説明

積層構造およびその製造方法

【課題】酸化物透明導電膜とAl合金膜との接触電気抵抗を増加させることなくAl合金が直接接続し、配線抵抗が小さく、現像液などの電解質液中でガルバニック腐食が生じにくい積層構造およびその製造方法を提供する。
【解決手段】酸化物透明導電膜とAl合金膜とが直接接続されてなる積層構造を製造する方法であって、基板上に前記酸化物透明導電膜を形成する第1の工程と、該酸化物透明導電膜上にアルミニウムよりもイオン化傾向の小さい合金成分を含有するAl合金膜を形成する第2の工程と、前記Al合金膜をアルミニウムと前記合金成分よりなる金属間化合物の析出温度以上に加熱する第3の工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型表示装置において使用される薄膜トランジスタのソース電極やドレイン電極等の各種電極、反射電極、或いはこれらを接続するための配線、蓄積容量電極、および共通電極として用いられる積層構造、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Al合金は、比抵抗が低く、加工が容易であるなどの理由により、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、フィールドエミッション表示装置などの薄型表示装置(FPD)の分野で、配線膜、電極膜、反射電極膜、蓄積容量電極、および共通電極の薄膜材料などに利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、酸化物透明導電膜であるITO膜の上に低抵抗金属であるAl合金膜が形成された積層構造が記載されている。
【特許文献1】特開平11−352515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような積層構造の電気的特性として、Al合金膜の電気抵抗率及び、酸化物透明導電膜とAl合金膜との間の接触電気抵抗が低いことが求められる。
【0005】
例えば、積層構造が液晶表示装置の走査線や信号線に用いられる場合、従来の積層構造ではAl合金膜と酸化物透明導電膜との接触電気抵抗については、配線幅が広くて長く、酸化物透明導電膜との接触面積が広い場合には問題にならなかったが、液晶パネルの高精細化、配線の狭ピッチ化、画素の高開口度化が進み配線幅が細くなるにつれてAl合金膜と酸化物透明導電膜との間の接触電気抵抗が無視できなくなっているからである。
【0006】
また、基板上に形成されたAl合金膜と酸化物透明導電膜からなる積層構造をパターンニングする際、フォトレジストの現像液(例えば、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドライド)を主成分とするもの)を用いると、Al合金膜にガルバニック腐食が生じ、ITO膜からAl合金膜が剥がれるという問題があった。ガルバニック腐食が生じるのは、電解質液(例えば上記現像液)中でのアルミニウムと酸化物透明導電膜との電極電位差が大きいためであると考えられる。
【0007】
一方、アルミニウムに合金成分を添加することによって接触電気抵抗を低減する方法もあるが、今度はAl合金膜自体の電気抵抗率が上昇してしまい、特に走査線や信号線に用いる場合には信号伝達速度が遅延するという問題が生じる。このため、アルミニウムに合金成分を添加する方法にも限界がある。
【0008】
そこで本発明は、酸化物透明導電膜とAl合金膜との接触電気抵抗を増加させることなくAl合金が直接接続し、配線抵抗が小さく、現像液などの電解質液中でガルバニック腐食が生じにくい積層構造およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできた本発明の積層構造の製造方法は、
酸化物透明導電膜とAl合金膜とが直接接続されてなる積層構造を製造する方法であって、基板上に前記酸化物透明導電膜を形成する第1の工程と、該酸化物透明導電膜上にアルミニウムよりもイオン化傾向の小さい合金成分を含有するAl合金膜を形成する第2の工程と、界面に合金成分を析出させる目的でアルミニウムと前記合金成分よりなる金属間化合物の析出温度以上に前記Al合金膜を加熱する第3の工程を有するものである。
【0010】
上記の製造方法において、第2の工程の終了後に前記第3の工程の加熱が行われることが奨励される。
【0011】
上記の製造方法において、第2の工程の進行中に前記第3の工程の加熱が行われることが奨励される。また、第2の工程の進行中および終了後の双方で前記第3の工程の加熱が行われてもよい。
【0012】
上記の製造方法において、アルミニウムよりもイオン化傾向の小さい前記合金成分がNiであり、Niの含有量が0.1〜6原子%であり、前記第3の工程における加熱温度が200℃以上とすることが望ましい。
【0013】
また、上記課題を解決することのできた本発明の積層構造は、
基板上に形成された酸化物透明導電膜と、該酸化物透明導電膜上に直接接続されたAl合金膜とを有する配線構造であって、前記Al合金膜はアルミニウムよりもイオン化傾向の小さい合金成分を含有し、かつ、アルミニウムと前記合金成分よりなる金属間化合物が前記酸化物透明導電膜との接続界面に析出しているものである。
【0014】
上記の積層構造は、アルミニウムよりもイオン化傾向の小さい前記合金成分をNiとし、Niの含有量を0.1〜6原子%とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Al合金膜に添加する合金成分を増加させることなく、ガルバニック腐食を防止しつつ、酸化物透明導電膜とAl合金膜との接触電気抵抗を低減できるため、表示装置の歩留まりが向上し、さらには表示装置の表示品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る積層構造およびその製造方法の好ましい実施形態を説明する。まず、本発明に係る積層構造が好適に用いられる部位に説明するため、液晶表示装置を例にとり、液晶表示装置の全体像から順に説明する。
【0017】
以下では、アモルファスシリコンTFT基板またはポリシリコンTFT基板を備えた液晶表示装置における積層構造およびその製造方法を代表的に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。本実施形態における積層構造は、例えば、反射型液晶表示装置等の反射電極、外部への信号入出力のために使用されるTAB(タブ)接続電極、蓄積容量電極、および共通電極にも同様に適用できる。
【0018】
1.液晶表示装置
図1を参照しながら、アクティブマトリクス型液晶表示装置に適用される代表的な液晶ディスプレイの構成および動作原理を説明する。ここでは、活性半導体層として水素化アモルファスシリコンを用いたTFT基板(以下、アモルファスシリコンTFT基板と呼ぶ場合がある。)の例を代表的に説明するが、これに限定されず、ポリシリコンを用いたTFT基板であっても良い。
【0019】
図1に示すように、液晶表示装置100は、TFT基板1と、TFT基板1に対向して配置された対向基板2と、TFT基板1と対向基板2との間に配置され、光変調層として機能する液晶層3とを備えている。TFT基板1は、絶縁性のガラス基板1a上に配置されたTFT4、透明画素電極5、走査線や信号線を含む配線部6を有している。透明画素電極5は、酸化インジウム(In)中に酸化錫(SnO)を10質量%程度含むITO膜などの酸化物透明導電膜から形成されている。TFT基板1は、TABテープ12を介して連結されたドライバ回路13及び制御回路14によって駆動される。
【0020】
対向基板2は、TFT基板1側に、絶縁性のガラス基板1bの全面に形成された共通電極7と、透明画素電極5に対向する位置に配置されたカラーフィルタ8と、TFT基板1上のTFT4および配線部6に対向する位置に配置された遮光膜9とを有している。対向基板2は、液晶層3に含まれる液晶分子を所定の向きに配向させるための配向膜11を更に有している。
【0021】
TFT基板1および対向基板2の外側(液晶層3側とは反対側)には、それぞれ、偏光板10a,10bが配置されている。
【0022】
液晶表示装置100は、対向電極2と透明画素電極5との間に形成される電界によって液晶層3における液晶分子の配向方向が制御され、液晶層3を通過する光が変調される。これにより、対向基板2を透過する光の透過量が制御されて画像が表示される。
【0023】
2.TFT基板
次に、図2を参照しながら、液晶表示装置に好適に用いられる従来のアモルファスシリコンTFT基板の構成および動作原理を詳しく説明する。図2は、図1中、Aの要部拡大図である。
【0024】
図2に示すように、ガラス基板1a上には、酸化物透明導電膜42及び走査線(ゲート配線)25が積層されている。また、酸化物透明導電膜41及びゲート電極26が積層されている。走査線25は、TFTのオン・オフを制御するため、ゲート電極26に電気的に接続されている。
【0025】
そして、ゲート電極26を覆うようにしてゲート絶縁膜(シリコン窒化膜)27が形成されている。ゲート絶縁膜27を介して走査線25と交差するように信号線(ソース−ドレイン配線)34が形成され、信号線34の一部は、TFTのソース電極28として機能する。ゲート絶縁膜27上に、アモルファスシリコンチャネル膜(活性半導体膜)33、信号線(ソース−ドレイン配線)34、層間絶縁シリコン窒化膜(保護膜)30が順次形成されている。このタイプのTFTは一般にボトムゲート型と呼ばれる。
【0026】
アモルファスシリコンチャネル膜33は、リン(P)がドープされていないイントリンシック層(i層、ノンドーピング層とも呼ばれる。)55と、Pがドープされたドープト層56(n層)とから構成されている。ゲート絶縁膜27上の画素領域には、例えばIn中にSnOを含むITO膜によって形成された透明画素電極5が配置されている。TFTのドレイン電極29は、ドレイン電極29から延長されるドレイン配線部29aにより透明画素電極5に電気的に接続されている。
【0027】
走査線25を介してゲート電極26にゲート電圧が供給されると、TFT4はオン状態となり、予め信号線34に供給された駆動電圧は、ソース電極28から、ドレイン電極29を介して透明画素電極5へ供給される。そして、透明画素電極5に所定レベルの駆動電圧が供給されると、図1で説明したように、透明画素電極5と対向電極2との間に電位差が生じる結果、液晶層3に含まれる液晶分子が配向して光変調が行われる。
【0028】
TFTの上方部分であって、透明画素電極5から連続している酸化物透明導電膜45上には、上からの光を効率よく反射するために、Al合金膜で構成される反射膜46が形成されている。
【0029】
3.積層構造
本発明における積層構造の例示としては、酸化物透明導電膜42と走査線25との積層構造、酸化物透明導電膜41とゲート電極26との積層構造、酸化物透明導電膜43と信号線34(ソース電極28、ドレイン電極29、或いはドレイン配線部29a)との積層構造、並びに、酸化物透明導電膜45と反射膜46との積層構造が挙げられる。
【0030】
酸化物透明導電膜は、少なくとも可視光が透過可能な膜であって、例えば酸化インジウム錫(ITO:酸化インジウム(In)中に酸化錫(SnO)を含むもの)や、酸化インジウム亜鉛(IZO:酸化インジウムに酸化亜鉛を加えたもの)、その他、金属の酸化物を主成分として電気抵抗率が1Ω・cm以下の膜を指すものである。
【0031】
走査線25、ゲート電極26、信号線34(ソース電極28、ドレイン電極29、ドレイン配線部29a)、反射膜46は、それぞれAl合金膜で構成されたものである。Al合金膜は、アルミニウムを主成分し、合金成分としてアルミニウムよりもイオン化傾向の小さい合金成分(例えば、Ag、Cu、好ましくはNi)を含有している。
【0032】
Al合金膜にNi等の合金成分を含有させることにより、Al合金膜と酸化物透明導電膜との接触電気抵抗を低減させることができる。このような効果を有効に発揮させるためには、Ni等の含有量を0.1原子%以上とすることが好ましい。好ましくは0.2原子%以上、さらに好ましくは0.5原子%以上である。一方、合金元素の含有量が多すぎると、Al合金膜の電気抵抗率が上昇してしまうため、6原子%以下、より好ましくは3原子%以下、さらに好ましくは1原子%以下とすることが望ましい。
【0033】
Al合金膜には、その他の合金成分として、耐熱性向上元素(Nd、Y、Fe、Co、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Mg、Cr、Mn、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、La、Gd、Tb、Dy、Sr、Sm、Ge、Biの少なくとも一種を合計で0.1〜0.5原子%、好ましくは0.2〜0.35原子%)を添加することが許容される。
【0034】
以下、図3と図4、及び図5と図6を用いて、酸化物透明導電膜41、42と、Al合金膜である走査線25、ゲート電極26を積層する工程について説明する。
【0035】
まず、図3に示すように、ガラス基板1a上に、酸化物透明導電膜40(膜厚100nm)を成膜し(第1の工程)、次に、酸化物透明導電膜40上に、例えばニッケル(Ni)およびランタン(La)を含有するAl合金膜(Al−Ni−La合金膜)35(膜厚200nm)を成膜して(第2の工程)、積層構造を形成する。その後、Al−Ni金属間化合物の析出温度以上である200℃で1時間加熱することにより、アルミニウムとニッケルの金属間化合物を析出させる(第3の工程)。
【0036】
アルミニウムとニッケルの金属間化合物を析出させるためには、加熱温度を200℃以上にする必要がある。好ましくは250℃以上である。加熱温度の上限は特に規定されないが、Al合金膜35でのヒロック発生を回避するため、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下にする。
【0037】
その後、リソグラフィ法とエッチングによってAl−Ni−La合金膜35及び酸化物透明導電膜40をパターンニングすることにより酸化物透明導電膜41、42と、走査線25、ゲート電極26の積層構造を形成する。
【0038】
このようにして形成された積層構造を適切な温度でアニールすると金属間化合物の析出物は基板界面に集まり、界面でイオン化傾向の小さいニッケルの濃度が高まり、ITO膜やIZO膜との接触電位差が小さくなるので、リソグラフィ法の際に用いる現像液やエッチング液に起因するガルバニック腐食が生じにくくなる。
【0039】
酸化物透明導電膜41、42と、走査線25、ゲート電極26の積層構造の形成方法としては、他に、図5と図6に示すように、酸化物透明導電膜40をパターンニングして酸化物透明導電膜41、42とした後に、Al−Ni−La合金膜35を成膜してもよい。その場合でも、Al−Ni−La合金膜35に200℃1時間アニールを加えてアルミニウムとニッケルの金属間化合物を析出させてから、リソグラフィ法とエッチングによってAl−Ni−La合金膜35をパターンニングすることにより走査線25、ゲート電極26を形成する。
【0040】
酸化物透明導電膜40、41、42を構成するITO膜は、加熱を加える前はアモルファスの状態であり、りん酸を主成分とするアルミニウム用のエッチング液に溶解するが、200℃の熱を加えると結晶化するので、アルミニウム用のエッチング液に対して選択性がある。そのため、図6の工程においてAl−Ni−La合金膜35をエッチングする際に、既に形成された酸化物透明導電膜41、42を不必要にエッチングしてしまうことを防止することができる。
【0041】
Alとのエッチング選択性を求めない場合はIZO膜であっても使用できる。またITO膜以外にAlエッチャントとの選択性のある酸化物透明導電膜も問題なく使用できる。
【0042】
4.実験例
電極電位
各材料の電極電位を確認するため、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)2.38wt%の水溶液中で、Al合金膜等、測定対象となる電極と銀−塩化銀参照電極を短絡させて、電圧計で電位差を測定した。このとき、TMAH水溶液でのpoly−ITO膜の電極電位は(−0.2V)、Niを析出させていないAl合金の電極電位は(−1.3V)だが、Niの電極電位は(−0.25V)、さらにAl−Niの金属間化合物(AlNi)の電極電位は(−1.0V)と、ITO膜との電位差が小さくなるため、ガルバニック腐食が生じにくくなる。
【0043】
成分プロファイル
図7は、熱処理後の(Niを析出させた)Al−Ni−La合金膜中に含まれるNi等の合金成分の濃度の深さ方向のプロファイルを示すものである。計測には高周波グロー放電発光分光分析装置(GD−OES:Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy)を用いた。なお、Ni及びLaの含有量については、読み取り易さの観点から、実際の含有量の10倍の値をプロットしている。図7から、ITO膜との界面ではNi濃度が高いことがわかる。
【0044】
接触電気抵抗
図8に示すケルビンパターンを用いた4端子法にて、Niを2原子%添加したAl−Ni−La合金膜とITO膜を直接接続させた場合の接触電気抵抗を測定した。その結果、Al−Ni−La合金膜とITO膜との接触面積が10μm角でも接触電気抵抗は100Ωと十分に低かった。接触電気抵抗は、ITO膜とAl合金膜との間に電流を流し、別の端子でITO−Al合金間の電圧降下を計測することにより調べた。具体的には、図8のI1−I2間に電流Iを流し、V1−V2間の電圧Vをモニターすることにより、コンタクト部Cの接触電気抵抗Rを[R=(V1−V2)/I2]として求めた。
【0045】
剥離試験
図9は、Al合金膜を室温で成膜した場合にAl合金膜がITO膜から剥離する割合(剥離率)と、Al合金膜を200℃で成膜した場合の同剥離率を示すものである。剥離の評価は、ITO膜上に積層成膜したNi及びLaを含有するAl合金膜にレジストを塗布して紫外線で露光し、TMAH2.38%を含有する現像液で現像後に顕微鏡観察にて剥離の有無を観察した。剥離率は顕微鏡写真の画像処理によって、画像上で5μm角にメッシュを切り、メッシュの一部でも剥離している部分は「剥離」とカウントして剥離率に数値化する手法で行った。Niの含有量は、0.1原子%〜6原子%まで変化させた。Laの含有量は、0.35原子%である。Al合金膜の膜厚は100nm、ITO膜の膜厚は40nmである。
【0046】
図11は、ITO膜をIZO膜に替えて試料を作製したものであり、Al合金膜を室温で成膜した場合にAl合金膜がIZO膜から剥離する割合(剥離率)と、Al合金膜を200℃で成膜した場合の同剥離率を示すものである。
【0047】
図9および図11から分かるように、Al合金膜を200℃で成膜した場合、室温で成膜した場合に比べて剥離率が極めて低くなる。すなわちガルバニック腐食耐性が向上している。
【0048】
上記試料の剥離面および断面を電子顕微鏡で観察したところ、Al合金膜とITO膜およびIZO膜との界面の腐食の進行度合いと剥離率の結果に相関が見られた。即ち、室温成膜した試料においては、200℃で加熱成膜した試料では見られなかった、Al合金膜とITO膜およびIZO膜との界面での剥がれが、見かけ上の面積割合で10〜60%に達した。
【0049】
このように作製したAl合金膜について、さらに試験を行った。図10は、ITO膜上にAl合金膜を室温又は200℃で成膜した後に、室温〜250℃の加熱処理を施したときのAl合金膜の剥離率を示すものである。図12は、ITO膜をIZO膜に替えて行った同様の試験の結果を示すものである。
【0050】
図10および図12から分かるように、Al合金膜の成膜後に200℃以上の加熱処理を施すと、剥離率が低くなる。Al合金膜の成膜中の温度が室温である場合(図中の◇印)であっても、成膜後の加熱処理が250℃であれば、Al合金膜は殆ど剥離していないことが分かる。すなわちガルバニック腐食耐性が向上している。
【0051】
なお、Al合金膜の成膜後、Al合金膜をゲート電極26として用いる場合は、ゲート電極26上に更にゲート絶縁膜27、活性半導体膜33を形成する。
【0052】
また、同様に酸化物透明導電膜とAl合金膜の積層構造をソース−ドレイン線34として適用することもできる。このとき、ソース−ドレイン線34の酸化物透明導電膜43をそのまま引き出して画素電極にすることによって(図示せず)、工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、アモルファスシリコンTFT基板が適用される代表的な液晶ディスプレイの構成を示す概略断面拡大説明図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係るTFT基板の構成を示す概略断面説明図である。
【図3】図3は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を示す説明図である。
【図4】図4は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を示す説明図である。
【図5】図5は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を示す説明図である。
【図6】図6は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を示す説明図である。
【図7】図7は、Al−Ni−La合金膜中に含まれるNi濃度の深さ方向のプロファイルを示す図である。
【図8】図8は、Al合金膜とITO膜との間の接触電気抵抗の測定に用いたケルビンパターン(TEGパターン)を示す図である。
【図9】図9は、Al合金膜の剥離率(対ITO膜)を示す図である。
【図10】図10は、加熱処理後のAl合金膜の剥離率(対ITO膜)を示す図である。
【図11】図11は、Al合金膜の剥離率(対IZO膜)を示す図である。
【図12】図12は、加熱処理後のAl合金膜の剥離率(対IZO膜)を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 TFT基板
1a、1b ガラス基板
2 対向電極
3 液晶層
4 薄膜トランジスタ(TFT)
5 透明画素電極
6 配線部
7 共通電極
8 カラーフィルタ
9 遮光膜
10a、10b 偏光板
11 配向膜
12 TABテープ
13 ドライバ回路
14 制御回路
15 スペーサー
16 シール材
17 保護膜
18 拡散板
19 プリズムシート
20 導光板
21 反射板
22 バックライト
23 保持フレーム
24 プリント基板
25 走査線
26 ゲート電極
27 ゲート絶縁膜
28 ソース電極
29 ドレイン電極
29a ドレイン配線部
30 保護膜(シリコン窒化膜)
31 フォトレジスト
32 コンタクトホール
33 アモルファスシリコンチャネル層(活性半導体膜)
34 信号線(ソース−ドレイン配線)
35 Al合金膜(Al−Ni−La合金膜)
40 酸化物透明導電膜
41、42、43 酸化物透明導電膜
44 シリコン窒化膜
45 反射電極
55 ノンドーピング水素化アモルファスシリコン膜(a−Si−H)
56 n型水素化アモルファスシリコン膜(na−Si−H)
100 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物透明導電膜とAl合金膜とが直接接続されてなる積層構造を製造する方法であって、基板上に前記酸化物透明導電膜を形成する第1の工程と、該酸化物透明導電膜上にアルミニウムよりもイオン化傾向の小さい合金成分を含有するAl合金膜を形成する第2の工程と、アルミニウムと前記合金成分よりなる金属間化合物の析出温度以上に前記Al合金膜を加熱する第3の工程を有することを特徴とする積層構造の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程の終了後に前記第3の工程の加熱が行われる請求項1記載の積層構造の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程の進行中に前記第3の工程の加熱が行われる請求項1または請求項2に記載の積層構造の製造方法。
【請求項4】
アルミニウムよりもイオン化傾向の小さい前記合金成分がNiであり、Niの含有量が0.1〜6原子%であり、前記第3の工程における加熱温度が200℃以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の積層構造の製造方法。
【請求項5】
基板上に形成された酸化物透明導電膜と、該酸化物透明導電膜上に直接接続されたAl合金膜とを有する配線構造であって、前記Al合金膜はアルミニウムよりもイオン化傾向の小さい合金成分を含有し、かつ、アルミニウムと前記合金成分よりなる金属間化合物が前記酸化物透明導電膜との接続界面に析出していることを特徴とする積層構造。
【請求項6】
アルミニウムよりもイオン化傾向の小さい前記合金成分がNiであり、Niの含有量が0.1〜6原子%である請求項5に記載の積層構造。


【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−8770(P2009−8770A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168278(P2007−168278)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】