説明

トレンチの埋め込み方法および成膜システム

【課題】 トレンチの内部に酸化障壁となる膜を形成しなくても、トレンチの内部に埋め込まれた埋め込み材料に空隙が発生することを抑制することが可能なトレンチの埋め込み方法を提供すること。
【解決手段】 少なくともトレンチ6の側壁に酸化膜7が形成されている半導体基板1を加熱し、半導体基板1の表面にアミノシラン系ガスを供給して半導体基板1上にシード層8を形成し、シード層8が形成された半導体基板1を加熱し、シード層8の表面にモノシランガスを供給してシード層8上にシリコン膜9を形成し、シリコン膜9が形成された半導体基板1のトレンチ6を、焼成することで収縮する埋め込み材料10を用いて埋め込み、トレンチ6を埋め込む埋め込み材料10を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成するとともに、シリコン膜9、及びシード層8をシリコン酸化物に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トレンチの埋め込み方法および成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置は、その内部に微細なトレンチ構造を持つ。微細なトレンチ構造の典型的な例は、STI(Shallow Trench Isolation)である。STIは半導体素子の活性領域どうしを分離する素子分離領域であり、シリコン基板に微細なトレンチを形成し、この微細なトレンチの内部に絶縁物を埋め込むことで形成される。
【0003】
埋め込まれる絶縁物としては、例えば、特許文献1に記載されているようにSOD(Spin−On Dielectric)が知られており、特に、PHPS(PerHydroPolySilazane:SiHNH)を主成分とする無機ポリマーが注目されている。PHPSは、例えば、水蒸気雰囲気中で焼成されると、シリコン酸化物(SiO)に変わる。反応式は、次の通りである。
SiHNH+2HO → SiO+NH+2H
しかし、PHPSはシリコン酸化物に変化するときに収縮する。このため、微細なトレンチの内部に空隙が発生してしまう。
【0004】
そこで、特許文献1はPHPSの収縮量を見越し、微細なトレンチの内部に膨張可能な膜を予め形成してから、PHPSを埋め込む。膨張可能な膜はシリコン(Si)膜である。特許文献1は、シリコン膜をシリコン酸化膜に変化させ、膨張させることで、PHPSの収縮分を相殺し、微細なトレンチの内部に空隙が発生することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,112,513号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、シリコン膜をシリコン酸化膜に変化させる工程、即ち、酸化工程が入る。このため、シリコン膜を形成する前に、酸素を通し難い酸化障壁となる膜を微細なトレンチの内部に形成する。酸化がシリコン基板に達することがないようにするためである。特許文献1では、酸化障壁となる膜はシリコン窒化膜(Si)である。
【0007】
しかし、トレンチの微細化がさらに進展すると、膨張可能な膜に加えて、酸化障壁となる膜をトレンチの内部に形成することが難しくなったり、あるいは形成不可能になったりすることが予測される。
【0008】
また、酸化障壁となる膜は、トレンチの内部にそのまま残る。埋め込まれる絶縁物と、酸化障壁となる膜とが異なる物質である場合には、これらの間にはバンドギャップ差が生じる。つまり、電荷をトラップしてしまうような構造が、トレンチの内部に形成されてしまう。もし、素子分離領域であるトレンチの内部に電荷がトラップされてしまうと、半導体集積回路装置の動作に支障を及ぼす可能性がある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、トレンチの内部に酸化障壁となる膜を形成しなくても、トレンチの内部に埋め込まれた埋め込み材料に空隙が発生することを抑制することが可能なトレンチの埋め込み方法、及びこのトレンチの埋め込み方法を実施することが可能な成膜システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の態様に係るトレンチの埋め込み方法は、(1)トレンチが形成され、少なくとも前記トレンチの側壁に酸化膜が形成されている半導体基板を加熱し、前記半導体基板の表面にアミノシラン系ガスを供給して前記半導体基板上にシード層を形成する工程と、(2)前記シード層が形成された半導体基板を加熱し、前記シード層の表面にモノシランガスを供給して前記シード層上にシリコン膜を形成する工程と、(3)前記シリコン膜が形成された半導体基板の前記トレンチを、焼成することで収縮する埋め込み材料を用いて埋め込む工程と、(4)前記トレンチを埋め込む前記埋め込み材料を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成するとともに、前記シリコン膜、及び前記シード層をシリコン酸化物に変化させる工程とを含む。
【0011】
この発明の第2の態様に係る成膜システムは、半導体基板に形成されたトレンチの埋め込みに使用される成膜システムであって、トレンチが形成され、少なくとも前記トレンチの側壁に酸化膜が形成されている半導体基板を加熱し、前記半導体基板の表面にアミノシラン系ガスを供給して前記半導体基板上にシード層を形成し、前記シード層が形成された半導体基板を加熱し、前記シード層の表面にモノシランガスを供給して前記シード層上にシリコン膜を形成する第1の処理室と、前記シリコン膜が形成された半導体基板の前記トレンチを、焼成することで収縮する埋め込み材料を用いて埋め込む第2の処理室と、前記トレンチを埋め込む前記埋め込み材料を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成するとともに、前記シリコン膜、及び前記シード層をシリコン酸化物に変化させる第3の処理室とを含む。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、トレンチの内部に酸化障壁となる膜を形成しなくても、トレンチの内部に埋め込まれた埋め込み材料に空隙が発生することを抑制することが可能なトレンチの埋め込み方法、及びこのトレンチの埋め込み方法を実施することが可能な成膜システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法のシーケンスの一例を示す流れ図
【図2】図1に示すシーケンス中の半導体基板の状態を概略的に示す断面図
【図3】堆積時間とシリコン膜の膜厚との関係を示す図
【図4】図3中の破線枠A内を拡大した拡大図
【図5】シード層及びシリコン膜を成膜することが可能な成膜装置の一例を概略的に示す断面図
【図6】この発明の第2の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法のシーケンスの一例を示す流れ図
【図7】この発明の第3の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法のシーケンスの一例を示す流れ図
【図8】第1の実施形態に従って成膜されたシリコン膜9を持つ半導体装置の内部構造を示す図面代用写真
【図9】第3の実施形態に従って成膜されたシリコン膜9を持つ半導体装置の内部構造を示す図面代用写真
【図10】ジシランガスのみを用いて成膜されたシリコン膜9を持つ半導体装置の内部構造を示す図面代用写真
【図11】シランガスのみを用いて成膜されたシリコン膜9を持つ半導体装置の内部構造を示す図面代用写真
【図12】この発明の第3の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法のシーケンスの他例を示す流れ図
【図13】成膜システムの第1例を概略的に示すブロック図
【図14】成膜システムの第2例を概略的に示すブロック図
【図15】成膜システムの第3例を概略的に示すブロック図
【図16】成膜システムの第4例を概略的に示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明者らは、トレンチの内部から酸化障壁となる膜を無くすことができないか、試行を重ねた。
【0015】
膨張可能な膜はシリコン膜であり、シリコン膜は、一般的にジシラン(Si)を用いて成膜される。ジシランは平坦面への成膜には適しているが、ステップカバレッジが良くない。このため、ジシランを用いて成膜されたシリコン膜の、トレンチの側壁における膜厚は、シリコン基板の上面に比較して薄い。このようなシリコン膜を、シリコン基板の上面に形成されたシリコン膜が全て酸化される条件で酸化すると、トレンチの側壁からシリコン基板の内部へ酸化が進行してしまう。反対に、上記シリコン膜を、トレンチの側壁からシリコン基板の内部へ酸化が進行しない条件で酸化すると、シリコン基板の上面に、酸化しきれなかったシリコン膜が残ってしまう。
【0016】
このような現状から、トレンチの内部に酸化障壁となる膜を形成し、トレンチ側壁からシリコン基板の内部へ酸化が進行することを抑制しつつ、シリコン基板の上面に形成されたシリコン膜を、全て酸化しきるようにしている。
【0017】
膨張可能な膜、即ち、シリコン膜のステップカバレッジを改善するために、本願発明者らは、シリコン原料をジシランからモノシラン(SiH)に変更した。モノシランを用いて成膜したシリコン膜は、ジシランを用いて成膜したシリコン膜に比較してステップカバレッジが良い。
【0018】
しかしながら、モノシランはジシランに比較してインキュベーション時間が長い。このため、膜厚を薄くしようとすると、アイランド状に成膜されてしまい膜にならない。
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の第1の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法のシーケンスの一例を示す流れ図、図2A〜図2Gは、図1に示すシーケンス中の半導体基板の状態を概略的に示す断面図である。
【0021】
まず、図1中のステップ1に示すように、半導体基板にトレンチを形成する。
【0022】
半導体基板にトレンチを形成する一例は、以下の通りである。
【0023】
図2Aに示すように、半導体基板、本例ではシリコン基板1の表面を熱酸化し、パッド酸化膜2を形成する。次いで、パッド酸化膜2上に窒化シリコンを堆積し、シリコン窒化膜3を形成する。次いで、シリコン窒化膜3上にフォトレジストを塗布し、フォトレジスト膜4を形成する。次いで、フォトリソグラフィ法を用いて、フォトレジスト膜4にトレンチ形成パターンに対応した窓5を形成する。
【0024】
次に、図2Bに示すように、フォトレジスト膜4をマスクに用いて、シリコン窒化膜3、パッド酸化膜2、及びシリコン基板1を異方性エッチング、例えば、反応性イオンエッチングし、シリコン基板1にトレンチ6を形成する。
【0025】
次に、図1中のステップ2に示すように、半導体基板の表面に酸化膜を形成する。
【0026】
この工程は、図2Cに示すように、少なくともトレンチ6の側壁に露出したシリコン基板1の表面に、シリコン基板1よりも酸化が進行し難い膜を形成する工程である。本例では、酸化膜7を、少なくともトレンチ6の側壁に形成した。トレンチ6の側壁においては、酸化膜7はシリコン酸化物である。シリコン酸化物は、シリコンよりも酸化が進行し難い膜である。
【0027】
また、本例では、酸化膜7を、ラジカル酸化法を用いて形成した。ラジカル酸化法によれば、図2Cに示すように、トレンチ6の側壁に露出したシリコン基板1の表面だけでなく、パッド酸化膜2やシリコン窒化膜3なども酸化することができる。即ち、シリコン基板1のトレンチ形成面側の表面全体を酸化でき、酸化膜7がシリコン基板1のトレンチ形成面側の全体に形成される。シリコン基板1のトレンチ形成面側の全体に酸化膜7が形成されていると、次に形成されるシード層は、酸化膜7上に形成することができる。シード層が窒化膜上及び酸化膜上の双方に同時に形成されると、シード層の次に形成されるシリコン膜の成長速度が、窒化膜上と酸化膜上とで相違が生じる可能性がある。この点、本例のように、シード層を酸化膜7上に形成されるようにしておけば、シリコン膜の成長速度の相違を小さくでき、ステップカバレッジの改善に役立つ。
【0028】
次に、図1中のステップ3及び図2Dに示すように、酸化膜7上にシード層8を形成する。具体的には、酸化膜7が形成されたシリコン基板1を加熱し、加熱したシリコン基板1の表面にアミノシラン系ガスを流すことでシリコン基板1の表面上、本例では酸化膜7の表面上にシード層8を形成する。
【0029】
アミノシラン系ガスの例としては、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)、
DEAS(ジエチルアミノシラン)、
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、
DPAS(ジプロピルアミノシラン)、
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
等を挙げることができる。本例では、DIPASを用いた。
【0030】
ステップ3における処理条件の一例は、
DIPAS流量: 500sccm
処 理 時 間: 1min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 53.3Pa(0.4Torr)
である。ステップ3の工程を、本明細書では以下プリフローと呼ぶ。
【0031】
上記ステップ3は、モノシランを酸化膜7に吸着させやすくする工程である。ステップ3において、シード層8を形成すると記載しているが、実際にはほとんど成膜されることはない。シード層8の厚さは、好ましくは単原子層レベルの厚さ程度であることが良い。具体的なシード層8の厚さを言及すれば、0.1nm以上0.3nm以下であることが良い。
【0032】
次に、図1中のステップ4及び図2Eに示すように、シード層8上にシリコン膜9を形成する。具体的には、シード層8が形成されたシリコン基板1を加熱し、加熱したシリコン基板1の表面にモノシランガスを流すことでシリコン基板1の表面上、本例ではシード層8の表面上にシリコン膜9を形成する。
【0033】
ステップ4における処理条件の一例は、
モノシラン流量: 800sccm
処 理 時 間: 4min
処 理 温 度: 535℃
処 理 圧 力: 60Pa(0.45Torr)
である。
【0034】
上記モノシラン流量、処理温度、および処理圧力の条件では、およそ3〜6minの処理時間(堆積時間)で、2〜10nm程度の薄いアモルファスのシリコン膜9が形成される。シリコン膜9の厚さは、後に形成される埋め込み材料の縮小分を相殺するために、重要な役割を果たす。もちろん、相殺量はシード層8の微小な厚さとシリコン膜9の厚さとの合計値で決まるが、シード層8はモノシランの吸着を促進させるための層であり、ほとんど厚さがない。このため、相殺量のほとんどはシリコン膜9の膨張後の厚さが占めることになる。即ち、相殺量は、シリコン膜9の厚さでほぼ決まる。
【0035】
次に、図1中のステップ5及び図2Fに示すように、トレンチ6を、焼成することで収縮する埋め込み材料10を用いて埋め込む。具体的には、シリコン膜9が形成されたシリコン基板1の表面に、焼成することでシリコン酸化物に変化する液状の埋め込み材料10を回転塗布してトレンチ6を埋め込む。
【0036】
焼成することでシリコン酸化物に変化する材料の例としては、PHPS(PerHydroPolySilazane:SiHNH)を主成分とする無機ポリマーを挙げることができる。
【0037】
最後に、図1中のステップ6及び図2Gに示すように、トレンチ6を埋め込む埋め込み材料10を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成するとともに、シリコン膜9、及びシード層8をシリコン酸化物12に変化させる。具体的には、埋め込み材料10が塗布されたシリコン基板1を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成して埋め込み材料10をシリコン酸化物11へ変化させるとともに、シリコン膜9、及びシード層8をシリコン酸化物12に変化させる。
【0038】
ステップ6における処理条件の一例は、
O 流量: 10l/min
処 理 時 間: 45min
処 理 温 度: 750℃
処 理 圧 力: 53.3kPa(400Torr)
である。
【0039】
また、上記焼成処理の後、処理温度950℃、不活性ガス雰囲気、例えば、窒素ガス雰囲気中で熱処理し、シリコン酸化物11を、より強固な埋め込み膜とするように、さらに焼成処理を続行しても良い。
【0040】
また、上記焼成処理の前に、より低温である処理温度400℃、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中、例えば水蒸気雰囲気中で予備処理をしておいても良い。
【0041】
埋め込み材料10は、焼成されてシリコン酸化物11に変化するときに収縮する。反対に、シリコン膜9及びシード層8は、シリコン酸化物12に変化するときに膨張する。このように埋め込み材料10の収縮分を、シリコン膜9及びシード層8を膨張分で相殺することで、トレンチ6の内部に空隙が発生することを抑制する。
【0042】
空隙の発生をより良く抑制するためには、シリコン膜9の厚さ及びシード層8の厚さを、シリコン膜9の膨張量の2倍値とシード層8の膨張量の2倍値との合計値が、埋め込み材料10の収縮量に一致するように設定されると良い。
【0043】
さらに、シリコン膜9の膨張後の厚さの2倍値と、シード層8の膨張後の厚さの2倍値と、埋め込み材料10の収縮後の厚さとの合計値は、トレンチ6の幅に一致するように設定されると良い。
【0044】
これらのように設定されることで、トレンチ6の内部に空隙が発生することをより良く抑制することができる。
【0045】
また、ステップ6は、シリコン膜9及びシード層8の酸化を兼ねる。このため、ステップ6における焼成時間は、シリコン膜9及びシード層8がちょうど、酸化しきる時間に設定されることが良い。
【0046】
このように設定されることで、トレンチ6の側壁からシリコン基板1へ酸化が進行することを抑制することができる。
【0047】
ここで、本例では、シリコン膜9の原料としてモノシランを用いている。このため、シリコン膜9のステップカバレッジは、原料としてジシランやトリシランなどの高次シランを用いる場合に比較して良い。
【0048】
このため、シリコン膜9のトレンチ6の側壁における膜厚は、シリコン基板1の上面における膜厚とほぼ等しくすることができる。このため、トレンチ6の側壁上のシリコン膜9を酸化しきった時点で、シリコン基板1の上面におけるシリコン膜9を酸化しきることができる。
【0049】
つまり、シリコン膜9のステップカバレッジを改善することで、トレンチ6の側壁からシリコン基板1へ酸化を進行させるような酸化をせずに済み、トレンチ6の内部から酸化障壁となる膜を無くすことができる。
【0050】
ただし、シリコン膜9のステップカバレッジが改善されても、酸化条件によっては、トレンチ6の底部では酸化が進み難くなることもある。このような場合には、シリコン膜9及びシード層8が、シリコン基板1の上面上、及びトレンチ6の側壁上でちょうど、酸化しきる時間よりも多少長い時間をかけて、ステップ6を実行すると良い。このように酸化しきる時間よりも多少長い時間をかけて、シリコン膜9及びシード層8を過剰に酸化することで、トレンチ6の底部に未酸化のシリコン膜9及びシード層8が残らずに済む。
【0051】
この場合、シリコン膜9の厚さが薄いほど、過剰な酸化時間を短く、即ち、酸化条件を弱くすることができる。このため、シリコン膜9の厚さは薄い方が良い。シリコン基板1へ酸化が進むことを、最小限度に抑えるためである。
【0052】
このように、トレンチ6の底部に未酸化のシリコン膜9及びシード層8を残らないようにするために、シリコン膜9及びシード層8を過剰に酸化する場合には、シリコン膜9の厚さは、2nm〜5nm程度が良い。
【0053】
また、モノシランはインキュベーション時間が長い、という事情については、シリコン基板1の表面、本例では酸化膜7の表面にアミノシラン系ガスをプリフローしてシード層8を形成した後、シリコン膜9を形成することで解消した。
【0054】
図3に、堆積時間とシリコン膜9の膜厚との関係を示す。図3に示す結果は下地をシリコン酸化膜(SiO)とした場合である。本例では酸化膜7に相当する。
【0055】
本例で用いたプリフローにおける処理条件は、
DIPAS流量: 200sccm
処 理 時 間: 1min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 133.3Pa(1Torr)
である。
【0056】
同じく本例で用いたシリコン膜9を成膜するための処理条件は、
モノシラン流量: 200sccm
堆 積 時 間: 30min/45min/60min
処 理 温 度: 530℃
処 理 圧 力: 53.2Pa(0.4Torr)
である。
【0057】
シリコン膜9の膜厚は、堆積時間を30minとしたとき、45minとしたとき、及び60minとしたときの3点で測定した。
【0058】
図3中の線Iはプリフロー有りの場合、線IIはプリフロー無しの場合の結果を示している。線I、IIは、測定された3つの膜厚を最小二乗法で直線近似した直線であり、式は次の通りである。
【0059】
線I:y=17.572x−20.855 …(1)
線II:y=17.605x−34.929 …(2)
図3に示すように、プリフロー有りの場合、プリフロー無しに比較してシリコン膜9の膜厚が増す傾向が明らかとなった。
【0060】
上記(1)、(2)式をy=0、即ち、シリコン膜9の膜厚を“0”としたとき、線I、IIと堆積時間との交点を求めたものを図4に示す。
【0061】
なお、図4は図3中の破線枠A内を拡大した拡大図である。
【0062】
図4に示すように、下地がプリフロー有りのシリコン酸化膜のとき、シリコン膜9の堆積が処理開始から約1.2min(x≒1.189)から始まる。対して、下地がプリフロー無しのシリコン酸化膜のときには、シリコン膜9の堆積が処理開始から約2.0min(x≒1.984)から始まる。
【0063】
このように、下地に対してアミノシラン系ガスのプリフローを行うことで、インキュベーション時間を、約2.0minから約1.2minに短縮することができる。この結果、薄い膜厚、例えば2nm〜10nm程度の膜厚のシリコン膜9を、モノシランを用いて成膜することができる。
【0064】
以上、この発明の第1の実施形態によれば、トレンチ6の内部に酸化障壁となる膜を形成しなくても、トレンチ6の内部に埋め込まれた埋め込み材料(シリコン酸化物11、12)に空隙が発生することを抑制することができる。
【0065】
このため、第1の実施形態によれば、トレンチ6の微細化がさらに進展しても、トレンチ6を、空隙を発生させることなく埋め込むことができる、という利点を得ることができる。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、トレンチ6の内部に埋め込まれた材料は、酸化膜7も含めて全てシリコン酸化物となる。この構造による利点は、トレンチ6の内部が一種類の材料となるため、例えば、電荷をトラップしてしまうような構造がトレンチ6の内部に形成されることがない、ということである。このような構造は、半導体集積回路装置の更なる微細化にも有利である。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、酸化膜7が、ラジカル酸化法を用いて形成されたラジカル酸化膜である。ラジカル酸化膜は、熱酸化法を用いて形成した熱酸化膜よりも膜質を緻密にできる。即ち、ラジカル酸化膜は、熱酸化膜よりもさらに酸化が進行し難い膜である。したがって、酸化膜7をラジカル酸化膜とすることで、熱酸化膜に比較して、ステップ6における焼成中に、シリコン基板1へ酸化が進行することを、より抑制することができる、という利点を得ることができる。
【0068】
また、ラジカル酸化法に代えて、プラズマ酸化法を用い、酸化膜7を、プラズマ酸化膜としても、同様の利点を得ることができる。
【0069】
次に、上記シード層8及びシリコン膜9を成膜することが可能な成膜装置の一例を説明する。
【0070】
図5は、シード層8及びシリコン膜9を成膜することが可能な成膜装置の一例を概略的に示す断面図である。
【0071】
図5に示すように、成膜装置100は、下端が開口された有天井の円筒体状の処理室101を有している。処理室101の全体は、例えば、石英により形成されている。処理室101内の天井には、石英製の天井板102が設けられている。処理室101の下端開口部には、例えば、ステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド103がOリング等のシール部材104を介して連結されている。
【0072】
マニホールド103は処理室101の下端を支持している。マニホールド103の下方からは、被処理体として複数枚、例えば、50〜100枚の半導体基板、本例では、シリコン基板1を多段に載置可能な石英製のウエハボート105が処理室101内に挿入可能となっている。これにより、処理室101内に被処理体、例えば、半導体基板、本例では、例えば、下地としてSiO膜が予め堆積されたシリコン基板1が収容される。ウエハボート105は複数本の支柱106を有し、支柱106に形成された溝により複数枚のシリコン基板1が支持されるようになっている。
【0073】
ウエハボート105は、石英製の保温筒107を介してテーブル108上に載置されている。テーブル108は、マニホールド103の下端開口部を開閉する、例えば、ステンレススチール製の蓋部109を貫通する回転軸110上に支持される。回転軸110の貫通部には、例えば、磁性流体シール111が設けられ、回転軸110を気密にシールしつつ回転可能に支持している。蓋部109の周辺部とマニホールド103の下端部との間には、例えば、Oリングよりなるシール部材112が介設されている。これにより処理室101内のシール性が保持されている。回転軸110は、例えば、ボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム113の先端に取り付けられている。これにより、ウエハボート105および蓋部109等は、一体的に昇降されて処理室101内に対して挿脱される。
【0074】
成膜装置100は、処理室101内に、処理に使用するガスを供給する処理ガス供給機構114を有している。
【0075】
処理ガス供給機構114は、アミノシラン系ガス供給源117、モノシランガス供給源118を含んでいる。
【0076】
不活性ガス供給機構115は、不活性ガス供給源120を含んでいる。不活性ガスは、パージガス等に利用される。不活性ガスの一例は窒素(N)ガスである。
【0077】
アミノシラン系ガス供給源117は、流量制御器121a及び開閉弁122aを介して、分散ノズル123に接続されている。分散ノズル123は石英管よりなり、マニホールド103の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる。分散ノズル123の垂直部分には、複数のガス吐出孔124が所定の間隔を隔てて形成されている。アミノシラン系ガスは、各ガス吐出孔124から水平方向に処理室101内に向けて略均一に吐出される。
【0078】
モノシランガス供給源118は、流量制御器121b及び開閉弁122bを介して、分散ノズル125に接続されている。分散ノズル125は石英管よりなり、マニホールド103の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる。分散ノズル125の垂直部分には、複数のガス吐出孔126が所定の間隔を隔てて形成されている。モノシランガスは、各ガス吐出孔126から水平方向に処理室101内に向けて略均一に吐出される。
【0079】
処理室101内の、分散ノズル123及び125と反対側の部分には、処理室101内を排気するための排気口129が設けられている。排気口129は処理室101の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。処理室101の排気口129に対応する部分には、排気口129を覆うように断面がコの字状に成形された排気口カバー部材130が溶接により取り付けられている。排気口カバー部材130は、処理室101の側壁に沿って上方に延びており、処理室101の上方にガス出口131を規定している。ガス出口131には、真空ポンプ等を含む排気機構132が接続される。排気機構132は、処理室101内を排気することで処理に使用した処理ガスの排気、及び処理室101内の圧力を処理に応じた処理圧力とする。
【0080】
処理室101の外周には筒体状の加熱装置133が設けられている。加熱装置133は、処理室101内に供給されたガスを活性化するとともに、処理室101内に収容された被処理体、例えば、半導体基板、本例ではシリコン基板1を加熱する。
【0081】
成膜装置100の各部の制御は、例えばマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ150により行われる。コントローラ150には、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース151が接続されている。
【0082】
コントローラ150には記憶部152が接続されている。記憶部152は、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ150の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納される。レシピは、例えば、記憶部152の中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。レシピは、必要に応じて、ユーザーインターフェース151からの指示等にて記憶部152から読み出され、読み出されたレシピに従った処理をコントローラ150が実行することで、成膜装置100は、コントローラ150の制御のもと、所望の処理が実施される。
【0083】
本例では、コントローラ150の制御のもと、上記第1の実施形態におけるシード層8及びシリコン膜9を形成する処理が順次実施される。
【0084】
上記第1の実施形態におけるシード層8及びシリコン膜9は、図5に示すような成膜装置100を用いることによって、1台の成膜装置で形成することができる。
【0085】
また、もちろん、成膜装置としては図5に示すようなバッチ式に限らず、枚葉式の成膜装置であっても良い。
【0086】
(第2の実施形態)
シード層8及びシリコン膜9を形成する処理条件によっては、埋め込み材料10の焼成中、ガスを放出するようなシード層8及びシリコン膜9が形成されることがある。埋め込み材料10の焼成中に、シード層8及びシリコン膜9がガスを放出してしまうと、トレンチ6の内部に埋め込まれた埋め込み材料に空隙が発生する。
【0087】
第2の実施形態は、ガスを放出するようなシード層8及びシリコン膜9が形成された場合であっても、トレンチ6の内部に埋め込まれた埋め込み材料に空隙が発生することを抑制することが可能なトレンチの埋め込み方法を提供しようとするものである。
【0088】
図6は、この発明の第2の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法のシーケンスの一例を示す流れ図である。
【0089】
図6に示すように、第2の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法が、第1の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法と異なるところは、ステップ4とステップ5との間に、ステップ7で示されるように、シリコン膜9及びシード層8からガスを放出させる工程があることである。具体的には、シリコン膜9及びシード層8が形成されたシリコン基板1を加熱し、シリコン膜9及びシード層8からガスを放出させる。
【0090】
ステップ7における処理条件の一例は、
流 量:5000sccm
処 理 時 間: 30min
処 理 温 度: 600℃
処 理 圧 力:0〜666Pa(0〜5Torr:サイクルパージ)
である。
【0091】
処理圧力が0〜666Paのうち、0Paとは、処理室内の窒素ガスを引ききるということである。つまり、本ステップ7の一例は、処理室の内部への窒素ガス供給と、処理室の内部からの窒素ガス排気とを交互に繰り返す例である(サイクルパージ)。
【0092】
このように、埋め込み材料10を塗布する前に、シリコン膜9及びシード層8からガスを放出させておくことで、埋め込み材料10の焼成中に、シード層8及びシリコン膜9がガスを放出しまうことを抑制できる。
【0093】
したがって、たとえ、ガスを放出するようなシード層8及びシリコン膜9が形成されたとしても、トレンチ6の内部に埋め込まれた埋め込み材料に空隙が発生することを抑制することができる。
【0094】
また、サイクルパージを圧力を変動させて行ったり、また、同時に温度の昇降を行いながら実施したりするとシリコン膜9にマイグレーションが発生することがある。そのため、事前にシリコン膜9の表面に自然酸化膜を形成しておくと良い。
【0095】
シリコン膜9の表面に自然酸化膜を形成するためには、ステップ4とステップ5とをインサイチュで行う場合、ステップ4とステップ7の間に、シリコン膜9及びシード層8が形成されたシリコン基板1を、酸素に接触させる工程を設けると良い。
【0096】
また、ステップ4とステップ5とをエクスサイチュで行う場合には、ステップ4とステップ7との間に、ステップ4を行う成膜装置から、ステップ7を行う回転塗布装置まで、シリコン膜9及びシード層8が形成されたシリコン基板1を、大気下で搬送するようにすると良い。
【0097】
このようにシリコン膜9の表面に、あらかじめ自然酸化膜を形成しておくことで、ステップ7、即ち、ガスを放出させている間に、シリコン膜9にマイグレーションが発生することを抑制することができる。
【0098】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、良好なステップカバレッジを維持したまま、シリコン膜9の膜厚を、さらに薄くしようとする例である。
【0099】
シード層8は、シリコン膜9が形成される下地、例えば、酸化膜7の表面に、シリコンの核を均一に発生させ、モノシランを吸着させやすくするものである。ミクロな視点で考えてみると、シード層8のシリコンの核はアイランド状に均一に点在しているかも知れないし、核自体の平面的なサイズは極めて小さいものであるかも知れない。そのように考えると、核自体の平面的な大きさを大きくし、下地表面上で核が占める面積を大きくしてシード層8をアイランド状から平面である単層に限りなく近づける、あるいは究極的にはシード層8を平面である単層とし、シリコン膜9の成長を“核成長”から“単層成長”に近づけていけば、シード層8上には、良好なステップカバレッジを維持したまま、より膜厚の薄いシリコン膜9を形成することが可能となる。
【0100】
この点を踏まえ、第3の実施形態では、シリコン膜9を形成する前に、シード層8を強化する工程を取り入れた。シード層8を強化することの具体例は、シード層8中のシリコンの核自体の平面的な大きさを大きくし、下地表面上で核が占める面積を大きくすることであり、上述の通り、究極的にはシード層8を単層とすることである。シード層8の強化の具体的な方法例は、モノシランを用いてシリコン膜9を成膜する前に、モノシランよりも薄膜成膜に好適であるモノシランよりも高次のシランを用いて、シード層8の表面にシリコンを薄く吸着させた。これにより、シード層8を強化する。
【0101】
以下、第3の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法の一例を説明する。
【0102】
図7は、この発明の第3の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法のシーケンスの一例を示す流れ図である。
【0103】
図7に示すように、第3の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法が、第1の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法と異なるところは、ステップ3とステップ4との間に、ステップ8で示されるように、シード層8を強化する工程があることである。具体的には、シード層8が形成されたシリコン基板1を加熱し、モノシランよりも高次のシランガス、本例ではジシラン(Si)ガスを供給する。
【0104】
ステップ8における処理条件の一例は、
ジシラン流 量: 200sccm
処 理 時 間: 2min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力:133.3Pa(1Torr)
である。
【0105】
図8は上記第1の実施形態に従って成膜されたシリコン膜9を持つ半導体装置の内部構造を示す図面代用写真(SEM写真)、図9は本第3の実施形態に従って成膜されたシリコン膜9を持つ半導体装置の内部構造を示す図面代用写真(SEM写真)である。
【0106】
図8に示すように、第1の実施形態では、サイドの膜厚4.58nm〜4.67nm、トップの膜厚4.61nmのシリコン膜9が、カバレッジ(ステップカバレッジ)99%〜101%で成膜されていることが示されている。なお、カバレッジについては、シリコン膜9のトップの膜厚とサイドの膜厚2点(上部、下部)を示している。この点は、以下に示す図9〜図11でも同様である。
【0107】
また、図9に示すように、第3の実施形態では、サイドの膜厚3.15nm〜3.40nm、トップの膜厚3.30nmのシリコン膜9が、カバレッジ(ステップカバレッジ)95%〜103%で成膜されていることが示されている。
【0108】
このように、第3の実施形態によれば、モノシランを用いてシリコン膜9を成膜する前に、モノシランよりも高次のシランを用いて、シード層8の表面にシリコンを薄く吸着させることで、膜厚がより薄く、かつ、ステップカバレッジも良好なシリコン膜9を得ることができる。
【0109】
また、参考までに、図10にジシランガスのみを用いて成膜されたシリコン膜9、図11にシランガスのみを用いて成膜されたシリコン膜9を持つ半導体装置の内部構造を示す図面代用写真(SEM写真)を示しておく。
【0110】
図10に示すように、ジシランガスのみを用いた場合には、サイドの膜厚3.55nm〜4.23nm、トップの膜厚5.33nmのシリコン膜9を成膜することができるが、カバレッジ(ステップカバレッジ)については67%〜79%であり、良好なステップカバレッジが得られていない。
【0111】
また、図11に示すように、シランガスのみを用いた場合には、106%〜110%と良好な結果が得られているが、シリコン膜9はアイランド状に成膜されており、膜厚7.19nm〜7.96nmの膜厚範囲においては、単層にはなっていない。
【0112】
なお、本第3の実施形態と上記第1の実施形態とは、シリコン膜9に要求された膜厚に応じて使い分けられると良い。例えば、シリコン膜9に、ある程度膜厚は薄いが、極めて薄い膜厚が要求されない場合には、モノシラン及びモノシランよりも高次のシランの双方を使用しない第1の実施形態の方が製造コスト的に有利である。このため、第1の実施形態を選択すると良い。しかし、シリコン膜9に、第1の実施形態では成膜不可能な極めて薄い膜厚が要求された場合には、本第3の実施形態を選択すると良い。
このように第1の実施形態と本第3の実施形態とは、半導体装置の製造の分野において互いに共存することが可能である。
【0113】
また、図12の流れ図に示すように、本第3の実施形態の他例とし、本第3の実施形態と上記第2の実施形態とを組み合わせて実施することも可能である。
【0114】
図12に示すように、第3の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせた場合にも、ステップ3とステップ4との間に、ステップ8で示されるシード層8を強化する工程が挿入されれば良い。
【0115】
また、第3の実施形態に従ってシード層8及びシリコン膜9を成膜することが可能な成膜装置としては、図5に示した成膜装置に、モノシランよりも高次のシラン、例えば、ジシランガス供給源を付加すれば良い。特に、図示はしないが、例えば、ジシランガス供給源は、モノシランガス供給源118とともに分散ノズル125に接続することで、処理室101内にジシランガスを供給されるように構成されれば良い。
【0116】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第1〜第3の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法を実施することが可能な成膜システムの例に関する。
【0117】
(第1例)
図13は、成膜システムの第1例を概略的に示すブロック図である。
【0118】
図13に示すように、第1例に係る成膜システム200aは、搬送室201の周囲に、処理室202、203、204と、ロードロック室205とを備えている。搬送室201と、処理室202、203、204とは、それぞれゲートバルブG1〜G3を介して接続され、同じくロードロック室205とは、ゲートバルブG4を介して接続されている。
【0119】
第1の処理室202は成膜装置であり、ステップ3、4、即ち、シード層8及びシリコン膜9を形成する装置である。
【0120】
第1の処理室202においては、トレンチ6が形成され、少なくともトレンチ6の側壁に酸化膜7が形成されているシリコン基板1を加熱し、シリコン基板1の表面にアミノシラン系ガスを供給してシリコン基板1、本例では酸化膜7上にシード層8を形成し、シード層8が形成されたシリコン基板1を加熱し、シード層8の表面にモノシランガスを供給してシード層8上にシリコン膜9を形成する。
【0121】
第2の処理室203は回転塗布装置であり、ステップ5、即ち、埋め込み材料10を塗布する装置である。
【0122】
第2の処理室203においては、シリコン膜9及びシード層8が形成されたシリコン基板1のトレンチ6を、焼成することで収縮する埋め込み材料10を用いて埋め込む。そのような埋め込み材料10の一例は、PHPSである。PHPSは焼成されることでシリコン酸化物に変化するとともに収縮する。
【0123】
第3の処理室204は熱処理装置であり、ステップ6、即ち、トレンチ6を埋め込む埋め込み材料10を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成するとともに、シリコン膜9、及び前記シード層8をシリコン酸化物12に変化させる。
【0124】
第3の処理室204においては、具体的には、埋め込み材料10が塗布されたシリコン基板1を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成して埋め込み材料10、シリコン膜9、及びシード層8をシリコン酸化物11、12に変化させる。
【0125】
ロードロック室205は圧力変換装置であり、搬送室201内の圧力と、ほぼ大気圧の圧力との間で圧力を変換する装置である。ロードロック室205はゲートバルブG5を備えており、ゲートバルブG5を介してシリコン基板1(シリコンウエハ)の搬入出が行われる。ゲートバルブG5は、図示せぬ搬送路、又は図示せぬローダーモジュールに接続される。
【0126】
搬送室201の内部には搬送装置206が配置されている。搬送装置206は、搬送室201と、処理室202〜204、及びロードロック室205との間で、シリコン基板1の受け渡しを行う。
【0127】
第1の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法は、成膜システム200aを用いて、シリコン基板1を、ロードロック室205から搬送室201を介して第1の処理室202、第2の処理室203、第3の処理室204の順で搬送させていくことにより、実施することができる。
【0128】
(第2例)
図14は、成膜システムの第2例を概略的に示すブロック図である。
【0129】
図14に示すように、第2例に係る成膜システム200bが成膜システム200aと異なるところは、第4の処理室207を、さらに備えていることである。第4の処理室207は、ゲートバルブG6を介して搬送室201に接続されている。
【0130】
第4の処理室207は熱処理装置であり、ステップ7、即ち、シリコン膜9及びシード層8からガスを放出させる装置である。
【0131】
第4の処理室207においては、第1の処理室202で処理されたシリコン基板1を加熱し、シリコン膜9及びシード層8からガスを放出させる。
【0132】
第2の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法は、成膜システム200bを用いて、シリコン基板1を、ロードロック室205から搬送室201を介して第1の処理室202、第4の処理室207、第2の処理室203、第3の処理室204の順で搬送させていくことにより、実施することができる。
【0133】
(第3例)
図15は、成膜システムの第3例を概略的に示すブロック図である。
【0134】
図15に示すように、第3例に係る成膜システム200cが成膜システム200bと異なるところは、第5の処理室208を、さらに備えていることである。第5の処理室208は、ゲートバルブG7を介して搬送室201に接続されている。
【0135】
第5の処理室208は気相処理装置であり、ステップ7を行う前に、シリコン膜9の表面に自然酸化膜を形成する装置である。
【0136】
第5の処理室208においては、第1の処理室202で処理されたシリコン基板1を酸素に接触させる。
【0137】
第2の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法において、シリコン膜9の表面に自然酸化膜を形成する場合、成膜システム200cを用いることで、シリコン基板1を、ロードロック室205、搬送室201、第1の処理室202、第5の処理室208、第4の処理室207、第2の処理室203、第3の処理室204の順で搬送させていくことにより、インサイチュで実施することができる。
【0138】
(第4例)
図16は、成膜システムの第4例を概略的に示すブロック図である。
【0139】
図16に示すように、第4例に係る成膜システム200dが成膜システム200cと異なるところは、第5の処理室208に代えて、シリコン基板1を大気下で搬送する搬送路209を備えていることである。
【0140】
搬送路209の一端はゲートバルブG9を介して第1のロードロック室210に接続され、第1のロードロック室210はゲートバルブG10を介して第1の処理室202に接続されている。
【0141】
また、搬送路209の他端はゲートバルブG11を介して第2のロードロック室211に接続され、第2のロードロック室211はゲートバルブG12を介して搬送室201に接続されている。
【0142】
搬送路209には搬送装置212が配置されている。搬送装置212は、成膜システム200dの外部から搬送されてきたシリコン基板1を第1のロードロック室210に搬入し、第1のロードロック室210から搬出されたシリコン基板1を第2のロードロック室211に搬入する。また、第2のロードロック室211から搬出されたシリコン基板1を成膜システム200dの外部に搬送する。
【0143】
第2の実施形態に係るトレンチの埋め込み方法において、シリコン膜9の表面に自然酸化膜を形成する場合、成膜システム200dを用いることで、シリコン基板1を、第1のロードロック室210、第1の処理室202、第1のロードロック室210、搬送路209、第2のロードロック室211、搬送室201、第4の処理室207、第2の処理室203、第3の処理室204の順で搬送させていくことにより、エクスサイチュで実施することができる。
【0144】
以上、この発明をいくつかの実施形態に従って説明したが、この発明は、上記いくつかの実施形態に限定されることは無く、種々変形可能である。
【0145】
例えば、上記実施形態においては、処理条件を具体的に例示したが、処理条件は、上記具体的な例示に限られるものではない。
【0146】
この発明による利点である、酸化障壁をトレンチ6の内部に形成しなくても、埋め込み材料への空隙の発生を抑制できることは、アミノシラン系ガスを用いてシリコン基板1の表面をプリフローし、シリコン基板1の表面にシード層8を形成した後、モノシランガスをシード層8上に供給して熱分解させることで、シリコン膜9を形成する、という構成を具備することで、ステップカバレッジが良くなることで得られるものである。
【0147】
したがって、処理条件は、上記実施形態に記載した具体的な例示に限られるものではなく、トレンチ6の大きさ、処理室の容積変化等に応じて、上記利点を損なわない範囲で変更できることはもちろんである。
【0148】
また、上記実施形態に記載したトレンチの埋め込み方法は、微細なトレンチ6を、空隙を発生させることなく埋め込むことができるものであるから、半導体装置の製造プロセスに用いられることが好適である。
【0149】
また、トレンチとしては、特に、半導体装置の内部の素子分離領域に使用されることが好適である。
【0150】
また、シード層8は、厚くすると、半導体装置の微細化を損なうことになる。第3の実施形態においても説明した通りであるが、シード層8は、シリコンの核を均一に発生させ、モノシランを吸着させやすくするものである。このため、シード層8の厚さは薄いことが望ましく、好ましくは単原子層レベルの厚さ程度であることが良い。具体的なシード層8の厚さを言及すれば、上述した通りであるが、0.1nm以上0.3nm以下であることが良い。
【0151】
また、埋め込み材料10の一例として回転塗布法によって塗布される材料、具体的にはPHPSを例示した。しかし、埋め込み材料10としては回転塗布法によって塗布される材料に限られるものではなく、CVD法を用いて形成された膜であっても良い。
【0152】
例えば、CVD法を用いて形成した膜、例えば、シリコン酸化膜であっても、例えば、膜質を強固とするために焼成(熱処理)すると、PHPSと同様に収縮する。
【0153】
このように焼成することで収縮するような膜であれば、PHPS以外の膜であっても、本発明の実施形態は有効に適用することができる。
【0154】
その他、この発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0155】
1…シリコン基板、6…トレンチ、7…酸化膜、8…シード層、9…シリコン膜、10…埋め込み材料、11、12…シリコン酸化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) トレンチが形成され、少なくとも前記トレンチの側壁に酸化膜が形成されている半導体基板を加熱し、前記半導体基板の表面にアミノシラン系ガスを供給して前記半導体基板上にシード層を形成する工程と、
(2) 前記シード層が形成された半導体基板を加熱し、前記シード層の表面にモノシランガスを供給して前記シード層上にシリコン膜を形成する工程と、
(3) 前記シリコン膜が形成された半導体基板の前記トレンチを、焼成することで収縮する埋め込み材料を用いて埋め込む工程と、
(4) 前記トレンチを埋め込む前記埋め込み材料を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成するとともに、前記シリコン膜、及び前記シード層をシリコン酸化物に変化させる工程と
を含むことを特徴とするトレンチの埋め込み方法。
【請求項2】
前記(2)工程と前記(3)工程との間に、
(5) 前記シリコン膜及び前記シード層が形成された半導体基板を加熱し、前記シリコン膜及び前記シード層からガスを放出させる工程
を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項3】
前記(2)工程と前記(3)工程とをインサイチュで行う場合、
前記(2)工程と前記(5)工程との間に、
(6) 前記シリコン膜及び前記シード層が形成された半導体基板を、酸素に接触させる工程
を、さらに含むことを特徴とする請求項2に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項4】
前記(2)工程と前記(3)工程とをエクスサイチュで行う場合、
前記(2)工程と前記(5)工程との間に、
(7) 前記シリコン膜及び前記シード層が形成された半導体基板を、大気下で搬送する工程
を、さらに含むことを特徴とする請求項2に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項5】
前記(1)工程と前記(2)工程との間に、
(6) 前記シード層が形成された半導体基板を加熱し、前記シード層の表面にモノシランよりも高次のシラン系ガスを供給する工程
を、さらに含むことを特徴とする請求項1から請求項4いずれか一項に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項6】
前記シリコン膜及び前記シード層は、前記シリコン酸化物に変化するときに膨張し、
前記シリコン膜の膨張量の2倍値と、前記シード層の膨張量の2倍値との合計値が、前記埋め込み材料の収縮量に一致するように、前記シリコン膜の厚さ及び前記シード層の厚さが設定されることを特徴とする請求項1から請求項5いずれか一項に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項7】
前記シリコン膜の膨張後の厚さの2倍値と、前記シード層の膨張後の厚さの2倍値と、前記埋め込み材料の収縮後の厚さとの合計値が、前記トレンチの幅に一致するように設定されることを特徴とする請求項6に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項8】
前記シリコン膜の厚さが、前記シード層の厚さよりも厚く設定されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項9】
前記アミノシラン系ガスが、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)
DEAS(ジエチルアミノシラン)
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)
DPAS(ジプロピルアミノシラン)、及び
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
の少なくとも一つを含むガスから選ばれることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項10】
前記トレンチの側壁に形成された酸化膜が、
前記トレンチが形成された半導体基板をラジカル酸化、又はプラズマ酸化して形成されることを特徴とする請求項1から請求項9いずれか一項に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項11】
前記トレンチの埋め込み方法が、半導体装置の製造プロセスに用いられることを特徴とする請求項1から請求項10いずれか一項に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項12】
前記トレンチが、前記半導体装置の内部の素子分離領域に使用されることを特徴とする請求項11に記載のトレンチの埋め込み方法。
【請求項13】
半導体基板に形成されたトレンチの埋め込みに使用される成膜システムであって、
トレンチが形成され、少なくとも前記トレンチの側壁に酸化膜が形成されている半導体基板を加熱し、前記半導体基板の表面にアミノシラン系ガスを供給して前記半導体基板上にシード層を形成し、前記シード層が形成された半導体基板を加熱し、前記シード層の表面にモノシランガスを供給して前記シード層上にシリコン膜を形成する第1の処理室と、
前記シリコン膜が形成された半導体基板の前記トレンチを、焼成することで収縮する埋め込み材料を用いて埋め込む第2の処理室と、
前記トレンチを埋め込む前記埋め込み材料を、水及び/又はヒドロキシ基を含む雰囲気中で焼成するとともに、前記シリコン膜、及び前記シード層をシリコン酸化物に変化させる第3の処理室と
を含むことを特徴とする成膜システム。
【請求項14】
前記第1の処理室で処理された半導体基板を加熱し、前記シリコン膜及び前記シード層からガスを放出させる第4の処理室を、さらに含むことを特徴とする請求項13に記載の成膜システム。
【請求項15】
前記第1の処理室で処理された半導体基板を、前記第4の処理室に収容する前に、前記シリコン膜及び前記シード層が形成された半導体基板を、酸素に接触させる第5の処理室を、さらに含むことを特徴とする請求項14に記載の成膜システム。
【請求項16】
前記第1の処理室で処理された半導体基板を、前記第4の処理室に収容する前に、前記シリコン膜及び前記シード層が形成された半導体基板を、大気下で搬送する搬送路を、さらに含むことを特徴とする請求項14に記載の成膜システム。
【請求項17】
前記第1の処理室に、前記モノシランガスよりも高次のシランガスを供給する高次のシランガス供給源が、さらに接続されていることを特徴とする請求項13から請求項16のいずれか一項に記載の成膜システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−49509(P2012−49509A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144733(P2011−144733)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】