説明

半導体装置

【課題】RCATの電流駆動能力を向上させることが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板11は、ゲート溝13を有している。拡散層12は、ゲート溝13の上部に対応する半導体基板11の表面領域に形成されている。ゲート絶縁膜14は、ゲート溝の壁面に形成されている。ゲート電極15は、ゲート溝13の内部及びゲート溝13の外部に形成されている。圧縮応力を有する膜16は、ゲート溝13の外部のゲート電極15の全面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、RCAT(Recessed Channel Array Transistor)構造を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のセルトランジスタにはRCATと呼ばれるトランジスタが使われている。このトランジスタは、通常のプレーナ型トランジスタに比べてオフリーク電流を抑えることができるというメリットを有している。しかし、MRAM(Magnetic RAM)のセルトランジスタの場合、駆動電流も必要であるため、DRAMに用いられているRCATと同じRCATを用いてMRAMを実現することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−81396号公報
【特許文献2】特開2008−300843号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C.-H. Ge et al, “Process-Strained Si (PSS) CMOS Technology Featuring 3D Strain Engineering”, Electron Devices Meeting, 2003, pp 3.7.1 - 3.7.4
【非特許文献2】T. Ghani et al, “A 90nm High Volume Manufacturing Logic Technology Featuring Novel 45nm Gate Length Strained Silicon CMOS Transistors”, Electron Devices Meeting, 2003, pp 11.6.1 - 11.6.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、RCATの電流駆動能力を向上させることが可能な半導体装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置によれば、ゲート溝を有する半導体基板と、前記ゲート溝の上部に対応する前記半導体基板の表面領域に形成された拡散層と、前記ゲート溝の壁面に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート溝の内部及びゲート溝の外部に形成されたゲート電極と、前記ゲート溝の外部のゲート電極の全面に形成され、前記ゲート電極に対して圧縮応力を有する膜とを具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態の半導体装置を示す平面図。
【図2】第1の実施形態に係り、図1のII−II線に沿った断面図。
【図3】第2の実施形態を示す断面図。
【図4】第3の実施形態を示す断面図。
【図5】第4の実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
電子移動度は、シリコンの面方位によらず、電子の進行方向に対し引っ張り応力を加えることで向上することが知られている(非特許文献1参照)。また、プレーナトランジスタにおいて、引っ張り応力を有するシリコン窒化膜をトランジスタ上に形成することにより、チャネルに引っ張り応力を加え駆動電流が上昇することが知られている(非特許文献2参照)。
【0010】
シリコン窒化膜は、堆積条件により引っ張り応力又は圧縮応力のいずれかを持つことができる。第1の実施形態では、シリコン窒化膜の圧縮応力を利用する。すなわち、第1の実施形態は、圧縮応力を有する絶縁膜としてのシリコン窒化膜によってRCATのゲート電極を覆うことにより、ゲート電極に圧縮応力を加え、リセスドチャネル領域に引っ張り応力を加えることを特徴とする。
【0011】
図1、図2は、第1の実施形態を示すものであり、nチャネルRCATの例を示している。図1、図2において、半導体基板、例えばp型のシリコン基板11の表面領域には、例えばn型のソース、ドレイン領域としての複数の拡散層12が形成されている。隣接する拡散層12の相互間には、図1に示すように、素子分離領域18が形成されている。この素子分離領域18は、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)である。
【0012】
半導体基板11内には、複数のリセスとしてのゲート溝13が形成されている。ゲート溝13の底部は、拡散層12の底部より下方に位置されている。ゲート溝13の底部及び側壁には、ゲート絶縁膜、例えばシリコン酸化膜14が形成されている。
【0013】
RCATのゲート電極15は、ゲート溝13の内部、及び外部に形成されている。ゲート溝13から突出し、半導体基板11の上方に位置するゲート電極15は、ワード線WLの一部を構成する。ゲート電極15は、例えばポリシリコンにより形成されている。チャネル領域CHは、ゲート電極15下方のソース/ドレイン拡散層12の間に位置する半導体基板1内に形成される。
【0014】
半導体基板11の全面には、圧縮応力を発生する絶縁膜、例えばシリコン窒化膜16が形成されている。このシリコン窒化膜16は、ゲート電極15(ワード線WL)の両側面及び上面を覆っている。このシリコン窒化膜16は、圧縮応力を有するため、半導体基板11の上方に位置するゲート電極15の上面及び両側面がシリコン窒化膜16により圧縮される。この圧縮応力により、ゲート溝13内のゲート電極15は、ゲート溝13の底部及び側壁を内部から外側に押圧する押圧力が生じる。したがって、ゲート電極15の下部が膨張するため、チャネル領域CHに対して伸張応力が作用する。nチャネルMOSトランジスタの場合、チャネル領域CHに対して伸張応力が作用することにより、シリコンの面方位によらずに電子の移動度が向上する。このため、駆動電流を増加することが可能である。
【0015】
上記第1の実施形態によれば、RCATのゲート電極15の側壁及び上部に圧縮応力を有するシリコン窒化膜16を形成し、このシリコン窒化膜16によりゲート電極15に圧縮応力を発生させ、ゲート電極15をゲート溝13内に押し込んでいる。このため、ゲート溝13の底部及び側部にはゲート電極15により外側方向の押圧力が加わるため、RCATのチャネル領域CHには電流の流れる向きに対し引っ張り応力が加わる。したがって、電子の移動度が向上し、RCATの駆動電流を増加させることが可能である。
【0016】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態を示すものであり、図1のII−II線に沿ったRCATの断面を示している。図3において、第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付している。
【0017】
第1の実施形態において、ゲート電極15は、ポリシリコンにより構成され、このゲート電極15を、圧縮応力を有する絶縁膜16により覆うことにより、RCATのチャネル領域CHに引っ張り応力を発生させた。
【0018】
これに対して、第2の実施形態において、ゲート電極21は、熱処理により膨張する金属材料により構成されている。すなわち、図3に示すように、ゲート絶縁膜14が形成されたゲート溝13の内部、及びゲート溝13外部の半導体基板11の上方には、例えばタングステン(W)により構成されたゲート電極21が形成されている。ゲート電極21のゲート溝13から半導体基板11の上方に突出した部分の側壁には、絶縁膜22が形成されている。この絶縁膜22は、例えばシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜により形成されている。
【0019】
ゲート電極21の製造方法の一例は、次のようである。ゲート溝13内にゲート絶縁膜14を形成した後、半導体基板11上に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)によりタングステン膜が堆積される。これにより、ゲート溝13内がタングステン膜により埋め込まれる。この後、拡散層を活性化するための熱処理によりタングステン膜が膨張し、ゲート溝13の内から外側方向に押圧力が発生し、RCATのチャネル領域CHに引っ張り応力が発生する。この後、タングステン膜上にゲート電極21を形成するためのマスクパターンが形成され、このマスクパターンを用いてタングステン膜がエッチングされることにより、ゲート電極21が形成される。
【0020】
上記第2の実施形態によれば、RCATのゲート電極21をSiよりも熱膨張率が大きく、且つ拡散層を活性化するための熱処理に耐え得る金属材料、例えばタングステンにより形成し、熱処理により、ゲート溝13内に形成されたタングステン膜が膨張することにより、RCATのチャネル領域CHに引っ張り応力を発生させている。したがって、電子の移動度を向上でき、RCATの駆動電流を増加することが可能である。
【0021】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態を示している。第2の実施形態は、ゲート溝13内及びゲート溝13外部に金属材料によるゲート電極21を形成した。これに対して、第3の実施形態は、ゲート溝13内のチャネル領域CHに対応する部分にのみ、金属材料により構成したゲート電極31を形成している。
【0022】
すなわち、図4に示すように、第3の実施形態において、例えばタングステンにより形成されたゲート電極31は、チャネル領域CHに対応するゲート溝13内に形成されている。すなわち、ゲート電極31は、ゲート溝13の底部から拡散層12の底部より若干上方まで形成されている。ゲート電極31は、上述したように、成膜時にゲート溝13の内部でゲート溝13の外側方向に膨張する。このため、RCATのチャネル領域CHにのみ、引っ張り応力を加えることができる。
【0023】
ゲート電極31の上部には、絶縁膜32が形成されている。この絶縁膜32としては、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜を適用することが可能であるが、ゲート電極31を酸化しないシリコン窒化膜が好ましい。この絶縁膜32は、ゲート電極31の上部に位置するゲート溝13内から例えば半導体基板11の上面まで形成されている。
【0024】
上記第3の実施形態によれば、ゲート溝13内で、RCATのチャネル領域CHに対応する領域に熱処理により膨張する金属材料により、ゲート電極31を形成している。このため、RCATのチャネル領域CHにのみ引っ張り応力を加えることができ、電子の移動度を向上して、RCATの駆動電流を増加することが可能である。
【0025】
また、RCATのチャネル領域CHにのみ引っ張り応力を加えることができるため、半導体基板11の反りを防止することが可能である。
【0026】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態を示している。図5において、図2と同一部分には同一符号を付している。
【0027】
上記第2、第3の実施形態において、ゲート電極21、31は、一般に用いられる材料、例えばポリシリコンではなく金属材料により形成されている。このため、トランジスタの閾値電圧の調整が困難になる可能性がある。
【0028】
そこで、第4の実施形態は、ゲート電極41をポリシリコンにより形成し、ゲート電極41の内部に膨張性の材料を形成している。
【0029】
すなわち、図5において、ゲート電極41は、第1の実施形態と同様に、ポリシリコンにより構成され、ゲート溝13の内部及びゲート溝13上部で半導体基板11の上方に形成されている。半導体基板11の上方に形成されたゲート電極41の側面には、絶縁膜43が形成されている。この絶縁膜43は、例えばシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜により構成されている。
【0030】
また、ゲート電極41のゲート溝13に対応する内部には、膨張材42が形成されている。この膨張材42は、例えば熱処理により体積が膨張するタングステンにより構成されている。
【0031】
この膨張材42は、例えばゲート溝13内にポリシリコンによりゲート電極41の下部を形成した後、ゲート電極41下部の中央部に凹所が形成され、この凹所内にタングステンが例えばCVDにより成膜されることにより形成される。また、その後の熱処理工程でタングステンをシリサイド化することにより、さらに、体積を膨張させることができる。このように、膨張材42を膨張させることにより、ゲート溝13内のポリシリコンによって形成されたゲート電極41の下部がゲート溝13の外側に押圧されるため、RCATのチャネル領域CHに引っ張り応力を発生させることができる。
【0032】
尚、膨張材42は、金属材料に限定されるものではなく、絶縁物、例えばSiGeの酸化物を使用することも可能である。SiGeはSiよりも酸化速度が速く、また熱膨張率も大きいため、選択的にSiGeを酸化することで応力を加えることも可能である。
【0033】
また、膨張材42の頂部の位置は、半導体基板11の表面より僅かに高くすることが好ましい。この構成とすることにより、膨張材42が膨張する際、ゲート溝13の下方への押圧力を増大することができる。
【0034】
上記第4の実施形態によれば、ゲート溝13内に位置するゲート電極41の内部に膨張材42を形成し、この膨張材42により、ゲート電極41をゲート溝13の外側に押圧することにより、RCATのチャネル領域CHに引っ張り応力を発生させている。このため、電子の移動度を向上して、RCATの駆動電流を増加することが可能である。
【0035】
また、ゲート電極41は、ポリシリコンにより構成されているため、閾値電圧の調整が容易である。
【0036】
尚、上記各実施形態は、RCATの構成について説明した。このRCATを例えばMRAMに適用する場合、拡散層12のドレイン側にMTJ(Magnetic tunnel Junction)素子、及びビット線が形成され、ソース側にソース線が形成される。
【0037】
また、本実施形態は、MRAMに限定されるものではなく、ReRAM(resistance RAM)、PRAM(phase-change RAM)等の抵抗変化型メモリや、DRAM等に適用可能なことは勿論である。
【0038】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
11…半導体基板、12…拡散層、13…ゲート溝、14…ゲート絶縁膜、15、21,31,41…ゲート電極、16…絶縁膜、42…膨張材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート溝を有する半導体基板と、
前記ゲート溝の上部に対応する前記半導体基板の表面領域に形成された拡散層と、
前記ゲート溝の壁面に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート溝の内部及びゲート溝の外部に形成されたゲート電極と、
前記ゲート溝の外部のゲート電極の全面に形成され、前記ゲート電極に対して圧縮応力を有する絶縁膜と
を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
ゲート溝を有する半導体基板と、
前記ゲート溝の上部に対応する前記半導体基板の表面領域に形成された拡散層と、
前記ゲート溝の壁面に形成されたゲート絶縁膜と、
少なくとも前記ゲート溝内に形成され、膨張性の導電体により形成されたゲート電極と、
を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極は、前記ゲート溝の底部から、前記拡散層と対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
ゲート溝を有する半導体基板と、
前記ゲート溝の上部に対応する前記半導体基板の表面領域に形成された拡散層と、
前記ゲート溝の壁面に形成されたゲート絶縁膜と、
少なくとも前記ゲート溝内に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の内部に設けられた膨張性の材料と、
を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記膨張性の材料は、金属又は絶縁物であることを特徴とする請求項4記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62381(P2013−62381A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199950(P2011−199950)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】