説明

スイッチ装置

【課題】GaNトランジスタを理想的な還流ダイオードとして動作させ、低損失のスイッチ装置を実現できるようにする。
【解決手段】スイッチ装置は、窒化物半導体素子301と、窒化物半導体素子301を駆動する駆動部302とを備えている。窒化物半導体素子301は、第1のオーミック電極、第2のオーミック電極及び第1のゲート電極を有している。駆動部302は、第1のゲート電極にバイアス電圧を印加するゲート回路311と、第1のゲート電極と第1のオーミック電極との間に接続され、双方向に電流を流すスイッチ素子312とを有している。駆動部302は、第1のオーミック電極から第2のオーミック電極への電流を通電し且つ第2のオーミック電極から第1のオーミック電極への電流を遮断する動作を行う場合には、スイッチ素子312をオン状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関し、特に窒化物半導体素子及びその駆動部によって構成されたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器のさらなる省エネルギー化が期待されており、多くの電力を扱う電源回路及びインバータ回路等の電力変換装置について損失を低減して電力変換効率を向上することが求められている。これらの装置の損失の大部分は、電力変換の際に用いられるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)といったパワー半導体素子を用いたスイッチ装置において発生している。従って、スイッチ装置における損失を低減することは、電力変換効率の向上に大きな意味を持つ。スイッチ装置において発生する損失には、電流の通電により発生する導通損失と、スイッチング動作により発生するスイッチング損失とが含まれる。導通損失はパワー半導体素子のオン抵抗をより小さくすれば低減でき、スイッチング損失はパワー半導体素子のスイッチング速度をより高速にすることにより低減できる。このため、パワー半導体素子のオン抵抗の低減及びスイッチング速度の高速化に関する技術開発が行われている。
【0003】
一方、通常のパワー半導体素子は、シリコン(Si)を材料としており、Siの材料限界のためにさらなるオン抵抗の低減及びスイッチング速度の向上が困難になってきている。Siの材料限界を打破して導通損失及びスイッチング損失を低減するために、窒化ガリウム(GaN)に代表される窒化物系半導体又は炭化珪素(SiC)等のワイドギャップ半導体を用いた半導体素子の導入が検討されている。ワイドギャップ半導体は絶縁破壊電界がSiに比べて約1桁高く、特に、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)と窒化ガリウム(GaN)とのヘテロ接合界面には自発分極及びピエゾ分極により電荷が生じる。これにより、アンドープ時においても1×1013cm-2以上のシートキャリア濃度と1000cm2V/sec以上の高移動度とを有する2次元電子ガス(2DEG)層が形成される。このため、AlGaNとGaNとによるヘテロ接合電界効果トランジスタ(以下GaNトランジスタと記載する)は、低オン抵抗及び高耐圧を実現するパワー半導体素子として期待されている。
【0004】
GaNトランジスタは、駆動条件によりトランジスタそのものがダイオードと同じような動作(ダイオード動作)をするという特徴も有している(特許文献1)。誘導性負荷をスイッチングする場合、インダクタンス中の電流は還流ダイオードを用いて処理する。このため、IGBTの場合にはFRD(Fast Recovery Diode)を並列に接続して還流ダイオードとして用いることが一般的である。MOSFETの場合には、MOSFETに寄生しているボディーダイオードを還流ダイオードとして用いることが一般的である。しかし、FRD及びMOSFETのボディーダイオードは大きなリカバリー電流を発生させ、スイッチ装置に大きな損失が生じる。一方、GaNトランジスタにおけるダイオード動作は、トランジスタそのものがダイオードのような動作をする。このため、GaNトランジスタの駆動条件を工夫することによりGaNトランジスタそのものを還流ダイオードとして用いた場合にはリカバリー電流を小さくでき、スイッチ装置の損失を低減できるという利点が得られる(例えば、特許文献1を参照。)。また、還流ダイオードを外付する必要がないため、電力変換装置の部品点数を削減でき、電気機器の小型化及びコスト低減が可能となる。また、GaNトランジスタの駆動には、従来知られているゲート回路を用いることが可能である(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第09/072272号パンフレット
【特許文献2】実開平5−48584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本願発明者らは、GaNトランジスタをダイオード動作させる駆動条件によっては、FRD及びMOSFETのボディーダイオードよりも大きなリカバリー電流が発生してしまうことを見出した。また、還流ダイオードは、誘導性負荷のスイッチング中に、還流電流をすばやく流し、インダクタンスの端子間に発生する逆起電圧を抑制する動作を行う必要がある。しかし、駆動条件によっては、FRD及びMOSFETのボディーダイオードよりも大きな逆起電圧がGaNトランジスタのダイオード動作の際に発生することも見出した。
【0007】
本発明は、本願発明者により得られた知見に基づき、GaNトランジスタを理想的な還流ダイオードとして動作させ、低損失のスイッチ装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明はスイッチ装置を、半導体素子をダイオード動作させる際に、第1のゲート電極と第1のオーミック電極とを低抵抗の経路を介して接続する制御部を備えた構成とする。
【0009】
具体的に、本発明に係る第1のスイッチ装置は、窒化物半導体素子と、窒化物半導体素子を駆動する駆動部とを備え、窒化物半導体素子は、基板の上に形成された窒化物半導体からなる半導体層積層体と、半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、第1のオーミック電極と第2のオーミック電極との間に形成された第1のゲート電極とを有し、第1のゲート電極の閾値電圧が0V以上であり、駆動部は、第1のゲート電極にバイアス電圧を印加するゲート回路と、第1のゲート電極と第1の端子が接続され、第1のオーミック電極と第2の端子が接続され、双方向に電流を流すスイッチ素子とを有し、バイアス電圧を、第1のオーミック電極の電位を基準として第1のゲート電極の閾値電圧以下として、第1のオーミック電極から第2のオーミック電極への電流を通電し且つ第2のオーミック電極から第1のオーミック電極への電流を遮断する動作を行う場合には、スイッチ素子をオン状態とする。
【0010】
第2のスイッチ装置は、窒化物半導体素子と、窒化物半導体素子を駆動する駆動部とを備え、窒化物半導体素子は、基板の上に形成された窒化物半導体からなる半導体層積層体と、半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、第1のオーミック電極と第2のオーミック電極との間に形成された第1のゲート電極とを有し、第1のゲート電極の閾値電圧が0V以上であり、駆動部は、第1のゲート電極にゲート抵抗を介してバイアス電圧を印加するゲート回路と、ゲート抵抗と並列に接続され、双方向に電流を流すスイッチ素子とを有し、バイアス電圧を、第1のオーミック電極の電位を基準として第1のゲート電極の閾値電圧以下として、第1のオーミック電極から第2のオーミック電極への電流を通電し且つ第2のオーミック電極から第1のオーミック電極への電流を遮断する動作を行う場合には、スイッチ素子をオン状態とする。
【0011】
第1のスイッチ装置及び第2のスイッチ装置は、第1のオーミック電極から第2のオーミック電極への電流を通電し且つ第2のオーミック電極から第1のオーミック電極への電流を遮断するいわゆるダイオード動作を行う場合には、第1のオーミック電極と第1のゲート電極との間を低抵抗の経路を介して接続する。このため、スイッチング動作のターンオン時間及びターンオフ時間の設定にかかわらず、ダイオード動作のオン状態からオフ状態への遷移及びオフ状態からオン状態への遷移の速度を大きく向上することが可能となる。従って、損失が少なく且つ安定に動作するスイッチ装置を実現できる。
【0012】
第1及び第2のスイッチ装置において、スイッチ素子は、MOSFET、JFET、HFET、ダイオードが並列接続されたIGBT又はダイオードが並列接続されたバイポーラトランジスタとすればよい。
【0013】
第1及び第2のスイッチ装置において、窒化物半導体素子は、半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層を有していても、半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された絶縁膜を有していてもよい。
【0014】
第1及び第2のスイッチ装置において、半導体素子は、第1のゲート電極と第2のオーミック電極との間に形成された第2のゲート電極を有し、第2のゲート電極の閾値電圧は0V以上である構成としてもよい。
【0015】
第1及び第2のスイッチ装置において、半導体素子は、半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体層を有していても、半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された絶縁膜を有していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスイッチ装置によれば、GaNトランジスタを理想的な還流ダイオードとして動作させ、低損失のスイッチ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係るスイッチ装置に用いる半導体素子の一例を示す断面図である。
【図2】一実施形態に係るスイッチ装置に用いる半導体素子の一例を示す平面図である。
【図3】一実施形態に係るスイッチ装置に用いる半導体素子の電流−電圧特性を示す図である。
【図4】(a)及び(b)は一実施形態に係るスイッチ装置に用いる半導体素子のダイオード動作を示す図であり、(a)はオフ状態を示し、(a)はオン状態を示す。
【図5】(a)及び(b)は一実施形態に係るスイッチ装置に用いる半導体素子のダイオード動作を示す図であり、(a)はオフ状態を示し、(a)はオン状態を示す。
【図6】一実施形態に係るスイッチ装置を示す回路図である。
【図7】一実施形態に係るスイッチ装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】図7に示す各期間におけるスイッチ装置の動作を示す回路図である。
【図9】一実施形態に係るスイッチ装置の具体的例を示す回路図である。
【図10】一実施形態の第1変形例に係るスイッチ装置を示す回路図である。
【図11】一実施形態の第2変形例に係るスイッチ装置を示す回路図である。
【図12】ダブルゲートの半導体素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(一実施形態)
図1は一実施形態に係る半導体素子の断面構成の一例を示している。図1に示すように、本実施形態の半導体素子はGaNトランジスタであり、シリコン(Si)からなる導電性の基板111の上に窒化アルミニウム(AlN)からなる厚さが100nmのバッファ層112を介在させて、半導体層積層体113が形成されている。半導体層積層体113は、厚さが2μmのアンドープの窒化ガリウム(GaN)層114と、厚さが20nmのアンドープの窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層115とが下側から順次積層されている。
【0019】
GaN層114のAlGaN層115とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより、シートキャリア濃度が1×1013cm-2以上で且つ移動度が1000cm2V/sec以上の2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が生成されている。
【0020】
半導体層積層体113の上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極116Aと第2のオーミック電極116Bとが形成されている。第1のオーミック電極116A及び第2のオーミック電極116Bは、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とが積層されており、チャネル領域とオーミック接触している。図1においては、コンタクト抵抗を低減するために、AlGaN層115の一部を除去すると共にGaN層114を40nm程度掘り下げて、第1のオーミック電極116A及び第2のオーミック電極116BがAlGaN層115とGaN層114との界面に接するように形成した例を示している。
【0021】
半導体層積層体113の上における第1のオーミック電極116Aと第2のオーミック電極116Bとの間の領域に、ゲート電極118が、p型半導体層119を介在させて形成されている。ゲート電極118は、パラジウム(Pd)と金(Au)とが積層されており、p型半導体層119とオーミック接触している。p型半導体層119は、厚さが300nmで、マグネシウム(Mg)がドープされたp型のGaNからなる。p型半導体層119と第2のオーミック電極116Bとの間の距離は、GaNトランジスタに印加される最大電圧に耐えられるように設計する。
【0022】
p型半導体層119と、AlGaN層115とによりpn接合が形成される。これにより、ゲート電極118に印加する電圧が0Vの場合においても、AlGaN層115及びGaN層114中にp型半導体層119から基板111側と第2のオーミック電極116B側に向かって空乏層が広がる。従って、チャネル領域を流れる電流が遮断されるため、ノーマリオフ動作を行わせることが可能となる。
【0023】
本実施形態のGaNトランジスタは、ゲート電極118がp型半導体層119の上に形成されている。このため、GaN層114とAlGaN層115との界面領域に生成されるチャネル領域に対して、ゲート電極118から順方向のバイアスを印加することにより、チャネル領域に正孔を注入することができる。
【0024】
窒化物半導体においては正孔の移動度は、電子の移動度よりもはるかに低いため、チャネル領域に注入された正孔は電流を流す担体としてほとんど寄与しない。このため、注入された正孔は同量の電子をチャネル領域内に発生させるので、チャネル領域内に電子を発生させる効果が高くなり、ドナーイオンのような機能を発揮する。つまり、チャネル領域内においてキャリア濃度の変調を行うことが可能となるため、動作電流が大きく且つ低抵抗なノーマリオフ型のGaNトランジスタを実現することが可能となる。
【0025】
本実施形態のGaNトランジスタは、pn接合のビルトインポテンシャルを超える3V以上のゲート電圧が印加された場合に、ゲートに正孔が注入され、前述したメカニズムにより電流が増加し、大電流且つ低オン抵抗の動作が可能となる。また、このような構造とすることにより、ゲートの閾値電圧が例えば約1.5VのノーマリーオフGaNトランジスタが実現できる。
【0026】
第1のオーミック電極116Aの上には、第1のオーミック電極116Aと接して第1のオーミック電極配線206Aが形成されており、第2のオーミック電極116Bの上には、第2のオーミック電極116Bと接して第2のオーミック電極配線206Bが形成されている。AlGaN層115の上には、第1のオーミック電極配線206A、第2のオーミック電極配線206B及びゲート電極118を覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜211が形成されている。基板111の裏面には外部から基板111に電位を与えるための裏面電極120が形成されており、裏面電極120はクロム(Cr)とニッケル(Ni)とが積層され形成されている。
【0027】
図2は、本実施形態に係る半導体素子の平面構成の一例を有している。図2に示すように本実施形態の半導体素子は、マルチフィンガ型のGaNトランジスタである。図1に断面構成を示した第1のオーミック電極、ゲート電極及び第2のオーミック電極を有するGaNトランジスタのユニット201が、第2のオーミック電極を中心に交互に反転して複数配置されているとみなすことができる。
【0028】
半導体層積層体113は、デバイスが形成された活性領域165と、電極パッド及び配線構造が形成された不活性領域166とを有している。不活性領域166は、ボロン又は鉄等のイオンを注入することにより、選択的に半導体層積層体113を高抵抗化した領域である。
【0029】
不活性領域166の上には、金(Au)からなる第1のオーミック電極パッド221A、第2のオーミック電極パッド221B及びゲート電極パッド223が形成されている。第1のオーミック電極パッド221A、第2のオーミック電極パッド221B及びゲート電極パッド223と、不活性領域166との間には、SiNからなる絶縁膜(図示せず)が形成されている。第1のオーミック電極パッド221Aは、第1のオーミック電極配線206Aを介して第1のオーミック電極(図示せず)と接続されている。第2のオーミック電極パッド221Bは、第2のオーミック電極配線206Bを介して第2のオーミック電極(図示せず)と接続されている。ゲート電極パッド223は、ゲート電極配線208を介してゲート電極118と接続されている。ゲート電極配線208は、ゲート電極118と同一の材料からなる。ゲート電極配線208とゲート電極パッド223とは、絶縁膜(図示せず)に形成された開口部を介して接続されている。このような構造とすることにより、大電流動作が可能なGaNトランジスタを構成することが可能となる。
【0030】
図3は、本実施形態のGaNトランジスタの電流−電圧特性を示している。図3において、横軸は第1のオーミック電極と第2のオーミック電極との電圧(VO1-O2)であり、縦軸は単位ゲート幅(1mm)当たりの第2のオーミック電極と第1のオーミック電極との間に流れる電流(IO1-O2)であり、Vgはゲート電極と第1のオーミック電極との間に印加された電圧である。図3において、VO1-O2の正負は、第2のオーミック電極の電位が第1のオーミック電極の電位よりも高い場合に正、第1のオーミック電極の電位が第2のオーミック電極の電位よりも高い場合に負としている。また、IO1-O2正負は、第2のオーミック電極から第1のオーミック電極へ流れる電流を正、第1のオーミック電極から第2のオーミック電極へ流れる電流を負としている。
【0031】
GaNトランジスタは、図3において実線で示したようにVgが閾値電圧以上の例えば5Vの場合には、第2のオーミック電極と第1のオーミック電極との間に双方向の電流を通電する第1の動作を可能とする。これは、GaNトランジスタのチャネル層が双方向の電流を通電できるためである。
【0032】
また、図3において破線で示したようにVgが閾値電圧以下の例えば0Vの場合には、第2のオーミック電極から第1のオーミック電極へ流れる電流を遮断し、第1のオーミック電極から第2のオーミック電極へ流れる電流を通電する第2の動作(ダイオード動作)を可能とする。
【0033】
ダイオード動作について図4を用いて説明する。図4(a)及び(b)は、GaNトランジスタのダイオード動作を示す図である。図4(a)及び(b)において、端子O1、端子O2及び端子Gは、それぞれGaNトランジスタの第1のオーミック電極と接続された端子、第2のオーミック電極と接続された端子及びゲート電極と接続された端子である。
【0034】
図4(a)に示すように、端子O1と端子Gとが接続された状態において、端子O1の電位を0Vとし、端子O2の電位を端子O1の電位よりも高い5Vとする。この場合には、GaNトランジスタは、端子O1がソースであり、端子O2がドレインであるトランジスタとみなすことができる。端子Gとソースである端子O1との間に印加された電圧Vgsは閾値電圧以下の0Vであり、GaNトランジスタは端子O2から端子O1へ流れる電流を遮断する動作をする。
【0035】
図4(b)に示すように、端子O1と端子Gとが接続された状態において、端子O1の電位を5Vとし、端子O2の電位を端子O1の電位よりも低い0Vとする。この場合には、GaNトランジスタは、端子O2がソースであり、端子O1がドレインであるトランジスタとみなすことができる。端子Gとソースである端子O2との間に印加された電圧Vgsは閾値電圧よりも高い5Vであり、GaNトランジスタは端子O1から端子O2へ電流を通電する動作をする。この際に、端子O1から端子Gへ、つまり第1のオーミック電極からゲート電極へゲート電流が流れる。
【0036】
以上のように、GaNトランジスタは、トランジスタでありながらダイオードのような振る舞いをするダイオード動作が可能である。従って、GaNトランジスタを例えば誘導性負荷のスイッチングに用いる場合に、所定のタイミングでGaNトランジスタがダイオード動作を行うように駆動すれば、外付けの還流ダイオードが不要となる。
【0037】
なお、このようなダイオード動作は、寄生構造のないGaNトランジスタに固有の動作である。例えば、MOSFETの場合には内蔵のボディーダイオードがドレインとソースとの間に存在するため、ボディーダイオードへ電流が流れてしまう。このため、MOSFETはダイオードのように動作しない。IGBTの場合には、逆方向電流を通電できないので、IGBT内に寄生のダイオードを作りこむなどをする必要がある。従って、IGBTはダイオードのように振る舞う動作をしない。
【0038】
しかし、GaNトランジスタをダイオード動作させることにより還流ダイオード等として用いる場合には、次のような問題が生じることを本願発明者らは見出した。図5(a)及び(b)は、GaNトランジスタの過渡的なダイオード動作を示している。図5(a)及び(b)は端子Gと端子O1とがゲート抵抗Rgを介して接続されている場合を示している。図5(a)に示すように、GaNトランジスタのダイオード動作において、オン状態からオフ状態へ遷移する際には、端子G1に蓄えられた電荷がソースである端子O1へ放電される。これにより、端子O2から端子O1へ流れる電流が遮断される。オン状態からオフ状態へ遷移する速度は、ゲート抵抗Rgの値によって変化する。ゲート抵抗Rgが大きくなると、速度が遅くなり、瞬間的に端子O2から端子O1へ電流を通電してしまう場合が生じる。端子O2から端子O1への通電はスイッチ装置における大きな損失となる。従って、オン状態からオフ状態へすばやく遷移させるために、ゲート抵抗Rgを小さくすることが望ましい。
【0039】
図5(b)は、ダイオード動作において、オフ状態からオン状態へ遷移する様子を示している。図5(b)に示すように、端子O1から端子Gへ電荷が充電されると、端子O1から端子O2へ電流を通電できる。オフ状態からオン状態へ遷移する速度は、ゲート抵抗Rgの値によって変化する。ゲート抵抗Rgが大きくなると速度が遅くなり、行き場をなくした電流が、瞬間的に端子O1の電位を押し上げ、端子O1と端子O2との間に異常に高い電圧を発生させてしまう場合が生じる。異常電圧の発生によりスイッチ装置の動作が不安定となる。従って、オフ状態からオン状態へすばやく遷移させるためにゲート抵抗Rgを小さくすることが望ましい。
【0040】
しかし、ゲート抵抗Rgの値は、スイッチング動作のターンオン時間及びターンオフ時間を決定する。このため、スイッチング動作において必要とされるターンオン時間及びターンオフ時間の特性により、ゲート抵抗Rgの値が決まってしまい、ゲート抵抗Rgを自由に設定することは困難である。このため、GaNトランジスタを理想的な還流ダイオードとして駆動することができず、GaNトランジスタを用いたスイッチ装置の損失を低減することが困難となる。
【0041】
本実施形態においては、GaNトランジスタを用いたスイッチ装置を図6に示すような構成とする。これにより、通常のスイッチング動作の際のタイミング設定に影響を与えることなく、GaNトランジスタを理想的な還流ダイオードとなるように駆動することが可能となる。
【0042】
図6に示すように、本実施形態のスイッチ装置は、GaNトランジスタである半導体素子301と、半導体素子301を駆動する駆動部302とを備えている。半導体素子301は、第1のオーミック電極と接続された端子O1と、第2のオーミック電極と接続された端子O2と、ゲート電極と接続された端子Gとを有している。駆動部302は、半導体素子301の端子Gにバイアス電圧を印加するゲート回路311と、半導体素子301の端子O1と、端子Gとの間に接続されたスイッチ素子312とを有している。ゲート回路311の端子Voはゲート抵抗Rgを介して半導体素子301の端子Gと接続されている。ゲート回路311の端子GNDは半導体素子301の端子O1及び電源314の負極と接続されている。ゲート回路311の端子VDDは電源314の正極と接続されている。制御信号源315の第1の端子は、ゲート回路311の端子VIN+と接続され、第2の端子はゲート回路311の端子VIN−と接続されている。
【0043】
ゲート回路311は、端子VIN+と端子VIN−との間にゲート回路311の閾値電圧以上の電圧が印加された場合に、端子VDDと端子Voとを電気的に接続し、端子GNDと端子Voとを電気的に切り離す動作をする。また、端子VIN+と端子VIN−との間にゲート回路311の閾値電圧以下の電圧が印加された場合、端子GNDと端子Voとを電気的に接続し、端子VDDと端子Voとを電気的に切り離す動作をする。ゲート回路311はMOSFET及びIGBTを駆動する一般的なゲート回路を用いればよい。
【0044】
スイッチ素子312をオン状態とすることにより、半導体素子301の端子Gと端子O1とを、ゲート抵抗Rgを迂回するバイパス経路により接続することができる。従って、スイッチ素子312がオフ状態の場合よりも低抵抗の経路により端子Gと端子O1とを接続することができる。このため、半導体素子301をダイオード動作させる場合に、スイッチ素子312をオン状態とすれば、ゲート抵抗Rgの値に関係なく、端子Gから端子O1への電荷の放電及び端子O1から端子Gへの電荷の充電をすばやく行うことが可能となる。従って、半導体素子301をダイオード動作させる場合におけるオン状態とオフ状態及びオフ状態とオン状態との遷移を高速にできる。従って、リカバリー電流を抑制することができ、さらに大きな逆起電圧の発生を抑制することができる。その結果、スイッチ装置の動作をより安定させ且つ損失を低減することができる。
【0045】
また、先に説明したように半導体素子301は、ダイオード動作の場合においてオン状態とすると、端子O1から端子Gへ電流が流れる。この電流は、スイッチ素子312がない場合にはゲート抵抗Rgを介して流れるため、ゲート抵抗Rgにおいて電力ロスが発生し、スイッチ装置の損失が大きくなる。しかし、スイッチ素子312を設けることにより、端子O1から端子Gへゲート抵抗Rgを介することなく、低抵抗の経路を介して電流を流すことができ、スイッチ装置の損失をより低減できる。
【0046】
スイッチ素子312がない場合には、電圧変化が生じるスイッチング時に、帰還容量の充放電電流はゲート抵抗Rg及びゲート回路311を介して流れる。このため、ゲート抵抗Rgに電圧が発生し、端子O1と端子Gとの間にノイズが発生する。しかし、スイッチ素子312を設けることにより、ゲート抵抗Rgよりもオン抵抗が低いスイッチ素子を介して帰還容量の充放電電流を流すことができるため、端子O1と端子Gとの間に生じるゲートノイズを低減できる。これにより、ノイズによる誤動作を生じにくくするという効果も得られる。
【0047】
また、ゲートノイズが発生した場合に、ノイズによる誤動作の発生を防止するために、負バイアスを印加することによりGaNトランジスタをオフ状態とすることが一般的に行われている。しかし、GaNトランジスタをオフ状態とする場合に負バイアスを用いると、ダイオード動作をさせた場合に、大きなオフセット電圧が発生する。このため、ダイオード動作の際にオン抵抗が増大してしまう。スイッチ素子312を設けることにより、ゲートノイズを抑制できるため、GaNトランジスタをオフ状態とする場合に負バイアスを用いなくても、誤動作を防止できる。従って、半導体素子301をダイオード動作させる場合のオン抵抗を低減することが可能となり、電力変換装置のさらなる低損失化が可能となる。また、負バイアス用の電源も不要となるため、部品点数の削減、装置の小型化、低コスト化という利点が得られる。
【0048】
図7は駆動部302の動作タイミングを示している。また、図8(a)〜(e)はそれぞれ、図7に示した期間a〜期間eにおけるスイッチ装置の動作状態を示している。駆動部302は、半導体素子301がオフ状態の時に、スイッチ素子312をオン状態とし、端子O1と端子Gとを低抵抗で接続することにより、ノイズを抑制し、高速なダイオード動作を可能とする。このため、半導体素子301がスイッチング動作を行う際及び半導体素子301がオン状態の際には、スイッチ素子312をオフ状態とする。
【0049】
図7に示すように、期間aにおいては、制御信号源315の信号がゲート回路311の閾値電圧以下であるオフ状態であり、半導体素子301の端子Gに印加されるゲート電圧も閾値電圧以下であるオフ状態となる。また、スイッチ素子312はオン状態である。期間bにおいて制御信号源315の信号がオフ状態からゲート回路311の閾値電圧以上のオン状態となると、スイッチ素子312はオフ状態となり、ゲート電圧が上昇する立ち上がり状態となる。期間cにおいてゲート電圧が立ち上り半導体素子301がオン状態へ遷移しても、スイッチ素子312はオフ状態を維持する。期間dにおいて制御信号源315の信号がオン状態からオフ状態となると、ゲート電圧は次第に低下する立ち下がり状態となる。スイッチ素子312は、制御信号源315の信号がオン状態からオフ状態へ遷移する瞬間から遅延時間T_delayだけオフ状態を維持する。この後期間eにおいて、スイッチ素子312はオン状態となる。遅延時間T_delayは、ゲート電圧が完全に立ち下るまでの時間が好ましい。しかし、設計マージンを持たせるためゲート電圧がオフ状態に遷移までの時間に、所望の時間を加えた時間としてもよい。以上のような、構成及び動作とすることにより、端子O1と端子Gとのノイズを低減することができるだけでなく、負バイアス用の電源が不要となる。
【0050】
なお、図7においてスイッチ素子312は、制御信号がオフ状態からオン状態へ遷移する瞬間より少し前にオフ状態としてもよい。このようにすれば、より安定して半導体素子301へゲート電圧を与えることができる。なお、スイッチ素子312は、双方向に電流を流す半導体スイッチであればよく、MOSFET、JFET(Junction Field Effect Transistor)、HFET(Heterojunction Field Effect Transistor)、ダイオードを並列接続したバイポーラトランジスタ又はダイオードを並列接続したIGBT等とすればよい。
【0051】
図9は、本実施形態のスイッチ装置の具体的な回路構成の一例を示す。なお、図9に示した回路構成は一例であり、同様の機能を果たす限りどのような構成であってもよい。図9に示すように制御信号源315の第1の端子は、第1のNOT回路321の入力と接続されている。第1のNOT回路321の出力は、第2のNOT回路322及び遅延回路323と接続されている。第2のNOT回路322の出力は、ゲート回路311のVIN端子と接続されている。遅延回路323は、アノードが第1のNOT回路321の出力と接続され、カソードがMOSFETからなるスイッチ素子312のゲートと接続されたダイオード325と、ダイオード325と並列に接続された抵抗326と、第1の端子がダイオード325のカソードと接続されたコンデンサ327とを有している。ゲート回路311、第1のNOT回路321及び第2のNOT回路322の端子VDDは、電源314の正極と接続されている。ゲート回路311、第1のNOT回路321及び第2のNOT回路322の端子GND、制御信号源315の第2の端子、コンデンサ327の第2の端子、スイッチ素子312のソース端子並びに半導体素子301のO1端子は、電源314の負極と接続されている。ゲート回路311のVo端子はゲート抵抗Rgを介して半導体素子301の端子Gと接続され、スイッチ素子312のドレイン端子は半導体素子301の端子Gと接続されている。なお、ゲート抵抗Rgは独立した抵抗素子であっても、所定の抵抗値となるように配線の材質、太さ及び長さ等を設定したものであってもよい。
【0052】
次に、図9のスイッチ装置の動作について説明する。なお、電源314の出力電圧は5Vとして説明する。制御信号源315がオフ状態(0V)の場合には、第1のNOT回路321の出力は例えば5Vとなっている。このとき、静的にはスイッチ素子312のゲートにも5Vが印加され、スイッチ素子312はオン状態となっている。このため半導体素子301の端子Gと端子O1との間には0Vが印加されている。また、第2のNOT回路322の出力は0Vとなっており、その電圧がゲート回路311の端子VINに入力されている。このため、ゲート回路311は端子Voと端子GNDとを電気的に接続している。
【0053】
制御信号源315がオフ状態からオン状態(5V)となると、第1のNOT回路321の出力は0Vとなる。スイッチ素子312のゲートに蓄えられた電荷はダイオード325と抵抗326を介して放電される。これにより、スイッチ素子312のゲートの電位は0Vとなり、スイッチ素子312は瞬間的にオフ状態へ遷移する。第2のNOT回路322の出力は5Vであるため、ゲート回路311は、端子Voと端子VDDとを電気的に接続している。このため、半導体素子301の端子Gの電圧はゲート抵抗Rgにより決定される変化率に従って上昇し、所定の電圧において一定となる。
【0054】
制御信号源315がオン状態からオフ状態となると、第1のNOT回路321の出力は5Vとなる。コンデンサ327の容量がスイッチ素子312の入力容量より十分高い場合には、スイッチ素子312のゲート電圧は、抵抗326の抵抗値とコンデンサ327の容量により決まる時定数に応じて上昇する。従って、スイッチ素子312のゲート電圧が閾値電圧を越えるまでスイッチ素子312はオフ状態を維持し、閾値電圧を超えるとスイッチ素子312はオン状態となる。図7におけるT_delayは、抵抗326とコンデンサ327とスイッチ素子312の閾値電圧とにより設定できる。
【0055】
なお、スイッチ素子312のオン抵抗が非常に小さい場合には、ダイオード動作の過渡応答において、ゲートのピーク電流が大きくなり、ゲート電極配線の寿命が短くなるという問題が生じる。このため、スイッチ素子312は、所望のピーク電流となるようなオン抵抗を有していることが望ましい。例えば図9に示す回路構成の場合には10mΩ程度とすればよい。また、所望のピーク電流とするために、スイッチ素子と直列に抵抗を接続して、所望の抵抗値を実現してもよい。さらに、ダイオード動作の場合の過渡応答時間を調整するために、スイッチ素子312のオン抵抗を設定したり、別途抵抗素子を挿入したりしてもよい。
【0056】
(一実施形態の第1変形例)
半導体素子301の端子G1と端子O1との間にスイッチ素子312を挿入する例を示した。しかし、図10に示すようにスイッチ素子312がゲート抵抗Rgと並列に接続された駆動部303を用いてもよい。この場合には、半導体素子301がダイオード動作においてオン状態となると、ゲート抵抗Rgを迂回するバイパス経路が形成され、端子O1からゲート回路311とスイッチ素子312とを介して端子Gに電流が流れる。ゲート回路311の抵抗がゲート抵抗Rgと比べて無視できる程度に小さければ、スイッチ素子312をオン状態とすることにより、オフ状態の場合よりも低抵抗な経路を介して端子Gと端子O1とを接続できる。従って、ダイオード動作におけるオン状態からオフ状態への遷移及びオフ状態からオン状態への遷移の速度を改善できる。その結果、リカバリー電流によるロス低減及びインダクタンスの逆起電圧発生を抑制することが可能となる。
【0057】
(一実施形態の第2変形例)
シングルゲートの半導体素子を用いたスイッチ装置の例を示したが、図11に示すように双方向スイッチとして用いられるダブルゲートの半導体素子304を用いてもよい。ダブルゲートの半導体素子304の一例を図12に示す。図12において図1と同一の構成要素には同一の符号を附している。図12に示すように、第1のオーミック電極116Aと第2のオーミック電極116Bとの間に第1のゲート電極118A及び第2のゲート電極118Bが、それぞれ第1のp型半導体層119A及び第2のp型半導体層119Bを介して形成されている。図12において第1のゲート電極118Aが図11のG1端子に対応し、第2のゲート電極118BがG2端子に対応する。
【0058】
第1のゲート電極118A及び第2のゲート電極118Bに所定のバイアスを印加することにより、ダブルゲートの半導体素子304は双方向スイッチとしても、ダイオードとしても動作させることができる。例えば、第1のゲート電極118Aと第2のゲート電極118Bとに、それぞれ、第1のオーミック電極116Aを基準として第1のゲート電極118Aの閾値電圧以上の電圧を印加し、第2のオーミック電極116Bを基準として第2のゲート電極118Bの閾値電圧以上の電圧を印加することにより、第1のオーミック電極116Aと第2のオーミック電極116Bとの間に双方向に電流が流れる双方向通電動作をさせることができる。一方、第1のゲート電極118A及び第2のゲート電極118Bに印加するバイアス電圧をそれぞれ閾値電圧以下の電圧とすることにより第1のオーミック電極116Aと第2のオーミック電極116Bとの間に双方向に電流が流れない双方向遮断動作をさせることができる。
【0059】
また、第1のゲート電極118Aに閾値電圧以上の電圧を印加し、第2のゲート電極118Bに閾値電圧以下の電圧を印加することにより、第1のオーミック電極116Aから第2のオーミック電極116Bへは電流が流れないが、第1のオーミック電極116Aから第2のオーミック電極116Bへは電流が流れるダイオード動作をさせることができる。第1のゲート電極118Aに閾値電圧以下の電圧を印加し、第2のゲート電極118Bに閾値電圧以上の電圧を印加することにより、第1のオーミック電極116Aから第2のオーミック電極116Bへは電流が流れるが、第1のオーミック電極116Aから第2のオーミック電極116Bへは電流が流れないダイオード動作をさせることができる。
【0060】
ダブルゲートの半導体素子においても、ダイオード動作における基本動作は、シングルゲートの半導体素子と同じである。このため、第1のゲート端子G1と第1のオーミック端子O1との間に、第1の駆動部302Aを接続し、第2のゲート端子G2と第2のオーミック端子O2との間に、第2の駆動部302Bを接続すれば、ダイオード動作におけるオン状態からオフ状態への遷移及びオフ状態からオン状態への遷移の速度を改善できる。なお、スイッチ素子312がゲート抵抗と並列に接続された構成の駆動部を用いてもよい。また、ダブルゲートの半導体素子は、ノーマリオフ型であればよく、ゲートがMIS構造等であってもよい。
【0061】
実施形態及び変形例において、ゲート電極と半導体層積層体との間にp型半導体層を有する半導体素子の例を説明したが、閾値電圧が0V以上であるノーマリオフ型のGaNトランジスタであれば同様の動作をさせることができる。例えば、ゲート電極と半導体層積層体との間に絶縁膜を有するいわゆるMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)型トランジスタの場合としてもよい。但し、MIS型トランジスタの場合には、ダイオード動作のオン状態において、第1のオーミック電極からゲート電極へは静的な電流は流れず、動的なゲート電流だけが流れる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係るスイッチ装置は、GaNトランジスタを理想的な還流ダイオードとして動作させ、低損失のスイッチ装置を実現でき、特に電力変換回路に用いる高速且つ低損失のスイッチ装置等として有用である。
【符号の説明】
【0063】
111 基板
112 バッファ層
113 半導体層積層体
114 窒化ガリウム層
115 窒化アルミニウムガリウム層
116A 第1のオーミック電極
116B 第2のオーミック電極
118 ゲート電極
118A 第1のゲート電極
118B 第2のゲート電極
119 p型半導体層
119A 第1のp型半導体層
119B 第2のp型半導体層
120 裏面電極
165 活性領域
166 不活性領域
201 ユニット
206A 第1のオーミック電極配線
206B 第2のオーミック電極配線
208 ゲート電極配線
211 保護膜
221A 第1のオーミック電極パッド
221B 第2のオーミック電極パッド
223 ゲート電極パッド
301 半導体素子
302 駆動部
302A 第1の駆動部
302B 第2の駆動部
303 駆動部
304 半導体素子
311 ゲート回路
312 スイッチ素子
314 電源
315 制御信号源
321 第1のNOT回路
322 第2のNOT回路
323 遅延回路
325 ダイオード
326 抵抗
327 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体素子と、
前記窒化物半導体素子を駆動する駆動部とを備え、
前記窒化物半導体素子は、
基板の上に形成された窒化物半導体からなる半導体層積層体と、
前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、
前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に形成された第1のゲート電極とを有し、
前記第1のゲート電極の閾値電圧が0V以上であり、
前記駆動部は、
前記第1のゲート電極にバイアス電圧を印加するゲート回路と、
前記第1のゲート電極と第1の端子が接続され、前記第1のオーミック電極と第2の端子が接続され、双方向に電流を流すスイッチ素子とを有し、
前記バイアス電圧を、前記第1のオーミック電極の電位を基準として前記第1のゲート電極の閾値電圧以下として、前記第1のオーミック電極から前記第2のオーミック電極への電流を通電し且つ前記第2のオーミック電極から前記第1のオーミック電極への電流を遮断する動作を行う場合には、前記スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
窒化物半導体素子と、
前記窒化物半導体素子を駆動する駆動部とを備え、
前記窒化物半導体素子は、
基板の上に形成された窒化物半導体からなる半導体層積層体と、
前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、
前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に形成された第1のゲート電極とを有し、
前記第1のゲート電極の閾値電圧が0V以上であり、
前記駆動部は、
前記第1のゲート電極にゲート抵抗を介してバイアス電圧を印加するゲート回路と、
前記ゲート抵抗と並列に接続され、双方向に電流を流すスイッチ素子とを有し、
前記バイアス電圧を、前記第1のオーミック電極の電位を基準として前記第1のゲート電極の閾値電圧以下として、前記第1のオーミック電極から前記第2のオーミック電極への電流を通電し且つ前記第2のオーミック電極から前記第1のオーミック電極への電流を遮断する動作を行う場合には、前記スイッチ素子をオン状態とすることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
前記スイッチ素子は、MOSFET、JFET、HFET、ダイオードが並列接続されたIGBT又はダイオードが並列接続されたバイポーラトランジスタからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記窒化物半導体素子は、前記半導体層積層体と前記第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記窒化物半導体素子は、前記半導体層積層体と前記第1のゲート電極との間に形成された絶縁膜を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記半導体素子は、前記第1のゲート電極と前記第2のオーミック電極との間に形成された第2のゲート電極を有し、
第2のゲート電極の閾値電圧は0V以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記半導体素子は、前記半導体層積層体と前記第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体層を有していることを特徴とする請求項6に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記半導体素子は、前記半導体層積層体と前記第2のゲート電極との間に形成された絶縁膜を有していることを特徴とする請求項6に記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−42193(P2013−42193A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275288(P2009−275288)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】