説明

車両消費エネルギ推定装置、車両消費エネルギ推定方法及びコンピュータプログラム

【課題】車両が交差点を走行する際の走行態様についても考慮して車両の駆動源が消費する消費エネルギを推定する車両消費エネルギ推定装置、車両消費エネルギ推定方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置1で設定された誘導経路を自車の走行予定経路に含まれている交差点について車両の挙動(直進、右折、左折のいずれか)を予測する(S13、S18)とともに、交差点や交差点に接続する道路の属性情報(信号機の有無、横断歩道の有無、車線数、制限速度)を取得し(S14〜S17、S19〜S21)、取得した各種情報と消費エネルギ推定テーブル48に基づいて停車確率を算出し(S22)、停車確率を用いて加速抵抗に基づいて駆動モータ5が消費する消費エネルギを推定する(S23)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリやエンジン等の駆動源で消費される消費エネルギを推定する車両消費エネルギ推定装置、車両消費エネルギ推定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、バッテリから供給される電力に基づいて駆動されるモータを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両等の電動車両が多く存在する。特にハイブリッド車両では、アクセル開度、車速等の車両駆動状態を検出してエンジンとモータの使用分担をコントロールしている。
【0003】
そして、このような電動車両が備えるバッテリの充電を行う方法としては、自宅や専用の充電施設で充電を行う他に、車両走行中において減速時や降坂路走行中に発生するモータの回生電力やエンジンの駆動力の一部を用いて充電を行う方法がある。そこで、従来よりこのような走行中に行われる充電について考慮して、目的地までの燃料消費量が最少となるようにエンジンやモータの制御スケジュールを設定することが提案されている。例えば、特開2001−197608号公報には、目的地までの走行経路を複数の区間に分割し、ナビゲーション装置から取得した道路データと車両の走行状態とに基づいて各区間を走行するのに駆動源(モータ)が消費する消費エネルギや回収エネルギを推定し、目的地までの燃料消費量が最少となるように、エンジン及びモータの制御スケジュールを設定するハイブリッド車両の車両制御装置について記載されている。
【特許文献1】特開2001−197608号公報(第5頁〜第7頁、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記した特許文献1に記載された車両制御装置では、走行距離と路面の勾配とカーブの有無とに基づいて消費エネルギを推定していた。しかし、モータが消費する消費エネルギは、車両の直線道路やカーブにおける走行態様に加えて、交差点での走行態様によっても大きく変化する。即ち、車両が交差点を走行(直進、右折又は左折)する際には、信号待ちや右折待ち等で一旦停車し、その後に加速することが多いので、加速抵抗に基づくエネルギを消費する。そして、その消費エネルギの値は、交差点の構造(例えば、信号機や横断歩道の有無や接続する道路の属性(車線数等))や車両の走行経路(例えば、直進、右折、左折)によって大きく異なる。
【0005】
しかしながら、前記した特許文献1に記載された車両制御装置では、上記の交差点において駆動源が消費する消費エネルギについては考慮していなかった為、正確な消費エネルギを推定することが出来なかった。従って、設定された制御スケジュール通りに車両を制御した場合であっても、走行中にバッテリが不足することにより発進時や上り坂等のエンジン効率が悪い場面でエンジンによる駆動を行ったり、バッテリの残量が十分であるのにエンジンによる駆動を行ったりして、燃料消費量を最適にすることができなかった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両が交差点を走行する際の消費エネルギを正確に推定することが可能な車両消費エネルギ推定装置、車両消費エネルギ推定方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る車両消費エネルギ推定装置は、車両(2)の走行予定経路を特定する経路特定手段(33)と、前記経路特定手段によって特定された走行予定経路を走行する場合に車両の駆動力を発生させる駆動源(5)で消費される消費エネルギを推定する消費エネルギ推定手段(33)と、を有する車両消費エネルギ推定装置において、前記走行予定経路中にある交差点を特定する交差点特定手段(33)と、前記交差点特定手段によって特定された交差点に接続する道路の制限速度を取得する制限速度取得手段(33)と、前記制限速度取得手段によって取得された制限速度と所定の加速度に基づいて交差点を車両が走行する際の車両の加速時間を推定する加速推定手段(33)と、を備え、前記消費エネルギ推定手段は、前記加速推定手段で推定された車両の加速時間に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする。
ここで、「車両」とはバッテリから供給される電力に基づいて駆動されるモータを駆動源とする電気自動車以外にも、ガソリンや天然ガス等に基づいて駆動されるエンジンを駆動源とする自動車、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両も含む。
【0008】
また、請求項2に係る車両消費エネルギ推定装置(1)は、請求項1に記載の車両消費エネルギ推定装置であって、前記経路特定手段によって特定された走行予定経路に基づいて、前記交差点特定手段によって特定された交差点で車両(2)が直進、右折又は左折することを予測する車両挙動予測手段(33)を有し、前記消費エネルギ推定手段(33)は、前記車両挙動予測手段で予測された車両の挙動に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る車両消費エネルギ推定装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の車両消費エネルギ推定装置であって、前記交差点特定手段(33)によって特定された交差点で前記車両挙動予測手段(33)により車両(2)が右折又は左折すると予測された場合に、右折又は左折後の道路に形成される横断歩道の有無を取得する横断歩道有無取得手段(33)を有し、前記消費エネルギ推定手段(33)は、前記横断歩道有無取得手段で取得された横断歩道の有無に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る車両消費エネルギ推定装置(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両消費エネルギ推定装置であって、前記交差点特定手段(33)によって特定された交差点に設置される信号機の有無を取得する信号機有無取得手段(33)を有し、前記消費エネルギ推定手段(33)は、前記信号機有無取得手段で取得された信号機の有無に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る車両消費エネルギ推定方法は、車両の走行予定経路を特定する経路特定ステップ(S2)と、前記経路特定ステップによって特定された走行予定経路を走行する場合に車両の駆動力を発生させる駆動源で消費される消費エネルギを推定する消費エネルギ推定ステップ(S4〜S7)と、を有する車両消費エネルギ推定方法において、前記走行予定経路中にある交差点を特定する交差点特定ステップ(S11)と、前記交差点特定ステップによって特定された交差点に接続する道路の制限速度を取得する制限速度取得ステップ(S16、S20、S21)と、前記制限速度取得ステップによって取得された制限速度と所定の加速度に基づいて交差点を車両が走行する際の車両の加速時間を推定する加速推定ステップ(S23)と、を備え、前記消費エネルギ推定ステップは、前記加速推定ステップで推定された車両の加速時間に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする。
【0012】
更に、請求項6に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、車両の走行予定経路を特定する経路特定機能(S2)と、前記走行予定経路中にある交差点を特定する交差点特定機能(S4〜S7)と、前記交差点特定機能によって特定された交差点に接続する道路の制限速度を取得する制限速度取得機能(S11)と、前記制限速度取得機能によって取得された制限速度と所定の加速度に基づいて交差点を車両が走行する際の車両の加速時間を推定する加速推定機能(S16、S20、S21)と、前記加速推定機能で推定された車両の加速時間に基づいて、前記経路特定機能によって特定された走行予定経路を走行する場合に車両の駆動力を発生させる駆動源で消費される消費エネルギを推定する消費エネルギ推定機能(S23)と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を有する請求項1に記載の車両消費エネルギ推定装置によれば、車両が交差点を走行する際の加速抵抗に基づく消費エネルギを推定することができる。それによって、消費エネルギを正確に推定することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の車両消費エネルギ推定装置によれば、車両が走行予定経路中の交差点を走行する際に直進、右折又は左折のいずれかを行うかについても考慮することにより、車両が交差点において停車する確率を予測できる。そして、予測された停車確率を用いることにより、特に交差点での直進、右折又は左折の際の加速抵抗に基づく消費エネルギを正確に推定することが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の車両消費エネルギ推定装置によれば、車両が走行予定経路中の交差点を走行する際に右折又は左折後の横断歩道の有無についても考慮することにより、車両が交差点において横断歩道を通過する歩行者を待つ為に停車する確率を予測できる。そして、予測された停車確率を用いることにより、特に交差点での加速抵抗に基づく消費エネルギを正確に推定することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の車両消費エネルギ推定装置によれば、車両が走行予定経路中の交差点を走行する際に交差点に設置された信号機の有無についても考慮することにより、車両が交差点において信号待ちで停車する確率を予測できる。そして、予測された停車確率を用いることにより、特に交差点での加速抵抗に基づく消費エネルギを正確に推定することが可能となる。
【0017】
また、請求項5に記載の車両消費エネルギ推定方法によれば、車両が交差点を走行する際の加速抵抗に基づく消費エネルギを推定することができる。それによって、消費エネルギを正確に推定することが可能となる。
【0018】
更に、請求項6に記載のコンピュータプログラムによれば、車両が交差点を走行する際の加速抵抗に基づく消費エネルギを推定させることができる。それによって、消費エネルギを正確に推定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る車両消費エネルギ推定装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1を車載機として搭載した電動車両2の電動車両制御システム3の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る電動車両制御システム3の概略構成図、図2は本実施形態に係る電動車両制御システム3の制御系を模式的に示すブロック図である。尚、電動車両としてはモータのみを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両があるが、以下に説明する本実施形態ではハイブリッド車両を用いることとする。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電動車両制御システム3は、車両2に対して設置されたナビゲーション装置1と、エンジン4と、駆動モータ5と、発電機6と、バッテリ7と、プラネタリギヤユニット8と、車両制御ECU9と、エンジン制御ECU10と、駆動モータ制御ECU11と、発電機制御ECU12とから基本的に構成されている。
【0021】
ここで、ナビゲーション装置1は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、車両周辺の地図や目的地までの探索経路を表示する液晶ディスプレイ15や、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16等を備えている。そして、GPS等によって車両2の現在位置を特定するととともに、目的地が設定された場合においては目的地までの経路の探索、並びに設定された経路に従った案内を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて行う。また、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、後述するように設定された誘導経路を走行する為に必要な駆動モータ5の消費エネルギに対して車両2の現在のバッテリ残容量(SOC値)が不足する場合に、目的地までの走行途中でのバッテリの充電を促す案内を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて行う。尚、ナビゲーション装置1の詳細な構成については後述する。
【0022】
また、エンジン4はガソリン、軽油、エタノール等の燃料によって駆動される内燃機関等のエンジンであり、車両2の第1の駆動源として用いられる。そして、エンジン4の駆動力であるエンジントルクはプラネタリギヤユニット8に伝達され、プラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動輪17が回転させられ、車両2が駆動される。
【0023】
また、駆動モータ5はバッテリ7から供給される電力に基づいて回転運動するモータであり、車両2の第2の駆動源として用いられる。駆動モータはバッテリ7から供給された電力により駆動され、駆動モータ5のトルクである駆動モータトルクが発生する。そして、発生した駆動モータトルクにより駆動輪17が回転させられ、車両2が駆動される。
特に、本実施形態に示すようなプラグインハイブリッド車両では、バッテリの残容量が0となるまでは駆動モータ5のみにより車両2が駆動され、バッテリの残容量が0となった後はエンジン4により車両が駆動される。尚、通常時にはエンジン4により車両を駆動し、エンジン4の効率が悪い発進時や上り坂路等の低回転域において、駆動モータ5により車両2を駆動するようにしても良い。また、加速走行時においてはエンジン4と駆動モータ5の両方により駆動力を発生させ、車両2を駆動するようにしても良い。
更に、エンジンブレーキ必要時及び制動停止時において、駆動モータ5は回生ブレーキとして機能し、車輌慣性エネルギを電気エネルギとして回生する。具体的には、定常低・中速走行及び降坂路走行等によりエンジン4の出力に余裕がある場合、バッテリ7の残容量に応じて、駆動モータ5を発電機として機能させてバッテリ7を充電する。特に、降坂時においてエンジンブレーキを要求する場合、発電機として機能する駆動モータ5の回生電力を大きくして、充分なエンジンブレーキ効果を得ることができる。また、運転者がフットブレーキを踏んで車両2の停止を要求する場合には、駆動モータ5の回生電力を更に大きくして、回生ブレーキとして作動し、車両2の慣性エネルギを電力として回生して、摩擦ブレーキに基づく熱によるエネルギ放散を減少する。また、中速域においても、エンジン4をより高出力、高効率な領域で運転できるように、駆動モータ5を回生状態にする。それにより、エンジン効率を向上できると共に、上記回生によるバッテリ7の充電に基づきモータ走行を増大することができ、エネルギ効率が向上する。尚、駆動モータ5としては交流モータやDCブラシレスモータ等が用いられる。
【0024】
また、発電機6はプラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動され、電力を発生させる発電装置である。そして、発電機6は図示されない発電機用インバータを介してバッテリ7に接続されており、発生した交流電流を直流電流に変換し、バッテリ7に供給する。尚、駆動モータ5と発電機6を一体的に構成しても良い。
【0025】
また、バッテリ7は充電と放電とを繰り返すことができる蓄電手段としての二次電池であり、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等が用いられる。更に、バッテリ7は車両2の側壁に設けられた充電コネクタ18と接続されている。そして、自宅や所定の充電設備を備えた充電施設において、充電コネクタ18をコンセント等の電力供給源に接続することにより、バッテリ7の充電を行うことが可能となる。更に、バッテリ7は上記駆動モータで発生した回生電力や発電機で発電された電力によっても充電される。
【0026】
また、プラネタリギヤユニット8はサンギヤ、ピニオン、リングギヤ、キャリア等によって構成され、エンジン4の駆動力の一部を発電機6へと分配し、残りの駆動力を駆動輪17へと伝達する。
【0027】
また、車両制御ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)9は、車両2の全体の制御を行う電子制御ユニットである。また、車両制御ECU9には、エンジン4の制御を行う為のエンジン制御ECU10、駆動モータ5の制御を行う為の駆動モータ制御ECU11、発電機6の制御を行う為の発電機制御ECU12が接続されるとともに、ナビゲーション装置1が備える後述のナビゲーションECU33に接続されている。
そして、車両制御ECU9は、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラム等が記録されたROM23等の内部記憶装置を備えている。
【0028】
また、エンジン制御ECU10、駆動モータ制御ECU11及び発電機制御ECU12は、図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、それぞれエンジン4、駆動モータ5、発電機6の制御を行う。
【0029】
続いて、ナビゲーション装置1の構成について図2を用いて説明する。
図2に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、自車の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(経路特定手段、消費エネルギ推定手段、交差点特定手段、制限速度取得手段、加速推定手段、車両挙動予測手段、横断歩道有無取得手段、信号機有無取得手段)33と、ユーザからの操作を受け付ける操作部34と、ユーザに対して自車周辺の地図や設定された誘導経路の案内を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37、交通情報センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、から構成されている。また、ナビゲーションECU33には、自車の走行速度を検出する車速センサ等が接続される。
【0030】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS41、地磁気センサ42、距離センサ43、ステアリングセンサ44、方位検出部としてのジャイロセンサ45、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位等を検出することが可能となっている。
【0031】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された車両パラメータDB46、地図情報DB47、消費エネルギ推定テーブル48、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0032】
ここで、車両パラメータDB46は、車両2に関する各種パラメータを記憶するDBである。具体的には、前面投影面積A[m]、駆動機構慣性重量Wr[kN]、車重M[kg]、タイヤの転がり抵抗係数μr、空気抵抗係数μl、コーナリング抵抗Rc[kN]等が記憶される。尚、各車両パラメータは後述するようにナビゲーションECU33によって、ナビゲーション装置1で設定された誘導経路を走行する際に駆動モータ5で消費される消費エネルギを推定するのに用いられる。
【0033】
また、地図情報DB47は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。具体的には、レストランや駐車場等の施設に関する施設データ、道路(リンク)形状に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、道路の属性に関する道路属性データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。尚、交差点データとしては、信号機の有無や横断歩道の有無に関する情報を含む。また、道路属性データとしては、例えば、道路の車線数、制限速度、勾配角度等に関する情報を含む。
【0034】
また、消費エネルギ推定テーブル48は車両2がナビゲーション装置1で設定された誘導経路の内、特に交差点を走行する際に加速抵抗に基づいて駆動モータ5で消費される消費エネルギを推定する為に用いられるテーブルである。尚、消費エネルギ推定テーブル48の詳細については後述する(図9参照)。
【0035】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの誘導経路を設定する誘導経路設定処理、設定された誘導経路を走行する際のバッテリ7の電力消費量を推定する消費エネルギ推定処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、消費エネルギ推定処理プログラム(図3、図4参照)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記録するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。
【0036】
操作部34は、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0037】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。更に、ナビゲーション装置1で設定された誘導経路を走行する為に必要な駆動モータ5の消費エネルギに対して車両2の現在のバッテリ残容量(SOC値)が不足する場合には、目的地までの走行途中でのバッテリの充電を促す案内画面を表示する。
【0038】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。更に、ナビゲーション装置1で設定された誘導経路を走行する為に必要な駆動モータ5の消費エネルギに対して車両2の現在のバッテリ残容量(SOC値)が不足する場合には、目的地までの走行途中でのバッテリの充電を促す案内音声を出力する。
【0039】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB47の更新等が行われる。
【0040】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0041】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU33が実行する消費エネルギ推定処理プログラムについて図3に基づき説明する。図3は本実施形態に係る消費エネルギ推定処理プログラムのフローチャートである。ここで、消費エネルギ推定処理プログラムは車両2のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、車両2がナビゲーション装置1で設定された誘導経路を走行する際の消費エネルギを推定し、必要な場合にはバッテリの充電を促す案内を実行するプログラムである。尚、以下の図3及び図4にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51により実行される。
【0042】
先ず、消費エネルギ推定処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU51はナビゲーション装置1において誘導経路の設定がなされたか否か判定する。ここで、誘導経路は操作部34の操作に基づいて入力された目的地とGPSにより検出された自車の現在位置とに基づいて探索される。そして、探索された経路の内から選択された一の経路が誘導経路として設定される。尚、誘導経路の探索及び設定方法に関しては既に公知であるのでその説明は省略する。
【0043】
そして、誘導経路の設定がされたと判定された場合(S1:YES)には、S2へと移行する。一方、誘導経路の設定がされていないと判定された場合(S1:NO)には、当該消費エネルギ推定処理プログラムを終了する。
【0044】
次に、S2でCPU51は、ナビゲーション装置1において設定された誘導経路を自車の走行予定経路として特定する。尚、ナビゲーション装置1で設定された誘導経路ではなく、ユーザが操作部34で指定した経路を走行予定経路として特定しても良い。また、上記S2が経路特定手段の処理に相当する。
【0045】
続いて、S3でCPU51は、現在位置検出部31により自車の現在位置に関する情報を取得する。また、取得した自車の現在位置を地図上で特定するマップマッチングも行われる。更に、S3でCPU51は、自車に搭載されたバッテリ7のSOC値(バッテリ7の残容量)についても車両制御ECU9から取得する。
【0046】
更に、S4〜S7においてCPU51は、前記S2で特定された走行予定経路を走行する際に駆動モータ5で消費される消費エネルギを推定する。ここで、車両の走行に基づいて駆動源(本実施形態では駆動モータ5)で消費される消費エネルギは、車両に生じる空気抵抗、転がり抵抗、勾配抵抗、加速抵抗等の各種走行抵抗に依存することが一般に知られている。図5は車両に生じる各種走行抵抗を示した模式図である。
【0047】
図5に示すように、走行中の車両に生じる走行抵抗R[kN]は、加速抵抗Ro[kN]、転がり抵抗Rr[kN]、空気抵抗Rl[kN]、勾配抵抗Ri[kN]からなる。そして、各種走行抵抗Ro、Rr、Rl、Riに基づく駆動モータ5の消費エネルギEo、Er、El、Eiは、各種走行抵抗Ro、Rr、Rl、Riにその抵抗が車両に生じた時間Tを乗じた値となり、以下の式(1)〜(4)で表される。
Eo=Ro×To・・・・(1)
Er=Rr×Tr・・・・(2)
El=Rl×Tl・・・・(3)
Ei=Ri×Ti・・・・(4)
【0048】
そして、加速抵抗Roは、車重(乗員や燃料の重量も含める)M[kg]の抗力W(=M×g)[kN]と駆動機構慣性重量Wrと加速度α[m/s]と重力加速度g[m/s]を用いて、以下の式(5)で表される。
Ro=(W+Wr)×α/g・・・・(5)
また、転がり抵抗Rrは、転がり抵抗係数μrと車重M[kg]の抗力W[kN]の積であり、以下の式(6)で表される。
Rr=μr×W・・・・(6)
また、空気抵抗Rlは、空気抵抗係数μlと前面投影面積A[m]、車速V[km/h]の積であり、以下の式(7)で表される。
Rl=μl×A×V・・・・(7)
また、勾配抵抗Riは、車両の走行する道路の勾配をθ(deg)とすると、以下の式(8)で表される。
Ri=W×sinθ・・・・(8)
【0049】
そして、S4では前記S2で特定された走行予定経路を走行する際に駆動モータ5で消費される消費エネルギの内、特に上記式(1)と式(5)を用いて加速抵抗に基づく消費エネルギを推定する。尚、S4の処理については後に詳細に説明する。
【0050】
また、S5では前記S2で特定された走行予定経路を走行する際に駆動モータ5で消費される消費エネルギの内、特に上記式(2)と式(6)を用いて転がり抵抗に基づく消費エネルギを推定する。
【0051】
また、S6では前記S2で特定された走行予定経路を走行する際に駆動モータ5で消費される消費エネルギの内、特に上記式(3)と式(7)を用いて空気抵抗に基づく消費エネルギを推定する。
【0052】
また、S7では前記S2で特定された走行予定経路を走行する際に駆動モータ5で消費される消費エネルギの内、特に上記式(4)と式(8)を用いて勾配抵抗に基づく消費エネルギを推定する。尚、S5〜S7の処理の内容に関しては既に公知であるので、詳細な説明は省略する。また、上記S4〜S7が消費エネルギ推定手段の処理に相当する。
【0053】
次に、S8でCPU51は、前記S4〜S7で推定した各種走行抵抗に基づく消費エネルギの加算値と、前記S3で取得したバッテリのSOC値を比較して、現在のバッテリSOC値で自車が目的地まで到達可能か否か判定する。具体的には、各種走行抵抗に基づく消費エネルギの加算値がバッテリのSOC値より小さい場合に、自車が目的地まで到達可能であると判定する。尚、本実施形態では駆動モータ5の駆動に基づく走行のみによって目的地まで到達可能か否か判定しているが、エンジン4の駆動に基づく走行を含めて目的地まで到達可能か否か判定しても良い。
【0054】
その結果、現在のバッテリSOC値で自車が目的地まで到達可能と判定された場合(S8:YES)には、案内を行うことなく、当該消費エネルギ推定処理プログラムを終了する。
【0055】
一方、現在のバッテリSOC値では自車が目的地まで到達できないと判定された場合(S8:NO)には、目的地までの走行途中でのバッテリの充電を促す案内を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて行う(S9)。具体的には、CPU51は誘導経路上又は経路近辺にある充電施設を検索し、検索された充電施設の位置を液晶ディスプレイ15に表示したり、「○○(検索された充電施設の名称)でバッテリを充電してください。」との音声をスピーカ16から出力する。
【0056】
次に、上記S4の加速抵抗に基づく消費エネルギの推定処理のサブ処理について図4に基づき説明する。図4は加速抵抗に基づく消費エネルギの推定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0057】
先ず、S11においてCPU51は、前記S2で特定した走行予定経路と地図情報DB47に記憶された地図情報に基づいて、自車の走行予定経路中にある全交差点を特定する。尚、上記S11が交差点特定手段の処理に相当する。
【0058】
次に、S12においてCPU51は、RAM52に格納される総消費エネルギの値を初期化する。尚、総消費エネルギは前記S4〜S7によって推定される各消費エネルギの加算値を示す。
【0059】
その後、CPU51は前記S11で特定された交差点の内から、自車の現在位置の近くに配置された順に一の交差点を選択し、選択した交差点に対して後述のS13〜S24の処理を行う。そして、S13〜S24の処理は、前記S11で特定された交差点分だけ繰り返し実行する。
【0060】
先ず、S13でCPU51は処理対象として選択されている交差点が、自車が右折する予定の交差点であるか否かをナビゲーション装置1に設定された誘導経路に基づいて判定する。そして、右折予定の交差点であると判定された場合(S13:YES)には、S14へと移行する。
【0061】
S14においてCPU51は、交差点に接続する道路の内、自車が交差点へと進入する前に走行する道路を特定し、更に、特定した道路において自車の走行予定の車線に並設された反対車線の車線数を地図情報DB47から取得する。例えば、図6に示す交差点61が処理対象である場合には、道路62は片側二車線の道路なので反対車線の車線数は『2車線』となる。
【0062】
次に、S15においてCPU51は、交差点に接続する道路の内、自車が右折後に走行する道路を特定し、更に、特定した道路に形成された横断歩道の有無を地図情報DB47から取得する。例えば、図6に示す交差点61が処理対象である場合には、道路63に横断歩道は形成されていないので、『横断歩道は無し』となる。
【0063】
更に、S16においてCPU51は、交差点に接続する道路の内、自車が右折後に走行する道路を特定し、更に、特定した道路の制限速度を地図情報DB47から取得する。例えば、図6に示す交差点61が処理対象である場合には、道路63の制限速度が50km/hであるので、『50km/h』となる。
【0064】
また、S17においてCPU51は、右折交差点における信号機の設置の有無を地図情報DB47から取得する。例えば、図6に示す交差点61が処理対象である場合には、『信号機は有り』となる。その後、S22へと移行する。
【0065】
一方、前記S13において、右折予定の交差点でないと判定された場合(S13:NO)には、CPU51は処理対象として選択されている交差点が、自車が左折する予定の交差点であるか否かをナビゲーション装置1に設定された誘導経路に基づいて判定する(S18)。そして、左折予定の交差点であると判定された場合(S18:YES)には、S19へと移行する。
【0066】
S19においてCPU51は、交差点に接続する道路の内、自車が左折後に走行する道路を特定し、更に、特定した道路に形成された横断歩道の有無を地図情報DB47から取得する。例えば、図7に示す交差点71が処理対象である場合には、道路72に横断歩道が形成されているので、『横断歩道は有り』となる。
【0067】
更に、S20においてCPU51は、交差点に接続する道路の内、自車が左折後に走行する道路を特定し、更に、特定した道路の制限速度を地図情報DB47から取得する。例えば、図7に示す交差点71が処理対象である場合には、道路72の制限速度が40km/hであるので、『40km/h』となる。
【0068】
その後、S17においてCPU51は、前記した右折交差点と同様に左折交差点における信号機の設置の有無を地図情報DB47から取得する。例えば、図7に示す交差点71が処理対象である場合には、『信号機は有り』となる。その後、S21へと移行する。
【0069】
一方、前記S18において、左折予定の交差点でもないと判定された場合(S18:NO)には、CPU51は処理対象として選択されている交差点が、自車が直進する予定の交差点であると判定し、S21へと移行する。
【0070】
S21においてCPU51は、交差点に接続する道路の内、自車が直進後に走行する道路を特定し、更に、特定した道路の制限速度を地図情報DB47から取得する。例えば、図8に示す交差点81が処理対象である場合には、道路82の制限速度が60km/hであるので、『60km/h』となる。
【0071】
次に、S17においてCPU51は、前記した右折交差点及び左折交差点と同様に直進交差点における信号機の設置の有無を地図情報DB47から取得する。例えば、図8に示す交差点81が処理対象である場合には、『信号機は無し』となる。その後、S22へと移行する。尚、上記S13、S18が車両挙動予測手段の処理に相当する。また、上記S15、S19が横断歩道有無取得手段の処理に相当する。また、上記S16、S20、S21が制限速度取得手段の処理に相当する。また、上記S17が信号機有無取得手段の処理に相当する。
【0072】
そして、S22においてCPU51は、前記S13〜S21で取得した各種情報と消費エネルギ推定テーブル48に基づいて、処理対象として選択されている交差点における停車確率を特定する。尚、“停車確率”とは、その交差点において車両が信号待ち、横断歩道での歩行者の通過待ち、右折待ち等の様々な要因によって停車する確率を形式的に規定した値である。ここで、図9は消費エネルギ推定テーブル48の一例を示した図である。
【0073】
図9に示すように消費エネルギ推定テーブル48は、車両の交差点での挙動(直進、右折、左折)と、右左折後の横断歩道の有無と、交差点の信号機の有無と、交差点進入前における反対車線の車線数と、停車確率とから構成される。そして、CPU51は処理対象として選択されている交差点について、前記S13〜S21で予測及び取得された『(A)車両が交差点で直進、右折又は左折のいずれかの挙動をするか』、『(B)右折又は左折後の道路に形成される横断歩道の有無』、『(C)交差点に設置される信号機の有無』、『(D)交差点進入前における反対車線の車線数』を用いて停車確率を特定する。
【0074】
例えば、図6に示す交差点61を対象として停車確率を特定する場合には、交差点61では車両が右折することが予測され、更に、右折先に横断歩道は無く、交差点に信号機が有り、反対車線の車線数が2車線であることから、停車確率は「0.8」に特定される。
また、図7に示す交差点71を対象として停車確率を特定する場合には、交差点71では車両が左折することが予測され、更に、左折先に横断歩道が有り、交差点に信号機が有ることから、停車確率は「0.65」に特定される。
また、図8に示す交差点81を対象として停車確率を特定する場合には、交差点81では車両が直進することが予測され、更に、交差点に信号機が無いことから、停車確率は「0.2」に特定される。
【0075】
続いて、S23においてCPU51は、処理対象として選択されている交差点を自車が走行する際に、交差点で自車が一旦停車したと仮定した場合における加速抵抗に基づく消費エネルギを算出する。尚、加速抵抗に基づく消費エネルギは上述したように式(1)と式(5)を用いて算出される。
ここで、算出に用いられる各種パラメータの内、車重Mや駆動機構慣性重量Wrは車両パラメータDB46に予め記憶される。また、加速度αは10km/h/s(固定値)と推定する。また、前記S16、S20又はS21で取得した交差点の直進、右折又は左折後の道路の制限速度に基づいて、加速抵抗が車両に生じた時間To(即ち、加速時間)を算出する。具体的には、自車が交差点で一旦停止した後に制限速度まで加速度αで加速したとして、その制限速度に達するまでの時間を加速時間Toとして算出する。例えば、図6に示す交差点61では、一旦停車した後に加速度10km/h/sで50km/hまで到達するのに必要な時間は5秒なので、加速時間Toは5秒となる。尚、上記S23が加速推定手段の処理に相当する。
【0076】
そして、S24においてCPU51は、前記S23で算出された加速抵抗に基づく消費エネルギに前記S22で特定された停車確率を乗じた値を算出する。尚、算出された値は、処理対象として選択されている交差点を自車が走行する際に、加速抵抗に基づいて駆動モータ5が消費する消費エネルギと推定される。
【0077】
その後、前記S2で特定した走行予定経路中にある全交差点について、前記S13〜S24の処理が終了したか否か判定する。そして、全交差点について処理が終了していない場合には、残りの交差点の内から、自車の現在位置の最も近くに配置された交差点を選択し、選択した交差点に対して同様にS13〜S24の処理を行う。
【0078】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による車両消費エネルギ推定方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、ナビゲーション装置1で設定された誘導経路を自車の走行予定経路として特定し(S2)、走行予定経路に含まれている交差点について車両の挙動(直進、右折、左折のいずれか)を予測する(S13、S18)とともに、交差点の構造(信号機の有無、横断歩道の有無、交差点に接続する道路の属性情報(車線数、制限速度)等)を取得し(S14〜S17、S19〜S21)、取得した各種情報と消費エネルギ推定テーブル48に基づいて停車確率を算出し(S22)、算出した停車確率を用いて加速抵抗に基づいて駆動モータ5が消費する消費エネルギを推定する(S23)ので、交差点で生じる加速抵抗に基づく消費エネルギについても含めて、走行予定経路を走行する際における車両2の駆動モータ5が消費する消費エネルギを推定することができる。それによって、消費エネルギを正確に推定することが可能となる。
また、車両の挙動(直進、右折、左折のいずれか)や交差点や交差点に接続する道路の属性情報(信号機の有無、横断歩道の有無、車線数、制限速度)ついて考慮することにより、車両が交差点において停車する確率を予測できる。そして、予測された停車確率を用いることにより、特に交差点での加速抵抗に基づく消費エネルギをより正確に推定することが可能となる。
【0079】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では本願発明をモータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両が備えるナビゲーション装置に適用した例について説明しているが、モータのみを駆動源とする電気自動車やエンジンのみを駆動源とする自動車が備えるナビゲーション装置にも適用することが可能である。そして、エンジンのみを駆動源とする自動車が備えるナビゲーション装置に適用した場合には、前記S8において残燃料と消費エネルギを比較し、現在の残燃料で目的地に到達できないと判定された場合には給油を促す案内を行うように構成することが望ましい。
【0080】
また、本実施形態では前記S23において加速抵抗に基づく消費エネルギを算出する際に用いる自車の加速度αは固定値(10km/h/s)としているが、自車の走行履歴に基づいて加速度αを算出するようにしても良い。また、交差点の停車確率についても消費エネルギ推定テーブル48を用いずに自車の走行履歴に基づいて算出するようにしても良い。
【0081】
また、本実施形態では推定した消費エネルギを用いてバッテリ7の充電の案内を行う(S9)ように構成しているが、推定した消費エネルギを用いてエンジン4や駆動モータ5の制御スケジュールを設定するようにしても良い。それによって、目的地までの燃料消費量が最少となるスケジュールの設定が可能となる。
【0082】
また、本実施形態では交差点の信号機の有無に基づいて停車確率を算出しているが、信号機が有る場合には更に信号機の種類によって停車確率を異なる値としても良い。例えば、標準信号機、点滅信号機、時差式信号機のそれぞれで停車確率を変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施形態に係る電動車両駆動制御システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る電動車両制御システムの制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る消費エネルギ推定処理プログラムのフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る加速抵抗に基づく消費エネルギの推定処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図5】走行中の車両に生じる走行抵抗の一例について示した図である。
【図6】車両の走行予定経路中にある右折交差点の一例を示した図である。
【図7】車両の走行予定経路中にある左折交差点の一例を示した図である。
【図8】車両の走行予定経路中にある直線交差点の一例を示した図である。
【図9】消費エネルギ推定テーブルの一例について示した図である。
【符号の説明】
【0084】
1 ナビゲーション装置
2 車両
3 電動車両制御システム
5 駆動モータ
7 バッテリ
33 ナビゲーションECU
41 CPU
42 RAM
43 ROM


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行予定経路を特定する経路特定手段と、
前記経路特定手段によって特定された走行予定経路を走行する場合に車両の駆動力を発生させる駆動源で消費される消費エネルギを推定する消費エネルギ推定手段と、を有する車両消費エネルギ推定装置において、
前記走行予定経路中にある交差点を特定する交差点特定手段と、
前記交差点特定手段によって特定された交差点に接続する道路の制限速度を取得する制限速度取得手段と、
前記制限速度取得手段によって取得された制限速度と所定の加速度に基づいて交差点を車両が走行する際の車両の加速時間を推定する加速推定手段と、を備え、
前記消費エネルギ推定手段は、前記加速推定手段で推定された車両の加速時間に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする車両消費エネルギ推定装置。
【請求項2】
前記経路特定手段によって特定された走行予定経路に基づいて、前記交差点特定手段によって特定された交差点で車両が直進、右折又は左折することを予測する車両挙動予測手段を有し、
前記消費エネルギ推定手段は、前記車両挙動予測手段で予測された車両の挙動に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする請求項1に記載の車両消費エネルギ推定装置。
【請求項3】
前記交差点特定手段によって特定された交差点で前記車両挙動予測手段により車両が右折又は左折すると予測された場合に、右折又は左折後の道路に形成される横断歩道の有無を取得する横断歩道有無取得手段を有し、
前記消費エネルギ推定手段は、前記横断歩道有無取得手段で取得された横断歩道の有無に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする請求項2に記載の車両消費エネルギ推定装置。
【請求項4】
前記交差点特定手段によって特定された交差点に設置される信号機の有無を取得する信号機有無取得手段を有し、
前記消費エネルギ推定手段は、前記信号機有無取得手段で取得された信号機の有無に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両消費エネルギ推定装置。
【請求項5】
車両の走行予定経路を特定する経路特定ステップと、
前記経路特定ステップによって特定された走行予定経路を走行する場合に車両の駆動力を発生させる駆動源で消費される消費エネルギを推定する消費エネルギ推定ステップと、を有する車両消費エネルギ推定方法において、
前記走行予定経路中にある交差点を特定する交差点特定ステップと、
前記交差点特定ステップによって特定された交差点に接続する道路の制限速度を取得する制限速度取得ステップと、
前記制限速度取得ステップによって取得された制限速度と所定の加速度に基づいて交差点を車両が走行する際の車両の加速時間を推定する加速推定ステップと、を備え、
前記消費エネルギ推定ステップは、前記加速推定ステップで推定された車両の加速時間に基づいて消費エネルギを推定することを特徴とする車両消費エネルギ推定方法。
【請求項6】
コンピュータに搭載され、
車両の走行予定経路を特定する経路特定機能と、
前記走行予定経路中にある交差点を特定する交差点特定機能と、
前記交差点特定機能によって特定された交差点に接続する道路の制限速度を取得する制限速度取得機能と、
前記制限速度取得機能によって取得された制限速度と所定の加速度に基づいて交差点を車両が走行する際の車両の加速時間を推定する加速推定機能と、
前記加速推定機能で推定された車両の加速時間に基づいて、前記経路特定機能によって特定された走行予定経路を走行する場合に車両の駆動力を発生させる駆動源で消費される消費エネルギを推定する消費エネルギ推定機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−67350(P2009−67350A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240750(P2007−240750)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】