説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】適切な仕事関数を有する金属ゲート電極を備え、トランジスタ特性のばらつきが抑えられた半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板1001と、半導体基板1001内に形成された第1導電型の第1の活性領域1003と、第1の活性領域1003上に形成された第1のゲート絶縁膜1030aと第1のゲート電極1032aとを有し、第1の活性領域1003上に形成された第1チャネル型の第1のMISFET1050とを備える。第1のゲート電極1032aは、第1のゲート絶縁膜1030a上に形成され、金属原子を含む第1の下部ゲート電極1011aと、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる第1の酸化防止膜1012aと、第1の上部ゲート電極1013aとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された技術は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関し、特にメタルゲート電極の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置に関して、低消費電力化と動作の高速化とが要求されている。半導体装置の高速化を実現するために、MISFET(Metal Insulator Semiconductor FieldEffect Transistor)のゲート容量を増加させることで駆動電流を増加させる方法が採られている。
【0003】
ここで、ゲート容量を増加させるためには、ゲート絶縁膜を薄膜化して電極間(基板とゲート電極間)の距離を短くする必要がある。この要求に応えるため、現在、MISFETのゲート絶縁膜の物理膜厚(ゲート絶縁膜の実際の膜厚)は、シリコン酸窒化物(SiON)を用いた場合、約2nm程度にまで薄膜化されている。しかしながら、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴ってゲートリーク電流が増大するため、ゲートリーク電流の抑制が課題となってきている。この課題に対して、従来から使用されてきたシリコン酸化物(SiO)系の材料の代わりに、Hfを含む酸化物などの高誘電率材料をゲート絶縁膜として使用することが検討されている。なお、本明細書中で「高誘電率材料」とは、少なくともシリコン窒化膜よりも高い誘電率を有する材料のことをいうものとする。
【0004】
また、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴い、これまで用いられてきた多結晶シリコンからなるゲート電極では、ゲート電極の空乏化によりゲート容量が低下するため、ゲート電極の空乏化を抑制することも課題となっている。ゲート電極を多結晶シリコンで構成した場合のゲート容量の低下量は、例えばシリコン酸化物(SiO)からなるゲート絶縁膜の膜厚に換算すると、膜厚を約0.5nm分増加させることに相当する。ゲート絶縁膜の薄膜化は必然的にゲートリークの増大を伴うが、空乏化を抑えることができれば、ゲートリークを増大させることなく、ゲート絶縁膜の実効的な膜厚を薄くすることができる。SiOでは膜厚を0.1nm薄くすると、薄膜化する前に比べて10倍以上リーク電流が増大してしまうため、ゲート電極の空乏化を抑制する効果は非常に大きいと考えられる。
【0005】
そこで、ゲート電極の空乏化を回避するため、ゲート電極の材料を多結晶シリコンから空乏化の生じない金属に置き換える検討が行われている。しかしながら、多結晶シリコンを用いた場合には、不純物の注入により不純物準位を形成することで、pチャネル型MISFET(以下「p型MISFET」と表記)用ゲート電極とnチャネル型MISFET(以下「n型MISFET」と表記)用ゲート電極とを作り分けることができる一方、金属を用いた場合ではこのような作り分けを行うことができない。また、半導体装置にはより高速な動作が要求されている。そのため、半導体装置の低閾値電圧(Vt)化が図られており、p型MISFET用のゲート電極はシリコンのエネルギーバンドのうち、価電子帯の上端(トップエッジ;約5.2eV)に近い仕事関数(WF)値を有することが望まれており、n型MISFET用のゲート電極はシリコンの伝導帯の下端(ボトムエッジ;約4.1eV)に近いWF値を有することが望まれている。
【0006】
したがって、従来の半導体装置では、p側領域のWF値とn側領域のWF値とのほぼ中央に相当するWF値を有する金属をp型MISFET用ゲート電極およびn型MISFET用ゲート電極に共通の材料として用いることにより、p型MISFETとn型MISFETとが互いに同じVt値を持つように設計されているが、このような半導体装置も実用的でなくなってきている。
【0007】
このような背景を基に、現在では、p型MISFETに適したゲート電極材料とn型MISFETに適したゲート電極材料のそれぞれの探索が盛んに行われており、近年、いくつかの有力候補が見出されている。
【0008】
図1は、従来の半導体装置におけるn型MISFET用のゲート電極と、p型MISFET用のゲート電極の形成方法を示す断面図である。
【0009】
n型MISFETに適したWF値を示すゲート電極の例としては、LaOからなるキャップ膜上にメタル層を設けたものが挙げられ、p型MISFETに適したWF値を示すゲート電極の例としては、アルミニウム(Al)やAlなどからなるキャップ膜上にメタルを設けたものが検討されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】T.Schram et.al. , VLSI Thechnology ,2009,pp 44-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のメタルゲート電極に用いられている電極材料の多くは金属材料そのものや金属窒化物や炭化物である。上記材料の多くは酸化されやすく、酸化された場合、当該物質に固有の仕事関数が変動する。メタルゲート電極を採用する場合、トランジスタのフラットバンド電圧が変動し、この変動がトランジスタ特性がばらつきに繋がり歩留り低下を引き起こすおそれがある。上記理由から、メタルゲート電極材料上に膜を堆積する際や、熱処理を行う際にメタルゲート電極材料の表面が酸化され、特性が変動するという不具合が生じる可能性がある。
【0012】
本発明は、適切な仕事関数を有する金属ゲート電極を備え、トランジスタ特性のばらつきが抑えられた半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明の実施形態の一例に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1の活性領域と、前記第1の活性領域上に形成された第1のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極とを有し、前記第1の活性領域上に形成された第1チャネル型の第1のMISFETとを備えている。また、前記第1のゲート電極は、前記第1のゲート絶縁膜上に形成され、金属原子を含む第1の下部ゲート電極と、前記第1の下部ゲート電極上に形成され、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる第1の酸化防止膜と、前記第1の酸化防止膜上に形成された第1の上部ゲート電極とを有している。
【0014】
この構成によれば、第1の酸化防止膜が設けられていることで、第1の下部ゲート電極を構成する膜を形成する際や、不純物イオンの活性化アニールをする際などに第1の酸化防止膜中の炭素原子が酸素と反応することで、第1の下部ゲート電極(またはこれを形成するための第1の電極径成膜)の上面での酸化膜の形成を抑えることができる。そのため、MISFETのゲート電極におけるWF値のばらつきを小さくすることができる。その結果、MISFETのトランジスタ特性のばらつきを大きく低減することができる。
【0015】
酸化防止膜は、n型MISFETとp型MISFETの両方のゲート電極に設けることができ、いずれのMISFETにおいてもトランジスタ特性のばらつきを大きく低減することが可能となる。
【0016】
なお、前記第1のゲート絶縁膜は、金属原子を含む第1のキャップ膜を有しており、前記第2のゲート絶縁膜は、金属原子を含む第2のキャップ膜を有していてもよい。第1のキャップ膜及び第2のキャップ膜は絶縁膜であってもよいが、WFを調整することができる膜であれば絶縁膜に限られない。
【0017】
本発明の実施形態の一例に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1の活性領域と、前記第1の活性領域上に形成され、第1のゲート絶縁膜及び第1のゲート電極を有する第1チャネル型の第1のMISFETとを備えた半導体装置の製造方法である。すなわち、半導体装置の製造方法は、前記第1の活性領域上に前記第1のゲート絶縁膜を形成する工程(a)と、前記第1のゲート絶縁膜上に金属原子を含む第1の電極形成膜を形成する工程(b)と、前記第1の電極形成膜上に炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる酸化防止膜を形成する工程(c)と、前記酸化防止膜上に第2の電極形成膜を形成する工程(d)と、前記第1の電極形成膜、前記酸化防止膜、前記第2の電極形成膜、及び前記第1のゲート絶縁膜の一部を除去することで、前記第1の活性領域の所定の領域上に前記第1のゲート絶縁膜を残すとともに、前記第1のゲート絶縁膜上に、前記第1の電極形成膜の一部で構成された第1の下部ゲート電極、前記酸化防止膜の一部で構成された第1の酸化防止膜、及び前記第2の電極形成膜の一部で構成された第1の上部ゲート電極を有する前記第1のゲート電極を形成する工程(e)とを備えている。
【0018】
この方法によれば、工程(d)で第2の電極形成膜を形成する際に、酸化防止膜中の炭素原子と雰囲気中あるいは第1の電極形成膜の上面部に含まれる酸素とが反応することで、酸素が除去される。反応した酸素はCOまたはCOとなって雰囲気中に放出される。このため、第1の電極形成膜の上面に酸化膜が形成されるのを低減または防止できる。また、第1の下部ゲート電極の上面に酸化膜が形成された場合でも、不純物の活性化アニールの際に第1の酸化防止膜中の炭素(またはCO)により、酸化膜を還元することができる。このため、第1の下部ゲート電極の上面が酸化されることによる第1のゲート電極の仕事関数の変動が抑えられる。従って、トランジスタ特性のばらつきが抑えられた半導体装置を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一例に係る半導体装置によれば、MISFETにおいて、下部ゲート電極と上部ゲート電極との間に炭素原子を含む酸化防止膜が設けられているので、製造工程中に酸化防止膜中の炭素と酸素が反応する。そのため、下部ゲート電極の上面部の酸化を効果的に低減または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の半導体装置を示す断面図である。
【図2】従来の半導体装置におけるウェハ面内でのフラットバンド電圧(VFB)の変動量とメタルゲート電極中に含まれる酸素量とを示す図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
−トランジスタの特性変動の原因の究明−
本願発明者は、「メタルゲート電極表面の酸化がトランジスタ特性が変動する原因である」、との上記仮説の正しさを確認するため、非特許文献1に記載された半導体装置と同様の構成を有する半導体装置(n型MISFET)を試作し、ウエハ中心からの距離(図2横軸)とトランジスタのしきい値の変動量、及びメタルゲート電極中の酸素量との関係を調べた。
【0022】
図2は、従来の半導体装置におけるウェハ面内でのフラットバンド電圧(VFB)の変動量(ΔVFB)とメタルゲート電極中に含まれる酸素量とを示す図である。同図に示すように、ウェハの周辺部では、メタルゲート電極中の酸素量が増加し、トランジスタのフラットバンド電圧も変動していた。
【0023】
このことから、メタルゲート電極上にポリシリコンを堆積する際に、メタルゲート電極上面が酸化されてフラットバンド電圧が変動することが確認された。すなわち、ポリシリコン堆積時に微量の酸素によりメタルゲート電極が酸化され、後工程でその酸素が拡散しnMISキャパシタのフラットバンド電圧がシフトしていることが分かった。なお、図2に示すフラットバンドの変化量は、その他の要因(キャップ膜の膜厚分布やHigh−k膜の膜厚分布、メタルゲート電極の膜厚分布)により生じる以上の変動が生じていることを確認しており、メタルゲート電極内の酸素によってフラットバンドシフトが生じたものと考えられた。
【0024】
以上の結果から得られた知見に基づき、本願発明者は、以下の実施形態で説明する方法に独自に想到し、メタルゲート電極の表面(上面)の酸化を抑えることで、メタルゲート電極を有するトランジスタの特性ばらつきを効果的に抑えることに成功した。以下、本願発明の実施形態を説明する。
【0025】
(実施形態)
図3(a)〜(d)、図4(a)〜(d)、及び図5(a)、(b)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。最初に、図5(b)を用いて本実施形態の半導体装置の構成を説明する。
【0026】
図5(b)に示すように、本実施形態の半導体装置は、例えばシリコンからなる半導体基板1001と、半導体基板1001内に形成されたp型活性領域1003およびn型活性領域1004と、p型活性領域1003とn型活性領域1004とを電気的に分離するための素子分離領域1002とを備えている。p型活性領域1003上にはn型MISFET1050が形成され、n型活性領域1004上にはp型MISFET1052が形成されている。
【0027】
n型MISFET1050は、p型活性領域1003上に形成されたゲート絶縁膜1030aと、ゲート絶縁膜1030a上に形成されたゲート電極1032aと、ゲート絶縁膜1030a及びゲート電極1032aの側面上に形成された絶縁体からなるサイドウォールスペーサ1014aと、p型活性領域1003のうちゲート電極1032aの両側方であってサイドウォールスペーサ1014aの下に位置する部分に形成されたn型エクステンション領域1015aと、p型活性領域1003のうちゲート電極1032aの両側方であってn型エクステンション領域1015aの外側に位置する部分に形成されたn型のソースまたはドレイン領域1016aとを有している。
【0028】
ゲート絶縁膜1030aは、SiOなどからなる下地絶縁膜1005aと、下地絶縁膜1005a上に形成されたキャップ膜1006と、HfSiONなどからなる高誘電率膜1008aとを有している。キャップ膜1006は例えばランタン(La)酸化物などのLa原子(金属原子)を含む絶縁体からなり、WFを調節するために設けられている。なお、キャップ膜1006はゲート電極のWFを調整できる材料で構成されていればよいので、必ずしも絶縁膜である必要はなく、導電膜などであってもよい。
【0029】
ゲート電極1032aは、金属原子を含む下部ゲート電極(メタルゲート電極)1011aと、下部ゲート電極1011a上に形成され、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる酸化防止膜1012aと、酸化防止膜1012a上に形成され、ポリシリコン等の導電体からなる上部ゲート電極1013aとを有している。下部ゲート電極1011aは、例えば金属や、窒化タンタル(TaN)等の導電性の金属化合物で構成される。
【0030】
p型MISFET1052は、n型活性領域1004上に形成されたゲート絶縁膜1030bと、ゲート絶縁膜1030b上に形成されたゲート電極1032bと、ゲート絶縁膜1030b及びゲート電極1032bの側面上に形成され、絶縁体からなるサイドウォールスペーサ1014bと、n型活性領域1004のうちゲート電極1032bの両側方であってサイドウォールスペーサ1014bの下に位置する部分に形成されたp型エクステンション領域1015bと、n型活性領域1004のうちゲート電極1032bの両側方であってp型エクステンション領域1015bの外側に位置する部分に形成されたp型のソースまたはドレイン領域1016bとを有している。
【0031】
ゲート絶縁膜1030bは、SiOなどからなる下地絶縁膜1005bと、下地絶縁膜1005b上に形成され、HfSiONなどの高誘電率材料を含む高誘電率膜1008bと、Alなど、Al原子(金属原子)を含む絶縁体からなるキャップ膜1009とを有している。なお、キャップ膜1009もキャップ膜1006と同様に、必ずしも絶縁膜でなくてもよく、導電膜などであってもよい。
【0032】
ゲート電極1032bは、金属原子を含む下部ゲート電極1011bと、下部ゲート電極1011b上に形成され、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる酸化防止膜1012bと、酸化防止膜1012b上に形成され、ポリシリコン等の導電体からなる上部ゲート電極1013bとを有している。下部ゲート電極1011bは、例えば金属や、TaN等の導電性の金属化合物で構成される。
【0033】
下地絶縁膜1005aは下地絶縁膜1005bと、高誘電率膜1008aは高誘電率膜1008bと、下部ゲート電極1011aは下部ゲート電極1011bと、酸化防止膜1012aは酸化防止膜1012bと、上部ゲート電極1013aは上部ゲート電極1013bと、それぞれ同じ材料、同じ膜厚で構成されている。
【0034】
なお、酸化防止膜1012a、1012bの膜厚は特に限定されないが、厚くなり過ぎると下部ゲート電極と上部電極との界面抵抗が大きくなるため、2nm以下であることが好ましい。また、酸化防止効果を十分に得るために酸化防止膜1012a、1012bの膜厚は当該膜の形成時において0.2nm以上であることが好ましく、0.5nm以上であればより好ましい。ただし、半導体装置完成後の酸化防止膜1012a、1012bの膜厚は当該膜を形成した後に行われる酸素を含む処理の程度によって変わってくる。
【0035】
本実施形態の半導体装置では、従来のメタルゲート電極を有する半導体装置と異なり、下部ゲート電極(メタルゲート電極)1011aと上部ゲート電極1013aとの間に酸化防止膜1012aが設けられ、下部ゲート電極(メタルゲート電極)1011bと上部ゲート電極1013bとの間に酸化防止膜1012bが設けられている。
【0036】
酸化防止膜1012a、1012b中の炭素成分は、高温下で酸素や水と反応する。このため、半導体装置の製造工程において、下部ゲート電極1011a、1011bが空気中の酸素や水分と反応するのを抑え、下部ゲート電極1011a、1011bの上面に酸化膜が形成されるのを抑えることができる。
【0037】
特に、酸化防止膜1012a、1012bが設けられていることにより、上部ゲート電極1013a、1013bの形成時に雰囲気中に存在する酸素や水分によって下部ゲート電極1011a、1011bの上面が酸化されるのを効果的に抑えることができる。
【0038】
また、下部ゲート電極1011aのうち酸化防止膜1012aと接触する部分、及び下部ゲート電極1011bのうち酸化防止膜1012bと接触する部分では、下部ゲート電極1011aのうちゲート絶縁膜1030aとの界面部分、及び下部ゲート電極1011bのうちゲート絶縁膜1030bとの界面部分に比べて酸素濃度が大幅に低減されている。そのため、製造後の半導体装置においても、自然酸化によって下部ゲート電極1011a、1011bの上面に酸化膜が形成されにくくなっている。
【0039】
また、酸化防止膜1012a、1012bは炭素の単体を含む材料、または有機物などの、分子中に炭素を含む材料で構成されているため、下部ゲート電極1011a、1011bの上面が既に酸化されていた場合であっても、後工程の熱処理の際などに炭素成分によって酸化膜を還元することができる。なお、酸素と反応した酸化防止膜1012a、1012b中の炭素は、二酸化炭素または一酸化炭素となって半導体装置の外部へと放出される。
【0040】
以上の効果により、下部ゲート電極1011a、1011bが酸化されることで生じるWFの変動を抑制することができるので、本実施形態の半導体装置では、n型MISFET1050及びp型MISFET1052のいずれにおいても、しきい値電圧など、トランジスタ特性のばらつきを大幅に低減することが可能となる。特に、従来の半導体装置では、ウェハの周辺部に設けられたMISトランジスタでしきい値電圧等のトランジスタ特性の変動が大きくなっているが、本実施形態の半導体装置では、ウェハ周辺部に設けられたMISトランジスタとウェハ中心部に設けられたMISトランジスタとの特性ばらつきも小さくなっている。
【0041】
なお、本実施形態の半導体装置において、n型MISFET1050ではキャップ膜1006上に高誘電率膜1008aが形成されており、p型MISFET1052では、高誘電率膜1008b上にキャップ膜1009が形成されているが、酸化防止膜1012a、1012bの効果はゲート絶縁膜とキャップ膜の位置の上下によらず得られ、ゲート絶縁膜の構造によって制限されるものではない。
【0042】
また、本実施形態では、n型MISFET1050とp型MISFET1052とで同一構成のゲート電極を用いた例を挙げて説明したが、n型MISFET1050とp型MISFET1052とで異なる金属原子を含むゲート電極を用いた際においても、酸化防止膜によって上述の効果を得ることができ、トランジスタ特性のばらつきが少ないMISFETを備えた半導体装置を実現することができる。
【0043】
なお、下部ゲート電極1011a、1011bの構成材料はTaNに限られず、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等の貴金属や、チタン(Ti)、タングステン(W)、Ta、La、Al、モリブデン(Mo)のうちから選ばれた少なくとも1つの金属原子を含んでいてもよい。より具体的に、下部ゲート電極1011a、1011bの構成材料は上述の金属の酸化物を除き、導電性の炭化物や窒化物であってもよい。
【0044】
また、上部ゲート電極1013a、1013bの構成材料は、Si(ポリシリコン)に限られず、上述の貴金属や、Ti、W、Ta、La、Al、Moのうちから選ばれた少なくとも1つの金属原子を含んでいてもよい。より具体的に、上部ゲート電極1013a、1013bの構成材料は上述の金属の単体の他、上述の金属の酸化物を除き、導電性の炭化物や窒化物であってもよい。
【0045】
また、高誘電率膜1008a、1008bは、HfSiONに代えて、あるいはHfSiONに加えて、HfO及びHfSiOのうち少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0046】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図3〜図5を用いて説明する。
【0047】
まず、図3(a)に示すように、半導体基板1001内に、p型活性領域1003およびn型活性領域1004と、p型活性領域1003とn型活性領域1004とを分離する素子分離領域1002を形成する。次に、半導体基板1001上に、例えばSiOからなる下地絶縁膜1005を、酸素ガスを用いてRTO(Rapid Thermal Oxidation)処理することにより、1nm程度の膜厚で形成させる。なお、ここでは、酸素ガス以外の他のガス種を用いて半導体基板1001の上面を酸化してもよい。また、加熱炉を用いた熱処理や酸素ラジカルを用いた酸化により下地絶縁膜1005を形成してもよい。下地絶縁膜1005の材料としては、SiONやアンモニア過酸化水素等の薬液で処理した際に生じる酸化物(ケミカルオキサイド)などを用いてもよい。
【0048】
続いて、PVD(Physical Vapor Deposition)によりLa酸化物など、Laを含む絶縁体からなるキャップ膜1006を下地絶縁膜1005上に形成する。
【0049】
なお、キャップ膜としては、La、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロビウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)からなるランタノイド系元素のうち少なくとも1つを含む材料を用いてもよい。これは、後に形成するキャップ膜1009についても同様である。また、PVD法の代わりに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などの他の成膜手法を用いてもよい。
【0050】
次に、図3(b)に示すように、キャップ膜1006上にレジスト1007を形成した後、リソグラフィー技術を用いて、レジスト1007のうち、n型活性領域1004上に位置する部分に開口を形成する。
【0051】
次に、図3(c)に示すように、p型活性領域1003の上方に形成されたレジスト1007をマスクとしてエッチングを行うことにより、キャップ膜1006のうち、下地絶縁膜1005を挟んでn型活性領域1004上に形成された部分を除去する。
【0052】
次に、図3(d)に示すように、レジスト1007を除去した後、MOCVD法により、例えば高誘電率を有するHfSiO膜を2.0nmの膜厚で堆積し、該HfSiO膜をプラズマ窒化させることで、HfSiO膜からなる高誘電率膜1008を基板(作製中の半導体装置)の上面全体に形成する。
【0053】
なお、高誘電率膜1008の材料としては、AlやZrO、HfO、LaO、DyO、ScOなどの他の高誘電率材料を用いてもよく、用途に応じてSiOやSiONを用いてもよい。またMOCVD法の代わりにCVD法やPVD法などの他の成膜方法を用いてもよい。
【0054】
次に、図4(a)に示すように、PVD法により、Alを含むキャップ膜1009を形成する。また、PVD法の代わりに、CVD法やMOCVD法などの他の成膜手法を用いてもよい。次に、キャップ膜1009上にレジスト1010を形成した後、リソグラフィー技術を用いて、レジスト1010のうち、p型活性領域1003の上方に位置する部分に開口を形成する。
【0055】
次に、図4(b)に示すように、n型活性領域1004の上方に形成されたレジスト1010をマスクとしてエッチングを行うことにより、キャップ膜1009のうち、p型活性領域1003の上方に設けられた部分を除去する。その後、レジスト1010を除去する。
【0056】
なお、図4(b)では便宜上、下地絶縁膜1005のうちp型活性領域1003上に形成された部分、キャップ膜1006、及び高誘電率膜1008のうちp型活性領域1003上方に形成された部分を合わせて「ゲート絶縁膜1030n」と表記する。また、下地絶縁膜1005のうちn型活性領域1004上に形成された部分、高誘電率膜1008のうちn型活性領域1004上方に形成された部分、及びキャップ膜1009を合わせて「ゲート絶縁膜1030p」と表記する。
【0057】
次に、図4(c)に示すように、高誘電率膜1008上及びキャップ膜1009上に、例えばTaNなどからなる第1の電極形成膜1011を例えば15nmの膜厚で堆積させる。第1の電極形成膜1011の膜厚は、材料や他の製造プロセスに応じて適宜変更することができるが、WF制御や加工の観点から5nm以上、且つ30nm未満であることが実用上好ましい。
【0058】
本実施形態では、n型MISFET用のゲート電極とp型MISFET用のゲート電極を共通の電極形成膜から形成する例を説明しているが、しきい値をさらに低減させることを目的として、n型MISFETのゲート電極とp型MISFETのゲート電極とを別種の電極形成膜から形成してもよい。
【0059】
次に、第1の電極形成膜1011上に、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料で構成された酸化防止膜1012をスピナーを用いた塗布により1nmの膜厚で形成する。この際には、例えば炭素を分子中に含む有機溶剤を常温で第1の電極形成膜1011の上面に塗布する。有機溶剤は常温処理が可能なものであればよいが、例えばOH基を含まないもの、すなわち分子中に酸素を含まないものであれば、酸化防止膜としての効果をより発揮することができるので好ましい。
【0060】
本工程で形成される酸化防止膜1012の膜厚は、後で行われる熱処理や第1の電極形成膜1011(下部ゲート電極)上面の自然酸化量により適宜変更することができるが、酸化防止膜1012を厚く形成した場合、下部ゲート電極と上部ゲート電極間の界面抵抗が上昇する。そのため、酸化防止膜1012の膜厚は、0.2nm以上2nm以下であることが望ましい。
【0061】
また、スピナーによる塗布以外の酸化防止膜1012の形成方法としては、300℃以下の低温のプラズマCVD法や光CVD法などを用いてもよく、可能であれば酸化防止膜1012の堆積中に雰囲気中の酸素量を低減できる減圧下の処理を行うことが望ましい。この場合、雰囲気中の酸素濃度は2%以下とすることが好ましい。この方法によれば、酸化防止膜1012の堆積処理中に第1の電極形成膜1011上面の酸化を抑制することができる。
【0062】
また、酸化防止膜1012を非常に薄く形成する方法としては、第1の電極形成膜1011の上面にシンナーやTMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)などの有機溶媒を塗布し、第1の電極形成膜1011上面のダングリングボンドをOやOH以外の水素またはフッ素(F)などの元素、あるいは置換基で置換することで行ってもよい。
【0063】
次に、図4(d)に示すように、酸化防止膜1012を間に挟んで第1の電極形成膜1011上に、ポリシリコン等の導電体からなる第2の電極形成膜1013を100nm程度堆積する。ここで、第2の電極形成膜1013の構成材料はポリシリコンに限定されるものではなく、Ti、W、Taなどの高温でも安定で低抵抗である材料であってもよい。
【0064】
第2の電極形成膜1013の形成時に、雰囲気中あるいは第1の電極形成膜1011中の酸素や水分が酸化防止膜1012中の炭素成分と反応してCOあるいはCOとなり、放出されることで、第1の電極形成膜1011の上面に酸化膜が形成されるのが抑えられる。
【0065】
次に、図5(a)に示すように、リソグラフィー法およびRIE(Reactive Ion Etching)法を用いて下地絶縁膜1005、キャップ膜1006、1009、高誘電率膜1008、第1の電極形成膜1011、酸化防止膜1012及び第2の電極形成膜1013の一部を除去し、p型活性領域1003及びn型活性領域1004の所定領域上にこれらの膜をそれぞれ残す。
【0066】
図5(a)では、下地絶縁膜1005、高誘電率膜1008、第1の電極形成膜1011、酸化防止膜1012及び第2の電極形成膜1013のうちp型活性領域1003上に残された部分を、下地絶縁膜1005a、高誘電率膜1008a、下部ゲート電極1011a、酸化防止膜1012a、及び上部ゲート電極1013aとそれぞれ表記する。さらに、下地絶縁膜1005a、キャップ膜1006、及び高誘電率膜1008aを合わせてゲート絶縁膜1030aと表記し、下部ゲート電極1011a、酸化防止膜1012a、及び上部ゲート電極1013aを合わせてゲート電極1032aと表記する。
【0067】
また、下地絶縁膜1005、高誘電率膜1008、第1の電極形成膜1011、酸化防止膜1012及び第2の電極形成膜1013のうちn型活性領域1004上に残された部分を、下地絶縁膜1005b、高誘電率膜1008b、下部ゲート電極1011b、酸化防止膜1012b、及び上部ゲート電極1013bとそれぞれ表記する。さらに、下地絶縁膜1005b、高誘電率膜1008b、及びキャップ膜1009を合わせてゲート絶縁膜1030bと表記し、下部ゲート電極1011b、酸化防止膜1012b、及び上部ゲート電極1013bを合わせてゲート電極1032bと表記する。
【0068】
次に、図5(b)に示すように、公知の技術を用いてn型エクステンション領域1015a、p型エクステンション領域1015bの形成、サイドウォールスペーサ1014a、1014bの形成、ソースまたはドレイン領域1016a、1016bの形成、ソースまたはドレイン領域1016a、1016bに導入された不純物の活性化を行うことにより、p型活性領域1003上にn型MISFET1050を、n型活性領域1004上にp型MISFET1052をそれぞれ形成する。
【0069】
ここで、ソースまたはドレイン領域1016a、1016bに含まれる不純物を活性化する目的で、例えば1050℃のスパイクアニールを行うと、下部ゲート電極1011a、1011bの上面に形成された薄い酸化膜層が、酸化防止膜1012a、1012bに含まれる炭素により還元される。少なくとも750℃以上の温度で熱処理を行えば、このような還元反応を生じさせることができる。このとき、下部ゲート電極1011a、1011bの上面部の酸素量が特に少ない状態となり、酸化防止膜1012a、1012bからは酸素と反応した炭素分が放出されるが、酸化防止膜1012a、1012bは非常に薄いため、WF値の制御に悪影響を及ぼすことはほとんどない。なお、図4(c)に示す工程で形成された酸化防止膜1012は、その後上述の反応によって炭素成分が抜けるため、薄膜化する。このため、下部ゲート電極と上部ゲート電極との接触抵抗の上昇が抑えられる。
【0070】
以上のように、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第2の電極形成膜1013の形成時や熱処理工程の際に下部ゲート電極1011a、1011b(または第1の電極形成膜1011)の上面に酸化膜が形成されるのを抑えることができるので、しきい値電圧などのトランジスタ特性のばらつきが抑えられた半導体装置を歩留まり良く製造することができる。
【0071】
−実施形態の変形例−
次に、本実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法について説明する。図6(a)〜(d)は、本発明の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。本変形例は、酸化防止膜の形成方法が図4に示す方法と異なっているので、以下異なる点について重点的に説明する。
【0072】
まず、図3(a)〜(d)に示す工程と同様の工程により、半導体基板1001上に下地絶縁膜1005、キャップ膜1006、高誘電率膜1008を順次形成する。キャップ膜1006は、p型活性領域1003の上方に選択的に形成する。
【0073】
次に、図6(a)に示すように、PVD法により、Alを含む材料からなるキャップ膜1009を形成する。また、PVD法の代わりに、CVD法やMOCVD法などの他の成膜手法を用いてもよい。次に、キャップ膜1009上にレジスト1010を形成した後、リソグラフィー技術を用いて、レジスト1010のうち、p型活性領域1003の上方に位置する部分に開口を形成する。
【0074】
次に、図6(b)に示すように、n型活性領域1004の上方に形成されたレジスト1010をマスクとしてエッチングを行うことにより、キャップ膜1009のうち、p型活性領域1003の上方に設けられた部分を除去する。その後、レジスト1010を除去する。
【0075】
なお、図6(b)では便宜上、下地絶縁膜1005のうちp型活性領域1003上に形成された部分、キャップ膜1006、及び高誘電率膜1008のうちp型活性領域1003上方に形成された部分を合わせて「ゲート絶縁膜1030n」と表記する。また、下地絶縁膜1005のうちn型活性領域1004上に形成された部分、高誘電率膜1008のうちn型活性領域1004上方に形成された部分、及びキャップ膜1009を合わせて「ゲート絶縁膜1030p」と表記する。
【0076】
次に、図6(c)に示すように、高誘電率膜1008上及びキャップ膜1009上に、例えばTaNなどからなる第1の電極形成膜1011を例えば15nmの膜厚で堆積させる。第1の電極形成膜1011の膜厚は、材料や他の製造プロセスに応じて適宜変更することができるが、5nm以上、且つ30nm未満であることが実用上好ましい。
【0077】
本変形例では、n型MISFET用のゲート電極とp型MISFET用のゲート電極を共通の電極形成膜から形成する例を説明しているが、しきい値をさらに低減させることを目的として、n型MISFETのゲート電極とp型MISFETのゲート電極とを別種の電極形成膜から形成してもよい。
【0078】
次に、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料で構成された酸化防止膜1012’をスピナーを用いた塗布により20nmの膜厚で形成する。本工程では、図4(c)に示す工程と比べて酸化防止膜(1012’)を厚く形成している。
【0079】
また、スピナーによる塗布以外の酸化防止膜1012’の形成方法としては、300℃以下の低温のプラズマCVD法や光CVD法などを用いてもよく、可能であれば酸化防止膜1012の堆積中に雰囲気中の酸素量を低減できる減圧下の処理を行うことが望ましい。この方法によれば、酸化防止膜1012’の堆積処理中に第1の電極形成膜1011上面の酸化を抑制することができる。
【0080】
次に、図6(d)に示すように、酸化防止膜1012’をエッチングして、所望の膜厚を有する酸化防止膜1012を形成する。ここでは、酸化防止膜1012の膜厚を例えば0.5nmとする。酸化防止膜1012’の膜厚を調整するためのエッチングは適当な薬液を用いたウェットエッチングであってもよいし、ドライエッチングであってもよい。
【0081】
なお、酸化防止膜1012の膜厚は、後で行われる熱処理や第1の電極形成膜1011(下部ゲート電極)上面の自然酸化量により適宜変更することができるが、酸化防止膜1012を厚く形成した場合、下部ゲート電極と上部ゲート電極間の界面抵抗が上昇する。そのため、酸化防止膜1012の膜厚は、0.2nm以上2nm以下であることが望ましい。
【0082】
次に、酸化防止膜1012上にポリシリコンからなる第2の電極形成膜1013を100nm堆積する。ここで、第2の電極形成膜1013の構成材料はポリシリコンに限定されるものではなく、Ti、W、Taなどの高温でも安定で低抵抗である材料であってもよい。
【0083】
次に、図5(a)、(b)を用いて説明した工程により、p型活性領域1003上にn型MISFET1050を、n型活性領域1004上にp型MISFET1052をそれぞれ形成する。なお、本変形例に係る方法で作製された半導体装置は、図3〜図5に示す本実施形態に係る方法で作製された半導体装置と同様の構成を有している。
【0084】
以上の方法によれば、酸化防止膜1012’を堆積した後に酸化防止膜1012’を薄膜化して所望の膜厚にするので、下部ゲート電極1011a、1011bの上面部の酸化をより確実に抑えることが可能となる。
【0085】
なお、以上の説明で挙げた半導体装置の構成は実施形態の一例であって、各部材の材料、膜厚、成膜方法などは本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0086】
また、以上で説明した例では、酸化防止膜がn型MISFETとp型MISFETの両方に設けられているが、必要に応じていずれか一方のみに酸化防止膜が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上で説明したように、本発明は金属原子を含むゲート電極を有する半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1001 半導体基板
1002 素子分離領域
1003 p型活性領域
1004 n型活性領域
1005、1005a、1005b 下地絶縁膜
1006、1009 キャップ膜
1007、1010 レジスト
1008、1008a、1008b 高誘電率膜
1010 レジスト
1011 第1の電極形成膜
1011a、1011b 下部ゲート電極
1012、1012’、1012a、1012b 酸化防止膜
1013 第2の電極形成膜
1013a、1013b 上部ゲート電極
1014a、1014b サイドウォールスペーサ
1015a n型エクステンション領域
1015b p型エクステンション領域
1016a、1016b ソースまたはドレイン領域
1030a、1030b ゲート絶縁膜
1032a、1032b ゲート電極
1050 n型MISFET
1052 p型MISFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1の活性領域と、
前記第1の活性領域上に形成された第1のゲート絶縁膜と、前記第1のゲート絶縁膜上に形成された第1のゲート電極とを有し、前記第1の活性領域上に形成された第1チャネル型の第1のMISFETとを備え、
前記第1のゲート電極は、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成され、金属原子を含む第1の下部ゲート電極と、
前記第1の下部ゲート電極上に形成され、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる第1の酸化防止膜と、
前記第1の酸化防止膜上に形成された第1の上部ゲート電極とを有している半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体基板内に形成された第2導電型の第2の活性領域と、
前記第2の活性領域上に形成された第2のゲート絶縁膜と、前記第2のゲート絶縁膜上に形成された第2のゲート電極とを有し、前記第2の活性領域上に形成され、前記第1のMISFETとは異なるチャネル型の第1のMISFETとをさらに備え、
前記第2のゲート電極は、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、金属原子を含む第2の下部ゲート電極と、
前記第2の下部ゲート電極上に形成され、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる第2の酸化防止膜と、
前記第2の酸化防止膜上に形成された第2の上部ゲート電極とを有している半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1の酸化防止膜及び前記第2の酸化防止膜は有機物で構成されている半導体装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の半導体装置において、
前記第1の酸化防止膜及び前記第2の酸化防止膜の膜厚は、共に2nm以下である半導体装置。
【請求項5】
請求項2〜4のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極とは同一の構成を有している半導体装置。
【請求項6】
請求項2〜5のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜は、共に高誘電率膜を有している半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記高誘電率膜は、HfO、HfSiO、及びHfSiONのうち少なくとも1つを含む半導体装置。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記高誘電率膜は、Zr原子、La原子、及びAl原子のうち少なくとも1つを含む半導体装置。
【請求項9】
請求項2〜8のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記第1のゲート絶縁膜は、金属原子を含む第1のキャップ膜を有しており、
前記第2のゲート絶縁膜は、金属原子を含む第2のキャップ膜を有している半導体装置。
【請求項10】
請求項2〜9のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
第1の下部ゲート電極のうち前記第1の酸化防止膜との界面部分の酸素濃度は前記第1の下部ゲート電極のうち前記第1のゲート絶縁膜との界面部分の酸素濃度に比べて低く、
第2の下部ゲート電極のうち前記第2の酸化防止膜との界面部分の酸素濃度は前記第2の下部ゲート電極のうち前記第2のゲート絶縁膜との界面部分の酸素濃度に比べて低くなっている半導体装置。
【請求項11】
請求項2〜10のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記第1の下部ゲート電極及び前記第2の下部ゲート電極は、共に貴金属、Ti、W、Ta、La、Al、及びMoのうち少なくとも1つの原子を含む材料で構成されている半導体装置。
【請求項12】
請求項2〜11のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記第1の上部ゲート電極及び前記第2の上部ゲート電極は、共に貴金属、Si、Ti、W、Ta、La、Al、及びMoのうち少なくとも1つの原子を含む材料で構成されている半導体装置。
【請求項13】
請求項2〜12のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記第1の下部ゲート電極の膜厚は5nm以上30nm未満である半導体装置。
【請求項14】
半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1の活性領域と、前記第1の活性領域上に形成され、第1のゲート絶縁膜及び第1のゲート電極を有する第1チャネル型の第1のMISFETとを備えた半導体装置の製造方法であって、
前記第1の活性領域上に前記第1のゲート絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記第1のゲート絶縁膜上に金属原子を含む第1の電極形成膜を形成する工程(b)と、
前記第1の電極形成膜上に炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる酸化防止膜を形成する工程(c)と、
前記酸化防止膜上に第2の電極形成膜を形成する工程(d)と、
前記第1の電極形成膜、前記酸化防止膜、前記第2の電極形成膜、及び前記第1のゲート絶縁膜の一部を除去することで、前記第1の活性領域の所定の領域上に前記第1のゲート絶縁膜を残すとともに、前記第1のゲート絶縁膜上に、前記第1の電極形成膜の一部で構成された第1の下部ゲート電極、前記酸化防止膜の一部で構成された第1の酸化防止膜、及び前記第2の電極形成膜の一部で構成された第1の上部ゲート電極を有する前記第1のゲート電極を形成する工程(e)とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置は、前記半導体基板内に形成された第2導電型の第2の活性領域と、前記第2の活性領域上に形成され、第2のゲート絶縁膜及び第2のゲート電極を有し、前記第1のMISFETとは異なるチャネル型の第2のMISFETとをさらに備えており、
前記工程(a)は、前記第2の活性領域上に前記第2のゲート絶縁膜を形成する工程を含んでおり、
前記工程(b)では、前記第1の電極形成膜が前記第2のゲート絶縁膜上にも形成され、
前記工程(c)では、前記酸化防止膜が、前記第1の電極形成膜のうち前記第2の活性領域の上方に形成された部分上にも形成され、
前記工程(d)では、前記第2の電極形成膜が、前記酸化防止膜のうち前記第2の活性領域の上方に形成された部分上にも形成され、
前記工程(e)では、前記第2のゲート絶縁膜の一部がさらに除去され、前記第2の活性領域の所定の領域上に前記第2のゲート絶縁膜を残すとともに、前記第2のゲート絶縁膜上に、前記第1の電極形成膜の一部で構成された第2の下部ゲート電極、前記酸化防止膜の一部で構成された第2の酸化防止膜、及び前記第2の電極形成膜の一部で構成された第2の上部ゲート電極を有する前記第2のゲート電極をさらに形成する半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)では、酸素濃度が2%以下の雰囲気中で前記酸化防止膜を堆積する半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)で形成される酸化防止膜は、分子中に酸素を含まず、炭素を含む材料で構成される半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)では、常温下で有機溶剤を前記第1の電極形成膜の上面に塗布することで前記酸化防止膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)では、前記第1の電極形成膜の上面を分子中に炭素を含む有機溶媒で処理する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)では、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる前記酸化防止膜を形成した後、ドライエッチングによって前記酸化防止膜を所望の厚さまで薄膜化する半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(c)では、炭素の単体を含む材料、または分子中に炭素を含む材料からなる前記酸化防止膜を形成した後、ウェットエッチングによって前記酸化防止膜を所望の厚さまで薄膜化する半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−171629(P2011−171629A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35834(P2010−35834)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】