説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】pMOSトランジスタにcSiGeとeSiGeを適用し、且つゲート絶縁膜におけるダメージ発生を防止でき、素子特性の向上及びしきい値制御性の向上をはかる。
【解決手段】pMOSトランジスタのチャネル部及びソース・ドレイン領域にSiGeを用いた半導体装置において、Si基板202上の一部に形成され、pMOSトランジスタのチャネルとなる第1のSiGe層205と、第1のSiGe層205上にゲート絶縁膜206を介して形成されたゲート電極208と、pMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に埋め込み形成され、且つチャネル側の端部が基板表面よりも深い位置でチャネル側に突出するように形成された第2のSiGe層214と、第1のSiGe層205と第2のSiGe層214とを分離するように、基板の表面部でSiGe層205,214間に挿入されたSi層222とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pMOSトランジスタのチャネル部及びソース・ドレイン領域にSiGeを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Si基板を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)において、チャネル部にSiGeを用いることによって電子或いは正孔の移動度を増加させ、トランジスタの特性を向上させる技術が注目されている。特に、HP32世代以降ではメタルゲートの導入が検討されており、pMOSFETのしきい値(Vth)制御の観点から、チャネル部にSiGe(cSiGe)を適用することが有望視されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、HP65nm世代以降のpMOSFETの性能向上施策として、ソース・ドレイン領域に埋め込みSiGe(eSiGe)を形成する技術が用いられている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、eSiGeの形成によりチャネル部に圧縮歪みを与えることによって、正孔の移動度の向上をはかることができる。そしてこの場合、チャネル部に与える歪みをより大きくするために、eSiGeのチャネル側の端部を基板表面よりも深い位置でチャネル側に突出させる構造、いわゆるΣ形状を採用するのが有効であると考えられている。
【0004】
上記2つの技術を組み合わせ構造により更なるトランジスタ特性を向上させることが考えられる。しかしながら、この構造の半導体装置においては、ゲート絶縁膜にダメージが発生して特性が劣化する問題やVthが所望値からずれる問題を招いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−166396号公報
【特許文献2】特開2007−258665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、pMOSトランジスタにcSiGeとeSiGeを適用することができ、且つゲート絶縁膜におけるダメージ発生を防止することができ、素子特性の向上及びしきい値制御性の向上をはかり得る半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係わる半導体装置は、Si基板上の一部に形成され、pMOSトランジスタのチャネルとなる第1のSiGe層と、前記第1のSiGe層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記基板のpMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に埋め込み形成され、且つ前記チャネル側の端部が基板表面よりも深い位置でチャネル側に突出するように形成された第2のSiGe層と、前記第1のSiGe層と第2のSiGe層とを分離するように、前記基板の表面部で前記第1のSiGe層と第2のSiGe層との間に挿入されたSi層と、を具備してなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の実施態様に係わる半導体装置の製造方法は、Si基板のpMOSトランジスタの形成領域上に第1のSiGe層を形成する工程と、前記第1のSiGe層上の一部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極の側壁面にオフセットスペーサを形成する工程と、前記ゲート電極及びオフセットスペーサを含むゲート部をマスクに用い、前記第1のSiGe層を選択的にエッチングする工程と、前記第1のSiGe層をエッチングした領域にSi層を形成する工程と、前記Si層の形成後に、前記ゲート部の側壁面に側壁絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート部及び側壁絶縁膜をマスクに用い、前記Si基板のソース・ドレインとなる領域を前記Si層と共にエッチングして溝を形成すると共に、該溝の前記チャネル側の端部が基板表面よりも深い位置でチャネル側に食い込むように形成する工程と、前記溝内に第2のSiGe層を埋め込み形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の更に他の実施態様に係わる半導体装置の製造方法は、Si基板のpMOSトランジスタの形成領域上に第1のSiGe層を形成する工程と、前記第1のSiGe層上の一部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極の側壁面に側壁絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート電極及び側壁絶縁膜をマスクに用い、前記第1のSiGe層をエッチングすると共に、該SiGe層の前記側壁絶縁膜下の領域の一部をエッチングする工程と、前記第1のSiGe層をエッチングした領域にSi層を形成する工程と、前記ゲート電極及び側壁絶縁膜をマスクに用い、前記Si基板のソース・ドレインとなる領域を前記Si層と共にエッチングして溝を形成すると共に、該溝の前記チャネル側の端部が基板表面よりも深い位置でチャネル側に食い込むように形成する工程と、前記溝内に第2のSiGe層を埋め込み形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、pMOSトランジスタにcSiGeとeSiGeを適用した構造において、ゲート絶縁膜におけるダメージ発生を防止することができ、素子特性の向上及びしきい値制御性の向上をはかることができる。また、eSiGeのΣ形状を形成するためのエッチングを行ったとしても、cSiGe層のエッチング及びゲート絶縁膜のダメージ発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の比較例に係わるC−MOS構造の半導体装置の素子構造を示す断面図。
【図2】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図3】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図4】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図5】第1の実施形態に係わるC−MOS構造の半導体装置の素子構造を示す断面図。
【図6】第1の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図7】第1の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図8】第1の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図9】第3の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図10】第3の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図11】第4の実施形態に係わる半導体装置の要部構成及びSi層におけるGe濃度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の実施形態を説明する前に、比較例としてチャネル及びソース・ドレイン領域にSiGeを用いたC−MOS構造の半導体装置の素子構造及びその製造方法をそれぞれ図1及び図2から図4を用いて説明する。
【0013】
図1中の10はnMOSトランジスタ形成領域(nMOS領域)、20はpMOSトランジスタ形成領域(pMOS領域)、101は素子分離領域、102はSi基板、105はcSiGe層、106はゲート絶縁膜、107はゲートメタル、108はa−Siからなるゲート電極、110はシリコン窒化膜(オフセットスペーサ)、111はシリコン酸化膜(側壁絶縁膜)、112はシリコン窒化膜(側壁絶縁膜)、114はeSiGe層、115はNiSi層、116はコンタクトエッチストップ膜、117は層間絶縁膜、118はコンタクトプラグ、119はメタル配線、120は表面保護膜である。
【0014】
図1のように、pMOSのチャネル部にcSiGe層105が形成され、ソース・ドレイン領域にeSiGe層114が形成されている。そして、eSiGe層114のチャネル側は基板表面よりも深い位置でチャネル側が凸となる、所謂Σ形状となっている。
【0015】
上記の半導体装置は、以下の図2〜図4に示す工程により製造される。
【0016】
まず、図2(a)に示すように、素子分離領域101が形成されたSi基板102に対して、全面に第1のシリコン酸化膜103を堆積させる。次いで、図2(b)に示すように、nMOS領域10を第1のレジスト104で被覆して、ウェットエッチングによりpMOS領域20の第1のシリコン酸化膜103を除去する。次いで、図2(c)に示すように、第1のレジスト104を除去した後、pMOS領域20のみにSiGeを堆積させてcSiGe層105を形成する。その後、nMOS領域10のレジスト104及びシリコン酸化膜103を除去する。次いで、図2(d)に示すように、ゲート絶縁膜106、ゲートメタル107とa−Si膜108を堆積させ、さらに第1のシリコン窒化膜109を堆積する。
【0017】
次いで、図3(e)に示すように、リソグラフィ法によりゲート電極をパターニングし、ドライエッチングにより第1のシリコン窒化膜109、アモルファスシリコン膜108、メタル107、ゲート絶縁膜106を加工する。次いで、第2のシリコン窒化膜を堆積させ、ドライエッチングにより加工して、図3(f)に示すようにオフセットスペーサ110を形成する。続いて、イオン注入法により不純物を導入し、エクステンション領域(図示せず)を形成する。次いで、図3(g)に示すように、第2のシリコン酸化膜111、第3のシリコン窒化膜112を連続して堆積した後、nMOS領域10を第2のレジスト113で被覆した状態で、ドライエッチングによりpMOS領域20の第2のシリコン酸化膜111及び第3のシリコン窒化膜112を側壁絶縁膜の形状に加工する。次いで、図3(h)に示すように、pMOSのソース・ドレイン領域でSiGeを埋め込みたい領域のSi基板102を掘り込んだ後、第2のレジスト113を除去する。
【0018】
この状態で、例えばトリメチル・アンモニウム・ヒドロキシド(THAH)のようなSiを侵食するアルカリ系のウェット処理を行うと、Siの(111)面が優先的に侵食されるので、図4(i)に見られるような、ゲート領域下でよりエッチングされた凸状の形状、所謂Σ形状が得られる。このとき、cSiGeがある場合はSiよりもSiGeのほうがウェットのエッチレートが高いため、MOSトランジスタの性能向上の観点から必要となるエッチング量の処理を行うと、最悪エクステンション領域のみならずチャネル部のSiGeまで除去されてしまう。
【0019】
図4(j)にcSiGe層105のチャネル部の一部が除去された状態を示す。cSiGe層105の除去によりゲート絶縁膜106が露出されるため、ゲート絶縁膜106がエッチングによるダメージを受けることになる。これは、素子特性の劣化を招く大きな要因となる。また、この状態で選択成長によりpMOSのソース・ドレイン領域にSiGe層114を形成すると、図4(k)に示すように、チャネル部の一部にVth制御の観点から所望としているGe濃度と異なるSiGe層114が形成されることとなる。
【0020】
次いで、図4(l)に示すように、pMOS領域20を第3のレジスト(図示せず)で被覆した状態で、nMOS領域10の第2のシリコン酸化膜111及び第3のシリコン窒化膜112をドライエッチングにより加工して、nMOSのサイドウォールスペーサを形成する。続いて、第3のレジストを除去し、さらにドライエッチングによりゲート電極108上の第1のシリコン窒化膜109を除去する。
【0021】
そして、イオン注入法により不純物を導入してソース・ドレイン領域(図示せず)を形成し、ソース・ドレイン上及びゲート電極上にNiSi層115を自己整合的に形成し、引き続きコンタクトエッチストップ膜116、層間絶縁膜117、コンタクトプラグ118、メタル配線119、表面保護膜120を形成することにより、前記図1に示す構造が実現される。
【0022】
このように、pMOSFETのチャネル部及びソース・ドレイン領域にSiGeを用いた半導体装置においては、Σ形状のeSiGe形成のためにSi基板102をエッチングして溝を設ける必要があるが、一般にSiよりもSiGeの方がエッチングされやすいので、Si基板102のエッチング時にcSiGe層105がエッチングされてしまう。このため、ゲート絶縁膜106が露出してしまい、ゲート絶縁膜106にダメージが発生する。また、Si基板102のエッチング時にcSiGe層105がエッチングされるため、この部分にVth制御の観点から所望としているGe濃度と異なるSiGe層114が形成されることになり、これがVth制御性を低下させる要因となる。
【0023】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図5は、本発明の第1の実施形態に係わるC−MOS構造の半導体装置の素子構造を示す断面図である。なお、図2中の201〜220は図1中の101〜220に対応している。
【0025】
素子分離領域201が形成されたSi基板202にnMOSFETとpMOSFETが形成されている。nMOS領域10では、基板202上にゲート絶縁膜206を介してゲートメタル207及びa−Siからなるゲート電極208が形成されている。ゲート電極208の側壁面にシリコン窒化膜からなるオフセットスペーサ210が形成され、その側面にシリコン酸化膜211及びシリコン窒化膜212からなる側壁絶縁膜が形成されている。また、ゲート部の両側にエクステンション領域225とソース・ドレイン領域226が形成されている。
【0026】
pMOS領域20では、Si基板202上のチャネルとなる領域にcSiGe層(第1のSiGe層)205が形成され、cSiGe層205上にゲート絶縁膜206を介してゲートメタル206及びa−Siからなるゲート電極208が形成されている。ゲート電極208の上側壁面及びシリコン基板上にはシリコン酸化膜211が形成される。さらに、このシリコン酸化膜211の側面にシリコン窒化からなるオフセットスペーサ210が形成され、その上側面及びシリコン基板上にはシリコン酸化膜211が形成される。さらに、このシリコン酸化膜211の側面にシリコン窒化膜212からなる側壁絶縁膜が形成されている。ソース・ドレイン領域にはΣ形状を有するeSiGe層(第2のSiGe層)214が埋め込み形成されており、シリコン基板表面より高く埋め込まれている。そして、cSiGe層205とeSiGe層214との間及びシリコン酸化膜211の下にSi層222が挿入されている。
【0027】
nMOS領域10及びpMOS領域20のそれぞれにおいて、ソース・ドレイン領域及びゲート電極上にNiSi等のシリサイド層215が形成されている。
【0028】
これらの各層を形成した基板表面には、コンタクトエッチストップ層216及び層間絶縁膜217が形成されている。層間絶縁膜217及びコンタクトエッチストップ層216にコンタクトホールが設けられ、コンタクトホール内にコンタクトプラグ218が埋め込み形成されている。そして、層間絶縁膜217上にメタル配線層219が形成され、メタル配線219を覆うように層間絶縁膜217上に表面保護膜220が形成されている。
【0029】
このように、本実施形態の基本的な構造は前記図1と同様であるが、チャネル部のcSiGe層205とソース・ドレイン領域のeSiGe層214との間にSi層222が形成されていることが図1とは異なっている。
【0030】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について、図6〜図8を参照して説明する。
【0031】
まず、図6(a)に示すように、先に説明した比較例と同様に、素子分離領域201が形成された面方位が(100)のSi基板202に対して、熱酸化等により全面に第1のシリコン酸化膜203を堆積させる。続いて、将来nMOSFETとなる領域(nMOS領域)10を第1のレジスト204で被覆して、ウェットエッチングにより将来pMOSFETとなる領域(pMOS領域)20の第1のシリコン酸化膜203を除去する。
【0032】
次いで、図6(b)に示すように、第1のレジスト204を除去した後、Si基板202からの選択成長によりpMOS領域20のみにSiGe層205を堆積させる。このSiGe層205の形成にはCVD法を用い、Si系の原料ガスとしてのSi2 6 とGe系の原料ガスとしてのGeH4 の流量比を制御することにより、Ge濃度が30%のSiGe層205を成長した。SiGe層205の厚さは約10nmとした。その後、nMOS領域10上のシリコン酸化膜203を除去する。
【0033】
次いで、図6(c)に示すように、SiONなどのゲート絶縁膜206(厚さ5nm),TiNなどのゲートメタル207(厚さ5nm),a−Si膜208(厚さ100nm),及び将来eSiGeを形成する際のハードマスクとなる第1のシリコン窒化膜209を積層した後、これらをリソグラフィ法によりパターニングを行った上で加工を行ってゲート電極部を形成する。次いで、図6(d)に示すように、全面に第2のシリコン窒化膜210を堆積させる。
【0034】
次いで、図7(e)に示すように、nMOS領域10を被覆する第2のレジスト213を堆積させ、pMOS領域20のみ第2のシリコン窒化膜210をドライエッチングにより加工し、オフセットスペーサを形成する。即ち、全面エッチングすることにより、ゲート電極部の側壁のみにシリコン窒化膜210が残り、これがオフセットスペーサとなる。
【0035】
次いで、図7(f)に示すように、第2のシリコン窒化膜210(厚さ10nm)及びゲート電極208で被覆されていないcSiGe層205を除去した後、レジスト213を除去する。具体的には、ゲート電極208,シリコン窒化膜209,及びオフセットスペーサ210等からなるゲート部とレジスト213をマスクに用い、ドライエッチングやウェットエッチングによりエッチングすることにより露出しているcSiGe層205を除去する。その後、レジスト213を除去する。
【0036】
次いで、図7(g)に示すように、cSiGe層205を除去した領域に選択成長によりSi層222を、cSiGe層205とほぼ同じ厚さにエピタキシャル形成する。このSi層222の形成は、SiH4 やSi2 6 等の原料ガスを用いたCVD法によりSi基板表面から選択的にエピタキシャル成長させればよい。
【0037】
次いで、図7(h)に示すように、pMOS領域20を第3のレジスト223で被覆した後、nMOS領域の第2のシリコン窒化膜210をドライエッチングにより加工してオフセットスペーサを形成する。その後、第3のレジスト223を剥離した後、イオン注入法によりエクステンション領域(図示せず)を形成する。
【0038】
次いで、図8(i)に示すように、比較例と同様に第2のシリコン酸化膜211(厚さ10nm)、第3のシリコン窒化膜212(厚さ10nm)を連続して堆積し、nMOS領域10を第4のレジスト224で被覆する。この状態で、ドライエッチングによりpMOS領域20の第2のシリコン酸化膜211及び第3のシリコン窒化膜212をエッチングすることにより、nMOS領域10に側壁絶縁膜を形成する。
【0039】
次いで、図8(j)に示すように、pMOSのソース・ドレイン領域のSiGeを埋め込みたい領域のSi基板202をドライエッチングにより掘り込んで深さ70nm程度の溝を形成した後、第4のレジスト224を除去する。なお、このときのエッチング方法は異方性エッチングであれば良く、必ずしもドライエッチングに限らない。
【0040】
この状態で、例えばトリメチル・アンモニウム・ヒドロキシド(THAH)のようなSiを侵食するアルカリ系のウェット処理を行うと、Siの(111)面が優先的に侵食されるので、溝の側面に図8(k)に見られるような基板表面よりも深い位置で且つゲート電極下でチャネル側に食い込んだ、所謂Σ形状が得られる。このとき、比較例と同様にΣ形状を形成するためのウェットエッチングを行ったとしても、cSiGe層205の側面がSiGeよりもエッチングされにくいSi層222でカバーされているため、cSiGe層205が露出することはない。このため、サイドウォールスペーサ下部からゲート電極下部に至るSiGe層205の融解を確実に防止することができ、ゲート絶縁膜206がエッチングのダメージを受けることはない。
【0041】
次いで、図8(l)に示すように、比較例と同様に選択成長により、Vth制御の観点から所望としているGe濃度と異なるeSiGe層214を埋め込み形成する。このeSiGe層214の形成により、チャネル部のcSiGe層及びSiには圧縮歪みが加えられることになる。なお、eSiGe層214のGe濃度は20%、厚みは80nm程度である。
【0042】
これ以降は、nMOSFETの側壁絶縁膜の形成、ゲート電極上部にある第1のシリコン窒化膜209の除去、イオン注入法によるソース・ドレイン領域の形成(図示せず)、NiSi等のシリサイド215、コンタクトエッチストップ膜216、層間絶縁膜217、コンタクトプラグ218、メタル配線219、表面保護膜220を形成することにより、前記図5に示す構造が得られる。
【0043】
このように本実施形態によれば、pMOSFETのチャネル部とソース・ドレイン領域の両方にSiGeを含む半導体層を有する半導体装置において、チャネル部のcSiGe層205の側部をSi層222で被覆することにより、ソース・ドレイン領域のeSiGe層214をΣ形状にするためのウェットエッチングを行っても、cSiGe層205が欠損することが無い。このため、Σ形状のエッチング時にゲート絶縁膜206が露出することを防止でき、ゲート絶縁膜206のダメージ発生を抑制することができる。しかも、cSiGe層205の欠損を生じることなくeSiGe層214が形成できることから、Vth制御性の向上をはかることができる。
【0044】
また、cSiGe層205の両側にあるSi層222にp型の不純物を添加することにより、MOSトランジスタ設計の自由度を向上させることができる。さらに、この領域にGe濃度を添加し、その濃度をコントロールすることにより、cSiGe層205の欠損を抑制しつつ、SiとSiGeの格子定数の違いに起因する結晶欠陥の発生も抑制することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
第1の実施形態におけるSi層222に対して、エピタキシャル成長後ではなくエピタキシャル成長時にp型の不純物を添加することも可能である。具体的には、Si層222のエピタキシャル成長時に原料ガスとは別にボロン等のp型不純物となるガスを添加すればよい。最終的に作製される構造は前記図5と同様である。
【0046】
このように本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られるのは勿論のこと、Si層222のエピタキシャル成長時にp型不純物を添加することにより、pMOSFETのエクステンション領域を形成するためのイオン注入が省略可能となる。しかも、オフセットスペーサ幅をnMOSFETにのみに最適になるように調整できるため、MOSFETの設計の自由度を大幅に向上させることができる。
【0047】
(第3の実施形態)
図9及び図10は、本発明の第3の実施形態に係わるC−MOS構造の半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、図9,10中の301〜322は図5〜8中の201〜222に対応している。
【0048】
本実施形態の素子構造自体は第1の実施形態と同様であるが、製造方法が第1の実施形態とは異なっている。
【0049】
まず、図9(a)に示すように、第1の実施形態と同様に、pMOS領域20のcSiGe層305の形成、ゲート絶縁膜306,ゲートメタル307,a−Siのゲート電極308,及び第1のシリコン窒化膜309の加工、オフセットスペーサ310の形成、エクステンション領域(図示せず)の形成を行う。続いて、第1のシリコン酸化膜311、第2のシリコン窒化膜312を堆積した後、nMOS領域10をレジスト324で被覆した状態で、pMOS領域20の第1のシリコン酸化膜311及び第1のシリコン窒化膜312を側壁絶縁膜の形状に加工する。即ち、前記図8(i)に示す工程までは第1の実施形態と同様である。
【0050】
次いで、図9(b)に示すように、ゲート部分をマスクに用い、ドライエッチングにより将来eSiGeを形成する領域のcSiGe層305を除去した後、レジスト324を除去する。
【0051】
次いで、図9(c)に示すように、等方性のドライエッチング又はウェットエッチングにより、ゲート電極下部までは届かないように側壁絶縁膜下部のcSiGe層305を除去する。
【0052】
次いで、図10(d)に示すように、cSiGe層305を除去した領域に対して、サイドウォールスペーサ下部の全てが埋め込まれるまで、p型の不純物を添加したSi層322を選択成長により形成する。具体的には、SiH4 等の原料ガスと共にp型不純物としてのボロンガスを流し、CVD法によりSi基板表面からp型Si層322をエピタキシャル成長させる。
【0053】
次いで、図10(e)に示すように、第1及び第2のシリコン窒化膜309,312をストッパとして用い、pMOSFETのソース・ドレイン領域に該当するSi基板302を異方性のドライエッチングにより掘り込んで溝を形成する。
【0054】
この状態でTHMA等のアルカリ系のウェットエッチングを行うことにより、図10(f)に示すように、溝の側壁面が基板表面よりも深い位置でチャネル側に食い込んだΣ形状を形成することができる。このとき、cSiGe層305が露出していないために、側壁絶縁膜下部からゲート電極下部に至るSiGe層307の融解を未然に防止することができる。
【0055】
次いで、図10(g)に示すように、選択成長により溝内にeSiGe層314を埋め込み形成する。
【0056】
これ以降は第1の実施形態と同様に、nMOSFETの側壁絶縁膜の形成、ゲート電極上部にある第1のシリコン窒化膜の除去、ソース・ドレイン領域形成(図示せず)、シリサイド層315、コンタクトエッチストップ膜316、層間絶縁膜317、コンタクトプラグ318、メタル配線319、表面保護膜320を形成することにより、前記図5と同様の素子構造が得られる。
【0057】
このように本実施形態においても、第1の実施形態と同様の構造を実現することができ、第1の実施形態と同様の効果が得られる。しかも、側壁絶縁膜を形成した後にSi層322を形成することにより、次のような効果も得られる。
【0058】
第1の実施形態の場合、pMOSFETのオフセットスペーサを形成後、除去したcSiGe領域に形成したSiエピタキシャル層の高さ変動により、トランジスタの特性バラツキを引き起こし易い。これに対し本実施形態の場合、エクステンション領域の高さ(Siエピタキシャル層の高さ)が側壁絶縁膜により制限されるため、第1の実施形態よりも特性変動が少ないトランジスタを形成できるメリットがある。
【0059】
(第4の実施形態)
第3の実施形態におけるSi層322の形成に際して、cSiGe層305と隣接する成膜初期においてはGe濃度をcSiGe層305と同じとし、徐々にGe濃度を下げて側壁絶縁膜下部の全てが埋め込まれる前にはGe濃度が0となるような濃度勾配を持つSi層(又はSiGe層)にすることが可能である。
【0060】
具体的には、Si層を成長形成する際に、Si系の原料ガスと共にGe系の原料ガスを導入し、Ge系の原料ガスの導入量を徐々に少なくするようにすればよい。
【0061】
Ge系の原料ガスを導入した場合、SiよりもSiGeからの成長が大であるため、図11(a)に示すように、cSiGe層305の側面からの成長は進み、Si基板302表面からの成長は殆ど進まない。従って、Si(より正確にはSiGe)の成長は実質的にcSiGe層305の側面から始まる。Ge系の原料ガスの導入量が少なくなるに伴い、Si基板表面からの成長も進む。その結果、図11(b)に示すように、チャネル側ではcSiGeと同じ程度のGe濃度を有し、ソース・ドレイン側ではGe濃度が0のSi層322を形成することができる。
【0062】
本実施形態の構造では、第3の実施形態と同様の効果が得られるのは勿論のこと、次のような効果も得られる。
【0063】
先の第3の実施形態においては、Si層とcSiGe界面にある格子間隔の違いによる格子欠陥の発生が懸念される。これに対し、本実施形態のようなGeの濃度勾配を持つSiGe層を用いることで、前述の格子欠陥を抑制しつつ、Σ形状形成時のcSiGeの欠損を防止することが可能となる。
【0064】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。実施形態では、同一基板上にnMOSFETとpMOSFETを形成したC−MOS構造について説明したが、本発明はpMOSFETのみを形成した半導体装置に適用することも可能である。
【0065】
また、Si基板は、必ずしもバルク基板に限るものではなく、絶縁膜上にSi層を形成したSOI基板を用いることも可能である。さらに、MOS構造に限らず、ゲート絶縁膜に酸化膜以外の絶縁膜を用いたMIS構造に適用することも可能である。さらに、cSiGeやeSiGeにおけるGe濃度や厚み等の条件は、仕様に応じて適宜変更することが可能である。
【0066】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
101,201,301…素子分離領域
102,202,302…Si基板
103,203…第1のシリコン酸化膜
104,204…第1のレジスト
105,205,305…チャネル部のSiGe(cSiGe)層
106,206…ゲート絶縁膜
107,207…ゲートメタル
108,208,308…ゲート・アモルファスシリコン
109,209,309…第1のシリコン窒化膜
110,210,310…第2のシリコン窒化膜
111,211,311…第2のシリコン酸化膜
112,212,312…第3のシリコン窒化膜
113,213,313…第2のレジスト
114,214,314…埋め込みSiGe(eSiGe)層
115,215,315…シリサイド層
116,216…コンタクトエッチストップ膜
117,217…層間絶縁膜
118,218…コンタクトプラグ
119,219…メタル配線
120,220…表面保護膜
225…エクステンション領域
226…ソース・ドレイン領域
221…第1のレジスト
222,322…Si層
223…第3のレジスト
224,324…第4のレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si基板上の一部に形成され、pMOSトランジスタのチャネルとなる第1のSiGe層と、
前記第1のSiGe層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記基板のpMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に埋め込み形成され、且つ前記チャネル側の端部が基板表面よりも深い位置でチャネル側に突出するように形成された第2のSiGe層と、
前記第1のSiGe層と第2のSiGe層とを分離するように、前記基板の表面部で前記第1のSiGe層と第2のSiGe層との間に挿入されたSi層と、
を具備してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記基板の表面は(100)面であり、前記第2のSiGe層の前記チャネル側の界面は(111)面であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項3】
前記Si層は、前記チャネル側の一部にGeを含むものであり、チャネル部近傍ではGe濃度がチャネル部と同程度で、ソース・ドレイン領域に向かってGe濃度がほぼ0となる濃度勾配を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
Si基板のpMOSトランジスタの形成領域上に第1のSiGe層を形成する工程と、
前記第1のSiGe層上の一部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極の側壁面にオフセットスペーサを形成する工程と、
前記ゲート電極及びオフセットスペーサを含むゲート部をマスクに用い、前記第1のSiGe層を選択的にエッチングする工程と、
前記第1のSiGe層をエッチングした領域にSi層を形成する工程と、
前記Si層の形成後に、前記ゲート部の側壁面に側壁絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート部及び側壁絶縁膜をマスクに用い、前記Si基板のソース・ドレインとなる領域を前記Si層と共にエッチングして溝を形成すると共に、該溝の前記チャネル側の端部が基板表面よりも深い位置でチャネル側に食い込むように形成する工程と、
前記溝内に第2のSiGe層を埋め込み形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
Si基板のpMOSトランジスタの形成領域上に第1のSiGe層を形成する工程と、
前記第1のSiGe層上の一部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極の側壁面に側壁絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート電極及び側壁絶縁膜をマスクに用い、前記第1のSiGe層をエッチングすると共に、該SiGe層の前記側壁絶縁膜下の領域の一部をエッチングする工程と、
前記第1のSiGe層をエッチングした領域にSi層を形成する工程と、
前記ゲート電極及び側壁絶縁膜をマスクに用い、前記Si基板のソース・ドレインとなる領域を前記Si層と共にエッチングして溝を形成すると共に、該溝の前記チャネル側の端部が基板表面よりも深い位置でチャネル側に食い込むように形成する工程と、
前記溝内に第2のSiGe層を埋め込み形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−9526(P2011−9526A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152350(P2009−152350)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】