説明

半導体装置

【課題】良好な特性を維持しつつ、微細化を達成した、酸化物半導体を用いた半導体装置
を提供することを目的の一とする。
【解決手段】酸化物半導体層と、酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極およびド
レイン電極と、酸化物半導体層、ソース電極およびドレイン電極を覆うゲート絶縁層と、
ゲート絶縁層上のゲート電極と、を有し、酸化物半導体層の厚さは1nm以上10nm以
下であり、ゲート絶縁層は、ゲート絶縁層に用いられる材料の比誘電率をε、ゲート絶
縁層の厚さをdとして、ε/dが、0.08(nm−1)以上7.9(nm−1)以下
の関係を満たし、ソース電極とドレイン電極との間隔は10nm以上1μm以下である半
導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野は、半導体装置およびその作製方法に関する。ここで、半導体装置とは、
半導体特性を利用することで機能する素子および装置全般を指すものである。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は多様に存在し、さまざまな用途に用いられている。酸化インジウムはよく知
られた材料であり、液晶表示装置などに必要とされる透明電極の材料として用いられてい
る。
【0003】
金属酸化物の中には半導体特性を示すものがある。半導体特性を示す金属酸化物としては
、例えば、酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛などがあり、このよう
な金属酸化物をチャネル形成領域に用いた薄膜トランジスタが既に知られている(例えば
、特許文献1乃至特許文献4、非特許文献1等参照)。
【0004】
ところで、金属酸化物には、一元系酸化物のみでなく多元系酸化物も知られている。例え
ば、ホモロガス相を有するInGaO(ZnO)(m:自然数)は、In、Gaおよ
びZnを有する多元系酸化物半導体として知られている(例えば、非特許文献2乃至非特
許文献4等参照)。
【0005】
そして、上記のようなIn−Ga−Zn系酸化物で構成される酸化物半導体も、薄膜トラ
ンジスタのチャネル形成領域に適用可能であることが確認されている(例えば、特許文献
5、非特許文献5および非特許文献6等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−198861号公報
【特許文献2】特開平8−264794号公報
【特許文献3】特表平11−505377号公報
【特許文献4】特開2000−150900号公報
【特許文献5】特開2004−103957号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M. W. Prins, K. O. Grosse−Holz, G. Muller, J. F. M. Cillessen, J. B. Giesbers, R. P. Weening, and R. M. Wolf、「A ferroelectric transparent thin−film transistor」、 Appl. Phys. Lett.、17 June 1996、 Vol.68 p.3650−3652
【非特許文献2】M. Nakamura, N. Kimizuka, and T. Mohri、「The Phase Relations in the In2O3−Ga2ZnO4−ZnO System at 1350℃」、J. Solid State Chem.、1991、Vol.93, p.298−315
【非特許文献3】N. Kimizuka, M. Isobe, and M. Nakamura、「Syntheses and Single−Crystal Data of Homologous Compounds, In2O3(ZnO)m(m=3,4, and 5), InGaO3(ZnO)3, and Ga2O3(ZnO)m(m=7,8,9, and 16) in the In2O3−ZnGa2O4−ZnO System」、 J. Solid State Chem.、1995、Vol.116, p.170−178
【非特許文献4】中村真佐樹、君塚昇、毛利尚彦、磯部光正、「ホモロガス相、InFeO3(ZnO)m(m:自然数)とその同型化合物の合成および結晶構造」、固体物理、1993年、Vol.28、No.5、p.317−327
【非特許文献5】K. Nomura, H. Ohta, K. Ueda, T. Kamiya, M. Hirano, and H. Hosono、「Thin−film transistor fabricated in single−crystalline transparent oxide semiconductor」、SCIENCE、2003、Vol.300、p.1269−1272
【非特許文献6】K. Nomura, H. Ohta, A. Takagi, T. Kamiya, M. Hirano, and H. Hosono、「Room−temperature fabrication of transparent flexible thin−film transistors using amorphous oxide semiconductors」、NATURE、2004、Vol.432 p.488−492
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、トランジスタの動作の高速化、トランジスタの低消費電力化、低価格化、など
を達成するためには、トランジスタの微細化は必須である。
【0009】
トランジスタを微細化する場合には、短チャネル効果が大きな問題となる。ここで、短チ
ャネル効果とは、トランジスタの微細化(チャネル長(L)の縮小)に伴って顕在化する
電気特性の劣化をいう。短チャネル効果は、ドレインの電界の効果がソースにまでおよぶ
ことに起因するものである。短チャネル効果の具体例としては、しきい値電圧の低下、S
値の増大、漏れ電流の増大などがある。
【0010】
酸化物半導体はキャリア密度が小さく、しきい値電圧の低下などの短チャネル効果が現れ
やすい傾向にある。このため、これまでのシリコンなどの材料を用いたトランジスタとは
異なる問題が生じ得る。
【0011】
そこで、開示する発明の一態様は、良好な特性を維持しつつ、微細化を達成した、酸化物
半導体を用いた半導体装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
例えば、開示する発明の一態様は、酸化物半導体層と、酸化物半導体層と電気的に接続す
るソース電極およびドレイン電極と、酸化物半導体層、ソース電極およびドレイン電極を
覆うゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上のゲート電極と、を有し、酸化物半導体層の厚さは
1nm以上10nm以下であり、ゲート絶縁層は、ゲート絶縁層に用いられる材料の比誘
電率をε、ゲート絶縁層の厚さをdとして、ε/dが、0.08(nm−1)以上7
.9(nm−1)以下の関係を満たし、ソース電極とドレイン電極との間隔は10nm以
上1μm以下である半導体装置である。
【0013】
上記において、ソース電極およびドレイン電極は、その側面が酸化された酸化領域を有す
ることが好ましい。また、上記において、ソース電極およびドレイン電極の酸化領域は、
300MHz以上300GHz以下の高周波電力、および、酸素とアルゴンの混合ガスを
用いたプラズマ処理により形成されたものであることが好ましい。
【0014】
また、上記において、酸化物半導体層は、プラズマ処理によって酸素が供給されたもので
あることが好ましい。
【0015】
また、上記において、ソース電極およびドレイン電極の上に、平面形状がソース電極およ
びドレイン電極と略同一の絶縁層を有することが好ましい。ここで、略同一とは、厳密に
同一であることを意味しない。例えば、同一のエッチング工程によって作製される場合の
差異程度は許容される。
【0016】
また、上記において、オフ電流密度が100zA/μm以下であることが好ましい。ここ
で、オフ電流密度とは、オフ電流をトランジスタのチャネル幅で除した値をいう。
【0017】
また、上記において、半導体装置は、算術平均粗さが1nm以下の表面上に形成されるこ
とが好ましい。
【0018】
開示する発明の他の一態様は、基板上に酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層と電気
的に接続するソース電極およびドレイン電極を形成し、ソース電極およびドレイン電極の
側面を酸化した後に、酸化物半導体層、ソース電極およびドレイン電極を覆うゲート絶縁
層を形成し、ゲート絶縁層上にゲート電極を形成する、半導体装置の作製方法である。
【0019】
上記において、ソース電極およびドレイン電極の側面の酸化は、300MHz以上300
GHz以下の高周波電力、および、酸素とアルゴンの混合ガスを用いたプラズマ処理によ
って行われることが好ましい。
【0020】
また、上記において、プラズマ処理によって、酸化物半導体層に酸素を供給することが好
ましい。また、上記において、プラズマ処理を行う前に、酸化物半導体層の水素を低減す
る処理を行うことが好ましい。
【0021】
また、上記において、酸化物半導体層を、その厚さが1nm以上10nm以下となるよう
に形成し、ゲート絶縁層を、ゲート絶縁層に用いられる材料の比誘電率をε、ゲート絶
縁層の厚さをdとして、ε/dが、0.08(nm−1)以上7.9(nm−1)以下
の関係を満たすように形成し、ソース電極とドレイン電極を、その間隔が10nm以上1
μm以下となるように形成することが好ましい。
【0022】
また、上記において、ソース電極およびドレイン電極上に、平面形状がソース電極および
ドレイン電極と略同一の絶縁層を形成することが好ましい。
【0023】
また、上記において、半導体装置は、基板として、算術平均粗さが1nm以下の表面を有
する基板を用いることが好ましい。
【0024】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」また
は「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極
」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外し
ない。また、「上」「下」の用語は説明の便宜のために用いる表現に過ぎず、特に言及す
る場合を除き、その上下を入れ替えたものも含む。
【0025】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限
定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、
その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配
線」が一体となって形成されている場合をなどをも含む。
【0026】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や
、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため
、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることがで
きるものとする。
【0027】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの
」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの
」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0028】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタ
などのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有す
る素子などが含まれる。
【発明の効果】
【0029】
開示する発明の一態様のように、酸化物半導体層や、ゲート絶縁層の厚さ、ソース電極と
ドレイン電極の間隔などを所定の範囲におさめることで、良好な特性を維持しつつ、微細
化を達成した半導体装置を提供することができる。
【0030】
また、酸化物半導体層に酸素を供給すると共に、ソース電極またはドレイン電極の側面が
酸化する場合には、ゲート絶縁層の薄型化やカバレッジ不良などに起因して生じ得る、ゲ
ート電極と、ソース電極またはドレイン電極のショートを防止することが可能である。
【0031】
また、ソース電極およびドレイン電極の上に絶縁層を設ける場合には、ソース電極および
ドレイン電極と、ゲート電極との間に形成される容量を低減させ、さらなる高速動作を実
現することが可能である。
【0032】
このように、開示する発明の一態様によって、良好な特性を維持しつつ、微細化を達成し
た半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】半導体装置の断面図
【図2】半導体装置の作製工程に係る断面図
【図3】半導体装置の作製工程に係る断面図
【図4】半導体装置の作製工程に係る断面図
【図5】半導体装置の回路図
【図6】半導体装置の回路図
【図7】半導体装置の回路図
【図8】半導体装置の回路図
【図9】半導体装置を用いた電子機器を説明するための図
【図10】計算結果を示す図
【図11】必要なチャネル長L(nm)の下限を示す図
【図12】トランジスタのスイッチング速度とチャネル長Lとの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および
詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下
に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0035】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実
際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必
ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0036】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同
を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0037】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の構成について、図1を参照
して説明する。なお、以下では、トップゲート型のトランジスタを例に挙げて説明するが
、トランジスタの構成をトップゲート型に限る必要はない。
【0038】
図1(A)は、半導体装置の構成の一例である。トランジスタ250は、基板200上に
設けられた酸化物半導体層206aと、酸化物半導体層206aと電気的に接続されてい
るソース電極またはドレイン電極208a、およびソース電極またはドレイン電極208
bと、酸化物半導体層206a、ソース電極またはドレイン電極208a、およびソース
電極またはドレイン電極208bを覆うように設けられたゲート絶縁層212と、ゲート
絶縁層212上に、酸化物半導体層206aと重畳するように設けられたゲート電極21
4と、を有する。また、トランジスタ250を覆うように層間絶縁層216および層間絶
縁層218が設けられている。なお、基板200と酸化物半導体層206aとの間には、
下地として機能する絶縁層202を設けてもよい。
【0039】
トランジスタ250において、酸化物半導体層206aは、非晶質構造とする。また、ト
ランジスタ250のチャネル長(L)は、10nm以上1000nm以下、好ましくは1
0nm以上70nm以下とする。トランジスタのチャネル長を短くすることで、動作の高
速化、消費電力の低減などの効果が得られるためである。また、酸化物半導体層206a
の厚さ(tos)は、1nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下、よ
り好ましくは1nm以上10nm以下(例えば、3nm以上10nm以下)とする。この
ような厚さの酸化物半導体層206aを用いることで、微細化に伴う短チャネル効果を抑
制することが可能となるためである。
【0040】
ゲート絶縁層212の厚さ(tox)は、ゲート絶縁層212に用いられる材料の比誘電
率をε、ゲート絶縁層212の厚さをdとして、ε/dが、0.08(nm−1)以
上7.9(nm−1)以下、好ましくはε/dが、0.26(nm−1)以上7.9(
nm−1)以下、より好ましくはε/dが、1.3(nm−1)以上7.9(nm−1
)以下の関係を満たす厚さにすればよい。当該関係を満たすことにより、トランジスタの
動作を十分に確保することができる。例えば、ゲート絶縁層212に酸化シリコン(比誘
電率は約3.9と仮定)を用いる場合には、0.5nm以上50nm以下、好ましくは0
.5nm以上15nm以下、より好ましくは0.5nm以上3nm以下とすることができ
る。
【0041】
なお、ゲート絶縁層212の材料としては、酸化ハフニウム、酸化タンタル等の高誘電率
(high−k)材料を用いると良い。このような材料を用いることで、ゲート絶縁層2
12の厚さを十分に確保しても上述の式を満たすことが可能であり、トランジスタの動作
を犠牲にすることなくゲートリークを抑制することができる。
【0042】
図1(B)は、図1(A)に示す半導体装置の変形例である。トランジスタ350は、基
板300上に設けられた第1の酸化物半導体層304aおよび第2の酸化物半導体層30
6aと、第1の酸化物半導体層304aおよび第2の酸化物半導体層306aと電気的に
接続されているソース電極またはドレイン電極308a、およびソース電極またはドレイ
ン電極308bと、第2の酸化物半導体層306a、ソース電極またはドレイン電極30
8a、およびソース電極またはドレイン電極308bを覆うように設けられたゲート絶縁
層312と、ゲート絶縁層312上に、第2の酸化物半導体層306aと重畳するように
設けられたゲート電極314と、を有する。また、トランジスタ350を覆うように層間
絶縁層316および層間絶縁層318が設けられている。なお、基板300と第1の酸化
物半導体層304aとの間には、下地として機能する絶縁層302を設けてもよい。
【0043】
図1(B)に示す構成と、図1(A)に示す構成との相違は、酸化物半導体層の結晶性に
ある。図1(A)に示す酸化物半導体層206aの結晶性は非晶質であるが、図1(B)
に示す第1の酸化物半導体層304aおよび第2の酸化物半導体層306aは、いずれも
結晶領域を有する構造である。当該結晶領域は、酸化物半導体層の表面に略平行なa−b
面を有し、該表面に対して略垂直な方向にc軸配向する結晶を含む場合がある。ここで、
略平行とは、平行方向から±10°以内の状態をいうものとし、略垂直とは、垂直方向か
ら±10°以内の状態をいうものとする。
【0044】
図1(B)に示すように、結晶領域を有する酸化物半導体層をトランジスタに用いること
で、電界効果移動度μ>100cm/V・sが達成可能である。このため、図1(B)
に示す半導体装置は、高速動作が要求される論理回路などに適している。
【0045】
トランジスタのチャネル長、酸化物半導体層の厚さ、ゲート絶縁層の厚さ、などの条件に
関しては、図1(A)と同様である。
【0046】
なお、図1(B)では、酸化物半導体層を2層構造とする場合について説明したが、開示
する発明の一態様は当該構造に限定されない。第1の酸化物半導体層304aのみで必要
な厚さを確保できる場合には、第2の酸化物半導体層306aは不要である。つまり、酸
化物半導体層を、結晶領域を有する酸化物半導体層の単層構造としてもよい。
【0047】
図1(C)は、図1(A)に示す半導体装置の変形例である。トランジスタ450は、基
板400上に設けられた酸化物半導体層406aと、酸化物半導体層406aと電気的に
接続されているソース電極またはドレイン電極408a、およびソース電極またはドレイ
ン電極408bと、ソース電極またはドレイン電極408a、およびソース電極またはド
レイン電極408bの上部を覆う絶縁層410a、および絶縁層410bと、酸化物半導
体層406a、ソース電極またはドレイン電極408a、およびソース電極またはドレイ
ン電極408bなどを覆うように設けられたゲート絶縁層412と、ゲート絶縁層412
上に、酸化物半導体層406aと重畳するように設けられたゲート電極414と、を有す
る。また、トランジスタ450を覆うように層間絶縁層416および層間絶縁層418が
設けられている。なお、基板400と酸化物半導体層406aとの間には、下地として機
能する絶縁層402を設けてもよい。
【0048】
図1(C)に示す構成と、図1(A)に示す構成との相違は、絶縁層410a、絶縁層4
10bの有無にある。絶縁層410a、および絶縁層410bを設けることにより、ゲー
ト電極414とソース電極またはドレイン電極408a、およびゲート電極414とソー
ス電極またはドレイン電極408bとによって形成される容量を低減させることができる

【0049】
また、ソース電極またはドレイン電極408a、およびソース電極またはドレイン電極4
08bは、ゲート絶縁層412と接する部分に、酸化領域411a、および酸化領域41
1bを有する。当該酸化領域を有することにより、ゲート絶縁層の薄型化やカバレッジ不
良などに起因して生じ得る、ゲート電極414とソース電極またはドレイン電極408a
、およびゲート電極414とソース電極またはドレイン電極408bとのショートを防止
することが可能である。また、酸化物半導体層406aとソース電極またはドレイン電極
408a、および酸化物半導体層406aとソース電極またはドレイン電極408bとの
界面における電界を、低く抑えることが可能である。
【0050】
トランジスタのチャネル長、酸化物半導体層の厚さ、ゲート絶縁層の厚さ、などの条件に
関しては、図1(A)と同様である。
【0051】
図1(D)は、図1(B)に示す半導体装置の変形例である。または、図1(C)に示す
半導体装置の変形例である。トランジスタ550は、基板500上に設けられた第1の酸
化物半導体層504a、第2の酸化物半導体層506aと、第1の酸化物半導体層504
a、および第2の酸化物半導体層506aと電気的に接続されているソース電極またはド
レイン電極508a、およびソース電極またはドレイン電極508bと、ソース電極また
はドレイン電極508a、およびソース電極またはドレイン電極508bの上部を覆う絶
縁層510a、および絶縁層510bと、第2の酸化物半導体層506a、ソース電極ま
たはドレイン電極508a、およびソース電極またはドレイン電極508bなどを覆うよ
うに設けられたゲート絶縁層512と、ゲート絶縁層512上に、第2の酸化物半導体層
506aと重畳するように設けられたゲート電極514と、を有する。また、トランジス
タ550を覆うように層間絶縁層516および層間絶縁層518が設けられている。なお
、基板500と第2の酸化物半導体層506aとの間には、下地として機能する絶縁層5
02を設けてもよい。
【0052】
図1(D)に示す構成と、図1(B)に示す構成との相違は、絶縁層510a、絶縁層5
10bの有無にある。絶縁層510a、および絶縁層510bを設けることにより、ゲー
ト電極514と、ソース電極またはドレイン電極508a、およびゲート電極514と、
ソース電極またはドレイン電極508bとによって形成される容量を低減させることがで
きる。
【0053】
また、ソース電極またはドレイン電極508a、およびソース電極またはドレイン電極5
08bにおいて、ゲート絶縁層512と接する部分に、酸化領域511a、酸化領域51
1bが設けられている。当該酸化領域を有することにより、ゲート絶縁層の薄型化やカバ
レッジ不良などに起因して生じ得る、ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極のシ
ョートを防止することが可能である。
【0054】
また、図1(D)に示す構成と、図1(C)に示す構成との相違は、酸化物半導体層の結
晶性にある。図1(D)に示す第1の酸化物半導体層504a、第2の酸化物半導体層5
06aは、いずれも結晶領域を有する構造である。当該結晶領域は、酸化物半導体層の表
面に略平行なa−b面を有し、該表面に対して略垂直な方向にc軸配向する結晶を含む場
合がある。ここで、略平行とは、平行方向から±10°以内の状態をいうものとし、略垂
直とは、垂直方向から±10°以内の状態をいうものとする。
【0055】
図1(D)に示すように、結晶領域を有する酸化物半導体層をトランジスタに用いること
で、電界効果移動度μ>100cm/V・sが達成可能である。このため、図1(D)
に示す半導体装置は、高速動作が要求される論理回路などに適している。
【0056】
トランジスタのチャネル長、酸化物半導体層の厚さ、ゲート絶縁層の厚さ、などの条件に
関しては、図1(A)と同様である。
【0057】
なお、図1(D)では、酸化物半導体層を2層構造とする場合について説明したが、開示
する発明の一態様は当該構造に限定されない。第1の酸化物半導体層504aのみで必要
な厚さを確保できる場合には、第2の酸化物半導体層506aは不要である。つまり、酸
化物半導体層を、結晶領域を有する酸化物半導体層の単層構造としてもよい。
【0058】
本実施の形態に示す構成は微細化に適したものであり、当該構成を用いることにより、酸
化物半導体を用いた半導体装置の良好な特性を維持しつつ、微細化が実現可能である。
【0059】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0060】
(実施の形態2)
本実施の形態では、酸化物半導体(特に非晶質構造)を用いた半導体装置の作製方法、具
体的には、図1(A)に相当する半導体装置の作製方法について、図2を用いて説明する
。なお、以下では、トップゲート型のトランジスタを例に挙げて説明するが、トランジス
タの構成をトップゲート型に限る必要はない。
【0061】
まず、基板200上に絶縁層202を形成する。その後、絶縁層202上に酸化物半導体
層206を形成する(図2(A)参照)。
【0062】
基板200には、例えば、ガラス基板を用いることができる。基板200には、ガラス基
板の他にも、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等の絶縁体でなる絶縁性基板や
、シリコン等の半導体材料でなる半導体基板、金属やステンレス等の導電体でなる導電性
基板、これらの表面を絶縁材料で被覆したもの、などを用いることができる。また、プラ
スチック等の可撓性を有する基板は、耐熱温度が一般的に低い傾向があるが、後の作製工
程に耐えられるのであれば、基板200として用いることが可能である。
【0063】
なお、基板200は、算術平均粗さ(Ra)が1nm以下のものを用いるのが望ましい。
より望ましくは、0.5nm以下である。半導体装置の微細化に伴い、パターニングに用
いるマスクの露光条件の要求は高まるが、このような平坦性の高い基板を用いることで、
露光条件の要求が高い場合でも、対応が容易になるためである。なお、上述の算術平均粗
さには、例えば、10μm×10μmの領域において測定した値を用いることができる。
【0064】
絶縁層202は下地として機能するものであり、PVD法やCVD法などを用いて形成す
ることができる。また、絶縁層202は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン
、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁材料を含む材料を用い
て形成することができる。なお、絶縁層202は、できるだけ水素や水を含まないように
形成することが望ましい。また、絶縁層202を設けない構成とすることも可能である。
【0065】
酸化物半導体層206は、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系や、
三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−A
l−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn
−O系や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn
−O系、Zn−Mg−O系、Sn−Mg−O系、In−Mg−O系や、In−O系、Sn
−O系、Zn−O系などの酸化物半導体を用いて形成することができる。
【0066】
中でも、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料は、無電界時の抵抗が十分に高くオ
フ電流を十分に小さくすることが可能であり、また、電界効果移動度も高いため、半導体
装置に用いる半導体材料としては好適である。
【0067】
In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料の代表例としては、InGaO(ZnO)
(m>0)で表記されるものがある。また、Gaに代えてMを用い、InMO(Zn
O)(m>0)のように表記される酸化物半導体材料がある。ここで、Mは、ガリウム
(Ga)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、
コバルト(Co)などから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。例えば、
Mとしては、Ga、GaおよびAl、GaおよびFe、GaおよびNi、GaおよびMn
、GaおよびCoなどを適用することができる。なお、上述の組成は結晶構造から導き出
されるものであり、あくまでも一例に過ぎないことを付記する。
【0068】
酸化物半導体層206をスパッタ法で作製するためのターゲットとしては、In:Ga:
Zn=1:x:y(xは0以上、yは0.5以上5以下)の組成比を有するものを用いる
のが好適である。例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[atom比](x=1、y=
1)、(すなわち、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比])の組
成比を有するターゲットなどを用いることができる。また、In:Ga:Zn=1:1:
0.5[atom比](x=1、y=0.5)、(すなわち、In:Ga
ZnO=1:1:1[mol数比])の組成比を有するターゲットや、In:Ga:Zn
=1:1:2[atom比](x=1、y=2)、(すなわち、In:Ga
:ZnO=1:1:4[mol数比])の組成比を有するターゲットや、In:Ga:Z
n=1:0:1[atom比](x=0、y=1)、(すなわち、In:ZnO=
1:2[mol数比])の組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0069】
本実施の形態では、非晶質構造の酸化物半導体層206を、In−Ga−Zn−O系の金
属酸化物ターゲットを用いるスパッタ法により形成することとする。
【0070】
金属酸化物ターゲット中の金属酸化物の相対密度は80%以上、好ましくは95%以上、
さらに好ましくは99.9%以上である。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いる
ことにより、緻密な構造の酸化物半導体層206を形成することが可能である。
【0071】
酸化物半導体層206の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲
気、または、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である
。具体的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、濃度1ppm以下
(望ましくは濃度10ppb以下)にまで除去された高純度ガス雰囲気を用いるのが好適
である。
【0072】
酸化物半導体層206の形成の際には、例えば、減圧状態に保持された処理室内に基板を
保持し、基板の温度が100℃以上550℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下
となるように基板を熱する。または、酸化物半導体層206の形成の際の基板の温度は、
室温としてもよい。そして、処理室内の水分を除去しつつ、水素や水などが除去されたス
パッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体層206を形成する。基板を
熱しながら酸化物半導体層206を形成することにより、酸化物半導体層206に含まれ
る不純物を低減することができる。また、スパッタによる損傷を軽減することができる。
処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例え
ば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどを用いることが
できる。また、ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用いてもよい。クライオ
ポンプなどを用いて排気することで、処理室から水素や水などを除去することができるた
め、酸化物半導体層206中の不純物濃度を低減できる。
【0073】
酸化物半導体層206の形成条件としては、例えば、基板とターゲットの間との距離が1
70mm、圧力が0.4Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素10
0%)雰囲気、またはアルゴン(アルゴン100%)雰囲気、または酸素とアルゴンの混
合雰囲気、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用い
ると、ごみ(成膜時に形成される粉状の物質など)を低減でき、膜厚分布も均一となるた
め好ましい。酸化物半導体層206の厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは1n
m以上30nm以下、より好ましくは1nm以上10nm以下(例えば、3nm以上10
nm以下)とする。このような厚さの酸化物半導体層206を用いることで、微細化に伴
う短チャネル効果を抑制することが可能である。ただし、適用する酸化物半導体材料や、
半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用途な
どに応じて選択することもできる。
【0074】
なお、酸化物半導体層206をスパッタ法により形成する前には、アルゴンガスを導入し
てプラズマを発生させる逆スパッタを行い、形成表面(例えば絶縁層202の表面)の付
着物を除去するのが好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタにおいては、
スパッタターゲットにイオンを衝突させるところ、逆に、処理表面にイオンを衝突させる
ことによってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法
としては、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、基板付近にプラズマ
を生成する方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などに
よる雰囲気を適用してもよい。
【0075】
次に、マスクを用いたエッチングなどの方法によって酸化物半導体層206を加工して、
島状の酸化物半導体層206aを形成する。
【0076】
酸化物半導体層206のエッチングには、ドライエッチング、ウェットエッチングのいず
れを用いても良い。もちろん、その両方を組み合わせて用いることもできる。酸化物半導
体層を所望の形状にエッチングできるよう、材料に合わせてエッチング条件(エッチング
ガスやエッチング液、エッチング時間、温度等)は適宜設定する。
【0077】
ドライエッチングに用いるエッチングガスには、例えば、塩素を含むガス(塩素系ガス、
例えば、塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化
炭素(CCl)など)がある。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化
炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(
CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He
)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いても良い。
【0078】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etch
ing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導
結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるよ
うに、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される
電力量、基板側の電極温度等)は適宜設定する。
【0079】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、ア
ンモニア過水(31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)な
どを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)などのエッチング液を用
いてもよい。
【0080】
酸化物半導体層206aの端部は、テーパー形状となるようにエッチングすることが好ま
しい。ここで、テーパー角は、例えば、30°以上60°以下であることが好ましい。な
お、テーパー角とは、テーパー形状を有する層(例えば、酸化物半導体層206a)を、
その断面(基板の表面と直交する面)に垂直な方向から観察した際に、当該層の側面と底
面がなす傾斜角を示す。酸化物半導体層206aの端部をテーパー形状となるようにエッ
チングすることにより、後に形成されるソース電極またはドレイン電極208a、ソース
電極またはドレイン電極208bの被覆性を向上させ、段切れを防止することができる。
【0081】
その後、酸化物半導体層206aに対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望まし
い。この第1の熱処理によって酸化物半導体層206a中の、過剰な水素(水や水酸基を
含む)を除去し、酸化物半導体層206aの構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準
位を低減させることができる。第1の熱処理の温度は、例えば、300℃以上550℃未
満、または400℃以上500℃以下とする。なお、ここで示すように、熱処理(第1の
熱処理)をエッチング後に行う場合には、ウェットエッチングを用いる場合であっても、
エッチングレートが高い状態でエッチングを行うことができるため、エッチングにかかる
時間を短縮させることができるというメリットがある。
【0082】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に基板200を導入し、窒素雰囲気下
、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体層206aは大気
に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0083】
熱処理装置は電気炉に限る必要はなく、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または
熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas
Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid
Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Ann
eal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライド
ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水
銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置で
ある。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、ア
ルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性
気体が用いられる。
【0084】
例えば、第1の熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に基板を投入し、数分間熱
した後、当該不活性ガス雰囲気から基板を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRT
A処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、短時間の熱処理であるため
、基板の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活
性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において第1の熱処理
を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減させることが
できるためである。
【0085】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等
)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ま
しい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの
純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(
すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0086】
いずれにしても、第1の熱処理によって不純物を低減し、i型(真性半導体)またはi型
に限りなく近い酸化物半導体層206aを形成することで、極めて優れた特性のトランジ
スタを実現することができる。
【0087】
なお、第1の熱処理は、島状の酸化物半導体層206aに加工する前の酸化物半導体層2
06に行うこともできる。その場合には、第1の熱処理後に、加熱装置から基板200を
取り出し、フォトリソグラフィ工程を行うことになる。
【0088】
ところで、上述の熱処理(第1の熱処理)には水素や水などを除去する効果があるから、
当該熱処理を、脱水化処理、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理、脱
水素化処理は、酸化物半導体層206aの形成後や酸化物半導体層206a上にソース電
極またはドレイン電極を積層させた後、などのタイミングにおいて行うことも可能である
。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0089】
次に、酸化物半導体層206aに接するように導電層を形成する。そして、導電層を選択
的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極208a、ソース電極またはドレイ
ン電極208bを形成する(図2(B)参照)。
【0090】
導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用
いて形成することができる。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、
タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分
とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウ
ムのいずれか一または複数から選択された材料を用いてもよい。また、アルミニウムに、
チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選
ばれた元素を単数、または複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0091】
導電層は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタ
ン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウ
ム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構
造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。な
お、導電層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有す
るソース電極またはドレイン電極208a、およびソース電極またはドレイン電極208
bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0092】
また、導電層は、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物とし
ては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化
インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化
インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシ
リコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。
【0093】
導電層のエッチングは、形成されるソース電極またはドレイン電極208a、およびソー
ス電極またはドレイン電極208bの端部が、テーパー形状となるように行うことが好ま
しい。ここで、テーパー角は、例えば、30°以上60°以下であることが好ましい。ソ
ース電極またはドレイン電極208a、ソース電極またはドレイン電極208bの端部を
テーパー形状となるようにエッチングすることにより、後に形成されるゲート絶縁層21
2の被覆性を向上し、段切れを防止することができる。
【0094】
トランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極またはドレイン電極208a、およびソ
ース電極またはドレイン電極208bの下端部との間隔によって決定される。なお、チャ
ネル長(L)が25nm未満の際に、露光を行う場合には、数nm〜数10nmと波長の
短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いてマスク形成の露光を
行うのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後
に形成されるトランジスタのチャネル長(L)を、10nm以上1000nm(1μm)
以下、例えば、10nm以上70nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高
めることが可能である。また、微細化によって、半導体装置の消費電力を低減させること
も可能である。
【0095】
なお、ソース電極またはドレイン電極208a、およびソース電極またはドレイン電極2
08bの上には、絶縁層を形成しても良い。当該絶縁層を設けることにより、後に形成さ
れるゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極208a、およびソース電極またはド
レイン電極208bとの間の寄生容量を低減させることが可能である。
【0096】
次に、酸化物半導体層206aの一部に接するゲート絶縁層212を形成する(図2(C
)参照)。ゲート絶縁層212は、CVD法やスパッタ法等を用いて形成することができ
る。また、ゲート絶縁層212は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化
アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケー
ト(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(H
fSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfA
lxOy(x>0、y>0))、などを含むように形成するのが好適である。ゲート絶縁
層212は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。また、半導体装置を微細
化する場合には、トランジスタの動作を確保するために薄くするのが望ましい。例えば、
酸化シリコンを用いる場合には、0.5nm以上50nm以下、好ましくは0.5nm以
上15nm以下、より好ましくは0.5nm以上3nm以下とすることができる。
【0097】
上述のように、ゲート絶縁膜を薄くすると、トンネル効果などに起因するゲートリークが
問題となる。ゲートリークの問題を解消するには、ゲート絶縁層212に、酸化ハフニウ
ム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0
、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>
0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0)
)、などの高誘電率(high−k)材料を用いると良い。高誘電率(high−k)材
料をゲート絶縁層212に用いることで、電気的特性を確保しつつ、ゲートリークを抑制
するために膜厚を大きくすることが可能になる。なお、高誘電率(high−k)材料を
含む膜と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ア
ルミニウムなどを含む膜との積層構造としてもよい。
【0098】
このように、酸化シリコン以外の材料をゲート絶縁層212に用いる場合には、ゲート絶
縁層212に用いられる材料の比誘電率をε、ゲート絶縁層212の厚さをdとして、
ε/dが、0.08(nm−1)以上7.9(nm−1)以下、好ましくはε/dが
、0.26(nm−1)以上7.9(nm−1)以下、より好ましくはε/dが、1.
3(nm−1)以上7.9(nm−1)以下の関係を満たす厚さにすればよい。なお、当
該条件は、酸化シリコン(比誘電率は約3.9と仮定)を用いる場合において、厚さが0
.5nm以上50nm以下、好ましくは0.5nm以上15nm以下、より好ましくは0
.5nm以上3nm以下となる条件と概ね等しいものである。
【0099】
ゲート絶縁層212の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱
処理を行うのが望ましい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは25
0℃以上350℃以下である。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行え
ばよい。第2の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減
することができる。また、ゲート絶縁層212が酸素を含む場合、酸化物半導体層206
aに酸素を供給し、該酸化物半導体層206aの酸素欠損を補填して、i型(真性半導体
)またはi型に限りなく近い酸化物半導体層206aを形成することもできる。
【0100】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層212の形成後に第2の熱処理を行っているが、
第2の熱処理のタイミングはこれに特に限定されない。例えば、ゲート電極214の形成
後に第2の熱処理を行っても良い。
【0101】
次に、ゲート絶縁層212上において酸化物半導体層206aと重畳する領域にゲート電
極214を形成する(図2(D)参照)。ゲート電極214は、ゲート絶縁層212上に
導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にパターニングすることによって形成するこ
とができる。ゲート電極214となる導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、
プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。詳細は、ソース電極ま
たはドレイン電極208a、およびソース電極またはドレイン電極208bなどを形成す
る場合と同様であり、これらの記載を参酌できる。
【0102】
次に、ゲート絶縁層212およびゲート電極214上に、層間絶縁層216および層間絶
縁層218を形成する(図2(E)参照)。層間絶縁層216および層間絶縁層218は
、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒化
シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶
縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、本実施の形態では、層間絶縁層
216と層間絶縁層218の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定
されない。1層としても良いし、3層以上の積層構造としても良い。また、層間絶縁層を
設けない構成とすることも可能である。
【0103】
なお、上記層間絶縁層218は、その表面が平坦になるように形成することが望ましい。
表面が平坦になるように層間絶縁層218を形成することで、半導体装置を微細化した場
合などにおいても、層間絶縁層218上に、電極や配線などを好適に形成することができ
るためである。なお、層間絶縁層218の平坦化は、CMP(化学的機械的研磨)などの
方法を用いて行うことができる。
【0104】
以上により、高純度化された酸化物半導体層206aを用いたトランジスタ250が完成
する(図2(E)参照)。
【0105】
図2(E)に示すトランジスタ250は、基板200上に絶縁層202を介して設けられ
た酸化物半導体層206aと、酸化物半導体層206aと電気的に接続するソース電極ま
たはドレイン電極208a、ソース電極またはドレイン電極208bと、酸化物半導体層
206a、ソース電極またはドレイン電極208a、ソース電極またはドレイン電極20
8bを覆うゲート絶縁層212と、ゲート絶縁層212上のゲート電極214と、ゲート
絶縁層212およびゲート電極214上の層間絶縁層216と、層間絶縁層216上の層
間絶縁層218とを有する。
【0106】
本実施の形態において示すトランジスタ250では、酸化物半導体層206aが高純度化
されているため、その水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、望ましくは5
×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm
下となる。また、酸化物半導体層206aのキャリア密度は、一般的なシリコンウェハに
おけるキャリア密度(1×1014/cm程度)と比較して、十分に小さい値(例えば
、1×1012/cm未満、より好ましくは、1.45×1010/cm未満)をと
る。そして、これにより、オフ電流が十分に小さくなる。例えば、トランジスタ250の
室温でのオフ電流密度(オフ電流をトランジスタのチャネル幅で除した値)は1×10
20A/μm(10zA/μm)から1×10−19A/μm(100zA/μm)程度
となる。
【0107】
このように高純度化され、真性化された酸化物半導体層206aを用いることで、トラン
ジスタのオフ電流を十分に低減することができる。
【0108】
そして、本実施の形態に示すように、酸化物半導体層や、ゲート絶縁層の厚さ、ソース電
極とドレイン電極の間隔などを所定の範囲におさめることで、良好な特性を維持しつつ、
微細化を達成することができる。
【0109】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0110】
(実施の形態3)
本実施の形態では、酸化物半導体を用いた半導体装置の作製方法について、図3を用いて
説明する。本実施の形態では、酸化物半導体層として、結晶領域を有する第1の酸化物半
導体層と、第1の酸化物半導体層の結晶領域から結晶成長させた第2の酸化物半導体層を
用いる場合、すなわち、図1(B)に相当する半導体装置の作製方法について、詳細に説
明する。なお、第1の酸化物半導体層のみで必要な厚さを確保できる場合には、第2の酸
化物半導体層は不要である。また、以下では、トップゲート型のトランジスタを例に挙げ
て説明するが、トランジスタの構成をトップゲート型に限る必要はない。
【0111】
まず、基板300上に絶縁層302を形成する。それから、絶縁層302上に第1の酸化
物半導体層を形成し、第1の熱処理によって少なくとも第1の酸化物半導体層の表面を含
む領域を結晶化させて、第1の酸化物半導体層304を形成する(図3(A)参照)。
【0112】
基板300には、先の実施の形態における基板200と同様の基板を用いることができる
。詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。
【0113】
絶縁層302は下地として機能するものであり、先の実施の形態における絶縁層202と
同様に形成することができる。詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。なお
、絶縁層302は、できるだけ水素や水を含まないように形成することが望ましい。また
、絶縁層302を設けない構成とすることも可能である。
【0114】
第1の酸化物半導体層は、先の実施の形態における酸化物半導体層206と同様に形成す
ることができる。第1の酸化物半導体層およびその成膜方法の詳細については、先の実施
の形態を参酌すればよい。ただし、本実施の形態では、第1の熱処理によって第1の酸化
物半導体層を意図的に結晶化させるため、結晶化が生じやすい酸化物半導体を用いて第1
の酸化物半導体層を形成することが望ましい。このような酸化物半導体としては、例えば
、ZnOなどが挙げられる。また、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体であっても、
例えば、Znの濃度の高いものは結晶化しやすく、金属元素(In、Ga、Zn)におい
てZnの占める割合が60atom%以上のものは、この目的に用いるには望ましい。ま
た、第1の酸化物半導体層の厚さは、1nm以上10nm以下とするのが望ましい。本実
施の形態では一例として3nmの厚さとする。ただし、適用する酸化物半導体材料や半導
体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用途などに
応じて選択すればよい。
【0115】
第1の熱処理の温度は、550℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上750℃以
下とする。また、熱処理の時間は、1分以上24時間以下とすることが望ましい。なお、
熱処理の温度や、熱処理の時間は、酸化物半導体の種類などによって異なる。
【0116】
また、第1の熱処理の雰囲気は、水素や水などを含まない雰囲気とすることが望ましい。
例えば、水が十分に除去された、窒素、酸素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)
雰囲気とすることができる。
【0117】
熱処理装置は、電気炉の他、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によ
って、被処理物を加熱する装置を用いることができる。例えば、GRTA(Gas Ra
pid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Th
ermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Annea
l)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドラン
プ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ラ
ンプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である
。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴ
ンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体
が用いられる。
【0118】
上述の第1の熱処理によって、少なくとも第1の酸化物半導体層の表面を含む領域が結晶
化する。当該結晶領域は、第1の酸化物半導体層表面から、第1の酸化物半導体層内部に
向かって結晶成長が進行することにより形成される領域である。なお、当該結晶領域は、
平均厚さが1nm以上10nm以下の板状結晶を含む場合がある。また、当該結晶領域は
、酸化物半導体層の表面に略平行なa−b面を有し、該表面に対して略垂直な方向にc軸
配向する結晶を含む場合がある。ここで、略平行とは、平行方向から±10°以内の状態
をいうものとし、略垂直とは、垂直方向から±10°以内の状態を言うものとする。
【0119】
また、第1の熱処理によって結晶領域を形成すると共に、第1の酸化物半導体層中の水素
(水や水酸基を含む)などを除去することが望ましい。水素などの除去を行う場合には、
純度が、6N(99.9999%)以上(即ち不純物の濃度が1ppm以下)の窒素、酸
素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)雰囲気において第1の熱処理を行うと良い
。より望ましくは、純度が7N(99.99999%)以上(即ち不純物の濃度が0.1
ppm以下)の雰囲気である。また、HOが20ppm以下の超乾燥空気中で、好まし
くは、HOが1ppm以下の超乾燥空気中で、第1の熱処理を行っても良い。
【0120】
また、第1の熱処理により結晶領域を形成すると共に、第1の酸化物半導体層に酸素を供
給することが望ましい。例えば、熱処理の雰囲気を酸素雰囲気とすることで、第1の酸化
物半導体層に酸素を供給することができる。
【0121】
本実施の形態では、第1の熱処理として、窒素雰囲気下で700℃、1時間の熱処理を行
って酸化物半導体層から水素などを除去した後、酸素雰囲気に切り替えることで、第1の
酸化物半導体層内部に酸素を供給する。なお、第1の熱処理の主たる目的は結晶領域の形
成にあるから、水素などの除去や、酸素の供給を目的とする処理は別に行うこともできる
。例えば、水素などを除去するための熱処理や、酸素を供給する処理を行った後に、結晶
化のための熱処理を行うことが可能である。
【0122】
このような第1の熱処理によって、結晶領域を有し、水素(水や水酸基を含む)などが除
去され、酸素が供給された第1の酸化物半導体層304が得られる。
【0123】
次に、少なくとも表面を含む領域に結晶領域を有する第1の酸化物半導体層304上に、
第2の酸化物半導体層305を形成する(図3(B)参照)。なお、第1の酸化物半導体
層304のみで必要な厚さを確保できる場合には、第2の酸化物半導体層305は不要で
ある。この場合、第2の酸化物半導体層305にかかる工程を省略することができる。
【0124】
第2の酸化物半導体層305は、先の実施の形態における酸化物半導体層206と同様に
形成することができる。第2の酸化物半導体層305およびその成膜方法の詳細について
は、先の実施の形態を参酌すればよい。ただし、第2の酸化物半導体層305は、第1の
酸化物半導体層304より厚く形成することが望ましい。また、第1の酸化物半導体層3
04と第2の酸化物半導体層305の厚さの和が1nm以上50nm以下、好ましくは1
nm以上10nm以下となるように、第2の酸化物半導体層305を形成することが望ま
しい。本実施の形態では、一例として7nmの厚さとする。なお、適用する酸化物半導体
材料や、半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、酸化物半導体層の厚さは
、用いる材料や用途などに応じて選択すればよい。
【0125】
第2の酸化物半導体層305には、第1の酸化物半導体層304と同一主成分の材料であ
って、結晶化後の格子定数が近接した材料(ミスマッチが1%以下)を用いることが望ま
しい。このような材料を用いる場合には、第2の酸化物半導体層305の結晶化において
、第1の酸化物半導体層304の結晶領域を種とする結晶成長を進行させやすくするため
である。さらに、同一主成分材料である場合には、界面物性や電気的特性も良好になる。
【0126】
なお、結晶化によって所望の膜質が得られる場合には、異なる主成分の材料を用いて第2
の酸化物半導体層305を形成しても良い。
【0127】
次に、第2の酸化物半導体層305に第2の熱処理を行い、第1の酸化物半導体層304
の結晶領域を種として結晶成長させて、第2の酸化物半導体層306を形成する(図3(
C)参照)。第2の酸化物半導体層305を形成しない場合、当該構成は省略することが
できる。
【0128】
第2の熱処理の温度は、550℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上750℃以
下とする。第2の熱処理の加熱時間は1分以上100時間以下とし、好ましくは5時間以
上20時間以下とし、代表的には10時間とする。なお、第2の熱処理においても、熱処
理の雰囲気には、水素や水などが含まれないことが望ましい。
【0129】
雰囲気の詳細および熱処理による効果は、第1の熱処理と同様である。また、用いること
ができる熱処理装置も、第1の熱処理の場合と同様である。例えば、第2の熱処理の昇温
時には炉の内部を窒素雰囲気とし、冷却時には炉の内部を酸素雰囲気とすることで、窒素
雰囲気で水素などの除去を、酸素雰囲気で酸素の供給を行うことができる。
【0130】
上述のような第2の熱処理を行うことにより、第1の酸化物半導体層304に形成された
結晶領域から第2の酸化物半導体層305全体に結晶成長を進行させて、第2の酸化物半
導体層306を形成することができる。また、水素(水や水酸基を含む)などが除去され
、酸素が供給された第2の酸化物半導体層306を形成することができる。また、第2の
熱処理によって、第1の酸化物半導体層304の結晶領域の配向性を高めることも可能で
ある。
【0131】
例えば、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料を第2の酸化物半導体層306に用
いる場合、第2の酸化物半導体層306は、InGaO(ZnO)(m:整数)で表
される結晶や、InGaZnO(In:Ga:Zn:O=2:2:1:7)で表さ
れる結晶などを含み得る。このような結晶は、第2の熱処理によって、そのc軸が、第2
の酸化物半導体層306の表面と略垂直な方向をとるように配向する。
【0132】
ここで、上述の結晶は、In、Ga、Znのいずれかを含有する、a軸(a−axis)
およびb軸(b−axis)に平行なレイヤーの積層構造として捉えることができる。具
体的には、上述の結晶は、Inを含有するレイヤーと、Inを含有しないレイヤー(Ga
またはZnを含有するレイヤー)が、c軸方向に積層された構造を有する。
【0133】
In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体結晶では、Inを含有するレイヤーの面内方向、
すなわち、a軸およびb軸に平行な方向に関する導電性は良好である。これは、In−G
a−Zn−O系の酸化物半導体結晶では電気伝導が主としてInによって制御されること
、一のInの5s軌道が、隣接するInの5s軌道と重なりを有することにより、キャリ
アパスが形成されること、などによる。
【0134】
また、第1の酸化物半導体層304が絶縁層302との界面に非晶質領域を有するような
構造の場合、第2の熱処理を行うことにより、第1の酸化物半導体層304の表面に形成
されている結晶領域から第1の酸化物半導体層の下方に向かって結晶成長が進行し、該非
晶質領域が結晶化される場合もある。なお、絶縁層302を構成する材料や、熱処理の条
件などによっては、該非晶質領域が残存する場合もある。
【0135】
また、第1の酸化物半導体層304と第2の酸化物半導体層305とに同一主成分の酸化
物半導体材料を用いる場合、図3(C)に示すように、第1の酸化物半導体層304と、
第2の酸化物半導体層306とが、同一の結晶構造を有する場合がある。このため、図3
(C)では点線で示したが、第1の酸化物半導体層304と第2の酸化物半導体層306
の境界が判別できなくなり、第1の酸化物半導体層304と第2の酸化物半導体層306
を同一の層と見なせる場合もある。
【0136】
次に、マスクを用いたエッチングなどの方法によって第1の酸化物半導体層304および
第2の酸化物半導体層306を加工して、島状の第1の酸化物半導体層304aおよび第
2の酸化物半導体層306aを形成する(図3(D)参照)。なお、ここでは、第2の熱
処理の後に、島状の酸化物半導体層への加工を行っているが、島状の酸化物半導体層への
加工後に、第2の熱処理を行っても良い。この場合、ウェットエッチングを用いる場合で
あっても、エッチングレートが高い状態でエッチングを行うことができるため、エッチン
グにかかる時間を短縮することができるというメリットがある。
【0137】
第1の酸化物半導体層304および第2の酸化物半導体層306のエッチングには、ドラ
イエッチング、ウェットエッチングのいずれを用いても良い。もちろん、その両方を組み
合わせて用いることもできる。酸化物半導体層を所望の形状にエッチングできるよう、材
料に合わせてエッチング条件(エッチングガス、エッチング液、エッチング時間、温度等
)は適宜設定する。第1の酸化物半導体層304および第2の酸化物半導体層306のエ
ッチングは、先の実施の形態における酸化物半導体層のエッチングと同様に行うことがで
きる。詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。
【0138】
なお、酸化物半導体層のうち、チャネル形成領域となる領域は、平坦な表面を有している
ことが望ましい。例えば、第2の酸化物半導体層306表面の高低差(P−V)は、ゲー
ト電極314と重畳する領域(チャネル形成領域)において、1nm以下(好ましくは0
.5nm以下)であると好適である。なお、上述の高低差には、例えば、10μm×10
μmの領域において測定した値を用いることができる。
【0139】
次に、第2の酸化物半導体層306aに接するように導電層を形成する。それから、該導
電層を選択的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極308a、ソース電極ま
たはドレイン電極308bを形成する(図3(D)参照)。ソース電極またはドレイン電
極308a、ソース電極またはドレイン電極308bは、先の実施の形態におけるソース
電極またはドレイン電極208a、ソース電極またはドレイン電極208bと同様に形成
することができる。詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。
【0140】
なお、図3(D)に示す工程で、第1の酸化物半導体層304aまたは第2の酸化物半導
体層306aの、ソース電極またはドレイン電極308a、ソース電極またはドレイン電
極308bと接する結晶層が非晶質状態となることもある。このため、第1の酸化物半導
体層304aおよび第2の酸化物半導体層306aのすべての領域が結晶構造であるとは
限らない。
【0141】
次に、第2の酸化物半導体層306aの一部に接するゲート絶縁層312を形成する。ゲ
ート絶縁層312は、先の実施の形態のゲート絶縁層212と同様に形成することができ
る。詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。その後、ゲート絶縁層312上
の、第1の酸化物半導体層304aおよび第2の酸化物半導体層306aと重畳する領域
にゲート電極314を形成する。そして、ゲート絶縁層312およびゲート電極314上
に、層間絶縁層316および層間絶縁層318を形成する(図3(E)参照)。ゲート電
極314、層間絶縁層316および層間絶縁層318は、先の実施の形態におけるゲート
電極214、層間絶縁層216、層間絶縁層218などと同様に形成することができる。
詳細については、先の実施の形態を参酌すればよい。
【0142】
ゲート絶縁層312の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第3の熱
処理を行うのが望ましい。第3の熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましく
は250℃以上350℃以下である。例えば、酸素を含む雰囲気下で250℃、1時間の
熱処理を行えばよい。第3の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のば
らつきを軽減することができる。また、ゲート絶縁層312が酸素を含む絶縁層である場
合、第2の酸化物半導体層306aに酸素を供給することもできる。
【0143】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層312の形成後に第3の熱処理を行っているが、
第3の熱処理のタイミングはこれに限定されない。また、第2の熱処理など、他の処理に
よって第2の酸化物半導体層306aに酸素を供給している場合には、第3の熱処理は省
略しても良い。
【0144】
以上により、第1の酸化物半導体層304a、および、第2の酸化物半導体層306aを
用いたトランジスタ350が完成する(図3(E)参照)。
【0145】
図3(E)に示すトランジスタ350は、基板300上に絶縁層302を介して設けられ
た第1の酸化物半導体層304aと、第1の酸化物半導体層304a上に設けられた第2
の酸化物半導体層306aと、第2の酸化物半導体層306aと電気的に接続するソース
電極またはドレイン電極308a、ソース電極またはドレイン電極308bと、第2の酸
化物半導体層306a、ソース電極またはドレイン電極308a、ソース電極またはドレ
イン電極308bを覆うゲート絶縁層312と、ゲート絶縁層312上のゲート電極31
4と、ゲート絶縁層312およびゲート電極314上の層間絶縁層316と、層間絶縁層
316上の層間絶縁層318とを有する。
【0146】
本実施の形態において示すトランジスタ350では、第1の酸化物半導体層304aおよ
び第2の酸化物半導体層306aが高純度化されているため、その水素濃度は、5×10
19atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望
ましくは5×1017atoms/cm以下となる。また、第1の酸化物半導体層30
4aおよび第2の酸化物半導体層306aのキャリア密度は、一般的なシリコンウェハに
おけるキャリア密度(1×1014/cm程度)と比較して、十分に小さい値(例えば
、1×1012/cm未満、より好ましくは、1.45×1010/cm未満)をと
る。そして、これにより、オフ電流が十分に小さくなる。例えば、トランジスタ350の
室温でのオフ電流密度(オフ電流をトランジスタのチャネル幅で除した値)は1×10
20A/μm(10zA/μm)から1×10−19A/μm(100zA/μm)程度
となる。
【0147】
このように高純度化され、真性化された第1の酸化物半導体層304aおよび第2の酸化
物半導体層306aを用いることで、トランジスタのオフ電流を十分に低減することがで
きる。
【0148】
さらに、本実施の形態では、酸化物半導体層として、結晶領域を有する第1の酸化物半導
体層304aと、第1の酸化物半導体層304aの結晶領域から結晶成長させた第2の酸
化物半導体層306aを用いているため、電界効果移動度を向上させ、良好な電気特性を
有するトランジスタを実現することができる。例えば、電界効果移動度μ>100cm
/V・sを実現することも可能である。
【0149】
そして、本実施の形態に示すように、酸化物半導体層や、ゲート絶縁層の厚さ、ソース電
極とドレイン電極の間隔などを所定の範囲におさめることで、良好な特性を維持しつつ、
微細化を達成することができる。
【0150】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0151】
(実施の形態4)
本実施の形態では、酸化物半導体を用いた半導体装置の作製方法、具体的には、図1(C
)に相当する半導体装置の作製方法について、図4を用いて説明する。なお、本実施の形
態に係る半導体装置の作製方法は、先の実施の形態(特に、実施の形態2)において説明
した半導体装置の作製方法と多くの部分で共通している。このため、以下では主として相
違点について説明することとする。なお、本実施の形態の作製方法を先の実施の形態(実
施の形態3など)の一部と組み合わせることで、図1(D)に相当する半導体装置を作製
することも可能である。
【0152】
まず、基板400上に、絶縁層402を形成する。そして、絶縁層402上に酸化物半導
体層406を形成する(図4(A)参照)。詳細については先の実施の形態を参酌すれば
よい。
【0153】
次に、マスクを用いたエッチングなどの方法によって酸化物半導体層406を加工して、
島状の酸化物半導体層406aを形成し、当該酸化物半導体層406aを覆うように、導
電層408および絶縁層410を形成する(図4(B)参照)。なお、絶縁層410は必
須の構成要素ではないが、後に形成されるソース電極またはドレイン電極の側面を選択的
に酸化させるためには有効である。また、ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極
との間の容量を低減させるという点においても有効である。
【0154】
島状の酸化物半導体層406aの形成や熱処理などの詳細については、先の実施の形態を
参酌することができる。また、導電層408の詳細についても、先の実施の形態を参酌す
ればよい。
【0155】
絶縁層410は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、
絶縁層410は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸
化ハフニウム、酸化タンタルなどを含むように形成するのが好適である。なお、絶縁層4
10は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。絶縁層410の厚さは特に限
定されないが、例えば、10nm以上200nm以下とすることができる。
【0156】
次に、導電層408および絶縁層410を選択的にエッチングして、ソース電極またはド
レイン電極408a、ソース電極またはドレイン電極408b、絶縁層410a、絶縁層
410bを形成する(図4(C)参照)。詳細は、先の実施の形態におけるソース電極ま
たはドレイン電極の形成工程と同様である。なお、アルミニウム、チタン、モリブデン、
銅などの材料は、後に行われるプラズマ酸化処理に向いており、ソース電極またはドレイ
ン電極408a、ソース電極またはドレイン電極408bなどの材料として好適である。
【0157】
次に、酸化物半導体層406aに酸素を供給すべく酸化処理を行う。当該酸化処理によっ
て、ソース電極またはドレイン電極408aの一部には酸化領域411aが、ソース電極
またはドレイン電極408bの一部には酸化領域411bが形成される(図4(D)参照
)。また、当該酸化処理によって、ソース電極またはドレイン電極408aや、ソース電
極またはドレイン電極408bの外周部にも、酸化領域が形成される。
【0158】
酸化処理は、マイクロ波(300MHz〜300GHz)によって励起された酸素プラズ
マを用いた酸化処理(プラズマ酸化処理)とするのが好適である。マイクロ波によってプ
ラズマを励起することで、高密度プラズマが実現され、酸化物半導体層406aへのダメ
ージを十分に低減することができるからである。
【0159】
より具体的には、例えば、周波数を300MHz〜300GHz(代表的には2.45G
Hz)、圧力を50Pa〜5000Pa(代表的には500Pa)、基板温度を200℃
〜400℃(代表的には300℃)とし、酸素とアルゴンとの混合ガスを用いて上記処理
を行うことができる。
【0160】
上記酸化処理によって、酸化物半導体層406aには酸素が供給されることになるため、
酸化物半導体層406aへのダメージを十分に低減しつつ、酸素欠損に起因するエネルギ
ーギャップ中の欠陥準位を減少させることができる。つまり、酸化物半導体層406aの
特性を一層向上させることができる。
【0161】
なお、酸化物半導体層406aへのダメージを十分に低減しつつ、酸化物半導体層406
aに酸素を供給することができる方法であれば、マイクロ波を用いたプラズマ酸化処理に
限定する必要は無い。例えば、酸素を含む雰囲気における熱処理などの方法を用いること
もできる。
【0162】
また、上記酸化処理と併せて、酸化物半導体層406aから水や水素などを除去する処理
を行ってもよい。この場合、例えば、窒素やアルゴンなどのガスを用いたプラズマ処理を
用いることができる。
【0163】
なお、上記酸化処理によって、ソース電極またはドレイン電極408a、および、ソース
電極またはドレイン電極408bの一部(特に、その側面に相当する部分)には酸化領域
411aや酸化領域411bが形成されることになる。この酸化領域は、トランジスタ4
50が微細化されている場合(例えば、チャネル長が1000nm未満、特に70nm以
下である場合)には、特に有効である。トランジスタの微細化に伴い、ゲート絶縁層41
2に対してはその厚みを小さくすることが要求されるが、当該酸化領域を有することで、
ゲート絶縁層412の薄型化やカバレッジ不良などに起因して生じ得る、ゲート電極41
4と、ソース電極またはドレイン電極408a、およびゲート電極414と、ソース電極
またはドレイン電極408bのショートを防止できるためである。なお、当該酸化領域は
、5nm以上(好ましくは10nm以上)の厚みを有していれば、十分に効果的である。
【0164】
また、上記酸化処理は、露出した絶縁層402の膜質改善の観点からも有効である。
【0165】
なお、ソース電極またはドレイン電極408aや、ソース電極またはドレイン電極408
bの上部の酸化を防止する役割を有する点で、絶縁層410aおよび絶縁層410bは重
要である。エッチングの際に用いるマスクを残存させたまま、上記プラズマ処理をするに
は大きな困難が伴うからである。
【0166】
次に、大気に触れさせることなく、酸化物半導体層406aの一部に接するゲート絶縁層
412を形成する。そして、ゲート絶縁層412上の、酸化物半導体層406aと重畳す
る領域にゲート電極414を形成し、ゲート絶縁層412およびゲート電極414上に、
層間絶縁層416および層間絶縁層418を形成する(図4(E)参照)。詳細について
は、先の実施の形態を参酌することができる。
【0167】
以上により、酸化物半導体を用いたトランジスタ450が完成する。
【0168】
本実施の形態では、酸化物半導体層406aに酸素を供給すべく、酸化物半導体層406
aに酸素プラズマ処理を施している。このため、トランジスタ450の特性はさらに高い
ものとなる。また、ソース電極またはドレイン電極の側面に相当する領域が酸化されるこ
とになるため、ゲート絶縁層の薄膜化に起因して生じるおそれのある、ゲート電極−ソー
ス電極(またはドレイン電極)間の短絡を防止することができる。
【0169】
また、ソース電極およびドレイン電極の上に絶縁層を設けることにより、ソース電極およ
びドレイン電極と、ゲート電極との間に形成される容量を低減させ、さらなる高速動作を
実現することが可能である。
【0170】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0171】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態に示すトランジスタを用いた半導体装置の例につき、
図5乃至図8を参照して説明する。
【0172】
〈半導体装置の構成例〉
図5(A)に、先の実施の形態に示すトランジスタを、ダイオードとして用いる場合の回
路構成を示す。ダイオード接続されたトランジスタ110は、ゲート端子および第1端子
側がアノードであり、第2端子側がカソードとなる。
【0173】
図5(B)に、nチャネル型のトランジスタとpチャネル型のトランジスタが相補的に組
み合わされたCMOS回路の一例を示す。ここでは、CMOS回路のうち、最も単純な回
路構成のCMOSインバータ回路について説明する。当該CMOSインバータ回路におい
て、第1のトランジスタ112のゲート電極が第2のトランジスタ114のゲート電極と
電気的に接続され、第1のトランジスタ112のソース電極が一方の端子VLに電気的に
接続され、第1のトランジスタ112のドレイン電極が第2のトランジスタ114のソー
ス電極と電気的に接続され、第2のトランジスタ114のドレイン電極は他方の端子VH
に電気的に接続されている。
【0174】
第1のトランジスタ112は、nチャネル型のトランジスタであり、先の実施の形態にお
いて示したトランジスタを適用することができる。また、第2のトランジスタ114は、
pチャネル型のトランジスタであり、酸化物半導体、またはそれ以外の材料(例えば、シ
リコンなど)を用いて形成することができる。
【0175】
図6(A)には、いわゆるDRAM(Dynamic Random Access M
emory)に相当する構成の半導体装置の一例を示す。図6(A)に示すメモリセルア
レイ120は、複数のメモリセル130がマトリクス状に配列された構成を有している。
また、メモリセルアレイ120は、複数本の第1の配線、および複数本の第2の配線を有
する。
【0176】
メモリセル130は、トランジスタ131と、容量素子132と、から構成されている。
トランジスタ131のゲート電極は、第1の配線と電気的に接続されている。またトラン
ジスタ131のソース電極またはドレイン電極の一方は、第2の配線と電気的に接続され
ており、トランジスタ131のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子の電極
の一方と電気的に接続されている。また、容量素子の電極の他方には、一定の電位が与え
られている。トランジスタ131には、先の実施の形態に示すトランジスタが適用される

【0177】
先の実施の形態において示したトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有
する。このため、いわゆるDRAMとして認識されている図6(A)に示す半導体装置に
当該トランジスタを適用する場合、実質的な不揮発性メモリを得ることが可能である。
【0178】
図6(B)には、いわゆるSRAM(Static Random Access Me
mory)に相当する構成の半導体装置の一例を示す。図6(B)に示すメモリセルアレ
イ140は、複数のメモリセル150がマトリクス状に配列された構成とすることができ
る。また、メモリセルアレイ140は、第1の配線、第2の配線、第3の配線、および第
4の配線をそれぞれ複数本有する。
【0179】
メモリセル150は、第1のトランジスタ151〜第6のトランジスタ156を有してい
る。第1のトランジスタ151、および第2のトランジスタ152は、選択トランジスタ
として機能する。また、第3のトランジスタ153と第4のトランジスタ154のうち、
一方はnチャネル型トランジスタ(ここでは、第4のトランジスタ154)であり、他方
はpチャネル型トランジスタ(ここでは、第3のトランジスタ153)である。つまり、
第3のトランジスタ153と第4のトランジスタ154によってCMOS回路が構成され
ている。同様に、第5のトランジスタ155と第6のトランジスタ156によってCMO
S回路が構成されている。
【0180】
第1のトランジスタ151、第2のトランジスタ152、第4のトランジスタ154、第
6のトランジスタ156は、nチャネル型のトランジスタであり、先の実施の形態におい
て示したトランジスタを適用することができる。第3のトランジスタ153と第5のトラ
ンジスタ155は、pチャネル型のトランジスタであり、酸化物半導体、またはそれ以外
の材料(例えば、シリコンなど)を用いて形成することができる。
【0181】
〈不揮発性の記憶装置の構成例〉
次に、先の実施の形態に係るトランジスタを用いた、不揮発性の記憶装置の構成例につい
て、図7および図8を用いて説明する。
【0182】
図7(A−1)に示す半導体装置において、第1の配線(1st Line:ソース線と
も呼ぶ)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2n
d Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に
接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1信号線とも呼ぶ)とトラン
ジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配
線(4th Line:第2信号線とも呼ぶ)と、トランジスタ162のゲート電極とは
、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ
162のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子164の電極の一方と電気的
に接続され、第5の配線(5th Line:ワード線とも呼ぶ)と、容量素子164の
電極の他方は電気的に接続されている。
【0183】
ここで、少なくともトランジスタ162には、先の実施の形態において説明した酸化物半
導体を用いたトランジスタが適用される。先の実施の形態において説明した酸化物半導体
を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、
トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ160のゲート電極の電位を
極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有するこ
とにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷の保持が容易になり、また
、記憶内容の読み出しが容易になる。なお、酸化物半導体を用いたトランジスタ162は
、チャネル長(L)を10nm以上1000nm以下、例えば、10nm以上70nm以
下としているため、消費電力が小さく、動作速度もきわめて高いという特徴を有する。ま
た、トランジスタ160は酸化物半導体を用いたものとしてもよいし、それ以外の材料を
用いたものとしてもよい。
【0184】
図7(A−1)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極の電位が保持可
能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能であ
る。
【0185】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、ト
ランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。
これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極、および容量素子1
64に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極には、所定の電荷が与え
られる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベ
ル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかを与えるものとする。その後、第4の配
線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオ
フ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷が保持され
る(保持)。
【0186】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいから、トランジスタ160のゲート電極の
電荷は長時間にわたって保持される。
【0187】
次に、情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状
態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲー
ト電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジ
スタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極にHighレベル
電荷が与えられている場合の見かけのしきい値電圧Vth_Hは、トランジスタ160の
ゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値電圧Vth_L
より低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「
オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の
配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、トランジスタ
160のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Hig
hレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)とな
れば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場
合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ160は「
オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情
報を読み出すことができる。
【0188】
なお、情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160
が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線に与
えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」
となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0189】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび
保持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態と
なる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位
(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ160のゲート電極および容量素子164に
与えられる。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位に
して、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電
極は、新たな情報に係る電荷が与えられた状態となる。
【0190】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に
情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされ
る消去動作が不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。
つまり、半導体装置の高速動作を実現できる。
【0191】
なお、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極は、トランジスタ160のゲ
ート電極と電気的に接続されることにより、不揮発性メモリ素子として用いられるフロー
ティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用を奏する。このため
、図中、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極とトランジスタ160のゲ
ート電極が電気的に接続される部位をフローティングゲート部FGと呼ぶ場合がある。ト
ランジスタ162がオフの場合、当該フローティングゲート部FGは絶縁体中に埋設され
たと見ることができ、フローティングゲート部FGには電荷が保持される。酸化物半導体
を用いたトランジスタ162のオフ電流は、シリコン半導体などで形成されるトランジス
タの10万分の1以下であるため、トランジスタ162のリークによる、フローティング
ゲート部FGに蓄積される電荷の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導
体を用いたトランジスタ162により、不揮発性の記憶装置を実現することが可能である

【0192】
図7(A−1)に示す半導体装置は、当該半導体装置を構成するトランジスタなどの要素
が抵抗および容量を含むものとして、図7(A−2)のような回路に置き換えることが可
能である。つまり、図7(A−2)では、トランジスタ160および容量素子164が、
それぞれ、抵抗および容量を含んで構成されていると考えることができる。R1およびC
1は、それぞれ、容量素子164の抵抗値および容量値であり、抵抗値R1は、容量素子
164を構成する絶縁層による抵抗値に相当する。また、R2およびC2は、それぞれ、
トランジスタ160の抵抗値および容量値であり、抵抗値R2はトランジスタ160がオ
ン状態の時のゲート絶縁層による抵抗値に相当し、容量値C2はいわゆるゲート容量(ゲ
ート電極と、ソース電極またはドレイン電極との間に形成される容量)値に相当する。な
お、抵抗値R2は、トランジスタ160のゲート電極とチャネル形成領域との間の抵抗値
を示すものに過ぎないから、この点を明確にするために、接続の一部を点線で示している

【0193】
トランジスタ162がオフ状態にある場合のソース電極とドレイン電極の間の抵抗値(実
効抵抗とも呼ぶ)をROSとすると、R1およびR2が、ROSがR1以下かつ、ROS
がR2以下を満たす場合には、電荷の保持期間(情報の保持期間ということもできる)は
、主としてトランジスタ162のオフ電流によって決定されることになる。
【0194】
逆に、当該条件を満たさない場合には、トランジスタ162のオフ電流が十分に小さくと
も、保持期間を十分に確保することが困難になる。トランジスタ162以外において生じ
るリークが大きいためである。このことから、本実施の形態において開示する半導体装置
は、上述の関係を満たすものであることが望ましいといえる。
【0195】
一方で、C1とC2は、C1はC2以上の関係を満たすことが望ましい。C1を大きくす
ることで、第5の配線によってフローティングゲート部FGの電位を制御する際(例えば
、読み出しの際)に、第5の配線の電位を低く抑えることができるためである。
【0196】
上述の関係を満たすことで、より好適な半導体装置を実現することが可能である。なお、
R1およびR2は、トランジスタ160のゲート絶縁層やトランジスタ162のゲート絶
縁層によって制御される。C1およびC2についても同様である。よって、ゲート絶縁層
の材料や厚さなどを適宜設定し、上述の関係を満たすようにすることが望ましい。
【0197】
図7(B)には、上述の半導体装置とは構成の一部が異なる半導体装置を示す。図7(B
)に示す半導体装置において、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162
のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方とは、電気的に
接続されている。また、第1の配線とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接
続され、第2の配線とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている
。そして、第3の配線とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは
、電気的に接続され、第4の配線と、トランジスタ162の第1のゲート電極とは、電気
的に接続されている。また、第5の配線と、容量素子164の電極の他方とは、電気的に
接続され、第6の配線と、トランジスタ162の第2のゲート電極とは、電気的に接続さ
れている。第6の配線には第4の配線と等しい電位を与えても良いし、第4の配線とは異
なる電位を与えて、第4の配線とは独立に制御しても良い。
【0198】
つまり、図7(B)に示す半導体装置は、図7(A−1)に示す半導体装置のトランジス
タ162を、第2のゲート電極を有するトランジスタ162に置き換えた構成である。こ
れにより、図7(B)に示す半導体装置では、図7(A−1)に示す半導体装置において
得られる効果に加え、トランジスタ162の電気的特性(例えば、しきい値電圧)の調節
が容易になるという効果が得られる。例えば、第6の配線に負電位を与えることで、トラ
ンジスタ162を容易にノーマリーオフとすることが可能である。
【0199】
なお、上記説明は、電子を多数キャリアとするn型トランジスタ(nチャネル型トランジ
スタ)を用いる場合についてのものであるが、n型トランジスタに代えて、正孔を多数キ
ャリアとするp型トランジスタ(pチャネル型トランジスタ)を用いることができるのは
いうまでもない。
【0200】
次に、図7に示す半導体装置の応用例につき、図8を用いて説明する。図8(A)および
図8(B)は、図7(A−1)に示す半導体装置(以下、メモリセル190とも記載する
。)を複数用いて形成される半導体装置の回路図である。図8(A)は、メモリセル19
0が直列に接続された、いわゆるNAND型の半導体装置の回路図であり、図8(B)は
、メモリセル190が並列に接続された、いわゆるNOR型の半導体装置の回路図である

【0201】
図8(A)に示す半導体装置は、ソース線SL、ビット線BL、第1信号線S1、複数本
の第2信号線S2、複数本のワード線WL、複数のメモリセル190を有する。図8(A
)では、ソース線SLおよびビット線BLを1本ずつ有する構成となっているが、これに
限られることなく、ソース線SLおよびビット線BLを複数本有する構成としてもよい。
【0202】
各メモリセル190において、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162
のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方とは、電気的に
接続されている。また、第1信号線S1とトランジスタ162のソース電極またはドレイ
ン電極の他方とは、電気的に接続され、第2信号線S2と、トランジスタ162のゲート
電極とは、電気的に接続されている。そして、ワード線WLと、容量素子164の電極の
他方とは電気的に接続されている。
【0203】
また、メモリセル190が有するトランジスタ160のソース電極は、隣接するメモリセ
ル190のトランジスタ160のドレイン電極と電気的に接続され、メモリセル190が
有するトランジスタ160のドレイン電極は、隣接するメモリセル190のトランジスタ
160のソース電極と電気的に接続される。ただし、直列に接続された複数のメモリセル
のうち、一方の端に設けられたメモリセル190が有するトランジスタ160のドレイン
電極は、ビット線と電気的に接続される。また、直列に接続された複数のメモリセルのう
ち、他方の端に設けられたメモリセル190が有するトランジスタ160のソース電極は
、ソース線と電気的に接続される。
【0204】
図8(A)に示す半導体装置は、行ごとの書き込み動作および読み出し動作を行う。書き
込み動作は次のように行われる。書き込みを行う行の第2の信号線S2にトランジスタ1
62がオン状態となる電位を与え、書き込みを行う行のトランジスタ162をオン状態に
する。これにより、指定した行のトランジスタ160のゲート電極に第1の信号線S1の
電位が与えられ、該ゲート電極に所定の電荷が与えられる。このようにして、指定した行
のメモリセルにデータを書き込むことができる。
【0205】
また、読み出し動作は次のように行われる。まず、読み出しを行う行以外のワード線WL
に、トランジスタ160のゲート電極の電荷によらず、トランジスタ160がオン状態と
なるような電位を与え、読み出しを行う行以外のトランジスタ160をオン状態とする。
それから、読み出しを行う行のワード線WLに、トランジスタ160のゲート電極が有す
る電荷によって、トランジスタ160のオン状態またはオフ状態が選択されるような電位
(読み出し電位)を与える。そして、ソース線SLに定電位を与え、ビット線BLに接続
されている読み出し回路(図示しない)を動作状態とする。ここで、ソース線SL−ビッ
ト線BL間の複数のトランジスタ160は、読み出しを行う行を除いてオン状態であるた
め、ソース線SL−ビット線BL間のコンダクタンスは、読み出しを行う行のトランジス
タ160の状態によって決定される。つまり、読み出しを行う行のトランジスタ160の
ゲート電極が有する電荷によって、読み出し回路が読み出すビット線BLの電位は異なる
値をとる。このようにして、指定した行のメモリセルからデータを読み出すことができる

【0206】
図8(B)に示す半導体装置は、ソース線SL、ビット線BL、第1信号線S1、第2信
号線S2、およびワード線WLをそれぞれ複数本有し、複数のメモリセル190を有する
。各トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイ
ン電極の一方と、容量素子164の電極の一方とは、電気的に接続されている。また、ソ
ース線SLとトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、ビット線BLと
トランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第1信号線S
1とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され
、第2信号線S2と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。
そして、ワード線WLと、容量素子164の電極の他方とは電気的に接続されている。
【0207】
図8(B)に示す半導体装置は、行ごとの書き込み動作および読み出し動作を行う。書き
込み動作は、上述の図8(A)に示す半導体装置と同様の方法で行われる。読み出し動作
は次のように行われる。まず、読み出しを行う行以外のワード線WLに、トランジスタ1
60のゲート電極の電荷によらず、トランジスタ160がオフ状態となるような電位を与
え、読み出しを行う行以外のトランジスタ160をオフ状態とする。それから、読み出し
を行う行のワード線WLに、トランジスタ160のゲート電極が有する電荷によって、ト
ランジスタ160のオン状態またはオフ状態が選択されるような電位(読み出し電位)を
与える。そして、ソース線SLに定電位を与え、ビット線BLに接続されている読み出し
回路(図示しない)を動作状態とする。ここで、ソース線SL−ビット線BL間のコンダ
クタンスは、読み出しを行う行のトランジスタ160の状態によって決定される。つまり
、読み出しを行う行のトランジスタ160のゲート電極が有する電荷によって、読み出し
回路が読み出すビット線BLの電位は異なる値をとる。このようにして、指定した行のメ
モリセルからデータを読み出すことができる。
【0208】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0209】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を電子機器に適用する場合に
ついて、図9を用いて説明する。本実施の形態では、コンピュータ、携帯電話機(携帯電
話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む
)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ
、またはテレビジョン受信機ともいう)などの電子機器に、上述の半導体装置を適用する
場合について説明する。
【0210】
図9(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体601、筐体602、表
示部603、キーボード604などによって構成されている。筐体601と筐体602内
には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、小型、高速動作、
低消費電力、といった特徴を備えたノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
【0211】
図9(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体611には、表示部613と、外部
インターフェイス615と、操作ボタン614等が設けられている。また、携帯情報端末
を操作するスタイラス612などを備えている。本体611内には、先の実施の形態に示
す半導体装置が設けられている。そのため、小型、高速動作、低消費電力、といった特徴
を備えた携帯情報端末が実現される。
【0212】
図9(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍620であり、筐体621と筐体623
の2つの筐体で構成されている。筐体621及び筐体623には、それぞれ表示部625
及び表示部627が設けられている。筐体621と筐体623は、軸部637により接続
されており、該軸部637を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体621は
、電源631、操作キー633、スピーカー635などを備えている。筐体621、筐体
623の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのた
め、小型、高速動作、低消費電力、といった特徴を備えた電子書籍が実現される。
【0213】
図9(D)は、携帯電話機であり、筐体640と筐体641の2つの筐体で構成されてい
る。さらに、筐体640と筐体641は、スライドし、図9(D)のように展開している
状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また、
筐体641は、表示パネル642、スピーカー643、マイクロフォン644、ポインテ
ィングデバイス646、カメラ用レンズ647、外部接続端子648などを備えている。
また、筐体640は、携帯電話機の充電を行う太陽電池セル649、外部メモリスロット
650などを備えている。また、アンテナは、筐体641に内蔵されている。筐体640
と筐体641の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。
そのため、小型、高速動作、低消費電力、といった特徴を備えた携帯電話機が実現される

【0214】
図9(E)は、デジタルカメラであり、本体661、表示部667、接眼部663、操作
スイッチ664、表示部665、バッテリー666などによって構成されている。本体6
61内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、小型、高速
動作、低消費電力、といった特徴を備えたデジタルカメラが実現される。
【0215】
図9(F)は、テレビジョン装置670であり、筐体671、表示部673、スタンド6
75などで構成されている。テレビジョン装置670の操作は、筐体671が備えるスイ
ッチや、リモコン操作機680により行うことができる。筐体671及びリモコン操作機
680には、先の実施の形態に示す半導体装置が搭載されている。そのため、高速動作、
低消費電力、といった特徴を備えたテレビジョン装置が実現される。
【0216】
以上のように、本実施の形態に示す電子機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭
載されている。このため、小型、高速動作、低消費電力、といった特徴を備えた電子機器
が実現される。
【実施例1】
【0217】
開示する発明に係るトランジスタを用いることにより、短チャネル効果を十分に抑制した
半導体装置が実現される。当該効果について、計算機シミュレーションを用いて確認した
結果を、図10乃至図12を参照して説明する。
【0218】
本実施例の計算機シミュレーションでは、図1(A)に相当する構成のトランジスタをモ
デルとして用いた。また、酸化物半導体層のバンドギャップを3.15eV、酸化物半導
体層の比誘電率を15、酸化物半導体の電子移動度を10 cm/V・s、と仮定した
。また、ソース電極またはドレイン電極の電子親和力と酸化物半導体層の電子親和力が等
しい(4.3eV)と仮定し、ゲート電極にはタングステンを想定して仕事関数を4.6
eVと仮定した。計算には、デバイスシミュレータAtlas(Silvaco Dat
a Systems Inc.)を用いた。
【0219】
計算に係るパラメータとしては、酸化物半導体層の厚さ(tos)、ゲート絶縁層の厚さ
(d)、トランジスタのしきい値電圧(Vth)、トランジスタのチャネル長(L)など
を用いた。図10に、当該計算結果を示す。図10において、横軸はチャネル長L(nm
)を表し、縦軸はしきい値電圧Vthを表す。また、図10では、4つの異なるゲート絶
縁層厚さに関して、チャネル長Lとしきい値電圧Vthの関係を示している。
【0220】
図11の結果から、ノーマリーオフが実現されるために必要なチャネル長L(nm)の下
限を算出することができる。図11に、酸化物半導体層の厚さ(tos)、ゲート絶縁層
の厚さ(d)、との関係において、ノーマリーオフが実現されるために必要なチャネル長
L(nm)の下限値を示す。図11において、横軸は、比誘電率εrをゲート絶縁層の厚
さ(d)で除した値(nm−1)を表し、縦軸は許容されるチャネル長の下限値Lmin
(nm)を表す。なお、ノーマリーオフが実現されるための条件としては、Vth>0を
用いた。つまり、図11は、図10においてVth>0を満たす最小のLを、酸化物半導
体層の厚さ(tos)やゲート絶縁層の厚さ(d)との関係を考慮してプロットしたもの
である。なお、図中の曲線は近似曲線である。
【0221】
図11から、tosが30nmの場合、ε/dが、1.3(nm−1)以上7.9(n
−1)以下におけるチャネル長Lの範囲は、Lが20(nm)以上70(nm)以下で
あることがわかる。また、tosが10nmの場合、ε/dが、1.3(nm−1)以
上7.9(nm−1)以下におけるチャネル長Lの範囲は、Lが15(nm)以上40(
nm)以下であることがわかる。また、tosが3nmの場合、ε/dが、1.3(n
−1)以上7.9(nm−1)以下におけるチャネル長Lの範囲は、Lが10(nm)
以上30(nm)以下であることがわかる。
【0222】
このことから、tosが3(nm)以上30(nm)以下、およびε/dが、1.3(
nm−1)以上7.9(nm−1)以下を満たす場合、Lが10(nm)以上70(nm
)以下ということができる。
【0223】
図12には、開示する発明に係るトランジスタのスイッチング速度(スイッチング周波数
)とチャネル長Lとの関係を示す。図12において、横軸はチャネル長L(nm)を表し
、縦軸はスイッチング速度(GHz)を表す。ここで、スイッチング速度は、スイッチン
グに要する時間τの逆数である。
【0224】
例えば、Lが10(nm)以上70(nm)以下の範囲において、1/τが1(GHz)
以上20(GHz)以下の高速動作が実現されることが理解できる。
【符号の説明】
【0225】
110 トランジスタ
112 トランジスタ
114 トランジスタ
120 メモリセルアレイ
130 メモリセル
131 トランジスタ
132 容量素子
140 メモリセルアレイ
150 メモリセル
151 トランジスタ
152 トランジスタ
153 トランジスタ
154 トランジスタ
155 トランジスタ
156 トランジスタ
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
190 メモリセル
200 基板
202 絶縁層
206 酸化物半導体層
206a 酸化物半導体層
208a ソース電極又はドレイン電極
208b ソース電極又はドレイン電極
212 ゲート絶縁層
214 ゲート電極
216 層間絶縁層
218 層間絶縁層
250 トランジスタ
300 基板
302 絶縁層
304 酸化物半導体層
304a 酸化物半導体層
305 酸化物半導体層
306 酸化物半導体層
306a 酸化物半導体層
308a ソース電極又はドレイン電極
308b ソース電極又はドレイン電極
312 ゲート絶縁層
314 ゲート電極
316 層間絶縁層
318 層間絶縁層
350 トランジスタ
400 基板
402 絶縁層
406 酸化物半導体層
406a 酸化物半導体層
408 導電層
408a ソース電極又はドレイン電極
408b ソース電極又はドレイン電極
410 絶縁層
410a 絶縁層
410b 絶縁層
411a 酸化領域
411b 酸化領域
412 ゲート絶縁層
414 ゲート電極
416 層間絶縁層
418 層間絶縁層
450 トランジスタ
500 基板
502 絶縁層
504a 酸化物半導体層
506a 酸化物半導体層
508a ソース電極又はドレイン電極
508b ソース電極又はドレイン電極
510a 絶縁層
510b 絶縁層
511a 酸化領域
511b 酸化領域
512 ゲート絶縁層
514 ゲート電極
516 層間絶縁層
518 層間絶縁層
550 トランジスタ
601 筐体
602 筐体
603 表示部
604 キーボード
611 本体
612 スタイラス
613 表示部
614 操作ボタン
615 外部インターフェイス
620 電子書籍
621 筐体
623 筐体
625 表示部
627 表示部
631 電源
633 操作キー
635 スピーカー
637 軸部
640 筐体
641 筐体
642 表示パネル
643 スピーカー
644 マイクロフォン
646 ポインティングデバイス
647 カメラ用レンズ
648 外部接続端子
649 太陽電池セル
650 外部メモリスロット
661 本体
663 接眼部
664 操作スイッチ
665 表示部
666 バッテリー
667 表示部
670 テレビジョン装置
671 筐体
673 表示部
675 スタンド
680 リモコン操作機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極およびドレイン電極と、前記酸化物半導体層、前記ソース電極および前記ドレイン電極を覆うゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層上のゲート電極と、を有し、
前記酸化物半導体層の厚さは1nm以上10nm以下であり、
前記ゲート絶縁層は、前記ゲート絶縁層に用いられる材料の比誘電率をε、前記ゲート絶縁層の厚さをdとして、ε/dが、0.08(nm−1)以上7.9(nm−1)以下の関係を満たし、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間隔は10nm以上1μm以下である半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−30783(P2013−30783A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186013(P2012−186013)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2010−287718(P2010−287718)の分割
【原出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】