説明

配線パターン形成方法、デバイスの製造方法、非接触型カード媒体の製造方法、電気光学装置の製造方法及びアクティブマトリクス基板の製造方法

【課題】複数の材料を積層してパターンを形成することによって、一種類の材料では得られなかった機能性をパターンに付与する。
【解決手段】機能液を基板上に配置させてパターンを形成する方法であって、上記基板P上に上記パターンの形成領域に応じたバンクBを形成する工程と、上記バンク間34に第1の機能液X1を配置する工程と、配置された上記第1の機能液X1上に第2の機能液X2を配置する工程と、上記バンク間に積層した上記第1の機能液X1と上記第2の機能液X2とに対して所定の処理を施すことによって複数の材料が積層されてなる上記パターン33を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンとその形成方法、デバイスとその製造方法、電気光学装置、電子機器及びアクティブマトリクス基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体集積回路などの微細な配線パターン(パターン)の製造方法としては、フォトリソグラフィ法が多用されている。一方、特許文献1、特許文献2などには、液滴吐出方式を用いた方法が開示されている。これら公報に開示されている技術は、パターン形成用材料(導電性微粒子)を含んだ機能液(配線パターン用インク)を液滴吐出ヘッドから基板上に吐出することにより、パターン形成面に材料を配置して配線パターンを形成するものであり、少量多種生産に対応可能であるなど大変有効であるとされている。
【0003】
ところで、近年ではデバイスを構成する回路の高密度化がますます進み、例えば配線パターンについてもさらなる微細化、細線化が要求されている。
しかしながら、このような微細な配線パターンを上記の液滴吐出方式による方法によって形成しようとした場合、特にその配線幅の精度を十分にだすのが難しい。そのため、基板上に仕切部材であるバンクを設けるとともに、バンクの上部を撥液性にし、それ以外の部分が親液性となるように表面処理を施す方法も提案されている。
【0004】
一方、バンクはフォトリソグラフィ法を用いて形成され、コスト高につながる可能性があることから、予め撥液部(撥液領域)と親液部(被機能液配置領域)とのパターンを形成した基板の親液部に液滴吐出方式により選択的に配線パターン用インクを吐出することも提案されている。この場合、導電性微粒子を分散させた配線パターン用インクは、親液部に溜まりやすくなるため、バンクを形成することなく、位置精度を保って配線パターンを形成することが可能である。
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【特許文献2】特開2000−216330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の配線パターンは、通常、1種類の金属からなっているため、配線としての主たる機能である電流を流すという機能以外の機能を有していない。このため、例えば、配線パターンの密着性が弱いために基板から剥離したり、配線パターンのエレクトロマイグレーションによって短絡が発生する等の種々の問題が生じる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、複数の材料を積層してパターンを形成することによって、一種類の材料では得られなかった機能性をパターンに付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るパターン形成方法は、機能液を基板上に配置させてパターンを形成する方法であって、上記基板上に上記パターンの形成領域に応じたバンクを形成する工程と、上記バンク間に第1の機能液を配置する工程と、配置された上記第1の機能液上に第2の機能液を配置する工程と、上記バンク間に積層した上記第1の機能液と上記第2の機能液とに対して所定の処理を施すことによって複数の材料が積層されてなる上記パターンを形成する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
このような特徴を有する本発明に係るパターン形成方法によると、複数の材料が積層されてなるパターンが基板に形成されたバンク間に形成される。これによって、パターンに一種類の材料では得られなかった機能性を付与することが可能となる。
【0009】
また、上記配置された上記第1の機能液上に第2の機能液を配置する工程は、先にバンク間に配置された機能液を固化させた後に異なる種類の機能液をバンク間に配置させることによってバンク間に異なる種類の機能液を配置して積層させる工程であることが好ましい。
これによって、先にバンク間に配置された機能液が、後にバンク間に配置される機能液と混じり合わなくなるために、確実にバンク間に異なる種類の機能液を配置して積層することが可能となる。また、これを繰り返すことによってバンク間に3種類以上の機能液を配置して積層させることによって3層以上のパターンを形成することもできる。
【0010】
また、バンクが予め撥液性を有していない材料から構成されている場合には、機能液をバンク間に配置させる前に上記バンクの表面を撥液化する工程を有することが好ましい。これによって、例えばバンクの上面に着弾した機能液は、バンクの上面からはじかれることによって確実にバンク間に流れ込ませることが可能なる。
また、機能液をバンク間に配置させる前にバンク間に露出した基板上を親液化する工程を有することが好ましい。これによってバンク間に露出した基板上に配置した機能液が濡れ拡がりやすくなるので、機能液をバンク間に吐出下基板上において均一に配置させることが可能となる。
【0011】
次に、本発明に係るパターン形成方法は、機能液を基板上に配置させてパターンを形成する方法であって、上記基板上に上記パターンの形成領域に応じた被機能液配置領域と該被機能液配置領域を囲む撥液領域とを形成する工程と、上記被機能液配置領域上に第1の機能液を配置する工程と、配置された上記第1の機能液状に第2の機能液を配置する工程と、上記被機能液配置領域上に積層した上記第1の機能液と上記第2の機能液とに対して所定の処理を施すことによって複数の材料が積層されてなる上記パターンを形成する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
このような特徴を有する本発明に係るパターン形成方法によると、複数の材料が積層されてなるパターンが基板に形成された被機能液配置領域に形成される。これによって、パターンに一種類の材料では得られなかった機能性を付与することが可能となる。
【0013】
また、配置された上記第1の機能液状に第2の機能液を配置する工程は、先に被機能液配置領域上に配置された機能液を固化させた後に異なる種類の機能液を固化された上記機能液上に配置させることによって被機能液配置領域上に異なる種類の機能液を配置して積層させる工程であることが好ましい。
これによって、先に被機能液配置領域上に配置された機能液と後に配置される機能液とが混じり合わなくなるために、確実に被機能液配置領域上に異なる種類の機能液を配置して積層することが可能となる。また、これを繰り返すことによって被機能液配置領域上に3種類以上の機能液を配置して積層させることによって3層以上のパターンを形成することもできる。
【0014】
また、本発明において、撥液領域は単分子膜が上記基板上に形成されることによって撥液化される領域であることを特徴とする。この単分子膜しては有機分子からなる自己組織化膜が好ましい。この場合容易に単分子膜を形成できる。
また、単分子膜の変わりに、フッ化重合膜を形成することによって撥液領域を撥液化しても良い。フッ化重合膜の形成は、例えばフルオロカーボン系化合物を反応ガスとするプラズマ処理によって容易になすことができる。
【0015】
なお、被機能液配置領域には親液性を付与することが好ましく、この場合、紫外光の照射や酸素を反応ガスとするプラズマ処理、基板をオゾン雰囲気にさらす処理を好適に採用できる。この場合、一旦形成された撥液性の膜を、部分的に、しかも全体的に均一に破壊することができるので、撥液性を緩和し、所望の親液性を均一に得ることができる。
【0016】
また、機能液に導電性微粒子を含ませることによって、パターンに導電性付与することができるので、パターンを配線として形成することができる。
また、機能液に熱処理または光処理により導電性を発現する材料が含まれている場合には、バンク間あるいは被機能液配置領域に配置された機能液に対して熱処理または光処理を施すことによって、パターンを配線パターンとすることができる。
【0017】
また、本発明に係るパターンが、パターンの主なる機能を担う主材料からなる層と、この主材料と基板との密着性を向上させるための材料からなる層とを含む場合には、主材料が基板から剥離することを防止することが可能となる。
なお、本発明において主材料とは、パターンの主なる機能を有する材料であり、例えばパターンを配線として形成する場合には、主として電流を流す機能を担う銀や銅である。
また、主材料と基板との密着性を向上させるための材料としては、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、モリブデン、チタン及びタングステン等が挙げられる。
【0018】
また、本発明に係るパターンが、上記主材料からなる層と、この主材料のエレクトロマイグレーションを抑制するための材料からなる層とを含む場合には、主材料のエレクトロマイグレーションを抑制することが可能となる。
なお、エレクトロマイグレーションとは、長時間にわたり配線に電流を流すことによって原子が電子の流れに沿って移動する現象であり、配線の抵抗値の増加や断線の原因となる。
このエレクトロマイグレーションを抑制する材料としては、チタン等が挙げられる。
【0019】
また、本発明に係るパターンが、上記主材料からなる層と、この主材料の酸化を防止する材料からなる層とを含む場合には、外気等による配線の酸化を防止することが可能となる。
また、本発明に係るパターンが、上記主材料からなる層と、この主材料の損傷を防止する材料からなる層とを含む場合には、外力(本発明のパターン上に更に薄膜を形成する場合等)によって配線が損傷することを防止することが可能となる。
なお、主材料の酸化を防止する材料及び主材料の損傷を防止する材料としては、クロム、ニッケル、タングステン、タンタル等が挙げられる。
【0020】
また、上述の材料以外にも、本発明に係るパターンを上記主材料からなる層と、ITOやATOからなる補助電極層とを含む構成としても良い。
【0021】
次に、本発明に係るデバイスの製造方法は、基板上に形成されたパターンを備えるデバイスの製造方法であって、上述のパターン形成方法によって基板上にパターンを形成することを特徴とする。
このような特徴を有するデバイスの製造方法によれば、異なる複数の機能を有する材料が積層されてなるパターンを例えばスイッチング素子に接続される配線として有するデバイスを製造することが可能となる。
【0022】
そして、本発明に係る電気光学装置は、上記のデバイス製造方法を用いて製造されたデバイスを備えることを特徴としている。
また、本発明に係る電子機器は、上記の電気光学装置を備えることを特徴としている。
これによって、本発明では、複数の機能性を有したパターンを備える電気光学装置及び電子機器を得ることが可能となる。
【0023】
次に、本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法は、アクティブマトリクス基板の製造方法において、基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、上記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、上記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、上記ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、上記ソース電極及び上記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、上記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する6の工程と、を有し、上記第1の工程、上記第4の工程及び上記第6の工程の少なくとも1つの工程では、本発明に係るパターン形成方法を用いることを特徴とする。
【0024】
このような本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造方法によれば、ゲート配線、ソース電極及びドレイン電極、画素電極に一種類の材料では得られなかった機能性が付与されたアクティブマトリクス基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明に係るパターンとその形成方法、デバイスとその製造方法、電気光学装置、電子機器及びアクティブマトリクス基板の製造方法の一実施形態について説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0026】
(第1実施形態)
本実施の形態では、液滴吐出法によって液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから導電性微粒子を含む配線パターン(パターン)用インク(機能液)を液滴状に吐出し、基板上に配線パターンに応じて形成されたバンクの間に複数の導電膜からなる配線パターンを形成する場合の例を用いて説明する。
【0027】
この配線パターン用インクは、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液や有機銀化合物や酸化銀ナノ粒子を溶媒(分散液)に分散した溶液からなるものである。
本実施の形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、鉄、クロム、マンガン、モリブデン、チタン、パラジウム、タングステン及びニッケルのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0028】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0029】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インク組成物の吐出ノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えると吐出ノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や、吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液体の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0030】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。インクジェット法を用いて液体材料を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合には吐出ノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、吐出ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0031】
配線パターンが形成される基板としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0032】
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0033】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0034】
次に、本発明に係るデバイスを製造する際に用いられるデバイス製造装置について説明する。
このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出(滴下)することによりデバイスを製造する液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
【0035】
図1は、液滴吐出装置IJの概略構成を示す斜視図である。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
ステージ7は、この液滴吐出装置IJにより液体材料(配線パターン用インク)を配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0036】
液滴吐出ヘッド1は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面に一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含む配線パターン用インクが吐出される。
【0037】
X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0038】
制御装置CONTは、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ2に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ3にステージ7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構8は、液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものである。クリーニング機構8には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に配置された液体材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
【0039】
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して、液滴吐出ヘッド1の下面にX軸方向に配列された複数の吐出ノズルから液滴を吐出する。
【0040】
図2は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。
図2において、液体材料(配線パターン用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、吐出ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0041】
次に、本発明の配線パターン形成方法の実施形態の一例として、基板上に導電膜配線を形成する方法について図3〜図5を参照して説明する。本実施形態に係るパターン形成方法は、上述した配線パターン用のインクを基板上に配置し、その基板上に配線用の導電膜パターンを形成するものであり、HMDS膜形成工程、バンク形成工程、HMDS膜パターニング工程、残渣処理工程(親液化処理工程)、撥液化処理工程、材料配置工程、中間乾燥工程及び熱処理/光処理工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0042】
(HMDS形成工程)
HMDS(ヘキサメチルジシラザン)膜は、基板とバンクとの密着性を向上させるものであり、例えばHMDSを蒸気状にして対象物に対して付着させる方法(HMDS処理)によって形成される。これによって、図3(a)に示すように、基板P上にHMDS膜32が形成される。
【0043】
(バンク形成工程)
バンクは、仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、リソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、図3(b)に示すように、基板P上にバンクの高さに合わせて有機系感光性材料31を塗布し、その上にレジスト層を塗布する。そして、バンク形状(配線パターンの形成領域)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することによりバンク形状に合わせたレジストを残す。最後にエッチングしてマスク以外の部分のバンク材料を除去する。また、下層が無機物または有機物で機能液に対して親液性を示す材料で、上層が有機物で撥液性を示す材料で構成された2層以上でバンク(凸部)を形成してもよい。
これによって、図3(c)に示されるように、配線パターンを形成すべき領域(例えば10μm幅)の周辺を囲むようにバンクB、Bが形成され、上述のバンク間34が形成される。
【0044】
バンクBを形成する有機材料としては、液体材料に対してもともと撥液性を示す材料でも良いし、後述するように、プラズマ処理による撥液化(テフロン(登録商標)化)が可能で下地基板との密着性が良くフォトリソグラフィによるパターニングがし易い絶縁有機材料でも良い。例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料を用いることが可能である。
【0045】
(HMDS膜パターニング工程)
基板P上にバンクBが形成されると、続いてバンク間34のHMDS膜32(バンクB、B間の底部)をエッチングすることによって図4(a)に示すようにHMDS膜32をパターニングする。具体的には、バンクBが形成された基板Pに対してバンクBをマスクとして、例えば2.5%フッ酸水溶液でエッチングを施すことでHMDS膜をエッチングする。これによって基板PがバンクB、B間の底部に露出される。
【0046】
(残渣処理工程(親液化処理工程))
次に、バンク間34におけるバンク形成時のレジスト(有機物)残渣を除去するために、基板Pに対して残渣処理を施す。
残渣処理としては、紫外線を照射することにより残渣処理を行う紫外線(UV)照射処理や大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするOプラズマ処理等を選択できるが、ここではOプラズマ処理を実施する。
【0047】
具体的には、基板Pに対しプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射することで行う。Oプラズマ処理の条件としては、例えばプラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基板Pの板搬送速度が0.5〜10mm/sec、基板温度が70〜90℃とされる。
なお、基板Pがガラス基板の場合、その表面は配線パターン形成材料に対して親液性を有しているが、本実施の形態のように残渣処理のためにOプラズマ処理や紫外線照射処理を施すことで、バンク間34の底部に露出した基板Pの親液性を高めることができる。
【0048】
(撥液化処理工程)
続いて、バンクBに対し撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。撥液化処理としては、例えば大気雰囲気中でテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理法(CFプラズマ処理法)を採用することができる。CFプラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化メタンガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。
なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(四フッ化炭素)に限らず、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。
【0049】
このような撥液化処理を行うことにより、バンクBにはこれを構成する樹脂中にフッ素基が導入され、基板Pに対して高い撥液性が付与される。なお、上述した親液化処理としてのOプラズマ処理は、バンクBの形成前に行っても良いが、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等は、Oプラズマによる前処理がなされた方がよりフッ素化(撥液化)されやすいという性質があるため、バンクBを形成した後にOプラズマ処理することが好ましい。
なお、バンクBに対する撥液化処理により、先に親液化処理した基板P表面に対し多少は影響があるものの、特に基板Pがガラス等からなる場合には、撥液化処理によるフッ素基の導入が起こらないため、基板Pはその親液性、すなわち濡れ性が実質上損なわれることはない。
また、バンクBについては、撥液性を有する材料(例えばフッ素基を有する樹脂材料)によって形成することにより、その撥液処理を省略するようにしても良い。
【0050】
(材料配置工程)
次に、上述の液滴吐出装置IJを用いて、配線パターン用インク(機能液)をバンク間34に露出した基板P上に吐出して配置させる。なお、ここでは、導電性微粒子としてクロムを用いた配線パターン用インクX1を吐出する。なお、液滴吐出の条件としては、例えば、インク重量4ng/dot、インク速度(吐出速度)5〜7m/secで行うことできる。また、液滴を吐出する雰囲気は、温度60℃以下、湿度80%以下に設定されていることが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルが目詰まりすることなく安定した液滴吐出を行うことができる。
【0051】
この材料配置工程では、図4(b)に示すように、液滴吐出ヘッド1から配線パターン用インクX1を液滴にして吐出し、その液滴をバンク間34に露出した基板P上に配置させる。
このとき、バンク間34に露出した基板PはバンクBに囲まれているので、配線パターン用インクX1が所定位置以外に拡がることを阻止できる。また、バンクBの表面は撥液性が付与されているため、吐出された配線パターン用インクX1の一部がバンクB上にのっても、バンクB表面が撥液性となっていることによりバンクBからはじかれ、バンク間34に流れ落ちるようになる。さらに、バンク間34に露出した基板Pは親液性を付与されているため、吐出された配線パターン用インクX1がバンク間34に露出した基板P上において拡がり易くなる。これによって図4(c)に示すように配線パターン用インクX1をバンク間34の延在方向において均一に配置することができる。
【0052】
(中間乾燥工程)
基板Pに所定量の配線パターン用インクX1を吐出した後、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理をする。そして、この乾燥処理によって配線パターン用インクX1は、自らの上に配置される他の種類の配線パターン用インクと混じり合わない程度に固化される。この乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
そして、この中間乾燥工程によって、図5(a)に示すように、バンク間34の基板P上には、クロムを導電性微粒子として含む配線パターン用インクX1の層が形成される。
なお、配線パターン用インクX1の分散媒を除去しなくとも配線パターン用インクX1と他の種類の配線パターン用インクと混じり合わない場合には、中間乾燥工程を省略しても良い。
【0053】
また、この中間乾燥工程において、乾燥条件によっては、基板P上に配置された配線パターン用インクX1が多孔体になる場合がある。例えば、120℃加熱を5分間程度、あるいは180℃加熱を60分間程度行った場合には、配線パターン用インクX1が多孔体となる。このように、配線パターン用インクX1が多孔体になった場合には、配線パターン用インクX1上に配置される機能液(異なる金属)が配線パターン用インクX1の中に入り込んでしまい、配線パターン用インクX1の層が所望の機能を得られないことが懸念される。このため、本中間乾燥工程においては、配線パターン用インクX1が多孔体とならないような乾燥条件で乾燥することが好ましい。例えば、60℃加熱を5分間程度、200℃加熱を60分間程度あるいは250℃加熱を60分間程度行うことによって、配線パターン用インクX1が多孔体になることを抑止することができる。
【0054】
そして、クロムを導電性微粒子として含む配線パターン用インクX1上に異なる導電性微粒子を含む配線パターン用インクを配置することによってバンク間34に異なる種類の配線パターン用インクが積層されてなる配線パターンを形成する。なお、ここでは銀を導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX2を配線パターン用インクX1上に配置する。
【0055】
具体的には、上述の材料配置工程を配線パターン用インクX2を用いて再び行うことによって、図5(b)に示すように、配線パターン用インクX1上に配線パターン用インクX2を配置させる。
そして、上述の中間乾燥工程を再び行うことによって、配線パターン用インクX2の分散媒が除去され、図5(c)に示すように、バンク間34に配線パターン用インクX1と配線パターン用インクX2とが積層されてなる配線パターン33が形成される。
なお、配線パターン用インクX2の分散媒を除去するための中間乾燥工程を省略して、後述する熱処理/光処理工程を行っても良い。
また、配線パターン用インクX2を配線パターン用インクX1上に配置させる前に、撥液化処理工程を再度行い、バンクBの表面に再び撥液性を与えても良い。これによって、配線パターン用インクX1をバンク間34に配置させた際に、バンクBの上面等に配線パターン用インクX1が接触することによってバンクBの撥液性が低下した場合であっても、配線パターン用インクX2を確実にバンク間34の配線パターン用インクX1上に配置させることが可能となる。
【0056】
(熱処理/光処理工程)
吐出工程後の乾燥膜は、微粒子間の電気的接触をよくするために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング材がコーティングされている場合には、このコーティング材も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板Pには熱処理及び/又は光処理が施される。
【0057】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
例えば、有機物からなるコーティング材を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。
以上の工程によって、バンク間34にクロムと銀とが積層されてなる配線33が形成される。
なお、機能液に、導電性微粒子でなく、熱処理または光処理により導電性を発現する材料を含有させておき、本熱処理/光処置工程において配線パターン33に導電性を発現させても良い。
【0058】
以上説明したように、本実施形態では、バンク間34にクロムと銀とが積層されてなる配線が形成されるので、配線としての主な機能を担う銀をクロムによって確実に基板Pに密着させることが可能となる。
【0059】
なお、上述のようにバンクB表面が撥液性となっていることにより配線パターン用インクX1,X2は、バンクBからはじかれ、バンク間34に流れ落ちるようになる。しかしながら、配線パターン用インクX1,X2の一部が、例えばバンクBの上面に触れた場合には、バンクBの上面に微細な残渣が残る場合がある。このため、例えば、本実施形態に係るパターンの形成方法によって形成した配線パターンをTFTのゲート配線に用いた場合には、TFTのチャネル長が変化し、リーク電流が増大する等の不都合が生じることが懸念される。そこで、バンク間34に配線33を形成した後に、バンクBの上面の残渣を除去する工程を行うことが好ましい。具体的には、バンクBの上面に対してウエットエッチング処理、ドライエッチング処理あるいは研磨処理等の行うことによって、バンクBの上面を削り取ることによって、バンクBの上面の残渣を除去することができる。
また、バンクBの上面の残渣を除去する際に、バンクBの上面と配線33の上面とが略同一面となるようにバンクBの上面を削り取ることが好ましい。このように、バンクBの上面と配線33の上面とが略同一面とされることによって、例えば、本実施形態に係るパターンの形成方法によって形成した配線パターンを液晶表示装置に備えられるTFTのソース線あるいはドレイン線に用いる場合には、TFT上に配置される配向膜の平坦性を確保することができ、ラビング処理等にムラが生じることを抑止することができる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態として、上記第1実施形態とは異なる構成からなる配線33について、図6を参照して説明する。なお、本第2実施形態においては、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0061】
本第2実施形態では、上記第1実施形態において説明した材料配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行うことによって、図6に示すように、バンク間34にチタンを導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX3と銀を導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX2を積層させる。なお、図示するように、バンク間34には、基板Pから順に配線パターン用インクX3、配線パターン用インクX2、配線パターン用インクX3の順で積層されている。すなわち、配線パターン用インクX2は、配線パターン用インクX3に挟まれた状態でバンク間34に配置されている。
そして、これらの配線パターン用インクX2,X3に上記第1実施形態において説明した熱処理/光処理工程を行うことによって、バンク間34には、チタン、銀、チタンの順に積層されてなる配線33が形成される。
【0062】
チタンと銀の積層からなる配線は、銀単層と比較してエレクトロマイグレーションの発生が遅いという性質を有しているため、本実施形態のように、銀がチタンによって挟まれてなる配線33は、導電率が確保されると共にエレクトロマイグレーションの発生が遅くなる。従って、本実施形態によれば、エレクトロマイグレーションの発生を抑制した配線33を得ることが可能となる。
なお、エレクトロマイグレーションの発生を遅らせる材料としては、上述のチタンの他に、鉄、パラジウム及びプラチナ等を挙げることができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態として、上記第1実施形態及び第2実施形態とは異なる構成からなる配線33について、図7を参照して説明する。なお、本第2実施形態においては、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0064】
本第3実施形態では、上記第1実施形態において説明した材料配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行うことによって、図7に示すように、バンク間34にクロムを導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX1と銀を導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX2を積層させる。なお、図示するように、バンク間34には、基板Pから順に配線パターン用インクX1、配線パターン用インクX2、配線パターン用インクX1の順で積層されている。すなわち、配線パターン用インクX2は、配線パターン用インクX1に挟まれた状態でバンク間34に配置されている。
そして、これらの配線パターン用インクX1,X2に上記第1実施形態において説明した熱処理/光処理工程を行うことによって、バンク間34には、クロム、銀、クロムの順に積層されてなる配線33が形成される。
【0065】
このように構成された配線33は、銀と基板Pとの間に配置されるクロムの層によって、銀と基板Pとの密着性が向上されると共に、銀の上に配置されるクロムの層によって、銀の酸化及び損傷を防止することが可能となる。
従って、本実施形態によれば、密着性が向上すると共に、耐酸化性及び耐傷性を有した配線33を得ることが可能となる。
【0066】
(第4実施形態)
第4実施形態として、上記第1実施形態〜第3実施形態とは異なる構成からなる配線33について、図8を参照して説明する。なお、本第4実施形態においては、上記第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0067】
本第4実施形態では、上記第1実施形態において説明した材料配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行うことによって、図8に示すように、バンク間34に、基板Pから順にマンガンを導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX4、銀を導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX2、ニッケルを導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX5が順に積層されている。
そして、これらの配線パターン用インクX2,X4,X5に上記第1実施形態において説明した熱処理/光処理工程を行うことによって、バンク間34には、マンガン、銀、ニッケルの順に積層されてなる配線33が形成される。
【0068】
このように構成された配線33は、銀と基板Pとの間に配置されるマンガンの層によって、銀と基板Pとの密着性が向上される。また、ニッケルは、基板Pと銀の密着性を向上する機能の他に、プラズマ照射による銀の劣化を抑止する機能を有している。このため、銀の上にニッケルが配置されることによって、配線33が形成された基板Pに対してプラズマ照射を行う際に、銀の劣化を抑止することができる配線33を得ることが可能となる。
【0069】
(第5実施形態)
次に、本発明のパターン形成方法の第5実施形態について説明する。本実施形態に係るパターン形成方法は、上述した配線パターン用のインクを基板上に配置し、その基板上に配線パターンを形成するものであり、表面処理工程、材料配置工程、中間乾燥工程及び熱処理/光処理工程から概略構成される。
以下、各工程毎に詳細に説明する。
【0070】
(表面処理工程)
表面処理工程は、基板Pの表面を撥液化する撥液化処理工程と、撥液化された基板Pの表面を配線パターン形成領域に応じて親液化する親液化処理工程とに大別される。
撥液化処理工程では、配線を形成する基板Pの表面を配線パターン用インクに対して撥液性に加工する。具体的には、導電性微粒子を含有した配線パターン用インクに対する所定の接触角と、後に詳説する親液部(被機能液配置領域)H1における接触角との差が好ましくは50°以上となるように基板Pの表面に対して表面処理を施す。
基板Pの表面を撥液化する方法としては、例えば、基板Pの表面に自己組織化膜を形成する方法、プラズマ処理法等を採用できる。
【0071】
自己組織膜形成法では、配線パターンを形成すべき基板Pの表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成する。
基板Pの表面を処理するための有機分子膜は、基板Pに結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基板Pに結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0072】
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0073】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、FASを用いることにより、基板Pとの密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0074】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF)(CF)x(CH)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板P(ガラス、シリコン)の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板Pと結合する。一方、Rは表面に(CF)等のフルオロ基を有するため、基板Pの下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0075】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板Pとを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板P上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板P上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板Pを浸積し、洗浄、乾燥することで基板P上に自己組織化膜が形成される。
なお、自己組織化膜を形成する前に、基板Pの表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、基板Pの表面の前処理を施すことが望ましい。
【0076】
一方、プラズマ処理法では、常圧又は真空中で基板Pに対してプラズマ照射を行う。プラズマ処理に用いるガス種は、配線パターンを形成すべき基板Pの表面材質等を考慮して種々選択できる。処理ガスとしては、例えば、4フッ化メタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカン等を例示できる。
なお、基板Pの表面を撥液性に加工する処理は、所望の撥液性を有するフィルム、例えば4フッ化エチレン加工されたポリイミドフィルム等を基板Pの表面に貼着することによっても行ってもよい。また、撥液性の高いポリイミドフィルムをそのまま基板Pとして用いてもよい。
このように、自己組織膜形成法やプラズマ処理法を実施することにより、図9(a)に示されるように、基板Pの表面に撥液性膜Fが形成される。
【0077】
次に、配線パターン用インクを塗布して配線パターンを形成すべき領域の撥液性を緩和して親液性を付与することで(親液化処理)、親液部H1を形成する。
以下、親液化処理について説明する。
親液化処理としては、波長170〜400nmの紫外光を照射する方法が挙げられる。このとき、配線パターンに応じたマスクを用いて紫外光を照射することで、一旦形成した撥液性膜Fの中、配線パターン形成領域部分のみ部分的に変質させて撥液性を緩和して親液化することができる。つまり、上記撥液化処理及び親液化処理を施すことにより、図9(b)に示されるように、基板Pには、配線パターンが形成されるべき位置に親液性を付与された親液部H1と、親液部H1を囲む撥液性膜Fで構成される撥液部(撥液領域)H2とが形成される。
なお、撥液性の緩和の程度は紫外光の照射時間で調整できるが、紫外光の強度、波長、熱処理(加熱)との組み合わせ等によって調整することもできる。
【0078】
親液化処理の他の方法としては、酸素を反応ガスとするプラズマ処理が挙げられる。具体的には、基板Pに対しプラズマ放電電極からプラズマ状態の酸素を照射することで行う。Oプラズマ処理の条件としては、例えばプラズマパワーが50〜1000W、酸素ガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基板Pの板搬送速度が0.5〜10mm/sec、基板温度が70〜90℃とされる。
また、例えば基板Pの搬送速度を遅くしてプラズマ処理時間を長くする等、プラズマ処理条件を調整することによって、導電性微粒子を含有した配線パターン用インクに対する親液部H1の接触角を好ましくは10°以下に設定する。
さらに、別の親液化処理としては、基板をオゾン雰囲気に曝す処理も採用できる。
【0079】
(材料配置工程)
次に、上述の液滴吐出装置IJを用いて、配線パターン用インク(機能液)を親液部H1上に吐出して配置させる。なお、ここでは、導電性微粒子としてクロムを用いた配線パターン用インクX1を吐出する。なお、液滴吐出の条件としては、例えば、インク重量4ng/dot、インク速度(吐出速度)5〜7m/secで行うことできる。また、液滴を吐出する雰囲気は、温度60℃以下、湿度80%以下に設定されていることが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルが目詰まりすることなく安定した液滴吐出を行うことができる。
【0080】
この材料配置工程では、図9(c)に示すように、液滴吐出ヘッド1から配線パターン用インクX1を液滴にして吐出し、その液滴を親液部H1上に配置させる。
このとき、撥液部H2は撥液性が付与されているため、吐出された配線パターン用インクX1の一部が撥液部H2にのっても撥液部H2からはじかれ、図10(a)に示されるように、撥液部H2間の親液部H1に溜まるようになる。さらに、親液部H1は親液性を付与されているため、吐出された配線パターン用インクX1が親液部H1にてより拡がり易くなり、これによって配線パターン用インクX1が、分断されることなく所定位置内でより均一に親液部H1を埋め込むようにすることができる。
【0081】
(中間乾燥工程)
親液部H1に所定量の配線パターン用インクX1を吐出した後、分散媒の除去のため、必要に応じて乾燥処理をする。そして、この乾燥処理によって配線パターン用インクX1は、自らの上に配置される他の種類の配線パターン用インクと混じり合わない程度に固化される。この乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行うこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では100W以上1000W以下の範囲で十分である。
そして、この中間乾燥工程によって、図10(b)に示すように、親液部H1上には、クロムを導電性微粒子として含む配線パターン用インクX1の層が形成される。
なお、配線パターン用インクX1の分散媒を除去しなくとも配線パターン用インクX1と他の種類の配線パターン用インクと混じり合わない場合には、中間乾燥工程を省略しても良い。
【0082】
なお、この中間乾燥工程においても、上記第1実施形態と同様、配線パターン用インクX1が多孔体とならないような乾燥条件で乾燥することが好ましい。
【0083】
そして、クロムを導電性微粒子として含む配線パターン用インクX1上に異なる導電性微粒子を含む配線パターン用インクを配置することによって親液部H1上に異なる種類の配線パターン用インクが積層されてなる配線パターンを形成する。なお、ここでは銀を導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX2を配線パターン用インクX1上に配置する。
【0084】
具体的には、上述の材料配置工程を配線パターン用インクX2を用いて再び行うことによって、図10(c)に示すように、配線パターン用インクX1上に配線パターン用インクX2を配置させる。
そして、上述の中間乾燥工程を再び行うことによって、配線パターン用インクX2の分散媒が除去され、図10(d)に示すように、親液部H1上に配線パターン用インクX1と配線パターン用インクX2とが積層されてなる配線パターン33が形成される。
なお、配線パターン用インクX2の分散媒を除去するための中間乾燥工程を省略して、後述する熱処理/光処理工程を行っても良い。
また、配線パターン用インクX2を配線パターン用インクX1上に配置させる前に、撥液部H2に再び撥液性を与える工程を行っても良い。これによって、配線パターン用インクX1を親液部H1に配置させた際に、撥液部H2に配線パターン用インクX1が接触することによって撥液部H2の撥液性が低下した場合であっても、配線パターン用インクX2を確実に親液部H1の配線パターン用インクX1上に配置させることが可能となる。
【0085】
(熱処理/光処理工程)
吐出工程後の乾燥膜は、微粒子間の電気的接触をよくするために、分散媒を完全に除去する必要がある。また、導電性微粒子の表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング材がコーティングされている場合には、このコーティング材も除去する必要がある。そのため、吐出工程後の基板Pには熱処理及び/又は光処理が施される。
【0086】
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
例えば、有機物からなるコーティング材を除去するためには、約300℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行うことが好ましい。
以上の工程によって、親液部H1にクロムと銀とが積層されてなる配線33が形成される。
なお、機能液に、導電性微粒子でなく、熱処理または光処理により導電性を発現する材料を含有させておき、本熱処理/光処置工程において配線パターン33に導電性を発現させても良い。
【0087】
以上説明したように、本実施形態では、親液部H1にクロムと銀とが積層されてなる配線が形成されるので、配線としての主な機能を担う銀をクロムによって確実に基板Pに密着させることが可能となる。
【0088】
なお、上記第1実施形態に示したバンクBと同様、配線パターン用インクX1,X2の一部が、例えば撥液部H2に触れた場合には、撥液部H2に微細な残渣が残る場合がある。このため、親液部H1上に配線33を形成した後に、撥液部H2の残渣を除去する工程を行うことが好ましい。具体的には、Oアッシング処理やUV照射処理によって、撥液部H2上の残渣を除去することができる。
【0089】
(第6実施形態)
第6実施形態として、上記第5実施形態とは異なる構成からなる配線33について、図11を参照して説明する。なお、本第6実施形態においては、上記第5実施形態と異なる部分について説明する。
【0090】
本第6実施形態では、上記第5実施形態において説明した材料配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行うことによって、図11に示すように、にチタンを導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX3と銀を導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX2を積層させる。なお、図示するように、親液部H1上には、基板Pから順に配線パターン用インクX3、配線パターン用インクX2、配線パターン用インクX3の順で積層されている。すなわち、配線パターン用インクX2は、配線パターン用インクX3に挟まれた状態で親液部H1上に配置されている。
そして、これらの配線パターン用インクX2,X3に上記第5実施形態において説明した熱処理/光処理工程を行うことによって、親液部H1上には、チタン、銀、チタンの順に積層されてなる配線33が形成される。
【0091】
チタンと銀の積層からなる配線は、銀単層と比較してエレクトロマイグレーションの発生が遅いという性質を有しているため、本実施形態のように、銀がチタンによって挟まれてなる配線33は、導電率が確保されると共にエレクトロマイグレーションの発生が遅くなる。従って、本実施形態によれば、エレクトロマイグレーションの発生を抑制した配線33を得ることが可能となる。
なお、エレクトロマイグレーションの発生を遅らせる材料としては、上述のチタンの他に、鉄、パラジウム及びプラチナ等を挙げることができる。
【0092】
(第7実施形態)
第7実施形態として、上記第5実施形態及び第6実施形態とは異なる構成からなる配線について、図12を参照して説明する。なお、本第7実施形態においては、上記第5実施形態と異なる部分について説明する。
【0093】
本第7実施形態では、上記第5実施形態において説明した材料配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行うことによって、図12に示すように、親液部H1上にクロムを導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX1と銀を導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX2を積層させる。なお、図示するように、親液部H1上には、配線パターン用インクX1、配線パターン用インクX2、配線パターン用インクX1の順で積層されている。すなわち、配線パターン用インクX2は、配線パターン用インクX1に挟まれた状態で親液部H1上に配置されている。
そして、これらの配線パターン用インクX1,X2に上記第5実施形態において説明した熱処理/光処理工程を行うことによって、親液部H1には、クロム、銀、クロムの順に積層されてなる配線33が形成される。
【0094】
このように構成された配線33は、銀と基板Pとの間に配置されるクロムの層によって、銀と基板Pとの密着性が向上されると共に、銀の上に配置されるクロムの層によって、銀の酸化及び損傷を防止することが可能となる。
従って、本実施形態によれば、密着性が向上すると共に、耐酸化性及び耐傷性を有した配線33を得ることが可能となる。
【0095】
(第8実施形態)
第8実施形態として、上記第5実施形態〜第7実施形態とは異なる構成からなる配線33について、図13を参照して説明する。なお、本第8実施形態においては、上記第5実施形態と異なる部分について説明する。
【0096】
本第8実施形態では、上記第5実施形態において説明した材料配置工程と中間乾燥工程を繰り返し行うことによって、図13に示すように、親液部H1上に、基板Pから順にマンガンを導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX4、銀を導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX2、ニッケルを導電性微粒子として用いた配線パターン用インクX5が順に積層されている。
そして、これらの配線パターン用インクX2,X4,X5に上記第5実施形態において説明した熱処理/光処理工程を行うことによって、親液部H1上には、マンガン、銀、ニッケルの順に積層されてなる配線33が形成される。
【0097】
このように構成された配線33は、銀と基板Pとの間に配置されるマンガンの層によって、銀と基板Pとの密着性が向上される。また、ニッケルは、基板Pと銀の密着性を向上する機能の他に、プラズマ照射による銀の劣化を抑止する機能を有している。このため、銀の上にニッケルが配置されることによって、配線33が形成された基板Pに対してプラズマ照射を行う際に、銀の劣化を抑止することができる配線33を得ることが可能となる。
【0098】
(第9実施形態)
第9実施形態として、本発明の電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。図14は、本発明に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図15は図14のH−H’線に沿う断面図である。図16は、液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図で、図17は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。
【0099】
図14及び図15において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されている。
【0100】
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
【0101】
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、C−TN法、VA方式、IPS方式等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
【0102】
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図16に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
【0103】
画素電極19はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図15に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
【0104】
図17はボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板Pには、上記実施形態のパターン形成方法によって形成された複数の異なる材料が積層されてなるゲート配線61が形成されている。なお、本実施形態では、ゲート配線61を形成する際に、後述するアモルファスシリコン層を形成するプロセスで約350℃まで加熱されるため、その温度に耐えられる材料として無機質のバンク材を用いている。また、本実施形態においては、クロム61aと銀61bとが積層されてなるゲート配線61を一例として図示する。
【0105】
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層63が積層されている。このゲート配線部分に対向する半導体層63の部分がチャネル領域とされている。半導体層63上には、オーミック接合を得るための例えばn型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積層されており、チャネル領域の中央部における半導体層63上には、チャネルを保護するためのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲート絶縁膜62、半導体層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジスト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニングされる。
【0106】
さらに、接合層64a、64b及びITOからなる画素電極19も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパターニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上にそれぞれバンク66…を形成し、これらバンク66…間に上述した液滴吐出装置IJを用いて、ソース線、ドレイン線を形成することができる。なお、これらのソース線及びドレイン線も本発明に係るパターンとして構成することが可能である。
【0107】
したがって、本実施形態では、ゲート線61、ソース線及びドレイン線を複数の異なる材料が積層されてなる配線として形成することができ、複数の機能性を有するゲート線61、ソース線及びドレイン線を得ることができる。
なお、この配線が上記第1実施形態において説明したクロムと銀との2層からなる場合には、ゲート線61、ソース線及びドレイン線の密着性が向上された液晶表示装置100を得ることができる。また、上記配線が第2実施形態において説明したチタン、銀、チタンの順で積層されてなる場合には、ゲート線61、ソース線及びドレイン線のエレクトロマイグレーションが抑制された液晶表示装置100を得ることができる。また、上記配線が第3実施形態において説明したクロム、銀、クロムの順で積層されてなる場合には、ゲート線61、ソース線及びドレイン線の密着性が向上されると共に耐酸化性及び耐傷性が向上された液晶表示装置100を得ることができる。また、上記配線が上記第4実施形態において説明したマンガン、銀、ニッケルの順で積層されてなる場合には、ゲート線61、ソース線及びドレイン線の密着性が向上されると共に銀のプラズマ処理による劣化が抑止された液晶表示装置100を得ることができる。
なお、本実施形態においては、図17に示すようにバンクB、B間にゲート線61を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図18に示すように、基板Pに親液部H1と撥液部H2を形成し、親液部H1上にゲート配線61を形成しても良い。
【0108】
(第10実施形態)
上記実施の形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、上記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して励起させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが再結合する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。
本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものであり、複数の機能性を有する配線を備える有機ELデバイスを得ることができる。
【0109】
図19は、上記液滴吐出装置IJにより一部の構成要素が製造された有機EL装置の側断面図である。図19を参照しながら、有機EL装置の概略構成を説明する。
図19において、有機EL装置301は、基板311、回路素子部321、画素電極331、バンク部341、発光素子351、陰極361(対向電極)、および封止基板371から構成された有機EL素子302に、フレキシブル基板(図示略)の配線および駆動IC(図示略)を接続したものである。回路素子部321は、アクティブ素子であるTFT30が基板311上に形成され、複数の画素電極331が回路素子部321上に整列して構成されたものである。そして、TFT30を構成するゲート配線61が、上述した実施形態の配線パターンの形成方法により形成されている。
【0110】
各画素電極331間にはバンク部341が格子状に形成されており、バンク部341により生じた凹部開口344に、発光素子351が形成されている。なお、発光素子351は、赤色の発光をなす素子と緑色の発光をなす素子と青色の発光をなす素子とからなっており、これによって有機EL装置301は、フルカラー表示を実現するものとなっている。陰極361は、バンク部341および発光素子351の上部全面に形成され、陰極361の上には封止用基板371が積層されている。
【0111】
有機EL素子を含む有機EL装置301の製造プロセスは、バンク部341を形成するバンク部形成工程と、発光素子351を適切に形成するためのプラズマ処理工程と、発光素子351を形成する発光素子形成工程と、陰極361を形成する対向電極形成工程と、封止用基板371を陰極361上に積層して封止する封止工程とを備えている。
【0112】
発光素子形成工程は、凹部開口344、すなわち画素電極331上に正孔注入層352および発光層353を形成することにより発光素子351を形成するもので、正孔注入層形成工程と発光層形成工程とを具備している。そして、正孔注入層形成工程は、正孔注入層352を形成するための液状体材料を各画素電極331上に吐出する第1吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて正孔注入層352を形成する第1乾燥工程とを有している。また、発光層形成工程は、発光層353を形成するための液状体材料を正孔注入層352の上に吐出する第2吐出工程と、吐出された液状体材料を乾燥させて発光層353を形成する第2乾燥工程とを有している。なお、発光層353は、前述したように赤、緑、青の3色に対応する材料によって3種類のものが形成されるようになっており、したがって上記の第2吐出工程は、3種類の材料をそれぞれに吐出するために3つの工程からなっている。
この発光素子形成工程において、正孔注入層形成工程における第1吐出工程と、発光層形成工程における第2吐出工程とで上記の液滴吐出装置IJを用いることができる。
【0113】
(第11実施形態)
上述した実施形態においては、本発明に係るパターン形成方法を使って、TFT(薄膜トランジスタ)のゲート配線を形成しているが、ソース電極、ドレイン電極、画素電極などの他の構成要素を製造することも可能である。以下、TFTを製造する方法について図20を参照しながら説明する。
【0114】
図20(a)に示すように、まず、洗浄したガラス基板510の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10の溝511aを設けるための第1層目のバンク511が、フォトリソグラフィ法に基づいて形成される。このバンク511としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料のほかポリシラザンなどの無機系の材料が好適に用いられる。
【0115】
この形成後のバンク511に撥液性を持たせるために、CFプラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、バンク511の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておいても良い。この場合には、CFプラズマ処理等を省略することができる。
【0116】
以上のようにして撥液化されたバンク511の、吐出インクに対する接触角としては、40°以上、またガラス面の接触角としては、10°以下を確保することが好ましい。すなわち、本発明者らが試験により確認した結果、例えば導電性微粒子(テトラデカン溶媒)に対する処理後の接触角は、バンク511の素材としてアクリル樹脂系を採用した場合には約54.0°(未処理の場合には10°以下)を確保することができる。なお、これら接触角は、プラズマパワー550Wのもと、4フッ化メタンガスを0.1L/minで供給する処理条件下で得たものである。
【0117】
上記第1層目のバンク形成工程に続くゲート走査電極形成工程では、バンク511で区画された描画領域である上記溝511a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することでゲート走査電極512を形成する。そして、ゲート走査電極512を形成するときに、本発明に係るパターンの形成方法が適用される。
【0118】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたゲート走査電極512は、バンク511に十分な撥液性が予め与えられているので、溝511aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0119】
以上の工程により、基板510上には、バンク511とゲート走査電極512からなる平坦な上面を備えた銀(Ag)からなる第1の導電層A1が形成される。
【0120】
また、溝511a内における良好な吐出結果を得るためには、図20(a)に示すように、この溝511aの形状として順テーパ(吐出元に向かって開く向きのテーパ形状)を採用するのが好ましい。これにより、吐出された液滴を十分に奥深くまで入り込ませることが可能となる。
【0121】
次に、図20(b)に示すように、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜513、活性層510、コンタクト層509の連続成膜を行う。ゲート絶縁膜513として窒化シリコン膜、活性層510としてアモルファスシリコン膜、コンタクト層509としてn型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。CVD法で形成する場合、300℃〜350℃の熱履歴が必要になるが、無機系の材料をバンクに使用することで、透明性、耐熱性に関する問題を回避することが可能である。
【0122】
上記半導体層形成工程に続く第2層目のバンク形成工程では、図20(c)に示すように、ゲート絶縁膜513の上面に、1画素ピッチの1/20〜1/10でかつ上記溝511aと交差する溝514aを設けるための2層目のバンク514を、フォトリソグラフィ法に基づいて形成する。このバンク514としては、形成後に光透過性と撥液性を備える必要があり、その素材としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、メラミン樹脂などの高分子材料のほかポリシラザンなどの無機系の材料が好適に用いられる。
【0123】
この形成後のバンク514に撥液性を持たせるためにCFプラズマ処理等(フッ素成分を有するガスを用いたプラズマ処理)を施す必要があるが、代わりに、バンク514の素材自体に予め撥液成分(フッ素基等)を充填しておくものとしても良い。この場合には、CFプラズマ処理等を省略することができる。
【0124】
以上のようにして撥液化されたバンク514の、吐出インクに対する接触角としては、40°以上を確保することが好ましい。
【0125】
上記第2層目のバンク形成工程に続くソース・ドレイン電極形成工程では、バンク514で区画された描画領域である上記溝514a内を満たすように、導電性材料を含む液滴をインクジェットで吐出することで、図20(d)に示すように、上記ゲート走査電極512に対して交差するソース電極515及びソース電極516が形成される。そして、ソース電極515及びドレイン電極516を形成するときに、本発明に係るパターンの形成方法が適用される。
【0126】
この時の導電性材料としては、Ag,Al,Au,Cu,パラジウム、Ni,W−si,導電性ポリマーなどが好適に採用可能である。このようにして形成されたソース電極515及びドレイン電極516は、バンク514に十分な撥液性が予め与えられているので、溝514aからはみ出ることなく微細な配線パターンを形成することが可能となっている。
【0127】
また、ソース電極515及びドレイン電極516を配置した溝514aを埋めるように絶縁材料517が配置される。以上の工程により、基板510上には、バンク514と絶縁材料517からなる平坦な上面520が形成される。
【0128】
そして、絶縁材料517にコンタクトホール519を形成するとともに、上面520上にパターニングされた画素電極(ITO)518を形成し、コンタクトホール519を介してドレイン電極516と画素電極518とを接続することで、TFTが形成される。
【0129】
(第12実施形態)
図21は、液晶表示装置の別の実施形態を示す図である。
図21に示す液晶表示装置(電気光学装置)901は、大別するとカラーの液晶パネル(電気光学パネル)902と、液晶パネル902に接続される回路基板903とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル902に付設されている。
【0130】
液晶パネル902は、シール材904によって接着された一対の基板905a及び基板905bを有し、これらの基板905bと基板905bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板905a及び基板905bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板905a及び基板905bの外側表面には偏光板906a及び偏光板906bが貼り付けられている。なお、図21においては、偏光板906bの図示を省略している。
【0131】
また、基板905aの内側表面には電極907aが形成され、基板905bの内側表面には電極907bが形成されている。これらの電極907a、907bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極907a、907bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成されている。基板905aは、基板905bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子908が形成されている。これらの端子908は、基板905a上に電極907aを形成するときに電極907aと同時に形成される。従って、これらの端子908は、例えばITOによって形成されている。これらの端子908には、電極907aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極907bに接続されるものが含まれる。
【0132】
回路基板903には、配線基板909上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子900が実装されている。なお、図示は省略しているが、半導体素子900が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。配線基板909は、例えばポリイミド等の可撓性を有するフィルム状のベース基板911の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン912を形成することによって製造されている。
【0133】
本実施形態では、液晶パネル902における電極907a、907b及び回路基板903における配線パターン912が上記デバイス製造方法によって形成されている。
本実施形態の液晶表示装置によれば、複数の機能を有する配線を備える液晶表示装置を得ることができる。
【0134】
なお、前述した例はパッシブ型の液晶パネルであるが、アクティブマトリクス型の液晶パネルとしてもよい。すなわち、一方の基板に薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、各TFTに対し画素電極を形成する。また、各TFTに電気的に接続する配線(ゲート配線、ソース配線)を上記のようにインクジェット技術を用いて形成することができる。一方、対向する基板には対向電極等が形成されている。このようなアクティブマトリクス型の液晶パネルにも本発明を適用することができる。
【0135】
(第13実施形態)
第13実施形態として、非接触型カード媒体の実施形態について説明する。図22に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。
【0136】
本実施形態では、上記アンテナ回路412が、上記実施形態に係るパターン形成方法によって形成された複数の材料が積層されてなるパターンによって構成されている。
したがって、複数の機能性を有するアンテナ回路412を備えた非接触型カード媒体を製造することができる。
なお、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
【0137】
(第14実施形態)
第7実施形態として、本発明の電子機器の具体例について説明する。
図23(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図23(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図23(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図23(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図23(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図23(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置を備えた液晶表示部を示している。
図23(a)〜(c)に示す電子機器は、上記実施形態の液晶表示装置を備えたものであるので、複数の機能性を有したパターンを備える電子機器を提供することが可能となる。
なお、本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
【0138】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】液滴吐出装置の概略斜視図である。
【図2】ピエゾ方式による液状体の吐出原理を説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態の配線パターン形成する手順を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態の配線パターン形成する手順を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態の配線パターン形成する手順を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態を説明するための図である。
【図7】本発明の第3実施形態を説明するための図である。
【図8】本発明の第4実施形態を説明するための図である。
【図9】本発明の第5実施形態の配線パターン形成する手順を示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態の配線パターン形成する手順を示す図である。
【図11】本発明の第6実施形態を説明するための図である。
【図12】本発明の第7実施形態を説明するための図である。
【図13】本発明の第8実施形態を説明するための図である。
【図14】液晶表示装置を対向基板の側から見た平面図である。
【図15】図14のH−H’線に沿う断面図である。
【図16】液晶表示装置の等価回路図である。
【図17】同、液晶表示装置の部分拡大断面図である。
【図18】図17に示した液晶表示装置の変形例を示す図である。
【図19】有機EL装置の部分拡大断面図である。
【図20】薄膜トランジスタを製造する工程を説明するための図である。
【図21】液晶表示装置の別形態を示す図である。
【図22】非接触型カード媒体の分解斜視図である。
【図23】本発明の電子機器の具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0140】
B……バンク、P……基板、X1〜X3……配線パターン用インク(機能液)、30……TFT(スイッチング素子)、33……配線パターン(パターン)、34……バンク間、H1……親液部(被機能液配置領域)、H2……撥液部(撥液領域)、100……液晶表示装置(電気光学装置)、400……非接触型カード媒体(電子機器)、600……携帯電話本体(電子機器)、700……情報処理装置(電子機器)、800……時計本体(電子機器)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液を基板上に配置させて配線パターンを形成する方法であって、
前記基板上に前記配線パターンの形成領域に応じたバンクを形成する工程と、
前記バンク間に、導電性微粒子を含む第1の機能液を配置する工程と、
前記バンク間に配置された前記第1の機能液を固化させる工程と、
固化された前記第1の機能液の上に、前記第1の機能液が含む前記導電性微粒子と異なる導電性微粒子を含む第2の機能液を配置する工程と、
を有し、
前記第1の機能液が固化された後に、前記バンクの表面に撥液性を与えることを特徴とする配線パターン形成方法。
【請求項2】
前記機能液を前記バンク間に配置させる前に、前記バンク間に露出した前記基板の表面に親液性を与える工程を有することを特徴とする請求項1に記載の配線パターン形成方法。
【請求項3】
機能液を基板上に配置させて配線パターンを形成する方法であって、
前記基板上の前記配線パターンの形成領域に応じた被機能液配置領域を親液化する親液化処理工程と、
前記被機能液配置領域を囲む領域を撥液化する撥液化処理工程と、
前記被機能液配置領域上に、導電性微粒子を含む第1の機能液を配置する工程と、
前記被機能液配置領域上に配置された前記第1の機能液を固化させる工程と、
固化された前記第1の機能液の上に、前記第1の機能液が含む前記導電性微粒子と異なる導電性微粒子を含む第2の機能液を配置する工程と、
を有し、
前記第1の機能液が固化された後に、前記被機能液配置領域を囲む領域に撥液性を与えることを特徴とする配線パターン形成方法。
【請求項4】
前記被機能液配置領域を囲む領域は、単分子膜が前記基板上に形成されることによって撥液化される領域であることを特徴とする請求項3に記載の配線パターン形成方法。
【請求項5】
前記単分子膜は、有機分子からなる自己組織化膜であることを特徴とする請求項4記載の配線パターン形成方法。
【請求項6】
前記被機能液配置領域を囲む領域は、フッ化重合膜が前記基板上に形成されることによって撥液化される領域であることを特徴とする請求項3に記載の配線パターン形成方法。
【請求項7】
前記第1の機能液または前記第2の機能液の少なくとも一方には、熱処理または光処理により導電性を発現する材料が含まれることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の配線パターン形成方法。
【請求項8】
基板上に形成された配線パターンを備えるデバイスの製造方法であって、
請求項1〜7いずれかに記載の配線パターン形成方法によって前記基板上に前記配線パターンを形成することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項9】
アンテナ回路を備える非接触型カード媒体の製造方法であって、
基板上に前記アンテナ回路の形成領域に応じたバンクを形成する工程と、
前記バンク間に、導電性微粒子を含む第1の機能液を配置する工程と、
前記バンク間に配置された前記第1の機能液を固化させる工程と、
固化された前記第1の機能液の上に、前記第1の機能液が含む前記導電性微粒子と異なる導電性微粒子を含む第2の機能液を配置する工程と、
を有し、
前記第1の機能液が固化された後に、前記バンクの表面に撥液性を与えることを特徴とする非接触型カード媒体の製造方法。
【請求項10】
アンテナ回路を備える非接触型カード媒体の製造方法であって、
基板上の前記アンテナ回路の形成領域に応じた被機能液配置領域を親液化する親液化処理工程と、
前記被機能液配置領域を囲む領域を撥液化する撥液化処理工程と、
前記被機能液配置領域上に、導電性微粒子を含む第1の機能液を配置する工程と、
前記被機能液配置領域上に配置された前記第1の機能液を固化させる工程と、
固化された前記第1の機能液の上に、前記第1の機能液が含む前記導電性微粒子と異なる導電性微粒子を含む第2の機能液を配置する工程と、
を有し、
前記第1の機能液が固化された後に、前記被機能液配置領域を囲む領域に撥液性を与えることを特徴とする非接触型カード媒体の製造方法。
【請求項11】
薄膜トランジスタを備える電気光学装置の製造方法であって、
基板上に前記薄膜トランジスタに接続される配線パターンの形成領域に応じたバンクを形成する工程と、
前記バンク間に、導電性微粒子を含む第1の機能液を配置する工程と、
前記バンク間に配置された前記第1の機能液を固化させる工程と、
固化された前記第1の機能液の上に、前記第1の機能液が含む前記導電性微粒子と異なる導電性微粒子を含む第2の機能液を配置する工程と、
を有し、
前記第1の機能液が固化された後に、前記バンクの表面に撥液性を与えることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
薄膜トランジスタを備える電気光学装置の製造方法であって、
基板上の前記薄膜トランジスタに接続される配線パターンの形成領域に応じた被機能液配置領域を親液化する親液化処理工程と、
前記被機能液配置領域を囲む領域を撥液化する撥液化処理工程と、
前記被機能液配置領域上に、導電性微粒子を含む第1の機能液を配置する工程と、
前記被機能液配置領域上に配置された前記第1の機能液を固化させる工程と、
固化された前記第1の機能液の上に、前記第1の機能液が含む前記導電性微粒子と異なる導電性微粒子を含む第2の機能液を配置する工程と、
を有し、
前記第1の機能液が固化された後に、前記被機能液配置領域を囲む領域に撥液性を与えることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
アクティブマトリクス基板の製造方法において、
基板上にゲート配線を形成する第1の工程と、
前記ゲート配線上にゲート絶縁膜を形成する第2の工程と、
前記ゲート絶縁膜を介して半導体層を積層する第3の工程と、
前記ゲート絶縁層の上にソース電極及びドレイン電極を形成する第4の工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に絶縁材料を配置する第5の工程と、
前記絶縁材料を配置した上に画素電極を形成する第6の工程と、を有し、
前記第1の工程、前記第4の工程及び前記第6の工程の少なくとも1つの工程では、請求項1〜7いずれかに記載の配線パターン形成方法を用いることを特徴とするアクティブマトリクス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−313916(P2006−313916A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135553(P2006−135553)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【分割の表示】特願2004−118838(P2004−118838)の分割
【原出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】