説明

車両用通報装置

【課題】車両の停車する位置を通報することにより、緊急車両を車両の停車位置に円滑に到着させる車両用通報装置を提供すること。
【解決手段】車両の運転者の状態の異常を検知し(S10)、運転者の状態が異常であると判断された場合に車両の停車位置を決定し(S14)、少なくとも車両が停車する位置を通報し(S18)、その停車位置まで車両の誘導を行う(S20)。これにより、救急車などの緊急車両が車両の停車している位置を正確に知ることができるため、車両の停車位置に迅速に向かうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に異常があった場合に通報を行う車両用通報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転者に異常があった場合に通報を行う車両用通報装置として、例えば特許第3862192号公報に記載されるように、車両の運転者の健康状態を判定し、その健康状態が正常でない場合に車両の外部へ無線で通報し、車両を停止させる危険回避動作を実行するものが知られている。
【特許文献1】特許第3862192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような装置にあっては、運転者が正常でない車両の停車位置に救急車などの緊急車両が迅速に到着できない場合がある。例えば、車両を停車させる安全な場所が通報した位置から離れている場合、緊急車両が通報した位置に行っても車両が見当たらず、車両のもとに到着することが遅れてしまう。
【0004】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、車両の停車する位置を通報することにより、緊急車両を車両の停車位置に円滑に到着させる車両用通報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明に係る車両用通報装置は、車両の運転者の状態の異常を検知する検知手段と、運転者の状態が異常であると判断された場合に前記車両の停車位置を決定する停車位置決定手段と、少なくとも前記停車位置を通報する通報手段と、前記停車位置まで前記車両を誘導する車両誘導手段とを備えて構成されている。
【0006】
この発明によれば、運転者の異常時に車両を誘導する際に予め誘導により停車させる位置を通報することにより、救急車などの緊急車両が車両の停車している位置を正確に知ることができるため、車両の停車位置に迅速に向かうことができる。
【0007】
また本発明に係る車両用通報装置において、運転者の状態が異常であると判断された場合に前記車両が誘導によって停車位置に到着する時刻を演算する到着時刻演算手段を備え、前記通報手段は、少なくとも前記停車位置及び前記停車位置に到着する時刻を通報することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両を停車させようとする位置を通報することにより、緊急車両を車両の停車位置に円滑に到着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1に本発明の実施形態に係る車両用通報装置の構成概要図を示す。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用通報装置1は、車両に搭載される装置であってその車両の運転者に異常がある場合に通報を行う装置である。この車両用通報装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2、ナビゲーションシステム3、カメラ4、通信部5、自動走行部6を備えている。
【0012】
ECU2は、車両用通報装置1全体の制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。このECU2は、運転者の状態が異常である場合、例えば意識低回している場合に、車両の停車位置を探索し決定する停車位置決定手段として機能する。また、現在位置から停車位置まで自動走行するのに必要な時間を演算し停車位置に到着する時刻を演算する到着時刻演算手段として機能する。また、停車位置を緊急管理センタへ通報させる通報制御手段として機能する。さらに、車両を停車位置まで誘導指令を出力する車両誘導手段として機能する。
【0013】
ナビゲーションシステム3は、車両の位置を検出し、車両の停車場所を探索するための地図データを提供するものであり、例えばGPS(Global Positioning System)を備えたものが用いられる。
【0014】
カメラ4は、車両の運転者の状態を検知する検知手段として機能するものであり、運転者を撮像した画像に基づいて運転者の状態を検知することができる。このカメラ4は、運転者を撮影できるように設置され、例えば運転者の顔を正面側から撮像できるように設置される。このようにカメラ4を設置することにより、カメラ4の撮像画像に基づいて運転者の意識が所定以上に低下しているか否かを判定することができる。
【0015】
なお、車両用通報装置1における検知手段としては、運転者の状態を検知できるものであれば、カメラ4のように運転者の画像により運転者の状態を検知するもの以外のものであってもよく、例えば運転者の体温、脈拍などによって運転者の状態を検知するものであってもよい。
【0016】
通信部5は、緊急管理センタへ通報するための通報手段として機能するものであり、緊急管理センタと通信可能なものが用いられる。この通信部5としては、例えば路車間通信機であって電子メール送信機能や通話機能などを備えたものが用いられる。
【0017】
自動走行部6は、車両を停止位置まで自動誘導させる車両誘導手段として機能するものであり、例えばエンジン駆動ECU、ブレーキECU、操舵ECUなどによって構成される。自動走行部6は、ECU2から出力される走行制御信号に従って作動し、車両を停止位置まで自動走行させる。
【0018】
次に、本実施形態に係る車両用通報装置の動作について説明する。
【0019】
図2は、本実施形態に係る車両用通報装置1の動作を示すフローチャートである。この図2の制御処理は、例えば車両走行中にECU2によって所定の周期で繰り返して実行される。
【0020】
まず、図2のS10に示すように、車両の運転者の状態が異常であるか否かが判断される。例えば、運転者の意識が所定以上低下するなど運転者が正常な運転が行えない状態であるか否かが判断される。この判断は、カメラ4の撮像画像に基づいて行われ、例えば目を閉じている時間が所定時間以上である場合、または所定時間以上目を閉じている回数が所定以上の場合などに車両の運転者の状態が異常であると判断され、そうでない場合に車両の運転者の状態が異常でないと判断される。
【0021】
S10にて車両の運転者の状態が異常でないと判断された場合には、制御処理を終了する。一方、S10にて車両の運転者の状態が異常であると判断された場合には、車両の停止場所探索処理が行われる(S12)。停止場所探索処理は、車両を安全に停車させておくことができる場所を地図データに基づいて探索する処理である。例えば、ナビゲーションシステム3により現在の車両の位置を検出し、その車両の位置から近くの停車場所を探索する。
【0022】
そして、S14に移行し、車両の停車位置決定処理が行われる。停車位置決定処理は、車両の停車位置を決定する処理である。例えば、S12にて車両の停車場所として複数の場所が探索された場合、その場所のうち最適な停車場所を停車位置として決定する。停車位置としては、道路の路肩が広いときにはその路肩が停車位置と決定される場合もあるし、商業施設の駐車場が停車位置と決定される場合もあるし、また高速道路ではパーキングエリアやサービスエリアの駐車場が停車位置と決定される場合もある。この場合には、現在の車両の位置と停車位置がかなり離れることとなる。
【0023】
そして、S16に移行し、到着時刻演算処理が行われる。到着時刻演算処理は、現在の車両の位置から停車位置まで自動運転走行を行った場合に停車位置に到着する時刻を演算する処理である。例えば、現在位置から停車位置まで自動走行するのに必要な時間を演算し停車位置に到着する時刻を演算する。なお、このS16の到着時刻演算処理の実行を省略する場合もある。
【0024】
そして、S18に移行し、通報処理が行われる。通報処理は、運転者の状態が異常であること、車両の停車位置及び車両の到着時刻を通報する処理であり、例えば通信部5を通じて緊急管理センタに通報が行われる。このとき、運転者の状態がどの程度異常であるのかを通報してもよい。この通報処理により、緊急管理センタでは、車両の運転者の異常、車両の停車位置及び車両の到着時刻を知ることができる。従って、救急車などの緊急車両に対し出動すべき場所を的確に指示することができる。なお、この通報処理において、運転者の状態が異常であること、車両の停車位置を通報し、車両の到着時刻の通報を省略する場合もある。
【0025】
そして、S20に移行し、車両誘導処理が行われる。車両誘導処理は、車両を停車位置に自動運転により誘導する処理である。例えば、ECU2により現在位置から停車位置までの経路に沿って経路計画を演算し、その経路計画に従ってECU2から自動走行部6に走行制御信号が出力される。これにより、自動走行部6が作動し、車両を停止位置まで自動走行させる。
【0026】
以上のように本実施形態に係る車両用通報装置によれば、運転者の異常時に車両を誘導する際に予め誘導により停車させる位置を通報することにより、救急車などの緊急車両が車両の停車している位置を正確に知ることができるため、車両の停車位置に迅速に向かうことができる。
【0027】
例えば、車両の運転者が異常な状態になったことを通報した際、その通報時の車両位置と停車位置が離れていると、緊急車両が通報したときに向かってしまい、所望の車両のところへ到着することができなくなり、またその到着が遅れることとなる。これに対し、本実施形態に係る車両用通報装置によれば、車両の停車位置を通報するので、緊急車両が迅速に車両の停車している場所に向かうことができる。
【0028】
なお、上述した実施形態は本発明に係る車両用通報装置一例を示すものである。本発明に係る車両用通報装置は、この実施形態に係る車両用通報装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る車両用通報装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用通報装置の構成概要図である。
【図2】図1の車両用通報装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1…走行制御装置、2…ECU、3…ナビゲーションシステム、4…カメラ、5…通信部、6…自動走行部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の状態の異常を検知する検知手段と、
運転者の状態が異常であると判断された場合に前記車両の停車位置を決定する停車位置決定手段と、
少なくとも前記停車位置を通報する通報手段と、
前記停車位置まで前記車両を誘導する車両誘導手段と、
を備えた車両用通報装置。
【請求項2】
運転者の状態が異常であると判断された場合に前記車両が誘導によって停車位置に到着する時刻を演算する到着時刻演算手段を備え、
前記通報手段は、少なくとも前記停車位置及び前記停車位置に到着する時刻を通報する、
請求項1に記載の車両用通報装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−265760(P2009−265760A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111651(P2008−111651)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】