説明

半導体装置

【課題】チャネル幅が狭い場合においても、eWFが十分に低減された閾値電圧が低い半導体装置を実現できようにする。
【解決手段】半導体装置は、素子分離領域102により分離された活性領域103を有する半導体基板101と、活性領域103の上に形成されたゲート絶縁膜111と、ゲート絶縁膜111の上に形成されたゲート電極121とを備えている。ゲート絶縁膜111は、シリコン及び酸素を除く第1の元素が拡散している。素子分離領域102は、第1の素子分離膜102Aと、第1の素子分離膜102Aよりもゲート絶縁膜111側に形成され且つ第1の素子分離膜102Aと比べて第1の元素が拡散しにくい第2の素子分離膜102Bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に高誘電体膜からなるゲート絶縁膜を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置に関して、低消費電力化と動作の高速化とが要求されている。半導体装置の高速化を実現するために、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)のゲート容量を増加させることで駆動電流を増加させる方法が採用されている。ゲート容量を増加させるためには、ゲート絶縁膜を薄膜化して電極間(基板とゲート電極間)の距離を短くする必要がある。この要求に応えるため、現在、MISFETのゲート絶縁膜の物理膜厚は、SiON(シリコン酸窒化物)を用いた場合、2nm程度にまで薄膜化されている。しかし、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴い、ゲートリークの増大が大きな問題となってきている。ゲート絶縁膜を薄膜化しつつゲートリークを抑えるために、シリコン酸化物(SiO2)系の材料に代えて、Hfを含む酸化物等の誘電率が高い高誘電体材料をゲート絶縁膜として使用することが検討されている。
【0003】
また、ゲート絶縁膜の薄膜化に伴い、これまで用いられてきた多結晶シリコンからなるゲート電極では、ゲート電極が空乏化してゲート容量が逆に低下するという問題も生じている。ゲート電極の空乏化によるゲート容量の低下量は、例えばSiO2からなるゲート絶縁膜の膜厚に換算すると、膜厚を約0.5nm分増加させることに相当する。ゲート電極の空乏化を抑えることができれば、ゲートリークを増大させることなく、ゲート絶縁膜の実効的な膜厚を薄くすることができる。ゲート絶縁膜がSiO2の場合、膜厚を0.1nm薄くすると、薄膜化する前と比べて10倍以上リーク電流が増大する。このため、ゲート電極の空乏化を抑制することにより実効的なゲート絶縁膜の膜厚を薄くすることの効果は非常に大きい。
【0004】
ゲート電極の空乏化を回避するため、ゲート電極の材料を多結晶シリコンから空乏化の生じない金属に置き換える検討が行われている。しかし、多結晶シリコンでは、不純物の注入により不純物準位を形成することが可能であり、p−MISFET用電極とn−MISFET用電極を作り分けることができる。一方、金属を用いた場合には不純物注入による作り分けを行うことができない。このため、p側領域の仕事関数(WF)値とn側領域のWF値とのほぼ中央に相当するWF値を有する金属をp−MISFET用電極及びn−MISFET用電極に共通の材料として用いることにより、p−MISFETとn−MISFETとが互いに同じVtを持つように設計している。
【0005】
近年では、より高速な動作が要求されるため、低閾値電圧化が不可欠であり、p−MISFET用電極及びn−MISFET用電極の各々が、シリコンのバンドエッジに近いWF値を有することが必要となってきている。なお、ここでいうバンドエッジとは、p側領域はシリコンの価電子帯の上部(トップエッジ)のWF値(約5.2eV)に近い高WFを意味し、n側領域はシリコンの伝導帯の底部(ボトムエッジ)のWF値(約4.1eV)に近い低WFを意味している。このため、p側領域のWF値とn側領域のWF値とのほぼ中央に相当するWF値を有する金属をp−MISFET及びn−MISFETの電極材料とした半導体装置は実用的でなくなってきている。
【0006】
現在、p−MISFET及びn−MISFETのゲート電極として使用できる金属材料の探索が盛んに行われている。しかし、常温で適切なWF値を示す材料であっても、ソースドレインの活性化等の高温処理を経るとWF値が変動するということが明らかになってきている。最近では、高誘電体膜とゲート電極との間に有効仕事関数(eWF)を制御するためのキャップ材料を堆積し、ゲート絶縁膜中及び高誘電体膜と金属との界面にダイポールを形成することによりeWFを制御する検討が行われている(例えば、非特許文献1を参照。)。酸化ランタン(LaO)はeWFを低減させる効果が知られており、n−MISFETのゲート電極を形成するためのキャップ材料として期待されている(例えば、非特許文献2を参照。)。
【非特許文献1】S. Kubicek et al, "IEDM Tech Dig.", 2007年, p.49
【非特許文献2】P.D.Kirsch, "IEDM", 2006年, p.629
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、チャネル幅が0.4μmを切るような微細な半導体装置においては、eWFを低減するキャップ材料を用いてn−MISFETのゲート電極を形成しても閾値(Vt)が低減できないという問題を本願発明者は見出した。
【0008】
本発明は、前記の問題を解決し、チャネル幅が狭い場合においても、eWFが十分に低減された閾値電圧が低い半導体装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は半導体装置を、キャップ材料が拡散しにくい素子分離領域を備えた構成とする。
【0010】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、素子分離領域により分離された活性領域を有する半導体基板と、活性領域の上に形成され、キャップ材料である第1の元素が拡散したゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極とを備え、素子分離領域は、第1の素子分離膜と、該第1の素子分離膜よりもゲート絶縁膜側に形成され且つ第1の素子分離膜と比べて第1の元素が拡散しにくい第2の素子分離膜とを有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置は、素子分離領域が、第1の素子分離膜と、該第1の素子分離膜よりもゲート絶縁膜側に形成され且つ第1の素子分離膜と比べて第1の元素が拡散しにくい第2の素子分離膜とを有している。このため、ゲート絶縁膜中のキャップ材料が下地膜まで拡散したとしても、下地膜から素子分離領域への拡散が生じにくい。このため、ゲート絶縁膜は十分なキャップ材料を保持することができる。また、ゲート絶縁膜をキャップ材料の拡散が生じにくい材料とした場合と異なり、ゲート絶縁膜中におけるキャップ材料の拡散は影響を受けず、ゲート絶縁膜と下地膜との界面近傍までキャップ材料が拡散する。従って、チャネル幅が狭い場合においても、eWFが十分に低減された閾値電圧が低い半導体装置を実現できる。
【0012】
本発明の半導体装置において、素子分離領域は、半導体基板に形成された凹部を埋めるように形成され、第2の素子分離膜は、第1の素子分離膜と半導体基板との間に形成されていてもよい。また、素子分離領域は、半導体基板に形成された凹部を埋めるように形成され、第1の素子分離膜は、凹部の下部に形成され、第2の素子分離膜は、第1の素子分離膜の上に形成されていてもよい。
【0013】
本発明の半導体装置において、第2の素子分離膜は、第1の元素を含む材料からなる構成としてもよい。この場合において、第1の元素は、ランタン、ジスプロシウム、スカンシウム又はマグネシウムとすればよい。
【0014】
本発明の半導体装置において、第2の素子分離膜は、第2の元素を含む材料からなる構成としてもよい。この場合において、第1の元素は、ランタン、ジスプロシウム、スカンシウム又はマグネシウムであり、第2の元素は、窒素とすればよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る半導体装置によれば、チャネル幅が狭い場合においても、eWFが十分に低減された閾値電圧が低い半導体装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、チャネル幅が狭い場合に、ランタン等のキャップ材料を適用しても閾値電圧(Vt)を低減できない現象について説明する。図1はランタン(La)を含むキャップ材料をゲート絶縁膜中に拡散させたn−MISFETについてチャネル幅とVtとの関係を示している。図1においてゲート絶縁膜は窒素を含むハフニウムシリケート(HfSiON)であり、ゲート電極は窒化チタン(TiN)である。図1に示すように、チャネル幅が狭くなるに従い、Vtが上昇している。チャネル幅が0.42μmから0.1μmとなるとVtの値は約0.3V上昇している。また、図1から明らかなように、この現象はチャネル長の影響を受けない。
【0017】
チャネル幅が狭くなると、Vtが急激に上昇する理由は、以下のように推定される。ハフニウム(Hf)等を含む高誘電体膜からなるゲート絶縁膜の上に酸化ランタン(LaO)からなるキャップ膜を堆積しアニールを行うと、Laがゲート絶縁膜中に拡散する。Laをゲート絶縁膜中に十分拡散させることによりゲート電極の有効仕事関数(eWF)を低減することができる。
【0018】
ゲート絶縁膜とシリコン基板との界面にはSiO2からなる界面(IL)膜が存在する。Laはゲート絶縁膜を抜けてIL膜の近傍まで拡散する。IL膜の膜厚は通常1nm程度である。このため、チャネル幅が広い場合には、Laがゲート絶縁膜からIL膜中に拡散したとしてもゲート絶縁膜中には十分なLaが存在し、eWFを低減することができる。しかし、IL膜は素子分離領域とも接している。素子分離領域は、IL膜と比べると無限大に近いサイズを有するSiO2膜である。このため、チャネル幅が狭くなると、IL膜を介して素子分離領域へLaが際限なく拡散してしまい、ゲート絶縁膜中にはLaがほとんど残らなくなる。このため、チャネル幅が狭くなるとVtが上昇すると考えられる。
【0019】
以上のことから、Vtの上昇を抑えるためには、ゲート絶縁膜から素子分離領域へのLaの拡散を抑えることが有効であると考えられる。素子分離領域へのLaの拡散を抑える方法として、ゲート絶縁膜にLaが拡散しにくい材料を用いることが考えられる。例えば、HfSiON膜の場合Hfの組成を高くすることにより、Laを拡散しにくくすることができる。しかし、Vtを低くするためには、ゲート絶縁膜のIL膜との界面近傍までLaを拡散させる必要がある。このため、ゲート絶縁膜自体をLaが拡散しにくい膜とするとゲート絶縁膜中においてLaの拡散が不十分となり、Vtを低くすることができなくなるおそれがある。本願発明者らは、素子分離領域をLaが拡散しにくい構造とすることにより、ゲート絶縁膜中におけるLaの拡散に影響を与えることなく、ゲート絶縁膜から素子分離領域へのLaの拡散を抑制できることを見出した。以下に、実施形態としてさらに詳細に説明する。
【0020】
(一実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図2は本実施形態の半導体装置の断面構成を示している。本実施形態の半導体装置は、n型の金属−絶縁膜−半導体電界効果トランジスタ(MISFET)である。図2に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板101に素子分離領域102により分離されたp型の活性領域103が形成されている。活性領域103の上には、シリコン酸化膜(SiO2膜)等からなる下地(IL)膜113が形成されており、IL膜113の上にはゲート絶縁膜111とゲート電極121が順次形成されている。ゲート電極121の側壁上にはサイドウォール131が形成されている。活性領域103のゲート電極121の側方にはn型のエクステンション領域105が形成され、エクステンション領域105の外側方にはn型のソースドレイン領域107が形成されている。本実施形態のゲート絶縁膜111には、キャップ材料である第1の元素が拡散している。第1の元素は、ゲート電極121のeWFを低減する効果を有する元素であり、シリコン及び酸素等とは異なる元素である。具体的に、本実施形態においては、ゲート絶縁膜111はLaが拡散したHfSiON膜であり、ゲート電極121は、窒化チタン(TiN)等からなる第1の電極膜123と、ポリシリコンからなる第2の電極膜125との積層体である。
【0021】
本実施形態の半導体装置は、素子分離領域102が、半導体基板101に形成されたトレンチ(凹部)に埋め込まれた第1の素子分離膜102Aと、第1の素子分離膜102Aと半導体基板101との界面に形成された第2の素子分離膜102Bとを有している。第1の素子分離膜102Aは通常のシャロートレンチアイソレーション(STI)に用いられるSiO2等からなる絶縁膜であり、第2の素子分離膜102Bはゲート絶縁膜111中に拡散しているキャップ材料と同じ元素を含む材料からなる絶縁膜である。本実施形態においては、第2の素子分離膜102BはLaO膜である。このように、素子分離領域102をSiO2膜とLaO膜との2層構造とすることにより、ゲート絶縁膜111と素子分離領域102とが近接する領域において、Laの濃度勾配を小さくすることができる。従って、ゲート絶縁膜111に含まれるLaが、IL膜113を経て素子分離領域102へ拡散することを抑制できる。その結果、チャネル幅が狭い場合におけるVtの上昇を抑えることができる。また、ゲート絶縁膜自体をLaが拡散しにくい材料とした場合と異なり、ゲート絶縁膜111中におけるLaの拡散にはほとんど影響が生じない。従って、ゲート絶縁膜111中においては、IL膜113との界面近傍にまでLaを拡散させることができ、所望のeWF低減効果を容易に得ることができる。
【0022】
なお、キャップ材料である第1の元素は、電極のeWFを低下させる効果を有する元素であればどのようなものでもよく、例えばLaに代えて、ジスプロシウム(Dy)、スカンシウム(Sc)又はマグネシウム(Mg)等とすることができる。
【0023】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について図3〜図6を用いて説明する。
【0024】
まず、図3(a)に示すように半導体基板101に素子分離領域を形成するためのトレンチ(凹部)を形成する。次に、図3(b)に示すように絶縁膜141を半導体基板101上の全面に堆積する。この後、図3(c)に示すように、SiO2膜を半導体基板101上の全面に堆積した後、ケミカルメカニカルポリッシュ(CMP)処理等を行うことにより、第1の素子分離膜102Aと第2の素子分離膜102Bとを有する素子分離領域102を形成する。絶縁膜141は、ゲート絶縁膜に拡散させるキャップ材料である第1の元素を含む絶縁膜とすればよい。本実施形態においては、絶縁膜141はLaO膜とする。
【0025】
次に、図3(d)に示すようにウェル注入を行いp型の活性領域103を形成する。次に、図4(a)に示すように半導体基板101の上に、SiO2からなる厚さが1nm程度のIL膜113を形成する。IL膜113は、例えば、酸素ガスを用いた急速熱酸化(RTO:Rapid Thermal Oxidation)処理により形成すればよい。なお、酸素ガス以外の他のガス種を用いてもよい。また、加熱炉を用いて熱処理を行ってもよい。IL膜113は、酸窒化シリコン(SiON)膜又はケミカルオキサイド膜等としてもよい。
【0026】
次に、図4(b)に示すように、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて、半導体基板101上の全面にHfSiO膜を堆積する。HfSiO膜は有機金属気相堆積(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法及び物理気相堆積(PVD:Physical Vapor Deposition)法等の他の成膜手法を用いて形成してもよい。この後、HfSiO膜をプラズマ窒化することにより、HfSiONからなるゲート絶縁膜形成膜111Aを形成する。HfSiO膜の窒化は、アンモニア(NH3)雰囲気におけるアニール等を用いて行ってもよい。また、デバイスに要求される誘電率及び実効酸化膜換算膜厚(EOT)によっては窒化処理を行わず、ゲート絶縁膜形成膜111AをHfSiO膜としてもよい。ゲート絶縁膜形成膜111Aは、HfSiON膜に代えて他の高誘電体膜としてもよく、例えばHfO2膜又はジルコニウムを含む膜としてもよい。
【0027】
次に、図4(c)に示すように、ゲート絶縁膜形成膜111Aの上にキャップ材料である第1の元素を含むキャップ膜143を堆積する。本実施形態ではキャップ膜143は、厚さが1nmのLaO膜とする。キャップ膜143はPVD法、ALD法又は他の成膜方法により形成すればよい。キャップ膜143の膜厚は、必要とするeWFの値に応じて決定すればよい、一般に、キャップ膜を厚くすることによりeWFが低くなり、薄くすることによりeWFが高くなる。また、キャップ膜143は電極のeWFを低下させる効果を有する元素を含む絶縁膜であればどのような材料であってもよく、DyO等のLaO以外のランタノイド系元素の酸化物又はScO若しくはMgO等により形成してもよい。この場合には、第2の素子分離膜102Bの組成もキャップ膜143の組成に合わせて変更すればよい。
【0028】
次に、図4(d)に示すように、アニール処理を行い、キャップ膜143中のLaをゲート絶縁膜形成膜111A中に拡散させることにより、第1の元素であるLaを含むゲート絶縁膜111を形成する。アニール処理は例えば、600℃で10分間行えばよい。アニール時間及び温度は、必要とするeWF及びゲート絶縁膜111の膜厚に応じて適宜変更すればよい。また、後処理の熱工程によってはアニール処理を省略することも可能である。次に、アニール処理において、ゲート絶縁膜111中に拡散しなかった余剰のキャップ膜143を除去する。キャップ膜143の除去は、1:1000に希釈したdHCl(原液37質量%)を用いて10秒間洗浄すればよい。希釈率及び洗浄時間は、キャップ膜143の膜厚及びアニール温度等に応じて適宜変更すればよい。また他の除去液を使用してもよい。必要とするeWFシフト量が大きい場合等においてはアニール処理及び除去処理は不要である。キャップ膜143の除去を行わなかった場合には、ゲート絶縁膜111と第1の電極膜123との間にキャップ膜143が明確に残存する場合もあり得るが、特に問題はない。
【0029】
次に、図5(a)に示すように、第1の電極膜123及び第2の電極膜125を堆積させる。第1の電極膜123は、キャップ材料との組み合わせにより適切なeWFが得られる材料であれば、どのようなものであってもよい。キャップ膜143をLaO膜とした場合には例えばTiNとすればよい。また窒化タンタル(TaN)等を用いることもできる第2の電極膜125はポリシリコン膜とし、ポリシリコン膜を堆積した後に不純物注入を行えばよい。ポリシリコン膜に代えてドープドポリシリコンを堆積した場合には、不純物注入工程を省略できる。第2の電極膜125をポリシリコンとすることにより、メタル挿入ポリシリコン積層構造(MIPS:Metal-inserted Poly-silicon Stack)が実現できる。しかし、第2の電極膜125を金属膜としてフルメタルゲート電極としてもよい。また、第2の電極膜125は省略してもよい。
【0030】
次に、図5(b)に示すように、リソグラフィー及び反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法を用いて、IL膜113、ゲート絶縁膜111、第1の電極膜123及び第2の電極膜125を選択的にエッチングする。これにより、半導体基板101の上にIL膜113及びゲート絶縁膜111を介在させてゲート電極121が形成される。
【0031】
次に、図5(c)に示すように、n型のエクステンション領域105の形成、サイドウォール131の形成、n型のソースドレイン領域107の形成及び不純物の活性化等を行う。さらに、必要に応じてポリシリコン膜及びソースドレイン領域等のシリサイド化を行ってもよい。
【0032】
図1では、第1の素子分離膜102Aと第2の素子分離膜102Bとの境界を明確に示している。しかし、工程中の熱処理条件等によっては、境界が不明確となっている場合もある。この場合においても、素子分離領域102のゲート絶縁膜と近接する領域において、第1の元素の濃度が他の領域よりも高くなっていればよい。具体的には、素子分離領域102の活性領域103との界面において中心部よりも第1の元素の濃度が高くなっていればよい。
【0033】
また、図6に示すように第1の素子分離膜102Aの上に第2の素子分離膜102Bを形成する構成としてもよい。この場合においても、素子分離領域102のゲート絶縁膜111と近接する領域において、第1の元素の濃度が他の領域よりも高くなる。従って、ゲート絶縁膜から素子分離領域102への第1の元素の拡散を抑えることができる。この場合には、素子分離領域102の上部における第1の元素の濃度が、下部よりも高くなっていればよい。
【0034】
第1の素子分離膜102Aと第2の素子分離膜102Bとが積層された素子分離領域102は、以下のようにして形成すればよい。まず、図7(a)に示すように半導体基板101にトレンチを形成する。次に、図7(b)に示すように、半導体基板上の全面にSiO2膜を形成した後、ウェットエッチ処理等を行うことにより、トレンチの下部に第1の素子分離膜102Aを形成する。次に、図7(c)に示すように半導体基板上の全面にSiN膜を形成した後、CMP処理等を行うことによりトレンチの上部に第2の素子分離膜102Bを形成する。素子分離領域102を形成した後は、先に述べたようにしてMISFETを形成すればよい。
【0035】
本実施形態においては、素子分離領域102をSiO2等の絶縁膜からなる第1の素子分離膜102Aと、キャップ材料と同じ第1の元素を含む第2の素子分離膜102Bとにより形成した。しかし、第2の素子分離膜102Bはキャップ材料である第1の元素の拡散を抑制する機能を有する膜であればよく、第1の元素の拡散を抑える第2の元素を含む膜を第2の素子分離膜としてもよい。具体的には、SiN膜はSiO2膜と比べてLa等が拡散しにくい。従って、第2の素子分離膜102BをSiN膜等の窒素を含む膜とすることにより、ゲート絶縁膜111からのLaの拡散が生じにくい素子分離領域102を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る半導体装置は、チャネル幅が狭い場合においても、eWFが十分に低減された閾値電圧が低い半導体装置を実現でき、特に微細化された半導体装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明が解決しようとする問題を説明するためのチャネル幅と閾値電圧との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を工程順に示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
101 半導体基板
102 素子分離領域
102A 第1の素子分離膜
102B 第2の素子分離膜
103 活性領域
105 エクステンション領域
107 ソースドレイン領域
111 ゲート絶縁膜
111A ゲート絶縁膜形成膜
113 下地膜
121 ゲート電極
123 第1の電極膜
125 第2の電極膜
131 サイドウォール
143 キャップ膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子分離領域により分離された活性領域を有する半導体基板と、
前記活性領域の上に形成され、キャップ材料である第1の元素が拡散したゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に形成されたゲート電極とを備え、
前記素子分離領域は、第1の素子分離膜と、該第1の素子分離膜よりも前記ゲート絶縁膜側に形成され且つ前記第1の素子分離膜と比べて前記第1の元素が拡散しにくい第2の素子分離膜とを有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記素子分離領域は、前記半導体基板に形成された凹部を埋めるように形成され、
前記第2の素子分離膜は、前記第1の素子分離膜と前記半導体基板との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記素子分離領域は、前記半導体基板に形成された凹部を埋めるように形成され、
前記第1の素子分離膜は、前記凹部の下部に形成され、
前記第2の素子分離膜は、前記第1の素子分離膜の上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の素子分離膜は、前記第1の元素を含む材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の元素は、ランタン、ジスプロシウム、スカンシウム又はマグネシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の素子分離膜は、第2の元素を含む材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の元素は、ランタン、ジスプロシウム、スカンシウム又はマグネシウムであり、
前記第2の元素は、窒素であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−205917(P2010−205917A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49610(P2009−49610)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】