説明

ハイブリッド車の制御装置

【課題】ハイブリッド車の制御装置において、良好なドライバビリティおよび燃費の向上を達成しつつ過給圧を速やかに上昇させることができる技術を提供する。
【解決手段】内燃機関と、発電機と、バッテリと、ターボチャージャと、吸気スロットル弁と、を備えたハイブリッド車の制御装置において、過給圧を上昇させるときに前記吸気スロットル弁の開度を、要求トルクを発生させるために必要となる開度よりも大きくし、且つ前記要求トルクよりも過剰に発生したトルクを発電機により電気エネルギに変換してバッテリを充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャを備えた内燃機関では、過給圧が十分に高いときに最も熱効率が高くなるように設計されているので、過給圧が十分に高くなるまでは燃費が悪くなる。このような、過給圧が十分に高くなるまでの時間遅れを生じる現象を以下、ターボラグという。特に、希薄燃焼式の内燃機関の場合には、ターボラグが生じている間はトクル変動が発生しやすいために希薄燃焼を行うことができなくなるので燃費の悪化が著しい。
【0003】
また、ハイブリッド車では、電動機のみで車両が走行している状態から内燃機関を始動させ、電動機と内燃機関とを併用して走行することが行われるが、この内燃機関の始動時にターボラグが発生する。ここで、内燃機関への燃料噴射量は、過給圧が十分に高くなったときの機関回転数と機関負荷とを基準として最も燃費が良くなるように設定されているので、ターボラグが生じている間はこの最も燃費が良くなる状態から外れてしまい燃費が悪化してしまう。
【0004】
そして、リーン空燃比での加速時に目標過給圧と実過給圧との差に応じた補正値により、スロットル開度を制御することで目標吸入空気量を増量補正し、トルクの立ち上がりを改善する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、加速時に補助スロットルバルブを一時的に開くことで、吸入空気量を増大させてターボラグを抑制する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−97080号公報
【特許文献2】特開昭63−246424号公報
【特許文献3】特開平10−252517号公報
【特許文献4】特開2000−333305号公報
【特許文献5】特開平11−148388号公報
【特許文献6】特開2001−248491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、過給圧を速やかに上昇させるためにスロットルバルブの開度を変更すると、トルク変動を誘発しドライバビリティが悪化することがある。
【0007】
また、ターボラグが発生している間は、過給圧が十分に高いときと比較して吸入空気量が少なくなり、スロットル弁の開度で燃料の噴射量を決定している場合には、スロットル開度に応じた空気量が得られないために燃料過多の状態となり、燃費が悪化する。
【0008】
また、エアフローメータにより燃料噴射量を決定している場合では、目標空燃比に合わせることは可能であるが、ターボラグにより発生トルクが低下するため、比較的熱効率の悪い状態で内燃機関が運転されるので、やはり燃費が悪化してしまう。
【0009】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド車の制御装置において、良好なドライバビリティおよび燃費の向上を達成しつつ過給圧を速やかに上昇させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために本発明によるハイブリッド車の制御装置は、以下のことを特徴とする。すなわち、
内燃機関と、発電機と、バッテリと、ターボチャージャと、吸気スロットル弁と、を備えたハイブリッド車の制御装置において、
過給圧を上昇させるときに前記吸気スロットル弁の開度を、要求トルクを発生させるために必要となる開度よりも大きくし、且つ前記要求トルクよりも過剰に発生したトルクを前記発電機により電気エネルギに変換してバッテリを充電することを特徴とする。
【0011】
本発明の最大の特徴は、過給圧を上昇させるときに吸気スロットル弁の開度を大きくし、このときに発生する過剰なトルクを電気エネルギとしてバッテリへ蓄えることにより、過給圧を速やかに上昇させることにある。
【0012】
ここで、吸気スロットル弁の開度を大きくすると、該吸気スロットルの上流と下流との圧力差を速やかに小さくすることができる。これにより、内燃機関の吸入空気量を増大させることができ、さらには排気のエネルギを増大させてターボチャージャの回転数を増加させることができる。これにより、過給圧を速やかに上昇させターボラグを抑制することができる。よって、ドライバビリティの悪化を抑制することができる。
【0013】
このときに、内燃機関が発生するトルクが増大するが、このトルクの増大分を発電機により電気エネルギに変換しバッテリに蓄えることにより、後の電動機による車両走行時に該電気エネルギを活用することができる。ここで、内燃機関始動前は電動機により車両が走行していたため、バッテリに蓄えられていた電力が消費されているので、バッテリに充電することができないといったことも起こらない。
【0014】
このように過給圧を速やかに上昇させることができると、速やかに燃費の良い運転状態に移行することが可能となり、燃費を向上させることができる。そして、希薄燃焼式内燃機関では特に効果が高い。
【0015】
なお、「要求トルクを発生させるために必要となる開度よりも大きく」には、吸気スロットル弁が全開の場合も含むことができる。
【0016】
上記課題を達成するために本発明によるハイブリッド車の制御装置は、以下のことを特徴としてもよい。すなわち、
内燃機関と、発電機と、バッテリと、ターボチャージャと、吸気スロットル弁と、を備えたハイブリッド車の制御装置において、
前記内燃機関を始動させるためのクランキング時から過給圧が目標値に達するまでの間、吸気スロットル弁の開度をアイドル時よりも大きくし、且つ前記内燃機関の回転数が目標回転数よりも高い場合には前記発電機により発電を行って目標回転数まで下降させることを特徴としてもよい。
【0017】
ここで、内燃機関の始動時にはターボチャージャの回転数が低く、過給圧が上昇しにくい。しかし、吸気スロットル弁の開度をアイドル時よりも大きくすることで、より多くの空気を内燃機関に吸入させることができ、過給圧を速やかに上昇させることができる。
【0018】
また、内燃機関始動後に吸気スロットル弁の開度がアイドル時よりも大きいと、該内燃機関の回転数が上昇するので、目標回転数(例えば、アイドル回転数)よりも高くなった場合には、前記発電機により発電を行って内燃機関の回転数を所定回転数まで低下させる。そして、発電機により得られた電気エネルギはバッテリに蓄えることができる。
【0019】
なお、「吸気スロットル弁の開度をアイドル時よりも大きくする」には、全開の場合も含むことができる。
【0020】
このようにして、過給圧を速やかに上昇させることができるので、良好なドライバビリティを得ることができる。
【0021】
また、過給圧を速やかに上昇させることができると、速やかに燃費の良い運転状態に移行することが可能となり、燃費を向上させることができる。
【0022】
本発明においては、前記内燃機関のトルク変動を検出するトルク変動検出手段と、
前記トルク変動検出手段により所定値以上のトルク変動が検出された場合には、前記吸気スロットル弁の開弁度合いを小さくする吸気スロットル弁開度補正手段と、
をさらに備えることができる。
【0023】
ここで、吸気スロットル弁の開度を大きくすると、吸入空気量が増加することで内燃機関の圧縮行程でより多くの力が必要となり、該内燃機関で振動や衝撃が発生することがある。
【0024】
その点、トルク変動が検出された場合には、吸気スロットル弁の開度をそのときの開度よりも小さくすることにより、内燃機関の吸入空気量を減少させて該内燃機関の振動を抑制することが可能となる。ここで、トルク変動に関する「所定値」とは、振動や衝撃が許容できる範囲内にないときの値を示している。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るハイブリッド車の制御装置では、良好なドライバビリティおよび燃費の向上を達成しつつ過給圧を速やかに上昇させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るハイブリッド車の制御装置の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本実施例によるハイブリッドシステム、及び内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。
【0028】
本実施の形態によるハイブリッド車は、内燃機関1、動力分割機構31、電動モータ32、発電機33、バッテリ34、インバータ35、車軸36、減速機37、車輪38を備えて構成されている。
【0029】
動力分割機構31は、内燃機関1からの出力を発電機33や車軸36に振り分けている。この動力分割機構31は、電動モータ32からの出力を車軸36に伝達する機能をも有する。電動モータ32は、減速機37を介して車軸36と比例した回転数にて回転する。該電動モータ32は、通常運転時には必要に応じて内燃機関1の出力を補助することもできる。また、電動モータ32及び発電機33には、インバータ35を介してバッテリ34が接続されている。そして、発電機33は、内燃機関1からの動力を得て発電しバッテリ34の充電を行う。
【0030】
このように構成されたハイブリッドシステムでは、通常走行時には内燃機関1の出力若しくは電動モータ32の出力により車軸36を回転させ、車輪38が駆動される。また、内燃機関1の出力と電動モータ32の出力とを合わせて車軸36を回転させ、車輪38を
駆動することもできる。一方、減速時には、車輪38の回転力により電動モータ32を発電機として作動させることで、運動エネルギを電気エネルギに変換しバッテリ34に回収させることもできる。このように、車両減速時に運動エネルギを電気エネルギに変換するため、車両の減速を補助することが可能となっている。
【0031】
次に、内燃機関1は、4つの気筒2を有し、該気筒2内へ燃料を直接噴射させる筒内直接噴射式ガソリンエンジンである。この内燃機関1は、希薄燃焼による運転が可能な機関である。
【0032】
この内燃機関1には、気筒内へ燃料を噴射する燃料噴射弁3が備えられている。
【0033】
また、内燃機関1には、吸気枝管4が接続されており、吸気枝管4の各枝管は、各気筒2の燃焼室へと通じている。
【0034】
前記吸気枝管4は、吸気管5に接続され、該吸気管5の途中には、排気のエネルギを駆動源として作動するターボチャージャ15のコンプレッサハウジング15aが設けられている。
【0035】
前記吸気管5における吸気枝管4の直上流に位置する部位には、該吸気管5内を流通する吸気の流量を調節する吸気スロットル弁6が設けられている。この吸気スロットル弁6には、ステップモータ等で構成されて該吸気スロットル弁6を開閉駆動する吸気スロットル弁用アクチュエータ7が取り付けられている。
【0036】
また、吸気枝管4には、該吸気枝管4内の圧力に応じた信号を出力し、該吸気枝管4内の圧力を測定可能とする第1圧力センサ8が備えられている。また、コンプレッサハウジング15aよりも下流で且つ吸気スロットル弁6よりも上流の吸気管5には、該吸気管5内の圧力に応じた信号を出力し、該吸気管5内の圧力を測定可能とする第2圧力センサ16が備えられている。
【0037】
さらに、コンプレッサハウジング15aよりも上流の吸気管5には、該吸気管5を通過する吸気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ17が取り付けられている。このエアフローメータ17の出力信号により内燃機関1の吸入空気量を得ることができる。
【0038】
一方、内燃機関1には、排気枝管9が接続され、該排気枝管9は、前記ターボチャージャ15のタービンハウジング15bと接続されている。前記タービンハウジング15bは、排気管10と接続されている。この排気管10は、下流にて大気へと通じている。
【0039】
前記タービンハウジング15bよりも下流の排気管10の途中には、排気浄化触媒11が備えられている。
【0040】
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU12が併設されている。このECU12は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御するユニットである。
【0041】
また、ECU12には、運転者がアクセルを踏み込んだ量に応じた電気信号を出力し、車両の負荷状態を検出可能なアクセル開度センサ13、内燃機関1の回転数を検出するクランクポジションセンサ14の他、各種センサが電気配線を介して接続され、上記した各種センサの出力信号がECU12に入力されるようになっている。
【0042】
一方、ECU12には、燃料噴射弁3、吸気スロットル弁用アクチュエータ7等が電気
配線を介して接続され、ECU12により制御することが可能になっている。
【0043】
次に、本実施例による過給圧上昇制御のフローについて説明する。
【0044】
図2は、本実施例による過給圧上昇制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、内燃機関始動直後に実行される。
【0045】
ステップS101では、ECU12は、吸気枝管4内の圧力および吸気管5内の圧力を検出する。第1圧力センサ8および第2圧力センサ16により圧力が検出される。
【0046】
ステップS102では、ECU12は、クランキング中の吸気スロットル弁6の開度を大きくする。ここでは、吸気スロットル弁6の上流と下流との圧力差が可及的に小さくなるように、さらに吸気枝管4内の圧力が大きな負圧にならないように吸気スロットル弁6の開度が調整される。なお、このときに吸気スロットル弁6を全開としても良い。
【0047】
ステップS103では、ECU12は、内燃機関1の始動後に吸気スロットル弁6の開度を大きくする。ここでは、ターボチャージャ15よりも下流の圧力が速やかに所定の圧力に達するように、さらに吸気スロットル弁6の上流と下流との圧力差が可及的に小さくなるように吸気スロットル弁6の開度が調整される。このときの吸気スロットル弁6の開度は、内燃機関1の回転数と負荷により定まる吸気スロットル弁6の開度、および、バッテリ34を充電するために必要となる吸気スロットル弁6の開度のどちらよりも大きな開度とする。なお、吸気スロットル弁6を全開としても良い。
【0048】
また、車輌を駆動させるために必要となる内燃機関1の回転数およびバッテリ34を充電するために必要となる内燃機関1の回転数よりも内燃機関1の実際の回転数が高くなるように、電動モータ32を用いて内燃機関1の回転数を高めるようにしても良い。
【0049】
そして、本ステップの処理中には常に希薄燃焼状態で内燃機関1の運転を行なうことで燃費の悪化を抑制する。ここでは、必要とされるトルクよりも大きなトルクが発生するが、この過剰な発生トルクは発電機33により電気エネルギに変換されバッテリ34に蓄えられる。
【0050】
ステップS104では、ECU12は、第1圧力センサ8により検出される圧力が目標値よりも大きいか否か判定する。この目標値は、燃費が最も良くなる希薄燃焼運転を実現できる圧力として予め実験等により得ておく。
【0051】
ステップS104で肯定判定がなされた場合にはステップS105へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS103へ戻る。
【0052】
ステップS105では、ECU12は、通常の走行制御を行う。すなわち、過給圧を速やかに上昇させる制御は行わず、吸気スロットル弁6の開度を要求トルクに見合ったものとする。
【0053】
このようにして、過給圧を速やかに上昇させることができる。
【0054】
なお、ステップS103においては、タービンハウジング15bに供給される排気のエネルギがより多くなるように以下の制御を併用してもよい。すなわち、(1)点火プラグを備えた内燃機関の場合には、点火タイミングを遅くする、(2)圧縮着火式内燃機関の場合には、燃料噴射タイミングを遅くする。(3)燃料噴射量を変更する、(4)可変パルブタイミング機構、可変パルブリフト量機構を備えた内燃機関の場合には、吸気バルブ
若しくは排気バルブの作用角若しくはリフト量を最大とする、(5)可変パルブタイミング機構、可変パルブリフト量機構を備えた内燃機関の場合には、吸気バルブ若しくは排気バルブの開閉タイミングを変更する、(6)可変容量型ターボチャージャを備えた内燃機関では、該可変容量型ターボチャージャの容量を最小にして内燃機関1を始動させ、機関始動後に必要に応じて容量を変更する、(7)インタークーラを備えた内燃機関の場合には、該インタークーラをバイパスする、等を併用しても良い。
【0055】
ここで、(1)点火タイミングを遅くすると、燃料の燃焼により発生するエネルギがピストンを押し下げるために使われる率が減少し、排気のエネルギが高くなり、タービンの回転数を上昇させることができるので、より速やかに過給圧を上昇させることができる。しかし、燃費は悪化する。
【0056】
(2)燃料噴射タイミングを遅くすると、燃料の燃焼により発生するエネルギがピストンを押し下げるために使われる率が減少し、排気のエネルギが高くなり、タービンの回転数を上昇させることができるので、より速やかに過給圧を上昇させることができる。しかし、燃費は悪化する。
【0057】
(3)燃料噴射量を増加させると発生熱量が増加するので、過給圧の上昇はより速やかになるが、燃費は悪化する。
【0058】
(4)吸気バルブ若しくは排気バルブの作用角若しくはリフト量を最大とすると、ポンプ損失を減少させ、さらには、吸入空気量を増加させることができる。
【0059】
(5)吸気バルブ若しくは排気バルブの開閉タイミングを変更すると、体積効率を最大限高くすることが可能となる。
【0060】
(6)可変容量型ターボチャージャの容量を最小にすると、過給圧を速やかに上昇することが可能となるが、背圧が上昇するので燃費は悪化する。
【0061】
(7)インタークーラをバイパスすると、インタークーラでの圧力損失をなくすことができ、さらには、内燃機関停止時に吸気管5内に滞留する空気の量を低減することができる。
【0062】
そして、これらを併用する際には、過給圧の上昇度合いと燃費との兼ね合いから、そのときにどちらを優先させるかにより前記(1)から(7)のどれを併用するのか決定しても良い。
【0063】
以上により、内燃機関1を希薄燃焼状態でより長く運転することが可能となるため、燃費を向上させることができる。すなわち、ターボラグに起因する燃費の悪化を抑制することができる。
【0064】
ここで、内燃機関1の始動直後に吸気枝管4および吸気管に滞留している空気が気筒2内に吸入される間、すなわちターボラグが発生している間は、ターボチャージャ15よりも上流の吸気管5に設けられたエアフローメータ17によって検出された空気量よりも実際に気筒2内に吸入される空気量が少なくなる。燃料噴射弁3から噴射される燃料噴射量はエアフローメータ17によって検出された空気量から算出されるため、空燃比はリッチとなり燃費が悪化してしまう。エアフローメータ17をターボチャージャ15と内燃機関1との間の吸気管5に設けることも考えられるが、吸気温度の変化による吸入空気量の測定誤差が大きくなってしまう。
【0065】
その点、本実施例においては、エアフローメータ17による検出値と実際に気筒2に吸入される空気量との時間遅れを小さくすることができ、速やかに過給圧を上昇させることができるので、希薄燃焼運転に速やかに移行することができるので、燃費の悪化を抑制することができる。
【0066】
また、ターボチャージャ15を電力等により回転させる装置を設けることや、ターボチャージャ15よりも上流に空気を導入する装置を設けることにより過給圧を速やかに上昇することが可能であるが、本実施例によれば、これらを設ける必要もないのでコストや重量の増加を抑制することができる。
【0067】
さらに、過給圧を速やかに上昇させている間は、発電機33により内燃機関1の回転数を制御することができるので、良好なドライバビリティを得ることができる。
【実施例2】
【0068】
次に、過給圧上昇制御の他の実施態様について説明する。なお、ハードウェアについては、実施例1と共通なので説明を省略する。
【0069】
ここで、本実施例においては、過給圧のハンチングを防止する。すなわち、過給圧が速やかに上昇すると、過給圧のハンチングが発生しやすくなるので、本実施例においては、この過給圧のハンチングを抑制する。
【0070】
次に、本実施例による過給圧上昇制御のフローについて説明する。
【0071】
図3は、本実施例による過給圧上昇制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、内燃機関始動直後に実行される。なお、前記フローと同一の処理が行われるステップについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
ステップS201では、ECU12は、第1圧力センサ8および第2圧力センサ16から得られる圧力の変化量を算出する。この変化量は、予め設定しておいた目標値からの変化量である。ここで、目標値は、燃費が最も良くなる希薄燃焼が実現できる圧力として予め実験等により求めてECU12に記憶させておく。
【0073】
ステップS202では、ECU12は、吸気枝管4内の圧力を目標値に収束させるために最適な吸気スロットル弁6の開度をステップS201で算出した圧力の変化量に基づいて算出する。ここで、吸気スロットル弁6の開度と圧力の変化量との関係は予め実験等により求めてマップ化しECU12に記憶させておく。
【0074】
ここで、内燃機関1の回転数を変化させている場合には、回転数の変化による圧力変化をも考慮する。
【0075】
そして、吸気スロットル弁6開度および内燃機関1の回転数を変化させて吸気枝管4内の圧力を目標値に収束させる。
【0076】
このようにして、過給圧を速やかに上昇させることができる。
【0077】
なお、ステップS202においては、タービンハウジング15bに供給される排気のエネルギがより多くなるように以下の制御を併用してもよい。すなわち、(1)点火プラグを備えた内燃機関の場合には、点火タイミングを遅くする、(2)圧縮着火式内燃機関の場合には、燃料噴射タイミングを遅くする。(3)燃料噴射量を変更する、(4)可変パルブタイミング機構、可変パルブリフト量機構を備えた内燃機関の場合には、吸気バルブ
若しくは排気バルブの作用角若しくはリフト量を最大とする、(5)可変パルブタイミング機構、可変パルブリフト量機構を備えた内燃機関の場合には、吸気バルブ若しくは排気バルブの開閉タイミングを変更する、(6)可変容量型ターボチャージャを備えた内燃機関では、該可変容量型ターボチャージャの容量を最小にして内燃機関1を始動させ、機関始動後に必要に応じて容量を変更する、(7)インタークーラを備えた内燃機関の場合には、該インタークーラをバイパスする、等を併用しても良い。
【0078】
これらを併用する効果は、実施例1と同様である。
【0079】
このようにして、過給圧を速やかに上昇させたときの、過給圧のハンチングを抑制することができる。
【実施例3】
【0080】
次に、過給圧上昇制御の他の実施態様について説明する。なお、ハードウェアについては、実施例1と共通なので説明を省略する。
【0081】
ここで、内燃機関の燃焼方式、排気量、シリンダ構成、発電機等の慣性および連結方法によっては、内燃機関の始動クランキング時に吸気スロットル弁6の開度を大きくすると、気筒2に吸入される空気量が過剰に多くなる。これにより、圧縮行程時に気筒2内での空気からの反力が大きくなり振動や衝撃が発生することがある。
【0082】
その点、本実施例においては、トルク変動が大きくなる場合には、吸気スロットル弁6の開度を小さくしてトルク変動を抑制する。
【0083】
次に、本実施例による過給圧上昇制御のフローについて説明する。
【0084】
図4は、本実施例による過給圧上昇制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、内燃機関始動直後に実行される。なお、前記フローと同一の処理が行われるステップについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
ステップS301では、ECU12は、クランキング中の内燃機関1および発電機33の回転数の単位時間あたりの変動値(以下、回転変動ともいう。)若しくは内燃機関1の負荷の単位時間あたりの変動値(以下、負荷変動ともいう。)を検出する。なお、負荷変動は発電機33の発生トルクの変動値としても良い。
【0086】
ステップS302では、ECU12は、ステップS301で算出した回転変動若しくは負荷変動と吸気枝管4内の圧力とに基づいて、吸気枝管4内の圧力が大きな負圧とならないように、さらには回転変動若しくは負荷変動が最も小さな値となるように、吸気スロットル弁6の開度を調整する。吸気スロットル弁6の開度は、吸気枝管4内の圧力と回転変動若しくは負荷変動と吸気スロットル弁6の開度との関係として予め実験等により求めてECU12に記憶させておく。
【0087】
その後ステップS104へ進み、該ステップS104で肯定判定がなされた場合にはステップS105へ進み、一方、否定判定がなされた場合にはステップS301へ戻る。
【0088】
このようにして、振動や衝撃を抑制しつつ過給圧を速やかに上昇させることができる。
【0089】
なお、ステップS302においては、タービンハウジング15bに供給される排気のエネルギがより多くなるように以下の制御を併用してもよい。すなわち、(1)点火プラグを備えた内燃機関の場合には、点火タイミングを遅くする、(2)圧縮着火式内燃機関の
場合には、燃料噴射タイミングを遅くする。(3)燃料噴射量を変更する、(4)可変パルブタイミング機構、可変パルブリフト量機構を備えた内燃機関の場合には、吸気バルブ若しくは排気バルブの作用角若しくはリフト量を最大とする、(5)可変パルブタイミング機構、可変パルブリフト量機構を備えた内燃機関の場合には、吸気バルブ若しくは排気バルブの開閉タイミングを変更する、(6)可変容量型ターボチャージャを備えた内燃機関では、該可変容量型ターボチャージャの容量を最小にして内燃機関1を始動させ、機関始動後に必要に応じて容量を変更する、(7)インタークーラを備えた内燃機関の場合には、該インタークーラをバイパスする、等を併用しても良い。
【0090】
これらを併用する効果は、実施例1と同様である。
【実施例4】
【0091】
次に、過給圧上昇制御の他の実施態様について説明する。なお、本実施例においては、車両の位置を検知するナビゲーションシステムを備えている。その他のハードウェアについては、実施例1と共通なので説明を省略する。
【0092】
ここで、上述したように、ターボラグは主に内燃機関1の始動時に発生する。そして、従来のハイブリッド車では、駆動力の要求値とバッテリ34の充電要求とから内燃機関の始動の可否を決定していたが、走行条件によっては内燃機関1を始動後すぐに停止することが頻繁に起こり得る。この場合、内燃機関の始動回数が増加するので、かえって燃費を悪化させることがある。
【0093】
その点、本実施例においては、車両に搭載されたナビゲーションシステムから得られる情報に基づいて内燃機関を始動するか否か判断する。すなわち、予め走行経路が設定されている場合には、内燃機関を始動させる回数を燃費が向上する範囲で可及的に少なくする一方で、内燃機関が稼動している時間が可及的に長くなるようにして充電量を増やす。さらに、走行経路内で内燃機関を使用しての走行と電動モータ32のみによる走行とを振り分けて燃費が最良となるように、且つバッテリ34の充電量と放電量とが釣り合うように制御する。
【0094】
例えば、車両が直ぐ停止するのが予め分かっていて、且つバッテリ34の充電要求があれば内燃機関1を停止させないようにする。また、例えば、内燃機関1が停止状態で、且つ輌が直ぐ停止するのが予め分かっていれば内燃機関1を始動させないようにする。
【0095】
このようにして、内燃機関1の始動回数を減少させて燃費を向上させることが可能となる。
【0096】
なお、本実施例は前記実施例1から4と組み合わせて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】実施例によるハイブリッドシステム、及び内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1による過給圧上昇制御のフローを示したフローチャートである。
【図3】実施例2による過給圧上昇制御のフローを示したフローチャートである。
【図4】実施例3による過給圧上昇制御のフローを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0098】
1 内燃機関
2 気筒
3 燃料噴射弁
4 吸気枝管
5 吸気管
6 吸気スロットル弁
7 吸気スロットル弁用アクチュエータ
8 第1圧力センサ
9 排気枝管
10 排気管
11 排気浄化触媒
12 ECU
13 アクセル開度センサ
14 クランクポジションセンサ
15 ターボチャージャ
15a コンプレッサハウジング
15b タービンハウジング
16 第2圧力センサ
17 エアフローメータ
31 動力分割機構
32 電動モータ
33 発電機
34 バッテリ
35 インバータ
36 車軸
37 減速機
38 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、発電機と、バッテリと、ターボチャージャと、吸気スロットル弁と、を備えたハイブリッド車の制御装置において、
過給圧を上昇させるときに前記吸気スロットル弁の開度を、要求トルクを発生させるために必要となる開度よりも大きくし、且つ前記要求トルクよりも過剰に発生したトルクを前記発電機により電気エネルギに変換してバッテリを充電することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
【請求項2】
内燃機関と、発電機と、バッテリと、ターボチャージャと、吸気スロットル弁と、を備えたハイブリッド車の制御装置において、
前記内燃機関を始動させるためのクランキング時から過給圧が目標値に達するまでの間、吸気スロットル弁の開度をアイドル時よりも大きくし、且つ前記内燃機関の回転数が目標回転数よりも高い場合には前記発電機により発電を行って目標回転数まで下降させることを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関のトルク変動を検出するトルク変動検出手段と、
前記トルク変動検出手段により所定値以上のトルク変動が検出された場合には、前記吸気スロットル弁の開弁度合いを小さくする吸気スロットル弁開度補正手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−46297(P2006−46297A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232354(P2004−232354)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】