説明

薄膜トランジスタとその製造方法、薄膜トランジスタアレイとその製造方法、及び、ディスプレイ装置

【課題】製造工程において半導体膜の膜質を低下させることなくその性能を維持し、少ない工程数によって、かつ、製造上の歩留まり及びスループットの優れた構造を有する薄膜トランジスタ及びその製造方法等を提供する。
【解決手段】薄膜トランジスタ100は、酸化物半導体膜120を有し、当該酸化物半導体膜120は、各薄膜半導体毎に、ゲート電極160下及び隣接された薄膜トランジスタ間とにそれぞれ形成された第1領域121及び122と、ソース電極140及びドレイン電極150下であって第1領域121の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設されており、ソース電極140及びドレイン電極150にそれぞれ電気的に接続され、かつ、非駆動時に前記第1領域121及び122より低抵抗である第2領域123及び124と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ及びその製造方法に関し、特に、酸化物半導体膜を第1領域(チャネル領域)と第1領域より低抵抗であり、ソース電極及びドレイン電極と接続される第2領域とに素子分離する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機ELディスプレイなどの駆動素子として用いられている。また、低温で成膜が可能な酸化物半導体を有する薄膜トランジスタの研究も進んでいる。
【0003】
酸化物半導体膜を用いたTFTとしては、ボトムゲート型またはトップゲート型があり、ボトムゲート型には、トップコンタクト型及びボトムコンタクト型が含まれており、その中でも、ボトムゲート・トップコンタクト型においては、液晶ディスプレイの駆動素子として事業化しているボトムゲート型アモルファスシリコンTFTと類似する製造プロセスを有しているため、比較的容易に製造することができる利点を有しており、その研究も盛んに行われている。
【0004】
例えば、ボトムゲート・トップコンタクト型の酸化物半導体TFTは、基材上より順にゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体膜及びソース・ドレイン電極を積層して形成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−290113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のボトムゲート・トップコンタクト型の酸化物半導体TFTにあっては、比較的容易に製造できる一方、ゲート電極、酸化物半導体膜、並びに、ソース電極及びドレイン電極をそれぞれ別工程で生成することとなり、工程数が多く、製造上のスループットについても限界がある。また、この酸化物半導体TFTにあっては、ソース電極及びドレイン電極を形成する際に、酸化物半導体における活性層上部、すなわち、バックチャネルがエッチャントにさらされるので、当該酸化物半導体膜の膜質が低下してTFTの性能が劣化する場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造工程において半導体膜の膜質を低下させることなくその性能を維持し、少ない工程数によって、かつ、製造上の歩留まり及びスループットの優れた構造を有する薄膜トランジスタ及びその製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明に係る薄膜トランジスタは、基材と、前記基材上に積層された酸化物半導体膜と、前記酸化物半導体膜に絶縁膜を介して積層されるとともに、積層方向に対して垂直となる水平方向に間隙を有してそれぞれ形成されるソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及びドレイン電極の間に、当該ソース電極及びドレイン電極と物理的にかつ電気的に独立して形成され、かつ、前記半導体膜と前記絶縁膜によって絶縁されているゲート電極と、を備え、前記酸化物半導体膜が、前記ゲート電極下に形成された第1領域と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極下に形成され、かつ、前記第1領域の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設されており、前記ソース電極及び前記ドレイン電極にそれぞれ電気的に接続されるとともに非駆動時に前記第1領域より低抵抗である第2領域と、を有している構成を備えている。
【0009】
本発明に係る薄膜トランジスタによれば、低抵抗である第2領域がソース電極及びドレイン電極に接続されつつ、第1領域の水平方向におけるそれぞれの両端に形成されており、ドレイン電極及びゲート電極を接続するための接続領域(すなわち、第2領域)とチャネル領域(すなわち、第1領域)が酸化物半導体膜の同一平面上に形成されているので、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を同一平面に形成することができる。したがって、本発明は、製造上の歩留まり及びスループットの優れた構造を有し、かつ、比較的容易に製造可能であるボトムゲート・トップコンタクト型における酸化物半導体の薄膜トランジスタより少ない工程数によって製造することできる。
【0010】
そして、本発明に係る薄膜トランジスタによれば、上述のように、接続領域とチャネル領域が酸化物半導体膜の同一平面上に形成されており、酸化物半導体膜上に積層される層(例えば、絶縁膜または各電極など)に対して優れた段差被覆性(カバレッジ)を要求する必要がないので、製造上または構造上の汎用性を備え、種々の製造工程を用いて製造すること、及び、酸化物半導体膜上に積層される層に対して種々の材質を用いて製造することができる。
【0011】
また、本発明に係る薄膜トランジスタによれば、ソース電極及びドレイン電極が絶縁膜上に形成されており、ソース電極及びドレイン電極が形成される際に酸化物半導体におけるチャネルである活性層上部が露出されていない。したがって、本発明は、製造中に酸化物半導体膜の膜質を低下させておらず、優れた半導体の性能を維持しているので、活性層上部がエッチャントにさらされて製造されたものより半導体性能を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る薄膜トランジスタによれば、酸化物半導体を電気的に分離すること(いわゆる、「素子分離」)によってドレイン電極及びゲート電極を接続するための接続領域(第2領域)とチャネル領域(第1領域)を形成しているので、複数の薄膜トランジスタを集積化する場合であっても、単一の半導体膜からチャネル領域を物理的に分離して形成する場合に比べて、容易に製造することができる。
【0013】
(2)また、本発明に係る薄膜トランジスタは、前記第1領域のキャリア濃度が、非駆動時に1×1018/cm未満であることが好ましい。
【0014】
(3)また、本発明に係る薄膜トランジスタは、前記第1領域の抵抗率が、非駆動時に10Ωcm以上であることが好ましい。
【0015】
(4)また、本発明に係る薄膜トランジスタは、前記第2領域における前記ソース電極及び前記ドレイン電極との界面でオーミック接触となっていることが好ましい。
【0016】
(5)また、ディスプレイ装置は、(1)〜(4)に記載の薄膜トランジスタを有する構成を備えている。
【0017】
本発明に係るディスプレイ装置によれば、少ない工程数によって製造すること、種々の製造工程を用いて製造すること及び酸化物半導体膜上に積層される層に対して種々の材質を用いて製造することが可能であって、半導体性能を向上させた薄膜トランジスタによってディスプレイ装置を提供することができる。
【0018】
(6)上記課題を解決するため、本発明に係る薄膜トランジスタの製造方法は、基材上に酸化物半導体膜を積層する第1積層工程と、前記基材が形成されている面とは反対の面であって前記酸化物半導体膜の一部の領域に対してプラズマを用いた低抵抗化処理を実行し、第1領域と、前記第1領域の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設され、非駆動時に前記第1領域より低抵抗となる第2領域と、を形成する低抵抗化処理工程と、前記第1領域上に絶縁膜を介してゲート電極を形成し、かつ、前記第2領域上に当該第2領域と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極を形成するための金属膜を積層する第2積層工程と、を含む構成を有している。
【0019】
本発明に係る薄膜トランジスタの製造方法によれば、低抵抗である第2領域がソース電極及びドレイン電極に接続されつつ、第1領域の水平方向におけるそれぞれの両端に形成されており、ドレイン電極及びゲート電極を接続するための接続領域(すなわち、第2領域)とチャネル領域(すなわち、第1領域)が酸化物半導体膜の同一平面上に形成されているので、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を同一平面に形成することができる。したがって、本発明は、製造上の歩留まり及びスループットを向上させることができるとともに、比較的容易に製造可能であるボトムゲート・トップコンタクト型における酸化物半導体の薄膜トランジスタより工程数を削減することができる。
【0020】
そして、本発明に係る薄膜トランジスタの製造方法によれば、上述のように、接続領域とチャネル領域が酸化物半導体膜の同一平面上に形成されており、酸化物半導体膜上に積層される層(例えば、絶縁膜または各電極など)に対して優れた段差被覆性(カバレッジ)を要求する必要がないので、製造上または構造上の汎用性を備え、種々の製造工程を適用すること、及び、酸化物半導体膜上に積層される際に、種々の材質を適用することができる。
【0021】
また、本発明に係る薄膜トランジスタの製造方法によれば、ソース電極及びドレイン電極が絶縁膜上に形成されており、ソース電極及びドレイン電極が形成される際に酸化物半導体におけるチャネルである活性層上部がエッチャントにさらされていない。したがって、本発明は、製造中に酸化物半導体膜の膜質を低下させていないので、優れた半導体の性能を維持しつつ薄膜トランジスタを製造することができる。
【0022】
(7)また、本発明に係る薄膜トランジスタの製造方法は、前記第1積層工程においては、酸素を90体積%以上有し、かつ、全圧が0.2〜1.0Paであるスパッタガスを用いて前記酸化物半導体をスパッタ法によって成膜することによって基材上に酸化物半導体膜を積層する構成を有している。
【0023】
本発明に係る薄膜トランジスタの製造方法によれば、的確に高抵抗の酸化物半導体膜を形成することができるので、性能を向上させた薄膜トランジスタを提供することができる。
【0024】
(8)上記課題を解決するため、本発明に係る薄膜トランジスタアレイは、複数の薄膜トランジスタがアレイ形状に並設されている薄膜トランジスタアレイであって、基材と、前記基材上に積層された酸化物半導体膜と、前記酸化物半導体膜に絶縁膜を介して積層されるとともに、各薄膜トランジスタ毎に、積層方向に対して垂直となる水平方向に間隙を有してそれぞれ形成されるソース電極及びドレイン電極と、各薄膜トランジスタ毎に、前記ソース電極及びドレイン電極の間に、当該ソース電極及びドレイン電極と物理的にかつ電気的に独立して形成され、かつ、前記半導体膜と前記絶縁膜によって絶縁されているゲート電極と、を備え、前記酸化物半導体膜が、各薄膜トランジスタ毎に前記ゲート電極下及び隣接された薄膜トランジスタ間とにそれぞれ形成された第1領域と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極下であって前記第1領域の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設されており、前記ソース電極及び前記ドレイン電極にそれぞれ電気的に接続され、かつ、非駆動時に前記第1領域より低抵抗である第2領域と、を有している構成を備えている。
【0025】
本発明に係る薄膜トランジスタアレイによれば、少ない工程数によって製造すること、種々の製造工程を用いて製造すること及び酸化物半導体膜上に積層される層に対して種々の材質を用いて製造することが可能であって、半導体性能を向上させた薄膜トランジスタによって薄膜トランジスタアレイを提供することができる。
【0026】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイによれば、酸化物半導体を電気的に分離する素子分離によってドレイン電極及びゲート電極を接続するための接続領域(第2領域)とチャネル領域(第1領域)を形成しているので、単一の半導体膜からチャネル領域を物理的に分離して形成する場合に比べて、容易に製造することができる。
【0027】
(9)上記課題を解決するため、本発明に係る薄膜トランジスタアレイの製造方法は、アレイ形状に複数の薄膜トランジスタを形成することによって形成される薄膜トランジスタアレイの製造方法であって、基材上に酸化物半導体膜を積層する第1積層工程と、前記基材が形成されている面とは反対の面であって前記酸化物半導体膜における所定の複数領域に対してプラズマを用いた低抵抗化処理を実行し、複数の第1領域と、各第1領域の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設され、非駆動時に前記第1領域より低抵抗となる第2領域と、をそれぞれ形成する低抵抗化処理工程と、前記各薄膜トランジスタにおけるチャネル領域に相当する第1領域上に絶縁膜を介してそれぞれゲート電極を形成し、かつ、前記各第2領域上に当該第2領域と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成するための金属膜を積層する第2積層工程と、を含む構成を有している。
【0028】
本発明に係る薄膜トランジスタアレイの製造方法によれば、工程数を削減すること、種々の製造工程を適用すること、及び、酸化物半導体膜上に積層される際に、種々の材質を適用すること、及び、優れた半導体の性能を維持しつつ薄膜トランジスタを製造することができる。
【0029】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイの製造方法によれば、酸化物半導体を電気的に分離する素子分離によってドレイン電極及びゲート電極を接続するための接続領域(第2領域)とチャネル領域(第1領域)を形成しているので、単一の半導体膜からチャネル領域を物理的に分離して形成する場合に比べて、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る薄膜トランジスタ及びディスプレイ装置は、少ない工程数によって製造すること、種々の製造工程を用いて製造すること及び酸化物半導体膜上に積層される層に対して種々の材質を用いて製造することができるとともに、半導体性能を向上させることができる。
【0031】
本発明に係る薄膜トランジスタの製造方法は、工程数を削減すること、種々の製造工程を適用すること、及び、酸化物半導体膜上に積層される際に、種々の材質を適用すること、及び、優れた半導体の性能を維持しつつ薄膜トランジスタを製造することができる。
【0032】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイは、少ない工程数によって製造すること、種々の製造工程を用いて製造すること及び酸化物半導体膜上に積層される層に対して種々の材質を用いて製造することが可能であって、半導体性能を向上させた薄膜トランジスタによって薄膜トランジスタアレイを提供することができるとともに、酸化物半導体を電気的に分離する素子分離によってドレイン電極及びゲート電極を接続するための接続領域(第2領域)とチャネル領域(第1領域)を形成しているので、単一の半導体膜からチャネル領域を物理的に分離して形成する場合に比べて、容易に製造することができる。
【0033】
また、本発明に係る薄膜トランジスタアレイの製造方法は、工程数を削減すること、種々の製造工程を適用すること、及び、酸化物半導体膜上に積層される際に、種々の材質を適用すること、及び、優れた半導体の性能を維持しつつ薄膜トランジスタを製造することができるとともに、酸化物半導体を電気的に分離する素子分離によってドレイン電極及びゲート電極を接続するための接続領域(第2領域)とチャネル領域(第1領域)を形成しているので、単一の半導体膜からチャネル領域を物理的に分離して形成する場合に比べて、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るアレイ形状に複数の薄膜トランジスタが並設された薄膜トランジスタアレイの上面図及び当該薄膜トランジスタアレイにおける一の薄膜トランジスタの断面図である。
【図2】一の実施形態における薄膜トランジスタ(薄膜トランジスタアレイ)の製造方法を説明するための図(その1)である。
【図3】一の実施形態における薄膜トランジスタ(薄膜トランジスタアレイ)の製造方法を説明するための図(その2)である。
【図4】一の実施形態における薄膜トランジスタ(薄膜トランジスタアレイ)の製造方法を説明するための図(その3)である。
【図5】一の実施形態における薄膜トランジスタ(薄膜トランジスタアレイ)の製造方法を説明するための図(その4)である。
【図6】本発明に係るディスプレイ装置の一部の上面図及び当該ディスプレイ装置の一の画素部分における断面図である。
【図7】一の実施形態におけるディスプレイ装置の製造方法を説明するための図(その1)である。
【図8】一の実施形態におけるディスプレイ装置の製造方法を説明するための図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、酸化物半導体を有する薄膜トランジスタによって形成された集積回路及びそれを用いディスプレイ装置に、本発明の薄膜トランジスタ、ディスプレイ装置、薄膜トランジスタアレイ、薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタアレイの製造方法に適用した場合の実施形態である。
【0036】
<薄膜トランジスタ(薄膜トランジスタアレイ)>
まず、図1を用いて本発明に係る薄膜トランジスタ100の実施形態について説明する。特に、本実施形態においては、アレイ形状に複数の薄膜トランジスタ100を有する薄膜トランジスタアレイを用いて本発明に係る薄膜トランジスタ100の実施形態について説明する。なお、図1は、本実施形態におけるアレイ形状に複数の薄膜トランジスタ100が並設された薄膜トランジスタアレイ10の上面図及び当該薄膜トランジスタアレイ10における一の薄膜トランジスタ100の断面図である。
【0037】
本実施形態の薄膜トランジスタ100は、ディスプレイ装置200の各画素20を駆動するためのTFTであって、画素20毎に形成されている。本実施形態の薄膜トランジスタ100は、図1(a)及び(b)に示すように、基材110と、基材110上に積層された酸化物半導体膜120と、酸化物半導体膜120上に積層されたゲート絶縁膜130と、各薄膜トランジスタ100毎に、ゲート絶縁膜130上に積層方向に対して垂直となる水平方向に間隙を有してそれぞれ形成されるソース電極140及びドレイン電極150と、を備えている。
【0038】
また、薄膜トランジスタ100は、各薄膜トランジスタ100毎に、ソース電極140及びドレイン電極150の間に、当該ソース電極140及びドレイン電極150と物理的にかつ電気的に独立して形成され、かつ、酸化物半導体膜120とゲート絶縁膜130によって絶縁されているゲート電極160と、を備えている。
【0039】
特に、酸化物半導体膜120は、各薄膜半導体毎に、ゲート電極160下及び隣接された薄膜トランジスタ間とにそれぞれ形成された第1領域121及び122と、ソース電極140及びドレイン電極150下であって第1領域121の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設されており、ソース電極140及びドレイン電極150にそれぞれ電気的に接続され、かつ、非駆動時に前記第1領域121及び122より低抵抗である第2領域123及び124と、を有している。
【0040】
なお、各薄膜トランジスタ100の酸化物半導体膜120は、物理的には、同一の膜によって形成されているが、一の薄膜トランジスタと隣接する薄膜トランジスタにおける酸化物半導体膜120のそれぞれの第2領域123及び124間に、高抵抗である第1領域122が形成されることによって、電気的に分離されている(いわゆる、素子分離されている)。また、各薄膜トランジスタ100のドレイン電極150は、後述するように、ディスプレイ装置200における信号線としても機能するとともに、各薄膜トランジスタ100は、最上部に共通線としても機能するディスプレイ装置200における保持容量を保持するための下部電極170と、当該ディスプレイ装置200の画素電極230として機能する当該下部電極に接続される電極180と、を有している。
【0041】
基材110は、薄膜トランジスタ100の支持基板をなす絶縁性のものであり、シリコン基板、セラミックス基板等の無機基板または有機基板によって形成される。また、この基材110は、有機基板として、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイ、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリノルボルネン系樹脂、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、又は熱可塑性ポリイミド等からなる各有機基板、又はそれらの複合基板によって形成される。
【0042】
特に、本実施形態の基材110は、ガラス基板によって形成されているのが好ましい、また、この基材110の厚さは、諸条件により適宜選択可能であって、特に、0.05mm以上3.0mm以下程度が好ましい。また、基材110がガラス基板によって形成されている場合には、液晶ディスプレイ用途のガラス基板または耐熱性の点ではやや劣るが安価な無アルカリガラス基板によって形成されていてもよい。
【0043】
なお、この基材110は、剛性を有するものであってもよいし、厚さが5μm以上300μm以下程度の薄いフレキシブルなフィルム状のものであってもよい。
【0044】
酸化物半導体膜120は、1018/cm未満の電子キャリア濃度、または、10Ωcm以上の抵抗率を有する高抵抗な酸化物半導体である。具体的には、酸化物半導体膜120は、InMZnO(MはGa,Al,Feのうち少なくとも1種)を主たる構成元素とするアモルファス酸化物によって形成される。
【0045】
特に、MがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましく、この場合には、In:Ga:Znの組成比が1:1:1であることが好ましい。なお、組成割合は、蛍光X線(XRF)装置によって測定したものである。InGaZnO系のアモルファス酸化物については、InとGaとZnの広い組成範囲でアモルファス相を示す。この三元系でアモルファス相を安定して示す組成範囲としては、InGaZn(3x/2+3y/2+z)で比率x/yが0.4〜1.4の範囲であり、比率z/yが0.2〜12の範囲にあるように表すことができる。なお、ZnOに近い組成とInに近い組成で結晶質を示す。また、アモルファス酸化物が、InxGa1-x酸化物(0≦x≦1)、InxZn1-x酸化物(0.2≦x≦1)、InxSn1-x酸化物(0.8≦x≦1)、Inx(Zn,Sn)1-x酸化物(0.15≦x≦1)、InGaZn1−xMg酸化物(0≦x≦1)から選ばれるいずれかのアモルファス酸化物であってもよい。
【0046】
本発明においては、後述の実施例で用いたInGaZnO系酸化物半導体膜(以下、「IGZO酸化物半導体膜」という。)を好ましく挙げることができる。また、このIGZO酸化物半導体膜には、必要に応じて、Al、Fe、Sn等を構成元素として加えたものであってもよい。このIGZO酸化物半導体膜は、室温から150℃程度の低温での成膜が可能であることから、耐熱性に乏しいプラスチック基板やガラス基板に対して好ましく適用できる。また、このIGZO酸化物半導体膜の膜厚は、諸条件により適宜選択されることが可能であって、特に、20nm〜100nm程度が好ましい。
【0047】
一方、酸化物半導体膜120は、チャネル領域として機能し、ゲート電極160下に形成される第1領域121及び122と、第1領域121及び122と物理的には水平方向に並設され、ソース電極140及びドレイン電極150下に形成される2つの第2領域123及び124と、を有している。特に、第2領域123及び124は、コンタクトホールHを介してゲート絶縁膜130上に形成されたソース電極140及びドレイン電極150と電気的に接続されて、ソース電極及びドレイン電極との接続領域として機能するようになっている。また、第2領域123及び124は、第1領域121及び122より低抵抗となるように低抵抗化処理が施されて第1領域121及び122からは電気的に分離された領域、すなわち、素子分離された領域である。
【0048】
第1領域121及び122は、1018/cm未満の電子キャリア濃度、または、1×10Ωcm以上の抵抗率を有している。特に、第1領域121及び122は、絶縁状態でもよいし、第2領域との界面がショットキー接触をしていてもよい。また、各第2領域123及び124は、ソース電極140及びドレイン電極150との間に接触抵抗10−4Ω・cm以下を有し、ソース電極140及びドレイン電極との電極・半導体界面においてオーミック接触が得られる状態となっている。
【0049】
なお、各第2領域123及び124は、トランジスタとしての機能を発揮するため、酸化物半導体の表面から20nm程度の深さ、すなわち、厚さを有している。また、低抵抗化とは、第2領域123及び124とソース電極140またはドレイン電極150との界面において電気的な阻害要因が排除されたオーミック接触が得られることをいう。ただし、完全なオーミック接触でなくてもよく、第2領域123及び124とソース電極140またはドレイン電極150との界面において5%程度の多少の電圧・電流による変動が生じている状態も含む。
【0050】
ゲート絶縁膜130は、絶縁性及び誘電性の観点から、例えば、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiNx)、窒化酸化珪素(SiOxNy)などのシリコン酸化物若しくはシリコン窒化物、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ハフニウム(HfO)などの金属酸化物、または、アクリル樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂などの有機系絶縁体から形成される。特に、本実施形態のゲート絶縁膜130には、酸化珪素を用いるのが好ましい。また、ゲート絶縁膜130の膜厚は、諸条件により適宜選択可能であって、特に、150nmから5μm程度が好ましい。
【0051】
ソース電極140及びドレイン電極150は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)その他の導電性の金属材料によって形成されている。また、ソース電極140及びドレイン電極150の厚さは、諸条件により適宜選択可能であって、特に、30nm以上が好ましい。また、ソース電極140及びドレイン電極150は、コンタクトホールHを介して酸化物半導体膜120に形成された第2領域123及び124に接続される。
【0052】
ゲート電極160は、ソース電極140及びドレイン電極150と同様に、アルミニウム(Al)、銅(Cu)その他の導電性の金属材料によって形成されている。また、ゲート電極160の厚さは、諸条件により適宜選択可能であって、特に、30nm以上が好ましい。特に、本実施形態のゲート電極160は、ソース電極140及びドレイン電極150と同一のタイミングで形成される。
【0053】
<薄膜トランジスタ(薄膜トランジスタアレイ)の製造方法>
次に、図2〜4の各図を用いて本実施形態における薄膜トランジスタ100(薄膜トランジスタアレイ10)の製造方法について説明する。
【0054】
なお、図2は、本実施形態における薄膜トランジスタ100(薄膜トランジスタアレイ10)の製造方法を説明するための図(その1)であり、図3は、本実施形態における薄膜トランジスタ100(薄膜トランジスタアレイ10)の製造方法を説明するための図(その2)である。なお、図4は、本実施形態における薄膜トランジスタ100(薄膜トランジスタアレイ10)の製造方法を説明するための図(その3)であり、本実施形態における薄膜トランジスタ100(薄膜トランジスタアレイ10)の製造方法を説明するための図(その4)である。
【0055】
本実施形態の薄膜トランジスタ100(薄膜トランジスタアレイ10)の製造方法は、基材110上に酸化物半導体膜120を積層する第1積層工程と、基材110が形成されている面とは反対の面であって酸化物半導体膜120の一部の領域に対してプラズマを用いた低抵抗化処理を実行し、第1領域121及び122と、当該第1領域121及び122とは異なる領域であって第1領域121及び122より低抵抗となる第2領域123及び124と、を形成する低抵抗化処理工程と、第1領域121及び122上に絶縁膜を介してゲート電極160を形成し、かつ、第2領域123及び124上に当該第2領域123及び124と電気的に接続するソース電極140及びドレイン電極150を形成するための金属膜を積層する第2積層工程と、含む。
【0056】
まず、図2(a)に示すように、基材110を準備し、基材110上に高抵抗な酸化物半導体、例えば、IGZO系の酸化物半導体膜120を、膜厚20nm〜100nmとなるようにスパッタ法によって成膜する(第1積層工程)。具体的には、In、Ga及びZnを含むターゲットに対して、酸素(O)ガスとアルゴン(Ar)等希ガスの混合ガスであって、当該酸素ガスが90体積%以上(最大100体積%)含まれた全圧が0.2Pa〜1.0Paのスパッタガスの雰囲気下でスパッタリングを実行することにより、IGZO系の酸化物半導体膜120のIn:Ga:Znの比が1:1:1とるように、かつ、当該IGZO半導体中に酸素を導入して成膜を行う。
【0057】
このように、酸化物半導体膜120を成膜する際には、成膜される膜内の酸素量を多くすることができるようになっており、これにより酸化物半導体膜120全体を1018/cm未満の電子キャリア濃度、または、10Ωcm以上の抵抗率を有するように高抵抗化させることができるようになっている。例えば、酸素量としては、40at%以上(最大70at%)含有するように酸化物半導体膜120を成膜する。
【0058】
次いで、図2(b)に示すように、酸化物半導体膜120上にレジスト20を形成し、その後に当該レジスト20によって、低抵抗化処理する第2領域123及び124以外の領域に相当する領域、すなわち、第1領域121及び122に相当する領域をパターニングしてマスキングする。
【0059】
次いで、図2(c)に示すように、積層方向において酸化物半導体膜120の上方からプラズマを酸化物半導体膜120における露出している領域、すなわち、第2領域123及び124に相当する領域に当てて、当該領域を低抵抗化させる(酸化物半導体膜120形成工程)。すなわち、第2領域123及び124に相当する領域の表面にプラズマによって酸素欠損を生じさせるとともに、それに伴ってキャリアを発生させて他の領域、すなわち、レジスト20によってマスキングされている第1領域121及び122からの素子分離を生じさせて第2領域123及び124を形成させる。なお、プラズマは、アルゴン(Ar)などの希ガスを用いたプラズマまたは四フッ化炭素系ガスなどのフッ化メタン系ガスを用いたプラズマを使用することができる。
【0060】
なお、一般的には、複数の薄膜トランジスタ100を同一基材110上に作製して、完成後に個々に切り出すようになっているため、当該工程では、基材110上に酸化物半導体膜120が成膜されたアレイ基板に対して所定のプラズマを当てるようになっている。また、レジスト20の関係において、適宜第2領域123及び124を低抵抗化させるために、アルゴンプラズマまたは四フッ化炭素系ガスなどの各種のガスに5%程度の酸素ガスを含有させてもよい。この場合には、プラズマを当てる処理時間と、レジスト20の厚さと、当該レジスト20の解像度とのバランスによって調整することになる。例えば、チャネル長5μm、プラズマ処理時間が200秒であれば、プラズマ処理に対するレジストの選択比から必要なレジスト厚を見積もる必要がある。
【0061】
例えば、IGZO系の酸化物半導体膜120に対して、所定のチャンバー内において、流量50ml/min、圧力10Paのアルゴンプラズマを当てて、金属電極との関係で金属電極・半導体界面がショットキー接触となる状態のIGZO膜をオーミック接触の状態にするための酸素欠損を生じさせて電子キャリアを発生させる。この結果、上記のような高低抵抗の酸化物半導体に対して、ソース電極140及びドレイン電極150との間に接触抵抗10−4Ω・cm以下となる、すなわち、オーミック接触となる第2領域123及び124がレジスト20によってマスキングされていない領域に形成される。
【0062】
次いで、図3(a)に示すように、酸化物半導体膜120上にマスキングとして形成されたレジスト20を除去した後に、図3(b)に示すように、酸化物半導体膜120上にゲート絶縁膜130を成膜する。具体的には、酸化物半導体膜120における高抵抗の領域、すなわち、第1領域121及び122が低抵抗化しないように、シリコン酸化物若しくはシリコン窒化物または金属酸化物のターゲットを用いてDCスパッタ法、または対向ターゲット式スパッタ法などを実行し、または、有機系絶縁体を塗布形成することによって酸化物半導体膜120上にゲート絶縁膜130を形成する。
【0063】
なお、RFスパッタ法よってゲート絶縁膜130を成膜した場合には、プラズマダメージによって第1領域121及び122が低抵抗化してしまうので、ここでは利用することはできない。
【0064】
次いで、図3(c)に示すように、ゲート絶縁膜130中にソース電極140及びドレイン電極150と酸化物半導体膜120の第2領域123及び124とを接続するためのコンタクトホールHを形成するために、ゲート絶縁膜130上のコンタクトホールHを形成する部分以外にレジスト30を形成してマスキングする。特に、コンタクトホールHが酸化物半導体膜120における第2領域123及び124上に形成されるように、該当する部分をレジスト30によってマスキングする。
【0065】
次いで、図4(a)及び(b)に示すように、レジスト30によってマスキングされた部分以外については、ウエットエッチングまたはドライエッチングなどの所定のエッチング処理を行って、ゲート絶縁膜130にコンタクトホールH用の穴部31を形成するとともに、その後、レジスト30を除去し、コンタクトホールH用の穴部31を有するゲート絶縁膜130を形成する。
【0066】
次いで、図4(c)に示すように、上記形成された穴部31に充填させ(コンタクトホールHを設け)つつ、上述のように、形成されたゲート絶縁膜130上にソース電極140、ドレイン電極150及びゲート電極160を形成するための金属膜40を成膜する。例えば、IGZO酸化物半導体膜120の全てを覆うように、厚さ30nmのアルミニウム膜を金属膜40としてスパッタリング法などで成膜する。ただし、酸化物半導体膜120の第2領域123及び124において高抵抗化しないように、成膜する必要がある。なお、金属膜40の膜厚は、ゲート絶縁膜130との段差によって断線が生じないように、30nm程度が好ましい。
【0067】
次いで、図5(a)に示すように、ソース電極140、ドレイン電極150及びゲート電極160が積層方向に対して垂直となる水平方向に間隙を有してそれぞれ形成されるように、かつ、ゲート電極160が、ソース電極140及びドレイン電極150の間に、当該ソース電極140及びドレイン電極150と物理的にかつ電気的に独立して形成されるように、金属膜40上のソース電極140、ドレイン電極150及びゲート電極160が形成される部分にレジスト50を形成してマスキングする。そして、図5(b)に示すように、ウエットエッチングまたはドライエッチングなどの所定のエッチングを実行してソース電極140、ドレイン電極150及びゲート電極160をパターニングする。具体的には、基板の耐熱性に応じた成膜手段とパターニング手段が適用され、例えば、透明導電材料または金属材料でソース電極140、ドレイン電極150及びゲート電極160を形成する場合には、成膜手段としてスパッタリング法や各種CVD法等を適用することができる。また、パターニング手段としては、フォトリソグラフィを適用することができるとともに、低温成膜が要求される場合には、成膜手段として低温成膜可能なスパッタリング法やプラズマCVD法を好ましく適用できる。また、導電性高分子によってソース電極140、ドレイン電極150及びゲート電極160を形成する場合には、成膜手段として真空蒸着法やパターン印刷法等を適用することができるとともに、パターニング手段としてフォトリソグラフィを適用することができる。そして、図5(c)に示すように、最後に上記レジスト50を除去することによって薄膜トランジスタ100が形成される。
【0068】
<ディスプレイ装置>
次に、図6を用いて本発明に係るディスプレイ装置200の実施形態について説明する。なお、図6は、本実施形態におけるディスプレイ装置200の一部の上面図及び当該ディスプレイ装置200の一の画素部分における断面図である。
【0069】
本実施形態のディスプレイ装置200は、図6に示すように、薄膜トランジスタ100上に積層された層間絶縁膜210と、層間絶縁膜210上に、ゲート電極160及びソース電極140と接続させつつ、形成される走査線220及び画素電極230と、を有している。
【0070】
層間絶縁膜210は、走査線220、画素電極230及び保持容量を形成するための絶縁層であり、300nm以上の膜厚を有している。層間絶縁膜210は、例えば、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)などによって形成される。
【0071】
走査線220は、ディスプレイ装置200における図示しない表示領域において当該表示領域の水平方向に延在する線であって、ゲート電極160と接続される。本実施形態の走査線220は、例えば、ITO、IZO等によって形成されている。
【0072】
画素電極230は、各画素20毎に設けられており、各画素20の点灯及び非点灯、図示しないバックライトの透過及び非透過を制御するための電極である。本実施形態の画素電極230は、例えば、ITO、IZO等によって形成されている。
【0073】
<ディスプレイ装置の製造方法>
次に、図7または図8の各図を用いて本実施形態におけるディスプレイ装置200の製造方法について説明する。なお、図7は、一の実施形態におけるディスプレイ装置200の製造方法を説明するための図(その1)である。また、図8は、一の実施形態におけるディスプレイ装置200の製造方法を説明するための図(その2)である。
【0074】
まず、図7(a)に示すように、上述のように作製された薄膜トランジスタ100を準備し、薄膜トランジスタ100上に、すなわち、ソース電極140、ドレイン電極150、ゲート電極160及びゲート絶縁膜130を覆うように層間絶縁膜210を成膜する。例えば、層間絶縁膜210をBPSG膜によって形成する場合には、APCVD(常圧CVD)法によって成膜し、その後、図7(b)に示すように、ゲート電極160とソース電極140を走査線220及び画素電極230に接続するためのコンタクトホールH用の穴部61を形成する。
【0075】
次いで、図7(c)に示すように、上記形成された穴部61に充填させ(コンタクトホールHを設け)つつ、走査線220及び画素電極180を形成するための金属膜70を成膜する。例えば、薄膜トランジスタ100の全てを覆うように、厚さ30nmのアルミニウム膜を金属膜70としてスパッタリング法などで成膜する。
【0076】
次いで、図8(a)に示すように、走査線220及びが画素電極230を形成する部分にレジスト80を形成してマスキングを行う。特に、各画素20のゲート電極160を一定方向に接続するための走査線220が形成されるように、かつ、各ソース電極140と接続されるように、走査線220及びが画素電極230の部分をマスキングする。
【0077】
次いで、図8(b)に示すように、ウエットエッチングまたはドライエッチングなどの所定のエッチング処理によって金属膜70をパターニングし、最後に上記レジスト80を除去することによって図6に示すようにディスプレイ装置200が形成される。
【0078】
<作用効果>
以上本実施形態の薄膜トランジスタ100及びその製造方法は、低抵抗である第2領域123及び124がソース電極140及びドレイン電極150に接続されつつ、第1領域121及び122の水平方向におけるそれぞれの両端に形成させ、ドレイン電極150及びゲート電極160を接続するための接続領域(すなわち、第2領域123及び124)とチャネル領域(すなわち、第1領域121及び122)が酸化物半導体膜120の同一平面上に形成することができるので、ソース電極140、ドレイン電極150及びゲート電極160を同一平面上に形成することができるとともに、比較的容易に製造可能であるボトムゲート・トップコンタクト型にける酸化物半導体の薄膜トランジスタ100より、工程数を削減することができるとともに、製造上の歩留まり及びスループットを向上させることができる。
【0079】
また、本実施形態の薄膜トランジスタ100及びその製造方法は、上述のように、接続領域とチャネル領域が酸化物半導体膜120の同一平面上に形成されており、酸化物半導体膜120上に積層される層(例えば、絶縁膜または各電極など)に対して優れた段差被覆性(カバレッジ)を要求する必要がないので、製造上または構造上の汎用性を備え、種々の製造工程に適用することができるとともに、酸化物半導体膜120上に積層される層に対して種々の材質を用いることができる。
【0080】
また、本実施形態の薄膜トランジスタ100及びその製造方法は、ソース電極140及びドレイン電極150が絶縁膜上に形成させることが可能であって、ソース電極140及びドレイン電極150が形成される際に酸化物半導体におけるバックチャネルが露出されていないため、当該ソース電極140及びドレイン電極150が形成される際に酸化物半導体におけるバックチャネルがエッチャントにさらされず、酸化物半導体膜120の膜質を低下させることもないので、酸化物半導体膜120の性能を劣化させずに製造することができる。
【0081】
また、本実施形態の薄膜トランジスタ100及びその製造方法は、酸化物半導体を電気的に分離すること(いわゆる、「素子分離」)によってドレイン電極150及びゲート電極160を接続するための接続領域(第2領域123及び124)とチャネル領域(第1領域121及び122)を形成しているので、複数の薄膜トランジスタ100を集積化またはアレイ化する場合であっても、単一の酸化物半導体膜からチャネル領域を物理的に分離して形成する場合に比べて、容易に製造することができる。
【0082】
また、本実施形態のディスプレイ装置200は、少ない工程数によって製造すること、種々の製造工程を用いて製造すること及び酸化物半導体膜120上に積層される層に対して種々の材質を用いて製造することができるとともに、半導体性能を向上させることができる。
【0083】
<変形例>
なお、本実施形態は、複数の薄膜トランジスタ100を有する薄膜トランジスタアレイ10及びそれから構成されるディスプレイ装置200について説明したが、集積回路においても、上述の薄膜トランジスタ100によって構成することが可能である。すなわち、集積回路は、上述のような複数の薄膜トランジスタ100を備えた構成を有することによって、少ない工程数によって製造すること、種々の製造工程を用いて製造すること及び酸化物半導体膜上に積層される層に対して種々の材質を用いて製造することができるとともに、半導体性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 … 薄膜トランジスタアレイ
20 … 画素
100 … 薄膜トランジスタ
110 … 基材
120 … 酸化物半導体膜
121、122 … 第1領域
122、123 … 第2領域
130 … ゲート絶縁膜
140 … ソース電極
150 … ドレイン電極
160 … ゲート電極
170 … 下部電極
180 … 画素電極
200 … ディスプレイ装置
210 … 層間絶縁膜
220 … 走査線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に積層された酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜に絶縁膜を介して積層されるとともに、積層方向に対して垂直となる水平方向に間隙を有してそれぞれ形成されるソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及びドレイン電極の間に、当該ソース電極及びドレイン電極と物理的にかつ電気的に独立して形成され、かつ、前記半導体膜と前記絶縁膜によって絶縁されているゲート電極と、
を備え、
前記酸化物半導体膜が、
前記ゲート電極下に形成された第1領域と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極下であって前記第1領域の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設されており、前記ソース電極及び前記ドレイン電極にそれぞれ電気的に接続され、かつ、非駆動時に前記第1領域より低抵抗である第2領域と、
を有していることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記第1領域のキャリア濃度が、非駆動時に1×1018/cm未満である、請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記第1領域の抵抗率が、非駆動時に10Ωcm以上である、請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記第2領域における前記ソース電極及び前記ドレイン電極との界面でオーミック接触となっている請求項1〜3の何れか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタが画素毎にアレイ状に複数併設されていることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項6】
基材上に酸化物半導体膜を積層する第1積層工程と、
前記基材が形成されている面とは反対の面であって前記酸化物半導体膜の一部の領域に対してプラズマを用いた低抵抗化処理を実行し、第1領域と、前記第1領域の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設され、非駆動時に前記第1領域より低抵抗となる第2領域と、を形成する低抵抗化処理工程と、
前記第1領域上に絶縁膜を介してゲート電極を形成し、かつ、前記第2領域上に当該第2領域と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極を形成するための金属膜を積層する第2積層工程と、
を含むことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記第1積層工程においては、酸素を90体積%以上有し、かつ、全圧が0.2〜1.0Paであるスパッタガスを用いて前記酸化物半導体をスパッタ法によって成膜することによって基材上に酸化物半導体膜を積層する、請求項6に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
複数の薄膜トランジスタがアレイ形状に並設されている薄膜トランジスタアレイであって、
基材と、
前記基材上に積層された酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜に絶縁膜を介して積層されるとともに、各薄膜トランジスタ毎に、積層方向に対して垂直となる水平方向に間隙を有してそれぞれ形成されるソース電極及びドレイン電極と、
各薄膜トランジスタ毎に、前記ソース電極及びドレイン電極の間に、当該ソース電極及びドレイン電極と物理的にかつ電気的に独立して形成され、かつ、前記半導体膜と前記絶縁膜によって絶縁されているゲート電極と、
を備え、
前記酸化物半導体膜が、
各薄膜トランジスタ毎に前記ゲート電極下及び隣接された薄膜トランジスタ間とにそれぞれ形成された第1領域と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極下であって前記第1領域の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設されており、前記ソース電極及び前記ドレイン電極にそれぞれ電気的に接続され、かつ、非駆動時に前記第1領域より低抵抗である第2領域と、
を有していることを特徴とする薄膜トランジスタアレイ。
【請求項9】
アレイ形状に複数の薄膜トランジスタを形成することによって形成される薄膜トランジスタアレイの製造方法であって、
基材上に酸化物半導体膜を積層する第1積層工程と、
前記基材が形成されている面とは反対の面であって前記酸化物半導体膜における所定の複数領域に対してプラズマを用いた低抵抗化処理を実行し、複数の第1領域と、各第1領域の前記水平方向におけるそれぞれの両端に並設され、非駆動時に前記第1領域より低抵抗となる第2領域と、をそれぞれ形成する低抵抗化処理工程と、
前記各薄膜トランジスタにおけるチャネル領域に相当する第1領域上に絶縁膜を介してそれぞれゲート電極を形成し、かつ、前記各第2領域上に当該第2領域と電気的に接続するソース電極及びドレイン電極をそれぞれ形成するための金属膜を積層する第2積層工程と、
を含むことを特徴とする薄膜トランジスタアレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−33778(P2012−33778A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173098(P2010−173098)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】