説明

金属薄膜及び金属配線パターンの形成方法、並びに表示パネルの製造方法

【課題】低抵抗の金属薄膜の形成方法と金属配線パターンの形成方法、並びに表示パネルの製造方法を提供すること。
【解決手段】スパッタリング方法を用いてガラス基板の上に低抵抗の金属薄膜を形成する場合、不活性ガスと共に含酸素ガスを一定量供給することにより、低抵抗金属薄膜とガラス基板との接着性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属薄膜及び金属配線パターンの形成方法、並びに表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル(liquid crystal display panel)の場合、単位画素をなす画素電極と共通電極との電界を変化させてこれらの間に設けられている液晶の透光率を制御することにより、画像を表示している。
液晶表示パネルは複数の微細な金属配線パターンを備え、これらの微細な金属配線パターンを介して外部の諧調電圧を単位画素領域に印加して画素電極と共通電極との電界を変化させる。
【0003】
従来、微細な金属配線パターンを形成するために、ガラス基板の上にAl膜を形成し、これをパターニングしてAl金属配線を形成していた。ところが、Al金属配線の場合、配線抵抗が高いという欠点があった。このような欠点を解消するために、Alに代えて、配線抵抗の低いCuまたはAgを金属配線のための物質として用いるための研究が盛んになされている。特に、Agの場合、配線物質のうち比抵抗が最も低いことから、配線抵抗の低い金属配線を形成することができる。
しかしながら、Agの場合、下部ガラス基板との接着性が悪く、ガラス基板から分離し易いという不都合があり、さらに、パターニングのための後続ドライエッチングに際して露出されたAgが損傷を受けることになり、Agを用いた配線の製作が不可能であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、接着性があり、低抵抗の金属薄膜及び金属配線パターンの形成方法、並びに表示パネルの製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明1によれば、反応空間内に設けられ、Agを含有するターゲットに対応する領域に基板を配設する段階と、前記反応空間に不活性ガスと含酸素ガスを供給する段階と、前記ターゲットと前記基板との間にプラズマを形成して、前記基板の上に含Ag導電性膜を形成する段階と、を含むことを特徴とする金属薄膜の形成方法が提供される。
含Ag導電性膜をガラス基板に形成する工程中に、含酸素ガスを供給することにより、含Ag導電性膜とガラス基板との接着性を高めることができる。
【0006】
発明2は、発明1において、前記反応空間への前記不活性ガスの供給量に対して、0.1〜20%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好ましい。スパッタリング工程時に供給される不活性ガスと含酸素ガスとの混合の割合を調節することにより、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
発明3は、発明1において、前記反応空間への前記不活性ガスの供給量に対して、5〜15%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好適である。前述と同様に、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
【0007】
発明4は、発明1において、前記反応空間への前記不活性ガスの供給量に対して、6〜8%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好適である。前述と同様に、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
発明5は、発明1において、前記Agを含有するターゲットとして、Ag内に0.1〜2.0wt%のMoが含まれている合金を用いることが好ましい。
【0008】
Ag原子よりはMo原子の方が、酸素原子(O)との反応速度が早い。このため、ほとんどのMo原子は酸化されるのに対し、Ag原子はその一部のみが酸化される。これにより、ガラス基板の上に形成される含Ag導電性膜11は、Agの電気的な特性を最大限に得ながらも、含Ag導電性膜11の形成時における金属間化合物の発生を抑えることができる。よって、Mo原子を含むのが好ましい。
【0009】
発明6は、発明1において、前記不活性ガスとして、ArまたはN2ガスを用いることが好ましい。
発明7は、発明1において、前記含Ag導電性膜の上に導電性の保護膜を形成する段階をさらに含むことが好ましい。含Ag導電性膜の上に導電性の保護膜を形成することにより、含Ag導電性膜の損傷を防ぐことができる。
【0010】
発明8は、発明7において、前記導電性の保護膜として、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いることが好適である。導電性の保護膜としてインジウム亜鉛酸化物(以下、IZO)を用いることにより、含Ag導電性膜と導電性の保護膜を単一のエッチング工程によりパターニングすることができ、しかも、ウェットエッチング工程を適用することができる。
【0011】
また、本発明9によれば、透光性のガラス基板を設ける段階と、前記透光性のガラス基板の上に含Ag導電性膜を形成する段階と、前記含Ag導電性膜をパターニングする段階と、を含み、不活性ガスと含酸素ガスを供給して前記含Ag導電性膜を形成することを特徴とする金属配線パターンの形成方法が提供される。
含Ag導電性膜をガラス基板に形成する工程中に、含酸素ガスを供給することにより、含Ag導電性膜とガラス基板との接着性を高めることができる。
【0012】
発明10は、発明9において、前記含Ag導電性膜を形成する段階は、前記透光性のガラス基板の上部領域にAg合金を含む原料物質が設けられ、前記不活性ガスと前記含酸素ガスを供給する段階と、前記Ag合金を含む原料物質と前記透光性のガラス基板との間の領域にプラズマを形成する段階と、を含むことが好ましい。
発明11は、発明9において、前記含Ag導電性膜は、Mo及び酸素を含有することが好ましい。Ag原子よりはMo原子の方が、酸素原子(O)との反応速度が早い。このため、ほとんどのMo原子は酸化されるのに対し、Ag原子はその一部のみが酸化される。これにより、ガラス基板の上に形成される含Ag導電性膜11は、Agの電気的な特性を最大限に得ながらも、含Ag導電性膜11の形成時における金属間化合物の発生を抑えることができる。よって、Mo原子を含むのが好ましい。
【0013】
発明12は、発明9において前記不活性ガスの供給量に対して、0.1〜20%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好ましい。前述と同様に、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
発明13は、発明9において前記不活性ガスの供給量に対して、5〜15%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好ましい。前述と同様に、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
【0014】
発明14は、発明9において前記不活性ガスの供給量に対して、6〜8%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好ましい。前述と同様に、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
発明15は、発明9において、前記含Ag導電性膜を形成する段階後に、前記含Ag導電性膜の上に導電性の保護膜を形成する段階をさらに含むことが好ましい。含Ag導電性膜の上に導電性の保護膜を形成することにより、含Ag導電性膜の損傷を防ぐことができる。
【0015】
発明16は、発明15において前記導電性の保護膜として、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いることが好適である。導電性の保護膜としてインジウム亜鉛酸化物(以下、IZO)を用いることにより、含Ag導電性膜と導電性の保護膜を単一のエッチング工程によりパターニングすることができ、しかも、ウェットエッチング工程を適用することができる。
【0016】
さらに、本発明17によれば、透光性のガラス基板の上に第1の含Ag導電性膜を形成する段階と、前記第1の含Ag導電性膜をパターニングしてゲート電極、ゲート配線、維持電極配線及びゲートパッドを形成する段階と、全体の構造上にゲート絶縁膜を形成する段階と、前記ゲート電極の上部領域に活性層を形成する段階と、前記活性層上に設けられて前記ゲート電極とその一部が重なり合うソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極と接続されているソース配線及びソースパッドを形成する段階と、を含み、不活性ガスと含酸素ガスを供給して前記第1の含Ag導電性膜を形成することを特徴とする表示パネルの製造方法が提供される。
【0017】
含Ag導電性膜をガラス基板に形成する工程中に、含酸素ガスを供給することにより、含Ag導電性膜とガラス基板との接着性を高めることができる。
発明18は、発明17において、前記不活性ガスの供給量に対して、0.1〜20%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好ましい。前述と同様に、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
【0018】
発明19は、発明17において、前記不活性ガスの供給量に対して、5〜15%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好ましい。前述と同様に、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
発明20は、発明17において、前記不活性ガスの供給量に対して、6〜8%の供給量で前記含酸素ガスを供給することが好ましい。前述と同様に、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
【0019】
発明21は、発明17において、前記第1の含Ag導電性膜を形成する段階後に、前記第1の含Ag導電性膜の上に第1の導電性の保護膜を形成する段階をさらに含むことが好ましい。含Ag導電性膜の上に導電性の保護膜を形成することにより、含Ag導電性膜の損傷を防ぐことができる。
発明22は、発明21において、前記導電性の保護膜として、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いることが好適である。導電性の保護膜としてインジウム亜鉛酸化物(以下、IZO)を用いることにより、含Ag導電性膜と導電性の保護膜を単一のエッチング工程によりパターニングすることができ、しかも、ウェットエッチング工程を適用することができる。
【0020】
発明23は、発明17において、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ソース配線及び前記ソースパッドを形成する段階は、前記活性層が形成されている全体の構造上に第2の含Ag導電性膜を形成する段階と、前記第2の含Ag導電性膜をパターニングする段階と、を含み、不活性ガスと含酸素ガスを供給して前記第2の含Ag導電性膜を形成することが好ましい。
【0021】
発明24は、発明23において、前記第2の含Ag導電性膜を形成する段階後に、前記第2の含Ag導電性膜の上に第2の導電性の保護膜を形成する段階をさらに含むことが好適である。
発明25は、発明17において、前記ソース電極、ドレイン電極、ソース配線及びソースパッドを形成する段階後に、全体の構造上に絶縁膜を形成する段階と、前記絶縁膜をパターニングして、前記ドレイン電極の一部を開放するドレインコンタクトホールと、前記ゲートパッドの一部を開放するゲートパッドコンタクトホールと、前記ソースパッドの一部を開放するソースパッドコンタクトホールを形成する段階と、前記コンタクトホールが形成されている全体の構造上に透光性の絶縁膜を形成する段階と、前記透光性の絶縁膜をパターニングして、前記ドレインコンタクトホールを介して前記ドレイン電極と接続する画素電極と、前記ゲートパッドコンタクトホールを介して前記ゲートパッドと接続するゲートコンタクトパッドと、前記ソースパッドコンタクトホールを介して前記ソースパッドと接続するソースコンタクトパッドを形成する段階と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接着性があり、低抵抗の金属薄膜及び金属配線パターンの形成方法、並びに表示パネルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
しかし、本発明は後述する実施の形態に限定されるものではなく、相異なる形で実現可能であり、これらの実施の形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、且つ、この技術分野における通常の知識を持った者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0024】
図中、種々の層及び各領域を明示するために膜厚を拡大して示している。また、図中の同じ符号は同じ構成要素を示すものとする。なお、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の上部にまたはその上にあると表現される場合には、各部が他の部分の直ぐ上部または真上にある場合のみならず、各部と他の部分との間にさらに他の部分が介在される場合も含まれるものとする。
【0025】
図1から図3は、本発明の一実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図であり、図4は、同実施の形態による金属配線パターンの形成のための装置の断面概念図であり、そして図5は、スパッタリング工程後に基板の上に形成された含Ag導電性膜のSEM(scanning electron microscope)写真である。
図1を参照すると、透光性の絶縁基板の上に含Ag導電性膜11を形成する。透光性の絶縁基板としては、同実施の形態においては、ガラス基板10を用いている。このため、 以下においては、ガラス基板10を中心として説明を進める。
【0026】
上記の含Ag導電性膜11を種々の蒸着方法を用いてガラス基板10の上に形成することができるが、同実施の形態においては、スパッタリング工程を用いて含Ag導電性膜11、例えば、AgとMoとの合金膜を基板の上に形成している。なお、スパッタリング工程に際して、一定量の含酸素ガスを加えることで、含Ag導電性膜11とガラス基板10との接着性を高めている。
【0027】
スパッタリング工程は、図4に示すように、反応空間を持つチャンバ31と、ターゲット層20と基板10に電源を印加する電源供給手段(図示せず)と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段32と、含酸素ガス(O2)を供給する含酸素ガス供給手段33と、を備える装備を用いて行われる。
ターゲット層20としては、AgとMoとの合金を用いる。この合金としては、Ag内に0.1〜2.0wt%のMoが含まれている合金を用いることが好ましい。Moが0.1wt%より小さい場合には、Ag含有導電性膜が硝子基板との十分な接着力を持つことができないため、硝子基板から容易く分離する問題が生じ、Moが2.0wt%より大きい場合には、Ag含有導電性膜の抵抗の大きくなる問題が生じてしまう。よって、この範囲内で調整するのが好ましい。
【0028】
不活性ガスとしては、Arを用いることが好ましい。このとき、Arに代えて、N2などの種々の非反応性のガスを用いても良いのは言うまでもない。上記の含酸素ガスとしては、O2、O3、NO、CO及びCO2などの金属原子を酸化可能なあらゆるガスが用いられる。同実施の形態においては、含酸素ガスとしてO2を用いることが好ましい。前記含酸素ガス(O2)は、前記不活性ガス(Ar)に対して0.1〜20%の範囲内でチャンバ31の内部に供給されることが好ましい。これは、チャンバ31の内部への不活性ガスの供給量を100としたとき、チャンバ31の内部への含酸素ガスの供給量が0.1〜20であることを意味する。すなわち、チャンバ31の内部への不活性ガスと含酸素ガスとの割合(分圧比;O2/Ar)が0.1〜20%であることが好ましく、より好ましくは、5〜15%であり、さらに好ましくは、6〜8%である。酸素ガスの混合量が0.1%より小さい場合には、Ag含有導電性膜と硝子基板との結合力が落ちて、金属間化合物発生が増大される問題が生じ、20%より多い場合には、Ag含有導電性膜が酸化される問題が生じる。そして、実験によれば、酸素ガスの混合量の最適範囲は6〜8%となる。したがって、上記範囲において、Ag含有導電性膜と硝子基板の間の接着力が最大になり、またAg含有導電性膜の抵抗を低くすることができる。
【0029】
このようなO2/Arの分圧比は、スパッタリング工程条件(例えば、工程温度、印加電源、工程圧力など)によって種々に変更可能である。本実施例でのスパッタリング条件としては、50ないし200℃の温度と、0.1ないし1パスカルの圧力と、0.1ないし20KVの電圧を印加して行った。
同実施の形態においては、上述の範囲の含酸素ガスをチャンバ31の内部に供給して含Ag導電性膜11を形成するので、含Ag導電性膜11とガラス基板10との接着力を高めることができ、しかも、スパッタリング工程時にAgとMoが反応して金属間化合物(intermetallic compound)ができることを低減することが可能である。
【0030】
以下、図4に示すスパッタリング装置を用いたスパッタリング工程を説明する。
先ず、チャンバ31の内部の反応空間に、ガラス基板10とターゲット層20を互いに対応するようにして搬入する。チャンバ31の内部の反応空間に不活性ガスと含酸素ガスを供給し、ガラス基板10とターゲット層20の少なくとも一方に電源を印加する。例えば、ガラス基板10には負の電源を印加し、ターゲット層には正の電源を印加すると、両方の間にプラズマが発生する。前記プラズマにより活性化されたイオンがターゲット層20の表面に突き当たってターゲット層20のAg及びMo原子を分離する。ターゲット層20から分離されたAg及びMo原子がガラス基板10の上に吸着されて、含Ag導電性膜11が形成される。
【0031】
このとき、同実施の形態においては、不活性ガスに対する含酸素ガスの分圧比(O2/Ag)が0.1〜20%の範囲になるように含酸素ガスをチャンバ31内の反応空間に供給する。すなわち、不活性ガスを150sccm供給する場合、0.15〜30sccmの含酸素ガスを供給する。前記不活性ガスは、100〜300sccmの範囲内で供給されることが好ましい。このように前記分圧比の範囲の含酸素ガスをチャンバ31の内部に供給することにより、基板10に形成される含Ag導電性膜11とガラス基板10との結着力を高めることができ、しかも、スパッタリング工程時に金属間化合物が生じることを防ぐことができる。
【0032】
図5(a)は本発明の分圧比の範囲内で含酸素ガスを供給して得られた含Ag導電性膜のSEM写真であり、図5(b)は本発明の分圧比の範囲よりも少量の含酸素ガスを供給して得られた含Ag導電性膜のSEM写真であり、図5(c)は前記分圧比の範囲よりも多量の含酸素ガスを供給して得られた含Ag導電性膜のSEM写真である。
図5の(a)の写真より、前記分圧比の範囲内で含酸素ガスを供給して得られた含Ag導電性膜の場合、結晶質を形成していることが分かる。すなわち、ターゲット層20から分離されたAg原子が反応空間の酸素原子(O)と反応してAgOxとなり、Mo原子も酸素原子(O)と反応してMoOxとなる。このAgOxとMoOxがガラス基板10の上に吸着されて、含Ag導電性膜(AgOx+MoOx)11が形成される。
【0033】
このとき、AgOxとMoOxは高い活性化エネルギーを持つために容易に反応せず、金属間化合物の発生を防ぐことができる。また、基板10の上に形成される含Ag導電性膜11は、結晶質状の膜質に蒸着されて低抵抗を持つと共に、基板10との接着力が高くなる。また、Ag原子よりはMo原子の方が、酸素原子(O)との反応速度が早い。このため、ほとんどのMo原子は酸化されるのに対し、Ag原子はその一部のみが酸化される。これにより、ガラス基板の上に形成される含Ag導電性膜11は、Agの電気的な特性を最大限に得ながらも、含Ag導電性膜11の形成時における金属間化合物の発生を抑えることができる。
【0034】
ところが、不活性ガスに対する含酸素ガスの分圧比が0.1%よりも低い場合には、含Ag導電性膜11とガラス基板10との結合力が低下し、且つ、スパッタリング工程時に金属間化合物の発生が増大するという問題がある。また、図5の(b)の写真より、前記分圧比の範囲よりも少量の含酸素ガスを供給して得られた含Ag導電性膜の場合、結晶状態が完全ではなく、部分的に非晶質が形成されていることが分かる。
【0035】
すなわち、ターゲット層20から分離されたAg原子とMo原子が酸素原子(O)と円滑に反応できず、Ag及びMo原子の状態でチャンバ31の反応空間を通ることになる。次いで、Ag原子とMo原子が基板10の上に吸着されて、含Ag導電性膜(Ag+Mo)11が形成される。このとき、Ag原子は低い活性化エネルギーを持つため、チャンバ31の反応空間内においてMoと反応し易く、金属間化合物を生じさせるという問題がある。さらに、基板の上に形成されている含Ag導電性膜11は、部分的に非晶質の膜質に蒸着されて高抵抗を持つと共に、基板10との接着力が低下するという不都合がある。
【0036】
また、不活性ガスに対する含酸素ガスの分圧比が20%よりも大きい場合には、含Ag導電性膜11とガラス基板10との結合力は高くなり、これにより、金属間化合物の発生を防ぐことができる。しかしながら、図5の(c)の写真から明らかなように、含Ag導電性膜11内の酸化斑点(部分的にその一部が酸化されている状態)ができてしまう。そして、基板10の上に形成されている含Ag導電性膜11の表面粗さが大きくなり、抵抗が高くなるという問題もある。
【0037】
以上より、上記の分圧比にて不活性ガスと含酸素ガスをスパッタリング装備に供給することにより、ガラス基板10との接着力が高くなり、低抵抗の含Ag導電性膜11が形成される。この後、前記不活性ガスと含酸素ガスの供給を中止し、さらに電源の供給を中止した後、前記チャンバ31内の含Ag導電性膜11が形成されているガラス基板10をチャンバ31の外部に取り出して、スパッタリング工程を終了する。
【0038】
図2及び図3を参照すると、含Ag導電性膜11の上に感光膜マスクパターン12を形成する。前記感光膜マスクパターン12をエッチングマスクとしてエッチング工程を行い、含Ag導電性膜11をパターニングして、低抵抗の金属配線パターン13を形成する。この後、前記感光膜マスクパターン12を除去する。
この方法により、低抵抗の金属配線パターン13を透光性の絶縁基板の上に形成することができる。これにより、上述の低抵抗の金属配線パターンの形成方法を種々のフラット表示パネルに適用することができる。
【0039】
以下、上述の実施の形態による低抵抗の金属配線パターンの形成方法を用いて液晶表示パネルを作製する方法について説明する。
図6から図9は、本発明の一実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための平面図及びA−A、B−B、C−Cにおける断面図であり、図10及び図11は、金属配線パターンと基板との接着性を説明するための基板の顕微鏡写真であり、図10は不活性ガスと含酸素ガスとの分圧比が0.1〜20%における金属配線パターンと基板との接着性の説明図であり、図10は本発明の分圧比よりも低い場合における金属配線パターンと基板との接着性の説明図である。
【0040】
図6を参照すると、ガラス基板100の上に含Ag導電性膜を形成する。含Ag導電性膜をパターニングしてゲート電極120、ゲート配線110、維持電極配線130及びゲートパッド140を形成する。このとき、ゲート電極120、ゲート配線110、維持電極配線130及びゲートパッド140は低抵抗の特性を持つ。
前記含Ag導電性膜は、上述のスパッタリング工程を経てガラス基板100の上に形成される。前記スパッタリング工程に際し、不活性ガスと含酸素ガスとの分圧比が0.1〜20%になるように不活性ガスと含酸素ガスを供給する。これにより、ガラス基板100と含Ag導電性膜との結合力を高めることができる。
【0041】
基板100の上に形成されている含Ag導電性膜の上部に感光膜を塗布する。この後、第1のマスクを用いてフォトリソグラフィ工程を行い、ゲート電極120、ゲート配線110、維持電極配線130及びゲートパッド140領域を除く含Ag導電性膜の領域を露出させる第1の感光膜マスクパターンを形成する。前記第1の感光膜マスクパターンをエッチングマスクとしてエッチング工程を行うことにより、露出された含Ag導電性膜を除去し、ゲート電極120、ゲート配線110、維持電極配線130及びゲートパッド140を形成する。前記エッチング工程後に、第1の感光膜マスクパターンを除去する。ゲート配線110は、図6に示すように、水平方向に延設し、且つ、その一部が突出してゲート電極120を形成する。そして、維持電極配線130は、ゲート配線110と平行に延設する延設部と、画素領域の周縁に突出する突出部と、を備える。
【0042】
図7を参照すると、ゲート電極120及びゲート配線110が形成されている基板100の全面にゲート絶縁膜150を形成し、前記ゲート電極120の上側に活性層160及びオーミック接触層170を形成する。
基板の全面にPECVD法、スパッタリング法などを用いて蒸着を行うことにより、ゲート絶縁膜150を形成する。このとき、ゲート絶縁膜150としては、酸化シリコンまたは窒化シリコンを含む無機絶縁物質を用いることが好ましい。ゲート絶縁膜150の上に、上述の蒸着方法により活性層160とオーミック接触層170を形成する。活性層160としては、非晶質シリコン層を用いることが好ましい。オーミック接触層170としては、ドーパントが高濃度にドープされた非晶質シリコン層を用いることが好ましい。
【0043】
前記オーミック接触層170の上に感光膜を塗布する。第2のマスクを用いてフォトリソグラフィ工程を行うことにより、活性領域を除くオーミック接触層170を露出させる第2の感光膜マスクパターンを形成する。上記の第2の感光膜マスクパターンをエッチングマスクとしてエッチング工程を行うことにより、露出された領域のオーミック接触層170と活性層160を除去し、活性領域を形成する。前記エッチング工程後、第2の感光膜マスクパターンを除去する。活性領域は、ゲート電極120の上部に島状にパターニングされることが好ましい。
【0044】
このとき、ゲート電極120、ゲート配線110、維持電極配線130及びゲートパッド140に用いられる含Ag導電性膜の成膜に際し、不活性ガスと含酸素ガスとの分圧比を0.1〜20%にすることが好ましい。これにより、図10の基板の顕微鏡写真に示すように、活性領域を形成後に、ゲート配線及び維持電極配線(写真中の明るい部分)が所望のパターンに形成され、ガラス基板にしっかりと接着されていることが分かる。これに対し、上記の範囲よりも低い場合には、図11の基板顕微鏡写真に示すように、ゲート配線及び維持電極配線と基板との接着が悪く、ガラス基板の上に形成されているパターンが浮くような領域ができてしまう(図11におけるL領域参照)。L領域では、パターンが剥がれてしまっている。
【0045】
図8を参照すると、活性領域がパターニングされた基板100の上に含Ag導電性膜を形成する。含Ag導電性膜をパターニングして、ソース電極180、ドレイン電極190、ソース配線200及びソースパッド210を形成する。このとき、ソース電極180、ドレイン電極190、ソース配線200及びソースパッド210は、低抵抗の特性を持つ。
【0046】
上記の含Ag導電性膜は、上述のスパッタリング工程を経て活性領域がパターニングされたガラス基板100の上に形成される。
含Ag導電性膜の上に感光膜を塗布する。第3のマスクを用いてフォトリソグラフィ工程を行うことにより、ソース電極180、ドレイン電極190、ソース配線200及びソースパッド210の領域を除く含Ag導電性膜の領域を露出させる第3の感光膜マスクパターンを形成する。前記第3の感光膜マスクパターンをエッチングマスクとしてエッチング工程を行うことにより、露出されている含Ag導電性膜を除去し、ソース電極180、ドレイン電極190、ソース配線200及びソースパッド210を形成する。この後、前記ソース電極180とドレイン電極190との間の領域に露出されているオーミック接触層170を除去する。前記エッチング工程後、第3の感光膜マスクパターンを除去する。これにより、ゲート電極120、ソース電極180及びドレイン電極190を含む薄膜トランジスターを形成する。ソース配線200は、ゲート配線110と垂直な方向に延設し、且つ、その一部がゲート電極120の上部領域に延設してソース電極180を形成する。ドレイン電極190は、ゲート電極120の上部と重なり合い、画素領域に一部が延設する。ここで、直交する複数のソース配線200とゲート配線110により、方形状の画素領域が限定される。
【0047】
図9を参照すると、薄膜トランジスターが形成されているガラス基板100の上に絶縁膜220を形成する。絶縁膜220の一部をパターニングして、ドレイン電極190の一部を露出させるドレインコンタクトホールと、ゲートパッド140を露出させるゲートパッドコンタクトホールと、ソースパッド210を露出させるソースパッドコンタクトホールを形成する。
【0048】
前記絶縁膜220としては、有機質または無機質の物質を用いる。前記絶縁膜220の上に感光膜を塗布した後、第4のマスクを用いてフォトリソグラフィ工程を行うことにより、第4の感光膜マスクパターンを形成する。この後、前記第4の感光膜マスクパターンをエッチングマスクとしてエッチング工程を行うことにより、ドレインコンタクトホール、ゲートパッドコンタクトホール及びソースパッドコンタクトホールを形成する。上記のコンタクトホールの形成後、第4の感光膜マスクパターンを除去する。もちろん、前記絶縁膜220に感光性の有機質物質を用いる場合、感光膜を塗布することなく、前記第4のマスクを用いたフォトリソグラフィ工程により絶縁膜220の一部を除去し、上記のドレインコンタクトホール、ゲートパッドコンタクトホール及びソースパッドコンタクトホールを形成することも可能である。
【0049】
コンタクトホールが形成されている全体の構造上に透明な導電性膜を塗布した後、これを第5のマスクを用いてパターニングを行い、ドレインコンタクトホールを介してドレイン電極190と接続される画素電極230と、ゲートパッドコンタクトホールを介してゲートパッド140と接続されるゲートコンタクトパッド240と、ソースパッドコンタクトホールを介してソースパッド210と接続されるソースコンタクトパッド250を形成する。画素電極230は画素領域内に形成され、その周縁の一部は維持電極配線130と重なり合う。上記の透明な導電性膜としては、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)やインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)を用いることが好ましい。
【0050】
図示略であるが、前記ゲートパッド140と、ゲート配線110との間の領域及び/またはソースパッド210とソース配線200との間の領域に設けられる静電ダイオード用の配線として、上述の含Ag導電性膜を用いても良い。また、以上では、ゲート配線及びソース配線として、両方とも含Ag導電性膜を用いている。しかし、これに限定されるものではなく、つまりゲート配線及びソース配線の両方を含Ag導電性膜で形成する必要はなく、いずれか1の配線は、Al、Nd、Ag、Cr、Ti、Ta及びMoよりなる群から選ばれるいずれか1種の金属、またはこれらを含む合金により製作しても良い。
【0051】
上述のように薄膜トランジスター及び画素電極230が形成されているガラス基板100の上に、ブラックマトリックス、カラーフィルター、オーバーコート膜及び共通電極が形成されている透光性の絶縁基板(図示せず)を位置合わせする。この後、前記両基板を封着し、両基板の間に液晶層(図示せず)を形成して液晶表示パネルを製作する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の方法により液晶表示パネルを製作可能であるのは言うまでもない。すなわち、以上では、薄膜トランジスター及び画素電極が形成されているガラス基板を5枚のマスクを用いて製作しているが、これに限定されるものではなく、4枚または3枚のマスクを用いて薄膜トランジスター及び画素電極が形成されているガラス基板を製作し、製造工程を簡略化しても良い。なお、液晶滴下法を用いて液晶表示パネルを製作しても良い。そして、画素領域を複数のドメインに分割して視野角を向上するために、前記画素電極には所定の切り込みパターンがさらに形成されてもよく、共通電極には突出パターンがさらに形成されても良い。さらに、前記単位画素領域を2つのサブ画素に分離し、これらを別々の薄膜トランジスターにより駆動しても良い。
【0052】
また、本発明は、上述の含Ag導電性膜よりなる金属配線パターンの上部に保護膜を形成することにより、後続する工程時に生じうる金属配線パターンの損傷を防ぐことができる。以下では、添付図面に基づき、本発明の他の実施の形態による金属配線パターンの形成方法について説明する。なお、後述する説明のうち、上述の実施の形態と重複する説明は省略する。
【0053】
図12から図15は、本発明の他の実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図である。
図12を参照すると、透光性の絶縁基板としてのガラス基板40の上に含Ag導電性膜41をスパッタリング方法により形成する。
前記スパッタリング工程に際し、不活性ガスと含酸素ガスを一緒に供給することにより、ガラス基板40の上に形成される含Ag導電性膜41とガラス基板40との接着性を高めることができる。このとき、不活性ガスとしてArを用い、且つ、スパッタリング工程時に供給されるArガスと含酸素ガスとの分圧比は、0.1〜20%であることが好ましい。これにより、上述のごとく、含Ag導電性膜41とガラス基板40との接着力を高めることができ、スパッタリング工程時にAg原子とMo原子が反応して金属間化合物が生じることを防ぐことができる。
【0054】
図13を参照すると、前記含Ag導電性膜41の上に導電性の保護膜42を形成する。
このとき、前記保護膜42としては、IZOを用いることが好ましい。これにより、IZOを導電性の保護膜42として用い、一回のエッチング工程により含Ag導電性膜41と導電性の保護膜42をパターニングすることができる。
含Ag膜の場合、その上部に金属性の導電性膜を形成すると、2つの膜をエッチングするエッチング液やエッチングガスが異なり、一回のエッチングにより2つの膜(金属性の導電性膜と含Ag膜)を除去することが困難になるという問題があった。
【0055】
ところが、同実施の形態においては、弱酸にもエッチングされ易いIZO膜を導電性の保護膜42として用いることから、含Ag導電性膜41のエッチングのための1回のエッチング工程により、含Ag導電性膜と保護膜を同時に除去することができる。伝導性保護膜としては、IZO以外にITO、または多様な伝導性膜を多層または単一層にすることができる。しかし、ワンステップ(単一エッチング)で伝導性保護膜とAg含有導電性膜を除去するためには、伝導性保護膜でIZOを使うことが望ましい。
【0056】
また、ドライエッチングだけではなく、ウェットエッチングによっても含Ag導電性膜41と導電性の保護膜42をエッチングすることができる。通常、金属性膜をウェットエッチングする場合、感光膜マスクパターンの下部のパターニング済み膜の側面がエッチング液により削られるような現象が起こる。これは、エッチング液に露出される金属性膜の側面領域において酸化反応が起こり、金属イオンが電子から分離される現象である。この現象により、金属配線パターンの幅が一様にパターニングされず、酷い場合には、一部の領域においては配線の断線が起こるなど、金属配線パターンが正常にエッチングできないという問題が生じていた。
【0057】
しかしながら、同実施の形態による含Ag導電性膜41と、IZOを用いた導電性の保護膜42を積層する場合には、AgとIZOとの電位差によりエッチストップが起こり、ウェットエッチングによっても良好な金属配線パターンを形成することが可能になる。すなわち、感光膜の下部のパターニング済みIZO膜から電子が供給されて、含Ag導電性膜の側面領域において金属イオンが分離されるような現象を防ぐことができる。
【0058】
図14及び図15を参照すると、導電性の保護膜42の上に感光膜を塗布し、マスクを用いたフォトリソグラフィ工程により感光膜マスクパターン43を形成する。前記感光膜マスクパターン43をエッチングマスクとしてエッチング工程を行うことにより、導電性の保護膜42と含Ag導電性膜41を除去し、低抵抗の金属配線パターン44を形成する。エッチング工程後、前記感光膜マスクパターンを除去する。
【0059】
このとき、前記エッチング工程としては、上述のごとく、ドライエッチング及びウェットエッチングの両方が適用可能である。ウェットエッチングを行う場合、Ag合金をエッチングするエッチング液のみを用いて導電性の保護膜42と含Ag導電性膜41を一緒に除去することができる。
こうして製造された低抵抗の金属配線パターン44の導電性の保護膜42は、後続するエッチング工程により金属配線パターン44を外部に露出させるとき、含Ag導電性膜41の損傷を防ぐことができる。このため、導電性の保護膜42は、100〜1000Åの膜厚に形成することが好ましく、さらに好ましくは、200〜500Åの膜厚である。導電性の保護膜42を100Åよりも薄く形成する場合には、後続するエッチング工程に際して、バリア膜としての機能を十分に果たせなくなる。これにより、含Ag導電性膜41が損傷を受けることになる。これに対し、導電性の保護膜42を1000Åよりも厚く形成する場合には、金属配線パターン44の膜厚が増大する問題があり、これは、金属配線パターン44の抵抗の増大につながる。
【0060】
上述の含Ag導電性膜とその上部に導電性の保護膜が形成されている低抵抗の金属配線パターンを透光性の絶縁基板の上に形成することができる。透光性の絶縁基板を用いる種々のフラット表示パネルに、上述の低抵抗の金属配線パターンを用いることができる。
以下、上述の実施の形態による低抵抗の金属配線パターンの形成方法を用いて液晶表示パネルを作製する方法を説明する。
【0061】
図16から図20は、本発明の他の実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための断面図であり、図21は、同実施の形態による液晶表示パネルのパッド領域に光を照射して観察した顕微鏡写真である。特に、図21(a)は導電性の保護膜が設けられない場合における液晶表示パネルのパッド領域の写真であり、図21(b)は導電性の保護膜が設けられた場合における液晶表示パネルのパッド領域の写真である。
【0062】
図16を参照すると、ガラス基板300の上に含Ag導電性膜321、331、341と導電性の保護膜322、332、342を形成する。含Ag導電性膜321、331、341と導電性の保護膜322、332、342をパターニングして、ゲート電極320、 ゲート配線(図示せず)、維持電極配線330及びゲートパッド340を形成する。
含Ag導電性膜321、331、341は、スパッタリング工程により形成される。含Ag導電性膜321、331、341とガラス基板300との結合力を高めるために、前記スパッタリング工程に際し、不活性ガスと含酸素ガスとの分圧比を0.1〜20%にする。
【0063】
含Ag導電性膜321、331、341の上に導電性の保護膜322、332、342を100〜1000Åの膜厚に形成する。このとき、導電性の保護膜322、332、342としてはIZOを用い、含Ag導電性膜321、331、341と導電性の保護膜322、332、342を1回のドライまたはウェットエッチング工程により除去することが好ましい。すなわち、導電性の保護膜322、332、342の上に感光膜を塗布し、第1のマスクを用いてフォトリソグラフィ工程を行うことにより、第1の感光膜マスクパターンを形成する。前記第1の感光膜マスクパターンをエッチングマスクとして導電性の保護膜322、332、342と含Ag導電性膜321、331、341をエッチングすることにより、ゲート電極320、ゲート配線、維持電極配線330及びゲートパッド340を形成する。前記エッチング工程としては、ドライエッチング法を用いても、ウェットエッチング法を用いても良い。
【0064】
前記ウェットエッチングに際しては、含Ag導電性膜321、331、341のエッチングに用いられたエッチング液により導電性の保護膜322、332、342も一緒にエッチングすることができ、1回のエッチング工程によりゲート電極320、ゲート配線、維持電極配線330及びゲートパッド340を形成することができる。そして、現在、液晶表示パネルの生産ラインにおけるウェットエッチング装備を用いてウェットエッチングを行うことができるので、ドライエッチングのための高価な装備の導入が不要になり、その結果、生産コストを削減可能である。
【0065】
図17を参照すると、ゲート電極320及びゲート配線が形成されている基板300の全面にゲート絶縁膜350を形成し、前記ゲート電極320の上部に活性層360及びオーミック接触層370を形成する。これにより、ゲート電極320の上部に活性層360とオーミック接触層370を含む島状の活性領域が形成される。
図18を参照すると、活性領域がパターニングされている基板300の上に含Ag導電性膜381、391、401、411と導電性の保護膜382、392、402、412を順次に形成する。前記含Ag導電性膜381、391、401、411と導電性の保護膜382、392、402、412をパターニングして、ソース電極380、ドレイン電極390、ソース配線400及びソースパッド410を形成する。前記ソース電極380とドレイン電極390との間に露出されているオーミック接触層370を除去する。これにより、ゲート電極320、ソース電極380及びドレイン電極390を含む薄膜トランジスターが形成される。
【0066】
図19を参照すると、薄膜トランジスターが形成されているガラス基板300の上に絶縁膜420を形成する。絶縁膜420の一部をパターニングして、ドレイン電極390の一部を露出させるドレインコンタクトホール421と、ゲートパッド340を露出させるゲートパッドコンタクトホール422と、ソースパッド410を露出させるソースパッドコンタクトホール423を形成する。
【0067】
すなわち、前記絶縁膜420の上に感光膜を塗布し、マスクを用いてフォトリソグラフィ工程を行うことにより、感光膜マスクパターンを形成する。前記感光膜マスクパターンをエッチングマスクとしてエッチング工程を行い、ドレイン電極390、ゲートパッド340及びソースパッド410の一部をそれぞれ露出させるドレインコンタクトホール421、ゲートパッドコンタクトホール422、ソースパッドコンタクトホール423を形成する。
【0068】
このとき、前記ゲートパッド340とソースパッド410は、含Ag導電性膜341、411と、その上部に形成されている導電性の保護膜342、412を備える。このとき、導電性の保護膜342、412は、コンタクトホールの形成のためのエッチング工程時の含Ag導電性膜341、411の損傷を防ぐ。これにより、コンタクトホールの形成工程後、含Ag導電性膜341、411が下部構造物(例えば、基板)から分離するような現象を防ぐことができる。
【0069】
ところが、導電性の保護膜342、412がない場合には、コンタクトホールの形成時に含Ag導電性膜341、411が損傷を受け、含Ag導電性膜341、411が下部構造物から分離されるという問題がある。すなわち、図21の(a)の写真から明らかなように、導電性の保護膜342、412がない場合には、コンタクトホールの形成後に、前記ガラス基板300の下部から上部に向けて光を照射すると、パッド領域の部分が明るく現れる(図21の(a)におけるP1参照)。これは、パッド領域の含Ag導電性膜341、411が下部構造物から脱落していることを意味する。ところが、図21の(b)の写真から明らかなように、導電性の保護膜342、412がある場合には、コンタクトホールの形成後に、前記ガラス基板300の下部から上部に向けて光を照射すると、パッド領域が暗く現れる(図21の(b)におけるP2参照)。これは、パッド領域に含Ag導電性膜341、411が残留していることを意味する。このように導電性の保護膜342、412を含Ag導電性膜341、411の上に形成することにより、コンタクトホールの形成のためのエッチング工程時に、その下部の含Ag導電性膜341、411が損傷されることを防ぐことができる。
【0070】
図20を参照すると、コンタクトホールが形成されている全体の構造上に透明な導電性膜を塗布した後、これをパターニングして、ドレインコンタクトホール421を介してドレイン電極390と接続される画素電極430と、ゲートパッドコンタクトホール422を介してゲートパッド340と接続されるゲートコンタクトパッド440と、ソースパッドコンタクトホール423を介してソースパッド410と接続されるソースコンタクトパッド450を形成する。
【0071】
これにより、薄膜トランジスターと画素電極が形成されている下部基板を製作する。この後、図示しないブラックマトリックス、カラーフィルター、オーバーコート膜及び共通電極が形成されている透光性の絶縁基板を合着し、これらの間に液晶層を介在して液晶表示パネルを製作する。
以上の通り、本発明によれば、含Ag導電性膜をガラス基板に形成する工程中に、含酸素ガスを供給することにより、含Ag導電性膜とガラス基板との接着性を高めることができる。
【0072】
また、スパッタリング工程時に供給される不活性ガスと含酸素ガスとの混合の割合を調節することにより、Ag原子とMo原子が反応して金属間化合物が形成される現象を防ぐことができる。
さらに、含Ag導電性膜の上に導電性の保護膜を形成することにより、含Ag導電性膜の損傷を防ぐことができる。
【0073】
さらにまた、導電性の保護膜としてインジウム亜鉛酸化物(以下、IZO)を用いることにより、含Ag導電性膜と導電性の保護膜を単一のエッチング工程によりパターニングすることができ、しかも、ウェットエッチング工程を適用することができる。
以上、低抵抗の金属配線パターンを持つ液晶表示パネルについて説明したが、低抵抗の金属配線パターンの形成方法はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、PDP(Plasma Display Panel)、有機EL(electroluminescence)などの種々のフラット表示パネルに適用可能である。
【0074】
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、この技術分野における通常の知識を持った者にとって、特許請求の範囲の技術的な思想から逸脱しない限り、本発明を種々に変形及び修正することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
液晶表示装置、PDP、有機ELなどの各種表示装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図。
【図2】本発明の一実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図。
【図3】本発明の一実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図。
【図4】同実施の形態による金属配線パターンの形成のための装置の断面概念図。
【図5】(a)〜(c)は、スパッタリング工程後に基板上に形成される含Ag導電性膜のSEM写真。
【図6】本発明の一実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための図。
【図7】本発明の一実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための図。
【図8】本発明の一実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための図。
【図9】本発明の一実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための図。
【図10】金属配線パターンと基板との接着性を説明するための基板の顕微鏡写真。
【図11】金属配線パターンと基板との接着性を説明するための基板の顕微鏡写真。
【図12】本発明の他の実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図。
【図13】本発明の他の実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図。
【図14】本発明の他の実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図。
【図15】本発明の他の実施の形態による金属配線パターンの形成方法を説明するための断面図。
【図16】本発明の他の実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための断面図。
【図17】本発明の他の実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための断面図。
【図18】本発明の他の実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための断面図。
【図19】本発明の他の実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための断面図。
【図20】本発明の他の実施の形態による液晶表示パネルの作製方法を説明するための断面図。
【図21】(a)及び(b)は、同実施の形態による液晶表示パネルのパッド領域に光を照射して観察した顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0077】
10、40、100、300:ガラス基板
11、41:含Ag導電性膜
110:ゲート配線
120、320:ゲート電極
130、330:維持電極配線
140、340:ゲートパッド
180、380:ソース電極
190、390:ドレイン電極
200、400:ソース配線
210、410:ソースパッド
230、430:画素電極
240、440:ゲートコンタクトパッド
250、450:ソースコンタクトパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応空間内に設けられ、Agを含有するターゲットに対応する領域に基板を配設する段階と、
前記反応空間に不活性ガスと含酸素ガスを供給する段階と、
前記ターゲットと前記基板との間にプラズマを形成して、前記基板の上に含Ag導電性膜を形成する段階と、を含むことを特徴とする金属薄膜の形成方法。
【請求項2】
前記反応空間への前記不活性ガスの供給量に対して、0.1〜20%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記反応空間への前記不活性ガスの供給量に対して、5〜15%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記反応空間への前記不活性ガスの供給量に対して、6〜8%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項5】
前記Agを含有するターゲットとして、Ag内に0.1〜2.0wt%のMoが含まれている合金を用いることを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項6】
前記不活性ガスとして、ArまたはN2ガスを用いることを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項7】
前記含Ag導電性膜の上に導電性の保護膜を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項8】
前記導電性の保護膜として、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いることを特徴とする請求項7に記載の金属薄膜の形成方法。
【請求項9】
透光性のガラス基板を設ける段階と、
前記透光性のガラス基板の上に含Ag導電性膜を形成する段階と、
前記含Ag導電性膜をパターニングする段階と、を含み、
不活性ガスと含酸素ガスを供給して前記含Ag導電性膜を形成することを特徴とする金属配線パターンの形成方法。
【請求項10】
前記含Ag導電性膜を形成する段階は、
前記透光性のガラス基板の上部領域にAg合金を含む原料物質が設けられ、前記不活性ガスと前記含酸素ガスを供給する段階と、
前記Ag合金を含む原料物質と前記透光性のガラス基板との間の領域にプラズマを形成する段階と、を含むことを特徴とする請求項9に記載の金属配線パターンの形成方法。
【請求項11】
前記含Ag導電性膜は、Mo及び酸素を含有することを特徴とする請求項9に記載の金属配線パターンの形成方法。
【請求項12】
前記不活性ガスの供給量に対して、0.1〜20%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項9に記載の金属配線パターンの形成方法。
【請求項13】
前記不活性ガスの供給量に対して、5〜15%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項9に記載の金属配線パターンの形成方法。
【請求項14】
前記不活性ガスの供給量に対して、6〜8%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項9に記載の金属配線パターンの形成方法。
【請求項15】
前記含Ag導電性膜を形成する段階後に、
前記含Ag導電性膜の上に導電性の保護膜を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の金属配線パターンの形成方法。
【請求項16】
前記導電性の保護膜として、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いることを特徴とする請求項15に記載の金属配線パターンの形成方法。
【請求項17】
透光性のガラス基板の上に第1の含Ag導電性膜を形成する段階と、
前記第1の含Ag導電性膜をパターニングしてゲート電極、ゲート配線、維持電極配線及びゲートパッドを形成する段階と、
全体の構造上にゲート絶縁膜を形成する段階と、
前記ゲート電極の上部領域に活性層を形成する段階と、
前記活性層上に設けられて前記ゲート電極とその一部が重なり合うソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極と接続されているソース配線及びソースパッドを形成する段階と、を含み、
不活性ガスと含酸素ガスを供給して前記第1の含Ag導電性膜を形成することを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項18】
前記不活性ガスの供給量に対して、0.1〜20%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項17に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項19】
前記不活性ガスの供給量に対して、5〜15%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項17に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項20】
前記不活性ガスの供給量に対して、6〜8%の供給量で前記含酸素ガスを供給することを特徴とする請求項17に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項21】
前記第1の含Ag導電性膜を形成する段階後に、
前記第1の含Ag導電性膜の上に第1の導電性の保護膜を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項22】
前記導電性の保護膜として、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いることを特徴とする請求項21に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項23】
前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ソース配線及び前記ソースパッドを形成する段階は、
前記活性層が形成されている全体の構造上に第2の含Ag導電性膜を形成する段階と、
前記第2の含Ag導電性膜をパターニングする段階と、を含み、
不活性ガスと含酸素ガスを供給して前記第2の含Ag導電性膜を形成することを特徴とする請求項17に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項24】
前記第2の含Ag導電性膜を形成する段階後に、
前記第2の含Ag導電性膜の上に第2の導電性の保護膜を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項25】
前記ソース電極、ドレイン電極、ソース配線及びソースパッドを形成する段階後に、
全体の構造上に絶縁膜を形成する段階と、
前記絶縁膜をパターニングして、前記ドレイン電極の一部を開放するドレインコンタクトホールと、前記ゲートパッドの一部を開放するゲートパッドコンタクトホールと、前記ソースパッドの一部を開放するソースパッドコンタクトホールを形成する段階と、
前記コンタクトホールが形成されている全体の構造上に透光性の絶縁膜を形成する段階と、
前記透光性の絶縁膜をパターニングして、前記ドレインコンタクトホールを介して前記ドレイン電極と接続する画素電極と、前記ゲートパッドコンタクトホールを介して前記ゲートパッドと接続するゲートコンタクトパッドと、前記ソースパッドコンタクトホールを介して前記ソースパッドと接続するソースコンタクトパッドを形成する段階と、
を含むことを特徴とする請求項17に記載の表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−1973(P2008−1973A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304210(P2006−304210)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】