説明

マイクロメカニカル素子およびマイクロメカニカル素子の製造方法

本発明は、前面および後面を備えた基板を有するマイクロメカニカル素子に関する。前面は機能構造を有し、該機能構造はコンタクト領域において後面と電気的に接触接続しており、基板はコンタクト領域において少なくとも1つのコンタクトホールを有し、該コンタクトホールは後面側から基板内へと延在している。さらに本発明は、マイクロメカニカル素子の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載されているマイクロメカニカル素子に関する。刊行物DE 103 23 559 A1からはマイクロメカニカル装置、殊に圧力センサが公知であり、圧力センサは機械的な力を電気信号に変換する圧電抵抗性の変換原理を基礎としている。圧電抵抗性の変換素子を備えたマイクロメカニカル圧力センサの通常の構造が図1に示されている。陽極エッチングされたダイヤフラムを備えた基板がガラス上に陽極結合されている。さらにDE 100 32 579 A1によれば、ダイヤフラムおよびその下にある中空部を多孔性シリコンによって製造することが公知である。その種のセンサの構造は図2に示されている。チップはセラミック上またはプレモールドケーシング内に接着されており、また環境の影響から保護するためにゲルでもってパッシベートされており、ゲルはチップ上のゲルリングによって保持される。ゲルを用いるパッシベーションの欠点は、気体が、殊に高圧下で、ゲル内に拡散することである。溶解した気体が例えば圧力低下の際に再び気体状になると、ゲル内に延在しており、チップと接触しているボンディングワイヤが破壊される可能性がある。さらにDE 103 59 217 A1からは、基板の後面側へと延びる電気的なスルーコンタクトが公知であり、その種の構造はコンタクトホールの領域において比較的薄く、したがって安定性が低い。
【0002】
発明の概要
これに対し、独立請求項に記載されている特徴を備えた本発明によるマイクロメカニカル素子、ならびに独立請求項に記載されている特徴を備えた本発明によるマイクロメカニカル素子の製造方法は、基板が接触領域においてより高い安定性ないし耐性を維持しているという利点を有する。その種の後面の接触接続によって、例えばフリップリップ実装の際のマイクロメカニカル素子の前面における圧力結合も低減される。本発明の範囲におけるダイヤフラムは基板材料、通常はシリコンから形成されている。「機械的に安定したダイヤフラム」の概念は本発明の範囲において、基板の耐性に寄与するダイヤフラムを表す。したがってダイヤフラムの厚さは基板に比べて薄い。殊に有利には、安定性の意味において、例えば基板の厚みの半分の厚さを有するダイヤフラムが殊に有利である。本願発明の範囲において、コンタクト領域の概念は、コンタクトホールが設けられている、基板の前面と後面との間の領域全体を表す。コンタクト領域における安定性がより高いことにより、より大きなコンタクトホール、すなわちより大きい断面積を有するコンタクトホールが可能になる。これによって有利には、より高いエッチングレートでコンタクトホールをエッチングすることができ、このことは本発明によるマイクロメカニカル素子に関する製造プロセスを簡潔にし、また高速化させる。機能構造は例えばエッチングおよび/またはドーピングされた領域を有し、この領域は本発明によるマイクロメカニカル素子の本来のチップ機能、例えばセンサ構造を実現する。本発明によるマイクロメカニカル素子の構造は簡潔であり、また廉価に製造することができ、マイクロメカニカルセンサ、殊に圧力センサに非常に適している。殊に有利には、本発明によるマイクロメカニカル素子を圧力センサとして、比較的高い圧力領域、例えば10bar以上の圧力領域に使用することができる。本発明による構成によって、マイクロメカニカル素子は化学的に侵食性の環境、例えば粒子フィルタの領域における絶対圧測定または差圧測定に殊に適している。例えばパッシベーションされたゲルを用いる素子を使用することができない、または少なくとも使用が困難である別の使用分野を、有利には、例えば車両の空気圧のためのセンサまたは、エアバッグ、殊にサイドエアバッグのための圧力センサとしての本発明によるマイクロメカニカル素子でもってカバーすることができる。
【0003】
従属請求項に記載されている手段によって、独立請求項に記載されているマイクロメカニカル素子ないしマイクロメカニカル素子の製造方法の有利な実施形態および実施態様が得られる。
【0004】
本発明によれば、接触接続はウェハ、すなわち基板を貫通して行われる。このために基板は、基板の後面からこの基板の内部へと延在する少なくとも1つのコンタクトホール、例えば4つのコンタクトホールを有する。有利には、後面と機能構造との間の電気的な接触接続部が導電性の材料、殊に金属性の導体路および/またはドープされた半導体材料、殊に有利には多結晶シリコンから形成されている。さらに有利には、後面の少なくとも一部および/またはコンタクトホールが導電性の材料でコーティングされているので、基板の後面には少なくとも部分的に、殊にコンタクトホールの周囲には導電層が設けられており、この導電層はコンタクトホールの内部にまで延在しているので、後面からコンタクトホール内にまでの延びる導電性の接続部が生じる。機能構造とコンタクトホールとの間の電気的な接触接続部は同様に導電性の材料によって、すなわち例えば金属性の導体路および/またはドープされたシリコンによって実現されている。有利には、後面上には電気的なコンタクトまたはコンタクト領域が形成されており、このコンタクトまたはコンタクト領域は直接的に、例えばフリップチップ接触接続部を介して、またはボンディングワイヤを介して導電的に配線板と接続可能である。
【0005】
有利な実施形態によれば、基板の前面はエピタキシャル層を有し、この場合コンタクトホールはエピタキシャル層まで、もしくはエピタキシャル層の内部にまで延在している。殊に有利には、基板とエピタキシャル層との間において、少なくともコンタクト領域には酸化物層が配置されており、この酸化物層を有利にはトレンチエッチングプロセスのためのストップ酸化物層として使用することができ、このことはコンタクトホールの形成時の製造公差を高める。
【0006】
別の有利な実施形態によれば、基板がコンタクト領域において1つまたは複数のスルーコンタクトを有しており、この場合スルーコンタクトはコンタクトホールを前面と接続させる。この実施形態の範囲におけるスルーコンタクトの横断面積はコンタクトホールの横断面積よりも著しく小さいので、スルーコンタクトによって有利にはダイヤフラムの機械的な安定性は実質的に制限されない。殊に有利には、スルーコンタクトが導電性の材料でもってコーティングまたは充填されている。
【0007】
本発明の別の対象は、本発明によるマイクロメカニカル素子の製造方法である。この製造方法においては、コンタクトホールと前面との間に機械的に安定したダイヤフラムが残存するように、少なくとも1つのコンタクトホールが後面側から基板内に形成され、機能構造と後面との間の電気的な接触接続部がダイヤフラムを通って形成される。本発明による方法でもって、有利には、コンタクト領域においてより高い安定性を有する基板を製造することができ、このことは例えば、より大きいコンタクトホール、したがってより高いエッチングレートでのエッチングを可能にする。したがって本発明による製造方法は、有利には殊に簡潔で高速である。
【0008】
別の有利な実施形態によれば、コンタクトホールがトレンチエッチングによって形成され、エッチングプロセスが制御下でストップされ、有利にはエピタキシャル層において、またはエピタキシャル層が存在する限りにおいてエピタキシャル層内においてストップされる。殊に有利な実施形態においては、エピタキシャル層の被着前に少なくともコンタクト領域内に酸化物層が基板上に被着され、エッチングプロセスが酸化物層においてストップされる。有利には熱酸化によって形成される酸化物層が有利にはエッチングプロセスをストップさせ、また比較的高い製造公差を可能にする。
【0009】
別の有利な実施形態によれば、1つまたは複数のスルーコンタクトが第2のエッチングプロセスによって形成されるので、スルーコンタクトはコンタクトホールを前面と接続させる。原理的には、スルーコンタクトをコンタクトホールのエッチング前に形成することができ、この場合、コンタクトホールはまだエッチングされていない限りにおいてブラインドホールと称される。コンタクトホールを先行してエッチングする場合、スルーコンタクトの形成はコンタクトホール側から行われるか、前面側から行われる。スルーコンタクトのエッチングの前に、有利にはエッチマスクが例えばスプレーラックにより被着される。スルーコンタクトがコンタクトホール側からエッチングされる場合、エッチングプロセスは有利には前面の表面金属化部においてストップされる。表面金属化部の考えられる後面絶縁部は接触接続部のために開かれ、殊に有利には乾式エッチングステップによって開かれる。先行して行われるスプレーラックの被着は幅狭のスルーコンタクトのアスペクト比が高いことに基づきマスク無しで行うことができる。
【0010】
別の有利な実施形態によれば、スルーコンタクトが一貫してエッチングされ、絶縁層が析出され、続いて導電性の材料が被着され、有利には1つのステップで前面上およびスルーコンタクト内、また有利にはコンタクトホール内および/または後面上に導電性の材料が被着される。
【0011】
当業者には公知であるように、導電性の材料を被着する前に、先ず絶縁層が被着され、通常の場合は析出により被着される。したがって導電性の材料の被着は本発明の範囲において、先行する絶縁層の析出との関係において行うことが常に必要とされる。これは、以下において必ずしもプロセスステップとして言及することがなくても必要とされる。
【0012】
別の有利な実施形態によれば、コンタクトホールのエッチングの前に前面側からブラインドホールが形成および絶縁され、また有利には導電性の材料でもって充填され、この際にブラインドホールは後面側からのコンタクトホールのエッチングによって開かれ、それによりスルーコンタクトが形成される。
【0013】
導電性の材料を析出ないし充填するための方法は、例えばスパッタリング、低圧化学気相成長法(LPCVD;low-pressure chemical vapour deposition)、(電流を用いるまたは用いない)電気メッキまたは蒸着である。
【0014】
コンタクトホールを絶縁するために、有利には酸化されたトレンチ絶縁溝が設けられており、このトレンチ絶縁溝は殊に有利には、スルーコンタクトまたはブラインドホールと同時に1つのプロセスステップにおいてトレンチエッチングにより形成される。択一的に、コンタクト領域の絶縁をドープされた領域によって行うことができる。
【0015】
図面には本発明の実施例が描かれており、これらの実施例を以下において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術によるセンサ構造を有する圧力センサを示す。
【図2】従来技術によるセンサ構造を有する圧力センサを示す。
【図3】従来技術によるセンサ構造を有する圧力センサを示す。
【図4】本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態の断面図ないし製造方法の前段階を示す。
【図5】本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態の断面図ないし製造方法の前段階を示す。
【図6】本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態の断面図ないし製造方法の前段階を示す。
【図7】本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態の断面図ないし製造方法の前段階を示す。
【図8】本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態の断面図ないし製造方法の前段階を示す。
【図9】本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態の断面図ないし製造方法の前段階を示す。
【図10】本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態の断面図ないし製造方法の前段階を示す。
【図11】図8の本発明による実施形態の使用例の断面図を示す。
【図12】図8の本発明による実施形態の使用例の断面図を示す。
【図13】図10の本発明による実施形態の使用例の断面図を示す。
【図14】図10の本発明による実施形態の使用例の断面図を示す。
【図15】図4および5の本発明による実施形態の使用例の断面図を示す。
【図16】図4および5の本発明による実施形態の使用例の断面図を示す。
【図17】図4および5の本発明による実施形態の使用例の断面図を示す。
【0017】
本発明の実施形態
図1には、機能構造7、ここでは圧電抵抗性の変換素子を備えたマイクロメカニカルシリコン圧力センサの構造が示されている。基板4は圧力媒体24と向き合う前面2を有する。媒体24の圧力は矢印Pの方向において圧力センサに作用する。基板4の前面2には機能構造7、ここでは圧電抵抗性の変換素子を備えたセンサダイヤフラム25が設けられている。センサダイヤフラム25の下方では、基板4の異方性エッチングにより切り欠き6が形成されている。パイレックスガラス35上への基板4の陽極結合によって、切り欠き6は基板4とパイレックスガラス35との間において中空部6を形成する。基板4とパイレックスガラス35の結合体は、接着層26またははんだ層26によって配線板22ないしケーシング27、例えばプレモールドケーシングと結合される。基板4の前面2はボンディングワイヤ21を用いて配線板22と導電的に接続されている。配線板22ないしケーシング27上のゲルリング28は装置を包囲し、またパッシベーションされたゲル23でもって充填されている。図示されているセンサは絶対圧センサである。媒体24の圧力によるセンサダイヤフラム25の伸長が圧電抵抗性の変換素子によって測定され、その信号を集積回路によって評価することができる。
【0018】
図2には、同様に従来技術による絶対圧センサが示されている。その下方に中空部6を備えているセンサダイヤフラム25は、DE 100 32 579 A1に記載されているような、多孔性のシリコンによって表面マイクロメカニカル法でもって製造されている。有利には基板4を配線板22ないしケーシング27上に直接的に接着させることができる。つまりガラスへの陽極結合は省略される。
【0019】
図3には、従来技術によるコンタクトホール8を通る基板4のウェハスルーコンタクトWを備えたマイクロメカニカル素子が示されている。トレンチプロセスの際のエッチストップは先ず、エピタキシャル層10と金属導体路Mとの間に配置されている酸化物Xにおいて行われる。この非常に薄い領域におけるマイクロメカニカル素子の機械的な安定性は低い。
【0020】
図4は、前面2および後面3を有する基板4を備えた本発明によるマイクロメカニカル素子の第1の実施形態の概略的な断面図を示す。後面3側からコンタクトホール8を形成するためにトレンチプロセスが適用され、このトレンチプロセスは熱酸化物11においてストップされる。つまり、コンタクトホール8と前面2との間にダイヤフラム1が残るので、ダイヤフラム1はマイクロメカニカル素子の安定性に寄与する。酸化物11はエピタキシャル層10の被着前にコンタクト領域5内にデポジットされる。コンタクト領域5とは、コンタクトホール8が配置されている前面2と後面3との間のマイクロメカニカル素子の領域を表す。コンタクト領域5は、図11〜17に例示的に示されているような、マイクロメカニカル素子の他の領域、例えば機能領域とは異なる。コンタクトホール8を形成するプロセスは例えば以下のステップを含む:
−基板4の表面の熱酸化および構造化。
−シリコンエピタキシ。この際に多結晶シリコン(エピタキシャルポリシリコン)が酸化物11の上方に生じる。
−トレンチプロセスのための後面3のマスキング。
−熱酸化物11においてストップされる後面側からのコンタクトホール8のトレンチエッチング。
−多結晶シリコン領域を相互に絶縁させるために、例えばドーピングリングまたはトレンチされ、充填された絶縁性の溝(図示せず)による前面の絶縁。
−後面における例えば酸化物または窒化物からなる絶縁層16の析出。
−コンタクトホール8のトレンチ底部において絶縁層16および熱酸化物11を開くための後面3のリソグラフィ。
−導電性材料9を用いる接続部、例えばドープされた多結晶シリコンまたは金属またはそれらの組み合わせを用いる接触接続部の後面3上における析出および構造化。
【0021】
前面2においてマイクロメカニカル素子は同様に絶縁層16と、例えば窒化シリコンからなるパッシベーション層15とを有する。ここでは接触接続のために金属化部14が使用される。後面接触接続部9と金属化部14との間の導電性の接続部はエピタキシャルポリシリコン10’のドーピングによって達成される。接続部を形成するため、もしくは本来のチップ機能を形成するためのウェハ前面2におけるさらなるドーピングについてはここでは図示していない。従来技術による通常の絶縁部、ここでは例えばボンディングパッドも、見易くするために図面にはその大部分が図示されていない。
【0022】
図5には、本発明によるマイクロメカニカル素子の第2の実施形態が示されている。この実施形態において、コンタクトホール8を形成するためのトレンチプロセスはエピタキシャル層10においてストップされる。エピタキシが予定されていないプロセスにおいては、基板4のバルクシリコンにおいてもトレンチプロセスをストップさせることができる。図4による実施形態とは異なり、この図5に示した製造プロセスは汎用的に適用可能である。熱酸化は省略される。トレンチプロセスの所期のストップは他方では要求が多い。何故ならば、殊に、例えば10μmの厚さを有するエピタキシャル層10は通常の場合基板4よりも数倍薄いからである。
【0023】
図6には、本発明によるマイクロメカニカル素子の第3の実施形態が概略的に示されている。この実施形態においては連続して行われる2つのトレンチエッチングステップにおいてコンタクトホール8と、1つまたは複数のスルーコンタクト12が形成される。ここでダイヤフラム1は図4および5による実施形態に比べて厚く、このことは有利には安定性を高める。これに対し、断面が著しく狭い一貫したスルーコンタクト12は安定性を実質的に制限しない。この実施形態のさらなる利点は、後面3側からコンタクトホール8をトレンチする際の比較的高いレート動作が得られることである。これによってプロセスの製造公差をより良好に補償調整することができる。スルーコンタクト12のトレンチプロセスは同様に後面3側から行われ、この実施形態では金属化部14においてストップされる。このプロセスを例えば以下のステップから構成することができる:
−コンタクトホール8のトレンチプロセスのための後面3のマスキング。
−高いレート動作で基板4においてストップされる、後面3側からのコンタクトホール8のトレンチエッチング。
−スルーコンタクト12のトレンチエッチングプロセスのためのマスクとしての、コンタクトホール8のトレンチ底部における照明による後面3のスプレーコーティング(Spruehbelackung)。
−前面金属化部14においてストップされる、後面3側からのスルーコンタクト12のトレンチエッチング。
−絶縁層16の析出。
−後面3のスプレーコーティング。スルーコンタクト12のトレンチ底部はアスペクト比が高いためにコーティングされない、または完全にはコーティングされない。
−絶縁層16、金属化部14、ならびに必要に応じて設けられる図示していない別の絶縁層を開くための異方性のトレンチエッチングステップ。
−裏面3上、コンタクトホール8内およびスルーコンタクト12内における導電性材料9の析出および構造化。
【0024】
この方法はエピタキシが行われないプロセスにも適用できる。
【0025】
図7および8には、図6による実施形態に相当する、本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態を製造するための別の可能性が示されている。図7は中間段階を示し、ここでは先ずコンタクトホール8およびスルーコンタクト12が一貫して基板4および任意のエピタキシャル層10を貫通してエッチングされる。ここではスルーコンタクト12に関して、前面2側からスルーコンタクトをエッチングすることも可能であり、このことは例えばマスキングを容易にする。この実施形態において、このステップはコンタクトホール8のトレンチの前に行われる限りにおいてブラインドホール12’(図9を参照されたい)に関係し、これらのブラインドホール12’は開かれることによってスルーコンタクト12になる。本方法のこのヴァリエーションの利点は、導電性材料9の析出でもって、スルーコンタクト12が充填され、またコンタクト層を前面2上、コンタクトホール8内および/または後面3上に形成できる点にある。金属化部14およびパッシベーション層15は図8に示されているように事後的に被着される。考えられるプロセスは例えば以下の一連のステップを有する:
−ブラインドホール12’(図9を参照されたい)のトレンチエッチングプロセスのための前面2のマスキング。
−ブラインドホール12’のトレンチエッチング。
−コンタクトホール8のトレンチプロセスのための後面3のマスキング。
−スルーコンタクト12が開かれるまでのコンタクトホール8のトレンチエッチング。
−絶縁層16の析出。
−有利にはLPCVD法(低圧化学気相成長法)での、場合によっては、現場での、すなわちインシトゥーでのドーピングまたは事後的なドーピングを用いる、前面2上および後面3上における例えば多結晶シリコンの同時の析出。
【0026】
図9および10には、図8の本発明によるマイクロメカニカル素子の実施形態を製造するための別の可能性が示されている。図9は中間段階を示し、ここでは前面2側から先ずブラインドホール12’がエッチングされ、絶縁層16が析出される。続いて、絶縁されたブラインドホール12’に導電性材料9、有利には多結晶シリコンが充填される。絶縁層を析出するために適切な方法、例えばプラズマ化学気相成長法(PECVD;plasma-enhanced chemical vapour deposition)、約0.3barでの減圧化学気相成長法(SACVD;sub-atmospheric chemical vapour deposition)または熱酸化が使用される。後面3側からは、続いて図10に示されているように、図9による充填されたブラインドホール12’が開かれることによって、コンタクトホール8のエッチングによりスルーコンタクト12が形成される。この製造方法の利点は、エッチストップが常に基板4内で行われるので、マイクロメカニカル素子はいずれの時点においても一貫した開口部を有さず、このことは製造において処理がより容易になるという点にある。考えられるプロセスは例えば以下の一連のステップを有する:
−ブラインドホール12’のトレンチエッチングプロセスのための前面2のマスキング。
−ブラインドホール12’のトレンチエッチング。
−酸化(絶縁層16)。
−有利にはLPCVD法による、後に熱酸化の際のマスキングとして使用することができる窒化物層17の析出。
−前面2上およびザックホール12’における例えば多結晶シリコン9の析出。
−コンタクトホール8のための後面3のマスキング。
−多結晶シリコン9が窒化物層17と共に部分的に露出されるまでの後面3側からのコンタクトホール8の酸化エッチング。
−コンタクトホール8内の絶縁層16の熱酸化、多結晶シリコン9には窒化物層17に基づき酸化物が極僅かにしか形成されない(薄い酸化物)。
−多結晶シリコン9から窒化物層17の露出された部分を除去するために、酸化物エッチングレートよりも高い窒化物エッチングレートでの、例えば乾式エッチングステップによる後面3の窒化物エッチング。
−ここでは、例えば多結晶シリコン9と材料9’が組み合わされた後面接触接続部による接触多結晶シリコン9の露出された部分の接触接続。
【0027】
有利には、前述の方法において、コンタクトホール8のトレンチの前に後面2側から基板4を研磨することができる。これによってトレンチステップを短縮することができる。有利には、いずれにせよ薄い基板4が使用される。
【0028】
図11および12は、図8による実施形態に関して考えられる用途を示す。図13および14は、図10による実施形態に関して考えられる用途を示す。コンタクト領域5は基板4のその他の領域に対して絶縁されている。機能構造7の例として圧電抵抗性の表面マイクロメカニカル(SMM)圧力センサ7が示されている。
【0029】
図11には、コンタクト領域5内の酸化されたトレンチ絶縁溝18が示されており、これらのトレンチ絶縁溝18は前面2の絶縁層16からエピタキシャル層10を通って基板4まで延在している。圧電抵抗性のSMM圧力センサ7はpドープされた線路31およびpドープされた圧電抵抗32をnドープされたエピタキシャル層10内に有し、またpドープされた基板4内には空洞33を有している。機能構造7、すなわち圧力センサはドープされた線路31、金属化部14および多結晶シリコン9を介してマイクロメカニカル素子の後面3と導電的に接続されている。
【0030】
図12はpドープされた上側絶縁リング19および同様にpドープされた下側絶縁リング19’を示し、上側絶縁リング19は前面2の絶縁層16からnドープされたエピタキシャル層10へと延在しており、また下側絶縁リング19’はエピタキシャル層10からpドープされた基板4まで延在している。圧電抵抗性のSMM圧力センサは図11に相当する。
【0031】
図13は図12に応じた用途を示し、このマイクロメカニカル素子の実施形態は図10に応じる。図14は図11に応じた用途を示し、このマイクロメカニカル素子の実施形態は同様に図10に応じる。
【0032】
図15〜17には考えられる機能構造7として同様に、図11〜14に示したような圧電抵抗性のSMM圧力センサ7が示されているが、ここでは図4および5によるマイクロメカニカル素子の実施形態のためのものである。
【0033】
図15は図4のマイクロメカニカル素子の第1の実施形態に関係し、またpドープされた上側絶縁リング19および同様にpドープされた下側絶縁リング19’を示し、上側縁リング19は前面2の絶縁層16からnドープされたエピタキシャル層10へと延在しており、また下側絶縁リング19’はエピタキシャル層10からpドープされた基板4まで延在している。酸化物層11の上方におけるエピタキシャル層10のnドープされた多結晶部10’(エピタキシャルポリシリコン)は、金属化部14との接触接続のために高nドープ領域10’’を有する。
【0034】
図16は同様に、図4のマイクロメカニカル素子の第1の実施形態に関係し、また酸化されたトレンチ絶縁溝18を示し、このトレンチ絶縁溝18は絶縁層16からエピタキシャル層10を通り酸化物層11まで延在している。nドープされたエピタキシャルポリシリコン10’は同様に高nドープ領域10’’を有する。
【0035】
図17は図5のマイクロメカニカル素子の第2の実施形態に関係し、またpドープされた上側絶縁リング19および同様にpドープされた下側絶縁リング19’を示し、上側絶縁リング19は前面2の絶縁層16からnドープされたエピタキシャル層10へと延在しており、下側絶縁リング19’はエピタキシャル層10からpドープされた基板4まで延在している。金属化部14の下方には、接触接続のための高nドープ領域10’’が配置されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面(2)および後面(3)を備えた基板(4)を有する、マイクロメカニカル素子であって、
前記前面(2)は機能構造(7)を有し、該機能構造(7)はコンタクト領域(5)において前記後面(3)と電気的に接触接続しており、前記基板(4)は前記コンタクト領域(5)において少なくとも1つのコンタクトホール(8)を有し、該コンタクトホール(8)は前記後面(3)側から前記基板(4)内へと延在している、マイクロメカニカル素子において、
前記コンタクトホール(8)と前記前面(2)との間に機械的に安定したダイヤフラム(1)が配置されていることを特徴とする、マイクロメカニカル素子。
【請求項2】
前記基板(4)の前記前面(2)はエピタキシャル層(10)を有し、前記コンタクトホール(8)は前記エピタキシャル層(10)まで、または前記エピタキシャル層(10)の内部にまで延在している、請求項1記載のマイクロメカニカル素子。
【請求項3】
前記基板(4)と前記エピタキシャル層(10)との間において少なくとも前記コンタクト領域(5)内に酸化物層(11)が配置されている、請求項1または2記載のマイクロメカニカル素子。
【請求項4】
前記基板(4)は前記コンタクト領域(5)内に1つまたは複数のスルーコンタクト(12)を有し、該スルーコンタクト(12)は前記コンタクトホール(8)を前記前面(2)に接続させ、前記スルーコンタクト(12)は有利には導電性の材料(9)でもってコーティングまたは充填されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のマイクロメカニカル素子。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載のマイクロメカニカル素子の製造方法において、
少なくとも1つのコンタクトホール(8)を後面(3)側から、前記コンタクトホール(8)と前面(2)との間に機械的に安定したダイヤフラム(1)が残存するように基板(4)内に形成し、機能構造(7)と前記後面(3)との間にダイヤフラム(1)を通る電気的な接触接続部を形成することを特徴とする、マイクロメカニカル素子の製造方法。
【請求項6】
前記コンタクトホール(8)をトレンチエッチングにより形成し、エッチングプロセスを制御下で、有利にはエピタキシャル層(10)において、またはエピタキシャル層(10)内でストップさせ、有利には前記エピタキシャル層(10)の被着前に少なくともコンタクト領域において酸化物層(11)を前記基板(4)上に被着させ、エッチングプロセスを前記酸化物層(11)においてストップさせる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
1つまたは複数のスルーコンタクト(12)を第2のエッチングプロセスによって形成し、前記スルーコンタクト(12)により前記コンタクトホール(8)を前記前面(2)と接続させる、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記スルーコンタクト(12)を前記コンタクトホール(8)側からエッチングし、エッチングプロセスを有利には前記前面(2)の表面金属化部(13)においてストップする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記スルーコンタクト(12)を一貫してエッチングし、絶縁層を析出し、続いて導電性の材料を被着させ、有利には1つのステップで前記前面(2)上および前記スルーコンタクト(12)内、また有利には前記コンタクトホール(8)内および/または前記後面(3)上に導電性の材料を被着させる、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記コンタクトホール(8)のエッチングの前に前記前面(2)側からブラインドホール(12’)を形成し、絶縁させ、有利には導電性の材料(9)でもって充填し、前記ブラインドホール(12’)を前記後面(3)側からの前記コンタクトホール(8)のエッチングによって開き、前記スルーコンタクト(12)を形成する、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの参加されたトレンチ絶縁溝(18)を1つのプロセスステップにおいて、前記スルーコンタクト(12)またはブラインドホール(12’)と同時にトレンチエッチングによって形成する、請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−531435(P2010−531435A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510732(P2010−510732)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056398
【国際公開番号】WO2008/148654
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】