内燃機関の吸気制御装置
【課題】 実質的にスロットルレスとしてポンピングロスを低減すると同時に、ブローバイガスの還流などを考慮した構成とする。
【解決手段】 吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ連続的に拡大,縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、リフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構とを備え、吸気弁のバルブリフト特性の可変制御によって、吸気量を制御する。コレクタ58端部の吸気入口通路59に、負圧調整弁61が設けられ、コレクタ58内に一定の負圧を生成する。コレクタ58内の負圧変動は小さいので、コレクタ58内にエアクリーナエレメント60が収納されており、吸気系全体が小型化される。新気導入通路68およびブローバイガス通路66を備え、コレクタ58内の負圧を利用したブローバイガスの還流が可能である。
【解決手段】 吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ連続的に拡大,縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、リフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構とを備え、吸気弁のバルブリフト特性の可変制御によって、吸気量を制御する。コレクタ58端部の吸気入口通路59に、負圧調整弁61が設けられ、コレクタ58内に一定の負圧を生成する。コレクタ58内の負圧変動は小さいので、コレクタ58内にエアクリーナエレメント60が収納されており、吸気系全体が小型化される。新気導入通路68およびブローバイガス通路66を備え、コレクタ58内の負圧を利用したブローバイガスの還流が可能である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、火花点火式ガソリン機関のシリンダ内へ吸入される吸気量を制御する吸気制御装置、特に、吸気弁のバルブリフト特性の可変制御により吸気量の制御を達成するようにした内燃機関の吸気制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ガソリン機関においては、一般に吸気通路中に設けたスロットル弁の開度制御によって吸気量を制御しているが、良く知られているように、この種の方式では、特にスロットル弁開度の小さな低負荷時におけるポンピングロスが大きい、という問題がある。これに対し、吸気弁の開閉時期(特に閉時期)やリフト量を変化させることで、スロットル弁に依存せずに吸気量を制御しようとする試みが以前からなされており、この技術を利用して、ディーゼル機関と同様に吸気系にスロットル弁を具備しないいわゆるスロットルレスの構成を実現することが提案されている。
【0003】例えば、特開平11−117777号公報には、吸気弁および排気弁を、電気信号によって開閉する電磁式の構成とし、低中負荷領域において、吸気弁の閉時期あるいはリフト量の可変制御によって吸気量を負荷に応じて制御するようにした発明が開示されている。なお、この公報の装置は、スロットル弁を併用したものであり、上記の低中負荷領域においてはスロットル弁が全開となって上述したバルブリフト特性による吸気量制御が行われ、かつ、アイドル等の極低負荷域および高負荷域では、このスロットル弁を利用して吸気量が制御されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公報の装置は、スロットル弁が全開となる低中負荷領域に着目すれば、実質的にスロットルレスの構成と言えるが、このようにスロットルレス化した場合に、実用機関においては、いくつかの重要な課題が発生する。
【0005】その一つは、主にバルブタイミングつまり吸気弁閉時期によって充填効率を制御しようとすると、アイドルのように必要な吸気量が非常に少ないときに、吸気弁閉時期が下死点よりも大幅に進角した位置となるため、ピストンが十分に下降しない時点で吸気弁が閉じてしまうことから、実圧縮比が低下し、圧縮上死点での温度が不十分となって、燃焼が不安定となることである。
【0006】また、もう一つの問題は、スロットルレス化に伴って吸気系に負圧が発生しなくなると、ブローバイガスやエバポレータからのパージガス(燃料タンクからの蒸発燃料成分を含むガス)などを吸気系に還流させる既存のシステムが、そのままでは機能しなくなり、何らかのポンプ手段が必要になるなどシステムの大幅な変更ないしは複雑化を招来することである。吸気系の負圧は、通常、内燃機関に付属する種々の切換弁等の駆動源としても用いられており、これらに関連する構成も変更する必要が生じる。
【0007】本発明の目的は、吸気弁の可変制御によって、ポンピングロスの大幅な低減が可能なスロットル弁に依存しない吸気量制御を実現するとともに、ブローバイガスの還流などを考慮した実用機関に適した内燃機関の吸気制御装置を提供することにある。
【0008】また、本発明の他の目的は、内燃機関の吸気系の一層の小型化を図ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ連続的に拡大,縮小制御可能なリフト・作動角可変機構を備え、機関運転条件に応じてこのリフト・作動角を制御することにより内燃機関の吸気量を制御するようにした内燃機関の吸気制御装置において、各気筒の吸気ポートに接続されるコレクタの上流側に、コレクタ内に適宜な負圧を発生させるための負圧調整弁を備えたことを特徴としている。
【0010】この発明では、吸気弁のリフト・作動角によって吸気量が制御される。つまり、負荷制御のためのスロットル弁は具備していない。上記負圧調整弁は、例えば、バタフライバルブ、あるいは他の適宜な形式の弁機構によって構成され得るが、通路断面積を部分的に絞ることによって、コレクタ内に適宜な負圧を発生させる。この負圧は、例えば、ブローバイガスの還流やエバポレータからのパージガスの還流、あるいは種々のアクチュエータのための負圧源などとして、利用される。これらの目的の上で必要な負圧の値は、例えば、−100〜−200mmHg程度であるが、これに限定されるものではない。また負圧調整弁は、負圧の大きさを可変とすべく外部から積極的に制御可能な構成であっても良く、あるいは、外部から制御されることなく適宜な負圧を与える構成であっても良い。
【0011】このようにコレクタ内がある程度の負圧となると、多少のポンピングロスは発生することになるが、アイドル等の低負荷域においては、コレクタ内が大気圧である場合に比べて、必要なリフト・作動角が大となり、閉時期も極端に進角させる必要がなくなることから、実圧縮比が相対的に向上し、燃焼安定化に寄与する。
【0012】また、上記負圧調整弁は、請求項2のように、内燃機関の全負荷時には十分な開度とし、負圧を解消させることが好ましい。これにより、全負荷時の充填効率が負圧調整弁によって制限されることがない。
【0013】請求項3に係る発明は、上記コレクタの内部にエアクリーナエレメントが配設されていることを特徴としている。
【0014】すなわち、コレクタ上流にスロットル弁を具備する一般的な構成では、低負荷時にコレクタ内が非常に強い負圧となり、かつスロットル弁の開閉に伴ってコレクタ内の負圧が大きく変動することから、スロットル弁の下流となるコレクタ内にエアクリーナエレメントを配置することは、エレメントの耐久性確保の問題が大きく、到底不可能である。これに対し、本発明のように、負圧調整弁により比較的弱くかつ比較的安定した負圧がコレクタ内に生成される構成であれば、負圧調整弁の下流となるコレクタ内にエアクリーナエレメントを配置することが可能である。コレクタ内にエアクリーナエレメントを配置することによって、吸気系全体は非常に小型の構成となる。また、コレクタの容量が、スロットル弁による機関の応答性によって制約されることがないので、エアクリーナエレメントを内部に収容することと相俟って、コレクタの容量を十分に大きく確保することが可能であり、吸気音低減の上では有利となる。
【0015】請求項4に係る発明では、上記負圧調整弁は、コレクタ内の負圧に応動して該負圧が所定値となるように機械的に開度が調節される構成となっている。これにより、外部から制御する必要がなく、簡単な構成でもってブローバイガスの還流などの上で必要な負圧が得られる。
【0016】請求項5に係る発明は、吸気弁のリフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構をさらに備え、上記リフト・作動角可変機構とこの位相可変機構との双方の制御の組み合わせによって内燃機関の吸気量を制御することを特徴としている。
【0017】このように、リフト・作動角可変機構とは別に、リフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構を備えることで、制御の自由度が大幅に拡大し、種々の運転条件に一層適した形で吸気量を制御することが可能となる。
【0018】上記リフト・作動角可変機構は、例えば請求項6のように、駆動軸により回転駆動される偏心カムと、この偏心カムの外周に相対回転可能に嵌合したリンクアームと,上記駆動軸と平行に設けられ、かつ偏心カム部を備えた回動可能な制御軸と、この制御軸の偏心カム部に回転可能に装着され、かつ上記リンクアームにより揺動されるロッカアームと、上記駆動軸に回転可能に支持されるとともに、上記ロッカアームにリンクを介して連結され、該ロッカアームに伴って揺動することにより吸気弁のタペットを押圧する揺動カムと、を備えており、上記制御軸の偏心カム部の回動位置を変化させることにより吸気弁のリフト・作動角が同時に増減変化するように構成されている。
【0019】請求項7に係る発明は、内燃機関のクランクケースから取り出されたブローバイガスが、上記負圧調整弁の下流側に還流することを特徴としている。
【0020】同様に、請求項8に係る発明は、内燃機関のクランクケースから取り出されたブローバイガスが、コレクタ内のエアクリーナエレメントの下流側に還流することを特徴としている。
【0021】上記負圧調整弁は、例えば請求項9のように、上記コレクタの入口部分に取り付けられている。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、基本的に吸気弁の可変制御によって吸気量を制御するので、ポンピングロスの大幅な低減が達成できるとともに、負荷制御に関係なく適宜な負圧がコレクタ内に確保されるため、実用機関として必要なブローバイガスの還流などの負圧を利用した種々のシステムを、大幅な変更を要さずにそのまま適用することが可能となる。
【0023】特に、請求項4のように比較的簡単な構成の負圧調整弁でもって適宜な負圧を生成することが可能であり、ブローバイガス還流装置の構成の変更などに比べて遙かに容易に実施できる。
【0024】また、請求項3のようにコレクタ内にエアクリーナエレメントを収容することが可能となり、吸気系全体としての大幅な小型化を達成できる。しかも、コレクタの容量は逆に大きく確保することが可能であり、吸気音低減の上で有利となる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、この発明を、自動車用火花点火式ガソリン機関に適用した実施の形態について説明する。
【0026】図1および図2は、この内燃機関における吸気系の構成を示している。図示するように、この内燃機関は、例えば直列4気筒機関であって、シリンダヘッド51およびシリンダブロック52によって4個の燃焼室53が構成されているとともに、各気筒毎に、一対の吸気弁54および一対の排気弁55が設けられている。上記吸気弁54によって開閉される吸気ポート56には、各気筒毎のブランチ通路57が接続されており、この4本のブランチ通路57の上流端がコレクタ58にそれぞれ接続されている。上記コレクタ58は、気筒列方向に沿って細長い形状をなし、その一端に吸気入口通路59が設けられているとともに、この吸気入口通路59と各ブランチ通路57との間を隔てるように、コレクタ58内部に、エアクリーナエレメント60が収容されている。そして、上記吸気入口通路59に、負圧生成用の負圧調整弁61が配設されている。この負圧調整弁61の上流側となる吸気入口通路59の一端は、外気取入口59aとして外部に開放されており、かつここに、異物除去用の網状部材62が配設されている。なお、上記エアクリーナエレメント60に作用する吸気脈動を影響を抑制するために、コレクタ58内でエアクリーナエレメント60下流側に各気筒共通の容積が十分に残るようにエアクリーナエレメント60の位置が定められている。
【0027】図3は、上記の吸気系を利用したブローバイガス還流装置の構成を示しており、シリンダブロック52内のクランクケース65に一端が連通するブローバイガス通路66の他端がコレクタ58下流のブランチ通路57に接続されている。なお、図では、1つの気筒のブランチ通路57に接続されているが、各気筒に分配するように構成することが望ましい。また、シリンダヘッドカバー67により覆われたシリンダヘッド51の上部空間に新気導入通路68の一端が接続されているとともに、この新気導入通路68の他端が、吸気入口通路59の負圧調整弁61より上流側に接続されている。なお、シリンダヘッド51上部空間とクランクケース65とは、図示せぬシリンダブロック52内部の通路によって連通している。このブローバイガス還流装置の基本的な作用は、スロットル弁を具備するガソリン機関における一般的なブローバイガス還流装置と同様である。すなわち、ピストン69を介してクランクケース65側へ漏れたブローバイガスは、コレクタ58に生成された負圧によってブランチ通路57へと流れ、同時に、新気導入通路68を通して、新気がシリンダヘッド51上部空間へと導入される。また、後述するように負圧調整弁61が全開となる全負荷時には、一部のブローバイガスは、新気導入通路68を逆に吸気入口通路59側へと流れ、該吸気入口通路59から燃焼室53へ吸入される。
【0028】図4は、上記負圧調整弁61を示している。この負圧調整弁61は、吸気入口通路59を開閉するように回転軸71に取り付けられたバタフライバルブ型の弁体72と、この弁体72にリンク73を介して連係したダイヤフラム式の負圧アクチュエータ74と、この負圧アクチュエータ74の負圧室へ供給される負圧を切り換える三方電磁弁75と、を備えている。上記吸気入口通路59の弁体72より下流側には、負圧検出ポート76が設けられており、上記三方電磁弁75は、この負圧検出ポート76から取り出される負圧と、負圧タンク77内の負圧と、を選択的に負圧アクチュエータ74へ供給するようになっている。上記負圧タンク77は、例えば図示せぬ負圧ポンプによって生成されるブレーキ機構のマスタバッグ用の負圧を蓄えておくものであり、特に、コレクタ58内に生成すべき負圧よりも強い負圧が蓄えられている。
【0029】上記三方電磁弁75は、通常運転時は、負圧検出ポート76側に切り換えられている。従って、コレクタ58側で発生した負圧が負圧アクチュエータ74の負圧室へ導入され、これによって弁体72が開く。特に、負圧アクチュエータ74に導入される負圧が弱まると弁体72の開度が減少し、逆に負圧アクチュエータ74に導入される負圧が強まると弁体72の開度が増加する構成となっているので、機械的なフィードバック機構となり、コレクタ58内の負圧の大きさが一定値となるように、弁体72の開度が自動的に調節される。この目標値となる負圧の大きさは、ブローバイガス還流装置の特性などを考慮して適宜に設定されるが、例えば、−100〜−200mmHg程度に設定される。
【0030】一方、内燃機関の所定の高負荷時には、上記三方電磁弁75が負圧タンク77側に切り換えられる。これによって負圧アクチュエータ74へ大きな負圧が導入され、弁体72は直ちに全開となる。これにより、弁体72が通路抵抗となることがない。
【0031】次に、この内燃機関における吸気量制御について説明する。図5は、上記吸気弁54に対し設けられる吸気弁側可変動弁機構の構成を示す構成説明図であり、この可変動弁機構は、吸気弁のリフト・作動角を変化させるリフト・作動角可変機構1と、そのリフトの中心角の位相(図示せぬクランクシャフトに対する位相)を進角もしくは遅角させる位相可変機構2と、が組み合わされて構成されている。
【0032】まず、図6の動作説明図を併せて、リフト・作動角可変機構1を説明する。なお、このリフト・作動角可変機構1は、本出願人が先に提案したものであるが、例えば特開平11−107725号公報等によって公知となっているので、その概要のみを説明する。
【0033】リフト・作動角可変機構1は、上記の吸気弁54と、シリンダヘッド51上部の図示せぬカムブラケットに回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、この駆動軸13に、圧入等により固定された偏心カム15と、上記駆動軸13の上方位置に同じカムブラケットによって回転自在に支持されるとともに駆動軸13と平行に配置された制御軸16と、この制御軸16の偏心カム部17に揺動自在に支持されたロッカアーム18と、各吸気弁54の上端部に配置されたタペット19に当接する揺動カム20と、を備えている。上記偏心カム15とロッカアーム18とはリンクアーム25によって連係されており、ロッカアーム18と揺動カム20とは、リンク部材26によって連係されている。
【0034】上記駆動軸13は、後述するように、タイミングチェーンないしはタイミングベルトを介して機関のクランクシャフトによって駆動されるものである。
【0035】上記偏心カム15は、円形外周面を有し、該外周面の中心が駆動軸13の軸心から所定量だけオフセットしているとともに、この外周面に、リンクアーム25の環状部25aが回転可能に嵌合している。
【0036】上記ロッカアーム18は、略中央部が上記偏心カム部17によって支持されており、その一端部に、上記リンクアーム25の延長部25bが連係しているとともに、他端部に、上記リンク部材26の上端部が連係している。上記偏心カム部17は、制御軸16の軸心から偏心しており、従って、制御軸16の角度位置に応じてロッカアーム18の揺動中心は変化する。
【0037】上記揺動カム20は、駆動軸13の外周に嵌合して回転自在に支持されており、側方へ延びた端部20aに、上記リンク部材26の下端部が連係している。この揺動カム20の下面には、駆動軸13と同心状の円弧をなす基円面24aと、該基円面24aから上記端部20aへと所定の曲線を描いて延びるカム面24bと、が連続して形成されており、これらの基円面24aならびにカム面24bが、揺動カム20の揺動位置に応じてタペット19の上面に当接するようになっている。
【0038】すなわち、上記基円面24aはベースサークル区間として、リフト量が0となる区間であり、図6に示すように、揺動カム20が揺動してカム面24bがタペット19に接触すると、徐々にリフトしていくことになる。なお、ベースサークル区間とリフト区間との間には若干のランプ区間が設けられている。
【0039】上記制御軸16は、図5に示すように、一端部に設けられたリフト・作動角制御用油圧アクチュエータ31によって所定角度範囲内で回転するように構成されている。このリフト・作動角制御用油圧アクチュエータ31への油圧供給は、エンジンコントロールユニット33からの制御信号に基づき、第1油圧制御部32によって制御されている。
【0040】このリフト・作動角可変機構1の作用を説明すると、駆動軸13が回転すると、偏心カム15のカム作用によってリンクアーム25が上下動し、これに伴ってロッカアーム18が揺動する。このロッカアーム18の揺動は、リンク部材26を介して揺動カム20へ伝達され、該揺動カム20が揺動する。この揺動カム20のカム作用によって、タペット19が押圧され、吸気弁54がリフトする。
【0041】ここで、リフト・作動角制御用油圧アクチュエータ31を介して制御軸16の角度が変化すると、ロッカアーム18の初期位置が変化し、ひいては揺動カム20の初期揺動位置が変化する。
【0042】例えば偏心カム部17が図6(A)のように上方へ位置しているとすると、ロッカアーム18は全体として上方へ位置し、揺動カム20の端部20aが相対的に上方へ引き上げられた状態となる。つまり、揺動カム20の初期位置は、そのカム面24bがタペット19から離れる方向に傾く。従って、駆動軸13の回転に伴って揺動カム20が揺動した際に、基円面24aが長くタペット19に接触し続け、カム面24bがタペット19に接触する期間は短い。従って、リフト量が全体として小さくなり、かつその開時期から閉時期までの角度範囲つまり作動角も縮小する。本発明では、特に、吸気弁54が全くリフトしないゼロリフトを実現することができる。
【0043】逆に、偏心カム部17が図6(B)のように下方へ位置しているとすると、ロッカアーム18は全体として下方へ位置し、揺動カム20の端部20aが相対的に下方へ押し下げられた状態となる。つまり、揺動カム20の初期位置は、そのカム面24bがタペット19に近付く方向に傾く。従って、駆動軸13の回転に伴って揺動カム20が揺動した際に、タペット19と接触する部位が基円面24aからカム面24bへと直ちに移行する。従って、リフト量が全体として大きくなり、かつその作動角も拡大する。
【0044】上記の偏心カム部17の初期位置は連続的に変化させ得るので、これに伴って、バルブリフト特性は、図7に示すように、連続的に変化する。つまり、リフトならびに作動角を、両者同時に、連続的に拡大,縮小させることができる。なお、この実施例では、リフト・作動角の大小変化に伴い、吸気弁54の開時期と閉時期とがほぼ対称に変化する。
【0045】次に、位相可変機構2は、図5に示すように、上記駆動軸13の前端部に設けられたスプロケット35と、このスプロケット35と上記駆動軸13とを、所定の角度範囲内において相対的に回転させる位相制御用油圧アクチュエータ36と、から構成されている。上記スプロケット35は、図示せぬタイミングチェーンもしくはタイミングベルトを介して、クランクシャフトに連動している。上記位相制御用油圧アクチュエータ36への油圧供給は、エンジンコントロールユニット33からの制御信号に基づき、第2油圧制御部37によって制御されている。この位相制御用油圧アクチュエータ36への油圧制御によって、スプロケット35と駆動軸13とが相対的に回転し、図8に示すように、リフト中心角が遅進する。つまり、リフト特性の曲線自体は変わらずに、全体が進角もしくは遅角する。また、この変化も、連続的に得ることができる。位相可変機構2としては、油圧式のものに限られず、電磁式アクチュエータを利用したものなど、種々の構成が可能である。
【0046】なお、リフト・作動角可変機構1ならびに位相可変機構2の制御としては、実際のリフト・作動角あるいは位相を検出するセンサを設けて、クローズドループ制御するようにしても良く、あるいは運転条件に応じて単にオープンループ制御するようにしても良い。
【0047】このような可変動弁機構を吸気弁側に備えた本発明の内燃機関は、スロットル弁に依存せず、吸気弁54の可変制御によって吸気量が制御される。
【0048】図9は、代表的な運転条件における吸気弁のバルブリフト特性を示したものであり、図の左側にはそれぞれが対応する運転領域を併せて図示してある。図示するように、■アイドルないしは■部分負荷域(R/L域)では、ポンピングロスを低減するために、小作動角とするとともにリフト中心角を進角させて、開時期を上死点付近とし、かつ閉時期を早めて、実際の吸入ストロークを減少させる。そして、■緩加速域では、作動角をやや大きくして、中間作動角とし、かつリフト中心角をやや進角した状態(■■よりは遅角した位置)とする。また、■低速全負荷域では、さらに作動角を拡大して、低速用の全開作動角とし、かつ■よりも遅角した標準中心角とする。この状態では、開時期は上死点前となり、閉時期は下死点後となるので、充填効率が十分に高められる。さらに、■高速全負荷域では、作動角をさらに拡大するとともに、中心角を遅角し、閉時期が下死点よりもさらに遅れたものとする。また、全負荷域では、前述したように、負圧調整弁61が強制的に全開となる。
【0049】図10は、上述した可変動弁機構の作用や負圧調整弁61の動作を負荷変化に対しまとめて示したものである。図示するように、作動角は、概ね負荷増加に伴って拡大し、中心角は、概ね負荷増加に伴って遅角していく。また、負圧調整弁61の開度は、一定負圧を維持するように自動調節されるので、吸気量の増加に伴って開度が大となっていく。そして、全負荷域では全開となる。
【0050】上記のような負圧調整弁61を備えている本実施例では、コレクタ58内の負圧は、図11に示すような特性となる。つまり、基本的に負荷変化に無関係に一定負圧を保ち、かつ全負荷域でのみ負圧はほぼ0となる。これに対し、一般的なスロットル弁により負荷制御を行う構成では、図示するように、低負荷側で大きな負圧が発生し、負荷増加に伴って、負圧が低下する。なお、上記負圧調整弁61による負圧が、このスロットル弁による負圧を上回ることがないように、負圧調整弁61閉時の負圧の大きさならびに強制的に全開とする負荷の値が設定されている。
【0051】上記のように、基本的にスロットルレスとした構成では、低中負荷域においてポンピングロスの大幅な低減を達成できる。図12は、一例として部分負荷時におけるサイクルのP−V線図を示しており、本実施例の特性と従来のスロットル弁を備えた機関の特性とを対比して示している。
【0052】このように上記実施例の構成によれば、基本的にスロットルレス化したことによってポンピングロスの大幅な低減を達成できるとともに、負圧調整弁61によって適宜な負圧がコレクタ58内に生成されるので、負圧を利用したブローバイガスの還流が確実に行われることになる。また、機関の運転中における負圧の変動は、図11に示すように非常に小さく、またその頻度も少ないので、エアクリーナエレメント60をコレクタ58内に配置することが可能となる。この結果、吸気系全体を非常に小型に構成することが可能となる。また、吸気量は吸気弁54において制御されるので、コレクタ58の容積を大きくしても、機関の応答性が悪化する虞がなく、従って、吸気系全体を小型化しつつコレクタ58の容積は大きく確保して、吸気音低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る吸気制御装置の一実施例を示す概略的な断面図。
【図2】同じく概略的な平面図。
【図3】ブローバイガス還流装置の構成を示す構成説明図。
【図4】負圧調整弁の構成を示す拡大図。
【図5】この実施例における可変動弁機構を示す斜視図。
【図6】リフト・作動角可変機構の動作説明図。
【図7】リフト・作動角可変機構によるリフト・作動角の特性変化を示す特性図。
【図8】位相可変機構によるバルブリフト特性の位相変化を示す特性図。
【図9】代表的な運転条件でのバルブリフト特性を示す特性図。
【図10】負荷変化に対する作動角、中心角、コレクタ負圧、等の変化を示す特性図。
【図11】コレクタ負圧を従来のものと対比して示す特性図。
【図12】ポンピングロスの低減を説明するためのP−V線図。
【符号の説明】
1…リフト・作動角可変機構
2…位相可変機構
13…駆動軸
15…偏心カム
16…制御軸
17…偏心カム部
18…ロッカアーム
25…リンクアーム
26…リンク部材
54…吸気弁
58…コレクタ
60…エアクリーナエレメント
61…負圧調整弁
66…ブローバイガス通路
68…新気導入通路
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、火花点火式ガソリン機関のシリンダ内へ吸入される吸気量を制御する吸気制御装置、特に、吸気弁のバルブリフト特性の可変制御により吸気量の制御を達成するようにした内燃機関の吸気制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ガソリン機関においては、一般に吸気通路中に設けたスロットル弁の開度制御によって吸気量を制御しているが、良く知られているように、この種の方式では、特にスロットル弁開度の小さな低負荷時におけるポンピングロスが大きい、という問題がある。これに対し、吸気弁の開閉時期(特に閉時期)やリフト量を変化させることで、スロットル弁に依存せずに吸気量を制御しようとする試みが以前からなされており、この技術を利用して、ディーゼル機関と同様に吸気系にスロットル弁を具備しないいわゆるスロットルレスの構成を実現することが提案されている。
【0003】例えば、特開平11−117777号公報には、吸気弁および排気弁を、電気信号によって開閉する電磁式の構成とし、低中負荷領域において、吸気弁の閉時期あるいはリフト量の可変制御によって吸気量を負荷に応じて制御するようにした発明が開示されている。なお、この公報の装置は、スロットル弁を併用したものであり、上記の低中負荷領域においてはスロットル弁が全開となって上述したバルブリフト特性による吸気量制御が行われ、かつ、アイドル等の極低負荷域および高負荷域では、このスロットル弁を利用して吸気量が制御されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公報の装置は、スロットル弁が全開となる低中負荷領域に着目すれば、実質的にスロットルレスの構成と言えるが、このようにスロットルレス化した場合に、実用機関においては、いくつかの重要な課題が発生する。
【0005】その一つは、主にバルブタイミングつまり吸気弁閉時期によって充填効率を制御しようとすると、アイドルのように必要な吸気量が非常に少ないときに、吸気弁閉時期が下死点よりも大幅に進角した位置となるため、ピストンが十分に下降しない時点で吸気弁が閉じてしまうことから、実圧縮比が低下し、圧縮上死点での温度が不十分となって、燃焼が不安定となることである。
【0006】また、もう一つの問題は、スロットルレス化に伴って吸気系に負圧が発生しなくなると、ブローバイガスやエバポレータからのパージガス(燃料タンクからの蒸発燃料成分を含むガス)などを吸気系に還流させる既存のシステムが、そのままでは機能しなくなり、何らかのポンプ手段が必要になるなどシステムの大幅な変更ないしは複雑化を招来することである。吸気系の負圧は、通常、内燃機関に付属する種々の切換弁等の駆動源としても用いられており、これらに関連する構成も変更する必要が生じる。
【0007】本発明の目的は、吸気弁の可変制御によって、ポンピングロスの大幅な低減が可能なスロットル弁に依存しない吸気量制御を実現するとともに、ブローバイガスの還流などを考慮した実用機関に適した内燃機関の吸気制御装置を提供することにある。
【0008】また、本発明の他の目的は、内燃機関の吸気系の一層の小型化を図ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ連続的に拡大,縮小制御可能なリフト・作動角可変機構を備え、機関運転条件に応じてこのリフト・作動角を制御することにより内燃機関の吸気量を制御するようにした内燃機関の吸気制御装置において、各気筒の吸気ポートに接続されるコレクタの上流側に、コレクタ内に適宜な負圧を発生させるための負圧調整弁を備えたことを特徴としている。
【0010】この発明では、吸気弁のリフト・作動角によって吸気量が制御される。つまり、負荷制御のためのスロットル弁は具備していない。上記負圧調整弁は、例えば、バタフライバルブ、あるいは他の適宜な形式の弁機構によって構成され得るが、通路断面積を部分的に絞ることによって、コレクタ内に適宜な負圧を発生させる。この負圧は、例えば、ブローバイガスの還流やエバポレータからのパージガスの還流、あるいは種々のアクチュエータのための負圧源などとして、利用される。これらの目的の上で必要な負圧の値は、例えば、−100〜−200mmHg程度であるが、これに限定されるものではない。また負圧調整弁は、負圧の大きさを可変とすべく外部から積極的に制御可能な構成であっても良く、あるいは、外部から制御されることなく適宜な負圧を与える構成であっても良い。
【0011】このようにコレクタ内がある程度の負圧となると、多少のポンピングロスは発生することになるが、アイドル等の低負荷域においては、コレクタ内が大気圧である場合に比べて、必要なリフト・作動角が大となり、閉時期も極端に進角させる必要がなくなることから、実圧縮比が相対的に向上し、燃焼安定化に寄与する。
【0012】また、上記負圧調整弁は、請求項2のように、内燃機関の全負荷時には十分な開度とし、負圧を解消させることが好ましい。これにより、全負荷時の充填効率が負圧調整弁によって制限されることがない。
【0013】請求項3に係る発明は、上記コレクタの内部にエアクリーナエレメントが配設されていることを特徴としている。
【0014】すなわち、コレクタ上流にスロットル弁を具備する一般的な構成では、低負荷時にコレクタ内が非常に強い負圧となり、かつスロットル弁の開閉に伴ってコレクタ内の負圧が大きく変動することから、スロットル弁の下流となるコレクタ内にエアクリーナエレメントを配置することは、エレメントの耐久性確保の問題が大きく、到底不可能である。これに対し、本発明のように、負圧調整弁により比較的弱くかつ比較的安定した負圧がコレクタ内に生成される構成であれば、負圧調整弁の下流となるコレクタ内にエアクリーナエレメントを配置することが可能である。コレクタ内にエアクリーナエレメントを配置することによって、吸気系全体は非常に小型の構成となる。また、コレクタの容量が、スロットル弁による機関の応答性によって制約されることがないので、エアクリーナエレメントを内部に収容することと相俟って、コレクタの容量を十分に大きく確保することが可能であり、吸気音低減の上では有利となる。
【0015】請求項4に係る発明では、上記負圧調整弁は、コレクタ内の負圧に応動して該負圧が所定値となるように機械的に開度が調節される構成となっている。これにより、外部から制御する必要がなく、簡単な構成でもってブローバイガスの還流などの上で必要な負圧が得られる。
【0016】請求項5に係る発明は、吸気弁のリフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構をさらに備え、上記リフト・作動角可変機構とこの位相可変機構との双方の制御の組み合わせによって内燃機関の吸気量を制御することを特徴としている。
【0017】このように、リフト・作動角可変機構とは別に、リフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構を備えることで、制御の自由度が大幅に拡大し、種々の運転条件に一層適した形で吸気量を制御することが可能となる。
【0018】上記リフト・作動角可変機構は、例えば請求項6のように、駆動軸により回転駆動される偏心カムと、この偏心カムの外周に相対回転可能に嵌合したリンクアームと,上記駆動軸と平行に設けられ、かつ偏心カム部を備えた回動可能な制御軸と、この制御軸の偏心カム部に回転可能に装着され、かつ上記リンクアームにより揺動されるロッカアームと、上記駆動軸に回転可能に支持されるとともに、上記ロッカアームにリンクを介して連結され、該ロッカアームに伴って揺動することにより吸気弁のタペットを押圧する揺動カムと、を備えており、上記制御軸の偏心カム部の回動位置を変化させることにより吸気弁のリフト・作動角が同時に増減変化するように構成されている。
【0019】請求項7に係る発明は、内燃機関のクランクケースから取り出されたブローバイガスが、上記負圧調整弁の下流側に還流することを特徴としている。
【0020】同様に、請求項8に係る発明は、内燃機関のクランクケースから取り出されたブローバイガスが、コレクタ内のエアクリーナエレメントの下流側に還流することを特徴としている。
【0021】上記負圧調整弁は、例えば請求項9のように、上記コレクタの入口部分に取り付けられている。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、基本的に吸気弁の可変制御によって吸気量を制御するので、ポンピングロスの大幅な低減が達成できるとともに、負荷制御に関係なく適宜な負圧がコレクタ内に確保されるため、実用機関として必要なブローバイガスの還流などの負圧を利用した種々のシステムを、大幅な変更を要さずにそのまま適用することが可能となる。
【0023】特に、請求項4のように比較的簡単な構成の負圧調整弁でもって適宜な負圧を生成することが可能であり、ブローバイガス還流装置の構成の変更などに比べて遙かに容易に実施できる。
【0024】また、請求項3のようにコレクタ内にエアクリーナエレメントを収容することが可能となり、吸気系全体としての大幅な小型化を達成できる。しかも、コレクタの容量は逆に大きく確保することが可能であり、吸気音低減の上で有利となる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、この発明を、自動車用火花点火式ガソリン機関に適用した実施の形態について説明する。
【0026】図1および図2は、この内燃機関における吸気系の構成を示している。図示するように、この内燃機関は、例えば直列4気筒機関であって、シリンダヘッド51およびシリンダブロック52によって4個の燃焼室53が構成されているとともに、各気筒毎に、一対の吸気弁54および一対の排気弁55が設けられている。上記吸気弁54によって開閉される吸気ポート56には、各気筒毎のブランチ通路57が接続されており、この4本のブランチ通路57の上流端がコレクタ58にそれぞれ接続されている。上記コレクタ58は、気筒列方向に沿って細長い形状をなし、その一端に吸気入口通路59が設けられているとともに、この吸気入口通路59と各ブランチ通路57との間を隔てるように、コレクタ58内部に、エアクリーナエレメント60が収容されている。そして、上記吸気入口通路59に、負圧生成用の負圧調整弁61が配設されている。この負圧調整弁61の上流側となる吸気入口通路59の一端は、外気取入口59aとして外部に開放されており、かつここに、異物除去用の網状部材62が配設されている。なお、上記エアクリーナエレメント60に作用する吸気脈動を影響を抑制するために、コレクタ58内でエアクリーナエレメント60下流側に各気筒共通の容積が十分に残るようにエアクリーナエレメント60の位置が定められている。
【0027】図3は、上記の吸気系を利用したブローバイガス還流装置の構成を示しており、シリンダブロック52内のクランクケース65に一端が連通するブローバイガス通路66の他端がコレクタ58下流のブランチ通路57に接続されている。なお、図では、1つの気筒のブランチ通路57に接続されているが、各気筒に分配するように構成することが望ましい。また、シリンダヘッドカバー67により覆われたシリンダヘッド51の上部空間に新気導入通路68の一端が接続されているとともに、この新気導入通路68の他端が、吸気入口通路59の負圧調整弁61より上流側に接続されている。なお、シリンダヘッド51上部空間とクランクケース65とは、図示せぬシリンダブロック52内部の通路によって連通している。このブローバイガス還流装置の基本的な作用は、スロットル弁を具備するガソリン機関における一般的なブローバイガス還流装置と同様である。すなわち、ピストン69を介してクランクケース65側へ漏れたブローバイガスは、コレクタ58に生成された負圧によってブランチ通路57へと流れ、同時に、新気導入通路68を通して、新気がシリンダヘッド51上部空間へと導入される。また、後述するように負圧調整弁61が全開となる全負荷時には、一部のブローバイガスは、新気導入通路68を逆に吸気入口通路59側へと流れ、該吸気入口通路59から燃焼室53へ吸入される。
【0028】図4は、上記負圧調整弁61を示している。この負圧調整弁61は、吸気入口通路59を開閉するように回転軸71に取り付けられたバタフライバルブ型の弁体72と、この弁体72にリンク73を介して連係したダイヤフラム式の負圧アクチュエータ74と、この負圧アクチュエータ74の負圧室へ供給される負圧を切り換える三方電磁弁75と、を備えている。上記吸気入口通路59の弁体72より下流側には、負圧検出ポート76が設けられており、上記三方電磁弁75は、この負圧検出ポート76から取り出される負圧と、負圧タンク77内の負圧と、を選択的に負圧アクチュエータ74へ供給するようになっている。上記負圧タンク77は、例えば図示せぬ負圧ポンプによって生成されるブレーキ機構のマスタバッグ用の負圧を蓄えておくものであり、特に、コレクタ58内に生成すべき負圧よりも強い負圧が蓄えられている。
【0029】上記三方電磁弁75は、通常運転時は、負圧検出ポート76側に切り換えられている。従って、コレクタ58側で発生した負圧が負圧アクチュエータ74の負圧室へ導入され、これによって弁体72が開く。特に、負圧アクチュエータ74に導入される負圧が弱まると弁体72の開度が減少し、逆に負圧アクチュエータ74に導入される負圧が強まると弁体72の開度が増加する構成となっているので、機械的なフィードバック機構となり、コレクタ58内の負圧の大きさが一定値となるように、弁体72の開度が自動的に調節される。この目標値となる負圧の大きさは、ブローバイガス還流装置の特性などを考慮して適宜に設定されるが、例えば、−100〜−200mmHg程度に設定される。
【0030】一方、内燃機関の所定の高負荷時には、上記三方電磁弁75が負圧タンク77側に切り換えられる。これによって負圧アクチュエータ74へ大きな負圧が導入され、弁体72は直ちに全開となる。これにより、弁体72が通路抵抗となることがない。
【0031】次に、この内燃機関における吸気量制御について説明する。図5は、上記吸気弁54に対し設けられる吸気弁側可変動弁機構の構成を示す構成説明図であり、この可変動弁機構は、吸気弁のリフト・作動角を変化させるリフト・作動角可変機構1と、そのリフトの中心角の位相(図示せぬクランクシャフトに対する位相)を進角もしくは遅角させる位相可変機構2と、が組み合わされて構成されている。
【0032】まず、図6の動作説明図を併せて、リフト・作動角可変機構1を説明する。なお、このリフト・作動角可変機構1は、本出願人が先に提案したものであるが、例えば特開平11−107725号公報等によって公知となっているので、その概要のみを説明する。
【0033】リフト・作動角可変機構1は、上記の吸気弁54と、シリンダヘッド51上部の図示せぬカムブラケットに回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、この駆動軸13に、圧入等により固定された偏心カム15と、上記駆動軸13の上方位置に同じカムブラケットによって回転自在に支持されるとともに駆動軸13と平行に配置された制御軸16と、この制御軸16の偏心カム部17に揺動自在に支持されたロッカアーム18と、各吸気弁54の上端部に配置されたタペット19に当接する揺動カム20と、を備えている。上記偏心カム15とロッカアーム18とはリンクアーム25によって連係されており、ロッカアーム18と揺動カム20とは、リンク部材26によって連係されている。
【0034】上記駆動軸13は、後述するように、タイミングチェーンないしはタイミングベルトを介して機関のクランクシャフトによって駆動されるものである。
【0035】上記偏心カム15は、円形外周面を有し、該外周面の中心が駆動軸13の軸心から所定量だけオフセットしているとともに、この外周面に、リンクアーム25の環状部25aが回転可能に嵌合している。
【0036】上記ロッカアーム18は、略中央部が上記偏心カム部17によって支持されており、その一端部に、上記リンクアーム25の延長部25bが連係しているとともに、他端部に、上記リンク部材26の上端部が連係している。上記偏心カム部17は、制御軸16の軸心から偏心しており、従って、制御軸16の角度位置に応じてロッカアーム18の揺動中心は変化する。
【0037】上記揺動カム20は、駆動軸13の外周に嵌合して回転自在に支持されており、側方へ延びた端部20aに、上記リンク部材26の下端部が連係している。この揺動カム20の下面には、駆動軸13と同心状の円弧をなす基円面24aと、該基円面24aから上記端部20aへと所定の曲線を描いて延びるカム面24bと、が連続して形成されており、これらの基円面24aならびにカム面24bが、揺動カム20の揺動位置に応じてタペット19の上面に当接するようになっている。
【0038】すなわち、上記基円面24aはベースサークル区間として、リフト量が0となる区間であり、図6に示すように、揺動カム20が揺動してカム面24bがタペット19に接触すると、徐々にリフトしていくことになる。なお、ベースサークル区間とリフト区間との間には若干のランプ区間が設けられている。
【0039】上記制御軸16は、図5に示すように、一端部に設けられたリフト・作動角制御用油圧アクチュエータ31によって所定角度範囲内で回転するように構成されている。このリフト・作動角制御用油圧アクチュエータ31への油圧供給は、エンジンコントロールユニット33からの制御信号に基づき、第1油圧制御部32によって制御されている。
【0040】このリフト・作動角可変機構1の作用を説明すると、駆動軸13が回転すると、偏心カム15のカム作用によってリンクアーム25が上下動し、これに伴ってロッカアーム18が揺動する。このロッカアーム18の揺動は、リンク部材26を介して揺動カム20へ伝達され、該揺動カム20が揺動する。この揺動カム20のカム作用によって、タペット19が押圧され、吸気弁54がリフトする。
【0041】ここで、リフト・作動角制御用油圧アクチュエータ31を介して制御軸16の角度が変化すると、ロッカアーム18の初期位置が変化し、ひいては揺動カム20の初期揺動位置が変化する。
【0042】例えば偏心カム部17が図6(A)のように上方へ位置しているとすると、ロッカアーム18は全体として上方へ位置し、揺動カム20の端部20aが相対的に上方へ引き上げられた状態となる。つまり、揺動カム20の初期位置は、そのカム面24bがタペット19から離れる方向に傾く。従って、駆動軸13の回転に伴って揺動カム20が揺動した際に、基円面24aが長くタペット19に接触し続け、カム面24bがタペット19に接触する期間は短い。従って、リフト量が全体として小さくなり、かつその開時期から閉時期までの角度範囲つまり作動角も縮小する。本発明では、特に、吸気弁54が全くリフトしないゼロリフトを実現することができる。
【0043】逆に、偏心カム部17が図6(B)のように下方へ位置しているとすると、ロッカアーム18は全体として下方へ位置し、揺動カム20の端部20aが相対的に下方へ押し下げられた状態となる。つまり、揺動カム20の初期位置は、そのカム面24bがタペット19に近付く方向に傾く。従って、駆動軸13の回転に伴って揺動カム20が揺動した際に、タペット19と接触する部位が基円面24aからカム面24bへと直ちに移行する。従って、リフト量が全体として大きくなり、かつその作動角も拡大する。
【0044】上記の偏心カム部17の初期位置は連続的に変化させ得るので、これに伴って、バルブリフト特性は、図7に示すように、連続的に変化する。つまり、リフトならびに作動角を、両者同時に、連続的に拡大,縮小させることができる。なお、この実施例では、リフト・作動角の大小変化に伴い、吸気弁54の開時期と閉時期とがほぼ対称に変化する。
【0045】次に、位相可変機構2は、図5に示すように、上記駆動軸13の前端部に設けられたスプロケット35と、このスプロケット35と上記駆動軸13とを、所定の角度範囲内において相対的に回転させる位相制御用油圧アクチュエータ36と、から構成されている。上記スプロケット35は、図示せぬタイミングチェーンもしくはタイミングベルトを介して、クランクシャフトに連動している。上記位相制御用油圧アクチュエータ36への油圧供給は、エンジンコントロールユニット33からの制御信号に基づき、第2油圧制御部37によって制御されている。この位相制御用油圧アクチュエータ36への油圧制御によって、スプロケット35と駆動軸13とが相対的に回転し、図8に示すように、リフト中心角が遅進する。つまり、リフト特性の曲線自体は変わらずに、全体が進角もしくは遅角する。また、この変化も、連続的に得ることができる。位相可変機構2としては、油圧式のものに限られず、電磁式アクチュエータを利用したものなど、種々の構成が可能である。
【0046】なお、リフト・作動角可変機構1ならびに位相可変機構2の制御としては、実際のリフト・作動角あるいは位相を検出するセンサを設けて、クローズドループ制御するようにしても良く、あるいは運転条件に応じて単にオープンループ制御するようにしても良い。
【0047】このような可変動弁機構を吸気弁側に備えた本発明の内燃機関は、スロットル弁に依存せず、吸気弁54の可変制御によって吸気量が制御される。
【0048】図9は、代表的な運転条件における吸気弁のバルブリフト特性を示したものであり、図の左側にはそれぞれが対応する運転領域を併せて図示してある。図示するように、
【0049】図10は、上述した可変動弁機構の作用や負圧調整弁61の動作を負荷変化に対しまとめて示したものである。図示するように、作動角は、概ね負荷増加に伴って拡大し、中心角は、概ね負荷増加に伴って遅角していく。また、負圧調整弁61の開度は、一定負圧を維持するように自動調節されるので、吸気量の増加に伴って開度が大となっていく。そして、全負荷域では全開となる。
【0050】上記のような負圧調整弁61を備えている本実施例では、コレクタ58内の負圧は、図11に示すような特性となる。つまり、基本的に負荷変化に無関係に一定負圧を保ち、かつ全負荷域でのみ負圧はほぼ0となる。これに対し、一般的なスロットル弁により負荷制御を行う構成では、図示するように、低負荷側で大きな負圧が発生し、負荷増加に伴って、負圧が低下する。なお、上記負圧調整弁61による負圧が、このスロットル弁による負圧を上回ることがないように、負圧調整弁61閉時の負圧の大きさならびに強制的に全開とする負荷の値が設定されている。
【0051】上記のように、基本的にスロットルレスとした構成では、低中負荷域においてポンピングロスの大幅な低減を達成できる。図12は、一例として部分負荷時におけるサイクルのP−V線図を示しており、本実施例の特性と従来のスロットル弁を備えた機関の特性とを対比して示している。
【0052】このように上記実施例の構成によれば、基本的にスロットルレス化したことによってポンピングロスの大幅な低減を達成できるとともに、負圧調整弁61によって適宜な負圧がコレクタ58内に生成されるので、負圧を利用したブローバイガスの還流が確実に行われることになる。また、機関の運転中における負圧の変動は、図11に示すように非常に小さく、またその頻度も少ないので、エアクリーナエレメント60をコレクタ58内に配置することが可能となる。この結果、吸気系全体を非常に小型に構成することが可能となる。また、吸気量は吸気弁54において制御されるので、コレクタ58の容積を大きくしても、機関の応答性が悪化する虞がなく、従って、吸気系全体を小型化しつつコレクタ58の容積は大きく確保して、吸気音低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る吸気制御装置の一実施例を示す概略的な断面図。
【図2】同じく概略的な平面図。
【図3】ブローバイガス還流装置の構成を示す構成説明図。
【図4】負圧調整弁の構成を示す拡大図。
【図5】この実施例における可変動弁機構を示す斜視図。
【図6】リフト・作動角可変機構の動作説明図。
【図7】リフト・作動角可変機構によるリフト・作動角の特性変化を示す特性図。
【図8】位相可変機構によるバルブリフト特性の位相変化を示す特性図。
【図9】代表的な運転条件でのバルブリフト特性を示す特性図。
【図10】負荷変化に対する作動角、中心角、コレクタ負圧、等の変化を示す特性図。
【図11】コレクタ負圧を従来のものと対比して示す特性図。
【図12】ポンピングロスの低減を説明するためのP−V線図。
【符号の説明】
1…リフト・作動角可変機構
2…位相可変機構
13…駆動軸
15…偏心カム
16…制御軸
17…偏心カム部
18…ロッカアーム
25…リンクアーム
26…リンク部材
54…吸気弁
58…コレクタ
60…エアクリーナエレメント
61…負圧調整弁
66…ブローバイガス通路
68…新気導入通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】 吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ連続的に拡大,縮小制御可能なリフト・作動角可変機構を備え、機関運転条件に応じてこのリフト・作動角を制御することにより内燃機関の吸気量を制御するようにした内燃機関の吸気制御装置において、各気筒の吸気ポートに接続されるコレクタの上流側に、コレクタ内に適宜な負圧を発生させるための負圧調整弁を備えたことを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【請求項2】 内燃機関の全負荷時には上記負圧調整弁の開度を増大させ、コレクタ内の負圧を解消させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項3】 上記コレクタの内部にエアクリーナエレメントが配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項4】 上記負圧調整弁は、コレクタ内の負圧に応動して該負圧が所定値となるように機械的に開度が調節される構成となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項5】 吸気弁のリフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構をさらに備え、上記リフト・作動角可変機構とこの位相可変機構との双方の制御の組み合わせによって内燃機関の吸気量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項6】 上記リフト・作動角可変機構は、駆動軸により回転駆動される偏心カムと、この偏心カムの外周に相対回転可能に嵌合したリンクアームと,上記駆動軸と平行に設けられ、かつ偏心カム部を備えた回動可能な制御軸と、この制御軸の偏心カム部に回転可能に装着され、かつ上記リンクアームにより揺動されるロッカアームと、上記駆動軸に回転可能に支持されるとともに、上記ロッカアームにリンクを介して連結され、該ロッカアームに伴って揺動することにより吸気弁のタペットを押圧する揺動カムと、を備えており、上記制御軸の偏心カム部の回動位置を変化させることにより吸気弁のリフト・作動角が同時に増減変化するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項7】 内燃機関のクランクケースから取り出されたブローバイガスが、上記負圧調整弁の下流側に還流することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項8】 内燃機関のクランクケースから取り出されたブローバイガスが、上記エアクリーナエレメントの下流側に還流することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項9】 上記負圧調整弁は、上記コレクタの入口部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項1】 吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ連続的に拡大,縮小制御可能なリフト・作動角可変機構を備え、機関運転条件に応じてこのリフト・作動角を制御することにより内燃機関の吸気量を制御するようにした内燃機関の吸気制御装置において、各気筒の吸気ポートに接続されるコレクタの上流側に、コレクタ内に適宜な負圧を発生させるための負圧調整弁を備えたことを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。
【請求項2】 内燃機関の全負荷時には上記負圧調整弁の開度を増大させ、コレクタ内の負圧を解消させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項3】 上記コレクタの内部にエアクリーナエレメントが配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項4】 上記負圧調整弁は、コレクタ内の負圧に応動して該負圧が所定値となるように機械的に開度が調節される構成となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項5】 吸気弁のリフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構をさらに備え、上記リフト・作動角可変機構とこの位相可変機構との双方の制御の組み合わせによって内燃機関の吸気量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項6】 上記リフト・作動角可変機構は、駆動軸により回転駆動される偏心カムと、この偏心カムの外周に相対回転可能に嵌合したリンクアームと,上記駆動軸と平行に設けられ、かつ偏心カム部を備えた回動可能な制御軸と、この制御軸の偏心カム部に回転可能に装着され、かつ上記リンクアームにより揺動されるロッカアームと、上記駆動軸に回転可能に支持されるとともに、上記ロッカアームにリンクを介して連結され、該ロッカアームに伴って揺動することにより吸気弁のタペットを押圧する揺動カムと、を備えており、上記制御軸の偏心カム部の回動位置を変化させることにより吸気弁のリフト・作動角が同時に増減変化するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項7】 内燃機関のクランクケースから取り出されたブローバイガスが、上記負圧調整弁の下流側に還流することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項8】 内燃機関のクランクケースから取り出されたブローバイガスが、上記エアクリーナエレメントの下流側に還流することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の吸気制御装置。
【請求項9】 上記負圧調整弁は、上記コレクタの入口部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
【図1】
【図4】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図10】
【図12】
【図4】
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【図10】
【図12】
【公開番号】特開2002−266663(P2002−266663A)
【公開日】平成14年9月18日(2002.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−69870(P2001−69870)
【出願日】平成13年3月13日(2001.3.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年9月18日(2002.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年3月13日(2001.3.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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