説明

圧縮着火式内燃機関

【課題】パージに起因する燃焼状態の悪化を抑制することのできる圧縮着火式内燃機関を提供する
【解決手段】このエンジン10は、燃料タンク内71に発生する蒸発燃料を吸気装置40にパージする蒸発燃料処理装置80を備え、予混合圧縮着火燃焼を行う。そして、予混合圧縮着火燃焼とこれとは別の通常燃焼とを切替えるとともに予混合圧縮着火燃焼時にのみパージを行う制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内に発生する蒸発燃料を吸気装置にパージする蒸発燃料処理装置を備え、予混合圧縮着火燃焼を行う圧縮着火式内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される装置として、燃料タンク内で発生する蒸発燃料をキャニスタに吸着し、その吸着された蒸発燃料を適宜キャニスタから吸気通路へパージするようにした蒸発燃料処理装置がある。この種の蒸発燃料処理装置を備えた内燃機関としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載のものを含めて、蒸発燃料処理装置は一般に、燃料タンク内にて発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、燃料タンクとキャニスタとを連通する蒸発燃料通路と、キャニスタと吸気通路とを連通するパージ通路とを備えるシステムとして構成されている。
【特許文献1】特開2001−263126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常の圧縮着火燃焼の実行時においては、圧縮上死点付近にて燃料噴射が実行されてから混合気の燃焼が開始されるまでの期間が短いため、噴射された燃料が十分に拡散していない状態にて混合気が燃焼されるようになる。
【0005】
また、こうした圧縮着火燃焼の実行時にさらにパージを実行する場合、吸気行程にて吸気管から燃焼室へパージガスが供給されるため、ピストンが吸気行程の下死点に到達するまでに燃焼室のパージガスが十分に拡散するようになる。その後、ピストンの圧縮上死点付近にて燃料噴射が実行されたとき、拡散したパージガスを含む領域に向けて燃料が供給されるため、噴射燃料が到達した領域においては、パージガス中の燃料及び噴射燃料の存在により他の領域と比較してリッチ化の度合が強くなる。このため、上記通常の圧縮着火燃焼のみを実行する場合と比較して、よりリッチ化した領域が燃焼室に形成された状態のもとで混合気の燃焼がなされることになり、これにより燃焼状態の悪化の度合も大きなものとなる。すなわち、燃焼室においてリッチ領域の割合が大きくなることにより、リッチ領域の割合が小さい場合と比較して過早着火が生じる頻度が高くなるため、燃焼状態の悪化ひいてはスモーク発生量の増大をまねくようになる。なお、特許文献1に記載の蒸発燃料処理装置を備えた内燃機関では、圧縮着火燃焼が選択されているときには、上記と同様の問題が生じる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パージに起因する燃焼状態の悪化を抑制することのできる圧縮着火式内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、燃料タンク内に発生する蒸発燃料を吸気装置にパージする蒸発燃料処理装置を備え、予混合圧縮着火燃焼を行う圧縮着火式内燃機関において、予混合圧縮着火燃焼とこれとは別の通常燃焼とを切替えるとともに予混合圧縮着火燃焼時にのみパージを行う制御手段を備えることを要旨としている。
【0008】
予混合圧縮着火燃焼では、排気上死点付近のときに燃料噴射が行われるため、噴射された燃料は圧縮上死点付近に達するまでに十分に混合拡散する。従って、パージを行った場合にも圧縮上死点付近に達するまでに噴射燃料とパージガスとが十分に混ざり合うようになる。そして上記発明では、予混合圧縮着火燃焼時のみパージを実行するようにしているため、通常の燃焼時にパージを実行するときに比べてリッチ領域が形成されにくくなり、これにより燃焼状態の悪化を抑制することができるようになる。
【0009】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関において、前記制御手段は、パージ量を検出し、これに基づいて燃料噴射量を補正することを要旨としている。
【0010】
上記発明では、パージ量を検出しこれに基づいて燃料の噴射を制御するようにしているため、パージ量を推定し、これに基づいて燃料の噴射を行うときに比べて、燃焼室に供給する燃料量を要求値に近づけることができるようになる。なお、パージ量は、パージガスに含まれてこれとともに吸気装置に供給される蒸発燃料の量を示す。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の圧縮着火式内燃機関において、当該内燃機関は、排気装置から吸気装置に排気の一部を還流するEGR通路と、このEGR通路を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラと、このEGRクーラの上流に設けられて排気を浄化するEGR触媒と、蒸発燃料を前記EGR通路において同EGR触媒の上流に供給するEGRパージ通路とにより構成されるEGR装置を備え、前記制御手段は、前記EGR触媒の温度が所定温度を下回るときには、前記EGR触媒の温度が同所定温度よりも高いときに比べて、前記EGR触媒の上流に供給するパージ量を増大させることを要旨としている。
【0012】
上記発明では、EGR触媒の温度が所定温度を下回るときに、EGR触媒の温度が所定温度より高いときに比べて、EGR触媒上流に供給するパージ量を増大するようにしている。これにより、EGR触媒上流に供給された蒸発燃料がEGR触媒上でその触媒反応によって燃焼し、触媒の温度が上昇するため、触媒浄化能力の低下を抑制することができるようになる。
【0013】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の圧縮着火式内燃機関において、前記所定温度は、前記EGR触媒の活性下限温度よりも高い温度に設定されることを要旨としている。
【0014】
上記発明では、所定温度をEGR触媒の活性下限温度よりも高い温度に設定するようにしているため、EGR触媒温度の低下が開始したとしても、これが活性下限温度を下回る前にEGR触媒上流に蒸発燃料が供給される。これにより、触媒浄化能力の低下をより好適に抑制することができるようになる。
【0015】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の圧縮着火式内燃機関において、前記制御手段は、前記EGRクーラに詰まりが生じている旨判定したときに前記EGR触媒上流へのパージを行うことを要旨としている。
【0016】
上記発明では、EGRクーラに詰まりが生じているときに、EGR触媒の上流に蒸発燃料を供給するようにしているため、すなわちEGR触媒上での蒸発燃料の燃焼により触媒温度を上昇させるようにしているため、EGRクーラの詰まりがさらに悪化することを抑制することができるようになる。
【0017】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の圧縮着火式内燃機関において、前記蒸発燃料処理装置は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を一時的に捕捉するキャニスタと、燃料タンクと同キャニスタとを接続する蒸発燃料通路と、前記キャニスタに捕捉された蒸発燃料を前記吸気装置及び前記EGR装置に供給するパージ通路とを備え、このパージ通路は、入口が前記キャニスタに接続される基本パージ通路と、この基本パージ通路から分岐して出口が前記吸気装置に接続される吸気パージ通路と、出口が前記EGR装置に接続される前記EGRパージ通路とにより構成されることを要旨としている。
【0018】
上記発明によれば、EGR触媒の温度が所定温度以下に低下したとき、EGRパージ通路が開放されて蒸発燃料は基本パージ通路及びEGRパージ通路を流れてEGR触媒の上流に供給される。従って、蒸発燃料がEGR触媒上でその触媒反応によって燃焼し、EGR触媒の温度が上昇するため、触媒浄化能力の低下を抑制することができるようになる。
【0019】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項3〜6のいずれか一項に記載の圧縮着火式内燃機関において、前記制御手段は、パージ量を検出し、これに基づいて排気の空燃比が目標空燃比となるように前記EGR装置から前記吸気装置に供給するEGRガス量を制御することを要旨としている。
【0020】
パージを実行したときには、パージガスとともに多くの蒸発燃料が燃焼室に供給されることにともない、排気の空燃比がリッチ化することもある。上記発明では、パージ量を検出しこれ基づいて排気の空燃比が目標空燃比になるように、吸気装置に供給するEGRガス量を補正するようにしているため、パージに起因する排気のリッチ化を抑制することができるようになる。
【0021】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧縮着火式内燃機関において、当該内燃機関は、排気装置における排気浄化装置の上流に還元剤を供給する排気インジェクタを備え、前記制御手段は、パージ量を検出し、これ基づいて排気の空燃比が目標の空燃比となるように同インジェクタの噴射量を補正することを要旨としている。
【0022】
パージを実行したときには、パージガスとともに多くの蒸発燃料が燃焼室に供給されることにともない、排気の空燃比がリッチ化することもある。上記発明では、パージ量を検出し、これ基づいて排気の空燃比が目標空燃比となるように排気インジェクタを補正するようにしているため、パージに起因する排気のリッチ化を抑制することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1〜図4を参照して、本発明にかかる圧縮着火式内燃機関について、これを軽質燃料を用いる車載ディーゼルエンジンとして具体化した第1実施形態について説明する。
【0024】
図1に示すように、エンジン10は、空気及び燃料からなる混合気の燃焼を通じて動力を発生させるエンジン本体20と、外部の空気をエンジン本体20に取り入れる吸気装置40と、エンジン本体20からの排気を外部に送り出す排気装置50と、この排気装置50の排気の一部を吸気装置40に再循環するEGR装置60と、燃料をエンジン10に供給する燃料供給装置70と、同装置70の燃料タンク71にて生じた蒸発燃料を吸気装置40にパージする蒸発燃料処理装置80と、これら装置をはじめとしてエンジン10の各種装置を統括的に制御する電子制御装置90とを備えている。
【0025】
エンジン本体20は、燃料供給装置70のインジェクタ73により噴射された燃料と吸気装置40を通じて供給された空気との混合気を燃焼室31にて燃焼させるシリンダブロック21と、混合気の燃焼にともなう膨張力により往復運動するピストン22とこのピストン22の往復運動にともない回転するクランクシャフト23とが設けられている。
【0026】
吸気装置40には、外部から取り込んだ空気(以下、「吸気」)をエンジン本体20に向けて流通させる吸気通路41と、同通路41における吸気の流量を調整するディーゼルスロットル42と、排気のエネルギにより過給を行う可変容量型のターボチャージャ43と、吸気を冷却するためのインタークーラ44とが設けられている。
【0027】
排気装置50には、エンジン本体20から排出された排気を外部に送り出す排気通路51と、排気装置50に燃料を添加する排気インジェクタ52と、NOxの還元及び粒子状物質の浄化を行う排気浄化装置53とが設けられている。この排気浄化装置53としては、粒子状物質と窒素酸化物との浄化を併せて行うDPNR(Diesel Particulate-NOx Reduction system )が用いられている。
【0028】
EGR装置60には、排気装置50の排気の一部を吸気通路41に供給するEGR通路61と、酸化機能を有するEGR触媒62と、EGRガスを冷却するEGRクーラ63と、吸気通路41に供給されるEGRガス量を調整するEGRバルブ64とが設けられている。EGR通路61においては、排気通路51から吸気通路41に向けてEGR触媒62及びEGRクーラ63及びEGRバルブ64の順にこれら要素が設けられている。
【0029】
燃料供給装置70には、燃料を貯留する燃料タンク71と、燃料ポンプにより加圧された高圧燃料を貯留するコモンレール72と、同レール72内の高圧燃料を燃焼室31に噴射するインジェクタ73とが設けられている。
【0030】
蒸発燃料処理装置80には、燃料タンク71内で発生した蒸発燃料を一時的に補足するキャニスタ81と、燃料タンク71とキャニスタ81とを連通する第1パージ通路82と、蒸発燃料を含むガス(以下、「パージガス」)をキャニスタ81から吸気装置40及びEGR装置60のそれぞれに供給する第2パージ通路83とが設けられている。この第2パージ通路83は、キャニスタ81に接続される基本パージ通路83Aと、この通路83Aの出口にて分岐してそれぞれ吸気通路41またはEGR通路61に接続される吸気パージ通路83B及びEGRパージ通路83Cとが設けられている。吸気パージ通路83B及びEGRパージ通路83Cの出口はそれぞれ、ディーゼルスロットル42の下流側及びEGR触媒62の上流側に設けられている。
【0031】
第2パージ通路83について、その基本パージ通路83Aには、同通路83Aにおけるパージガスの流通が許容される状態と遮断される状態とを切り替えるパージ制御バルブ84が設けられている。また、吸気パージ通路83BとEGRパージ通路83Cとの分岐部には、基本パージ通路83Aからこれら通路へのパージガスの供給経路を切り替える切替バルブ85が設けられている。
【0032】
電子制御装置90は、回転速度センサ91、エアフロメータ92、排気空燃比センサ93、HC濃度センサ94、流量センサ95及びEGR触媒温度センサ96をはじめとする各種センサからの信号に基づいて機関運転状態及び車両走行状態及び運転者の要求を把握したうえで、例えば、次のような制御を行う。すなわち、ディーゼルスロットル42を操作して吸気流量を調整するスロットル制御、インジェクタ73を操作して燃料噴射量及び燃料噴射時期を調整する燃料噴射制御、排気インジェクタ52を操作して排気への燃料添加量を調整する排気燃料添加制御、EGRバルブ64を操作して吸気通路41に供給されるEGRガスの量を調整するEGR制御、及び燃料供給装置70から吸気装置40及びEGR装置60の少なくとも一方へのパージを行う蒸発燃料処理制御等の各種制御を行う。
【0033】
回転速度センサ91は、クランクシャフトの回転速度に応じた信号を出力する。エアフロメータ92は、吸気通路41を流れる吸気の質量流量に応じた信号を出力する。排気空燃比センサ93は排気の空燃比に応じた信号を出力する。HC濃度センサ94は、基本パージ通路83Aを流れるパージガスのHC濃度に応じた信号を出力する。流量センサ95は、基本パージ通路83Aを流れるパージガスの流量に応じた信号を出力する。EGR触媒温度センサ96は、EGR触媒62の温度(触媒床温)に応じた信号を出力する。
【0034】
ここで、燃料噴射制御においては、エアフロメータ92の出力に基づいて算出した吸入空気量について、この吸入空気量に対して混合気の空燃比が目標値となる噴射量を設定し、実際の噴射量をこの目標値にすべくインジェクタ73の開弁態様を制御する。
【0035】
排気燃料添加制御においては、排気浄化装置53に流入する排気の空燃比が目標の空燃比となるように排気インジェクタ52の燃料噴射量を制御する。
EGR制御においては、燃料噴射量及び吸気量に基づいて、吸気、EGRガス及び燃料からなる混合気の空気過剰率を目標値に合致させるために要求されるEGRガスの吸気装置40への供給量を算出し、このEGRガス供給量に応じてEGRバルブ64の開度を制御する。
【0036】
蒸発燃料処理制御においては、機関負荷及び機関回転速度に基づいてキャニスタ81に補足された蒸発燃料を吸気装置40とEGR装置60との少なくとも一方に供給する。すなわち、切替バルブ85及びパージ制御バルブ84の開度を制御してパージを実行する。
【0037】
ここで、エンジン10においては、予混合圧縮着火燃焼と通常圧縮着火燃焼との間で燃焼方式を切り替えて混合気の燃焼を行うようにしている。予混合圧縮着火燃焼は、ピストン22が排気上死点付近にあるときにインジェクタ73による燃料噴射を開始するものであり、また通常圧縮着火燃焼は、ピストン22が圧縮上死点付近にあるときにインジェクタ73による燃料噴射を開始するものである。機関高負荷時においては、燃焼室31の壁面温度が比較的高い状態にあることにより、混合気の燃焼が適正な時期よりも早い時期(圧縮上死点付近に到達する前)に開始される過早着火が生じやすい。そこでエンジン10においては、機関負荷に基づく燃料方式の切り替え態様として、機関高負荷時に通常圧縮着火燃焼を選択し、機関低負荷時に予混合圧縮着火燃焼を選択するものを採用している。
【0038】
一方、エンジン10の燃料として沸点の高い燃料を用いた場合、予混合圧縮着火燃焼により早期に燃料噴射を行うようにしたところで、混合気の燃焼が開始するまでに噴射燃料が十分に蒸発しない。また、オイル希釈の度合が大きくなるため、これらの問題を抑制することが必要となる。そこでエンジン10では、インジェクタ73の噴射燃料をより早期に蒸発及び混合させるため、その燃料としては軽質燃料が用いられている。また、ここでは軽質燃料として軽質化された軽油であってガソリン成分や灯油成分を多く含む軽油が用いられている。
【0039】
しかしこの場合には、燃料タンク内からの蒸発燃料の発生量が多くなるため、この蒸発燃料を外部に漏らすことなく処理する必要が生じる。そこでエンジン10では、蒸発燃料処理装置80を搭載するとともにこれによるパージを適宜のタイミングに実行するようにしている。これにより、蒸発燃料の処理は十分になされるようになるものの、上記各燃焼方式のそれぞれにおいての混合気の燃焼態様は、以下のようにパージの影響を受ける。なお以降では、同装置80によるパージの実行がなされないとき、すなわちパージ制御バルブ84が閉弁された状態を「パージの停止時」とする。
【0040】
図2(A)に示すように、通常圧縮着火燃焼の実行時且つパージの停止時の場合、圧縮上死点付近にてインジェクタ73の燃料噴射が実行されてから混合気の燃焼が開始されるまでの期間が短いため、噴射された燃料が十分に拡散していない状態にて混合気が燃焼されるようになる。
【0041】
図2(B)に示すように、通常圧縮着火燃焼の実行時且つパージの実行時の場合、排気上死点付近にて燃焼室31へのパージガスの供給が開始されるため、ピストン22が吸気行程の下死点に到達するまでに燃焼室31のパージガスが十分に拡散するようになる。その後、ピストン22の圧縮上死点付近にてインジェクタ73の燃料噴射が実行されたとき、拡散したパージガスを含む領域に向けて燃料が供給されるため、噴射燃料が到達した領域においては、パージガス中の燃料及び噴射燃料の存在により他の領域と比較してリッチ化の度合が強くなる。このため、図2(A)に示した場合と比較して、よりリッチ化した領域が燃焼室31に形成された状態のもとで混合気の燃焼がなされることになり、これにより燃焼状態の悪化の度合も大きなものとなる。すなわち、燃焼室31においてリッチ領域の割合が大きくなることにより、リッチ領域の割合が小さい場合と比較して過早着火が生じる頻度が高くなるため、燃焼状態の悪化ひいてはスモーク発生量の増大をまねくようになる。
【0042】
図2(C)に示すように、予混合圧縮着火燃焼の実行時且つパージの実行時の場合、排気上死点付近にてインジェクタ73の燃料噴射が実行され、その直後に燃焼室31へのパージガスの供給が開始されるため、ピストン22が吸気行程の下死点に到達するまでに燃焼室31の噴射燃料及びパージガスが十分に拡散するようになる。その後、ピストン22が圧縮上死点付近に到達した際にも噴射燃料及びパージガスは十分に拡散した状態にあるため、図2(B)に示した場合と比較してリッチ化した領域が少ない状態のもとで混合気の燃焼がなされることになる。
【0043】
そこで、本実施形態のエンジン10では、パージの実行要求があるときに燃焼方式として予混合圧縮着火燃焼が選択されているときに限り同実行要求に基づくパージの実行を許可し、これによりパージに起因する燃焼状態の悪化を抑制するようにしている。
【0044】
図3を参照して、こうしたパージの態様を実現するための処理として実行される「第1パージ処理」の内容について説明する。なお、この処理は、エンジン10の運転中において電子制御装置90により所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0045】
「第1パージ処理」ではまずステップS110において、キャニスタ81に捕捉されている蒸発燃料の量(以下、「捕捉燃料量」)を推定する。この捕捉燃料量は、機関運転状態(例えば、機関運転の継続された時間)に基づいて算出することができる。
【0046】
次のステップS120では、パージの実行要求があるか否かを判定する。ここでは、推定した捕捉燃料量が判定捕捉量以上であることをもってパージの実行要求がある旨判定する。同判定捕捉量としては、キャニスタ81による捕捉量の物理的な限界値よりも小さい値であること、及びパージの実行回数を過度に増大させる値ではないこと等を条件として、予め設定される。これにより、キャニスタ81の実際の捕捉燃料量が限界値に達する前にパージの実行が開始されるようになる。
【0047】
パージの実行要求がある旨判定したときには、ステップS130においてそのときに選択されている燃焼方式が予混合圧縮着火燃焼か否かを判定し、同燃焼方式である旨判定したときに上記実行要求に基づくパージを行うためのステップS140以降の処理に移行する。一方で、パージの実行要求がない旨判定したとき、すなわちそのときに選択されている燃焼方式が通常圧縮着火燃焼であるときには、上記実行要求に基づくパージの実行を保留して本処理を一旦終了する。
【0048】
ステップS140の処理では、蒸発燃料処理装置80によるパージを実行する。具体的には、パージ制御バルブ84を開弁するとともに切替バルブ85を吸気通路41側に設定し、キャニスタ81の捕捉燃料を離脱させてこれを含むガスをパージガスとして吸気通路41に供給する。
【0049】
次のステップS150の処理では、HC濃度センサ94により検出されたパージガスのHC濃度に基づいて、基本パージ通路83Aから吸気通路41に供給される蒸発燃料量(パージ燃料量)を算出する。なお、このパージ燃料量の算出に際しては、パージガスの流量を加味することによりその値としてより正確なものを得ることができる。
【0050】
そしてステップS160の処理では、上記算出した蒸発燃料量をインジェクタ73による燃料噴射制御に反映させる。具体的には、燃焼室31に供給される燃料量、すなわちインジェクタ73による燃料噴射量と蒸発燃料処理装置80によるパージ燃料量とを合わせたものが機関運転状態に基づく要求値に応じたものとなるよう燃料噴射量を減量側に補正する。
【0051】
図4を参照して、「第1パージ処理」の実行態様の一例について、その詳細を説明する。なお、同図の(A)〜(E)の項目において、実線は燃焼方式として予混合圧縮着火燃焼が選択されている場合のものを、また破線は燃焼方式として通常圧縮着火燃焼が選択されている場合のものをそれぞれ示している。
【0052】
時刻t1以前において捕捉燃料量が判定捕捉量未満のときには、パージの実行要求が設定されないため、パージの実行及びこれにともなう燃料噴射量の補正はなされない。
そして時刻t1において、捕捉燃料量が判定捕捉量に到達したことにともないパージの実行要求が設定されたとすると、このときに燃焼方式として予混合圧縮着火燃焼が選択されている場合には、同実行要求に基づくパージの実行がなされる(図4の実線)。またこの場合には、パージにより吸気通路41に供給される蒸発燃料量に応じた分だけインジェクタ73の燃料噴射量が減量側に補正される。その後の時刻t2において、例えばパージガスに含まれる蒸発燃料量が十分に減少した旨判定されたとすると、これにともないパージ及び燃料噴射量の減量補正が終了する。一方、パージの実行要求が設定されたときにおいて、燃焼方式として通常圧縮着火燃焼が選択されている場合には、同実行要求に基づくパージの実行は保留される(図4の破線)。
【0053】
本実施形態の圧縮着火式内燃機関によれば以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、予混合圧縮着火燃焼時のみパージを実行するようにしているため、通常の燃焼時にパージを実行するときに比べてリッチ領域が形成されにくくなり、これにより燃焼状態の悪化を抑制することができるようになる。
【0054】
(2)本実施形態では、パージ量を検出しこれに基づいて燃料の噴射を制御するようにしているため、パージ量を推定し、これに基づいて燃料の噴射を行うときに比べて、燃焼室に供給する燃料量を要求値に近づけることができるようになる。
【0055】
(第2実施形態)
図5を参照して、本発明にかかる圧縮着火式内燃機関について、これを軽質燃料を用いる車載ディーゼルエンジンとして具体化した第2実施形態について説明する。なお、本実施形態は先の第1実施形態の「第1パージ処理」に代えて、図5に示す「第2パージ処理」を行う点において第1実施形態と相違し、その他の点については同実施形態と同様の構成を採用しているため、この部分についての説明は省略する。
【0056】
エンジン10においては、EGRクーラ63内の通路が排気に含まれる物質により閉塞されることを抑制するため、同クーラ63の上流にEGR触媒62を設け、排気がEGRクーラ63に流れ込む前にこの触媒62により浄化するようにしている。しかし、EGR触媒62が十分に活性していないときには、同触媒62による排気の浄化が十分になされないまま排気がEGRクーラ63に流れ込むため、上述した通路の閉塞をまねくことが懸念される。
【0057】
そこで本実施形態のエンジン10では、EGR触媒62の触媒床温が判定温度未満か否かを監視し、判定温度未満のときにはEGRパージ通路83Cによるパージを実行して蒸発燃料をEGR触媒62に供給するようにしている。これにより、同触媒62上での蒸発燃料の燃焼により触媒床温の上昇が図られるため、EGR触媒62の排気浄化能力の低下を抑制することができるようになる。
【0058】
図5を参照して、上記触媒床温の制御を実現するための処理として実行される「第2パージ処理」の内容について説明する。なお、この処理は、エンジン10の運転中において電子制御装置90により所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0059】
「第2パージ処理」ではまずステップS210において、EGR触媒温度センサ96によりEGR触媒62の触媒床温を検出する。
そして、次のスッテプS220ではEGR触媒62の触媒床温を保持する要求があるか否か、すなわち触媒床温を所定温度TH以上に保持する必要があるか否かを判定する。具体的には、触媒床温が所定温度TH以下に低下したか否かを判定する。ここで所定温度THとしては、EGR触媒62の活性下限温度THx(例えば、250℃)よりも高い温度(例えば270℃)が設定されている。
【0060】
ステップS220の判定処理において触媒床温の保持要求がない旨判定したとき、本処理を一旦を終了する。一方で、ステップS220の判定処理において触媒床温の保持要求がある旨判定したとき、次のステップS230において、パージの実行が可能か否かを判定する。具体的には、キャニスタ81の捕捉燃料量が触媒床温の保持を図るうえで十分な量であるか、すなわちキャニスタ81の捕捉燃料量がEGR触媒62の温度を活性温度範囲に保持するために必要な程度に達しているか否かを判定する。
【0061】
そして、ステップS230の判定処理おいてパージの実行が可能である旨判定したとき、まずステップS240において触媒床温を活性温度範囲に保持するうえで必要なパージ燃料量(要求パージ量)を算出し、次のステップS250ではこの要求パージ量に基づいてパージを実行する。なお要求パージ量は、EGR触媒62の熱容量等に基づいて算出することができる。
【0062】
本実施形態の圧縮着火式内燃機関によれば以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、EGR触媒62の温度が所定温度THを下回るときに、EGR触媒62の温度が所定温度THより高いときに比べて、EGR触媒上流に供給するパージ量を増大するようにしている。これにより、EGR触媒上流に供給された蒸発燃料がEGR触媒上でその触媒反応によって燃焼し、触媒の温度が上昇するため、触媒浄化能力の低下を抑制することができるようになる。
【0063】
(2)本実施形態では、所定温度THをEGR触媒62の活性下限温度THxよりも高い温度に設定するようにしているため、EGR触媒62の温度低下が開始したとしても、これが活性下限温度THxを下回る前にEGR触媒上流に蒸発燃料が供給される。これにより、触媒浄化能力の低下をより好適に抑制することができるようになる。
【0064】
(3)本実施形態では、EGRクーラ63に詰まりが生じているときに、EGR触媒62の上流に蒸発燃料を供給するようにしているため、すなわちEGR触媒上での蒸発燃料の燃焼により触媒温度を上昇させるようにしているため、EGRクーラ63の詰まりがさらに悪化することを抑制することができるようになる。
【0065】
(4)本実施形態では、EGR触媒62の温度が所定温度TH以下に低下したとき、EGRパージ通路83Cが開放されて蒸発燃料は基本パージ通路83A及びEGRパージ通路83Cを流れてEGR触媒62の上流に供給される。従って、蒸発燃料がEGR触媒上でその触媒反応によって燃焼し、EGR触媒62の温度が上昇するため、触媒浄化能力の低下を抑制することができるようになる。
【0066】
(第3実施形態)
図6を参照して、本発明にかかる圧縮着火式内燃機関について、これを軽質燃料を用いる車載ディーゼルエンジンとして具体化した第3実施形態について説明する。なお、本実施形態は先の第1実施形態の「第1パージ処理」に代えて、図6に示す「第3パージ処理」を行う点において第1実施形態と相違し、その他の点については同実施形態と同様の構成を採用しているため、この部分についての説明は省略する。
【0067】
本実施形態のエンジン10では、パージの実行時において排気空燃比センサ93により排気の空燃比を監視し、これが目標空燃比に対してリッチ側にあるときには、EGRガス量を減量側に補正するようにしている。これにより、パージの実行を継続しつつ排気の空燃比を目標空燃比に近づけることが可能となるため、パージと排気浄化との両立を図ることができるようになる。
【0068】
図6を参照して、上記空燃比の制御を実現するための処理として実行される「第3パージ処理」の内容について説明する。なお、この処理は、エンジン10の運転中において電子制御装置90により所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0069】
「第3パージ処理」ではまずステップS310において、キャニスタ81の捕捉燃料量を推定する。
次のステップS320では、パージの実行要求があるか否かを判定する。ここでは、推定した捕捉燃料量が判定捕捉量以上であることをもってパージの実行要求がある旨判定する。
【0070】
パージの実行要求がある旨判定したときには、ステップS330において、蒸発燃料処理装置80によるパージを実行する。すなわち、パージ制御バルブ84を開弁するとともに切替バルブ85をEGR通路61側に設定し、キャニスタ81の捕捉燃料を離脱させてこれを含むガスをパージガスとしてEGR触媒62上流に供給する。
【0071】
次のステップS340では、排気空燃比センサ93の出力に基づいて排気の空燃比を算出し、次にこの算出した空燃比と目標の空燃比との差を算出する。そしてステップS350において、この空燃比の差を減少させる方向に吸気通路41に供給するEGRガス量を補正する。なおこの場合には、通常であればパージの実行にともない排気の空燃比が目標の空燃比に対してリッチの状態にあるため、排気の空燃比をリーン側に移行させるべくEGRガス量を減量させるものが補正量として設定される。
【0072】
本実施形態の圧縮着火式内燃機関によれば以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、パージ量を検出しこれ基づいて排気の空燃比が目標空燃比になるように、吸気装置40に供給するEGRガス量を補正するようにしているため、パージに起因する排気のリッチ化を抑制することができるようになる。
【0073】
(第4実施形態)
図7を参照して、本発明にかかる圧縮着火式内燃機関について、これを軽質燃料を用いる車載ディーゼルエンジンとして具体化した第4実施形態について説明する。なお、本実施形態は先の第3実施形態の「第3パージ処理」に代えて、図7に示す「第4パージ処理」を行う点において第1実施形態と相違し、その他の点については同実施形態と同様の構成を採用しているため、この部分についての説明は省略する。
【0074】
エンジン10においては、排気浄化装置53に吸蔵されているNOxを還元及び放出する旨の要求があるとき、あるいは同浄化装置53に捕捉されているPMを除去する旨の要求があるとき、排気インジェクタ52により排気に燃料を添加し、これにより上記要求を満たすようにしている。しかし、この排気インジェクタ52による燃料添加に併せて蒸発燃料処理装置80によるパージが実行されるときには、燃焼室31に供給された蒸発燃料が排気通路51に送り出されることに起因して、排気の空燃比が上記排気浄化のために必要とされる目標空燃比からずれることもある。
【0075】
そこで本実施形態のエンジン10では、パージの実行時において排気空燃比センサ93により排気の空燃比を監視し、これが目標空燃比に対してリッチ側にあるときには、排気インジェクタ52の燃料噴射量を減量側に補正するようにしている。これにより、パージの実行を継続しつつ排気の空燃比を目標空燃比に近づけることが可能となるため、パージと排気浄化との両立を図ることができるようになる。
【0076】
図7を参照して、上記空燃比の制御を実現するための処理として実行される「第4パージ処理」の内容について説明する。なお、この処理は、エンジン10の運転中において電子制御装置90により所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0077】
「第4パージ処理」ではまずステップS410において、キャニスタ81の捕捉燃料量を推定する。
次のステップS420では、パージの実行要求があるか否かを判定する。ここでは、推定した捕捉燃料量が判定捕捉量以上であることをもってパージの実行要求がある旨判定する。
【0078】
パージの実行要求がある旨判定したときには、ステップS430において、蒸発燃料処理装置80によるパージを実行する。すなわち、パージ制御バルブ84を開弁するとともに切替バルブ85を吸気通路41側に設定し、キャニスタ81の捕捉燃料を離脱させてこれを含むガスをパージガスとして吸気通路41に供給する。
【0079】
次のステップS440では、排気空燃比センサ93の出力に基づいて排気の空燃比を算出し、次にこの算出した空燃比と目標の空燃比との差を算出する。そしてステップS450において、この空燃比の差を減少させる方向に排気インジェクタ52の燃料噴射量を補正する。なおこの場合には、通常であればパージの実行にともない排気の空燃比が目標の空燃比に対してリッチの状態にあるため、排気の空燃比をリーン側に移行させるべく噴射量を減量させるものが補正量として設定される。
【0080】
本実施形態の圧縮着火式内燃機関によれば以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、パージ量を検出し、これ基づいて排気の空燃比が目標空燃比となるように排気インジェクタ52を補正するようにしているため、パージに起因する排気のリッチ化を抑制することができるようになる。
【0081】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。
【0082】
・上記第1実施形態では、パージの実行要求が設定されたときに燃焼方式に応じて同要求に基づくパージの実行を行うか否かを判定するようにしたが、これを例えば次のように変更することもできる。すなわち、パージの実行要求が設定されたときに、燃焼方式として通常圧縮着火燃焼が選択されている場合にはこれを予混合圧縮着火燃焼に切り替え、そのうえでパージを実行することもできる。この場合にも、パージの実行は予混合圧縮着火燃焼の選択時に限られるものとなるため、上記実施形態の作用効果に準じた作用効果を奏することはできる。
【0083】
・上記第2実施形態では、触媒床温が所定温度TH以下であることに基づいてEGR装置60へのパージを実行するようにしたが、同パージのための条件を例えば次のように変更することもできる。すなわち、機関低負荷時には排気温度の低下にともないEGR触媒62の触媒床温の低下が生じやすい傾向にあるため、機関低負荷時(例えばアイドル時)であることをもってEGR装置60へのパージを実行することもできる。
【0084】
・上記各実施形態では、第2パージ通路83の分岐部に設けた切替バルブ85の操作により、吸気パージ通路83BまたはEGRパージ通路83Cのいずれかにパージガスを流通させる構造を採用したが、これを例えば次のように変更することもできる。すなわち、パージの実行時において、パージガスを各パージ通路のいずれか一方に流通させる状態と、パージガスを各パージ通路の両方に流通させる状態とを選択することもできる。この場合の具体的な構成としては、例えば、切替バルブ85に代えて吸気パージ通路83B及びEGRパージ通路83Cのそれぞれに制御弁を設けるものが挙げられる。
【0085】
・上記各実施形態のそれぞれにおいて実行される第1〜第4パージ処理について、これらを適宜組み合わせて実施することもできる。すなわち、第1パージ処理においての燃焼方式に基づくパージの実行可否の判定(構成1)、第2パージ処理においての触媒床温に基づくパージの実行要求の設定(構成2)、第3パージ処理においてのパージ実行時のEGR量補正処理、及び第4パージ処理においてのパージ実行時の噴射量補正処理について、これらの少なくとも2つを組み合わせて新たなパージ処理とすることもできる。
【0086】
・この組み合わせの一例として、上記構成1と構成2とを併せて備える場合、触媒床温の要求に基づくEGR装置60へのパージについては、そのときに選択されている燃焼方式にかかわらずパージの実行を行うことが許容される。すなわち、構成1によるパージの実行禁止を吸気装置40に対するパージについてのみ適用し、他の装置へのパージについては構成1とは独立して実行の可否を設定することができる。また他方、全ての装置に対するパージの実行可否を構成1に基づいて判定することもできる。
【0087】
・上記各実施形態では、予混合圧縮着火燃焼と通常の圧縮着火燃焼とを切り替えるディーゼルエンジンを想定したが、予混合圧縮着火燃焼に対するもう一方の燃焼方式として火花点火式燃焼を採用することもできる。要するに、予混合圧縮着火燃焼とこれとは別の通常燃焼との間で燃焼方式を切り替える内燃機関であればいずれのものに対しても本願発明の適用は可能であり、また内燃機関としても構造も上記実施形態に限られることはない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明にかかる圧縮着火式内燃機関を具体化した第1実施形態について、同機関の構成を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態の圧縮着火式内燃機関について、排気上死点から圧縮上死点までにわたる行程を示す模式図。
【図3】同実施形態の内燃機関の電子制御装置により実行される「第1パージ処理」について、その処理手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態の「第1パージ処理」を実行した際の各パラメータについての変化態様を示すタイミングチャート。
【図5】本発明にかかる圧縮着火式内燃機関を具体化した第2実施形態について、電子制御装置により実行される「第2パージ処理」の処理手順を示すフローチャート。
【図6】本発明にかかる圧縮着火式内燃機関を具体化した第3実施形態について、電子制御装置により実行される「第3パージ処理」の処理手順を示すフローチャート。
【図7】本発明にかかる圧縮着火式内燃機関を具体化した第4実施形態について、電子制御装置により実行される「第4パージ処理」の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0089】
10…エンジン、20…エンジン本体、21…シリンダブロック、22…ピストン、23…クランクシャフト、31…燃焼室、40…吸気装置、41…吸気通路、42…ディーゼルスロットル、43…ターボチャージャ、44…インタークーラ、50…排気装置、51…排気通路、52…排気インジェクタ、53…排気浄化装置、60…EGR装置、61…EGR通路、62…EGR触媒、63…EGRクーラ、64…EGRバルブ、70…燃料供給装置、71…燃料タンク、72…コモンレール、73…インジェクタ、80…蒸発燃料処理装置、81…キャニスタ、82…第1パージ通路、83…第2パージ通路、83A…基本パージ通路、83B…吸気パージ通路、83C…EGRパージ通路、84…パージ制御バルブ、85…切替バルブ、90…電子制御装置、91…回転速度センサ、92…エアフロメータ、93…排気空燃比センサ、94…HC濃度センサ、95…流量センサ、96…EGR触媒温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に発生する蒸発燃料を吸気装置にパージする蒸発燃料処理装置を備え、予混合圧縮着火燃焼を行う圧縮着火式内燃機関において、
予混合圧縮着火燃焼とこれとは別の通常燃焼とを切替えるとともに予混合圧縮着火燃焼時にのみパージを行う制御手段を備える
ことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記制御手段は、パージ量を検出し、これに基づいて燃料噴射量を補正する
ことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧縮着火式内燃機関において、
当該内燃機関は、排気装置から吸気装置に排気の一部を還流するEGR通路と、このEGR通路を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラと、このEGRクーラの上流に設けられて排気を浄化するEGR触媒と、蒸発燃料を前記EGR通路において同EGR触媒の上流に供給するEGRパージ通路とにより構成されるEGR装置を備え、
前記制御手段は、前記EGR触媒の温度が所定温度を下回るときには、前記EGR触媒の温度が同所定温度よりも高いときに比べて、前記EGR触媒の上流に供給するパージ量を増大させる
ことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
【請求項4】
請求項3に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記所定温度は、前記EGR触媒の活性下限温度よりも高い温度に設定される
ことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
【請求項5】
請求項3または4に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記制御手段は、前記EGRクーラに詰まりが生じている旨判定したときに前記EGR触媒上流へのパージを行う
ことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記蒸発燃料処理装置は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を一時的に捕捉するキャニスタと、燃料タンクと同キャニスタとを接続する蒸発燃料通路と、前記キャニスタに捕捉された蒸発燃料を前記吸気装置及び前記EGR装置に供給するパージ通路とを備え、このパージ通路は、入口が前記キャニスタに接続される基本パージ通路と、この基本パージ通路から分岐して出口が前記吸気装置に接続される吸気パージ通路と、出口が前記EGR装置に接続される前記EGRパージ通路とにより構成される
ことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記制御手段は、パージ量を検出し、これに基づいて排気の空燃比が目標空燃比となるように前記EGR装置から前記吸気装置に供給するEGRガス量を制御する
ことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧縮着火式内燃機関において、
当該内燃機関は、排気装置における排気浄化装置の上流に還元剤を供給する排気インジェクタを備え、
前記制御手段は、パージ量を検出し、これ基づいて排気の空燃比が目標の空燃比となるように同インジェクタの噴射量を補正する
ことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−106770(P2010−106770A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280007(P2008−280007)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】