説明

電界効果トランジスタ及びその製造方法

【課題】高電圧を印加しても壊れにくい電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】電界効果トランジスタは、基板1、チャネル層3及びバリア層4と、バリア層4上にこの順で離間して設けられたソース電極6、ゲート電極7およびドレイン電極8とを備え、ソース電極6の直下に第1のn型不純物拡散領域12が設けられ、ドレイン電極8の直下に第2のn型不純物拡散領域13が設けられ、第2のn型不純物拡散領域の下側の前記チャネル層3および第2のn型不純物拡散領域の前記ゲート電極側の前記チャネル層3および前記バリア層4に第3のn型不純物拡散領域15が設けられる。第3のn型不純物拡散領域15は第2のn型不純物拡散領域13よりも低いn型不純物濃度を有し、ゲート電極とドレイン電極との間に電圧が印加されたときバリア層4およびチャネル層3においてその絶縁破壊強度を超える電界集中が生じることを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体を用いた高耐圧ヘテロ接合型電界効果トランジスタ(HFET)は、高い絶縁破壊電界強度、高い熱伝導率を有する高周波のパワースイッチング素子として広く研究されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図8にIII族窒化物半導体を用いた代表的なnチャネル型HFETの概略断面を示す。
図8のトランジスタでは、基板101上にチャネル層103が形成され、その上部にチャネル層103よりも大きなバンドギャップを持ったバリア層104が形成されている。互いに異なるバンドギャップを有するチャネル層103とバリア層104との界面にはヘテロ接合が形成されており、自発分極とピエゾ分極によりヘテロ接合界面の近傍には電子が高濃度で蓄積する二次元電子ガス117が存在している。二次元電子ガス117のシート電子濃度は、チャネル層103とバリア層104の材料により異なるが、例えば1×1013/cm2程度のシート電子濃度が発生する。
また、ソース電極106、ドレイン電極108およびゲート電極107がバリア層104上部に形成され、絶縁膜110がバリア層104を覆うよう形成されている。
また、電界集中を緩和するため、ゲート電極107はフィールドプレート構造となっている。
また、このトランジスタでは動作時の順方向電圧を下げるため及び良好なオーミックコンタクトが得られるようにするために、ソース電極106の直下のバリア層104およびチャネル層103に第1n+型拡散領域112が形成され、ドレイン電極108の直下のバリア層104及びチャネル層103に第2n+型拡散領域113が形成されている。
【0004】
なお、図8のようなトランジスタでは、ソース電極106とドレイン電極108との間の電流は、電子をキャリアとして主に二次元電子ガス117を流れ、ゲート電極107に印加する電圧を変化させることによりオン/オフを切換えることができる。具体的には、例えば、ソース電極106を接地しドレイン電極108に+の電圧を印加状態で、ソース電極106とゲート電極107との間に電圧を印加しない場合、ソース電極106の電子がバリア層104とチャネル層103との界面に形成された二次元電子ガス117を流れドレイン電極108へと流れることにより、トランジスタをオンとすることができる。また、例えばソース電極106を接地しドレイン電極108に+の電圧を印加状態で、ゲート電極107に−1V〜−30V程度の電圧を印加することにより、ゲート電極107の電子と二次元電子ガス117との相互作用によりゲート電極107下の二次元電子ガス117が空乏化する。その結果、ソース電極106からドレイン電極108へ流れる電子がゲート電極107下の二次元電子ガス117を流れることができなくなる。このことによりソース電極106とドレイン電極108との間の電流を低減または流れなくすることができ、トランジスタをオフとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−200248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図8に示すような構造の電界効果トランジスタにおいて、ソース電極およびゲート電極とドレイン電極との間に高電圧を印加すると、素子内部にかかる電界によりキャリアが増大し素子が壊れてしまう場合がある。このキャリアが増大する原因は、明らかではないが、原因の一つとして、高電圧を印加すると素子内部に絶縁破壊強度を超える電界強度がかかる部分が局所的に生じこの部分でなだれ降伏が起こるために生じると考えられている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高電圧を印加しても壊れにくい電界効果トランジスタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、「基板上にチャネル層およびバリア層がこの順で設けられ、前記バリア層上にソース電極、ゲート電極およびドレイン電極がこの順で離間して設けられ、前記ソース電極の直下の前記バリア層および前記チャネル層に第1のn型不純物拡散領域が設けられ、前記ドレイン電極の直下の前記バリア層および前記チャネル層に第2のn型不純物拡散領域が設けられ、第2のn型不純物拡散領域の下側の前記チャネル層および第2のn型不純物拡散領域の前記ゲート電極側の前記チャネル層および前記バリア層に第3のn型不純物拡散領域が設けられ、第1のn型不純物拡散領域および第3のn型不純物拡散領域は、前記ゲート電極が有する前記チャネル層に最も近い下面の直下の前記バリア層および前記チャネル層を除く部分に設けられ、第3のn型不純物拡散領域は、第2のn型不純物拡散領域よりも低いn型不純物濃度を有し、第3のn型不純物拡散領域は、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に電圧を印加したとき前記バリア層および前記チャネル層においてその絶縁破壊強度を超える電界集中が生じることを抑制することを特徴とする電界効果トランジスタ。」を提供する。
【発明の効果】
【0008】
従来の図8のようなヘテロ接合を有する電界効果トランジスタにおいて、高電圧を印加すると、特に二次元電子ガス117のシート電子濃度が小さい場合において、ドレイン電極のゲート電極側のチャネル層において絶縁破壊が生じやすい。この原因は次のように考えられる。まず、トランジスタがオフの状態、つまりゲート電極下でキャリアの空乏化が発生した状態で、ドレイン電極に印加された電圧によりゲート電極下部のキャリアの空乏化がドレイン電極側に広がり、この空乏化がドレイン電極の近傍まで達すると考えられる。このため、ゲート電極とドレイン電極との間のシートキャリア濃度が高い領域は、高濃度のn型不純物拡散領域を形成したドレイン電極のゲート電極側のバリア層及びチャネル層だけになると考えられる。この結果、ゲート電極とドレイン電極との間に印加された電圧は、ドレイン電極近傍のシートキャリア濃度が急激に上昇する領域に局所的に集中することで絶縁破壊が生じやすくなると考えられる。
【0009】
本発明の電界効果トランジスタによれば、従来の電界効果トランジスタにおいて絶縁破壊が生じやすい領域の周辺に、n型不純物を一定の濃度で含む第3のn型不純物拡散領域を設ける。具体的には、第2のn型不純物拡散領域に比べn型不純物濃度が低い第3のn型不純物拡散領域を第2のn型不純物拡散領域を囲むように設ける。このことにより、ゲート電極下のキャリアの空乏化がドレイン電極の近傍にまで広がるのを防止でき、第3のn型不純物拡散領域を設けた部分のシートキャリア濃度をほぼ一定とすることができる。この結果、ゲート電極とドレイン電極との間に印加された電圧は、第3のn型不純物拡散領域にほぼ均一にかかる。この結果、局所的に大きい電界強度がかかる部分が生じるのを抑制することができ、絶縁破壊を生じにくくすることができる。また、絶縁破壊が起こりやすい部分にかかる電界集中を緩和することができる。また、トランジスタの破壊電圧(耐圧)を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【図6】従来の電界効果トランジスタについてのシミュレーションの結果を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態の電界効果トランジスタについてのシミュレーションの結果を示す説明図である。
【図8】従来の電界効果トランジスタの構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.本発明の電界効果トランジスタについて
本発明の電界効果トランジスタは、基板上にチャネル層およびバリア層がこの順で設けられ、前記バリア層上にソース電極、ゲート電極およびドレイン電極がこの順で離間して設けられ、前記ソース電極の直下の前記バリア層および前記チャネル層に第1のn型不純物拡散領域が設けられ、前記ドレイン電極の直下の前記バリア層および前記チャネル層に第2のn型不純物拡散領域が設けられ、第2のn型不純物拡散領域の下側の前記チャネル層および第2のn型不純物拡散領域の前記ゲート電極側の前記チャネル層および前記バリア層に第3のn型不純物拡散領域が設けられ、第1のn型不純物拡散領域および第3のn型不純物拡散領域は、前記ゲート電極が有する前記チャネル層に最も近い下面の直下の前記バリア層および前記チャネル層を除く部分に設けられ、第3のn型不純物拡散領域は、第2のn型不純物拡散領域よりも低いn型不純物濃度を有し、第3のn型不純物拡散領域は、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に電圧を印加したとき前記バリア層および前記チャネル層においてその絶縁破壊強度を超える電界集中が生じることを抑制することを特徴とする。
【0012】
本発明において、電界効果トランジスタとは、ゲート電極に加えた電圧(電荷)によりゲート電極下の半導体層のキャリアを制御し、ソース電極とドレイン電極との間の電流を増減させるトランジスタをいう。また、本発明の電界効果トランジスタは、ヘテロ接合型電界効果トランジスタであってもよい。
本発明において、基板は上部にチャネル層などの半導体層を形成できる基板であれば特に限定されない。例えば、n型不純物をドープしたSi、Si、GaN、SiCまたはサファイアなどの基板である。
本発明において、チャネル層は、基板の上に設けられソース電極とドレイン電極との間の電流が流れうる層であれば特に限定されないが、例えば、III族窒化物半導体であり、さらに具体的には例えば、GaN、AlGaN、InGaNなどである。
【0013】
本発明において、バリア層は、チャネル層の上に設けられチャネル層との界面にヘテロ接合を構成しうる層であれば特に限定されない。また、バリア層はチャネル層よりも広いバンドギャップを有してもよい。バリア層としては、例えば、III族窒化物半導体であり、さらに具体的には、AlN、AlGaN、InGaNなどである。
本発明において、ソース電極、ゲート電極、ドレイン電極は、本発明の電界効果トランジスタを構成することができる電極であれば特に限定されない。
【0014】
本発明において、第1のn型不純物拡散領域は、ソース電極の直下のバリア層およびチャネル層にn型不純物を拡散させた領域であれば特に限定されない。
本発明において、n型不純物は、バリア層およびチャネル層に拡散させることによりバリア層およびチャネル層の導電率を高くすることができる不純物(ドナー)であれば特に限定されないが、例えば、バリア層およびチャネル層がIII族窒化物半導体からなる場合には、Siなどである。また、n型不純物濃度とは、n型不純物の濃度をいう。なお、n型純物濃度は、キャリアである電子の濃度とほぼ同じになると考えられる。
本発明において、第2のn型不純物拡散領域は、ドレイン電極の直下のバリア層およびチャネル層にn型不純物を拡散させた領域であれば特に限定されない。
【0015】
本発明において、第3のn型不純物拡散領域とは、バリア層およびチャネル層にn型不純物を拡散させた領域であり、第2のn型不純物拡散領域を囲むように設けられる。また、第3のn型不純物拡散領域は、第2のn型不純物拡散領域のゲート電極側の前記チャネル層と前記バリア層との界面の一部を含みかつ第2のn型不純物拡散領域よりも低いn型不純物濃度を有する。
【0016】
2.本発明の電界効果トランジスタの実施形態について
本発明の電界効果トランジスタにおいて、第3のn型不純物拡散領域は、前記ゲート電極が有する前記チャネル層に最も近い下面と前記ドレイン電極の下面との間隔を100としたとき、第2のn型不純物拡散領域の前記ゲート電極側の第3のn型不純物拡散領域が設けられた前記チャネル層と前記バリア層との界面が10以上80以下の幅を有するように設けられてもよい。
この構成により、トランジスタ特性を保持したまま、効率的に大きい電界強度がかかる部分が生じるのを抑制することができ、絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0017】
本発明のトランジスタにおいて、チャネル層およびバリア層は、III族窒化物半導体からなってもよい。III族窒化物半導体は高い絶縁破壊電界強度、高い熱伝導率を有する。このため、高い絶縁破壊電界強度、高い熱伝導率を有する高周波のパワースイッチング素子とすることができる。また、特に大電力・高周波用途に有用なトランジスタ(HFET)とすることができる。
【0018】
本発明のトランジスタにおいて、第1のn型不純物拡散領域および第2のn型不純物拡散領域は、1.0×1014cm-2〜1.0×1016cm-2のn型不純物濃度を有してもよい。このことにより、ソース電極またはドレイン電極と、チャネル層との間の電気抵抗を低減することができる。
【0019】
本発明のトランジスタにおいて、第3のn型不純物拡散領域は、第2のn型不純物拡散領域のn型不純物濃度が1.0×10xcm-2の場合、1.0×10x-4cm-2〜1.0×10x-0.5cm-2のn型不純物濃度を有してもよい。このことにより、第3のn型不純物拡散領域の導電率が高くなりすぎることを抑制することができ、第3のn型不純物拡散領域のゲート電極側のチャネル層などに局所的に電界密度が高くなることを抑制することができる。
【0020】
本発明のトランジスタにおいて、チャネル層は、上層チャネル層と下層チャネル層からなり、上層チャネル層は、バリア層および下層チャネル層のいずれよりも小さいバンドギャップを有してもよい。このことにより、ソース電極とドレイン電極間を流れる電流を上層チャネル層に集中して流すことができ、リーク電流を低減することができる。
【0021】
本発明のトランジスタにおいて、基板は、導電性基板であってもよい。また、導電性基板は、ソース電極と電気的に接続してもよい。このことにより、ソース電極とドレイン電極との間に電圧を印加した場合、基板とドレイン電極との間に縦方向の電界が生じドレイン電極の下部のチャネル層にかかる電界強度が大きくなる。その結果、ソース電極およびゲート電極とドレイン電極との間の電界を緩和することができる。これらより、絶縁破壊が生じやすいドレイン電極のゲート電極側のチャネル層にかかる電界強度を緩和することができ、絶縁破壊を抑制することができる。
【0022】
本発明のトランジスタにおいて、バリア層またはチャネル層は、リセス構造を有し、ゲート電極は、リセス構造の凹部上に設けられてもよい。この構成により、本発明のトランジスタは、良好なピンチオフ特性を得ることができる。また、チャネル層をリセス構造とすることにより、ノーマリーオフ型のトランジスタとすることができる。
【0023】
本発明のトランジスタにおいて、ゲート電極とバリア層またはチャネル層との間に絶縁体層をさらに備えてもよい。この構成により、良好なゲート絶縁特性を得ることができる。
【0024】
本発明のトランジスタにおいて、絶縁体層は、誘電率の異なる複数の層を備えてもよい。この構成により、良好なゲート絶縁特性を得ることができる。
【0025】
本発明の電界効果トランジスタの製造方法は、基板上にチャネル層およびバリア層をこの順で形成する工程と、前記チャネル層および前記バリア層に第1のn型不純物拡散領域および第3のn型不純物拡散領域を離間して形成する工程と、第3のn型不純物拡散領域の一部でありかつ、下側および前記第1のn型不純物拡散領域側に第3のn型不純物拡散領域がある部分に第2のn型不純物拡散領域を形成する工程と、第1のn型不純物拡散領域の直上にソース電極を形成する工程と、第2のn型不純物拡散領域の直上にドレイン電極を形成する工程と第1のn型不純物拡散領域と第3のn型不純物拡散領域との間の、第1のn型不純物拡散領域および第3のn型不純物拡散領域のいずれも形成されていない前記チャネル層および前記バリア層の直上にゲート電極を形成する工程とを備え、第3のn型不純物拡散領域は、第2のn型不純物拡散領域よりも低いn型不純物濃度を有するように形成されることを特徴とする。
【0026】
3.本発明の電界効果トランジスタの各実施形態について
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
図1〜5は、それぞれ本発明の一実施形態の電界効果トランジスタの構造を示す概略断面図である。
【0027】
3−1.電界効果トランジスタ
図1に例示したように本実施形態の電界効果トランジスタ20は、基板1上にチャネル層3およびバリア層4がこの順で設けられ、バリア層4上にソース電極6、ゲート電極7およびドレイン電極8がこの順で離間して設けられ、ソース電極6の直下のバリア層4およびチャネル層3に第1のn型不純物拡散領域12が設けられ、ドレイン電極8の直下のバリア層4およびチャネル層3に第2のn型不純物拡散領域13が設けられ、第2のn型不純物拡散領域13の下側のチャネル層3および第2のn型不純物拡散領域13のゲート電極7側のチャネル層3およびバリア層4に第3のn型不純物拡散領域15が設けられ、第1のn型不純物拡散領域12および第3のn型不純物拡散領域15は、ゲート電極7が有するチャネル層3に最も近い下面の直下のバリア層4およびチャネル層3を除く部分に設けられ、第3のn型不純物拡散領域15は、第2のn型不純物拡散領域13よりも低いn型不純物濃度を有し、第3のn型不純物拡散領域15は、ゲート電極7とドレイン電極8との間に電圧を印加したときバリア層4およびチャネル層3においてその絶縁破壊強度を超える電界集中が生じることを抑制することを特徴とする。
【0028】
また、本実施形態の電界効果トランジスタ20は、バリア層4の上に絶縁膜10を有してもよい。
また、本実施形態の電界効果トランジスタ20は、図5に示したようにゲート電極7とバリア層4またはチャネル層3との間に絶縁体層25を有してもよい。
また、本実施形態の電界効果トランジスタ20は、ヘテロ接合型電界効果トランジスタであってもよい。
【0029】
3−2.基板
基板1は上部にチャネル層3などの半導体層を形成できる基板であれば特に限定されない。また、基板1は導電性基板であってもよく、高抵抗基板であってもよい。例えば、n型不純物をドープしたSi(n+‐Si基板)、Si、GaN、SiCまたはサファイアなどの基板である。
基板1は、導電性基板であってもよい。また、基板1とソース電極6を電気的に接続してもよい。このことにより、基板1とドレイン電極8との間に電圧が印加され、ゲート電極7とドレイン電極8との間にかかる電界を緩和することができる。その結果、絶縁破壊の発生を抑制することができる。また、ソース電極6および基板1を接地することもできる。また、基板1とソース電極6を電気的に接続することにより、電界効果トランジスタ20をパッケージングする場合、デバイスを小型化することができる。
【0030】
3−3.チャネル層
チャネル層3は、基板1の上に設けられ、ソース電極6とドレイン電極8との間の電流が流れうるものであれば特に限定されない。また、キャリアは、電子であってもよい。また、チャネル層3は、III族窒化物半導体、例えば、GaN、AlxGa1-xN、InxGa1-xNなどからなってもよい。なお例えばxは0より大きく0.5以下でもよい。また、例えばxは、0.001以上0.1以下であってもよい。III族窒化物半導体は、絶縁破壊強度が高く熱伝導率が高いため、高周波のパワースイッチング素子とすることができる。
【0031】
チャネル層3の厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜10μmであり、さらに好ましくは2μm〜5μmである。
【0032】
チャネル層3は、バリア層4よりも小さいバンドギャップを有してもよい。このことにより、チャネル層3とバリア層4との界面に二次元電子ガス17を形成することができる。また、ソース電極6とドレイン電極8との間の電流が、主に二次元電子ガス17を流れることができる。また、この二次元電子ガス17をゲート電極に印加する電圧で制御することによりトランジスタのオンオフを切換えることができる。
【0033】
また、チャネル層3は、図2のように上層チャネル層22と下層チャネル層23からなってもよく、上層チャネル層22は、バリア層4および下層チャネル層23のいずれよりも小さいバンドギャップを有してもよい。このことにより、キャリアである電子の大部分が上層チャネル層22に閉じ込められるようなバンド構造となるので、電子が下層チャネル層23および基板1を介して移動することによるリーク電流を低減できる。このことにより、ソース電極6とドレイン電極8の間を流れる電流を上層チャネル層22に集中して流すことができる。
【0034】
上層チャネル層22の材料は特に限定されないが、例えば、III族窒化物半導体である、GaN、AlxGa1-xN、InxGa1-xNなどからなってもよい。なお例えばxは0より大きく0.5より小さくてもよい。また、例えばxは、0.001以上0.1以下であってもよい。
また、上層チャネル層22の厚さは特に限定されないが、例えば、0.01μm以上0.1μm以下である。また、例えば0.01μm以上0.03μm以下である。また、上層チャネル層の厚さは、下層チャネル層の厚さより小さくてもよい。このことにより、キャリアである電子をより狭い範囲に閉じ込めることができる。
【0035】
下層チャネル層23の材料は特に限定されないが、例えばIII族窒化物半導体である、AlxGa1-xN、InxGa1-xNなどからなってもよい。なお例えばxは0.01以上0.95以下でもよい。また、例えばxは、0.02以上0.3以下であってもよい。また、例えば、上層チャネル層22がGaNからなるとき、下層チャネル層23は、AlxGa1-xN(0.1≦x≦0.3)からなってもよい。
また、例えば、上層チャネル層22がGaN又はAlxGa1-xNからなり、下層チャネル層23がAlyGa1-yNならなるとき、yはxより大きくてもよい。この場合、上層チャネル層のバンドギャップは、下層チャネル層のバンドギャップより大きくなるからである。また0.02≦(y−x)≦0.3であってもよい。
また、下層チャネル層23の厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜10μmであり、さらに好ましくは2μm〜5μmである。
【0036】
また、チャネル層3は、図5のようにリセス構造を有してもよい。これに加えてチャネル層3とゲート電極7との間に絶縁体層25を形成することにより、ノーマリーオフ型のトランジスタとすることができる。図5のようなトランジスタでは、ゲート電極7直下のチャネル層3には二次元電子ガスが形成されない場合が多いため、ゲート電極7に電圧を印加しない場合、ソース電極6とドレイン電極8の間にはほとんど電流が流れない。また、ゲート電極7にプラスの電圧を印加することにより、ゲート電極7直下のチャネル層に電子層を形成することができ、トランジスタをオンとすることができる。
【0037】
また、チャネル層3は、例えば、基板1の上にCVDにより形成することができる。
【0038】
基板1が導電性基板である場合、基板1とドレイン電極8との間にリーク電流が生じるのを防止するため、基板1とドレイン電極8との間の長さをソース電極6とドレイン電極8との間の長さに比べ長くすることができる。具体的には、チャネル層3の厚さをソース電極6とドレイン電極8との間の長さに比べ十分に厚くすることができる。このことにより、リーク電流を小さくすることができ、ゲート電極7にオフの電圧が印加されている場合、ドレイン電極8へ流れる電流を小さくすること又は流れないようにすることができる。
【0039】
3−4.バリア層
バリア層4は、チャネル層3の上に設けられ、チャネル層3との界面にヘテロ接合を形成すれば特に限定されない。バリア層4は、III族窒化物半導体、例えば、AlxGa1-xN、InxGa1-xNなどからなってもよい。なお例えばxは0.05以上0.9以下でもよい。また、例えばxは、0.1以上0.5以下であってもよい。III族窒化物半導体は、絶縁破壊強度が高く熱伝導率が高いため、高周波のパワースイッチング素子とすることができる。また、例えば、チャネル層3がGaNまたはGaxAl1-xNからなり、バリア層4がGayAl1-yNからなるとき、yはxより大きくてもよく、0.02≦(y−x)≦0.3であってもよい。このことによりバリア層4のバンドギャップは、チャネル層3のバンドギャップよりも大きくすることができる。
また、バリア層4は、チャネル層3よりも大きいバンドギャップを有してもよい。このことにより、チャネル層3との界面に二次元電子ガス17を形成することができる。なお、AlGaN/GaNヘテロ接合では自発分極とピエゾ分極により1×1013/cm2程度のシート電子濃度が発生する。また、ソース電極6とドレイン電極8との間に流れる電流、つまりキャリアである電子の大部分をチャネル層3を流すことができる。
【0040】
バリア層4の厚さは、特に限定されないが、例えば0.01μm以上0.1μm以下とすることができる。また、例えば、0.015μm以上0.07μm以下とすることができる。
また、バリア層4は図4のようにリセス構造を有してもよい。このことにより、良好なピンチオフ特性を有する電界効果トランジスタ20とすることができる。
【0041】
また、バリア層4は、例えば、チャネル層3の上にCVDにより形成することができる。
【0042】
3−5.ソース電極
ソース電極6は、バリア層4上にソース電極6、ゲート電極7およびドレイン電極8の順で離間して設けられるように設けられ、第1のn型不純物拡散領域12の直上に設けられる電極であれば、特に限定されない。ソース電極6を形成するのに用いる金属は、例えば、Ti、Zr、Hf、Al、AlSi、W、WN、Au、Ptから選択された少なくとも一種の金属を用いることができる。ソース電極6は例えば、Hf/Al/Au、Ti/Pt/Auからなる電極とすることができる。
ソース電極6の幅は、特に限定されないが、例えば10μm以上1mm以下とすることができる。
また、ソース電極6は、真空蒸着法、スパッタ法などにより形成することができる。
また、バリア層4上に絶縁膜10を形成している場合、ソース電極6を形成する部分の絶縁膜10をエッチングにより除去し、ソース電極6がバリア層4に接触するように形成することができる。
また、ソース電極6は、真空蒸着法、スパッタ法などにより形成した後、熱処理を行うことができる。熱処理は、特に限定されないが、例えば、550℃で1分間行うことができる。このことにより、ソース電極6とチャネル層3は、第1のn型不純物拡散層12を介してオーミック接続することができる。
【0043】
3−6.ドレイン電極
ドレイン電極8は、バリア層4上にソース電極6、ゲート電極7およびドレイン電極8の順で離間して設けられるように設けられ、第2のn型不純物拡散領域13の直上に設けられる電極であれば、特に限定されない。ドレイン電極8を形成するのに用いる金属は、例えば、Ti、Zr、Hf、Al、AlSi、W、WN、Au、Ptから選択された少なくとも一種の金属を用いることができる。ドレイン電極8は例えば、Hf/Al/Au、Ti/Pt/Auからなる電極とすることができる。
ドレイン電極8の幅は、特に限定されないが、例えば1μm以上5μm以下とすることができる。
また、ドレイン電極8は、真空蒸着法、スパッタ法などにより形成することができる。
また、バリア層4上に絶縁膜10を形成している場合、ドレイン電極8を形成する部分の絶縁膜10をエッチングにより除去し、ドレイン電極8がバリア層4に接触するように形成することができる。
また、ドレイン電極8は、真空蒸着法、スパッタ法などにより形成した後、熱処理を行うことができる。熱処理は、特に限定されないが、例えば、550℃で1分間行うことができる。このことにより、ドレイン電極8とチャネル層3は、第2のn型不純物拡散層12を介してオーミック接続することができる。
【0044】
3−7. ゲート電極
ゲート電極8は、バリア層4上にソース電極6、ゲート電極7およびドレイン電極8の順で離間して設けられるように設けられる電極であれば、特に限定されない。また、ゲート電極8の直下のバリア層4およびチャネル層3には、第1のn型不純物拡散領域12、第2のn型不純物拡散領域13及び第3のn型不純物拡散領域15は、設けられていない。
また、ゲート電極7とドレイン電極8は一定の間隔を有するように設けられてもよい。また、ゲート電極7が有するチャネル層3に最も近い下面とドレイン電極8の下面は、一定の間隔を有するように設けられてもよい。
ゲート電極8は、図1、2、4のようにバリア層4に接触するように設けられてもよい。また、図3、図5のように絶縁膜10または絶縁体層25を介してバリア層4またはチャネル層3の上に設けられていてもよい。このことにより、良好なゲート絶縁特性を得ることができる。
【0045】
また、ゲート電極7は、図4のようにリセス構造を有するバリア層4の凹部の上に設けられてもよい。このことにより、良好なピンチオフ特性を得ることができる。なお図4のようなリセス構造は、バリア層4の一部および絶縁膜10の一部をエッチングで除去することにより形成することができる。
また、ゲート電極7は、図5のようにリセス構造を有するチャネル層3の凹部の上に絶縁体層25を介して設けられてもよい。このことにより、良好なゲート絶縁特性が得られ、また、ノーマリーオフ型のトランジスタを形成することができる。リセス構造は、エッチングにより形成することができる。
また、ゲート電極7は、図1、図2、図5のようにバリア層4の上に形成された絶縁膜10の上にひさし状に張り出した形状(フィールドプレート構造)としてもよい。このことにより、ゲート電極7とドレイン電極8との間の電界集中を緩和することができる。
【0046】
また、ゲート電極7は、Ti、Zr、Hf、Al、AlSi、W、WN、Au、Ptから選択された少なくとも一種の金属を用いて形成することができる。また、ゲート電極7は、真空蒸着法、スパッタ法により形成することができる。
また、バリア層4上に絶縁膜10を形成している場合、ゲート電極7を形成する部分の絶縁膜10をエッチングにより除去し、ゲート電極7がバリア層4に接触するように形成することができる。
【0047】
また、ゲート電極7は、ソース電極6、ゲート電極7、ドレイン電極8と並んだ方向の幅が10μm以上1mm以下を有するように設けられてもよい。また、ゲート電極7が有するチャネル層3に最も近い下面とドレイン電極8の下面との間隔(図面にYで示した間隔)は、5μm以上20μm以下であってもよい。
【0048】
3−8.第1のn型不純物拡散領域
第1のn型不純物拡散領域12は、ソース電極6の直下のバリア層4およびチャネル層3に設けられる。第1のn型不純物拡散領域12を設けることにより、ソース電極6は、チャネル層3とオーミック接続することができる。また、第1のn型不純物拡散領域12は、ゲート電極7が有するチャネル層3に最も近い下面の直下のバリア層4およびチャネル層3には形成されていない。また、ゲート電極7が有するチャネル層3に最も近い下面の直下のバリア層4およびチャネル層3の実質的に全体には、n型不純物およびp型不純物が実質的に含まれていなくてもよい。また、第1のn型不純物拡散領域12は、実質的にソース電極6の直下のバリア層4およびチャネル層3にのみ設けられてもよい。
第1のn型不純物拡散領域12は、1.0×1014cm-2〜1.0×1016cm-2のn型不純物濃度を有してもよい。このことにより、ソース電極6とチャネル層3をオーミック接続することができる。
【0049】
また、第1のn型不純物拡散領域12に含まれるn型不純物は、特に限定されないが、バリア層4およびチャネル層3がIII族窒化物である場合、Si、Ge、Snなどである。
また、第1のn型不純物拡散領域12は、バリア層4およびチャネル層3にn型不純物をイオン注入することにより、形成することができる。また、イオン注入後に熱処理を行うことにより、第1のn型不純物拡散領域12を活性化することができる。熱処理の温度は特に限定されないが、例えば1000℃〜1200℃とすることができる。このことによりソース電極6とチャネル層3との間の接触抵抗を低減することができる。
【0050】
また、第1のn型不純物拡散領域12は、n型不純物の熱拡散、例えば、Si拡散により形成することができる。具体的には、第1のn型不純物拡散領域12を形成するバリア層4の上にSi層を形成し、このSi層のSiを熱処理によりバリア層4およびチャネル層3にまで拡散させることにより第1のn型不純物拡散領域12を形成することができる。この熱処理の条件は、特に限定されないが、例えば、1100度で2分とすることができる。
また、例えば図2、図5のようにチャネル層3が上層チャネル層22および下層チャネル層23からなる場合、第1のn型不純物拡散領域12は、下層チャネル層23に届かないように形成することができる。このことにより、ソース電極6とドレイン電極8間を流れるキャリアである電子の大部分を上層チャネル層22に流すことができる。
【0051】
3−9.第2のn型不純物拡散領域
第2のn型不純物拡散領域13は、ドレイン電極8の直下のバリア層4およびチャネル層3に設けられる。第2のn型不純物拡散領域13を設けることにより、ドレイン電極8は、チャネル層3とオーミック接続することができる。また、第2のn型不純物拡散領域13は、ゲート電極7が有するチャネル層3に最も近い下面の直下のバリア層4およびチャネル層3には形成されていなくてもよい。また、第2のn型不純物拡散領域13は、実質的にドレイン電極8の直下のバリア層4およびチャネル層3にのみ設けられてもよい。
第2のn型不純物拡散領域13は、1.0×1014cm-2〜1.0×1016cm-2のn型不純物濃度を有してもよい。このことにより、ドレイン電極8とチャネル層3をオーミック接続することができる。
【0052】
また、第2のn型不純物拡散領域13に含まれるn型不純物は、特に限定されないが、バリア層4およびチャネル層3がIII族窒化物である場合、Si、Ge、Snなどである。また、第1のn型不純物拡散領域12、第2のn型不純物拡散領域13、第3のn型不純物拡散領域15のそれぞれの領域に含まれるn型不純物は、同一の元素であってもよい。
また、第2のn型不純物拡散領域13は、第3のn型不純物拡散領域15が形成されたバリア層4およびチャネル層3の一部にn型不純物をイオン注入することにより形成することができる。このことにより、第3のn型不純物拡散領域15と第2のn型不純物拡散領域13のn型不純物濃度に差をつけることができる。また、第3のn型不純物拡散領域が第2のn型不純物拡散領域を囲むように構成することができる。つまり、まず、イオン注入またはn型不純物の熱拡散により、比較的低いn型不純物濃度で第3のn型不純物拡散領域15を形成し、その後、第3のn型不純物拡散領域15の一部にn型不純物をイオン注入することにより、第3のn型不純物拡散領域15よりn型不純物濃度が高い第2のn型不純物拡散領域13を形成することができる。また、後記載のn型不純物の熱拡散で第2のn型不純物拡散領域13を形成する場合も同様にn型不純物の濃度差をつけることができる。
【0053】
また、イオン注入後に熱処理を行うことにより、第2のn型不純物拡散領域13を活性化することができる。また、イオン注入後の熱処理は、第1のn型不純物拡散領域12、第2のn型不純物拡散領域13、第3のn型不純物拡散領域15について同時に行ってもよい。熱処理の温度は特に限定されないが、例えば1000℃〜1200℃とすることができる。このことによりドレイン電極8とチャネル層3との間の接触抵抗を低減することができる。
【0054】
また、第2のn型不純物拡散領域13は、n型不純物の熱拡散、例えば、Si拡散により形成することができる。具体的には、第3のn型不純物拡散領域15が形成されたバリア層4の上にSi層を形成し、このSi層のSiを熱処理により第3のn型不純物拡散領域15の一部に拡散させることにより第2のn型不純物拡散領域13を形成することができる。この熱処理の条件は、特に限定されないが、例えば、1100度で2分とすることができる。
また、第2のn型不純物拡散領域13は、エピタキシャル成長を用いて形成することができる。
また、例えば図2、図5のようにチャネル層3が上層チャネル層22および下層チャネル層23からなる場合、第2のn型不純物拡散領域13は、下層チャネル層23に届かないように形成することができる。このことにより、ソース電極6とドレイン電極8間を流れるキャリアである電子の大部分を上層チャネル層22に流すことができる。
【0055】
3−10.第3のn型不純物拡散領域
第3のn型不純物拡散領域15は、第2のn型不純物拡散領域13の下側のチャネル層3および第2のn型不純物拡散領域13のゲート電極7側のチャネル層3およびバリア層4に設けられる。また、第3のn型不純物拡散領域15は、第2のn型不純物拡散領域13の周りのバリア層4およびチャネル層3に第2のn型不純物拡散領域13を囲むように設けられてもよい。
また、第3のn型不純物拡散領域15は、第2のn型不純物拡散領域13のゲート電極7側のチャネル層3とバリア層4との界面の一部を含んでもよい。また、第3のn型不純物拡散領域15は、第2のn型不純物拡散領域13よりも低いn型不純物濃度を有する。また、第3のn型不純物拡散領域15は、ゲート電極7が有するチャネル層3に最も近い下面の直下のバリア層4およびチャネル層3に形成されていない。
この構成により、第3のn型不純物拡散領域15においてシートキャリア濃度をほぼ一定とすることができるため、ゲート電極7とドレイン電極8との間に電圧を印加したときバリア層4およびチャネル層3においてその絶縁破壊強度を超える電界集中が生じることを抑制することができる。
【0056】
また、第3のn型不純物拡散領域15は、ゲート電極7が有するチャネル層3に最も近い下面とドレイン電極8の下面との間隔、つまり図1〜5で示したYの長さを100としたとき、第2のn型不純物拡散領域13のゲート電極7側の第3のn型不純物拡散領域15が設けられたチャネル層3とバリア層4との界面、が10以上50以下の幅(つまり図1〜5で示したXの長さ)を有するように設けることができる。例えば、Yの長さを5〜20μmとしたとき、Xの長さを0.5〜10μmとすることができる。
【0057】
また、第3のn型不純物拡散領域15は、第2のn型不純物拡散領域13のn型不純物濃度が1.0×10xcm-2の場合、1.0×10x-5cm-2〜1.0×10x-0.5cm-2のn型不純物濃度を有してもよい。例えば、第2のn型不純物拡散領域13のn型不純物濃度が1.0×1015cm-2の場合、第3のn型不純物拡散領域15は1.0×1010cm-2〜1.0×1014.5cm-2のn型不純物濃度を有してもよい。また、第3のn型不純物拡散領域15は、1.0×1010cm-2〜1.0×1014cm-2のn型不純物濃度を有してもよい。
【0058】
また、第3のn型不純物拡散領域15に含まれるn型不純物は、特に限定されないが、バリア層4およびチャネル層3がIII族窒化物である場合、Si、Ge、Snなどである。
また、第3のn型不純物拡散領域15は、バリア層4およびチャネル層3にn型不純物をイオン注入することにより、形成することができる。また、イオン注入後に熱処理を行うことにより、第3のn型不純物拡散領域15を活性化することができる。熱処理の温度は特に限定されないが、例えば1000℃〜1200℃とすることができる。
【0059】
また、第3のn型不純物拡散領域15は、n型不純物の熱拡散、例えば、Si拡散により形成することができる。具体的には、第3のn型不純物拡散領域15を形成するバリア層4の上にSi層を形成し、このSi層のSiを熱処理によりバリア層4およびチャネル層3にまで拡散させることにより第3のn型不純物拡散領域15を形成することができる。この熱処理の条件は、特に限定されないが、例えば、1100度で2分とすることができる。
また、第2のn型不純物拡散領域13は、エピタキシャル成長を用いて形成することができる。
【0060】
3−11.絶縁膜
絶縁膜10は、バリア層4の上に設けることができる。また、図1、図2、図4、図5のように、ソース電極6とゲート電極7の間およびゲート電極7とドレイン電極8との間に設けることができる。また、図3のようにソース電極6とドレイン電極の間に設けることもでき、絶縁膜10の上にゲート電極7を設けることもできる。
【0061】
絶縁膜10は、絶縁体の膜であれば特に限定されないが、例えば、SiN、SiO2、SiONの膜であってもよい。また、絶縁膜10の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01μm〜0.5μmとすることができる。
絶縁膜10を設けることにより、ソース電極6とゲート電極7との間の電界、およびゲート電極7とドレイン電極8との間の電界を緩和することができ、チャネル層3などでの電界集中が生じるのを抑制することができる。
また、絶縁膜10は例えばCVD法により形成することができる。
【0062】
3−12.絶縁体層
絶縁体層25は、例えば図5のようにチャネル層3とゲート電極7との間に設けることができる。また、絶縁体層25は、バリア層4とゲート電極7との間に設けることもできる。また、例えば図3のように絶縁体層25は、絶縁膜10と同一であってもよい。
絶縁体層25は、絶縁体であれば特に限定されないが、例えば、SiN、SiO2、SiONの膜であってもよい。また、絶縁体層25は、チャネル層3またはバリア層4の酸化膜を用いてもよい。また、絶縁体層25の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01μm〜0.1μmとすることができる。
【0063】
また、絶縁体層25は、誘電率の異なる複数の層を備えてもよい。例えば、SiNxを形成後、SiO2を形成することにより誘電率の異なる2層構造としてもよい。
絶縁体層25を形成することにより、良好なゲート絶縁特性を得ることができる。
また、絶縁体層25は、例えばCVD法により形成することができる。
【0064】
4.従来の電界効果トランジスタについてのシミュレーション
図8に示すような従来の電界効果トランジスタについて、トランジスタ内部の電界強度分布を調べるシミュレーションを行った。
シミュレーションの条件としては、チャネル層103を厚さ3μmのGaN層、バリア層104を厚さ0.025μmのAl1-xGaxN(x=0.17)層とした。また、ソース電極106とゲート電極107との間、およびゲート電極107とドレイン電極108との間にSiNxからなる絶縁膜110を設けたこととした。また、ゲート電極107は、絶縁膜110上に1μmのフィールドプレート構造を有することとした。また、ソース電極106とゲート電極107との間隔を1μmとし、ゲート電極107とドレイン電極108との間隔を5μmとした。
【0065】
また、ソース電極106直下のバリア層104およびチャネル層103には第1n+拡散領域112が設けられ、ドレイン電極108直下のバリア層104およびチャネル層103には第2n+拡散領域113が設けられ、第1n+拡散領域112と第2n+拡散領域113のシートキャリア濃度は、1×1015cm-2とした。また、チャネル層103とバリア層104との界面に生じる二次元電子ガス117のシートキャリア濃度を2×1012cm-2とした。
また、基板101を導電性基板とし、基板101とソース電極106とを電気的に接続し、接地したこととした。また、ゲート電極107には−10Vの電圧印加し、ドレイン電極108には+600Vの電圧を印加したこととした。
【0066】
図6は、従来の電界効果トランジスタについて行ったシミュレーション結果であり、図6(a)は、トランジスタ内部のポテンシャル(電位)分布であり、図6(b)は、トランジスタ内部の電界強度分布である。なお、図6(a)のポテンシャル分布の間隔が密な場所ほど図6(b)の電界強度は大きくなる。また、図6(c)は、図6(b)の点線で囲んだ範囲Aの拡大図であり、図6(d)は、図6(b)の点線で囲んだ範囲Bの拡大図である。
【0067】
図6(b)を見ると、ゲート電極107のフィールドプレート構造の絶縁膜110と接する角部付近と、ドレイン電極108のゲート電極107側のバリア層104と接する角部付近で、電界集中が生じていることがわかる。ゲート電極107のフィールドプレート構造の絶縁膜110と接する角部付近を拡大した図6(c)をみると、この角部の下側の絶縁膜110において5.3MV/cmの電界集中が起こることがわかった。絶縁膜110であるSiNxの絶縁破壊電界強度は、およそ9MV/cmであることから、この角部付近では、この条件においては絶縁破壊が起こらないことがわかった。
【0068】
また、ドレイン電極108のゲート電極107側のバリア層104と接する角部付近の拡大図である図6(d)を見ると、この角部の斜め下付近のチャネル層103およびバリア層104において、11.7MV/cmの電界集中が起こることがわかった。チャネル層103であるGaNおよびバリア層104であるAlGaNの絶縁破壊電界強度は、およそ5MV/cmであることから、この角部付近で絶縁破壊が生じ、素子の破壊を起こしてしまうことがわかった。
【0069】
これは、特に二次元電子ガス117のシート電子濃度が小さい場合、ドレイン電極108に高電圧をかけた際に、−10Vの電圧を印加したゲート電極107下部のキャリアである電子の空乏化が高電界によりドレイン電極108側に引っ張られ、電子の空乏化がドレイン電極108下部まで達することにより起こると考えられる。
【0070】
5.本発明の電界効果トランジスタについてのシミュレーション
図1に示すような本発明の電界効果トランジスタについて、トランジスタ内部の電界強度分布を調べるシミュレーションを行った。
シミュレーションの条件としては、チャネル層3を厚さ3μmのGaN層、バリア層4を厚さ0.025μmのAl1-xGaxN(x=0.17)層とした。また、ソース電極6とゲート電極7との間、およびゲート電極7とドレイン電極8との間にSiNxからなる絶縁膜10を設けたこととした。また、ゲート電極7は、絶縁膜10上に1μmのフィールドプレート構造を有することとした。また、ソース電極6とゲート電極7との間隔を1μmとし、ゲート電極7とドレイン電極8との間隔を5μmとした。
【0071】
また、ソース電極6直下のバリア層4およびチャネル層3には第1のn型不純物拡散領域12が設けられ、ドレイン電極8直下のバリア層4およびチャネル層3には第2のn型不純物拡散領域13が設けられ、第1のn型不純物拡散領域12と第2のn型不純物拡散領域13のシートキャリア濃度は、1×1015cm-2とした。また、第2のn型不純物拡散領域13を囲むように第3のn型不純物拡散領域15が設けられ、第3のn型不純物拡散領域15のシートキャリア濃度は、1×1012cm-2とした。第3のn型不純物拡散領域15は、ドレイン電極8の下面のゲート電極7側の角部からゲート電極7側へ1μmの幅を有することとした。また、チャネル層3とバリア層4との界面に生じる二次元電子ガス17のシートキャリア濃度を2×1012cm-2とした。
【0072】
また、基板1を導電性基板とし、基板1とソース電極6とを電気的に接続し、接地したこととした。また、ゲート電極7には−10Vの電圧印加し、ドレイン電極8には+600Vの電圧を印加したこととした。
【0073】
図7は、本発明の電界効果トランジスタ20について行ったシミュレーション結果であり、図7(a)は、トランジスタ内部のポテンシャル(電位)分布であり、図7(b)は、トランジスタ内部の電界強度分布である。なお、図7(a)のポテンシャル分布の間隔が密な場所ほど図7(b)の電界強度は大きくなる。また、図7(c)は、図7(b)の点線で囲んだ範囲Aの拡大図であり、図7(d)は、図7(b)の点線で囲んだ範囲Bの拡大図である。
【0074】
図7(b)を見ると、ゲート電極7のフィールドプレート構造の絶縁膜10と接する角部付近と、ドレイン電極8のゲート電極7側のチャネル層3およびバリア層4付近で電界集中が起きているのがわかる。ゲート電極7のフィールドプレート構造の絶縁膜10と接する角部付近を拡大した図7(c)をみると、この角部の下側の絶縁膜10において6.2MV/cmの電界集中が起こることがわかった。絶縁膜10であるSiNxの絶縁破壊電界強度は、およそ9MV/cmであることから、この角部付近では、この条件においては絶縁破壊が起こらないことがわかった。
【0075】
また、ドレイン電極8のゲート電極7側のチャネル層3およびバリア層4付近の拡大図である図7(d)を見ると、第3のn型不純物拡散領域15のゲート電極7側のチャネル層3及びバリア層4付近において、4.3MV/cmの電界集中が起こることがわかった。チャネル層3であるGaNおよびバリア層4であるAlGaNの絶縁破壊電界強度は、およそ5MV/cmであることから、この付近では、この条件においては絶縁破壊が起こらないことがわかった。したがって、第3のn型不純物拡散領域15を設けることによって、ドレイン電極8のゲート電極7側のチャネル層3およびバリア層4において電界集中を緩和することができ、この部分の絶縁破壊により素子が壊れることを防止することができることがわかった。
【0076】
第3のn型不純物拡散領域15を設けることによって、電界集中を緩和することができる効果が生じる理由は、明らかではないが、第3のn型不純物拡散領域15を設けることによりゲート電極7下のキャリアである電子の空乏化がドレイン電極8まで広がることを防止することができるためと考えられる。
【0077】
以上の結果から、従来の電界効果トランジスタでは絶縁破壊が生じ素子の破壊を起こしてしまう条件において、本発明の電界効果トランジスタでは絶縁破壊が起こることはなく、素子の破壊を防止することができることがわかった。
【符号の説明】
【0078】
1:基板 3:チャネル層 4:バリア層 6:ソース電極 7:ゲート電極 8:ドレイン電極 10:絶縁膜 12:第1のn型不純物拡散領域 13:第2のn型不純物拡散領域 15:第3のn型不純物拡散領域 17:二次元電子ガス 20:電界効果トランジスタ 25:絶縁体層
101:基板 103:チャネル層 104:バリア層 106:ソース電極 107:ゲート電極 108:ドレイン電極 110:絶縁膜 112:第1n+型拡散領域 113:第2n+拡散領域 117:二次元電子ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にチャネル層およびバリア層がこの順で設けられ、
前記バリア層上にソース電極、ゲート電極およびドレイン電極がこの順で離間して設けられ、
前記ソース電極の直下の前記バリア層および前記チャネル層に第1のn型不純物拡散領域が設けられ、
前記ドレイン電極の直下の前記バリア層および前記チャネル層に第2のn型不純物拡散領域が設けられ、
第2のn型不純物拡散領域の下側の前記チャネル層および第2のn型不純物拡散領域の前記ゲート電極側の前記チャネル層および前記バリア層に第3のn型不純物拡散領域が設けられ、
第1のn型不純物拡散領域および第3のn型不純物拡散領域は、前記ゲート電極が有する前記チャネル層に最も近い下面の直下の前記バリア層および前記チャネル層を除く部分に設けられ、
第3のn型不純物拡散領域は、第2のn型不純物拡散領域よりも低いn型不純物濃度を有し、
第3のn型不純物拡散領域は、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に電圧を印加したとき前記バリア層および前記チャネル層においてその絶縁破壊強度を超える電界集中が生じることを抑制することを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項2】
第3のn型不純物拡散領域は、前記ゲート電極が有する前記チャネル層に最も近い下面と前記ドレイン電極の下面との間隔を100としたとき、第2のn型不純物拡散領域の前記ゲート電極側の第3のn型不純物拡散領域が設けられた前記チャネル層と前記バリア層との界面が10以上50以下の幅を有するように設けられた請求項1に記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記チャネル層および前記バリア層は、III族窒化物半導体からなる請求項1または2に記載のトランジスタ。
【請求項4】
第1のn型不純物拡散領域および第2のn型不純物拡散領域は、1.0×1014cm-2〜1.0×1016cm-2のn型不純物濃度を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のトランジスタ。
【請求項5】
第3のn型不純物拡散領域は、第2のn型不純物拡散領域のn型不純物濃度が1.0×10xcm-2の場合、1.0×10x-4cm-2〜1.0×10x-0.5cm-2のn型不純物濃度を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記チャネル層は、上層チャネル層と下層チャネル層からなり、
前記上層チャネル層は、前記バリア層および前記下層チャネル層のいずれよりも小さいバンドギャップを有する請求項1〜5のいずれか1つに記載のトランジスタ。
【請求項7】
前記基板は、導電性基板である請求項1〜6のいずれか1つに記載のトランジスタ。
【請求項8】
前記バリア層または前記チャネル層は、リセス構造を有し、
前記ゲート電極は、前記リセス構造の凹部上に設けられた請求項1〜7のいずれか1つに記載のトランジスタ。
【請求項9】
前記ゲート電極と前記バリア層または前記チャネル層との間に絶縁体層をさらに備える請求項1〜8のいずれか1つに記載のトランジスタ。
【請求項10】
前記絶縁体層は、誘電率の異なる複数の層を備える請求項9に記載のトランジスタ。
【請求項11】
基板上にチャネル層およびバリア層をこの順で形成する工程と、
前記チャネル層および前記バリア層に第1のn型不純物拡散領域および第3のn型不純物拡散領域を離間して形成する工程と、
第3のn型不純物拡散領域の一部でありかつ、下側および前記第1のn型不純物拡散領域側に第3のn型不純物拡散領域がある部分に第2のn型不純物拡散領域を形成する工程と、
第1のn型不純物拡散領域の直上にソース電極を形成する工程と、
第2のn型不純物拡散領域の直上にドレイン電極を形成する工程と
第1のn型不純物拡散領域と第3のn型不純物拡散領域との間の、第1のn型不純物拡散領域および第3のn型不純物拡散領域のいずれも形成されていない前記チャネル層および前記バリア層の直上にゲート電極を形成する工程とを備え、
第3のn型不純物拡散領域は、第2のn型不純物拡散領域よりも低いn型不純物濃度を有するように形成されることを特徴とする電界効果トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−71307(P2011−71307A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220990(P2009−220990)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】