貫通孔配線基板の製造方法
【課題】めっき反応速度を調整することでめっき未着を防ぐことが可能な貫通孔配線基板の製造方法を提供することである。
【解決手段】微小デバイスを構成する貫通孔配線基板の製造方法であって、基板40の両表面を貫通する貫通孔41を形成する工程と、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程と、を備え、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させる。
【解決手段】微小デバイスを構成する貫通孔配線基板の製造方法であって、基板40の両表面を貫通する貫通孔41を形成する工程と、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程と、を備え、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、MEMS(micro electro mechanical systems、微小電子機器)技術を駆使して、半導体デバイスに用いられ、厚み方向に貫通する孔に配線を形成した貫通孔配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の厚み方向に貫通する孔に配線を形成する技術としては、比較的安価で、つきまわり性のよい無電解めっきが広く行われている。その技術は、例えば、ウェハレベルパッケージングに用いられる半導体基板に貫通孔配線を形成する方法として、エッチング等により凹部を基板に形成した後、CVD法やスパッタ法により金属膜を成膜する。そして、この金属膜をシード層として、めっきにより凹部内に導通皮膜を形成、あるいは充填する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−37886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的に使用されている無電解Niめっきは、還元剤に次亜燐酸塩が使用されているため、めっき反応液中に水素を生じさせる。生じた水素は、少量であればめっき液中に溶けているが、ある一定の飽和濃度を超えると、気泡となって現れる。この水素の気泡は、液循環されにくい貫通孔内で生じやすいため、貫通孔内でめっき液が供給されない部分ができ、その部分において、めっき未着が起こってしまう。
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたもので、その課題は、めっき反応速度を調整することで貫通孔内のめっき未着を防ぐことが可能な貫通孔配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の貫通孔配線基板の製造方法は、微小デバイスを構成する貫通孔配線基板の製造方法であって、基板の両表面を貫通する貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程と、を備え、前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させることを特徴としている。
【0007】
また、この貫通孔配線基板の製造方法において、Niめっき液のpHを4未満にすることが好ましい。
【0008】
また、この貫通孔配線基板の製造方法において、前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、前記基板を揺動させることが好ましい。
【0009】
また、この貫通孔配線基板の製造方法において、前記貫通孔は、サンドブラストにより形成し、前記貫通孔の内表面の平滑性を向上させる処理を行うことが好ましい。
【0010】
また、この貫通孔配線基板の製造方法において、前記基板は、ガラスで形成され、前記貫通孔の内表面の平滑性を向上させる処理は、フッ酸処理であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の貫通孔配線基板の製造方法においては、前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程で、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させる。これより、めっきの成長反応がゆっくりと進むので、前記貫通孔内に存在するめっき溶液中の溶存水素濃度が上がらず、水素が気泡として生じにくいので、めっき未着が起こりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係る貫通孔配線基板を用いた半導体デバイスを示し、(a)は概 略分解斜視図、(b)は概略分解断面図である。
【図2】同上の半導体デバイスの概略分解斜視図である。
【図3】同上の半導体デバイスにおける半導体素子の概略分解斜視図である。
【図4】同上の半導体デバイスにおける半導体素子のセンサ本体を示し、(a)は概 略平面図、(b)は概略下面図である。
【図5】同上の半導体デバイスにおける半導体素子のセンサ本体を示し、図4(a) のD−D´概略断面図である。
【図6】同上の半導体デバイスにおける半導体素子の1次実装工程の説明図である。
【図7】同上の半導体デバイスにおける半導体素子の1次実装工程の説明図である。
【図8】同上の半導体デバイスの要部説明図である。
【図9】同上の半導体デバイスの製造方法の説明図である。
【図10】同上の半導体デバイスの製造方法の説明図である。
【図11】本願発明に係る貫通孔配線基板の製造方法を説明するための(a)〜(g )工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明に係る貫通孔配線基板を用いた半導体デバイスについて、図1ないし図10を参照しながら説明する。
【0014】
この半導体デバイスは、本願発明の貫通孔配線基板を用いて形成され、図1および図2に示すように、MEMSチップの一種である加速度センサチップからなる半導体素子Aと、当該半導体素子Aが収納された表面実装型のパッケージ101とを備えている。
【0015】
パッケージ101は、一面(図1(b)における上面)が開放された箱状に形成されるとともに、半導体素子Aに電気的に接続される複数のリード112のアウタリード112bが外側面から導出された中空のプラスチックパッケージ本体102と、プラスチックパッケージ本体102の上記一面を閉塞する形でプラスチックパッケージ本体102に気密的に接合されるパッケージ蓋(リッド)103とで構成されている。
【0016】
半導体素子Aは、静電容量型の加速度センサチップであって、図3ないし図5に示すように、半導体基板であるSOI基板10を用いて形成されたセンサ本体1と、第一のガラス基板20を用いて形成されセンサ本体1の一表面側(図5における上面側)に固定された第一の固定基板2と、第二のガラス基板30を用いて形成されセンサ本体1の他表面側(図5における下面側)に固定された第二の固定基板3とを備えている。ここにおいて、センサ本体1および各固定基板2,3の外周形状は、矩形状であり、各固定基板2,3は、センサ本体1と同じ外形寸法に形成されている。また、この半導体デバイスでは、半導体基板として、シリコン基板からなる支持基板10a上のシリコン酸化膜からなる絶縁層(埋込酸化膜)10b上にn形のシリコン層(活性層)10cを有するSOI基板10を用いている。なお、SOI基板10に限らず、例えば、シリコン基板を用いてもよい。また、各固定基板2,3が、各ガラス基板20,30を用いて形成されているが、各ガラス基板20,30に限らず、シリコン基板を用いて形成してもよい。
【0017】
センサ本体1は、平面視において、二つの矩形状の開口窓12,12が上記一表面に沿って並設されたフレーム部11と、フレーム部11の各開口窓12の内側において各固定基板2,3から離間して配置された2つの平面視矩形状の重り部13と、上記一表面側においてフレーム部11と重り部13とを連結した各一対の支持ばね部14,14と、を備えている。また、フレーム部11が各固定基板2,3と接合されている。なお、半導体素子Aは、フレーム部11の周部が全周に亘って各固定基板2,3の周部と接合されており、フレーム部11と各固定基板2,3とで、チップサイズパッケージが構成されている。
【0018】
ところで、センサ本体1のフレーム部11には、各開口窓12それぞれに連通する平面視矩形状の窓孔17が2つの開口窓12と同じ方向に並設されており、各窓孔17の内側には、それぞれ2つの固定子16が一対の支持ばね部14,14の並設方向に沿って配置されている。
【0019】
各固定子16は、窓孔17の内周面との間、重り部13の外周面との間、および隣り合う固定子16との間に隙間が形成されていて、互いに分離独立して電気的に絶縁されており、フレーム部11とも電気的に絶縁されている。ここにおいて、各固定子16は、両固定基板2,3と接合されている。また、センサ本体1の上記一表面側において、各固定子16には、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成され、フレーム部11において隣り合う窓孔17の間の部位にも、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成されている。
【0020】
また、第一の固定基板2には、各パッド18を各別に露出させる複数(ここでは、5つ)のテーパ状の貫通孔配線が形成されている。なお、貫通孔配線は、貫通孔28の内表面に金属をめっき形成しているものである。ここで、第一の固定基板2には、各貫通孔28を、センサ本体1から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ状に形成してあり、センサ本体1において各パッド18それぞれの外周縁から離れた各部位に各貫通孔28の周部が接合されるように開口面積を設定してある。そして、この貫通孔28は、内表面に金属めっきを形成し、第一の固定基板2の貫通孔28が広く開口している側の表面にまで電気的に接続するにしている。この貫通孔配線を備える貫通孔配線基板の製法は、本願発明の実施形態として後述する。また、この半導体デバイスにおける半導体素子Aは、静電容量型の加速度センサチップであり、各固定子16に形成された各パッド18は、後述の各固定電極25に電気的に接続され、フレーム部11に形成されたパッド18は、後述の各可動電極15に電気的に接続されている。以上説明した複数のパッド18は、半導体素子Aの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置されている。なお、半導体素子Aは、各パッド18を、第一の固定基板2におけるセンサ本体1とは、反対側の表面において、当該半導体素子Aの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置して適宜の配線により各固定電極25および各可動電極15と電気的に接続するようにしてもよい。
【0021】
以下、図3の左側に示した直交座標系のように、重り部13が並ぶ方向をy軸方向、センサ本体1の上記一表面に沿う面内でy軸方向に直交する方向をx軸方向、x軸方向とy軸方向とに直交する方向(つまり、センサ本体1の厚み方向)をz軸方向として説明する。
【0022】
半導体素子Aにおける各支持ばね部14は、ねじれ変形が可能なトーションばね(トーションバー)であって、フレーム部11および重り部13に比べて薄肉に形成されている。また、重り部13は、フレーム部11に対して一対の支持ばね部14,14の回りで変位可能となっている(y軸方向の軸回りで可動可能となっている)。つまり、一対の支持ばね部14,14は、フレーム部11に対して重り部13が揺動自在となるように、フレーム部11と重り部13とを連結している。ここにおいて、フレーム部11は、SOI基板10の支持基板10a、絶縁層10b、シリコン層10cそれぞれを利用して形成されている。これに対して、支持ばね部14は、SOI基板10におけるシリコン層10cを利用して形成されていて、フレーム部11よりも薄肉となっている。また、重り部13は、上述のSOI基板10の支持基板10a、絶縁層10b、シリコン層10cそれぞれを利用して形成されている。半導体素子Aのセンサ本体1は、バルクマイクロマシニング技術などを利用して形成されている。
【0023】
また、各固定子16は、SOI基板10の支持基板10a、絶縁層10b、シリコン層10cそれぞれを利用して形成されていて、SOI基板10に適宜加工を施してから当該SOI基板10を第二の固定基板3に陽極接合により接合した後に、フレーム部11から分離されている。
【0024】
ところで、半導体素子Aは、センサ本体1の上記一表面側に接合される第一の固定基板2側への重り部13の変位空間を確保するために、重り部13、各支持ばね部14、およびフレーム部11における開口窓12の周部それぞれに対応する各部位におけるシリコン層10cの厚みを薄くしている。なお、これら各部位の厚みを薄くせずに、第一の固定基板2の基礎となる第一のガラス基板20におけるセンサ本体1との対向面に重り部13の変位空間形成用凹部を形成し、当該変位空間形成用凹部の内底面に固定電極25を形成するようにしてもよい。また、半導体素子Aは、センサ本体1の上記他表面側に接合される第二の固定基板3側への重り部13の変位空間を確保するために、重り部13およびフレーム部11における開口窓12の周部それぞれに対応する各部位における支持基板10aの厚みを薄くしている。なお、これら各部位の厚みを薄くせずに、第二の固定基板3の基礎となる第二のガラス基板30におけるセンサ本体1との対向面に重り部13の変位空間形成用凹部を形成するようにしてもよい。また、この半導体デバイスでは、SOI基板10を用いて半導体素子Aを形成しているので、シリコン基板を用いて形成する場合に比べて、各支持ばね部14の厚み寸法の精度を高めることができる。
【0025】
センサ本体1の上記一表面側および上記他表面側には、重り部13の過度の変位を規制する複数の微小な突起部13c(図5参照)が重り部13における各固定基板2,3それぞれとの対向面から突設されている。これにより、重り部13の過度の変位による各支持ばね部14の破損や各固定基板2,3の破損などを防止することができる。ここで、突起部13cは、SOI基板10の一部により構成してもよいし、別途に形成したシリコン酸化膜をパターニングすることにより構成してもよい。なお、このような突起部13cは、センサ本体1に設けずに、各固定基板2,3それぞれにおける重り部13との対向面に設けてもよい。また、第二の固定基板3における重り部13との対向面には、金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)により構成され重り部13の付着を防止する付着防止膜35が形成されている。
【0026】
この半導体デバイスにおける半導体素子Aは、上述の説明から分かるように、各重り部13がy軸方向に沿って延長された一対の支持ばね部14,14を介してフレーム部11に連結され、第一の固定基板2において各重り部13それぞれに対向する部位ごとにx軸方向に沿って金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)からなる2つの固定電極25が並設されるとともに、各重り部13に可動電極15が設けられており、z軸方向において対向して対をなす可動電極15と固定電極25との対の間に空隙が形成されている。ここで、各一対の支持ばね部14,14は、y軸方向に沿った重り部13の中心線の延長線上に形成されている。
【0027】
また、センサ本体1の重り部13は、上記他表面側において重り部13のy軸方向の中心線(ここでは、一対の支持ばね部14,14を結ぶ直線に一致する)における両側に、開口され、平面視において互いに大きさの異なる凹部13a,13bが形成されている。また、重り部13の平面視において開口サイズの大きな凹部13b内には、凹部13bの矩形状の内周の2つの対角線に沿ったX字状の補強壁19が、凹部13bのz軸に連続する形で形成されている。また、重り部13は、センサ本体1の上記一表面に沿った面内において一方の重り部13が他方の重り部13を180°回転させた形で形成されている。
【0028】
上述の半導体素子Aは、センサ本体1に設けられた可動電極15と第一の固定基板2に設けられた固定電極25との対を4対有しており、可動電極15と固定電極25との各対ごとに可変容量コンデンサが構成されている。要するに、半導体素子Aは、重り部13が振動することにより、対をなす固定電極25と可動電極15との対向面積が変化し、可変容量コンデンサの静電容量が変化する。
【0029】
なお、以下では、説明の便宜上、4個の固定電極25について、図3における左上の固定電極25の符号を25Aa、左下の固定電極25の符号を25Ab、右上の固定電極25の符号を25Ba、右下の固定電極25の符号を25Bbとし、2個の可動電極15について、図3における左側の可動電極15の符号を15A、右側の可動電極15の符号を15Bとして説明する。
【0030】
ここにおいて、図3において4つの固定子16それぞれに形成された4つのパッド18について、左側から順に符号を18Aa,18Ab,18Ba,18Bbとすれば、各パッド18Aa,18Ab,18Ba,18Bbは、それぞれ、固定子16、および第二の固定基板2において固定電極25と連続一体に形成された金属配線26(図5参照)を介して固定電極25Aa,25Ab,25Ba,25Bbと電気的に接続されている。ここで、センサ本体1は、各固定子16における重り部13側の端部の表面をセンサ本体1の上記一表面よりも後退させてあり(各固定子16における当該端部のシリコン層10cの厚みを薄くしてあり)、固定子16における当該端部の表面に、第二の固定基板2の金属配線26が圧接される連絡用導体部16d(図4(a)および図5参照)が形成されている。また、フレーム部11に形成されたパッド18は、可動電極15A,15Bの両方と電気的に接続されている。
【0031】
ここで、半導体素子Aの基本的な動作例について説明する。
【0032】
いま、半導体素子Aに加速度がかかっていない状態で、半導体素子Aに対してx軸方向
(x軸の正方向)の加速度がかかって、各重り部13が一対の支持ばね部14,14を回動軸として回動して各可変容量コンデンサの静電容量が変化する。ここにおいて、半導体素子Aに加速度がかかっていない状態での各可変容量コンデンサの静電容量をC0とし、x軸方向の加速度がかかったときの、各可変容量コンデンサの静電容量の変化分をΔC、可動電極15Aと固定電極25Aaとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAa、可動電極15Aと固定電極25Abとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAb、可変電極15Bと固定電極25Baとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBa、可変電極15Bと固定電極25Bbとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBbとすれば、
CAa=C0+ΔC
CAb=C0−ΔC
CBa=C0+ΔC
CBb=C0−ΔC
となる。ここで、一方の重り部13側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CAa−CAb)と、他方の重り部13側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CBa−CBb)との和は、4ΔCとなる。
【0033】
また、同様に、半導体素子Aにz軸方向の加速度がかかったときの、各可変容量コンデンサの静電容量の変化分をΔC、可動電極15Aと固定電極25Aaとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAa、可動電極15Aと固定電極25Abとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAb、可変電極15Bと固定電極25Baとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBa、可変電極15Bと固定電極25Bbとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBbとすれば、
CAa=C0+ΔC
CAb=C0−ΔC
CBa=C0−ΔC
CBb=C0+ΔC
となる。ここで、一方の重り部13側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CAa−CAb)と、他方の重り部13側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CBb−CBa)との和は、4ΔCとなる。
【0034】
このように、{(CAa−CAb)+(CBa−CBb)}の静電容量の変化に基づいて、半導体素子Aのx軸方向に作用した加速度を検出することができ、{(CAa−CAb)+(CBb−CBa)}の静電容量の変化に基づいて、半導体素子Aのz軸方向に作用した加速度を検出することができる。
【0035】
ここにおいて、この半導体デバイスは、半導体素子Aの出力信号を信号処理する信号処理回路が形成されたICチップBが、半導体素子Aとともにパッケージ101に収納されている。ICチップBは、ASIC(Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されており、裏面全面がシリコーン系樹脂を用いて接着されている。なお、ICチップBの機能は、半導体素子Aの機能に応じて適宜設計すればよく、半導体素子Aと協働するものであればよい。また、ICチップBは、必ずしも、半導体素子Aと同一のパッケージ101に収納する必要はなく、この場合は、半導体素子Aの各パッド18に一端部が接続されるボンディングワイヤWの他端部をプラスチックパッケージ本体102のリード112のインナリード112aに接続すればよい。ただし、ICチップBを半導体素子Aと同じパッケージ101に収納した場合のほうが、異なるパッケージに収納する場合に比べて、半導体デバイス全体の小型化および低コスト化を図れるとともに加速度の検出精度の向上を図れる。
【0036】
この半導体デバイスでは、ICチップBが一枚のシリコン基板を用いて形成されているのに対して、半導体素子AがSOI基板10と2つのガラス基板20,30とを用いて形成されている。これより、半導体素子Aの厚みがICチップBの厚みに比べて大きくなっているので、上述のプラスチックパッケージ本体102の底部において半導体素子Aを搭載する搭載面102aをICチップBの搭載部位よりも凹ませてある(したがって、半導体素子Aを搭載する部位は、底部の肉厚が他の部位に比べて薄くなっている)。なお、この半導体デバイスでは、プラスチックパッケージ本体102の外形を10mm×7mm×3mmの直方体としてあるが、この数値は一例であり、半導体素子AやICチップBの外形、リード112の本数やピッチなどに応じて適宜設定すればよい。
【0037】
ところで、図7に示されるように、半導体素子Aは、当該半導体素子Aの外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所で接着剤(例えば、弾性率が1MPa以下のシリコーン樹脂などのシリコーン系樹脂など)からなる接着部104によりプラスチックパッケージ本体102に固着されている。ここにおいて、半導体素子Aは、プラスチックパッケージ本体102の底部の搭載面102a側とは反対側の表面側において全てのパッド18が1辺に沿って配置されており、当該1辺の両端の2箇所と、当該一辺に平行な辺の一箇所(ここでは、中央部)との3箇所とに頂点を有する仮想三角形の各頂点に接着部104が位置しており、各パッド18にボンディングワイヤWを安定してボンディングすることができる。なお、接着部104の位置に関し、上記1辺に平行な辺の一箇所については、中央部に限らず、例えば、両端の一方でもよいが、中央部の方が半導体素子Aをより安定して支持することができるとともに、各パッド18にボンディングワイヤWを安定してボンディングすることができる。
【0038】
以下、半導体素子Aをプラスチックパッケージ本体102に一次実装する際の半導体素子Aおよびプラスチックパッケージ本体102の底部の状態変化について図6に基づいて説明するが、(a)〜(c)それぞれにおける上段は概略側面図、下段は概略斜視図である。
【0039】
半導体素子Aをプラスチックパッケージ本体102に一次実装するにあたっては、図6(a)に示すようにプラスチックパッケージ本体102における半導体素子Aの搭載面102a上の三箇所に常温下で接着剤104aをディスペンサなどにより塗布(滴下)してから半導体素子Aを搭載した後、接着剤104aが硬化するように所定温度(例えば、150℃)に加熱すると図6(b)に示すようにプラスチックパッケージ本体102が熱変形し、その後、常温になると図6(c)に示すようにプラスチックパッケージ本体102が熱変形のない状態に戻ろうとする。ここで、半導体素子Aは、プラスチックパッケージ本体102が熱変形した状態で固定されていたが、プラスチックパッケージ本体102に対して3箇所のみしか接着部104により固着されていないので、常温に戻ったときに温度変化によるプラスチックパッケージ本体102側の変形が半導体素子Aには当該半導体素子Aの傾きとして伝わり、半導体素子Aの表面を三点で決定でき、半導体素子Aが変形して応力が発生するのを防止することができる。プラスチックパッケージ本体102が常温に戻ったときに半導体素子Aは、図6(c)の下段の概略斜視図に示すように若干傾くが、高低差がナノメータレベルの傾きであり、特に問題ない。なお、半導体素子Aとしてチップサイズが1mm□〜10mm□、厚みが0.1mm〜1mm程度の場合、接着剤104aは、φ200μm〜φ1000μm程度の領域に塗布すればよい。
【0040】
以上説明したプラスチックパッケージ本体102への半導体素子Aの実装構造では、プラスチックパッケージ本体102への実装時などの温度変化に起因して半導体素子Aが変形するのを抑制することができ、半導体素子Aに生じる応力を低減することが可能となる。ここで、半導体素子Aが上述のような加速度センサチップであれば、半導体素子Aにおける第二の固定基板3の四つの角部を固着した場合(つまり、四箇所で固着した場合)や半導体素子Aの第二の固定基板3の周部を全周にわたって固着した場合に比べて、プラスチックパッケージ本体102から半導体素子Aへの応力が支持ばね部14に作用しにくく、安定した精度の高い加速度測定が可能となる。
【0041】
また、この半導体デバイスでは、接着剤104aとしてエポキシ樹脂に比べて弾性率の低いシリコーン系樹脂を用いることにより、プラスチックパッケージ本体102から半導体素子Aへの応力の伝達を抑制する(つまり、応力を緩和する)ことができる。
【0042】
ここにおいて、接着剤104aとして、シリコーン系樹脂に球状のスペーサ(例えば、ガラスやプラスチックにより形成されたスペーサ)が混合されたものを用いれば、半導体素子Aとプラスチックパッケージ本体102との間の所望の間隔(ギャップ長)をスペーサにより確保することが可能となって、半導体素子Aとプラスチックパッケージ本体102との間の接着部104の厚み精度の向上が可能となる。
【0043】
しかしながら、スペーサが混合されたシリコーン系樹脂をディスペンサで滴下する場合には、ディスペンサのノズルにスペーサが詰まるのを防止するために、当該ノズルの内径によりスペーサの粒径が制限され、当該ノズルの内径よりも粒径が十分に小さなスペーサ(例えば、粒径が6μm〜30μm程度のスペーサ)しか用いることができず、数十μm以上の粒径のスペーサを混合した樹脂を用いることができない。
【0044】
そこで、この半導体デバイスにおけるプラスチックパッケージ本体102は、当該プラスチックパッケージ本体102の底部において上述の三箇所それぞれに対応する各部位に、上記接着剤104aにより被覆される円錐台状の突起部102bが連続一体に突設されている(つまり、プラスチックパッケージ本体102は、三つの突起部102bが一体成形されている)。各突起部102bは、底面の直径を100μm、高さを100μmに設定してある(アスペクト比=100/100=1)が、この数値は一例であって、これに限らず、例えば、底面の直径が100μm、高さが200μmというように、より高アスペクト比(アスペクト比=200/100=2)の形状とすることも可能である。ここで、突起部102bの形状は、プラスチックパッケージ本体102の成形用の金型で制御することができる。このように、プラスチックパッケージ本体102の底部と半導体素子Aとの所望の間隔を容易に確保することが可能となるとともに、球状のスペーサを混合した接着剤を用いる場合に比べて、当該間隔の設定の自由度が高くなり、半導体素子Aとプラスチックパッケージ本体102との間のギャップ長を大きくすることができる。また、プラスチックパッケージ本体102から半導体素子Aへの応力の伝達抑制効果も大きくなる。
【0045】
また、この半導体デバイスにおける半導体素子Aの実装構造によれば、各接着部104が半導体素子Aの外周部に位置しているので、各接着部104が半導体素子Aの外周部よりも内側に位置している場合に比べて、半導体素子Aを安定して固定することができる。
【0046】
ところで、半導体素子Aは、上述のように当該半導体素子Aの一辺に沿ってパッド18が配列されているので、図7(b)に示すように、接着部104が当該1辺の中央部と、当該1辺に平行な他の1辺の両端との三箇所に位置している場合、ワイヤボンディング工程において、キャピラリなどの接合冶具(ツール)KPを用い超音波を利用したワイヤボンディングを行う際に、半導体素子Aが傾斜・振動してボンディングワイヤWの接合を安定して行えないことがある。
【0047】
これに対して、この半導体デバイスでは、図7(a)に示すように、半導体素子Aにおいてパッド18の配列方向に平行で且つ、パッド18に近い一辺両端の二箇所と、当該一辺に平行な辺の中央部の1箇所との3箇所に接着部104が位置しているので、前記半導体素子Aの各パッド18にボンディングワイヤWを、超音波を利用するワイヤボンディング技術(超音波併用熱圧着ワイヤボンディング、超音波ワイヤボンディングなど)により安定してボンディングすることができる。なお、図7(a)中の下向きの矢印は、荷重および超音波の印加方向を示している。
【0048】
また、この半導体デバイスは、半導体素子Aのパッド18におけるボンディングワイヤWの接合部を局所的に覆う樹脂(例えば、エポキシ樹脂など)からなる保護部(図示せず)が設けられているので、半導体素子A全体に応力がかかるのを防止しつつ、半導体素子Aのパッド18とボンディングワイヤWとの接合部の信頼性を高めることができる。(つまり、半導体素子Aのパッド18とボンディングワイヤWとの接合部の信頼性を高めながらも、半導体素子AおよびボンディングワイヤWを樹脂により封止する場合に比べて半導体素子Aにかかる応力を低減できる。
【0049】
また、この半導体デバイスでは、図8(b)に示すように、各接着部104の接着剤104a(図6参照)の一部が半導体素子Aの側面まで這い上がるようにしてあるので、図8(a)に示すように接着部104が半導体素子Aの底面のみに接着されている場合に比べて、横方向の力に対する接着部104の耐性を高めることができる。
【0050】
ところで、上述のパッケージ101は、リード112のアウタリード112bがプラスチックパッケージ本体102の二つの外側面から導出されガルウィング形状に形成されている。しかして、この半導体デバイスでは、配線基板への2次実装後において、配線基板との接合部の外観検査を容易に行うことができる。
【0051】
プラスチックパッケージ本体102の材料としては、熱可塑性樹脂の一種であって、酸素および水蒸気の透過率が極めて低い液晶性ポリエステル(LCP)を採用しているが、LCPに限らず、例えば、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリビスアミドトリアゾール(PBT)などを採用してもよい。
【0052】
また、各リード112の基礎となるリードフレームの材料としては、銅合金の中でもばね性の高いりん青銅を採用している。ここでは、リードフレームとして、材質がりん青銅で板厚が0.2mmのリードフレームを用い、厚みが2μm〜4μmのNi膜と、厚みが0.2μm〜0.3μmのAu膜との積層膜からなるめっき膜を電解めっき法により形成している。この半導体デバイスでは、プラスチックパッケージ本体102の各リード112に、上述のめっき膜が設けられているので、ワイヤボンディングの接合信頼性と半田付け信頼性とを両立させることができる。また、熱可塑性樹脂成形品のプラスチックパッケージ本体102は、リード112が同時一体に成形されているが、熱可塑性樹脂であるLCPにより形成されるプラスチックパッケージ本体102とリード112のAu膜とは、密着性が低いので、上述のリードフレームのうちプラスチックパッケージ本体102に埋設される部位にパンチ穴を設けることで各リード112が抜け落ちるのを防止してある。
【0053】
また、この半導体デバイスは、図1(b)に示すように、プラスチックパッケージ本体102の内側で各リード112におけるインナリード112aの露出部位およびプラスチックパッケージ本体102における上記露出部位の周部を覆う非透湿性の樹脂(例えば、アミン系エポキシ樹脂などのエポキシ系樹脂)からなる樹脂被覆部116が設けられている。ここで、樹脂被覆部116は、ワイヤボンディング工程の後でディスペンサを用いて上記非透湿性の樹脂を塗布し、硬化させることで、気密性を向上させている。なお、上記非透湿性の樹脂に代えてセラミックスを用いてもよく、セラミックスを用いる場合には、プラズマ溶射などの技術を用いて局所的に吹き付ければよい。
【0054】
このように、この半導体デバイスでは、各リード112におけるインナリード112aの露出部位およびプラスチックパッケージ本体112における上記露出部位の周部を覆う非透湿性の樹脂からなる樹脂被覆部116が設けられているので、半導体素子Aに樹脂による応力をかけずに、各リード112とプラスチックパッケージ本体102との界面を通してパッケージ101内へ外部からの水分やガス(例えば、水蒸気など)が侵入するのを防止することができる。
【0055】
また、ボンディングワイヤWとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いている。また、ボンディングワイヤWを構成するAuワイヤとしては、直径が25μmのものを採用しているが、これに限らず、例えば、直径が20μm〜50μmのAuワイヤから適宜選択すればよい。
【0056】
また、図2に示すように、パッケージ蓋103は、金属(例えば、ステンレス鋼など)により形成されている。このように、プラスチックパッケージ本体102が熱可塑性樹脂により形成されるとともに、パッケージ蓋103が金属により形成されているので、プラスチックパッケージ本体102とパッケージ蓋103とを融着により接合することができる。ここにおいて、この半導体デバイスでは、プラスチックパッケージ本体102とパッケージ蓋103とが融着により接合されており、プラスチックパッケージ本体102とパッケージ蓋103とを接着剤により接合してある場合に比べて、パッケージ101の気密性を高くすることができる。なお、パッケージ蓋103の適宜部位には、レーザマーキング技術により、製品名称や製造日時などを示す表記113が形成されている。
【0057】
また、図9に示すように、プラスチックパッケージ本体102の上記一面に形成された段差部に載置されるように、パッケージ蓋103をプラスチックパッケージ本体102に嵌め込んでから、レーザビームLBを照射して加熱し融着させればよい。なお、パッケージ蓋103が未着色のLCPなどにより形成されている場合には、パッケージ蓋103とプラスチックパッケージ本体102との界面も加熱することができ、より広い面積を融着することができる。
【0058】
また、図10に示すように、ヒータツールHTにより保持したパッケージ蓋103をプラスチックパッケージ本体102の材料(ここでは、LCP)の融点以上の所定温度(例えば、400℃程度)に加熱した状態で、プラスチックパッケージ本体102に押し付けることで融着させるようにしてもよい。
【0059】
この半導体デバイスの製造にあたっては、半導体素子AおよびICチップBをプラスチックパッケージ本体102に接着固定するダイボンディング工程を行ってから、半導体素子AとICチップBとの間、ICチップBとインナリード112aとの間、それぞれ、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続するワイヤボンディング工程を行い、その後、樹脂被覆部116を形成する樹脂被覆部形成工程を行い、続いて、パッケージ蓋103をプラスチックパッケージ本体102に接合するシーリング工程を行えばよい
以上説明したこの半導体デバイスは、一面が開放された箱状に形成されるとともに、半導体素子Aに電気的に接続される複数のリード112のアウタリード112bが外側面から導出された中空のプラスチックパッケージ本体102を備え、半導体素子Aが当該半導体素子Aの外周形状に基づいて規定した仮想三角形の三つの頂点に対応する三箇所で接着部104によりプラスチックパッケージ本体102の底部に固着されている。これより、半導体素子Aのプラスチックパッケージ本体102への一次実装時、パッケージ101の配線基板への2次実装時などの温度変化に起因して半導体素子Aが変形するのを抑制することができ、低コストでパッケージ101内の半導体素子Aに生じる応力を低減することが可能となり、しかも、プラスチックパッケージ本体102がリード112を一体に有しているので、配線基板との接合部に温度サイクルに起因したクラックが発生するのを抑制でき、信頼性を向上可能となる。
【0060】
また、上述の半導体デバイスでは、半導体素子Aとして、MEMSチップの一例として静電容量型の加速度センサチップを例示したが、半導体素子Aは、静電容量型の半導体加速度センサチップに限らず、例えば、ピエゾ抵抗型の加速度センサチップやジャイロセンサ、マイクロアクチュエータ、マイクロリレー、赤外線センサなどや、ICチップなどにも適用できる。
【0061】
次に、前述した半導体デバイスに用いられた貫通孔配線基板の製造方法に関して、図11に基づいて説明する。
【0062】
本実施形態は、微小デバイスを構成する貫通孔配線基板の製造方法を示しており、基板40(前述の第一のガラス基板20)の両表面を貫通する貫通孔41(前述の貫通孔28)を形成する工程と、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程と、を備えている。また、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させる。そして、Niめっき液のpHをpH4未満にする。なお、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、基板40を揺動させる。また、貫通孔41は、サンドブラストにより形成し、貫通孔41の内表面の平滑性を向上させる処理を予め行っておく。なお、基板40は、ガラスで形成され、貫通孔41の内表面の平滑性を向上させる処理は、フッ酸処理で行う。
【0063】
製造工程については、以下詳細に説明する。
【0064】
まず、図11の(a)に示す基板40(前述の第一のガラス基板20)を準備する。なお、前述の半導体デバイスでは、第一のガラス基板20として、ガラス基板だけでなくシリコン基板を用いてもよい、と記載しているところ、本実施形態においては、基板40としてガラス基板を用いた場合について説明する。
【0065】
次に、図11の(b)に示すように、基板40にフォトプロセスを用いてレジストを形成し、貫通孔41は、RIEやサンドブラストにより形成し、貫通孔が形成された基板42を得る。また、形成した貫通孔41の加工面が荒れているため。フッ酸等により、エッチング処理し、平滑にすることが好ましい。
【0066】
貫通孔41を基板40の厚み方向に有する貫通孔が形成された基板42は、図11の(c)に示すように、シリコン基板43(前述のSOI基板10)と陽極接合等で接合される。シリコン基板43は、貫通孔が形成された基板42と接合した面とは反対の面で、別のガラス基板44(前述、第二のガラス基板30)と陽極接合等で接合される。下層からガラス基板44、シリコン基板43、貫通孔が形成された基板42を接合して積層したものを積層基板45と呼ぶ。
【0067】
接合工程後、図11の(d)に示すように、積層基板45において貫通孔41がある面に配線材料(例えば銅、ニッケル等の金属材料)となる金属層46を形成する。金属層46を形成する方法として、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法などの成膜方法がある。また、配線材料を成膜する前に、積層基板45は、密着層としてCr、Ti等を成膜していてもよい。
【0068】
金属層46を形成した後、金属層46をシード層として電解めっき法によって、配線材料を用いて形成される金属部47を析出させる電解めっき工程を行うことによって、図11の(e)に示す構造を得る。
【0069】
次に、図11の(f)に示すように、フォトプロセス工程によりレジスト48を形成し、その後、図11の(g)に示すように、金属層46および金属部47をエッチングし、次いで、レジスト48を剥離し、配線パターンを作製する。
【0070】
また、無電解めっきによる金属の積層を行う前に、無電解めっき前処理を行う。貫通孔41の内表面は、金属層46および金属部47が成膜されている。そこで、金属部47表面の不純物を取り除くために、金属部47表面をソフトエッチングする。次に、金属が成膜された貫通孔41の内表面および積層基板45をシャワー水洗し、硫酸水溶液に浸漬した。そして、さらに水洗槽にて水洗後、配線パターンを活性化するために、活性化液に一分間浸漬し、水洗槽にて水洗を行った。次に、貫通孔41内にイオン交換水を充填し、充填したまま無電解めっき液に浸漬した。このとき、貫通孔41内をイオン交換水で充填するのは、貫通孔41内において気泡を含まずにめっきを行うためであり、貫通孔41内に気泡が残っていると、めっき抜けの原因となる。
【0071】
無電解めっき前処理の後、無電解めっきにより、図11(h)に示すように、金属部47上にNiめっき層49、Pdめっき層50、Auめっき層51を形成した。このように金属配線を施した貫通孔41(前述の貫通孔28)を備えた本願発明の貫通孔配線基板52(前述の第一の固定基板2)を形成し、それを備えた半導体素子53(前述の半導体素子A)を得た。Niめっき層49を形成する工程においては、Niめっき溶液のpHを4未満にすることで析出レートを50nm/min未満にして、Niめっき層49を成長させる。また、めっき成長を行いながら、積層基板45(請求項に記載の基板40を含む)に揺動を加える。なお、揺動には、バイブレータ等による振動も含む。また、積層基板45に揺動を加えることは、他の金属めっき層である、Pdめっき層50およびAuめっき層51を形成する工程でも行って構わない。
【0072】
以上、説明したように、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法において、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させることより、めっきの析出レートを下げ、貫通孔41内の溶存水素濃度の上昇を抑制し、水素を気泡として生じることを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法においては、Niめっき液のpHを4未満にすることで、pHによってめっきの析出レートを制御することができる。これより、溶存水素濃度の上昇を抑制し、水素を気泡として生じることを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法においては、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程で基板40(積層基板45も含む)を揺動させることができる。これは、貫通孔41内に水素の気泡が生じた場合でも、気泡を孔外へ追い出すことができる。
【0075】
また、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法においては、貫通孔41は、サンドブラストにより形成し、貫通孔41の内表面の平滑性を向上させる処理を行う。これは、貫通孔41の内表面を平滑にし、水素の気泡が生じた場合でも、気泡が内表面に引っ掛からず抜けやすくすることができる。
【0076】
そして、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法においては、基板40は、ガラスで形成され、貫通孔41の内表面の平滑性を向上させる処理は、フッ酸処理である。これは、基板40に形成されている貫通孔41の内表面の平滑性がより向上させる。また、これは、貫通孔41内で水素の気泡が生じた場合でも、気泡が内表面に引っ掛からず抜けやすくすることができる。
【実施例】
【0077】
(比較例1、実施例1,2)
・比較例1:pH4.0の無電解Niめっき液
・実施例1:pH3.5の無電解Niめっき液
・実施例2:pH3.0の無電解Niめっき液
比較例1、実施例1、実施例2のそれぞれについて、めっき抜け率を比較した。
【0078】
前処理を施した積層基板45を、それぞれpH3.0、3.5、4.0の無電解Niめっき液(奥野製薬製ICPニコロン、pH調整は硫酸で行った。)に浸漬し、Niめっき層49を形成した。無電解Niめっき工程では、積層基板45(基板40も含む)の揺動を行う。なお、揺動には、バイブレータ等による振動も含む。そして無電解Niめっき工程後、水洗槽で洗浄し、さらに無電解Pdめっき液(奥野製薬製パラトップLP)に浸漬し、Pdめっき層50を形成した。そして、水洗槽で洗浄後、置換型無電解Auめっき液(奥野製薬製フラッシュゴールドNC)に浸漬し、Auめっき層51を形成することで、金属被膜を施した貫通孔52を形成した。
【0079】
全ての無電解めっき工程終了後、顕微鏡にて、貫通孔52における、気泡によるめっき抜けの発生個数を確認し、各実施例、比較例のめっき抜け率を表1にまとめた。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から明らかなように、pH4.0では、めっき抜け率が5%であり、めっき抜けが見られるが、pH3.5、pH3.0でのめっき抜け率は、0%となる。これより、pH4.0未満にすることで、めっき抜け率をなくすことができることがわかる。したがって、めっき抜け率を0%とするためには、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にすることが適していることがわかる。
【符号の説明】
【0082】
40 基板
41 貫通孔(貫通孔28)
42 貫通孔が形成された基板
43 シリコン基板(SOI基板10)
44 下部ガラス基板(第二の固定基板3)
45 積層基板
46 金属層
47 金属部
48 レジスト
49 Niめっき層
50 Pdめっき層
51 Auめっき層
52 貫通孔配線基板(第一の固定基板2)
53 半導体素子(半導体素子A)
【技術分野】
【0001】
本願発明は、MEMS(micro electro mechanical systems、微小電子機器)技術を駆使して、半導体デバイスに用いられ、厚み方向に貫通する孔に配線を形成した貫通孔配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の厚み方向に貫通する孔に配線を形成する技術としては、比較的安価で、つきまわり性のよい無電解めっきが広く行われている。その技術は、例えば、ウェハレベルパッケージングに用いられる半導体基板に貫通孔配線を形成する方法として、エッチング等により凹部を基板に形成した後、CVD法やスパッタ法により金属膜を成膜する。そして、この金属膜をシード層として、めっきにより凹部内に導通皮膜を形成、あるいは充填する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−37886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的に使用されている無電解Niめっきは、還元剤に次亜燐酸塩が使用されているため、めっき反応液中に水素を生じさせる。生じた水素は、少量であればめっき液中に溶けているが、ある一定の飽和濃度を超えると、気泡となって現れる。この水素の気泡は、液循環されにくい貫通孔内で生じやすいため、貫通孔内でめっき液が供給されない部分ができ、その部分において、めっき未着が起こってしまう。
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたもので、その課題は、めっき反応速度を調整することで貫通孔内のめっき未着を防ぐことが可能な貫通孔配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の貫通孔配線基板の製造方法は、微小デバイスを構成する貫通孔配線基板の製造方法であって、基板の両表面を貫通する貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程と、を備え、前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させることを特徴としている。
【0007】
また、この貫通孔配線基板の製造方法において、Niめっき液のpHを4未満にすることが好ましい。
【0008】
また、この貫通孔配線基板の製造方法において、前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、前記基板を揺動させることが好ましい。
【0009】
また、この貫通孔配線基板の製造方法において、前記貫通孔は、サンドブラストにより形成し、前記貫通孔の内表面の平滑性を向上させる処理を行うことが好ましい。
【0010】
また、この貫通孔配線基板の製造方法において、前記基板は、ガラスで形成され、前記貫通孔の内表面の平滑性を向上させる処理は、フッ酸処理であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の貫通孔配線基板の製造方法においては、前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程で、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させる。これより、めっきの成長反応がゆっくりと進むので、前記貫通孔内に存在するめっき溶液中の溶存水素濃度が上がらず、水素が気泡として生じにくいので、めっき未着が起こりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係る貫通孔配線基板を用いた半導体デバイスを示し、(a)は概 略分解斜視図、(b)は概略分解断面図である。
【図2】同上の半導体デバイスの概略分解斜視図である。
【図3】同上の半導体デバイスにおける半導体素子の概略分解斜視図である。
【図4】同上の半導体デバイスにおける半導体素子のセンサ本体を示し、(a)は概 略平面図、(b)は概略下面図である。
【図5】同上の半導体デバイスにおける半導体素子のセンサ本体を示し、図4(a) のD−D´概略断面図である。
【図6】同上の半導体デバイスにおける半導体素子の1次実装工程の説明図である。
【図7】同上の半導体デバイスにおける半導体素子の1次実装工程の説明図である。
【図8】同上の半導体デバイスの要部説明図である。
【図9】同上の半導体デバイスの製造方法の説明図である。
【図10】同上の半導体デバイスの製造方法の説明図である。
【図11】本願発明に係る貫通孔配線基板の製造方法を説明するための(a)〜(g )工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明に係る貫通孔配線基板を用いた半導体デバイスについて、図1ないし図10を参照しながら説明する。
【0014】
この半導体デバイスは、本願発明の貫通孔配線基板を用いて形成され、図1および図2に示すように、MEMSチップの一種である加速度センサチップからなる半導体素子Aと、当該半導体素子Aが収納された表面実装型のパッケージ101とを備えている。
【0015】
パッケージ101は、一面(図1(b)における上面)が開放された箱状に形成されるとともに、半導体素子Aに電気的に接続される複数のリード112のアウタリード112bが外側面から導出された中空のプラスチックパッケージ本体102と、プラスチックパッケージ本体102の上記一面を閉塞する形でプラスチックパッケージ本体102に気密的に接合されるパッケージ蓋(リッド)103とで構成されている。
【0016】
半導体素子Aは、静電容量型の加速度センサチップであって、図3ないし図5に示すように、半導体基板であるSOI基板10を用いて形成されたセンサ本体1と、第一のガラス基板20を用いて形成されセンサ本体1の一表面側(図5における上面側)に固定された第一の固定基板2と、第二のガラス基板30を用いて形成されセンサ本体1の他表面側(図5における下面側)に固定された第二の固定基板3とを備えている。ここにおいて、センサ本体1および各固定基板2,3の外周形状は、矩形状であり、各固定基板2,3は、センサ本体1と同じ外形寸法に形成されている。また、この半導体デバイスでは、半導体基板として、シリコン基板からなる支持基板10a上のシリコン酸化膜からなる絶縁層(埋込酸化膜)10b上にn形のシリコン層(活性層)10cを有するSOI基板10を用いている。なお、SOI基板10に限らず、例えば、シリコン基板を用いてもよい。また、各固定基板2,3が、各ガラス基板20,30を用いて形成されているが、各ガラス基板20,30に限らず、シリコン基板を用いて形成してもよい。
【0017】
センサ本体1は、平面視において、二つの矩形状の開口窓12,12が上記一表面に沿って並設されたフレーム部11と、フレーム部11の各開口窓12の内側において各固定基板2,3から離間して配置された2つの平面視矩形状の重り部13と、上記一表面側においてフレーム部11と重り部13とを連結した各一対の支持ばね部14,14と、を備えている。また、フレーム部11が各固定基板2,3と接合されている。なお、半導体素子Aは、フレーム部11の周部が全周に亘って各固定基板2,3の周部と接合されており、フレーム部11と各固定基板2,3とで、チップサイズパッケージが構成されている。
【0018】
ところで、センサ本体1のフレーム部11には、各開口窓12それぞれに連通する平面視矩形状の窓孔17が2つの開口窓12と同じ方向に並設されており、各窓孔17の内側には、それぞれ2つの固定子16が一対の支持ばね部14,14の並設方向に沿って配置されている。
【0019】
各固定子16は、窓孔17の内周面との間、重り部13の外周面との間、および隣り合う固定子16との間に隙間が形成されていて、互いに分離独立して電気的に絶縁されており、フレーム部11とも電気的に絶縁されている。ここにおいて、各固定子16は、両固定基板2,3と接合されている。また、センサ本体1の上記一表面側において、各固定子16には、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成され、フレーム部11において隣り合う窓孔17の間の部位にも、金属薄膜(例えば、Al−Si膜)からなる円形状のパッド18が形成されている。
【0020】
また、第一の固定基板2には、各パッド18を各別に露出させる複数(ここでは、5つ)のテーパ状の貫通孔配線が形成されている。なお、貫通孔配線は、貫通孔28の内表面に金属をめっき形成しているものである。ここで、第一の固定基板2には、各貫通孔28を、センサ本体1から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなるテーパ状に形成してあり、センサ本体1において各パッド18それぞれの外周縁から離れた各部位に各貫通孔28の周部が接合されるように開口面積を設定してある。そして、この貫通孔28は、内表面に金属めっきを形成し、第一の固定基板2の貫通孔28が広く開口している側の表面にまで電気的に接続するにしている。この貫通孔配線を備える貫通孔配線基板の製法は、本願発明の実施形態として後述する。また、この半導体デバイスにおける半導体素子Aは、静電容量型の加速度センサチップであり、各固定子16に形成された各パッド18は、後述の各固定電極25に電気的に接続され、フレーム部11に形成されたパッド18は、後述の各可動電極15に電気的に接続されている。以上説明した複数のパッド18は、半導体素子Aの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置されている。なお、半導体素子Aは、各パッド18を、第一の固定基板2におけるセンサ本体1とは、反対側の表面において、当該半導体素子Aの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置して適宜の配線により各固定電極25および各可動電極15と電気的に接続するようにしてもよい。
【0021】
以下、図3の左側に示した直交座標系のように、重り部13が並ぶ方向をy軸方向、センサ本体1の上記一表面に沿う面内でy軸方向に直交する方向をx軸方向、x軸方向とy軸方向とに直交する方向(つまり、センサ本体1の厚み方向)をz軸方向として説明する。
【0022】
半導体素子Aにおける各支持ばね部14は、ねじれ変形が可能なトーションばね(トーションバー)であって、フレーム部11および重り部13に比べて薄肉に形成されている。また、重り部13は、フレーム部11に対して一対の支持ばね部14,14の回りで変位可能となっている(y軸方向の軸回りで可動可能となっている)。つまり、一対の支持ばね部14,14は、フレーム部11に対して重り部13が揺動自在となるように、フレーム部11と重り部13とを連結している。ここにおいて、フレーム部11は、SOI基板10の支持基板10a、絶縁層10b、シリコン層10cそれぞれを利用して形成されている。これに対して、支持ばね部14は、SOI基板10におけるシリコン層10cを利用して形成されていて、フレーム部11よりも薄肉となっている。また、重り部13は、上述のSOI基板10の支持基板10a、絶縁層10b、シリコン層10cそれぞれを利用して形成されている。半導体素子Aのセンサ本体1は、バルクマイクロマシニング技術などを利用して形成されている。
【0023】
また、各固定子16は、SOI基板10の支持基板10a、絶縁層10b、シリコン層10cそれぞれを利用して形成されていて、SOI基板10に適宜加工を施してから当該SOI基板10を第二の固定基板3に陽極接合により接合した後に、フレーム部11から分離されている。
【0024】
ところで、半導体素子Aは、センサ本体1の上記一表面側に接合される第一の固定基板2側への重り部13の変位空間を確保するために、重り部13、各支持ばね部14、およびフレーム部11における開口窓12の周部それぞれに対応する各部位におけるシリコン層10cの厚みを薄くしている。なお、これら各部位の厚みを薄くせずに、第一の固定基板2の基礎となる第一のガラス基板20におけるセンサ本体1との対向面に重り部13の変位空間形成用凹部を形成し、当該変位空間形成用凹部の内底面に固定電極25を形成するようにしてもよい。また、半導体素子Aは、センサ本体1の上記他表面側に接合される第二の固定基板3側への重り部13の変位空間を確保するために、重り部13およびフレーム部11における開口窓12の周部それぞれに対応する各部位における支持基板10aの厚みを薄くしている。なお、これら各部位の厚みを薄くせずに、第二の固定基板3の基礎となる第二のガラス基板30におけるセンサ本体1との対向面に重り部13の変位空間形成用凹部を形成するようにしてもよい。また、この半導体デバイスでは、SOI基板10を用いて半導体素子Aを形成しているので、シリコン基板を用いて形成する場合に比べて、各支持ばね部14の厚み寸法の精度を高めることができる。
【0025】
センサ本体1の上記一表面側および上記他表面側には、重り部13の過度の変位を規制する複数の微小な突起部13c(図5参照)が重り部13における各固定基板2,3それぞれとの対向面から突設されている。これにより、重り部13の過度の変位による各支持ばね部14の破損や各固定基板2,3の破損などを防止することができる。ここで、突起部13cは、SOI基板10の一部により構成してもよいし、別途に形成したシリコン酸化膜をパターニングすることにより構成してもよい。なお、このような突起部13cは、センサ本体1に設けずに、各固定基板2,3それぞれにおける重り部13との対向面に設けてもよい。また、第二の固定基板3における重り部13との対向面には、金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)により構成され重り部13の付着を防止する付着防止膜35が形成されている。
【0026】
この半導体デバイスにおける半導体素子Aは、上述の説明から分かるように、各重り部13がy軸方向に沿って延長された一対の支持ばね部14,14を介してフレーム部11に連結され、第一の固定基板2において各重り部13それぞれに対向する部位ごとにx軸方向に沿って金属薄膜(例えば、Al−Si膜など)からなる2つの固定電極25が並設されるとともに、各重り部13に可動電極15が設けられており、z軸方向において対向して対をなす可動電極15と固定電極25との対の間に空隙が形成されている。ここで、各一対の支持ばね部14,14は、y軸方向に沿った重り部13の中心線の延長線上に形成されている。
【0027】
また、センサ本体1の重り部13は、上記他表面側において重り部13のy軸方向の中心線(ここでは、一対の支持ばね部14,14を結ぶ直線に一致する)における両側に、開口され、平面視において互いに大きさの異なる凹部13a,13bが形成されている。また、重り部13の平面視において開口サイズの大きな凹部13b内には、凹部13bの矩形状の内周の2つの対角線に沿ったX字状の補強壁19が、凹部13bのz軸に連続する形で形成されている。また、重り部13は、センサ本体1の上記一表面に沿った面内において一方の重り部13が他方の重り部13を180°回転させた形で形成されている。
【0028】
上述の半導体素子Aは、センサ本体1に設けられた可動電極15と第一の固定基板2に設けられた固定電極25との対を4対有しており、可動電極15と固定電極25との各対ごとに可変容量コンデンサが構成されている。要するに、半導体素子Aは、重り部13が振動することにより、対をなす固定電極25と可動電極15との対向面積が変化し、可変容量コンデンサの静電容量が変化する。
【0029】
なお、以下では、説明の便宜上、4個の固定電極25について、図3における左上の固定電極25の符号を25Aa、左下の固定電極25の符号を25Ab、右上の固定電極25の符号を25Ba、右下の固定電極25の符号を25Bbとし、2個の可動電極15について、図3における左側の可動電極15の符号を15A、右側の可動電極15の符号を15Bとして説明する。
【0030】
ここにおいて、図3において4つの固定子16それぞれに形成された4つのパッド18について、左側から順に符号を18Aa,18Ab,18Ba,18Bbとすれば、各パッド18Aa,18Ab,18Ba,18Bbは、それぞれ、固定子16、および第二の固定基板2において固定電極25と連続一体に形成された金属配線26(図5参照)を介して固定電極25Aa,25Ab,25Ba,25Bbと電気的に接続されている。ここで、センサ本体1は、各固定子16における重り部13側の端部の表面をセンサ本体1の上記一表面よりも後退させてあり(各固定子16における当該端部のシリコン層10cの厚みを薄くしてあり)、固定子16における当該端部の表面に、第二の固定基板2の金属配線26が圧接される連絡用導体部16d(図4(a)および図5参照)が形成されている。また、フレーム部11に形成されたパッド18は、可動電極15A,15Bの両方と電気的に接続されている。
【0031】
ここで、半導体素子Aの基本的な動作例について説明する。
【0032】
いま、半導体素子Aに加速度がかかっていない状態で、半導体素子Aに対してx軸方向
(x軸の正方向)の加速度がかかって、各重り部13が一対の支持ばね部14,14を回動軸として回動して各可変容量コンデンサの静電容量が変化する。ここにおいて、半導体素子Aに加速度がかかっていない状態での各可変容量コンデンサの静電容量をC0とし、x軸方向の加速度がかかったときの、各可変容量コンデンサの静電容量の変化分をΔC、可動電極15Aと固定電極25Aaとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAa、可動電極15Aと固定電極25Abとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAb、可変電極15Bと固定電極25Baとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBa、可変電極15Bと固定電極25Bbとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBbとすれば、
CAa=C0+ΔC
CAb=C0−ΔC
CBa=C0+ΔC
CBb=C0−ΔC
となる。ここで、一方の重り部13側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CAa−CAb)と、他方の重り部13側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CBa−CBb)との和は、4ΔCとなる。
【0033】
また、同様に、半導体素子Aにz軸方向の加速度がかかったときの、各可変容量コンデンサの静電容量の変化分をΔC、可動電極15Aと固定電極25Aaとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAa、可動電極15Aと固定電極25Abとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCAb、可変電極15Bと固定電極25Baとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBa、可変電極15Bと固定電極25Bbとで構成される可変容量コンデンサの静電容量をCBbとすれば、
CAa=C0+ΔC
CAb=C0−ΔC
CBa=C0−ΔC
CBb=C0+ΔC
となる。ここで、一方の重り部13側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CAa−CAb)と、他方の重り部13側の2個の可変容量コンデンサの静電容量の差分値(=CBb−CBa)との和は、4ΔCとなる。
【0034】
このように、{(CAa−CAb)+(CBa−CBb)}の静電容量の変化に基づいて、半導体素子Aのx軸方向に作用した加速度を検出することができ、{(CAa−CAb)+(CBb−CBa)}の静電容量の変化に基づいて、半導体素子Aのz軸方向に作用した加速度を検出することができる。
【0035】
ここにおいて、この半導体デバイスは、半導体素子Aの出力信号を信号処理する信号処理回路が形成されたICチップBが、半導体素子Aとともにパッケージ101に収納されている。ICチップBは、ASIC(Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されており、裏面全面がシリコーン系樹脂を用いて接着されている。なお、ICチップBの機能は、半導体素子Aの機能に応じて適宜設計すればよく、半導体素子Aと協働するものであればよい。また、ICチップBは、必ずしも、半導体素子Aと同一のパッケージ101に収納する必要はなく、この場合は、半導体素子Aの各パッド18に一端部が接続されるボンディングワイヤWの他端部をプラスチックパッケージ本体102のリード112のインナリード112aに接続すればよい。ただし、ICチップBを半導体素子Aと同じパッケージ101に収納した場合のほうが、異なるパッケージに収納する場合に比べて、半導体デバイス全体の小型化および低コスト化を図れるとともに加速度の検出精度の向上を図れる。
【0036】
この半導体デバイスでは、ICチップBが一枚のシリコン基板を用いて形成されているのに対して、半導体素子AがSOI基板10と2つのガラス基板20,30とを用いて形成されている。これより、半導体素子Aの厚みがICチップBの厚みに比べて大きくなっているので、上述のプラスチックパッケージ本体102の底部において半導体素子Aを搭載する搭載面102aをICチップBの搭載部位よりも凹ませてある(したがって、半導体素子Aを搭載する部位は、底部の肉厚が他の部位に比べて薄くなっている)。なお、この半導体デバイスでは、プラスチックパッケージ本体102の外形を10mm×7mm×3mmの直方体としてあるが、この数値は一例であり、半導体素子AやICチップBの外形、リード112の本数やピッチなどに応じて適宜設定すればよい。
【0037】
ところで、図7に示されるように、半導体素子Aは、当該半導体素子Aの外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所で接着剤(例えば、弾性率が1MPa以下のシリコーン樹脂などのシリコーン系樹脂など)からなる接着部104によりプラスチックパッケージ本体102に固着されている。ここにおいて、半導体素子Aは、プラスチックパッケージ本体102の底部の搭載面102a側とは反対側の表面側において全てのパッド18が1辺に沿って配置されており、当該1辺の両端の2箇所と、当該一辺に平行な辺の一箇所(ここでは、中央部)との3箇所とに頂点を有する仮想三角形の各頂点に接着部104が位置しており、各パッド18にボンディングワイヤWを安定してボンディングすることができる。なお、接着部104の位置に関し、上記1辺に平行な辺の一箇所については、中央部に限らず、例えば、両端の一方でもよいが、中央部の方が半導体素子Aをより安定して支持することができるとともに、各パッド18にボンディングワイヤWを安定してボンディングすることができる。
【0038】
以下、半導体素子Aをプラスチックパッケージ本体102に一次実装する際の半導体素子Aおよびプラスチックパッケージ本体102の底部の状態変化について図6に基づいて説明するが、(a)〜(c)それぞれにおける上段は概略側面図、下段は概略斜視図である。
【0039】
半導体素子Aをプラスチックパッケージ本体102に一次実装するにあたっては、図6(a)に示すようにプラスチックパッケージ本体102における半導体素子Aの搭載面102a上の三箇所に常温下で接着剤104aをディスペンサなどにより塗布(滴下)してから半導体素子Aを搭載した後、接着剤104aが硬化するように所定温度(例えば、150℃)に加熱すると図6(b)に示すようにプラスチックパッケージ本体102が熱変形し、その後、常温になると図6(c)に示すようにプラスチックパッケージ本体102が熱変形のない状態に戻ろうとする。ここで、半導体素子Aは、プラスチックパッケージ本体102が熱変形した状態で固定されていたが、プラスチックパッケージ本体102に対して3箇所のみしか接着部104により固着されていないので、常温に戻ったときに温度変化によるプラスチックパッケージ本体102側の変形が半導体素子Aには当該半導体素子Aの傾きとして伝わり、半導体素子Aの表面を三点で決定でき、半導体素子Aが変形して応力が発生するのを防止することができる。プラスチックパッケージ本体102が常温に戻ったときに半導体素子Aは、図6(c)の下段の概略斜視図に示すように若干傾くが、高低差がナノメータレベルの傾きであり、特に問題ない。なお、半導体素子Aとしてチップサイズが1mm□〜10mm□、厚みが0.1mm〜1mm程度の場合、接着剤104aは、φ200μm〜φ1000μm程度の領域に塗布すればよい。
【0040】
以上説明したプラスチックパッケージ本体102への半導体素子Aの実装構造では、プラスチックパッケージ本体102への実装時などの温度変化に起因して半導体素子Aが変形するのを抑制することができ、半導体素子Aに生じる応力を低減することが可能となる。ここで、半導体素子Aが上述のような加速度センサチップであれば、半導体素子Aにおける第二の固定基板3の四つの角部を固着した場合(つまり、四箇所で固着した場合)や半導体素子Aの第二の固定基板3の周部を全周にわたって固着した場合に比べて、プラスチックパッケージ本体102から半導体素子Aへの応力が支持ばね部14に作用しにくく、安定した精度の高い加速度測定が可能となる。
【0041】
また、この半導体デバイスでは、接着剤104aとしてエポキシ樹脂に比べて弾性率の低いシリコーン系樹脂を用いることにより、プラスチックパッケージ本体102から半導体素子Aへの応力の伝達を抑制する(つまり、応力を緩和する)ことができる。
【0042】
ここにおいて、接着剤104aとして、シリコーン系樹脂に球状のスペーサ(例えば、ガラスやプラスチックにより形成されたスペーサ)が混合されたものを用いれば、半導体素子Aとプラスチックパッケージ本体102との間の所望の間隔(ギャップ長)をスペーサにより確保することが可能となって、半導体素子Aとプラスチックパッケージ本体102との間の接着部104の厚み精度の向上が可能となる。
【0043】
しかしながら、スペーサが混合されたシリコーン系樹脂をディスペンサで滴下する場合には、ディスペンサのノズルにスペーサが詰まるのを防止するために、当該ノズルの内径によりスペーサの粒径が制限され、当該ノズルの内径よりも粒径が十分に小さなスペーサ(例えば、粒径が6μm〜30μm程度のスペーサ)しか用いることができず、数十μm以上の粒径のスペーサを混合した樹脂を用いることができない。
【0044】
そこで、この半導体デバイスにおけるプラスチックパッケージ本体102は、当該プラスチックパッケージ本体102の底部において上述の三箇所それぞれに対応する各部位に、上記接着剤104aにより被覆される円錐台状の突起部102bが連続一体に突設されている(つまり、プラスチックパッケージ本体102は、三つの突起部102bが一体成形されている)。各突起部102bは、底面の直径を100μm、高さを100μmに設定してある(アスペクト比=100/100=1)が、この数値は一例であって、これに限らず、例えば、底面の直径が100μm、高さが200μmというように、より高アスペクト比(アスペクト比=200/100=2)の形状とすることも可能である。ここで、突起部102bの形状は、プラスチックパッケージ本体102の成形用の金型で制御することができる。このように、プラスチックパッケージ本体102の底部と半導体素子Aとの所望の間隔を容易に確保することが可能となるとともに、球状のスペーサを混合した接着剤を用いる場合に比べて、当該間隔の設定の自由度が高くなり、半導体素子Aとプラスチックパッケージ本体102との間のギャップ長を大きくすることができる。また、プラスチックパッケージ本体102から半導体素子Aへの応力の伝達抑制効果も大きくなる。
【0045】
また、この半導体デバイスにおける半導体素子Aの実装構造によれば、各接着部104が半導体素子Aの外周部に位置しているので、各接着部104が半導体素子Aの外周部よりも内側に位置している場合に比べて、半導体素子Aを安定して固定することができる。
【0046】
ところで、半導体素子Aは、上述のように当該半導体素子Aの一辺に沿ってパッド18が配列されているので、図7(b)に示すように、接着部104が当該1辺の中央部と、当該1辺に平行な他の1辺の両端との三箇所に位置している場合、ワイヤボンディング工程において、キャピラリなどの接合冶具(ツール)KPを用い超音波を利用したワイヤボンディングを行う際に、半導体素子Aが傾斜・振動してボンディングワイヤWの接合を安定して行えないことがある。
【0047】
これに対して、この半導体デバイスでは、図7(a)に示すように、半導体素子Aにおいてパッド18の配列方向に平行で且つ、パッド18に近い一辺両端の二箇所と、当該一辺に平行な辺の中央部の1箇所との3箇所に接着部104が位置しているので、前記半導体素子Aの各パッド18にボンディングワイヤWを、超音波を利用するワイヤボンディング技術(超音波併用熱圧着ワイヤボンディング、超音波ワイヤボンディングなど)により安定してボンディングすることができる。なお、図7(a)中の下向きの矢印は、荷重および超音波の印加方向を示している。
【0048】
また、この半導体デバイスは、半導体素子Aのパッド18におけるボンディングワイヤWの接合部を局所的に覆う樹脂(例えば、エポキシ樹脂など)からなる保護部(図示せず)が設けられているので、半導体素子A全体に応力がかかるのを防止しつつ、半導体素子Aのパッド18とボンディングワイヤWとの接合部の信頼性を高めることができる。(つまり、半導体素子Aのパッド18とボンディングワイヤWとの接合部の信頼性を高めながらも、半導体素子AおよびボンディングワイヤWを樹脂により封止する場合に比べて半導体素子Aにかかる応力を低減できる。
【0049】
また、この半導体デバイスでは、図8(b)に示すように、各接着部104の接着剤104a(図6参照)の一部が半導体素子Aの側面まで這い上がるようにしてあるので、図8(a)に示すように接着部104が半導体素子Aの底面のみに接着されている場合に比べて、横方向の力に対する接着部104の耐性を高めることができる。
【0050】
ところで、上述のパッケージ101は、リード112のアウタリード112bがプラスチックパッケージ本体102の二つの外側面から導出されガルウィング形状に形成されている。しかして、この半導体デバイスでは、配線基板への2次実装後において、配線基板との接合部の外観検査を容易に行うことができる。
【0051】
プラスチックパッケージ本体102の材料としては、熱可塑性樹脂の一種であって、酸素および水蒸気の透過率が極めて低い液晶性ポリエステル(LCP)を採用しているが、LCPに限らず、例えば、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリビスアミドトリアゾール(PBT)などを採用してもよい。
【0052】
また、各リード112の基礎となるリードフレームの材料としては、銅合金の中でもばね性の高いりん青銅を採用している。ここでは、リードフレームとして、材質がりん青銅で板厚が0.2mmのリードフレームを用い、厚みが2μm〜4μmのNi膜と、厚みが0.2μm〜0.3μmのAu膜との積層膜からなるめっき膜を電解めっき法により形成している。この半導体デバイスでは、プラスチックパッケージ本体102の各リード112に、上述のめっき膜が設けられているので、ワイヤボンディングの接合信頼性と半田付け信頼性とを両立させることができる。また、熱可塑性樹脂成形品のプラスチックパッケージ本体102は、リード112が同時一体に成形されているが、熱可塑性樹脂であるLCPにより形成されるプラスチックパッケージ本体102とリード112のAu膜とは、密着性が低いので、上述のリードフレームのうちプラスチックパッケージ本体102に埋設される部位にパンチ穴を設けることで各リード112が抜け落ちるのを防止してある。
【0053】
また、この半導体デバイスは、図1(b)に示すように、プラスチックパッケージ本体102の内側で各リード112におけるインナリード112aの露出部位およびプラスチックパッケージ本体102における上記露出部位の周部を覆う非透湿性の樹脂(例えば、アミン系エポキシ樹脂などのエポキシ系樹脂)からなる樹脂被覆部116が設けられている。ここで、樹脂被覆部116は、ワイヤボンディング工程の後でディスペンサを用いて上記非透湿性の樹脂を塗布し、硬化させることで、気密性を向上させている。なお、上記非透湿性の樹脂に代えてセラミックスを用いてもよく、セラミックスを用いる場合には、プラズマ溶射などの技術を用いて局所的に吹き付ければよい。
【0054】
このように、この半導体デバイスでは、各リード112におけるインナリード112aの露出部位およびプラスチックパッケージ本体112における上記露出部位の周部を覆う非透湿性の樹脂からなる樹脂被覆部116が設けられているので、半導体素子Aに樹脂による応力をかけずに、各リード112とプラスチックパッケージ本体102との界面を通してパッケージ101内へ外部からの水分やガス(例えば、水蒸気など)が侵入するのを防止することができる。
【0055】
また、ボンディングワイヤWとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いている。また、ボンディングワイヤWを構成するAuワイヤとしては、直径が25μmのものを採用しているが、これに限らず、例えば、直径が20μm〜50μmのAuワイヤから適宜選択すればよい。
【0056】
また、図2に示すように、パッケージ蓋103は、金属(例えば、ステンレス鋼など)により形成されている。このように、プラスチックパッケージ本体102が熱可塑性樹脂により形成されるとともに、パッケージ蓋103が金属により形成されているので、プラスチックパッケージ本体102とパッケージ蓋103とを融着により接合することができる。ここにおいて、この半導体デバイスでは、プラスチックパッケージ本体102とパッケージ蓋103とが融着により接合されており、プラスチックパッケージ本体102とパッケージ蓋103とを接着剤により接合してある場合に比べて、パッケージ101の気密性を高くすることができる。なお、パッケージ蓋103の適宜部位には、レーザマーキング技術により、製品名称や製造日時などを示す表記113が形成されている。
【0057】
また、図9に示すように、プラスチックパッケージ本体102の上記一面に形成された段差部に載置されるように、パッケージ蓋103をプラスチックパッケージ本体102に嵌め込んでから、レーザビームLBを照射して加熱し融着させればよい。なお、パッケージ蓋103が未着色のLCPなどにより形成されている場合には、パッケージ蓋103とプラスチックパッケージ本体102との界面も加熱することができ、より広い面積を融着することができる。
【0058】
また、図10に示すように、ヒータツールHTにより保持したパッケージ蓋103をプラスチックパッケージ本体102の材料(ここでは、LCP)の融点以上の所定温度(例えば、400℃程度)に加熱した状態で、プラスチックパッケージ本体102に押し付けることで融着させるようにしてもよい。
【0059】
この半導体デバイスの製造にあたっては、半導体素子AおよびICチップBをプラスチックパッケージ本体102に接着固定するダイボンディング工程を行ってから、半導体素子AとICチップBとの間、ICチップBとインナリード112aとの間、それぞれ、ボンディングワイヤWを介して電気的に接続するワイヤボンディング工程を行い、その後、樹脂被覆部116を形成する樹脂被覆部形成工程を行い、続いて、パッケージ蓋103をプラスチックパッケージ本体102に接合するシーリング工程を行えばよい
以上説明したこの半導体デバイスは、一面が開放された箱状に形成されるとともに、半導体素子Aに電気的に接続される複数のリード112のアウタリード112bが外側面から導出された中空のプラスチックパッケージ本体102を備え、半導体素子Aが当該半導体素子Aの外周形状に基づいて規定した仮想三角形の三つの頂点に対応する三箇所で接着部104によりプラスチックパッケージ本体102の底部に固着されている。これより、半導体素子Aのプラスチックパッケージ本体102への一次実装時、パッケージ101の配線基板への2次実装時などの温度変化に起因して半導体素子Aが変形するのを抑制することができ、低コストでパッケージ101内の半導体素子Aに生じる応力を低減することが可能となり、しかも、プラスチックパッケージ本体102がリード112を一体に有しているので、配線基板との接合部に温度サイクルに起因したクラックが発生するのを抑制でき、信頼性を向上可能となる。
【0060】
また、上述の半導体デバイスでは、半導体素子Aとして、MEMSチップの一例として静電容量型の加速度センサチップを例示したが、半導体素子Aは、静電容量型の半導体加速度センサチップに限らず、例えば、ピエゾ抵抗型の加速度センサチップやジャイロセンサ、マイクロアクチュエータ、マイクロリレー、赤外線センサなどや、ICチップなどにも適用できる。
【0061】
次に、前述した半導体デバイスに用いられた貫通孔配線基板の製造方法に関して、図11に基づいて説明する。
【0062】
本実施形態は、微小デバイスを構成する貫通孔配線基板の製造方法を示しており、基板40(前述の第一のガラス基板20)の両表面を貫通する貫通孔41(前述の貫通孔28)を形成する工程と、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程と、を備えている。また、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させる。そして、Niめっき液のpHをpH4未満にする。なお、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、基板40を揺動させる。また、貫通孔41は、サンドブラストにより形成し、貫通孔41の内表面の平滑性を向上させる処理を予め行っておく。なお、基板40は、ガラスで形成され、貫通孔41の内表面の平滑性を向上させる処理は、フッ酸処理で行う。
【0063】
製造工程については、以下詳細に説明する。
【0064】
まず、図11の(a)に示す基板40(前述の第一のガラス基板20)を準備する。なお、前述の半導体デバイスでは、第一のガラス基板20として、ガラス基板だけでなくシリコン基板を用いてもよい、と記載しているところ、本実施形態においては、基板40としてガラス基板を用いた場合について説明する。
【0065】
次に、図11の(b)に示すように、基板40にフォトプロセスを用いてレジストを形成し、貫通孔41は、RIEやサンドブラストにより形成し、貫通孔が形成された基板42を得る。また、形成した貫通孔41の加工面が荒れているため。フッ酸等により、エッチング処理し、平滑にすることが好ましい。
【0066】
貫通孔41を基板40の厚み方向に有する貫通孔が形成された基板42は、図11の(c)に示すように、シリコン基板43(前述のSOI基板10)と陽極接合等で接合される。シリコン基板43は、貫通孔が形成された基板42と接合した面とは反対の面で、別のガラス基板44(前述、第二のガラス基板30)と陽極接合等で接合される。下層からガラス基板44、シリコン基板43、貫通孔が形成された基板42を接合して積層したものを積層基板45と呼ぶ。
【0067】
接合工程後、図11の(d)に示すように、積層基板45において貫通孔41がある面に配線材料(例えば銅、ニッケル等の金属材料)となる金属層46を形成する。金属層46を形成する方法として、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法などの成膜方法がある。また、配線材料を成膜する前に、積層基板45は、密着層としてCr、Ti等を成膜していてもよい。
【0068】
金属層46を形成した後、金属層46をシード層として電解めっき法によって、配線材料を用いて形成される金属部47を析出させる電解めっき工程を行うことによって、図11の(e)に示す構造を得る。
【0069】
次に、図11の(f)に示すように、フォトプロセス工程によりレジスト48を形成し、その後、図11の(g)に示すように、金属層46および金属部47をエッチングし、次いで、レジスト48を剥離し、配線パターンを作製する。
【0070】
また、無電解めっきによる金属の積層を行う前に、無電解めっき前処理を行う。貫通孔41の内表面は、金属層46および金属部47が成膜されている。そこで、金属部47表面の不純物を取り除くために、金属部47表面をソフトエッチングする。次に、金属が成膜された貫通孔41の内表面および積層基板45をシャワー水洗し、硫酸水溶液に浸漬した。そして、さらに水洗槽にて水洗後、配線パターンを活性化するために、活性化液に一分間浸漬し、水洗槽にて水洗を行った。次に、貫通孔41内にイオン交換水を充填し、充填したまま無電解めっき液に浸漬した。このとき、貫通孔41内をイオン交換水で充填するのは、貫通孔41内において気泡を含まずにめっきを行うためであり、貫通孔41内に気泡が残っていると、めっき抜けの原因となる。
【0071】
無電解めっき前処理の後、無電解めっきにより、図11(h)に示すように、金属部47上にNiめっき層49、Pdめっき層50、Auめっき層51を形成した。このように金属配線を施した貫通孔41(前述の貫通孔28)を備えた本願発明の貫通孔配線基板52(前述の第一の固定基板2)を形成し、それを備えた半導体素子53(前述の半導体素子A)を得た。Niめっき層49を形成する工程においては、Niめっき溶液のpHを4未満にすることで析出レートを50nm/min未満にして、Niめっき層49を成長させる。また、めっき成長を行いながら、積層基板45(請求項に記載の基板40を含む)に揺動を加える。なお、揺動には、バイブレータ等による振動も含む。また、積層基板45に揺動を加えることは、他の金属めっき層である、Pdめっき層50およびAuめっき層51を形成する工程でも行って構わない。
【0072】
以上、説明したように、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法において、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させることより、めっきの析出レートを下げ、貫通孔41内の溶存水素濃度の上昇を抑制し、水素を気泡として生じることを抑制できる。
【0073】
また、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法においては、Niめっき液のpHを4未満にすることで、pHによってめっきの析出レートを制御することができる。これより、溶存水素濃度の上昇を抑制し、水素を気泡として生じることを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法においては、貫通孔41の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程で基板40(積層基板45も含む)を揺動させることができる。これは、貫通孔41内に水素の気泡が生じた場合でも、気泡を孔外へ追い出すことができる。
【0075】
また、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法においては、貫通孔41は、サンドブラストにより形成し、貫通孔41の内表面の平滑性を向上させる処理を行う。これは、貫通孔41の内表面を平滑にし、水素の気泡が生じた場合でも、気泡が内表面に引っ掛からず抜けやすくすることができる。
【0076】
そして、本実施形態の貫通孔配線基板の製造方法においては、基板40は、ガラスで形成され、貫通孔41の内表面の平滑性を向上させる処理は、フッ酸処理である。これは、基板40に形成されている貫通孔41の内表面の平滑性がより向上させる。また、これは、貫通孔41内で水素の気泡が生じた場合でも、気泡が内表面に引っ掛からず抜けやすくすることができる。
【実施例】
【0077】
(比較例1、実施例1,2)
・比較例1:pH4.0の無電解Niめっき液
・実施例1:pH3.5の無電解Niめっき液
・実施例2:pH3.0の無電解Niめっき液
比較例1、実施例1、実施例2のそれぞれについて、めっき抜け率を比較した。
【0078】
前処理を施した積層基板45を、それぞれpH3.0、3.5、4.0の無電解Niめっき液(奥野製薬製ICPニコロン、pH調整は硫酸で行った。)に浸漬し、Niめっき層49を形成した。無電解Niめっき工程では、積層基板45(基板40も含む)の揺動を行う。なお、揺動には、バイブレータ等による振動も含む。そして無電解Niめっき工程後、水洗槽で洗浄し、さらに無電解Pdめっき液(奥野製薬製パラトップLP)に浸漬し、Pdめっき層50を形成した。そして、水洗槽で洗浄後、置換型無電解Auめっき液(奥野製薬製フラッシュゴールドNC)に浸漬し、Auめっき層51を形成することで、金属被膜を施した貫通孔52を形成した。
【0079】
全ての無電解めっき工程終了後、顕微鏡にて、貫通孔52における、気泡によるめっき抜けの発生個数を確認し、各実施例、比較例のめっき抜け率を表1にまとめた。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から明らかなように、pH4.0では、めっき抜け率が5%であり、めっき抜けが見られるが、pH3.5、pH3.0でのめっき抜け率は、0%となる。これより、pH4.0未満にすることで、めっき抜け率をなくすことができることがわかる。したがって、めっき抜け率を0%とするためには、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にすることが適していることがわかる。
【符号の説明】
【0082】
40 基板
41 貫通孔(貫通孔28)
42 貫通孔が形成された基板
43 シリコン基板(SOI基板10)
44 下部ガラス基板(第二の固定基板3)
45 積層基板
46 金属層
47 金属部
48 レジスト
49 Niめっき層
50 Pdめっき層
51 Auめっき層
52 貫通孔配線基板(第一の固定基板2)
53 半導体素子(半導体素子A)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小デバイスを構成する貫通孔配線基板の製造方法であって、
基板の両表面を貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程と、を備え、
前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させることを特徴とする貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項2】
Niめっき液のpHを4未満にすることを特徴とする請求項1に記載の貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、前記基板を揺動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記貫通孔は、サンドブラストにより形成し、
前記貫通孔の内表面の平滑性を向上させる処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板は、ガラスで形成され、
前記貫通孔の内表面の平滑性を向上させる処理は、フッ酸処理であることを特徴とする請求項4に記載の貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項1】
微小デバイスを構成する貫通孔配線基板の製造方法であって、
基板の両表面を貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程と、を備え、
前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、Niめっきの析出レートを50nm/min未満にしてめっきを成長させることを特徴とする貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項2】
Niめっき液のpHを4未満にすることを特徴とする請求項1に記載の貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔の少なくとも内表面にNiめっきを成長させる工程では、前記基板を揺動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記貫通孔は、サンドブラストにより形成し、
前記貫通孔の内表面の平滑性を向上させる処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の貫通孔配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板は、ガラスで形成され、
前記貫通孔の内表面の平滑性を向上させる処理は、フッ酸処理であることを特徴とする請求項4に記載の貫通孔配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−211044(P2011−211044A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78660(P2010−78660)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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