説明

パーキングロック装置

【課題】車両の停止状態を保持するようにパーキングロック機構が作動した後に、ブレーキ装置の操作を解除しても予期しない車両の揺動の発生を防止することが可能なパーキングロック装置を提供することを目的とする。
【解決手段】パーキングロック条件が満たされた場合に、Pレンジ成立装置31がパーキングロック機構14をロック状態とする前に、傾斜方向検出装置95で検出された傾斜方向と車両の停止時に自動変速機1によって成立されている走行レンジとに基づいて、車両が路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止したことを検出すると、車両が路面の傾斜を上る方向の走行レンジを自動変速機1に一旦成立させた後に、Pレンジ成立装置31にパーキングロック機構14をロック状態にさせてPレンジを成立させるパーキングロック制御装置32と、を備えるパーキングロック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の停止状態を保持するパーキングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキングロック装置は、車両の停止などを含む所定の条件(パーキングロック条件)が満たされると自動変速機の出力部材をロック状態にして車両を停止状態で保持する装置である。このようなパーキングロック装置として、例えば特許文献1には、車両が停止した場合に自動的に作動する装置が開示されている。この自動パーキングロック装置は、自動変速機の出力部材をロック状態にするパーキングロック機構と、当該パーキングロック機構を作動させる電動モータを含んだアクチュエータを有する。そして、パーキングロック条件が満たされると、コントローラがアクチュエータを介してパーキングロック機構を作動させ、運転者がロック操作をしなくても自動的に車両を停止状態において保持することができるものである。
【0003】
このようなパーキングロック装置は、例えばパーキングロック機構における係合部材が自動変速機の出力軸に固定された被係合部材(パーキングギヤ)と噛み合うことにより出力部材をロック状態にする機構となっている。そのため、摩擦材によって駆動輪をロックするパーキングブレーキなどと比較して、車両の前後力(クリープ力や坂路などに由来し車両に発生する移動荷重)に対する保持力を増大させることができる。従って、パーキングロック装置による車両の停止状態の保持では、車両の駆動力などによる引きずりが発生せず、良好に車両を移動不能な状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−72296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パーキングロック装置におけるパーキングロック機構は例えば自動変速機の出力部材の回転を規制するように設けられ、一方でブレーキなどの摩擦材は駆動輪の内周側などに設けられている。そのため、駆動源が出力する駆動力を伝達する車両の駆動系において、車両の停止状態を保持するパーキングロック装置から駆動輪までの間には、機械的なガタを詰めるように車両の前後力に起因する捩れが生じていることがある。よって、パーキングロック装置が作動した後に、運転者が車両を走行状態から停止状態にするために行っていたブレーキ装置の操作を解除すると、上記の機械的なガタを詰めていた捩れにより車両に意図しない移動荷重が加わることがあった。そうすると、パーキングロック装置が作動しているにも拘わらず車両が揺れ動くことになり、乗員に不快感を与えるおそれがある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車両の停止状態を保持するようにパーキングロック機構が作動した後に、ブレーキ装置の操作を解除しても予期しない車両の揺動の発生を防止することが可能なパーキングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明によると、車両に搭載された駆動源によって回転され、駆動系を介して駆動輪と連結された回転部材と、前記車両が停止状態にあることを検出する停車検出装置と、係合部材を前記回転部材に設けられた被係合部と係合させることにより前記回転部材の回転を規制するロック状態と、前記係合部材を前記被係合部から離脱させることにより前記ロック状態を解除するアンロック状態との間で作動可能なパーキングロック機構と、前記回転部材が前記駆動源によって正転され前記車両が前進するDレンジおよび前記回転部材が前記駆動源によって逆転され前記車両が後退するRレンジの何れか一方の走行レンジを成立させる走行レンジ切替え装置と、パーキングロック条件が満たされると前記パーキングロック機構を前記ロック状態としてPレンジを成立するPレンジ成立装置と、
前記車両が走行する路面が車両前方において下り坂または上り坂になっている傾斜方向を検出する傾斜方向検出装置と、前記パーキングロック条件が満たされた場合に、前記Pレンジ成立装置が前記パーキングロック機構を前記ロック状態とする前に、前記傾斜方向検出装置で検出された傾斜方向と前記停車検出装置で検出された前記車両の停止時に前記走行レンジ切替え装置によって成立されている前記走行レンジとに基づいて、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止したことを検出すると、前記車両が前記路面の傾斜を上る方向の前記走行レンジを前記走行レンジ切替え装置に一旦成立させた後に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させるパーキングロック制御装置と、を備える。
【0007】
請求項2に係る発明によると、請求項1において、運転者によるアクセル操作部材の操作によって前記駆動源の駆動トルクを制御する出力制御装置とは別に、前記駆動源の駆動トルクを独立して制御する駆動トルク制御装置をさらに備え、前記パーキングロック制御装置は、前記車両が前記路面の傾斜を上る方向の前記走行レンジを前記走行レンジ切替え装置に一旦成立させた後に、前記駆動源が前記路面の傾斜によって前記車両に発生する前後力を打ち消す駆動トルクを発生するように前記駆動トルク制御装置に前記駆動源の駆動トルクを制御させてから、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させる。
【0008】
請求項3に係る発明によると、請求項1または2において、運転者によるブレーキ操作部材の操作によって前記駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するブレーキ装置とは別に、前記車輪ブレーキに供給された液圧を独立して制御する液圧制御装置をさらに備え、前記パーキングロック制御装置は、前記車両が前記路面の傾斜を上る方向の前記走行レンジを前記走行レンジ切替え装置に一旦成立させた後に、前記車輪ブレーキに前記路面の傾斜によって前記車両に発生する前後力より大きい制動力を保持するように前記液圧制御装置を作動させてから、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させる。
【0009】
請求項4に係る発明によると、請求項1〜3の何れか一項において、運転者によるブレーキ操作部材の操作によって前記駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するブレーキ装置とは別に、前記車輪ブレーキに供給された液圧を独立して制御する液圧制御装置をさらに備え、前記パーキングロック制御装置は、前記パーキングロック条件が満たされると、前記液圧制御装置を作動させて、前記停車検出装置で検出された前記車両の停止中に前記車輪ブレーキに供給された停止液圧を維持している間に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させ、前記ブレーキ装置から供給される液圧が前記停止液圧より低くなると、前記車輪ブレーキに維持された液圧を漸減させるように前記液圧制御装置を作動させる。
【0010】
請求項5に係る発明によると、請求項1〜4の何れか一項において、前記駆動源は、エンジンであり、前記走行レンジ切替え装置は、前記エンジンの出力回転を複数の変速比で変速して前記車両を前進させる複数の前進変速段および前記車両を後退させる後退段を成立する変速機であり、前記Dレンジは、前記複数の前進変速段を含み、前記Rレンジは後退段であり、前記回転部材は、前記変速機の出力部材であり、前記パーキングロック制御装置は、前記パーキングロック条件が満たされると、前記Pレンジ成立装置が前記パーキングロック機構を前記ロック状態とする前に、前記傾斜方向検出装置で検出された傾斜方向と前記停車検出装置で検出された前記車両の停止時に前記変速機によって成立されている前記走行レンジとに基づいて、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に前進する状態で停止したことを検出すると前記変速機に前記Rレンジを、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に後退する状態で停止したことを検出すると前記変速機に前記エンジンの出力回転を最も減速させる前記Dレンジの中の第一速を一旦成立させた後に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させる。
【0011】
請求項6に係る発明によると、請求項1〜4の何れか一項において、前記駆動源は、電動モータであり、前記走行レンジ切替え装置は、前記電動モータの出力回転を正回転または逆回転させるモータ回転制御装置であり、前記パーキングロック制御装置は、前記パーキングロック条件が満たされると、前記Pレンジ成立装置が前記パーキングロック機構を前記ロック状態とする前に、前記傾斜方向検出装置で検出された傾斜方向と前記停車検出装置で検出された前記車両の停止時に前記モータ回転制御装置によって成立されている前記走行レンジとに基づいて、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に前進する状態で停止したことを検出すると前記モータ回転制御装置に前記Rレンジを、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に後退する状態で停止したことを検出すると前記モータ回転制御装置に前記Dレンジを一旦成立させた後に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させる。
【0012】
上述した課題を解決するために、請求項7に係る発明によると、車両に搭載された駆動源によって回転され、駆動系を介して駆動輪と連結された回転部材と、前記車両が停止状態にあることを検出する停車検出装置と、係合部材を前記回転部材に設けられた被係合部と係合させることにより前記回転部材の回転を規制するロック状態と、前記係合部材を前記被係合部から離脱させることにより前記ロック状態を解除するアンロック状態との間で作動可能なパーキングロック機構と、前記回転部材が前記駆動源によって正転され前記車両が前進するDレンジおよび前記回転部材が前記駆動源によって逆転され前記車両が後退するRレンジの何れか一方の走行レンジを成立させる走行レンジ切替え装置と、
パーキングロック条件が満たされると前記パーキングロック機構を前記ロック状態としてPレンジを成立するPレンジ成立装置と、運転者によるブレーキ操作部材の操作によって前記駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するブレーキ装置とは別に、前記車輪ブレーキに供給された液圧を独立して制御する液圧制御装置と、前記パーキングロック条件が満たされると、前記液圧制御装置を作動させて、前記停車検出装置で検出された前記車両の停止中に前記車輪ブレーキに供給された停止液圧を維持している間に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させ、前記ブレーキ装置から供給される液圧が前記停止液圧より低くなると、前記車輪ブレーキに維持された液圧を漸減させるように前記液圧制御装置を作動させるパーキングロック制御装置と、を備える。
【0013】
請求項8に係る発明によると、請求項7において、前記パーキングロック条件を満たすためには、前記停車検出装置により前記車両が停止状態にあることを検出したことを要する。
【0014】
請求項9に係る発明によると、請求項7において、前記Dレンジ、前記Rレンジ、および前記Pレンジの何れかのレンジを選択するレンジ選択装置をさらに備え、前記パーキングロック条件を満たすためには、前記レンジ選択装置によって前記Pレンジが選択されたことを要する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係るパーキングロック装置によれば、パーキングロック条件が満たされた場合に、Pレンジ成立装置がパーキングロック機構をロック状態とする前に、傾斜方向検出装置で検出された傾斜方向と車両の停止時に走行レンジ切替え装置によって成立されている走行レンジとに基づいて、車両が路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止したか否かが検出される。車両が路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止した場合、走行レンジ切替え装置は車両が路面の傾斜を上る方向の走行レンジを一旦成立させる。その後にPレンジ成立装置は、パーキングロック機構をロック状態にさせてPレンジを成立させる。
【0016】
即ち、例えば車両が前進で路面の傾斜を下っている途中でブレーキ装置の作動によって停止された場合に、走行レンジ切替え装置は車両が後退するRレンジを一旦成立させ、その後にPレンジ成立装置は、パーキングロック機構をロック状態にする。また、車両が後退で路面の傾斜を下っている途中でブレーキ装置の作動によって停止された場合、走行レンジ切替え装置は車両が前進するDレンジを一旦成立させ、その後にPレンジ成立装置は、パーキングロック機構をロック状態にする。
【0017】
このように、車両が前進で路面の傾斜を下っている途中で駆動輪に制動力が付与されて停止した場合に、駆動系のうち駆動輪とパーキングロック機構との間は、駆動輪を前進回転させる方向に捩られ、駆動系内の機械的なガタが前進回転方向に詰められる。この状態でパーキングロック機構をロック状態として、駆動輪への制動力を解除すると、駆動系の捩れが戻り、駆動系内のガタが後退回転方向に詰まるまでの間、車両に意図しない移動荷重が加わることになる。そうすると、パーキングロック装置が作動しているにも拘わらず車両が揺れ動くことになり、乗員はふわっとした揺れを感じることがある。これに対して、請求項1に係るパーキングロック装置によれば、パーキングロック機構をロック状態とする前に、車両が後退するRレンジを一旦成立させ、その後にパーキングロック機構をロック状態にするので、駆動系が駆動輪を後退回転させる方向に捩られ、駆動系内のガタが後退回転方向に詰まるので、Pレンジが成立した後に駆動輪への制動力を解除しても車両が路面の傾斜に由来する移動荷重によって移動することがなく、車両の揺動の発生を防止できる。従って、車両の揺動による乗員の不快感や不安感を与えないようにパーキングロック制御することができる。
【0018】
請求項2に係るパーキングロック装置によれば、車両が路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止した場合に、走行レンジ切替え装置は車両が路面の傾斜を上る方向の走行レンジを成立させる。このときに、駆動トルク制御装置が路面の傾斜によって車両に発生する前後力を打ち消す駆動トルクを駆動源に発生させ、その後にパーキングロック機構がロック状態にされてPレンジが成立される。これにより、パーキングロック機構がロック状態になる前に、運転者がブレーキ装置の操作を解除しても、車両が路面の傾斜によって移動することを防止できる。また、駆動トルク制御装置により車両が路面の傾斜を上る方向に駆動系のガタを予め詰めることができるので、駆動輪への制動力を解除しても車両の揺動の発生を防止できる。
【0019】
請求項3に係るパーキングロック装置によれば、車両が路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止した場合に、走行レンジ切替え装置は車両が路面の傾斜を上る方向の走行レンジを一旦成立させる。この時、パーキングロック装置は、路面の傾斜によって車両に発生する前後力より大きい制動力を保持するように、即ち前後力が生じていても車両を停止状態に維持可能な制動力を保持するように、車輪ブレーキに供給された液圧をブレーキ装置と独立して制御する液圧制御装置を作動させる。そして、その後にパーキングロック機構がロック状態にされてPレンジが成立される。これにより、パーキングロック機構がロック状態になる前に、運転者がブレーキ装置の操作を解除しても、車両が路面の傾斜に由来する前後力によって移動することを防止できる。
【0020】
請求項4に係るパーキングロック装置によれば、ブレーキ装置の作動によって車両が停止しパーキングロック条件が満たされると、車輪ブレーキに供給された停止液圧を維持している間に、パーキングロック機構がロック状態にされてPレンジが成立される。そして、その後にブレーキ装置の操作が解除されブレーキ装置から供給される液圧が停止液圧よりも低くなると、ブレーキ装置と独立して制御する液圧制御装置を作動させることによって、運転者のブレーキ装置の操作の解除に拘わらず車両の停止時に車輪ブレーキに供給された停止液圧を徐々に低下させるように漸減させる。これにより、例えば車両が停止し自動パーキングロック装置が作動した後にブレーキ装置の操作を解除しても、車輪ブレーキに供給された液圧が急激に低下することがなく、駆動輪の回転規制が徐々に解除されることになる。これにより、パーキングロック装置は、駆動系のガタおよびパーキングロック機構の係合部材と被係合部との間のガタ分、車両を路面の傾斜に沿って乗員に不快感や不安感を与えない程度にゆっくり移動して停止させることができる。
【0021】
請求項5に係るパーキングロック装置によれば、車両が前進または後退で路面の傾斜を下っている途中でブレーキ装置の作動によって停止された場合に、エンジンの出力回転を変速する変速機は、Rレンジである後退段またはDレンジの中の第一速を一旦成立させる。その後に、パーキングロック制御装置は、パーキングロック機構をロック状態にしてPレンジを成立させる。これにより、駆動系が駆動輪を後退回転または前進回転させる方向(即ち、坂路を上る方向)に捩られ、駆動系内のガタが詰められた後に、パーキングロック機構をロック状態にするので、車両が路面の傾斜に由来する移動荷重によって移動することがなく、車両の揺動の発生を防止できる。従って、車両の揺動による乗員の不快感や不安感を与えないようにパーキングロック制御することができる。
【0022】
請求項6に係るパーキングロック装置によれば、車両が前進または後退で路面の傾斜を下っている途中でブレーキ装置の作動によって停止された場合に、電動モータの出力回転を正回転または逆回転させるモータ回転制御装置は、Rレンジである後退段またはDレンジである前進段を一旦成立させる。その後に、パーキングロック制御装置は、パーキングロック機構をロック状態にしてPレンジを成立させる。これにより、駆動系が駆動輪を後退回転または前進回転させる方向(即ち、坂路を上る方向)に捩られ、駆動系内のガタが詰められた後に、パーキングロック機構をロック状態にするので、車両が路面の傾斜に由来する移動荷重によって移動することがなく、車両の揺動の発生を防止できる。従って、車両の揺動による乗員の不快感や不安感を与えないようにパーキングロック制御することができる。
【0023】
請求項7に係るパーキングロック装置によれば、ブレーキ装置の作動によって車両が停止しパーキングロック条件が満たされると、車輪ブレーキに供給された停止液圧を維持している間に、パーキングロック機構がロック状態にされてPレンジが成立される。そして、その後にブレーキ装置の操作が解除されブレーキ装置から供給される液圧が停止液圧よりも低くなると、ブレーキ装置と独立して制御する液圧制御装置を作動させることによって、運転者のブレーキ装置の操作の解除に拘わらず車両の停止時に車輪ブレーキに供給された停止液圧を徐々に低下させるように漸減させる。つまり、車輪ブレーキに供給された液圧が維持されている間に、パーキングロック機構がロック状態にされてPレンジが成立し、その後に液圧制御装置の作動によって車輪ブレーキに供給された液圧が漸減される。これにより、パーキングロック装置が作動した後にブレーキ装置の操作を解除しても、車輪ブレーキに供給された液圧が急激に低下することがなく、駆動輪の回転規制が徐々に解除されることになる。これにより、パーキングロック装置は、駆動系のガタおよびパーキングロック機構の係合部材と被係合部との間のガタ分、車両を路面の傾斜に沿って乗員に不快感や不安感を与えない程度にゆっくり移動して停止させることができる。
【0024】
請求項8に係るパーキングロック装置によれば、パーキングロック条件が満たされるためには、車両が停止状態にあることを含むものとしている。これにより、例えばDレンジが選択された状態で車両が停止し自動パーキングロック装置が作動した後にブレーキ装置の操作を解除しても、車輪ブレーキに供給された液圧が急激に低下することがなく、駆動輪の回転規制が徐々に解除されることになる。これにより、パーキングロック装置は、駆動系のガタおよびパーキングロック機構の係合部材と被係合部との間のガタ分、車両を路面の傾斜に沿って乗員に不快感や不安感を与えない程度にゆっくり移動して停止させることができる。
【0025】
請求項9に係るパーキングロック装置によれば、パーキングロック条件が満たされるためには、Pレンジが選択されたことを含むものとしている。これにより、例えば車両が停止しPレンジが選択された後に、ブレーキ装置の操作が解除されても、車輪ブレーキに供給された液圧が急激に低下することがなく、駆動輪の回転規制が徐々に解除されることになる。これにより、パーキングロック装置は、駆動系のガタおよびパーキングロック機構の係合部材と被係合部との間のガタ分、車両を路面の傾斜に沿って乗員に不快感や不安感を与えない程度にゆっくり移動して停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第一実施形態:パーキングロック装置を使用した車両システムを簡略的に示したブロック図である。
【図2】図1に示した液圧ブレーキ装置を示した図である。
【図3】パーキングロック装置における制御フローチャートを示した図である。
【図4】斜面にある車両に働く荷重を示した簡略図である。
【図5】第二実施形態:パーキングロック装置の制御フローチャートを示した図である。
【図6】ホイルシリンダに発生する液圧の時間的変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のパーキングロック装置を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
<第一実施形態>
(車両システムの構成)
本実施形態のパーキングロック装置を使用した車両システムの構成について、図1,図2を参照して説明する。車両の自動変速機1は、トルクコンバータ(図示せず)を備えた通常のオートマチックトランスミッションであり、本発明の「走行レンジ切替え装置」に相当する。自動変速機1のトルクコンバータには、エンジン2(本発明の「駆動源」に相当する)のフライホイール(図示せず)が連結されておいる。
【0029】
自動変速機1は、エンジン2の出力回転を複数の変速比で変速して車両を前進させる複数の前進変速段および車両を後退させる後退段を成立する変速機であり、無段変速機(CVT)を適用したものでもよい。そして、自動変速機1は、エンジン2の駆動力を所定の変速段によりアウトプットシャフト11(本発明の「回転部材」および変速機の「出力部材」に相当する)に出力する。アウトプットシャフト11の回転は、図示しないデファレンシャルなどを含む駆動系を介して車両の駆動輪RL,RR(図2示)へと伝達される。
【0030】
また、自動変速機1は、シフトレンジを切り換えるためのコントロールバルブ装置12を備えており、コントロールバルブ装置12は電動モータを含んだシフト機構13によって作動される。コントロールバルブ装置12は、図示しないスプールバルブを有し、スプールバルブが軸方向に移動することにより、供給されているライン油圧の流れを切り換え、自動変速機1の各摩擦係合装置の係合状態を切り換える。コントロールバルブ装置12が作動されることにより、自動変速機1において所定の変速段が選択される。
【0031】
シフト機構13にはパーキングロック機構14が接続されており、シフト機構13はパーキングロック機構14をも作動させる。パーキングロック機構14は、図1に示すように、プッシュロッド14a(本発明の「係合部材」に相当する)を有しており、パーキングロック機構14の作動によって、プッシュロッド14aが図1において軸方向右方に突出した位置と、左方に引っ込んだ位置(戻り位置、図1示)とを選択することができる。
【0032】
プッシュロッド14aは、その突出位置において、回転部材であるアウトプットシャフト11と一体に回転するロックギヤ15(本発明の「被係合部材」に相当する)と噛合し、アウトプットシャフト11を回転不能にする。また、プッシュロッド14aは戻り位置となることにより、ロックギヤ15との係合が解除され、アウトプットシャフト11を回転可能にする。すなわち、パーキングロック機構14は、アウトプットシャフト11を機械的にロックして、車両を停止した状態で保持するロック状態と、アウトプットシャフト11のロック状態を解除して車両を移動可能とするアンロック状態との間で作動する。
【0033】
さらに、自動変速機1は回転速度センサ91を備えており、アウトプットシャフト11の回転速度から車両速度を検出している。また、自動変速機1はレンジ位置センサ92を備え、コントロールバルブ装置12のスプールバルブの位置から現在成立しているシフトレンジの位置を検出している。
【0034】
コントローラ3は、マイクロプロセッサを主体に構成され、演算部、入出力部、記憶部、制御部を備えている。コントローラ3はシフト機構13と接続され、シフト機構13の作動を制御している。コントローラ3には、上述した回転速度センサ91およびレンジ位置センサ92からの検出信号が入力されている。また、コントローラ3には、シフトレバー装置93に設けられたシフトレバースイッチ94からの検出信号が入力され、運転者の操作によるシフトレバー装置93のシフト位置を検出可能に形成されている。このシフトレバー装置93は、運転者がシフトレンジを選択するため操作するレンジ選択装置である。また、コントローラ3は、シフトレバースイッチ94、回転速度センサ91、レンジ位置センサ92および後述するアクセルペダルセンサ98からの検出信号に基づいてシフト機構13を制御し、コントロールバルブ装置12を所定のシフトレンジの状態にする。
【0035】
コントローラ3は、通常時はシフトレバー装置93のシフト位置に応じたシフトレンジに自動変速機1を制御するが、ある条件下ではシフトレバー装置93のシフト位置に関係なくシフトレンジを設定する。本実施形態においてシフトレンジは、Dレンジ、2レンジ、Lレンジ、Rレンジ、Pレンジ、およびNレンジを含むものである。Dレンジは、アウトプットシャフト11がエンジン2によって正転され車両が前進するレンジである。2レンジおよびLレンジは、Dレンジと同様であり、特に低い変速比のレンジである。Rレンジは、アウトプットシャフト11がエンジン2によって逆転され車両が後退するレンジである。このDレンジおよびRレンジは、車両が駆動力によって走行する走行レンジである。また、Pレンジは車両を駐車するためのパーキングレンジであり、Nレンジは駆動源であるエンジン2から自動変速機1に駆動力が伝達されないように機械的に切断するニュートラルレンジである。
【0036】
また、車両には、静電容量型あるいはポテンショメータを利用した傾斜角センサ95が取り付けられ、少なくとも車両の前後方向の傾斜角度を検出している。傾斜角センサ95は、コントローラ3と接続され、その検出信号がコントローラ3に入力されている。これにより、コントローラ3は、入力した検出信号に基づいて、車両が走行する路面が車両前方において下り坂または上り坂になっているか傾斜方向を検出している。つまり、コントローラ3および傾斜角センサ95は、本発明の「傾斜方向検出装置」に相当する。
【0037】
さらに、車両には、自動パーキング解除スイッチ96が設けられ、自動パーキング解除スイッチ96はコントローラ3と接続されている。例えば、車両が牽引されているような場合に自動パーキングロックが作動すると車両の円滑な牽引が妨げられるおそれがある。そこで、運転者が意図的に自動パーキングロックの作動を禁止するために、自動パーキング解除スイッチ96は設けられている。運転者によって自動パーキング解除スイッチ96が操作されることにより、コントローラ3による自動パーキングロックの作動は実行されなくなる。
【0038】
エンジン2と接続されたエンジンECU4は、コントローラ3と同様の制御装置であり、コントローラ3と接続されている。このエンジンECU4は、図1に示すように、出力制御装置41と、駆動トルク制御装置42を有する。出力制御装置41は、運転者によるアクセル操作部材であるアクセルペダル97の操作によってエンジン2の駆動トルクを制御するものである。より具体的には、出力制御装置41は、アクセルペダル97の操作量を検出するアクセルペダルセンサ98、上述した回転速度センサ91およびレンジ位置センサ92等からの検出信号に基づいて、エンジン2の作動を制御している。
【0039】
駆動トルク制御装置42は、出力制御装置41とは別にエンジン2の駆動トルクを独立して制御するものであり、アクセルペダル97の操作量に拘わらずエンジン2の作動を制御可能となっている。この駆動トルク制御装置42は、後述するパーキングロック制御において、傾斜角センサ95より入力した検出信号に基づいてエンジン2に駆動トルクを発生させ、路面の傾斜によって車両に発生する前後力を打ち消すように制御する。このようなエンジンECU4は、エンジン2の回転数、アクセルペダル97の操作量および自動変速機1のシフトレンジの位置等から、常に駆動輪RL,RRの発生する駆動トルクを認識している。尚、上述した回転速度センサ91、シフトレバースイッチ94、自動パーキング解除スイッチ96およびアクセルペダルセンサ98は、本発明の「停車検出装置」に相当する。
【0040】
ここで、コントローラ3は、図1に示すように、Pレンジ成立装置31と、パーキングロック制御装置32を有する。Pレンジ成立装置31は、車速がゼロであるなど予め設定されたパーキングロック条件が満たされると、パーキングロック機構14をロック状態としてPレンジを成立するものである。これにより、プッシュロッド14aとロックギヤ15が係合され、アウトプットシャフト11の回転が規制される。その後、シフトレバー装置93のシフト位置がPレンジ以外に移動したことが検出されるなどパーキングロック条件が満たされなくなると、Pレンジ成立装置31は、プッシュロッド14aをロックギヤ15から離脱させるようにパーキングロック機構14を作動させる。これにより、パーキングロック機構14は、アウトプットシャフト11が回転可能なアンロック状態となる。
【0041】
コントローラ3のパーキングロック制御装置32は、パーキングロック条件が満たされた場合に、Pレンジが成立するまでの期間に、Pレンジ成立装置31と自動変速機1との作動を制御するものである。パーキングロック制御装置32は、シフトレバー装置93のシフト位置がPレンジ以外にある時に、入力された検出信号により車両の停止状態が検出されるなど上記のパーキングロック条件が満たされると、Pレンジ成立装置31によりパーキングロック機構14を作動させてロック状態とする(自動パーキングロックが作動した状態)。また、パーキングロック制御装置32は、自動パーキングロックが作動している時に、アクセルペダルセンサ98からの検出信号により運転者が車両を発進させる意図を有することが検出されるなどパーキングロック条件が満たされなくなると、シフト機構13によってパーキングロック機構14をアンロック状態とする(自動パーキングロックが解除した状態)。
【0042】
より詳細には、パーキングロック制御装置32は、Pレンジ成立装置31がパーキングロック機構14をロック状態とする前に、傾斜角センサ95により検出される車両の傾斜方向と自動変速機1によって成立されている走行レンジとに基づいて、車両が路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止したか否かを検出する。そして、例えば、車両が路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止した場合には、パーキングロック制御装置32は、自動変速機1を作動させ、車両が路面の傾斜を上る方向の走行レンジを一旦成立させる。その後に、Pレンジ成立装置31は、パーキングロック機構14をロック状態にさせてPレンジを成立させることになる。
【0043】
即ち、例えば車両が前進で路面の傾斜を下っている途中で後述する液圧ブレーキ装置6の作動によって停止された場合に、パーキングロック制御装置32は、自動変速機1を作動させ、車両が後退するRレンジを一旦成立させる。そして、その後にPレンジ成立装置31は、パーキングロック機構をロック状態にする。また、車両が後退で路面の傾斜を下っている途中で液圧ブレーキ装置6の作動によって停止された場合、パーキングロック制御装置32は、自動変速機1を作動させ、車両が前進するDレンジのうち最も変速比の小さい第一速を一旦成立させる。そして、その後にPレンジ成立装置31は、パーキングロック機構14をロック状態にする。
【0044】
また、パーキングロック制御装置32は、パーキングロック機構14がロック状態となる前に、上述したように登坂方向の走行レンジを一旦成立させるが、この走行レンジを成立させた後に、エンジン2が路面の傾斜によって車両に発生する前後力を打ち消す駆動トルクを発生するように駆動トルク制御装置42にエンジン2の駆動トルクを制御させる。その後に、パーキングロック制御装置32は、Pレンジ成立装置31にパーキングロック機構14をロック状態にさせてPレンジを成立させる。これにより、パーキングロック制御装置32は、パーキングロック機構14がロック状態となる前に、運転者が液圧ブレーキ装置6の操作を解除しても、路面の傾斜に由来する前後力による車両の移動の規制を図っている。また、駆動トルクにより車両が坂路を上らないように、傾斜の勾配に応じた駆動トルクとなるように制御している。
【0045】
ブレーキECU5は、コントローラ3と同様の制御装置であり、コントローラ3および液圧ブレーキ装置6と接続されている。ブレーキECU5はコントローラ3と通信し、コントローラ3からの指示信号に基づき、液圧ブレーキ装置6の作動を制御し、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4(図2示)にブレーキ液圧を供給する。尚、後述するように、ブレーキECU5には、液圧ブレーキ装置6に設けられた液圧センサ79からの検出信号が入力されている。
【0046】
液圧ブレーキ装置6は、ブレーキ液圧制御を行う装置であり公知のものである。この液圧ブレーキ装置6は、図2に示すように、常開型の電磁弁である増圧制御弁61,62,63,64と、常閉型の電磁弁である減圧制御弁65,66,67,68、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4(本発明の「車輪ブレーキ」に相当する)から排出されたブレーキ液を収容する調圧リザーバ69,71と、調圧リザーバ69,71内のブレーキ液をマスタシリンダ80側に戻す還流ポンプ72,73と、還流ポンプ72,73を駆動するモータ76と、マスタシリンダ80と増圧制御弁61,62,63,64との間に配された液圧調整弁77,78および液圧センサ79から構成されている。この液圧ブレーキ装置6は、後輪駆動車両に多用される前後配管により形成されているが、これに限定されるべきものではない。
【0047】
また、液圧ブレーキ装置6外のマスタシリンダ80には、ブレーキブースタ81およびプッシュロッド82を介してブレーキペダル83(本発明の「ブレーキ操作部材」に相当する)が連結されている。また、マスタシリンダ80の上方には、ブレーキ液を貯蔵したリザーバタンク84が取り付けられている。ブレーキペダル83が操作されることにより、マスタシリンダ80はプライマリ室80aおよびセカンダリ室80b内に液圧を発生させる。
【0048】
プライマリ室80aには、ブレーキ配管である主管路Lpが接続されている。また、セカンダリ室80bには、ブレーキ配管である主管路Lsが接続されている。主管路Lpには、一対の増圧管路Lp1,Lp2が接続されている。この増圧管路Lp1,Lp2は、それぞれ左後輪RLのホイルシリンダWC3および右後輪RRのホイルシリンダWC4に接続されている。また、主管路Lsには、一対の増圧管路Ls1,Ls2が接続されている。この増圧管路Ls1,Ls2は、それぞれ左前輪FLのホイルシリンダWC1および右前輪FRのホイルシリンダWC2に接続されている。
【0049】
ここで、図2に示したように、主管路Lpを介してプライマリ室80aに接続されたブレーキ回路と、主管路Lsを介してセカンダリ室80bに接続されたブレーキ回路は対称形であるため、以下、プライマリ室80aに接続された後輪RL、RR側のブレーキ回路のみについて説明する。よって、プライマリ室80aに接続された後述する主管路Lpの減圧管路Lp3,Lp4、環流管路Lp5、および吸引管路Lp6は、セカンダリ室80bに接続された主管路Lsの減圧管路Ls3,Ls4、環流管路Ls5、および吸引管路Ls6にそれぞれ対応する。
【0050】
増圧管路Lp1,Lp2には、それぞれ増圧制御弁63,64が配置されるとともに、それぞれホイルシリンダWC3,WC4から主管路Lpへ向けたブレーキ液の流れを許容する逆止弁63a,64aが、増圧制御弁63,64に対し並列に配置されている。増圧制御弁63,64はブレーキECU5と接続され、ブレーキECU5によりそれぞれ開閉制御される。
【0051】
増圧管路Lp1の増圧制御弁63とホイルシリンダWC3との間の部分には、減圧管路Lp3が接続されている。減圧管路Lp3は、増圧管路Lp1と調圧リザーバ71とを接続している。減圧管路Lp3には、減圧制御弁67が配置されている。減圧制御弁67はブレーキECU5と接続され、ブレーキECU5により開閉制御される。また、増圧管路Lp2の増圧制御弁64とホイルシリンダWC4との間の部分には、減圧管路Lp4が接続されている。減圧管路Lp4は、増圧管路Lp2と調圧リザーバ71とを接続している。減圧管路Lp4には、減圧制御弁68が配置されている。減圧制御弁68はブレーキECU5と接続され、ブレーキECU5により開閉制御される。
【0052】
調圧リザーバ71は、還流管路Lp5により主管路Lpと接続されている。また、調圧リザーバ71は、吸引管路Lp6によりプライマリ室80aと接続されている。調圧リザーバ71は、プライマリ室80aからの液圧によってピストン71aが(図2において下方に)移動してマスタシリンダ80との連通が断たれ、ブレーキペダル83の無効ストロークを低減している。還流管路Lp5には還流ポンプ73が設けられており、還流ポンプ73と主管路Lpとの間の部分には、調圧リザーバ71から主管路Lpへ向けたブレーキ液の流れを許容する逆止弁75aが配置されている。還流ポンプ73は、ブレーキECU5により制御されて、調圧リザーバ71内のブレーキ液を主管路Lpに還流させている。
【0053】
また、主管路Lpのプライマリ室80aと増圧制御弁63,64との間には、液圧調整弁78が設けられている。液圧調整弁78は常開型のソレノイド制御弁であって、ブレーキECU5と接続され、ブレーキECU5によって制御される。液圧調整弁78の設定圧は、供給電流によって可変である。これにより、ブレーキECU5は、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4のブレーキ液圧を液圧センサ79により検出し、目標液圧と一致するように液圧調整弁78をフィードバック制御することが可能となっている。また、液圧調整弁78には、プライマリ室80aから増圧制御弁63,64へ向けたブレーキ液の流れを許容する逆止弁78aが、液圧調整弁78に対し並列に配置されている。
【0054】
液圧ブレーキ装置6は、ブレーキECU5によって制御され、図示しない各車輪速センサの検出値に基づいて、マスタシリンダ80が発生した液圧を調圧してホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に供給し、アンチスキッド制御を実行する。ここで、液圧ブレーキ装置6外のマスタシリンダ80を含む機構と、この機構とホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4(車輪ブレーキ)を連結する各管路は、運転者によるブレーキペダル83の操作によって駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するものであり、本発明の「ブレーキ装置」に相当する。一方で、液圧調整弁77,78は、このブレーキ装置とは別に、車輪ブレーキに供給された液圧を独立して制御することが可能となっており、本発明の「液圧制御装置」に相当する。
【0055】
そして、液圧ブレーキ装置6は、コントローラ3と通信するブレーキECU5によって制御され、パーキングロック制御装置32がパーキングロック機構14をロック状態とする場合に、液圧調整弁77,78を閉状態とした後、還流ポンプ72,73によって吸引管路Lp6,Ls6および還流管路Lp5、Ls5を介してリザーバタンク84内のブレーキ液を吸引して昇圧し、ブレーキペダル83の操作がなくても、増圧制御弁61,62,63,64を介してホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に液圧を供給する。この時、増圧制御弁61,62,63,64は終始開状態が維持され、減圧制御弁65,66,67,68は終始閉状態が維持されている。
【0056】
そして、車輪FL,FR,RL,RRに所定のブレーキ力が発生した後に、パーキングロック機構14がロック状態となると、還流ポンプ72,73の作動を停止する。この時、増圧制御弁61,62,63,64および液圧調整弁77,78を開状態とし、減圧制御弁65,66,67,68を閉状態とする。これによって、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内のブレーキ液圧は液圧調整弁77,78を介してマスタシリンダ80側へと戻されて、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内の液圧が低下していき、やがて、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内の液圧は0となる。
【0057】
(パーキングロック装置の制御方法)
次に、本実施形態の車両システムのコントローラ3による自動パーキングロック装置の制御方法について、図3,図4を参照して説明する。本実施形態の自動パーキングロック制御は、パーキングロック機構14がロック状態となる前に、駆動系内のガタを詰めることにより好適に車両を停止状態にすることを目的としている。また、コントローラ3は、図3に示した制御プログラムを所定のタイミングで繰り返して実行するものとする。尚、図3に示したフローチャートの初期状態において、タイマーT1はリセットされ0となっている。
【0058】
最初に、パーキングロック条件が満たされているかを判定する(S101)。ここで、本実施形態において、自動パーキングロックが作動するためのパーキングロック条件とは、(1)車両が停止していること(車速が0)、(2)シフトレバー装置93がNレンジ以外を選択されていること、(3)自動パーキングロック解除スイッチがオフであること、が含まれる。ここでは、自動パーキングロックの作動について説明するため、このようなパーキングロック条件が設定されているが、車両を駐車状態にするためにパーキングロック機構14をロック状態にするパーキングロック条件とは異なるものである。車両の駐車状態においてパーキングロック機構14がロック状態とするパーキングロック条件は、(1)車両が停止していること(車速が0)、(4)シフトレバー装置93がPレンジを選択していること、が含まれる。
【0059】
S101において、パーキングロック条件が満たされていない場合(S101:No)は、S102、S103、S104において、自動パーキングロック制御をキャンセルする処理を行い、フローを終了する。S102では、自動変速機1をシフトレバー装置93により選択されている操作レンジへシフトするとともに、タイマーT1をリセットする。S103,S104では、自動パーキングロック制御においてエンジンECU4およびブレーキECU5へ出力されていた要求をそれぞれキャンセルしている。
【0060】
S101において、パーキングロック条件が満たされている場合(S101:Yes)は、パーキングロック機構14がロック状態かアンロック状態かを判定する(S111)。つまり、アウトプットシャフト11が回転不能に規制されているかを判定し、ロック状態にある場合(S111:Yes)は、自動パーキングロック制御が完了した状態なので、S103,S104において、当該制御をキャンセルする処理を行い、フローを終了する。パーキングロック機構14がアンロック状態にある場合(S111:No)は、自動パーキングロック制御が処理されている状態にある。
【0061】
続いて、タイマーT1が0(リセットされた状態)であるかを判定する(S112)。ここで、タイマーT1は、この自動パーキングロック制御の初期状態においてリセットされているので、0であると判定される(S112:Yes)。そして、コントローラ3は、傾斜角センサ95より入力した検出信号に基づいて、車両が走行する路面が前方において下り坂または上り坂になっているか傾斜方向を検出する(S121)し、路面が下り坂かを判定する(S122)。路面が下り坂である場合(S122:Yes)は、パーキングロック制御装置32は、自動変速機1を作動させ、車両が後退するRレンジを成立させる(S123)。つまり、車両が路面の傾斜を下る方向に前進走行する状態から停止した場合には、DレンジからRレンジへシフトする。一方で、車両が路面の傾斜を上る方向に後退走行する状態から停止した場合には、既にRレンジが成立していることになるので、このRレンジの成立が維持される。
【0062】
路面が上り坂である場合(S122:No)は、パーキングロック制御装置32は、自動変速機1を作動させ、車両が前進するDレンジのうち最も変速比の小さい第一速を成立させる(S124)。つまり、車両が路面の傾斜を上る方向に前進走行する状態から停止した場合には、Dレンジのうち第一速にシフトする。既に第一速の場合には、この第一速の成立が維持される。一方で、車両が路面の傾斜を下る方向に後退走行する状態から停止した場合には、RレンジからDレンジの第一速にシフトする。このように、パーキングロック制御装置32は、車両が前進または後退走行の何れかの状態から停止したかに拘わらず、登坂方向の走行レンジを成立させる(S123,S124)。そして、コントローラ3は、自動パーキングロック制御が開始されたことから、タイマーT1をスタートさせる(S125)。
【0063】
ここで、タイマーT1がスタートすると、自動パーキングロック制御が終了しタイマーT1がリセットされるまでは、S112においてタイマーT1が0以外であると判定され(S121:No)、S113へ進む。つまり、S121〜S125は、パーキングロック条件が満たされ、自動パーキングロック制御が始動した初回のみの処理となる。
【0064】
次に、タイマーT1が所定時間Tv未満であるか否かが判定される(S113)。この所定時間Tvは、自動パーキングロック制御において、後述する駆動系内のガタを詰める処理に要する時間に予め設定されている。つまり、所定時間Tvは、ガタ詰め処理が終了するまでの待機時間である。また、所定時間Tvは、傾斜の勾配によってガタ詰め処理に要する時間が異なることから、S121において傾斜角センサ95より入力した検出信号に基づいて算出してもよい。これにより、傾斜の勾配に応じた自動パーキングロック制御を実行することができる。
【0065】
タイマーT1が所定時間Tvよりも小さい場合(S113:Yes)は、自動パーキングロック制御における駆動系内のガタ詰め処理を継続する必要があるものと判定され、タイマーT1がインクリメントされる(S131)。そして、駆動トルク制御装置42は、S121において傾斜角センサ95より入力した検出信号と成立している走行レンジの変速比などに基づいて、路面の傾斜によって車両に発生する前後力に応じた駆動トルクを算出する(S132)。また、駆動トルク制御装置42は、ブレーキECU5により液圧ブレーキ装置6を制御し、路面の傾斜によって車両に発生した前後力に抗して車両の停止状態を維持可能な制動力を算出する(S132)。
【0066】
ここで、図4に示すように、車両が通常走行する路面の最大傾斜角θを想定すると、車重Wを有する車両が最大傾斜角θだけ前後方向に傾いた場合に、車両が路面方向下方に受ける荷重(前後力)W・sinθに抗して、車両の停止状態を維持可能なホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内の液圧Pmqが算出できる。つまり、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内に液圧Pmqが発生している場合、車輪一輪あたりのブレーキ力Fwは、簡略的に、Fw=(d・Pq・K)/Dと表される。但し、dはホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4によるブレーキ有効半径、Dは車輪FL,FR,RL,RRの有効半径、KはホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に供給された液圧を制動力に変換する係数を表している。従って、傾斜した路面において、車両の停止状態を維持するためには、4×Fw≧W・sinθを充足するような液圧Pmqを求めればよいことが分かる。
【0067】
パーキングロック制御装置32は、エンジン2が出力する駆動トルクがS132で算出した駆動トルクとなるように、エンジンECU4の駆動トルク制御装置42に駆動力増大要求を行う(S133)。これにより、エンジン2は、運転者によりアクセルペダル97が操作されていない車両の停止状態においても、駆動力増大要求に応じた駆動トルクを出力するように制御される。そうすると、車両の駆動系内のガタは、車両の登坂方向の駆動トルクを受けて詰められることになる。
【0068】
また、パーキングロック制御装置32は、液圧ブレーキ装置6におけるホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4により駆動輪に付与する制動力がS132で算出した制動力で保持されるように、ブレーキECU5に制動力保持要求を行う(S134)。これにより、液圧ブレーキ装置6は、液圧調整弁77,78を制動力保持要求に基づいて閉状態とし、ブレーキペダル83の操作がなくても、増圧制御弁61,62,63,64を介してホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に液圧を供給する。これにより、例えば運転者によりブレーキペダル83の操作が解除されても、制動力保持要求に応じた制動力を保持するように制御される。このように、タイマーT1が所定時間Tvよりも小さい場合(S113:Yes)に、S131〜S134までの処理を行い、フローを終了する。
【0069】
また、所定のタイミングで繰り返して実行されるこのフローは、2回目以降において、タイマーT1が所定時間Tv以上となるまでS131〜S134が実行される。そして、S131においてタイマーT1がインクリメントされることにより、タイマーT1が所定時間Tv以上となった場合(S113:No)に、駆動系内のガタ詰め処理が完了していることになるので、パーキングロック制御装置32は、Pレンジ成立装置31にパーキングロック機構14をロック状態にさせてPレンジを成立させるとともに、T1をリセットする(S114)。その後、S133で行った駆動力増大要求をキャンセルし、エンジン2による駆動トルクの出力を止める(S103)。さらに、S134で行った制動力保持要求をキャンセルし(S104)、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4が減圧される。
【0070】
(パーキングロック装置による効果)
以上のように構成されるパーキングロック装置によると、パーキングロック条件が満たされた場合に、Pレンジ成立装置31がパーキングロック機構14をロック状態とする前に、車両の登坂方向の走行レンジを一旦成立させる。これにより、車両の駆動系が駆動輪を路面の傾斜を上る方向に捩られ、駆動系内のガタを詰めることができる。よって、この状態でPレンジが成立した後に駆動輪への制動力を解除しても車両が路面の傾斜に由来する移動荷重によって移動することがなく、車両の揺動の発生を防止できる。従って、車両の揺動による乗員の不快感や不安感を与えないようにパーキングロック制御することができる。
【0071】
また、パーキングロック制御装置32は、駆動系内のガタを詰めるために車両の登坂方向の走行レンジを一旦成立させるが、この際に駆動トルク制御装置42が路面の傾斜によって車両に発生する前後力を打ち消す駆動トルクをエンジン2に発生させる。そして、その後にパーキングロック機構14がロック状態にされてPレンジが成立される。これにより、パーキングロック機構14がロック状態になる前に、運転者がブレーキ装置の操作を解除しても、車両が路面の傾斜によって移動することを防止できる。また、駆動トルク制御装置42により車両が路面の傾斜を上る方向に駆動系のガタを予め詰めることができるので、駆動輪への制動力を解除しても車両の揺動の発生を防止できる。
【0072】
さらに、パーキングロック制御装置32は、登坂方向の走行レンジを一旦成立させる際に、路面の傾斜によって車両に発生する前後力より大きい制動力を保持する。即ち車両に前後力が生じていても、この前後力に抗して車両を停止状態に維持可能な制動力を保持するように、車輪ブレーキに供給された液圧をブレーキ装置と独立して制御する液圧調整弁77,78を作動させる。そして、その後にパーキングロック機構14がロック状態にされてPレンジが成立される。これにより、パーキングロック機構14がロック状態になる前に、運転者がブレーキ装置の操作を解除しても、車両が路面の傾斜に由来する前後力によって移動することを防止できる。
【0073】
<第一実施形態の変形態様>
本実施形態において、パーキングロック装置は、自動パーキングロック制御を例示して説明した。これに対して、自動的にパーキングロックを行う機構を有さない場合は、パーキングロック条件を上述したように、(1)車両が停止していること(車速が0)、(4)シフトレバー装置93がPレンジを選択していること、が含まれるようにし、当該条件が満たされた場合に図3に示す制御を行うようにしてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。
【0074】
また、自動パーキングロック制御において、タイマーT1が所定時間Tv未満の場合に、S131〜S134を繰り返し処理するものとした。この所定時間Tvは、上述したように登坂方向の走行レンジを一旦成立させ車両の駆動系内のガタを詰める処理に要する時間である。そのため、例えば路面の傾斜の角度によっては非常に短い時間で処理を完了できる場合も想定される。このようなことを勘案し、例えば、車両の前後力に応じた駆動力および制動力の算出(S132)、駆動力増大要求(S133)、および制動力保持要求(S134)については、パーキングロック条件が満たされ、自動パーキングロック制御が始動した初回のみの処理としてもよい。
【0075】
さらに、本実施形態では、駆動力増大要求(S133)および制動力保持要求(S134)の両方の処理を実行するものとした。しかし、車両が路面の傾斜に由来する前後力によって移動することを防止するという観点からは、何れか一方の処理のみとしてもよい。また、両方の処理については、S132において前後力に応じた駆動力および制動力を算出するものとした。しかし、例えば、車両にクリープ力が生じている場合には、前後力を打ち消すように制御しなくても、このクリープ力により車両の停止状態を維持できることがある。このような場合には、駆動力増大要求(S133)および制動力保持要求(S134)の処理を省略する構成としてもよい。
【0076】
本実施形態において、駆動源をエンジン2とし、走行レンジ切替え装置を自動変速機1とし、パーキングロック装置を一般のAT車に使用したものとして説明した。これに対して、駆動源を電動モータとし、走行レンジ切替え装置をモータ回転制御装置とし、パーキングロック装置を電気自動車(EV車)に使用したものとしてもよい。同様に、駆動源をエンジン2および電動モータとし、走行レンジ切替え装置を自動変速機1およびモータ回転制御装置のうち少なくとも一方とし、パーキングロック装置をハイブリッド車(HV車)に使用したものとしてもよい。例えば、走行レンジ切替え装置をモータ回転制御装置とした場合には、電動モータを正回転させることによりDレンジが成立され、逆回転させることでRレンジが成立される。これにより、本実施形態で例示した自動変速機1と同様に走行レンジを成立させることができることから、このような電気自動車またはハイブリッド車においても同様のパーキングロック制御を行うことが可能である。
【0077】
より具体的には、例えば車両が前進または後退で路面の傾斜を下っている途中でブレーキ装置の作動によって停止された場合に、モータ回転制御装置は、Rレンジである後退段またはDレンジである前進段を一旦成立させる。その後に、パーキングロック制御装置32は、パーキングロック機構14をロック状態にしてPレンジを成立させる。これにより、駆動系が駆動輪を後退回転または前進回転させる方向(即ち、坂路を上る方向)に捩られ、駆動系内のガタが詰められた後に、パーキングロック機構14をロック状態にする。これにより、車両が路面の傾斜に由来する移動荷重によって移動することがなく、車両の揺動の発生を防止できる。従って、車両の揺動による乗員の不快感や不安感を与えないようにパーキングロック制御することができる。
【0078】
さらに、本実施形態において、液圧ブレーキ装置6の外部のマスタシリンダ80を含む機構と、この機構とホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4(車輪ブレーキ)を連結する各管路は、運転者によるブレーキペダル83の操作によって駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するものであり、本発明の「ブレーキ装置」に相当するものとした。このような機械式のブレーキ装置に対して、本発明をいわゆるブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置に適用するものとしてもよい。ブレーキワバイワイヤ式の場合は、マスタシリンダ80の液圧Psをシミュレータに供給し、ブレーキペダル83の操作量をストロークセンサで検出する。そして、検出した操作量に応じた液圧を車輪ブレーキに供給することにより制動力を付与する。この時、ブレーキECU5による車輪ブレーキの液圧制御は、各車輪ブレーキに配置された圧力計の検出値に基づいてフィードバック制御される。このようなブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置に本発明を適用した構成においても同様の効果を奏する。
【0079】
<第二実施形態>
(車両システムの構成)
本実施形態のパーキングロック装置を使用した車両システムの構成について、図1,図2を参照して説明する。ここで、本実施形態の構成は、主に、パーキングロック制御装置32による自動パーキングロック装置の制御方法が相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0080】
コントローラ3は、図1に示すように、Pレンジ成立装置31と、パーキングロック制御装置32を有する。パーキングロック制御装置32は、パーキングロック条件が満たされた場合に、Pレンジが成立するまでの期間および成立から暫くの期間に、Pレンジ成立装置31と液圧ブレーキ装置6との作動を制御するものである。パーキングロック制御装置32は、シフトレバー装置93のシフト位置がPレンジ以外にある時に、入力された検出信号により車両の停止状態が検出されるなど上記のパーキングロック条件が満たされると、Pレンジ成立装置31によりパーキングロック機構14を作動させてロック状態とする(自動パーキングロックが作動した状態)。また、パーキングロック制御装置32は、自動パーキングロックが作動している時に、アクセルペダルセンサ98からの検出信号により運転者が車両を発進させる意図を有することが検出されるなどパーキングロック条件が満たされなくなると、シフト機構13によってパーキングロック機構14をアンロック状態とする(自動パーキングロックが解除した状態)。
【0081】
より詳細には、パーキングロック制御装置32は、車輪ブレーキに供給された停止液圧を維持するように制御し、その間にパーキングロック機構14がロック状態にされてPレンジを成立させる。ここで、「停止液圧」とは、車両が停止状態を維持するために車輪ブレーキに少なくとも供給される必要がある液圧であり、路面の傾斜や車両のクリープ力などによって変動するものである。そして、Pレンジが成立した後に、運転者によるブレーキペダル83の操作によりブレーキ装置の操作が解除され、ブレーキ装置から供給される液圧が停止液圧よりも低くなると、液圧制御装置である液圧調整弁77,78を作動させ、車輪ブレーキに供給された液圧が漸減されるように制御する。
【0082】
ブレーキECU5は、コントローラ3と同様の制御装置であり、コントローラ3および液圧ブレーキ装置6と接続されている。ブレーキECU5はコントローラ3と通信し、コントローラ3からの指示信号に基づき、液圧ブレーキ装置6の作動を制御し、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4(図2示)にブレーキ液圧を供給する。
【0083】
液圧ブレーキ装置6は、コントローラ3と通信するブレーキECU5によって制御され、パーキングロック制御装置32がパーキングロック機構14をロック状態とする場合に、液圧調整弁77,78を閉状態とした後、還流ポンプ72,73によって吸引管路Lp6,Ls6および還流管路Lp5、Ls5を介してリザーバタンク84内のブレーキ液を吸引して昇圧し、ブレーキペダル83の操作がなくても、増圧制御弁61,62,63,64を介してホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に液圧を供給する。この時、増圧制御弁61,62,63,64は終始開状態が維持され、減圧制御弁65,66,67,68は終始閉状態が維持されている。
【0084】
そして、車輪FL,FR,RL,RRに所定のブレーキ力が発生した後に、パーキングロック機構14がロック状態となると、還流ポンプ72,73の作動を停止する。この時、増圧制御弁61,62,63,64を開状態とし、減圧制御弁65,66,67,68を閉状態としたまま、液圧調整弁77,78を所定の開状態にする。これによって、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内のブレーキ液は液圧調整弁77,78を介してマスタシリンダ80側へと戻されて、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内の液圧が所定の勾配によって漸減していき、やがて、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内の液圧は0となる。
【0085】
車輪FL,FR,RL,RRに所定のブレーキ力が発生した後、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内の液圧を低下させる場合、還流ポンプ72,73の作動を停止させるとともに、減圧制御弁65,66,67,68を適宜開状態にすることにより、ホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4内の液圧を調圧リザーバ69,71に排出してもよい。
【0086】
(パーキングロック装置の制御方法)
次に、本実施形態の車両システムのコントローラ3による自動パーキングロック装置の制御方法について、図5,図6を参照して説明する。本実施形態の自動パーキングロック制御は、パーキングロック機構14がロック状態となった後に、駆動系内のガタおよびパーキングロック機構内のガタを所定の条件下で詰めることにより好適に車両を停止状態にすることを目的としている。また、コントローラ3は、図5に示した制御プログラムを所定のタイミングで繰り返して実行するものとする。尚、図5に示したフローチャートの初期状態において、パーキングロックフラグFL1およびPレンジシフトフラグFL2はクリアされている。
【0087】
最初に、パーキングロック条件が満たされているかを判定する(S201)。ここで、本実施形態において、自動パーキングロックが作動するためのパーキングロック条件とは、(1)車両が停止していること(車速が0)、(2)シフトレバー装置93がNレンジ以外を選択されていること、(3)自動パーキングロック解除スイッチがオフであること、が含まれる。ここでは、自動パーキングロックの作動について説明するため、このようなパーキングロック条件が設定されているが、車両を駐車状態にするためにパーキングロック機構14をロック状態にするパーキングロック条件とは異なるものである。車両の駐車状態においてパーキングロック機構14がロック状態とするパーキングロック条件は、(1)車両が停止していること(車速が0)、(4)シフトレバー装置93がPレンジを選択していること、が含まれる。
【0088】
S201において、パーキングロック条件が満たされていない場合(S201:No)は、S202、S203において、自動パーキングロック制御をキャンセルする処理を行い、フローを終了する。S202ではパーキングロックフラグFL1をクリアする。このパーキングロックフラグFL1は、自動パーキングロック制御が処理されている状態かを記憶するものであり、オンならば制御が完了していることを示す。S203ではPレンジシフトフラグFL2をクリアする。このPレンジシフトフラグFL2は、自動パーキングロック制御が始動した直後であるかを記憶するものであり、オフならば自動パーキングロック制御が始動した初回のみの処理を実行していないことを示す。
【0089】
S201において、パーキングロック条件が満たされている場合(S201:Yes)は、パーキングロックフラグFL1がオンになっているか判定する(S211)。パーキングロックフラグFL1がオンの場合(S211:Yes)は、上述したように自動パーキングロック制御が完了しているためフローを終了する。ここで、パーキングロックフラグFL1はクリアされているので、オフであるものと判定される(S211:No)。続いて、PレンジシフトフラグFL2がオンになっているか判定する(S212)。PレンジシフトフラグFL2がオフの場合(S212:No)は、上述したように自動パーキングロック制御が始動した直後であり、自動パーキングロック制御が始動した初回のみの処理を実行すべくS213に進む。
【0090】
ブレーキECU5は、液圧センサ79の検出値を入力し、現在のマスタシリンダ80の液圧Psを取得する。そして、この液圧を自動パーキングロック制御における目標液圧Ptに代入する(S213)。この処理は、当該制御が始動した初回のみとなるので、PレンジシフトフラグFL2をオンにする(S214)。ここで、目標液圧Ptは、車両が停止状態を維持するために車輪ブレーキに少なくとも供給される必要がある停止液圧である。この停止液圧は、上述したように、路面の傾斜や車両のクリープ力などによって変動するものであることから、現在車両が停止している路面に適応するために当該制御が始動した直後に、その都度取得するようにしている。より詳細には、図6に示すように、車両が停止し自動パーキングロック制御のフローが実行された時間t1におけるマスタシリンダ80の液圧Psが目標液圧Ptとなる。
【0091】
そして、パーキングロック制御装置32は、マスタシリンダ80の液圧Psが目標液圧Ptを下回らないように、ブレーキECU5に目標液圧Ptを出力しブレーキ装置の圧力制御を要求する(S215)。但し、図6に示すように、時間t1の直後は、運転者によりブレーキ装置が操作され、マスタシリンダ80の液圧Psが目標液圧Ptを上回っている。そのため、ブレーキECU5は、圧力制御の要求に対して処理を行わずにフローが終了する。
【0092】
ここで、パーキングロック制御装置32は、この自動パーキングロック制御において並行してパーキングロック機構14をロック状態にする制御を行っている。本実施形態においては、パーキングロック条件が満たされた時(図6の時間t1)からパーキングロック機構14がロック状態にされてPレンジが成立するまでの期間は、車両の停止後から運転者によってブレーキペダル83の操作されている状態が継続している期間(図6の時間t1〜t2の期間)よりも短いものとしている。つまり、マスタシリンダ80の液圧Psが停止液圧を上回っている間に、パーキングロック機構14がロック状態にされてPレンジが成立される。仮に、Pレンジが成立するまでの期間にマスタシリンダ80の液圧Psが停止液圧未満となるまで低下した場合には、パーキングロック制御装置32は、少なくともPレンジが成立するまでマスタシリンダ80の液圧Psを停止液圧に維持するように制御するものとしてもよい。
【0093】
また、所定のタイミングで繰り返して実行されるこのフローは、2回目以降において、自動パーキングロック制御が未完(FL1=0)であり、且つ当該制御が始動した直後ではない(FL2=1)ものと判定される(S212:Yes)。S221では、ブレーキECU5は、液圧センサ79の検出値を入力し、現在のマスタシリンダ80の液圧Psを再び取得する。そして、現在の液圧Psと目標液圧Ptを比較する(S221)。ここで、運転者によってブレーキペダル83の操作されている状態が継続している期間(図6の時間t1〜t2の期間)と、ブレーキペダル83の操作が解除されマスタシリンダ80の液圧Ptが目標液圧Ptまで低下するまでの期間(図6の時間t2〜t3)では、液圧Psが目標液圧Ptより高いものと判定される(S221:No)。この場合は、マスタシリンダ80の液圧Psを高める制御は必要ないため、S215において、ブレーキECU5は、圧力制御の要求に対して処理を行わずにフローを終了する。
【0094】
続いて、マスタシリンダ80の液圧Psが目標液圧Pt未満まで低下したものと判定された場合(S221:Yes)には、目標液圧Ptを所定値ΔPだけ減じる(S222)。このように更新された目標液圧Ptと液圧最小値Pminを比較する(S223)。パーキングロック制御装置32は、目標液圧Ptの方が液圧最小値Pminより高い場合(S223:No)に、マスタシリンダ80の液圧Psが更新された目標液圧Ptとなるように、ブレーキECU5に目標液圧Ptを出力しブレーキ装置の圧力制御を要求する(S215)。
【0095】
これにより、液圧ブレーキ装置6は、液圧調整弁77,78をブレーキの圧力制御の要求に基づいて閉状態とし、ブレーキペダル83の操作がなくても、増圧制御弁61,62,63,64を介してホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に液圧を供給する。これにより、運転者によりブレーキペダル83の操作が解除されても、ブレーキの液圧制御の要求に応じた制動力を保持するように制御される。そして、目標液圧Ptが所定値ΔPずつ減算されて更新され、その目標液圧Ptとなるようにブレーキの液圧制御を目標液圧Ptが液圧最小値Pmin未満となるまで繰り返される(S222,S223,S215)。
【0096】
上記の所定値ΔPは、フローが繰り返される時間の間隔に対して目標液圧Ptを低下させるために予め設定された値である。上記の時間の間隔に対する所定値ΔPの割合は、図6の点線の斜線部の傾きで示される。また、液圧最小値Pminは、マスタシリンダ80に液圧が供給されていない状態の値である。ここで、仮に従来のように目標液圧Ptを設定せずにマスタシリンダ80の液圧Psを低下させたとする。そうすると、図6の実線の右下がりの斜線部で示されるように、時間t2〜t4の期間で液圧Psが液圧最小値Pminまで低下することになる。一方で、本実施形態のように目標液圧Ptを徐々に低下させると、図6の点線の斜線部で示されるように、時間t2〜t3の期間では従来と同様の勾配で低下した後、時間t3〜t5の期間で液圧Psが液圧最小値Pminまで低下するように漸減させることができる。結果として、マスタシリンダ80の液圧Psは、従来と比較してゆっくりと時間を掛けて漸減される。
【0097】
そして、パーキングロック制御装置32は、目標液圧Ptが液圧最小値Pmin未満となった場合(S223:Yes)に、自動パーキングロック制御が完了したものとしてパーキングロックフラグFL1をオンにする(S224)。さらに、パーキングロック制御装置32は、ブレーキECU5に対して行っていたブレーキの液圧制御の要求をキャンセルし(S225)、フローを終了する。
【0098】
(パーキングロック装置による効果)
以上のように構成されるパーキングロック装置によると、ブレーキ装置の作動によって車両が停止しパーキングロック条件が満たされると、車輪ブレーキに供給された停止液圧を維持している間に、パーキングロック機構14がロック状態にされてPレンジが成立される。そして、その後にブレーキ装置の操作が解除されブレーキ装置から供給される液圧が停止液圧よりも低くなると、液圧制御装置である液圧調整弁77,78を作動させることによって、運転者のブレーキ装置の操作の解除に拘わらず車両の停止時に車輪ブレーキに供給されたマスタシリンダ80の液圧Psを徐々に低下させるように漸減させる。これにより、パーキングロック装置が作動した後にブレーキ装置の操作を解除しても、車輪ブレーキに供給された液圧が急激に低下することがなく、駆動輪の回転規制が徐々に解除されることになる。これにより、パーキングロック装置は、駆動系内のガタおよびパーキングロック機構14の係合部材と被係合部との間のガタ分、車両を路面の傾斜に沿って乗員に不快感や不安感を与えない程度にゆっくり移動して停止させることができる。
【0099】
また、自動パーキングロック制御においてパーキングロック条件が満たされるためには、車両が停止状態にあることを含むものとしている。これにより、例えばDレンジが選択された状態で車両が停止し自動パーキングロック装置が作動した後にブレーキ装置の操作を解除しても、車輪ブレーキに供給された液圧が急激に低下することがなく、駆動輪の回転規制が徐々に解除されることになる。これにより、パーキングロック装置は、駆動系のガタおよびパーキングロック機構14の係合部材と被係合部との間のガタ分、車両を路面の傾斜に沿って乗員に不快感や不安感を与えない程度にゆっくり移動して停止させることができる。
【0100】
<第二実施形態の変形態様>
本実施形態において、パーキングロック装置は、自動パーキングロック制御を例示して説明した。これに対して、自動的にパーキングロックを行う機構を有さない場合は、パーキングロック条件を上述したように、(1)車両が停止していること(車速が0)、(4)シフトレバー装置93がPレンジを選択していること、が含まれるようにし、当該条件が満たされた場合に図3に示す制御を行うようにしてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。
【0101】
また、実施形態において、駆動源をエンジン2とし、走行レンジ切替え装置を自動変速機1とし、パーキングロック装置を一般のAT車に使用したものとして説明した。これに対して、駆動源を電動モータとし、走行レンジ切替え装置をモータ回転制御装置とし、パーキングロック装置を電気自動車(EV車)に使用したものとしてもよい。同様に、駆動源をエンジン2および電動モータとし、走行レンジ切替え装置を自動変速機1およびモータ回転制御装置のうち少なくとも一方とし、パーキングロック装置をハイブリッド車(HV車)に使用したものとしてもよい。例えば、走行レンジ切替え装置をモータ回転制御装置とした場合には、電動モータを正回転させることによりDレンジが成立され、逆回転させることでRレンジが成立される。これにより、本実施形態で例示した自動変速機1と同様に走行レンジを成立させることができることから、このような電気自動車またはハイブリッド車においても同様のパーキングロック制御を行うことが可能である。
【0102】
さらに、本実施形態において、液圧ブレーキ装置6の外部のマスタシリンダ80を含む機構と、この機構とホイルシリンダWC1,WC2,WC3,WC4(車輪ブレーキ)を連結する各管路は、運転者によるブレーキペダル83の操作によって駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するものであり、本発明の「ブレーキ装置」に相当するものとした。このような機械式のブレーキ装置に対して、本発明をいわゆるブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置に適用するものとしてもよい。ブレーキワバイワイヤ式の場合は、マスタシリンダ80の液圧Psをシミュレータに供給し、ブレーキペダル83の操作量をストロークセンサで検出する。そして、検出した操作量に応じた液圧を車輪ブレーキに供給することにより制動力を付与する。この時、ブレーキECU5による車輪ブレーキの液圧制御は、各車輪ブレーキに配置された圧力計の検出値に基づいてフィードバック制御される。このようなブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置に本発明を適用した構成においても同様の効果を奏する。
【0103】
<第三実施形態>
本実施形態のパーキングロック装置を使用した車両システムの構成について説明する。ここで、本実施形態の構成は、主に、パーキングロック制御装置32による自動パーキングロック装置の制御方法において、第一実施形態および第二実施形態の制御方法を兼ねている点が相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態および第二実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0104】
コントローラ3は、図1に示すように、Pレンジ成立装置31と、パーキングロック制御装置32を有する。パーキングロック制御装置32は、パーキングロック条件が満たされた場合に、Pレンジが成立するまでの期間にPレンジ成立装置31と自動変速機1との作動を制御するとともに、Pレンジが成立するまでの期間および成立から暫くの期間にPレンジ成立装置31と液圧ブレーキ装置6との作動を制御するものである。つまり、パーキングロック制御装置32は、第一実施形態および第二実施形態で例示したように、図3および図5で示される自動パーキングロック制御を並行して実行する。
【0105】
従って、本実施形態の自動パーキングロック制御においては、車両が停止した後にパーキングロック条件が満たされると、先ずパーキングロック制御装置32によって、登坂方向の走行レンジが成立され(S123,S124)、エンジンECU4に駆動力増大要求を行い(S133)、ブレーキECU5に制動力保持要求を行う(S134)。これにより、車両の駆動系内のガタを詰めることができるので、駆動輪への制動力を解除しても車両の揺動の発生を防止できる。続いて、Pレンジが成立すると、パーキングロック制御装置32によって、マスタシリンダ80の液圧Psが漸減されるようにブレーキECU5にブレーキの液圧制御を要求する。これにより、パーキングロック機構14の係合部材と被係合部との間のガタ分、車両を路面の傾斜に沿って乗員に不快感や不安感を与えない程度にゆっくり移動して停止させることができる。
【符号の説明】
【0106】
1:自動変速機(走行レンジ切替え装置)、 2:エンジン(駆動源)
3:コントローラ、 4:エンジンECU、 5:ブレーキECU
6:液圧ブレーキ装置
11:アウトプットシャフト(回転部材、変速機の出力部材)
12:コントロールバルブ装置、 13:シフト機構、 14:パーキングロック機構
14a:プッシュロッド(係合部材)、 15:ロックギヤ(被係合部材)
31:Pレンジ成立装置、 32:パーキングロック制御装置
41:出力制御装置、 42:駆動トルク制御装置
61,62,63,64:増圧制御弁、 63:増圧制御弁
63,64:増圧制御弁、 63a,64a:逆止弁、 64:増圧制御弁
65,66,67,68:減圧制御弁、 67:減圧制御弁、 68:減圧制御弁
69,71:調圧リザーバ、 71a:ピストン、 72,73:還流ポンプ
75a:逆止弁、 76:モータ、 77,78:液圧調整弁(液圧制御装置)
78a:逆止弁、 79:液圧センサ
80:マスタシリンダ、 80a:プライマリ室、 80b:セカンダリ室
81:ブレーキブースタ、 82:プッシュロッド
83:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、 84:リザーバタンク
91:回転速度センサ(停車検出装置)、 92:レンジ位置センサ
93:シフトレバー装置、 94:シフトレバースイッチ(停車検出手段)
95:傾斜角センサ(傾斜方向検出装置)、 96:自動パーキング解除スイッチ
97:アクセルペダル(アクセル操作部材)、 98:アクセルペダルセンサ
Lp,Ls:主管路、 Lp1,Lp2,Ls1,Ls2:増圧管路
Lp3,Lp4,Ls3,Ls4:減圧管路、 Lp5,Ls5:還流管路
Lp6,Ls6:吸引管路
WC1,WC2,WC3,WC4:ホイルシリンダ(車輪ブレーキ)
T1:タイマー、 Tv:所定時間、 Ps:液圧、 Pt:目標液圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された駆動源によって回転され、駆動系を介して駆動輪と連結された回転部材と、
前記車両が停止状態にあることを検出する停車検出装置と、
係合部材を前記回転部材に設けられた被係合部と係合させることにより前記回転部材の回転を規制するロック状態と、前記係合部材を前記被係合部から離脱させることにより前記ロック状態を解除するアンロック状態との間で作動可能なパーキングロック機構と、
前記回転部材が前記駆動源によって正転され前記車両が前進するDレンジおよび前記回転部材が前記駆動源によって逆転され前記車両が後退するRレンジの何れか一方の走行レンジを成立させる走行レンジ切替え装置と、
パーキングロック条件が満たされると前記パーキングロック機構を前記ロック状態としてPレンジを成立するPレンジ成立装置と、
前記車両が走行する路面が車両前方において下り坂または上り坂になっている傾斜方向を検出する傾斜方向検出装置と、
前記パーキングロック条件が満たされた場合に、前記Pレンジ成立装置が前記パーキングロック機構を前記ロック状態とする前に、前記傾斜方向検出装置で検出された傾斜方向と前記停車検出装置で検出された前記車両の停止時に前記走行レンジ切替え装置によって成立されている前記走行レンジとに基づいて、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に走行する状態から停止したことを検出すると、前記車両が前記路面の傾斜を上る方向の前記走行レンジを前記走行レンジ切替え装置に一旦成立させた後に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させるパーキングロック制御装置と、
を備えるパーキングロック装置。
【請求項2】
請求項1において、
運転者によるアクセル操作部材の操作によって前記駆動源の駆動トルクを制御する出力制御装置とは別に、前記駆動源の駆動トルクを独立して制御する駆動トルク制御装置をさらに備え、
前記パーキングロック制御装置は、前記車両が前記路面の傾斜を上る方向の前記走行レンジを前記走行レンジ切替え装置に一旦成立させた後に、前記駆動源が前記路面の傾斜によって前記車両に発生する前後力を打ち消す駆動トルクを発生するように前記駆動トルク制御装置に前記駆動源の駆動トルクを制御させてから、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させるパーキングロック装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
運転者によるブレーキ操作部材の操作によって前記駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するブレーキ装置とは別に、前記車輪ブレーキに供給された液圧を独立して制御する液圧制御装置をさらに備え、
前記パーキングロック制御装置は、前記車両が前記路面の傾斜を上る方向の前記走行レンジを前記走行レンジ切替え装置に一旦成立させた後に、前記車輪ブレーキに前記路面の傾斜によって前記車両に発生する前後力より大きい制動力を保持するように前記液圧制御装置を作動させてから、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させるパーキングロック装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
運転者によるブレーキ操作部材の操作によって前記駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するブレーキ装置とは別に、前記車輪ブレーキに供給された液圧を独立して制御する液圧制御装置をさらに備え、
前記パーキングロック制御装置は、前記パーキングロック条件が満たされると、前記液圧制御装置を作動させて、前記停車検出装置で検出された前記車両の停止中に前記車輪ブレーキに供給された停止液圧を維持している間に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させ、前記ブレーキ装置から供給される液圧が前記停止液圧より低くなると、前記車輪ブレーキに維持された液圧を漸減させるように前記液圧制御装置を作動させるパーキングロック装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記駆動源は、エンジンであり、
前記走行レンジ切替え装置は、前記エンジンの出力回転を複数の変速比で変速して前記車両を前進させる複数の前進変速段および前記車両を後退させる後退段を成立する変速機であり、
前記Dレンジは、前記複数の前進変速段を含み、前記Rレンジは後退段であり、
前記回転部材は、前記変速機の出力部材であり、
前記パーキングロック制御装置は、前記パーキングロック条件が満たされると、前記Pレンジ成立装置が前記パーキングロック機構を前記ロック状態とする前に、前記傾斜方向検出装置で検出された傾斜方向と前記停車検出装置で検出された前記車両の停止時に前記変速機によって成立されている前記走行レンジとに基づいて、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に前進する状態で停止したことを検出すると前記変速機に前記Rレンジを、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に後退する状態で停止したことを検出すると前記変速機に前記エンジンの出力回転を最も減速させる前記Dレンジの中の第一速を一旦成立させた後に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させるパーキングロック装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記駆動源は、電動モータであり、
前記走行レンジ切替え装置は、前記電動モータの出力回転を正回転または逆回転させるモータ回転制御装置であり、
前記パーキングロック制御装置は、前記パーキングロック条件が満たされると、前記Pレンジ成立装置が前記パーキングロック機構を前記ロック状態とする前に、前記傾斜方向検出装置で検出された傾斜方向と前記停車検出装置で検出された前記車両の停止時に前記モータ回転制御装置によって成立されている前記走行レンジとに基づいて、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に前進する状態で停止したことを検出すると前記モータ回転制御装置に前記Rレンジを、前記車両が前記路面の傾斜を下る方向に後退する状態で停止したことを検出すると前記モータ回転制御装置に前記Dレンジを一旦成立させた後に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させるパーキングロック装置。
【請求項7】
車両に搭載された駆動源によって回転され、駆動系を介して駆動輪と連結された回転部材と、
前記車両が停止状態にあることを検出する停車検出装置と、
係合部材を前記回転部材に設けられた被係合部と係合させることにより前記回転部材の回転を規制するロック状態と、前記係合部材を前記被係合部から離脱させることにより前記ロック状態を解除するアンロック状態との間で作動可能なパーキングロック機構と、
前記回転部材が前記駆動源によって正転され前記車両が前進するDレンジおよび前記回転部材が前記駆動源によって逆転され前記車両が後退するRレンジの何れか一方の走行レンジを成立させる走行レンジ切替え装置と、
パーキングロック条件が満たされると前記パーキングロック機構を前記ロック状態としてPレンジを成立するPレンジ成立装置と、
運転者によるブレーキ操作部材の操作によって前記駆動輪に制動力を付与する車輪ブレーキに液圧を供給するブレーキ装置とは別に、前記車輪ブレーキに供給された液圧を独立して制御する液圧制御装置と、
前記パーキングロック条件が満たされると、前記液圧制御装置を作動させて、前記停車検出装置で検出された前記車両の停止中に前記車輪ブレーキに供給された停止液圧を維持している間に、前記Pレンジ成立装置に前記パーキングロック機構を前記ロック状態にさせて前記Pレンジを成立させ、前記ブレーキ装置から供給される液圧が前記停止液圧より低くなると、前記車輪ブレーキに維持された液圧を漸減させるように前記液圧制御装置を作動させるパーキングロック制御装置と、
を備えるパーキングロック装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記パーキングロック条件を満たすためには、前記停車検出装置により前記車両が停止状態にあることを検出したことを要するパーキングロック装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記Dレンジ、前記Rレンジ、および前記Pレンジの何れかのレンジを選択するレンジ選択装置をさらに備え、
前記パーキングロック条件を満たすためには、前記レンジ選択装置によって前記Pレンジが選択されたことを要するパーキングロック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140995(P2012−140995A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292793(P2010−292793)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】