説明

内燃機関の制御装置

【課題】排気ターボ過給機及び高圧ループ排気ガス再循環装置が付帯した内燃機関における燃費を向上させる。
【解決手段】加速要求を検知したときにスロットルバルブ33の開度を強制的に開きつつ、バイパスバルブ及びEGRバルブ22を操作して出力を制御するとともに、前記コンプレッサ51による過給時には、排気圧が吸気圧よりも大きくなるよう、前記スロットルバルブ33の開度を絞ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ターボ過給機及び排気ガス再循環装置が付帯した内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ターボ過給機搭載の内燃機関において、排気ガスの一部を分流させることによりタービンへの排気ガス流入量を調節し、以て安定した過給圧を得るためのウェイストゲートバルブを備えたものが知られている。
【0003】
また、このウェイストゲートバルブを備えた内燃機関において、アクセルペダルの踏込量に応じてスロットルバルブの開度を全開にし、過給時に目標過給圧となるようにウェイストゲートバルブの開度を制御することにより、過給時のポンピングロスを低減する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
一方、気筒内の燃焼温度を低下させ、以て有害物質であるNOの排出量を削減する排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置が知られている。EGR装置は、燃焼により発生した排気ガスの一部を吸気に混入するものであり、気筒から排出された直後の排気ガスを吸気通路に還流する高圧ループEGRが一般的である。
【0005】
ところが、前述したスロットルバルブの開度を全開にする内燃機関に高圧ループEGRを適用しようとすると、過給時に吸気圧が排気圧を上回ってしまい、排気ガスを吸気通路に還流することができず、EGR装置による効果が期待できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−141258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、排気ターボ過給機及び高圧ループ排気ガス再循環装置が付帯した内燃機関における燃費を向上させることを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、排気通路に設けられたタービンと、吸気通路に設けられ前記タービンにより駆動されるコンプレッサと、前記排気通路における前記タービンの上流側と前記吸気通路における前記コンプレッサの下流側とを接続するEGR通路にEGRバルブが設けられてなる高圧ループ式の排気ガス再循環装置と、前記排気通路における前記タービンの上流側と下流側とを接続するバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられ電気的に開度制御可能なバイパスバルブと、前記吸気通路における前記排気ガス再循環装置の上流側に設けられアクセルペダルの踏込量とは独立して開度制御可能なスロットルバルブとを備えた内燃機関の制御装置であって、加速要求を検知したときに前記スロットルバルブの開度を強制的に開きつつ、前記バイパスバルブ及び前記EGRバルブを操作して出力を制御するとともに、前記コンプレッサによる過給時には、排気圧が吸気圧よりも大きくなるよう、前記スロットルバルブの開度を絞ることを特徴とする内燃機関の制御装置を構成した。
【0009】
このようなものであれば、非過給時、過給時を問わずスロットルバルブの開度をできるだけ大きくして、ポンピングロスを低減させることができるとともに、過給時であってEGRが必要な状況下においては、過給された吸気圧を排気圧よりも小さくして排気ガスを吸気通路に還流させることができ、EGR装置による燃費向上、NOの排出削減及びノッキング防止効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排気ターボ過給機及び高圧ループ排気ガス再循環装置が付帯した内燃機関において、燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態における内燃機関及び排気ガス再循環装置の構成を示す図。
【図2】同実施形態における制御方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関0の概要を示す。本実施形態の内燃機関0は、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)と、各気筒1内に燃料を噴射するインジェクタ11と、各気筒1に吸気を供給するための吸気通路3と、各気筒1から排気を排出するための排気通路4と、吸気通路3を流通する吸気を過給する排気ターボ過給機5と、排気通路4から吸気通路3に向けて排気ガスを還流させる外部EGR通路2とを備えている。
【0013】
吸気通路3は、外部から空気(新気)を取り入れて気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、過給機5のコンプレッサ51、インタクーラ32、電子スロットルバルブ33、サージタンク34、吸気マニホルド35を、上流からこの順序に配置している。
【0014】
排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42、過給機5の駆動タービン52及び三元触媒41を配置している。加えて、タービン52を迂回する排気バイパス通路43、及びこのバイパス通路43の入口を開閉するバイパスバルブであるウェイストゲートバルブ44を設けてある。ウェイストゲートバルブ44は、アクチュエータに制御信号mを入力することで開閉操作することが可能な電動ウェイストゲートバルブであり、本実施形態においては、アクチュエータとしてサーボモータを用いている。
【0015】
排気ターボ過給機5は、駆動タービン52とコンプレッサ51とを同軸で連結し連動するように構成したものである。そして、駆動タービン52を排気のエネルギを利用して回転駆動し、その回転力を以てコンプレッサ51にポンプ作用を営ませることにより、吸入空気を加圧圧縮(過給)して気筒1に送り込む。
【0016】
外部EGR通路2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものである。外部EGR通路2の入口は、排気通路4における三元触媒41及びタービン52の上流、かつ気筒1の排気ポートの下流の所定箇所に接続している。外部EGR通路2の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ33の下流、具体的にはサージタンク34の所定箇所に接続している。外部EGR通路2上には、EGRクーラ21及びEGRバルブ22を設けてある。
【0017】
高圧ループEGRでは、高圧の排気ガスをEGR通路2を通じて吸気通路3に還流する。そのために、EGRを行う際には通常、EGR通路2の出口の上流にあるスロットルバルブ33を絞ることで、EGR通路2の出口の周囲を負圧化する。
【0018】
内燃機関0の運転制御を司るECU(電子制御装置)6は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。入力インタフェースには、車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、エンジン回転数を検出する回転数センサから出力される回転数信号b、アクセルペダルの踏込量(いわば、要求負荷、要求出力)を検出するアクセルセンサから出力されるアクセル開度要求信号c、サージタンク34内の吸気の圧力(過給圧)を検出する圧力センサから出力される吸気圧信号d、サージタンク34の吸気温を検出する温度センサから出力される吸気温信号e、排気通路4を流通する(タービン52を通る前の)排気の圧力を検出する圧力センサから出力される背圧信号l等が入力される。出力インタフェースからは、インジェクタ11に対して燃料噴射信号f、点火プラグ(のイグニッションコイル)に対して点火信号g、EGRバルブ22に対して開度操作信号h、スロットルバルブ33に対して開度操作信号j、ウェイストゲートバルブ44に対して開度操作信号m等を出力する。
【0019】
ECU6のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行して、内燃機関0の運転を制御する。ECU6は、内燃機関0の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、lを入力インタフェースを介して取得し、それらに基づいて吸気量や要求燃料噴射量、点火時期、要求EGR量等を演算する。そして、演算結果に対応した各種制御信号f、g、h、j、mを出力インタフェースを介して印加する。
【0020】
本実施形態では、加速要求を検知したとき、即ち運転者によりアクセルペダルが踏み込まれているときに、スロットルバルブ33の開度を、アクセルペダルの踏込量如何によらず強制的に開きながら、要求負荷に対応した新気量及びEGRガス量を気筒1に充填できるよう、ウェイストゲートバルブ44及び/またはEGRバルブ22の開度を操作する。
【0021】
さらに、サージタンク34内圧力が正圧を示す過給時において、EGRを必要とする運転領域にあっては、排気圧が吸気圧よりも大きくなるよう、前記スロットルバルブ33の開度を非過給時よりも絞りつつ、ウェイストゲートバルブ44及びEGRバルブ22の開度を操作する。
【0022】
図2に、ECU6が実行する処理の手順を示している。まず、ECU6は、加速要求の有無を検知する(ステップS1)。具体的には、前記アクセルセンサから出力されるアクセル開度要求信号cを元に、運転者がアクセルペダルを踏んでいることを検知する。加速要求がなされている間は、スロットルバルブ33をアクセルペダルの踏込量に対応する開度よりも大きく開きつつ、要求負荷及び要求EGR率を達成できるようにウェイストゲートバルブ44及びEGRバルブ22の開度を操作する(ステップS3、ステップS5)。
【0023】
さらにその上で、サージタンク34内に設けられた圧力センサを用いて、現在過給領域であるか非過給領域であるかを判断する(ステップS2)。具体的には、圧力センサから出力される吸気圧信号dによって、サージタンク34内が所定圧力(例えば、大気圧)より大きい正圧か、所定圧力より小さい負圧かを計測し、正圧であれば過給域、負圧であれば非過給域とする。
【0024】
非過給域にある場合には、スロットルバルブ33は全開または全開に近い所定開度に開いてよい(ステップS3)。ECU6のメモリには予め、エンジン回転数及び要求負荷(または、吸気量)と、スロットルバルブ33、ウェイストゲートバルブ44及びEGRバルブ22の各開度との関係を規定したマップデータが記憶させてある。マップは、適合により求められたものである。ECU6は、このマップを検索してスロットルバルブ33、ウェイストゲートバルブ44及びEGRバルブ22の各開度を知得し、これらバルブ33、44、22を操作する。
【0025】
これに対し、過給域にある場合には、スロットルバルブ33を前記所定開度に開くことができるとは限られない。サージタンク34内の過給圧が排気マニホルド42内の排気ガス圧を超えていると、EGR通路2を介してEGRガスを吸気系に還流させることができなくなるからである。そこで、過給域では、排気圧が吸気圧よりも大きくなるように、各バルブ22、33、44を制御する(ステップS5)必要がある。
【0026】
即ち、スロットルバルブ33の開度を非過給域における前記所定開度よりも絞りつつ、ウェイストゲートバルブ44及びEGRバルブ22の開度を操作する。但し、それでもなおスロットルバルブ33の開度は極力大きく開けるようにする。ECU6のメモリには予め、エンジン回転数及び要求負荷(または、吸気量)と、排気圧が吸気圧よりも大きくなるようなスロットルバルブ33、ウェイストゲートバルブ44及びEGRバルブ22の各開度との関係を規定したマップデータが記憶させてある。マップは、適合により求められたものである。ECU6は、このマップを検索してスロットルバルブ33、ウェイストゲートバルブ44及びEGRバルブ22の各開度を知得し、これらバルブ33、44、22を操作する。
【0027】
過給域における各バルブ22、33、44の制御を具体的に説明すれば、要求負荷に対応する目標EGR率を達成するようにEGRバルブ22を制御するとともに、排気ガスがサージタンク34内に流入できるようにEGR通路2の出口の上流にあるスロットルバルブ33を略全開の状態から少しく絞るように制御する。これによって、吸気通路3に接続するEGR通路2の出口の周囲を負圧化する。これは、EGR通路2の出口の周囲の圧力を低下させて外部EGRガスの還流量を確保するために必要である。
【0028】
また、スロットルバルブ33の開度が小さくなることに伴う過給圧の調整も必要となる。そのため、タービン52に送り込まれる排気ガス量をウェイストゲートバルブ44で調整する。EGRバルブ22、スロットルバルブ33、及びウェイストゲートバルブ44の制御は、略同時に実行される。
【0029】
なお、過給領域であっても、要求負荷が一定以上に大きい場合には、スロットルバルブ33を前記所定開度に維持する。例えば、高要求負荷かつ高回転時等、目標EGR率が0となる(EGRバルブ22を全閉する)ような領域においては、排気ガスを吸気通路3側に還流する必要がなくなるため、排気圧が吸気圧よりも大きくなるように各バルブ22、33、44を制御する必要はない(ステップS4)。
【0030】
本実施形態では、排気通路4に設けられたタービン52と、吸気通路3に設けられ前記タービン52により駆動されるコンプレッサ51と、前記排気通路4における前記タービン52の上流側と前記吸気通路3における前記コンプレッサ51の下流側とを接続するEGR通路2にEGRバルブ22が設けられてなる高圧ループ式の排気ガス再循環装置と、前記排気通路4における前記タービン52の上流側と下流側とを接続するバイパス通路43と、前記バイパス通路43に設けられ電気的に開度制御可能なバイパスバルブであるウェイストゲートバルブ44と、前記吸気通路3における前記排気ガス再循環装置の上流側に設けられアクセルペダルの踏込量から独立して開度制御可能なスロットルバルブ33とを備えた内燃機関0の制御装置であって、加速要求を検知したときに前記スロットルバルブ33の開度を強制的に開きつつ、前記コンプレッサ51による過給時には、前記ウェイストゲートバルブ44及び/又はEGRバルブ22を操作して出力を制御するとともに、排気圧が吸気圧よりも大きくなるよう、前記スロットルバルブ33の開度を絞るように制御しているので、過給領域においても、高圧EGRガスを吸気通路3側に流入させることが可能となる。したがって、冷却損失を低減させることができるとともに、燃費を向上させることができる。また、スロットルバルブ33の開度を通常のアクセルペダルの踏込量に対応する開度よりも強制的に開き気味に制御することで、ポンピングロスを低減させ、燃費を向上させることができる。
【0031】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、過給域における各バルブ22、33、44の開度の決定にあたり、排気通路を流通する(タービンを通る前の)排気の圧力を検出する圧力センサから出力される背圧信号lをも参照し、サージタンク34内の吸気圧が背圧よりも小さくなるように各バルブ22、33、44をフィードバック制御するという態様も考えられる。尤も、上記実施形態の如くマップを参照して各バルブ22、33、44の開度を決定する方が、応答性の面では有利である。
【0032】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、車両等に搭載される過給機付きの内燃機関に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
0…内燃機関
2…EGR通路
22…EGRバルブ
3…吸気通路
33…スロットルバルブ
4…排気通路
43…バイパス通路
44…バイパスバルブ(ウェイストゲートバルブ)
51…コンプレッサ
52…タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に設けられたタービンと、
吸気通路に設けられ前記タービンにより駆動されるコンプレッサと、
前記排気通路における前記タービンの上流側と前記吸気通路における前記コンプレッサの下流側とを接続するEGR通路にEGRバルブが設けられてなる高圧ループ式の排気ガス再循環装置と、
前記排気通路における前記タービンの上流側と下流側とを接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路に設けられ電気的に開度制御可能なバイパスバルブと、
前記吸気通路における前記排気ガス再循環装置の上流側に設けられアクセルペダルの踏込量とは独立して開度制御可能なスロットルバルブとを備えた内燃機関の制御装置であって、
加速要求を検知したときに前記スロットルバルブの開度を強制的に開きつつ、前記バイパスバルブ及び前記EGRバルブを操作して出力を制御するとともに、
前記コンプレッサによる過給時には、排気圧が吸気圧よりも大きくなるよう、前記スロットルバルブの開度を絞ることを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−158997(P2012−158997A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17396(P2011−17396)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】