説明

半導体装置の製造方法

【課題】王水等の薬液によるシリサイド膜表面における腐食発生を抑制し、良好なPt含有シリサイド膜を形成する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】シリコンを含む半導体層を有する基板上または基板上に形成されたシリコンを含む導電膜上に、貴金属を含む金属膜を形成する工程(a)と、工程(a)の後、基板に対して熱処理を行って前記貴金属とシリコンとを反応させ、基板上または導電膜上に前記貴金属を含むシリサイド膜を形成する工程(b)と、工程(b)の後、第1の薬液を用いて、シリサイド膜のうち未反応の貴金属11の下に位置する部分上に酸化膜12を形成する工程(c)と、第2の薬液を用いて未反応の貴金属を溶解する工程(d)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、特に、貴金属を除去する工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)微細プロセスではデバイスの更なる高性能化・低消費電力化が求められている。そのような状況において、従来のCMOSプロセスではシリサイド抵抗をさらに低くするために、シリサイド材料としてNiやCoを用いたNiSiやCoSiが用いられている。
【0003】
しかしながら、一方で、微細プロセスでは接合リーク電流の低減のためにNiSiやCoSiのシリサイド反応を抑制する必要がある。そのため、シリサイド材料としてNiまたはCoにPtまたはPdを5〜10%程度混入した合金が用いられている。中でもシリサイド材料としてNiとPtの合金(NiPt)を用いた場合には、耐熱性の向上および接合リーク電流の抑制の効果が期待される。
【0004】
シリサイド化の工程では、合金をSi基板上に成膜後、熱酸化処理を施すことで合金とSiが反応してシリサイドが形成されるが、残留する未反応の合金は除去する必要がある。ここで、例えばシリサイド材料としてNiとPtの合金(NiPt)を用いた場合、シリサイド形成後に未反応のNiPtを除去するために、硫酸と過酸化水素の混合液のような酸化力の高い酸が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図8(a)、(b)は従来のシリサイド形成工程を示す図である。図8(a)に示す工程では、上面の一部がシリサイド形成領域として露出したシリコンからなる半導体基板101を準備した後、半導体基板101の非シリサイド領域上に絶縁膜102を形成し、次いで、シリサイド材料としてNiPt103を半導体基板101上の全体に成膜する。その後、熱酸化処理を施すことでシリサイド領域においてNiSiとNiPtSiとの混晶のシリサイド層110を形成する。なお、以降の記載においては、NiSiとNiPtSiとの混晶をまとめてNiPtSiと称する。
【0006】
次に、図8(b)に示す工程では、未反応のNiPt103を除去し、NiPtSiのみを残す。本工程では、硫酸と過酸化水素の混合溶液105を用いて未反応のNiPt103を除去する。
【0007】
しかしながら、シリサイド形成プロセスにおいて未反応のNiPt103を除去するために硫酸と過酸化水素の混合液のような酸化力の高い酸を用いると、Niを溶解することは出来るが、化学反応性が低いPtは溶解することが出来ず、半導体基板上に残留する。このため、Ptの残留を防ぐためには、混合溶液105に代えて、これよりも強力な酸化力を有する王水(硝酸、塩酸を含む溶液)が用いられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-124487号公報
【特許文献2】特開2008-118088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の技術において、強力な酸化力を有する王水を用いてPt残渣を溶解除去した場合、王水中の塩酸はNiSiに対しても腐食性が高いため、シリサイド反応させたNiPtSiの部分へも溶解反応が進み、シリサイド層における抵抗異常等を誘発する原因となる。これは、未反応Niを硫酸と過酸化水素水の混合液等の薬液により除去する時にNiSi上に形成される酸化膜が、Pt残渣が阻害源となりこのPt残渣直下に形成されず、王水によるPt残渣除去時にPt残渣下のNiSiがエッチングされることによる。この結果、シリサイド膜表面に表面荒れが発生する。
【0010】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、王水等の薬液によるシリサイド膜表面における腐食発生を抑制し、良好なPt含有シリサイド膜を形成する半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の半導体装置の製造方法は、シリコンを含む半導体層を有する基板上または前記基板上に形成されたシリコンを含む導電膜上に、貴金属を含む金属膜を形成する工程(a)と、前記工程(a)の後、前記基板に対して熱処理を行って前記貴金属とシリコンとを反応させ、前記基板上または前記導電膜上に前記貴金属を含むシリサイド膜を形成する工程(b)と、前記工程(b)の後、第1の薬液を用いて、前記シリサイド膜のうち未反応の前記貴金属の下に位置する部分上に酸化膜を形成する工程(c)と、第2の薬液を用いて前記未反応の貴金属を溶解する工程(d)とを備えている。
【0012】
この方法によれば、工程(c)で貴金属の下に位置する部分上にも酸化膜を形成することができるので、工程(d)において不要な貴金属の除去を行いつつ、シリサイド層の腐食を防ぐことができる。
【0013】
前記貴金属は白金であり、前記第1の薬液は第1の酸化剤を含む水溶液であり、前記工程(c)では、前記酸化膜の形成と同時に前記未反応の貴金属の溶解が進行することが好ましい。
【0014】
前記第1の薬液は、硝酸、オゾン水、過酸化水素水、過マンガン酸カリウム水溶液、塩素酸カリウム水溶液、四酸化オスミウム水溶液から選ばれた1つの溶液であってもよい。
【0015】
前記第1の薬液は、さらに塩酸系溶液を含んでいてもよい。
【0016】
前記第1の薬液は、塩酸に過マンガン酸カリウムを添加した溶液、塩酸と過酸化水素水との混合液、塩酸とオゾン水との混合液、塩酸に三酸化クロムを添加した溶液、塩酸に塩素酸カリウムを添加した溶液、塩酸に四酸化オスミウムを添加した溶液から選ばれた1つの溶液であってもよい。
【0017】
前記工程(c)では、前記基板を前記第1の薬液に浸漬してもよい。
【0018】
前記第2の薬液は塩酸と硝酸の混合溶液であってもよい。
【0019】
前記工程(b)の後、前記工程(c)の前に、硫酸系溶液と第2の酸化剤との混合溶液を用いて前記金属膜のうちの未反応部分を溶解する工程(e)をさらに備えていてもよい。
【0020】
前記硫酸系溶液と前記第2の酸化剤との混合溶液は、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸とオゾン水の混合溶液、または電解硫酸液であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、王水などの第2の薬液による貴金属残渣の除去前に、貴金属残渣とそれが付着するシリサイド層との界面にまで第2の薬液処理に耐える酸化膜を形成することにより、貴金属を溶解する第2の薬液によるシリサイド膜の腐食発生を抑制することができる。その結果、良好なPt含有シリサイド膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】SPMで処理した後の半導体基板上面のSEM像を示す図である。
【図4】SPMで処理した後の半導体基板を模式的に示す断面図である。
【図5】従来の方法で処理した場合のNiPtSi膜の上面のSEM像を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る方法で処理した場合の半導体基板を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る方法で処理した場合のNiPtSi膜の上面のSEM像を示す図である。
【図8】(a)、(b)は従来のシリサイド形成工程を示す図である。
【図9】(a)、(b)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】(a)、(b)は、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法および製造装置の一例ついて、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0024】
図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0025】
まず、図1(a)に示す工程で、シリコンからなる半導体基板1に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)等により素子分離領域2を形成する。次に、素子分離領域2間の半導体基板1上に、熱酸化法を用いて膜厚2nmのシリコン酸化膜よりなるゲート絶縁膜3を形成する。次に、半導体基板1上の全面に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、膜厚100nmのポリシリコン膜を形成した後、イオン注入法により、ドーパント不純物をポリシリコン膜に導入する。ここで、NMOSトランジスタを形成する場合、n型のドーパント不純物としてリンを用い、イオン注入の条件は加速電圧を15keV、ドーズ量を1×1016cm−2とする。また、PMOSトランジスタを形成する場合、p型のドーパント不純物としてボロンを用い、イオン注入の条件は例えば加速電圧を5keV、ドーズ量を5×1015cm−2とする。次に、フォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いて、ポリシリコン膜をパターニングし、ポリシリコン膜よりなるゲート電極(導電膜)4を形成する。
【0026】
次に、ゲート電極4をマスクとして、イオン注入法により半導体基板1のうちゲート電極4の両側に位置する領域にドーパント不純物を導入する。ここで、NMOSトランジスタを形成する場合、n型のドーパント不純物として砒素を用い、イオン注入の条件は例えば加速電圧を2keV、ドーズ量を1×1015cm−2とする。PMOSトランジスタを形成する場合、p型のドーパント不純物としてボロンを用い、イオン注入の条件は例えば加速電圧を0.5keV、ドーズ量を3×1015cm−2とする。これにより、ソース/ドレイン拡散層のエクステンション領域15となる浅い不純物拡散層領域が形成される。
【0027】
次に、半導体基板1上の全面に、CVD法により、膜厚10nmのシリコン酸化膜と膜厚50nmのシリコン窒化膜を形成する。次に、RIE(Reactive Ion Etching)法により、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを異方性エッチングして、ゲート電極4の側壁部分にシリコン酸化膜からなるサイドウォール絶縁膜5とシリコン窒化膜よりなるサイドウォール絶縁膜6を形成する。次に、ゲート電極4及びサイドウォール絶縁膜5、6をマスクとして、イオン注入法により、半導体基板1のうちゲート電極4及びサイドウォール絶縁膜5、6の両側に位置する領域にドーパント不純物を導入する。ここで、NMOSトランジスタを形成する場合、n型のドーパント不純物として砒素を用い、イオン注入の条件は例えば加速電圧を20keV、ドーズ量を5×1015cm−2とする。PMOSトランジスタを形成する場合、p型のドーパント不純物としてボロンを用い、イオン注入の条件は例えば加速電圧を5keV、ドーズ量を5×1015cm−2とする。これにより、ソース/ドレイン拡散層の深い不純物拡散層領域が形成される。次に、所定の熱処理を行うことにより、不純物拡散層領域に導入されたドーパント不純物を活性化してソース/ドレイン拡散層7を形成する。
【0028】
次に、図1(b)に示す工程で、半導体基板1上の全面に、金属膜として例えばPt(白金)が添加されたNi(ニッケル)ターゲットを用いたスパッタ法により、例えば膜厚7〜15nmのNiPt膜8を形成する。ターゲットにおけるPtの組成比は、例えば2〜10原子%(atom%)とする。次に、NiPt膜8上に、例えばスパッタ法により例えば膜厚5〜30nmのTiN膜よりなる保護膜9を形成する。保護膜9はNiPt膜8の酸化を防止するためのものである。
【0029】
次に、図2(a)に示す工程で、シリサイド化のための熱処理として、例えばRTA(Rapid Thermal Annealing)法による熱処理を行う。熱処理条件は、例えば200〜400℃、30秒間とする。これにより、NiPt膜8のNiPtとゲート電極4上部のSiとを反応させて、ゲート電極4上にNiPtSi膜10aを形成するとともに、NiPt膜8のNiPtとソース/ドレイン拡散層7上部のSiとを反応させて、ソース/ドレイン拡散層7上にNiPtSi膜10bを形成する。
【0030】
次に、図2(b)に示す工程で、酸化剤を含む比較的高温の薬液を用いたウェットエッチングにより、保護膜9及びNiPt膜8のうちの未反応の金属膜をそれぞれ選択的に除去する。
【0031】
ここで、酸化剤を含む薬液としては、例えば硫酸と過酸化水素とが混合されて成る薬液である硫酸過水(SPM液:Sulfuric acid-Hydrogen Peroxide Mixture)を用いる。なお、SPM液における硫酸の体積パーセント濃度は例えば50〜90%とし、SPM液における過酸化水素の体積パーセント濃度は例えば10〜50%とする。
【0032】
SPM液を用いた場合、図3および図4に示すように、TiN膜からなる保護膜9とNiPt膜8中のNiは溶解できるが、Ptを溶解することができない。そのため、半導体基板1上や素子分離領域2上およびゲート電極4上にPt粒子11が残留する。なお、図3は半導体基板上面のSEM像を示しており、同図からNiPtSi膜10a、10b上にPt粒子11が残留している様子がわかる。
【0033】
次に、塩素と酸化剤を含む薬液への半導体基板1の浸漬処理を行ない、NiPtSi膜10a、10bの上面を意図的に酸化する。この処理によれば、Ptを徐々に溶解しつつ、NiPtSi膜10a、10b上のPt粒子11の下の領域にも他の領域と同様にシリコン酸化膜12を形成できる。具体的には、塩酸に過マンガン酸カリウムを添加した溶液(KMnO:1〜7wt%、処理温度40℃以上70℃以下)に5分間半導体基板1を浸漬することで、図6に示すように、Pt粒子11が付着した領域の下方領域を含むNiPtSi膜10a、10bの上面全体に厚さ1〜2nm程度の均一なシリコン酸化膜12を形成できる。この工程は枚葉式で行うことが好ましいが、複数枚のウェハを同時に処理するバッチ式で行ってもよい。
【0034】
最後に、残留したPt粒子11を王水(体積比で硝酸:塩酸=1:3)のような強酸を用い完全に溶解する。王水中の塩素はNiやPtに対しても腐食性があり、NiやPtが塩化物イオンとなり、溶解される。ここで、王水の調製に用いられる硝酸は例えば濃度が60wt%のものであり、塩酸は濃度が36wt%のものである。
【0035】
図7は、SPM処理後に、塩酸に過マンガン酸カリウムを加えた溶液を用いた処理を行い、その後、王水を用いてPt粒子の除去を行った場合のNiPtSi膜の上面のSEM像を示す図である。Pt粒子を除去するために、王水処理を120秒間行った。
【0036】
図7から、本実施形態の方法によれば、Pt粒子11の存在した箇所のNiPtSi膜にも溶解は見られず、凹凸がなく良好なNiPtSi膜10a、10bが形成されていることが分かる。
【0037】
SPM液処理後のNiPtSi表面状態を示す図4において、SPM液も酸化力を有するため、NiPtSi膜10a、10b上面のうち露出している領域にはシリコン酸化膜12が形成されるが、Pt粒子11が付着した領域の下ではシリコン酸化膜12は形成されていない。従来のように、シリコン酸化膜12は王水に溶解しないため、この状態でPt粒子11を王水により溶解除去すると、図5に示す王水処理後のNiPtSi膜10a、10bのSEM像に示すように、Pt粒子11が存在しなかった箇所は溶解されないが、Pt粒子11の存在した箇所のNiPtSi膜10a、10bは溶解され、形成したシリサイド層の抵抗が上昇したり、トランジスタの特性のバラツキを引き起こしたりする。
【0038】
そこで本実施例では、そのSPM液での処理に続いてさらに、塩酸に酸化剤を含む薬液によってNiPtSi膜表面全体に保護酸化膜を形成した後に上述の王水処理を行うことにより、NiPtSi膜10a、10bの全体が溶解されることなく、Pt粒子11を効率良く除去することが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態の方法では、未反応のNiPtを除去する溶液としてSPMを用いたが、これに限定されるものではなく、他に硫酸系に酸化剤を加えた薬液を用いることもできる。例えば、硫酸とオゾン水の混合液(HSO:O=1〜5:1、80℃〜160℃)、電解硫酸液(80℃〜100℃)などの溶液でも同様の効果を得ることができる。なお、硫酸とオゾン水の混合のために用いる硫酸は98wt%であり、オゾン水の濃度は20ppmであるとする。
【0040】
なお、本実施形態では、NiPtSi膜10a、10bの上面を酸化しながらPt粒子を徐々に溶解する溶液として塩酸に過マンガン酸カリウムを添加した溶液を用いたが、塩素と酸化剤を含む薬液であれば他の薬液を用いることができる。例えば、塩酸(濃度36wt%)と過酸化水素水(濃度31wt%)の混合液(HCl:H=3〜5:1、処理温度40℃以上70℃以下)、塩酸(濃度36wt%)とオゾン水(濃度20ppm)の混合液(HCl:O=3〜5:1、処理温度40℃以上70℃以下)、塩酸に過マンガン酸カリウムを添加した溶液(KMnO:1〜7wt%、処理温度40℃以上70℃以下)、塩酸に三酸化クロムを添加した溶液(CrO:1〜5wt%、処理温度40℃以上70℃以下)、塩酸に塩素酸カリウムを添加した溶液(KClO:1〜7wt%、処理温度40℃以上70℃以下)、塩酸に四酸化オスミウムを添加した溶液(OsO:1〜6wt%、処理温度40℃以上70℃以下)や、以上の溶液を水で1〜7倍に希釈した希釈液であっても同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、本実施形態の方法では、残留Pt粒子を除去する溶液として王水(体積比で硝酸:塩酸=1:3、60℃)120秒にて処理を行なったが、これに限定されるものではなく、その他条件(体積比で硝酸:塩酸:水=1:2〜7:0〜5、処理温度40℃〜60℃、処理時間25秒〜180秒)でも同様の効果を得ることができる。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態による半導体装置の製造方法によれば、SPM処理後に、NiPtSi膜表面の酸化とNiPtSi膜表面に残留するPt粒子の溶解の双方の能力を有する溶液処理を行うことにより、意図的にNiPtSi膜10a、10b表面に1〜2nm程度の均一なシリコン酸化膜12を形成させることができる。このため、王水によるPt粒子溶解の際、NiPtSi膜10a、10bの溶解腐食を抑制することができる。その結果、Pt溶解力を有する王水によるシリサイド表面の腐食を抑制し、良好な白金含有シリサイド膜を形成することができる。
【0043】
また、以上で説明した実施形態に係る半導体装置において、半導体基板以外にも、シリコンを含む半導体層を有するSOI基板などを用いることができる。
【0044】
また、本実施形態の方法において、SPMによる処理を行わずにNiPtSi膜表面の酸化とNiPtSi膜表面に残留するPt粒子の溶解の双方の能力を有する溶液処理を行い、その後に王水等によりPtの除去を行う場合でもPtを除去しつつ、NiPtSi膜の保護を図ることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を、以下に説明する。本実施形態では、SPM処理後に酸化剤を含む比較的高温の薬液として70℃の硝酸を用いている点が第1の実施形態の方法と異なっている。
【0046】
また、本実施形態の製造方法では、NiPtSi膜10aおよび10bを形成し、SPM液により保護膜9及びNiPt膜8のうちの未反応の金属をそれぞれ選択的に除去する工程(図2(b)に示す工程の途中)までは、第1の実施形態と同様であるので省略する。
【0047】
SPM液により上述の未反応の金属を除去した後、酸化剤を含む薬液に半導体基板1を浸漬する。ここで、例えば酸化剤を含む薬液の一例として硝酸(2wt%、70℃)を用いる場合、この硝酸中に半導体基板1を60分間浸漬することで、図6に示すように、Pt粒子11が付着した領域の下方領域を含むNiPtSi膜10a、10bの上面全体に厚さ1〜2nm程度の均一なシリコン酸化膜12を形成できる。この工程は複数枚のウェハを同時に処理するバッチ式で行うことが好ましいが、枚葉式で行ってもよい。また、本実施例では硝酸:2wt%、70℃、60分間浸漬処理と記載したが、濃度は0.5wt%〜15wt%、温度は40℃〜75℃、時間は15分〜90分の範囲であれば同様の効果を得ることができ、処理時間は硝酸濃度を高濃度に、処理温度を高温にすることで短くすることができる。
【0048】
その後に上述の王水処理を行うことにより、NiPtSi膜10a、10bの全体が溶解されることなく、Pt粒子11を効率良く除去することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態の方法では、未反応のNiPtを除去する溶液としてSPMを用いたが、これに限定されるものではなく、他に硫酸系に酸化剤を加えた薬液を用いることもできる。例えば、硫酸とオゾン水の混合液(HSO:O=1〜5:1、80℃〜160℃)、電解硫酸液(80℃〜100℃)などの溶液でも同様の効果を得ることができる。なお、硫酸とオゾン水の混合のために用いる硫酸は98wt%であり、オゾン水の濃度は20ppmであるとする。
【0050】
なお、本実施形態では、NiPtSi膜10a、10bの上面を酸化する溶液として硝酸を用いたが、酸化剤を含む水溶液であれば用いることができる。例えば、オゾン水(0.01〜5ppm、20℃〜30℃、30分〜90分)、過酸化水素水(1wt%〜30wt%、20℃〜50℃、30分〜90分)、過マンガン酸カリウム水溶液(0.5wt%〜10wt%、40℃〜70℃、30分〜90分)、三酸化クロム水溶液(0.5wt%〜10wt%、40℃〜70℃、30分〜90分)、塩素酸カリウム水溶液(0.5wt%〜10wt%、40℃〜70℃、30分〜90分)、四酸化オスミウム水溶液(0.5wt%〜10wt%、40℃〜70℃、30分〜90分)などの酸化剤水溶液を用いても、硝酸を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、塩酸を含まず酸化剤のみを含む水溶液を用いることで、塩酸を含む液を用いる場合に比べて薬液供給ラインの削減を図ることができる。このため、薬液処理を行うための装置構造を簡便化でき、薬液補充管理が容易になり、薬液使用コストを削減でき、排液処理負担も軽減することができる。
【0052】
なお、本実施形態の方法では、残留Pt粒子を除去する溶液として王水(体積比で硝酸:塩酸=1:3、60℃)で120秒の処理を行なったが、処理条件はこれに限定されるものではない。例えば、体積比で硝酸:塩酸:水=1:1〜7:0〜10である薬液を用いて、処理温度40℃〜60℃、処理時間25秒〜180秒の範囲で処理しても王水を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態による半導体装置の製造方法によれば、SPM処理後に、NiPtSi膜10a、10b表面を酸化できる溶液を用いて処理を行うことにより、意図的にNiPtSi膜10a、10b表面にシリコン酸化膜12を形成させることができる。このため、王水によるPt粒子溶解の際、NiPtSi膜10a、10bの溶解腐食を抑制することができる。その結果、Pt溶解力を有する王水によるシリサイド表面の腐食を抑制し、良好な白金含有シリサイド膜を形成することができる。
【0054】
また、以上で説明した実施形態に係る半導体装置において、半導体基板以外にも、シリコンを含む半導体層を有するSOI基板などを用いることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
また本発明の第3の実施形態として、SPMによる処理を行わずにNiPtSi膜表面酸化の能力を有する溶液処理を行い、その後に王水等によりPtの除去を行う半導体装置の製造方法について説明する。この場合でも、以下のように、Ptを除去しつつ、NiPtSi膜の保護を図ることができる。
【0056】
図9(a)、(b)、及び図10(a)、(b)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0057】
本実施形態では、図9(a)に示すソース/ドレイン拡散層7を形成するまでの工程は第1及び第2の実施形態の製造方法と同様であるので説明を省略する。また、本実施形態の製造方法では、ソース/ドレイン拡散層7の形成後に保護膜9を形成せず、SPM処理を行わない点が第2の実施形態の製造方法と異なっている。
【0058】
図9(b)に示す工程で、半導体基板1上の全面に、例えばPt(白金)が添加されたNi(ニッケル)ターゲットを用いたスパッタ法により、例えば膜厚7〜25nmのNiPt膜8を形成する。ターゲットにおけるPtの組成比は、例えば2〜10原子%(atom%)とする。
【0059】
次に、図10(a)に示す工程で、シリサイド化のための熱処理として、例えばRTA法による熱処理を行う。熱処理条件は、例えば200〜400℃、20秒間とする。これにより、NiPt膜8のNiPtとゲート電極4上部のSiとを反応させて、ゲート電極4上にNiPtSi膜10aを形成するとともに、NiPt膜8のNiPtとソース/ドレイン拡散層7上部のSiとを反応させて、ソース/ドレイン拡散層7上にNiPtSi膜10bを形成する。
【0060】
次に、図10(b)に示す工程で、酸化剤を含む比較的高温の薬液を用いたウェットエッチングにより、NiPt膜8のうちの未反応の金属膜を選択的に除去する。
【0061】
ここで、本実施形態では、酸化剤を含む薬液に半導体基板を浸漬し、NiPtSi膜10a、10bの上面を意図的に酸化する。この処理によれば、NiPtSi膜10a、10b上のPt粒子11の下の領域にも他の領域と同様にシリコン酸化膜12を形成できる。具体的には、硝酸(2wt%、70℃)に60分間浸漬処理を行うことで、図6に示すように、Pt粒子11が付着した領域の下方領域を含むNiPtSi膜10a、10bの上面全体に厚さ1〜2nm程度の均一なシリコン酸化膜12を形成できる。この工程は複数枚のウェハを同時に処理するバッチ式で行うことが好ましいが、枚葉式で行ってもよい。また、本実施形態の方法では2wt%、70℃の硝酸で60分間浸漬処理するとしたが、硝酸の濃度は0.5wt%〜15wt%、温度は40℃〜75℃、浸漬時間は15分〜90分の範囲であれば上述の条件と同様の効果を得ることができる。処理時間は硝酸濃度を高濃度に、処理温度を高温にすることで短くすることができる。
【0062】
その後、王水(体積比で硝酸:塩酸=1:3、60℃)処理を行うことにより、NiPtSi膜10a、10bの全体が溶解されることなく、Pt粒子11を効率良く除去することが可能となる。
【0063】
硝酸を用いた処理を行い、その後、王水を用いてPt粒子の除去を行った場合のNiPtSi膜の上面は、第1の実施形態の方法で処理した場合(図7のSEM像参照)と同様になっている。なお、Pt粒子を除去するための王水処理は120秒間行っている。本実施形態の方法によれば、Pt粒子11の存在した箇所のNiPtSi膜にも溶解は見られず、凹凸がなく良好なNiPtSi膜10a、10bが形成されていることが分かる。
【0064】
なお、本実施形態では、NiPtSi膜10a、10bの上面を酸化する溶液として硝酸を用いたが、酸化剤を含む水溶液であれば硝酸に代えて用いることができる。例えば、オゾン水(0.01〜5ppm、20℃〜30℃、30分〜90分)、過酸化水素水(1wt%〜30wt%、20℃〜50℃、30分〜90分)、過マンガン酸カリウム水溶液(0.5wt%〜10wt%、40℃〜70℃、30分〜90分)、三酸化クロム水溶液(0.5wt%〜10wt%、40℃〜70℃、30分〜90分)、塩素酸カリウム水溶液(0.5wt%〜10wt%、40℃〜70℃、30分〜90分)、四酸化オスミウム水溶液(0.5wt%〜10wt%、40℃〜70℃、30分〜90分)などの酸化剤水溶液であっても硝酸を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、塩酸を含まず酸化剤のみを含む水溶液を用いることで、塩酸を含む液を用いる場合に比べて薬液供給ラインの削減を図ることができる。このため、処理装置の構造を簡便化でき、薬液補充管理が容易になり、薬液使用コストを削減でき、排液処理負担も軽減することができる。
【0066】
なお、本実施形態の方法では、残留Pt粒子を除去する溶液として王水(体積比で硝酸:塩酸=1:3、60℃)120秒にて処理を行なったが、これに限定されるものではなく、その他条件(体積比で硝酸:塩酸:水=1:2〜7:0〜5、処理温度40℃〜60℃、処理時間25秒〜180秒)でも同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、本実施形態の方法によれば、TiNなどよりなる保護膜9の形成工程ならびにSPM処理を省略でき、酸化剤のみを含む水溶液を用いることで、塩酸を含む液を用いる場合に比べて薬液の供給ラインを削減することができる。このため、装置構造を簡便化でき、薬液補充管理が容易になり、薬液使用コストを削減でき、排液処理負担も軽減することができる。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態による半導体装置の製造方法によれば、NiPtSi膜表面の酸化能力を有する溶液処理を行うことにより、意図的にNiPtSi膜10a、10b表面12を形成させることができる。このため、王水によるPt粒子溶解の際、NiPtSi膜の溶解腐食を抑制することができる。その結果、Pt溶解力を有する王水によるシリサイド表面の腐食を抑制し、良好な白金含有シリサイド膜を形成することができる。
【0069】
また、以上で説明した実施形態に係る半導体装置において、半導体基板以外にも、シリコンを含む半導体層を有するSOI基板などを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上に説明したように、本発明の半導体装置の製造方法は、Ptなどの貴金属を含有するシリサイド膜を有する半導体装置の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 半導体基板
2 素子分離領域
3 ゲート絶縁膜
4 ゲート電極
5、6 サイドウォール絶縁膜
7 ソース/ドレイン拡散層
8 NiPt膜
9 保護膜
10a、10b NiPtSi膜
11 Pt粒子
12 シリコン酸化膜
15 エクステンション領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含む半導体層を有する基板上または前記基板上に形成されたシリコンを含む導電膜上に、貴金属を含む金属膜を形成する工程(a)と、
前記工程(a)の後、前記基板に対して熱処理を行って前記貴金属とシリコンとを反応させ、前記基板上または前記導電膜上に前記貴金属を含むシリサイド膜を形成する工程(b)と、
前記工程(b)の後、第1の薬液を用いて、前記シリサイド膜のうち未反応の前記貴金属の下に位置する部分上に酸化膜を形成する工程(c)と、
第2の薬液を用いて前記未反応の貴金属を溶解する工程(d)とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記貴金属は白金であり、前記第1の薬液は第1の酸化剤を含む水溶液であり、
前記工程(c)では、前記酸化膜の形成と同時に前記未反応の貴金属の溶解が進行することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の薬液は、硝酸、オゾン水、過酸化水素水、過マンガン酸カリウム水溶液、塩素酸カリウム水溶液、四酸化オスミウム水溶液から選ばれた1つの溶液であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の薬液は、さらに塩酸系溶液を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の薬液は、塩酸に過マンガン酸カリウムを添加した溶液、塩酸と過酸化水素水との混合液、塩酸とオゾン水との混合液、塩酸に三酸化クロムを添加した溶液、塩酸に塩素酸カリウムを添加した溶液、塩酸に四酸化オスミウムを添加した溶液から選ばれた1つの溶液であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(c)では、前記基板を前記第1の薬液に浸漬することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2の薬液は塩酸と硝酸の混合溶液であることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(b)の後、前記工程(c)の前に、硫酸系溶液と第2の酸化剤との混合溶液を用いて前記金属膜のうちの未反応部分を溶解する工程(e)をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記硫酸系溶液と前記第2の酸化剤との混合溶液は、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸とオゾン水の混合溶液、または電解硫酸液であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−186984(P2010−186984A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262581(P2009−262581)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】