説明

半導体集積回路装置

【課題】プロセスモニタに必要な回路面積を増加させることなく、高精度なプロセスキャリブレーションを短時間で行う。
【解決手段】ディジタル制御発振器38が任意の発振バンドを選択した後、制御部25はTDC41の信号がプロセスモニタ制御部40に入力されるようにスイッチ44を切り換える。TDC41は、信号VREFの立ち上がりエッジと最も近い信号VPREの立ち上がりエッジの期間をディジタル値に、信号VREFの立ち上がりエッジと2番目に近い信号VPREの立ち上がりエッジの期間をディジタル値に変換し、その差を算出する。プロセスモニタ制御部40は、ルックアップテーブルを参照し、算出した値と予め設定されている期待値とを比較し、プロセス値を決定する。そのプロセス値は、プロセス信号として調整制御部26にそれぞれ出力され、プロセスキャリブレーションが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスモニタによるキャリブレーション技術に関し、特に、ADPLL(All Digital Phase-Locked Loop)を備えた半導体集積回路装置における電気的特性の調整に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や無線LAN(Local Area Network)などの無線通信に使用される高周波処理用の半導体集積回路装置は、依然として高い割合の成長が期待されている。近年、高周波処理用半導体集積回路装置の開発の流れはベースバンド処理用半導体集積回路装置との1チップ化に進んでおり、微細化プロセスによる高集積化の要求が大きくなっている。
【0003】
しかしながら、ディジタルに置き換えられないアナログ回路は依然として数多くあり、このような回路ではMOSトランジスタのしきい値電圧Vthばらつきを考慮した設計が必要である。
【0004】
この種の半導体集積回路装置では、プロセスモニタ回路を備えたものがあり、該プロセスモニタ回路によってしきい値電圧Vthが下がることにより変化する信号振幅やバイアス電圧の変動をそれぞれの回路でモニタし、アナログ的に特性を補正するものが知られている。
【0005】
なお、MOSトランジスタにおけるしきい値電圧Vthのプロセスモニタ技術としては、たとえば、プロセスに依存し周波数の変わるリングオシレータ、カウンタ、および比較器から構成され、周波数をカウントして期待値と比較しプロセスのばらつきを検知し、その結果に応じて各回路のタイミングを調整するものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6853177号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記のようなプロセスモニタ回路によるタイミング調整技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0008】
すなわち、プロセスモニタ回路はアナログ回路であり、さらにモニタ回路自体の雑音がメインの回路に影響を与えないようにフィルタを追加する場合もあり、微細化に適さないという問題がある。
【0009】
また、モニタ手法と補正手法を一緒に最適化する必要があるため、時間と試行錯誤を要してしまうことになり、設計期間が短く、コストが高い微細プロセスを使用する開発において大きな問題である。
【0010】
さらに、特許文献1の技術では、新規に発振器(リングオシレータなど)が必要となり、新たな面積の増加を招いてしまい、半導体集積回路装置の小型化が困難となってしまうという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、プロセスモニタに必要な回路面積を増加させることなく、高精度なプロセスキャリブレーションを短時間で行うことのできる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
本発明は、受信系回路と、送信系回路とを有したRF処理用の半導体集積回路装置であって、プロセスモニタ信号からプロセスばらつきを検出し、受信系回路、および送信系回路を構成する任意の機能ブロックにおける電気的特性を調整するプロセスモニタと、受信系回路が受信信号を復調したり、送信系回路が送信信号を変調したりする際に用いられるクロック信号を生成するとともに、プロセスモニタ処理の際に制御信号に基づいてプロセスモニタ信号を出力するADPLLとを備えたものである。
【0015】
また、本発明は、前記プロセスモニタ部が、ADPLLから出力されるプロセスモニタ信号からプロセスばらつきを検出し、そのプロセスばらつきを制御するプロセス値を決定し、プロセス信号として出力するプロセスモニタ制御部と、プロセスモニタ処理の際に、ADPLLに制御信号を出力する制御部と、受信系回路、および送信系回路を構成する各々の機能ブロックにそれぞれ設けられ、プロセスモニタ制御部から出力されたプロセス信号に基づいて、電気的特性を最適化するプロセス制御信号を機能ブロックにそれぞれ出力する調整制御部とを備えたものである。
【0016】
さらに、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0017】
本発明は、前記プロセスモニタ部が、プロセスモニタ処理時の温度を検出する温度センサと、ADPLLから出力されるプロセスモニタ信号、および温度センサが検出した温度からプロセスばらつきを検出し、そのプロセスばらつきを制御するプロセス値を決定し、プロセス信号として出力するプロセスモニタ制御部と、プロセスモニタ処理の際に、ADPLLに制御信号を出力する制御部と、受信系回路、および送信系回路を構成する各々の機能ブロックにそれぞれ設けられ、プロセスモニタ制御部から出力されたプロセス信号に基づいて、電気的特性を最適化するプロセス制御信号を機能ブロックにそれぞれ出力する調整制御部とを備えたものである。
【0018】
また、本発明は、前記ADPLLが、該ADPLLが生成したクロック信号と基準クロック信号との位相差をディジタル値に変換するTDCと、制御部から出力される制御信号に基づいて、該TDCから出力されるディジタル値をプロセスモニタ制御部にプロセスモニタ信号として出力するように切り換える切り換え部とを備えたものである。
【0019】
さらに、本発明は、プロセスモニタ制御部が、プロセスモニタ信号をプロセス信号に変換する第1のルックアップテーブルを備え、該第1のルックアップテーブルに基づいて、ADPLLから出力されたプロセスモニタ信号をプロセス信号に変換し、調整制御部は、プロセス信号をプロセス制御信号に変換する第2のルックアップテーブルを備え、該第2のルックアップテーブルに基づいて、プロセスモニタ制御部から出力されたプロセス信号を、各機能ブロックの電気的特性を調整するプロセス制御信号に変換し、機能ブロックに備えられた調整用レジスタに設定するものである。
【0020】
また、本発明は、前記プロセスモニタ制御部が、任意の温度範囲毎に設定されたプロセスモニタ信号をプロセス信号に変換する第1のルックアップテーブルを備え、該第1のルックアップテーブルに基づいて、温度センサが検出した温度範囲に該当するADPLLから出力されたプロセスモニタ信号をプロセス信号に変換し、調整制御部は、プロセス信号をプロセス制御信号に変換する第2のルックアップテーブルを備え、該第2のルックアップテーブルに基づいて、プロセスモニタ制御部から出力されたプロセス信号を、各機能ブロックの電気的特性を調整するプロセス制御信号に変換し、機能ブロックに備えられた調整用レジスタに設定するものである。
【0021】
さらに、本発明は、前記ADPLLが、任意の位相差を有する第1の信号、および第2の信号を生成する遅延ロックループを備え、該TDCは、遅延ロックループが生成する第1の信号と第2の信号との位相差をディジタル値に変換するものである。
【発明の効果】
【0022】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0023】
(1)回路面積を増加させることなく、高精度なプロセスモニタを行うことができる。
【0024】
(2)上記(1)により、チップ面積を増加させることがなく、低コストで信頼性の高い半導体集積回路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1によるRF処理部の一例を示すブロック図である。
【図2】図1のRF処理部に設けられた送受信ADPLLにおける構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図2のADPLLに設けられたTDCの構成例を示すブロック図である。
【図4】図3のTDCにおける各部信号のタイミングチャートである。
【図5】図2の送受信ADPLLに設けられたカウンタの一例を示すブロック図である。
【図6】図5のカウンタにおけるタイミングチャートである。
【図7】図2のADPLLにおける周波数ロックの過程を示す模式図である。
【図8】図2の送受信ADPLLにおける動作の一例を示すフローチャートである。
【図9】図2のADPLLに設けられたプロセスモニタ制御部のルックアップテーブル格納部に格納されているルックアップテーブルの一例を示す説明図である。
【図10】図3のTDCにおける解像度のプロセス依存を示す説明図である。
【図11】図3のTDCを用いて基準クロック信号の周期を測定した場合のディジタル値の一例を示す説明図である。
【図12】図2の調整制御部に備えられたルックアップテーブルの一例を示す説明図である。
【図13】図12に続く調整制御部に備えられたルックアップテーブルの一例を示す説明図である。
【図14】図2のADPLLに設けられたプロセスモニタ制御部によるプロセスモニタ処理のキャリブレーションタイミングの一例を示した説明図である。
【図15】図2の送受信ADPLLにおけるプロセスモニタ処理時の周波数遷移を示す説明図である。
【図16】図2の送受信ADPLLにおける通常のロック過程を示す説明図である。
【図17】本発明の実施の形態2によるRF処理部の一例を示すブロック図である。
【図18】図17のRF処理部に設けられた送受信ADPLLにおけるプロセスモニタ処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態3によるRF処理部の一例を示すブロック図である。
【図20】図19のRF処理部に設けられた温度センサの一例を示す説明図である。
【図21】図19のRF処理部に設けられたプロセスモニタ制御部のルックアップテーブル格納部に格納されているルックアップテーブルの一例を示す説明図である。
【図22】図19のADPLLを構成するTDCにおける解像度の温度とプロセス依存とを示す説明図である。
【図23】図19のTDCを用いて基準クロック信号の周期を測定した場合のディジタル値の一例を示す説明図である。
【図24】本発明の実施の形態4によるRF処理部の一例を示すブロック図である。
【図25】図24のRF処理部におけるチップレイアウトの一例を示す説明図である。
【図26】図24のプロセスモニタ制御部によるプロセスモニタ処理のキャリブレーションタイミングの一例を示した説明図である。
【図27】本発明の実施の形態5によるRF処理部に設けられたTDCにおけるレイアウトの一例を示す説明図である。
【図28】本発明の実施の形態6によるRF処理部、およびベースバンド回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるRF処理部の一例を示すブロック図、図2は、図1のRF処理部に設けられた送受信ADPLLにおける構成の一例を示すブロック図、図3は、図2のADPLLに設けられたTDCの構成例を示すブロック図、図4は、図3のTDCにおける各部信号のタイミングチャート、図5は、図2の送受信ADPLLに設けられたカウンタの一例を示すブロック図、図6は、図5のカウンタにおけるタイミングチャート、図7は、図2のADPLLにおける周波数ロックの過程を示す模式図、図8は、図2の送受信ADPLLにおける動作の一例を示すフローチャート、図9は、図2のADPLLに設けられたプロセスモニタ制御部のルックアップテーブル格納部に格納されているルックアップテーブルの一例を示す説明図、図10は、図3のTDCにおける解像度のプロセス依存を示す説明図、図11は、図3のTDCを用いて基準クロック信号の周期を測定した場合のディジタル値の一例を示す説明図、図12は、図2の調整制御部に備えられたルックアップテーブルの一例を示す説明図、図13は、図12に続く調整制御部に備えられたルックアップテーブルの一例を示す説明図、図14は、図2のADPLLに設けられたプロセスモニタ制御部によるプロセスモニタ処理のキャリブレーションタイミングの一例を示した説明図、図15は、図2の送受信ADPLLにおけるプロセスモニタ処理時の周波数遷移を示す説明図、図16は、図2の送受信ADPLLにおける通常のロック過程を示す説明図である。
【0028】
本実施の形態1において、RF処理部1は、たとえば、携帯電話などの通信移動体システムに備えられる半導体集積回路装置である。このRF処理部1は、送受信にダイレクトコンバージョン方式を採用し、受信信号を復調したり、送信信号を変調したりする。
【0029】
RF処理部1には、図1に示すように、アンテナスイッチ2が接続されており、該アンテナスイッチ2には、アンテナ3が接続されている。アンテナ3は、信号電波の送受信を行う。アンテナスイッチ2は、送受信した信号を切り替える。
【0030】
また、RF処理部1には、ベースバンド回路4が接続されている。ベースバンド回路4は、送信データをI信号、Q信号に変換したりRF処理部1を制御する。RF処理部1は、たとえば、受信系回路5、送信系回路6、およびプロセスモニタ部7から構成されている。
【0031】
受信系回路5は、低雑音増幅器8、位相シフタ9、ミキサ10,11、フィルタ12,13、および利得可変増幅器14,15などの機能ブロックから構成されている。
【0032】
低雑音増幅器8は、受信信号を増幅するアンプである。位相シフタ9は、後述する送受信ADPLL24で生成されたクロック信号を分周し、直交信号を生成する。ミキサ10,11は、低雑音増幅器8で増幅された受信信号に位相シフタ9で分周された直交信号を合成することで復調を行う復調回路である。
【0033】
フィルタ12,13は、ローパスフィルタからなる。利得可変増幅器14,15は、復調されたI,Q信号をそれぞれ増幅してベースバンド回路4へ出力する。
【0034】
送信系回路6は、フィルタ16,17、位相シフタ18、直交変調器19、ならびに電力増幅器20などの機能ブロックから構成されている。
【0035】
フィルタ16,17は、たとえば、ローパスフィルタからなり、位相シフタ18は、送受信ADPLL24で生成されたクロック信号から90°位相がずれた直交信号を生成する。
【0036】
直交変調器19は、乗算器21,22、および加算器23から構成されており、生成された直交信号をベースバンド回路4から供給されるI信号とQ信号により変調をかけ、変調された信号を合成する。電力増幅器20は、直交変調器19から出力される送信信号を増幅する。
【0037】
プロセスモニタ部7は、送受信ADPLL24、制御部25、および調整制御部26〜35などから構成されている。プロセスモニタ部7は、MOSトランジスタにおけるプロセスばらつきを検出し、各回路が最適な特性となるように制御するプロセスモニタ処理を行う。
【0038】
送受信ADPLL24は、外部接続されたクロック発振器などが生成したクロック信号TCXOに基づいて、位相シフタ9,18に用いられるクロック信号を生成するとともに、プロセスばらつきの計測を行い、取得したプロセスばらつきに応じてプロセス信号を出力する。
【0039】
制御部25は、プロセスモニタ部7の制御を司る。調整制御部26〜35は、送受信ADPLL24から出力されたプロセス信号からプロセス制御信号を出力する。調整制御部26は、プロセス制御信号によって送受信ADPLL24に設けられたディジタル制御発振器38の電気的特性を最適にする。調整制御部27は、プロセス制御信号によって低雑音増幅器8の電気的特性を最適にする。
【0040】
調整制御部28は、プロセス制御信号によってミキサ10,11の電気的特性を最適にし、調整制御部29は、プロセス制御信号によって位相シフタ9の電気的特性を最適にする。
【0041】
同様に、調整制御部30はフィルタ12,13を、調整制御部31は、利得可変増幅器14,15を、調整制御部32は電力増幅器20を、調整制御部33は乗算器21,22、加算器23を、調整制御部34は位相シフタ18を、調整制御部35はフィルタ16,17を、各々のプロセス制御信号によってそれぞれ最適な電気的特性とする。
【0042】
図2は、送受信ADPLL24の構成例を示すブロック図である。
【0043】
送受信ADPLL24は、図示するように、ディジタル位相比較器36、ディジタルループフィルタ37、ディジタル制御発振器38、分周器39、およびプロセスモニタ制御部40から構成されている。
【0044】
ディジタル制御発振器38から出力される信号を分周器39によって分周し、ディジタル位相比較器36によって基準クロック信号TCXOと位相を比較する。比較結果は、ディジタル信号で出力され、ディジタルループフィルタ37で高域の雑音成分を除去したあと、ディジタル制御発振器38に入力される。
【0045】
分周後の周波数と基準クロック信号TCXOの周波数とが一致するまで帰還がかかるため、送受信ADPLL24の出力には、基準クロック信号TCXOの周波数の分周比倍の周波数を持つクロックが得られる。この状態をロックしたという。また、周波数の制御は分周比を変えることで行う。
【0046】
また、ディジタル位相比較器36は、TDC(Time to Digital Converter)41、カウンタ42、加算器43、ならびにスイッチ44から構成されている。TDC41は、位相差をディジタル値に変える。
【0047】
入力信号は基準クロック信号TCXOである信号VREF(e.g. 26MHz)と分周器39から出力される信号VDIV(e.g. 26MHz)"、信号VPRE(e.g. 1GHz)"がある。位相差は、カウンタ42で粗く、TDC41で細かく検出して出力で合成する。
【0048】
カウンタ42には、信号VREFと信号VDIVとがそれぞれ入力され、TDC41は、信号VREFと信号VPREがそれぞれ入力される。スイッチ44は、制御部25から出力される制御信号に基づいて、TDC41から出力される信号を加算器43、またはプロセスモニタ制御部40のいずれかに出力されるように切り替えを行う。
【0049】
図3は、TDC41の構成例を示すブロック図である。
【0050】
TDC41は、図3に示すように、多段の遅延セル41a1〜41aN、多段のフリップフロップ41b1〜41bN、およびデコーダ41cから構成されている。この場合、フリップフロップ41bの出力信号が’1’から’0’に変化するエッジを検出することで、信号VPREと信号VREFの立ち上がりの位相差を検出する。位相(時間)分解能は遅延セル41a1〜41aNの遅延量で決まる。
【0051】
図4は、図3のTDC41における各部信号のタイミングチャートである。
【0052】
図4において、上方から下方にかけて、信号VREF、信号VPRE、初段から8段目までの各遅延素子41a1〜41aNの出力信号D1〜D8の信号タイミングをそれぞれ示している。この場合、図3に示した構成のTDC41では、図4に示すように、分解能は20psとなり、位相差は140psとなる。
【0053】
図5は、カウンタ42の一例を示すブロック図である。
【0054】
カウンタ42は、図示するように、インバータ42a、積分器42b、ラッチ42c,42d、および減算器42eから構成されている。
【0055】
この場合、信号VPREのエッジを積分器42bでカウントして出力させ、それを信号VREF、信号VDIVによってラッチ42c,42dによってそれぞれラッチしたあとに、減算器42eによって引き算して出力する。
【0056】
また、図6は、図5のカウンタ42におけるタイミングチャートであり、TDC41の出力は、カウンタ42の重みに正規化された後、カウンタ42の出力と結合される。 図7に周波数ロックの過程を模式図で示す。なお、図7に示したABS(Auto Band Selection)期間は、ロック動作の前に、希望周波数に近いディジタル制御発振器38の発振バンドを選択する期間である。また、ABS以前は、ディジタルループフィルタ37の出力を固定して、ループが開いた状態(オープンループ)で動作しており、ABS後はループが閉じた状態である。
【0057】
次に、本実施の形態1によるプロセスモニタ処理における送受信ADPLL24の動作について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
プロセスモニタ処理は、TDC41を利用してオープンループで行う。まず、ベースバンド回路4から、プロセスモニタ処理を開始するオートバンドセレクト信号ABSが出力されると、ディジタル制御発振器38は、予め決めた周波数に近い発振バンド(〜+/−数十MHz程度)を選択する(ステップS101)。ここで、許容される周誤差は、TDC41の解像度で決まる。TDC41の出力に影響を与えない範囲であることが必要である。
【0059】
続いて、制御部25は、スイッチ44の信号出力先を切り換える制御信号を出力する。この制御信号を受けて、スイッチ44は、TDC41から出力される信号の出力先を、加算器43からプロセスモニタ制御部40に切り換える(ステップS102)。
【0060】
そして、TDC41により、信号VREFの立ち上がりエッジと最も近い信号VPREの立ち上がりエッジの期間をディジタル値N1に変換する(ステップS103)。続いて、信号VREFの立ち上がりエッジと2番目に近い信号VPREの立ち上がりエッジの期間をディジタル値N2に変換する(ステップS104)。
【0061】
その後、TDC41は、ステップS103の処理とステップS104の処理におけるディジタル値の差(N2−N1)を算出し(ステップS105)、プロセスモニタ制御部40に出力する。ディジタル値の差(N2−N1)は、信号VPREの一周期のディジタル値に相当する。
【0062】
また、ステップS103〜S105の処理を数回繰り返し、信号VPREの一周期のディジタル値の平均値を求め、該平均値をプロセスモニタ制御部40に出力するようにしてもよい。
【0063】
続いて、プロセスモニタ制御部40は、ルックアップテーブル(第1のルックアップテーブル)を用いてステップS105の処理で得られた値と該プロセスモニタ制御部40に予め設定されている期待している値とを比較し、プロセス値を決定する(ステップS106)。
【0064】
たとえば、ディジタル値の差(N2−N1)が期待値よりも小さな値ならば、遅延セルの遅延量が大きい。逆に、ディジタル値の差(N2−N1)が期待値よりも大きい値ならば、遅延量が小さいことなる。単に大小だけではなく、どの程度大きいか小さいかでプロセスを判断する。
【0065】
そして、プロセスモニタ制御部40が決定したプロセス値は、プロセス信号として調整制御部26〜35にそれぞれ出力される(ステップS107)。そして、各調整制御部26〜35は、入力されたプロセス信号に基づいて、各回路の電気的特性を設定するプロセス制御信号をそれぞれ算出し、ディジタル制御発振器38、低雑音増幅器8、ミキサ10,11、位相シフタ9、フィルタ12,13、利得可変増幅器14,15、電力増幅器20、乗算器21,22、加算器23、位相シフタ18、ならびにフィルタ16,17の電気的特性を最適化するプロセスキャリブレーションを行う(ステップS108)。
【0066】
上記したディジタル制御発振器38、低雑音増幅器8、ミキサ10,11、位相シフタ9、フィルタ12,13、利得可変増幅器14,15、電力増幅器20、乗算器21,22、加算器23、位相シフタ18、およびフィルタ16,17には、レジスタが備えられており、該レジスタに調整制御部26〜35が算出したプロセス信号が設定され、設定値に基づいて電源電圧や電流などが切り替えられ、これにより、最適な特性がえられる。
【0067】
次に、プロセスモニタ制御部40における詳細な動作について説明する。
【0068】
プロセスモニタ制御部40は、演算部、ならびにルックアップテーブル格納部から構成されている。図9は、ルックアップテーブル格納部に格納されているルックアップテーブルの一例を示す説明図である。
【0069】
ルックアップテーブルは、図示するように、入力されたディジタル値から、任意のプロセス制御信号を算出するテーブルとなっている。プロセス信号は、たとえば、’slow’、’typ1’、’typ2’、および’fast’から構成されている。
【0070】
図10は、TDC41における解像度のプロセス依存を示す説明図であり、図11は、TDC41を用いて、たとえば、3840MHz/4の基準クロック信号の周期を測定した場合のディジタル値の一例を示す説明図である。
【0071】
図10、図11において、’slow’は、TDC41を構成するトランジスタのしきい値電圧Vthが高い場合を示しており、’fast’は、TDC41を構成するトランジスタのしきい値電圧Vthが低い場合を示している。
【0072】
また、’typ1’は、’slow’よりも、TDC41を構成するトランジスタのしきい値電圧Vthが低く、’typ2’は、該トランジスタのしきい値電圧Vthが’typ1’よりも低く、’fast’よりも高い場合である。
【0073】
たとえば、TDC41のトランジスタのしきい値電圧Vthが’typ2’の場合、図10より、該TDC41の解像度は、12.9psecであり、このTDC41から出力されるディジタル値は、図11から、1/(3840MHz/4)=81となる。
【0074】
そして、TDC41から出力されたディジタル値’81’がプロセスモニタ制御部40に入力されると、該プロセスモニタ制御部40の演算部は、図9に示すルックアップテーブルを参照し、該当するデータをプロセス信号として出力する。
【0075】
この場合、図9において、入力されたディジタル値’81’は、’75’より大きく、’95’よりも小さいので、プロセスモニタ制御部40の演算部は、’typ2’をプロセス信号として調整制御部26〜35にそれぞれ出力する。
【0076】
図12、および図13は、調整制御部26に備えられたルックアップテーブルの一例を示す説明図である。
【0077】
調整制御部26は、前記したプロセスモニタ制御部40と同様に、演算部、およびルックアップテーブル格納部から構成されており、該ルックアップテーブル格納部には、たとえば、図12、図13に示したルックアップテーブル(第2のルックアップテーブル)が格納されている。
【0078】
図12は、ディジタル制御発振器38における電源電圧レギュレータコードと出力電圧振幅との関係を示したテーブルであり、図13は、ディジタル制御発振器38における電源電圧レギュレータコードと消費電流との関係を示したテーブルである。
【0079】
なお、図12、および図13では、一例として’typ2’の場合と’slow’の場合のみを表示したテーブルを示している。
【0080】
たとえば、ディジタル制御発振器38の定格値が700mVpps以上と規定されている場合には、入力されたプロセス信号が’typ2’であると、演算部は、図12のルックアップテーブルを参照し、’0’(またはそれ以上)の電源電圧レギュレータコードを算出してディジタル制御発振器38のレジスタに’0’を設定する。ディジタル制御発振器38は、レジスタに設定された電源電圧レギュレータコード’0’に基づいて、出力電圧振幅の補正を行う。
【0081】
また、入力されたプロセス信号が、たとえば、’slow’であると、演算部は、図12のルックアップテーブルを参照し、’5’(またはそれ以上)の電源電圧レギュレータコードを算出してディジタル制御発振器38のレジスタに’5’を設定する。
【0082】
そして、ディジタル制御発振器38は、レジスタに設定された電源電圧レギュレータコード’5’に基づいて、出力電圧振幅の補正を行う。
【0083】
また、消費電流については、小さいことが望ましい。つまり、図13の電源電圧レギュレータコードは小さいほうがよい。よって、入力されたプロセス信号が’typ2’の場合には、電源電圧レギュレータコードを’0’とし、プロセス信号が’slow’の場合には、電源電圧レギュレータコードを’5’としてディジタル制御発振器38のレジスタに設定する。
【0084】
これにより、ディジタル制御発振器38の消費電流は、’typ2’で12mA、’slow’で11.4mAとなる。もし、プロセスにより切り替え機能がない場合、常に’slow’で決めた’5’を使用することになる。この場合、’typ2’では、13.8mAとなり、1.8mAの電流が増加することになる。
【0085】
図14は、プロセスモニタ制御部40によるプロセスモニタ処理のキャリブレーションタイミングの一例を示した説明図である。
【0086】
図14の上方から下方にかけて、RF処理部1、送受信ADPLL24、受信RX、および送信TXにおけるそれぞれの状態を示している。
【0087】
この場合、図示するように、プロセスモニタ処理は、Power−up(電源投入)後に、一度だけ実行される。そして、プロセス値(プロセス制御信号)が確定した後、この値をアナログ回路は反映し、プロセスキャリブレーションが行われる。
【0088】
図15は、送受信ADPLL24におけるプロセスモニタ処理時の周波数遷移を示す説明図である。
【0089】
送受信ADPLL24は、オートバンド選択(ABS)後、プロセスモニタ処理を行い、動作がOFFとなる。オートバンド選択時間は、たとえば、数十μsec程度で終わる。通常の送受信ADPLL24のロック過程(たとえば、数百μsec程度)に比べ時間と消費電力を削減することができる。
【0090】
また、図16は、比較のための送受信ADPLL24における通常のロック過程を示す説明図であり、この場合には、オートバンド選択(ABS)後、ロック過程に移る。
【0091】
それにより、本実施の形態1によれば、送受信ADPLL24を利用してプロセスモニタ処理を行うことができるので、面積の増加を低減しながら、プロセスをモニタすることが可能となる。
【0092】
(実施の形態2)
図17は、本発明の実施の形態2によるRF処理部の一例を示すブロック図、図18は、図17のRF処理部に設けられた送受信ADPLLにおけるプロセスモニタ処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【0093】
本実施の形態2では、図17に示すように、RF処理部1の送受信ADPLL24に、遅延ロックループであるDLL(Delay Locked Loop)45、およびスイッチ46,47を新たに設け、TDC41に入力する試験信号として、該DLL45から任意の位相差をもつ信号VDLL1(第1の信号)、および信号(第2の信号)VDLL2を入力する構成よりなるものである。
【0094】
DLL45は、信号VREFから正確な位相差をもつ信号VDLL1,VDLL2を生成して出力する。スイッチ46は、制御部25から出力される制御信号に基づいて、DLL45から出力される信号VDLL1、または信号VREFのいずれかをTDC41とカウンタ42とにそれぞれ出力するように切り換える。
【0095】
また、スイッチ47は、制御部25から出力される制御信号に基づいて、DLL45から出力される信号VDLL2、または分周器39から出力される信号VPREのいずれかをTDC41に出力するように切り換える。その他の接続構成については、前記実施の形態1における図2と同様であるので、説明は、省略する。
【0096】
図18は、送受信ADPLL24におけるプロセスモニタ処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【0097】
この場合も、プロセスモニタ処理は、前記実施の形態1(図8)と同様にオープンループで行う。
【0098】
まず、制御部25がDLL45を動作させると、該DLL45は、予め決めた位相差を持つ信号VDLL1、および信号VDLL2をそれぞれ生成する(ステップS201)。続いて、制御部25は、スイッチ44,46,47の信号出力先を切り換える制御信号を出力する。
【0099】
この制御信号を受けて、スイッチ44は、TDC41から出力される信号の出力先を、加算器43からプロセスモニタ制御部40に切り換え、スイッチ46は、DLL45から出力される信号VDLL1がTDC41に入力されるように切り換え、スイッチ47は、DLL45から出力される信号VDLL2がTDC41に入力されるように切り換える(ステップS202)。
【0100】
そして、TDC41により、信号VDLL1と信号VDLL2との立ち上がりエッジの期間をディジタル値に変換する(ステップS203)。続いて、プロセスモニタ制御部40は、ステップS203の処理で得られた値と該プロセスモニタ制御部40に予め設定されている期待している値とを比較し、プロセス値を決定する(ステップS204)。
【0101】
ステップS203の処理で得られた値が期待よりも小さな値ならば、遅延セルの遅延量が大きく、逆に、大きい値ならば、遅延量が小さい。単に大小だけではなく、どの程度大きいか小さいかでプロセスを判断する。
【0102】
また、ステップS203の処理を数回繰り返し、ステップS203の処理で得られたディジタル値の平均値を求め、該平均値をプロセスモニタ制御部40に出力するようにしてもよい。
【0103】
そして、プロセスモニタ制御部40が決定したプロセス値は、プロセス信号として調整制御部26〜35にそれぞれ出力される(ステップS205)。各調整制御部26〜35は、入力されたプロセス信号に基づいて、各回路の電気的特性を設定するプロセス制御信号をそれぞれ算出し、ディジタル制御発振器38、低雑音増幅器8、ミキサ10,11、位相シフタ9、フィルタ12,13、利得可変増幅器14,15、電力増幅器20、乗算器21,22、加算器23、位相シフタ18、ならびにフィルタ16,17の電気的特性を最適にするプロセスキャリブレーションを行う(ステップS206)。
【0104】
それにより、本実施の形態2では、DLL45を追加することにより、プロセスモニタ時におけるオートバンドセレクト(ABS)を不要にすることができ、該プロセスモニタ処理の処理時間を短縮することができる。
【0105】
(実施の形態3)
図19は、本発明の実施の形態3によるRF処理部の一例を示すブロック図、図20は、図19のRF処理部に設けられた温度センサの一例を示す説明図、図21は、図19のRF処理部に設けられたプロセスモニタ制御部のルックアップテーブル格納部に格納されているルックアップテーブルの一例を示す説明図、図22は、図19のADPLLを構成するTDCにおける解像度の温度とプロセス依存とを示す説明図、図23は、図19のTDCを用いて基準クロック信号の周期を測定した場合のディジタル値の一例を示す説明図である。
【0106】
本実施の形態3では、図19に示すように、RF処理部1のプロセスモニタ部7に、新たに温度センサ48が追加された構成となっている。この温度センサ48の出力部には、プロセスモニタ制御部40が接続されている。RF処理部1におけるその他の構成については、前記実施の形態1の図1、図2と同様となっているので説明は省略する。
【0107】
図20は、温度センサ48における構成の一例を示す説明図である。
【0108】
温度センサ48は、抵抗R0〜R8、ダイオードD1、およびコンパレータCP1〜CP7から構成されている。抵抗R0の一方の接続部は、たとえば、バンドギャップリファレンス回路によって生成された電源電圧Vbから生成された温度依存性がない電源電圧VLDが供給されるように接続されており、該抵抗R0の他方の接続部には、ダイオードD1のアノードが接続されている。
【0109】
ダイオードD1のカソードと基準電位VSSとの間には、直列接続された抵抗R1〜R8がそれぞれ接続されている。コンパレータCP1〜CP7の負(−)側入力端子には、電源電圧Vbが入力されるようにそれぞれ接続されている。
【0110】
コンパレータCP1の正(+)側入力端子には、抵抗R1と抵抗R2との接続部が接続されている。コンパレータCP2の正(+)側入力端子には、抵抗R2,R3の接続部が接続されており、コンパレータCP3の正(+)側入力端子には、抵抗R3,R4の接続部が接続されている。
【0111】
コンパレータCP4の正(+)側入力端子には、抵抗R4,R5の接続部が接続されており、コンパレータCP5の正(+)側入力端子には、抵抗R5,R6の接続部が接続されている。
【0112】
同様に、コンパレータCP6の正(+)側入力端子には、抵抗R6,R7の接続部が接続されており、コンパレータCP7の正(+)側入力端子には、抵抗R7,R8の接続部が接続されている。
【0113】
ダイオードD1は、温度が高くなると順方向電圧Vdが小さくなる特性を有している。したがって、抵抗R1〜R8の各接続部から出力される分圧電圧Vt0〜Vt6は、温度が高くなると高くなっていく。
【0114】
一方、バンドギャップリファレンス回路で生成された電源電圧Vbは、温度によらず一定である。よって、電源電圧Vbと分圧電圧Vt0〜Vt6とをコンパレータCP1〜CP7によってそれぞれ比較することにより、温度センサとして利用することができる。
【0115】
温度が25℃の場合には、たとえば、コンパレータCP1〜CP4の出力がハイ信号となり、コンパレータCP5〜CP7の出力がロー信号となる。これらコンパレータCP1〜CP7から出力される信号を温度データとしてプロセスモニタ制御部40に出力することにより、より高精度なプロセスモニタ処理を行うことができる。
【0116】
図21は、プロセスモニタ制御部40のルックアップテーブル格納部に格納されているルックアップテーブルの一例を示す説明図である。
【0117】
ルックアップテーブルは、図示するように、入力されたディジタル値、および温度データから、任意のプロセス制御信号を算出するテーブルとなっている。温度データの範囲は、’−20℃以下’、’−20〜0℃’、’0℃〜20℃’、’−20〜40℃’、’40℃〜60℃’、’−60〜80℃’、’80℃〜100℃’、および’100℃以上’であり、プロセス信号は、たとえば、’slow’、’typ1’、’typ2’、および’fast’から構成されている。
【0118】
図22は、TDC41における解像度の温度とプロセス依存とを示す説明図であり、図23は、TDC41を用いて、たとえば、3840MHz/4の基準クロック信号の周期を測定した場合のディジタル値の一例を示す説明図である。
【0119】
たとえば 温度データが25℃で、TDC41のトランジスタのしきい値電圧Vthが’typ2’の場合、図22から、該TDC41の解像度は、12.9psecであり、このTDC41から出力されるディジタル値は、図23から、1/(3840MHz/4)=81となる。
【0120】
よって、図21において、入力されたディジタル値’81’は、’75’より大きく、’95’よりも小さいので、プロセスモニタ制御部40の演算部は、’typ2’をプロセス信号として調整制御部26〜35にそれぞれ出力する。
【0121】
そして、調整制御部26〜35は、入力されたプロセス信号’typ2’に基づいて、プロセスキャリブレーションを実行する。この場合、プロセスキャリブレーションは、前記実施の形態1の図12、および図13に示した処理と同様であるので、説明は省略する。
【0122】
それにより、本実施の形態3においては、温度センサ48を設けたことにより、より詳細に環境をモニタすることが可能となり、高精度なプロセスキャリブレーションを行うことができる。
【0123】
また、プロセスモニタ処理時の温度を考慮することができるので、ワースト条件をカバーする必要がなく、それによるオーバマージンな設計が不要となり、消費電力などを低減することができる。
【0124】
(実施の形態4)
図24は、本発明の実施の形態4によるRF処理部の一例を示すブロック図、図25は、図24のRF処理部におけるチップレイアウトの一例を示す説明図、図26は、図24のプロセスモニタ制御部によるプロセスモニタ処理のキャリブレーションタイミングの一例を示す説明図である。
【0125】
前記実施の形態1では、送受信にダイレクトコンバージョン方式を採用し、送信と受信とを時分割で交互に行うことによって、ローカル発振器である送受信ADPLL24(図2)を共用する構成としたが、本実施の形態4では、たとえば、W−CDMA方式などのように送信と受信とを同時に行うRF処理部1の構成について説明する。
【0126】
この場合、RF処理部1のプロセスモニタ部7には、図24に示すように、ローカル発振器として受信ADPLL24aと送信ADPLL24b、制御部25a,25b、調整制御部26a,26bが設けられている。
【0127】
制御部25aは、プロセスモニタ処理時における受信ADPLL24aの制御を司り、制御部25bは、プロセスモニタ処理時における送信ADPLL24bの制御を司る。
【0128】
調整制御部26a,27〜31は、受信ADPLL24aから出力されたプロセス信号からプロセス制御信号を出力する。調整制御部26b,32〜35は、送信ADPLL24bから出力されたプロセス信号からプロセス制御信号を出力する。
【0129】
調整制御部26aは、プロセス制御信号によって受信ADPLL24aに設けられたディジタル制御発振器の電気的特性を最適にし、調整制御部26bは、プロセス制御信号によって送信ADPLL24bに設けられたディジタル制御発振器の電気的特性を最適にする。
【0130】
その他の接続構成、および動作については、前記実施の形態1と同じであるので、説明は省略する。
【0131】
図25は、図24に示したRF処理部1におけるチップレイアウトの一例を示す説明図である。
【0132】
図25の左上方には、送信ADPLL24bがレイアウトされており、該送信ADPLL24bの右側には、電力増幅器20がレイアウトされている。この電力増幅器20の左下方には、位相シフタ18がレイアウトされており、該位相シフタ18の右側には、直交変調器19がレイアウトされている。
【0133】
また、電力増幅器20、および直交変調器19の右側には、フィルタ16,17がレイアウトされている。送信ADPLL24b、位相シフタ18、および直交変調器19の下方には、利得可変増幅器14,15がレイアウトされており、該利得可変増幅器14,15の下方には、フィルタ12,13がレイアウトされている。
【0134】
利得可変増幅器14,15、およびフィルタ12,13の右側には、制御部25a,25bがレイアウトされており、該制御部25a,25bの下方には、受信ADPLL24aがレイアウトされている。
【0135】
フィルタ12,13の左下方には、ミキサ10,11がレイアウトされており、該ミキサ10,11の下方には、低雑音増幅器8がレイアウトされている。そして、ミキサ10、ならびに低雑音増幅器8の右側には、位相シフタ9がレイアウトされている。
【0136】
この場合、配線長を短くするために、受信ADPLL24aは、受信系回路5がレイアウトされたブロックの近くに配置され、送信ADPLL24bは、送信系回路6がレイアウトされたブロックの近くに配置された構成となっている。このレイアウトによって、プロセスのばらつきを、より最適に補正することができる。
【0137】
図26は、プロセスモニタ制御部40によるプロセスモニタ処理のキャリブレーションタイミングの一例を示す説明図である。
【0138】
図26の上方から下方にかけて、RF処理部1、ADPLL24、受信RX、および送信TXにおけるそれぞれの状態を示している。
【0139】
図示するように、プロセスモニタ処理は、Power−up(電源投入)後に、一度だけ実行される。また、受信ADPLL24aと送信ADPLL24bとが独立して設けられているので、同時にプロセスモニタ処理を行うことが可能である。
【0140】
それにより、本実施の形態4においても、面積の増加を低減しながら、高精度なプロセスキャリブレーションを行うことができる。
【0141】
(実施の形態5)
図27は、本発明の実施の形態5によるRF処理部に設けられたTDCにおけるレイアウトの一例を示す説明図である。
【0142】
本実施の形態5では、TDC41(図2)におけるレイアウトの一例について、図27を用いて説明する。
【0143】
TDC41は、前記実施の形態1の図3に示したように、遅延セル41a1〜41aN、フリップフロップ41b1〜41bN、およびデコーダ41cから構成されており、図27において、上方には、遅延セル41a1〜41aN、およびダミーの遅延セル41aNNが左から右にかけてレイアウトされている。
【0144】
これら遅延セル41a1〜41aNNの下方には、左から右にかけて、フリップフロップ41b1〜41bN、およびダミーのフリップフロップ41bNNがそれぞれレイアウトされている。そして、フリップフロップ41b1〜41bNNの下方には、デコーダ41cがレイアウトされている。
【0145】
TDC41は、位相差検出の線形性が重要である。このため、遅延セル41a1〜41aN、ならびにフリップフロップ41b1〜41bNは、整然に並べる必要がある。この場合、通常ロジックで行われる自動配置配線によるレイアウト設計手法は用いない。
【0146】
また、通常の同期設計では、データの取りこぼしを防ぐため、連続するフリップフロップのデータのフローとクロックのフローを逆にする。TDCは同期設計ではないため、同一方向から入力する。
【0147】
図27において、データの配線長とクロックラインの配線長H2を略同じにレイアウトすることで、配線長によるデータ遅延の影響をキャンセルすることができる。一方、検出したデータを次のクロックまでに処理すればよいため、デコーダ41cには大きなレイアウト制限はない。よって、デコーダ41cは、面積を削減する為、自動配置配線によるレイアウト設計を行う。
【0148】
(実施の形態6)
図28は、本発明の実施の形態6によるRF処理部、およびベースバンド回路の一例を示すブロック図である。
【0149】
前記実施の形態1においては、電源投入毎にプロセスモニタ処理を行う場合について記載したが、たとえば、プロセス値が確定した後、該プロセス値を記憶するようにしてもよい。
【0150】
その場合、図28に示すように、ベースバンド回路4にメモリ4aを設け、RF処理部1の出力回路からベースバンド回路4の入力回路経由で該メモリ4aにプロセス値を格納する。
【0151】
そして、適切なタイミングでベースバンド回路4の出力回路からRF処理部1の入力回路経由で各調整制御部26〜35にプロセス値を分配する。
【0152】
それにより、RF処理部1の電源をOFFしても、ベースバンド回路4にデータが格納されているため、該RF処理部1に電源が投入されてもプロセスモニタ処理を不要とすることができる。
【0153】
これにより、キャリブレーション時間、ならびに消費電力を削減することができる。
【0154】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、携帯電話などに用いられる高周波処理用の半導体集積回路装置におけるプロセスモニタ処理技術に適している。
【符号の説明】
【0156】
1 RF処理部
2 アンテナスイッチ
3 アンテナ
4 ベースバンド回路
4a メモリ
5 受信系回路
6 送信系回路
7 プロセスモニタ部
8 低雑音増幅器
9 位相シフタ
10,11 ミキサ
12,13 フィルタ
14,15 利得可変増幅器
16,17 フィルタ
18 位相シフタ
19 直交変調器
20 電力増幅器
21,22 乗算器
23 加算器
24 送受信ADPLL
24a 受信ADPLL
24b 送信ADPLL
25 制御部
25a 制御部
25b 制御部
26 調整制御部
26a 調整制御部
26b 調整制御部
27〜35 調整制御部
36 ディジタル位相比較器
37 ディジタルループフィルタ
38 ディジタル制御発振器
39 分周器
40 プロセスモニタ制御部
41 TDC
41a1〜41aN 遅延セル
41aNN 遅延セル
41b1〜41bN フリップフロップ
41bNN フリップフロップ
41c デコーダ
42 カウンタ
42a インバータ
42b 積分器
42c,42d ラッチ
42e 減算器
43 加算器
44 スイッチ
45 DLL
46,47 スイッチ
48 温度センサ
R0〜R8 抵抗
D1 ダイオード
CP1〜CP7 コンパレータ
H1,H2 配線長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信系回路と、送信系回路とを有したRF処理用の半導体集積回路装置であって、
プロセスモニタ信号からプロセスばらつきを検出し、前記受信系回路、および前記送信系回路を構成する任意の機能ブロックにおける電気的特性を調整するプロセスモニタ部と、
前記受信系回路が受信信号を復調したり、前記送信系回路が送信信号を変調したりする際に用いられるクロック信号を生成するとともに、プロセスモニタ処理の際に制御信号に基づいて前記プロセスモニタ信号を出力するADPLLとを備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記プロセスモニタ部は、
前記ADPLLから出力されるプロセスモニタ信号からプロセスばらつきを検出し、前記プロセスばらつきを制御するプロセス値を決定し、プロセス信号として出力するプロセスモニタ制御部と、
プロセスモニタ処理の際に、前記ADPLLに制御信号を出力する制御部と、
前記受信系回路、および前記送信系回路を構成する各々の機能ブロックにそれぞれ設けられ、前記プロセスモニタ制御部から出力されたプロセス信号に基づいて、電気的特性を最適化するプロセス制御信号を前記機能ブロックにそれぞれ出力する調整制御部とを備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記プロセスモニタ部は、
プロセスモニタ処理時の温度を検出する温度センサと、
前記ADPLLから出力されるプロセスモニタ信号、および前記温度センサが検出した温度からプロセスばらつきを検出し、前記プロセスばらつきを制御するプロセス値を決定し、プロセス信号として出力するプロセスモニタ制御部と、
プロセスモニタ処理の際に、前記ADPLLに制御信号を出力する制御部と、
前記受信系回路、および前記送信系回路を構成する各々の機能ブロックにそれぞれ設けられ、前記プロセスモニタ制御部から出力されたプロセス信号に基づいて、電気的特性を最適化するプロセス制御信号を前記機能ブロックにそれぞれ出力する調整制御部とを備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記ADPLLは、
前記ADPLLが生成した前記クロック信号と基準クロック信号との位相差をディジタル値に変換するTDCと、
前記制御部から出力される制御信号に基づいて、前記TDCから出力されるディジタル値を前記プロセスモニタ制御部にプロセスモニタ信号として出力するように切り換える切り換え部とを備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
請求項2または4記載の半導体集積回路装置において、
前記プロセスモニタ制御部は、
前記プロセスモニタ信号を前記プロセス信号に変換する第1のルックアップテーブルを備え、前記第1のルックアップテーブルに基づいて、前記ADPLLから出力されたプロセスモニタ信号を前記プロセス信号に変換し、
前記調整制御部は、
前記プロセス信号を前記プロセス制御信号に変換する第2のルックアップテーブルを備え、前記第2のルックアップテーブルに基づいて、前記プロセスモニタ制御部から出力されたプロセス信号を、各々の前記機能ブロックの電気的特性を調整するプロセス制御信号に変換し、前記機能ブロックに備えられた調整用レジスタに設定することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項6】
請求項3または4記載の半導体集積回路装置において、
前記プロセスモニタ制御部は、
任意の温度範囲に毎に設定された前記プロセスモニタ信号を前記プロセス信号に変換する第1のルックアップテーブルを備え、前記第1のルックアップテーブルに基づいて、前記温度センサが検出した温度範囲に該当する前記ADPLLから出力されたプロセスモニタ信号を前記プロセス信号に変換し、
前記調整制御部は、
前記プロセス信号を前記プロセス制御信号に変換する第2のルックアップテーブルを備え、前記第2のルックアップテーブルに基づいて、前記プロセスモニタ制御部から出力されたプロセス信号を、各々の前記機能ブロックの電気的特性を調整するプロセス制御信号に変換し、前記機能ブロックに備えられた調整用レジスタに設定することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記ADPLLは、
任意の位相差を有する第1の信号、および第2の信号を生成する遅延ロックループを備え、
前記TDCは、
前記遅延ロックループが生成する第1の信号と第2の信号との位相差をディジタル値に変換することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記ADPLLは、
ディジタル制御発振器を備え、
前記TDCは、
前記ディジタル制御発振器を前記ADPLL内部の分周器によって分周した信号の周期をディジタル値に変換することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項9】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
各々のプロセスモニタ信号を出力する複数の前記ADPLLをさらに備え、
前記受信系回路、および前記送信系回路を構成する任意の前記機能ブロックに最も近い配置にレイアウトされた前記ADPLLから出力される前記プロセスモニタ信号に基づいて前記機能ブロックのプロセスばらつきを補正することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項10】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記プロセス値を前記半導体集積回路の外部に接続されたベースバンド処理部に出力する出力回路を備え、
前記ベースバンド処理部からプロセス値を分配することにより、前記ADPLLが含まれるRF処理部の電源をオフしても、次の前記RF処理部の電源投入時のプロセスキャリブレーションを省くことが可能であることを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−23938(P2011−23938A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166590(P2009−166590)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】