説明

表面処理装置

【課題】被処理物を表面処理する処理槽から処理ガスが漏れるのを防止し、かつ処理空間での処理ガスの流れを安定化する。
【解決手段】被処理物9を搬送手段20によって搬入開口13から処理槽10の内部に搬入し、処理空間19に配置する。供給系30から処理ガスを処理空間19に供給し、被処理物9を表面処理する。その後、被処理物9を搬出開口14から搬出する。排気系40で処理槽10の内部からガスを排出する。このガス排出によって外部のガスが開口13,14を通して処理槽10の内部に流入する。この流入ガスの平均流速が、0.1m/sec以上、かつ流入ガスが処理空間19に達する大きさ未満になるよう設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の表面に処理ガスを接触させ、被処理物の表面を処理する装置に関し、特に有毒性又は腐食性を有する処理ガスを用いた処理に適した表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板や半導体ウェハ等の被処理物に処理ガスを吹き付け、エッチング、洗浄、表面改質、成膜等の表面処理を行なう装置は公知である。この種の表面処理に用いる処理ガスには、外部に漏れると安全上又は環境上好ましくない成分が含まれていることが少なくない。そこで、一般に、処理空間を処理槽(チャンバー)で囲み、処理ガスが外部に漏れるのを防止している。
【0003】
特許文献1、2の表面処理装置は、処理槽(チャンバー)に被処理物を導入する入口、及び被処理物を導出する出口が設けられている。入口及び出口はスリット状になっている。処理槽の両端には緩和室を設け、プラズマ生成ガスの流出及び外気の処理槽内への流入を緩和している。処理槽の内部のガスは、排気口から排出している。
特許文献3の表面処理装置は、放電プラズマ発生部を囲む内槽と、この内槽を囲む外槽とを備えている。外槽と内槽との間の空間の内圧は、内槽の内圧より低く、かつ外気圧より低くなっている。この結果、処理ガスが内槽から外槽と内槽との間の空間に流出し、かつ外気が外槽に流入するようになっている。
【特許文献1】特許第4058857号公報(図9)
【特許文献2】特許第3994596号公報(図7)
【特許文献3】特開2003−142298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理槽には、被処理物を出し入れする開口が必要である。この開口から槽内の処理ガスが漏れる可能性もある。このような漏れを防止するには、槽に排気部を接続し、槽から排気を行なうことが考えられる。これにより、上記開口でのガスの流れを槽の外部から槽の内部に向けることができる。しかし、排気流量が大き過ぎると、外気が上記開口を通って槽内に勢いよく流入し、処理空間での処理ガスの流れを乱すおそれがある。また、排気流量が大き過ぎると、排気したガスを除害したり再生したりする際の負荷が増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、被処理物の表面に処理ガスを接触させ、前記表面を処理する装置において、
搬入開口及び搬出開口を有し、かつ内部に前記表面処理を行なう処理空間が前記搬入開口及び搬出開口から離れて設けられた処理槽(チャンバー)と、
被処理物を前記搬入開口から前記処理槽の内部に搬入し前記処理空間に配置した後、前記搬出開口から搬出する搬送手段と、
前記処理空間に処理ガスを供給する供給系と、
前記処理槽の内部からガスを排出する排気系と、
を備え、前記排気系のガス排出によって前記処理槽の外部のガスが前記開口を通して前記処理槽の内部に流入し、しかも前記流入の平均流速が、0.1m/sec以上かつ前記流入ガスが前記処理空間に達する大きさ未満になるよう設定されていることを特徴とする。
前記流入の平均流速を0.1m/sec以上にすることによって、処理ガスが搬入開口又は搬出開口を介して処理槽から外部に漏れるのを防止できる。前記流入の平均流速の上限設定により、流入ガスが搬入開口又は搬出開口と処理空間との間で十分に減衰するようにでき、処理空間に達しないようにすることができる。したがって、処理空間での処理ガスの流れが上記流入ガスによって乱されるのを防止でき、処理ガスの流れを安定化できる。ひいては、表面処理を安定的に行なうことができる。また、処理槽内を常時換気できるため処理槽内の処理ガス濃度を一定にでき、表面処理を一層安定的に行なうことができる。さらに、排気系の排気流量が比較的小さいため、除害や再生等の排ガス処理を行なう場合、排ガス処理の負荷を軽減できる。
【0006】
前記平均流速は、被処理物が前記搬入開口又は搬出開口の内部又は近傍に配置されていない時の値であることが好ましい。
前記搬入開口は、常時開いていることが好ましい。前記搬出開口は、常時開いていることが好ましい。これにより、複数の被処理物を順次処理槽に搬入して連続的に処理し、搬出することができる。
【0007】
前記平均流速が、0.3m/sec以上であることが好ましい。
これによって、処理ガスが搬入開口又は搬出開口から漏れるのをより確実に防止できる。
【0008】
前記平均流速が、2m/sec以下であることが好ましく、1m/sec以下であることがより好ましく、0.7m/sec以下であることが一層好ましい。
これによって、処理空間での処理ガスの流れが乱されるのをより確実に防止でき、処理ガスの流れを確実に安定化でき、表面処理を確実に安定的に行なうことができる。
前記平均流速は、0.3m/sec〜0.7m/secであることが一層好ましい。これによって、処理ガスが搬入開口又は搬出開口から漏れるのをより確実に防止でき、かつ処理空間での処理ガスの流れが乱されるのをより確実に防止できる。
【0009】
前記処理槽の内部が1又は複数の仕切壁によって前記搬送手段の搬送方向に複数の室に仕切られ、前記仕切壁には被処理物を通す連通開口が設けられ、前記処理空間が、前記複数の室のうち1つの室(以下「第1室」と称す)の内部に設けられ、前記第1室に前記供給系及び前記排気系が直接接続されていることが好ましい。これによって、処理ガスの漏れをより確実に防止できる。
前記排気系のガス排出によって前記連通開口を前記処理空間に向けてガスが流れ、しかも該連通開口を通過したガスが連通開口から下流側の室へ流入する時の平均流速が、0.1m/sec以上になるよう設定されていることが好ましく、0.3m/sec以上になるよう設定されていることがより好ましい。
これによって、処理ガスの漏れを一層確実に防止できる。
前記下流側の室へ流入するガスの平均流速は、0.3m/sec〜0.7m/secであることが一層好ましい。これによって、処理ガスの漏れを一層確実に防止でき、かつ処理ガスの流れが乱されるのをより確実に防止できる。
【0010】
前記第1室内の前記処理空間が、前記第1室に面する仕切壁の連通開口(以下「第1連通開口」と称す)から離れて設けられていることが好ましい。前記排気系のガス排出によって前記第1連通開口を前記処理空間に向けてガスが流れ、しかも該第1連通開口を通過したガスが前記第1室へ流入する時の平均流速が、0.1m/sec以上かつ前記第1室への流入ガスが前記処理空間に達する大きさ未満になるよう設定されていることが好ましい。
これによって、処理ガスの漏れを一層確実に防止でき、かつ処理空間での処理ガスの流れを確実に安定化でき、表面処理を確実に安定的に行なうことができる。
前記室が3つ以上有り、前記第1室が前記搬送方向の両端の室以外の室であることが好ましい。
【0011】
前記第1室への流入ガスの平均流速が、0.3m/sec以上であることがより好ましい。
これによって、処理ガスの漏れをより一層確実に防止できる。
前記第1室への流入ガスの平均流速は、0.3m/sec〜0.7m/secであることが一層好ましい。これによって、処理ガスの漏れを一層確実に防止でき、かつ処理ガスの流れが乱されるのをより確実に防止できる。
【0012】
前記排気系が、前記処理槽に分散して配置された複数の排気口と、これら排気口に対し1対1に設けられ、対応する排気口からの排気流量を調節する調節部とを含むことが好ましい。
これによって、処理槽内の広い範囲にわたってガスの流れを制御でき、処理ガスの流れ方向が偏るのを防止でき、処理の均一性を確保できる。
【0013】
前記排気系で排気されるガスから前記処理ガスの反応成分を回収し前記供給系に送る再利用系を、更に備えることが好ましい。
これによって、処理ガスの反応成分の必要量を低減でき、ランニングコストを下げることができる。また、大気に放出される反応成分の量を減らすことができる。したがって、例えば反応成分が温暖化係数の高いフッ素系化合物等の場合、環境に与える影響を軽減できる。前記排気系の排気流量が比較的小さく、ひいては外部から処理槽内に取り込む雰囲気ガスの流量が比較的小さいため、再利用系の負荷を軽減できる。
【0014】
前記処理槽より前記搬送手段の搬送方向の下流側に配置されて後処理工程を行なう後処理部と、前記処理槽と前記後処理部との間に配置された後処理待機槽と、前記後処理待機槽の内部からガスを排出する第2の排気系と、を更に備えていることが好ましい。前記搬送手段が、前記処理槽の搬出開口から搬出した被処理物を、前記後処理待機槽を経由して前記後処理部へ搬送することが好ましい。
表面処理後の被処理物には処理ガス成分や処理済みガス成分が付着又は吸着している場合がある。この被処理物が処理槽から出た後、後処理部に入る前に、後処理待機槽を経由させることで、被処理物から上記付着又は吸着成分が揮発した場合、揮発ガスを後処理待機槽に閉じ込め、更に第2排気系で排出できる。これによって、上記揮発ガスが外部に漏れるのを防止できる。
【0015】
前記後処理待機槽の前記処理槽側の壁には第2の搬入開口が設けられ、前記後処理待機槽の前記後処理部側の壁には第2の搬出開口が設けられていることが好ましい。前記処理槽の搬出開口と前記後処理待機槽の第2搬入開口とが、前記搬送方向に離れていることが好ましい。前記処理槽の搬出開口と前記後処理待機槽の第2搬入開口との離間距離は、20〜300mmであることがより好ましい。
前記処理槽の搬出開口と前記後処理待機槽の第2搬入開口との離間距離を20mm以上にすることにより、処理槽内の圧力と後処理待機槽内の圧力が影響し合うのを防止でき、例えば処理槽内のガスが該処理槽の搬出開口から漏れて後処理待機槽に吸い込まれるのを防止できる。また、処理槽及び後処理待機槽からの排気流量の調節をそれぞれ容易に行なうことができる。前記処理槽の搬出開口と前記後処理待機槽の第2搬入開口との離間距離を300mm以下にすることにより、被処理物が前記処理槽の搬出開口から出て前記後処理待機槽の第2搬入開口に入るまでの移送時間を短くでき、前記移送期間中に被処理物の表面に付着又は吸着した処理ガス成分又は処理済みガス成分が揮発する量を低減できる。
前記処理槽と前記後処理待機槽とがくっ付いていてもよい。前記処理槽の搬出開口と前記後処理待機槽の第2搬入開口とが、直接的に連通していてもよい。
【0016】
前記処理槽を囲む外槽と、前記外槽と処理槽の間の空間を大気圧より低圧にする減圧手段とを、更に備えていることが好ましい。
これにより、万が一、処理槽から処理ガスが漏れても外槽と処理槽の間の槽間空間に閉じ込めることができ、外槽から更に外部に漏れるのを確実に防止できる。
【0017】
前記処理槽及び後処理待機槽を囲む外槽と、前記外槽と処理槽及び後処理待機槽との間の空間を大気圧より低圧にする減圧手段とを、更に備えていることが好ましい。
これにより、万が一、処理槽から処理ガスが漏れても、この漏れた処理ガスを外槽と処理槽及び後処理待機槽との間の槽間空間に閉じ込めることができ、処理ガスが外槽から更に外部に漏れるのを確実に防止できる。また、処理槽と後処理待機槽との間で被処理物の表面から揮発ガスが生じても、或いは、後処理待機槽内で揮発したガスが後処理待機槽から漏れたとしても、かかる揮発ガスを前記外槽と処理槽及び後処理待機槽との間の槽間空間に閉じ込めることができ、外槽から更に外部に漏れるのを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、処理ガスが処理槽から外部に漏れるのを防止できる。また、処理空間での処理ガスの流れを安定化でき、ひいては安定的に表面処理を行なうことができる。更に、排気系から排出したガスに対する除害やリサイクル等の排ガス処理の負荷を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示したものである。この実施形態の被処理物9は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板で構成されているが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば半導体ウェハ、連続シート状の樹脂フィルム等、種々の被処理物に適用できる。この実施形態の表面処理内容は、ガラス基板9の表面に被膜されたシリコン(図示省略)のエッチングであるが、本発明は、これに限定されるものではなく、酸化シリコンや窒化シリコンのエッチングにも適用でき、エッチングに限られず、成膜、洗浄、撥水化、親水化等、種々の表面処理に適用できる。
【0020】
なお、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板からなる被処理物9の長さ(図1の左右方向の寸法)は、例えば1500mmであり、幅(図1の紙面と直交する方向の寸法)は、例えば1100mm程度であり、厚さは、例えば0.7mm程度である。
【0021】
図1に示すように、表面処理装置1は、処理槽10と、搬送手段20と、ガスライン2を備えている。
搬送手段20は、ローラーコンベアで構成されている。ローラーコンベアの多数(複数)のローラ21が、軸線を図1の紙面と直交する方向に向け、左右に間隔を置いて並べられている。被処理物9が、ローラ21の上に載せられ、図において右から左方向(搬送方向)へ搬送される。ローラ21の上端部付近の高さの仮想水平面が、搬送面P9になっている。
搬送手段20は、ローラーコンベアに限られず、移動式ステージ、浮上ステージ、ロボットアーム等で構成されていてもよい。
【0022】
処理槽10(処理チャンバー)は、内部に被処理物9を配置できる大きさの容器状になっている。ローラーコンベア20の一部分が処理槽10の内部に配置されている。処理槽10の内部の略中央部に処理空間19が形成されている。言い換えると、処理槽10は、処理空間19を囲んでいる。処理空間19は、後述する供給ノズル33と搬送面P9との間に画成される。詳しくは、図1において2本の垂直な二点鎖線で示すように、供給ノズル33の底面の吹き出し口34及び局所排気口45のうち最も左右の外側に配置されたものどうし間のノズル底面部分と、このノズル底面部分を垂直に搬送面P9に投影した投影部分との間に画成される。なお、図において、処理空間19の厚さ(供給ノズル33の底面と搬送面P9との間の間隔)は、誇張されている。実際の処理空間19の厚さは0.5〜5mm程度である。
【0023】
処理槽10の一端側(図1において右側)の搬入側壁11には、搬入開口13が形成されている。処理槽10の他端側(図1において左側)の搬出側壁12には、搬出開口14が形成されている。開口13,14は、それぞれ一対の整流板15,15によって画成されている。各壁11,12には、一対の整流板15,15が上下に対向して設けられている。整流板15,15は、各々図1の紙面と直交する方向に延びる細い板状をなしている。上下の整流板15,15の間に図1の紙面直交方向に延びるスリット状の隙間が形成されている。このスリット状の隙間が、開口13,14になっている。開口13,14の幅(図1の紙面直交方向の寸法)は、被処理物9の同方向の寸法より少し大きい。開口13,14の厚さ(上下方向の寸法)すなわち一対の整流板15,15の対向面どうし間の距離は、被処理物9の厚さの2〜10倍であることが好ましい。開口13,14の高さ(上下方向の位置)は、被処理物9の搬送面P9の高さ(上下方向の位置)に合わせてある。開口13,14は、常時開いており、開閉するようにはなっていない。壁11,12に開口13,14を開閉する扉を設ける必要がない。
【0024】
なお、上述したようにフラットパネルディスプレイ用ガラス基板からなる被処理物9の幅は例えば1100mm程度であり、これに対し、本実施形態の開口13,14の幅は1200mm程度になっている。また、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板からなる被処理物9の厚さは一般に0.7mm程度であり、これに対し、本実施形態の開口13,14の厚さは5mm程度になっている。
【0025】
搬入開口13及び搬出開口14は、処理空間19を挟んで両側に配置され、しかも処理空間19からそれぞれ離れて配置されている。搬入開口13と処理空間19との離間距離D1は、D1=150〜300mmであることが好ましい。なお、距離D1は、搬入開口13の整流板15の内端部(処理槽10の内側の端部)と、後記供給ノズル33の吹き出し口34及び局所排気口45のうち最も搬入開口13寄りに配置されたものとの水平方向の離間距離に等しい。搬出開口14と処理空間19との離間距離(搬出開口14の整流板15の内端部と、吹き出し口34及び局所排気口45のうち最も搬出開口14寄りに配置されたものとの水平方向の離間距離)は、上記搬入開口13と処理空間19との離間距離D1と略同じにするのが好ましい。
【0026】
ガスライン2は、供給系30と、排気系40と、再利用系50を有している。
供給系30は、原料ガス供給部31と、供給ノズル33を有している。原料ガス供給部31から供給路32が延びている。供給路32が供給ノズル33に接続されている。供給ノズル33は、処理槽10の天井部に配置されている。詳細な図示は省略するが、供給ノズル33は、図1の紙面と直交する方向に延びている。供給ノズル33の底面(ノズル先端面)に吹き出し口34と局所排気口45が形成されている。吹き出し口34及び局所排気口45は、図1の紙面直交方向に延びるスリット状になっている。吹き出し口34及び局所排気口45の図1の紙面直交方向の長さは、被処理物9の同方向寸法と略同じか少し大きい。
【0027】
吹き出し口34及び局所排気口45は、左右(被処理物9の搬送方向)に間隔を置いて配置されている。1つの吹き出し口34を挟んで左右の直近に局所排気口45が配置されている。供給ノズル33の底面の左右の最も外側にはそれぞれ局所排気口45が配置されている。上述した通り、これら最も外側の局所排気口45によって、処理空間19の端部が規定されている。なお、吹き出し口34及び局所排気口45の数及び配置は、図示したものに限られない。図では、吹き出し口34と局所排気口45が交互に配置されているが、隣り合う吹き出し口34間に2つ以上の局所排気口45が配置されていてもよく、隣り合う局所排気45間に2つ以上の吹き出し口34が配置されていてもよい。或いは、供給ノズル33には局所排気口45を設けないことにし、処理槽10内の排気を後記排出口43からのみ行なうことにしてもよい。
【0028】
供給系30は、処理内容に応じた反応成分や該反応成分の原料成分等を含む処理ガスを処理空間19に供給する。処理ガス成分(上記反応成分、原料成分等)は、環境負荷性、有毒性、腐食性を有していることが少なくない。シリコンのエッチングに係る本実施形態では、反応成分として、フッ素系反応成分と酸化性反応成分が用いられている。フッ素系反応成分として、HF、COF、フッ素ラジカル等が挙げられる。フッ素系反応成分は、例えばフッ素系原料を水(HO)で加湿した後、プラズマ化(分解、励起、活性化、イオン化等を含む)することにより生成できる。この実施形態では、フッ素系原料として、CFが用いられている。フッ素系原料としてCFに代えて、C、C、C等の他のPFC(パーフルオロカーボン)を用いてもよく、CHF、CH、CHF等のHFC(ハイドロフルオロカーボン)を用いてもよく、SF、NF、XeF等のPFC及びHFC以外のフッ素含有化合物を用いてもよい。
【0029】
フッ素系原料は、希釈ガスで希釈してもよい。希釈ガスとして、例えばAr、He等の希ガスや、Nが用いられる。フッ素系原料への添加剤として水(HO)に代えて、アルコール等のOH基含有化合物を用いてもよい。
【0030】
酸化性反応成分として、O、Oラジカル等が挙げられる。この実施形態では、酸化性反応成分としてOが用いられている。Oは、酸素(O)を原料としオゾナイザーで生成できる。O等の酸素系原料をプラズマ化することによって酸化性反応成分を生成することにしてもよい。
【0031】
上記フッ素系原料や酸素系原料のプラズマ化は、プラズマ生成装置の一対の電極どうし間のプラズマ空間に上記原料を含むガスを導入することで実行できる。上記プラズマ化は、大気圧近傍で実行するのが好ましく、上記電極間のプラズマ空間は大気圧近傍であることが好ましい。ここで、大気圧近傍とは、1.013×10〜50.663×10Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×10〜10.664×10Paが好ましく、9.331×10〜10.397×10Paがより好ましい。
【0032】
本実施形態では、原料ガス供給部31においてフッ素系原料のCFをArで希釈し、かつHOを添加し、フッ素系原料ガス(CF+Ar+HO)を得る。このフッ素系原料ガスを供給路32で供給ノズル33に導く。供給ノズル33には一対の電極(図示省略)が設けられている。この電極間でフッ素系原料ガスをプラズマ化する。供給ノズル33は、プラズマ生成装置を兼ねている。これにより、HF等のフッ素系反応成分が生成される。図示は省略するが、別途、酸化性反応成分としてオゾナイザーでOを生成して供給ノズル33に導入し、上記プラズマ化後のガスと混合する。これにより、フッ素系反応成分(HF等)と酸化性反応成分(O等)を含む処理ガスが生成される。勿論、処理ガスには、原料ガス成分(CF、HO、Ar、O等)も含まれている。この処理ガスが、吹き出し口34から処理空間19へ吹き出される。
【0033】
なお、ガス供給部31においてフッ素系反応成分と酸化性反応成分を含む処理ガスを生成し、この処理ガスを供給路32によって供給ノズル33へ送り、吹き出し口34から吹き出すことにしてもよい。
【0034】
吹き出し口34から吹き出された処理ガスが処理空間19の被処理物9に吹き付けられ、被処理物9が表面処理される。シリコンのエッチングにおいては、処理ガス中の酸化性成分(O等)によりシリコンが酸化され、酸化シリコンと処理ガス中のフッ素系反応成分(HF等)とが反応し、揮発成分のSiFが生成される。これにより、被処理物9の表面のシリコン層を除去できる。
【0035】
次に処理槽排気系40について説明する。処理槽10の底部の例えば略中央部に排出口43が設けられている。排出口43から排気路42が延びている。排気路42に排気ポンプ41が接続されている。 なお、図示は省略するが、局所排気口45に連なる吸引路が供給ノズル33の上部から引き出されている。この吸引路が排気路42に合流している。局所排気口45、及び該局所排気口45から排気路42までの吸引路も排気系40の要素を構成する。
【0036】
排気ポンプ41の駆動によって、処理槽10内のガスが排出口43に吸い込まれ、排気路42を経て排気ポンプ41に送られる。また、処理空間19で被処理物9に吹き付けられた後の処理ガス(以下「処理済みガス」と称す)が、主に局所排気口45に吸い込まれ、上記図示しない吸引路を経て、排気路42に合流する。処理済みガスは、処理ガスの成分(HF、O、CF、HO、Ar等)や表面処理反応による副生成物(SiF等)を含む。処理済みガスの一部が処理空間19から漏れることもあり、そのような処理済みガスは、排出口43から吸い込まれる。
【0037】
排気系40による排出ガス流量は、供給系30による処理ガス供給流量より大きい。例えば、本実施形態では、処理ガス供給流量が32slm程度であるのに対し、排出ガス流量は200〜400slm程度である。したがって、排出ガス流量と処理ガス供給流量との差に相当する流量の雰囲気ガス(空気)gが、処理槽10の外部から開口13,14を通り、処理槽10の内部に流入する。
【0038】
ここで、開口13,14からの流入ガスgが処理槽10内に流入する時の平均流速は、0.1m/sec以上になるよう設定され、好ましくは0.3m/sec以上になるよう設定されている。流入ガスgの平均流速の上限は、上記流入ガスgが処理空間19に達する大きさ未満になるよう設定されている。本実施形態では、流入ガスgの平均流速は、好ましくは2m/sec以下であり、より好ましくは1m/sec以下であり、一層好ましくは、0.7m/sec以下である。上記の設定平均流速は、開口13,14の内部及び近傍に被処理物9が配置されていない状態での値であることが好ましい。
【0039】
上記流入ガスgの平均流速は、処理槽10の寸法及び排気系40の排気流量等によって調節できる。処理槽10の寸法のうち、流入ガスgの平均流速に大きく関係するものは、開口13,14の厚さ(上下寸法)である。具体的には、開口13,14の厚さは、2〜8mmの範囲で設定するのが好ましく、5mm程度に設定するのがより好ましい。排気系40の排気流量は、上述したように処理ガス供給流量が32slm程度の場合、200〜400slmの範囲で設定するとよい。
ちなみに、一般的なフラットパネルディスプレイ用の表面処理装置における搬入出用開口から処理槽への流入ガスの平均流速は、2m/secを越えている。
【0040】
流入ガスgの平均流速の上限を、流入ガスgが処理空間19に達する大きさ未満になるようにするには、流入ガスgの平均流速を調節する他、開口13,14と処理空間19との離間距離D1を調節することにしてもよい。
【0041】
排気系40による処理槽10からの排出ガスの大半は外部から搬入出開口13,14を通して流入した空気である。したがって、排出ガス中、最も割合が大きい成分は窒素である。排出ガスには、更に処理済みガスの成分(HF、O、CF、HO、Ar、SiF等)が含まれている。図示は省略するが、排出口43と排気ポンプ41との間の排気路42には、排出ガス中のHF等を除去するスクラバー、排出ガス中のHOを除去するミストトラップ、排ガス中のOを除去するオゾンキラー等が設けられている。
【0042】
排気系40に再利用系50が接続されている。再利用系50は、排気系40で排気されるガスから処理ガスの反応成分を回収する。詳述すると、再利用系50は、分離回収器51を備えている。分離回収器51には分離膜52が設けられている。分離膜52によって分離回収器51の内部が濃縮室53と希釈室54に仕切られている。分離膜52としては、例えばガラス状ポリマー膜(特許第3151151号公報等参照)が用いられている。分離膜52がCF(反応成分)を透過させる速度は相対的に小さく、窒素(不純物)を透過させる速度は相対的に大きい。排気ポンプ41より下流側の排気路42が濃縮室53に連なっている。排気ポンプ41からの排出ガスが、濃縮室53に導入され、分離膜52によって濃縮室53に留まる回収ガスと分離膜52を透過して希釈室54に入る放出ガスとに分離される。回収ガスは、CF濃度が高く(CF=90vol%以上)、かつ流量が小さい。放出ガスは、CF濃度が低く(CF=1vol%以下)、かつ流量が大きい。
【0043】
なお、図では分離回収器51が1つしか図示されていないが、再利用系50が分離回収器51を複数有していてもよい。複数の分離回収器51が、直列に連なっていてもよく、並列に連なっていてもよく、直列と並列が組み合わさるように連なっていてもよい。
【0044】
濃縮室53の下流端から回収路55が延びている。回収路55は、原料ガス供給部31に接続されている。
【0045】
希釈室54から放出路46が延びている。放出路46は、除害設備47に接続されている。
【0046】
上記構成の表面処理装置1によれば、被処理物9をローラ21の上に載せ、搬送面P9上を搬送する。被処理物9は、搬入開口13を通って、処理槽10の内部に搬入され、処理空間19に導入される。また、供給系30によって処理ガスを処理空間19に供給する。この処理ガスが、被処理物9に接触し、エッチング等の表面処理が実行される。処理後の被処理物9を、処理空間19から導出し、搬出開口14に通して処理槽10から搬出する。複数の被処理物9をローラーコンベア20上に間隔を置いて一列に並べ、順次、処理槽10内に搬入して表面処理した後、処理槽10から搬出する。
【0047】
処理ガスの供給と併行して、排気系40によって処理槽10内のガスを排出口43及び局所排気口45から吸引する。これに伴ない、処理槽10の外部の雰囲気ガス(空気)が、搬入出開口13,14を通り、処理槽10の内部に流入する。この流入ガスgの平均流速が0.1m/sec以上、好ましくは0.3m/sec以上になるよう設定することにより、処理槽10内の処理済みガスが開口13,14を通して外部に漏れるのを防止できる。これにより、処理ガス又は処理済みガスに有毒成分が含まれていても、作業の安全性を確保できる。また、処理ガス又は処理済みガスCF等の温暖化係数が高い成分が含まれていても、環境に与える影響を十分軽減できる。さらには周辺設備の腐食を防止できる。
また、流入ガスgの平均流速の上限設定により、流入ガスgを処理空間19の手前で十分に減衰させることができる。したがって、流入ガスgは処理空間19に達し得ない。これにより、処理空間19内の処理ガスの流れが流入ガスgによって乱されるのを防止でき、処理ガスの流れを安定化できる。流入ガスgの平均流速を好ましくは2m/sec以下、より好ましくは1m/sec以下、更に好ましくは0.7m/sec以下にすることにより、処理空間19内の処理ガスの流れが流入ガスgによって乱されるのを一層確実に防止でき、処理ガスの流れを一層安定化できる。これにより、表面処理を安定的に実行することができる。
更に、処理槽10内を外部からの流入ガスgで常時換気できるため、処理槽10内の処理ガス濃度を一定にでき、表面処理を一層安定させることができる。
【0048】
排気系40によって処理槽10内から排出されたガスは、分離回収器51に導入され、高CF濃度の回収ガスと低CF濃度の放出ガスに分離される。回収ガスは、回収路55を経て原料ガス供給部31に送られる。これにより、分離回収器51で回収された反応成分(CF)を原料ガス供給部31に戻し、再利用できる。したがって、表面処理装置1のトータルのCFの使用量を低減でき、ランニングコストを抑えることができる。
放出ガスは、除害設備47に送られ、除害設備47で除害処理された後、大気に放出される。
排気系40の排気流量が比較的小さく、ひいては外部から処理槽10内に取り込む雰囲気ガスの流量が比較的小さいため、分離回収器51の負荷を軽減できる。また、除害設備47の負荷をも軽減できる。これにより、分離回収器51及び除害設備47を小型化できる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図2は、本発明の第2実施形態を示したものである。この実施形態では、処理槽10に2つ(複数)の仕切壁16が設けられている。これら仕切壁16によって、処理槽10の内部が左右(被処理物9の搬送方向)に3つ(複数)の室10b,10a,10bに仕切られている。中央の第1室10a(両端の室以外の室)に処理空間19が設けられている。第1室10aに供給系30及び排気系40が直接接続されている。すなわち、第1室10aの上部に供給ノズル33が設けられ、底部に排出口43が設けられている。
【0050】
仕切壁16には、連通開口17が設けられている。連通開口17は、開口13,14と同様に、上下に対向する一対の整流板15,15によって画成されている。仕切壁16の大きさ並びに上下方向の位置は、好ましくは開口13,14と同一になっている。被処理物9は、搬送手段20によって搬入開口13から右端の室10b内に搬入される。次に、被処理物9は、右側の連通開口17を通り、第1室10a内に搬入され、処理空間19へ導かれ、表面処理される。表面処理後の被処理物9が、左側の連通開口17を通り、左端の室10bへ搬送され、更に搬出開口14を通り、処理槽10の外部に搬出される。
【0051】
排気ポンプ41の駆動によって、外部の雰囲気ガスが開口13,14を通り、両端の室10bに流入する。この開口13,14からの流入ガスgを含む端室10b内のガスが連通開口17を通り、中央(下流側)の第1室10aに流入する。第1室10aへの流入時のガスg’の平均流速は、開口13,14からの流入ガスgと同様、連通開口17の内部又は近傍に被処理物9が配置されていない状態で0.1m/sec以上になるよう設定され、好ましくは0.3m/sec以上になるよう設定されている。
【0052】
流入ガスg’の平均流速の上限は、該流入ガスg’が処理空間19に達する大きさ未満になるよう設定されている。具体的には、流入ガスg’の平均流速は、好ましくは2m/sec以下に設定され、より好ましくは1m/sec以下に設定され、より一層好ましくは0.7m/sec以下に設定されている。流入ガスg’の平均流速は、処理槽10の寸法(特に連通開口17の厚さ(上下寸法))や排気系40の排気流量等によって調節できる。また、流入ガスg’の平均流速の上限を、流入ガスg’が処理空間19に達する大きさ未満になるようにするには、流入ガスg’の平均流速を調節する他、連通開口17と処理空間19との離間距離を調節することにしてもよい。
【0053】
第2実施形態では、第1室10aと開口13,14との間に仕切壁16が設けられているため、第1室10aの処理済みガスが処理槽10の外部に漏れるのをより確実に防止できる。また、流入ガスg’の平均流速の範囲設定により、処理済みガスの漏れを一層確実に防止できる。これにより、作業の安全性を一層確保でき、環境負荷を十分に低減でき、周辺設備の腐食を確実に防止できる。更には、処理空間19での処理ガスの流れが流入ガスg’によって乱されるのを防止でき、処理ガスの流れを確実に安定化でき、表面処理の安定性を十分に確保できる。
【0054】
図3は、本発明の第3実施形態を示したものである。この実施形態では、処理槽10の搬送方向の下流側(同図において左側)に後処理部として洗浄装置3が設けられている。洗浄装置3は、処理空間19で表面処理した後の被処理物9をウェット洗浄する。なお、後処理部の後処理内容はウェット洗浄に限られず、例えば大気圧プラズマを用いたドライ洗浄等でもよい。
【0055】
処理槽10と洗浄装置3との間には、後処理待機槽60が配置されている。後処理待機槽60の処理槽10側の壁61には搬入開口63が形成されている。搬入開口63は、処理槽10の整流板15と同様に、上下に対向する一対の整流板65,65によって画成されている。搬入開口63の大きさ並びに上下方向の位置は、好ましくは開口13,14,17と同一になっている。
【0056】
待機槽60の洗浄装置3側の壁62には搬出開口64が形成されている。搬出開口64の幅(図3の紙面直交方向の寸法)及び厚さ(上下方向の寸法)並びに上下方向の位置は、好ましくは開口13,14,17,63と同一になっている。搬出開口64が、洗浄装置3に連通している。ローラーコンベアからなる搬送手段20が待機槽60の内部にも延長して設けられている。
【0057】
処理槽10の搬出側壁12と待機槽60の搬入側壁61とは、互いに離れ、両壁12,61間に隙間1eが形成されている。搬出側壁12の搬出開口14と搬入側壁61の搬入開口63との離間距離D2(正確には搬出開口14の整流板15と搬入開口63の整流板65との間の距離)は、D2=20〜300mmの範囲で設定されている。
【0058】
後処理待機槽60には第2排気系70(待機槽排気系)が接続されている。待機槽60の底部に第2排気系70の排気口73が設けられている。排気口73から排気路72が延びている。排気路72に排気ポンプ71が接続されている。排気ポンプ71の下流に除害設備47に接続してもよい。なお、排気路72を排気路42に合流させ、排気ポンプ71を省略してもよい。すなわち、処理槽排気系40と待機槽排気系60が、互いに共通の排気ポンプ41を有し、処理槽排気ポンプ41が待機槽排気ポンプを兼ねていてもよい。
【0059】
第3実施形態では、搬出開口14と搬入開口63の間隔D2が狭過ぎない大きさ(D2≧20mm)に設定されているため、隙間1eを外部と同じ圧力環境(大気圧)にすることができ、処理槽10内の圧力と後処理待機槽60内の圧力が影響し合うのを防止できる。これにより、例えば待機槽60内を第2排気系70で減圧しても、処理槽10内のガスが搬出開口14から漏れて待機槽60に吸い込まれるのを防止できる。更に、2つの槽10,60からの排気流量の調節をそれぞれ容易に行なうことができる。
【0060】
搬送手段20によって処理槽10の搬出開口14から出された被処理物9は、隙間1eを通過する。ここで、表面処理後の被処理物9には処理ガス成分や処理済みガス成分が付着又は吸着している場合がある。一方、搬出開口14と搬入開口63の間隔D2が広過ぎない大きさ(D2≦300mm)に設定されているため、被処理物9が隙間1eを通過する時間を十分短くできる。したがって、隙間1eを通過中の被処理物9から上記付着又は吸着成分が揮発する量を十分に少なくすることができる。隙間1eを通過した被処理物9は、搬入開口63を通り待機槽60の内部に搬入され、後処理待機状態になる。なお、被処理物9は、後処理待機中も搬送手段20によって連続的に後処理部3へ向けて移動している。この待機時の被処理物9から上記付着又は吸着成分が揮発した場合、その揮発ガスを後処理待機槽60内に閉じ込め、外部に漏れるのを防止できる。更に、第2排気系70によって、上記揮発ガス成分を後処理待機槽60から排気路72に排出できる。これにより、作業の安全性を一層確保でき、環境負荷を十分に低減でき、周辺設備の腐食を確実に防止できる。
その後、被処理物9は、搬出開口64を通り、洗浄装置3に導かれ、洗浄処理される。
【0061】
図4は、本発明の第4実施形態を示したものである。この実施形態の表面処理装置1は、外槽80と、減圧手段90を更に備えている。外槽80は、処理槽10及び後処理待機槽60を囲んでいる。外槽80の右端(被処理物9の搬送方向の上流側の端部)の壁には、搬入開口81が設けられている。搬入開口81の大きさ並びに上下方向の位置は、好ましくは開口13,14,17と同一になっている。
【0062】
外槽80には減圧手段90が接続されている。外槽80の底部に減圧手段90の複数(図では2つ)の吸気口93が互いに離れて設けられている。各吸気口93から個別吸気路92aが延びている。各吸気口93からの個別吸気路92aが互いに合流し、合流後の吸気路92が減圧ポンプ91に接続されている。なお、ポンプ91と、ポンプ41又は71が、1つの共通の吸引ポンプで構成されていてもよい。外槽80に吸気口93を1つだけ設けてもよい。
【0063】
減圧ポンプ91の駆動により、外槽80と内槽10,60との間の空間80aが減圧され大気圧より若干低圧になる。具体的には、槽間空間80aの内圧が、大気圧より10Pa程度低くなるようにするのが好ましい。
【0064】
第4実施形態によれば、万が一、処理済みガスが処理槽10から漏れたり、被処理物9が隙間1eを通過する時に該被処理物9から揮発ガスが発生したり、後処理待機槽60で生じた揮発ガスが該待機槽60から漏れたりしても、これら処理済みガスや揮発ガスを槽間空間80a内に閉じ込めることができる。これにより、処理済みガスや揮発ガスが、外部の雰囲気中に漏れるのをより確実に防止できる。しかも、槽間空間80aは、大気圧より若干低圧になっているため、槽間空間80a内のガスが、外槽80の外に漏れるのを一層確実に防止できる。これにより、作業の安全性をより一層確保でき、環境負荷を一層確実に低減でき、周辺設備の腐食を一層確実に防止できる。槽間空間80a内に漏れた処理ガスや処理済みガスは、吸気路92によって槽間空間80aから排出できる。
【0065】
図5は、本発明の第5実施形態を示したものである。この実施形態は、第1実施形態(図1)に外槽80及び減圧手段90を適用したものである。外槽80が、処理槽10を囲んでいる。外槽80の左端(被処理物9の搬送方向の下流側の端部)の壁には、搬出開口82が設けられている。搬入開口82の大きさ並びに上下方向の位置は、好ましくは開口13,14,81と同一になっている。
【0066】
図6は、本発明の第6実施形態を示したものである。この実施形態では、排気系40の排出口43が複数(図では3つ)設けられている。複数の排出口43は、処理槽10の底部に互いに分散して配置されている。図6では、複数の排出口43が被処理物9の搬送方向に離間して配置されているが、搬送方向と直交する方向(図6の紙面直交方向)にも排出口43が離間して配置されている。各排出口43から個別排気路42aが延びている。各個別排気路42aが互いに合流し、合流後の排気路42が排気ポンプ41に接続されている。なお、図示省略のスクラバー、ミストトラップ、及びオゾンキラーは、合流後の排気路42上に設けられている。
【0067】
各個別排気路42aに流量制御弁48(調節部)が設けられている。流量制御弁48は、排出口43と一対一に対応し、対応する排出口43からの排気流量を調節する。
【0068】
第6実施形態によれば、各排出口32に対応する流量制御弁48を独立して操作でき、各排出口43からの排気流量を他の排出口43とは別個に調節できる。これにより、処理槽10内の全域ないしは広い範囲にわたってガスの流れを制御できる。ひいては、供給系30から処理空間19に供給された処理ガスの流れを制御でき、処理ガスの流れ方向が一箇所に偏るのを防止できる。これによって、処理の均一性を確保することができる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変をなすことができる。
例えば、搬入開口13と搬出開口14が、1つの共通の開口で構成されていてもよい。搬送手段20が、被処理物9を上記共通の開口から処理槽10の内部に搬入して処理空間19に配置し、表面処理後、被処理物9を上記共通の開口から外部へ搬出することにしてもよい。被処理物9の処理槽10への搬入及び処理槽10からの搬出は、搬送手段20を用いる他、作業者が行なってもよい。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態(図2)に第4、第5実施形態(図4、図5)の外槽80及び減圧手段90を適用してもよい。第6実施形態(図6)は、第1実施形態(図1)の処理槽10に複数の排出口43及び流量制御弁48を適用してあるが、第2〜第5実施形態(図2〜図6)の処理槽10に第6実施形態の複数の排出口43及び48を適用してもよい。
第4実施形態(図4)において、外槽80が、処理槽10と後処理待機槽60とのうち処理槽10だけを囲み、後処理待機槽60が外槽80の外部に配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)や半導体ウェハの製造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態の概略構成を示す解説図である。
【図2】本発明の第2実施形態の概略構成を示す解説図である。
【図3】本発明の第3実施形態の概略構成を示す解説図である。
【図4】本発明の第4実施形態の概略構成を示す解説図である。
【図5】本発明の第5実施形態の概略構成を示す解説図である。
【図6】本発明の第6実施形態の概略構成を示す解説図である。
【符号の説明】
【0072】
1 表面処理装置
1e 隙間
3 洗浄装置(後処理装置)
9 被処理物
10 処理槽
10a 第1室
10b 室
13 搬入開口
14 搬出開口
16 仕切壁
17 連通開口
19 処理空間
20 搬送手段
30 供給系
33 供給ノズル
34 吹き出し口
40 排気系
42 排気路
42a 個別排気路
43 排出口
45 局所排気口
47 除害設備
48 流量制御弁(調節部)
50 再利用系
51 分離回収器
55 回収路
60 後処理待機槽
63 搬入開口
70 第2排気系(待機槽排気系)
80 外槽
80a 槽間空間
81 搬入開口
90 減圧手段
g 流入ガス流
g’ 流入ガス流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の表面に処理ガスを接触させ、前記表面を処理する装置において、
搬入開口及び搬出開口を有し、かつ内部に前記表面処理を行なう処理空間が前記搬入開口及び搬出開口から離れて設けられた処理槽と、
被処理物を前記搬入開口から前記処理槽の内部に搬入し前記処理空間に配置した後、前記搬出開口から搬出する搬送手段と、
前記処理空間に処理ガスを供給する供給系と、
前記処理槽の内部からガスを排出する排気系と、
を備え、前記排気系のガス排出によって前記処理槽の外部のガスが前記開口を通して前記処理槽の内部に流入し、しかも前記流入の平均流速が、0.1m/sec以上かつ前記流入ガスが前記処理空間に達する大きさ未満になるよう設定されていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記平均流速が、0.3m/sec以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記平均流速が、2m/sec以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記平均流速が、1m/sec以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記平均流速が、0.3m/sec〜0.7m/secであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記処理槽の内部が1又は複数の仕切壁によって前記搬送手段の搬送方向に複数の室に仕切られ、前記仕切壁には被処理物を通す連通開口が設けられ、前記処理空間が、前記複数の室のうち1つの室(以下「第1室」と称す)の内部に設けられ、前記第1室に前記供給系及び前記排気系が直接接続されており、
前記排気系のガス排出によって前記連通開口を前記処理空間に向けてガスが流れ、しかも該連通開口を通過したガスが連通開口から下流側の室へ流入する時の平均流速が、0.1m/sec以上になるよう設定されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記下流側の室へ流入するガスの平均流速が、0.3m/sec以上であることを特徴とする請求項6に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記第1室内の前記処理空間が、前記第1室に面する仕切壁の連通開口(以下「第1連通開口」と称す)から離れて設けられ、
前記排気系のガス排出によって前記第1連通開口を前記処理空間に向けてガスが流れ、しかも該第1連通開口を通過したガスが前記第1室へ流入する時の平均流速が、0.1m/sec以上かつ前記第1室への流入ガスが前記処理空間に達する大きさ未満になるよう設定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の表面処理装置。
【請求項9】
前記第1室への流入ガスの平均流速が、0.3m/sec以上であることを特徴とする請求項8に記載の表面処理装置。
【請求項10】
前記排気系が、前記処理槽に分散して配置された複数の排気口と、これら排気口に対し1対1に設けられ、対応する排気口からの排気流量を調節する調節部とを含むことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の表面処理装置。
【請求項11】
前記排気系で排気されるガスから前記処理ガスの反応成分を回収し前記供給系に送る再利用系を、更に備えたことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の表面処理装置。
【請求項12】
前記処理槽より前記搬送手段の搬送方向の下流側に配置されて後処理工程を行なう後処理部と、前記処理槽と前記後処理部との間に配置された後処理待機槽と、前記後処理待機槽の内部からガスを排出する第2の排気系と、を更に備え、
前記搬送手段が、前記処理槽の搬出開口から搬出した被処理物を、前記後処理待機槽を経由して前記後処理部へ搬送することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の表面処理装置。
【請求項13】
前記後処理待機槽の前記処理槽側の壁には第2の搬入開口が設けられ、前記後処理待機槽の前記後処理部側の壁には第2の搬出開口が設けられ、前記処理槽の搬出開口と前記後処理待機槽の第2搬入開口とが、前記搬送方向に20〜300mm離れていることを特徴とする請求項12に記載の表面処理装置。
【請求項14】
前記処理槽を囲む外槽と、前記外槽と処理槽の間の空間を大気圧より低圧にする減圧手段とを、更に備えたことを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の表面処理装置。
【請求項15】
前記処理槽及び後処理待機槽を囲む外槽と、前記外槽と処理槽及び後処理待機槽との間の空間を大気圧より低圧にする減圧手段とを、更に備えたことを特徴とする請求項12又は13に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−87077(P2010−87077A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252332(P2008−252332)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】