半導体素子
【課題】ドナー元素を含む半導体層を備えた半導体素子を形成する場合に、このドナー元素が上層に拡散することを抑制することができる半導体素子を提供する。
【解決手段】ZnO基板上にGaドープMgZnO層、アンドープMgZnO層、窒素ドープMgZnO層、アンドープ活性層、窒素ドープMgZnO層と積層した積層体でGaの拡散を分析した。アンドープMgZnO層の次の窒素ドープMgZnO層で、拡散してきたGaの濃度が表面側になるにつれて、急激に減少しており、この窒素ドープMgZnO層の上層にGaは拡散していない。このように、ドナー元素を含む同一組成のドナー含有半導体層の一部に、アクセプタ元素を含み前記ドナー含有半導体層と同一組成のアクセプタ含有半導体層を形成することで、ドナー元素の拡散を防止できる。
【解決手段】ZnO基板上にGaドープMgZnO層、アンドープMgZnO層、窒素ドープMgZnO層、アンドープ活性層、窒素ドープMgZnO層と積層した積層体でGaの拡散を分析した。アンドープMgZnO層の次の窒素ドープMgZnO層で、拡散してきたGaの濃度が表面側になるにつれて、急激に減少しており、この窒素ドープMgZnO層の上層にGaは拡散していない。このように、ドナー元素を含む同一組成のドナー含有半導体層の一部に、アクセプタ元素を含み前記ドナー含有半導体層と同一組成のアクセプタ含有半導体層を形成することで、ドナー元素の拡散を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナー元素を含むドナー含有半導体層を備えた半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ZnO系半導体は、照明やバックライト等用の光源として使用される紫外LED、高速電子デバイス、表面弾性波デバイス等への応用が期待されている。ZnO系半導体はその多機能性、発光ポテンシャルの大きさなどが注目されていながら、なかなか半導体デバイス材料として成長しなかった。その最大の難点は、アクセプタードーピングが困難で、P型ZnOを得ることができなかったことにある。
【0003】
しかし、近年、非特許文献1や非特許文献2に見られるように、技術の進歩により、P型ZnOを得ることができるようになり、発光も確認されるようになってきた。ただし、これらの成果は、ZnOの有用性を示した上で貴重であるが、ScAlMgO4(SCAM)という複合酸化物絶縁基板を用いている。SCAM基板は研究所レベルでしか作製されていない特殊な基板であり、かつ絶縁性の基板を使っていること、雲母のように薄膜が積み重なったような構造をしているため、チップ化の際のダイシングが困難なこと、という難点があり、このままでは産業に適した形態ではない。
【0004】
そこで、発明者らは、産業に適した形態でのZnO系半導体で構成されたLED等のデバイスの形成を目指し、ZnO基板を使っての研究、開発を進めた。その成果の一部はすでに特開2007−329353、特願2007−027182号等に開示している。このように、ZnO系基板上のZnO系薄膜の成長という方法が産業的に行われる環境が整ってきた。
【非特許文献1】A.Tsukazaki et al.,JJAP 44(2005)L643
【非特許文献2】A.Tsukazaki et al Nature Material 4(2005)42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、pn接合等デバイスの基本となる構造に用いられるn型ZnO薄膜を作製するために、ドナードープを行い、ドナードープ層上にアンドープZnO層等を積層したときに重要な問題点が見つかった。ドナードープ層よりも後に結晶成長させたアンドープZnO層等の上層にドナー元素が拡散しており、ドナー元素が表面偏析をする物質であることがわかった。表面偏析をする物質は、その母体材料に対するサーファクタントと呼ばれることがある。
【0006】
図3は、ZnO基板上にアンドープMgZnO層、ガリウムドープMgZnO層、アンドープMgZnO層と順に積層した積層体をSIMS分析(2次イオン質量分析)した。横軸は深さ(μm)、左側縦軸は対数目盛りであり、Ga濃度(cm−3)を、右側縦軸は対数目盛りであり、2次イオンイオン強度(cps:Counts Per Second)を示す。図3の上側横軸に沿って記載されている矢印部分が、各層の領域を表わしており、各層におけるガリウム濃度(cm−3)がわかる。ここで、「MgZnO:Ga」は、Ga(ガリウム)がドープされたMgZnOを表わす。Znの2次イオン強度は、各層ではそれほど変化がなく、Zn成分はほぼ一定していることがわかる。
【0007】
一方、Ga濃度については、ガリウムドープMgZnO層の下側(深い方)に行くにしたがって、急激に減少しており、下層のアンドープMgZnO層でのGa濃度には変化はない。一方、ガリウムドープMgZnO層の上側(浅い方)に行くにしたがって、増加しており、上層のアンドープMgZnO層の界面付近で最大となり、その後アンドープMgZnO層の上側にかけて、Ga濃度は直線状に減少している。
【0008】
図3に示されるDの曲線は、不純物をドープした半導体層の上下両側にアンドープ層を形成した場合における不純物の通常の拡散状態を示すものである。通常の拡散では、曲線Dのように、不純物をドープした半導体層内部では不純物濃度は一定を保ち、不純物をドープした半導体上側のアンドープ層にも、下側のアンドープ層にも同様に拡がり、両側の拡がり部分の曲線は、直線状になることはない。
【0009】
したがって、ZnO系半導体における不純物Gaの振る舞いは、通常の拡散ではなく、表面偏析を促進するサーファクタントの一種である可能性が高い。サーファクタントについては、共立出版株式会社 中嶋一雄編「エピタキシャル成長のメカニズム」に詳しい。サーファクタントとして、Ge半導体中におけるガリウム、InAs半導体中におけるSb等が知られており、以上に述べたように、ドナードープによる特異な拡散形態という問題点は知られているが、特異な現象として物理的な興味として研究されているのみで、サーファクタントであるドナー元素の拡散を抑制する方法は今まで提案されていない。
【0010】
また、表面偏析は、温度に依存して激しくなるから、成長温度を下げれば解決するが、成長温度を下げると、結晶性が悪くなったり、表面が荒れたりする問題が発生することがあるので、成長温度を変化させずに、ドナー元素の上層への拡散を防ぐ必要がある。
【0011】
一方、図3の曲線Dに示されるように、ドナー元素がドープされたドナー半導体層が存在すると、このドナー元素が表面偏析物質でなくても、通常、ドナー半導体層に接する層にドナー元素が拡散していく作用があるので、特に、ドナー半導体層の上層に形成される活性層等に、ドナー元素が拡散するのを防止することが必要である。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、ドナー元素を含む半導体層を備えた半導体素子を形成する場合に、このドナー元素が上層に拡散することを抑制することができる半導体素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ドナー元素を含み同一組成で構成されたドナー含有半導体層を備え、前記ドナー含有半導体層の一部に、アクセプタ元素を含むアクセプタ含有半導体層が形成されていることを特徴とする半導体素子である。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、前記ドナー元素はIII族、前記アクセプタ元素はV族又はI族に属することを特徴とする請求項1記載の半導体素子である。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、ZnO系材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、前記ドナー含有半導体層はMgXZn1−XOで構成され、0≦X<0.5であることを特徴とする請求項3記載の半導体素子である。
【0017】
また、請求項5記載の発明は、前記ドナー含有半導体層は、ZnO基板上に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【0018】
また、請求項6記載の発明は、前記ドナー含有半導体層は電子供給層として機能し、前記ドナー含有半導体層より上側に発光層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【0019】
また、請求項7記載の発明は、前記ドナー含有半導体層は電子流入層として機能し、前記ドナー含有半導体層が受光領域の一部を構成していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【0020】
また、請求項8記載の発明は、キャリア濃度を電界により制御する制御電極によって制御されるチャネル領域は、前記ドナー含有半導体層と同一の組成で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ドナー元素を含む同一の結晶組成で構成されるドナー含有半導体層の一部に、アクセプタ元素を含んだアクセプタ含有半導体層が形成されているので、このアクセプタ含有半導体層によって、ドナー含有半導体層におけるドナー元素の拡散が抑制される。これは、特に表面偏析作用を有する物質の上層への拡散を防止する場合に効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の半導体素子構造におけるガリウム(Ga)、窒素(N)を示す。半導体素子は、特にZnO系半導体により構成した。
【0023】
ここで、ZnO系半導体、ZnO系薄膜等におけるZnO系とは、ZnOをベースとした混晶材料であり、Znの一部をIIA族もしくはIIB族で置き換えたもの、Oの一部をVIB族で置き換えたもの、またはその両方の組み合わせを含むものである。
【0024】
図1は、SIMS(Secondary Ionization Mass Spectrometer:2次イオン質量分析装置)による分析の結果を示すが、この分析に用いたサンプルは、図1の上側横軸に沿って記載したように、ZnO基板上にGaドープMgZnO層、アンドープMgZnO層、窒素ドープMgZnO層、アンドープ活性層、窒素ドープMgZnO層と積層した積層体である。すなわち、下側からZnO基板/GaドープMgZnO層/アンドープMgZnO層/窒素ドープMgZnO層/活性層/窒素ドープMgZnO層の積層体となっている。
【0025】
一方、図2は、図1と比較するために、図1の構成において、活性層とアンドープMgZnO層との間に形成された窒素ドープMgZnO層を取り除いて構成した場合を示す。下側からZnO基板/GaドープMgZnO層/アンドープMgZnO層/活性層/窒素ドープMgZnO層の積層構造となっており、このサンプルをSIMS分析を行った。図1、2ともに、活性層は、アンドープZnOとアンドープMgZnOとを交互に数周期積層した多重量子井戸構造としており、p型半導体とn型半導体でアンドープ活性層を挟んだ構造となっている。
【0026】
図1、2ともに、左側縦軸は対数目盛で、Ga又はN濃度(cm−3)を表わす。また、右側縦軸も対数目盛でZnの2次イオン強度(cps)を表わす。一方、横軸は、深さ(μm)を表わし、最上層の窒素ドープMgZnO層の表面からの距離となっている。
【0027】
図1と図2とを比較すると、図2では、ZnO基板上に形成されたGaドープMgZnO層から上層のアンドープMgZnO層、アンドープ活性層、窒素ドープMgZnO層の一部の深さにまでGaが拡散していることがわかる。この各層への拡散の度合いを示す特性曲線は図のAに示されるように直線状となる。
【0028】
他方、図1では、アンドープMgZnO層の次の窒素ドープMgZnO層で、拡散してきたGaの濃度が表面側になるにつれて、急激に減少しており、この窒素ドープMgZnO層の上層であるアンドープ活性層、窒素ドープMgZnO層(p型クラッド層に相当)にGaは拡散していない。このように、サーファクタントであるドナー元素が含有された同一組成比率のドナー含有半導体層の一部にアクセプタ含有半導体層を形成しておくと、このアクセプタ含有半導体層により前記ドナー元素の拡散が防止される。
【0029】
ここで、ドナー含有又はアクセプタ含有とは、ドナー元素やアクセプタ元素を意図的に添加しなくても、半導体層に含まれてしまう場合を含む意味である。したがって、ドナー含有半導体層には、不純物Gaを意図的に添加したGaドープMgZnO層だけではなく、Gaの拡散により意図せずにGaが含まれることになったアンドープMgZnO層等も上記ドナー含有半導体層に相当するものである。さらに、図2で言えば、アンドープ活性層もドナー含有半導体層に該当する。アクセプタ含有半導体層には、図1でアンドープ活性層とアンドープMgZnO層との間に形成された窒素ドープMgZnO層が相当する。
【0030】
また、本発明で、同一の結晶組成比率のドナー含有半導体層の一部に、ドナー含有半導体層と同一の結晶組成比率でアクセプタ元素を含むアクセプタ含有半導体層を形成した構造としては、 図1に示したように、ドナー含有半導体層の最上部に設けても良いが、図4に示すように、ドナー含有半導体層の中間部に設けるようにしても良い。図4(a)では、ZnO基板1上に、n型MgXZnO層2、MgYZnO層3、MQW活性層5、p型MgZZnO層6が積層されている。ここで、MgYZnO層3は、アンドープMgYZnO層3aとアクセプタ含有MgYZnO層3cとで構成されており、MgYZnO層3の中間部分に、アクセプタ含有MgYZnO層3cが1層形成されている。
【0031】
一方、図4(b)では、アンドープMgYZnO層3の中間部分にアクセプタ含有MgYZnO層3cが複数層形成された構造を示す。図にも示されているように、アクセプタ含有MgYZnO層3cは、アンドープMgYZnO層3aが、別のアンドープMgYZnO層3aと接触する部分がないように、挟み込まれている。このように、アクセプタ含有半導体層は、ドナー含有半導体層の中間部に1層又は複数層(3層以上でも良い)設けることができる。
【0032】
図4は、発光ダイオードの構成例を示したもので、半導体層の具体例を示すと、n型MgXZnO層2のドナー元素はGaで、組成割合X=0.15、膜厚は100nm〜300nm、MgYZnO層3の組成割合Y=0.15で、アクセプタ含有MgYZnO層3cのアクセプタ元素は窒素、組成割合YはアンドープMgYZnO層3と同様0.15、膜厚40nmで構成される。図4(a)の場合、アクセプタ含有MgYZnO層3cにより上下に分割されたアンドープMgYZnO層3aの下側の膜厚は10nm〜100nm、上側の膜厚は10nm程度に形成される。
【0033】
一方、MQW活性層5は、井戸層に膜厚2nmのアンドープZnOを、障壁層に膜厚5nmのMg0.1ZnOを用い、これを交互に数周期積層した多重量子井戸構造に形成している。p型MgZZnO層6は、窒素がドープされ、膜厚100nm〜500nmで組成Zが0.1〜0.3となるように形成される。ここで、n型MgXZnO層2、アンドープMgYZnO層3aがドナー含有半導体層に該当する。また、MQW活性層5にp型MgZZnO層6から正孔が、アンドープMgYZnO層3aから電子が供給され、MQW活性層5において再結合が行われ発光するため、ドナー含有半導体層であるアンドープMgYZnO層3aは電子供給層として機能する。
【0034】
他方、上記の構成をフォトダイオードに適用した例が図5である。図5は、図4(b)とほぼ構造がおなじであるが、MQW活性層5がアンドープMgWZnO層15に変わっているだけであり、その他の層の組成や膜厚は、図4(b)と同じである。すなわち、図5の11〜13、13a、13c、16を図4の1〜3、3a、3c、6に置き換えれば良い。図5では、ZnO基板11上にn型MgXZnO層12、MgYZnO層13、アンドープMgWZnO層15、p型MgZZnO層16が積層されている。また、MgYZnO層13は、アンドープMgYZnO層13aとアクセプタ含有MgYZnO層13cとで構成され、MgYZnO層3の中間部分に、アクセプタ含有MgYZnO層13cが複数形成されている。
【0035】
アンドープMgWZnO層15の組成Wは、0≦W<1であり、アンドープZnO又はアンドープMgZnOのいずれかの半導体層となる。アンドープMgWZnO層15の膜厚は100nm〜10000nmの範囲で形成される。ここで、n型MgXZnO層12、アンドープMgYZnO層13aがドナー含有半導体層に該当する。また、光が照射されると、アンドープMgWZnO層15からp型MgZZnO層16に正孔が、アンドープMgYZnO層13aに電子が流入するため、ドナー含有半導体層であるアンドープMgYZnO層13aは電子流入層として機能する。
【0036】
また、図4、5のn型MgXZnO層2、12のMg組成Xは、0≦X<0.5とすることが望ましい。ドナー含有半導体層でもあるn型MgXZnO層2、12は、均一なMgZnO混晶とすることが好ましいが、現在、均一なMgZnO混晶を作製できるMg組成比率は50%未満であるために、0≦X<0.5としており、より確実に均一なMgZnO混晶を作製するには、Mg組成比率は30%以下とすることが望ましい。
【0037】
なお、ZnO系半導体層におけるGaの表面偏析は、温度に依存して激しくなるから、基板温度を下げれば解決するが、既出願の特願2007−27182や特願2007−206998に示したように、基板温度を下げると、表面が荒れたり、意図しない不純物汚染が発生したりといった別の問題が発生することもわかっており、単純に基板温度を下げることはデバイス作製に適しているとは言えない。
【0038】
以下に、図1や図4に示す積層構造を有するZnO系半導体素子の製造方法を説明する。まず、ZnO基板をロードロック室に入れ、水分除去のために1×10−5〜1×10−6Torr程度の真空環境で200℃、30分程度加熱する。1×10−9Torr程度の真空を持つ搬送チャンバーを経由して、液体窒素で冷やされた壁面を持つ成長室に基板を導入し、MBE法(分子線エピタキシー法)を用いてZnO系薄膜を成長させる。
【0039】
Znは7Nの高純度ZnをpBN製の坩堝に入れたクヌーセンセルを用い、260〜280℃程度に加熱して昇華させることにより、Zn分子線として供給する。ワイドギャップ材料として必要なMgZnOを作製するためのMgは、IIA族元素であるが、6Nの高純度Mgを用い、同様の構造のセルから300℃〜400℃に加熱して昇華させ、Mg分子線として供給する。ドナー元素であるガリウムは7Nの高純度Gaを用い、同様の構造のセルから400℃〜700℃に加熱して昇華させ、Ga分子線として供給する。
【0040】
酸素は6NのO2ガスを用い、電解研磨内面を持つSUS管を通じて円筒の一部に小さいオリフィスを開けた放電管を備えたRFラジカルセルに0.1sccm〜5sccm程度で供給、100〜300W程度のRF高周波を印加してプラズマを発生させ、反応活性を上げたOラジカルの状態にして酸素源として供給する。プラズマは重要で、O2生ガスを入れてもZnO系薄膜は形成されない。
【0041】
基板は一般的な抵抗加熱であればSiCコートしたカーボンヒータを使う。W(タングステン)などでできた金属系のヒータは酸化してしまい使えない。他にもランプ加熱、レーザー加熱などで温める方法もあるが、酸化に強ければどの方法でもかまわない。
【0042】
750℃以上に加熱し、約30分、1×10−9Torr程度の真空中で加熱した後、ラジカルセルとZnセルのシャッターを開けてZnO薄膜成長を開始する。この時、どういった種類の膜を形成するかに関わらず、上述したように平坦膜を得るためには、特願2007−27182にも開示したように、基板温度の観点からは750℃以上が必要である。
【0043】
MgはZnセルと同じ構造のセルから供給され、セル温度によってMg供給量を変え、Mg組成を調節する。Mg組成は、元々の亜鉛/酸素の供給比に依存するため、成長条件によって同じ組成を得るためのMg供給量は違う。本実施例では、Mgセルの温度250℃〜400℃、Mg供給量1×10−9Torr〜1×10−7Torrの範囲で組成が0%〜50%の変調ができる。
【0044】
アクセプタ元素に窒素を用いる場合は、酸素と同様のプラズマセルを用い、例えば、NOガスを0.1〜1sccmで供給、RFを100〜500Wで供給するが、チャンバーの大きさ、ラジカルセルの大きさで上記条件は変わる。NOガスを使用する場合は、NOガスだけ供給しても窒素ドープのMgZnOを作製することが可能である。
【0045】
以上のようにして、ZnO基板上に、アンドープMgZnO、ガリウムドープMgZnO、窒素ドープMgZnOを作製することができるので、図1や図4の積層構造を形成することができる。
【0046】
アンドープMgZnO、ガリウムドープMgZnO、窒素ドープMgZnOを作製できるので、これらを用いてトランジスタを構成したのが図6〜図11であり、特に図11はトレンチ型トランジスタを示す。
【0047】
図6は、有機物電極とZnO系基板とその上に形成されたMgXZnO(0≦X<1)、MgYZnO(0<Y<1)の薄膜積層構造(X<Y)を1組備えたHEMTの基本的構造例を示す。21はMgZZnO(0≦Z<1)基板、22はアンドープMgXZnO(0≦X<1)層、23はMgYZnO(0<Y<1)層を示す。ここで、X<Yと、上側のMgZnOの方がMg組成比率を高くしている。これは、2次元電子ガスの発生が行われるようにするためである。
【0048】
24は有機物電極であり、PEDOT:PSSで構成され、ゲート電極として作用する。また、26はソース電極、27はドレイン電極であり、いずれもInZn/Ti/Alの金属多層膜で形成され、25は金属層であり、Auで構成される。28は層間絶縁膜であり、SiO2で構成される。また、MgYZnO層23は、その一部はIn拡散が行われたドナードープ部23aと、Gaがドープされたドナードープ層23d、窒素がドープされたアクセプタドープ層23c、残りのアンドープ層23eで構成されている。23a、23c、23d、23eは、いずれもMgYZnOで構成されているもので、不純物の添加による違いのみである。
【0049】
2DEGは、2次元電子ガス領域(電子蓄積層)を示し、アンドープMgXZnO層22とドナードープ層23dの界面と図の点線で挟まれた領域を示している。ここで、ソース電極26と直下のドナードープ部23aとでソース電極部を、ドレイン電極27と直下のドナードープ部23aとでドレイン電極部を、有機物電極24と金属層25とでゲート電極部を構成している。
【0050】
ドナー含有半導体層であるドナードープ層23dは、2DEGに電子を供給するために、ガリウムドープが行なわれているが、他方、上方に存在するゲート電極部の有機物電極24に電子が供給されるとリークが発生する。しかし、前述したように、サーファクタントであるGaは、上層に拡散するので、アンドープ層23eにGaが拡散してしまうと有機物電極24に電子が供給されることになるので、これを阻止するためにアクセプタドープ層23cをドナードープ層23dの上層に設けてGaの拡散を防止することにより、電子の供給をブロックしている。
【0051】
ここで、ソース電極26、ドレイン電極27のいずれも、InZn/Ti/Alの他に、Ti/Pt/Au、Cr/Au、Cr/Pd/Auの金属多層膜で構成することもできる。また、金属層25についても、Auの他に、Al、Ti/Au、Ti/Al等で形成することができる。層間絶縁膜28についても、SiO2の他に、SiON、Al2O3等で構成することができる。ドナードープ部23aについては、In拡散の他に、Ga拡散、III族元素のイオンインプランテーション等を用いることができる。以下、図7〜図10まで、HEMTの変形された構造の実施例を示すが、上記構成材料等の事項は、同様に適用される。
【0052】
ところで、有機物電極24直下のMgYZnO層23の厚みは、PEDOT:PSS/MgZnOのショットキー接触に起因する空乏層幅よりも厚くするとノーマリーオンとなり、薄くするとノーマリーオフにすることができる。なお、ノーマリーとは、ゲート電圧が0Vの状態においてと言う意味である。空乏層の幅は、直下のMgYZnO層のドナー濃度NDによっておよそ決まる。
【0053】
また、図6〜図10に記載されたSはソース端子、Gはゲート端子、Dはドレイン端子を表わす。ソース端子Sはソース電極26と、ドレイン端子Dはドレイン電極27と、ゲート端子Gはゲート電極25と接続されている。そして、ノーマリーオフの場合は、ゲート端子Gに正の電圧が印加されると、有機物電極24の直下に反転分布領域が生まれ、反転分布領域内のチャネル領域を介してソース−ドレイン間が導通する。この反転分布領域が、2DEGで示される電子蓄積領域にまで達すると、電子蓄積領域がチャネル領域として作用することで、電子蓄積領域に存在する2次元電子ガスの効果により、高速のゲート制御動作が行える。
【0054】
図7は、ゲート電極となる有機物電極24直下のMgYZnO層の膜厚を薄くしたリセスゲート構造を示す。この構造では有機物電極24直下部分の2次元電子ガスのキャリア濃度を薄くし、一方、抵抗を小さくすることが必要なソース電極部直下及びドレイン電極部直下の2次元電子ガスのキャリア濃度を濃くすることができ、電極の目的に応じた設計ができる。
【0055】
トランジスタでは、ソース−ゲート間抵抗が高いと、ゲート電圧を高く設定しないと所望のドレイン−ソース間電流が得られなくなる。したがって、ソース−ゲート間抵抗を低くすることがトランジスタでは重要である。そこで、図8のように、ソース電極部とゲート電極部の間の距離を縮めた構造として、ソース−ゲート間抵抗を低くするように構成することもできる。
【0056】
図9は耐圧を上げる構造としたものである。耐圧を上げる構造として用いられるフィールドプレート構造を使用した。層間絶縁膜28の一部にソース電極部と接続した電極26aを配置し、この電極26aとフィールドプレート40とを接続し、フィールドプレート40でゲート電極部の上部全体を覆うように層間絶縁膜28上に形成し、ドレイン側の電場をシールドして、ゲート電極部、有機物電極24の端部分の破壊を防ぐ。
【0057】
図10では、ソース電極26直下のドナードープ部23bの長さを長くして、導電性のMgZZnO(0≦Z<1)基板21に電気的に接続するように構成している。このように、フィールドプレート構造を表面と裏面の両側で形成し、更に耐圧を上げる構造をとることができる。なお、MgZZnO基板41は、導電性の基板とするために、例えばアンドープもしくはGaドープのZnO基板を用いる。
【0058】
一方、図6〜図9に記載されているMgZZnO基板21は、絶縁性の基板であり、例えば、NiやCr等の遷移金属をドープをしたZnO基板で構成される。また、上記図6〜図10までの実施例の構造を目的に応じて適宜組み合わせた構造としても良い。
【0059】
次に、図11は、トレンチ型トランジスタ構造を示す。31はMgZZnO(0≦Z<1)基板、32はMgXZnO(0≦X<1)層を示す。MgXZnO層32は、n型層32a、p型層32b、アクセプタドープ層32cから構成されている。n型層32aは、MgXZnOにGaをドープした半導体層であり、ガリウムドープ濃度は一定でなくてもよいが、一定でない場合には、MgZZnO基板31との接触面側の濃度が濃くなるように濃度変化が付けられている。
【0060】
図に示されるように、ゲート電極34は、MgXZnO層32を所定の深さまで掘り込んだトレンチ部分に形成されている。このトレンチ部分の深さ方向を見ると、n型層32a、p型層32b、n型層32aと並んでおり、NPN型のトランジスタとなっている。
【0061】
ここで、前述したように、Gaは表面偏析するため、GaはMgXZnO層32の上部に移動するが、上層のNPN構造のチャネル領域へ余分なGaが供給されないようにするために、アクセプタドープ層32cが形成されている。アクセプタドープ層32cのアクセプタ元素には、例えば窒素が用いられる。34はゲート電極、36はソース電極、37はドレイン電極であり、38は層間絶縁膜である。Sはソース端子、Gはゲート端子、Dはドレイン端子を表わす。
【0062】
NPN型では、ゲート電極34に電圧が印加されると、ゲート電極34と対向したp型層32b壁面に反転分布領域が生まれ、反転分布領域内のチャネル領域を介してソース−ドレイン間が導通する。
【0063】
図11(a)の方では、アクセプタドープ層32cをトレンチ部分にかかるように上側に設けているため、ソース−ドレイン間に電流が流れるためには、p型層32bのチャネル領域とアクセプタドープ層32cのチャネル領域を電子が通過する必要がある。一方、図11(b)の方では、アクセプタドープ層32cをトレンチ部分にかからないように下側に設けているため、p型層32bのチャネル領域のみを電子が通過すれば電流が流れるので、オンしやすくなるが、チャネル領域に余分なGaが供給されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の半導体素子におけるドナー元素の拡散状態を示す図である。
【図2】従来の半導体素子におけるドナー元素の拡散状態を示す図である。
【図3】ガリウムの拡散特性を示す図である。
【図4】本発明のZnO系半導体素子を発光ダイオードに適用した例である。
【図5】本発明のZnO系半導体素子をフォトダイオードに適用した例である。
【図6】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図7】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図8】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図9】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図10】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図11】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【符号の説明】
【0065】
1 ZnO基板
2 n型MgXZnO層
3 MgYZnO層
5 MQW活性層
6 p型MgZZnO層
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナー元素を含むドナー含有半導体層を備えた半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ZnO系半導体は、照明やバックライト等用の光源として使用される紫外LED、高速電子デバイス、表面弾性波デバイス等への応用が期待されている。ZnO系半導体はその多機能性、発光ポテンシャルの大きさなどが注目されていながら、なかなか半導体デバイス材料として成長しなかった。その最大の難点は、アクセプタードーピングが困難で、P型ZnOを得ることができなかったことにある。
【0003】
しかし、近年、非特許文献1や非特許文献2に見られるように、技術の進歩により、P型ZnOを得ることができるようになり、発光も確認されるようになってきた。ただし、これらの成果は、ZnOの有用性を示した上で貴重であるが、ScAlMgO4(SCAM)という複合酸化物絶縁基板を用いている。SCAM基板は研究所レベルでしか作製されていない特殊な基板であり、かつ絶縁性の基板を使っていること、雲母のように薄膜が積み重なったような構造をしているため、チップ化の際のダイシングが困難なこと、という難点があり、このままでは産業に適した形態ではない。
【0004】
そこで、発明者らは、産業に適した形態でのZnO系半導体で構成されたLED等のデバイスの形成を目指し、ZnO基板を使っての研究、開発を進めた。その成果の一部はすでに特開2007−329353、特願2007−027182号等に開示している。このように、ZnO系基板上のZnO系薄膜の成長という方法が産業的に行われる環境が整ってきた。
【非特許文献1】A.Tsukazaki et al.,JJAP 44(2005)L643
【非特許文献2】A.Tsukazaki et al Nature Material 4(2005)42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、pn接合等デバイスの基本となる構造に用いられるn型ZnO薄膜を作製するために、ドナードープを行い、ドナードープ層上にアンドープZnO層等を積層したときに重要な問題点が見つかった。ドナードープ層よりも後に結晶成長させたアンドープZnO層等の上層にドナー元素が拡散しており、ドナー元素が表面偏析をする物質であることがわかった。表面偏析をする物質は、その母体材料に対するサーファクタントと呼ばれることがある。
【0006】
図3は、ZnO基板上にアンドープMgZnO層、ガリウムドープMgZnO層、アンドープMgZnO層と順に積層した積層体をSIMS分析(2次イオン質量分析)した。横軸は深さ(μm)、左側縦軸は対数目盛りであり、Ga濃度(cm−3)を、右側縦軸は対数目盛りであり、2次イオンイオン強度(cps:Counts Per Second)を示す。図3の上側横軸に沿って記載されている矢印部分が、各層の領域を表わしており、各層におけるガリウム濃度(cm−3)がわかる。ここで、「MgZnO:Ga」は、Ga(ガリウム)がドープされたMgZnOを表わす。Znの2次イオン強度は、各層ではそれほど変化がなく、Zn成分はほぼ一定していることがわかる。
【0007】
一方、Ga濃度については、ガリウムドープMgZnO層の下側(深い方)に行くにしたがって、急激に減少しており、下層のアンドープMgZnO層でのGa濃度には変化はない。一方、ガリウムドープMgZnO層の上側(浅い方)に行くにしたがって、増加しており、上層のアンドープMgZnO層の界面付近で最大となり、その後アンドープMgZnO層の上側にかけて、Ga濃度は直線状に減少している。
【0008】
図3に示されるDの曲線は、不純物をドープした半導体層の上下両側にアンドープ層を形成した場合における不純物の通常の拡散状態を示すものである。通常の拡散では、曲線Dのように、不純物をドープした半導体層内部では不純物濃度は一定を保ち、不純物をドープした半導体上側のアンドープ層にも、下側のアンドープ層にも同様に拡がり、両側の拡がり部分の曲線は、直線状になることはない。
【0009】
したがって、ZnO系半導体における不純物Gaの振る舞いは、通常の拡散ではなく、表面偏析を促進するサーファクタントの一種である可能性が高い。サーファクタントについては、共立出版株式会社 中嶋一雄編「エピタキシャル成長のメカニズム」に詳しい。サーファクタントとして、Ge半導体中におけるガリウム、InAs半導体中におけるSb等が知られており、以上に述べたように、ドナードープによる特異な拡散形態という問題点は知られているが、特異な現象として物理的な興味として研究されているのみで、サーファクタントであるドナー元素の拡散を抑制する方法は今まで提案されていない。
【0010】
また、表面偏析は、温度に依存して激しくなるから、成長温度を下げれば解決するが、成長温度を下げると、結晶性が悪くなったり、表面が荒れたりする問題が発生することがあるので、成長温度を変化させずに、ドナー元素の上層への拡散を防ぐ必要がある。
【0011】
一方、図3の曲線Dに示されるように、ドナー元素がドープされたドナー半導体層が存在すると、このドナー元素が表面偏析物質でなくても、通常、ドナー半導体層に接する層にドナー元素が拡散していく作用があるので、特に、ドナー半導体層の上層に形成される活性層等に、ドナー元素が拡散するのを防止することが必要である。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、ドナー元素を含む半導体層を備えた半導体素子を形成する場合に、このドナー元素が上層に拡散することを抑制することができる半導体素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ドナー元素を含み同一組成で構成されたドナー含有半導体層を備え、前記ドナー含有半導体層の一部に、アクセプタ元素を含むアクセプタ含有半導体層が形成されていることを特徴とする半導体素子である。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、前記ドナー元素はIII族、前記アクセプタ元素はV族又はI族に属することを特徴とする請求項1記載の半導体素子である。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、ZnO系材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、前記ドナー含有半導体層はMgXZn1−XOで構成され、0≦X<0.5であることを特徴とする請求項3記載の半導体素子である。
【0017】
また、請求項5記載の発明は、前記ドナー含有半導体層は、ZnO基板上に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【0018】
また、請求項6記載の発明は、前記ドナー含有半導体層は電子供給層として機能し、前記ドナー含有半導体層より上側に発光層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【0019】
また、請求項7記載の発明は、前記ドナー含有半導体層は電子流入層として機能し、前記ドナー含有半導体層が受光領域の一部を構成していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【0020】
また、請求項8記載の発明は、キャリア濃度を電界により制御する制御電極によって制御されるチャネル領域は、前記ドナー含有半導体層と同一の組成で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ドナー元素を含む同一の結晶組成で構成されるドナー含有半導体層の一部に、アクセプタ元素を含んだアクセプタ含有半導体層が形成されているので、このアクセプタ含有半導体層によって、ドナー含有半導体層におけるドナー元素の拡散が抑制される。これは、特に表面偏析作用を有する物質の上層への拡散を防止する場合に効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の半導体素子構造におけるガリウム(Ga)、窒素(N)を示す。半導体素子は、特にZnO系半導体により構成した。
【0023】
ここで、ZnO系半導体、ZnO系薄膜等におけるZnO系とは、ZnOをベースとした混晶材料であり、Znの一部をIIA族もしくはIIB族で置き換えたもの、Oの一部をVIB族で置き換えたもの、またはその両方の組み合わせを含むものである。
【0024】
図1は、SIMS(Secondary Ionization Mass Spectrometer:2次イオン質量分析装置)による分析の結果を示すが、この分析に用いたサンプルは、図1の上側横軸に沿って記載したように、ZnO基板上にGaドープMgZnO層、アンドープMgZnO層、窒素ドープMgZnO層、アンドープ活性層、窒素ドープMgZnO層と積層した積層体である。すなわち、下側からZnO基板/GaドープMgZnO層/アンドープMgZnO層/窒素ドープMgZnO層/活性層/窒素ドープMgZnO層の積層体となっている。
【0025】
一方、図2は、図1と比較するために、図1の構成において、活性層とアンドープMgZnO層との間に形成された窒素ドープMgZnO層を取り除いて構成した場合を示す。下側からZnO基板/GaドープMgZnO層/アンドープMgZnO層/活性層/窒素ドープMgZnO層の積層構造となっており、このサンプルをSIMS分析を行った。図1、2ともに、活性層は、アンドープZnOとアンドープMgZnOとを交互に数周期積層した多重量子井戸構造としており、p型半導体とn型半導体でアンドープ活性層を挟んだ構造となっている。
【0026】
図1、2ともに、左側縦軸は対数目盛で、Ga又はN濃度(cm−3)を表わす。また、右側縦軸も対数目盛でZnの2次イオン強度(cps)を表わす。一方、横軸は、深さ(μm)を表わし、最上層の窒素ドープMgZnO層の表面からの距離となっている。
【0027】
図1と図2とを比較すると、図2では、ZnO基板上に形成されたGaドープMgZnO層から上層のアンドープMgZnO層、アンドープ活性層、窒素ドープMgZnO層の一部の深さにまでGaが拡散していることがわかる。この各層への拡散の度合いを示す特性曲線は図のAに示されるように直線状となる。
【0028】
他方、図1では、アンドープMgZnO層の次の窒素ドープMgZnO層で、拡散してきたGaの濃度が表面側になるにつれて、急激に減少しており、この窒素ドープMgZnO層の上層であるアンドープ活性層、窒素ドープMgZnO層(p型クラッド層に相当)にGaは拡散していない。このように、サーファクタントであるドナー元素が含有された同一組成比率のドナー含有半導体層の一部にアクセプタ含有半導体層を形成しておくと、このアクセプタ含有半導体層により前記ドナー元素の拡散が防止される。
【0029】
ここで、ドナー含有又はアクセプタ含有とは、ドナー元素やアクセプタ元素を意図的に添加しなくても、半導体層に含まれてしまう場合を含む意味である。したがって、ドナー含有半導体層には、不純物Gaを意図的に添加したGaドープMgZnO層だけではなく、Gaの拡散により意図せずにGaが含まれることになったアンドープMgZnO層等も上記ドナー含有半導体層に相当するものである。さらに、図2で言えば、アンドープ活性層もドナー含有半導体層に該当する。アクセプタ含有半導体層には、図1でアンドープ活性層とアンドープMgZnO層との間に形成された窒素ドープMgZnO層が相当する。
【0030】
また、本発明で、同一の結晶組成比率のドナー含有半導体層の一部に、ドナー含有半導体層と同一の結晶組成比率でアクセプタ元素を含むアクセプタ含有半導体層を形成した構造としては、 図1に示したように、ドナー含有半導体層の最上部に設けても良いが、図4に示すように、ドナー含有半導体層の中間部に設けるようにしても良い。図4(a)では、ZnO基板1上に、n型MgXZnO層2、MgYZnO層3、MQW活性層5、p型MgZZnO層6が積層されている。ここで、MgYZnO層3は、アンドープMgYZnO層3aとアクセプタ含有MgYZnO層3cとで構成されており、MgYZnO層3の中間部分に、アクセプタ含有MgYZnO層3cが1層形成されている。
【0031】
一方、図4(b)では、アンドープMgYZnO層3の中間部分にアクセプタ含有MgYZnO層3cが複数層形成された構造を示す。図にも示されているように、アクセプタ含有MgYZnO層3cは、アンドープMgYZnO層3aが、別のアンドープMgYZnO層3aと接触する部分がないように、挟み込まれている。このように、アクセプタ含有半導体層は、ドナー含有半導体層の中間部に1層又は複数層(3層以上でも良い)設けることができる。
【0032】
図4は、発光ダイオードの構成例を示したもので、半導体層の具体例を示すと、n型MgXZnO層2のドナー元素はGaで、組成割合X=0.15、膜厚は100nm〜300nm、MgYZnO層3の組成割合Y=0.15で、アクセプタ含有MgYZnO層3cのアクセプタ元素は窒素、組成割合YはアンドープMgYZnO層3と同様0.15、膜厚40nmで構成される。図4(a)の場合、アクセプタ含有MgYZnO層3cにより上下に分割されたアンドープMgYZnO層3aの下側の膜厚は10nm〜100nm、上側の膜厚は10nm程度に形成される。
【0033】
一方、MQW活性層5は、井戸層に膜厚2nmのアンドープZnOを、障壁層に膜厚5nmのMg0.1ZnOを用い、これを交互に数周期積層した多重量子井戸構造に形成している。p型MgZZnO層6は、窒素がドープされ、膜厚100nm〜500nmで組成Zが0.1〜0.3となるように形成される。ここで、n型MgXZnO層2、アンドープMgYZnO層3aがドナー含有半導体層に該当する。また、MQW活性層5にp型MgZZnO層6から正孔が、アンドープMgYZnO層3aから電子が供給され、MQW活性層5において再結合が行われ発光するため、ドナー含有半導体層であるアンドープMgYZnO層3aは電子供給層として機能する。
【0034】
他方、上記の構成をフォトダイオードに適用した例が図5である。図5は、図4(b)とほぼ構造がおなじであるが、MQW活性層5がアンドープMgWZnO層15に変わっているだけであり、その他の層の組成や膜厚は、図4(b)と同じである。すなわち、図5の11〜13、13a、13c、16を図4の1〜3、3a、3c、6に置き換えれば良い。図5では、ZnO基板11上にn型MgXZnO層12、MgYZnO層13、アンドープMgWZnO層15、p型MgZZnO層16が積層されている。また、MgYZnO層13は、アンドープMgYZnO層13aとアクセプタ含有MgYZnO層13cとで構成され、MgYZnO層3の中間部分に、アクセプタ含有MgYZnO層13cが複数形成されている。
【0035】
アンドープMgWZnO層15の組成Wは、0≦W<1であり、アンドープZnO又はアンドープMgZnOのいずれかの半導体層となる。アンドープMgWZnO層15の膜厚は100nm〜10000nmの範囲で形成される。ここで、n型MgXZnO層12、アンドープMgYZnO層13aがドナー含有半導体層に該当する。また、光が照射されると、アンドープMgWZnO層15からp型MgZZnO層16に正孔が、アンドープMgYZnO層13aに電子が流入するため、ドナー含有半導体層であるアンドープMgYZnO層13aは電子流入層として機能する。
【0036】
また、図4、5のn型MgXZnO層2、12のMg組成Xは、0≦X<0.5とすることが望ましい。ドナー含有半導体層でもあるn型MgXZnO層2、12は、均一なMgZnO混晶とすることが好ましいが、現在、均一なMgZnO混晶を作製できるMg組成比率は50%未満であるために、0≦X<0.5としており、より確実に均一なMgZnO混晶を作製するには、Mg組成比率は30%以下とすることが望ましい。
【0037】
なお、ZnO系半導体層におけるGaの表面偏析は、温度に依存して激しくなるから、基板温度を下げれば解決するが、既出願の特願2007−27182や特願2007−206998に示したように、基板温度を下げると、表面が荒れたり、意図しない不純物汚染が発生したりといった別の問題が発生することもわかっており、単純に基板温度を下げることはデバイス作製に適しているとは言えない。
【0038】
以下に、図1や図4に示す積層構造を有するZnO系半導体素子の製造方法を説明する。まず、ZnO基板をロードロック室に入れ、水分除去のために1×10−5〜1×10−6Torr程度の真空環境で200℃、30分程度加熱する。1×10−9Torr程度の真空を持つ搬送チャンバーを経由して、液体窒素で冷やされた壁面を持つ成長室に基板を導入し、MBE法(分子線エピタキシー法)を用いてZnO系薄膜を成長させる。
【0039】
Znは7Nの高純度ZnをpBN製の坩堝に入れたクヌーセンセルを用い、260〜280℃程度に加熱して昇華させることにより、Zn分子線として供給する。ワイドギャップ材料として必要なMgZnOを作製するためのMgは、IIA族元素であるが、6Nの高純度Mgを用い、同様の構造のセルから300℃〜400℃に加熱して昇華させ、Mg分子線として供給する。ドナー元素であるガリウムは7Nの高純度Gaを用い、同様の構造のセルから400℃〜700℃に加熱して昇華させ、Ga分子線として供給する。
【0040】
酸素は6NのO2ガスを用い、電解研磨内面を持つSUS管を通じて円筒の一部に小さいオリフィスを開けた放電管を備えたRFラジカルセルに0.1sccm〜5sccm程度で供給、100〜300W程度のRF高周波を印加してプラズマを発生させ、反応活性を上げたOラジカルの状態にして酸素源として供給する。プラズマは重要で、O2生ガスを入れてもZnO系薄膜は形成されない。
【0041】
基板は一般的な抵抗加熱であればSiCコートしたカーボンヒータを使う。W(タングステン)などでできた金属系のヒータは酸化してしまい使えない。他にもランプ加熱、レーザー加熱などで温める方法もあるが、酸化に強ければどの方法でもかまわない。
【0042】
750℃以上に加熱し、約30分、1×10−9Torr程度の真空中で加熱した後、ラジカルセルとZnセルのシャッターを開けてZnO薄膜成長を開始する。この時、どういった種類の膜を形成するかに関わらず、上述したように平坦膜を得るためには、特願2007−27182にも開示したように、基板温度の観点からは750℃以上が必要である。
【0043】
MgはZnセルと同じ構造のセルから供給され、セル温度によってMg供給量を変え、Mg組成を調節する。Mg組成は、元々の亜鉛/酸素の供給比に依存するため、成長条件によって同じ組成を得るためのMg供給量は違う。本実施例では、Mgセルの温度250℃〜400℃、Mg供給量1×10−9Torr〜1×10−7Torrの範囲で組成が0%〜50%の変調ができる。
【0044】
アクセプタ元素に窒素を用いる場合は、酸素と同様のプラズマセルを用い、例えば、NOガスを0.1〜1sccmで供給、RFを100〜500Wで供給するが、チャンバーの大きさ、ラジカルセルの大きさで上記条件は変わる。NOガスを使用する場合は、NOガスだけ供給しても窒素ドープのMgZnOを作製することが可能である。
【0045】
以上のようにして、ZnO基板上に、アンドープMgZnO、ガリウムドープMgZnO、窒素ドープMgZnOを作製することができるので、図1や図4の積層構造を形成することができる。
【0046】
アンドープMgZnO、ガリウムドープMgZnO、窒素ドープMgZnOを作製できるので、これらを用いてトランジスタを構成したのが図6〜図11であり、特に図11はトレンチ型トランジスタを示す。
【0047】
図6は、有機物電極とZnO系基板とその上に形成されたMgXZnO(0≦X<1)、MgYZnO(0<Y<1)の薄膜積層構造(X<Y)を1組備えたHEMTの基本的構造例を示す。21はMgZZnO(0≦Z<1)基板、22はアンドープMgXZnO(0≦X<1)層、23はMgYZnO(0<Y<1)層を示す。ここで、X<Yと、上側のMgZnOの方がMg組成比率を高くしている。これは、2次元電子ガスの発生が行われるようにするためである。
【0048】
24は有機物電極であり、PEDOT:PSSで構成され、ゲート電極として作用する。また、26はソース電極、27はドレイン電極であり、いずれもInZn/Ti/Alの金属多層膜で形成され、25は金属層であり、Auで構成される。28は層間絶縁膜であり、SiO2で構成される。また、MgYZnO層23は、その一部はIn拡散が行われたドナードープ部23aと、Gaがドープされたドナードープ層23d、窒素がドープされたアクセプタドープ層23c、残りのアンドープ層23eで構成されている。23a、23c、23d、23eは、いずれもMgYZnOで構成されているもので、不純物の添加による違いのみである。
【0049】
2DEGは、2次元電子ガス領域(電子蓄積層)を示し、アンドープMgXZnO層22とドナードープ層23dの界面と図の点線で挟まれた領域を示している。ここで、ソース電極26と直下のドナードープ部23aとでソース電極部を、ドレイン電極27と直下のドナードープ部23aとでドレイン電極部を、有機物電極24と金属層25とでゲート電極部を構成している。
【0050】
ドナー含有半導体層であるドナードープ層23dは、2DEGに電子を供給するために、ガリウムドープが行なわれているが、他方、上方に存在するゲート電極部の有機物電極24に電子が供給されるとリークが発生する。しかし、前述したように、サーファクタントであるGaは、上層に拡散するので、アンドープ層23eにGaが拡散してしまうと有機物電極24に電子が供給されることになるので、これを阻止するためにアクセプタドープ層23cをドナードープ層23dの上層に設けてGaの拡散を防止することにより、電子の供給をブロックしている。
【0051】
ここで、ソース電極26、ドレイン電極27のいずれも、InZn/Ti/Alの他に、Ti/Pt/Au、Cr/Au、Cr/Pd/Auの金属多層膜で構成することもできる。また、金属層25についても、Auの他に、Al、Ti/Au、Ti/Al等で形成することができる。層間絶縁膜28についても、SiO2の他に、SiON、Al2O3等で構成することができる。ドナードープ部23aについては、In拡散の他に、Ga拡散、III族元素のイオンインプランテーション等を用いることができる。以下、図7〜図10まで、HEMTの変形された構造の実施例を示すが、上記構成材料等の事項は、同様に適用される。
【0052】
ところで、有機物電極24直下のMgYZnO層23の厚みは、PEDOT:PSS/MgZnOのショットキー接触に起因する空乏層幅よりも厚くするとノーマリーオンとなり、薄くするとノーマリーオフにすることができる。なお、ノーマリーとは、ゲート電圧が0Vの状態においてと言う意味である。空乏層の幅は、直下のMgYZnO層のドナー濃度NDによっておよそ決まる。
【0053】
また、図6〜図10に記載されたSはソース端子、Gはゲート端子、Dはドレイン端子を表わす。ソース端子Sはソース電極26と、ドレイン端子Dはドレイン電極27と、ゲート端子Gはゲート電極25と接続されている。そして、ノーマリーオフの場合は、ゲート端子Gに正の電圧が印加されると、有機物電極24の直下に反転分布領域が生まれ、反転分布領域内のチャネル領域を介してソース−ドレイン間が導通する。この反転分布領域が、2DEGで示される電子蓄積領域にまで達すると、電子蓄積領域がチャネル領域として作用することで、電子蓄積領域に存在する2次元電子ガスの効果により、高速のゲート制御動作が行える。
【0054】
図7は、ゲート電極となる有機物電極24直下のMgYZnO層の膜厚を薄くしたリセスゲート構造を示す。この構造では有機物電極24直下部分の2次元電子ガスのキャリア濃度を薄くし、一方、抵抗を小さくすることが必要なソース電極部直下及びドレイン電極部直下の2次元電子ガスのキャリア濃度を濃くすることができ、電極の目的に応じた設計ができる。
【0055】
トランジスタでは、ソース−ゲート間抵抗が高いと、ゲート電圧を高く設定しないと所望のドレイン−ソース間電流が得られなくなる。したがって、ソース−ゲート間抵抗を低くすることがトランジスタでは重要である。そこで、図8のように、ソース電極部とゲート電極部の間の距離を縮めた構造として、ソース−ゲート間抵抗を低くするように構成することもできる。
【0056】
図9は耐圧を上げる構造としたものである。耐圧を上げる構造として用いられるフィールドプレート構造を使用した。層間絶縁膜28の一部にソース電極部と接続した電極26aを配置し、この電極26aとフィールドプレート40とを接続し、フィールドプレート40でゲート電極部の上部全体を覆うように層間絶縁膜28上に形成し、ドレイン側の電場をシールドして、ゲート電極部、有機物電極24の端部分の破壊を防ぐ。
【0057】
図10では、ソース電極26直下のドナードープ部23bの長さを長くして、導電性のMgZZnO(0≦Z<1)基板21に電気的に接続するように構成している。このように、フィールドプレート構造を表面と裏面の両側で形成し、更に耐圧を上げる構造をとることができる。なお、MgZZnO基板41は、導電性の基板とするために、例えばアンドープもしくはGaドープのZnO基板を用いる。
【0058】
一方、図6〜図9に記載されているMgZZnO基板21は、絶縁性の基板であり、例えば、NiやCr等の遷移金属をドープをしたZnO基板で構成される。また、上記図6〜図10までの実施例の構造を目的に応じて適宜組み合わせた構造としても良い。
【0059】
次に、図11は、トレンチ型トランジスタ構造を示す。31はMgZZnO(0≦Z<1)基板、32はMgXZnO(0≦X<1)層を示す。MgXZnO層32は、n型層32a、p型層32b、アクセプタドープ層32cから構成されている。n型層32aは、MgXZnOにGaをドープした半導体層であり、ガリウムドープ濃度は一定でなくてもよいが、一定でない場合には、MgZZnO基板31との接触面側の濃度が濃くなるように濃度変化が付けられている。
【0060】
図に示されるように、ゲート電極34は、MgXZnO層32を所定の深さまで掘り込んだトレンチ部分に形成されている。このトレンチ部分の深さ方向を見ると、n型層32a、p型層32b、n型層32aと並んでおり、NPN型のトランジスタとなっている。
【0061】
ここで、前述したように、Gaは表面偏析するため、GaはMgXZnO層32の上部に移動するが、上層のNPN構造のチャネル領域へ余分なGaが供給されないようにするために、アクセプタドープ層32cが形成されている。アクセプタドープ層32cのアクセプタ元素には、例えば窒素が用いられる。34はゲート電極、36はソース電極、37はドレイン電極であり、38は層間絶縁膜である。Sはソース端子、Gはゲート端子、Dはドレイン端子を表わす。
【0062】
NPN型では、ゲート電極34に電圧が印加されると、ゲート電極34と対向したp型層32b壁面に反転分布領域が生まれ、反転分布領域内のチャネル領域を介してソース−ドレイン間が導通する。
【0063】
図11(a)の方では、アクセプタドープ層32cをトレンチ部分にかかるように上側に設けているため、ソース−ドレイン間に電流が流れるためには、p型層32bのチャネル領域とアクセプタドープ層32cのチャネル領域を電子が通過する必要がある。一方、図11(b)の方では、アクセプタドープ層32cをトレンチ部分にかからないように下側に設けているため、p型層32bのチャネル領域のみを電子が通過すれば電流が流れるので、オンしやすくなるが、チャネル領域に余分なGaが供給されやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の半導体素子におけるドナー元素の拡散状態を示す図である。
【図2】従来の半導体素子におけるドナー元素の拡散状態を示す図である。
【図3】ガリウムの拡散特性を示す図である。
【図4】本発明のZnO系半導体素子を発光ダイオードに適用した例である。
【図5】本発明のZnO系半導体素子をフォトダイオードに適用した例である。
【図6】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図7】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図8】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図9】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図10】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【図11】本発明のZnO系半導体素子をトランジスタに適用した例である。
【符号の説明】
【0065】
1 ZnO基板
2 n型MgXZnO層
3 MgYZnO層
5 MQW活性層
6 p型MgZZnO層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー元素を含み同一組成で構成されたドナー含有半導体層を備え、前記ドナー含有半導体層の一部に、アクセプタ元素を含むアクセプタ含有半導体層が形成されていることを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記ドナー元素はIII族、前記アクセプタ元素はV族又はI族に属することを特徴とする請求項1記載の半導体素子。
【請求項3】
半導体層がZnO系材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記ドナー含有半導体層はMgXZn1−XOで構成され、0≦X<0.5であることを特徴とする請求項3記載の半導体素子。
【請求項5】
前記ドナー含有半導体層は、ZnO基板上に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記ドナー含有半導体層は電子供給層として機能し、前記ドナー含有半導体層より上側に発光層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記ドナー含有半導体層は電子流入層として機能し、前記ドナー含有半導体層が受光領域の一部を構成していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項8】
キャリア濃度を電界により制御する制御電極によって制御されるチャネル領域は、前記ドナー含有半導体層と同一の組成で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項1】
ドナー元素を含み同一組成で構成されたドナー含有半導体層を備え、前記ドナー含有半導体層の一部に、アクセプタ元素を含むアクセプタ含有半導体層が形成されていることを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記ドナー元素はIII族、前記アクセプタ元素はV族又はI族に属することを特徴とする請求項1記載の半導体素子。
【請求項3】
半導体層がZnO系材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記ドナー含有半導体層はMgXZn1−XOで構成され、0≦X<0.5であることを特徴とする請求項3記載の半導体素子。
【請求項5】
前記ドナー含有半導体層は、ZnO基板上に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記ドナー含有半導体層は電子供給層として機能し、前記ドナー含有半導体層より上側に発光層が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記ドナー含有半導体層は電子流入層として機能し、前記ドナー含有半導体層が受光領域の一部を構成していることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項8】
キャリア濃度を電界により制御する制御電極によって制御されるチャネル領域は、前記ドナー含有半導体層と同一の組成で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−266938(P2009−266938A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112523(P2008−112523)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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