実装体
【課題】低コスト性および高信頼性を維持しつつ、光デバイスの利用性を拡大しうる実装体を提供する。
【解決手段】実装体Aは、母基板1の上方に、光デバイス10をフリップチップ状態で搭載したものである。母基板1の上面には、第1,第1配線パッド5,6が設けられ、母基板1には開口1aが形成されている。光デバイス10の主面側には、p電極15,n電極16が設けられている。光デバイス10と母基板1との間に、光透過性樹脂内に鎖状金属粒子31を分散させたACF30が介在している。ACF30中の鎖状金属粒子31により、p型電極15,n型電極16と、第1,第2配線パッド5,6とがそれぞれ電気的に接続されている。鎖状金属粒子を分散させたACF30は、チップボンディング機能、電気的接続機能に加え、光の通路としても機能する。
【解決手段】実装体Aは、母基板1の上方に、光デバイス10をフリップチップ状態で搭載したものである。母基板1の上面には、第1,第1配線パッド5,6が設けられ、母基板1には開口1aが形成されている。光デバイス10の主面側には、p電極15,n電極16が設けられている。光デバイス10と母基板1との間に、光透過性樹脂内に鎖状金属粒子31を分散させたACF30が介在している。ACF30中の鎖状金属粒子31により、p型電極15,n型電極16と、第1,第2配線パッド5,6とがそれぞれ電気的に接続されている。鎖状金属粒子を分散させたACF30は、チップボンディング機能、電気的接続機能に加え、光の通路としても機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスを内蔵した光デバイスを実装した実装体に係り、特に信頼性向上対策に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの実装方法としては、銀ペーストやハンダなどのチップボンディングと、ワイヤボンディングによる電極接続とを別々に行う方法が一般的である。
図12(a)は、一般的な実装方法として、ワイヤボンディングを用いる方法の手順を示している。図12(a)に示す方法では、母基板101の上に、銀ペースト102を塗布し、この上に半導体チップ110をマウントする。この例では、半導体チップ110は、垂直方向共振型半導体レーザである。半導体チップ110には、nコンタクト領域112と、活性領域を含むメサ領域114と、p型電極115と、n型電極116とが設けられている。アニール後、母基板101上の電機(図示せず)と、p型電極115,n型電極116とを、ボンディングワイヤ121,122により、それぞれ接続する。
ただし、上記方法では、工程も多く、製造コストの低減には一定の限界がある。
【0003】
そこで、低コスト化を図るものとして、チップボンディングと電極接続とを一度に行うフリップチップ実装法がある。 図12(b)は、ベアフリップチップ法の手順を示している。まず、図12(a)に示す半導体チップ110と同様の半導体チップ110を準備する。そして、半導体チップ110のp型電極115,n型電極116の上に、それぞれスタッドバンプ123,124を設ける。次に、半導体チップ110を反転し、いわゆるフリップチップ状態で、母基板101上に搭載する。そして、超音波圧着により、スタッドバンプ123,124を介して、各電極115,116と母基板101の電極とを接合する。この方法は、非特許文献1の図4に示すアンダーフィルを省略した構造に相当する。
このフリップチップ実装法は、IC等の電子デバイスを中心に広がっている。ただし、後述するように、ベアフリップチップ実装法では、信頼性に難点がある。
【0004】
図12(c)は、アンダーフィルを用いたフリップチップ実装法の手順を示している(非特許文献1の図4参照)。まず、ベアフリップチップ法と同様の半導体チップ110のp型電極115,n型電極116の上に、それぞれスタッドバンプ123,124を設ける。次に、母基板101の上にアンダーフィル樹脂130を塗布する。次に、半導体チップ110を反転し、いわゆるフリップチップ状態で、アンダーフィル樹脂130の上に搭載する。そして、超音波圧着により、スタッドバンプ123,124を介して、各電極115,116と母基板101の電極とを接合する。このとき、アンダーフィル樹脂130は、接続部分を含むチップー母基板間の空間を埋める。
アンダーフィルを介在させることにより、ベアフリップチップ法の難点が解消されており、最近では、この方法の採用が拡大されつつある。
【非特許文献1】民生機器向けフリップチップ接続技術開発(FIND Vol.20 No.2/No.3 002 p.6-10)
【特許文献1】特開2003−331951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記フリップチップ実装技術を、そのまま光デバイスに適用しようとすると、種々不具合が生じる。
図12(b)に示すベアフリップチップの場合には、圧着の際の超音波によって、チップ内の活性領域に悪影響を与えるおそれがある。また、接合部がバンプ表面の圧着によってつぶれた部分のみなので、横方向の応力に抗するダイシェア強度が弱いという難点がある。これは、銀ペーストのように、チップ−母基板間の空間を埋める部材がないからである
また、重要な機能をもつ電極やチップ表面が実装時に基板側部材と接触して傷が生じたり、酸化による機能劣化などが生じるおそれがある。
【0006】
図12(c)に示すアンダーフィルを用いた場合、スペースが樹脂で埋められるので、ダイシェア強度は保持しうる。また、アンダーフィル130が介在することで、基板側部材との接触による損傷も回避しうる。
しかしながら、圧着の際の超音波によって、チップ内の素子に悪影響を与えるおそれは、依然として残る。
また、フリップチップ状態の光デバイスの場合、通常、光の授受のために、母基板101に光路となる開口を設ける。すると、流動性が必要とされるアンダーフィル130が開口に流れ込んで、トラブルを生じさせるおそれがある。すなわち、開口に流れ込んだ樹脂が開口をふさぐことで、光の透過性を低下させるなど、種々不具合が生じる。
【0007】
本発明の目的は、従来のフリップチップ実装法と同等の低コスト性および高信頼性を維持しつつ、光デバイスの利用性を拡大しうる実装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実装体は、一部に基体側導体を有する実装基体上に、一部にチップ側導体を有する光デバイスを搭載した実装体である。光デバイスは、実装基体に対向して、かつ、チップ側導体を前記基体側導体の上方に位置させて配置されている。
そして、光デバイスと実装基体との間には、チップ側導体と基体側導体とを電気的に接続するとともに、光デバイスに出入りする光の通路となる異方導電性膜が介在している。
異方導電性膜とは、ACF(Anisotropic Conductive Film)と略称されるものである。異方導電性膜は、膜面方向(横方向)には導電性を有しておらず、膜面にほぼ垂直な方向(縦方向)に導電性を有している。一般には、異方導電性膜は、絶縁樹脂内に、導電性粒子を分散させたものである。
【0009】
この構造により、光デバイスで生成された光を基体側の方向に出光したり、逆方向から光を光デバイスに入光させることが可能になる。従来、ACFは光とは無関係の電子デバイスや、配線板の接続に応用されている。しかし、導電性粒子(金属粒子)が存在するので、一般には透明性が悪いことから、ACFを用いて、光デバイスの光を通過させることは、考えられていなかった。
それに対し、本発明者たちは、異方導電性膜の中には光透過性のよいものがあることに着目し、異方導電性膜に、チップボンディングと電気的接続とに加えて、光の通路という新たな機能を与えることを想到した。つまり、実装の分野において、新たな利用法を切り開くものである。
光デバイスは、フリップチップ状態であってもよいし、フリップチップ状態でなくてもよい。本発明の実装体は、フリップチップ実装でなくても、フリップチップ実装法の利点であるチップボンディングと電気的接続とに加えて、光の授受という新たな機能を与えることができるからである。透明性のワイドバンドギャップ半導体を用いた光デバイスの場合、裏面側から光を出光することも可能である。
異方導電性膜は、アンダーフィルとは異なり、粘性を比較的高く調節することが容易である。よって、実装基体側に開口があっても、開口をふさがないようにすることも容易である。また、超音波を用いず、熱圧着や紫外線照射によって接続を行うので、実装時における光デバイスの損傷はほとんど生じない。
しかも、熱圧着や紫外線照射という簡単な接続法が採用できるので、製造コストを低減することができる。また、光デバイス−実装基体間のスペースが異方導電性膜によって埋められるので、ダイシェア強度も確保することができる。
以上のことから、本発明の実装体により、光デバイスの実装に際し、低コストと高信頼性とを維持しつつ、光デバイスの利用性を高めることができる。
【0010】
異方導電性膜は、使用光に対して60%以上の光透過率を有していることが好ましい。発明者たちの実験によると、60%以上の光透過率を有していれば、異方導電性膜を光の通路として利用することが容易であることが判明している。
使用光は、一般に、可視光から近赤外線の範囲、つまり400〜1600nm程度である。
【0011】
特に、異方導電性膜として、金属粒子を縦方向に連鎖させてなる鎖状金属粒子を、透光性樹脂に分散させたものが好ましい。これは、特許文献1に記載されるように、狭ピッチの電極接続に適したものであるが、金属粒子が縦方向に連鎖していることで、上下方向の光透過性も非常に高いことがわかった。
【0012】
また、鎖状金属粒子を構成する金属粒子としては、Ni粒が好ましいことがわかっている。Ni粒を用いることで、鎖状金属粒子の製造が容易であり、耐酸化性も高いなど、機能的にも優れた鎖状金属粒子が得られる。
【0013】
一般的には、光デバイスは、フリップチップ状態で配置されていることが好ましい。発光ダイオード(LED)、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を含むレーザダイオード(LD)、フォトダイオード(PD)、太陽電池(SC)などは、活性領域のある主面側にp電極とn電極とを備えることが多い。よって、通常は、光デバイスの主面側から光の授受を行うことが多く、主面を実装基体側に向けたフリップチップ実装が適している。
【0014】
実装基体における光デバイスの下方に位置する領域に、光導波部材との光伝達部が形成されていることにより、光の利用性がさらに拡大する。
【0015】
上記光伝達部が、開口である場合には、開口に、光導波部材である光ファイバーの端部を挿入しておくことが好ましい。これにより、各種外部機器との間で、光の授受を行うことが容易となる。つまり、光インターコネクションとしての利用拡大が期待できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実装体によれば、低コスト性および高信頼性を維持しつつ、光デバイスの利用性を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る実装体Aの構造を示す断面図である。
本実施の形態に係る実装体Aは、実装基体である母基板1の上方に、光デバイス10をフリップチップ状態で搭載したものである。母基板1の上面には、基板側導体である第1配線パッド5と、第2配線パッド6とが設けられている。また、母基板1には、光を通過させるための開口1aが形成されている。
【0018】
光デバイス10の主面側には、活性領域やクラッド層を含む動作領域11と、光ガイド領域12と、光ガイド領域12を両側から挟む酸化狭窄層13と、pコンタクト領域14とが設けられている。さらに、光デバイス10の主面側に、チップ側導体である、各1対のp型電極15とn型電極16とが設けられている。なお、n型電極16の直下領域は、nコンタクト領域となっている。
【0019】
ここで、本実施の形態の特徴は、光デバイス10と母基板1との間に、ACF(異方導電性膜)30が介在している点である。本実施の形態では、ACF30は、光透過性樹脂内に鎖状金属粒子31を分散させたものである。
そして、ACF30中の鎖状金属粒子31により、p型電極15と第1配線パッド5とが電気的に接続され、n型電極16と第2配線パッド6とが電気的に接続されている。
【0020】
ACF30の光透過性樹脂としては、エポキシ樹脂,アクリル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリウレタン樹脂,シリコーン樹脂などが用いられる。エポキシ樹脂を用いる場合、加熱により硬化するタイプ、光照射によって硬化するタイプ、などがあるが、いずれを用いてもよい。
本実施の形態のACF30中の鎖状金属粒子31は、ひも状に細長く、良導体の金属(Ni)によって構成されている。電流は、ひも状の鎖状金属粒子31の長手方向に、スムースに流れる。このため、各電極15,16と各パッド5,6との導電性を高く維持することができる。ACF30の製造方法については、後に詳しく説明する。
鎖状金属粒子30を構成する金属は、Ni(ニッケル)に限られず、Fe(鉄),Co(コバルト),およびそれらの合金など、磁性を有するものが望ましい。ただし、Au(金),Ag(銀),Cu(銅),Pd(パラジウム),Rh(ロジウム)などの貴金属などでもかまわない。
【0021】
本実施の形態のACF30には、縦方向につらなる鎖状金属粒子31が分散されているので、ACF30の光透過率が非常に高い点が特徴である。したがって、光デバイス10で生成された光は、図中矢印で示すように、ACF30を通過して母基板1の開口1aから出光する。また、開口1aから入光した光は、ACF30を通過して光デバイス10に到達する。つまり、ACF30は光の通路になっている。
このように、ACF30に、チップボンディング機能、電気的接続機能に加えて、光の通路として機能させている。
【0022】
図3(a),(b)は、本実施の形態に係る実装体Aの組み立て手順を示す断面図である。
まず、図3(a)に示すように、母基板1の上方に光デバイス10をフリップチップ状態で配置し、その間にACF30を介在させる。このとき、ACF30として、固体のシート状のものを使用する。ただし、液状のACF30を塗布してもよい。
次に、光デバイス10と母基板1との間に押圧力を印加しつつ、加熱するか、紫外線を照射するかにより、ACF30の樹脂を硬化させる。これにより、各電極15,16と各パッド5,6とが導通状態となる。光デバイス10の基板が、サファイア,バルクGaN等の紫外線を透過する材質である場合には、紫外線照射型を用いることができる。
以上の工程によって、図3(b)に示す実装体Aが得られる。実装体Aについては、すでに説明した通りである。
【0023】
本実施の形態によると、以下の効果を発揮することができる。
本実施の形態では、ACF30に、チップボンディング機能、電気的接続機能に加えて、光の通路として機能させている。このうち、チップボンディング機能と電気的接続機能とは、従来のフリップチップ実装法においても、満たされている。そこで、従来のフリップチップ実装法と、本実施の形態の実装法とを比較すると,以下の通りである。
以上のように、本実施の形態の実装工程は、非常に簡素なものである。したがって、従来のフリップチップ実装と同様に、製造コストを安価に抑えることができる。また、光デバイス10−実装基体1間のスペースがACF30によって埋められるので、ダイシェア強度も確保することができる。また、超音波を用いず、熱圧着や紫外線照射によって接続を行うので、実装時における光デバイス10の損傷はほとんど生じない。
以上の点は、従来のフリップチップ実装法で、アンダーフィルを用いる方法と同等である。つまり、ベアフリップチップ実装法に対する優位性を保持している。
【0024】
一方、従来のフリップチップ実装法で、アンダーフィルを用いた場合には、金スタッドバンプを用い、超音波による接合を行うことで、デバイスに損傷を与えるおそれがある。それに対し、本実施の形態のACF30を用いた場合、圧力印加と、熱硬化処理または紫外線照射による硬化処理を行うだけでよい。つまり、超音波の印加は不要であるので、デバイスの損傷波ほとんど生じない。
【0025】
また、従来のフリップチップ実装法におけるアンダーフィルを、光の通路として機能させようとすると、実装基体1の開口1aをふさぐなどの不具合が生じる。
それに対し、ACF30は、固体シート状のものを用いることで、実装基体1に開口1aがあっても、開口1aをふさぐことはない。したがって、後述するごとく、開口1aに光ファイバーを挿入して,外部機器との光の授受を行うことも容易である。よって、上記従来の不具合を解消することができる。
【0026】
以上のことから、ACF30を利用した実装体Aにより、光デバイス10の実装に際し、低コストと高信頼性とを維持しつつ、光デバイス10の利用性を高めることができる。
【0027】
さらに、ACF30を用いることで、通常のフリップチップ実装に必要なバンプをなくすことも可能である(図1、図3参照)。よって、バンプをなくすことで、製造コストのさらなる低減も可能となる。
【0028】
特に、本実施の形態では、ACF30として、鎖状金属粒子を分散させたものを用いている。この構成により、汎用されている金属粒子を樹脂中に分散させたものに比べ、光の透過率が飛躍的に向上する。よって、本実施の形態のACF30は,光の通路として特に高い機能を発揮することができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、光デバイス10として、垂直共振型の面発光レーザ(VCSEL)を用いたが、光デバイスはこれに限定されるものではない。光デバイスが、他の構造の半導体レーザ、フォトダイオード(PD)等の受光素子であってもよい。
ただし、発光ダイオード(LED)、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を含むレーザダイオード(LD)フォトダイオード(PD)、太陽電池(SC)などは、活性領域のある主面側にp電極とn電極とを備えることが多いので、本発明に特に適している。
【0030】
−実施の形態の変形例−
図2は、実施の形態の変形例に係る実装体Aの構造を示す断面図である。
図2において、図1と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付して、説明を省略する。本変形例において、光デバイス10および実装基体1の構造は、実施の形態と同じであり、ACF30の構造のみが異なる。
本変形例においては、ACF30は、光透過性を有する樹脂内に、球状の金属粒子32を分散させたものである。光デバイス10と母基板1との間に押圧力を印加しつつ、加熱するか、紫外線を照射するかにより、ACF30の樹脂を硬化させる。すると、各電極15,16と各パッド5,6との間に存在する金属粒子32同士がつながる。これにより、各電極15,16と各パッド5,6とが導通状態となる。
【0031】
本変形例によっても、ACF30の光透過率が十分高ければ、実施の形態と同じ効果が得られる。ただし、横方向にも相当に寸法がある金属粒子32は、光を遮断する割合が実施の形態における鎖状金属粒子31よりも大きい。また、図2に示す金属粒子32aのように、電極−配線パッド間で押しつぶされた金属粒子32aは大きく横方向に広がる。したがって、本変形例のACF30の透過率は、実施の形態よりも低下する。
【0032】
図4(a),(b)は、鎖状金属粒子31である鎖状Ni粒子の濃度と、ACF30の光透過率(可視領域)との関係を示す図、および光透過率の波長依存性を示す図である。発明者達の実験では、鎖状Ni濃度が数%程度でも電気的な接続の信頼性は確保できる。また、光透過率が60%以上であれば、光デバイスや光デバイスの動作を確保できることがわかっている。
図4(a)に示されるように、本実施の形態の鎖状Ni粒子を含有したACFの場合、実線Lncに示すような粒子濃度−透過利率特性を示す。透過率が60%の範囲に限定して、実線Lncをリニアな特性線に近似すると、破線Lniとなる。
図4(b)は、鎖状Ni粒子を分散させた透過率80%のACFを熱硬化させた場合の非狩生透過率の波長依存性を評価したものである。同図からわかるとおり、可視光から近赤外光に亘って,広い波長範囲で十分な透過特性を示していることがわかる。
一方、現在市販されている金属粒子を含有したACFの場合、粒子濃度は不明だが、光透過率は、30%を少し超える程度である(点線Lpa参照)。ただし、点線Lpaは、粒子濃度が増大しても、光透過率が一定であるという意味ではない。
したがって、粒子濃度が電気的接続を確保できる範囲で、光透過率が60%以上となるように、金属粒子の材質,形状,分散性等を調整することで、上記変形例においても、実施の形態の基本的な効果を得ることはできる。
【実施例1】
【0033】
実施例1として、光ファイバ接続用フェルール上の面発光レーザ(VCSEL)および受光用の光デバイスについて、特性を調べた。図5(a)〜(c)は、順に、実施例1で用いた光デバイス,実装基板(実装基体),および受光用PDの構造を示す平面図である。
図5(a)に示すように、光デバイスは、主面側に発光部とp電極,n電極を有する垂直共振器型面発光レーザ(GaAs系VCSEL)である。
図5(b)に示すように、実装基板は、マルチモード光ファイバ(120μm径)を挿入する開口を有している。実装基板は、125μmピッチで、幅が相等しいp電極,n電極を備えている。
【0034】
上記実装基板上に、鎖状Ni粒子分散型ACF(透明エポキシ基材)を光デバイス全面が覆われるように貼り付けた(貼り付け領域は点線部より大)。ACFは、15μm厚で赤外領域(850nm近傍)での透過率80%となるように調整されている。次に、光デバイスをフリップチップ状態で、電極パターン同士が相対するように、実装基板上にマウントした。そして、190℃に加熱しながら、0.3Nの圧力を印加して30秒保持したところ、光デバイスは強く基板に接着された。さらに、実装基板の下面側から光ファイバを差し込み、実装基板の電極パターンを通して、光デバイスに電流注入を行なった。
図6(a),(b)は、実施例1におけるILV測定および光出力−波長特性を示す図である。図6(a)に示すように、電流8mAの通電時に、1mWの光出力が光ファイバの出力端にて観測された。また、図6(b)に示すように、光出力の最大ピークを示す波長は、850nm近傍である。
また、ダイシェア強度は100g以上を記録した。
【0035】
また、比較例1として、汎用されているACFを用いたフリップチップ実装を行なった実装体を準備した。比較例1の基本的な構造は、図2に示す実装体Aと同様である。比較例で用いたACFは、球状の微細金属粒子が分散して混入されたACF(15μm厚、透過率約30%)である。
【0036】
また、比較例2として、ベアフリップチップ実装による実装体を準備した。図7は、比較例2に係る実装体Xの断面図である。実装体Xは、実施の形態1と同様の光デバイス10および母基板1を備えている。ただし、ACFは用いず、光デバイス10側に、20μm径の金スタッドバンプ34を形成している。そして、200℃に加熱した状態で、直接超音波により金スタッドバンプ34と、第1,第2配線パッド5,6とを接合した。そして、開口1aに光ファイバを差し込んで、通電試験を行なった。このように、開口に光ファイバーを挿入した構造は、フェルールと呼ばれている。
【0037】
比較例1,2についての測定結果は、以下の通りである。
比較例1では、電流8mA通電時のファイバ端出力が0.1mW以下であり、必要な光出力が全く得られないことが判明した。
比較例2では、電流8mA通電時のファイバ端出力が1.2mWであり、実施例1とほぼ同等であった。しかし、ダイシェア強度はわずか20gしかなく、信頼性に乏しいことが分かった。
【0038】
さらに、実施例1では、光デバイスとして、図5(c)に示すような受光部,p電極,n電極のパターンを有するフォトダイオード(PD)を作成した。このPDも、鎖状Ni分散型ACFを用いて実装されている。ACFは、15μm厚で赤外領域(850nm近傍)での透過率80%となるように調整されている。
図8(a)は、実施例1のVCSEL実装体と、PD実装体とを,光ファイバーを介して接続した結合ユニットを概略的に示す図である。この光通信ユニットを動作させたところ、PDから十分な強度の信号を得ることに成功した。この結合ユニットは、いわばワイボン完全フリーの信頼性の高い光インターコネクションユニットと言える。
このとき、光ファイバーは光導波部材として機能する。そして、母基板1の開口1aは、光導波部材との光伝達部である。
【0039】
図8(b)は、実施例1の別例における光導波部材を設けた構造を示す図である。この構造では、母基板1の上面上に、光導波部材40が設けられている。光導波部材40は、たとえばPMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂からなる棒状の部材である。そして、光導波部材40の先端には、VCSELの発光を受ける光伝達部である斜面41が形成されている。
このような構造によっても、光導波部材40を介して、外部機器とVCSEL(光デバイス)との光通信を行うことができる。
【実施例2】
【0040】
次に、プリント基板上に超低背デバイス(LED)を設けた実装体に係る実施例2について説明する。
図9(a)〜(c2)は、順に、実施例2に係るLEDおよび実装基板の平面図,ならびに実装体の断面図である。
図9(a)に示すように、本実施例のLEDは、主面側にp電極およびn電極を有する青色発光ダイオード(GaN系LED)である。チップ寸法は、300μm角、厚み60μmであって、透明サファイア基板上にエピタキシャル成長されたGaN層を利用している。
図9(b)に示すように、実装側基板は、p電極およびn電極を有し、厚みは80μmの超薄型プリント基板である。
【0041】
上記実装基板上に、鎖状Ni分散型ACF(透明シリコーン基材)を用いてLEDを実装した。ACFは、10μm厚で、可視領域(450nm近傍)での透過率が80%となるように調整されている。
LEDをフリップチップ状態にして、電極同士を相対向させ、ACFを挟んで、実装基板上にマウントした。190℃に加熱しながら、0.5Nの圧力を印加して、30秒保持したところ、LEDは強く基板に接着された。
さらに、ポッティング法により、シリコーン樹脂をLED全面に流し込んで、樹脂封止を行い、1608サイズに実装基板ごと切断した。
図9(c2)は、完成した実装体の断面で図である。図9(c1)は、比較例の実装体の断面図である。この比較例では、ワイヤボンディングを用い、アンダーフィルによるチップボンディングを行っている。図9(c1)と図9(c2)とは、寸法を比較するために同じスケールで示している。
【0042】
図9(c2)に示す実施例2に係る実装体により、ワイヤボンディングを用いた実装法に比べて、大幅に寸法を低減することができる。
なお、透明サファイア基板を用いているので、図9(c2)中の矢印に示すように、LEDの両面から出光する光を効率よく利用することができる。つまり、母基板にミラー膜を設けて、LEDから主面側に出光される光を上方に反射させ、LEDから裏面側に出光される光はそのまま裏面から出光させることができる。
【0043】
本実施例の実装体に対して、実装基板の電極パターンを通してLEDに電流注入を行ったところ、電流5mAの通電時に、2mWの全光光出力を積分球にて観測した。
本実施例に係る実装体の厚みは、わずか0.16mmである。これまでのシリコーン接着剤とワイヤボンディングを用いて実装した低背型LED実装体の最小厚み記録であった0.2mmを大きく更新した。
また、本実施例のLEDは、透明サファイヤ基板側からの光取り出しも併せると、電流5mAで1.2mWの光出力が得られた。これは、従来の低背型LEDの光出力記録を更新するものである。
【0044】
(ACFの製造工程)
次に、上記実施の形態における,鎖状金属粒子を分散させたACFの製造工程について説明する。図10は、ACF製造工程を示す斜視図である。
まず、基材フィルム上に、Ni粒子を分散させた樹脂液を塗布する。そして、基材フィルムおよび樹脂液を、乾燥炉中で、磁石を上下に配置したNi粒子配向器の間を通す。これにより、磁化したNi粒子同士が上下にひも状につながって、鎖状Ni粒子(鎖状金属粒子)が形成される。
乾燥炉中で樹脂液が乾燥することで、樹脂が固化され、鎖状Ni粒子の形状および位置が樹脂内で固定される。これにより、ACFが形成される。
その後、膜厚検査、配向検査を経て、ACFは上下面からラミネートされて、樹脂シート状のACFが完成される。
【0045】
図10の下部には、Ni粒子が配向する前と配向後のSEM写真が表示されている。配向前は、細かいNi粒子が密に分散している。配向後は、Ni粒子同士が集合して鎖状Ni粒子の固まりとなり、かつ、鎖状Ni粒子同士の間隔が拡大している。
つまり、配向前は、Ni粒子が密に分散していることで、樹脂膜の光透過率は高くない。このことから、従来のACFを光の通路として機能させるという発想そのものが生じなかったものと思われる。
それに対し、配向後は、鎖状Ni粒子同士の間隔が拡大することで、樹脂膜の光透過率が著しく向上することがわかる。本発明者達は、この点に着目したのである。
【0046】
図11(a),(b)は、鎖状Ni粒子を分散させたACFの電極間接続を行う前後における構造を示すSEM写真図,および3D−FIB図である。図11(b)に示すように、上電極と下電極との間に、鎖状Ni粒子が介在し、両者が電気的に接続されていることがわかる。
【0047】
以上のように、鎖状金属粒子を分散させたACFの製造工程は、簡素なものであり、格別高価な装置も不要である。よって、従来の球状の金属粒子を分散させたACFに比べても、それほど製造コストが高くなるわけではない。よって、ワイヤボンディングを行う工程に比べ、低コストを維持することができる。
【0048】
(その他の実施の形態)
上記実施の形態および各実施例では、光デバイスをフリップチップ実装している。しかし、本発明の実装体は、必ずしもフリップチップ実装したものには限定されない。バルクGaNを用いた面発光レーザー等では、基板の主面側にp電極が、裏面側にn電極が設けられる。また、活性領域から上下に出光されるレーザ光を利用する場合には、必ずしもフリップチップ実装しなくてもよい。かかる場合においても、ACFが光の通路となっていることで、光デバイスの利用性が拡大し、ワイヤボンディング数も片側だけで済むので低減することができる。さらに、スルーホールを利用して、上面電極を裏面側に引き出すことも可能である。その場合でも、透明基板を用いた光デバイスであれば、ACFを光の通路として機能させることができる。
よって、低コストと高信頼性とを維持しつつ、光デバイスの利用性を拡大する,という本発明の基本的な効果を発揮することができる。
【0049】
上記開示された本発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の実装体は、レーザダイオード、フォトダイオード、太陽電池などの光デバイスの実装に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る実装体の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の変形例に係る実装体の構造を示す断面図である。
【図3】(a),(b)は、実施の形態に係る実装体の組み立て手順を示す断面図である。
【図4】(a),(b)は、鎖状Ni粒子の濃度−光透過率(可視領域)との関係を示す図、および光透過率の波長依存性を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は、順に、実施例1で用いた光デバイス,実装基板(実装基体),および受光用PDの構造を示す平面図である。
【図6】(a),(b)は、実施例1におけるILV測定および光出力−波長特性を示す図である。
【図7】実施例1の比較例2に係る実装体の断面図である。
【図8】(a)、(b)は、順に、実施例1およびその別例に係る光導波部材を備えた実装体の例を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c2)は、順に、実施例2に係るLEDおよび実装基板の平面図,ならびに実装体の断面図である。
【図10】ACF製造工程を、Ni粒子の配向表示写真とと共に示す斜視図である。
【図11】(a),(b)は、鎖状Ni粒子を分散させたACFの電極間接続を行う前後における構造を示す顕微鏡写真図である。
【図12】(a)〜(c)は、順に、ワイヤボンディングを用いた実装法、米フリップチップ実装法,およびアンダーフィルを用いたフリップチップ実装法の手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 母基板(実装基体)
1a 開口(光伝達部)
5 第1配線パッド
6 第2配線パッド
10 光デバイス
11 動作領域
12 光ガイド領域
13 酸化狭窄層
14 pコンタクト領域
15 p型電極
16 n型電極
30 ACF(異方導電性膜)
31 鎖状金属粒子
32 金属粒子
34 金スタッドバンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスを内蔵した光デバイスを実装した実装体に係り、特に信頼性向上対策に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの実装方法としては、銀ペーストやハンダなどのチップボンディングと、ワイヤボンディングによる電極接続とを別々に行う方法が一般的である。
図12(a)は、一般的な実装方法として、ワイヤボンディングを用いる方法の手順を示している。図12(a)に示す方法では、母基板101の上に、銀ペースト102を塗布し、この上に半導体チップ110をマウントする。この例では、半導体チップ110は、垂直方向共振型半導体レーザである。半導体チップ110には、nコンタクト領域112と、活性領域を含むメサ領域114と、p型電極115と、n型電極116とが設けられている。アニール後、母基板101上の電機(図示せず)と、p型電極115,n型電極116とを、ボンディングワイヤ121,122により、それぞれ接続する。
ただし、上記方法では、工程も多く、製造コストの低減には一定の限界がある。
【0003】
そこで、低コスト化を図るものとして、チップボンディングと電極接続とを一度に行うフリップチップ実装法がある。 図12(b)は、ベアフリップチップ法の手順を示している。まず、図12(a)に示す半導体チップ110と同様の半導体チップ110を準備する。そして、半導体チップ110のp型電極115,n型電極116の上に、それぞれスタッドバンプ123,124を設ける。次に、半導体チップ110を反転し、いわゆるフリップチップ状態で、母基板101上に搭載する。そして、超音波圧着により、スタッドバンプ123,124を介して、各電極115,116と母基板101の電極とを接合する。この方法は、非特許文献1の図4に示すアンダーフィルを省略した構造に相当する。
このフリップチップ実装法は、IC等の電子デバイスを中心に広がっている。ただし、後述するように、ベアフリップチップ実装法では、信頼性に難点がある。
【0004】
図12(c)は、アンダーフィルを用いたフリップチップ実装法の手順を示している(非特許文献1の図4参照)。まず、ベアフリップチップ法と同様の半導体チップ110のp型電極115,n型電極116の上に、それぞれスタッドバンプ123,124を設ける。次に、母基板101の上にアンダーフィル樹脂130を塗布する。次に、半導体チップ110を反転し、いわゆるフリップチップ状態で、アンダーフィル樹脂130の上に搭載する。そして、超音波圧着により、スタッドバンプ123,124を介して、各電極115,116と母基板101の電極とを接合する。このとき、アンダーフィル樹脂130は、接続部分を含むチップー母基板間の空間を埋める。
アンダーフィルを介在させることにより、ベアフリップチップ法の難点が解消されており、最近では、この方法の採用が拡大されつつある。
【非特許文献1】民生機器向けフリップチップ接続技術開発(FIND Vol.20 No.2/No.3 002 p.6-10)
【特許文献1】特開2003−331951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記フリップチップ実装技術を、そのまま光デバイスに適用しようとすると、種々不具合が生じる。
図12(b)に示すベアフリップチップの場合には、圧着の際の超音波によって、チップ内の活性領域に悪影響を与えるおそれがある。また、接合部がバンプ表面の圧着によってつぶれた部分のみなので、横方向の応力に抗するダイシェア強度が弱いという難点がある。これは、銀ペーストのように、チップ−母基板間の空間を埋める部材がないからである
また、重要な機能をもつ電極やチップ表面が実装時に基板側部材と接触して傷が生じたり、酸化による機能劣化などが生じるおそれがある。
【0006】
図12(c)に示すアンダーフィルを用いた場合、スペースが樹脂で埋められるので、ダイシェア強度は保持しうる。また、アンダーフィル130が介在することで、基板側部材との接触による損傷も回避しうる。
しかしながら、圧着の際の超音波によって、チップ内の素子に悪影響を与えるおそれは、依然として残る。
また、フリップチップ状態の光デバイスの場合、通常、光の授受のために、母基板101に光路となる開口を設ける。すると、流動性が必要とされるアンダーフィル130が開口に流れ込んで、トラブルを生じさせるおそれがある。すなわち、開口に流れ込んだ樹脂が開口をふさぐことで、光の透過性を低下させるなど、種々不具合が生じる。
【0007】
本発明の目的は、従来のフリップチップ実装法と同等の低コスト性および高信頼性を維持しつつ、光デバイスの利用性を拡大しうる実装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実装体は、一部に基体側導体を有する実装基体上に、一部にチップ側導体を有する光デバイスを搭載した実装体である。光デバイスは、実装基体に対向して、かつ、チップ側導体を前記基体側導体の上方に位置させて配置されている。
そして、光デバイスと実装基体との間には、チップ側導体と基体側導体とを電気的に接続するとともに、光デバイスに出入りする光の通路となる異方導電性膜が介在している。
異方導電性膜とは、ACF(Anisotropic Conductive Film)と略称されるものである。異方導電性膜は、膜面方向(横方向)には導電性を有しておらず、膜面にほぼ垂直な方向(縦方向)に導電性を有している。一般には、異方導電性膜は、絶縁樹脂内に、導電性粒子を分散させたものである。
【0009】
この構造により、光デバイスで生成された光を基体側の方向に出光したり、逆方向から光を光デバイスに入光させることが可能になる。従来、ACFは光とは無関係の電子デバイスや、配線板の接続に応用されている。しかし、導電性粒子(金属粒子)が存在するので、一般には透明性が悪いことから、ACFを用いて、光デバイスの光を通過させることは、考えられていなかった。
それに対し、本発明者たちは、異方導電性膜の中には光透過性のよいものがあることに着目し、異方導電性膜に、チップボンディングと電気的接続とに加えて、光の通路という新たな機能を与えることを想到した。つまり、実装の分野において、新たな利用法を切り開くものである。
光デバイスは、フリップチップ状態であってもよいし、フリップチップ状態でなくてもよい。本発明の実装体は、フリップチップ実装でなくても、フリップチップ実装法の利点であるチップボンディングと電気的接続とに加えて、光の授受という新たな機能を与えることができるからである。透明性のワイドバンドギャップ半導体を用いた光デバイスの場合、裏面側から光を出光することも可能である。
異方導電性膜は、アンダーフィルとは異なり、粘性を比較的高く調節することが容易である。よって、実装基体側に開口があっても、開口をふさがないようにすることも容易である。また、超音波を用いず、熱圧着や紫外線照射によって接続を行うので、実装時における光デバイスの損傷はほとんど生じない。
しかも、熱圧着や紫外線照射という簡単な接続法が採用できるので、製造コストを低減することができる。また、光デバイス−実装基体間のスペースが異方導電性膜によって埋められるので、ダイシェア強度も確保することができる。
以上のことから、本発明の実装体により、光デバイスの実装に際し、低コストと高信頼性とを維持しつつ、光デバイスの利用性を高めることができる。
【0010】
異方導電性膜は、使用光に対して60%以上の光透過率を有していることが好ましい。発明者たちの実験によると、60%以上の光透過率を有していれば、異方導電性膜を光の通路として利用することが容易であることが判明している。
使用光は、一般に、可視光から近赤外線の範囲、つまり400〜1600nm程度である。
【0011】
特に、異方導電性膜として、金属粒子を縦方向に連鎖させてなる鎖状金属粒子を、透光性樹脂に分散させたものが好ましい。これは、特許文献1に記載されるように、狭ピッチの電極接続に適したものであるが、金属粒子が縦方向に連鎖していることで、上下方向の光透過性も非常に高いことがわかった。
【0012】
また、鎖状金属粒子を構成する金属粒子としては、Ni粒が好ましいことがわかっている。Ni粒を用いることで、鎖状金属粒子の製造が容易であり、耐酸化性も高いなど、機能的にも優れた鎖状金属粒子が得られる。
【0013】
一般的には、光デバイスは、フリップチップ状態で配置されていることが好ましい。発光ダイオード(LED)、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を含むレーザダイオード(LD)、フォトダイオード(PD)、太陽電池(SC)などは、活性領域のある主面側にp電極とn電極とを備えることが多い。よって、通常は、光デバイスの主面側から光の授受を行うことが多く、主面を実装基体側に向けたフリップチップ実装が適している。
【0014】
実装基体における光デバイスの下方に位置する領域に、光導波部材との光伝達部が形成されていることにより、光の利用性がさらに拡大する。
【0015】
上記光伝達部が、開口である場合には、開口に、光導波部材である光ファイバーの端部を挿入しておくことが好ましい。これにより、各種外部機器との間で、光の授受を行うことが容易となる。つまり、光インターコネクションとしての利用拡大が期待できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実装体によれば、低コスト性および高信頼性を維持しつつ、光デバイスの利用性を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る実装体Aの構造を示す断面図である。
本実施の形態に係る実装体Aは、実装基体である母基板1の上方に、光デバイス10をフリップチップ状態で搭載したものである。母基板1の上面には、基板側導体である第1配線パッド5と、第2配線パッド6とが設けられている。また、母基板1には、光を通過させるための開口1aが形成されている。
【0018】
光デバイス10の主面側には、活性領域やクラッド層を含む動作領域11と、光ガイド領域12と、光ガイド領域12を両側から挟む酸化狭窄層13と、pコンタクト領域14とが設けられている。さらに、光デバイス10の主面側に、チップ側導体である、各1対のp型電極15とn型電極16とが設けられている。なお、n型電極16の直下領域は、nコンタクト領域となっている。
【0019】
ここで、本実施の形態の特徴は、光デバイス10と母基板1との間に、ACF(異方導電性膜)30が介在している点である。本実施の形態では、ACF30は、光透過性樹脂内に鎖状金属粒子31を分散させたものである。
そして、ACF30中の鎖状金属粒子31により、p型電極15と第1配線パッド5とが電気的に接続され、n型電極16と第2配線パッド6とが電気的に接続されている。
【0020】
ACF30の光透過性樹脂としては、エポキシ樹脂,アクリル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリウレタン樹脂,シリコーン樹脂などが用いられる。エポキシ樹脂を用いる場合、加熱により硬化するタイプ、光照射によって硬化するタイプ、などがあるが、いずれを用いてもよい。
本実施の形態のACF30中の鎖状金属粒子31は、ひも状に細長く、良導体の金属(Ni)によって構成されている。電流は、ひも状の鎖状金属粒子31の長手方向に、スムースに流れる。このため、各電極15,16と各パッド5,6との導電性を高く維持することができる。ACF30の製造方法については、後に詳しく説明する。
鎖状金属粒子30を構成する金属は、Ni(ニッケル)に限られず、Fe(鉄),Co(コバルト),およびそれらの合金など、磁性を有するものが望ましい。ただし、Au(金),Ag(銀),Cu(銅),Pd(パラジウム),Rh(ロジウム)などの貴金属などでもかまわない。
【0021】
本実施の形態のACF30には、縦方向につらなる鎖状金属粒子31が分散されているので、ACF30の光透過率が非常に高い点が特徴である。したがって、光デバイス10で生成された光は、図中矢印で示すように、ACF30を通過して母基板1の開口1aから出光する。また、開口1aから入光した光は、ACF30を通過して光デバイス10に到達する。つまり、ACF30は光の通路になっている。
このように、ACF30に、チップボンディング機能、電気的接続機能に加えて、光の通路として機能させている。
【0022】
図3(a),(b)は、本実施の形態に係る実装体Aの組み立て手順を示す断面図である。
まず、図3(a)に示すように、母基板1の上方に光デバイス10をフリップチップ状態で配置し、その間にACF30を介在させる。このとき、ACF30として、固体のシート状のものを使用する。ただし、液状のACF30を塗布してもよい。
次に、光デバイス10と母基板1との間に押圧力を印加しつつ、加熱するか、紫外線を照射するかにより、ACF30の樹脂を硬化させる。これにより、各電極15,16と各パッド5,6とが導通状態となる。光デバイス10の基板が、サファイア,バルクGaN等の紫外線を透過する材質である場合には、紫外線照射型を用いることができる。
以上の工程によって、図3(b)に示す実装体Aが得られる。実装体Aについては、すでに説明した通りである。
【0023】
本実施の形態によると、以下の効果を発揮することができる。
本実施の形態では、ACF30に、チップボンディング機能、電気的接続機能に加えて、光の通路として機能させている。このうち、チップボンディング機能と電気的接続機能とは、従来のフリップチップ実装法においても、満たされている。そこで、従来のフリップチップ実装法と、本実施の形態の実装法とを比較すると,以下の通りである。
以上のように、本実施の形態の実装工程は、非常に簡素なものである。したがって、従来のフリップチップ実装と同様に、製造コストを安価に抑えることができる。また、光デバイス10−実装基体1間のスペースがACF30によって埋められるので、ダイシェア強度も確保することができる。また、超音波を用いず、熱圧着や紫外線照射によって接続を行うので、実装時における光デバイス10の損傷はほとんど生じない。
以上の点は、従来のフリップチップ実装法で、アンダーフィルを用いる方法と同等である。つまり、ベアフリップチップ実装法に対する優位性を保持している。
【0024】
一方、従来のフリップチップ実装法で、アンダーフィルを用いた場合には、金スタッドバンプを用い、超音波による接合を行うことで、デバイスに損傷を与えるおそれがある。それに対し、本実施の形態のACF30を用いた場合、圧力印加と、熱硬化処理または紫外線照射による硬化処理を行うだけでよい。つまり、超音波の印加は不要であるので、デバイスの損傷波ほとんど生じない。
【0025】
また、従来のフリップチップ実装法におけるアンダーフィルを、光の通路として機能させようとすると、実装基体1の開口1aをふさぐなどの不具合が生じる。
それに対し、ACF30は、固体シート状のものを用いることで、実装基体1に開口1aがあっても、開口1aをふさぐことはない。したがって、後述するごとく、開口1aに光ファイバーを挿入して,外部機器との光の授受を行うことも容易である。よって、上記従来の不具合を解消することができる。
【0026】
以上のことから、ACF30を利用した実装体Aにより、光デバイス10の実装に際し、低コストと高信頼性とを維持しつつ、光デバイス10の利用性を高めることができる。
【0027】
さらに、ACF30を用いることで、通常のフリップチップ実装に必要なバンプをなくすことも可能である(図1、図3参照)。よって、バンプをなくすことで、製造コストのさらなる低減も可能となる。
【0028】
特に、本実施の形態では、ACF30として、鎖状金属粒子を分散させたものを用いている。この構成により、汎用されている金属粒子を樹脂中に分散させたものに比べ、光の透過率が飛躍的に向上する。よって、本実施の形態のACF30は,光の通路として特に高い機能を発揮することができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、光デバイス10として、垂直共振型の面発光レーザ(VCSEL)を用いたが、光デバイスはこれに限定されるものではない。光デバイスが、他の構造の半導体レーザ、フォトダイオード(PD)等の受光素子であってもよい。
ただし、発光ダイオード(LED)、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を含むレーザダイオード(LD)フォトダイオード(PD)、太陽電池(SC)などは、活性領域のある主面側にp電極とn電極とを備えることが多いので、本発明に特に適している。
【0030】
−実施の形態の変形例−
図2は、実施の形態の変形例に係る実装体Aの構造を示す断面図である。
図2において、図1と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付して、説明を省略する。本変形例において、光デバイス10および実装基体1の構造は、実施の形態と同じであり、ACF30の構造のみが異なる。
本変形例においては、ACF30は、光透過性を有する樹脂内に、球状の金属粒子32を分散させたものである。光デバイス10と母基板1との間に押圧力を印加しつつ、加熱するか、紫外線を照射するかにより、ACF30の樹脂を硬化させる。すると、各電極15,16と各パッド5,6との間に存在する金属粒子32同士がつながる。これにより、各電極15,16と各パッド5,6とが導通状態となる。
【0031】
本変形例によっても、ACF30の光透過率が十分高ければ、実施の形態と同じ効果が得られる。ただし、横方向にも相当に寸法がある金属粒子32は、光を遮断する割合が実施の形態における鎖状金属粒子31よりも大きい。また、図2に示す金属粒子32aのように、電極−配線パッド間で押しつぶされた金属粒子32aは大きく横方向に広がる。したがって、本変形例のACF30の透過率は、実施の形態よりも低下する。
【0032】
図4(a),(b)は、鎖状金属粒子31である鎖状Ni粒子の濃度と、ACF30の光透過率(可視領域)との関係を示す図、および光透過率の波長依存性を示す図である。発明者達の実験では、鎖状Ni濃度が数%程度でも電気的な接続の信頼性は確保できる。また、光透過率が60%以上であれば、光デバイスや光デバイスの動作を確保できることがわかっている。
図4(a)に示されるように、本実施の形態の鎖状Ni粒子を含有したACFの場合、実線Lncに示すような粒子濃度−透過利率特性を示す。透過率が60%の範囲に限定して、実線Lncをリニアな特性線に近似すると、破線Lniとなる。
図4(b)は、鎖状Ni粒子を分散させた透過率80%のACFを熱硬化させた場合の非狩生透過率の波長依存性を評価したものである。同図からわかるとおり、可視光から近赤外光に亘って,広い波長範囲で十分な透過特性を示していることがわかる。
一方、現在市販されている金属粒子を含有したACFの場合、粒子濃度は不明だが、光透過率は、30%を少し超える程度である(点線Lpa参照)。ただし、点線Lpaは、粒子濃度が増大しても、光透過率が一定であるという意味ではない。
したがって、粒子濃度が電気的接続を確保できる範囲で、光透過率が60%以上となるように、金属粒子の材質,形状,分散性等を調整することで、上記変形例においても、実施の形態の基本的な効果を得ることはできる。
【実施例1】
【0033】
実施例1として、光ファイバ接続用フェルール上の面発光レーザ(VCSEL)および受光用の光デバイスについて、特性を調べた。図5(a)〜(c)は、順に、実施例1で用いた光デバイス,実装基板(実装基体),および受光用PDの構造を示す平面図である。
図5(a)に示すように、光デバイスは、主面側に発光部とp電極,n電極を有する垂直共振器型面発光レーザ(GaAs系VCSEL)である。
図5(b)に示すように、実装基板は、マルチモード光ファイバ(120μm径)を挿入する開口を有している。実装基板は、125μmピッチで、幅が相等しいp電極,n電極を備えている。
【0034】
上記実装基板上に、鎖状Ni粒子分散型ACF(透明エポキシ基材)を光デバイス全面が覆われるように貼り付けた(貼り付け領域は点線部より大)。ACFは、15μm厚で赤外領域(850nm近傍)での透過率80%となるように調整されている。次に、光デバイスをフリップチップ状態で、電極パターン同士が相対するように、実装基板上にマウントした。そして、190℃に加熱しながら、0.3Nの圧力を印加して30秒保持したところ、光デバイスは強く基板に接着された。さらに、実装基板の下面側から光ファイバを差し込み、実装基板の電極パターンを通して、光デバイスに電流注入を行なった。
図6(a),(b)は、実施例1におけるILV測定および光出力−波長特性を示す図である。図6(a)に示すように、電流8mAの通電時に、1mWの光出力が光ファイバの出力端にて観測された。また、図6(b)に示すように、光出力の最大ピークを示す波長は、850nm近傍である。
また、ダイシェア強度は100g以上を記録した。
【0035】
また、比較例1として、汎用されているACFを用いたフリップチップ実装を行なった実装体を準備した。比較例1の基本的な構造は、図2に示す実装体Aと同様である。比較例で用いたACFは、球状の微細金属粒子が分散して混入されたACF(15μm厚、透過率約30%)である。
【0036】
また、比較例2として、ベアフリップチップ実装による実装体を準備した。図7は、比較例2に係る実装体Xの断面図である。実装体Xは、実施の形態1と同様の光デバイス10および母基板1を備えている。ただし、ACFは用いず、光デバイス10側に、20μm径の金スタッドバンプ34を形成している。そして、200℃に加熱した状態で、直接超音波により金スタッドバンプ34と、第1,第2配線パッド5,6とを接合した。そして、開口1aに光ファイバを差し込んで、通電試験を行なった。このように、開口に光ファイバーを挿入した構造は、フェルールと呼ばれている。
【0037】
比較例1,2についての測定結果は、以下の通りである。
比較例1では、電流8mA通電時のファイバ端出力が0.1mW以下であり、必要な光出力が全く得られないことが判明した。
比較例2では、電流8mA通電時のファイバ端出力が1.2mWであり、実施例1とほぼ同等であった。しかし、ダイシェア強度はわずか20gしかなく、信頼性に乏しいことが分かった。
【0038】
さらに、実施例1では、光デバイスとして、図5(c)に示すような受光部,p電極,n電極のパターンを有するフォトダイオード(PD)を作成した。このPDも、鎖状Ni分散型ACFを用いて実装されている。ACFは、15μm厚で赤外領域(850nm近傍)での透過率80%となるように調整されている。
図8(a)は、実施例1のVCSEL実装体と、PD実装体とを,光ファイバーを介して接続した結合ユニットを概略的に示す図である。この光通信ユニットを動作させたところ、PDから十分な強度の信号を得ることに成功した。この結合ユニットは、いわばワイボン完全フリーの信頼性の高い光インターコネクションユニットと言える。
このとき、光ファイバーは光導波部材として機能する。そして、母基板1の開口1aは、光導波部材との光伝達部である。
【0039】
図8(b)は、実施例1の別例における光導波部材を設けた構造を示す図である。この構造では、母基板1の上面上に、光導波部材40が設けられている。光導波部材40は、たとえばPMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂からなる棒状の部材である。そして、光導波部材40の先端には、VCSELの発光を受ける光伝達部である斜面41が形成されている。
このような構造によっても、光導波部材40を介して、外部機器とVCSEL(光デバイス)との光通信を行うことができる。
【実施例2】
【0040】
次に、プリント基板上に超低背デバイス(LED)を設けた実装体に係る実施例2について説明する。
図9(a)〜(c2)は、順に、実施例2に係るLEDおよび実装基板の平面図,ならびに実装体の断面図である。
図9(a)に示すように、本実施例のLEDは、主面側にp電極およびn電極を有する青色発光ダイオード(GaN系LED)である。チップ寸法は、300μm角、厚み60μmであって、透明サファイア基板上にエピタキシャル成長されたGaN層を利用している。
図9(b)に示すように、実装側基板は、p電極およびn電極を有し、厚みは80μmの超薄型プリント基板である。
【0041】
上記実装基板上に、鎖状Ni分散型ACF(透明シリコーン基材)を用いてLEDを実装した。ACFは、10μm厚で、可視領域(450nm近傍)での透過率が80%となるように調整されている。
LEDをフリップチップ状態にして、電極同士を相対向させ、ACFを挟んで、実装基板上にマウントした。190℃に加熱しながら、0.5Nの圧力を印加して、30秒保持したところ、LEDは強く基板に接着された。
さらに、ポッティング法により、シリコーン樹脂をLED全面に流し込んで、樹脂封止を行い、1608サイズに実装基板ごと切断した。
図9(c2)は、完成した実装体の断面で図である。図9(c1)は、比較例の実装体の断面図である。この比較例では、ワイヤボンディングを用い、アンダーフィルによるチップボンディングを行っている。図9(c1)と図9(c2)とは、寸法を比較するために同じスケールで示している。
【0042】
図9(c2)に示す実施例2に係る実装体により、ワイヤボンディングを用いた実装法に比べて、大幅に寸法を低減することができる。
なお、透明サファイア基板を用いているので、図9(c2)中の矢印に示すように、LEDの両面から出光する光を効率よく利用することができる。つまり、母基板にミラー膜を設けて、LEDから主面側に出光される光を上方に反射させ、LEDから裏面側に出光される光はそのまま裏面から出光させることができる。
【0043】
本実施例の実装体に対して、実装基板の電極パターンを通してLEDに電流注入を行ったところ、電流5mAの通電時に、2mWの全光光出力を積分球にて観測した。
本実施例に係る実装体の厚みは、わずか0.16mmである。これまでのシリコーン接着剤とワイヤボンディングを用いて実装した低背型LED実装体の最小厚み記録であった0.2mmを大きく更新した。
また、本実施例のLEDは、透明サファイヤ基板側からの光取り出しも併せると、電流5mAで1.2mWの光出力が得られた。これは、従来の低背型LEDの光出力記録を更新するものである。
【0044】
(ACFの製造工程)
次に、上記実施の形態における,鎖状金属粒子を分散させたACFの製造工程について説明する。図10は、ACF製造工程を示す斜視図である。
まず、基材フィルム上に、Ni粒子を分散させた樹脂液を塗布する。そして、基材フィルムおよび樹脂液を、乾燥炉中で、磁石を上下に配置したNi粒子配向器の間を通す。これにより、磁化したNi粒子同士が上下にひも状につながって、鎖状Ni粒子(鎖状金属粒子)が形成される。
乾燥炉中で樹脂液が乾燥することで、樹脂が固化され、鎖状Ni粒子の形状および位置が樹脂内で固定される。これにより、ACFが形成される。
その後、膜厚検査、配向検査を経て、ACFは上下面からラミネートされて、樹脂シート状のACFが完成される。
【0045】
図10の下部には、Ni粒子が配向する前と配向後のSEM写真が表示されている。配向前は、細かいNi粒子が密に分散している。配向後は、Ni粒子同士が集合して鎖状Ni粒子の固まりとなり、かつ、鎖状Ni粒子同士の間隔が拡大している。
つまり、配向前は、Ni粒子が密に分散していることで、樹脂膜の光透過率は高くない。このことから、従来のACFを光の通路として機能させるという発想そのものが生じなかったものと思われる。
それに対し、配向後は、鎖状Ni粒子同士の間隔が拡大することで、樹脂膜の光透過率が著しく向上することがわかる。本発明者達は、この点に着目したのである。
【0046】
図11(a),(b)は、鎖状Ni粒子を分散させたACFの電極間接続を行う前後における構造を示すSEM写真図,および3D−FIB図である。図11(b)に示すように、上電極と下電極との間に、鎖状Ni粒子が介在し、両者が電気的に接続されていることがわかる。
【0047】
以上のように、鎖状金属粒子を分散させたACFの製造工程は、簡素なものであり、格別高価な装置も不要である。よって、従来の球状の金属粒子を分散させたACFに比べても、それほど製造コストが高くなるわけではない。よって、ワイヤボンディングを行う工程に比べ、低コストを維持することができる。
【0048】
(その他の実施の形態)
上記実施の形態および各実施例では、光デバイスをフリップチップ実装している。しかし、本発明の実装体は、必ずしもフリップチップ実装したものには限定されない。バルクGaNを用いた面発光レーザー等では、基板の主面側にp電極が、裏面側にn電極が設けられる。また、活性領域から上下に出光されるレーザ光を利用する場合には、必ずしもフリップチップ実装しなくてもよい。かかる場合においても、ACFが光の通路となっていることで、光デバイスの利用性が拡大し、ワイヤボンディング数も片側だけで済むので低減することができる。さらに、スルーホールを利用して、上面電極を裏面側に引き出すことも可能である。その場合でも、透明基板を用いた光デバイスであれば、ACFを光の通路として機能させることができる。
よって、低コストと高信頼性とを維持しつつ、光デバイスの利用性を拡大する,という本発明の基本的な効果を発揮することができる。
【0049】
上記開示された本発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の実装体は、レーザダイオード、フォトダイオード、太陽電池などの光デバイスの実装に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る実装体の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の変形例に係る実装体の構造を示す断面図である。
【図3】(a),(b)は、実施の形態に係る実装体の組み立て手順を示す断面図である。
【図4】(a),(b)は、鎖状Ni粒子の濃度−光透過率(可視領域)との関係を示す図、および光透過率の波長依存性を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は、順に、実施例1で用いた光デバイス,実装基板(実装基体),および受光用PDの構造を示す平面図である。
【図6】(a),(b)は、実施例1におけるILV測定および光出力−波長特性を示す図である。
【図7】実施例1の比較例2に係る実装体の断面図である。
【図8】(a)、(b)は、順に、実施例1およびその別例に係る光導波部材を備えた実装体の例を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c2)は、順に、実施例2に係るLEDおよび実装基板の平面図,ならびに実装体の断面図である。
【図10】ACF製造工程を、Ni粒子の配向表示写真とと共に示す斜視図である。
【図11】(a),(b)は、鎖状Ni粒子を分散させたACFの電極間接続を行う前後における構造を示す顕微鏡写真図である。
【図12】(a)〜(c)は、順に、ワイヤボンディングを用いた実装法、米フリップチップ実装法,およびアンダーフィルを用いたフリップチップ実装法の手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 母基板(実装基体)
1a 開口(光伝達部)
5 第1配線パッド
6 第2配線パッド
10 光デバイス
11 動作領域
12 光ガイド領域
13 酸化狭窄層
14 pコンタクト領域
15 p型電極
16 n型電極
30 ACF(異方導電性膜)
31 鎖状金属粒子
32 金属粒子
34 金スタッドバンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に基体側導体を有する実装基体上に、一部にチップ側導体を有する光デバイスを搭載した実装体であって、
前記光デバイスは、前記実装基体に対向して、かつ、前記チップ側導体を前記基体側導体の上方に位置させて配置されており、
前記光デバイスと実装基体との間には、前記チップ側導体と前記基体側導体とを電気的に接続するとともに、前記光デバイスに出入りする光の通路となる異方導電性膜が介在している、実装体。
【請求項2】
請求項1記載の実装体において、
前記異方導電性膜は、使用光に対して60%以上の光透過率を有している、実装体。
【請求項3】
請求項2記載の実装体において、
前記異方導電性膜は、金属粒子を縦方向に連鎖させてなる鎖状金属粒子を、透光性樹脂に分散させたものである、実装体。
【請求項4】
請求項3記載の実装体において、
前記鎖状金属粒子の金属粒子は、Ni粒である、実装体。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の実装体において、
前記光デバイスは、フリップチップ状態で配置されている、実装体。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の実装体において、
前記実装基体における前記光デバイスの下方に位置する領域には、光導波部材との光伝達部が設けられている、実装体。
【請求項7】
請求項6記載の実装体において、
前記光伝達部は、開口であり、
前記開口に、前記光導波部材である光ファイバーの端部が挿入されている、実装体。
【請求項1】
一部に基体側導体を有する実装基体上に、一部にチップ側導体を有する光デバイスを搭載した実装体であって、
前記光デバイスは、前記実装基体に対向して、かつ、前記チップ側導体を前記基体側導体の上方に位置させて配置されており、
前記光デバイスと実装基体との間には、前記チップ側導体と前記基体側導体とを電気的に接続するとともに、前記光デバイスに出入りする光の通路となる異方導電性膜が介在している、実装体。
【請求項2】
請求項1記載の実装体において、
前記異方導電性膜は、使用光に対して60%以上の光透過率を有している、実装体。
【請求項3】
請求項2記載の実装体において、
前記異方導電性膜は、金属粒子を縦方向に連鎖させてなる鎖状金属粒子を、透光性樹脂に分散させたものである、実装体。
【請求項4】
請求項3記載の実装体において、
前記鎖状金属粒子の金属粒子は、Ni粒である、実装体。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の実装体において、
前記光デバイスは、フリップチップ状態で配置されている、実装体。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の実装体において、
前記実装基体における前記光デバイスの下方に位置する領域には、光導波部材との光伝達部が設けられている、実装体。
【請求項7】
請求項6記載の実装体において、
前記光伝達部は、開口であり、
前記開口に、前記光導波部材である光ファイバーの端部が挿入されている、実装体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−135513(P2010−135513A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309043(P2008−309043)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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