説明

欠陥検査方法及びその装置

【課題】半導体ウェハ上に形成されたチップ内の直接周辺回路部の近辺に存在する致命欠陥を高感度に検出することができる欠陥検査装置及びその方法を提供する。
【解決手段】被検査対象物を所定の光学条件で照射する照明光学系と、被検査対象物からの散乱光を所定の検出条件で検出して画像データを取得する検出光学系とを備えた欠陥検査装置において、前記検出光学系で取得される光学条件若しくは画像データ取得条件が異なる複数の画像データから領域毎に複数の異なる欠陥判定を行い,結果を統合して欠陥候補を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光若しくはレーザ若しくは電子線等を用いて得られた被検査対象物の画像(検出画像)から微細なパターン欠陥や異物等を検出する検査に係り、特に半導体ウェハ、TFT、ホトマスクなどの欠陥検査を行うのに好適な欠陥検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検出画像と参照画像とを比較して欠陥検出を行う従来の技術としては、特許第2976550号(特許文献1)に記載の方法がある。これは、半導体ウェハ上に規則的に形成された多数のチップの画像を取得し,得られたチップの画像に対し,チップ内で周期的なパターンで形成されるメモリマット部に対しては,同一チップ内における近接する繰り返しパターンを相互に比較してその不一致部を欠陥として検出するセル比較検査と,非周期的なパターンで形成される周辺回路部に対しては,近接する複数のチップ間の対応するパターンを比較してその不一致部を欠陥として検出するチップ比較検査を個々に行うものである。
【0003】
更に,特許第3808320号(特許文献2)に記載された方法がある。これは,あらかじめ設定されたチップ内のメモリマット部に対して,セル比較検査とチップ比較検査の両者を行い,結果を統合して欠陥を検出するものである。これらの従来技術は,メモリマット部,周辺回路部の配置情報をあらかじめ定義する,もしくは事前に入手し,その配置情報に従って比較の方式を切替えるものである。
ここで,比較するパターン間の距離が近いセル比較検査がチップ比較検査よりも高感度であるが,チップ内に複数の異なる周期をもつ領域が混在している場合,従来の技術においては,セル比較検査を行うためのメモリマット部の配置情報の定義や事前の入手が煩雑になってくる。また,周辺回路部といえども,その中には,周期性のあるパターンが混在していることが少なくないが,従来の技術では,これらに対して,セル比較検査を実施するのは困難,可能であったとしてもその設定は一層煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2976550号公報
【特許文献2】特許第3808320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検査対象物である半導体ウェハでは、CMP(Chemical Mechani‐cal Polishing)による平坦化等により、隣接チップであってもパターンに膜厚の微妙な違いが生じ、チップ間の画像には局所的に明るさの違いがある。また、パターンの太さのばらつきを起因とするチップ間の明るさの違いもある。これに対し,従来方式のように、チップ内で,周期的なパターンから構成されるメモリマット部に対しては,同一チップ内の近接するパターンと比較するセル比較を行うことで対応可能であるが,チップ内に複数の異なるメモリマット部がある場合,その定義が煩雑となる。また,非メモリマット部に対しては,チップ比較を行わざるを得ず,高感度な検査が困難である。
【0006】
本発明の目的は、ユーザによる煩雑なチップ内のパターン配置情報の設定や事前の情報入力を不要とし,更には非メモリマット部においても可能な限り高感度な欠陥検出が実現可能な欠陥検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明では、パターンのレイアウト情報を入力する手段と得られたパターンのレイアウト情報から,検査対象となる画像に対し,領域毎に複数の異なる欠陥判定処理を行って,得られた複数の結果を統合して欠陥候補を検出する手段を備えることにより,領域毎に最適な欠陥判定処理を実行するようにした。
【0008】
また,本発明では、複数の異なる欠陥判定処理の1つは,領域内のさらに小領域毎にパターン周期の方向と周期(パターンピッチ)を算出して周期パターン比較を行うようにした。
【0009】
即ち、上記目的を達成するために、本発明では、試料上に形成されたパターンを検査する装置を、試料を載置して少なくとも一方向に連続的に移動可能なテーブル手段と、このテーブル手段に載置された試料を撮像して試料上に形成されたパターンの画像を取得する画像取得手段と、画像取得手段で取得したパターンの画像を複数の領域に分割するための条件を設定する分割条件設定手段と,画像取得手段で取得したパターンの画像を,分割条件設定手段で設定した分割するための条件に基づいて分割し,この分割した領域毎に領域に応じた欠陥判定処理を行って試料の欠陥を検出する領域別欠陥判定手段とを備えて構成した。
【0010】
さらに、上記目的を達成するために、本発明では、試料上に形成されたパターンを検査する方法において、試料を連続的に移動させながら試料を撮像してこの試料上に形成されたパターンの画像を取得し、この取得したパターンの画像を予め設定した複数の領域に分割するための条件に基づいて分割し,この分割した領域毎にその領域に応じた欠陥判定処理を行って試料の欠陥を検出するようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チップ比較による欠陥判定を行う領域を最小限にし,チップ間の明るさの違いを抑制し,広範囲に亘って高感度な欠陥の検出を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】画像処理部で行われる欠陥検出処理の一実施例である。
【図1B】画像処理部で行われる欠陥検出処理のフロー図である。
【図2】欠陥検査装置の構成の概念を示すブロック図である。
【図3】欠陥検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図4A】チップの画像をウェハの移動方向に分割した状態と各分割画像を複数のプロセッサに分配した状態を説明する図である。
【図4B】チップの画像をウェハの移動方向と垂直な方向に分割した状態と各分割画像を複数のプロセッサに分配した状態を説明する図である。
【図4C】欠陥候補を検出するために、複数のチップの対応する分割画像を同じプロセッサに入力した状態を示す図である。
【図5A】ウェハ上のチップの並びと各チップ内の同じ位置の部分画像の関係を示すウェハの平面図である。
【図5B】欠陥候補検出部8−2で実行する欠陥候補検出処理の構成を示す図である。
【図6A】検査対象画像を領域毎に分割して表示した図である。異なる複数の欠陥判定処理を定義する例を示す図である。
【図6B】検査対象画像のレイアウト情報を示すレイアウト図である。
【図6C】レイアウト情報により定義された各領域を示す検査対象画像である。
【図7】欠陥判定処理の流れを示すフロー図の例である。
【図8A】周期的なパターンを撮像して得た画像と、画像の矢印Bの方向に沿った各画素の明度を示したグラフである。
【図8B】周期パターン比較処理の流れを示し、差の最小値としきいちを比較して欠陥候補を検出する処理の流れを示すフロー図である。
【図8C】周期パターン比較処理の流れを示し、明度差の最小値のヒストグラムを生成して欠陥候補を検出する処理の流れを示すフロー図である。
【図9A】周期的なパターンを撮像して得た画像と、画像の矢印Bの方向に沿った各画素の明度を示したグラフである。
【図9B】複数の周期パターンの特徴と比較処理の流れを示し、複数のパターンの平均明度差の最小値のヒストグラムを生成して欠陥候補を検出する処理の流れを示すフロー図である。
【図10】(a)は画像内に設けた小領域AとBの概念を示す図である。(b)は小領域Bを垂直方向に1画素ずつずらしながら小領域A内の画素と小領域B内の画素の明度差の総和をプロットしたグラフである。
【図11A】画像取得条件の異なる2枚の画像である。
【図11B】画像取得条件の異なる2枚の画像の特徴を統合して欠陥判定を行う処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る欠陥検査装置及びその方法の実施の形態について図を用いて説明する。まず、被検査対象物として半導体ウェハを対象とした暗視野照明による欠陥検査装置の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0014】
図2は本発明に係る欠陥検査装置の実施の形態を示す概念図である。光学部1は、複数の照明部4a、4b及び複数の検出部7a、7bを有して構成される。照明部4aと照明部4bとは互いに異なる照明条件(例えば照射角度、照明方位、照明波長、偏光状態の何れか一つが異なる)の光を被検査対象物5(半導体ウェハ)に照射する。照明部4a及び照明部4bの各々から出射される照明光により被検査対象物5から夫々散乱光6a及び散乱光6bが発生し、該発生した散乱光6a及び散乱光6bの夫々を検出部7a及び検出部7bの夫々で散乱光強度信号として検出する。該検出された散乱光強度信号の夫々はA/D変換部2で増幅されてA/D変換され、画像処理部3に入力される。
画像処理部3は、前処理部8−1、欠陥候補検出部8−2、検査後処理部8−3を適宜有して構成される。画像処理部3に入力された散乱光強度信号に対し、前処理部8−1において、後述する信号補正、画像分割等を行う。欠陥候補検出部8−2は前処理部8−1で生成された画像から、後述する処理を行い、欠陥候補を検出する。検査後処理部8−3では、欠陥候補検出部8−2で検出された欠陥候補からノイズやNuisance欠陥(ユーザが不要とする欠陥種や致命性のない欠陥)を除外し、残った欠陥に対して欠陥種に応じた分類と寸法推定を行い、全体制御部9に出力する。
図2では、散乱光6a、6bは別々の検出部7a、7bで検出する実施の形態を示すが、1つの検出部で共通に検出しても構わない。また、照明部及び検出部は2つに限定されるものではなく、1又は3つ以上であっても構わない。
【0015】
散乱光6a及び散乱光6bの夫々は、各々照明部4a及び4bに対応して発生する散乱光分布を指す。照明部4aによる照明光の光学条件と照明部4bによる照明光の光学条件が異なれば、各々によって発生する散乱光6aと散乱光6bは互いに異なる。本実施例において、ある照明光によって発生した散乱光の光学的性質およびその特徴を、その散乱光の散乱光分布と呼ぶ。散乱光分布とは、より具体的には、散乱光の出射位置・出射方位・出射角度に対する、強度・振幅・位相・偏光・波長・コヒーレンシ等の光学パラメータ値の分布を指す。
【0016】
次に、図2に示す構成を実現する具体的な欠陥検査装置の一実施の形態としての構成を図3に示す。即ち、本実施例に係る欠陥検査装置は、被検査対象物(半導体ウェハ5)に対して照明光を斜方から照射する複数の照明部4a、4bと、半導体ウェハ5からの垂直方向への散乱光を結像させる検出光学系(上方検出系)7aと、斜方向への散乱光を結像させる検出光学系(斜方検出系)7bと、それぞれの検出光学系により結像された光学像を受光し、画像信号に変換するセンサ部31、32とを有する光学系1と、得られた画像信号を増幅してA/D変換するA/D変換部2と、画像処理部3と、全体制御部9とを備えて構成される。
【0017】
半導体ウェハ5はXY平面内の移動及び回転とXY平面に垂直なZ方向への移動が可能なステージ(X−Y−Z−θステージ)33に搭載され、X−Y−Z−θステージ33はメカニカルコントローラ34により駆動される。このとき、半導体ウェハ5をX−Y−Z−θステージ33に搭載し、該X−Y−Z−θステージ33を水平方向に移動させながら被検査対象物である半導体ウェハ5上の異物からの散乱光を検出することで、検出結果を二次元画像として得る。
【0018】
照明部4a、4bの各照明光源は、レーザを用いても、ランプを用いてもよい。また、各照明光源の光の波長は短波長であってもよく、また、広帯域の波長の光(白色光)であってもよい。短波長の光を用いる場合、検出する画像の分解能を上げる(微細な欠陥を検出する)ために、紫外領域の波長(160〜400nm)の光(Ultra Violet Light:UV光)を用いることもできる。レーザを光源として用いる場合、それが単波長のレーザである場合には、可干渉性を低減する手段4c,4dを照明部4a,4bの夫々に備えることも可能である。この可干渉性を低減する手段4c,4dは,回転拡散板で構成してもよいし,または,互いに光路長の異なる複数の光ファイバあるいは石英板あるいはガラス板などを用いて各々が異なる光路長を持つ複数の光束を生成しこれを重ね合わせるような構成にしてもよい。照明条件(例えば照射角度、照明方位、照明波長、偏光状態等)はユーザにより選択,もしくは自動選択され,照明ドライバ15において,選択条件に応じた設定,制御を行う。
照明部4a又は4bにより照明光が照射された半導体ウェハ5から発した散乱光のうち半導体ウェハ5に対して垂直な方向に散乱した光は検出光学系7aを介してセンサ部31にて画像信号に変換される。また、半導体ウェハ5に対して斜め方向に散乱した光は検出光学系7bを介してセンサ部32にて画像信号に変換される。検出光学系7a,7bは,それぞれ,対物レンズ71a,71b及び結像レンズ72a,72bにより構成され,センサ部31,32に集光,結像される。また,検出系7a及び7bは,フーリエ変換光学系を構成しており,半導体ウェハ5からの散乱光に対する光学処理,例えば,空間フィルタリングによる光学特性の変更,調整なども行えるようになっている。ここで,光学処理として空間フィルタリングを行う場合,照明光として平行光を用いるほうが異物の検出性能が向上するため,照明部4a及び4bから発射されて半導体ウェハ5に照射される照明光は長手方向にはほぼ平行光からなるスリット状ビームとした。(このスリット状ビームを形成する手段は照明部4a及び4bの中に含まれるが、ここでは、その詳細な構成の説明を省略する。)
センサ部31、32は、イメージセンサに複数の1次元イメージセンサを2次元に配列して構成した時間遅延積分型のイメージセンサ(Time Delay Integration Image Sensor:TDIイメージセンサ)を採用し、X−Y−Z−θステージ12の移動と同期して各1次元イメージセンサが検出した信号を次段の1次元イメージセンサに転送して加算することにより、比較的高速で高感度に2次元画像を得ることが可能になる。このTDIイメージセンサとして複数の出力タップを備えた並列出力タイプのセンサを用いることにより、センサ部31,32からのそれぞれの複数の出力を並列に処理することができ、より高速な検出が可能になる。
【0019】
空間フィルタ73a,73bは,対物レンズ71a,71bのフーリエ変換面に配置されていて繰り返し規則的に形成されているパターンからの散乱光による特定のフーリエ成分を遮光し,パターンからの回折散乱光を抑制する。また,74a、74bは光学フィルタ手段であり、ND(Neutral Density)フィルタやアッテネータ等の光強度を調整が可能な光学素子、あるいは偏光板や偏光ビームスプリッタや波長板等の偏光光学素子、あるいはバンドパスフィルタやダイクロイックミラー等の波長フィルタの何れか又はそれらを組み合わせたもので構成され、検出光の光強度、偏光特性、波長特性の何れか又はそれらを組み合わせて制御する。
【0020】
画像処理部3は被検査対象物である半導体ウェハ5上の欠陥を抽出するものであって、センサ部31、32からA/D変換部2を介して入力された画像信号に対してシェーディング補正、暗レベル補正等の画像補正を行い、一定単位の大きさの画像に分割する前処理部8−1、補正、分割された画像から欠陥候補を検出する欠陥候補検出部8−2、検出された欠陥候補からNuisance欠陥やノイズを除去し、残った欠陥について欠陥種に応じた分類と寸法推定を行う検査後処理部8−3、外部から入力されるパラメータなどを受け付けて欠陥候補検出部8−2および検査後処理部8−3へセットするパラメータ設定部8−4,前処理部8−1・欠陥候補検出部8−2・検査後処理部8−3それぞれで処理中のデータ及び処理されたデータを記憶する記憶部8−5を含んで構成される。そして、画像処理部3において例えばパラメータ設定部8−4は記憶部8−5と接続して構成される。
【0021】
全体制御部9は、各種制御を行うCPU(全体制御部9に内蔵)を備え、ユーザからのパラメータなどを受け付け、検出された欠陥候補の画像、最終的に抽出された欠陥の画像等を表示する表示手段と入力手段を持つユーザインターフェース部(GUI部)36及び画像処理部3で検出された欠陥候補の特徴量や画像等を記憶する記憶装置37と接続している。メカニカルコントローラ34は、全体制御部9からの制御指令に基づいてX−Y−Z−θステージ33を駆動する。尚、画像処理部3、検出光学系7a、7b等も全体制御部9からの指令により駆動される。
【0022】
被検査対象物である半導体ウェハ5は、例えばメモリマット部と周辺回路部とを有する同一パターンのチップが多数、規則的に並んでいる。全体制御部9は半導体ウェハ5をX−Y−Z−θステージ33により連続的に移動させ、これに同期して、順次、チップの像をセンサ部31、32より取り込み、得られた2種の散乱光(6a、6b)の画像各々に対し、欠陥を含まない基準画像を自動生成し,生成した基準画像と順次取り込んだチップの画像とを比較して欠陥を抽出する。
そのデータの流れを図4Aに示す。照明部4a又h4bによりスリット状ビームが照射された半導体ウェハ5において、例えばX−Y−Z−θステージ33を走査させることにより矢印401の方向(半導体ウェハ5上に照射されたスリット状ビームの長手方向に直角な方向)に半導体ウェハ5上の帯状の領域40の画像が得られたとする。チップnを検査対象チップとした場合、41a、42a、・・、46aはセンサ部31から得られたチップnの画像をX−Y−Z−θステージ33の進行方向に6分割した分割画像(即ち,チップnを撮像した時間を6分割してそれぞれの時間ごとに得られた画像)である。また、41a’、42a’、・・、46a’は隣接するチップmをチップnと同様に6分割した分割画像である。同じセンサ部31から得られたこれらの分割画像は、縦縞で図示されている。一方、41b、42b、・・、46bはセンサ部32から得られたチップnの画像を同様にX−Y−Z−θステージ33の進行方向に6分割した分割画像である。また、41b’、42b’、・・、46b’はチップmの画像を同様に,画像を取得する方向(矢印401の方向)に6分割した分割画像である。同じセンサ部32から得られたこれらの分割画像は、横縞で図示されている。
本実施例では画像処理部3に入力される2つの異なる検出系(図3の7aと7b)の画像各々について、前処理部8−1において,分割位置がチップnとチップmとの間で対応するように分割し,欠陥候補検出部8−2に入力する。欠陥候補検出部8−2は,図4aに示すように、複数の並列に動作するプロセッサA,B,C,D・・・で構成されており、各対応する画像(例えば、センサ部31で得たチップnとチップmの対応する位置の分割画像41aと41a’、センサ部32で得たチップnとチップmの対応する位置の分割画像41bと41b’など)を同じプロセッサに入力する。各プロセッサA,B,C,D・・・は同じセンサ部から入力された各チップの対応する箇所の分割画像から欠陥候補の検出を並列に行う。なお,前処理部8−1,検査後処理部8−3も複数の処理回路,もしくは複数のプロセッサで構成し,各々並列処理が可能となっている。
このように、2つのセンサ部から光学条件と検出条件の組合せが異なる同領域の画像が同時に入力された場合、複数のプロセッサにて並列(例えば、図4AのプロセッサAとプロセッサCの並列、プロセッサBとプロセッサDの並列等)に欠陥候補の検出を行う。一方、光学条件と検出条件の組合せが異なる画像から欠陥候補の検出を時系列に行うことも可能である。例えば、プロセッサAにて分割画像41aと41a’から欠陥候補の検出を行った後、同じプロセッサAにて分割画像41bと41b’から欠陥候補の検出を行う、もしくは,同じプロセッサAにて光学条件と検出条件の組合せが異なる分割画像41a,41a’,41b,41b’を統合して欠陥候補の検出を行う,等各プロセッサに分割画像をどう割り振り,どの画像を用いて欠陥検出を行うかは自由に設定できる。
【0023】
また,得られたチップの画像の分割方向を変えて欠陥判定を行うことも可能である。そのデータの流れを図4Bに示す。上記,帯状の領域40の画像に対し,検査対象チップnについて,41c,42c,43c,44cはセンサ部31から得られた画像をセンサのステージの進行方向と垂直な方向(センサ部31の幅方向)に4分割した分割画像である。また,41c’,42c’,43c’,44c’は隣接するチップmを同様に4分割した分割画像である。これらの画像は縦縞で図示されている。同様にセンサ部32から得られ,同様に分割した画像(41d〜44d,41d’〜44d’)は斜線で図示されている。そして各対応する位置の分割画像を同じプロセッサに入力し,並列に欠陥候補の検出を行う。当然,得られた各チップの画像を分割せずに画像処理部3に入力して処理することも可能である。
【0024】
図4Bの41c〜44cはセンサ部31から得られた帯状の領域40のうち,チップnの画像,41c’〜44c’はセンサ部31から得られた隣接するチップmの画像,同様に41d〜44dはセンサ部32から得られたチップnの画像,41d’〜44d’はセンサ部32から得られたチップmの画像である。このように,同じセンサから得られた各チップの対応する位置の画像を図4Aで説明したように検出時間ごとに分割せずに同一のプロセッサに入力し,欠陥候補の検出を行うことも可能である。
【0025】
なお,図4A及び図4Bでは,隣接する2つのチップnとmの対応する分割画像が同じプロセッサに入力され,欠陥検出を行う例を示したが,図4Cに示すように,1つ又は複数のチップ(最大で半導体ウェハ5に形成されたチップの数)の対応する分割画像をプロセッサAに入力し,これらを全て用いて欠陥候補の検出を行うことも可能である。いずれにせよ、複数の光学条件の画像それぞれに対し、各チップの対応する位置の画像(分割してもしなくてもよい)を同じプロセッサに入力し、各光学条件の画像毎,もしくは各光学条件の画像を統合して欠陥候補を検出する。
【0026】
次に、各プロセッサにおいて行われる,画像処理部3の欠陥候補検出部8−2の処理の流れについて説明する。図5Aには,図4A及び図4Bに示した,半導体ウェハ5において、ステージ33の走査によりセンサ部31から得られる帯状の領域40のうち,チップ1,チップ2,チップ3,・・・,チップzとそれに対応する領域の分割画像51,52,・・・,5zとの関係を示す。また,図5Bには,分割画像51,52,・・・,5zをプロセッサAに入力し,分割画像51,52,・・・,5zにある欠陥候補を検出する欠陥候補検出部8−2の処理の構成の概要を示す。
【0027】
欠陥候補検出部8−2は,レイアウト情報読込み部502,レイアウト情報に従い,領域毎に異なる複数の処理を実行し,欠陥候補を検出するマルチ欠陥判定部503,各領域から異なる処理により検出された情報を統合するデータ統合部504,前処理部8−1から入力された画像51,52,53・・・を一旦,保存する画像メモリ505を備えている。マルチ欠陥判定部503は,複数の異なる欠陥判定処理を実行する処理部A503−1、処理部B503−2、処理部C503−3、処理部D503−4を備えている。まず,先頭のチップの画像51,2つめのチップの画像52,3つめのチップの画像53,・・・が順次,前処理部8−1を経由して欠陥候補検出部8−2に入力される。また,レイアウト情報501も入力される。欠陥候補検出部8−2は,入力された画像を一旦,画像メモリ505に保存する。
【0028】
次に,入力されるレイアウト情報501の例について図6A,図6B,図6Cを用いて説明する。図6Aの61は処理対象となる,図5Aの51,52,・・・,5zに相当する分割画像の1つであり,図6Bの62は対象画像61に対して設定されて入力されるレイアウト情報の優先度の指標値,図6Cの63〜68は対象画像61に対してレイアウト情報の優先度の指標値62により定義された各分割領域の例である。まず,レイアウト情報の優先度の指標値62は対象画像61の各領域にマルチ欠陥判定処理のうちのどの処理を割り当てるかを,その範囲とともに指定するものである。ここでは,対象画像61の上部2箇所,すなわち対象画像61のうち,図6Cに示した斜線の領域63,64を欠陥判定処理Aで,対象画像61の上部の帯状の箇所(横線の領域65)を欠陥判定処理Bで,対象画像61の下部2箇所(縦線の領域66,67)を欠陥判定処理Cで,対象画像61の全体領域を欠陥判定処理Dで行うようにレイアウト情報で指示されていることを示す例である。本例では,領域63〜67の領域は2つの異なる欠陥判定処理を行うようになっている。
【0029】
このように同じ領域に対して,複数の処理を設定することもできる。複数の異なる欠陥判定処理が実施される領域において,異なる欠陥候補が検出される場合,どちらの結果を優先するかをレイアウト情報の中で定義する。図6Bのレイアウト情報の優先度の指標値62は各欠陥判定処理の優先順位を明示的にしたものである。上にあるほど優先度が高い。例えば,領域63,64はレイアウト情報の優先度の指標値62の最上段で処理A,かつレイアウト情報の優先度の指標値62の最下段で処理Dを行うように設定されている。
【0030】
ここで領域63と64は処理Aと処理Dが行われ,基本的には処理Aと処理Dで検出された結果の論理積をとる,すなわち,処理Aと処理Dで共通に検出されたものを欠陥とする。また,検出結果が不一致なものについて,優先度の高い処理Aの結果を優先して出力することもできる。更に,処理Aと処理Dで検出された結果の論理和,すなわち,処理Aを処理Dのいずれかで検出されたものを欠陥とすることもできる。これらの処理は,図5Bのデータ統合部504で行う。図6Cの領域68(格子パターンの領域)は,欠陥判定処理Dのみを行うようになっている。
【0031】
なお,このようなレイアウト情報501はユーザインターフェース部36を介してユーザが事前に設定するが,対象のパターン配置や線幅,繰返しパターンの周期(ピッチ)などが示された設計データ(CADデータ)の入手可能であれば,設計データから各処理を割り当てる領域と処理を自動設定することも可能である。
【0032】
以上に説明した通り,本実施例では,検査対象となる分割画像(図5A中の51,52,・・・,5z)について,レイアウト情報501に基づき,領域毎に1つ以上の異なる欠陥判定処理をマルチ欠陥判定部503において実行し,欠陥候補を検出する。欠陥判定処理の例としては,検査対象画像内の各画素の特徴を,近傍チップの対応する位置の画像内の各画素の特徴と比較して,特徴の違いが大きい画素を欠陥候補として検出するチップ比較がある。
【0033】
図7に処理部A503−1で実行するチップ比較による欠陥判定処理の例を示す。検査対象画像を図5Aの左から3チップ目の画像53とすると,隣接チップの対応する位置の画像52が参照画像となり,これらの比較を行う。半導体ウェハ5は前述の通り,同一パターンが規則的に形成されており、参照画像52と検査対象画像53は本来、同一であるべきだが、多層膜が形成されている半導体ウェハ5には、チップ間の膜厚の違いに起因して、画像間には大きな明るさの違いが生じている。このため,参照画像52と検査対象画像53の間で明るさの違いが大きい可能性が高い。また、X−Y−Z−θステージ33走査時の画像の取得位置の微妙な違い(サンプリング誤差)による,パターンの位置のずれも生じている可能性がある。
【0034】
このため,チップ比較処理では最初にそれらの補正を行う。まず、参照画像52と検査対象画像53の明るさのずれを検出し、補正を行う(S701)。明るさずれの補正は,入力される画像全体で行ってもよいし,チップ比較処理の対象となる領域のみで行ってもよい。明るさのずれの検出,補正処理として、以下に最小二乗近似による例を示す。
検査対象画像53と参照画像52の対応する画素の明るさをf(x,y)、g(x,y)とすると,(数1)に示す線形関係があると仮定し、(数2)が最小となるようにa、bを算出し、これを補正係数gain、offsetとするものである。そして、検査対象画像53内の明るさ補正対象となる全画素値f(x,y)に対して、(数3)の通りに明るさの補正を行う。
【0035】
【数1】

【0036】
【数2】

【0037】
【数3】

【0038】
次に、画像間の位置のずれを検出し、補正を行う(S702)。これも同様に入力される画像全体で行ってもよいし,チップ比較処理の対象となる領域のみで行ってもよい。位置ずれ量検出、補正処理は一方の画像をずらしながら、他方の画像との間で輝度差の二乗和が最小になるずれ量を求める、もしくは、正規化相関係数が最大となるずれ量を求める方法等が一般的である。
【0039】
次に、明るさ補正、及び位置補正を行った検査対象画像53の対象領域に対して、参照画像52の対応する画素との間で特徴量を演算する(S703)。そして、対象画素の特徴量全て、あるいは、いくつかを選択し、特徴空間を形成する(S704)。特徴量は、その画素の特徴を表すものであればよい。その一実施例としては、(a)コントラスト(数4)、(b)濃淡差(数5)、(c)近傍画素の明るさ分散値(数6)、(d)相関係数、(e)近傍画素との明るさの増減、(f)2次微分値等がある。
【0040】
これらの特徴量の例は、検査対象画像53の各点の明るさをf(x,y)、対応する参照画像52の明るさをg(x,y)とすると以下の式で算出する。
【0041】
【数4】

【0042】
【数5】

【0043】
【数6】

【0044】
加えて、各画像の明るさそのものも特徴量とする。そして、これらの特徴量から1つ又は複数個の特徴量を選択し,画像内の各画素を、選択した特徴量を軸とする特徴空間に特徴量の値に応じてプロットし、正常と推定する分布を囲むようにしきい値面を設定する(S705)。設定されたしきい値面の外側にある画素、すなわち、特徴的にはずれ値となる画素を検出して(S706)、欠陥候補として出力し,レイアウト情報の優先度に従い,データ統合部504において統合判定を行う。正常範囲の推定には、ユーザが選択した特徴量に対して個々にしきい値を設定してもよいし、正常画素の特徴の分布は正規分布に従うと仮定し、対象画素が非欠陥画素である確率を求めて識別する方法でもよい。
【0045】
後者は、n個の正常画素のd個の特徴量をx1、x2、‥、xnとすると、特徴量がxとなる画素を欠陥候補として検出するための識別関数φは、(数7)、(数8)で与えられる。
【0046】
【数7】

【0047】
【数8】

【0048】
特徴空間はチップ検査の対象となる領域内の画素で形成する。なお,ここでは検査対象画像53に対し,隣接するチップの対応する位置の画像を参照画像52として,特徴の比較を行う例を述べたが,複数のチップの対応する位置の画像(図5Aの51,52,・・・5z)から統計的に生成したものを参照画像52として比較を行うこともできる。統計的な処理としては,各画素の対応する画素値の平均値を参照画像52の輝度値(数9)としてもよい。また,参照画像52の生成に用いる画像は,別の行に配列されたチップの対応する位置の分割画像(最大で半導体ウェハ5上の形成された全チップ数となる)を加えることも可能である。
【0049】
【数9】

【0050】
以上がマルチ欠陥判定部503で行われる欠陥判定処理の1つであるチップ比較処理の例である。
【0051】
欠陥判定処理の別の例としては,隣接するチップと比較するチップ比較処理の代わりに,チップ内(すなわち,同一画像内)の周期パターン領域において,近接するパターン同士を比較するセル比較処理がある。また,欠陥判定処理の別の例としては,しきい値と比較,すなわち,領域内の明るさがしきい値以上の画素を欠陥として検出するしきい値比較処理がある。更に,欠陥判定処理の別の例としては,検査対象画像内の対象領域を,更に細かい単位の小領域に分割し,小領域毎に周期パターン同士の特徴を比較して,特徴の違いが大きい画素を欠陥候補として検出する周期パターン比較がある。
図1Aに、処理部B503−2で実行する処理の例として周期パターン比較による欠陥判定処理の例を示す。101は対象となる領域の一例である。領域101は画像の垂直方向に周期性のある領域である。102は領域101内の矢印Aの位置の垂直方向の信号波形,103は領域101内の矢印Bの位置の垂直方向の信号波形である。矢印Aの位置の垂直方向のパターンの周期はA1,矢印Bの位置の垂直方向のパターンの周期はB1であり,それぞれ周期が異なる。このように,周期性のあるパターンの領域で,更に複数の周期のパターンが混在するような領域に対し,本実施例においては,周期パターン比較を行う。図1Bの100はその処理のフローである。まず,光学系1で撮像されて前処理部8−1前処理され欠陥候補検出部8−2の処理部B503−2に入力された対象領域の画像101に対し,周期性のある方向と垂直な方向(領域101においては,画像の水平方向)に領域を更に細かい小領域に分割する(S101)。そして,小領域毎に,パターンの周期を算出する(S102)。次に,小領域内の各画素について特徴量を演算する(S103)。S103の処理の例としては,先にチップ比較による欠陥判定処理の例として説明した図7のS701〜S703の処理,もしくは,S703と同様の処理がある。そして、対象画素の特徴量全て、あるいは、いくつかを選択し、算出した周期分だけ離れた画素の特徴量と比較し(S104),特徴の違いの大きい画素を欠陥候補として検出する。S104の処理の例として,図7のS704〜S706の処理と同様のものがある。また,特徴量は、その画素の特徴を表すものであればよい。その一実施例としては、チップ比較の例で示した通りである。
【0052】
図8Aは図1Aの矢印Bの位置を含む小領域における特徴量演算処理(S103),特徴比較処理(S104)の別の一例を示す。B101(○で囲った画素)を着目画素とすると,前後に1周期(B1分)離れた画素はB102,B103(□で囲った画素)である。比較する特徴を前後に1周期分離れた画素との明度の差とすると,特徴量演算処理S103に対応する処理としては,図8Bに示すように、まず,1周期分前の画素B102との明度差を算出する(S801)。続いて,1周期分後の画素B103との明度差を算出する(S802)。そしてその両者の最小値を算出する(S803)。この算出した明度差の最小値が,着目画素B101の特徴量となる。そして,特徴比較処理(S104)に対応する処理としては,明度差の最小値と,あらかじめ設定してあるしきい値を比較し(S804),明度差の最小値がしきい値よりも大きい画素を欠陥候補として検出する。S804について,特徴量(明度差の最小値)をしきい値と比較する代わりに,図8BCに示す通り,明度差の最小値のヒストグラムを生成し(S805),正規分布をあてはめて正常範囲を推定する(S806)。そして,推定した正常範囲からはずれる画素を欠陥候補として検出することもできる(S807)。
【0053】
以上に説明した例は,前後に1周期分だけ離れた画素の特徴と比較する例であったが,更に1周期分の複数倍離れたパターンを含む複数のパターンの特徴と比較することもできる。図9Aは,その処理の一例を示す。着目画素B101(○で囲った画素)について,前後にn周期(B1×n分,n=1,2,3,・・)離れた画素はC1,C2,・・,C6など(□で囲った画素)である。ここでは前後に最大3周期分まで離れた計6画素C1〜C6を特徴量に使用する場合,図1Bの特徴量演算処理(S103)に対応する処理としては,図9Bに示したように、まず,C1,C2,・・・,C6の明度の平均値を算出する(S901)。ここで,6画素C1,C2,・・・,C6の明度の平均値の代わりに,中央値でもよい。次に,6画素の平均明度値,もしくは中央明度値と,着目画素B101との差を算出する(S902)。これが,着目画素(B101)の特徴量となる。
【0054】
図1Bの特徴比較処理(S104)に対応する処理としては,図8Cで説明した処理と同様に,差のヒストグラムを形成し(S903),正規分布をあてはめて正常範囲を推定する(S904)。そして,推定した正常範囲からはずれる画素を欠陥候補として検出することもできる(S905)。
【0055】
以上の通り,画像の垂直方向(Y方向)に周期性がある場合,垂直方向に周期分だけ離れた画素を参照して特徴量を求める例を示した。着目画素の座標(x,y)に対する参照画素の座標は(x,y−B1),(x,y+B1)である。一方,画像の水平方向(X方向)に周期性がある場合,水平方向に周期分だけ離れた画素を参照して特徴量を求めることもできる。この場合の参照画素の座標は(x−B1,y),(x+B1,y)である。
【0056】
ここで,パターンの周期,周期の方向(水平方向か垂直方向か,など)は,レイアウト情報から設定してもよいが,自動で算出することも可能である。その例を図10に示す。図10(b)の91は,図10(a)の画像1000内に小領域Aを設け,その小領域と同じサイズの領域Bを垂直方向に1画素ずつずらしながら,小領域A内の画素(x,y)とB内の画素(x,y)の明度差の総和を算出し,プロットしたものである。周期的に明度差が小さくなるところが,パターン周期となる。このような明度差の変動波形を水平方向,垂直方向に算出し,波形に周期性が有るかを調べ,周期の方向と周期(パターンピッチ)を自動算出する。
【0057】
以上に説明したように,1つの光学条件により得られた画像から,周期性のあるパターン領域の欠陥候補を検出する例を述べたが,更に光学条件と検出条件の組合せが異なる画像から,欠陥候補を検出することも可能である。図11Aと図11Bとにその例を示す。図11Aの1100A,1100Bは,光学条件と検出条件の組合せが異なる条件A,条件Bで得られた,ウェハ上の特定の位置の画像である。
【0058】
これに対して,画像1100A,画像1100Bそれぞれから算出する特徴を統合して欠陥候補を検出する。その処理フローを図11Bに示す。まず,1100A,1100Bの画像各々に対し,図9Bで説明したS103の処理フローと同様に、S103AとS103Bにおいて前後にn周期分離れた画素の平均明度値を算出し(S1101A,S1101B),着目画素との差を算出し(S1102A,S1102B),特徴量とする。そして図9BのS104の処理フローで説明したのと同様に、S103A,S103Bで算出した特徴量を軸とする2次元空間に,特徴量に応じて点をプロットして特徴空間を形成する(S1103)。そして,2次元特徴空間におけるプロットした点の分布から正常範囲を推定し(S1104),正常範囲からはずれる画素を欠陥候補として検出する(S1105)。正常範囲の推定の例としては正規分布をあてはめる方法がある。
【0059】
そして,欠陥候補検出部8−2において検出した欠陥候補から、Nuisance欠陥やノイズを除去し、残った欠陥に対して欠陥種に応じた分類と寸法推定を検査後処理部8−3で行う。
本実施例により,CMP等平坦化プロセス後のパターンの膜厚の微妙な違いや、照明光の短波長化により比較するチップ間に大きな明るさの違いがあっても、それぞれの領域に最適な欠陥判定方式による欠陥候補の抽出を行うことで,チップ間の比較を最小限にとどめ,膜厚の違いが大きい領域の影響を受けない欠陥抽出を実現する。これにより,微小な欠陥(例えば,100nm以下の欠陥など)を高感度に検出することが可能となる。
【0060】
また、SiO2をはじめ、SiOF、BSG、SiOB、多孔質シリア膜、等の無機絶縁膜や、メチル基含有SiO2、MSQ、ポリイミド系膜、パレリン系膜、テフロン(登録商標)系膜、アモルファスカーボン膜等の有機絶縁膜といったlow k膜の検査において、屈折率分布の膜内ばらつきによる局所的な明るさの違いがあっても、本発明により、微小な欠陥の検出が可能となる。
【0061】
以上、本発明の一実施例を半導体ウェハを対象とした暗視野検査装置における比較検査画像を例にとって説明したが、電子線式パターン検査における比較画像にも適用可能である。また、明視野照明のパターン検査装置にも適用可能である。
検査対象は半導体ウェハに限られるわけではなく、画像の比較により欠陥検出が行われているものであれば、例えばTFT基板、有機EL基板,ホトマスク、プリント板等でも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・光学部 2・・・メモリ 3・・・画像処理部 4a,4b・・・照明部 5・・・半導体ウェハ 7a,7b・・・検出部 8−2・・・欠陥候補検出部8−3・・・検査後処理部 9・・・全体制御部 31,32・・・センサ部 36・・・ユーザインターフェース部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上に形成されたパターンを検査する装置であって、
試料を載置して少なくとも一方向に連続的に移動可能なテーブル手段と、
該テーブル手段に載置された前記試料を撮像して該試料上に形成されたパターンの画像を取得する画像取得手段と、
該画像取得手段で取得した前記パターンの画像を複数の領域に分割するための条件を設定する分割条件設定手段と,
該前記画像取得手段で取得した前記パターンの画像を,前記分割条件設定手段で設定した分割するための条件に基づいて分割し,該分割した領域毎に該領域に応じた欠陥判定処理を行って前記試料の欠陥を検出する領域別欠陥判定手段と、
を備えたことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記分割条件設定手段で設定する前記パターンの画像を複数の領域に分割するための条件は、該分割する各領域の位置,範囲,領域毎のパターンの周期性有無,周期の方向,欠陥判定処理の種類,各欠陥判定処理の優先度等の何れかを含むことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記パターンの画像を複数の領域に分割するための条件を入力するための領域分割条件入力手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記分割条件設定手段は、前記パターンの画像を複数の領域に分割するための条件を、前記パターンの設計データを用いて設定することを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記領域別欠陥判定手段は、前記分割した領域毎に該領域に応じた複数の欠陥判定処理を実行し、該実行して得られた複数の欠陥判定処理の結果を統合して試料上の欠陥を検出することを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記領域別欠陥判定手段は、前記実行する複数の欠陥判定処理のうちの1つに、領域内を更に細かい単位の小領域に分割し,
小領域毎にパターンの周期を算出し,
小領域内の各画素の特徴を算出した周期分だけ離れた画素の特徴と比較し,
特徴的はずれ値となる画素を欠陥として検出する欠陥判定処理
を含むことを特徴とする請求項5記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
試料上に形成されたパターンを検査する方法であって、
前記試料を連続的に移動させながら前記試料を撮像して該試料上に形成されたパターンの画像を取得し、
該取得した前記パターンの画像を予め設定した複数の領域に分割するための条件に基づいて分割し,
該分割した領域毎に該領域に応じた欠陥判定処理を行って前記試料の欠陥を検出する、
ことを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項8】
前記予め設定する前記パターンの画像を複数の領域に分割するための条件は、該分割する各領域の位置,範囲,領域毎のパターンの周期性有無,周期の方向,欠陥判定処理の種類,各欠陥判定処理の優先度等の何れかを含むことを特徴とする請求項7記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
前記パターンの画像を複数の領域に分割するための条件は該パターンのレイアウト情報を用いて作成されることを特徴とする請求項7記載の欠陥検査方法。
【請求項10】
前記パターンの画像を複数の領域に分割するための条件を、前記パターンの設計データを用いて設定することを特徴とする請求項7記載の欠陥検査装置。
【請求項11】
前記分割した領域毎に該領域に応じた複数の欠陥判定処理を実行し、該実行して得られた複数の欠陥判定処理の結果を統合して試料上の欠陥を検出することを特徴とする請求項7記載の欠陥検査方法。
【請求項12】
前記実行する複数の欠陥判定処理のうちの1つに、領域内を更に細かい単位の小領域に分割し,小領域毎にパターンの周期を算出し,小領域内の各画素の特徴を算出した周期分だけ離れた画素の特徴と比較し,特徴的はずれ値となる画素を欠陥として検出する処理を含むことを特徴とする請求項11記載の欠陥検査方法。
【請求項13】
試料上に形成されたパターンを検査する方法であって、
前記試料を連続的に移動させながら前記試料を撮像して該試料上に形成されたパターンの画像を取得し、
該取得したパターンの画像を処理して特定の周期で繰り返して形成されたパターンに対応する画像領域を抽出し、
該抽出した画像領域から前記特定の周期で繰返して形成されたパターンの繰返し周期を算出し,
該算出した繰返し周期の情報を用いて前記特定の周期で繰返して形成されたパターン同士の画像の特徴を比較し,
前記特定の周期で繰返して形成されたパターンの中で特徴の違いが予め設定した第1のしきい値よりも大きいパターンを欠陥として検出する
ことを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項14】
前記取得したパターンの画像を処理して周期性のないパターンに対応する画像領域を抽出し,
前記試料上の異なる領域を撮像して得られた画像内に存在する前記周期性のないパターンと同一な形状となるように形成されたパターンの画像と特徴を比較し,
該比較した特徴の違いが予め設定した第2のしきい値よりも大きいパターンを欠陥として検出し,
前記特定の周期で繰返し形成されたパターンに対応する画像領域から検出された欠陥と前記周期性のないパターンに対応する画像領域から検出された欠陥とを統合して試料上の欠陥を検出する
ステップを更に備えたことを特徴とする請求項13記載の欠陥検査方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公開番号】特開2012−63209(P2012−63209A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206810(P2010−206810)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】