを測長軸とする測長ビームB6を含む少なくとも2つのX軸に平行な測長ビームを反射面17bに照射する。また、X干渉計128は、X軸に平行な測長ビームB7を反射面17bに照射する。
【0037】
干渉計システム118の各干渉計からの位置情報は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、Y干渉計16及びX干渉計126又は127の計測結果に基づいて、ウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のX,Y位置に加え、θx方向の回転(すなわちピッチング)、θy方向の回転(すなわちローリング)、及びθz方向の回転(すなわちヨーイング)も算出することができる。
【0038】
また、図1に示されるように、ステージ本体91の−Y側の側面に、凹形状の反射面を有する移動鏡41が取り付けられている。移動鏡41は、図2からわかるように、X軸方向の長さがウエハテーブルWTBの反射面17aよりも、長く設計されている。
【0039】
移動鏡41に対向して、干渉計システム118(図6参照)の一部を構成する一対のZ干渉計43A,43Bが設けられている(図1及び図3参照)。Z干渉計43A,43Bは、それぞれ2つのY軸に平行な測長ビームB1,B2を移動鏡41に照射し、該移動鏡41を介して測長ビームB1,B2のそれぞれを、例えば投影ユニットPUを支持するフレーム(不図示)に固定された固定鏡47A,47Bに照射する。そして、それぞれの反射光を受光して、測長ビームB1,B2の光路長を計測する。その結果より、主制御装置20は、ウエハステージWSTの4自由度(Y,Z,θy,θz)方向の位置を算出する。
【0040】
本実施形態では、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、主として、後述するエンコーダシステム150及び面位置計測システム180を用いて計測される。干渉計システム118は、ウエハステージWSTがエンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測領域外(例えば、アンローディングポジションとローディングポジション付近)に位置する際に、使用される。また、エンコーダシステム150及び面位置計測システム180の計測結果の長期的変動(例えばスケールの経時的な変形などによる)を補正(較正)する場合などに補助的に使用される。勿論、干渉計システム118とエンコーダシステム150及び面位置計測システム180とを併用して、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)の全位置情報を計測することとしても良い。
【0041】
本実施形態の露光装置100には、干渉計システム118とは独立に、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を計測するために、エンコーダシステム150を構成する複数のヘッドユニットが設けられている。
【0042】
図4に示されるように、投影ユニットPUの+X側、+Y側、−X側、及びプライマリアライメント系AL1の−Y側に、4つのヘッドユニット62A、62B、62C、及び62Dが、それぞれ配置されている。また、アライメント系AL1、AL21〜AL24のX軸方向の両外側にヘッドユニット62E、62Fが、それぞれ設けられている。ヘッドユニット62A〜62Fは、支持部材を介して、投影ユニットPUを保持するメインフレーム(不図示)に吊り下げ状態で固定されている。なお、図4において、符号UPは、ウエハステージWST上にあるウエハのアンロードが行われるアンローディングポジションを示し、符号LPは、ウエハステージWST上への新たなウエハのロードが行われるローディングポジションを示す。
【0043】
ヘッドユニット62A及び62Cは、図5に示されるように、前述の基準軸LH上に間隔WDで配置された複数(ここでは5個)のYヘッド651〜655、Yヘッド641〜645を、それぞれ備えている。以下では、必要に応じて、Yヘッド651〜655及びYヘッド641〜645を、それぞれ、Yヘッド65及びYヘッド64とも表記する。
【0044】
ヘッドユニット62A,62Cは、Yスケール39Y1,39Y2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY軸方向の位置(Y位置)を計測する多眼のYリニアエンコーダ70A,70C(図6参照)を構成する。なお、以下では、Yリニアエンコーダを、適宜、「Yエンコーダ」又は「エンコーダ」と略記する。
【0045】
ヘッドユニット62Bは、図5に示されるように、投影ユニットPUの+Y側に配置され、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4個)のXヘッド665〜668を備えている。また、ヘッドユニット62Dは、プライマリアライメント系AL1の−Y側に配置され、基準軸LV上に間隔WDで配置された複数(ここでは4個)のXヘッド661〜664を備えている。以下では、必要に応じて、Xヘッド665〜668及びXヘッド661〜664をXヘッド66とも表記する。
【0046】
ヘッドユニット62B,62Dは、Xスケール39X1,39X2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX軸方向の位置(X位置)を計測する多眼のXリニアエンコーダ70B,70D(図6参照)を構成する。なお、以下では、Xリニアエンコーダを、適宜、「Xエンコーダ」又は「エンコーダ」と略記する。
【0047】
ここで、ヘッドユニット62A,62Cがそれぞれ備える5個のYヘッド65,64(より正確には、Yヘッド65,64が発する計測ビームのスケール上の照射点)のX軸方向の間隔WDは、露光の際などに、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するYスケール39Y1,39Y2に対向する(計測ビームを照射する)ように定められている。同様に、ヘッドユニット62B,62Dがそれぞれ備える隣接するXヘッド66(より正確には、Xヘッド66が発する計測ビームのスケール上の照射点)のY軸方向の間隔WDは、露光の際などに、少なくとも1つのヘッドが、常に、対応するXスケール39X1又は39X2に対向する(計測ビームを照射する)ように定められている。
【0048】
なお、ヘッドユニット62Bの最も−Y側のXヘッド665とヘッドユニット62Dの最も+Y側のXヘッド664との間隔は、ウエハステージWSTのY軸方向の移動により、その2つのXヘッド間で切り換え(つなぎ)が可能となるように、ウエハテーブルWTBのY軸方向の幅よりも狭く設定されている。
【0049】
ヘッドユニット62Eは、図5に示されるように、複数(ここでは4個)のYヘッド671〜674を備えている。
【0050】
ヘッドユニット62Fは、複数(ここでは4個)のYヘッド681〜684を備えている。Yヘッド681〜684は、基準軸LVに関して、Yヘッド674〜671と対称な位置に配置されている。以下では、必要に応じて、Yヘッド674〜671及びYヘッド681〜684を、それぞれYヘッド67及びYヘッド68とも表記する。
【0051】
アライメント計測の際には、少なくとも各1つのYヘッド67,68が、それぞれYスケール39Y2,39Y1に対向する。このYヘッド67,68(すなわち、これらYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダ70E,70F(図6参照))によってウエハステージWSTのY位置(及びθz回転)が計測される。
【0052】
また、本実施形態では、セカンダリアライメント系のベースライン計測時などに、セカンダリアライメント系AL21,AL24にX軸方向でそれぞれ隣接するYヘッド673,682が、FDバー46の一対の基準格子52とそれぞれ対向し、その一対の基準格子52と対向するYヘッド673,682によって、FDバー46のY位置が、それぞれの基準格子52の位置で計測される。以下では、一対の基準格子52にそれぞれ対向するYヘッド673,682によって構成されるエンコーダをYリニアエンコーダ70E2,70F2と呼ぶ。また、識別のため、Yスケール39Y2,39Y1に対向するYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダを、Yエンコーダ70E1、70F1と呼ぶ。
【0053】
エンコーダシステム150(図6参照)を構成するエンコーダ70A〜70Fのヘッド(641〜645,651〜655,661〜668,671〜67,681〜684)として、例えば、米国特許7,238,931号明細書、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されている干渉型のエンコーダヘッドが用いられている。回折干渉型のエンコーダヘッドについては、後に詳述する。
【0054】
上述したエンコーダ70A〜70Fの計測値は、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、エンコーダ70A〜70Dのうちの3つ、又はエンコーダ70E1,70F1,70B及び70Dのうちの3つの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのXY平面内での位置(X,Y,θz)を算出する。
【0055】
また、主制御装置20は、リニアエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(ウエハステージWST)のθz方向の回転を制御する。
【0056】
この他、本実施形態の露光装置100では、投影ユニットPUの近傍に、ウエハW表面のZ位置を多数の検出点で検出するための照射系90a及び受光系90bから成る多点焦点位置検出系(以下、「多点AF系」と略述する)が設けられている。多点AF系としては、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点AF系が採用されている。なお、多点AF系の照射系90a及び受光系90bを、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されるように、ヘッドユニット62A,62Bの近傍に配置し、ウエハアライメント時にウエハWをY軸方向に1回スキャンするだけで、ウエハWのほぼ全面でZ軸方向の位置情報(面位置情報)を計測する(フォーカスマッピングを行う)ようにしても良い。この場合、ウエハテーブルWTBのZ位置を、そのフォーカスマッピング中に計測する面位置計測系を設けることが望ましい。
【0057】
図6には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。この制御系は、装置全体を統括的に制御するマイクロコンピュータ(又はワークステーション)から成る主制御装置20を中心として構成されている。
【0058】
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100では、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書の実施形態中に開示されている手順と同様の手順に従って、アンローディングポジションUP(図4参照)でのウエハWのアンロード、ローディングポジションLP(図4参照)での新たなウエハWのウエハテーブルWTB上へのロード、計測プレート30の基準マークFMとプライマリアライメント系AL1とを用いたプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック前半の処理、エンコーダシステム及び干渉計システムの原点の再設定(リセット)、アライメント系AL1,AL21〜AL24を用いたウエハWのアライメント計測、空間像計測装置45A,45Bを用いたプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック後半の処理、並びにアライメント計測の結果求められるウエハ上の各ショット領域の位置情報と、最新のアライメント系のベースラインとに基づく、ステップ・アンド・スキャン方式でのウエハW上の複数のショット領域の露光などの、ウエハステージWSTを用いた一連の処理が、主制御装置20によって実行される。なお、詳細説明については省略する。
【0059】
なお、セカンダリアライメント系AL21〜AL24のベースライン計測は、適宜なタイミングで、米国特許出願公開第2008/0088843号明細書に開示される方法と同様に、前述のエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46(ウエハステージWST)のθz回転を調整した状態で、アライメント系AL1、AL21〜AL24を用いて、それぞれの視野内にあるFDバー46上の基準マークMを同時に計測することで行われる。
【0060】
本実施形態では、主制御装置20は、エンコーダシステム150(図6参照)を用いることにより、ウエハステージWSTの有効ストローク領域、すなわちアライメント及び露光動作のためにウエハステージWSTが移動する領域において、その3自由度(X,Y,θz)方向の位置を計測することができる。
【0061】
図7には、エンコーダ70A〜70Fを代表して、エンコーダ70Cの構成が示されている。以下では、このエンコーダ70C(ヘッドユニット62C)を取り上げて、エンコーダの構成及び計測原理等について説明する。なお、図7では、エンコーダ70Cを構成するヘッドユニット62Cの1つのYヘッド64からYスケール39Y2に対し計測ビームが照射されている。
【0062】
Yヘッド64は、大別すると、照射系64a、光学系64b、及び受光系64cの3部分から構成されている。照射系64aは、レーザビームLBを射出する光源、例えば半導体レーザLDと、レーザビームLBの光路上に配置されたレンズL1と、を含む。光学系64bは、偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と記述する)WP1a,WP1b、及び反射ミラーR2a,R2b等を備えている。受光系64cは、偏光子(検光子)及び光検出器等を含む。
【0063】
半導体レーザLDから射出されたレーザビームLBはレンズL1を介して偏光ビームスプリッタPBSに入射し、2つの計測ビームLB1,LB2に偏光分離される。ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLB1は反射ミラーR1aを介してYスケール39Y1に形成された反射型回折格子RGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLB2は反射ミラーR1bを介して反射型回折格子RGに到達する。
【0064】
計測ビームLB1,LB2の照射によって回折格子RGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームは、それぞれ、レンズL2b,L2aを介してλ/4板WP1b,WP1aにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2b,R2aにより反射されて再度λ/4板WP1b,WP1aを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに向かう。
【0065】
偏光ビームスプリッタPBSに向かう2つの回折ビームの偏光方向は、元の偏光方向から90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLB1に由来する回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射される。一方、先に偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLB2に由来する回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過して計測ビームLB1の1次回折ビームと同軸上に集光される。そして、これら2つの回折ビームが、出力ビームLBとして受光系64cに送光される。
【0066】
受光系64cに送光された出力ビームLB中の2つの回折ビーム(正確には、計測ビームLB1,LB2にそれぞれ由来する出力ビームLBのS,P偏光成分)は、受光系64c内部の検光子(不図示)によって偏光方向が揃えられて干渉光となる。さらに、例えば米国特許出願公開第2003/0202189号明細書などに開示されているように、その干渉光は4つに分岐される。分岐された4つの光は、それぞれの位相が相対的に0,π/2,π,3π/2シフトされた後、光検出器(不図示)によって受光されて、それぞれの光強度(I,I,I,Iとする)に応じた電気信号に変換され、Yエンコーダ70Cの出力として、主制御装置20に送られる。
【0067】
主制御装置20は、Yエンコーダ70Cの出力から、Yヘッド64とスケール39Y1間の相対変位ΔYを求める。ここで、本実施形態における相対変位ΔYの算出方法について、その原理を含め、詳述する。簡単のため、計測ビームLB1,LB2の強度は互いに等しい状況を考える。この状況において、出力I〜Iは、次のように表される。
【0068】
=A(1+cos(φ))∝I …(1a)
=A(1+cos(φ+π/2)) …(1b)
=A(1+cos(φ+π)) …(1c)
=A(1+cos(φ+3π/2)) …(1d)
ここで、φは、計測ビームLB1,LB2(それらに由来する出力ビームLBのS,P偏光成分)の間の位相差である。
【0069】
主制御装置20は、出力I〜Iから、次式(2a)、(2b)で表される差I13,I42を求める。
【0070】
13=I−I=2Acos(φ) …(2a)
42=I−I=2Asin(φ) …(2b)
なお、差I13,I42は、光学回路(又は電気回路)を光検出器内に導入し、それを用いて光学的(又は電気的)に求めても良い。
【0071】
ここで、Yエンコーダ70C(ヘッド64)の出力I〜Iの修正の原理を説明するため、図8(A)に示されるように、直交座標系上にプロットされた点ρ(I13,I42)の動きを考える。なお、図8(A)及び図8(B)では、点ρ(I13,I42)がベクトルρを用いて表され、点ρ(I13,I42)の位相がφと表記されている。ベクトルρの長さ、すなわち点ρ(I13,I42)の原点Oからの距離は2Aである。
【0072】
理想状態では、干渉光LBの強度Iは常に一定である。従って、出力I,I,I,Iの振幅Aも常に一定である。そのため、図8(A)において、点ρ(I13,I42)は、干渉光LBの強度Iの変化(すなわち出力I〜Iの変化)とともに、原点からの距離(半径)が2Aの円周上を移動する。
【0073】
また、理想状態では、干渉光LBの強度Iは、Yスケール39Y1(すなわちウエハステージWST)が計測方向(回折格子の周期方向、すなわちY軸方向)に変位することにより、正弦的に変化する。同様に、4つの分岐光の強度I,I,I,Iは、それぞれ式(1a),(1b),(1c),(1d)で表されるように、正弦的に変化する。この理想状態では、位相差φは、図8(A)における点ρ(I13,I42)の位相φと等価である。位相差φ(以下では、特に区別する必要が無い限り、位相と呼ぶ)は、相対変位ΔYに対し、次のように変化する。
【0074】
φ(ΔY)=2πΔY/(p/4n)+φ …(3)
ここで、pはスケール39Y1が有する回折格子のピッチ、nは回折次数(例えばn=1)、φは境界条件(例えば変位ΔYの基準位置の定義など)より定まる定位相である。
【0075】
式(3)より、位相φは、計測ビームLB1,LB2の波長に依存しないことがわかる。また、位相φは、変位ΔYが計測単位p/4n増加(減少)する毎に2π増加(減少)することがわかる。従って、干渉光LBの強度I及び出力I,I,I,Iは、変位ΔYが計測単位増加又は減少する毎に、振動することがわかる。
【0076】
式(3)によって表わされる位相φと変位ΔYとの関係及び式(1a)〜(1d)によって表される出力I〜Iと位相φとの関係(すなわち差I13,I42と変位ΔYとの関係)より、変位ΔYの増加に応じて、点ρ(I13,I42)は、半径2Aの円周上を、例えば図8(B)に示されるように点aから点bへと、左回りに回転する。逆に、変位ΔYの減少に応じて、点ρ(I13,I42)は、上記円周上を右回りに回転する。そして、点ρ(I13,I42)は、変位ΔYが計測単位増加(減少)する毎に、円周上を一周する。
【0077】
そこで、主制御装置20は、予め定められた基準位相(例えば定位相φ)を基準にして、点ρ(I13,I42)の周回数を数える。この周回数は、干渉光LBの強度Iの振動回数に等しい。その計数値(カウント値)をcΔYと表記する。さらに、主制御装置20は、点ρ(I13,I42)の基準位相に対する位相の変位φ’=φ−φを求める。これらのカウント値cΔYと位相変位φ’から、変位ΔYの計測値CΔYが、次のように求められる。
【0078】
ΔY=(p/4n)×(cΔY+φ’/2π) …(4)
ここで、定位相φを位相オフセット(ただし、0≦φ<2πと定義する)とし、変位ΔYの基準位置での位相φ(ΔY=0)を保持することとする。
【0079】
以上の説明より明らかなように、Yエンコーダ70Cは、計測単位λ=p/4nに等しい計測周期を有する。
【0080】
なお、例えば迷光との干渉が生じる等により、位相φと変位ΔYとの比例関係が崩れることがある。その場合、見かけ上、上述のような理想的な出力I〜Iであっても、変位ΔYの計測値CΔYに対して、計測周期に等しい周期の誤差が発生し得る。また、出力I〜Iが理想的な出力からずれると、位相φの算出誤差が発生するため、計測周期に等しい周期の誤差が発生し得る。これらのような計測周期に等しい周期の誤差を、周期誤差と総称する。
【0081】
ヘッドユニット62C内のその他のヘッド、ヘッドユニット62A,62B,62D,62E,62Fがそれぞれ備えるヘッド65,66,67,68も、ヘッド64(エンコーダ70C)と同様に構成されている。
【0082】
また、本実施形態では、前述のようなエンコーダヘッドの配置を採用したことにより、常時、Xスケール39X1又は39X2に少なくとも1つのXヘッド66が、Yスケール39Y1に少なくとも1つのYヘッド65(又は68)が、Yスケール39Y2に少なくとも1つのYヘッド64(又は67)が、それぞれ対向する。スケールに対向しているエンコーダヘッドからは、上述の分岐光の強度I,I,I,Iの測定結果が、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、供給された測定結果I,I,I,Iから、それぞれのヘッドの計測方向についてのウエハステージWSTの変位(より正確には計測ビームが投射されるスケールの変位)を求める。求められた結果は、上述のエンコーダ70A、70C及び70B又は70D(又はエンコーダ70E1,70F1及び70B又は70D)の計測値として扱われる。
【0083】
本実施形態では、例えば前述したプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック後半の処理(いわゆるレチクルアライメント)の際に、空間像計測装置45A,45Bを用いてレチクルR(又はレチクルステージRST上に設けられたレチクル基準板RFM)上の一対の計測マークPMの空間像(投影像)の計測が行われる。
【0084】
まず、主制御装置20は、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)を駆動して、ウエハテーブルWTB上の計測プレート30を投影光学系PLの光軸AX上に移動する。同時に、主制御装置20は、レチクルステージRSTを駆動して、レチクルR(又はレチクル基準板RFM)を光軸AX上に位置決めする。
【0085】
レチクルR(又はレチクル基準板RFM)には、ウエハテーブルWTB上の一対の空間像計測用スリット板SLの配置に対応する配置で、一対の計測マークPMが形成されている。計測マークPMとして、図9(B)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする所定幅(例えば1μm)のライン状の開口パターン(以下、ラインパターンと略記する)がX軸方向に複数配列されたX計測マークPMXと、X軸方向を長手方向とする所定幅(例えば1μm)のラインパターンがY軸方向に複数配列されたY計測マークPMYと、を含む二次元マークが用いられている。
【0086】
次に、主制御装置20は、照明光ILでレチクルR(又はレチクル基準板RFM)の少なくとも一対の計測マークPMを含む領域を照明し、レチクルR(又はレチクル基準板RFM)を通過した照明光ILを投影光学系PLを介して計測プレート30上の一対の空間像計測用スリット板SLに投射する。これにより、例えば図9(C)及び図9(D)に示されるように、計測マークPM内のX計測マークPMXの像PMX’及びY計測マークPMYの像PMY’が、それぞれ、空間像計測用スリット板SLのXスリットSLXの−X側の近傍及びYスリットSLYの近傍に投影される。
【0087】
そして、X計測マークPMXの空間像を計測する場合、主制御装置20は、上述のように照明光ILで一対の計測マークPMを照明した状態で、図9(C)中に白抜き矢印で示されるように−X方向にウエハステージWSTを駆動する。これにより、一対の空間像計測用スリット板SLのXスリットSLXが対応するX計測マークPMXの投影像(空間像)PMX’に対してX軸方向に走査される。走査中、XスリットSLXが投影像(空間像)PMX’の一部のラインパターンの像に重なったとき、照明光ILは、スリットSLXを透過し、空間像計測装置45A,45Bにより検出される。
【0088】
また、Y計測マークPMYの空間像を計測する場合、主制御装置20は、上述のように照明光ILで一対の計測マークPMを照明した状態で、図9(D)中に白抜き矢印で示されるように+Y方向にウエハステージWSTを駆動する。これにより、一対の空間像計測用スリット板SLのYスリットSLYが対応するY計測マークPMYの投影像(空間像)PMY’に対してY軸方向に走査され、スリットSLYを透過した照明光ILが、空間像計測装置45A,45Bにより検出される。
【0089】
主制御装置20は、空間像計測装置45A,45Bからの光量信号を、エンコーダシステム150によって計測されるウエハステージWSTの位置計測情報とともに取り込む。これにより、主制御装置20は、X計測マークPMX(又はY計測マークPMY)の投影像(空間像)PMX’(又はPMY’)のプロファイル(空間像プロファイル)を得る。
【0090】
図10(A)には、一例として、X計測マークPMXの空間像(空間像プロファイル)の計測結果が示されている。ここで、X計測マークPMXは、X軸方向に2μm/βのピッチPで配列された8つのラインパターンから成る(図9(B)参照)。ここで、βは投影光学系PLの投影倍率である。従って、2μm間隔で並ぶ8つのピークをもつ空間像プロファイルが得られる。
【0091】
なお、説明の便宜のため、X計測マークPMX(Y計測マークPMY)の配列ピッチを、投影光学系PLを介してウエハステージWST(空間像計測用スリット板SL)上に投影されるX計測マークPMX(Y計測マークPMY)の像の配列ピッチを用いて表すこととする。すなわち、実際の配列ピッチと投影倍率βの積を配列ピッチPとする。
【0092】
図10(B)には、横軸Xを0.25μm周期で描画した空間像プロファイルの例が示されている。ここで、本実施形態の露光装置100では、Xスケール39X1,39X2(及びYスケール39Y1,39Y2)は、1μmピッチ(p)で配列された回折格子より構成されている。また、1次(n=1)の回折光を利用するエンコーダヘッド64,65,66,67,68を採用している。従って、エンコーダ70A〜70D(エンコーダヘッド64,65,66,67,68)の計測単位λ(=p/4n)は0.25μmである。すなわち、周期の0.25μmは、エンコーダ70A〜70Dの計測単位と同じである。
【0093】
X計測マークPMXの配列ピッチP(=2μm)は周期(すなわち、計測単位0.25μm)の自然数倍であるため、図10(B)の空間像プロファイル(従来例における空間像プロファイル)では、X計測マークPMXの8つのラインパターンに由来する8つのピーク(図10(A)参照)は、計測誤差の範囲内で重なって、1つのピークとして現れている。従って、前述のようなエンコーダ70A〜70Dの周期誤差が発生すると、その周期誤差は8つのピークのそれぞれに対して同等に影響することになる。
【0094】
投影光学系PLの空間像計測では、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されているように、例えばX計測マークPMX内の周期パターンに由来する空間像プロファイル内の複数のピーク波形にスライス法その他の波形処理アルゴリズムを適用して、各ラインパターンのエッジ位置(X位置)を求める。そして、例えば各ラインパターンの一対のエッジ位置の平均をそのラインパターンの位置とし、また、設計上マーク中心に関して対称に位置する2つのラインパターンの位置の平均などに基づいて、X計測マークの位置を求めることが行われる。各ラインパターンの線幅も同様にして求められる。図10(B)の空間像プロファイルに対しては、上述の通り、エンコーダの周期誤差に由来する誤差が8つのピーク波形のそれぞれに同等に発生しているため、平均演算をしても誤差は低減されず、求められるラインパターンの位置、X計測マークの位置などに計測誤差が含まれることとなる。
【0095】
そこで、本実施形態では、原則として、エンコーダ70A〜70Dの計測単位λの自然数(m)倍と異なる配列ピッチP(≠mλ)の周期パターンを、X計測マークPMX(Y計測マークPMY)として採用する。さらに、計測マークPMの空間像計測において、エンコーダ70A〜70Dの周期誤差に伴うマークの位置誤差(結像位置の計測誤差)の発生を効果的に抑えるために、周期パターンの配列ピッチPを、計測単位λの(m+1/n)倍、すなわち(m+1/n)λに定める。ここで、mは自然数であり、nは2以上の自然数である。
【0096】
図10(C)には、配列ピッチP=(m+1/n)λ=2.03125μmに対する、X計測マークPMXの空間像(空間像プロファイル)の計測結果が示されている。ただし、m=n=8と定めた。空間像プロファイルは、横軸Xを0.25μm周期で描画されている。
【0097】
図10(C)の空間像プロファイルでは、配列ピッチPが計測単位λの自然数倍(mλ)からλ/n(0.03125μm)ずれているため、8つのピークは異なる位置に現れている。そのため、8つのピーク波形にスライス法その他の波形処理アルゴリズムを適用して、各ラインパターンのエッジ位置(X位置)を求め、さらに各ラインパターンの一対のエッジ位置の平均をそのラインパターンの位置として求め、あるいは設計上マーク中心に関して対称に位置する2つのラインパターンの位置の平均に基づいて、X計測マークの位置を求める際などに、平均化効果によりエンコーダの周期誤差に由来する誤差がほぼ相殺される。この結果、マークの空間像計測において、エンコーダ70A〜70Dの周期誤差に伴う結像位置の計測誤差の発生が効果的に抑えられる。
【0098】
なお、上述の平均化効果を最大限引き出すために、自然数nをある程度大きな数、例えば4以上の数とするのが望ましい。また、X計測マークPMX(Y計測マークPMY)として、X軸方向(Y軸方向)にピッチPで配列された2以上の自然数nの倍数である数のラインパターンを採用することとする。
【0099】
なお、これまでは、プライマリアライメント系AL1のベースラインチェック後半の処理(いわゆるレチクルアライメント)の際の計測マークの空間像計測について説明したが、上で説明したマークの結像位置の計測誤差の発生の防止のための手法は、レチクル基準板RFM(又は計測用レチクル)を用いた光学特性計測マークを用いた投影光学系PLの光学特性(例えば、ディストーション、コマ収差)などの計測(例えば前述の米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに詳細が開示されている)にも好適に適用することができる。
【0100】
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100では、例えば前述のプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック後半の処理(いわゆるレチクルアライメント)の際に、主制御装置20が、ウエハステージWSTを計測対象の計測マークPMの周期方向に走査し、レチクルステージRST上の計測マークPMの投影光学系PLによる空間像の強度を、ウエハステージWSTに構成部分の一部(計測スリットSLX、SLYが設けられた空間像計測用スリット板SL)が配置された空間像計測装置45A,45Bを用いて検出し、その空間像計測装置45A,45Bの出力とエンコーダシステム150によって計測されるウエハステージWSTの位置の計測情報とに基づいて、計測マークPMの空間像の結像位置を計測する。計測中、計測マークPMに含まれる周期パターンである計測マークPMX、PMYのピッチとエンコーダシステム150の各エンコーダ70A,70C(70B,70D)の計測周期とが、各エンコーダ70A,70C(70B,70D)の周期誤差が、計測マークPMX、PMYの位置(より正確には、計測マークPMX、PMYの空間像の結像位置)の計測誤差の要因とならない所定の関係を満たしている。本実施形態では、この所定の関係を満たすため、例えばエンコーダシステム150の各エンコーダ70A,70C(70B,70D)の計測周期の自然数(m)倍と異なるピッチの周期パターンを計測マークPMX、PMYとして用いられている。より具体的には、エンコーダ70A〜70Dの計測単位λの、(m+1/n)倍の配列ピッチPの周期パターンが、X計測マークPMX(Y計測マークPMY)として採用されている。ここで、mは自然数、nは2以上の自然数である。従って、本実施形態によると、周期的な計測誤差(周期誤差)を発生するエンコーダシステム150を位置計測系として用いてウエハステージWSTの位置計測を行っても、X計測マークPMX(Y計測マークPMY)の位置計測(結像位置の計測)を精度良く行う、ひいてはプライマリアライメント系AL1のベースラインチェック後半の処理を精度良く行うことが可能となる。
【0101】
また、本実施形態の露光装置100では、プライマリアライメント系AL1のベースラインを精度良く求めることができ、そのベースラインを用いてウエハステージWSTを、ステップ・アンド・スキャン方式で駆動して、ウエハ上の各ショット領域にレチクルRのパターンを転写する。このため、ウエハ上の各ショット領域に正確にレチクルRのパターンを転写することが可能となる。
【0102】
なお、上記実施形態では、計測マークPMX,PMYとして、ライン・アンド・スペースパターンを用いたがこれに限らず、周期パターンであれば如何なる形状のパターンを用いても良い。
【0103】
また、上記実施形態では、投影光学系の像面側にウエハステージWSTを配置し、このウエハステージWSTに空間像計測装置45A,45Bの構成部分の一部(空間像計測用スリット板SL)を配置する場合を例示したが、これに限らず、例えば、ウエハを保持するウエハステージWSTに加えてウエハを保持しない別のステージを設け、この別のステージに空間像計測装置45A,45Bの少なくとも一部を配置する構成を採用しても良い。
【0104】
また、上記実施形態では、計測マークPMが設けられたレチクルステージRSTを静止した状態で、ウエハステージWSTに少なくとも一部(空間像計測用スリット板SL)が配置された空間像計測装置(検出器)45A,45Bを用いて、ウエハステージWSTを駆動しつつ計測マークPMの空間像を検出する場合について説明した。しかし、これに限らず、計測マーク内の周期パターンのピッチとウエハステージWSTの位置計測系の計測周期との関係が、計測系の周期誤差が、計測マーク内の周期パターンの位置の計測誤差の要因とならない関係(以下、便宜上所定の関係と呼ぶ)であれば良い。従って、例えば計測マークPM(すなわちレチクルステージRST)と空間像計測装置(検出器)45A,45B(すなわちウエハステージWST)とを、計測マークの計測方向に相対駆動して、計測マーク内の周期パターンのピッチを計測周期の自然数(m)倍から実効的にずらすことも可能である。その場合、レチクルステージRSTの駆動速度vはウエハステージWSTの駆動速度Vの1/(1+mn)倍(nは2以上の自然数)と与えられる。ただし、簡単のため、投影光学系PLの投影倍率β=1とした。また、レチクルステージRSTの位置情報を考慮して、空間像の検出結果を処理することとする。例えば、ウエハステージWSTの位置情報に替えてレチクルステージRSTに対するウエハステージWSTの相対位置情報に対して、空間像の検出結果が処理される。
【0105】
また、計測マーク内の周期パターンのピッチとウエハステージWSTの位置計測系の計測周期との関係が、上記所定の関係であれば、例えば、ウエハステージWST上に計測マークPMを設け、ウエハステージWST外に固定された空間像計測装置45A,45Bを設け、可動式の計測マークPMを固定された空間像計測装置45A,45Bを用いて検出する構成を採用することも可能である。
【0106】
また、本実施形態では、位置計測系の計測周期λを基準にして計測マーク内の周期パターンのピッチPを定めたが、逆にピッチPを基準に位置計測系の計測周期λを調整することも可能である。例えば、エンコーダの場合、スケールに形成された回折格子のピッチpを変更すること、干渉計の場合、計測ビームの波長を変更することにより、ピッチP=(m+1/n)λを与えるように計測周期λを調整する。
【0107】
また、本実施形態では、空間像計測においてウエハステージWSTの位置を計測する位置計測系としてエンコーダシステム150を採用した場合に対して、本発明のパターン検出方法及びパターン検出システムを適用したが、これに限らず、干渉計システム118の他、計測周期を有するあらゆる計測器を位置計測系として採用する場合に対して適用することが可能である。
【0108】
また、本実施形態では、投影光学系PLの光学特性の計測を目的とした空間像計測を例にして、本発明のパターン検出方法及びパターン検出システムを説明したが、これらの用途は空間像計測に限らず、検出器と周期パターンとの一方を動かしつつ検出器を用いて周期パターンを検出するあらゆるパターン検出に対して適用することができる。
【0109】
なお、上記実施形態で説明したエンコーダシステムなどの各計測装置の構成は一例に過ぎず、本発明がこれに限定されないことは勿論である。例えば、上記実施形態では、ウエハテーブル(ウエハステージ)上に格子部(Yスケール、Xスケール)を設け、これに対向してXヘッド、Yヘッドをウエハステージの外部に配置する構成のエンコーダシステムを採用した場合について例示したが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されているように、ウエハステージにエンコーダヘッドを設け、これに対向してウエハステージの外部に格子部(例えば2次元格子又は2次元に配置された1次元の格子部)を配置する構成のエンコーダシステムを採用しても良い。この場合において、面位置センサのヘッド(Zヘッド)もウエハステージに設け、その格子部の面を、Zヘッドの計測ビームが照射される反射面としても良い。
【0110】
また、上記実施形態において、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されるように、ヘッドユニット62A,62Cの内部にエンコーダヘッドとZヘッドとを、別々に設けても良いし、エンコーダヘッドとZヘッドとの機能を備えた単一のヘッドを、エンコーダヘッドとZヘッドの組に代え設けても良い。
【0111】
また、上述の実施形態では、本発明が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、例えば欧州特許出願公開第1420298号明細書、国際公開第2004/055803号、米国特許第6,952,253号明細書などに開示されているように、投影光学系とウエハとの間に照明光の光路を含む液浸空間を形成し、投影光学系及び液浸空間の液体を介して照明光でウエハを露光する露光装置にも本発明を適用することができる。また、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書に開示される、液浸露光装置などにも、本発明を適用することができる。
【0112】
また、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明は適用することができる。さらに、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも本発明を適用できる。また、例えば米国特許第7,589,822号明細書などに開示されているように、ウエハステージとは別に、計測部材(例えば、基準マーク、及び/又はセンサなど)を含む計測ステージを備える露光装置にも本発明は適用が可能である。
【0113】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでも良い。
【0114】
なお、上記実施形態の露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば米国特許7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0115】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことは言うまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを露光するために、SORやプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも本発明を好適に適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0116】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0117】
また、例えば干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0118】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0119】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
【0120】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0121】
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の計測方法は、周期パターンの位置情報を計測するのに適している。また、本発明の露光方法及び露光装置は、物体上にパターンを転写するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、半導体素子又は液晶表示素子などの電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0123】
10…照明系、20…主制御装置、39X1,39X2…Xスケール、39Y1,39Y2…Yスケール、45A,45B…空間像計測装置、50…ステージ装置、62A〜62F…ヘッドユニット、64,65…Yヘッド、66…Xヘッド、67,68…Yヘッド、70A,70C…Yエンコーダ、70B,70D…Xエンコーダ、100…露光装置、124…ステージ駆動系、150…エンコーダシステム、PL…投影光学系、PM(PMX,PMY)…計測マーク(X計測マーク、Y計測マーク)、PU…投影ユニット,RST…レチクルステージ、R…レチクル、W…ウエハ、WST…ウエハステージ、WTB…ウエハテーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期パターンの位置情報を計測する計測方法であって、
移動体と該移動体の外部との一方に配置された周期パターンの周期方向に関する位置情報を、前記移動体を前記周期パターンの周期方向に駆動しつつ、前記周期方向に関する前記移動体の位置を計測する位置計測系の出力と、前記移動体と該移動体の外部との他方に少なくともその一部が設けられ、前記周期パターンを検出する検出系の出力とに基づいて計測する工程を含み、
前記計測する工程では、前記計測中、前記周期パターンのピッチが、前記位置計測系の周期誤差が前記周期パターンの位置の計測誤差の要因とならない前記位置計測系の計測周期に対する所定の関係を満たす計測方法。
【請求項2】
前記所定の関係は、前記周期パターンのピッチが、前記計測周期の自然数m倍とはならない関係である請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記所定の関係は、nを2以上の自然数として、前記周期パターンのピッチが、前記計測周期の(m+1/n)倍に等しくなる関係である請求項2に記載の計測方法。
【請求項4】
前記計測する工程では、前記移動体の外部に配置された前記周期パターンを照明光で照明し、前記周期パターン及び光学系を介した前記照明光を前記移動体に少なくともその一部が設けられた前記検出系で受光する請求項1〜3のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項5】
前記計測する工程では、前記周期パターンのピッチと前記位置計測系の計測周期とが、前記所定の関係を満たすように、前記移動体とともに、前記周期パターンを前記周期方向に駆動する請求項4に記載の計測方法。
【請求項6】
前記計測する工程では、mを自然数、nを2以上の自然数として、前記移動体の駆動速度の1/(1+mn)倍の速度で前記周期パターンを駆動する請求項5に記載の計測方法。
【請求項7】
前記計測する工程では、前記周期方向に関する前記周期パターンの位置を計測する別の位置計測系の出力にさらに基づいて、前記周期パターンの周期方向に関する位置情報を計測する請求項5又は6に記載の計測方法。
【請求項8】
前記nは、4の倍数である請求項3、6、7のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項9】
前記周期パターンは、前記周期方向に配列された前記nの倍数である数のパターンを含む請求項3、6〜8のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項10】
前記計測する工程では、前記移動体と該移動体の外部との一方に設けられ、他方に設けられた計測面に計測光を照射し、前記計測面からの光を受光するヘッドを有し、該ヘッドの出力に基づいて前記移動体の位置情報を計測する位置計測系が用いられる請求項1〜9のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項11】
前記計測面には、少なくとも前記周期パターンの周期方向を周期方向とするグレーティングが配置され、
前記計測周期は、前記グレーティングのピッチより定まる請求項10に記載の計測方法。
【請求項12】
前記計測周期は、前記計測光の波長より定まる請求項10に記載の計測方法。
【請求項13】
エネルギビームにより物体を露光して前記物体上にパターンを形成する露光方法であって、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の計測方法により前記周期パターンの位置情報を計測することと;
前記周期パターンの位置情報の計測結果に基づいて前記物体を保持する移動体を駆動し、前記エネルギビームにより前記物体を露光することと;
を含む露光方法。
【請求項14】
請求項13に記載の露光方法により物体を露光することと;
露光された前記物体を現像することと;
を含むデバイス製造方法。
【請求項15】
エネルギビームにより物体を露光して前記物体上にデバイスパターンを形成する露光装置であって、
前記物体を保持して移動する移動体と;
前記移動体の位置を計測する位置計測系と;
前記移動体と該移動体の外部との一方に少なくともその一部が設けられ、パターン又はパターン像を検出する検出系と;
前記移動体と該移動体の外部との他方に配置された周期パターンの周期方向に前記移動体を駆動しつつ、前記位置計測系で計測される前記移動体の位置の計測情報と、前記周期パターン又はその像を検出する前記検出系の出力とに基づいて、前記周期パターンの周期方向に関する位置情報を計測する制御装置と;を備え、
前記計測中、前記周期パターンのピッチが、前記位置計測系の周期誤差が前記周期パターンの位置の計測誤差の要因とならない前記位置計測系の計測周期に対する所定の関係を満たす露光装置。
【請求項16】
前記所定の関係は、前記周期パターンのピッチが、前記計測周期の自然数m倍とはならない関係である請求項15に記載の露光装置。
【請求項17】
前記所定の関係は、nを2以上の自然数として、前記周期パターンのピッチが、前記計測周期の(m+1/n)倍に等しくなる関係である請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記デバイスパターンが形成されたマスクが載置されるマスク保持部材と;
前記マスク保持部材上に存在するパターンを介した前記エネルギビームを前記移動体に向けて射出する光学系と;をさらに備え、
前記検出系は、前記移動体に少なくともその一部が設けられ、
前記制御装置は、前記周期パターンの周期方向に関する位置情報の計測に際し、前記マスク保持部材上に存在する前記周期パターン及び前記光学系を介して前記検出系で受光する請求項15〜17のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項19】
前記マスク保持部材は、少なくとも前記周期方向に移動可能であり、
前記制御装置は、前記周期パターンのピッチと前記位置計測系の計測周期とが、前記所定の関係を満たすように、前記移動体とともに、前記マスク保持部材を前記周期方向に駆動する請求項18に記載の露光装置。
【請求項20】
前記制御装置は、mを自然数、nを2以上の自然数として、前記移動体の駆動速度の1/(1+mn)倍の速度で前記マスク保持部材を駆動する請求項19に記載の露光装置。
【請求項21】
前記マスク保持部材の位置を計測する別の位置計測系をさらに備え、
前記制御装置は、前記別の位置計測系で計測される前記マスク保持部材の位置の計測情報にさらに基づいて、前記周期パターンの周期方向に関する位置情報を計測する請求項19又は20に記載の露光装置。
【請求項22】
前記nは、4の倍数である請求項17、20、21のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項23】
前記周期パターンは、前記周期方向に配列された前記nの倍数である数のパターンを含む請求項17、20〜22のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項24】
前記位置計測系は、前記移動体と該移動体の外部との一方に設けられ、他方に設けられた計測面に計測光を照射し、前記計測面からの光を受光するヘッドを有し、該ヘッドの出力に基づいて前記移動体の位置情報を計測する請求項15〜23のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項25】
前記計測面には、少なくとも前記周期パターンの周期方向を周期方向とするグレーティングが配置され、
前記計測周期は、前記グレーティングのピッチより定まる請求項24に記載の露光装置。
【請求項26】
前記計測周期は、前記計測光の波長より定まる請求項24に記載の露光装置。
【請求項27】
前記制御装置は、前記周期パターンの位置情報の計測結果に基づいて前記物体を保持する移動体を駆動し、前記エネルギビームにより前記物体を露光する請求項15〜26のいずれか一項に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−151161(P2011−151161A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10593(P2010−10593)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】