説明

半導体装置の製造方法

【課題】反射防止膜としてTiN膜を用いる場合において、アッシング工程にてTiN膜がAl合金配線から剥離するのを抑制できるようにする。
【解決手段】シリコン基板上に形成されるAl合金配線層の反射防止膜としてのTiN膜13f、16fの結晶粒界に充填物質13g、16gを充填する。このようにすれば、Al−Cu膜13c、16cへの酸素(O2)ラジカルの進入を防ぐことが可能となる。従って、酸素(O2)ラジカルとAl−Cu膜13cとが反応してAlxOyが形成されることが防止され、ポリマー除去時にAlxOyがフッ素ラジカルによって還元され、反射防止膜13f、16fがAl−Cu膜13cから剥離することもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配線を有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における半導体基板上に形成される金属配線の構造を図9に示す。この図に示すように、金属配線は、バリアメタルJ1と、Al−Cu合金(Al合金配線)J2と、反射防止膜J3とが順に積層されて構成されている。
【0003】
この金属配線のパターニング工程は、以下のように行われる。まず、反射防止膜J3の上にフォトレジストJ4を配置し、塩素系ガスにてフォトレジストJ4をマスクとしたエッチングを行うことによってAl合金配線J2等のパターニングを行う。次いで、酸素(O2)アッシングによってフォトレジストJ4を除去する。そして、Al合金配線J2等のパターニングの際にフォトレジストJ4内のCと塩素系ガスとが反応してできたフォトレジストJ4の側壁部分のポリマーJ5をフッ素(F)ガスで除去する。これらの工程により金属配線のパターニング工程が成される。
【0004】
このときAl合金配線J2上に配置される反射防止膜J3は、Al合金配線J2のパターニング工程でのフォトレジストJ4の露光の際に、下地となるAl合金配線J2表面での反射によりフォトレジストパターン細りが生じるのを防止するために形成される。この反射防止膜J3としては、例えば、TiN柱状結晶から構成されるTiN膜の単層が用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したように反射防止膜としてTiN膜の単層を用いる場合、フォトレジストを除去するための酸素(O2)アッシング工程の際に、酸素ラジカルがTiN柱状結晶の結晶粒界を通過し、Al合金配線とTiN膜との界面にAlxOyの酸化物が形成される。この酸化物は、化学的に不安定であるため、ポリマー除去の際に使用するフッ素ガス内のフッ素ラジカルによって還元されてしまう。このため、酸化物にスリットが形成され、TiN膜がAl合金配線から剥離するという問題が生じることが分かった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、反射防止膜としてTiN膜を用いる場合において、アッシング工程にてTiN膜がAl合金配線から剥離するのを抑制できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体素子が形成された半導体基板(1)上に、前記素子と電気的に接合されたAl合金配線層(13c、16c)及び反射防止膜としてのTiN膜(13f、16f)が形成されてなる半導体装置の製造方法において、Al合金配線層の上に柱状の結晶粒界を有するTiN膜を形成する工程を行った後、TiN膜結晶粒界中を充填物質(13g、16g)で充填する工程を有していることを特徴としている。

このように結晶粒界を有するTiNを形成した後、この結晶粒界中を酸素ラジカルの通過が抑制されるように、この充填物質で結晶粒界を充填することで、酸素(O2)アッシング工程にて酸素ラジカルがTiN膜を通過することを抑制することができる。この結果、酸素(O2)アッシング工程にてTiN膜がAl合金配線から剥離するのを抑制できる。

具体的には、請求項2に示すように、Al合金配線の上に結晶粒界を有するTiN膜を形成した後、N2雰囲気中でのアニールを行い、TiNを前記結晶粒界中に形成することができる。また、請求項3に示すように、充填材として未反応のTiを雰囲気中の酸素と反応させたTiOを前記結晶粒界中に充填することもできる。
【0008】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態を適用した半導体装置として、サリサイド構造を有するCMOSトランジスタを図1に示す。
【0010】
CMOSトランジスタは、p型のシリコン基板1内のn-型ウェル領域2に形成されたPMOSトランジスタと、p-型ウェル領域3に形成されたNMOSトランジスタとから構成されている。PMOSトランジスタとNMOSトランジスタはシリコン基板1の上部に形成されたSTI膜4によって素子分離されている。なお、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタの構造については、導電型が異なるのみであり、その他の構造については同様であるため、PMOSトランジスタの構造についてのみ説明する。
【0011】
-型ウェル領域2上には、ゲート酸化膜5を介してゲート電極6が形成されている。このゲート電極6の側面には、側壁酸化膜7が備えられている。また、ゲート電極6の両側にはp+型拡散層からなるソース8・ドレイン9が形成されており、これらソース8・ドレイン9間をチャネル領域としている。なお、ソース8・ドレイン9のチャネル領域側に形成されたp型層10は電界緩和層である。
【0012】
さらに、ゲート電極6、ソース8・ドレイン9の上部には、コンタクト用のシリサイド膜6a、8a、9aが形成されている。これにより、サリサイド構造を有するPMOSトランジスタが構成されている。
【0013】
これらPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタを含むシリコン基板1上には、BPSG、TEOS膜等からなる層間絶縁膜11が形成されており、この層間絶縁膜11内に形成されたコンタクトホールを埋めているタングステンプラグ12によって、層間絶縁膜11上に形成された1stAl合金配線13とソース8・ドレイン9とが電気的に接続されている。
【0014】
1stAl合金配線13上には、TEOS酸化膜等からなる層間絶縁膜14および層間絶縁膜14のコンタクトホールに埋め込まれたタングステンプラグ15が形成され、さらにそれらの上には2ndAl合金配線16が形成されている。2ndAl合金配線16上にはTEOS酸化膜等からなる層間絶縁膜17および層間絶縁膜17のコンタクトホールに埋め込まれたタングステンプラグ18が形成され、さらにそれらの上には3rdAl合金配線19が形成されている。そして、3rdAl合金配線19上には、P−TEOS膜20aとP−SiN膜20bからなる保護膜20が形成されている。このような構造を有してCMOSトランジスタが構成されている。
【0015】
このように構成されたCMOSトランジスタにおける金属配線構造の詳細を説明する。図2に、図1の破線部分の拡大図を示す。
【0016】
PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタを含むシリコン基板1上には層間絶縁膜11が形成されている。この層間絶縁膜11にはコンタクトホールが形成されており、そのホールに接着層Ti12a、バリアメタルTiN12b、タングステン12cからなるタングステンプラグ12が埋められている。このタングステンプラグ12によってシリコン基板1とAl合金配線13とが電気的に接続されている。さらに1stAl合金配線13の上に層間絶縁膜14が形成されている。この層間絶縁膜14にはビアホールが形成されており、そのビアホールにタングステンプラグ15が埋め込まれている。このタングステンプラグ15によって、2ndAl合金配線16が1stAl合金は緯線13と電気的に接続されている。
【0017】
1stAl合金配線13および2ndAl合金配線16は、同様の構成とされており、20nm程度の膜厚のTi膜13a、16a、30nm程度の膜厚のTiN膜13b、16b、Cuが0.5wt%含有されたAl合金で構成された300〜1000nm程度の膜厚のAl−Cu膜13c、16c、反射防止膜13d、13e、16d、16eが順に積層された構成となっている。
【0018】
図3に、反射防止膜13d、13e、16d、16eの拡大図を示す。この図に示されるように、反射防止膜13d、13e、16d、16eは、非結晶性のTiN膜13d、16dと結晶性のTiN膜13e、16eとが積層された構造となっている。非結晶性のTiN膜13d、16dは例えば10〜30nmとされ、結晶性のTiN膜13e、16eは例えば30nmとされている。非結晶性のTiN膜13d、16dは、具体的にはアモルファス化したTiNで構成され、結晶性のTiN膜13e、16eのように柱状の結晶粒界を有していない構成となっている。
【0019】
このような構成のTiN膜13d、13e、16d、16eを採用することにより、後述する酸素(O2)アッシングの際に、O2ラジカルが非結晶性のTiN膜13d、16dにて遮られ、Al−Cu膜13c、16c側に進入しないようにされている。
【0020】
なお、3rdAl合金配線19については、Ti膜19a、TiN膜19bおよびAl−Cu膜19cについてはTi膜13a、16a、TiN膜13b、16bおよびAl−Cu膜13c、16cと同様の構成となっている。しかし、TiN膜19dに関しては結晶性のTiN膜13e、16eと同様の構成となっている。これは、3rdAl合金配線19については配線設計の余裕が多くあること等の理由により反射防止膜としての機能があまり要求されないためである。このように、1st、2ndAl合金配線13、16に対して上記のような反射防止膜構造を採用するのが特に効果的であり、3rdAl合金配線19については1st、2ndAl合金配線13、16のような反射防止膜構造を採用しなくてもよい。
【0021】
次に、CMOSトランジスタの製造工程を図4〜図6に示す。以下、図4〜図6に基づいてCMOSトランジスタの製造方法について説明する。
【0022】
〔図4(a)に示す工程〕
まず、p型のシリコン基板1を用意する。次に、シリコン基板1上に熱酸化膜(SiO2)40を形成し、さらに熱酸化膜40上にシリコン窒化膜(SiN)41を形成する。そして、フォトリソグラフィ工程を経て、素子分離用のSTI膜4(図1参照)の形成予定領域上におけるシリコン窒化膜41とその下の熱酸化膜40を開口させる。その後、開口部からシリコン基板1を所定深さエッチング除去して、素子分離用としてのトレンチ42をパターニングする。このとき、トレンチ42は、素子部における素子分離を十分に行えるように、0.3〜0.6μm程度の深さで形成されるようにする。
【0023】
〔図4(b)に示す工程〕
トレンチ42の内壁に熱酸化膜43を形成して、トレンチ42内を丸める。その後、シリコン基板1の全面にTEOS膜を堆積させ、トレンチ42にTEOS膜を埋め込む。このとき、TEOS膜として、HTO−TEOS、LP−TEOS、O3−TEOS等を用いている。そして、CMPにて、シリコン窒化膜41をストッパーとしてTEOS膜を全面研削して、平坦化する。これにより、トレンチ42内にTEOS膜が残され、STI膜4が形成される。
【0024】
〔図4(c)に示す工程〕
シリコン窒化膜41を除去し、フォトレジスト工程を経てPMOSトランジスタ形成予定領域にn-型ウェル領域2を形成した後、再度フォトリソグラフィ工程を経てNMOSトランジスタ形成予定領域にp-型ウェル領域3を形成する。
【0025】
ウェットエッチングによって熱酸化膜40を除去する。そして、ドライブインと同時に犠牲酸化を行う等して、n-型ウェル領域2やp-型ウェル領域3の表面状態を良好にした後、熱酸化によってゲート酸化膜5を形成する。そして、ゲート酸化膜5上に厚さ0.35μm程度のポリシリコン膜を成膜した後、フォトリソグラフィ工程を経て、ゲート電極6をパターニングする。
【0026】
次に、CVD法によりウェハ表面全面にTEOS膜等の絶縁膜を堆積した後、RIE法による異方性エッチングにて絶縁膜をエッチバックし、ゲート電極6の側面に側壁膜7を形成する。
【0027】
〔図5(a)に示す工程〕
熱酸化等によってイオン注入工程用のスルー膜を形成した後、NMOSトランジスタ形成予定領域及びPMOSトランジスタ形成予定領域を順にフォトレジストで覆い、PMOSトランジスタ形成予定領域にはp型不純物(例えばボロン)を斜めイオン注入し、NMOSトランジスタ形成予定領域にはn型不純物(例えばリン)を斜めイオン注入する。これにより、側壁膜7で覆われたゲート電極6をマスクとしたイオン注入が行われ、ゲート電極6の両側に電界緩和層10が、ゲート電極6の内側よりに形成される。
【0028】
さらに、NMOSトランジスタ形成予定領域及びPMOSトランジスタ形成予定領域を順にフォトレジストで覆い、PMOSトランジスタ形成予定領域にはp型不純物(例えばボロン)を基板法線方向から高濃度にイオン注入し、NMOSトランジスタ形成予定領域にはn型不純物(例えばAs)を基板法線方向から高濃度にイオン注入する。これにより、側壁面7で覆われたゲート電極6の両側にソース8・ドレイン9が形成される。これにより、LDD(Lightly Doped Drain)構造が完成する。
【0029】
そして、スルー膜を除去した後、チタンシリサイド化工程を行う。まず、チタン(Ti)膜と窒化チタン(TiN)膜を順にウェハ全面に成膜し、さらにAr雰囲気下で短時間熱処理(RTA)を行い、シリサイド化反応を起こさせて、ゲート電極6及びソース8・ドレイン9の露出表面にそれぞれチタンシリサイド膜(TiSi2膜)6a、8a、9aを形成する。
【0030】
なお、このシリサイド化の熱処理温度はシリサイドの側壁膜7への這い上がり抑制、側壁膜7のSiとの反応防止、C49からC54フェーズへのTiSi2の変態抑制等の観点から700℃以下の比較的低温に設定されている。
【0031】
そして、アンモニア・過酸化水素水の混合液で選択エッチングを行い、チタン膜及び窒化チタン膜のうちシリサイド化反応を起こさなかった部分を除去する。これにより、チタンシリサイド膜6a、8a、9aのみが残る。これにより、サリサイド構造が完成する。
【0032】
その後、850℃程度で2度目の短時間熱処理を行い、チタンシリサイド膜6a、8a、9aを低抵抗化する。
【0033】
〔図5(b)に示す工程〕
ウェハ表面全面にBPSG、TEOS膜等からなる絶縁膜11を全面に堆積した後、CMPにより絶縁膜11を平坦化する。
【0034】
〔図5(c)に示す工程〕
フォトリソグラフィ工程を経て、絶縁膜11にコンタクトホールを形成する。そして、このコンタクトホール内に接着層及びバリアメタルとして、Ti膜12aとTiN膜12bとを順に積層し、さらにそのTi膜12aとTiN膜12bの上にタングステン(W)12cを積層する。これにより、コンタクトホールはバリアメタル12a、12b及びタングステン12cによって埋め込まれる。
【0035】
その後、バリアメタル12a、12b及びタングステン12cをエッチバックし、コンタクトホール内にのみバリアメタル12a、12b及びタングステン12cを残す。これにより、ソース8・ドレイン9等との電気的接続が成されたタングステンプラグ12が形成される。
【0036】
〔図6(a)に示す工程〕
1stAl合金配線13の形成のために、ウェハ表面全面にメタル膜を成膜する。このメタル膜として、30nm程度の膜厚のTi膜13aと20nm程度の膜厚のTiN膜13bと、200〜1000nm程度の膜厚のAl−Cu膜13cとを順に積層形成する。なお、Al−Cu膜13cの形成は、リフロースパッタリングや、基板温度が100〜300℃程度の通常スパッタリングや、基板温度が350〜450℃程度の高温スパッタリング等で行う。また、Al−Cu膜13cの代わりにAl−Si−Cu膜を用いても良い。
【0037】
続いてメタル膜の上に反射防止膜13d、13eを成膜する。具体的には、非結晶性のTiN膜13dを10〜30nm程度の膜厚で、結晶性のTiN膜13eを30nm程度の膜厚で順に積層形成する。これらTiN膜13d、13eの製造方法及び条件をそれぞれ以下に説明する。
【0038】
まず、非結晶性のTiN膜13dを形成するとき、成膜初期時にはN2を導入せずArガスのみを導入してスパッタリングを行い、その後、ArガスとN2とを1:1の割合で導入したスパッタリングを行う。このときの条件はDCパワーが3〜8kW(ターゲットの直径が12インチのとき)程度となるようにし、温度が室温から130℃程度となるようにしてスパッタリングする。
【0039】
具体的には、ターゲットとなるTiの表面を窒化させることでTi表面にTiNを形成させておき、TiNをターゲットとして、スパッタリングを行うことで、雰囲気中にN2を導入しなくても成膜初期時からAl−Cu膜13cの表面にTiN膜13dが形成される。そして、Ti表面のTiNがすべて弾き出されたとき(もしくはその前)から、雰囲気中にN2を導入してスパッタリングを続けることで、TiN膜13dが形成される。
【0040】
次いで、非結晶性のTiN膜13dを形成したときのスパッタリングと温度条件のみを変更する。具体的には、スパッタリングの温度が150℃程度〜350℃程度に設定されるようにする。そして、この温度条件の下、TiNを30nm程度成膜することで結晶性のTiN膜13eが形成される。
【0041】
〔図6(b)に示す工程〕
次に、フォトリソグラフィ工程を施し、1stAl合金配線13をパターニングする。具体的には、まず、結晶性のTiN膜13e上にフォトレジストを堆積し、このフォトレジストのうち1stAl合金配線13として残す部分以外を開口させる。この後、フォトレジストをマスクしたエッチング工程を行う。
【0042】
まず、塩素系のエッチングガスを用いたエッチングを行うことにより、TiN膜13e、13d、Al―Cu膜13c、TiN膜13bおよびTi膜13aを醇に除去する。このとき、フォトレジストも大部分が除去されることになるが、多少TiN膜13e上に残るため、次いで酸素(O2)アッシングを施し、フォトレジストの残部を除去する。
【0043】
この酸素(O2)アッシングの際に、酸素(O2)ラジカルが結晶性のTiN膜13eの結晶粒界に入り込んでくるが、非結晶性のTiN膜13dにて進入が食い止められるため、Al−Cu膜13cへの酸素(O2)ラジカルの進入を抑制することが可能となる。このため、酸素(O2)ラジカルとAl−Cu膜13cとが反応してAlxOyが形成されることを防止できる。
【0044】
この後、1stAl合金配線13のパターニングの際にフォトレジスト内のCと塩素系ガスとが反応することによってフォトレジストの側壁部分に形成されたポリマーをフッ素(F)ガスで除去する。この際、先程行われた酸素(O2)アッシングの際にAlxOyがほとんど形成されていないことから、AlxOyがフッ素ラジカルによって還元され、反射防止膜13d、13eがAl−Cu膜13cから剥離することもない。
【0045】
〔図6(c)に示す工程〕
図5(c)及び図6(a)、(b)に示す1stAl合金配線13と同様の工程を経て、層間絶縁膜14を介して2ndAl合金配線15を形成する。また、図5(c)及び図6(a)、(b)のうち非結晶性のTiN膜13dの製造以外の工程と同様の工程を行い、層間絶縁膜17を介して3rdAl合金配線19を形成する。
【0046】
この後、ウェハ表面全面にP−TEOS膜20aとP−SiN膜20bからなる保護膜20を成膜することによって、図1に示す半導体装置が完成する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置では、Al合金配線13、16の反射防止膜として、非結晶性のTiN膜13d、16dと結晶性のTiN膜13e、16eとが積層された構造のものを採用している。
【0048】
このため、1st、2ndAl合金配線13、16のエッチング後に行われる酸素(O2)アッシングの際に、Al−Cu膜13c、16cへの酸素(O2)ラジカルの進入を防ぐことが可能となる。従って、酸素(O2)ラジカルとAl−Cu膜13cとが反応してAlxOyが形成されることが防止され、ポリマー除去時にAlxOyがフッ素ラジカルによって還元され、反射防止膜13d、13eがAl−Cu膜13cから剥離することもない。
【0049】
なお、本実施形態のような半導体装置の製造方法を適用した場合の反射防止膜の剥がれ発生率を調べたところ、図7に示す結果が得られた。この実験では、スパッタリング時のDCパワーを3kW、ArガスとN2の比が1:1とした場合に、反射防止膜をどの程度の温度で形成すれば剥離しないかを調べている。
【0050】
この図に示されるように、TiN膜を150℃以下でした部分があるか否か、つまり反射防止膜にアモルファス化した領域となる非結晶性のTiN膜があるか否かによって反射防止膜の剥がれ発生率が大きく異なる。この結果からも、Al−Cu膜13c、16cの上に非結晶性のTiN膜13d、16dを形成することで、上記効果が得られることが分かる。
【0051】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態における半導体装置では、第1実施形態に対して、Al−Cu膜13c、16cの表面に形成されるTiN膜の構成を代えたものであり、その他の構成および製造方法については全く同じである。
【0052】
図8に、本実施形態の半導体装置における1st、2ndAl合金配線13、16中のTiN膜13f、16fの断面構成を示す。この図に示されるように、TiN膜13f、16fは、柱状の結晶性を有している。このTiN膜13f、16fの柱状の結晶粒界はTiNやTiO等の充填物質13g、16gで充填されている。
【0053】
このため、1st、2ndAl合金配線13、16のエッチング後に行われる酸素(O2)アッシングの際に、Al−Cu膜13c、16cへの酸素(O2)ラジカルの進入を防ぐことが可能となる。従って、酸素(O2)ラジカルとAl−Cu膜13cとが反応してAlxOyが形成されることが防止され、ポリマー除去時にAlxOyがフッ素ラジカルによって還元され、反射防止膜13f、16fがAl−Cu膜13cから剥離することもない。
【0054】
本実施形態で示したTiN膜13f、16fおよび充填物質13g、16gの製造工程は、以下のように行われる。
【0055】
例えば、TiN膜13fの場合、第1実施形態で示した図5(c)の工程まで実施する。その後、図6(a)と同様の工程により、Al−Cu膜13cまで形成する。そして、非結晶性のTiN膜13dを形成する工程を行わず、結晶性のTiN膜13eを形成する工程と同様のスパッタリング工程により、TiN膜13fを形成する。このとき、スパッタターゲットにTi膜の表面を窒化したものを用いることで、TiN膜13fの成膜初期時にはN2を導入しないようにすることもできる。
【0056】
次いで、N2を導入しつつ400℃程度〜500℃程度でアニール処理を行う。この処理により、TiN膜13fに元々存在していたTiやTiNのうち結晶性が弱いものが導入されたN2や雰囲気中に残っていたO2と反応することで、TiN膜13fの結晶粒界に充填物質13gが充填される。
【0057】
なお、TiN膜16fについてもTiN膜13fと同様であり、上記と同様の方法により、TiN膜16fの結晶粒界を充填物質16gで充填することができる。
【0058】
以上の説明したように、TiN膜13f、16fの結晶粒界に充填物質13g、16gを充填することによっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、非結晶性のTiN膜13d、16dを結晶性のTiN膜13e、16eの下層に配置したが、その途中に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態における半導体装置の断面構成を示す図である。
【図2】図1の破線部分の拡大図である。
【図3】図1に示す半導体装置のTiN膜の拡大図である。
【図4】図1に示す半導体装置の製造工程を示す図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程を示す図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程を示す図である。
【図7】非結晶性のTiN膜と反射防止膜の剥離の関係を示した図である。
【図8】本発明の第2実施形態における半導体装置のTiN膜の拡大図である。
【図9】従来のAl合金配線の製造工程を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
13…1stAl合金配線、16…2ndAl合金配線、13c、16c…Al−Cu膜、13d、16d…非結晶性のTiN膜、13e、16e…結晶性のTiN膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された半導体基板(1)上に、前記素子と電気的に接合されたAl合金配線層(13c、16c)及び反射防止膜としてのTiN膜(13f、16f)が形成されてなる半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に前記Al合金配線層を形成する工程と、
前記Al合金配線層の上に柱状の結晶粒界を有するTiN膜を形成する工程と、
前記TiN膜結晶粒界中を充填物質(13g、16g)で充填する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記結晶粒界を充填材で充填する工程は、N2雰囲気中でのアニールを行うことで、前記充填物質となるTiNを前記結晶粒界中に形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記結晶粒界を充填する工程は、前記TiN膜中に存在する未反応のTiを雰囲気中の酸素と反応させることで、前記充填材となるTiOを前記結晶粒界中に充填することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−300866(P2008−300866A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199517(P2008−199517)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【分割の表示】特願2003−274745(P2003−274745)の分割
【原出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】