説明

半導体装置の製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造装置

【課題】希釈された溶液を用いて、貴金属を含む被処理膜等を迅速に且つ効果的にエッチングでき、且つ、設備の稼働率を向上できるようにする。
【解決手段】薬液を調合する薬液調合槽24と、調合された薬液を貯蔵する薬液貯蔵槽28と、貯蔵された薬液を用いて半導体基板を処理する処理チャンバ21とを有する半導体装置の製造装置を用いた半導体装置の製造方法は、薬液調合槽24において、酸化剤と錯化剤とを混合して第1の薬液を調合し、薬液調合槽24において、第1の薬液を活性化する。続いて、薬液貯蔵槽28において、活性化された第1の薬液と純水とを混合し、第1の薬液の濃度及び温度を調整することにより、第1の薬液を希釈した第2の薬液を調整する。続いて、処理チャンバ21に投入された半導体基板に第2の薬液を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造装置に関し、特に希釈水溶液を用いて貴金属を含む被処理膜を処理する半導体装置の製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)微細プロセスにおいては、半導体装置のさらなる高性能化及び低消費電力化が求められている。このような状況において、従来のCMOSプロセスでは、タングステン(W)等の第1世代のシリサイド用金属材料とシリコンとの合金であるシリサイドの抵抗をさらに低くするために、第2世代のシリサイド用金属材料として、ニッケル(Ni)又はコバルト(Co)を用いたニッケルシリサイド(NiSi)又はコバルトシリサイド(CoSi)が用いられるようになってきている。
【0003】
しかしながら、一方で、微細プロセスでは、接合リーク電流の低減のために、NiSi及びCoSiのシリサイド反応を制御する必要がある。このため、シリサイド材料として、Ni又はCoに5%〜10%程度の白金(Pt)又はパラジウム(Pd)を混入した合金が用いられている。なかでも、シリサイド材料にNiとPtとの合金(NiPt)を用いた場合には、耐熱性の向上及び接合リーク電流の抑制の効果が期待される。
【0004】
シリサイド化工程において、合金をシリコン(Si)からなる半導体基板の上に成膜した後、所定の熱処理を施すことにより、合金とSiとが反応して金属シリサイドが形成される。このとき、残留する未反応の合金を除去する必要がある。従って、例えばシリサイド材料としてNiとPtとの合金(NiPt)を用いた場合は、シリサイドの形成後に未反応のNiPtを除去するために、硫酸(HSO)と過酸化水素(H)との混合液等の酸化力が高い酸が用いられる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
以下に、従来の半導体装置の製造方法におけるシリサイド形成工程について図9(a)及び図9(b)を参照しながら説明する。
【0006】
まず、図9(a)に示す工程において、Siからなる半導体基板101を準備する。その後、半導体基板101上におけるシリサイド形成領域に開口パターンを有する絶縁膜102を選択的に形成する。続いて、絶縁膜102を含む半導体基板101の上の全面に、シリサイド材料であるNiPt膜103を成膜する。その後、所定の熱処理を施すことにより、半導体基板101の上部のシリサイド形成領域に、NiSiとNiPtSiとの混晶からなるシリサイド層104が形成される。なお、以降の記載においては、NiSiとNiPtSiとの混晶をまとめてNiPtSiと称する。
【0007】
次に、図9(b)に示す工程において、硫酸と過酸化水素との混合溶液105を用いて、絶縁膜102の上面及び側面上に残る未反応のNiPt膜103を除去する。これにより、半導体基板101の上部に形成されたNiPtSiが残る。このように、シリサイド形成プロセスにおいて、未反応のNiPt膜103を除去する際に、硫酸と過酸化水素との混合溶液105のような酸化力が高い酸を用いても、Niは溶解することができるものの、化学反応性が低いPtは溶解することができない。従って、半導体基板101の上にPtが残留してしまう。このため、Ptの残留を防ぐには、硫酸と過酸化水素との混合溶液105に代えて、これよりも強力な酸化力を有する希王水(硝酸、塩酸及び水を含む溶液)が用いられる(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-124487号公報
【特許文献2】特開2009-056347号公報
【特許文献3】特表2009-535846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、希王水を用いてPtを含む残留膜、Pt汚染物又はPt膜を溶解しようとすると、以下のような問題が生じることを確認している。
【0010】
希王水は、塩酸と硝酸との反応により塩化ニトロシル(NOCl)が生成され、生成された塩化ニトロシルの酸化力によってPtを塩化物として溶解させる。
【0011】
ところが、図10(a)に示すように、塩化ニトロシルが生成されてからその濃度が安定するまでに約2時間が経過しないと、Ptのエッチング量が不安定である。
【0012】
図10(b)に示すように、このような不安定な状態の希王水を用いてエッチングによる洗浄を行うと、所定のPtエッチング量(例えば、Ptエッチング量>20nm)に達しないため、洗浄不足によって多数のPt残留物(円内)が発生する。
【0013】
また、洗浄性能であるPtエッチングレートを安定化しようとすると、薬液を調合した後、少なくとも2時間を経過させる必要があり、その間、洗浄装置は薬液処理ができず、待機させなければならないため、設備の稼働率が大きく低下するという問題も生じる。
【0014】
すなわち、薬液を交換する度に、薬液調合槽内に硝酸と塩酸と水とを投入する時間と、洗浄性能を安定させるために約2時間のエージングタイムと、さらに半導体基板等を高温の薬液で処理する場合は、該薬液を加熱により昇温する時間が必要となり、設備稼働率が著しく低下することになる。
【0015】
本発明は、前記の問題に鑑み、希釈された溶液を用いて、貴金属を含む被処理膜等を迅速に且つ効果的にエッチングでき、且つ、設備の稼働率を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するため、半導体装置の製造方法を、あらかじめ調合槽において酸化剤と錯化剤との混合物を活性化手段により活性化しておき、活性化した混合物を貯蔵槽において純水で希釈して薬液を調整し、調整された薬液を用いて半導体基板を処理する構成とする。
【0017】
具体的に、本発明に係る半導体装置の製造方法は、薬液を調合する薬液調合槽と、調合された薬液を貯蔵する薬液貯蔵槽と、貯蔵された薬液を用いて半導体基板を処理する処理チャンバとを有する半導体装置の製造装置を用いた半導体装置の製造方法を対象とし、薬液調合槽において、酸化剤と錯化剤とを混合して第1の薬液を調合する工程(a)と、薬液調合槽において、第1の薬液を活性化する工程(b)と、薬液貯蔵槽において、活性化された第1の薬液と純水とを混合し、第1の薬液の濃度及び温度を調整することにより、第1の薬液を希釈した第2の薬液を調整する工程(c)と、処理チャンバに投入された半導体基板に第2の薬液を供給する工程(d)とを備えている。
【0018】
本発明の半導体装置の製造方法によると、薬液調合槽において、酸化剤と錯化剤とを混合して第1の薬液を調合すると共に、該薬液調合槽において第1の薬液を活性化する。その後、薬液貯蔵槽において、活性化された第1の薬液と純水とを混合し、第1の薬液の濃度及び温度を調整することにより、第1の薬液を希釈した第2の薬液を調整する。このため、薬液貯蔵槽に貯蔵され、半導体基板に供給される第2の薬液は、あらかじめ薬液調合槽において十分に活性化されているため、半導体基板を処理する際には、第2の薬液における反応性は十分に高くなっている。従って、貴金属を含む被処理膜等を迅速に且つ効果的にエッチングできると共に、設備の稼働率を向上することができる。
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(c)において、純水を薬液貯蔵槽に供給した後に、活性化された第1の薬液を薬液貯蔵槽に供給してもよい。
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(b)は、第1の薬液を加熱する工程(b1)を含むことが好ましい。
【0021】
この場合に、工程(b1)において、第1の薬液を、5分以上且つ15分以下の時間で、且つ、70℃以上且つ90℃以下の温度で加熱してもよい。
【0022】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(b)は、第1の薬液にUV光を照射する工程(b2)を含むことが好ましい。
【0023】
この場合に、工程(b2)において、UV光は、波長が100nm以上且つ400nm以下で、パルスエネルギ−が0.1J/cm以上且つ10J/cm以下であり、UV光を1分以上且つ15分以下の時間で照射してもよい。
【0024】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、工程(b)は、第1の薬液を加熱すると共に、第1の薬液にUV光を照射する工程(b3)を含んでいてもよい。
【0025】
この場合に、工程(b3)において、第1の薬液に対して、70℃以上且つ90℃以下の温度で加熱しながら、波長が100nm以上且つ400nm以下で、パルスエネルギ−が0.1J/cm以上且つ10J/cm以下であるUV光を30秒以上且つ10分以下の時間で照射してもよい。
【0026】
本発明の半導体装置の製造方法において、照射するUV光は、F光、ArF光、KrCl光、KrF光、XeCl光又はXeF光を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(b)は、第1の薬液の吸光度を測定する工程(b4)を含んでいてもよい。
【0028】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(c)において、活性化された第1の薬液と純水とを混合することにより、第2の薬液を所望の温度及び所望の濃度に調整してもよい。
【0029】
本発明の半導体装置の製造方法において、酸化剤は、硝酸、過酸化水素、オゾン水、硫酸、電解硫酸水、過マンガン酸カリウム、三酸化クロム及び四酸化オスミウムからなる群から選択された少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0030】
本発明の半導体装置の製造方法において、錯化剤は、塩酸、塩化カルシウム、塩化カリウム、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ化水素酸、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、臭化水素酸、臭化ナトリウム、臭化カリウム及び臭化カルシウムからなる群から選択された少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0031】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(d)において、第2の薬液は、半導体基板に23℃以上且つ60℃以下の温度で供給してもよい。
【0032】
本発明の半導体装置の製造方法は、工程(a)において、第2の薬液は、硝酸濃度70%の硝酸水溶液と塩酸濃度36%の塩酸水溶液と純水とを用いて調整され、硝酸水溶液と塩酸水溶液と純水とは、体積比で、硝酸水溶液を1としたときに、塩酸水溶液は1以上且つ5以下で、純水は3以上且つ500以下としてもよい。
【0033】
本発明に係る半導体装置の製造装置は、酸化剤と錯化剤とを混合して第1の薬液を調合する薬液調合槽と、薬液調合槽において調合された第1の薬液を純水と混合して第1の薬液を希釈した第2の薬液を調整し、調整した第2の薬液を貯蔵する薬液貯蔵槽と、薬液貯蔵槽に貯蔵された第2の薬液を、内部に収容された半導体基板に供給する処理チャンバとを備え、薬液調合槽は、第1の薬液を活性化する活性化手段を有している。
【0034】
本発明の半導体装置の製造装置によると、酸化剤と錯化剤とを混合して第1の薬液を調整する薬液調合槽は、第1の薬液を活性化する活性化手段を有している。このため、薬液調合槽において調整された第1の薬液を純水と混合して得られ、半導体基板に供給される希釈された第2の薬液はあらかじめ薬液調合槽において十分に活性化されているので、半導体基板のエッチング又は洗浄時には、第2の薬液における反応性は十分に高くなっている。従って、貴金属を含む被処理膜等を迅速に且つ効果的にエッチングできると共に、設備の稼働率を向上することができる。
【0035】
本発明の半導体装置の製造装置において、活性化手段は、加熱機構であってもよい。
【0036】
この場合に、加熱機構は、第1の薬液を、5分以上且つ15分以下の時間で、且つ、70℃以上且つ90℃以下の温度で加熱してもよい。
【0037】
本発明の半導体装置の製造装置において、活性化手段は、UV光照射機構であってもよい。
【0038】
この場合に、UV光照射機構は、第1の薬液に、100nm以上且つ400nm以下の波長のUV光を、5Hz以上且つ600kHz以下の繰返し周波数、2W以上且つ800W以下の出力、及び0.1J/cm以上且つ10J/cm以下のパルスエネルギ−で、1分以上且つ15分以下の時間で照射してもよい。
【0039】
また、本発明の半導体装置の製造装置において、活性化手段は、加熱機構とUV光照射機構とであってもよい。
【0040】
この場合に、加熱機構は、第1の薬液を、70℃以上且つ90℃以下の温度で加熱し、UV光照射機構は、第1の薬液に、100nm以上且つ400nm以下の波長のUV光を、5Hz以上且つ600kHz以下の繰返し周波数、2W以上且つ800W以下の出力、及び0.1J/cm以上且つ10J/cm以下のパルスエネルギ−で、30秒以上且つ10分以下の時間で照射してもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る半導体装置の製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造装置によると、希釈された溶液を用いて、貴金属を含む被処理膜等を迅速に且つ効果的にエッチングできると共に、設備の稼働率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法であって、本発明により調整された希王水を用いたシリサイド形成工程を示す工程順の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す洗浄フロー図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る希王水を用いたPtエッチング量の薬液調合後の経過時間依存性を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す洗浄フロー図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る希王水を用いたPtエッチング量の薬液調合後の経過時間依存性を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態の一変形例に係る半導体装置の製造装置を示す概略構成図である。
【図9】従来のシリサイド形成方法を示す工程順の模式的な断面図である。
【図10】(a)は従来の希王水を用いたPtエッチング量の薬液調合後の経過時間依存性を示すグラフである。(b)は従来の希王水を用いたエッチング後のPt残留物を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び製造装置について図面を参照しながら説明する。
【0044】
図1(a)〜図1(d)は、第1の実施形態において調整された希王水を用いて、ゲート構造を有するMOS型トランジスタについてNiPtシリサイドを形成するまでの製造方法を工程順に示している。
【0045】
まず、図1(a)に示すように、例えば、シリコン(Si)からなる半導体基板11の上部にSTI(shallow trench isolation)等により素子分離領域12を選択的に形成する。その後、素子分離領域12に囲まれた半導体基板11の上に、例えば酸化シリコン(SiO)からなるゲート絶縁膜13と、該ゲート絶縁膜13の上に多結晶シリコンからなるゲート電極(導電膜)14とを順次形成する。続いて、公知の方法により、ゲート電極14の両側面上に酸化シリコンからなるサイドウォール15を形成する。その後、半導体基板11におけるゲート電極14の両側方の領域に高濃度の不純物を含むソースドレイン拡散層19を選択的に形成して、MOS型トランジスタを得る。
【0046】
次に、図1(b)に示すように、ゲート電極14及びサイドウォール15を含む半導体基板11の上に全面にわたって、膜厚が20nm以上且つ70nm以下程度で不純物を導入されない酸化シリコンからなるマスク膜16を成膜する。続いて、マスク膜16におけるシリサイド形成領域の上側部分を選択的に除去することにより、ゲート電極14の上面及びソースドレイン拡散層19の上面を露出する。その後、スパッタ法等により、半導体基板11の上の全面に、シリサイド材料としてPtの含有量が2wt%以上且つ10wt%以下程度で、膜厚が7nm以上且つ25nm以下程度のNiPt膜17を形成する。
【0047】
次に、図1(c)に示すように、200℃以上且つ400℃以下程度の温度で熱処理を施すことにより、半導体基板11におけるソースドレイン拡散層19の上及びゲート電極14の上に形成されたNiPt膜17を、半導体基板11のシリコン及びゲート電極14の多結晶シリコンとそれぞれ反応させる。これにより、ゲート電極14の上面及びソースドレイン拡散層19の上面に、それぞれ膜厚が8.5nm以上且つ25.5nm以下程度のNiPtSiからなるシリサイド層18が形成される。このとき、マスク膜16の上及びサイドウォール14の側面上のNiPt膜17はシリサイド反応せず、そのまま残る。
【0048】
次に、図1(d)に示すように、シリサイド化に寄与せずに残ったNiPt膜17を希王水を用いて除去する。ここで、希王水の温度は、例えば室温以上で且つ70℃以下程度とし、その濃度は、例えば、体積比で硝酸水溶液を1としたときに、塩酸水溶液は1以上且つ5以下程度で、純水は3以上且つ500以下程度とする。
【0049】
以下、第1の実施形態に係る希王水を用いたNiPt膜17の除去方法について図2及び図3を用いて説明する。
【0050】
まず、図2に第1の実施形態に係る半導体装置の製造装置の概略構成を示す。
【0051】
図2に示すように、製造装置20は、半導体基板(図示せず)等を希釈された薬液により処理する処理チャンバ21と、該処理チャンバ21に供給する薬液を貯蔵する薬液貯蔵槽28と、例えば酸化剤としての硝酸と錯化剤としての塩酸とを所定量混合し且つ活性化する薬液調合槽24とを備えている。
【0052】
薬液調合槽24には、該調薬液合槽24にそれぞれ供給管25Aを介して硝酸を供給する硝酸供給源22と、供給管25Bを介して塩酸を供給する塩酸供給源23とが設けられている。また、薬液調合槽24には、硝酸と塩酸との混合薬液を加熱により活性化する加熱機構としての第1の温度調整機構(例えば加熱器)26Aと、混合薬液の吸光度を測定する分光光度計29とが設けられている。
【0053】
薬液貯蔵槽28には、該薬液貯蔵槽28に供給管25Cを介して所望の温度の純水を供給する純水供給源27と、薬液調合槽24で活性化された硝酸と塩酸との混合薬液を薬液調合槽24から導入する導入管25Dと、混合薬液の温度調整を行う第2の温度調整機構(加熱器)26Bとが設けられている。
【0054】
処理チャンバ21には、薬液貯蔵槽28で温度調整された混合薬液を薬液貯蔵槽28から導入する導入管25Eと、処理チャンバ21で処理された混合薬液を薬液貯蔵槽28に循環させる導入管25Fと、廃液ラインと接続される廃液管25Gとが設けられている。
【0055】
次に、図3に示すフロー図に基づいて、第1の実施形態に係る製造装置20を用いた製造方法を説明する。
【0056】
図3に示すように、フローAは薬液調合槽24の動作シーケンスを示し、フローBは薬液貯蔵槽28の動作シーケンスを示し、フローCは処理チャンバ21の動作シーケンスを示す。
【0057】
まず、ステップA1において、薬液調合槽24に、所定量の硝酸と所定量の塩酸とを投入して混合薬液を調整する。
【0058】
次に、ステップA2において、薬液調合槽24で調整された混合薬液を第1の温度調整機構26Aにより加熱して活性化する。このとき、第1の温度調整機構26Aは、70℃以上且つ90℃以下程度の温度で5分以上且つ15分以下程度で加熱することが好ましい。
【0059】
このとき、ステップB1において、薬液貯蔵槽28に対して、薬液調合槽24の中の混合薬液が活性化されるまでの間に、薬液貯蔵槽28に所望の温度の所定量の純水を投入する。ここでは、純水の温度は、例えば常温から40℃程度が好ましい。
【0060】
次に、ステップA3及びステップB2において、あらかじめ純水が投入された薬液貯蔵槽28に薬液調合槽24から、活性化された硝酸と塩酸との混合薬液を導入して所望の薬液濃度に調整する。
【0061】
次に、ステップB3において、薬液貯蔵槽28に導入された混合薬液を、第2の温度調整機構26Bを用いて所望の温度に調整する。ここで、第2の温度調整機構26Bは、20℃以上且つ80℃以下の温度に調整可能である。また、処理チャンバ21に供給される薬液の温度は、23℃以上且つ60℃以下程度が好ましい。
【0062】
次に、ステップC1において、薬液貯蔵槽28における薬液の温度調整が完了すると同時に、処理チャンバ21に半導体基板が搬入される。
【0063】
次に、ステップB4及びステップC2において、薬液貯蔵槽28において所望の濃度及び温度に調整された薬液を処理チャンバ21に導入し、半導体基板に対して所定の処理、例えばエッチング処理又は洗浄処理等を行う。
【0064】
次に、ステップC3において、処理された半導体基板に対して水洗(リンス)を行い、その後、乾燥処理を行う。
【0065】
次に、ステップC4において、処理チャンバ21から、乾燥処理が施された半導体基板を搬出する。
【0066】
以上説明したように、第1の実施形態に係る製造装置20を用いた半導体装置の製造方法によると、薬液調合槽24に投入された所定量の硝酸と所定量の塩酸とを含む混合薬液を70℃以上且つ90℃以下程度で、5分以上且つ15分以下程度の間加熱すると、硝酸と塩酸との反応が活性化されて反応速度が向上する。従って、活性化された混合薬液を薬液貯蔵槽28で純水により希釈すると、貯蔵された希釈薬液は、貯蔵され且つ温度が調整された直後から、白金(Pt)に対して直ちに安定した溶解性能を持つため、効率的に基板処理を施すことができる。
【0067】
すなわち、硝酸と塩酸とを常温で反応させる従来の薬液調整方法では、Ptエッチレートを安定させるために、薬液を調合した時点から約2時間、製造装置(処理装置)を待機させる必要がある。また、従来は製造装置内の薬液貯蔵槽に薬液を直接投入するため、該薬液を高温にすることができなかった。
【0068】
しかしながら、第1の実施形態においては、Ptエッチレートを安定化するまでの薬液エージングタイムを15分以下にまで短縮できる。さらに、あらかじめ純水が投入された薬液貯蔵槽28に硝酸と塩酸との混合薬液を投入するため、薬液貯蔵槽28における薬液濃度を低くすることができる。このため、製造装置20の構成部材及び配管等の腐食の進行を抑止することができる。
【0069】
従って、本実施形態においては、半導体基板に対する処理を迅速に且つ効果的に行うことができ、且つ、製造装置20の稼働率が向上することができる。その上、製造装置20の構成部材及び配管等の腐食の進行を抑止することができる。
【0070】
図4に、希王水のPtエッチング量に対する、第1の実施形態と従来の調合方法での薬液調合後からの経過時間依存性を示す。ここでは、枚葉式装置を用いて、膜厚が50nmのPtブランケット膜に、濃度が硝酸:塩酸:純水=1:5:4で、温度が60℃の希王水により2分間の処理を行っている。ここで、従来の希王水は、硝酸、塩酸及び純水を常温で調合し、一方、第1の実施形態に係る希王水は、薬液調合槽24において硝酸と塩酸の混合薬液を80℃で10分間の加熱処理を施している。
【0071】
図4に示すように、硝酸と塩酸とを常温で反応させた後に水を投入する従来の希王水の調合方法では、希王水の調合後から2時間まではPtエッチング量が安定せず、2時間経過後からPtエッチング量が安定する。これに対し、第1の実施形態においては、希王水の調合直後(加熱処理の直後)からPtエッチング量が安定していることが分かる。
【0072】
以上のように、第1の実施形態によると、Ptエッチング量が安定するまでの薬液のエージングタイムを約2時間から15分以下にまで短縮することができるため、製造装置20の稼働率が大きく向上する。
【0073】
以下に、希王水のPt溶解反応について、化学式(1)及び(2)を用いて説明する。
【0074】
希王水は、式(1)のように、塩酸と硝酸とが反応して塩化ニトロシルが生成され、式(2)のように、塩化ニトロシルの酸化力によってPtを塩化物として溶解する。
【0075】
HNO+3HCl→NOCl(塩化ニトロシル)+Cl+2HO …(1)
Pt+2NOCl+Cl+2HCl→H[PtCl]+2NO …(2)
ここで、第1の実施形態のように、硝酸と塩酸との混合薬液を、70℃以上且つ90℃以下程度の温度で、5分以上且つ15分以下程度で加熱することにより、式(1)の硝酸と塩酸との反応速度が向上して、十分な塩化ニトロシルが生成される。このため、Ptエッチングレートが安定すると考えられる。
【0076】
次に、再び図3のフロー図を用いて、薬液貯蔵槽28の薬液の薬液交換について説明する。
【0077】
図3に示すように、処理チャンバ21において半導体基板の処理が行われている間に、再び、ステップA4において、薬液調合槽24に所定量の硝酸と所定量の塩酸とを混合して混合薬液を調合する。
【0078】
次に、ステップA5において、第1の温度調整機構26Aにより混合薬液を加熱して、混合薬液を活性化する。
【0079】
次に、ステップB4の後に、薬液貯蔵槽28に貯蔵されている薬液を交換するか否かを判定する。ここで、交換が必要と判定された場合には、次のステップB5において、薬液貯蔵槽28の混合薬液を廃棄する。
【0080】
次に、ステップB6において、薬液貯蔵槽28に所定の温度(常温から40℃程度まで)で所定量の純水を投入する。
【0081】
次に、ステップA6及びB7において、純水が投入された薬液貯蔵槽28に、活性化された硝酸と塩酸との混合薬液を導入して所望の薬液濃度に調整する。
【0082】
次に、ステップB8において、所望の薬液濃度に調整された薬液を第2の温度調整機構26Bによって所望の薬液温度(23℃から60℃程度まで)に調整する。
【0083】
以上で、薬液貯蔵槽28における薬液交換が完了する。
【0084】
このような薬液交換フローにより、薬液交換時において、薬液調合槽24には、既に活性化された混合薬液が準備されているため、薬液貯蔵槽28には、活性化された混合薬液を薬液調合槽24から導入し、液温を調整するだけで薬液交換が完了する。このため、製造装置20が枚葉式の場合は連続的な処理が可能となるので、該製造装置20の稼働率が向上する。
【0085】
なお、第1の実施形態においては、薬液調合槽24に所定量の硝酸と所定量の塩酸とを加えて混合する動作と、第1の温度調整機構26Aによって加熱して活性化する動作とは、薬液交換の時期に合わせて任意に設定できる。
【0086】
また、第1の実施形態においては、例えば温度が40℃以上且つ60℃以下程度の比較的に高温の高温薬液を用いて半導体基板を処理する場合には、温度が70℃以上且つ90℃以下程度に加熱された混合薬液を、所望の温度で所定量の純水が投入された薬液貯蔵槽28に導入する。このため、薬液貯蔵槽28に、所望の薬液濃度となるように適量の純水を適温にして貯蔵しておけば、混合薬液を薬液貯蔵槽28に導入した直後には、希釈された薬液をほぼ所望の温度とすることができる。これにより、薬液貯蔵槽28に貯蔵された薬液に対して、より短時間で効率的に温度調整を行うことができる。従って、薬液の温度調整時間を短縮できることにより、製造装置20の稼働率をさらに向上することができる。
【0087】
また、前述したように、薬液調合槽24には、硝酸と塩酸とを混合して活性化させた後に、混合薬液に対する可視光の波長の吸光度を測定する分光光度計29が設けられている。この分光光度計29により、薬液濃度と温度とを管理することができ、製造装置20を安定に稼動できる。例えば、硝酸と塩酸との混合薬液中の塩化ニトロシル(NOCl)の吸光度の測定に際しては、波長が580nm以上且つ610nm以下の吸収光波長を、吸光度が0.1以上且つ2以下の範囲で管理することが好ましい。
【0088】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び製造装置について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0089】
図5は第2の実施形態に係る半導体装置の製造装置の概略構成を示している。図5において、図2に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0090】
第2の実施形態に係る半導体装置の製造装置20Aは、酸化剤と錯化剤との混合薬液を活性化する薬液調合槽24に設ける活性手段を、第1の温度調整機構26Aに代えて、紫外(UV)光照射機構(例えばUV照射器)30としている。他の構成部材は、第1の実施形態に係る製造装置20と同等である。
【0091】
次に、図6に示すフロー図に基づいて、第2の実施形態に係る製造装置20Aを用いた製造方法を説明する。
【0092】
図6において、フローAは薬液調合槽24の動作シーケンスを示し、フローBは薬液貯蔵槽28の動作シーケンスを示し、フローCは処理チャンバ21の動作シーケンスを示す。
【0093】
図6に示すように、まず、ステップA1において、薬液調合槽24に所定量の硝酸と所定量の塩酸とを投入して混合薬液を調整する。
【0094】
次に、ステップA2aにおいて、薬液調合槽24で調整された混合薬液をUV光照射機構30により所定のUV光を照射して活性化する。このとき、UV光照射機構30は、UV光の波長が100nm以上且つ400nm以下程度、繰返し周波数が5Hz以上且つ600kHz以下程度、出力が2W以上且つ800W以下程度、及びパルスエネルギ−が0.1J/cm以上且つ10J/cm以下程度で、1分以上且つ15分以下程度で照射することが好ましい。
【0095】
このとき、ステップB1において、薬液貯蔵槽28に対して、薬液調合槽24の中の混合薬液が活性化されるまでの間に、薬液貯蔵槽28に所望の温度の所定量の純水を加える。ここでは、純水の温度は、例えば常温から80℃程度が好ましい。
【0096】
次に、ステップA3及びステップB2において、あらかじめ純水が投入された薬液貯蔵槽28に薬液調合槽24から、活性化された硝酸と塩酸との混合薬液を導入して所望の薬液濃度に調整する。
【0097】
次に、ステップB3において、薬液貯蔵槽28に導入された混合薬液を、第2の温度調整機構26Bを用いて所望の温度に調整する。ここで調整され、処理チャンバ21に供給される薬液の温度は、23℃以上且つ60℃以下程度が好ましい。
【0098】
次に、ステップC1において、薬液貯蔵槽28における薬液の温度調整が完了すると同時に、処理チャンバ21に半導体基板が搬入される。
【0099】
次に、ステップB4及びステップC2において、薬液貯蔵槽28において所望の濃度及び温度に調整された薬液を処理チャンバ21に導入し、半導体基板に対して所定の処理、例えばエッチング処理又は洗浄処理等を行う。
【0100】
次に、ステップC3において、処理された半導体基板に対して水洗(リンス)を行い、その後、乾燥処理を行う。
【0101】
次に、ステップC4において、処理チャンバ21から、乾燥処理が施された半導体基板を搬出する。
【0102】
以上説明したように、第2の実施形態に係る製造装置20Aを用いた半導体装置の製造方法によると、薬液調合槽24に投入された所定量の硝酸と所定量の塩酸とを含む混合薬液に、例えば、波長が157nm以上且つ355nm以下程度のUV光を、繰返し周波数が5Hz以上且つ600kHz以下程度、出力が2W以上且つ800W以下程度、パルスエネルギ−が0.1J/cm以上且つ10J/cm以下程度で、1分以上且つ15分以下程度照射すると、硝酸と塩酸との反応が活性化されて反応速度が向上し、活性化処理の直後から安定したPt溶解性能で半導体基板に対する処理を施すことができる。
【0103】
第2の実施形態においては、薬液調合槽24に調合された硝酸と塩酸との混合薬液の活性化手段としてUV光照射機構30からのUV光を用いることにより、Ptエッチレートを安定化するまでの薬液エージングタイムを15分以下にまで短縮できる。さらに、あらかじめ純水が投入された薬液貯蔵槽28に混合薬液を投入するため、薬液貯蔵槽28における薬液濃度を低くすることができる。このため、製造装置20Aの構成部材及び配管等の腐食の進行を抑止することができる。
【0104】
従って、本実施形態においても、半導体基板に対する処理を迅速に且つ効果的に行うことができ、且つ、製造装置20Aの稼働率が向上することができる。その上、製造装置20Aの構成部材及び配管等の腐食の進行を抑止することができる。
【0105】
図7に、希王水のPtエッチング量に対する、第2の実施形態と従来の調合方法での薬液調合後からの経過時間依存性を示す。ここでは、枚葉式装置を用いて、膜厚が50nmのPtブランケット膜に、濃度が硝酸:塩酸:水=1:5:で、温度が60℃の希王水により2分間の処理を行っている。ここで、従来の希王水は、硝酸、塩酸及び純水を常温で調合し、一方、第2の実施形態に係る希王水は、薬液調合槽24において硝酸と塩酸との混合薬液に対して、繰返し周波数が30kHz及び出力が10Wで、波長が266nmのUV光を常温下で10分間照射されて活性化されている。
【0106】
図7に示すように、硝酸と塩酸とを常温で反応させた後に水を投入する従来の希王水の調合方法では、希王水の調合後から2時間まではPtエッチング量が安定せず、2時間経過後からPtエッチング量が安定する。これに対し、第2の実施形態においては、希王水の調合直後(加熱処理の直後)からPtエッチング量が安定していることが分かる。
【0107】
以上のように、第2の実施形態によると、Ptエッチング量が安定するまでの薬液のエージングタイムを約2時間から15分以下にまで短縮することができるため、製造装置20Aの稼働率が大きく向上する。
【0108】
次に、再び図6のフロー図を用いて、薬液貯蔵槽28の薬液の薬液交換について説明する。
【0109】
図6に示すように、処理チャンバ21において半導体基板の処理が行われている間に、再び、ステップA4において、薬液調合槽24に所定量の硝酸と所定量の塩酸とを混合して混合薬液を調合する。
【0110】
次に、ステップA5aにおいて、UV光照射機構30により混合薬液にUV光を照射して、混合薬液を活性化する。
【0111】
次に、ステップB4の後に、薬液貯蔵槽28に貯蔵されている薬液を交換するか否かを判定する。ここで、交換が必要と判定された場合には、次のステップB5において、薬液貯蔵槽28の混合薬液を廃棄する。
【0112】
次に、ステップB6において、薬液貯蔵槽28に所定の温度(常温から80℃程度まで)で所定量の純水を投入する。
【0113】
次に、ステップA6及びB7において、純水が投入された薬液貯蔵槽28に、活性化された硝酸と塩酸との混合薬液を導入して所望の薬液濃度に調整する。
【0114】
次に、ステップB8において、所望の薬液濃度に調整された薬液を第2の温度調整機構26Bによって所望の薬液温度に調整する。
【0115】
以上で、薬液貯蔵槽28における薬液交換が完了する。
【0116】
このような薬液交換フローにより、薬液交換時において、薬液調合槽24には、既に活性化された混合薬液が準備されているため、薬液貯蔵槽28には、活性化された混合薬液を薬液調合槽24から導入し、温度調整するだけで薬液交換が完了する。このため、製造装置20Aが枚葉式の場合は連続的な処理が可能となるので、該製造装置20Aの稼働率が向上する。
【0117】
なお、第2の実施形態においては、薬液調合槽24に所定量の硝酸と所定量の塩酸とを加えて混合する動作と、UV光照射機構30によってUV光を照射して活性化する動作とは、薬液交換の時期に合わせて任意に設定できる。
【0118】
また、第2の実施形態においては、例えば温度が40℃以上且つ60℃以下程度の比較的に高温の高温薬液を用いて半導体基板を処理する場合には、UV光により活性化された混合薬液を所定量の純水が投入された薬液貯蔵槽28に導入する際に、所望の濃度に合わせてあらかじめ適温の温純水を投入しておけば、薬液を混合した直後には、希釈された薬液をほぼ所望の温度とすることができる。例えば、ここでは、40℃以上且つ80℃以下程度の温純水を加えることが好ましい。これにより、薬液貯蔵槽28に貯蔵された薬液に対して、より短時間で効率的に温度調整を行うことができる。従って、薬液の温度調整時間を短縮できることにより、製造装置20Aの稼働率を向上することが可能となる。
【0119】
また、第1の実施形態と同様に、第2の実施形態においても、薬液調合槽24には、硝酸と塩酸とを混合して活性化させた後に、混合薬液に対する可視光の波長の吸光度を測定する分光光度計29が設けられている。この分光光度計29により、薬液濃度と温度とを管理することができ、製造装置20Aを安定に稼動できる。例えば、硝酸と塩酸との混合薬液中の塩化ニトロシル(NOCl)の吸光度の測定に際しては、波長が580nm以上且つ610nm以下の吸収光波長を、吸光度が0.1以上且つ2以下の範囲で管理することが好ましい。
【0120】
また、第2の実施形態においては、混合薬液の活性化にUV光を照射して活性化したが、これに限定されない。例えば、UV光に代えて、F光(波長:157nm)、ArF光(波長:193nm)、KrCl光(波長:222nm)、KrF光(波長:248nm)、XeCl光(波長:308nm)又はXeF光(波長:351nm)等のエキシマレーザ(Excimer Laser)光から選択しても、同様の効果を得ることができる。
【0121】
また、第2の実施形態においては、薬液調合槽24と薬液貯蔵槽28とに分けた場合を説明したが、薬液調合槽24と薬液貯蔵槽28と1つにまとめて、薬液調合貯蔵槽として1つの槽にすることもできる。この場合は、薬液調合貯蔵槽には、UV光照射機構30と分光光度計29とを設け、薬液調合貯蔵槽に所定量の硝酸と所定量の塩酸とを混合してUV光照射によって活性化する。その後、活性化された薬液で満たされた薬液調合貯蔵槽に所定の温度の所定量の純水を加えて、薬液温度と薬液濃度とを調整する。この場合でも、薬液調合貯蔵槽が薬液調合槽と薬液貯蔵槽に分かれているか、分かれていないかがが異なるだけで、第2の実施形態と同様の効果を得られる。
【0122】
(第2の実施形態の一変形例)
図8に第2の実施形態の一変形例に係る半導体装置の製造装置の概略構成を示す。
【0123】
図8に示すように、本変形例に係る製造装置20Bは、薬液調合槽24に、活性手段として、UV光照射機構30に加え、第1の温度調整機構26Aが設けられていることを特徴とする。
【0124】
本変形例に係る製造装置20Bを用いた半導体装置の製造方法は、第1の実施形態における図3の洗浄フローと図6の洗浄フローとを併せた洗浄フローとなる。
【0125】
但し、薬液調合槽24において、硝酸と塩酸との混合薬液の液温は70℃以上且つ90℃以下程度とし、且つ、照射するUV光のパルスエネルギーは0.1J/cm以上且つ10J/cm以下程度とし、照射時間は30秒以上且つ10分以下程度に設定する。
【0126】
なお、UV光の波長、繰返し周波数及び出力の各設定値は、第2の実施形態と同様とする。
【0127】
このようにしても、半導体基板に対する迅速且つ効果的な薬液処理と製造装置20Bの稼働率の向上とを図ることができる。
【0128】
なお、第1の実施形態、第2の実施形態及びその変形例においては、薬液貯蔵槽28に貯蔵された薬液中の硝酸又は塩酸が経過時間と基板処理の増加とに伴って濃度が低下する場合がある。この場合は、薬液調合槽24から活性化された混合薬液を随時、所望量だけ薬液貯蔵槽28に補充することもできる。これにより、薬液貯蔵槽28の硝酸と塩酸との濃度が安定して、薬液ライフタイムの延長が可能となるので、薬液の消費量が低減すると共に、製造装置20、20A、20Bの稼働率が向上する。
【0129】
また、各実施形態及び一変形例において、薬液貯蔵槽28に貯蔵された薬液の濃度は、処理すべき対象物の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、錯化剤である塩酸は市販の塩酸原液(塩酸濃度36%の水溶液)とし、酸化剤である硝酸は市販の硝酸原液(硝酸濃度70%の水溶液)とすることができる。従って、これらの原液及び純水の量に応じて、最終的な希王水の濃度が決定される。例えば、硝酸と塩酸と純水の体積比は、硝酸原液を1としたときに、塩酸原液は1以上且つ5以下で、純水は5以上且つ500以下とすることが好ましい。
【0130】
また、薬液貯蔵槽28において、純水を投入し、さらに硝酸及び塩酸を投入した後は、薬液を適宜循環させる等して、均一な濃度を持つ希王水を調整することができる。また、薬液調合槽24及び薬液貯蔵槽28の各容量は、半導体装置の製造ラインの規模等に応じて適宜調整することができる。
【0131】
なお、各実施形態及び一変形例においては、半導体基板に対する薬液処理が終了した後、希王水は、導入管25Fを介して薬液貯蔵槽28に取り込まれ、該薬液貯蔵槽28に再度貯蔵される。すなわち、希王水は、薬液貯蔵槽28と処理チャンバ21との間を循環することができる。また、前述したように、希王水は廃液管25Gを介して廃液ラインへと廃棄することも可能である。
【0132】
また、薬液調合槽24は、薬液貯蔵槽28及び処理チャンバ21から配管長で5m以上離して別体として設置することにより、製造装置20、20A、20Bの腐食の進行を抑制できる。従って、各実施形態及び一変形例においては、製造装置20、20A、20Bは薬液調合槽24、薬液貯蔵槽28及び処理チャンバ21を備える構成であるが、この構成に限られず、製造装置20、20A、20Bは薬液貯蔵槽28及び処理チャンバ21を備え、薬液調合槽24は別の製造装置としてもよい。
【0133】
また、バッチ式の製造装置とした場合でも、処理方法としては各槽の容量が異なるだけで同様の効果を得られる。バッチ式とした場合は、処理チャンバ21とは別に水洗槽と乾燥槽とを備えることが好ましい。
【0134】
また、各実施形態及び一変形例においては、酸化剤としての硝酸と錯化剤としての塩酸との混合薬液である希王水を用いたが、これに限定されない。例えば、酸化剤として、過酸化水素、オゾン水、硫酸、電解硫酸水、過マンガン酸カリウム、三酸化クロム及び四酸化オスミウムから選択された少なくとも1つを含む薬液と、錯化剤として、塩化カルシウム、塩化カリウム、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ化水素酸、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、臭化水素酸、臭化ナトリウム、臭化カリウム及び臭化カルシウムから選択された少なくとも1つを含む薬液と、純水とから構成される混合薬液であっても、希王水と同様の効果を得ることができる。
【0135】
なお、各実施形態及び一変形例において、シリサイド層に添加する貴金属とは、金(Au)、銀(Ag)及び白金属元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPt)を指す。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係る半導体装置の製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造装置は、希釈された溶液を用いて、貴金属を含む被処理膜等を迅速に且つ効果的にエッチングできると共に設備の稼働率を向上することができ、エッチング又は洗浄等を行う半導体装置の製造方法及びそれを用いた半導体装置の製造装置等に有用である。
【符号の説明】
【0137】
11 半導体基板
12 素子分離領域
13 ゲート絶縁膜
14 ゲート電極
15 サイドウォール
16 マスク膜
17 NiPt膜
18 シリサイド層
19 ソースドレイン拡散層
20 製造装置
20A 製造装置
20B 製造装置
21 処理チャンバ
22 硝酸供給源
23 塩酸供給源
24 薬液調合槽
25A 供給管
25B 供給管
25C 供給管
25D 導入管
25E 導入管
25F 導入管
25G 廃液管
26A 第1の温度調整機構(加熱機構)
26B 第2の温度調整機構
27 純水供給源
28 薬液貯蔵槽
29 分光光度計
30 UV光照射機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を調合する薬液調合槽と、調合された前記薬液を貯蔵する薬液貯蔵槽と、貯蔵された前記薬液を用いて半導体基板を処理する処理チャンバとを有する半導体装置の製造装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記薬液調合槽において、酸化剤と錯化剤とを混合して第1の薬液を調合する工程(a)と、
前記薬液調合槽において、前記第1の薬液を活性化する工程(b)と、
前記薬液貯蔵槽において、活性化された前記第1の薬液と純水とを混合し、前記第1の薬液の濃度及び温度を調整することにより、前記第1の薬液を希釈した第2の薬液を調整する工程(c)と、
前記処理チャンバに投入された前記半導体基板に前記第2の薬液を供給する工程(d)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(c)において、前記純水を前記薬液貯蔵槽に供給した後に、活性化された前記第1の薬液を前記薬液貯蔵槽に供給することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(b)は、前記第1の薬液を加熱する工程(b1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(b1)において、前記第1の薬液は、5分以上且つ15分以下の時間で、且つ、70℃以上且つ90℃以下の温度で加熱することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(b)は、前記第1の薬液にUV光を照射する工程(b2)を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(b2)において、前記UV光は、波長が100nm以上且つ400nm以下で、パルスエネルギ−が0.1J/cm以上且つ10J/cm以下であり、前記UV光を1分以上且つ15分以下の時間で照射することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(b)は、前記第1の薬液を加熱すると共に、前記第1の薬液にUV光を照射する工程(b3)を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(b3)において、前記第1の薬液に対して、70℃以上且つ90℃以下の温度で加熱しながら、波長が100nm以上且つ400nm以下で、パルスエネルギ−が0.1J/cm以上且つ10J/cm以下である前記UV光を30秒以上且つ10分以下の時間で照射することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記UV光は、F光、ArF光、KrCl光、KrF光、XeCl光又はXeF光を含むことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(b)は、前記第1の薬液の吸光度を測定する工程(b4)を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(c)において、活性化された前記第1の薬液と前記純水とを混合することにより、前記第2の薬液を所望の温度及び所望の濃度に調整することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記酸化剤は、硝酸、過酸化水素、オゾン水、硫酸、電解硫酸水、過マンガン酸カリウム、三酸化クロム及び四酸化オスミウムからなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記錯化剤は、塩酸、塩化カルシウム、塩化カリウム、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ化水素酸、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、臭化水素酸、臭化ナトリウム、臭化カリウム及び臭化カルシウムからなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(d)において、前記第2の薬液は、前記半導体基板に23℃以上且つ60℃以下の温度で供給することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記工程(a)において、前記第2の薬液は、硝酸濃度70%の硝酸水溶液と、塩酸濃度36%の塩酸水溶液と、純水とを用いて調整され、
前記硝酸水溶液と前記塩酸水溶液と前記純水とは、体積比で、前記硝酸水溶液を1としたときに、前記塩酸水溶液は1以上且つ5以下で、前記純水は3以上且つ500以下とすることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
酸化剤と錯化剤とを混合して第1の薬液を調合する薬液調合槽と、
前記薬液調合槽において調合された前記第1の薬液を純水と混合して前記第1の薬液を希釈した第2の薬液を調整し、調整した第2の薬液を貯蔵する薬液貯蔵槽と、
前記薬液貯蔵槽に貯蔵された前記第2の薬液を、内部に収容された半導体基板に供給する処理チャンバとを備え、
前記薬液調合槽は、前記第1の薬液を活性化する活性化手段を有していることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項17】
前記活性化手段は、加熱機構であることを特徴とする請求項16に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項18】
前記加熱機構は、前記第1の薬液を、5分以上且つ15分以下の時間で、且つ、70℃以上且つ90℃以下の温度で加熱することを特徴とする請求項17に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項19】
前記活性化手段は、UV光照射機構であることを特徴とする請求項16に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項20】
前記UV光照射機構は、前記第1の薬液に、100nm以上且つ400nm以下の波長のUV光を、5Hz以上且つ600kHz以下の繰返し周波数、2W以上且つ800W以下の出力、及び0.1J/cm以上且つ10J/cm以下のパルスエネルギ−で、1分以上且つ15分以下の時間で照射することを特徴とする請求項19に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項21】
前記活性化手段は、加熱機構とUV光照射機構とであることを特徴とする請求項16に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項22】
前記加熱機構は、前記第1の薬液を、70℃以上且つ90℃以下の温度で加熱し、
前記UV光照射機構は、前記第1の薬液に、100nm以上且つ400nm以下の波長のUV光を、5Hz以上且つ600kHz以下の繰返し周波数、2W以上且つ800W以下の出力、及び0.1J/cm以上且つ10J/cm以下のパルスエネルギ−で、30秒以上且つ10分以下の時間で照射することを特徴とする請求項21に記載の半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−166064(P2011−166064A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30076(P2010−30076)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】