説明

半導体装置

【課題】 半導体チップを折り曲げることにより、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させる。
【解決手段】 <110>方向に沿って凹状に折り曲げられた(100)基板11には、<110>方向に沿って(100)基板11の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタが形成されるとともに、<110>方向に沿って(100)基板11の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタが形成され、Nチャネル電界効果型トランジスタ上には、(100)基板11の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力F1´を印加するゲートキャップ膜15が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に、折り曲げ可能な半導体チップにトランジスタを配置する方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ユビキタス社会では、電子タグや電子ペーパーに代表されるようにウェアラブル電子機器が注目されている。なかでも、表示機能付電子タグやフレキシブルディスプレイなどは、貼り付け面が凹または凸に湾曲しても表示が可能であり、様々の用途が期待されている。
このようなフレキシブル電子機器に半導体チップを搭載する場合、曲げ応力が加わっても半導体チップが破壊されないことが要求される。このような半導体チップは、シリコンウェハ上に集積回路を形成し、シリコンウェハを研磨することで薄膜化してから、シリコンウェハをチップ状にダイシングし、フレキシブル基板上に実装される。このような半導体チップは、半導体チップに印加される応力によってはトランジスタの移動度が劣化することがある。
【0003】
また、例えば、特許文献1には、薄膜化された半導体チップを折り曲げることにより、トランジスタの移動度を向上させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−234455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、半導体チップを単に折り曲げるだけでは、トランジスタの移動度が却って劣化し、トランジスタの移動度が必ずしも向上するとは限らないという問題があった。また、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタでは移動度が向上する条件が異なるため、同一の半導体チップに搭載されたPチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、半導体チップを折り曲げることにより、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることが可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、<110>方向に沿って凹状に折り曲げられた(100)基板と、前記(100)基板上に<110>方向に沿って前記(100)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタと、前記(100)基板上に<110>方向に沿って前記(100)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタと、前記Nチャネル電界効果型トランジスタ上に形成され、前記(100)基板の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力を印加するゲートキャップ膜とを備えることを特徴とする。
【0006】
なお、ここで例えば、(100)基板を<110>方向に沿って折り曲げるとは、(100)結晶面上で存在可能な、等価な<100>方向のうち、いずれかの方向に曲げることをいう。この場合、そのような等価な方向には、[011](または[0−1−1])と、[01−1](または[0−11])の二つがあるが、いずれの方向に曲げてもよい。以下に出てくるこれ以外の、基板と曲げ方向の関係も同様とする。
【0007】
これにより、<110>方向に沿って(100)基板を凹状に折り曲げた場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることを可能としつつ、Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(100)基板に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0008】
また、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、<110>方向に沿って凸状に折り曲げられた(100)基板と、前記(100)基板上に<110>方向に沿って前記(100)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置され、前記(100)基板の折り曲げによる引っ張り応力よりも大きな圧縮応力を印加する歪みソース/ドレイン層を持つPチャネル電界効果型トランジスタと、前記(100)基板上に<110>方向に沿って前記(100)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタとを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、<110>方向に沿って(100)基板を凸状に折り曲げた場合においても、Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることを可能としつつ、Pチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(100)基板に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、<100>方向に沿って凹状に折り曲げられた(110)基板と、前記(110)基板上に<100>方向に沿って前記(110)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタと、前記(110)基板上に<110>方向に沿って前記(110)基板の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタと、前記Pチャネル電界効果型トランジスタ上に形成され、前記(110)基板の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力を印加するゲートキャップ膜とを備えることを特徴とする。
【0011】
これにより、<100>方向に沿って(110)基板を凹状に折り曲げた場合においても、Nチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることを可能としつつ、Pチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(110)基板に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、<110>方向に沿って凹状に折り曲げられた(111)基板と、前記(111)基板上に<110>方向に沿って前記(111)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタと、前記(111)基板上に<110>方向に沿って前記(111)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタと、前記Nチャネル電界効果型トランジスタ上に形成され、前記(111)基板の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力を印加するゲートキャップ膜とを備えることを特徴とする。
【0013】
これにより、<110>方向に沿って(111)基板を凹状に折り曲げた場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることを可能としつつ、Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(111)基板に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、<110>方向に沿って凸状に折り曲げられた(111)基板と、前記(111)基板上に<110>方向に沿って前記(111)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置され、前記(111)基板の折り曲げによる引っ張り応力よりも大きな圧縮応力を印加する歪みソース/ドレイン層を持つPチャネル電界効果型トランジスタと、前記(111)基板上に<110>方向に沿って前記(111)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタとを備えることを特徴とする。
【0015】
これにより、<110>方向に沿って(111)基板を凸状に折り曲げた場合においても、Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることを可能としつつ、Pチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(111)基板に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る半導体装置によれば、引っ張り応力がかかるように凸状に折り曲げられた半導体基板と、前記半導体基板の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタと、前記半導体基板の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタと、前記Pチャネル電界効果型トランジスタおよび前記Nチャネル電界効果型トランジスタ上に形成され、前記Pチャネル電界効果型トランジスタおよび前記Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力を印加するゲートキャップ膜とを備えることを特徴とする。
【0017】
これにより、引っ張り応力がかかるように凸状に半導体基板を折り曲げることにより、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタに2軸方向の引っ張り応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の半導体基板に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図1において、(100)基板11は、<110>方向に沿って凹状に折り曲げられている。ここで、(100)基板11を<110>方向に沿って凹状に折り曲げることにより、<110>方向に沿って圧縮応力F1を(100)基板11にかけることができる。なお、(100)基板11の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどの中から選択することができる。
【0019】
そして、(100)基板11上には、ゲート電極12aが配置されているとともに、(100)基板11には、ゲート電極12aを挟み込むようにP型ドレイン層13aおよびP型ソース層14aが形成され、Pチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(100)基板11上に形成されたPチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(100)基板11の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。
【0020】
また、(100)基板11上には、ゲート電極12bが配置されているとともに、(100)基板11には、ゲート電極12bを挟み込むようにN型ドレイン層13bおよびN型ソース層14bが形成され、Nチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(100)基板11上に形成されたNチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(100)基板11の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。さらに、Nチャネル電界効果型トランジスタ上には、(100)基板11の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力F1´を印加するゲートキャップ膜15が形成されている。なお、ゲートキャップ膜15としては、例えば、シリコン窒化膜を用いることができる。
【0021】
これにより、<110>方向に沿って(100)基板11を凹状に折り曲げた場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることを可能としつつ、Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(100)基板11に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0022】
図2は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図2において、(100)基板21は、<110>方向に沿って凸状に折り曲げられている。ここで、(100)基板21を<110>方向に沿って凸状に折り曲げることにより、<110>方向に沿って引っ張り応力F2を(100)基板21にかけることができる。なお、(100)基板21の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどの中から選択することができる。
【0023】
そして、(100)基板21上には、ゲート電極22aが配置されているとともに、(100)基板21には、ゲート電極22aを挟み込むようにP型ドレイン層23aおよびP型ソース層24aが形成され、Pチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(100)基板21上に形成されたPチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(100)基板21の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。また、P型ドレイン層23aおよびP型ソース層24aは、(100)基板21の折り曲げによる引っ張り応力よりも大きな圧縮応力F2´を印加する歪みドレイン層および歪みソース層からそれぞれ構成することができる。
【0024】
また、(100)基板21上には、ゲート電極22bが配置されているとともに、(100)基板21には、ゲート電極22bを挟み込むようにN型ドレイン層23bおよびN型ソース層24bが形成され、Nチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(100)基板21上に形成されたNチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(100)基板21の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。
【0025】
これにより、<110>方向に沿って(100)基板21を凸状に折り曲げた場合においても、Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることを可能としつつ、Pチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(100)基板21に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0026】
図3は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図3において、(110)基板31は、<100>方向に沿って凹状に折り曲げられている。ここで、(110)基板31を<100>方向に沿って凹状に折り曲げることにより、<100>方向に沿って圧縮応力F3を(110)基板31にかけることができる。なお、(110)基板31の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどの中から選択することができる。
【0027】
そして、(110)基板31上には、ゲート電極32aが配置されているとともに、(110)基板31には、ゲート電極32aを挟み込むようにP型ドレイン層33aおよびP型ソース層34aが形成され、Pチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(110)基板31上に形成されたPチャネル電界効果型トランジスタは、<100>方向に沿って(110)基板31の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。さらに、Nチャネル電界効果型トランジスタ上には、(110)基板31の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力F3´を印加するゲートキャップ膜35が形成されている。
【0028】
また、(110)基板31上には、ゲート電極32bが配置されているとともに、(110)基板31には、ゲート電極32bを挟み込むようにN型ドレイン層33bおよびN型ソース層34bが形成され、Nチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(110)基板31上に形成されたNチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(110)基板31の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されている。
【0029】
これにより、<100>方向に沿って(110)基板31を凹状に折り曲げた場合においても、Nチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることを可能としつつ、Pチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(110)基板31に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0030】
図4は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図4において、(111)基板41は、<110>方向に沿って凹状に折り曲げられている。ここで、(111)基板41を<110>方向に沿って凹状に折り曲げることにより、<110>方向に沿って圧縮応力F4を(111)基板41にかけることができる。なお、(111)基板41の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどの中から選択することができる。
【0031】
そして、(111)基板41上には、ゲート電極42aが配置されているとともに、(111)基板41には、ゲート電極42aを挟み込むようにP型ドレイン層43aおよびP型ソース層44aが形成され、Pチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(111)基板41上に形成されたPチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(111)基板41の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。
【0032】
また、(111)基板41上には、ゲート電極42bが配置されているとともに、(111)基板41には、ゲート電極42bを挟み込むようにN型ドレイン層43bおよびN型ソース層44bが形成され、Nチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(111)基板41上に形成されたNチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(111)基板41の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。さらに、Nチャネル電界効果型トランジスタ上には、(111)基板41の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力F4´を印加するゲートキャップ膜45が形成されている。
【0033】
これにより、<110>方向に沿って(111)基板41を凹状に折り曲げた場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることを可能としつつ、Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(111)基板41に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0034】
図5は、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図5において、(111)基板51は、<110>方向に沿って凸状に折り曲げられている。ここで、(111)基板51を<110>方向に沿って凸状に折り曲げることにより、<110>方向に沿って引っ張り応力F5を(111)基板51にかけることができる。なお、(111)基板51の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどの中から選択することができる。
【0035】
そして、(111)基板51上には、ゲート電極52aが配置されているとともに、(111)基板51には、ゲート電極52aを挟み込むようにP型ドレイン層53aおよびP型ソース層54aが形成され、Pチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(111)基板51上に形成されたPチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(111)基板51の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。また、P型ドレイン層53aおよびP型ソース層54aは、(111)基板51の折り曲げによる引っ張り応力よりも大きな圧縮応力F5´を印加する歪みドレイン層および歪みソース層からそれぞれ構成することができる。
【0036】
また、(111)基板51上には、ゲート電極52bが配置されているとともに、(111)基板51には、ゲート電極52bを挟み込むようにN型ドレイン層53bおよびN型ソース層54bが形成され、Nチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、(111)基板51上に形成されたNチャネル電界効果型トランジスタは、<110>方向に沿って(111)基板51の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されている。
【0037】
これにより、<110>方向に沿って(111)基板51を凸状に折り曲げた場合においても、Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力をかけることを可能としつつ、Pチャネル電界効果型トランジスタに圧縮応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の(111)基板51に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
【0038】
図6は、本発明の第6実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図6において、半導体基板61は、引っ張り応力F6がかかるように凸状に折り曲げられている。なお、半導体基板61の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaNまたはZnSeなどの中から選択することができる。
【0039】
そして、半導体基板61上には、ゲート電極62aが配置されているとともに、半導体基板61には、ゲート電極62aを挟み込むようにP型ドレイン層63aおよびP型ソース層64aが形成され、Pチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、半導体基板61上に形成されたPチャネル電界効果型トランジスタは、半導体基板61の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されている。さらに、Pチャネル電界効果型トランジスタ上には、引っ張り応力F6´を印加するゲートキャップ膜65aが形成されている。
【0040】
また、半導体基板61上には、ゲート電極62bが配置されているとともに、半導体基板61には、ゲート電極62bを挟み込むようにN型ドレイン層63bおよびN型ソース層64bが形成され、Nチャネル電界効果型トランジスタが構成されている。ここで、半導体基板61上に形成されたPチャネル電界効果型トランジスタは、半導体基板61の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されている。さらに、Pチャネル電界効果型トランジスタ上には、引っ張り応力F6´´を印加するゲートキャップ膜65bが形成されている。
【0041】
これにより、引っ張り応力がかかるように凸状に半導体基板61を折り曲げることにより、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタに2軸方向の引っ張り応力をかけることができる。このため、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタとを同一の半導体基板61に形成した場合においても、Pチャネル電界効果型トランジスタとNチャネル電界効果型トランジスタの移動度を同時に向上させることができ、半導体チップに形成されたCMOS回路の動作を高速化することができる。
なお、上述した折り曲げられた半導体チップは、例えば、ウェラブルモジュールなどに利用することができ、電子タグや電子ペーパーやフレキシブルディスプレイなどに用いることができる。そして、ボトルや缶などに電子タグを貼り付けたり、腕時計のベルトに表示装置を形成したり、円柱状の表示体を実現したりすることができる。
【0042】
図7は、本発明の一実施形態に係る引っ張り応力が印加されたトランジスタの概略構成を示す断面図である。
図7において、半導体基板101上には、ゲート絶縁膜102を介してゲート電極103が形成され、ゲート電極103の側壁にはサイドウォール104が形成されている。そして、半導体基板101には、ゲート電極103の両側にそれぞれ配置されたLDD層を介してソース層105aおよびドレイン層105bがそれぞれ形成されている。そして、半導体基板101上には、ゲート電極103を覆うように配置されたゲートキャップ膜106が形成されている。なお、ゲートキャップ膜106としては、例えば、シリコン窒化膜を用いることができる。
これにより、ゲート電極103下のチャネルに沿って引っ張り応力をかけることができ、半導体基板101を折り曲げた場合においても、半導体基板101の面方位および折り曲げ方向ならびにチャネルの方向を特定することで、トランジスタの移動度を向上させることができる。
【0043】
図8は、本発明の一実施形態に係る圧縮応力が印加されたトランジスタの概略構成を示す断面図である。
図8において、半導体基板111上には、ゲート絶縁膜112を介してゲート電極113が形成され、ゲート電極113の側壁にはサイドウォール114が形成されている。そして、半導体基板111には、ゲート電極113の両側にそれぞれ配置されたLDD層を介してソース層115aおよびドレイン層115bがそれぞれ埋め込まれている。なお、ソース層115aおよびドレイン層115bは、半導体基板111とは異なる材質を用いることができ、例えば、半導体基板111がSiの場合、ソース層115aおよびドレイン層115bとして、SiGeを用いることができる。
これにより、ゲート電極113下のチャネルに沿って圧縮応力をかけることができ、半導体基板111を折り曲げた場合においても、半導体基板111の面方位および折り曲げ方向ならびにチャネルの方向を特定することで、トランジスタの移動度を向上させることができる。
【0044】
図9は、本発明の一実施形態に係る圧縮応力が印加されたトランジスタの製造方法を示す断面図である。
図9(a)において、LOCOS(Local Oxdation of Silicon)法またはSTI(Shallow Trench Isolation)法などの方法により、素子分離絶縁膜127を半導体基板121に形成する。そして、半導体基板121の表面の熱酸化を行うことにより、半導体基板121の表面にゲート絶縁膜122を形成する。そして、ゲート絶縁膜122を形成した後、CVDなどの方法により半導体基板121上に多結晶シリコン層を形成する。そして、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて多結晶シリコン層をパターニングすることにより、半導体基板121上にゲート電極123を形成する。
【0045】
次に、ゲート電極123をマスクとして、As、P、Bなどの不純物を半導体基板121内にイオン注入することにより、ゲート電極123の両側にそれぞれ配置された低濃度不純物導入層からなるLDD層を半導体基板121に形成する。そして、CVDなどの方法により、LDD層が形成された半導体基板121上に絶縁層を形成し、RIEなどの異方性エッチングを用いて絶縁層をエッチバックすることにより、ゲート電極123の側壁にサイドウォール124を形成する。
【0046】
次に、図9(b)に示すように、ウェットエッチングなどの方法にてサイドウォール124の側方にそれぞれ配置された半導体基板121を除去することにより、ゲート電極123の側方に配置された凹部128a、128bを半導体基板121に形成する。
次に、図9(c)に示すように、選択エピタキシャル成長を行うことにより、半導体基板121と材質の異なる半導体層を凹部128a、128b内に埋め込む。そして、凹部128a、128b内に埋め込まれた半導体基板121と材質の異なる半導体層に、ゲート電極123およびサイドウォール124をマスクとして、As、P、Bなどの不純物を半導体基板121内にイオン注入することにより、ゲート電極123の側方に配置されたソース層129aおよびドレイン層129bを形成する。なお、例えば、半導体基板121がSiの場合、ソース層129aおよびドレイン層129bとしてSiGeを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す斜視図。
【図3】本発明の第3実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す斜視図。
【図4】本発明の第4実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す斜視図。
【図5】本発明の第5実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す斜視図。
【図6】本発明の第6実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す斜視図。
【図7】引っ張り応力が印加されたトランジスタの概略構成を示す断面図。
【図8】圧縮応力が印加されたトランジスタの概略構成を示す断面図。
【図9】圧縮応力が印加されたトランジスタの製造方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0048】
11、21、31、41、51、61 基板、12a、12b、22a、22b、32a、32b、42a、42b、52a、52b、62a、62b、103、113、123 ゲート電極、13a、13b、23a、23b、33a、33b、43a、43b、53a、53b、63a、63b、105b、115b、129b ドレイン層、14a、14b、24a、24b、34a、34b、44a、44b、54a、54b、64a、64b、105a、115a、129a ソース層、15、35、45、65a、65b、106 ゲートキャップ膜、101、111、121 半導体基板、102、112、122 ゲート絶縁膜、104、114、124 サイドウォール、125a、125b LDD層、126a、126b 高濃度不純物導入層、127 素子分離絶縁膜、128a、128b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
<110>方向に沿って凹状に折り曲げられた(100)基板と、
前記(100)基板上に<110>方向に沿って前記(100)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタと、
前記(100)基板上に<110>方向に沿って前記(100)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタと、
前記Nチャネル電界効果型トランジスタ上に形成され、前記(100)基板の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力を印加するゲートキャップ膜とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
<110>方向に沿って凸状に折り曲げられた(100)基板と、
前記(100)基板上に<110>方向に沿って前記(100)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置され、前記(100)基板の折り曲げによる引っ張り応力よりも大きな圧縮応力を印加する歪みソース/ドレイン層を持つPチャネル電界効果型トランジスタと、
前記(100)基板上に<110>方向に沿って前記(100)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタとを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
<100>方向に沿って凹状に折り曲げられた(110)基板と、
前記(110)基板上に<100>方向に沿って前記(110)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタと、
前記(110)基板上に<110>方向に沿って前記(110)基板の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタと、
前記Pチャネル電界効果型トランジスタ上に形成され、前記(110)基板の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力を印加するゲートキャップ膜とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
<110>方向に沿って凹状に折り曲げられた(111)基板と、
前記(111)基板上に<110>方向に沿って前記(111)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタと、
前記(111)基板上に<110>方向に沿って前記(111)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタと、
前記Nチャネル電界効果型トランジスタ上に形成され、前記(111)基板の折り曲げによる圧縮応力よりも大きな引っ張り応力を印加するゲートキャップ膜とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
<110>方向に沿って凸状に折り曲げられた(111)基板と、
前記(111)基板上に<110>方向に沿って前記(111)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置され、前記(111)基板の折り曲げによる引っ張り応力よりも大きな圧縮応力を印加する歪みソース/ドレイン層を持つPチャネル電界効果型トランジスタと、
前記(111)基板上に<110>方向に沿って前記(111)基板の折り曲げ方向と平行にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタとを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
引っ張り応力がかかるように凸状に折り曲げられた半導体基板と、
前記半導体基板の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されたPチャネル電界効果型トランジスタと、
前記半導体基板の折り曲げ方向と直角にチャネルが配置されたNチャネル電界効果型トランジスタと、
前記Pチャネル電界効果型トランジスタおよび前記Nチャネル電界効果型トランジスタ上に形成され、前記Pチャネル電界効果型トランジスタおよび前記Nチャネル電界効果型トランジスタに引っ張り応力を印加するゲートキャップ膜とを備えることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−73800(P2007−73800A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260317(P2005−260317)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】