説明

車両およびその制御方法

【課題】停車保持の指示に基づく停車状態からの発進をより適正に行なう。
【解決手段】登坂路などで停車した後にブレーキペダルを戻してもブレーキを保持するよう指示するブレーキホールドスイッチがオンされたときには、所定の駆動力分配比(例えば前輪側40%に対して後輪側60%)を前後輪の目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に設定し(S150)、前後輪の制動トルクの総和が保持されると共に前輪と後輪とのブレーキ油圧の比率が目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に調整され停車状態が保持されるようブレーキアクチュエータを制御して停車保持制御を開始し(S160)、アクセル開度Accが解除判定閾値以上になったときに前後輪のブレーキ油圧を解除すると共に前後輪に要求トルクが出力されるようエンジンを制御して前後輪に対して所定の駆動力分配比による駆動トルクを出力する。これにより、前輪や後輪の引き摺りを抑制し発進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、走行用の電動モータと電磁ブレーキとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、登り坂で発進するときに、電動モータから通常より小さいトルクを出力すると共に電磁ブレーキの開放を開始することにより、ブレーキの引き摺りを回避しようとしている。
【特許文献1】特開2003−209909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータなどにより前後輪に駆動力を出力する駆動力出力装置と、前後輪に制動力を出力するブレーキ装置と、を備える車両では、登坂路などで停車状態の保持を指示する指示スイッチによる停車の保持を解除する際に、ブレーキ装置により制動状態にある前輪または後輪の引き摺りが生じる場合がある。即ち、停車の保持を解除して発進する際に、前輪の駆動力により後輪が引き摺られたり、後輪の駆動力により前輪が引き摺られることにより、車輪の引き摺りに伴う異音や発進性能の低下などが生じる場合がある。
【0004】
本発明の車両およびその制御方法は、停車保持の指示に基づく停車状態からの発進をより適正に行なうことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、少なくとも上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
前後輪に駆動力を出力する駆動力出力手段と、
運転者のブレーキ操作に基づく前記前後輪への制動力の付与と運転者のブレーキ操作なしに前記前後輪への制動力の付与とが可能な制動力付与手段と、
停車状態の保持を指示する停車保持指示手段と、
前記停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう前記制動力付与手段を制御し、前記停車保持指示手段による停車保持の指示に基づいて停車保持している状態で停車保持を解除する解除条件が成立したときには前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力分配と前記駆動力出力手段による前記前後輪への駆動力分配とが略一致した状態で前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与が解除されると共に前記駆動力出力手段により前記前後輪に駆動力が出力されるよう前記制動力付与手段と前記駆動力出力手段とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の車両では、停車状態の保持を指示する停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう制動力付与手段を制御し、停車保持指示手段による停車保持の指示に基づいて停車保持している状態で停車保持を解除する解除条件が成立したときには制動力付与手段による前後輪への制動力分配と駆動力出力手段による前後輪への駆動力分配とが略一致した状態で制動力付与手段による前後輪への制動力の付与が解除されると共に駆動力出力手段により前後輪に駆動力が出力されるよう制動力付与手段と駆動力出力手段とを制御する。これにより、停車保持の指示に基づく停車状態からの発進をより適正に行なうことができる。
【0008】
こうした本発明の車両において、前記駆動力出力手段は、前記前後輪への所定の駆動力分配をもって該前後輪に駆動力を出力する手段であり、前記制動力付与手段は、前記前後輪への制動力分配を調整可能に該前後輪に制動力を付与する手段であり、前記制御手段は、前記停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力分配を前記解除条件が成立したときに前記駆動力出力手段により前記前後輪に出力する駆動力における前記所定の駆動力分配に略一致させるよう調整して前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう前記制動力付与手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、停車保持の指示に基づく停車状態からの適正な発進をより確実に行なうことができる。
【0009】
また、本発明の車両において、前記駆動力出力手段は、前記前後輪への駆動力分配を調整可能に該前後輪に駆動力を出力する手段であり、前記制動力付与手段は、前記前後輪への所定の制動力分配をもって該前後輪に制動力を付与する手段であり、前記制御手段は、前記解除条件が成立したときには、前記駆動力出力手段による前記前後輪への駆動力分配を前記制動力付与手段により前記前後輪に付与している制動力における前記所定の制動力分配に略一致させるよう調整して前記駆動力出力手段により前記前後輪に駆動力が出力されるよう前記駆動力出力手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、停車保持の指示に基づく停車状態からの適正な発進をより確実に行なうことができる。
【0010】
さらに、本発明の車両において、前記駆動力出力手段は、前記前後輪への駆動力分配を調整可能に該前後輪に駆動力を出力する手段であり、前記制動力付与手段は、前記前後輪への制動力分配を調整可能に該前後輪に制動力を付与する手段であり、前記制御手段は、前記停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力分配を前記解除条件が成立したときに前記駆動力出力手段により前記前後輪に出力する駆動力における該前後輪への駆動力分配に略一致させるよう調整して前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう前記制動力付与手段を制御するか、または、前記解除条件が成立したときに前記駆動力出力手段による前記前後輪への駆動力分配を前記制動力付与手段により前記前後輪に付与している制動力における該前後輪への制動力分配に略一致させるよう調整して前記駆動力出力手段により前記前後輪に駆動力が出力されるよう前記駆動力出力手段を制御するか、のうちいずれか一方の制御を行なう手段であるものとすることもできる。こうすれば、停車保持の指示に基づく停車状態からの適正な発進をより確実に行なうことができる。
【0011】
これらの前後輪への駆動力分配を調整可能に前後輪に駆動力を出力する駆動力出力手段を備える態様の本発明の車両において、前記駆動力出力手段は、内燃機関と、動力を入出力する発電機と、前記前後輪の一方の車軸に連結された第1駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記前後輪の他方の車軸に連結された第2駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を有する手段であるものとすることもできる。
【0012】
本発明の車両の制御方法は、
前後輪に駆動力を出力する駆動力出力手段と、運転者のブレーキ操作に基づく前記前後輪への制動力の付与と運転者のブレーキ操作なしに前記前後輪への制動力の付与とが可能な制動力付与手段と、停車状態の保持を指示する停車保持指示手段と、を備える車両の制御方法であって、
前記停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう前記制動力付与手段を制御し、前記停車保持指示手段による停車保持の指示に基づいて停車保持している状態で停車保持を解除する解除条件が成立したときには前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力分配と前記駆動力出力手段による前記前後輪への駆動力分配とが略一致した状態で前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与が解除されると共に前記駆動力出力手段により前記前後輪に駆動力が出力されるよう前記制動力付与手段と前記駆動力出力手段とを制御する、
ことを特徴とする。
【0013】
この本発明の車両の制御方法では、停車状態の保持を指示する停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう制動力付与手段を制御し、停車保持指示手段による停車保持の指示に基づいて停車保持している状態で停車保持を解除する解除条件が成立したときには制動力付与手段による前後輪への制動力分配と駆動力出力手段による前後輪への駆動力分配とが略一致した状態で制動力付与手段による前後輪への制動力の付与が解除されると共に駆動力出力手段により前後輪に駆動力が出力されるよう制動力付与手段と駆動力出力手段とを制御する。これにより、停車保持の指示に基づく停車状態からの発進をより適正に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1実施例としての自動車20の構成の概略を示す構成図である。第1実施例の自動車20は、図示するように、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されたエンジン22と、エンジン22からの動力を変速してセンターデファレンシャルギヤ40に伝達する自動変速機30と、自動変速機30からの動力を入力すると共に前輪46a,46bにフロントデファレンシャルギヤ42を介して連結されたフロントプロペラシャフト41と後輪48a,48bにリヤデファレンシャルギヤ44を介して連結されたリヤプロペラシャフト43とに対して所定の駆動力分配比(第1実施例では、前輪側40%に対して後輪側60%)による駆動トルクを伝達するセンターデファレンシャルギヤ40と、前輪46a,46bや後輪48a,48bのブレーキを制御するためのブレーキアクチュエータ72と、車両全体をコントロールするメイン電子制御ユニット50と、を備える。なお、エンジン22はエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により運転制御され、自動変速機30もエンジンECU24により駆動制御されている。
【0016】
ブレーキアクチュエータ72は、ブレーキペダル65の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ70の圧力に対応する制動トルクが前後輪46a,46b,48a,48b(以下、符号を省略して単に「前後輪」という)に作用するよう前輪46a,46bのブレーキホイールシリンダ76a,76bや後輪48a,48bのブレーキホイールシリンダ78a,78bの油圧(以下、ブレーキ油圧という)を調整したり、ブレーキペダル65の踏み込みに無関係に、前後輪に対して調整可能な制動力分配比をもって制動トルクが作用するよう前輪46a,46bのブレーキ油圧と後輪48a,48bのブレーキ油圧とを調整したりすることができるように構成されている。ブレーキアクチュエータ72は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)74により制御されている。ブレーキECU74は、前後輪に取り付けられた図示しない車輪速センサからの各車輪速,図示しない操舵角センサからの操舵角などの信号を入力して、運転者がブレーキペダル65を踏み込んだときに前後輪のいずれかがロックによりスリップするのを防止するアンチロックブレーキシステム機能(ABS)や運転者がアクセルペダル63を踏み込んだときに前後輪のいずれかが空転によりスリップするのを防止するトラクションコントロール(TRC),車両が旋回走行しているときに姿勢を保持する姿勢保持制御(VSC)なども行なう。
【0017】
メイン電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に処理プログラムを記憶するROM54と、データを一時的に記憶するRAM56と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。メイン電子制御ユニット50には、イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号,シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP,アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ68からの車速V,運転席近傍に取り付けられ登坂路などで停車した後にブレーキペダル65を戻してもブレーキを保持する停車保持制御の実行を指示するブレーキホールドスイッチ69からのブレーキホールド信号などが入力ポートを介して入力されている。メイン電子制御ユニット50は、エンジンECU24やブレーキECU74と通信ポートを介して接続されており、エンジン22の運転状態や自動変速機30の状態に関するデータをエンジンECU24から入力すると共にエンジン22の運転制御や自動変速機30の駆動制御を行なうための制御信号をエンジンECU24に出力し、ブレーキアクチュエータ72の状態に関するデータをブレーキECU74から入力すると共にブレーキアクチュエータ72を駆動制御するための制御信号をブレーキECU74に出力している。
【0018】
次に、こうして構成された第1実施例の自動車20の動作、特に登坂路で運転者がブレーキホールドスイッチ69をオンとした後に発進する際の動作について説明する。図2はメイン電子制御ユニット50により実行される停車保持開始制御ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図3はメイン電子制御ユニット50により実行される停車保持解除制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。これらのルーチンは、ブレーキホールドスイッチ69がオンとされた以降に所定時間毎に繰り返し実行される。また、図4はメイン電子制御ユニット50により所定時間毎に繰り返し実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。以下、停車保持開始制御,停車保持解除制御,駆動制御の順に説明する。
【0019】
図2の停車保持開始制御ルーチンが実行されると、メイン電子制御ユニット50のCPU52は、まず、アクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accやブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ68からの車速V,停車保持制御フラグFstopなど停車保持制御を開始するのに必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、停車保持制御フラグFstopは、このルーチンにより停車保持制御が開始されたときに値1がセットされ、停車保持解除制御ルーチンにより停車保持制御が解除されたときに初期値としての値0にリセットされるフラグである。
【0020】
こうしてデータを入力すると、停車保持制御フラグFstopが値0であるか否かと(ステップS110)、アクセル開度Accが値0となるアクセルオフ状態であるか否かと(ステップS120)、車速Vが値0となる停車状態であるか否かと(ステップS130)、ブレーキペダルポジションBPが値0より大きいブレーキオン状態であるか否かと(ステップS140)、を判定する。停車保持制御フラグFstopが値1のときには既に停車保持制御が開始されていると判断し、また、アクセルオンされているときや停車状態でないとき,ブレーキオフされているときには運転者に停車する意思がないと判断して、本ルーチンを終了する。
【0021】
停車保持制御フラグFstopが値0のときに、アクセルオフされており、停車状態であり、ブレーキオンされているときには、前述した所定の駆動力分配比を前後輪に対する制動トルクの分配を定めるための前後輪の目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に設定し(ステップ150)、ブレーキ保持を指示する信号と前後輪の目標制動力分配比Kbf*,Kbr*とをブレーキECU74に送信し(ステップS160)、停車保持制御フラグFstopに値1を設定して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。ブレーキ保持の指示信号と目標制動力分配比Kbf*,Kbr*とを受信したブレーキECU74は、前後輪に対する制動トルクの総和が保持されると共に、前輪46a,46bの制動トルクと後輪48a,48bの制動トルクとの比率が目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に調整されるようブレーキアクチュエータ72を制御する。こうして前後輪に対して所定の駆動力分配比に一致するよう調整された制動トルクが作用した状態で停車保持制御が開始され、その後にブレーキペダル85が戻されても停車状態が保持される。
【0022】
次に、停車保持制御の解除について説明する。図3の停車保持解除制御ルーチンが実行されると、メイン電子制御ユニット50のCPU52は、まず、アクセル開度Accや停車保持制御フラグFstopなど停車保持制御を解除するのに必要なデータを入力し(ステップS200)、停車保持制御フラグFstopが値1か否かと(ステップS210)、アクセル開度Accが解除判定閾値Aref(例えば7%や9%など)以上であるか否かと(ステップS220)、を判定する処理を実行する。停車保持制御フラグFstopが値0のときには既に停車保持制御は解除されていると判断し、また、アクセル開度Accが解除判定閾値Aref未満のときには運転者に発進の意思がないと判断して、本ルーチンを終了する。
【0023】
停車保持制御フラグFstopが値1でアクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上のときには、ブレーキ解除を指示する信号をブレーキECU74に送信し(ステップS230)、ブレーキ油圧の解除が完了した旨の信号をブレーキECU74から受信するのを待って(ステップS240)、停車保持制御フラグFstopに値0を設定し(ステップS250)、本ルーチンを終了する。ブレーキECU74は、ブレーキ解除の指示信号を受信したときに前後輪のブレーキ油圧の解除を開始するようブレーキアクチュエータ72を制御する。また、ブレーキECU74は、ブレーキ油圧の解除が完了したときにその旨の信号をメイン電子制御ユニット50に送信する。こうして停車保持制御が解除されることになる。
【0024】
次に、駆動制御について説明する。図4の駆動制御ルーチンが実行されると、メイン電子制御ユニット50のCPU52は、アクセル開度Accなどエンジン22を運転制御するのに必要なデータを入力し(ステップS300)、入力したアクセル開度Accに基づいて前後輪に要求される要求トルクT*を設定し(ステップS310)、設定した要求トルクT*をエンジンECU24に送信して(ステップS320)、駆動制御ルーチンを終了する。要求トルクT*は、実施例では、アクセル開度Accと要求トルクT*との関係をアクセル開度Accが値0から大きくなるほど要求トルクT*がクリープトルクに相当するトルクから大きくなるよう予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM54に記憶しておき、アクセル開度Accが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクT*を導出して設定するものとした。要求トルクT*を受信したエンジンECU24は、前後輪に全体として要求トルクT*に相当するトルクが出力されるようエンジン22を制御する。
【0025】
ここで、停車保持制御を解除して発進する際のアクセル開度Accと停車保持制御フラグFstopと前後輪の全体に作用するトルクと前輪46a,46bに作用するトルクと後輪48a,48bに作用するトルクとの時間変化の様子の一例を図5に示す。図中、破線は、駆動トルクと制動トルクとの和のトルクを示す。図示するように、前後輪の制動トルクが所定の駆動力分配比(第1実施例では、前輪側40%に対して後輪側60%)に一致するよう調整された状態で停車保持制御を実行している最中に、時間t1でアクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上となりブレーキ解除が指示されると、前後輪のブレーキ油圧の減少に伴って前後輪に対する制動トルクの大きさは小さくなる。このとき、エンジン22からは、アクセル開度Accに対応してある程度の応答性をもって所定の駆動力分配比に応じた駆動トルクが前後輪に出力される。このため、時間t1から時間t2でブレーキ油圧の解除が完了するまでは、破線で示すように、前輪46a,46bに作用する駆動トルクと制動トルクとの和のトルクと、後輪48a,48bに作用する駆動トルクと制動トルクとの和のトルクとの比率は、所定の駆動力分配比に略一致した状態で推移する。これにより、停車保持制御を解除して発進する際に、前輪46a,46bに作用する駆動トルクにより後輪48a,48bが引き摺られたり、後輪48a,48bに作用する駆動トルクにより前輪46a,46bが引き摺られたりするのが抑制されるから、車輪の引き摺りに伴う異音も抑制され、車両の発進をより適正に行なうことができる。
【0026】
以上説明した第1実施例の自動車20によれば、前後輪に対してエンジン22からの動力を所定の駆動力分配比による駆動トルクとして伝達すると共に前後輪に対して調整可能な制動力分配比をもって制動トルクを作用させるものにおいて、ブレーキホールドスイッチ69がオンされたときには、所定の駆動力分配比を前後輪の目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に設定し、前後輪に対する制動トルクの総和が保持されると共に前輪46a,46bの制動トルクと後輪48a,48bの制動トルクとの比率が目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に調整され停車状態が保持されるようブレーキアクチュエータ72を制御して停車保持制御を開始し、アクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になったときに前後輪のブレーキ油圧が解除されるようブレーキアクチュエータ72を制御すると共に前後輪に要求トルクT*が出力されるようエンジン22を制御して前後輪に対して所定の駆動力分配比による駆動トルクを出力するから、運転者によりブレーキホールドスイッチ69がオンとされたときの停車状態からの発進をより適正に行なうことができる。
【0027】
第1実施例の自動車20では、停車保持制御を開始するときに前後輪に対して所定の駆動力分配比に一致するよう調整された制動トルクが作用した状態になるようブレーキアクチュエータ72を制御するものとしたが、停車保持制御を解除するまでに前後輪に対して所定の駆動力分配比に一致するよう調整された制動トルクが作用した状態になるようブレーキアクチュエータ72を制御するものであれば如何なるものとしてもよい。例えば、停車保持制御を開始するときには前後輪に対する通常の制動制御で用いられる比率などの所定の駆動力分配比とは異なる分配比(例えば、前輪側70%に対して後輪側30%など)による制動トルクが前後輪に作用した状態となると共に、その後に前後輪の制動トルクの分配比が所定の駆動力分配比に一致するようにブレーキ油圧が調整されるようブレーキアクチュエータ72を制御するものとしてもよい。
【0028】
第1実施例の自動車20では、自動変速機30からの動力を入力すると共にフロントプロペラシャフト41とリヤプロペラシャフト43とに対して所定の駆動力分配比による駆動トルクを伝達するセンターデファレンシャルギヤ40を備えるものとしたが、フロントプロペラシャフト41とリヤプロペラシャフト43とに対して調整可能な駆動力分配比をもって駆動トルクを伝達するセンターデファレンシャルギヤを備えるものとしてもよい。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明の第2実施例としての電気自動車120について説明する。図6は、本発明の第2実施例としての電気自動車120の構成の概略を示す構成図である。第2実施例の電気自動車120は、図1に例示した第1実施例の自動車20におけるエンジン22と自動変速機30とエンジン22や自動変速機30を制御するエンジンECU24と前輪側のフロントプロペラシャフト41及び後輪側のリヤプロペラシャフト43に所定の駆動力分配比をもって駆動トルクを伝達するセンターデファレンシャルギヤ40と前後輪に対して調整可能な制動力分配比をもって制動トルクを作用させるブレーキアクチュエータ72とに代えて、前輪側に接続された周知の同期発電電動機として構成されたモータMG1と後輪側に接続された周知の同期発電電動機として構成されたモータMG2とモータMG1,MG2を駆動制御するインバータ121,122をスイッチング制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)124とインバータ121,122を介してモータMG1,MG2に電気的に接続されたバッテリ126とブレーキアクチュエータ172とを備えるハード構成をしている。重複した説明を回避するため、第2実施例の電気自動車120の構成のうち第1実施例の自動車20の構成と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0030】
ブレーキアクチュエータ172は、ブレーキペダル65の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ170の圧力(以下、マスターシリンダ圧という)を前輪46a,46bのブレーキホイールシリンダ176a,176bと後輪48a,48bのブレーキホイールシリンダ178a,178bの油圧として作用させることにより、マスターシリンダ圧に応じた制動トルクを前後輪に対して所定の制動力分配比(第2実施例では、前輪側70%に対して後輪側30%)による制動トルクとして作用させたり、ブレーキペダル65の踏み込みに無関係に、前後輪のブレーキ油圧を保持したり解除したりすることができるように構成されている。なお、第1実施例の自動車20におけるブレーキECU74に相当するものは備えないものとした。
【0031】
メイン電子制御ユニット50は、CPU52とROM54とRAM56と図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備え、メイン電子制御ユニット50には、イグニッションスイッチ60,シフトポジションセンサ62,アクセルペダルポジションセンサ64,ブレーキペダルポジションセンサ66,車速センサ68,ブレーキホールドスイッチ69からの各信号の他、図示しないマスターシリンダ圧センサにより検出されたマスターシリンダ圧Pmやバッテリ126の状態を検出する各種センサからの信号などが入力ポートを介して入力されている。メイン電子制御ユニット50からは、前後輪のブレーキ油圧を保持したり解除したりするための制御信号がブレーキアクチュエータ172に出力されている。また、メイン電子制御ユニット50は、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号を入力するモータECU124と通信ポートを介して接続されており、モータMG1,MG2の運転状態に関するデータをモータECU124から入力すると共にモータMG1,MG2を駆動制御するための制御信号をモータECU124に出力している。
【0032】
次に、こうして構成された第2実施例の電気自動車120の動作、特に登坂路で運転者がブレーキホールドスイッチ69をオンとした後に発進する際の動作について説明する。第2実施例の自動車120では、停車保持の開始制御については、メイン電子制御ユニット50により図2の停車保持開始制御ルーチンに代えて図7に例示する停車保持開始制御ルーチンが実行される。なお、停車保持の解除制御については、図3の停車保持解除制御ルーチンが実行される。図7の停車保持開始制御ルーチンは、図2の停車保持開始制御ルーチンのステップS150,S160の処理をステップS400の処理に変更した点を除いて図2の停車保持開始制御ルーチンと同一である。したがって、同一の処理について同一のステップ番号を付し、その一部の図示および詳細な説明は省略する。また、駆動制御については、メイン電子制御ユニット50により図4の駆動制御ルーチンに代えて図8に例示する停車保持制御時駆動制御ルーチンを実行する。図8のルーチンは、停車保持制御フラグFに値1が設定されているときに所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0033】
図7の停車保持開始制御ルーチンでは、停車保持制御フラグFstopが値0のときに、アクセルオフされており、停車状態であり、ブレーキオンされているときには、前後輪のブレーキ油圧が保持されるようブレーキアクチュエータ172を制御し(ステップS400)、停車保持制御フラグFstopに値1を設定して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。こうして前後輪に対して所定の制動力分配比による制動トルクが作用した状態で停車保持制御が開始され、ブレーキペダル85が戻されても停車状態が保持される。その後、アクセルペダル63が踏み込まれてアクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になると、図3の停車保持解除制御ルーチンのステップS230では前後輪のブレーキ油圧が解除されるようブレーキアクチュエータ172が制御され、ステップS240ではマスターシリンダ圧センサにより検出されたマスターシリンダ圧Pmによりブレーキ油圧の解除が判定される。
【0034】
次に、停車保持制御が実行されているときの駆動制御について説明する。図8の停車保持制御時駆動制御ルーチンが実行されると、メイン電子制御ユニット50のCPU52は、まず、アクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accや車速センサ68からの車速Vなど制御に必要なデータを入力する処理し(ステップS500)、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて前後輪に要求される要求トルクTm*を設定する処理を実行する(ステップS510)。要求トルクTm*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTm*との関係を低車速領域ではアクセル開度Accが値0から大きくなるほどクリープトルクに相当するトルクから大きくなるよう予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTm*を導出し、レート処理などの緩変化処理を施して設定するものとした。
【0035】
続いて、前述した所定の制動力分配比を前後輪に対するモータトルクの分配を定めるための前後輪の目標駆動力分配比Kmf*,Kmr*に設定し(ステップS520)、設定した前輪46a,46bの目標駆動力分配比Kmf*と要求トルクTm*との積をフロントデファレンシャルギヤ42のギヤ比Gdで割ることにより前輪側のモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共に(ステップS530)、設定した後輪48a,48bの目標駆動力分配比Kmr*と要求トルクTm*との積をリヤデファレンシャルギヤ44のギヤ比Grで割ることにより後輪側のモータMG2から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm2*を設定し(ステップS540)、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU124に送信して(ステップS550)、停車保持制御時駆動制御ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU124は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ121,122のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、停車保持制御を解除して発進する際に、前後輪のブレーキ油圧の解除を開始してから完了するまでは、前輪46a,46bに作用する駆動トルクと制動トルクとの和のトルクと、後輪48a,48bに作用する駆動トルクと制動トルクとの和のトルクとの比率が、所定の制動力分配比(第2実施例では、前輪側70%に対して後輪側30%)に略一致した状態で推移する。これにより、前輪46a,46bに作用する駆動トルクにより後輪48a,48bが引き摺られたり、後輪48a,48bに作用する駆動トルクにより前輪46a,46bが引き摺られたりするのが抑制されるから、車輪の引き摺りに伴う異音も抑制され、車両の発進をより適正に行なうことができる。
【0036】
以上説明した第2実施例の電気自動車120によれば、前後輪に対してモータトルクを調整可能に出力すると共に前後輪に対して所定の制動力分配比による制動トルクを作用させるものにおいて、ブレーキホールドスイッチ69がオンされたときには、ブレーキ油圧の保持により停車状態が保持されるようブレーキアクチュエータ172を制御して前後輪に対して所定の制動力分配比による制動トルクが作用した状態で停車保持制御を開始し、アクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になったときに前後輪のブレーキ油圧が解除されるようブレーキアクチュエータ172を制御すると共に、所定の制動力分配比に設定した前後輪の目標駆動力分配比Kmf*,Kmr*により要求トルクTm*を分配したトルク指令Tm1*,Tm2*で前輪側のモータMG1と後輪側のモータMG2とを制御して前後輪にモータトルクを出力するから、運転者によりブレーキホールドスイッチ69がオンとされたときの停車状態からの発進をより適正に行なうことができる。
【0037】
第2実施例の電気自動車120では、前輪側にモータMG1からの動力を出力するものとしたが、エンジンとモータMG1と前輪側の駆動軸とにそれぞれキャリアとサンギヤとリングギヤとを接続する遊星歯車機構を介して前輪側に動力を出力するものとしてもよい。
【0038】
第2実施例の電気自動車120では、マスターシリンダ圧に応じた制動トルクを前後輪に対して所定の制動力分配比による制動トルクとして作用させるブレーキアクチュエータ172を備えるものとしたが、前後輪に対して調整可能な制動力分配比をもって制動トルクを作用させることができるブレーキアクチュエータを備えるものとしてもよい。
【0039】
第1実施例の自動車20では、前後輪に対してエンジン22からの動力を所定の駆動力分配比による駆動トルクとして伝達すると共に前後輪に対して調整可能な制動力分配比をもって制動トルクを作用させるものに適用して説明し、第2実施例の電気自動車120では、前後輪に対して駆動トルクを調整可能に出力すると共に前後輪に対して所定の制動力分配比による制動トルクを作用させるものに適用して説明したが、前後輪に対する駆動力分配比を調整可能に駆動トルクを出力すると共に前後輪に対する制動力分配比を調整可能に制動トルクを作用させるものに適用するものとしてもよい。この場合、図1の自動車20や図6の電気自動車120に代えて、図9のハイブリッド自動車220に適用することができる。図9のハイブリッド自動車220は、図1に例示した第1実施例の自動車20におけるエンジン22と自動変速機30とエンジン22や自動変速機30を制御するエンジンECU24と前輪側のフロントプロペラシャフト41及び後輪側のリヤプロペラシャフト43に所定の駆動力分配比をもって駆動トルクを伝達するセンターデファレンシャルギヤ40とに代えて、エンジン22と、周知の同期発電電動機として構成されたモータMG1と、前輪側の駆動軸232とエンジン22の出力軸とモータMG1の回転軸とにそれぞれリングギヤとキャリアとサンギヤとが接続された遊星歯車機構230と、後輪側の駆動軸234に接続された周知の同期発電電動機として構成されたモータMG2と、インバータ221,222をスイッチング制御してモータMG1,MG2を駆動制御するモータECU224とインバータ221,222を介してモータMG1,MG2に電気的に接続されたバッテリ226とを備えるハード構成をしている。変形例のハイブリッド自動車220の構成のうち第1実施例の自動車20の構成と同一の構成については同一の符号を付してある。この変形例のハイブリッド自動車220では、第1実施例と同様の制御を行なうものとしてもよいし、第2実施例と同様の制御を行なうものとしてもよい。第1実施例の同様の制御としては、ブレーキホールドスイッチ69がオンされたときには、前後輪に対する車重分配に基づく比率などの通常の駆動制御で用いられる駆動力分配比を前後輪の目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に設定し、前後輪に対する制動トルクの総和が保持されると共に前輪46a,46bの制動トルクと後輪48a,48bの制動トルクとの比率が目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に調整され停車状態が保持されるようブレーキアクチュエータ72を制御して停車保持制御を開始し、アクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になったときに前後輪のブレーキ油圧が解除されるようブレーキアクチュエータ72を制御すると共に前後輪に要求される要求トルクが通常用いられる駆動力分配比により前輪側と後輪側とに分配されて出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものとすることができる。第2実施例の同様の制御としては、ブレーキホールドスイッチ69がオンされたときには、ブレーキ油圧の保持により停車状態が保持されるようブレーキアクチュエータ72を制御して前後輪に対して車重分配に基づく比率などの通常用いられる制動力分配比による制動トルクが作用した状態で停車保持制御を開始し、アクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になったときに前後輪のブレーキ油圧が解除されるようブレーキアクチュエータ72を制御すると共に、前後輪に要求される要求トルクが通常用いられる制動力分配比と同じ比率で前輪46a,46bと後輪48a,48bとに分配されて出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものとすることができる。これらの制御により、運転者によりブレーキホールドスイッチ69がオンとされたときの停車状態からの発進をより適正に行なうことができる。
【0040】
この変形例のハイブリッド自動車220では、フロントデファレンシャルギヤ42に駆動軸232が直接接続されてなるものとしたが、フロントデファレンシャルギヤ42に変速機や減速機を介して駆動軸232が接続されてなるものとしてもよい。変形例のハイブリッド自動車220では、エンジン22とモータMG1とが接続された遊星歯車機構230に駆動軸232が接続されてなるものとしたが、さらに、動力を入出力可能なモータが直接または変速機や減速機を介して駆動軸232に接続されてなるものとしてもよい。また、変形例のハイブリッド自動車220では、エンジン22及びモータMG1からの動力を遊星歯車機構230を介して前輪側に伝達すると共にモータMG2からの動力を後輪側に出力するものとしたが、遊星歯車機構を介して出力されるエンジン及び第1モータからの動力と第2モータから出力される動力とを前後輪に対する駆動力分配比を調整可能なセンターデファレンシャルギヤに入力して前輪側と後輪側とに出力するものとしてもよい。
【0041】
また、こうした自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の列車などの車両の形態としてもよいし、車両の制御方法の形態としても構わない。
【0042】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。第1実施例では、エンジン22と自動変速機30とセンターデファレンシャルギヤ40とフロントプロペラシャフト41及びフロントデファレンシャルギヤ42とリヤプロペラシャフト43及びリヤデファレンシャルギヤ44とにより構成されるものが「駆動力出力手段」に相当し、ブレーキマスターシリンダ70とブレーキアクチュエータ72とブレーキホイールシリンダ76a,76b,78a,78bとにより構成されるものが「制動力付与手段」に相当し、ブレーキホールドスイッチ69が「停車保持指示手段」に相当し、ブレーキホールドスイッチ69がオンされたときに所定の駆動力分配比を前後輪の目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に設定しブレーキ保持の指示信号と設定した目標制動力分配比Kbf*,Kbr*を送信する図2の停車保持開始制御ルーチンとその後にアクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になったときにブレーキ解除の指示信号を送信する図3の停車保持解除制御ルーチンと前後輪への要求トルクT*を設定してエンジンECU24に送信する図4の駆動制御ルーチンとを実行するメイン電子制御ユニット50とブレーキ保持の指示信号と目標制動力分配比Kbf*,Kbr*やブレーキ解除の指示信号を受信して前後輪に対する制動トルクの総和を保持して目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に応じた制動トルクを前後輪に作用させたり前後輪のブレーキ油圧が解除されるようにブレーキアクチュエータ72を制御するブレーキECU74と前後輪に要求トルクT*が出力されるようエンジン22を制御するエンジンECU24とが「制御手段」に相当する。また、第2実施例では、モータMG1,MG2とインバータ121,122とバッテリ126とフロントデファレンシャルギヤ42とリヤデファレンシャルギヤ44とにより構成されるものが「駆動力出力手段」に相当し、ブレーキマスターシリンダ170とブレーキアクチュエータ172とブレーキホイールシリンダ176a,176b,178a,178bとにより構成されるものが「制動力付与手段」に相当し、ブレーキホールドスイッチ69が「停車保持指示手段」に相当し、ブレーキホールドスイッチ69がオンされたときに前後輪のブレーキ油圧が保持されるようブレーキアクチュエータ172を制御する図7の停車保持開始制御ルーチンを実行しその後にアクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になったときにブレーキ油圧を解除するようブレーキアクチュエータ172を制御する図3の停車保持解除制御ルーチンを実行し停車保持制御が実行されているときに前後輪への要求トルクTm*と所定の制動力分配比に設定された前後輪の駆動力分配比Kmf*,Kmr*とに基づいてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU124に送信する図8の停車保持制御時駆動制御ルーチンを実行するメイン電子制御ユニット50とトルク指令Tm1*,Tm2*でモータMG1,MG2を制御するモータECU124とが「制御手段」に相当する。さらに、エンジン22とモータMG1及びインバータ221と遊星歯車機構230と前輪側の駆動軸232とフロントデファレンシャルギヤ42とモータMG2及びインバータ222と後輪側の駆動軸234とリヤデファレンシャルギヤ44とバッテリ226とにより構成されるものも「駆動力出力手段」に相当する。
【0043】
ここで、「駆動力出力手段」としては、第1実施例のエンジン22と自動変速機30とセンターデファレンシャルギヤ40とフロントプロペラシャフト41及びフロントデファレンシャルギヤ42とリヤプロペラシャフト43及びリヤデファレンシャルギヤ44とにより構成されるものや第2実施例のモータMG1,MG2とインバータ121,122とバッテリ126とフロントデファレンシャルギヤ42とリヤデファレンシャルギヤ44とにより構成されるもの,変形例のエンジン22とモータMG1及びインバータ221と遊星歯車機構230と前輪側の駆動軸232とフロントデファレンシャルギヤ42とモータMG2及びインバータ222と後輪側の駆動軸234とリヤデファレンシャルギヤ44とバッテリ226とにより構成されるものに限定されるものではなく、前後輪に駆動力を出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「制動力付与手段」としては、第1実施例や変形例のブレーキマスターシリンダ70とブレーキアクチュエータ72とブレーキホイールシリンダ76a,76b,78a,78bとにより構成されるものや第2実施例のブレーキマスターシリンダ170とブレーキアクチュエータ172とブレーキホイールシリンダ176a,176b,178a,178bとにより構成されるものに限定されるものではなく、運転者のブレーキ操作に基づく前後輪への制動力の付与と運転者のブレーキ操作なしに前後輪への制動力の付与とが可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「停車保持指示手段」としては、ブレーキホールドスイッチ69に限定されるものではなく、電子制御ユニットによるものなど、停車状態の保持を指示するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、第1実施例のメイン電子制御ユニット50とエンジンECU24とブレーキECU74とからなる組み合わせや第2実施例のメイン電子制御ユニット50とモータECU124とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、第1実施例のブレーキホールドスイッチ69がオンされたときに所定の駆動力分配比を前後輪の目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に設定し前後輪に対する制動トルクの総和を保持して目標制動力分配比Kbf*,Kbr*に応じた制動トルクが前後輪に作用するようブレーキアクチュエータ72を制御しその後にアクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になったときに前後輪のブレーキ油圧が解除されるようにブレーキアクチュエータ72を制御し前後輪への要求トルクT*を設定して前後輪に要求トルクT*が出力されるようエンジン22を制御するものや、第2実施例のブレーキホールドスイッチ69がオンされたときに前後輪のブレーキ油圧が保持されるようブレーキアクチュエータ172を制御しその後にアクセル開度Accが解除判定閾値Aref以上になったときにブレーキ油圧を解除するようブレーキアクチュエータ172を制御し停車保持制御が実行されているときに前後輪への要求トルクTm*と所定の制動力分配比に設定された前後輪の駆動力分配比Kmf*,Kmr*とに基づいてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、制動力付与手段による前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう制動力付与手段を制御し、停車保持指示手段による停車保持の指示に基づいて停車保持している状態で停車保持を解除する解除条件が成立したときには制動力付与手段による前後輪への制動力分配と駆動力出力手段による前後輪への駆動力分配とが略一致した状態で制動力付与手段による前後輪への制動力の付与が解除されると共に駆動力出力手段により前後輪に駆動力が出力されるよう制動力付与手段と駆動力出力手段とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0044】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0045】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施例としての自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】第1実施例のメイン電子制御ユニット50により実行される停車保持開始制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】第1実施例のメイン電子制御ユニット50により実行される停車保持解除制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】第1実施例のメイン電子制御ユニット50により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】停車保持制御を解除して発進する際のアクセル開度Accと停車保持制御フラグFstopと前後輪の全体に作用するトルクと前輪46a,46bに作用するトルクと後輪48a,48bに作用するトルクとの時間変化の様子の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施例としての電気自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図7】第2実施例のメイン電子制御ユニット50により実行される停車保持開始制御ルーチンの一例の一部を示すフローチャートである。
【図8】第2実施例のメイン電子制御ユニット50により実行される停車保持制御時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図9】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0048】
20 自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、30 自動変速機、41 フロントプロペラシャフト、42 フロントデファレンシャルギヤ、43 リヤプロペラシャフト、44 リヤデファレンシャルギヤ、46a,46b 前輪、48a,48b 後輪、50 メイン電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、56 RAM、60 イグニッションスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、69 ブレーキホールドスイッチ、70,170 ブレーキマスターシリンダ、72,172 ブレーキアクチュエータ、74,174 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、76a,76b,78a,78b,176a,176b,178a,178b, ブレーキホイールシリンダ、120 電気自動車、121,122,221,222 インバータ、124,224 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、126,226 バッテリ、220 ハイブリッド自動車、230 遊星歯車機構、232,234 駆動軸、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪に駆動力を出力する駆動力出力手段と、
運転者のブレーキ操作に基づく前記前後輪への制動力の付与と運転者のブレーキ操作なしに前記前後輪への制動力の付与とが可能な制動力付与手段と、
停車状態の保持を指示する停車保持指示手段と、
前記停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう前記制動力付与手段を制御し、前記停車保持指示手段による停車保持の指示に基づいて停車保持している状態で停車保持を解除する解除条件が成立したときには前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力分配と前記駆動力出力手段による前記前後輪への駆動力分配とが略一致した状態で前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与が解除されると共に前記駆動力出力手段により前記前後輪に駆動力が出力されるよう前記制動力付与手段と前記駆動力出力手段とを制御する制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記駆動力出力手段は、前記前後輪への所定の駆動力分配をもって該前後輪に駆動力を出力する手段であり、
前記制動力付与手段は、前記前後輪への制動力分配を調整可能に該前後輪に制動力を付与する手段であり、
前記制御手段は、前記停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力分配を前記解除条件が成立したときに前記駆動力出力手段により前記前後輪に出力する駆動力における前記所定の駆動力分配に略一致させるよう調整して前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう前記制動力付与手段を制御する手段である、
車両。
【請求項3】
請求項1記載の車両であって、
前記駆動力出力手段は、前記前後輪への駆動力分配を調整可能に該前後輪に駆動力を出力する手段であり、
前記制動力付与手段は、前記前後輪への所定の制動力分配をもって該前後輪に制動力を付与する手段であり、
前記制御手段は、前記解除条件が成立したときには、前記駆動力出力手段による前記前後輪への駆動力分配を前記制動力付与手段により前記前後輪に付与している制動力における前記所定の制動力分配に略一致させるよう調整して前記駆動力出力手段により前記前後輪に駆動力が出力されるよう前記駆動力出力手段を制御する手段である、
車両。
【請求項4】
請求項1記載の車両であって、
前記駆動力出力手段は、前記前後輪への駆動力分配を調整可能に該前後輪に駆動力を出力する手段であり、
前記制動力付与手段は、前記前後輪への制動力分配を調整可能に該前後輪に制動力を付与する手段であり、
前記制御手段は、前記停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力分配を前記解除条件が成立したときに前記駆動力出力手段により前記前後輪に出力する駆動力における該前後輪への駆動力分配に略一致させるよう調整して前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう前記制動力付与手段を制御するか、または、前記解除条件が成立したときに前記駆動力出力手段による前記前後輪への駆動力分配を前記制動力付与手段により前記前後輪に付与している制動力における該前後輪への制動力分配に略一致させるよう調整して前記駆動力出力手段により前記前後輪に駆動力が出力されるよう前記駆動力出力手段を制御するか、のうちいずれか一方の制御を行なう手段である、
車両。
【請求項5】
前記駆動力出力手段は、内燃機関と、動力を入出力する発電機と、前記前後輪の一方の車軸に連結された第1駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記前後輪の他方の車軸に連結された第2駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を有する手段である請求項3または4記載の車両。
【請求項6】
前後輪に駆動力を出力する駆動力出力手段と、運転者のブレーキ操作に基づく前記前後輪への制動力の付与と運転者のブレーキ操作なしに前記前後輪への制動力の付与とが可能な制動力付与手段と、停車状態の保持を指示する停車保持指示手段と、を備える車両の制御方法であって、
前記停車保持指示手段により停車保持が指示されたときには、前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与により車両の停止が保持されるよう前記制動力付与手段を制御し、前記停車保持指示手段による停車保持の指示に基づいて停車保持している状態で停車保持を解除する解除条件が成立したときには前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力分配と前記駆動力出力手段による前記前後輪への駆動力分配とが略一致した状態で前記制動力付与手段による前記前後輪への制動力の付与が解除されると共に前記駆動力出力手段により前記前後輪に駆動力が出力されるよう前記制動力付与手段と前記駆動力出力手段とを制御する、
ことを特徴とする車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−214583(P2009−214583A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57738(P2008−57738)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】